JP3948049B2 - インクジェット記録体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録体に関し、表面の平滑性、光沢及び耐水性に優れたインクジェット記録体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、ノズルから高速で噴射したインク液滴を、被記録材に付着させて記録する方式であり、フルカラー化が容易なことや印字騒音が低いなどの特徴を有する。この方式では、使用されるインクは多量の溶媒を含んでいるため、高い印刷記録濃度を得るには、大量のインクを必要とする。また、インク液滴は連続射出であり、最初の液滴が吸収される前に次の液滴が射出されて、インク液滴が融合し、インクのドットが融合するという不都合が生じやすい。それゆえ、このインクジェット記録方式で使用される記録体には、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インク吸収速度が速く、インク容量が大きく、印字ドットが重なった場合においてもインクの滲みがないことが要求される。また、産業の高度化、情報化に伴い、インクジェット記録体への要求も多種多様化し、強光沢性、印字後の耐湿、耐水性などの特徴を有することも望まれている。
【0003】
一般に、記録層を構成する顔料の粒子径が小さいほど、記録層の透明性、表面平滑性、表面光沢、印字濃度が得られる。顔料の分散は基本的に、剪断、衝撃、圧縮、3つの力を組み合わせて行う。剪断力を利用した分散にはミキサー、コーレスなどが、衝撃を利用したものにはジェットミルがある。さらに、剪断力と衝撃力を組み合わせたサンドミル、ボールミル、ロールミルなどがある。
塗料中の顔料分散には、ミキサー、コーレスなどによる機械的攪拌分散が一般的だが、この方法では顔料自身の粒径を小さくしたり、分散安定性の悪い一次粒子の凝集により生成された二次粒子の凝集体を、より小さな二次粒子に破砕することは困難である。
サンドミル、ボールミルなどは、ミキサーなどと比較して分散能力、破砕能力は高いが、これらはボールやビーズを媒体として使用する分散媒体型タイプであり、高粘度の塗料では、そのクッション作用により剪断力が弱くなるため、低、中粘度の塗料にしか使用できない。高粘度の塗料分散にはロールミルが最もよく利用されるが、分散能力は高くない。
【0004】
一次粒子が凝集しやすいアルミナゾル二次粒子を、強い剪断力だけでなくキャビテーションなどの機構を利用した、超音波振動分散機を用いて微細化する方法(特開平5−32413号)も報告されているが、微細化した二次粒子の粒子径が大きく、粒子径分布も広い。このため、微細分散した塗料を塗工して記録層を設けた場合、記録層の透明性が得られない。さらに、粒子径分布が広いため、バインダーによる粒子間の接着性が悪く、記録層にひび割れを生じる可能性もある。また、塗料の分散操作に多くの時間、手間がかかり、生産効率が悪い。
【0005】
一般のインクジェット用インクは水溶性であり、印字後の耐湿、耐水性に劣る。このためカチオン樹脂を原紙、記録層中に添加して耐湿、耐水性を改良することが知られている。例えば、特公平2−035673号公報などに提案されるように、インクジェット記録用紙に顔料やカチオン樹脂を内填させ、インク中のアニオン性染料を定着させることによって印字後の耐湿、耐水性を改良する。さらに、印字ドットのシャープさ、印字濃度を高めるため、シリカ、アルミナなどの顔料を含有する記録層を設ける塗工紙(例えば:特願平7−260198号公報など)などがある。しかし、これらの塗工紙は一般的に数ミクロンオーダーの顔料とカチオン樹脂及びバインダーを主成分として構成されており、顔料によりインクを吸収、カチオン樹脂によりインクを定着する。顔料の粒子径が大きいため、記録層の透明性はなく、記録層表面はボコつき、光沢性を持ったインクジェット記録体を得ることは困難である。
このためカラー画像を記録させても、写真並の画像は得られなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、機械的分散法によりミクロンオーダーのシリカなどの微粒子を粉砕、10〜300nmのコロイド状粒子を作製し(特願平8−102494号公報)、これを記録層として用いることで、記録層の透明性、表面の平滑性、強光沢性を得ることを提案した。しかし、シリカなどのコロイド状粒子はアニオン性を示すため、染料は定着されず、印字後の耐湿、耐水性は必ずしも十分ではなかった。また、シリカなどのコロイド状粒子はアニオン性のため、カチオン樹脂を添加すると凝集を起こし、記録層の透明性、表面の平滑性、強光沢性が失われる恐れがある。さらに、カチオン樹脂添加による粒子の凝集のため、分散液が増粘し、流動性がなくなり、塗工が困難となる恐れもある。
【0007】
また本発明者等は、アニオン性コロイド粒子表面に予め水溶性樹脂を吸着させ、アニオン性を緩和させた後、カチオン樹脂を添加する方法(特願平8−73700号公報)を提案した。しかし、これはコロイド粒子が一次粒子である場合に好ましい製法であった。すなわち、コロイド粒子の比表面積がある程度小さく、水溶性樹脂によって表面が殆ど覆われる場合に適している。コロイド粒子が二次粒子であると、粒子間の空隙が多く、比表面積が大きくなる。このため、水溶性樹脂により表面が完全に覆えない場合もあり、カチオン樹脂を添加したときに凝集、増粘が起こる恐れがある。また、水溶性樹脂の量を増やすと、インク吸収のための空隙がなくなり、記録層のインク吸収速度、吸収容量の低下を招く恐れがある。
【0008】
本発明は上記の問題を解決し、表面平滑性、高品位、印字濃度、光沢及び耐水性に優れるインクジェット記録体及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
一般に300nmを越える粒子を含む分散液は、塗工して得られた記録層の透明性、表面の平滑性が悪く、高印字濃度と表面光沢に優れる記録体を得ることは困難である。
しかし、本発明では顔料を、圧力式ホモジナイザーを用い、特にキャビテーションによって生じる衝撃的、瞬時的な高圧の力で圧力分散して特定範囲の粒径を有する微粒子とすることで、透明性、表面平滑性の高い記録層を得るものである。
【0010】
また、顔料分散液中にカチオン樹脂を添加すると、カチオン樹脂と顔料との凝集がおこる。そして、平均粒径300nm以下の微粒子を含む分散液では、顔料とカチオン樹脂の凝集が起こると、塗工層の透明性、表面の平滑性が低下し、印字濃度、表面光沢を得ることが困難となる。
シリカなどのコロイド状粒子はアニオン性を示すため、染料は定着されず、印字後の耐湿、耐水性が劣る。印字後の耐湿、耐水性改善のためにはカチオン樹脂を添加することが好ましいが、上記のように顔料とカチオン樹脂の凝集のため、記録層の透明性、表面の平滑性、強光沢性と耐水性付与の両立が困難であった。
しかし本発明の好ましい態様では、圧力式ホモジナイザーを用いて、カチオン樹脂添加により一度凝集した微粒子の分散体を圧力再分散させることで、記録層の透明性、表面の平滑性、強光沢性と、耐水性付与(記録画像の保存性の改良)との両立が可能となった。
【0012】
[1] 支持体に圧力式ホモジナイザーを用いて250kg/cm2以上1000kg/cm2以下の圧力で粉砕して得られる平均粒径10nm〜300nmのシリカ二次粒子からなる顔料粒子を含有する分散液に、カチオン樹脂及び水溶性バインダーを添加して凝集・増粘させ、凝集した微粒子を圧力式ホモジナイザーを用いて再分散させて平均粒径500nm以下で平均粒径±50nmの範囲に全微粒子数の70%以上を含む顔料二次粒子とした記録層用分散液を調製し、該記録層用分散液を塗布・乾燥して記録層を形成することからなるインクジェット記録体の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録体は、表面平滑性、光沢に優れ、高品位の画像が得られ、且つ印字濃度及び耐水性(記録画像の保存性)を兼ね備えたものである。
表面平滑性、印字濃度は、二次微粒子を圧力式ホモジナイザーを用いて圧力分散した微粒子顔料を使用する態様により特に優れたインクジェット記録体が得られる。
【0014】
支持体としては、透明支持体、不透明支持体、透湿性支持体、不透湿性支持体のいずれも使用できる。例えば、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどのプラスチックフィルム類、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗工紙、箔紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、含浸紙、蒸着紙、水溶性紙等の紙類、金属フォイル、合成紙などが適宜使用される。合成紙としては熱可塑性樹脂に適宜顔料を添加し、延伸して紙状層を形成し、これらを積層した合成紙が例示でき、市販品としては王子油化のユポ等が知られている。
【0015】
顔料としては、例えば、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、炭酸カルシウム、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、スメクタイト、ゼオライト、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックセグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメントなど、一般に塗工紙分野で公知公用の各種顔料が適宜使用される。なかでも、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、クレー、焼成クレー、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、炭酸カルシウム、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウムが好ましく、特に、非晶質シリカ、コロイダルシリカ微粒子が好ましい。
【0016】
本発明の10nm〜300nmの微粒子は2次粒子であることが好ましい。2次凝集粒子を構成する一次粒子は3nm〜40nmが好ましい。
一次粒子の平均粒径は電子顕微鏡(TEM,SEM)で観察した値である(「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52参照)。
また例えば動的光散乱法により2次粒子径を測定出来る。動的光散乱法ではnm単位の粒子から数μmの粒子の測定ができる。この範囲の粒子は溶液中で並進、回転等のブラウン運動により、その位置、方位、形態を時々刻々変えている。ブラウン運動をしている溶液中にHe−Neレーザを照射すると、レーリー散乱により光が散乱され、各粒子からの散乱光は入射光、例えば可視光の中心振動数に対し、シフトを示し線幅が広がる。この振動のシフトは入射光の振動数に比べて極めて小さく、ピンホールを用いた光学系によりホモダイン光混合し、ビート(干渉)を起こす手法を用いてこのビート信号を光電子増倍管で光電変換する。この光電子増倍管の出力信号は互いに離散したパルスとなり、このパルス数を計数することにより粒子のブラウン運動に関する情報が得られ、更に粒径(拡散係数)の情報に変換することができる。
【0017】
圧力ホモジナイザーは塗料の分散処理操作にかかる時間、手間が少ない利点がある。
圧力ホモジナイザーの構造、粉砕原理について説明する(図1参照)。
構造に関しては、処理液を一定圧に昇圧する加圧構造と、攪拌効果を発生するホモバルブ構造より成り立っている。
処理液(1)はポンプによって加圧され、高圧かつ低速度でバルブシート(2)に入る。圧縮後、シートバルブの狭い間隙を高速流で通過、インパクトリング(3)に衝突する。その際生じるキャビテーションの作用により処理液はホモジナイズされて、微細化される。分散能力が高く、塗料中に固体粒子を混入させても、かなり高粘度の塗料でも分散可能である。
加圧は250kg/cm2 以上が好ましく、より好ましくは550kg/cm2 以上である。圧力ホモジナイザーでは、超高圧1000kg/cm2 程度までは十分に加圧でき、更に高圧にすることもできる。分散した微粒子の平均粒径は、10nm〜300nmである必要があり、好ましくは10nm〜200nmであり、より好ましくは20nm〜150nmである。
微粒子としてシリカを使用することで、透明性、表面平滑性、光沢性のより高い記録層を得ることが可能である。
圧力式ホモジナイザー用いて圧力分散した顔料は、分布範囲が狭く、均一な粒径に調整することが可能であり、そのため優れた効果が得られるものと推測できる。分散処理後の粒子径分布は、全粒子数(凝集粒径である場合は凝集粒子の径)の70%以上が(平均粒子径±50)nmであることが好ましい。つまり平均粒径マイナス50nmの粒子から平均粒径プラス50nmの粒子の範囲のものが70%以上であることが好ましい。さらに全粒子数の85%以上が(平均粒子径±50)nmであることがより好ましい。
【0018】
本発明の記録層を設ける場合、微細顔料同士、あるいは微細顔料と支持体とを接着させるためには、接着剤(バインダー)を添加する。前記カチオン樹脂を接着剤とすることもできる。
接着剤(バインダー)としては、水溶性樹脂(例えばポリビニルアルコール(以下PVAとも称する)、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質類、デンプン、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロースなどのセルロース誘導体)、スチレンーブタジエン共重合体、メチルメタクリレート―ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、スチレン―酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックスなど、一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤が単独あるいは併用して使用される。塗工層と支持体との接着性の向上、表面平滑性、インク吸収性、高印字濃度、耐水性付与のため、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂が好ましく使用される。
【0019】
記録層の顔料と接着剤(バインダー)の固形分重量比は特に限定しないが100/5〜100/200程度であり、好ましくは100/10〜100/100の範囲で調製される。接着剤(バインダー)量が多いと顔料間の細孔が小さくなりインク吸収速度が得られにくく、少ないと塗工層にひび割れが生じやすい。
その他、一般に塗工紙製造で使用される分散体、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、腐食剤などの各種助剤が適宜添加される。
【0020】
記録層にカチオン樹脂を添加することにより、記録濃度改良と記録画像の耐水性を改良することができる。
カチオン樹脂としては、水溶性あるいは水溶性エマルジョンタイプなどが使用される。例えば、ポリエチレンアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、第三級アミン基や第四級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミンなどが単独あるいは併用して用いられる。また、ジシアンジアミドーホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、ジシアンジアミドージエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、エピクロルヒドリンージメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO2 共重合物、ジアリルアミン塩−SO2 共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、アクリルアミドージアリルアミン塩共重合体などのポリカチオン系カチオン樹脂などが挙げられる。カチオン樹脂添加量としては、顔料100部に対して1〜30部、さらには5〜20部の範囲で調製される。
【0021】
カチオン樹脂を添加することにより凝集・分散液の増粘が生じる場合があるが、再分散することにより塗工適性、平滑性、光沢性、記録適性に優れたインクジェット記録体を得ることができる。再分散のための分散攪拌機は特に限定せず、コーレス攪拌機等も用いることができるが、圧力式ホモジナイザーが好ましい。
再分散後は500nm以下に調整する。再分散後の液には例えば二次粒子が更に凝集している凝集粒子が含有されることがあるものと思われる。再分散する場合も塗工液中の微粒子が前記のように70%以上が(平均粒径±50nm)の範囲であることが好ましい。
【0022】
尚、インクジェット記録体を、支持体上に少なくとも二層の記録層を設ける構成とすることにより、より高品位な記録体を得ることが可能である。二層の記録層を設ける場合、少なくとも上層が本発明による10〜300nmの微粒子を含む層とすることが好ましい。
他の記録層は本発明特定の記録層であってもよい。また他の記録層は既に例示した顔料と接着剤を含む記録層で、且つ本発明特定の範囲外の粒径の顔料を主成分とすることもできる。
【0023】
記録層の塗工量は特に限定するものではないが、1〜100g/m2 、さらには2〜50g/m2 の範囲で調製される。1g/m2 未満では均一な塗膜が得られにくく、100g/m2 を越えると効果が飽和し、また塗膜にひび割れも生じやすくなる。
【0024】
本発明の記録層を成形面に塗工、成膜した後、支持体あるいはその他の基材上に転写するとより優れた光沢が得られる。
成形面に使用される材料としては、高表面平滑性を有するセロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどのプラスチックフィルム類、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、含浸紙、蒸着紙、水溶性紙等の紙類、金属フォイル、合成紙など可とう性を有するシート類及び無機ガラス、金属、プラスチックなどの高平滑表面を有するドラムや板類が適宜使用される。特に、製造工程及び成形面と記録層の剥離適性などの観点から、高分子フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなど)、高平滑表面を有する金属ドラムが好ましい。
成形面は平滑である方が好ましく、これにより高平滑で光沢性に優れた記録層が得られる。成形面の表面粗さ(JIS B−0601)は、Raが0.5 μm以下が好ましく、より好ましくは0.05μm以下である。
尚、成形面の表面粗さをコントロールして、セミグロス調、マット調などの風合いを持たせることが可能である。
【0025】
成形面は無処理のままでよいが、塗工層と支持体(予め塗工層を有する支持体の場合も含む)の接着力よりも、成形面と塗工層の接着力を小さく制御するために、成形面にシリコンやフッ素樹脂などの剥離性を有する化合物を塗布して使用することが可能である。
【0026】
記録層の塗工コーターとしては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーターなど、公知の各種塗工装置が挙げられる。
【0027】
本発明のインクジェット記録方法で使用されるインクとしては、像を形成させる色素と該色素を溶解あるいは分散する溶媒を必須成分をし、必要に応じて各種分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、比抵抗調整剤、pH調整剤、防かび剤、記録材の溶解あるいは分散安定化剤などの各種助剤が適宜添加される。
インクに使用される記録剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素、分散染料、油性染料及び各種顔料などが挙げられるが、従来公知の記録剤は特に制限なく使用できる。上記色素の含有量は、溶媒成分の種類、インクに要求される特性などにより決定されるが、本発明におけるインクにおいても、従来のインク中の配合、つまり0. 1〜20wt%程度の使用で特に問題はない。
【0028】
本発明で用いられるインクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n―プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n―ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトンあるいはケトンアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2〜6個のアルキレングリコール類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(エチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類などがある。
【0029】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、もちろんこれらに限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、水を除いた固形分であり、それぞれ重量部及び重量%を示す。粒子径(凝集体である場合は凝集体の粒子径)は大塚電子株式会社製の動的光散乱方によるレーザー粒径解析システムLPA−3000/3100を用いて測定した。これによる平均粒子径は数平均粒子径を示す。
参考例1
合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、商品名:ファインシール X−45、2次粒径4.5μm、1次粒径約15nm)100部を含む水分散液を処理液とし、圧力式ホモジナイザー GM−1)を用いて、粉砕の操作を繰り返した(加圧500kg/cm2)。以下この分散液を分散液Aと称する。
【0030】
分散液A中のシリカの粒子径分布は、40〜250nmであり、平均粒子径90nmで、80%が40〜140nmに含まれていた。
さらに分散液Aにポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)40部を混合し、7%水分散液を作製した。この分散液を、メイヤーバーで塗工量が20g/m2 となるように市販原紙(王子製紙社製、商品名:OKプリンス、127. 9g/m2 )に塗工し、乾燥させることにより本発明のインクジェット記録体を製造した。
【0031】
参考例2
参考例1で前記したものと同様の分散液A(合成非晶質シリカを固形分で100部含む)にジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(日東紡績社製、商品名:PAS−J−81)15部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)40部を添加し,凝集した液をコーレス分散機(SMT社製、商品名:マルチディスパーサー PB95)にて攪拌再分散して、7%水分散液を調製した。再分散液中の微粒子の粒子径分布は70nm〜2μmで、平均粒子径180nmであり、全粒子数の55%が130nm〜230nmであった。この再分散液をメイヤーバーで塗工量が20g/m2となるように市販原紙(王子製紙社製、商品名:OKプリンス、127. 9g/m2 )に塗工し、乾燥させることにより本発明のインクジェット記録体を製造した。
【0032】
実施例1
参考例2の再分散をコーレス分散機(SMT社製、商品名:マルチディスパーサー PB95)ではなく、圧力ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザー GM−1)(加圧450kg/cm2 )に変更した以外参考例2と同様にして本発明のインクジェット記録体を製造した。分散液中の微粒子の粒子径分布は40nm〜300nm、平均粒子径110nmで、71%が60nm〜160nmであった。
【0033】
参考例3
参考例1の分散液Aの調製において圧力ホモジナイザの加圧を800kg/cm2 とした以外同様にして分散液Bを得た。分散液B中の非晶質シリカの粒子径分布は35nm〜180nm、平均粒子径60nmで、85%が10nm〜110nmであった。他は実施例1と同様にして本発明のインクジェット記録体を製造した。再分散後の微粒子の粒子径分布は35nm〜200nm、平均粒子径70nmで、75%が20nm〜120nmであった。
【0034】
実施例2
まず、平均二次粒径3μmの合成非晶質シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil、HD−2、一次粒径11nm)を100部含む水分散液をサンドグラインダー(IGARASHI KIKAI SEIZO Co.製、商品名:6筒式サンドグラインダー)により粉砕分散した後、圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザー GM−1)(加圧800kg/cm2 )でさらに粉砕分散の操作を繰り返して、5%分散液を試作した(以下、分散液Cとも称する)。この分散液C中の非晶質シリカの粒子径分布は30nm〜150nm、平均粒子径50nmで、90%が100nm以下であった。この分散液C(固形分100部)に、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(日東紡績社製、商品名:PAS−J−81)15部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)40部を添加した。このカチオン樹脂添加により凝集させた水分散液を圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザー GM−1)を用いて圧力再分散して(加圧450kg/cm2)7%水分散液を作製した。この再分散液中の微粒子の粒子径分布は30nm〜180nm、平均粒径60nmで、80%が10nm〜110nmであった。再分散液をブレードコーターで塗工量が20g/m2 となるように市販原紙(王子製紙社製、商品名:OKプリンス、127. 9g/m2 )に塗工し、乾燥させることによりインクジェット記録体を製造した。
【0035】
実施例3
実施例2で得られた再分散液を用い、メイヤーバーで塗工量が20g/m2となるように、成形面として利用するPETフィルム(東レ社製、ルミラーT、75μm、表面粗さRa=0.02μm)に塗工し、乾燥させた。続いて、市販塗工紙(王子製紙社製、商品名:OKコート、127. 9g/m2 )をラミネートしたもの(エクストリュージョンラミネート法により塗工紙表面に15μmのポリエチレンをラミネートしたもの、以下単にラミネート塗工紙とも称する)と重ね合わせた後、PETフィルムを剥離することにより本発明のインクジェット記録体を製造した。
【0036】
比較例1
合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、商品名:ファインシール X−45、2次粒径4.5μm、一次粒径約15nm)100部を含む水分散液をコーレス攪拌機(SMT社製、商品名:マルチディスパーサー PB95)を用いて分散した。分散液中のシリカの平均粒子径は4.5μmであった。
さらにこの分散液にポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)40部を混合し、7%水分散液を作製した。この分散液を、メイヤーバーで塗工量が20g/m2 となるように市販原紙(王子製紙社製、商品名:OKプリンス、127. 9g/m2 )に塗工し、乾燥させることによりインクジェット記録体を製造した。
【0037】
比較例2
合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、商品名:ファインシール X−45、2次粒径4.5μm、一次粒径約15nm)100部を含む水分散液を超音波振動分散機(日本精機社製、US−600T)を用いて粉砕した。
この分散液中の非晶質シリカの粒子径分布は、50nm〜800nmであり、平均粒子径140nmで、60%が90nm〜190nmであった。
さらにこの分散液にポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)40部を混合し、7%水分散液を作製した。この分散液を、メイヤーバーで塗工量が20g/m2 となるように市販原紙(王子製紙社製、商品名:OKプリンス、127. 9g/m2 )に塗工し、乾燥させることによりインクジェット記録体を製造した。
【0038】
[評価方法]
実施例、参考例、比較例で得られたインクジェット記録体の印字光沢性、記録層平滑性、印字濃度及び耐水性などは以下に示す方法で評価した。印字光沢性、印字濃度及び耐水性については市販のインクジェットプリンター(EPSON社製、商標:PM−700C)で記録を行った場合のベタ部分を示す。
[印字部の光沢性(照り感)]
印字部の光沢性は印字部に対して20度の横角度から観察して目視評価した。
◎:カラー写真並の高い照り感あり
○:カラー写真よりは劣るが、高い照り感ある
△:わずかに照り感あり
×:照り感全くなし
【0039】
[記録層平滑性]
目視で塗膜の表面平滑性を観察した。
◎:極めて平滑
○:表面の凸凹が少なく、平滑
△:表面に凸凹が認められ、平滑感はあまりない
×:表面がかなりボコついており、外観は極めて悪い
[印字部の耐水性]
インクジェット記録体に前記プリンターで印字し、24時間放置後、印字部に水滴を落として1分後にふき取った。水滴を落とした部分の状態を目視で観察した。
◎:インクの滲みが全くない
○:インクの滲みがほとんどない
△:インクの滲みは見られるが、実用上は影響ないレベルである
×:インクの滲みが見られ、実用上影響がある
【0040】
[印字濃度]
黒ベタ部の印字濃度をマクベス反射濃度計(Macbeth,RD−920)を用いて測定した。表中に示した数字は5回測定の平均値である。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
表1からも明らかなように、本発明の製造方法により印字光沢性、記録層平滑性、印字濃度及び耐水性ともに優れたインクジェット記録体を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧力式ホモジナイザを説明する断面図。
【符号の説明】
1:処理液
2:バルブシート
3:インパクトリング
4:ホモバルブ
Claims (1)
- 支持体に圧力式ホモジナイザーを用いて250kg/cm2以上1000kg/cm2以下の圧力で粉砕して得られる平均粒径10nm〜300nmのシリカ二次粒子からなる顔料粒子を含有する分散液に、カチオン樹脂及び水溶性バインダーを添加して凝集・増粘させ、凝集した微粒子を圧力式ホモジナイザーを用いて再分散させて平均粒径500nm以下で平均粒径±50nmの範囲に全微粒子数の70%以上を含む二次粒子からなる顔料微粒子とした記録層用分散液を調製し、該記録層用分散液を塗布・乾燥して記録層を形成することからなるインクジェット記録体の製造方法。
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