JP6511791B2 - ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
しかしながら、この架橋剤に含まれるC−S結合は、S−S結合と比べて強い結合力を有するため、加硫反応中に架橋剤の解離が起こりづらく、加硫速度が遅くなり生産性が悪化するという問題があった。
一方、乗用車用タイヤにおける低転がり抵抗性や湿潤路面での制駆動性を高めるためには、シリカの配合が有効であり、前記架橋剤とシリカを組み合わせることで更なる高性能化が可能であるが、シリカはその表面に加硫促進剤を吸着する傾向があり、加硫速度を更に遅くしてしまう。なお、加硫促進剤の配合量を増量すれば、加硫速度の低下を防止することが可能であるが、この場合、スコーチ悪化や破断物性低下の問題が発生する。
また、シリカ配合による所望の特性を発現させるためには、シリカをゴム中に高分散させる必要がある。しかしシリカは、その粒子表面に存在するシラノール基による水素結合の形成のために凝集する傾向を有し、ゴム中に均一に分散させることが困難である。
すなわち本発明は以下の通りである。
炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記シリカの質量に対し1〜20質量%配合してなることを特徴とするゴム組成物。
2.前記1に記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
本発明で使用されるジエン系ゴムは、通常のゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
これらのジエン系ゴムの中でも、本発明の効果の点からジエン系ゴムはSBR、BRが好ましい。
本発明で使用されるシリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカなど、従来からゴム組成物において使用することが知られている任意のシリカを単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
なお、本発明の効果が向上するという観点から、シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、100〜400m2/gであることが好ましく、150〜300m2/gであるのがさらに好ましい。
なお窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K6217−2に準拠して求めるものとする。
本発明で使用されるシランカップリング剤は、とくに制限されないが、含硫黄シランカップリング剤が好ましく、例えば3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、ビス−(3−ビストリエトキシシリルプロピル)−テトラスルフィド、ビス−(3−ビストリエトキシシリルプロピル)−ジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
本発明で使用されるグリセリンモノ脂肪酸エステルは、炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするモノグリセリドである。
脂肪酸としては、具体的には、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の直鎖脂肪酸類が挙げられる。
グリセリンモノ脂肪酸エステルは、一種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の効果が向上するという観点から、前記脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
本発明で使用されるグリセリンモノ脂肪酸エステルは、グリセリン由来の2つの−OH基がシリカ表面のシラノール基に吸着すると同時に、脂肪酸由来の炭素鎖が疎水化部位として作用し、ゴムに対するシリカの分散性に寄与する。したがって、シリカ表面への加硫促進剤の吸着量が減少し、加硫速度の低下を抑制し得る。また、加硫促進剤を増量する必要がないので、スコーチの悪化も避けられる。
本発明で使用される環状ポリスルフィドは下記式(1)で表される。
さらに好適な形態では、xは平均3〜5の数であり、nは1〜10の数であり、Rは置換もしくは非置換のC2〜C16のアルキレン基、更に好ましくはC4〜C10のアルキレン基を示し、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、1,2−プロピレンなどの直鎖又は分岐鎖のアルキレン基があげられ、これらのアルキレン基はフェニル基、ベンジル基のような芳香族環、アルキル基、エポキシ基、シリル基、イソシアネート基、ビニル基などの置換基で置換されていてもよい。Rとしては更にオキシアルキレン基を含むアルキレン基、例えば基(CH2CH2O)p及び基(CH2)q(式中、pは1〜5の数であり、qは0〜2の数である)が任意に結合したオキシアルキレン基を含むアルキレン基とすることができる。
−CH2CH2OCH2CH2−,−(CH2CH2O)2CH2CH2−,
−(CH2CH2O)3CH−CH2−,−(CH2CH2O)4CH2CH2−,
−(CH2CH2O)3CH2CH2−,−(CH2CH2O)2CH2−,
−CH2CH2OCH2OCH2CH2−
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを5〜200質量部、シランカップリング剤を前記シリカの質量に対し1〜20質量%、炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記シリカの質量に対し1〜20質量%および前記式(1)で表される環状ポリスルフィドを0.1〜10質量部配合してなることを特徴とする。
シリカの配合量がジエン系ゴム100質量部に対し5質量部未満であると、低転がり抵抗性等のシリカ配合による所望の特性を向上することができない。
シランカップリング剤の配合量がシリカの質量に対し1質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えると加工性および破断伸びが悪化する。
グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量がシリカの質量に対し1質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えると破断特性が悪化する。
前記式(1)で表される環状ポリスルフィドの配合量がジエン系ゴム100質量部に対し0.1質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に10質量部を超えるとスコーチ性が悪化する。
シランカップリング剤の配合量は、シリカの質量に対し5〜15質量%であることが好ましい。
グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量は、シリカの質量に対し5〜15質量%であることが好ましい。
式(1)で表される環状ポリスルフィドの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、0.5〜5質量部であることが好ましい。
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
サンプルの調製
表1〜3に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
ペイン効果:未加硫の組成物を用いてASTM P6204に準拠してRPA2000においてG’(0.56%歪)を測定した。結果は、標準例1の値を100として指数表示した。この値が低いほどシリカの分散性が高いことを意味する。
加硫速度:JIS 6300に準拠して、振動式ディスク加硫試験機にて、振幅1度、160℃で95%の加硫度に達する時間(T95、分)を測定した。結果は、標準例の値を100として指数で示した。この値が低いほど、加硫速度が速く、生産性に優れることを示す。
破断強度:JIS K 6251に従い、室温で試験した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほど、補強性に優れることを示す。
破断伸び:JIS K 6251に従い、室温で試験した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほど、破断伸びに優れることを示す。
結果を表1〜3に併せて示す。
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3−1:シリカ(Solvay社製Zeosil 1165MP、窒素吸着比表面積(N2SA)=165m2/g)
*3−2:シリカ(Solvay社製Zeosil 1085GR、窒素吸着比表面積(N2SA)=80m2/g)
*3−3:シリカ(Solvay社製ZeosilPremium 200MP、窒素吸着比表面積(N2SA)=200m2/g)
*3−4:シリカ(PPG社製Hi−SilEZ 200G、窒素吸着比表面積(N2SA)=300m2/g)
*4:カーボンブラック(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN339、窒素吸着比表面積(N2SA)=90m2/g)
*5:シランカップリング剤(Evonik Degussa社製Si69、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
*6:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*7:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸YR)
*8:老化防止剤(Solutia Europe社製Santoflex 6PPD)
*9:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*10−1:グリセリンモノ脂肪酸エステル−1(シグマアルドリッチ製モノステアリン酸グリセロール)
*10−2:グリセリンモノ脂肪酸エステル−2(シグマアルドリッチ製モノオレイン酸グリセロール)
*10−3:グリセリンモノ脂肪酸エステル−3(シグマアルドリッチ製モノベヘン酸グリセロール)
*11−1:比較脂肪酸エステル−1(シグマアルドリッチ製グリセリン)
*11−2:比較脂肪酸エステル−2(シグマアルドリッチ製モノ酪酸グリセリン)
*12:硫黄(軽井沢精錬所社製油処理イオウ)
*13−1:環状ポリスルフィド(前記式(1)で表される環状ポリスルフィドにおいて、x=5、n=1-4、R=-(CH2)6-である化合物)
*13−2:環状ポリスルフィド(前記式(1)で表される環状ポリスルフィドにおいて、x=4、n=1-2、R=-(CH2)2-O-CH2-O-(CH2)2-である化合物)
*14:加硫促進剤−1(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*15:加硫促進剤−2(Flexsys社製Perkacit DPG)
比較例1は、標準例2の組成物に対し、加硫促進剤を増量した例であるが、加硫速度は上昇するものの、スコーチが悪化している。
これらの結果に対し、実施例1〜16では、ジエン系ゴムに対し、シリカ、シランカップリング剤、特定のグリセリンモノ脂肪酸エステルおよび特定の環状ポリスルフィドを特定量でもって配合したので、特定の環状ポリスルフィドを使用しても加硫速度を低下させず、かつシリカの分散性を高め得ることが分かった。またスコーチおよび破断物性も良好である。
比較例2は、環状ポリスルフィドを配合していないので、スコーチ、破断強度が低下した。
比較例3は、環状ポリスフィドの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、スコーチが悪化した。
比較例4は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの替わりにグリセリンを使用した例であるので、ペイン効果、破断伸びが悪化した。
比較例5は、モノ酪酸グリセリンを使用した例であるので、ペイン効果が悪化した。
比較例6は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、加硫速度が悪化した。
比較例7は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、破断強度が悪化した。
比較例8は、シリカの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、スコーチ、ペイン効果、破断伸びが悪化した。
Claims (2)
- ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを5〜200質量部、シランカップリング剤を前記シリカの質量に対し1〜20質量%、下記式(1)で表される環状ポリスルフィドを0.1〜10質量部、およびグリセリン脂肪酸エステル成分を前記シリカの質量に対し1〜20質量%配合してなるゴム組成物であって、
前記グリセリン脂肪酸エステル成分が、炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルのみからなることを特徴とするゴム組成物。
- 請求項1に記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
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