JP4433073B2 - ゴム組成物 - Google Patents

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本発明はシリカ配合ゴム組成物に関し、更に詳しくはジフェニルグアニジン(DPG)を配合することなく、又はDPGの配合量を減らして、ゴム組成物の加硫速度、シリカの分散性、補強性及び粘弾性特性を向上させることができるゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
自動車の高性能化、高機能化に伴い、タイヤへの要求性能は年々高度になってきている。その一つとして、湿潤路面でのグリップ力、即ちウェットグリップ力を維持しながらも、低燃費性も兼ね備えたタイヤの開発が強く望まれている。従来、タイヤトレッドに用いられてきた補強性充填剤は、カーボンブラックであったが、最近では上記の要望からカーボンブラックと比較して良好な低ヒステリシスロス性とウェットスキッド性を有する超微粒子シリカが、タイヤトレッド用の補強性充填剤として用いられ始めてきた(例えば特許文献1参照)。しかしながら、シリカ系充填剤は、表面上に親水性シラノール基を有するため、カーボンブラックに比較してゴム分子に対する親和性が劣り、そのためシリカ系充填剤は、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド性には優れるものの、補強性や耐摩耗性においてはカーボンブラックには及ばないという問題があった。そこで、シリカ系充填剤の補強性をカーボンブラックと同程度にするために、ゴム分子とシリカ粒子表面を化学的に結び付け、補強性を増大させることを可能とするシランカップリング剤の併用がなされてきた(例えば特許文献2参照)。代表的なシランカップリング剤としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
然るに、シリカ含有ゴム組成物にシランカップリング剤を配合する場合、シリカとシランカップリング剤とのカップリング反応が不十分であると、シリカの良好な分散性は得られず、またカップリング反応が過剰であるとゴム焼けを招いて品質が低下するという問題があった。そのため、従来の混練方法では、混練作業中に熱電対などで常時ゴム温度を測定してゴム温度を一定範囲に維持しながら、経験的に設定した時間内に混練操作をしていたが、シリカとシランカップリング剤の反応量がバッチ毎に必ずしも一定するとは限らず、シリカ配合の混合加工性と所望のゴム特性のバランス化は難易度が高い。
ところで、シリカ配合ゴム組成物には従来加硫促進剤としてジフェニルグアニジン(DPG)が多用されてきたが、ゴム/スチールコード接着への悪影響が懸念されており、DPGの使用量を削減する動きがある。しかしながら、シリカ多量配合系ゴム組成物ではDPGの使用量を削減すると、加硫速度が低下、ゴム中のシリカの分散が悪化するという問題があった。
特許文献3にはジエン系ゴムに、ピペリジン骨格を有する2級アミン化合物である2,2,6,6-テトラメチルピペリジン又はその誘導体を配合することにより、高いグリップ性能を有するゴム組成物を得ることができる旨が開示されているが、この文献には当該化合物をシリカと共に配合することは記載されておらず、従ってシリカの分散性や加工性に関する記載もない。
特許文献4にはジエンエラストマーポリマーに有機性第4級アンモニウム塩を、シリカやその他の添加剤と共に、配合することによって二次加硫促進剤が添加されないときでも許容加硫速度を維持しながら良好な機械的特性を示す加硫製品が得られる旨記載されている。この文献には、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを有機性第4級アンモニウム塩の調製に使用することは記載されているが(実施例1及び2参照)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)をゴム組成物に配合することは全く記載されていない。
米国特許第5227425号明細書 米国特許出願番号第467583号明細書 特開2005−112921号公報 特表2006−509851号公報
従って、本発明の目的は、ゴム組成物中のDPGの使用量を削減するか、又はDPGを使用することなく、加硫速度の低下やゴム中のシリカの分散悪化の問題を解決したゴム組成物を提供することにある。
本発明に従えば、ジエン系ゴム100重量部、シリカ20〜120重量部、硫黄含有シランカップリング剤がシリカの3〜15重量%及び式(I):
Figure 0004433073
を有する1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)及び/又はその塩0.1〜10重量部を含んでなり、DBN及び/又はその塩を、ジエン系ゴム、シリカ及びシランカップリング剤と同時に第一の混合工程で混合することによって得られるゴム組成物が提供される。
本発明に従えば、更に、前記ゴム組成物を空気入りタイヤ、特にそのキャップトレッドに用いた空気入りタイヤが提供される。
本発明によれば、シリカ配合ゴム組成物に、ピペリジン骨格を有する前記式(I)の1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)及び/又はその塩をシリカ配合ゴム組成物に配合することにより、ゴム組成物の加硫速度やシリカの分散、補強性、粘弾性特性を向上させ、かつDPGの削減が可能となる。
本発明者らは、前記課題を解決すべく研究を進めた結果、ジエン系ゴムにシリカを配合したゴム組成物に、前記式(I)のDBN及び/又はその塩を配合することにより、ゴム組成物の加硫速度やシリカの分散、補強性、更には粘弾性特性を向上させることができ、かつDPGの一部又は全部の代替が可能となることを見出した。
本発明によれば、ジエン系ゴム100重量部に対し、シリカを20〜120重量部、好ましくは40〜80重量部、硫黄含有シランカップリング剤をシリカ重量の3〜15重量%、好ましくは5〜10重量%並びに前記化学式(I)で表わされるDBN及び/又はその塩を配合する。
本発明のゴム組成物に使用するジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムなどをあげることができ、これらは単独又は任意のブレンドで使用することができる。
本発明のゴム組成物に使用するシリカとしては、従来からタイヤその他用のゴム組成物として配合されている任意のシリカとすることができる。シリカの配合量が少ないと強度と耐摩耗が不十分なだけでなく、シリカ配合によるウェット摩擦力と低発熱性の両立も不十分となるので好ましくなく、逆に多いと混合加工性の低下や発熱性の増加となるので好ましくない。
本発明のゴム組成物に使用する硫黄含有シランカップリング剤としては、これも従来からシリカと共に配合されるもののうち、好ましくは分子中に硫黄原子を含有する任意のものとすることができ、例えば3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、ビス−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕テトラスルフィド、ビス−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕ジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを用いることができる。これらは公知の化合物であり、数多くの市販品が利用できる。このシランカップリング剤の配合量が少ないと、シリカの補強性不足によるゴム強度や耐摩耗性の低下が起こるおそれがあるので好ましくなく、逆に多いと加工中のヤケが発生するおそれがあるので好ましくない。
前記式(I)で表わされるDBN及び/又はその塩の配合量は、それら単独で、又はDPGと併用する場合には、それとの合計量で、ゴム100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜3重量部であり、これらの式(I)で表わされるDBN及び/又はその塩はシラニゼーション反応(即ち、シリカとシランカップリング剤との反応)の段階でシリカ及びシランカップリング剤と同時にゴム組成物中に添加し、混練配合するのが好ましい。DBNの塩としては、例えばオクチル酸塩、DBN−フェノールノボラック樹脂塩などがあげられる。
式(I)で表わされるDBN又はその塩は公知の化合物であり、市販品を使用することができるので特別に合成する必要はなく、例えばサンアプロ社よりDBNとして、またU−CAT1102(DBNのオクチル酸塩)、DBN−フェノールノボラック樹脂塩(U−CAT881)などとして市販されている。
DPGは、シリカを配合したゴム組成物において、以下の利点があるため、従来から一般的に使用されている。
(1)2次加硫促進剤として使用することで、シリカの酸性度による加硫速度低下を抑制できる。
(2)シリカ表面との相互作用によりシリカ粒子同士の凝集を防いで、ペイン効果(即ち、シリカ間の相互作用による貯蔵弾性率の増加)を低減することができ、またシラニゼーション促進により補強性を上げることができる。
しかしながら、前述の如く、ゴム/スチールコード接着への悪影響が懸念されており、DPG使用量の削減もしくはその代替品の探索が課題となっている。
本発明者らは、DPGの代替品としてアミン系化合物でpKa値が大きいものに着目した。シラニゼーション反応(シリカ−シランカップリング剤の反応)では、シランカップリング剤の加水分解速度が重要となる。アミン化合物は、この加水分解を2分子的求核置換反応(SN2)で促進する。特に3級アミン化合物は、窒素原子は全てアルキル鎖と結合しており、アルキル基は、電子供与性が高く窒素原子の求核性を著しく向上させる。その結果、シラニゼーションを促進する。また、一般的にシリカ表面の酸性度(pH)は6〜7程度であり、シラニゼーション反応促進のためにはシリカ表面pHよりpKa値を大きくすることが重要となる。
本発明で用いるDBNは、pKaが約12.9である。これらの化合物は高い求核性によりシラニゼーション反応を促進し、ペイン効果を低減することが可能である。また、これらの化合物は、DPGと置き換えて使用しても、加硫速度に悪影響を及ぼさない点も大きなメリットのひとつである。
本発明に係るゴム組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他のゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
標準例、実施例1〜6及び参考例1〜2
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.5リットルの密閉型ミキサーで9分間混練し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を用いて以下に示す試験法で未加硫物性を評価した。結果は表Iに示す。
表Iに示す成分以外の配合量は以下の通りである。
SBR:LANXCESS社製VSL−5025 HM−1(Oil extended)(103.1重量部、ゴム分75重量部)
BR:Nippon Zeon(株)製Nippol BR 1220(25重量部)
シリカ:Rhodia社製Zeosil 1165MP(80重量部)
シランカップリング剤:Degussa社製Si69(6.4重量部)
オイル:出光興産(株)製ダイアナプロセス AH−24(4.32重量部)
ZnO:正同化学工業(株)製酸化亜鉛 3種(2.5重量部)
ステアリン酸:日本油脂(株)製ビーズステアリン酸 YR(2.5重量部)
硫黄:細井化学工業(株)製油処理硫黄(1.4重量部、硫黄分1.1重量部)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製CBS ノクセラーCZ−G(1.7重量部)
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で30分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表Iに示す。
ゴム物性評価試験法
以下の方法で評価し、結果はすべて標準例1の値を100として指数表示した。この値が大きいほど結果が良好であることを示す。
T95:ODRにて測定温度160℃で測定した(ASTM−D2084に準拠)。
分散性:αテクノロジー社製RPA2000を用い、未加硫ゴムを用いて歪せん断応力G’を測定した。歪0.28%〜100.0%までのG’を測定し、その差異(G’0.28%(MPa)−G’100.0%(MPa))を求めた。

補強性:M300/M100を補強性の評価として使用した(JIS−K6251に準拠)。
転がり抵抗:東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータを用い、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、60℃における損失正接(tanδ)を測定した。
Figure 0004433073
表I脚注
*1:サンアプロ社製DBN DBN
*2:サンアプロ社製DBNオクチル酸塩 U−CAT1102
*3:Flexsys社製DPG PERKACIT DPG
*4:脚注*1〜3の投入時期を表す。第1段とは加硫剤(硫黄及び加硫促進剤)を除く配合剤を混合する混合ステップ、第2段とは、加硫剤を混合するステップで*1〜3の配合剤を投入することを意味する。
本発明によれば、シリカ配合ゴム組成物に、ピペリジン骨格を有する前記式(I)のDBN及び/又はその塩を、ジエン系ゴム、シリカ及びシランカップリング剤と同時に第一の混合工程で混合することによって、シリカ配合ゴム組成物に配合することにより、ゴム組成物の加硫速度やシリカの分散、補強性、粘弾性特性を向上させ、かつDPGの削減が可能となるので、空気入りタイヤ用ゴム組成物として有用である。

Claims (3)

  1. ジエン系ゴム100重量部、シリカ20〜120重量部、硫黄含有シランカップリング剤がシリカの3〜15重量%及び式(I):
    Figure 0004433073
    を有する1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)及び/又はその塩0.1〜10重量部を含んでなり、DBN及び/又はその塩を、ジエン系ゴム、シリカ及びシランカップリング剤と同時に第一の混合工程で混合することによって得られるゴム組成物。
  2. DBN及び/又はその塩の配合量が、ジエン系ゴム100重量部に対し、0.5〜3重量部である請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のゴム組成物をタイヤキャップトレッドに用いた空気入りタイヤ。
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