JP6164260B2 - ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、脂肪酸金属塩を配合することによる硬度の低下を抑制し、シリカの分散性を高めて優れた低転がり抵抗性を付与するとともに、加工性にも優れたゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
近年、益々強まるタイヤ高性能化への要求に伴い、例えば低転がり抵抗性を獲得するために、ゴムに高比表面積のシリカを多量に配合する手法が採用されている。
しかしシリカはゴムに対する親和性が乏しく高分散化が困難であり、またシリカは表面に存在するシラノール基による水素結合の形成のために凝集する傾向を有し、混練時にゴム組成物のムーニー粘度を上昇させ、加工性を悪化させるという問題点がある。そのため、ゴムに脂肪酸金属塩からなる加工助剤を配合する技術が知られている。このような加工助剤を使用することにより、シリカの分散性は確保できるものの、ゴムに対する可塑化効果が高く、硬度が低下し、タイヤの操縦安定性が悪化するという問題点があった。なお、フィラーを増量することにより硬度を補填することは可能であるが、この場合、さらなる加工性や発熱性の悪化を招いてしまう。
なおシリカ配合ゴム組成物の加工性を高める従来技術として、例えば下記特許文献1には、添加剤として脂肪酸およびトリメチロールプロパンをゴムに添加する技術が開示されている。しかしながら従来技術ではいずれも、ゴム組成物における前記問題点を解決するには至っていない。
特開2006−52407号公報
したがって本発明の目的は、脂肪酸金属塩を配合することによる硬度の低下を抑制し、シリカの分散性を高めて優れた低転がり抵抗性を付与するとともに、加工性にも優れたゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジエン系ゴムに対し、特定の比表面積を有するシリカ、シランカップリング剤、特定のグリセリンモノ脂肪酸エステルおよび脂肪酸金属塩を特定量でもって配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が150m/g以上のシリカを70〜200質量部、シランカップリング剤を前記シリカの質量に対し1〜20質量%、炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記シリカの質量に対し1〜20質量%および脂肪酸金属塩を1〜20質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
2.前記グリセリンモノ脂肪酸エステルが不飽和結合を含むことを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.前記1または2に記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
本発明によれば、ジエン系ゴムに対し、特定の比表面積を有するシリカ、シランカップリング剤、特定のグリセリンモノ脂肪酸エステルおよび脂肪酸金属塩を特定量でもって配合したので、脂肪酸金属塩を配合することによる硬度の低下を抑制し、シリカの分散性を高めて優れた低転がり抵抗性を付与するとともに、加工性にも優れたゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、通常のゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
これらのジエン系ゴムの中でも、本発明の効果の点からジエン系ゴムはSBR、BRが好ましい。
(シリカ)
本発明で使用するシリカは、窒素吸着比表面積(NSA)が150m/g以上である必要がある。窒素吸着比表面積(NSA)が150m/g未満であると、補強性が不足し、操縦安定性が悪化する。なお、本発明の効果が向上するという観点から、シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、150〜400m/gであることが好ましく、150〜300m/gであるのがさらに好ましい。
なお窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K6217−2に準拠して求めるものとする。
(シランカップリング剤)
本発明で使用されるシランカップリング剤は、とくに制限されないが、含硫黄シランカップリング剤が好ましく、例えば3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、ビス−(3−ビストリエトキシシリルプロピル)−テトラスルフィド、ビス−(3−ビストリエトキシシリルプロピル)−ジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
(グリセリンモノ脂肪酸エステル)
本発明で使用されるグリセリンモノ脂肪酸エステルは、炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするモノグリセリドである。
脂肪酸としては、具体的には、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の直鎖脂肪酸類が挙げられる。
グリセリンモノ脂肪酸エステルは、一種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の効果が向上するという観点から、前記脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が好ましい。
本発明では、グリセリンモノ脂肪酸エステルを配合しているため、該エステルにおけるグリセリン由来の2つの−OH基がシリカ表面のシラノール基に吸着すると同時に、脂肪酸由来の炭素鎖が疎水化部位として作用し、ゴムに対するシリカの分散性に寄与している。したがって、シリカを高分散してシリカ配合による所望の効果を発現することができる。また、脂肪酸金属塩はゴム中でミセルのような会合体を形成し、変形時にこの会合体が崩壊することで可塑効果を発揮すると考えられているが、このような系にグリセリンモノ脂肪酸エステルを配合すると、脂肪酸金属塩の会合時に該エステルが共存し、会合体の形成を阻害することで可塑効果を抑制し、ゴムの低硬度化を抑制することができる。シリカ多量配合による加工性の悪化も避けることができる。
特に、グリセリンモノ脂肪酸エステルのアルキル鎖が不飽和である場合、不飽和結合が硫黄との反応点となり、ポリマーの架橋密度を相対的に低下させ、余分な架橋を抑制することで本発明の効果がさらに高まるとともに、破断強度・破断伸びを向上させることが可能である。
(脂肪酸金属塩)
本発明で使用される脂肪酸金属塩としては、例えば炭素数3〜30の飽和または不飽和脂肪酸の金属塩が挙げられる。脂肪酸としては好ましいものとして、例えば例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。また、これらの脂肪酸の塩を形成する金属としては、K、Ca、Na、Mg、Zn、Co、Ni、Ba、Fe、Al、CuおよびMnから選ばれた少なくとも1種の金属が挙げられ、とくにZn、K、Caが好ましい。
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が150m/g以上のシリカを70〜200質量部、シランカップリング剤を前記シリカの質量に対し1〜20質量%、炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記シリカの質量に対し1〜20質量%および脂肪酸金属塩を1〜20質量部配合してなることを特徴とする。
シリカの配合量が70質量部未満であると、低転がり抵抗性を得ることができない。逆に200質量部を超えると、加工性が悪化する。
シランカップリング剤の配合量がシリカの質量に対し1質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えると加工性および破断伸びが悪化する。
グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量がシリカの質量に対し1質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えると操縦安定性が悪化する。
脂肪酸金属塩の配合量が1質量部未満であると、シリカの分散性が悪化する。逆に20質量部を超えると加工性が悪化する。
また、本発明のゴム組成物において、シリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、80〜150質量部であることが好ましい。
シランカップリング剤の配合量は、シリカの質量に対し1.5〜15質量%であることが好ましい。
グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量は、シリカの質量に対し1〜18質量%であることが好ましい。
脂肪酸金属塩の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1〜10質量部であることが好ましい。
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに適しており、とくにトレッドに適用するのがよい。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
標準例1、実施例1〜9および比較例1〜8
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
ムーニー粘度:上記ゴム組成物を用い、JIS K6300に従い、100℃における未加硫ゴムの粘度を測定した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。指数が小さいほど粘度が低く、加工性が良好であることを示す。なお、ゴム組成物を調製後、室温で1週間保管した後、これを用いて上記ムーニー粘度を測定した実験も行った。
タイヤ転がり抵抗性:JIS D 4324:2009、乗用車用条件に従って80km/hで試験した。結果は、標準例1の値を100として指数で示した。指数が小さいほど、低転がり抵抗性であることを示す。
タイヤ操縦安定性:加硫ゴム試験片をトレッドに組み込んだ実車を用意し、テストドライバーによる官能評価を行い、下記の評価基準により評価した。A:優、B:良、C:可。
ペイン効果:未加硫の組成物を用いてASTM P6204に準拠してRPA2000においてG’(0.56%歪)を測定した。結果は、標準例1の値を100として指数表示した。指数が小さいほどシリカの分散性が高いことを意味する。
結果を表1に併せて示す。
Figure 0006164260
*1:SBR(旭化成(株)製タフデン3830、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3:シリカ(ローディア社製Zeosil 1165GR、窒素吸着比表面積(NSA)=165m/g)
*4:カーボンブラック(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN339、窒素吸着比表面積(NSA)=90m/g)
*5:シランカップリング剤(Evonik Degussa社製Si69、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
*6:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*7:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸YR)
*8:老化防止剤(Solutia Europe社製Santoflex 6PPD)
*9:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*10−1:ステアリン酸亜鉛(東京化成工業(株)製)
*10−2:ステアリン酸カリウム
*10−3:ステアリン酸カルシウム
*10−4:ステアリン酸ナトリウム
*10−5:ステアリン酸マグネシウム
*11−1:グリセリンモノ脂肪酸エステル−1(シグマアルドリッチ製モノステアリン酸グリセロール)
*11−2:グリセリンモノ脂肪酸エステル−2(モノオレイン酸グリセロール)
*11−3:グリセリンモノ脂肪酸エステル−3(モノベヘン酸グリセロール)
*12−1:比較脂肪酸エステル−1(シグマアルドリッチ製グリセリン)
*12−2:比較脂肪酸エステル−2(モノ酪酸グリセロール)
*13:硫黄(軽井沢精錬所社製油処理イオウ)
*14:加硫促進剤−1(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*15:加硫促進剤−2(Flexsys社製Perkacit DPG)
上記の表1の結果から、標準例1と比較例1とを比較すると、比較例1の組成物は、ステアリン酸亜鉛からなる加工助剤を配合しているので、加工性は良化しているものの、硬度が低下し、タイヤ操縦安定性が悪化している。
これに対し、実施例1〜9では、ジエン系ゴムに対し、特定の比表面積を有するシリカ、シランカップリング剤、特定のグリセリンモノ脂肪酸エステルおよび脂肪酸金属塩を特定量でもって配合したので、良好な加工性を示し、またシリカの高分散化により優れた低転がり抵抗性を示している。さらに硬度の低下が抑制され、優れたタイヤ操縦安定性を確保している。
比較例2は、脂肪酸金属塩を配合していないので、加工性が悪化した。
比較例3は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの替わりにグリセリンを使用した例であるので、加工性、転がり抵抗性が悪化し、タイヤ操縦安定性に改善が見られなかった。
比較例4は、モノ酪酸グリセロールを使用した例であるので、ペイン効果が悪化した。また、転がり抵抗性、タイヤ操縦安定性に改善が見られなかった。
比較例5は、脂肪酸金属塩の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、加工性が悪化した。
比較例6は、脂肪酸金属塩の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、タイヤ操縦安定性に改善が見られなかった。
比較例7は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、転がり抵抗性、タイヤ操縦安定性、ペイン効果に改善が見られなかった。
比較例8は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、加工性、転がり抵抗性が悪化した。
なお、実施例6以外の実施例は参考例である。

Claims (2)

  1. ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が150m/g以上のシリカを70〜200質量部、シランカップリング剤を前記シリカの質量に対し1〜20質量%、炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記シリカの質量に対し1〜20質量%および脂肪酸金属塩を1〜20質量部配合してなり、前記グリセリンモノ脂肪酸エステルが不飽和結合を含むことを特徴とするゴム組成物。
  2. 請求項に記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
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