JP3998242B2 - トナー用ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーの結着樹脂として好適に用いられるトナー用ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び該ポリエステル樹脂組成物を含有したトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
カラートナーでは、色再現域の広さが重要である。そのため、結着樹脂としては透明性の良好な線状の低分子量樹脂が主に使用され、相反する物性である耐久性の改善が必要とされる。
【0003】
一方、色再現性の観点から、色が鮮やかでかつ変色しにくい着色剤や無色の電荷調整剤等の添加剤や紫外線吸収剤をトナーに添加する方法や、ポリエステル自体の色調改善策として、窒素雰囲気下又は高真空下で原料モノマーを反応させる方法(特許文献1)が知られている。
しかし、いずれの方法によっても、カラートナーの色再現性は不十分であり、耐久性と合わせてさらなる向上が望まれている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−253562号公報(〔0035〕)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐久性に優れ、カラートナーやフルカラートナーの結着樹脂として用いた際に優れた色再現性を有するトナー用ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び該ポリエステル樹脂組成物を含有したトナーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、当初、耐久性が高く、かつ透明性の高い樹脂を製造すれば、前記課題を達成できると考えたが、アルケニルコハク酸化合物を原料モノマーの1種として用いた、着色しやすいポリエステルであっても、色再現性の良好なカラートナーを得ることができ(後述する比較例7参照)、樹脂の着色以外にもカラートナーの色再現性に重要な因子があることが判明した。そこで、さらに検討を進めた結果、ポリエステルの重合用触媒として使用されているチタン化合物と共に無機リン化合物をポリエステル中に含有させることにより、トナーの耐久性と色再現性の両方を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、
(1) チタン化合物及び無機リン化合物を含有してなるトナー用ポリエステル樹脂組成物であって、前記チタン化合物の含有量が0.005〜4重量%であり、前記無機リン化合物の含有量が0.001〜5重量%であり、前記チタン化合物が(1) 式(I):
Ti(X)n (Y)m (I)
(式中、Xは総炭素数1〜28の置換アミノ基、Yは総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物及び/又は(2) テトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートからなる群より選ばれた少なくとも1種のチタン化合物であり、前記無機リン化合物がポリリン酸又はその塩であるトナー用ポリエステル樹脂組成物、
(2) 前記トナー用ポリエステル樹脂組成物を含有してなるトナー、並びに
(3) (1) 式(I):
Ti(X)n (Y)m (I)
(式中、Xは総炭素数1〜28の置換アミノ基、Yは総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物及び/又は(2) テトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートからなる群より選ばれた少なくとも1種のチタン化合物及び、ポリリン酸又はその塩からなる無機リン化合物の存在下でポリエステルの原料モノマーを縮重合させる、前記トナー用ポリエステル樹脂組成物の製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂組成物は、チタン化合物、無機リン化合物及びポリエステルを含有する。
【0009】
本発明のポリエステル樹脂組成物におけるチタン化合物としては、ポリエステルの縮重合反応の触媒として作用するものであれば特に限定されないが、Ti−O結合を有するチタン化合物が好ましく、総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基を有する化合物がより好ましく、式(I):
Ti(X)n (Y)m (I)
(式中、Xは総炭素数1〜28の置換アミノ基、Yは総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、好ましくはアルコキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物及び式(II):
Ti(Z)4 (II)
(Zは総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、好ましくはアルコキシ基であり、4種のZは同一でも異なっていてもよい)で表されるチタン化合物が特に好ましい。チタン化合物はそれぞれ単独で用いられていても、混合して用いられていてもよい。
【0010】
式(I)において、Xで表される置換アミノ基の総炭素数は、2〜10が好ましく、4〜8がより好ましく、6が特に好ましい。なお、本発明における置換アミノ基とは、チタン原子と直接結合することのできる窒素原子を有する基であり、水酸基を有していてもよいアルキルアミノ基等が挙げられるが、4級カチオン基もアミノ基に含まれ、好ましくは4級カチオン基である。かかるアミノ基は、例えばハロゲン化チタンをアミン化合物と反応させることにより生成させることができ、かかるアミン化合物としてはモノアルカノールアミン化合物、ジアルカノールアミン化合物、トリアルカノールアミン化合物等のアルカノールアミン化合物、トリアルキルアミン等のアルキルアミン化合物等が挙げられ、これらの中ではアルカノールアミンが好ましく、トリアルカノールアミンがより好ましい。
【0011】
また、Yで表される基の総炭素数は、1〜6が好ましく、2〜5がより好ましい。
【0012】
さらに、本発明の効果の観点から、Xで表される基がYで表される基よりも総炭素数が多いことが好ましく、その総炭素数の差は、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜4である。
【0013】
式(I)で表されるチタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)2 (C3 H7 O)2 〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4 H10O2 N)2 (C3 H7 O)2 〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)2 (C5 H11O)2 〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)2 (C2 H5 O)2 〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)2 (OHC8 H16O)2 〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)2 (C18H37O)2 〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6 H14O3 N)1 (C3 H7 O)3 〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6 H14O3 N)3 (C3 H7 O)1 〕等が挙げられ、これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましく、これらは、例えばマツモト交商(株)の市販品としても入手可能である。
【0014】
式(II)において、Zで表される基の総炭素数は、8〜28が好ましく、12〜24がより好ましく、16〜20が特に好ましい。
【0015】
なお、式(I)及び式(II)において、Yで表される基及びZで表される基は、水酸基、ハロゲン等の置換基を有していてもよいが、無置換又は水酸基を置換基とするものが好ましく、無置換のものがより好ましい。
【0016】
また、Zで表される4種の基は、同一でも異なっていてもよいが、反応活性及び耐加水分解性の観点から、全て同一の基であるのが好ましい。
【0017】
式(II)で表されるチタン化合物の具体例としては、テトラ−n−ブチルチタネート〔Ti(C4 H9 O)4 〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C3 H7 O)4 〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C18H37O)4 〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C14H29O)4 〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C8 H17O)4 〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C8 H17O)2 (OHC8 H16O)2 〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C14H29O)2 (C8 H17O)2 〕等で挙げられ、これらの中ではテトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましく、これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることもできるが、ニッソー社等の市販品としても入手可能である。
【0018】
本発明における無機リン化合物とは、炭素原子を有していないリン化合物をいい、具体的には、無機リン酸又はその塩が好ましく、無機リン酸がより好ましい。無機リン酸としては、オルトリン酸、その脱水縮合物であるピロリン酸、メタリン酸、三リン酸、四リン酸等のポリリン酸、五酸化リン等が挙げられるが、本発明では、これらの混合物として市販されているポリリン酸が好ましい。無機リン酸塩としては、例えば、オルトリン酸塩の場合、、MI 3 PO4 及びMII 3(PO4)2 で表される正塩、MI H2 PO4 及びMII(H2 PO4)2 で表される二水素塩及びMI 2 HPO4 及びMIIHPO4 で表される一水素塩が挙げられ、これらのなかではMI を含む塩が好ましい。MI としては、Na、K、NH4 等が挙げられ、これらのなかでは、Naが好ましく、また、MIIとしてはMg、Ca等が挙げられる。ピロリン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩における陽性成分(MI 、MII)についても、同様のものが例示される。なお、ポリリン酸(塩)の数平均分子量は、110〜1000が好ましく、150〜800がさらに好ましく、250〜700が特に好ましい。
【0019】
ポリエステルの原料モノマーとしては、2価以上の多価アルコールからなるアルコール成分と2価以上の多価カルボン酸化合物からなるカルボン酸成分が用いられる。
【0020】
2価の多価アルコールとしては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1.5〜6)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0021】
3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0022】
多価アルコールの中では、帯電性及び耐久性の観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノールA骨格を有するアルコールが好ましい。ビスフェノールA骨格を有するアルコールの含有量は、アルコール成分中、10〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましく、100モル%が特に好ましい。
【0023】
2価のカルボン酸化合物としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、ドデシルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0024】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、トナーの色再現域を広げることができる。従って、ポリエステルが着色する原因となりやすいアルケニル基で置換されたアルケニルコハク酸化合物がカルボン酸成分として用いられている場合に、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0026】
なお、アルコール成分及びカルボン酸成分には、前記した2価以上のアルコール及びカルボン酸化合物に加えて、分子量、極性、粉砕性等を調整するために、ヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の1価のアルコール及び酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の1価のカルボン酸化合物が、各成分に含有されていてもよい。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法としては、チタン化合物及び無機リン化合物の存在下、ポリエステルの原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とを、例えば、不活性ガス雰囲気中にて180〜250℃の温度で、要すれば減圧下で縮重合させる方法や、チタン化合物の存在下、ポリエステルの原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させたものに、無機リン化合物を添加する方法が挙げられるが、耐久性と色再現性の観点から、前者の方法が好ましい。
【0028】
触媒として高活性を示すチタン化合物を用いることにより、ポリエステル中の低分子量成分が低減し、得られるポリエステルを結着樹脂として含有するトナーは、耐久性が向上するものの、色再現性は不十分である。そこで、本発明では、無機リン化合物を共存させることにより、耐久性及び色再現性の両方を向上させることができる。チタン化合物及び無機リン化合物の併用によりこのような効果が得られる理由の詳細は不明なるも、樹脂中の低分子量成分の低減により、無機リン化合物の樹脂中での均一性が向上し、無機リン化合物と着色剤との相互作用により着色剤の均一性も向上して色再現性が向上するものと推定される。
【0029】
なお、チタン化合物は、縮重合反応を促進するエステル化触媒として作用し、重合当初から反応系に存在させるのが好ましい。なお、無機リン化合物は、チタン触媒の活性低下を抑制する観点から、原料モノマーの反応率が好ましくは50〜95%、より好ましくは80〜95%で反応系に添加するのが望ましい。なお、本発明において反応率とは、反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂組成物におけるチタン化合物の含有量は、0.005〜4重量%が好ましく、0.05〜3重量%がより好ましく、0.1〜2重量%が特に好ましい。従って、本発明のポリエステル樹脂組成物を製造する際のチタン化合物の使用量も、ポリエステル樹脂の原料モノマー100重量部に対して、0.005〜4重量部程度が好ましく、より好ましくは0.05〜3重量部、特に好ましくは0.1〜2重量部である。
【0031】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物における無機リン化合物の含有量は、0.001〜5重量%が好ましく、0.05〜2重量%がより好ましい。従って、本発明のポリエステル樹脂組成物を製造する際の無機リン化合物の使用量も、ポリエステル樹脂の原料モノマー100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましい。
【0032】
さらに、チタン化合物の無機リン化合物に対する重量比(チタン化合物/無機リン化合物)は、0.07〜5が好ましく、0.1〜3がより好ましく、0.5〜2が特に好ましい。
【0033】
なお、ポリエステル樹脂組成物を製造する際には、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化ジブチル錫等の従来より公知の有機錫化合物等が適宜併用されていてもよい。
【0034】
また、触媒の耐加水分解性を向上させるために、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、脂肪酸塩やゼオライト等が補助添加剤として併用されていてもよい。
【0035】
ポリエステル樹脂組成物の軟化点は、90〜170℃が好ましく、95〜150℃がより好ましい。また、ガラス転移点は、50〜130℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。
【0036】
さらに、本発明においては、本発明のポリエステル樹脂組成物を結着樹脂として含有したトナーを提供する。
【0037】
本発明のトナーには、前記ポリエステル樹脂組成物以外の樹脂、スチレン−アクリル樹脂等の付加重合系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が結着樹脂として含有されていてもよい。本発明のポリエステル樹脂組成物の含有量は、結着樹脂中、50〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましく、100重量%が特に好ましい。
【0038】
なお、本発明のポリエステル樹脂組成物は、他の樹脂と混合してトナー中に含有されていてもよいが、チタン化合物を触媒として用いて得られたポリエステル成分と付加重合系樹脂成分、好ましくはビニル系樹脂成分とが部分的に化学結合したハイブリッド樹脂におけるポリエステル成分としてトナー中に含有されていてもよい。なお、ハイブリッド樹脂は、2種以上の樹脂を原料として得られたものであっても、1種の樹脂と他種の樹脂の原料モノマーから得られたものであっても、さらに2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものであってもよいが、効率よくハイブリッド樹脂を得るためには、2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものが好ましい。
【0039】
従って、ハイブリッド樹脂としては、各々独立した反応経路を有する二つの重合系樹脂の原料モノマー、好ましくはポリエステル樹脂の原料モノマーと付加重合系樹脂の原料モノマーを混合し、該二つの重合反応を行わせることにより得られる樹脂が好ましく、具体的には、特開平10−087839号公報に記載のハイブリッド樹脂が好ましい。
【0040】
なお、本発明のトナーには、前記ポリエステル樹脂組成物以外に、着色剤、荷電制御剤、離型剤、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0041】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146 、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明において、トナーは黒トナー、カラートナー、フルカラートナーのいずれであってもよいが、色再現性に優れることから、カラートナー又はフルカラートナーであることが好ましい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
【0042】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等の正帯電性荷電制御剤及び含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル酸のホウ素錯体等の負帯電性荷電制御剤が挙げられる。本発明のトナーの帯電性は正帯電性及び負帯電性のいずれであってもよく、正帯電性荷電制御剤と負帯電性荷電制御剤とが併用されていてもよい。
【0043】
離型剤としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、アルコール系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して含有されていてもよい。
【0044】
本発明のトナーの製造方法は、混練粉砕法、乳化転相法等の従来より公知のいずれの方法であってもよいが、製造の容易性から混練粉砕法が好ましい。なお、混練粉砕法による粉砕トナーの場合、結着樹脂、着色剤等をボールミル等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができ、乳化転相法では、結着樹脂、着色剤等を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒子径は、3〜15μmが好ましい。トナーの表面には、さらに、疎水性シリカ等の流動性向上剤等が外添剤として添加されていてもよい。
【0045】
本発明のトナーは、磁性体微粉末を含有するときは単独で現像剤として、また磁性体微粉末を含有しないときは非磁性一成分系現像剤として、もしくはキャリアと混合して二成分系現像剤として使用され得る。
【0046】
【実施例】
〔軟化点〕
高化式フローテスター「CFT−500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)―温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
【0047】
〔ガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定し、融解熱の最大ピーク温度を求めた。また、ガラス転移点は前記測定で最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分から、ピークの頂点まで最大傾斜を示す接線との交点の温度とした。
【0048】
実施例1〜16及び比較例1〜9
(1)樹脂組成物の製造例
▲1▼ 原料モノマー配合A、Bを用いた例
表1に示す使用量のBPA−PO、BPA−EO、テレフタル酸及び表3に示す触媒、リン化合物を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂組成物を得た。
【0049】
▲2▼ 原料モノマー配合C、Dを用いた例
表1に示す使用量のBPA−PO、BPA−EO、テレフタル酸、ドデセニル無水コハク酸、及び表3に示す触媒、リン化合物を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaで1時間反応させた後、無水トリメリット酸を添加し、1時間常圧で反応させた後、8.3kPaで所望の軟化点に達するまで反応させて樹脂組成物を得た。
【0050】
▲3▼ 原料モノマー配合Eを用いた例
表1に示す使用量のBPA−PO、テレフタル酸及び表3に示す触媒、リン化合物を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaにて減圧反応を行い、180℃まで冷却し、フマル酸及びハイドロキノンを添加し、180℃から210℃まで4時間かけて反応させた後、8.3kPaにて所望の軟化点に達するまで縮重合反応を行い、樹脂組成物を得た。
【0051】
ただし、実施例16ではリン化合物の添加時期を、180℃においてフマル酸、ハイドロキノンを添加する際に変更した。
【0052】
▲4▼ 原料モノマー配合Fを用いた例
表2に示す使用量のBPA−PO、BPA−EO、テレフタル酸及び表3に示す触媒、リン化合物の混合物に、窒素雰囲気下、160℃で、表2に示すスチレン、アクリル酸、アクリル酸2−エチルヘキシル及びジ−t−ブチルパーオキサイドの混合物を1時間かけて滴下し、さらに2時間付加重合反応を行った後、230℃に昇温して所望の軟化点に達するまで縮重合反応を行い、樹脂組成物を得た。
【0053】
▲5▼ 原料モノマー配合Gを用いた例
表1に示す使用量の1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、フマル酸、アジピン酸、ハイドロキノン及び表3に示す触媒、リン化合物を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、160℃で5時間反応させた後、200℃まで1時間ごとに10℃ずつ昇温し、200℃において1時間反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応を行い、樹脂組成物を得た。
【0054】
▲6▼ 原料モノマー配合Hを用いた例
表1に示す使用量のエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テレフタル酸、及び表3に示す触媒、リン化合物を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃から210℃まで4時間かけて昇温後、無水トリメリット酸を添加し、1時間反応させた後、8.3kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行い、樹脂組成物を得た。
【0055】
表3に各実施例及び比較例にて得られた樹脂組成物の軟化点(Tm)及びガラス転移点(Tg、ただし原料モノマーGを用いた場合は融解熱の最大ピーク温度)を示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
(2)トナーの製造例
表3に示す原料モノマー配合において、表3に示す触媒及びリン化合物を用いて得られた樹脂組成物100重量部、着色剤としてイエロートナーでは「ピグメント・イエロー17」3重量部、マゼンタトナーでは「ピグメント・レッド122」6重量部、またはシアントナーでは「ピグメント・ブルー15:3」3重量部、離型剤として「カルナウバワックスC1」(加藤洋行社製、融点73℃)2重量部及び荷電制御剤として「ボントロンE−84」(オリエント化学工業社製)2重量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、ロール内加熱温度100℃の同方向回転二軸押出し機を用い溶融混練を行い、得られた混合物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積平均粒径8.0μmの粉体を得た。
【0059】
得られた粉体100重量部に外添剤として「HDK H2000」(ワッカ−ケミカルズ社製)2重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、粉体に表面処理を施して、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーを得た。
【0060】
試験例1〔樹脂の着色度〕
▲1▼ 得られた樹脂組成物0.5gをスライドガラスに乗せ、ホットプレート上で180℃で3分間加熱し、溶融したものに上からスライドガラスをかぶせて固定し、色彩色差計「CR−321」(ミノルタ社製)によりL* 値、a* 値及びb* 値を測定した。
▲2▼ ブランクとしてスライドガラスのL* 値、a* 値及びb* 値を▲1▼と同様して測定した。
【0061】
▲1▼、▲2▼の値の差(ΔE)を下記式により求め、以下の評価基準に従って樹脂組成物の着色度を評価した。結果を表3に示す。
【0062】
【数1】
【0063】
(式中、L1 * 、a1 * 及びb1 * は▲1▼における各測定値を、L2 * 、a2 * 及びb2 * は▲2▼における各測定値をそれぞれ示す。)
【0064】
〔評価基準〕
◎:ΔEが4未満
○:ΔEが4以上〜7未満
△:ΔEが7以上〜10未満
×:ΔEが10以上
【0065】
試験例2〔耐久性〕
トナー3重量部と平均粒子径90μmのシリコンコートフェライトキャリア(関東電化工業社製)97重量部とを混合して得られた現像剤を、「プリテール550」(リコー社製)に実装し、印字率5%の画像を10時間連続印刷した後、トナーを取り出し、得られた混合物を目開きが32μmの篩を用いてトナー部分を吸引し、キャリア部分だけにする。得られたキャリアの炭素量を炭素分析装置「EMIA−110」(堀場製作所製)を用いて測定し、あらかじめトナーと混合する前に測定しておいたキャリアの炭素量に対する比率を求め、増加分を以下の評価基準に従って、耐久性として評価した。即ち、炭素量の増加分が大きいほど、キャリアに多量のトナーが付着しており、トナーの耐久性が低いと判断できる。結果を表3に示す。
【0066】
〔耐久性の評価基準〕
炭素量の増加分が
◎:0.05未満
○:0.05以上、〜0.1未満
×:0.1以上
【0067】
試験例3〔色再現性〕
実施例及び比較例で得られた、同量のイエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナーを、ヒートロールを備えた非磁性一成分現像装置「テクトロニクス フェザー560」(ソニーテクトロニクス社製)に実装し、現像バイアスにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーの各トナーの付着量を0.6mg/cm2 に調整して、イエローベタ画像、マゼンタベタ画像、シアンベタ画像、プロセス・レッドベタ画像、プロセス・グリーンベタ画像、プロセス・ブルーベタ画像を採取した。それぞれの画像のa* 値、b* 値を「X−Rite938」(X−ライト社製)で測定し、a* 値とb* 値の色度図にプロットした。得られた六角形の面積から、以下の評価基準に従って、色再現性を評価した。結果を表3に示す。
【0068】
〔色再現性の評価基準〕
六角形の面積の相対値が、
◎:6000以上
○:3500以上、6000未満
×:3500未満
【0069】
【表3】
【0070】
表3に記載の触媒及びリン化合物を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
以上の結果より、実施例のトナーは、いずれも耐久性に優れ、フルカラートナーとして良好な色再現性を有することが分かる。
【0073】
グループAでは、無機リン化合物に対してチタン化合物の量が多いほど、トナーの耐久性が高く、樹脂組成物の着色度、トナーの色再現性が悪い傾向があり、チタン化合物に対して無機リン化合物の量が多いほどトナーの耐久性が悪く、樹脂組成物の着色度、トナーの色再現性が良好である傾向があることが分かる。
【0074】
グループBでは、ポリエステルの原料モノマーとしてドデセニル無水コハク酸を使用した場合、スズ触媒を用いると樹脂組成物の着色度は悪いが、色再現性は良好であり、チタン化合物のみでは樹脂組成物の着色度のみならず、色再現性も悪い。これに対し、チタン化合物と無機リン化合物とを併用することにより、樹脂組成物の着色度に関係なく、良好な色再現性が得られる。
【0075】
グループEでは、スズ触媒を用いた場合では、リン化合物を併用しても得られる結果に変化がないこと分かる。
【0076】
【発明の効果】
本発明により、耐久性に優れ、カラートナーやフルカラートナーの結着樹脂として用いた際に優れた色再現性を有するトナー用ポリエステル樹脂組成物及び該樹脂組成物を含有したトナーを提供することができる。
Claims (6)
- チタン化合物及び無機リン化合物を含有してなるトナー用ポリエステル樹脂組成物であって、前記チタン化合物の含有量が0.005〜4重量%であり、前記無機リン化合物の含有量が0.001〜5重量%であり、前記チタン化合物が(1) 式(I):
Ti(X)n (Y)m (I)
(式中、Xは総炭素数1〜28の置換アミノ基、Yは総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物及び/又は(2) テトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートからなる群より選ばれた少なくとも1種のチタン化合物であり、前記無機リン化合物がポリリン酸又はその塩であるトナー用ポリエステル樹脂組成物。 - 式(I)において、Xは総炭素数4〜8の置換アミノ基、Yは総炭素数2〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基である請求項1記載のトナー用ポリエステル樹脂組成物。
- 式(I)で表されるチタン化合物が、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のトナー用ポリエステル樹脂組成物。
- トナー用ポリエステル樹脂組成物が、チタン化合物及び無機リン化合物の存在下で、炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたアルケニルコハク酸化合物を含有してなるポリエステルの原料モノマーを縮重合させて得られるものである、請求項1〜3いずれか記載のトナー用ポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1〜4いずれか記載のポリエステル樹脂組成物を含有してなるトナー。
- (1) 式(I):
Ti(X)n (Y)m (I)
(式中、Xは総炭素数1〜28の置換アミノ基、Yは総炭素数1〜28のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、n及びmは1〜3の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物及び/又は(2) テトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートからなる群より選ばれた少なくとも1種のチタン化合物及び、ポリリン酸又はその塩からなる無機リン化合物の存在下でポリエステルの原料モノマーを縮重合させる、請求項1〜4いずれか記載のトナー用ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
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