JP3598968B2 - インクジェット記録体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録体に関し、特に、高光沢性、インク吸収性、耐水性、耐候性、高印字濃度、発色性に優れるインクジェット記録体に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、ノズルから高速で射出したインク液滴を、被記録材に付着させて記録する方式であり、フルカラー化が容易なことや印字騒音が低い等の特徴を有する。この方式では、使用されるインクは多量の溶媒を含んでいるので、高い記録濃度を得るためには、大量のインクを用いる必要がある。また、インク液滴は連続的に射出されるので、最初の液滴が吸収されないうちに次の液滴が射出され、インク液滴が融合してインクのドットが接合するという不都合が生じやすい。従って、このインクジェット記録方式で使用される記録シートとしては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が速くて印字ドットが重なった場合においてもインクの滲みがないこと等が要求される。
【0003】
一般塗工紙については、塗被層として多孔性顔料をインク受容層(1層あるいは多層)として設け、画質を決定する色彩性や鮮鋭性のコントロールを行い、色再現性や画像再現性の向上を図ってきた。たとえば、特開昭62−111782号公報、特開昭63−13776号公報、特開昭63−104878号公報に開示されたように、細孔を有する一次粒子あるいは二次粒子を顔料(一般にシリカ、アルミナなどが用いられる)として用い、バインダーを添加してインク受容層を設けたインクジェット記録用シートが挙げられる。さらに、印字品質を高める目的で、特公昭63−22977号公報に開示されたように、インク吸収速度を上げるために、インク受容層の最上層に0.2〜10μにピークがある細孔を設け、また、吸収されたインクを孔径0.05μ以下からなる空隙に取り込み、より高画質のインクジェット記録用シートを提供するものが挙げられる。
【0004】
しかし、インクジェットプリンターの急速な普及に対応して、印刷分野では、各種出版物や包装等の用途で、高光沢のある写真並の印刷物が求められている。特に、カラー記録の場合は、ドットの形状(真円状)、ドットのシャープさ、インクの吸収、定着速度、インク吸収容量等のインク受理性の点からフィルムや塗工紙タイプのニーズが高い。上記に示されたインク受容層は多孔性を持たす為に、顔料自身を大きくするか、あるいは2次粒子を大きく(ミクロンオーダー)する必要がある。顔料が大きくなるとインク受容層の表面の平滑性が得られないだけでなく、光の透過が防げられ、インク受容層が不透明になり、光沢を望むことが難しい。
【0005】
光沢を付与する目的で、溶解・膨潤によりインクを吸収する樹脂を塗被したインクジェット用記録シートが多く市販されているが、このような樹脂の溶解・膨潤によりインクを吸収させようとするものは、ある程度の光沢は得られるが、インクの乾燥速度が遅く、耐湿・耐水性も良くないのが現状である。
【0006】
平滑性、光沢性を得るため、最近、インク受容層を2層以上にし、上層を光沢発現層にすることが提案されている(たとえば:特開平3−215080号公報、特開平3−256785号公報、特開平7−89220号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−117335号公報等)。これらの光沢発現層の主成分としてコロイド粒子あるいはコロイド粒子の複合体がよく利用される。光沢発現層は透明性とインク吸収性を保つために、コロイド粒子に接着剤として高分子ラテックスを添加して成膜させている。高分子ラテックスを接着剤として利用すると塗膜に小さいひび割れが生じやすく、その小さいひび割れによってインク吸収速度は保たれるが、得られたインクのドットの周辺はギザギザであり、真円状からほど遠いものになり、画像の鮮明さや繊細さがかなり欠けることになる。その上、インクが広がりやすく、ドットが大きくなる特徴がある。360dpi×360dpiの印字レベルでは特に問題にならないが、720dpi×720dpi以上の高密度記録になるとドットが広がりやすいため、ドットとドットが接合し、繊細な画像が得られないのが実状である。また、光沢発現層の下に光沢発現層の塗布量よりも多いインク定着層が設けられており、インク定着層はミクロンオーダーの2次粒子を使用するため、インク受容層全体の透明性が無く、印字濃度が不十分であり、照り感のある高光沢を得ることは不可能である。
【0007】
インク受容層のひび割れを改良する目的で、特開平7−117334号公報に開示されたように0.1μ以下の微粒子と重合度4000以上のポリビニルアルコールにより構成されるインク受容層も開示されたが、微粒子が1次粒子の分散体(コロイダルシリカ、アルミナゾルなど)を使用したため、インク吸収性と受容層の透明性のバランスがとれない。1次粒子自身がインク吸収性を有しないため、インクは1次粒子の隙間に吸収される。1次粒子の分散体を使用したため、成膜させるためには1次粒子間に接着剤(バインダー)を介在させなければならない。粒子間に接着剤が存在すると、インク吸収容量が小さくなり、インク量の多い部分を完全吸収させるには、高塗布量が不可欠である。高塗布量になると塗膜にひび割れが生じやすい。また、塗膜透明性を得るためには、1次粒子の粒径の小さいものを選ばなければならなく、粒径が小さいとインク吸収速度が著しく低下し、一方、粒径が大きいと塗膜の透明性が悪くなり、印字濃度の低下が心配される。
【0008】
そこで、特開平5−32413号公報に開示されたように結晶厚さが60Å以上のベーマイト1次粒子が凝集してなる2次粒子を含むコロイド粒子を用いたインク受容層が開示された。小さい1次粒子間にインク中の比較的分子量の小さい水や溶剤(インク成分中の約90%以上を占める)を吸収させ、大きな2次粒子間にインク中の染料を吸収させて定着する構成である。しかし、ベーマイトはアルミナの結晶体の一種類であり、粒子は柱状か針状の形を呈する。針状や柱状から凝集された2次粒子は成膜性が悪く、ひび割れが比較的生じやすい。また、アルミナとの発色性の悪いインク(例えば:アシットレッド52(食用赤色106号)等の赤色)には向かなく、ベーマイト層自身も経時的に黄変しやすい問題がある。ベーマイトはコストも高いため、一般用途には向かない欠点がある。インク吸収速度が速く、インクとの発色性が良く、耐水性、経時安定性なども良好で且つ透明性のあるインク受容層の設計が大きな課題となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題を解決し、よりインクとの発色性がよく、耐候性、耐水性、高光沢、高印字濃度のインクジェット記録体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
一般市販のシリカは直径数ミクロンの粉体であり、インク吸収性は高いが、透明性が全くなく、一般塗工紙としては使用可能だが、高印字濃度と印字光沢を出すことが不可能である。また、粒径が大きいため、表面がかなりザラツキ、平滑化することも困難である。本発明は鋭意検討を重ねた結果、特定の1次粒子径のシリカ凝集体を平均粒径300nm以下の2次粒子よりなるシリカコロイド粒子にし、接着剤として水溶性樹脂を選択することによって、インク吸収層の透明性とインク吸収性のいずれも良好な多孔質層を設計することに成功した。
【0011】
特に、本発明はシリカコロイド粒子を用いたため、アルミナ(ベーマイト)が有しない発色性、耐候性も良好な高光沢インクジェット記録体が得られる。本発明のシリカコロイド粒子は、実質的に1次粒子が凝集してできた2次粒子からなるシリカコロイド粒子溶液である必要がある。1次粒子が単分散したようなシリカゾル(例えば:一般市販のコロイダルシリカ)の場合、基材に塗布して得られる多孔質層が比較的緻密なものになり、透明性を失いやすく、十分なインク吸収性をもたすためには高塗布量が避けられない。高塗布量になると、塗膜にひび割れが入りやすく、また塗布工程も煩雑になりやすい。勿論、本発明のシリカコロイド粒子溶液中に部分的に1次粒子が含まれても構わない。
【0012】
本発明のシリカコロイド粒子は自己接着性があまり無いため、インク受容層を得るためにはバインダーの添加が不可欠である。本発明のインクジェット記録体のインク受容層全体がシリカコロイド粒子と水溶性樹脂(特にポリビニルアルコールが好ましい)を主成分により構成されると、印字部の透明感が得られ、写真並の光沢を得ることが可能である。また、インク受容層全体が透明であるため、OHP用シート等としても使用が可能である。さらに、本発明のインク受容層となる層を成型面に塗被成膜した後、中間層を介して支持体上に転写すると、光沢が著しく向上し、より高平滑、高光沢のインクジェット記録体が得られる。
【0013】
本発明は以下の実施様態を含むがこれらに限るものではない。
[1]支持体にインク受容層を設けたインクジェット記録体において、該インク受容層は上層にシリカコロイド粒子塗被層を、下層に他のインク受容層を設けたものであって、上層は粒径3nm〜40nmのシリカ1次粒子が凝集した凝集体を機械的手段により平均粒子直径10nm〜300nmの2次粒子となるように細分化したコロイド粒子と水溶性樹脂を主成分として含有する層であり、且つ、前記コロイド粒子と前記水溶性樹脂との固形分重量比が10/1〜10/10であり、下層の他のインク受容層は、平均粒径0.5μm以上の合成無定型シリカを含有し、さらに、インク受容層全体に対して、上層の塗被量が50%以上であることを特徴とするインクジェット記録体。
【0014】
[2]水溶性樹脂が重合度2000以上のポリビニルアルコールを含有する[1]記載のインクジェット記録体。
[3]水溶性樹脂がケン化度95%以上のポリビニルアルコールを含有する[1]または[2]記載のインクジェット記録体。
【0020】
一般市販のコロイダルシリカは一次粒子の分散体であり、本発明で用いるシリカコロイド粒子とは異なる。コロイダルシリカを含有するインクジェット記録体は記録濃度、インク吸収容量の点で本発明のインクジェット記録体より劣る。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明において、支持体としては、例えば、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルム類、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、箔紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、含浸紙、蒸着紙、水溶性紙等の紙類、金属フォイル、合成紙などのシート類が適宜使用される。
【0022】
次に、本発明のインク受容層について詳細説明する。本発明のインク受容層は、上層にシリカコロイド粒子塗被層を、下層に他のインク受容層を設けたものである。まず、本発明のインク受容層を構成する粒径3nm〜40nmのシリカ1次粒子が凝集してなる2次粒子を含む前記シリカコロイド粒子を主成分として構成される上層について説明する。
【0023】
シリカのコロイド粒子は粒径が1000nm程度以下の微粒子が均一に分散した状態をいう。本発明に用いるシリカコロイド粒子は、粒径3nm〜40nmのシリカ1次粒子が凝集してなる平均粒子直径10nm〜300nmの2次粒子のシリカである。例えば一般市販の合成無定型シリカ(数ミクロン)を機械的手段で強い力を与えることにより得られる。つまり、breaking down法(塊状原料を細分化する方法)によって得られる。本発明のシリカコロイド粒子はスラリーであってもよい。機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、擂解機、サンドグラインダー等の機械的手法が挙げられる。
【0024】
本発明でいう平均粒径はすべて電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し平均したもの。「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52、1991年等に記載されている)。本発明で用いるシリカコロイド粒子(実質的に2次粒子)の平均粒径は10〜300nmであり、好ましくは20〜200nmに調整される。平均粒径が300nmを越えるシリカコロイド粒子を使用すると、透明感が著しく失われ、印字濃度が著しく低下し、所望の印字後の高光沢を有するインクジェット記録体が得られない。一方、平均粒径が極めて小さいシリカコロイド粒子を使用すると、インク吸収速度が得られない。
【0025】
インク受容層上層に使用するシリカコロイド粒子を構成する1次粒子は3nm〜40nmに調整する必要がある。3nm未満になると1次粒子間の空隙が極端に小さくなり、インク中の溶剤やインクを吸収する能力が著しく低下する。一方、1次粒子が40nmを越えると、凝集した2次粒子が大きくなり、インク受容層の透明性が低下する恐れがある。
【0026】
本発明におけるシリカコロイド粒子自身は成膜性があまりないため、インク受容層上層として設ける場合は接着剤の添加が不可欠である。接着剤(バインダー)としては、水溶性樹脂が適宜添加して使用される。水溶性樹脂としては、たとえばポリビニルアルコール(以下PVAと称す)、カゼイン、大豆蛋白、合成タンパク質類、でんぷん、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体等が例示できる。分散適性、塗料安定性からPVAが最も有効である。特に分散性、インク吸収性を得るためには水溶性樹脂として重合度2000以上のPVAが好ましく使用される。PVAの重合度は、より好ましくは2000〜5000である。また、耐水性を得るためには、ケン化度95%以上のPVAが有効である。
【0027】
本発明において、シリカコロイド粒子と水溶性樹脂の固形分重量比は10/1〜10/10であり、好ましくは10/2〜10/6の範囲に調節される。水溶性樹脂の添加量が多いと、粒子間の細孔が小さくなり、インク吸収速度が得られない場合があり、一方、接着剤が少ないと塗被層にひび割れが入り、使用し得ない状態になる場合もある。
【0028】
勿論、必要に応じて本発明におけるシリカコロイド粒子/接着剤(バインダー)以外に適宜他の顔料を配合してもよい。たとえば、コロイダルシリカ(1次粒子の分散体)、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化錫、硫酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、スメクタイト、ゼオライト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗被紙分野で公知公用の各種顔料を適宜使用される。ただし、塗工層の平滑性と透明性を保つために、他の顔料の使用量は本発明におけるシリカコロイド粒子に対して20%以下に調節するのが好ましい。また、インク受容層の透明性を保つためにシリカコロイド粒子中に添加される顔料の平均粒径は2μ以下であることが望ましい。
【0029】
本発明のインク受容層上層中にカチオン性樹脂を添加して使用してもよい。これにより、インク定着性を向上させることができる。添加されるカチオン樹脂としては、例えばポリエチレンアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。なお、カチオン樹脂の添加量としては顔料100重量部に対し、1〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部の範囲で調節される。その他、一般塗被紙製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。
【0030】
塗被量は特に限定するものではないが、1〜100g/m2 、より好ましくは5〜60g/m2 に調節する。塗工量が少ないと均一塗膜が得られにくく、多いと効果が飽和し、また、塗膜にひび割れが生じやすなる。例えば15g/m2 以上の高塗被量を得るためには、塗被液の増粘、高濃度化による方法が利用でき、また2回以上の塗被により実現する。
【0031】
下層に他のインク受容層を設けると本発明の目的とする高インク吸収速度、発色性、高印字濃度、高光沢、耐候性、耐水性とも良好なインクジェット記録体が得られる。印字後の光沢、照り感を保つためには、インク受容層全体に対して、上層の塗被量が50%以上の範囲に調節される。50%未満でも一定の光沢は得られるが、シリカコロイド粒子含有層を50%以上とする態様では、特に、写真並の光沢、照り感が得られる。
【0032】
次に、下層(支持体に近い層)とする前記他のインク受容層について具体的に説明する。他のインク受容層に使用される顔料(平均粒径:0.5μ以上)としては、発色性、印字濃度などの観点から、合成無定型シリカが使用される。
【0033】
接着剤(バインダー)としては、前記に示したPVA、カゼイン、でんぷん等の水溶性樹脂、或いはラテックス、合成樹脂エマルションなどの従来公知のものがあげられる。接着剤の添加量は顔料100重量部に対し、5〜150重量部、好ましくは10〜50重量部の範囲で調節される。また、インク定着性を向上する目的で使用されるカチオン樹脂も添加でき、前記したアミン系などが挙げられる。なお、カチオン樹脂の添加量は顔料100重量部に対し、1〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部の範囲で調節される。その他、一般塗被紙製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤も適宜添加される。
【0035】
何れのインク受容層を得るための塗被コーターとしてもブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター等の各種公知の塗被装置が例示できる。
【0036】
インク受容層(上層,下層を含む)は支持体上に塗被装置により形成することが出来る。また、成型面にインク受容層となる層を形成し、場合によっては支持体(またはインク受容層となる層)に粘着性若しくは接着性を有する中間層を設け、中間層とインク受容層となる層(または支持体)を接着させ、成型面のみを剥離することによりインク受容層を設けることが出来る。このように成型面を利用してインク受容層を形成すると、より優れた光沢性が得られる。シリカコロイド粒子含有層を成型面を利用して設けると、特に優れた光沢が得られる。以下に、インク受容層となる層を成型面に塗被成膜し、支持体に中間層を設け、インク受容層となる層と中間層が対面するように貼り合わせ、成型面を剥離する場合について詳しく説明するが、インク受容層となる層に中間層を設ける態様も同様に行える。
【0037】
接着方法としては、ラミネート法が有効である。ラミネート法としてはドライラミネート法、ウェットラミネート法、ホットメルトラミネート法、エクストルージュンラミネート法などの公知公用のラミネート法が例示できる。ウェットラミネート、ドライラミネート、ホットメルトラミネート法では、支持体に接着性樹脂や粘着剤を塗被して中間層を設け、中間層とインク受容層となる層が対面するように貼合せて圧着した後、成型面を剥し、所望のインクジェット記録体が得られる。エクストルージョンラミネート法では溶融押出機中に280〜320℃で加熱溶融されたポリエチレン(ポリエチレン以外の樹脂を利用する場合も同様の方法を用いる)が支持体の表面に流され、インク受容層となる層を有する成型体と貼合せ、クーリングロールにより冷却圧着した後、成型体を剥し、所望のインクジェット記録体が得られる。
【0038】
中間層として感圧接着剤を利用する場合は、バーコーター、ロールコーター、リップコーター等の公知公用の塗被方法を利用し、支持体に塗被乾燥した後、インク受容層となる層と貼合せてから成型面を剥し、所望のインクジェット用記録シートを得ることができる。中間層の塗被量はインク受容層となる層と支持体が接着できれば特に限定するものではないが、熱可塑性樹脂、接着剤、感圧接着剤の何れを使用する場合でも2〜50g/m2 程度が好ましい。塗被量が少ないと、十分な接着力が得られにくく、一方、多くても効果が飽和し、無意味である。
【0039】
中間層に使用される高分子樹脂としては熱可塑性樹脂(例えば:エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂及びその誘導体、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリスチレン及びその共重合体、ポリイソブチレン、炭化水素樹脂、ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の各種公知公用の熱可塑性樹脂が挙げられる)、接着剤(尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリビニールアセタール/フェノール樹脂、ゴム/フェノール樹脂、エポキシ/ナイロン樹脂等の複合ポリマー型接着剤、ラテックス型ゴム基等のゴム基接着剤、でんぷん、膠、カゼイン等の親水性天然高分子接着剤等の各種公知公用の接着剤が挙げられる)、感圧接着剤(溶剤型感圧接着剤、エマルション型感圧接着剤、ホットメルト型感圧接着剤、ディレードタイプ感圧接着剤等の各種公知公用の感圧接着剤が挙げられる)が適宜使用される。
【0040】
成型面に使用される材料としては、高表面平滑性を有するセロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルム類、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、含浸紙、蒸着紙等の紙類、金属フォイル、合成紙等可とう性を有するシート類及び無機ガラス、金属、プラスチック等の高平滑表面を有する板類が適宜使用される。特に、塗被適性及び成型面とインク受容層となる層の剥離適性等の観点から、高分子フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等)、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、無機ガラスが好ましい。
【0041】
成型面は平滑である方が光沢性の点で好ましく、成型面の表面粗さ(JISB0601)は、Raが0.5μm以下が好ましく、より好ましくはRaが0.05μm以下である。成型面は無処理のままでもよいが、成型面とインク受容層となる層の剥離性をよくするために、成型面の塗被面にシリコーンやフッ素樹脂等の剥離性を有する樹脂を塗被しても使用可能である。塗被適性(ハジキ等)等の観点から、成型面にコロナ放電やプラズマ処理による表面親水化を行うことも有効である。
【0042】
中間層を介して支持体に転写するときのインク受容層となる層の塗被工程は、成型面にインク受容層となる層の上層(シリカコロイド粒子含有層)を先に塗被し、その上に他のインク受容層となる層を順次塗被する。これを支持体に転写することによって得られたインクジェット記録体のインク受容層は、上層、他のインク受容層(下層)の順の積層順序になる。
【0043】
本発明に使用されるインクとしては、像を形成するための色素と該色素を溶解または分散するための液媒体を必須成分とし、必要に応じて各種分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、比抵抗調整剤、pH調整剤、防かび剤、記録剤の溶解または分散安定化剤等を添加して調整される。
【0044】
インクに使用される記録剤としては直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素、分散染料、油性染料及び各種顔料等があげられるが、従来公知のものは特に制限なく使用することができる。このような色素の含有量は、液媒体成分の種類、インクに要求される特性などに依存して決定されるが、本発明におけるインクの場合も、従来のインク中におけるような配合、即ち、0.1〜20重量%程度の割合になるような使用で特に問題はない。
【0045】
本発明に使用されるインクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、ポロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個のアルキレングリコール類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(エチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類などが挙げられる。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、水を除いた固形分の部及び%であり、それぞれ重量部及び重量%を示す。本発明で得られたインクジェット記録体はすべてスーパーカレンダー(線圧:20Kg/cm)によって処理した後、評価に用いた。
【0047】
[シリカコロイド粒子A]
平均粒径9μの合成無定型シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil LP、1次粒子径:16nm)を用い、サンドグラインダーにより分散した後、超音波をかけ、平均粒子径が50nmになるまでサンドグラインダーと超音波の分散操作を繰り返し、8%の水溶液を調製した。
[シリカコロイド粒子B]
平均粒径9μの合成無定型シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil NS、1次粒子径:21nm)を用い、サンドグラインダーにより分散した後、超音波をかけ、平均粒子径が100nmになるまでサンドグラインダーと超音波の分散操作を繰り返し、12%の水溶液を調製した。
[シリカコロイド粒子C]
平均粒径3μの合成無定型シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil HD−2、1次粒子径:11nm)を用い、サンドグラインダーにより分散した後、超音波をかけ、平均粒子径が200nmになるまでサンドグラインダーと超音波の分散操作を繰り返し、15%の水溶液を調製した。
[シリカコロイド粒子D]
平均粒径9μの合成無定型シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil LP、1次粒子径:16nm)を用い、サンドグラインダーにより分散した後、超音波をかけ、平均粒子径が500nmになるまでサンドグラインダーと超音波の分散操作を繰り返し、15%の水溶液を調製した。
【0048】
参考例1
シリカコロイド粒子A100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−124、重合度:2400、ケン化度:98.5%)40部を混合した8%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるように支持体の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。ただし前記支持体は市販塗工紙(新王子株式会社製、商品名:OKコート、127.9g/m2 )にラミネート加工(エクストルージュンラミネート法により塗工紙表面にポリエチレンを15μラミネートしたもの、以下ラミネート塗工紙と称す)したものである。
【0049】
参考例2
シリカコロイド粒子A100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117、重合度:1800、ケン化度:98.5%)40部を混合した8%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0050】
参考例3
シリカコロイド粒子A100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−224、重合度:2400、ケン化度:88.5%)40部を混合した8%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0051】
参考例4
シリカコロイド粒子A100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)40部を混合した8%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0052】
参考例5
シリカコロイド粒子A100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−140H、重合度:4000、ケン化度:99%以上)40部を混合した8%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0053】
参考例6
シリカコロイド粒子B100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−124、重合度:2400、ケン化度:98.5%)40部を混合した12%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0054】
参考例7
シリカコロイド粒子C100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−124、重合度:2400、ケン化度:98.5%)40部を混合した15%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0055】
参考例8
シリカコロイド粒子A100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−124、重合度:2400、ケン化度:98.5%)40部を混合した8%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるように成型面として利用するPETフィルム(東レ社製、75μ、商品名:ルミラーT、表面粗さRa=0.02μm)に塗被乾燥した。次に、上記塗工層表面にアクリル酸エステル接着剤(日本カーバイド工業社製、商品名:A−02)を塗被量が10g/m2 になるように塗被乾燥した。続いて、接着剤がラミネート塗工紙表面と対面するように貼合せて、線圧50kg/cmのカレンダーにて圧着した。続いてPETフィルムを剥し、インクジェット記録体を製造した。
【0056】
比較例1
シリカコロイド粒子D100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−124、重合度:2400、ケン化度:98.5%)40部を混合した15%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0057】
比較例2
平均粒径3μの合成無定型シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil HD−2、1次粒子径:11nm)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−124、重合度:2400、ケン化度:98.5%)40部を混合した15%水溶液を用い、メイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙上に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0058】
比較例3
平均粒径9μの合成無定型シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil LP、1次粒子径:16nm)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−124、重合度:2400、ケン化度:98.5%)40部を混合した15%水溶液を用い、メイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙上に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0059】
比較例4
1次粒子分散体である平均粒径10×100nmのアルミナゾル(日産化学社製社製、商品名:アルミナゾル−100)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−124、重合度:2400、ケン化度:98.5%)40部を混合した8%水溶液を用い、メイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙上に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0060】
比較例5
1次粒子の分散体である平均粒子径65nmのアニオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス YL)100部に、PVA(クラレ社製、商品名:PVA−124、重合度:2400、ケン化度:98.5%)10部を混合した15%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0061】
比較例6
シリカコロイド粒子A100部に、スチレン・ブタジエン系ラテックス(日本ゼオン社製、商品名:Nipol LX415A、平均粒径:110nm、Tg=27℃)100部を混合した15%水溶液をメイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙の表面に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0062】
比較例7
PVA(クラレ社製、商品名:PVA−117、重合度:1800、ケン化度:98.5%)の10%水溶液を用い、メイヤーバーで塗被量が20g/m2 となるようにラミネート塗工紙上に塗被乾燥し、インクジェット記録体を製造した。
【0063】
比較例8
インク定着層と光沢発現層を有する市販インクジェット光沢紙GPー101(販売元:キヤノン社製)を用いた。
【0064】
[評価方法]
参考例1〜8、比較例1〜8で得られたインクジェット記録体の塗膜耐水性、インク吸収性、インク吸収容量等は以下に示す方法で評価した。光沢感とインク吸収性等については市販のインクジェットプリンター(キヤノン社製、商標:BJC−600J)で記録を行った場合のベタ部分の光沢度、インク吸収性、印字濃度を示す。
【0065】
[耐水性]
インクジェット用記録シート上に水滴を落とし、30分後に水滴を拭き取り、水滴に浸漬された部分を手でこすり、耐水性を4段評価した。(◎:インク受理層に全く変化がみられなかった。○:インク受理層がわずかにとれた。△:インク受理層が部分的にとれた。×:インク受理層が完全にとれた。)
【0066】
[インク吸収性]
a.(インク吸収速度)
イエロー、マゼンタ、シアンの各単色を印字し、印字直後から5秒毎にプリントした印字面に上質紙を貼合せ、インクが上質紙に転写するかどうかを観察する。全く転写しなくなるまでの時間を測定する。測定された秒数を4段評価した(◎:5秒以下、○:5〜10秒、△:10〜30秒、×:30秒以上)。インクが乾燥するまでの時間が10秒以下のものはインク吸収性に優れる。
【0067】
b.(インク吸収容量)
A4サイズのインクジェット記録体を用い、イエロー、マゼンタ、シアンの3色を10cm×10cm四方の1ケ所に連続ベタ印字し、インクが塗被層から溢れているかどうかを観察するために、印字直後から1分、2分、5分後にプリントした印字面に上質紙を貼合せ、インクが上質紙に転写するかどうかを観察する。全く転写しなくなるまでの時間を測定し、下記のように4段評価をした。
◎:1分以内。
○:1分以上、2分以内。
△:2分以上、5分以内。
×:5分以上。
【0068】
[印字濃度]
黒ベタ部の印字濃度をマクベス反射濃度計(Macbeth、RD−920)を用いて測定した。表中に示した数字は5回測定の平均値である。
【0069】
[印字部の光沢感(照り感)]
印字部の光沢感は印字部に対して20°の横角度から目視し、以下のように4段評価した。
◎:銀塩方式のカラー写真と同レベルの照り感がある。
○:カラー写真よりは劣るが、高い照り感がある。
△:塗工紙の印刷品並。
×:一般PPC紙並。
[ドットの形状]
光学顕微鏡によりドットを100〜200倍拡大し、目でドットの形状を観察する。
【0070】
【表1】
【0071】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録体は高光沢を有し、且つ優れたインク発色性、インクジェット記録(印字)適性、高印字濃度、耐候性を兼ね備えたものである。
【0072】
本発明ではインクの発色性が良く、インク吸収速度が速く、印字濃度が高く、耐候性、インク定着性、印字適性とも良好な高光沢インクジェット記録体が得られる。シリカの1次粒子は球状に形成されやすく、得られた2次粒子が成膜しやすく、塗膜もひび割れが生じにくい。また、シリカはインクの発色性が良好で、価格も低いため、一般用途にも広がる可能性がある。
Claims (3)
- 支持体にインク受容層を設けたインクジェット記録体において、該インク受容層は上層にシリカコロイド粒子塗被層を、下層に他のインク受容層を設けたものであって、上層は粒径3nm〜40nmのシリカ1次粒子が凝集した凝集体を機械的手段により平均粒子直径10nm〜300nmの2次粒子となるように細分化したコロイド粒子と水溶性樹脂を主成分として含有する層であり、且つ、前記コロイド粒子と前記水溶性樹脂との固形分重量比が10/1〜10/10であり、下層の他のインク受容層は、平均粒径0.5μm以上の合成無定型シリカを含有し、さらに、インク受容層全体に対して、上層の塗被量が50%以上であることを特徴とするインクジェット記録体。
- 水溶性樹脂が重合度2000以上のポリビニルアルコールを含有する請求項1記載のインクジェット記録体。
- 水溶性樹脂がケン化度95%以上のポリビニルアルコールを含有する請求項1または2記載のインクジェット記録体。
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