JP3623480B2 - 電子写真用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーのための縮重合系樹脂製造用触媒、該触媒を含有した縮重合系樹脂組成物及び該縮重合系樹脂組成物を含有したトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機、プリンターの高速化、小型化の観点から、トナーの耐久性、特にスペントと言われるトナー付着の抑制が大きな課題となっている。そこで、溶融物性を規定したトナー(特開平9−258471号公報等)、結着樹脂の組成を規定したトナー(特開平8−262796号公報、特開2000−147827号公報等)、ワックス成分を規定したトナー(特開2001−188387号公報等)、テトラヒドロフラン等への溶解性を規定したトナー(特開2000−181119号公報等)、さらにシリカ等の外添剤や電荷制御剤を規定したトナー(特開2000−155443号公報等)等が、数多く検討されており、それなりの効果は得られているものの、さらなる改良が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、トナーの耐久性の低下の一因がトナー用縮重合系結着樹脂の製造に従来用いられている酸化ジブチル錫等の錫化合物、テトラ−n−ブチルチタネート等のチタン化合物、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、酸化マンガン等のマンガン化合物等(特開2000−56513号公報、特開平3−41470号公報)等の反応活性や耐加水分解性が不十分なことによる低分子量体の生成にあると考え、検討を行なった結果、トナーの耐久性向上に有用なトナー用縮重合系樹脂触媒を見出し、本発明を完成するに到った。
【0004】
本発明の目的は、耐久性の良好なトナー用結着樹脂の製造に有効に用いられる縮重合系樹脂製造用触媒を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、該触媒を含有し、耐久性の良好なトナー用結着樹脂として有用な縮重合系樹脂組成物、及び該縮重合系樹脂組成物を含有し、耐久性に優れたトナーを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) ポリエステルと触媒とを含有してなるポリエステル樹脂組成物を結着樹脂として含有してなる電子写真用トナーであって、前記触媒が、式(I):
Ti(X)n (Y)m (I)
(式中、Xは総炭素数1〜28のアミノ基、Yは総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物及び式(II):
Ti(Z)4 (II)
(Zは総炭素数8〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基であり、4種のZは同一でも異なっていてもよい)
で表されるチタン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である、電子写真用トナー、並びに
(2) ポリエステルと、前記(1)において記載の触媒とを含有してなる、電子写真用トナー用ポリエステル樹脂組成物
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、縮重合系樹脂製造用触媒について種々の検討を行った結果、特定のチタン化合物の反応活性が非常に高く、かつ耐加水分解性に優れることから、かかるチタン化合物を触媒として用いて得られた樹脂組成物は、低分子量体の含有量が低減され、結着樹脂として用いることにより、トナーの耐久性が著しく向上するという全く新規な知見を見出した点に特徴を有する。
【0007】
本発明のトナー用縮重合系樹脂製造用触媒は、式(I):
Ti(X)n (Y)m (I)
(式中、Xは総炭素数1〜28のアミノ基、Yは総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、好ましくはアルコキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物及び式(II):
Ti(Z)4 (II)
(Zは総炭素数8〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、好ましくはアルコキシ基であり、4種のZは同一でも異なっていてもよい)で表されるチタン化合物からなる群、好ましくは式(I)で表されるチタン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種からなる。
【0008】
式(I)において、Xで表されるアミノ基の総炭素数は、2〜10が好ましく、4〜8がより好ましく、6が特に好ましい。なお、本発明におけるアミノ基とは、チタン原子と直接結合することのできる窒素原子を有する基であり、4級カチオン基もアミノ基に含まれ、好ましくは4級カチオン基である。かかるアミノ基は、例えばハロゲン化チタンをアミン化合物と反応させることにより生成させることができ、かかるアミン化合物としてはモノアルカノールアミン化合物、ジアルカノールアミン化合物、トリアルカノールアミン化合物等のアルカノールアミン化合物、トリアルキルアミン等のアルキルアミン化合物等が挙げられ、これらの中ではアルカノールアミンが好ましく、トリアルカノールアミンがより好ましい。
【0009】
また、Yで表される基の総炭素数は、1〜6が好ましく、2〜5がより好ましい。
【0010】
さらに、本発明の効果の観点から、Xで表される基がYで表される基よりも総炭素数が多いことが好ましく、その総炭素数の差は、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜4である。
【0011】
式(I)で表されるチタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)2 (C3 H7 O)2 〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4 H10O2 N)2 (C3 H7 O)2 〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)2 (C5 H11O)2 〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)2 (C2 H5 O)2 〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)2 (OHC8 H16O)2 〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)2 (C18H37O)2 〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)1 (C3 H7 O)3 〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6 H14O3 N)3 (C3 H7 O)1 〕等が挙げられ、これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましく、これらは、例えばマツモト交商(株)の市販品としても入手可能である。
【0012】
式(II)において、Zで表される基の総炭素数は、12〜24が好ましく、16〜20がより好ましい。
【0013】
なお、式(I)及び式(II)において、Yで表される基及びZで表される基は、水酸基、ハロゲン等の置換基を有していてもよいが、無置換又は水酸基を置換基とするものが好ましく、無置換のものがより好ましい。
【0014】
また、Zで表される4種の基は、同一でも異なっていてもよいが、反応活性及び耐加水分解性の観点から、全て同一の基であるのが好ましい。
【0015】
式(II)で表されるチタン化合物の具体例としては、テトラステアリルチタネート〔Ti(C18H37O)4 〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C14H29O)4 〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C8 H17O)4 〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C8 H17O)2 (OHC8 H16O)2 〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C14H29O)2 (C8 H17O)2 〕等で挙げられ、これらの中ではテトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましく、これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることもできるが、ニッソー社等の市販品としても入手可能である。
【0016】
本発明の縮重合系樹脂製造用触媒を含有した縮重合系樹脂組成物は、トナーの結着樹脂として用いることができ、かかる触媒の存在下で縮重合系樹脂を製造することにより得られる。
【0017】
縮重合系樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルポリアミド、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられるが、これらの中では、定着性、帯電性、耐久性の観点から、ポリエステルが好ましい。
【0018】
ポリエステルの製造には、2価以上の多価アルコールからなるアルコール成分と2価以上の多価カルボン酸化合物からなるカルボン酸成分が原料モノマーとして用いられる。
【0019】
2価の多価アルコールとしては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1.5〜6)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0020】
3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0021】
多価アルコールの中では、帯電性及び耐久性の観点から、ポリエステルはビスフェノールA骨格を有するのが好ましいため、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノールA骨格を有するアルコールが好ましい。ビスフェノールA骨格を有するアルコールの含有量は、アルコール成分中、10〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましく、100モル%が特に好ましい。
【0022】
2価のカルボン酸化合物としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、ドデシルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0023】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
【0024】
本発明では、前記した原料モノマーのなかでも、2価以上の2級アルコール及び/又は2価以上の芳香族カルボン酸化合物の反応性が低いため、本発明の触媒の効果が顕著に発揮されることから、2価以上の2級アルコールとしては、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセロール等が挙げられ、これらの中ではビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましく、2価以上の芳香族カルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びトリメリット酸が好ましく、テレフタル酸及びトリメリット酸がより好ましい。
【0025】
2価以上の2級アルコール及び芳香族カルボン酸化合物の含有量は、いずれか一方が含有されている場合、アルコール成分又はカルボン酸成分中、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%であり、両者が含有されている場合、全原料モノマー中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%である。2級アルコール及び芳香族カルボン酸化合物は、いずれか一方の使用でも好ましいが、両者が併用されているのがより好ましい。なお、本発明において、2価以上の2級アルコールとは、少なくとも1つの水酸基が第二級炭素に結合しているアルコールをいう。
【0026】
特に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とテレフタル酸とが併用されている場合は、両化合物に含まれるベンゼン環の共鳴効果により、電荷を安定に存在させることができるため好ましい。ただし、いずれかを原料モノマーとして用いて得られた樹脂を2種類を混合することによっても、このような両者の併用による効果は得られる。
【0027】
ポリエステルは、本発明の触媒の存在下、アルコール成分とカルボン酸成分とを、不活性ガス雰囲気中にて180〜250℃の温度で、要すれば減圧下で縮重合することにより製造することができる。
【0028】
縮重合系樹脂を製造する際のチタン化合物の使用量は、縮重合系樹脂の原料モノマー100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましい。従って、チタン化合物を触媒として得られる本発明の縮重合系樹脂組成物におけるチタン化合物の含有量も、縮重合系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましい。
【0029】
なお、縮重合系樹脂を製造する際には、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化ジブチル錫等の従来より公知の有機錫化合物等が適宜併用されていてもよい。
【0030】
また、触媒の耐加水分解性を向上させるために、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、脂肪酸塩やゼオライト等が補助添加剤として併用されていてもよい。補助添加剤の添加量は、本発明のチタン化合物触媒100重量部に対して、5〜300重量部が好ましい。
【0031】
縮重合系樹脂の軟化点は、90〜170℃が好ましく、95〜150℃がより好ましい。また、ガラス転移点は、50〜130℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。
【0032】
縮重合系樹脂の含有量は、縮重合系樹脂組成物中、50〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましく、100重量%が特に好ましい。
【0033】
縮重合系樹脂とともに配合されていてよい樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂等の付加重合系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0034】
なお、本発明の縮重合系樹脂組成物は、本発明の触媒を用いて得られた縮重合系樹脂とこれらの他の樹脂を混合して得られたものであってもよく、また本発明の触媒を用いて得られた縮重合系樹脂成分と付加重合系樹脂成分、好ましくはビニル系樹脂成分とが部分的に化学結合したハイブリッド樹脂であってもよい。なお、ハイブリッド樹脂は、2種以上の樹脂を原料として得られたものであっても、1種の樹脂と他種の樹脂の原料モノマーから得られたものであっても、さらに2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものであってもよいが、効率よくハイブリッド樹脂を得るためには、2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものが好ましい。
【0035】
従って、ハイブリッド樹脂としては、各々独立した反応経路を有する二つの重合系樹脂の原料モノマー、好ましくは縮重合系樹脂の原料モノマーと付加重合系樹脂の原料モノマーを混合し、該二つの重合反応を行わせることにより得られる樹脂が好ましく、具体的には、特開平10−087839号公報に記載のハイブリッド樹脂が好ましい。
【0036】
さらに、本発明においては、本発明の縮重合系樹脂組成物を結着樹脂として含有したトナーを提供する。
【0037】
なお、本発明のトナーには、前記縮重合系樹脂組成物以外に、着色剤、荷電制御剤、離型剤、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0038】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146 、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明において、トナーは黒トナー、カラートナー、フルカラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
【0039】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等の正帯電性荷電制御剤及び含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル酸のホウ素錯体等の負帯電性荷電制御剤が挙げられる。本発明のトナーの帯電性は正帯電性及び負帯電性のいずれであってもよく、正帯電性荷電制御剤と負帯電性荷電制御剤とが併用されていてもよい。
【0040】
離型剤としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、アルコール系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して含有されていてもよい。
【0041】
本発明のトナーの製造方法は、混練粉砕法、乳化転相法等の従来より公知のいずれの方法であってもよいが、製造の容易性から混練粉砕法が好ましい。なお、混練粉砕法による粉砕トナーの場合、結着樹脂、着色剤等をボールミル等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができ、乳化転相法では、結着樹脂、着色剤等を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒子径は、3〜15μmが好ましい。トナーの表面には、さらに、疎水性シリカ等の流動性向上剤等が外添剤として添加されていてもよい。
【0042】
本発明のトナーは、磁性体微粉末を含有するときは単独で現像剤として、また磁性体微粉末を含有しないときは非磁性一成分系現像剤として、もしくはキャリアと混合して二成分系現像剤として使用され得る。
【0043】
【実施例】
〔軟化点〕
高化式フローテスター「CFT−500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)―温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
【0044】
〔ガラス転移点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定した際の、最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分から、ピークの頂点まで最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点とする。
【0045】
〔酸価〕
JIS K0070に従って測定する。
【0046】
原料モノマー配合A〜Cを用いた樹脂製造例
表1に示す使用量のBPA−PO、BPA−EO、テレフタル酸及び表3、4に示す触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、220℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂組成物を得た。なお、本発明において反応率とは、反応水量(mol)/理論反応水量(mol)×100の値をいう。
【0047】
原料モノマー配合D、Eを用いた樹脂製造例
表1に示す使用量のBPA−PO、フマル酸及び表3、4に示す触媒を、窒素雰囲気下、200℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂組成物を得た。なお、原料モノマー配合Dでは、無水トリメリット酸は8.3kPaにて1時間反応させた後に添加した。
【0048】
原料モノマー配合Fを用いた樹脂製造例
表1に示す使用量のエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テレフタル酸及び表3、4に示す触媒を、窒素導入管、精留塔のついた脱水管、攪拌器および熱伝対を装備した5リットル容の四つ口フラスコ中で、180℃まで昇温した後、8時間かけて230℃まで昇温し、反応率が90%に達するまで反応させた後に、200℃まで冷却した。さらに、無水トリメリット酸を添加し、所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂組成物を得た。
【0049】
原料モノマー配合Gを用いた樹脂製造例
表2に示すBPA−PO、BPA−EO、テレフタル酸、イソドデセニル無水コハク酸、無水トリメリット酸及び表3、4に示す触媒の混合物に、窒素雰囲気下、160℃で、表2に示すスチレン、アクリル酸、アクリル酸ブチル、ジクミルパーオキサイド及びポリエチレンワックスの混合物を1時間かけて滴下し、さらに2時間付加重合反応を行った後、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに所望の軟化点に達するまで縮重合反応を行い、樹脂組成物を得た。
【0050】
以下の表1、2に各原料モノマー配合により得られる樹脂組成物の軟化点、ガラス転移点及び酸価を合わせて示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
実施例A1〜A11、B1〜B12及び比較例A1〜A10、B1〜B10
表3、4に示す原料モノマー配合において、表3、4に示す触媒を用いて得られた樹脂組成物100重量部、カーボンブラック「MOGUL−L」(キャボット社製)4重量部及びポリエチレンワックス「SP−105」(サゾール社製、融点:105℃)0.5重量部を、ヘンシェルミキサーで十分混合した後、ロール内加熱温度100℃の同方向回転二軸押出機を用い溶融混練を行い、得られた混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにより粉砕し分級して、体積平均粒径8.0μmの粉体を得た。
【0054】
得られた粉体100重量部と疎水性シリカ「TS−530」(キャボット社製、平均粒子径:8nm)0.1重量部とをヘンシェルミキサーで3分間攪拌混合してトナーを得た。
【0055】
試験例1〔触媒の反応活性〕
樹脂組成物の製造段階において、反応開始から3時間後の反応率を求め、反応活性として評価した。結果を表3、4に示す。
【0056】
試験例2〔触媒の耐加水分解性〕
樹脂組成物の製造段階において、反応率が90%に達したときの時間から、耐加水分解性を評価した。即ち、触媒として用いたチタン化合物が、反応で副生する水により加水分解されると、反応後半での触媒活性が低下するため、反応水量が90モル%に達する時間が短いほど、耐加水分解性に優れていると判断できる。結果を表3、4に示す。
【0057】
試験例3〔トナーの耐久性〕
トナー3重量部と平均粒子径90μmのシリコンコートフェライトキャリア(関東電化工業社製)97重量部とを混合して得られた現像剤を、「プリテール550」(リコー社製)に実装し、印字率5%の画像を10時間連続印刷した後、トナーを取り出し、得られた混合物を目開きが32μmの篩を用いてトナー部分を吸引し、キャリア部分だけにする。得られたキャリアの炭素量を炭素分析装置「EMIA−110」(堀場製作所製)を用いて測定し、あらかじめトナーと混合する前に測定しておいたキャリアの炭素量との差を求め、耐久性として評価した。即ち、炭素量の差が大きいほど、キャリアに多量のトナーが付着しており、トナーの耐久性が低いと判断できる。結果を表3、4に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
以上の結果より、比較例と対比して、実施例では触媒として用いたチタン化合物の反応活性、耐加水分解性が高く、トナーの耐久性も優れていることが分かる。
【0061】
【発明の効果】
本発明により、反応活性が高く、かつ耐加水分解性に優れたトナー用縮重合系樹脂製造用触媒を提供することができ、さらに、かかる触媒を用いることにより、低分子量体の少ない縮重合系樹脂組成物及び耐久性に優れたトナーを提供することができる。
Claims (7)
- ポリエステルと触媒とを含有してなるポリエステル樹脂組成物を結着樹脂として含有してなる電子写真用トナーであって、前記触媒が、式(I):
Ti(X)n (Y)m (I)
(式中、Xは総炭素数1〜28のアミノ基、Yは総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物及び式(II):
Ti(Z)4 (II)
(Zは総炭素数8〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基であり、4種のZは同一でも異なっていてもよい)
で表されるチタン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である、電子写真用トナー。 - 式(I)において、Xで表される基がYで表される基よりも総炭素数が多い請求項1記載の電子写真用トナー。
- 式(II)において、Zで表される基が全て同一の基である請求項1又は2記載の電子写真用トナー。
- ポリエステル樹脂組成物が、該触媒の存在下に原料モノマーを重合させて得られるものである請求項1〜3いずれか記載の電子写真用トナー。
- 混練粉砕法により得られる粉砕トナーである請求項1〜4いずれか記載の電子写真用トナー。
- ポリエステルと、請求項1〜5いずれかにおいて記載の触媒とを含有してなる、電子写真用トナー用ポリエステル樹脂組成物。
- 該触媒の存在下に原料モノマーを重合させて得られる、請求項6記載の電子写真用トナー用ポリエステル樹脂組成物。
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