JP3817182B2 - 燃料油組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料油組成物に関し、詳しくは低温での流動性に優れ、燃焼性が良好で、かつ環境負荷の低い燃料油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、内燃用、外燃用燃料として、高発熱量であるとともに、良好な低温流動性、燃焼性、安定性を有し、さらに環境負荷の低い燃料油組成物が求められている。
通常、内燃用及び外燃用燃料油としては、灯油、軽油、A重油、C重油等があり、それぞれ用途に応じて使い分けられている。灯油は、硫黄含有量、窒素含有量及び残留炭素分の含有量が極めて低いため、環境負荷が低く、通常家庭用の暖房機器に好適に使用される。しかしながら、発熱量が低いため、さらに発熱量を必要とする用途に使用するには不十分である。
また、軽油は環境負荷が低く、良好な燃焼性を有し、ディーゼルエンジン用の燃料油として好適に使用される。しかしながら、発熱量は十分に高いとはいえず、一方、発熱量が高くなるように調製した場合には、低温流動性に劣る場合が多い。
また、A重油は安定供給の面で優れており、灯油に比較して高い発熱量を持つことから、小型ボイラー、ディーゼルエンジン等の用途に好適に使用されるが、最近はさらに高い発熱量を持つ燃料油組成物が要求されている。
【0003】
A重油の発熱量を向上させる方法としては種々の方法が提案されている。例えば高沸点留分の基材の混合比率を高くしたり、接触分解軽質軽油(LCO;light cyclic oil)の混合比率を大きくしたりする方法である。
しかしながら、前者は直留系基材の高沸点留分にはパラフィン分が多いため、最終製品の低温流動性が低下する場合があり、後者は使用時に着火不良が起きたり、煤が発生する等の燃焼不良が起こる場合がある。
【0004】
また、A重油より高い発熱量を有する燃料油としてC重油があるが、高粘度のため、加温設備が必要であり、取り扱いが不便な上、硫黄含有量、窒素含有量、残留炭素含有量が高くなり、環境への影響が大きいという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような状況下、環境負荷が低く、安定性、低温流動性及び燃焼性が良好で、かつ従来より高い発熱量を有する燃料油組成物を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々の研究を重ねた結果、目詰まり点が0℃より高く、かつ密度が0.880以上である直接脱硫軽油留分を70容量%以上含有し、かつ流動性向上剤(以下「FI」と記載することがある)を90〜900ppm含有する燃料油組成物であって、密度が0.8762より大きく、硫黄含有量が0.1重量%以下、目詰まり点が0℃以下、かつ流動点が−10℃以下である燃料油組成物が上記目的を達成することを見出し、本発明を完成したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料油組成物は、目詰まり点が0℃より高く、かつ密度が0.880以上である直接脱硫軽油留分を70容量%以上含有することを必須要件とする。直接脱硫軽油とは、原油を常圧蒸留装置によって分留した残渣油を直接脱硫装置で脱硫した際に得られる軽油留分をいう。尚、必要に応じ、前記残渣油に接触分解軽質軽油(LCO)を0〜30容量%混合することにより、直接脱硫装置の脱硫負荷を低減し、得られる軽油留分の密度の改善を図ることが可能である。
次に、直接脱硫装置とは、常圧蒸留残渣油を触媒の存在下、高温・高圧下で水素化脱硫する装置をいう。ここで使用する触媒としては、通常使用される水素化脱硫触媒であれば特に限定されず、Co−Mo系触媒、Ni−Mo系触媒、Ni−W系触媒、Ni−Co−Mo系触媒等が挙げられる。反応条件としては、反応温度350〜450℃、反応圧力20〜200kg/cm2、水素/油比200〜2000Nl/l、液空間速度(LHSV)0.5〜5hr-1の範囲が好ましい。
本発明では、該直接脱硫軽油留分を基材として使用することにより、高い密度と高い発熱量及び高い燃焼性を確保するものである。
【0008】
本発明では、直接脱硫軽油留分の目詰まり点が0℃より高いことが必須である。目詰まり点が0℃以下であると、十分な発熱量が得られない。この観点から目詰まり点は3℃以上であることがさらに好ましい。
また、直接脱硫軽油留分の密度は0.880以上であることが必須である。0.880未満であると、やはり十分な発熱量が得られない。
該直接脱硫軽油留分のその他の性状は、特に限定されないが、蒸留性状としては、初留点が225〜260℃、10%留出温度が250〜280℃、50%留出温度が300〜340℃、90%留出温度が345〜385℃及び終点が360〜405℃であることが好ましい。これらの蒸留性状を有することで、FIの添加効果に優れたものとなり、かつ高い安定性を確保することができる。
また、該直接脱硫軽油留分の50℃での粘度は3.3〜5.5mm2/secの範囲であることが好ましい。3.3mm2/sec以上であれば、最終製品が必要とする密度を確保することが容易となり、5.5mm2/sec以下であると燃焼性、取り扱い性の点から好ましいからである。
【0009】
また、該直接脱硫軽油留分の組成としては、上記必須要件を満足することを条件に特に限定されないが、飽和分が40〜70容量%、芳香族分が30〜60容量%、オレフィン分が1容量%以下であることが好ましい。これらの組成を有することで燃焼性、発熱量、安定性に優れるという利点があるからである。上記観点からさらには、飽和分が50〜60容量%、芳香族分が40〜50容量%、オレフィン分が0.5容量%以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の燃料油組成物は、前記直接脱硫軽油留分を70容量%以上含有することを必須とする。該留分が70容量%未満であると、最終製品である燃料油組成物の必要とする性状を得ることができないからである。この観点から直接脱硫軽油の好ましい含有量は80容量%以上であり、さらには90容量%以上である。本発明の燃料油は、上記直接脱硫軽油留分以外の成分として、本発明の目的を害さない範囲内で、燃料油に用いられる種々の基材を用いることができる。具体的には、脱硫処理した灯油留分(DK)、直留軽油を脱硫した脱硫軽油留分(DGO)、脱ろう軽油(DWGO)、接触分解軽質軽油(LCO)又は脱硫処理した接触分解軽質軽油等を用いることができ、またこれらの留分を適宜混合して使用することができる。さらにはこれらを水素化処理して用いることができ、また蒸留によってさらに分留した留分を使用することもできる。
【0011】
次に、本発明の燃料油組成物は、流動性向上剤を90〜900ppm含有することを必須とする。この範囲内であると燃料油組成物の十分な低温流動性が得られるとともに他の物性にも悪影響を及ぼさないからである。この観点から流動性向上剤の含有量は、180〜650ppmがさらに好ましい。
流動性向上剤としては、燃料油組成物の低温流動性を向上させるものであれば特に限定されないが、エチレン・ビニル共重合物又はトリスアミンのモノ脂肪酸エステル/エチレン・プロピレン共重合物を主成分とするものが好ましい。
【0012】
本発明の燃料油組成物は、内燃用燃料として使用する場合、そのセタン指数が45以上であることが好ましい。セタン指数が45以上であると、燃焼性が確保されるという点から好適だからである。この観点からセタン指数はさらに50以上であることが好ましい。尚、本発明の燃料油組成物においては、必要に応じ、セタン価向上剤を添加することができる。
また、本発明の燃料油組成物は、その密度が0.8762より大きいことが必須である。単位体積当たりの十分な発熱量を確保するためであり、またこれによって単位体積当たりの一酸化炭素排出量を軽減することができ、環境負荷を低減することができる。さらに、軽油取引税の観点からも好ましい。発熱量、環境負荷低減の観点から該燃料油組成物の密度は0.8800以上であることがさらに好ましい。
【0013】
また、該燃料油組成物の硫黄含有量は0.1重量%以下であることが必須である。硫黄含有量を0.1重量%以下とすることによって、燃焼した場合の硫黄酸化物量を低減することができ、環境負荷を低減することができる。この環境負荷低減の観点から、さらに硫黄含有量は0.08重量%以下であることが好ましい。
さらに、本発明の燃料油組成物は、その目詰まり点が0℃以下であることが必須である。良好な低温流動性を得るためである。この観点から目詰まり点は−5℃以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の燃料油組成物は、その流動点が−10℃以下であることが必須である。流動点が−10℃以下であると低温流動性の点で有利である。この観点から流動点は−15℃以下がさらに好ましい。
【0014】
本発明の燃料油組成物は、残炭が0.1重量%以下であることが好ましい。残炭が0.1重量%以下であると、スラッジ抑制及び燃料油組成物の安定性の点で好適である。かかる観点から残炭は0.05重量%以下がさらに好ましい。ここで残炭とは、JIS K 2270に準拠して測定した10%残炭をいう。
尚、本発明の燃料油組成物は、必要に応じて、残炭源を添加することができる。具体的には、接触分解残渣油、常圧蒸留残渣油、該常圧蒸留残渣油を脱硫したもの、減圧蒸留残渣油、エキストラクト等の残炭源を0.2容量%以下の範囲で添加することができる。
また、本発明の燃料油組成物は、50℃における粘度が1.0mm2/sec以上であることが好ましい。該粘度が1.0mm2/sec以上であることによって、ポンプ、エンジン等の制約を満足することができる。かかる観点から該粘度は1.8mm2/sec以上であることがさらに好ましい。
【0015】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
測定方法
1)セタン指数
JIS K 2204−1992に準じて測定した。
2)密度
JIS K 2249に準じて測定した。
3)動粘度
JIS K 2283に準じて測定した。
4)目詰まり点
JIS K 2288に準じて測定した。
5)流動点
JIS K 2269に準じて測定した。
6)10%残炭
JIS K 2270に準じて測定した。
【0016】
評価方法
1)低温流動性
◎ 目詰まり点が−5℃以下であり、かつ流動点が−15℃以下
〇 目詰まり点が0℃以下であり、かつ流動点が−10℃以下
× 目詰まり点が0℃を越えるか又は流動点が−10℃を越える場合
2)燃焼性
◎ セタン指数50以上
〇 セタン指数45以上
× セタン指数45未満
3)環境負荷性
◎ 密度が0.880以上、かつ硫黄含有量0.08重量%以下
〇 密度が0.8762を越え、かつ硫黄含有量0.1重量%以下
× 密度が0.8762以下又は硫黄含有量が0.1重量%を越える場合
【0017】
実施例1
第1表に記載する性状を有する直接脱硫軽油留分A(DSGO−A)100容量%に対して市販の流動性向上剤100重量ppm加えて燃料油組成物を調製し、低温流動性、燃焼性及び環境負荷性について測定を実施した。結果を第2表に示す。
【0018】
実施例2,3
流動性向上剤の含有量を第2表に示すものとした以外は実施例1と同様に燃料油組成物を調製し、低温流動性、燃焼性及び環境負荷性について測定を実施した。結果を第2表に示す。
【0019】
比較例1
流動性向上剤を添加しないこと以外は実施例1と同様にし、低温流動性、燃焼性及び環境負荷性について測定を実施した。結果を第2表に示す。
【0020】
比較例2,3
流動性向上剤の添加量を第2表に示すものとした以外は実施例1と同様に燃料油組成物を調製し、低温流動性、燃焼性及び環境負荷性について測定を実施した。結果を第2表に示す。
【0021】
比較例4
直接脱硫軽油A(DSGO−A)90容量%と脱硫灯油(DK)10容量%を混合して、燃料油組成物を調製し、低温流動性、燃焼性及び環境負荷性について測定を実施した。結果を第2表に示す。
【0022】
比較例5
第1表に記載する性状を有する直接脱硫軽油留分B(DSGO−B)100容量部からなる燃料油組成物の低温流動性、燃焼性及び環境負荷性について測定を実施した。結果を第2表に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003817182
*1 30℃の動粘度より換算した。
【0024】
【表2】
Figure 0003817182
【0025】
【表3】
Figure 0003817182
【0026】
【発明の効果】
本発明の燃料油組成物は、環境負荷が低く、安定性、低温流動性及び燃焼性が良好で、かつ従来より高い発熱量を有する燃料油組成物を提供することができる。

Claims (7)

  1. 目詰まり点が0℃より高く、かつ密度が0.880以上である直接脱硫軽油留分を70容量%以上含有し、かつ流動性向上剤を90〜900ppm含有する燃料油組成物であって、密度が0.8762より大きく、硫黄含有量が0.1重量%以下、目詰まり点が0℃以下、かつ流動点が−10℃以下である燃料油組成物。
  2. さらにセタン指数が45以上であることを特徴とする請求項1記載の燃料油組成物。
  3. 前記直接脱硫軽油留分の目詰まり点が3℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料油組成物。
  4. 前記直接脱硫軽油留分の50℃における動粘度が3.3〜5.5mm2/secであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料油組成物。
  5. 前記流動性向上剤の含有量が180〜650ppmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料油組成物。
  6. 前記セタン指数が50以上であることを特徴とする請求項1及び3〜5のいずれかに記載の燃料油組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の燃料油組成物において、該燃料油組成物の密度が0.880以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の燃料油組成物。
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