JP3591544B2 - ディーゼル軽油組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ディーゼル軽油組成物に関し、更に詳しくは、自動車,船舶,発電機等に用いられるディーゼルエンジン用の軽油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、軽油需要の増大に対応するため、中間留分の有効利用が必要となり、この観点から、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油や常圧蒸留残油を減圧蒸留して得られた減圧軽油を接触分解して得られる分解軽油(LCO)を利用すること、即ちこれを軽油に混合して用いる方法が望まれている。
しかしながら、LCOの軽油への混合量が多くなると、得られる燃料組成物の色相、長期貯蔵安定性等の性能が悪化するという問題があり、その最大混合量が問題となっている。また、LCOは硫黄分含量が高いため、軽油に関するJIS規格等種々の規制によっても混合量の上限が決定される。更にLCOのセタン価が低いことも混合量上限を決定する大きな要因となっている。即ち、一般にLCOのセタン価は20〜30であるが、内燃機関に要求されるセタン価は40以上であり、特に自動車用等のディーゼルエンジンでは45以上が望まれている。上記の種々の事情から、LCOの有効利用のためには更にLCOの軽油への混合量を増大させることが望まれている。
一方、排ガス規制への対応のためディーゼルエンジン用軽油においても、その硫黄分含量を低減することが求められている。しかしながら、このような低硫黄化のため軽油について深度脱硫を行った場合、得られる軽油製品の潤滑性能が低下することが知られてきた。即ち、このような潤滑性能の低下により燃料である軽油で潤滑を行っているディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプの各部の摩耗が増大し、この結果エンジンの回転不良、運転性悪化等の不都合が生じることが報告されている。特に、ガバナスリーブの摺動性の低下により、フォークリフト等においてはアイドリング時にエンジンが停止するという不具合が報告されている。更に、フェイスカムの摩耗により、燃料噴射が出来なくなり、ポンプの破壊的な故障が生じる例が一部の市場で報告されている。
このような軽油の潤滑性能の低下に対して、ハード面からの対応もなされているが、その一方で燃料面からの対応も要求されこれに対する検討がなされてきたが、いずれも満足のいく対応とはいえなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情下においてなされたものであり、分解軽油(LCO)を有効活用することができる一方で、色相、長期貯蔵安定性に優れ、深度脱硫軽油(FDGO)を用い、硫黄分含量を著しく低減した場合においても優れた潤滑性能が維持され、ディーゼル自動車のエンジンの燃料噴射ポンプに不具合を起こすことがなく、排ガスの悪化が起こらないディーゼル軽油組成物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、直留軽油(LGO)と分解軽油(LCO)とを特定割合で混合して深度脱硫装置(DH)のチャージに通油して得られた深度脱硫軽油基材(FDGO)を用いたディーゼル軽油組成物により、優れた色相、長期貯蔵安定性を維持しつつLCOの有効活用を図り、かつ、硫黄分含量を低減しつつ優れた潤滑性能を維持することが可能となり、またこの結果ディーゼル自動車のエンジンの燃料噴射ポンプに不具合を起こすことのないディーゼル軽油組成物が得られることを見出したものである。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、深度脱硫装置に97〜85容量%の直留軽油(LGO)及び3〜15容量%の分解軽油(LCO)を混合通油して得られる深度脱硫軽油基材(FDGO)に、8容量%以下の分解軽油(LCO)を配合してなり、ASTM D 5001による摩耗跡の平均直径が0.5mm以下であることを特徴とするディーゼル軽油組成物を提供するものである。
【0005】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のディーゼル軽油組成物に含有されるFDGOは、沸点範囲が170〜390℃のものであり、蒸留性状として、50%留出点が200〜340℃であり、その密度が0.800〜0.900の範囲のものを適宜使用できる。上記FDGOとしては硫黄分含量が0.01〜0.05重量%のものが好ましく使用できる。硫黄分含量が0.01重量%未満とする場合は潤滑性能の悪化が著しい。また、0.05重量%を超える場合は排ガスが悪化する。
【0006】
上記FDGOは、具体的には、原料油としての直留軽油(LGO)及び分解軽油(LCO)の混合油を水添深度脱硫装置(DH)に混合通油して、Co−Mo/アルミナ触媒,Ni−Mo/アルミナ触媒等の触媒の存在下で、30〜100kg/cm2 G、好ましくは50〜70kg/cm2 Gの圧力下、300〜400℃、好ましくは330〜360℃の温度で、液空間速度(LHSV)0.5〜5h−1、好ましくは1〜2h−1の条件で深度脱硫を行い、その後ストリッパーで硫化水素とナフサを除去して得られるものである。
【0007】
上記原料油に用いられるLGO基材とは、常圧蒸留装置からの直留軽油であり、沸点範囲が170〜390℃のものであり、その密度が0.800〜0.900の範囲のものを適宜使用できる。また硫黄分含量が0.05〜2.5重量%のものが使用できる。
また、上記原料油に用いられるLCO基材は、分解ガソリン製造用の接触分解装置から副生する、分解ガソリン留分より高沸点の、沸点170〜450℃範囲内の留分である。具体的には、その蒸留性状として、50%留出点が180〜330℃であり、密度が0.850〜0.985の範囲のものが適宜使用できる。また、硫黄分含量が0.1〜1.0重量%のものが用いられる。
【0008】
上記LCOは、具体的には、原料油としての重質軽油(HGO),減圧軽油(VGO)あるいはこれらの混合油を減圧軽油脱硫装置(VH)を用いて、Co−Mo/アルミナ触媒,Ni−Mo/アルミナ触媒等の触媒の存在下で、50〜100kg/cm2 G、好ましくは50〜70kg/cm2 Gの圧力下、350〜450℃、好ましくは370〜420℃の温度で、LHSV0.5〜4h−1、好ましくは1〜3h−1の条件で水添脱硫を行い、その後蒸留塔にて分留して得られた間接脱硫重質軽油(VHHGO)を、接触分解装置で接触分解して得られる。
【0009】
ここで、上記接触分解装置とは、軽油以上の高沸点留分を固体触媒の存在化で接触分解して高オクタン価のガソリン基材を得るための装置であり、反応触媒としては通常シリカアルミナ触媒やゼオライト触媒が用いられ、また反応条件は通常、反応温度470〜550℃、反応圧力0.8〜3.0kg/cm2 G程度であるが、これらの条件は特に限定されるものではない。
上記接触分解装置は、その方式としては流動床式、固定床式、移動床式等のいずれも採用することができるが、生産性の点から流動接触分解装置(FCC)又は残渣流動接触分解装置(RFCC)が好ましく使用できる。
また、本発明におけるLCOとしては、この接触分解装置から副生する接触分解軽油そのものだけでなく、それを更に水素化精製して硫黄分などの不純物含量を低下させた精製接触分解軽油も使用可能である。また、接触分解軽油を蒸留し、軽質分と重質分を分留した軽質分解軽油も使用可能である。この軽質分解軽油は沸点170〜280℃範囲内の留分である。
【0010】
本発明においては、上記FDGOの原料油は97〜85重量%のLGOと、3〜15重量%のLCOとからなる。LCOが15重量%を超える場合は色相、長期保存安定性が悪化し、また3重量%未満の場合は潤滑性能が低下するため、いずれも好ましくない。
上記FDGOは、本発明のディーゼル軽油組成物中に5〜100容量%、好ましくは10〜100容量%含有される。この値が5容量%未満程度の量では、潤滑性能は特に問題はないが排ガスが悪化する。
【0011】
また、本発明のディーゼル軽油組成物は、上記FDGOからなるもの、あるいはこれにLCO基材を混合してなるものである。このようなLCO基材としては前記原料油に用いられたものと同様のものを使用することができる。上記LCOは、本発明のディーゼル軽油組成物中に0容量%を含み8容量%以下、好ましくは0容量%を含み5容量%以下含有される。この値が8容量%を超える場合は、硫黄分や多環芳香族分が多くなるため、潤滑性能は良好であるが排ガスが悪化し、更にセタン価が低下し、色相、長期保存安定性も悪化する。
【0012】
本発明のディーゼル軽油組成物においては、必要に応じて他の基材を適宜混合使用することができる。使用しうる基材としては、一般に用いられる灯軽油基材、例えば水素化分解軽油(HCGO)を85容量%以下、脱硫灯油(DK)を75容量%以下あるいはその他の軽油留分、例えば直留軽油(LGO),直接脱硫軽油(DSGO),脱硫軽質軽油(VHLGO),その他硫黄分が0.05重量%以上のすべての軽油基材を10容量%以下含有することができる。これらの灯軽油基材が上記各範囲を超える場合は、潤滑性能の改善が見られないことがあったり、また排ガスが悪化することがあるなど好ましくない場合がある。
上記水素化分解軽油(HCGO)とは、重質軽油(HGO)、減圧軽油(VGO)あるいはこれらの混合油を触媒の存在下で水素化分解し、当該分解生成油を燃料油留分と潤滑油留分に蒸留分離して得られたものであり、その蒸留性状としては沸点範囲が180〜380℃であり、50%蒸留点が220〜340℃のものである。上記潤滑油留分は沸点範囲が250〜540℃、好ましくは300〜530℃であり、燃料油留分は沸点の終点が250〜370℃のものである。
【0013】
尚、脱硫灯油(DK)あるいは上記軽油留分としての直留軽油(LGO),直接脱硫軽油(DSGO),脱硫軽質軽油(VHLGO)については通常の方法で調製することができる。またその一般性状としては下記に示すものを一般に使用可能である。
【0014】
また、本発明のディーゼル軽油組成物は、排ガス規制対策、特に粒子状物質発生低減の点で、また排ガス再循環(EGR)を採用した車ではエンジンの摩耗が増大するため、その硫黄分含量が500ppm以下であることが好ましい。
更に本発明のディーゼル軽油組成物は、貯蔵安定性の点からその窒素含有量が60ppm以下であるであること、またはASTMによる色相が0.7以下であることが好ましい。窒素含有量が60ppmを超える場合、またASTMによる色相が0.7を超える場合は貯蔵安定性に劣る結果となる。
本発明のディーゼル軽油組成物においては、多環芳香族分含量が3.5〜6容量%であることが好ましい。この値が3.5容量%未満の場合は優れた潤滑性能が維持されず、また6容量%を超える場合は排ガスが悪化する。
本発明のディーゼル軽油組成物には、必要に応じてセタン価向上剤,酸化防止剤,金属不活性剤,低温流動向上剤,氷結防止剤,腐食防止剤,微生物殺菌剤,助燃剤,帯電防止剤,潤滑性付与剤,着色剤,マーカー(標識物質)等の添加剤を適宜加えることができる。
【0015】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1,2及び比較例1〜3
LGO及びLCOを第1表に示す割合で混合した原料油を用い、下記のようにして調製したFDGOを使用して、これに第1表に示すようにLCO基材を混合して燃料油組成物を調製し、その性状及び性能を評価した。その結果を第1表に示した。尚、摩耗幅の値としてはポンプ性能から合格基準を0.5mm以下とし、貯蔵安定性については0.5mg/100cc以下、また貯蔵後色相については0.7以下を合格基準とした。また、使用したFDGO基材及びLCO基材は各々以下の方法にて調製した。
【0016】
FDGOの調製
下記性状の直留軽油(LGO)と分解軽油(LCO)との混合油を原料油として、水添脱硫装置(DH)を用いてCo−Mo触媒の存在下、全圧70kg/cm2 G、水素分圧50kg/cm2 G、反応温度340℃、LHSV:1.5h−1、水素/油比250Nm3 /キロリットルの条件で水添脱硫を行った。
脱硫後、ストリッパーで硫化水素とナフサを除去し、第1表に示す性状のFDGOを分離した。
【0017】
分解軽油(LCO)の調製
減圧軽油(VGO)/重質軽油(HGO)=2.1/1を原料油として、減圧軽油脱硫装置を用いてCo−Mo/アルミナ触媒の存在下、全圧75kg/cm2 G、反応温度380℃、LHSV=2.7h−1、水素/油比290Nm3 /キロリットルの条件で水添脱硫を行った。
生成油をホットなまま常圧蒸留し、VHHGO留分84.3重量%(沸点範囲330℃以上)とVHLGO留分13.2重量%(沸点範囲170〜330℃)を得た。
得られたVHHGOを流動接触分解装置(FCC)を用い、ゼオライト含有触媒の存在下、全圧2.5kg/cm2 G、反応温度510℃、触媒/油(重量)比8の条件で接触分解を行い、上記に示す性状のLCOを得た。
【0018】
尚、基材及び燃料油組成物の性状及び性能は次の方法によって求めた。
*1 密度 :JIS K 2249に準拠して測定した。
*2 蒸留性状 :JIS K 2254に準拠して測定した。
*3 硫黄分 :JIS K 2541に準拠して測定した。
*4 窒素分 :化学発光法により測定した。
*5 色相 :JIS K 2580−1993の参考1・石油製品の色試験方法(刺激値換算法)7.2に従って、ASTM色を測定した。
*6 全芳香族分 :HPLC法により測定した。
*7 多環芳香族分:HPLC法により測定した。
*8 セタン指数 :JIS K 2204に準拠して算出した。
*9 摩耗幅 :ASTM D 5001に準拠して摩耗跡の平均直径を測定した。摩耗量が少ない程潤滑性能は優れる。
*10 貯蔵安定性:ASTM D 4625−86に従い、43℃で13週間 貯蔵した後の不溶解分を100cc中の重量(mg/100 cc)で表した。尚、不溶解分は濾過分離可能不溶解分と付 着性不溶解分の合計であり、前者はASTM D 2274 −88(テフロン薄膜フィルター使用)に従い、後者はAS TM D 381に記載の空気噴射法により、160℃で溶 剤を蒸発させてそれぞれ定量した。
*11 貯蔵後色相 :上記貯蔵後のASTM色を測定した。
【0019】
【表1】
【0020】
第1表から明らかなように、LGOとLCOとを特定比率で深度脱硫装置のチャージに混合通油して得られたFDGOを使用すること、更にこれに特定量のLCOを配合することにより、硫黄分含量が低減され、潤滑性能が優れ、かつ色相がよく、貯蔵安定性に優れた軽油基材及び軽油組成物が得られた。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、接触分解軽油(LCO)を有効活用することができる一方で、色相、長期貯蔵安定性に優れ、深度脱硫軽油(FDGO)を用い、硫黄分含量を著しく低減した場合においても優れた潤滑性能が維持され、ディーゼル自動車のエンジンの燃料噴射ポンプに不具合を起こすことがなく、排ガスの悪化のないディーゼル軽油組成物を提供することができる。
Claims (6)
- 深度脱硫装置に97〜85容量%の硫黄分含量が0.05〜2.5重量%の直留軽油(LGO)及び3〜15容量%の分解軽油(LCO)を混合通油して、Co−Mo/アルミナ触媒,又はNi−Mo/アルミナ触媒の存在下で、30〜100kg/cm 2 Gの圧力下、300〜400℃の温度で、液空間速度(LHSV) 0. 5〜5h -1 の条件で深度脱硫を行い得られる深度脱硫軽油基材(FDGO)に、8容量%以下の分解軽油(LCO)を配合してなり、ASTM D 5001による摩耗跡の平均直径が0.5mm以下であることを特徴とするディーゼル軽油組成物。
- 分解軽油(LCO)が流動接触分解装置(FCC)または残渣流動接触分解装置(RFCC)から得られる留分であることを特徴とする請求項1記載のディーゼル軽油組成物。
- 硫黄分含量が500ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のディーゼル軽油組成物。
- 窒素分含量が60ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディーゼル軽油組成物。
- 多環芳香族分含量が3.5〜6容量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディーゼル軽油組成物。
- ASTMによる色相が0.7以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のディーゼル軽油組成物。
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