JP3678853B2 - ゴム組成物及びこのゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤ - Google Patents

Description

【０００１】
本発明はジエンゴムの群から選択された少なくとも１種のポリマーをベースとし、さらにそのほかに、タイヤ混合物中のゴム１００重量部を基準にして、５乃至１００重量部の微粉末沈降ケイ酸、０乃至８０重量部のカーボンブラック、場合によっては０．２乃至１０重量部のシランカップリング剤および０．５乃至２０重量部の少なくとも１種の非芳香族粘度低下物質を含有している、特にタイヤのトレッドのためのゴム組成物に関する。
【０００２】
タイヤの転動抵抗を減らし、かつ、濡れた路面に対するロードホールディング性または耐摩耗性などのタイヤ特性を改善するため、現在では溶液中で製造されたスチレンブタジエンゴムと、ほとんどの場合少なくとも１種の他のジエンエラストマーおよび補強充填材としての微粉末沈降ケイ酸とを組み合わせたトレッド用ゴム組成物を使用することが比較的広く行われている。この場合、ケイ酸は単独でまたはカーボンブラックと組み合わせて使用される。このような種類のタイヤのトレッドのためのゴム組成物は、たとえば、欧州特許公開第０５０１２２７号明細書または欧州特許公開第０４４７０６６号明細書から公知である。
【０００３】
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴムまたはスチレンブタジエンゴムのごとき標準的ポリマーをベースとしたゴム組成物中に活性炭の代わりに沈降ケイ酸を使用すると、未加硫組成物の大きな粘度上昇が観察される。この粘度上昇の原因はケイ酸ネットワークの形成に帰せられる。すなわち、この場合、一次粒子がその表面に存在するシラノール基によって相互に水素架橋を形成する。
加工の際に障害となる高い粘度を下げるため、すでに一連の手段が公知となっており、かつ使用もされている。これに関しては、たとえば、下記の文献が参照される：
“Rubber Chemistry and Technology", 49/3, 703 乃至 774頁(1976 年) 所載 のM.P.Wagnerの論文“Reinforcing Silicas and Silicates "；
“Rubber Chemistry and Technology", 48/3, 410 乃至461 頁(1975 年) 所載 のE.N.Dannenbergの論文“The Effects of Surface Chemical Interaction on
the Properties of filler-reinforced Rubbers " 。
【０００４】
これらの文献には、付加的に組成物の成形性を改善する金属セッケン、とりわけ亜鉛セッケンの使用ならびに各種カップリング剤、とりわけシランの使用がそれぞれ提案されている。更にポリオール、グリセリンおよびジエチレングリコールの粘度低下作用は公知である。ＳＢＲ−ケイ酸混合物中における各種ポリオールの作用に関する研究が、たとえば、"Rubber Age" 1968 年５月号のD.D.Dunnomの論文に開示されている。２−メチル−２，４−ペンタンジオールあるいは２，２，４−トリメチル−１，３−ペンタンジオールを使用した時に組成物粘度が最も低減することが確認されている。しかしながら、これら２種のジオールは、架橋収率が激しく低下するから、ゴム組成物にはほとんど使用できない。さらに、アミン類たとえばトリエタノールアミンおよびいくつかの促進剤類たとえばスルファミドの粘度低下作用も公知である。
【０００５】
これら各種物質の粘度低下作用はそれらがケイ酸表面に吸着されることによるものであるが、これは一次粒子間の相互作用を弱めるものである。
乗用車タイヤのトレッドにいわゆる完全シリカ混合物が広く導入されるようになるにつれて、その高い組成物粘度の問題が再び現実の問題となってきた。組成物加工性の悪化を伴う極端に高い組成物粘度は、特に、比較的シラン含有率の低いあるいは亜鉛セッケンの含有率の低い完全シリカ組成物の場合に生じる。
【０００６】
したがって、本発明の目的は、組成物加工性の明らかな改善を付加的にもたらすシリカ組成物に対して有効な粘度低下物質を発見することである。当然、この目的は毒物学的に問題のない物質であって、しかも加硫された組成物の所望評価数値レベルにマイナスの影響をまったく及ぼさないような物質によって達成されなければならない。
【０００７】
この目的は、非芳香族粘度低下物質がもっぱら炭素、水素、酸素の３つの元素のみを基礎とするものであり、そして１，２−または１，３−ジオールとして存在する少なくとも２つのヒドロキシル基を有する部分、および少なくとも２つの化学的に結合した炭素原子を含有する部分（この部分において、それら炭素原子も、それらと化学的に結合した隣接炭素原子も酸素で置換されていない）を有している物質に関する本発明によって達成される。
【０００８】
このような物質をケイ酸含有ゴム組成物に使用すると、従来公知の粘度低下物質を使用した場合よりもさらに高い粘度低下作用が達成され、しかも同時に良好なゴム組成物の加工性が保証されることが見い出された。本発明の範囲において提案される物質は毒物学的になんら問題がなく、その使用は本発明によるゴム組成物から製造された加硫化物のその他所望の性質を保証する。
本発明によりゴム組成物に配合される粘度低下物質の量は、その組成物中のゴム１００重量部を基準にして、０．５乃至２０重量部、特に１乃至１０重量部である。この量の範囲において最良の結果が得られる。
【０００９】
本発明の１つの好ましい実施態様においては、配合される粘度低下物質の酸素原子はもっぱらヒドロキシル基にのみ存在する。
かかる物質のグループの中で特に考慮されるものは下記のものである。
１，２−ペンタンジオール、
２−メチル−２−プロピル−１，３−プロパンジオール、
２−ブチル−２−エチル−１，３−プロパンジオール、
２−ｓｅｃ−ブチル−２−メチル−１，３−プロパンジオール、及び
トリメチロールプロパン（２−エチル−２−ヒドロキシメチル−１，３−プロパンジオール）。
加工性と粘度低下作用の点から、トリメチロールプロパンの使用が特に有利であることが判明した。
【００１０】
本発明のいま１つの好ましい実施態様においては、配合される粘度低下物質はヒドロキシル基のほかにさらに付加的に他の酸素官能基たとえばエステル基、エーテル基、アセタール基またはケタール基を含む。
この場合、その付加的酸素官能基が１，２−または１，３−ジオールとして存在する少なくとも２つのヒドロキシル基を有する部分と少なくとも２つの化学的に結合した炭素原子を有する部分（この部分における炭素原子も、それらと化学的に結合した隣接炭素原子も酸素で置換されていない）との間にブリッジを形成するような物質を使用することができる。
【００１１】
「架橋酸素」を有する粘度低下物質としては、ポリールと脂肪酸のエステルが重要なグループの例である。この場合、そのポリオールは一個の脂肪酸が置換しているもの（モノエステル）が好ましい。これに対して、ジエステルは比較的粘度低下作用が弱い。
ポリオールとしては、したがって、特に下記のものが考慮される。
グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットからなるグループ；糖アルコールたとえばエリトリット、キシリット、ソルビット、ダルシット、マンニットまたはイノシット；さらに
分子量が６００以下の低分子ビニルアルコール。
【００１２】
簡単なポリオールの代わりに、１つまたはそれ以上のエーテル基を含有するようなポリオールも本発明によるエステルの成分となりうる。このようなグループの中では下記のものが特に好適に使用できる。
グリセリンまたはペンタエリトリットのポリ化合物、特にジ化合物（ジグリセリン、ジペンタエリトリット）；
脱水によって糖アルコールから生成可能な環式エーテル、特にソルビットから生成されたソルビタン；さらには
中程度のエトキシル化度を有するポリールのグループ；
フラン−またはピラン配置で存在する糖のグループ、特に、サッカロース。
【００１３】
本発明のさらにいま１つの特徴にしたがって、少なくとも２つのヒドロキシル基を有する部分が架橋酸素を介して１個または２個の脂肪酸分子でエステル化されているような本発明による粘度低下物質を使用することができる。この場合、酸としては特に、オクタン酸、２−エチル−ヘキサン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸、ならびに脂環式側鎖を有する脂肪酸、特にシクロペンテニル−脂肪酸などが考慮される。
【００１４】
これに関連して、粘度低下物質の脂肪酸成分が複数の脂肪酸の組成物であるような物質も好適である。この場合、特に脂肪酸成分が天然原料に基づく組成物であり、この組成物が脂肪酸分解の際に沈殿するたとえばココ脂肪酸、菜種脂肪酸、大豆脂肪酸類、ならびにそれらの分留分たとえば低分子第１留分酸類を含むものを使用することが考慮される。しかしまた、主として脂肪酸からなる他の工業的組成物、たとえばトール油脂肪酸も使用できる。
【００１５】
本発明の範囲の中で使用される「エーテル架橋」中に１つの酸素を有する粘度低下物質としては、特に糖と脂肪アルコールからなる化合物が重要である。
また、本発明のさらにいま１つの実施態様によれば、ポリオールが部分的にアルデヒドでアセタール化されている非芳香族物質が使用できる。このような物質の例は、ブチラールで約３０％まで置換された低分子ポリビニルアルコールである。
【００１６】
本発明はさらに、そのトレッドの少なくとも一部分が加硫されている本発明のゴム組成物から構成されているタイヤに関する。
以下、本発明を添付表１にまとめて示されている基準例および２つの比較例を参照しながらさらに詳細に説明する。
【００１７】
表１に含まれている全ての組成例において、記載数値は組成物中のゴム１００重量部を基準とした重量部である。
全ての組成処方で重合体チップ、及びカーボンブラック、ケイ酸、シラン、芳香族油、亜鉛セッケン、脂肪酸セッケン、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤、遮光ワックス、促進剤（ＤＰＧ、ＣＢＳ）および硫黄の量は同じである。各組成物には異なる粘度低下物質が配合され、基準例には常用加工助剤がそれぞれ２重量部の割合で配合されている。
【００１８】
全ての組成処方において、重合体チップは天然ゴム、溶液中で製造されたスチレンブタジエンゴム（Ｓ−ＳＢＲ）およびcis-ブタジエンゴム（cis-ＢＲ）からなるものである。ただしこの組成からいくらかずらして選択することも可能である。即ち、ゴム成分は下記群のゴムから選択された少なくとも１種の重合体を含有するものでありうる。天然ゴム、ポリイソプレンゴム、cis-またはビニルポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム（エマルジョン重合または溶液重合により製造されたもの）あるいはこれらの混合物。この場合さらにブチルゴム、ハロブチルゴムまたは３,４−イソプレンゴムを添加することも可能である。
【００１９】
ケイ酸としては、本発明の範囲内で、ゴム組成物の製造の際に通常使用されるような任意の微粉末沈降ケイ酸が使用できる。特に、ＢＥＴ比表面積が４０乃至３５０m²／g 、特に好ましくは１００乃至２５０m²／g 、ＣＴＡＢ比表面積が５０乃至３５０m²／g 、好ましくは１００乃至２５０m²／g 、平均粒子サイズが１０乃至１５０μｍ、好ましくは１０乃至１００μｍであり、そして１００ｇにつき５０乃至３５０ml、好ましくは１００ｇにつき１５０乃至２５０mlのＤＢＰ吸収を有するケイ酸が充填剤として使用される。
【００２０】
ケイ酸は好ましくはシランカップリング剤と一緒に使用される。この場合、特に硫黄含有シランが適当である。たとえば、
ビス（３−トリエトキシシリルプロピル）−四硫化物（ＴＥＳＰＴ、１対１の割合でカーボンブラックと混合してDegussa 社からＸ５０Ｓの商品名で供給されており、市場で入手可能である）、
３−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び
３−チオシアネートプロピルトリメトキシシラン
のようなシランである。
【００２１】
シランカップリング剤は０．２乃至１０重量部の量、好ましくは０．５乃至７重量部の量で使用される。本発明によるゴム組成物はカーボンブラックを含有することができる。しかし必ず含有すべきものではない。カーボンブラックとしてはトレッドのために当技術分野で通常使用されているカーボンブラックが適当である。このようなカーボンブラックは当技術分野に通常の知識を有する者には公知である。カーボンブラックの使用量は０乃至８０重量部、特に１０乃至８０重量部であり、好ましくは７０重量部までである。
【００２２】
本発明のゴム組成物はさらにすでに前記した常用混合成分をトレッド用組成物の場合に通常の重量部で含有することができる。
【００２３】
全ての処方に基づき実験用試料が作成されそしていくつかの実験室テストが実施された。この場合、下記の試験法が採用された。
ムーニー粘度（ML １＋３，１００℃）：ＤＩＮ53523, Teil 3による。
破断強度、破断伸びおよび１００％および３００％伸びにおける張力値：
ＤＩＮ 53504による。
ショアー硬度Ａ：ＤＩＮ 53505による。室温（ＲＴ）、−１０℃および７０℃で それぞれ測定。
反撥弾性：ＤＩＮ 53512による。室温（ＲＴ）および７０℃で測定。
ノッチ付衝撃強度：ＤＩＮ 53515による。７０℃で測定。
圧縮ひずみ残（圧縮永久歪Ｂ）：ＤＩＮ 53517 による。７０℃で測定。
【００２４】
基準組成物は加工助剤としてペンタエリトリット−トリ−ステアレートを含有している。比較組成物Ｖ₁ とＶ₂ は公知粘度低下物質、すなわちポリエチレングリコール１５００とグリセリンを含有している。ゴム組成物Ｅ1 乃至Ｅ4 は本発明による非芳香族粘度低下物質を含有している。
生ゴム組成物の完成後に測定されたムーニー粘度の測定値を見れば本発明による組成物Ｅ1 乃至Ｅ4 に明白に粘度低下が認められる。このテストに於いて本発明により製造されたすべての組成物が、一般的に、その混合性ならびに加工性、特に射出性の点において、基準組成物および２つの比較組成物よりも明らかに改善されていることが確認された。
【００２５】
更に、完全加硫された試料についてさらに実施された実験室テスト（老化テスト）によって、組成物試料Ｅ1、Ｅ2、Ｅ3 から製造された加硫化物が基準組成物と２つの比較組成物Ｖ1 とＶ2 から製造された加硫化物とほぼ同等レベルを示すことが確認された。組成物Ｅ4 から製造された加硫化物の場合には、より高い張力値、より高い硬度およびより高い反撥弾性が測定された。このことはシランの含量を下げることを許容するであろう。
【表１】

【表２】

Claims (4)

1. ジエンゴムの群から選択される少なくとも１種のポリマー、ゴム組成物中のゴム１００重量部に対して、５〜１００重量部の微粉末沈降ケイ酸、０〜８０重量部のカーボンブラック、および０．５〜２０重量部の少なくとも1種の非芳香族粘度低下物質を含むタイヤトレッド用ゴム組成物において、
   前記非芳香族粘度低下物質が、グリセリン−モノーステアレート、ソルビタン−モノ−ステアレート、ソルビタン−モノ−オレエートおよびトリメチロールプロパン（２−エチル−２−ヒドロキシメチル−１，３−プロパンジオール）からなる群から選択される少なくとも１種の物質であることを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
2. さらに、ゴム組成物中のゴム１００重量部に対して、０．２〜１０重量部のシランカップリング剤を含有する請求項１記載のゴム組成物。
3. 非芳香族粘度低下物質の含有量が、ゴム組成物中のゴム１００重量部に対して、１〜１０重量部である請求項１または２記載のゴム組成物。
4. 少なくとも一部が加硫されている、請求項１〜３のいずれかに記載のゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤ。