JP3721782B2 - インクジェット記録用紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙に関し、詳しくは特に搬送性や給紙性を改善した高光沢のインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。この方式で従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インク及び装置の両面から改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等、さまざまな分野に急速に普及している。
【0003】
このインクジェット記録方式で使用される記録用紙としては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合に於いてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ周辺が滑らかでぼやけないこと等が要求される。
【0004】
特にインク吸収速度が遅い場合には、2色以上のインク液滴が重なって記録される際に、記録用紙上で液滴がハジキ現象を起こしてムラになったり、また、異なる色の境界領域でお互いの色が滲んだりして画質を大きく低下させやすいために、記録用紙としては高いインク吸収性を持たせるようにすることが必要である。
【0005】
これらの問題を解決するために、従来から非常に多くの技術が提案されている。
【0006】
例えば、特開昭52−53012号公報に記載されている低サイズ原紙に表面加工用の塗料を湿潤させた記録用紙、特開昭55−5830号公報に記載されている支持体表面にインク吸収性の塗層を設けた記録用紙、特開昭56−157号公報に記載されている被履層中の顔料として非膠質シリカ粉末を含有する記録用紙、特開昭57−107878号公報に記載されている無機顔料と有機顔料を併用した記録用紙、特開昭58−110287号公報に記載されている2つの空孔分布ピークを有する記録用紙、特開昭62−111782号公報に記載されている上下2層の多孔質層からなる記録用紙、特開昭59−68292号、同59−123696号及び同60−18383号公報などに記載されている不定形亀裂を有する記録用紙、特開昭61−135786号、同61−148092号及び同62−149475号公報等に記載されている微粉末層を有する記録用紙、特開昭63−252779号、特開平1−108083号、同2−136279号、同3−65376号及び同3−27976号公報等に記載されている特定の物性値を有する顔料や微粒子シリカを含有する記録用紙、特開昭57−14091号、同60−219083号、同60−210984号、同61−20797号、同61−188183号、特開平5−278324号、同6−92011号、同6−183134号、同7−137431号、同7−276789号公報等に記載されているコロイド状シリカ等の微粒子シリカを含有する記録用紙、及び特開平2−276671号、同3−67684号、同3−215082号、同3−251488号、同4−67986号、同4−263983号及び同5−16517号公報などに記載されているアルミナ水和物微粒子を含有する記録用紙等多数が知られている。
【0007】
上記の中でも、微小な無機微粒子と親水性バインダーを使用し、微小な空隙をインク受容層に形成した空隙型記録用紙は比較的高い光沢が得られるため高品位の光沢紙として好ましいものである。
【0008】
ところで、高光沢のインクジェット記録用紙は、その表面が比較的平滑度が高いために複数枚重ねて給紙した際の給紙時や、記録装置内部に於ける搬送性に問題が生じやすいことが多い。
【0009】
この問題は、表面にいわゆるマット剤と称される比較的粗大な粒子を添加することで改善される。
【0010】
しかしながら、インク受容層が空隙型である場合、インク受容層自身が微細な粒子を含んでいるために、表面が親水性バインダー単独からなるインクジェット記録用紙に比べて光沢度が低く、通常使用されているようなマット剤の使用により光沢度が極端に低下しやすい欠点があることが判明した。
【0011】
特公昭63−65036号及び同63−65038号には、インク受容層表面に、3〜25μmの大きさの1mm2当たり1万〜10万個の表面に露呈している充填材粒子を含む被記録材が記載されている。
【0012】
しかしながら、かかる記録材料は、充填材粒子が多すぎるために充分な光沢度が得られないことが判明した。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実態に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、無機微粒子及び親水性バインダーからなる空隙層を有するインクジェット記録用紙において、その光沢度をあまり低下させることなく、表面の滑り性を改善して給紙性や記録装置内部に於ける搬送性を改善したインクジェット記録用紙を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
【0015】
1.支持体上に、無機微粒子及び親水性バインダーを含有する複数の空隙層を有し、前記空隙層のうち支持体から最も遠い側に位置する乾燥膜厚が3〜15μmの最上層に平均粒径が前記最上層の乾燥膜厚よりも2μm〜30μm大きくかつ分散度が2以下の単分散のマット剤を10〜300個/mm 2 含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明のインクジェット記録用紙の空隙層は無機微粒子を含有する。このような無機微粒子の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることが出来る。
【0018】
その様な無機微粒子は、1次粒子のまま用いても、また、2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0019】
本発明においては、特に微細な空隙が形成出来る観点より、シリカ又は擬ベーマイトが好ましく、特に平均粒径が100nm以下の気相法により合成されたシリカ、コロイダルシリカ及び擬ベーマイトが好ましい。
【0020】
無機微粒子の平均粒径は、粒子そのもの或いは空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0021】
空隙層に用いられる親水性バインダーとしては、従来公知のものの中から適宜選択して使用することが出来、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、寒天、カラギーナン、デキストラン、デキストリン、プルラン、ヒドロキシエチルセルロール、カルボキシメチルセルロース等を挙げることが出来る。
【0022】
これらの親水性バインダーは2種以上を併用することもできる。
【0023】
特に好ましい親水性バインダーはポリビニルアルコールである。
【0024】
本発明で用いられるポリビリルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0025】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000〜4000のものが好ましく用いられる。
【0026】
ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0027】
カチオン変成ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖又は側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0028】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0030】
アニオン変性ポリビニルアルコールは例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号、及び同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0031】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0032】
ポリビニルアルコールは重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。
【0033】
上記無機微粒子の使用量は、記録用紙1m2当たり3〜50gであり、特に5〜30gが好ましい。また、親水性バインダーの使用量は記録用紙1m2当たり0.5〜10g、特に1〜5gである。また、無機微粒子の親水性バインダーに対する比率は概ね重量比で3〜10である。
【0034】
また、上記空隙層中には皮膜の造膜性を改善し、また皮膜の強度を高めるために、ほう酸又はその塩が含有される。ほう酸又はその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことを示し、具体的にはオルトほう酸、メタほう酸、次ほう酸、四ほう酸、五ほう酸及びそれらの塩が含まれる。
【0035】
ほう酸又はその塩の使用量は、塗布液の無機微粒子や親水性バインダーの量により広範に変わり得るが、親水性バインダーに対して概ね1〜60重量%、好ましくは5〜40重量%である。
【0036】
本発明のインクジェット記録用紙は、上記空隙層を支持体上に少なくとも2層以上有するものであり、支持体から最も離れた最上層に分散度が2以下の単分散マット剤を含有するものである。
【0037】
本発明に用いられるマット剤は水不溶性の有機又は無機の粒子であり例えば、酸化チタン、シリカ粒子、ガラス粉、硫酸バリウム、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート共重合体などの粒子であり分散度が2以下のものであればいかなるものも本発明で使用できるが、本発明で好ましく用いられるマット剤は下記一般式(1)で表されるものである。
【0038】
【化1】
Figure 0003721782
【0039】
式中、R1、R2及びR3はそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R4及びR5はそれぞれアルキル基、アリール基又は複素環基を表す。Mは水素原子又はカチオン基を表す。x、y及びzはそれぞれエチレン性不飽和化合物のモル比を表し、z/(x+y)<0.3である。
【0040】
以下に本発明で特に好ましく用いられるマット剤粒子の組成の具体例を示す。
【0041】
【化2】
Figure 0003721782
【0042】
本発明で言う分散度とは、マット剤のコールターカウンターによる粒度分布測定により得られる球相当粒子直径から、(ΣNV2/ΣNV)(但し、ここでVは個々の粒子の直径を表し、Nは粒径がVである個数を表す)を基準に算出された標準偏差及び平均粒径から、標準偏差/平均粒径の比で表される値を示す。
【0043】
本発明においては、マット剤の分散度は2以下であり、好ましくは1.0以下であり、特に0.8以下が好ましい。
【0044】
本発明に用いられるマット剤の平均粒径はマット剤を添加する最上層の乾燥膜厚より2μm以上大きいものが好ましく、特に5μm以上大きいものが好ましい。最上層の乾燥膜厚は一般的に1〜20μmであり、マット剤としてはこの乾燥膜厚より2μm以上、好ましくは5μm以上大きな平均粒径を有するものが好ましい。
【0045】
マット剤の平均粒径の上限は、表面の触感や擦り傷の発生しやすさ等により決められるが、概ね最上層の乾燥膜厚より30μm大きいサイズ以下であり、特に20μm大きいサイズ以下が好ましい。
【0046】
マット剤の使用量は、インクジェット記録用紙1mm2当たり10〜300個が光沢をあまり低下させることなく、表面の滑り性を改善することが出来る。
【0047】
上記マット剤を添加する最上層の乾燥膜厚は1〜20μm、好ましくは3〜15μmの範囲である。
【0048】
本発明のインクジェット記録用紙は、空隙層を少なくとも2層以上有するものであり、最上層にマット剤が添加される。
【0049】
空隙層を1層のみにしてマット剤をこの層に添加する場合には、充分な表面の滑り性の改良効果を得るためにより大きなマット剤を使用する必要があるが、この場合、固い皮膜から成る空隙層にひび割れを生じやすくなったり、或いは表面から飛び出す粒子の高さが大きすぎて表面の触感を著しく損ねたり或いは傷つきやすくなったりしやすい。
【0050】
最上層の乾燥膜厚はこの観点から、概ね空隙層全体の1/2以下が好ましく、特に1/3以下が最も好ましい。
【0051】
空隙層の全乾燥膜厚は概ね10〜60μm、好ましくは15〜50μmである。
【0052】
本発明のインクジェット記録用紙はマット剤による光沢の低下を最小限にして高い光沢度を得る記録用紙であり、表面光沢度(JISZ8741に規定される75度鏡面光沢度)が40%以上になるようにすることが好ましく、特に好ましい光沢度は50%以上である。
【0053】
記録用紙の表面の光沢度は、上記のごとく最上層のマット剤に依存するが、それ以外にも、支持体の光沢度や、最上層やその下層の空隙層を構成する無機微粒子などにも影響を受ける。
【0054】
支持体の光沢度は概ね20%以上の光沢度を有するものが好ましく、また、無機微粒子としては100nm以下の平均粒径を有するものが高い光沢度を得る観点から好ましい。
【0055】
また、光沢を向上させるために、最上層に平均粒径が0.2μm以下の油滴を添加することも好ましい。そのような油滴として、特にシリコンオイルの分散物が好ましい。
【0056】
本発明のインクジェット記録用紙の空隙層には上記以外の各種の添加剤を添加することが出来る。
【0057】
中でもカチオン媒染剤は印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。
【0058】
カチオン媒染剤としては第1級〜第3級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。
【0059】
好ましいポリマー媒染剤は上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体又は縮重合体として得られる。
【0060】
上記以外に、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又は非イオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0061】
本発明のインクジェット記録用紙に用いられる支持体は、公知のいかなるものも使用することが出来るが、好ましい支持体は、支持体が非吸水性支持体である。
【0062】
その様な非吸水性支持体としては、例えば、ポリエステル系フィルム、ジアセテート系フィルム、トリアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルム、セロハン、セルロイド等の材料からなる透明フィルム、或いは基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに酸化チタンや硫酸バリウムなどの白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペット等の半透明もしくは不透明支持体が用いられる。
【0063】
上記支持体に本発明の塗布組成物を塗布するに当たっては、表面と塗布層との間の接着強度を大きくする等の目的で、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明の記録用紙は必ずしも無色である必要はなく着色された支持体であってもよい。
【0064】
本発明で特に好ましく用いられる支持体は透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム及び原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体である。
【0065】
特に好ましいのはポリエチレンでラミネートした紙支持体であり、以下に説明する。
【0066】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPの何れも用いることが出来るが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び又はLDPの比率は10重量%以上、70重量%以下が好ましい。
【0067】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0068】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することが出来る。
【0069】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500ccが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分重量%と42メッシュ算分の重量%との和が30乃至70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の重量%は20重量%以下であることが好ましい。
【0070】
原紙の坪量は30乃至250gが好ましく、特に50乃至200gが好ましい。原紙の厚さは40乃至250μmが好ましい。
【0071】
原紙は抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることも出来る。原紙密度は0.7乃至1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20乃至200gが好ましい。
【0072】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0073】
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することが出来る。
【0074】
特に塗布層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチル又はアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して概ね3〜20重量%、好ましくは4〜13重量%である。
【0075】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成した物も本発明で使用できる。
【0076】
原紙の表裏のポリエチレンの使用量は水系塗布組成物の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、本発明の水系塗布組成物を塗布する側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0077】
更に上記ポリエチレン被覆紙支持体は以下の特性を有していることが好ましい。
【0078】
▲1▼引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2乃至30kg、横方向が1乃至20kgであることが好ましい
▲2▼引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で縦方向が10乃至200g、横方向が20乃至200gが好ましい
▲3▼圧縮弾性率≧103kgf/cm2
▲4▼表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で20秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い
▲5▼不透明度:直線光入射/拡散光透過条件の測定条件で可視域の光線での透過率が20%以下、特に15%以下が好ましい。
【0079】
本発明の記録用紙において、複数の空隙層を支持体上に塗布するに当たっては、公知の方法から適宜選択して行うことが出来るが、全ての空隙層を同時に塗布することが好ましい。
【0080】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法或いは米国特許第2,681,294号公報記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0081】
本発明のインクジェット記録用紙の空隙層を有する側と反対側にはカール防止や印字直後に重ね合わせた際のくっつきやインク転写を更に向上させるために種々の種類のバック層を設けることが好ましい。
【0082】
バック層の構成は支持体の種類や厚み、表側の構成や厚みによっても変わるが一般には親水性バインダーや疎水性バインダーが用いられる。バック層の厚みは通常は0.1〜10μmの範囲である。
【0083】
また、バック層には他の記録用紙とのくっつき防止、筆記性改良、更にはインクジェット記録装置内での搬送性改良のために表面を粗面化できる。この目的で好ましく用いられるのは粒径が2〜20μmの有機又は無機の微粒子である。
【0084】
これらのバック層は予め設けていても良く、本発明の塗布組成物を塗布した後で設けてもよい。
【0085】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。なお、実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾重量%を示す。
【0086】
実施例1
シリカ分散液B1の調製
予め均一に分散されている1次粒子の平均粒径が約0.007μmの気相法シリカ(日本アエロジル株式会社製:A300)の18%水溶液A1(pH=2.6、エタノール1重量%含有)450lを、カチオン性ポリマーP−1を16重量%、n−プロパノール5重量%、及びエタノールを2重量%含有する水溶液C1(pH=2.7、サンノブコ株式会社製消泡剤SN381を2g含有)110lに、室温で撹拌しながら添加した。
【0087】
次に、ホウ酸とほう砂の1:1重量比の混合水溶液D液(各々3重量%の濃度)42lを撹拌しながら徐々に添加した。
【0088】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで500kg/cm2の圧力で分散し全量を純水で630lに仕上げて、ほぼ透明な分散液を得た。
【0089】
この分散液は30μmの濾過精度を持つ、アドバンテック東洋株式会社製のTCP−30タイプのフィルターを用いて濾過を行った。以上でシリカ分散液B1を調製した。
【0090】
【化3】
Figure 0003721782
【0091】
上記シリカ分散液B1を使用して、4層構成からなるインクジェット記録用紙を塗布するために以下の4種類の塗布液を調製した。(値は何れも塗布液1l当たりの量で示し、添加順は記載の順番で混合した。)
Figure 0003721782
Figure 0003721782
蛍光増白剤分散液の調製
3%酸処理ゼラチン水溶液100L中(サポニンを4kg、カチオン性ポリマーP−1を2kg含有)中に、チバガイギー株式会社製の油溶性蛍光増白剤(UVITEX−OB)600gとジイソデシルフタレート12kgを酢酸エチル25Lに加熱溶解した液を添加し、高圧ホモジナイザーで乳化分散して全量を純水で140Lに仕上げて蛍光増白剤分散液を調製した。
【0092】
上記塗布液をポリエチレンで両面を被覆した紙支持体(厚み240μm、塗布面の75度光沢度が30%)上に、下記の湿潤膜厚で4層同時塗布しインクジェット記録用紙1を得た。
【0093】
第1層:55μm
第2層:55μm
第3層:55μm
第4層:35μm
塗布は40℃の塗布液を同時塗布した後、0℃の冷却ゾーンを20秒間通過させた後に、30〜50℃の風を吹き付けて4分間かけて乾燥した。
【0094】
得られた記録用紙の切片を顕微鏡で観察した所、乾燥膜厚は、第1層〜第3層まで合計32μmあり、第4層(最上層)は約7μmであった。
【0095】
次に、インクジェット記録用紙1において、第4層に例示マット剤M−1の組成を有するマット剤を添加した塗布液を調製し、インクジェット記録用紙1と同様に塗布して4層構成から成るインクジェット記録用紙2〜12を作製した。
【0096】
得られた各記録用紙について以下の評価を行った。
【0097】
▲1▼光沢度:
記録面側の光沢度を日本電色工業株式会社製(VGS−1001DP)を用いて75度光沢度を測定した。
【0098】
▲2▼摩擦係数:
各記録用紙の表裏との間の動摩擦係数を測定した。
【0099】
▲3▼ひび割れ:
塗布後の膜面のひび割れ数を調べ、0.5m2当たりの量で示した。
【0100】
▲4▼給紙性:
エプソン株式会社製インクジェットプリンター、PM−750Cを用い、23℃、80%で各20枚重ねて連続給紙し、これを10回繰り返した。給紙しなかったり、多重給紙を行った回数を調べその回数で給紙性を評価した。
【0101】
▲5▼擦り傷故障:
ヒューレットパッカード株式会社製のインクジェットプリンター(フォトスマート)でA4サイズの記録用紙に印字し、表面についた搬送時の擦り傷を調べた。擦り傷の程度は以下の基準で評価した。
【0102】
◎:擦り傷がまったくない
○:1〜2本の弱い擦り傷が認められる
△:全面に弱い筋があるがプリント品質はあまり劣化しない
×:全面に強い擦り傷があり、プリント品質を大きく劣化
以上の結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
Figure 0003721782
【0104】
表1から明らかなように、保護層に本発明のマット剤を添加した本発明の記録用紙2〜5、7、10、11は何れも比較試料1に対して高い光沢性を維持したままで、給紙性及び擦り傷耐性が改良されることがわかる。
【0105】
これに対して分散度が2以上であるマット剤を使用した記録用紙6は給紙性やスリ傷耐性は改良されるが光沢の低下が大きく、光沢紙とは言い難い品質である。
【0106】
本発明に関わる記録用紙の中でも、特に分散度が1以下の記録用紙の光沢度が良好である。
【0107】
また、マット剤の平均粒径が最上層の乾燥膜厚(7μm)より2μm以上大きなマット剤を使用した記録用紙2〜4、7,10,11、12の光沢がより優れていることが判る。
【0108】
一方、マット剤の粒径が最上層の乾燥膜厚より30μmを越えた記録用紙においては塗膜面のひび割れが多く、また、プリント時のスリ傷も増加しており、あまりマット剤の粒径は増加させないことが好ましい。
【0109】
比較例1
実施例1で作製した記録用紙1、2、10、11、12の各々の第4層用塗布液を200μmの湿潤膜厚で単層塗布した記録用紙(R1、R2、R10、R11、R12)を作製した。
【0110】
得られた記録用紙を実施例1と同様に評価し、表2に示す結果を得た。
【0111】
【表2】
Figure 0003721782
【0112】
表2から明らかなように、空隙層を単層構成にし、マット剤をこの層に添加した場合には、表面の滑り性の改善効果は本発明に比較して小さく、その割に光沢度の低下が大きい。
【0113】
また、塗膜面のひび割れが極端に増大しているが、これは固い空隙層に粗大粒子が混入した状態で、湿潤状態から乾燥過程で皮膜収縮する際に粗大粒子を核としてひび割れが生じるためであるが、支持体に近い側に粗大粒子が存在するほどひび割れは急激に生じやすくなるためである。
【0114】
実施例2
実施例1で作製した記録用紙2において、マット剤の添加量を表3に示すように変化させた記録用紙21〜25を実施例1と同様にして作製した。
【0115】
尚、マット剤の粒子個数は、濃度が既知のマット剤分散液水溶液を、パーティクルカウンター(野崎産業株式会社製、ハイアック/ロイコインテリジェント パーティクルカウンター 8000A)を用いて測定し、粒径が2μm以上のものについてその絶対数を求めて測定した。
【0116】
【表3】
Figure 0003721782
【0117】
表3の結果から明らかなように、マット剤の個数を記録用紙1m2当たり10〜300個の範囲にした場合に特に光沢の低下が少なく、給紙性が改善されることが判る。
【0118】
実施例3
実施例1で作製した記録用紙2において、湿潤膜厚を表4に示すように変化させた記録用紙を実施例1と同様にして作製した。
【0119】
実施例1と同様にして表4に示す結果を得た。
【0120】
【表4】
Figure 0003721782
【0121】
表4の結果から明らかなように、最上層の乾燥膜厚を増大していくと、光沢度が徐々に低下し、摩擦係数も低下する。特に好ましいマット剤を添加する最上層の乾燥膜厚は全空隙層の乾燥膜厚に対して1/3以下である。
【0122】
以上、本発明によれば、光沢をあまり低下させることなく、表面の滑り性を改善して給紙性や記録装置内での搬送性を改良することが出来る。
【0123】
【発明の効果】
本発明により、無機微粒子及び親水性バインダーからなる空隙層を有するインクジェット記録用紙において、その光沢度をあまり低下させることなく、表面の滑り性を改善して給紙性や記録装置内部に於ける搬送性を改善したインクジェット記録用紙を提供することができた。

Claims (1)

  1. 支持体上に、無機微粒子及び親水性バインダーを含有する複数の空隙層を有し、前記空隙層のうち支持体から最も遠い側に位置する乾燥膜厚が3〜15μmの最上層に平均粒径が前記最上層の乾燥膜厚よりも2μm〜30μm大きくかつ分散度が2以下の単分散のマット剤を10〜300個/mm 2 含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
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