JP3736891B2 - インクジェット記録用シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録用シートに関し、特に光沢性、発色性、インク吸収性、高湿保存性、耐水性に優れるインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、ノズルから高速で射出したインク液滴を、被記録材に付着させて記録する方式であり、フルカラー化が容易なことや印字騒音が低い等の特徴を有する。この方式では、使用されるインクがアニオン性であるため、通常印字後の耐湿・耐水性を得るために被記録材(のインク受容層内)にカチオン性物質が添加されている。しかし、カチオン性物質によって印字後の発色性が大きく異なるため、カチオン性物質の選択や配合量はインクジェット用被記録材の設計上、非常に重要なポイントとなっている。
【0003】
インクジェット記録用シートとしては、一般塗工紙タイプが多く市販されている。これらの塗工紙のインク受容層は、特開平1−225585号公報、特開平2−188287号公報、特開平6−183134号公報、特開平7−032725号公報、特開平7−149037号公報などに開示されているように多孔性顔料(一般に2次粒子であり、たとえば合成シリカ、アルミナ、炭酸カルシウムなど)或いは超微粒子の粉体とカチオン性樹脂が含有されている。インクジェットプリンターの急速な普及及び解像度がよくなるにつれ、印刷分野では、各種出版物や包装用途で、発色性がよく、かつ高光沢のある写真並の印刷物が求められている。しかし、一般塗工紙タイプに使用される微細顔料(超微粒子も含めて)は2次粒子であり、またカチオン性樹脂を入れることによって凝集がさらに進む。このため透明性や平滑性のある塗膜を得ることが不可能であり、光沢性のあるインクジェット記録用シートを得ることはできなかった。
【0004】
溶解または膨潤することによりインクを吸収する樹脂を塗被したインクジェット用記録シートが多く市販されているが、このような記録シートは、ある程度の光沢は得られるが、インクを吸収させるために親水性の樹脂が使用されているため、樹脂がベタツキやすく、インクの乾燥速度も遅くかつ耐湿・耐水性も良くなかった。
【0005】
また平滑性、光沢性を得るため、インク受容層を2層以上設け、上層を光沢発現層とすることが提案されている(特開平7−101142号、特開平7−117335号等)。これらの光沢発現層の主成分としてコロイダルシリカあるいはコロイダルシリカの複合体が利用される。しかし、これらの光沢発現層はキャスト処理(光沢発現層が湿潤状態で、加熱された鏡面ロールに圧着して鏡面光沢仕上げされてなる)によって得られるものであり、インク吸収性よりも光沢のために設けられているものである。インク通過速度を大きくするためには、キャスト層の塗被量を少なくする必要があり、白紙時の光沢はあるものの、印字後にインクが光沢発現層の上を覆うためか、優れた印字光沢が得られない問題があった。特に写真調の照りのある光沢は得られなかった。また、光沢発現層に使用するコロイド粒子はアニオン性のものが殆どであり、アニオン性のコロイド粒子自身はインク定着性が全くなかった。
【0006】
特開平7−89220号公報などに示すようにアニオン性のコロイド粒子を上層として設け、インクを大きな2次粒子(たとえばシリカ粉末、アルミナ粉末)とカチオン性樹脂を有するインク定着層(下層)に止める方法が利用されている。しかし、インク定着層の粒径が大きく、平滑性が悪いだけでなく、インク定着層自身が全く透明ではないため、高光沢を得ることはできなかった。
【0007】
特開平7−101142号公報、特開平7−117335号公報にカチオン変性コロイダルシリカを利用することが開示されている。カチオン変性コロイダルシリカはアルミニウムイオンなどの多価金属イオンの化合物を反応させて得たもので、金属イオンとの発色性が良いインク(ダイレクトブルー199、フードブラック72等)はいいが、金属イオンとの発色性が悪いインク(例えば:アシッドレッド52(食用赤色106号)等の赤色)には適さない。また高湿下で保存すると、インクが滲むだけでなく、色もかなり褪せる問題があった。
【0008】
また擬ベーマイト、アルミナゾルなどのコロイド粒子を使用する例もみられるが(特開平2−139275号公報、特開平4−263983号公報、特開平5−32413号公報、特開平5−32414号公報、特開平6−297831号公報、特開平6−199035号公報)、これもカチオン変性コロイダルシリカと同様にアルミナイオンとの発色性の悪いインクには適さず、高湿保存性も良くなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
カチオン性コロイド粒子をインク受容層に含有させる場合、カチオン性コロイド粒子の種類が余りにも少なく、またアニオン性であるコロイド粒子をカチオン化することが難しい。カチオン化が可能であっても、カチオン化できるカチオン基(アルミニウムイオンなど)も少ないため、一般にインクはカチオン剤によって発色が変化し、カチオン性のコロイド粒子はそのカチオン性によってインクの発色が決まり、市販している各種インクに対応することが不可能であった。また、これらのカチオン性コロイド粒子単独では高湿保存性が十分に得られない問題があった。
【0010】
本発明はこれらの問題を解決するもので、より発色性、高湿保存性が良好で、高光沢、高濃度の記録が得られるインクジェット記録用シートを提供することを目的としている。
本発明は光沢重視、耐水性重視、保存性重視、価格重視などの各種要望に対応でき、また発色性と高湿保存性に優れた記録用シートを提供する。また耐水性、インク定着性、印字適性が良好な高光沢インクジェット記録用シートを提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は特定の粒径を有するコロイド粒子とカチオン性樹脂含有層を設けたインクジェット記録用シートである。カチオン性樹脂の種類は多く、各種インクに対して特定のカチオン性樹脂を選択してインク受容層に添加することができ、これによって発色性問題を解決することが可能で、種類と添加量によって高湿保存性も解決できる。
【0012】
一般にアニオン性を有するコロイド粒子中にカチオン性樹脂を配合するとコロイド状態が崩れ、コロイド粒子が凝集する。凝集した液を塗布すると、一般塗工紙としては利用可能であるが、粒子が凝集したため、平滑性と透明性が損なわれ、光沢感を有するインクジェット記録用シートを得ることが不可能であった。
【0013】
本発明の好ましい態様ではコロイド粒子はアニオン性である。
上記のようにアニオン性コロイド粒子とカチオン性樹脂をブレンドすると凝集が起こり、透明性や光沢性のある塗膜が得られないが、本発明の好ましい態様ではアニオン性のコロイド粒子表面に水溶性樹脂を吸着させ、後にカチオン性樹脂を添加すると、コロイド粒子がほとんど凝集することがなく、均一な分散液が得られ、それを塗布することによって、高光沢、耐水性、発色性、高湿保存性ともより優れたインクジェットシートが得られる。
【0014】
アニオン性のコロイド粒子の種類は多く、適宜選択することによって各種要望(光沢重視、耐水性重視、保存性重視、価格重視など)に対応することが可能となる。発色性と高湿保存性はカチオン性樹脂の選択によって改良することができる。
【0015】
さらに、コロイド粒子としてアニオン性コロイダルシリカを使用すると高光沢性と高インク吸収性を兼ね備えたインク受容層が得られる。
【0016】
コロイド粒子とカチオン性樹脂を含有する層の塗被量が全インク受容層の50%〜100%にすると印字部の透明感が得られ、写真並の光沢を得ることが可能である。
さらに、本発明のインク受容層を成型面に塗被成膜した後、中間層を介して支持体上に転写すると、光沢が著しく向上し、より高平滑、高光沢、発色性が良好なインクジェット記録用シートが得られる。
【0017】
本発明のインクジェット記録用シートは、支持体と、その少なくとも1面上に形成されたインク受容層とを有し、前記インク受容層が1層以上のインク受容単位層からなり、その少なくとも1層が、300nm以下の平均粒径を有するアニオン性コロイド粒子と、水溶性高分子接着剤とを混合した後、これにカチオン性樹脂を添加して調製された塗被液を塗被して形成されたものであり、且つ、当該インク受容単位層中のアニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂の固形分重量比が、100:2〜25:1〜10であることを特徴とするものである。
本発明のインクジェット記録用シートにおいて、アニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂を含有する前記インク受容単位層が、前記1層以上の全インク受容層の全重量の50〜100%を占めることが好ましい。
本発明のインクジェット記録用シートにおいて、前記1層以上のインク受容単位層のうち、アニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂を含有するインク受容単位層が、前記記録用シートの最上層を形成していることが好ましい。
本発明のインクジェット記録用シートにおいて、前記アニオン性コロイド粒子がコロイダルシリカ粒子であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録用シートの製造方法は、支持体の少なくとも1面上に1層以上のインク受容単位層からなるインク受容層を形成する際に、前記1層以上のインク受容単位層の少なくとも1層を、300nm以下の平均粒径を有するアニオン性コロイド粒子と、水溶性高分子接着剤とを混合した後、これにカチオン性樹脂を添加して形成され、且つ、前記アニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂の固形分重量比が、100:2〜25:1〜10である塗被液を塗被して形成することを特徴とするものである。
本発明のインクジェット記録用シートの製造方法において、アニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂を含有するインク受容単位層が、前記インク受容層の全重量の50〜100%を占めることが好ましい。
本発明のインクジェット記録用シートの製造方法において、前記1層以上のインク受容単位層のうち、アニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂を含有するインク受容単位層をもって最上層を形成させることが好ましい。
本発明のインクジェット記録用シートの製造方法において、前記アニオン性コロイド粒子がコロイダルシリカであることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明は紙、フィルム等のシート状支持体にインク受容層を設け、該インク受容層が1層以上の層構成を有し、少なくとも300nm以下の平均粒径を有するコロイド粒子とカチオン性樹脂を同一層中に含有することが特徴である。
特に、コロイド粒子はアニオン性コロイド粒子が好ましい。コロイド粒子がアニオン性の場合、顔料の選択幅が広く、発色性、高湿保存性、インク吸収性、光沢性とも良好なインクジェット記録用シートが得られる。
本発明のインクジェット記録用シートは高光沢を有し、且つ優れた発色性、高湿保存性、インクジェット記録(印字)適性、高印字濃度、耐水性を兼ね備えたものである。
【0026】
支持体としては、例えば、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルム類、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、箔紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、含浸紙、蒸着紙、水溶性紙等の紙類、金属フォイル、合成紙などのシート類が適宜使用される。
【0027】
本発明のインク受容層は一層であっても多層であってもよい。まず、コロイド粒子とカチオン性樹脂を含有する層について説明する。
【0028】
コロイド粒子は平均粒径が300nm(BET平均粒径、以下特に断らない限りコロイド粒子の粒径はBET粒径を表す)以下であれば特に限定しないが、通常1〜200nmの直径である場合が多い。コロイド粒子はコロイド溶液(粒子が微細であって、長時間放置しても粒子が沈降しない溶液)を与えるものであり、粒子は限外顕微鏡や電子顕微鏡によって認められる。ただし、500nm程度までの平均粒径でもコロイドとしての性質を示すものもある。コロイド溶液の性質としてはチンダル現象が知られている。
【0029】
本発明に使用されるコイロド粒子は例えば、コロイダルシリカ、スメクタイト、ゼオライト、クレー、酸化錫、酸化亜鉛等の無機アニオン性コロイド粒子;特に、光沢性、発色性において、アニオン性コロイダルシリカが良好である。光沢感、印字濃度を得るためには平均粒径20〜200nmが特に好ましい。コロイド粒子の粒径が300nmを越えると、印字濃度が著しく低下し好ましくない。
【0030】
コロイド粒子は粒径が小さい分散体である。ミクロンオーダーの粒子をナノメーターオーダーのコロイド粒子にするには、好ましくは分散剤の存在下で、分散(超音波、サンドミル、ボールミル等)する。コロイダルシリカは分子核から成長したコロイド粒子である。
【0031】
本発明は効果を阻害しない範囲でコロイド粒子中に他の2次粒子の顔料を添加してもよい。たとえば、合成無定形シリカ、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化錫、硫酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、スメクタイト、ゼオライト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗被紙分野で公知公用の各種顔料を適宜使用される。ただし、塗工層の平滑性と透明性を保つために、他の顔料の使用量はコロイド粒子に対して20%以下に調節することが好ましい。
【0032】
カチオン性樹脂としては特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が例示できる。なお、カチオン性樹脂の添加量としてはアニオン性コロイド粒子100部に対し、1〜10重量部の範囲で調節される。カチオン性樹脂の量が多いとコロイド粒子とカチオン性樹脂の凝集が起こる場合もあり好ましくない。一方、カチオン性樹脂の量が少ないとインク定着改良効果及び、印字後の耐水性改良効果が充分得られない場合もある。
【0033】
水溶性接着剤(バインダー)としては、たとえばポリビニルアルコールあるいはその変性物、カゼイン、大豆蛋白、合成タンパク質類、でんぷん、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、が用いられ、必要により、これにスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等の一般塗被紙に用いられている従来公知の接着剤(バインダー)が適宜添加して使用される。
【0034】
一方、コロイド粒子がアニオン性であるから、カチオン樹脂を添加すると塗被液が直ちに凝集する。コロイド粒子が凝集すると、塗膜にザラツキ感があり、透明性は勿論のこと、平滑性も大きくて低下する恐れがある。本発明においては、アニオン性コロイド溶液中に水溶性高分子接着剤(ポリビニルアルコールあるいはその変性物、カゼイン、大豆蛋白、合成タンパク質類、でんぷん、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体等)を混合し、アニオン性コロイド粒子の表面に吸着させた後、カチオン性樹脂を添加する。これによりコロイド粒子が凝集することなく均一分散体が得られる。水溶性樹脂は凝集を防ぐ効果があるだけでなく、バインダー効果も期待できる。本発明では特にポリビニルアルコールとその変性物(以下PVAと称す)が有効である。
【0035】
コロイド粒子と接着剤の固形分重量比は特に限定しないが4/1〜50/1(100:25〜2)が好ましく、より好ましくは20/3〜40/1(100:15〜2.5)の範囲に調節される。接着剤の添加量が多いと、コロイド粒子間の空隙が塞がれ、インク吸収速度が低下する恐れがある。一方、接着剤の添加量が少なすぎると、インク受容層の全面に大きなひび割れが生じ、インク受容層の透明感を著しく損なう場合もある。
【0036】
その他、一般塗被紙製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。
【0037】
コロイド粒子とカチオン性樹脂を含有する層の乾燥塗被量は特に限定するものではないが1〜80g/m2 、好ましくは5〜50g/m2 に調節する。塗工量が少ないと塗膜にひび割れが生じやすく、逆に多くても効果が飽和し、無意味である。例えば15g/m2 以上の高塗被量を得るためには、塗被液の増粘、高濃度化以外に、2回以上の塗被により実現することができる。
【0038】
以上アニオン性コロイド粒子と水溶性高分子接着剤とカチオン性樹脂とを含有する層について説明したが、インク受容層はコロイド粒子と水溶性高分子接着剤とカチオン性樹脂とを含有する層(多層でもよい)のみにより構成されてもよいが、一般に、コロイド粒子自身は細孔がないか非常に小さいため、得られたインク受容層の粒子間空隙がきわめて小さいものである。高濃度部分のインクもアニオン性コロイド粒子と水溶性高分子接着剤とカチオン性樹脂とを含有する層に完全に吸収させるためにはインク受容層の塗被量を多くする必要がある。しかしコロイド粒子含有層の塗被量が少なくても、他のインク受容層を設けて本発明の目的とする高インク吸収速度、高印字濃度、発色性、高光沢、印字適性、耐水性とも良好なインクジェット記録用シートを得ることができる。ただし印字後の光沢、照り感を保つためには、インク受容層全体に対して、アニオン性コロイド粒子と水溶性高分子接着剤とカチオン性樹脂を含有する層の乾燥塗被量が50〜100重量%の範囲に調節されるのが好ましい。コロイド粒子と水溶性高分子接着剤とカチオン性樹脂とを含有する層の塗工量が少ないと、一定の光沢は得られるが、写真並の光沢、照り感が得られにくい。ただし、他のインク受容層を設ける場合、光沢性を得るためには、コロイド粒子とカチオン性樹脂を含有する層を最上層にすることが望ましい。
【0039】
次に、他のインク受容層について具体的に説明する。
他のインク受容層に使用される顔料としては前記した合成無定型シリカ、クレー、アルミナ、スメクタイトなどの一般塗被紙分野で公知公用の各種顔料が適宜使用される。印字濃度などの観点から、シリカとアルミナが好ましく使用される。接着剤(バインダー)としては、前記したPVA、カゼイン、でんぷんなどのバインダーが使用できる。接着剤の添加量は特に限定しないが顔料100重量部に対し、5〜150重量部、好ましくは10〜50重量部の範囲で調節される。また、アミン系などのカチオン性樹脂を添加することができ、インク定着性を一層改良することができる。
なお、カチオン性樹脂の添加量としては顔料100重量部に対し、1〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部の範囲で調節される。その他、一般塗被紙製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤も適宜添加される。
【0040】
他のインク受容層の塗被量は特に限定するものではないが、3〜30g/m2 に調整されるのが望ましい。
【0041】
何れのインク受容層を設ける場合も、塗被コーターとしてはブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター、スリットダイコーター等の各種公知の塗被装置が挙げられる。
【0042】
インク受容層(コロイド粒子含有層及びそれ以外のインク受容層を含む)は支持体上に塗被装置により形成することが出来る。また、成型面にインク受容層を形成し、支持体(またはインク受容層)に接着性若しくは粘着性の中間層を設け、中間層とインク受容層(または支持体)を接着させ、成型面のみを剥離することによりインク受容層を設けることが出来る。このように成型面を利用してインク受容層を形成すると、より優れた光沢性が得られる。
次に、インク受容層を成型面に塗被成膜し、支持体に接着性若しくは粘着性の中間層を設け、インク受容層と中間層が対面するように貼り合わせ、成型面を剥離する場合について説明するが、中間層をインク受容層に設ける場合も、これに準じて行える。
【0043】
接着方法としては、ラミネート法(ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ホットメルトラミネート法、エクストルージョンラミネート法などのラミネート法が挙げられる)が例示できる。
ウェットラミネート、ドライラミネート、ホットメルトラミネート法では、支持体に接着性樹脂(熱可塑性樹脂)や接着剤を塗被して中間層を設け、中間層とインク受容層が対面するように貼合せて圧着した後、成型面を剥し、所望のインクジェット記録用シートを得る。エクストルージョンラミネート法では溶融押出機中に280〜320℃で加熱溶融されたポリエチレン(他の樹脂を利用する場合も同様の方法を用いる)が支持体の表面に流され、インク受容層を有する成型体と貼合せ、クーリングロールにより冷却圧着した後、成型体を剥し、所望のインクジェット記録用シートが得られる。
【0044】
中間層として感圧接着剤(粘着剤)を利用する場合は、バーコーター、ロールコーター、リップコーター等の各種の塗被方法を利用し、支持体に塗被乾燥した後、インク受容層と貼合せてから成型面を剥し、所望のインクジェット用記録シートを得ることができる。
【0045】
中間層の塗被量はインク受容層と支持体が接着できれば特に限定するものではないが、熱可塑性樹脂、接着剤、感圧接着剤の何れを使用する場合でも2〜50g/m2 となるように調節される。塗被量が少ないと、十分な接着力が得られにくく、一方、多くても効果が飽和し、無意味である。
【0046】
中間層に使用される高分子樹脂としては熱可塑性樹脂(例えば:エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂及びその誘導体、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリスチレン及びその共重合体、ポリイソブチレン、炭化水素樹脂、ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の各種公知公用の熱可塑性樹脂が挙げられる)、接着剤(尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリビニールアセタール/フェノール樹脂、ゴム/フェノール樹脂、エポキシ/ナイロン樹脂等の複合ポリマー型接着剤、ラテックス型ゴム基等のゴム基接着剤、でんぷん、膠、カゼイン等の親水性天然高分子接着剤等の各種公知公用の接着剤が挙げられる)、感圧接着剤(溶剤型感圧接着剤、エマルション型感圧接着剤、ホットメルト型感圧接着剤、ディレードタイプ感圧接着剤等の各種公知公用の感圧接着剤が挙げられる)が適宜使用される。
【0047】
成型面に使用される材料としては、高表面平滑性を有するセロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルム類、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、含浸紙、蒸着紙等の紙類、金属フォイル、合成紙等のシート類及び無機ガラス、金属、プラスチック等の高平滑表面を有する板類等が適宜使用される。特に、塗被適性及び成型面とインク受容層の剥離適性等の観点から、高分子フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等)、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、無機ガラスが好ましい。
【0048】
成型面は平滑である方が光沢性の点で好ましく、成型面の表面粗さ(JIS B 0601)は、Raが0.5μm以下が好ましく、より好ましくはRaが0.05μm以下である。
【0049】
成型面は無処理のままでもよいが、成型面とインク受容層の剥離性をよくするために、成型面の塗被面にシリコーンやフッ素樹脂等の剥離性を有する樹脂を塗被して使用してもよい。印字適性をよくするために、成型面にコロナ放電やプラズマ処理による表面親水化を行うことも有効である。
【0050】
中間層を介して支持体に転写するときのインク受容層の塗被工程は一般塗被工程と逆である。つまり、成型面にインク受容層の最上層を先に塗被し、その上に第2層を塗被し、さらに他のインク受容層を塗被する。支持体に転写することによって得られたインクジェット記録用シートのインク受容層は最上層、第2層、他のインク受容層の順になる。
【0051】
中間層を介して支持体に転写するときのインク受容層の水分含有量は20%以下が好ましい。より好ましくは10%以下に調節する。理由は定かではないが、水分を多く含有すると、成型面とインク受容層の間の接着力が強く、その接着力はインク受容層間の層間強度よりも高くなり、成型面を剥がすとき、インク受容層の層間が剥離され、成型面にインク受容層が残り、所望のインクジェット記録用シートが得られない場合がある。
【0052】
本発明のインクジェット記録方法で使用されるインクとしては、像を形成するための色素と該色素を溶解または分散するための液媒体を必須成分とし、必要に応じて各種分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、比抵抗調整剤、pH調整剤、防かび剤、記録剤の溶解または分散安定化剤等を添加して調整される。
【0053】
インクに使用される記録剤としては直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素、分散染料、油性染料及び各種顔料等があげられるが、従来公知のものは特に制限なく使用することができる。このような色素の含有量は、液媒体成分の種類、インクに要求される特性などに依存して決定されるが、本発明におけるインクの場合も、従来のインク中におけるような配合、即ち、0.1〜20重量%程度の割合になるような使用で特に問題はない。
【0054】
本発明で用いられるインクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、、ポロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個のアルキレングリコール類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(エチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類などが挙げられる。
【0055】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、水を除いた固形分であり、それぞれ重量部及び重量%を示す。本発明で得られたインクジェット記録用シートはすべてスーパーカレンダー(線圧:50Kg/cm)によって処理した後、評価に用いた。
【0056】
実施例1
平均粒子径65nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス YL)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117、重合度:1700、ケン化度:98.5%)10部を混合した15%水溶液中に、カチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日華化学社製、商品名:ネオフィックスE−117)3部を添加し、分散した後、メイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるように市販塗工紙(新王子株式会社製、商品名:OKコート、127.9g/m2 )をラミネート(エクストルージュンラミネート法により塗工紙表面に15μのポリエチレンをラミネートしたもの、以下ラミネート塗工紙と称す)したもののラミネート面に塗被乾燥し、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
【0057】
実施例2
平均粒子径85nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス ZL)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)12部を混合した15%水溶液中に、カチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日本染化工業社製、商品名:PAP−1)3部を添加し、分散した後、実施例1と同様にメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
【0058】
実施例3
平均粒子径45nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス 20L)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)8部を混合した15%水溶液中に、カチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日本染化工業社製、商品名:PAP−1)3部を添加し、分散した後、メイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
【0059】
実施例4
平均粒子径15nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス 30)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)18部を混合した15%水溶液中に、カチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日本染化工業社製、商品名:PAP−1)3部を添加し、分散した後、メイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
【0060】
実施例5
平均粒子径150nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス MP−2040)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)15部を混合した15%水溶液中に、カチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日本染化工業社製、商品名:PAP−1)3部を添加し、分散した後、メイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
【0061】
実施例6
平均粒子径45nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス 20L)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)10部を混合した15%水溶液にカチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日華化学社製、商品名:ネオフィックスE−117)3部を添加し、分散した後、メイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるように成型面として利用するPET剥離性フィルム(サンエー化学工業社製、商品名:RFM−50、Raは0.05μm以下)に塗被乾燥した。
次に、ラミネート塗工紙の表面にアクリル酸エステル接着剤(日本カーバイド工業社製、商品名:A−02)を塗被量が10g/m2 となるように塗被乾燥した。続いて、上記インク受容層が接着剤と対面するように貼合せて、線圧50kg/cmのカレンダーにて圧着した。続いてPETフィルムを剥し、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
【0062】
実施例7
平均粒子径45nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス 20L)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)8部を混合した15%水溶液に、カチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日華化学社製、商品名:ネオフィックスE−117)3部を添加し、分散した後、メイヤーバーで塗被量が5g/m2 となるように成型面として利用するPETフィルム(東レ社製、75μ、商品名:ルミラーT、表面粗さRa=0.02μm)に塗被乾燥した。
次に、平均粒子径85nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス ZL)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)10部を混合した15%水溶液にカチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日華化学社製、商品名:ネオフィックスE−117)5部を添加し、分散した後、上記塗工層にメイヤーバーで塗被量が15g/m2 となるように塗被乾燥した。
次に、塗工層表面にアクリル酸エステル接着剤(日本カーバイド工業社製、商品名:FL−3000A)を塗被量が10g/m2 となるように塗被乾燥した。続いて、接着剤とラミネート塗工紙表面と対面するように貼合せて、線圧50kg/cmのカレンダーにて圧着した。続いてPETフィルムを剥し、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
【0063】
実施例8
平均粒子径65nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス YL)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)10部を混合した15%水溶液にカチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日華化学社製、商品名:ネオフィックスE−117)5部を添加し、分散した後、メイヤーバーで塗被量が15g/m2 となるように成型面として利用するPETフィルム(東レ社製、75μ、商品名:ルミラーT、表面粗さRa=0.02μm)に塗被乾燥した。
次に、上記塗被層上に粒子径4.5μの合成シリカ(株式会社トクヤマ社製商品名:ファインシールX−45)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)40部、カチオン樹脂20部(住友化学社製、商品名:スミレズレジン1001)を混合した15%水溶液をメイヤーバーで塗被量が5g/m2 となるように塗被乾燥した。
次に、前出のラミネート塗工紙表面にアクリル酸エステル接着剤(日本カーバイド工業社製、商品名:A−02)を塗被量が15g/m2 となるように塗被乾燥した。続いて、接着剤面と塗工層表面が対面するように貼合せて、線圧50kg/cmのカレンダーにて圧着した。続いてPETフィルムを剥し、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
【0064】
実施例9
実施例1のPVAをヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製、商品名:メトローズ60SH)に変更する以外は、実施例1と同様に本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
【0065】
比較例1
実施例1のアニオン性コロイダルシリカを平均粒径65nmのカチオン変性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス AK−YL)に変更する以外は、実施例1と同様に本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
【0066】
比較例2
平均粒子径65nmのカチオン変性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス AK−YL)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)10部を混合した15%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録用シートを製造した。
【0067】
比較例3
平均粒子径65nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックス YL)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)10部を混合した15%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録用シートを製造した。
【0068】
比較例4
平均粒子径400nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)15部の15%水溶液にカチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日華化学社製、商品名:ネオフィックスE−117)3部を添加し、分散した後、メイヤーバーで塗被量が20g/m2となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録用シートを製造した。
【0069】
比較例5
合成シリカ(トクヤマ社製、商品名:ファインシールX−45、平均粒径:4.5μ)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)30部の15%水溶液にカチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日華化学社製、商品名:ネオフィックスE−117)15部を添加し、分散した後、メイヤーバーで塗被量が20g/m2となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録用シートを製造した。
【0070】
比較例6
PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)の10%水溶液を用い、メイヤーバーで塗被量が15g/m2となるようにラミネート塗工紙上に塗被乾燥し、インクジェット記録用シートを製造した。
【0071】
比較例7
合成シリカ(トクヤマ社製、商品名:ファインシールX−45、平均粒径:4.5μ)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)30部の15%水溶液にカチオン性樹脂としてポリエチレンポリアミンジシアンジアミド縮合物(日華化学社製、商品名:ネオフィックスE−117)15部を添加し、分散した後、メイヤーバーで塗被量が15g/m2となるように市販上質紙(FUJI XEROX社製、商品名:L紙、米坪:64g/m2)の表面に塗被乾燥した。平均粒径が65nmのカチオン変性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス AK−YL)100部、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117)10部の15%水溶液を調整した後、ロールコーターにより、乾燥塗工量3g/m2となるように上記塗工層上にキャスト処理法(塗被液を上記塗工層表面に塗工し、2秒後に、表面温度90℃に加熱された鏡面ロールに圧着し乾燥する処理方法)で設け、インクジェット記録用シートを製造した。
【0072】
[評価方法]
実施例1〜9及び比較例1〜7で得られたインクジェット記録用シートの耐水性、高湿保存性、吸水性、発色性などは以下に示す方法で評価した。評価用インクジェットプリンターとしては市販のDesk Jet 560J(HP社製)を用いた。
【0073】
[耐水性]インクジェット記録用シート上に水滴を落とし、30分後に水滴を拭き取り、水滴に浸漬された部分を手でこすり、耐水性を4段評価した。
◎:インク受理層に全く変化がみられなかった。
○:インク受理層がわずかにとれた。
△:インク受理層が部分的にとれた。
×:インク受理層が完全にとれた。
【0074】
[高湿保存性]
印字したシートを40℃、95%の高湿室に7日間保存し、インクの滲みを評価した。
◎:全く滲みがなかった。
○:わずかに滲んだ。
△:滲みが大きかった。
×:完全に滲んだ。
【0075】
[インク吸収性]
インク吸収性の評価は、印字直後から5秒毎にプリントした印字面に上質紙を貼合せ、インクが上質紙に転写するかどうかを観察する。全く転写しなくなるまでの時間を測定する。測定された秒数を4段評価した
◎:5秒以下
○:5〜10秒
△:10〜30秒
×:30秒以上
インクが乾燥するまでの時間が10秒以下のものはインク吸収性に優れる。
【0076】
[印字濃度]
黒ベタ部の印字濃度をマクベス反射濃度計(Macbeth、RD−920)を用いて測定した。表中に示した数字は5回測定の平均値である。
【0077】
[印字部の光沢感(照り感)]
印字部の光沢感は印字部に対して20°の横角度から目視し、以下のように4段評価した。
◎:カラー写真と同レベルの照り感がある。
○:カラー写真よりは劣るが、高い照り感がある。
△:塗工紙の印刷品並。
×:一般PPC紙並。
【0078】
[発色性]
白色PET上に黒、シアン、マゼンタ、イェローのインクを滴下乾燥し、得られた色と比較する。
○:殆ど同じ色が得られた
△:多少色がずれていた
×:色が大幅にずれていた
【0079】
【表1】
【0080】
【発明の効果】
表1から明らかなように、本発明の構成により得られたインクジェット記録用シートは発色性、高湿保存性、耐水性、インク吸収性が良好で、かつインク受理後も高光沢性、高印字濃度を有するものである。
Claims (8)
- 支持体と、その少なくとも1面上に形成されたインク受容層とを有し、前記インク受容層が1層以上のインク受容単位層からなり、その少なくとも1層が、300nm以下の平均粒径を有するアニオン性コロイド粒子と、水溶性高分子接着剤とを混合した後、これにカチオン性樹脂を添加して調製された塗被液を塗被して形成されたものであり、且つ、当該インク受容単位層中のアニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂の固形分重量比が、100:2〜25:1〜10であることを特徴とするインクジェット記録用シート。
- アニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂を含有する前記インク受容単位層が、前記1層以上の全インク受容層の全重量の50〜100%を占める、請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記1層以上のインク受容単位層のうち、アニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂を含有するインク受容単位層が、前記記録用シートの最上層を形成している、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記アニオン性コロイド粒子がコロイダルシリカ粒子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用シート。
- 支持体の少なくとも1面上に1層以上のインク受容単位層からなるインク受容層を形成する際に、前記1層以上のインク受容単位層の少なくとも1層を、300nm以下の平均粒径を有するアニオン性コロイド粒子と、水溶性高分子接着剤とを混合した後、これにカチオン性樹脂を添加して形成され、且つ、前記アニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂の固形分重量比が、100:2〜25:1〜10である塗被液を塗被して形成することを特徴とする、インクジェット記録用シートの製造方法。
- アニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂を含有するインク受容単位層が、前記インク受容層の全重量の50〜100%を占める、請求項5に記載のインクジェット記録用シートの製造方法。
- 前記1層以上のインク受容単位層のうち、アニオン性コロイド粒子、水溶性高分子接着剤及びカチオン性樹脂を含有するインク受容単位層をもって最上層を形成させる、請求項5又は6に記載のインクジェット記録用シートの製造方法。
- 前記アニオン性コロイド粒子がコロイダルシリカである、請求項5〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用シートの製造方法。
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