JP5275579B2 - ガソリン組成物 - Google Patents

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本発明は、硫黄分が10質量ppm以下で、各種のオレフィン化合物の含有量などを特定したガソリン組成物とその製造方法に関し、特には流動接触分解ガソリン基材を使用する酸化安定性に優れたガソリン組成物に関する。
ガソリンに含まれる硫黄分は燃焼により硫黄酸化物(SOx)となり、主に直噴車の排出ガス浄化触媒として用いられる窒素酸化物吸蔵触媒の活性点を被覆して被毒させることから、触媒上に吸着した硫黄酸化物を定期的に高温化し除去(再生)して被毒・劣化した触媒の機能を回復させることが必要である。直噴車ではこの工程が必要なため、燃費が犠牲となっている。この燃費の悪化による二酸化炭素排出量の増加を避けるため、国内のガソリン中の硫黄分は2005年1月から自主的に10質量ppm以下まで低減された。
一方、主要なガソリン基材として混合される流動接触分解ガソリンには、比較的多くの硫黄分と共に、比較的多くのオレフィン化合物が含まれている。このため、燃料タンク内での長期貯蔵や、燃料リターンによるエンジンの熱負荷により酸化され、その酸化によって生成する酸化劣化物の自動吸気弁への固着により出力低下や排ガス性状の悪化を招くことがあり、これを防止するために通常酸化防止剤が添加されている。
流動接触分解ガソリンに含まれるオレフィン化合物の中で、最も酸化安定性が悪い化合物は共役ジエンを有する化合物であり、1,3ブタジエンやイソプレン等が挙げられる。また、この他にも酸化安定性が次いで悪い化合物としてシクロペンタジエンやシクロペンテン、ヘキセン、ヘプテン等のオレフィン化合物が多種含有されており、これらオレフィン化合物の含有量を少なくする為にはオレフィンに水素を付加する精製方法があるが、オクタン価の高いオレフィンが減少することでオクタン価低下を招くこととなる。
ガソリンのオクタン価低下を抑えて酸化安定性を改善する方法として、比較的硫黄分は低いがオクタン価の高いオレフィン化合物を多く含有する接触分解ガソリンの軽質分を蒸留分離し、残りの留分の水素化脱硫により重質オレフィン含有量が少なくなった重質分解ガソリンを混合することで酸化安定性を向上することが知られている(特許文献1)。
また、SHUプロセスによって流動接触分解ガソリンに含まれる比較的軽質のジエン化合物を重質化して、その後蒸留分離することにより得た重質分のみを水素化脱硫し、再度軽質分と混合することにより流動接触分解ガソリンのジエン化合物を除去することも知られている(非特許文献1)。しかし、ジエン化合物以外に酸化安定性が悪いオレフィン化合物(例えば、シクロペンタジエンやシクロペンテン、ヘキセン、ヘプテン等)が残存することにより、酸化防止添加剤を添加しないと熱負荷により比較的容易に酸化劣化物が生成するという問題や長期保存が難しいという問題があった。
特開2006−028402号公報 Q. Debuisschert, 21st JPI Petroleum Refining Conference "Recent Progress in Petroleum Process Technology", p.37, 2003
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、酸化防止剤を添加しなくとも優れた酸化安定性を示すガソリン組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、流動接触分解ガソリンを使用したガソリンの酸化安定性を良好にする方法として、ジエン化合物の除去後、酸化安定性の悪いオレフィン化合物の含有量と、酸化安定性の良好な芳香族化合物の含有量を特定の範囲内に収めることが有効であることを見出し本発明に想到した。
すなわち本発明は、次のガソリン組成物及び該ガソリン組成物の製造方法である。
(1)硫黄分が10質量ppm以下、ジエン化合物が0.1容量%未満、オレフィン化合物含有量が10.0〜25.5容量%、シクロオレフィン化合物含有量が2.5容量%以下、シクロオレフィン化合物に対する炭素数9の芳香族の容量比が2.4以上、酸化安定度(JIS K2287により測定した誘導期間)が600分以上、及び潜在ガムが200mg/100mL以下であるガソリン組成物。
(2)次式で示される酸化安定度指数Aが0.20以下であり、及び含酸素化合物の含有量が酸素含有量で0〜2.7質量%である上記(1)記載のガソリン組成物、
酸化安定度指数A=(60×G)/(130×(960−Y))
ここで、Gは潜在ガム量(mg/100mL)、YはJIS K2287により測定した誘導期間(分)を示し、但し、酸化安定度指数Aは0以下の場合は0とする。
(3)流動接触分解ガソリン基材を60容量%以上混合し、酸化防止剤を添加しないで上記(1)又は(2)に記載のガソリン組成物を製造することを特徴とするガソリン組成物の製造方法。
本発明によるガソリン組成物は、上記の構成としたことにより、酸化防止剤を添加しなくても、流動接触分解ガソリンに多く含まれるオレフィン化合物による酸化安定性の悪化を防止できるため、硫黄分が低く、オクタン価が比較的高く、特に良好な酸化安定性を示すという格別な効果を奏する。
[ガソリン組成物]
本発明のガソリン組成物は、自動車用の排出ガス浄化触媒の劣化を防止する観点から、硫黄分は10質量ppm以下であり、好ましくは8質量ppm以下、より好ましくは6質量ppm以下である。硫黄分をこの範囲に調整する為には、ガソリン組成物の主な基材である流動接触分解ガソリンの硫黄分を低減しておくことが好ましい。流動接触分解ガソリンの硫黄分を低減するには、流動接触分解装置において原料油硫黄分が低いものを用いること、流動接触分解装置において脱硫機能をもつ流動接触分解触媒や添加剤を用いること、流動接触分解ガソリンを脱硫すること、あるいはこれらの2つ以上を組み合わせることが好ましい方法として挙げられる。
本発明のガソリン組成物は、オレフィン化合物を10〜25.5容量%含有する。オレフィン化合物の含有量が10容量%未満では、所望のオクタン価のガソリン組成物を得ることが難しくなり、また、25.5容量%を超えると、比較的酸化安定性が良好な芳香族化合物含有量との含有量バランスが悪くなる。オレフィン化合物含有量の下限は、15容量%以上が好ましく、特には17容量%以上が好ましい。一方、オレフィン化合物含有量の上限は、24.0容量%以下が好ましく、特には23.0容量%以下が好ましい。オレフィン化合物含有量をこの範囲に調整する方法として、流動接触分解装置における反応温度を450〜550℃の範囲に設定すること、接触分解ガソリンを水素化脱硫する際にオレフィン分を適度に水素化して低減し、特に低減し過ぎないことが挙げられる。
ジエン化合物は極めて酸化安定性が悪く、特に酸化防止剤を添加しない場合は酸化劣化が容易に起こる。このため本発明のガソリン組成物は実質的にこれを含まず0.1容量%未満である。ジエン化合物の含有量をこの範囲にする為には、オレフィン分を損なわずにジエンのみを選択的に除去することが好ましく、例えばAxens社のSHUプロセスによって処理することが挙げられる。
また、オレフィンの中でもシクロオレフィン化合物は比較的酸化安定性が悪い化合物である。そのため、その含有量は2.5容量%以下であり、好ましくは2.4容量%以下、より好ましくは2.3容量%以下である。このシクロオレフィン化合物の含有量をこの範囲に調整する方法として、流動接触分解装置の反応温度を505℃以下にすることや、接触分解ガソリンを水素化脱硫する際にシクロオレフィンを適度に水素化して低減することが挙げられる。
炭素数9の芳香族は、酸化安定性を良好にする。その含有量の割合は、シクロオレフィン化合物に対する炭素数9の芳香族の容量比で2.4以上、好ましくは2.6以上、より好ましくは2.8以上、特には3.0以上である。炭素数9の芳香族でも特に側鎖の置換位置の対象性がよい、例えば1,3,5−トリメチルベンゼンが多いほど活性酸素を補足し易く、酸化安定性が良好である。この炭素数9の芳香族含有量をこの範囲にする為には、流動接触分解ガソリンの90容量%留出温度を150〜180℃にする。また、側鎖の置換位置の対象性がよい芳香族化合物含有量を多くする為には、流動接触分解の反応温度を高くする方が有利であるが、あまり高いとオレフィン化合物含有量が多くなりすぎる為、490〜505℃にすることが好ましい。
本発明のガソリン組成物は、JIS K2287のガソリンの酸化安定度試験方法に規定する誘導期間が600分以上であり、好ましくは800分以上である。誘導期間をこの範囲にする為には、流動接触分解ガソリンの混合比率を少なくする方法があるが、ガソリンの生産量が減少する。この為、前述の通り流動接触分解装置における反応温度を450〜550℃の範囲に設定すること、接触分解ガソリンを水素化脱硫する際にオレフィン分を適度に水素化して低減することが好ましい。
また、本発明のガソリン組成物は、潜在ガムが200mg/100mL以下であり、好ましくは100mg/100mL以下、より好ましくは50mg/100mL以下、特には40mg/100mL以下である。なお、潜在ガムはJIS K2276の航空燃料油試験方法に従って求めた値である。潜在ガムをこの範囲にする為には、流動接触分解装置における反応温度を450〜550℃の範囲に設定すること、接触分解ガソリンを水素化脱硫する際にオレフィン分を適度に水素化して低減することが好ましい。
さらに、本発明のガソリン組成物は、次式で示される酸化安定度指数Aが0.20以下であることが好ましく、より好ましくは0.10以下である。
酸化安定度指数A=(60×G)/(130×(960−Y))
ここで、Gは潜在ガム量(mg/100mL)、YはJIS K2287により測定した誘導期間(分)をいう。但し、酸化安定度指数Aは0以下の場合は0とする。
この酸化安定度指数Aは、前述の酸化安定度及び潜在ガムの試験方法が加速試験であるため、潜在ガムの発生量を、所用試験時間である960分から酸化安定度の時間を差し引いた時間で割ることにより、酸化劣化速度を算出し、さらに試験温度と実用上の温度から酸化劣化速度を補正した指標である。この酸化安定度指数Aが小さいほど、初期の酸化劣化で生成するガム量が少なくなることを意味する。
含酸素化合物は、酸素含有量で0〜2.7質量%含有することができる。含酸素化合物は比較的酸化反応性が高いことから、2.0質量%以下が好ましく、さらに好ましくは1.5質量%以下、特には1.0質量%以下である。また、オクタン価向上効果を発揮するために、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特には0.5質量%以上である。
含酸素化合物としては、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、エチルt−ブチルエーテル(ETBE)、t−アミルエチルエーテル(TAEE)、エタノール、メタノール等が挙げられる。これらの含酸素化合物中の硫黄分は、自動車用触媒の劣化防止から好ましくは2.0質量ppm以下、さらに好ましくは1.0質量ppm以下、特には0.5質量ppm以下である。
本発明のガソリン組成物は、前述の各構成条件を満たすことにより、酸化安定性が優れるため、酸化防止剤を添加することを要さない。
〔ガソリン基材〕
本発明のガソリン組成物として多く混合される流動接触分解ガソリンは、軽油から減圧軽油までの石油留分の他、重油間接脱硫装置から得られる間脱軽油、重油直接脱硫装置から得られる直脱重油、常圧残さ油などを原料として用い、無定形シリカアルミナ、ゼオライトなどの触媒と接触分解させて得られる高オクタン価のガソリン基材である。接触分解装置としては、公知の任意の製造プロセスを採用できる。例えば石油学会編「新石油精製プロセス」に記載のあるUOP接触分解法、フレキシクラッキング法、ウルトラ・オルソフロー法、テキサコ流動接触分解法などの流動接触分解法、RCC法、HOC法などの残油流動接触分解法などが挙げられる。
また、流動接触分解ガソリン基材は、硫黄含有量の比較的多い基材である。したがって、流動接触分解原料油を予め脱硫してから流動接触分解したり、あるいは得られた流動接触分解ガソリンから、選択的水素化脱硫、抽出、吸着、収着などの操作によって硫黄分を除去することが好ましい。なお、ここでいう選択的水素化脱硫とはオレフィン分をあまり水素化せずに脱硫することである。また、流動接触分解ガソリンから硫黄分を選択的水素化脱硫や収着によって除去するような場合、事前にジメチルホルムアミド(DMF)やアセトニトリルなどを用いた抽出蒸留法や水素化法によって予めジエンを除去しておくと効果的に硫黄分を低減することができる。選択的水素化脱硫を行った場合には、硫化水素とオレフィンが反応してメルカプタンが生成し流動接触分解ガソリンの品質が悪化するため、炭素数4以上のメルカプタンを除去できるプロセスにてスイートニング処理をすることが好ましい。
本発明の一実施形態を以下に記す。重油間接脱硫装置から得られる間脱軽油を原料油として接触分解することにより得られた流動接触分解ガソリンに対してPrime−G+プロセスを適用する。このプロセスでは、まずSHUゾーンにおいて反応温度100〜160℃、反応圧力1〜3MPa、液空間速度(LHSV)2〜5hr−1、H/Oil=1〜20L/Lの条件下でメルカプタン類の重合とジエン類の除去を行う。次いで、重質留分の40容量%を蒸留分離後、硫黄分を比較的多く含むその重質留分を、オレフィン分をあまり水素化せずに脱硫する選択的水素化脱硫ゾーンにて反応温度200〜300℃、反応圧力1〜3MPa、LHSV=1〜4hr−1、H/Oil=150〜650L/Lの条件下で処理する。さらに硫黄を除去するために、Mericat−IIプロセスにてスイートニング処理してもよい。このようにして得られた流動接触分解ガソリンの重質留分はガソリン基材として用いることができるが、前記蒸留分離した軽質留分と再度混合してフルレンジの流動接触分解ガソリン基材として使用することもできる。
本発明によるガソリン組成物に用いる、流動接触分解ガソリン基材以外のガソリン基材として、ブタン留分(C4)、脱硫ナフサ留分を分留して得られるイソペンタン留分(IC5)、脱硫軽質ナフサ留分(DS−LG)、脱硫重質ナフサを接触改質して得られる接触改質ガソリン、あるいは、接触改質ガソリンをさらに分留して得られた炭素数7の炭化水素を主とする留分(AC−7)や炭素数9の炭化水素を主とする留分(AC−9)、ブチレンを主成分とする留分とイソブタンを主成分とする留分とを硫酸触媒により反応させて得たアルキレートガソリン(ALKG)などが挙げられる。その他、前記記載の含酸素ガソリン基材等が挙げられる。これらのガソリン基材は、硫黄分を全く含まないか、殆ど含まないガソリン基材である。また、その他に熱分解装置の軽質留分である軽質熱分解ナフサもガソリン基材としてあげられるが、硫黄分を含む場合があるのでその場合は事前に脱硫しておくことが好ましい。
[配合]
本発明のガソリン組成物は、上記のように処理して得た流動接触分解ガソリン基材をガソリン全体に対して60容量%以上含有されるように配合することにより調製することができる。流動接触分解ガソリン基材の配合量は、好ましくは70容量%以上であり、より好ましくは75容量%以上である。こうして調整されたガソリン組成物は、硫黄分が低く、オクタン価が比較的高く、さらに、酸化防止剤を特に添加しなくても、良好な酸化安定性を示す。また、プレミアムガソリンを調製する場合には、流動接触分解ガソリンを蒸留分離した軽質流動接触分解ガソリンを25容量%以上配合することが好ましく、より好ましくは30容量%以上、特には35容量%以上である。
また、流動接触分解ガソリン基材以外のガソリン基材の配合に関し、ガソリン組成物全体における軽質熱分解ナフサ基材の配合量は0.1〜30.0容量%が好ましく、レギュラーガソリン及びプレミアムガソリンともに混合することができるが、通常プレミアムガソリンに用いる軽質接触分解ガソリン基材の替わりに軽質熱分解ナフサ基材を混合すると、プレミアムガソリンに混合される軽質接触分解ガソリン基材の製造コスト低減が図れるばかりでなく、蒸留過程で製造される重質接触分解ガソリンの量が減少することで、このガソリン基材が主に使用されるレギュラーガソリンの軽質化を図ることができる。
〔他の添加物〕
さらに、本発明のガソリンには、当業界で公知の燃料油添加剤の1種又は2種以上を必要に応じて配合することができる。これらの配合量は適宜選べるが、通常は添加剤の合計配合量を0.1質量%以下に維持することが好ましい。本発明のガソリンで使用可能な燃料油添加剤を例示すれば、シッフ型化合物、チオアミド型化合物などの金属不活性化剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどの清浄分散剤、多価アルコール又はそのエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの帯電防止剤、アゾ染料などの着色剤を挙げることができる。これらの添加剤を使用する場合は酸化安定性が悪化する場合があるので、添加剤添加前後で酸化安定度が悪化しないことを確認することが必要である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例となるガソリン組成物を調製するに際して、用いたガソリン基材は、次のものである。
ALKG:
ブチレンを主成分とする留分とイソブタンを主成分とする留分とを硫酸触媒によりアルキル化反応させて得た、いわゆるアルキレートガソリン(ALKG)であり、炭素数8のイソパラフィン分の高い炭化水素を主成分とする。
FCCG:
中東系原油の減圧軽油留分を水素化精製処理して得た間接脱硫軽油を流動床式反応装置を用いて固体触媒により接触分解して得たガソリン留分を選択的水素化脱硫処理し、さらにスイートニング処理することにより得た流動接触分解ガソリン(FCCG)であり、オレフィン分の高い炭化水素油である。ここで、選択的水素化脱硫処理はAxens社のPrime−G+プロセス、スイートニング処理はMerichem社のMericat−IIプロセスによって行った。
FCCG2:
中東系原油の減圧軽油留分を水素化精製処理して得た間接脱硫軽油と常圧蒸留残渣を水素化精製処理した直接脱硫重油を60:40の割合(容量)で混合し、流動床式反応装置を用いて固体触媒により接触分解して得たガソリン留分を選択的水素化脱硫処理し、さらにスイートニング処理することにより得た、オレフィン分の高い流動接触分解ガソリン(FCCG2)である。ここで、選択的水素化脱硫処理はAxens社のPrime−G+プロセス、スイートニング処理はMerichem社のMericat−IIプロセスによって行った。
AC−9:
脱硫重質ナフサを接触改質して得た改質ガソリンを蒸留分離して得た重質改質ガソリン(AC−9)であり、炭素数9及び10の炭化水素を90%以上含有し、炭素数11以上の炭化水素の含有量は5%以下である。
上記4種類のガソリン基材の性状を表1に示す。これらのガソリン基材を、表2の上部に示す基材配合量(容量%)でブレンドし、実施例1〜4及び比較例1のガソリン組成物を調製し、酸化安定性等の実用性能を評価した。また、比較例2として市販レギュラーガソリンについても評価した。実施例1〜4及び比較例1〜2のガソリン組成物の性状及び評価結果を表2に併せて示す。
Figure 0005275579
Figure 0005275579
なお、表1及び表2に示すガソリン基材及びガソリン組成物の性状試験、及び評価試験は、次の方法により実施した。
1)密度:JIS K2249「原油及び石油製品−密度試験方法」
2)リサーチ法オクタン価(RON):JIS K2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」のリサーチ法オクタン価試験方法
3)蒸気圧(RVP):JIS K2258「原油及び燃料油−蒸気圧試験方法−リード法」
4)蒸留性状:JIS K2254「石油製品−蒸留試験法」
5)硫黄分:JIS K2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」の微量電量滴定式酸化法に準拠して、小数点以下2桁まで求めた。
6)オレフィン量、シクロオレフィン化合物(CYOL)含有量、炭素数9の芳香族(AC9)含有量、ジエン量、共役ジエン量、ジエン価:JIS K2536−2(ガスクロマトグラフによる全成分の求め方)により、オレフィン量、シクロオレフィン化合物(CYOL)含有量、炭素数9の芳香族(AC9)含有量を求めた。ジエン量は二重結合を二つ持つ成分の合計量(容量%)として求め、共役ジエン量は共役ジエン結合を有する化合物の合計量(容量%)として求めた。また、ジエン価はUOP326の「無水マレイン酸の付加反応によるジエン価」に従い、指示薬滴定法により測定した。
ジエン価及びジエン量により検出される化合物はともに接触分解ガソリン及び熱分解ガソリンに多く含まれ、特有の臭気をもつ他、特にジエン価が高い場合はガソリンの酸化安定性を悪化させる。
7)酸化安定度(誘導期間):JIS K2287「ガソリン−酸化安定度試験方法−誘導期間法」に規定する方法
8)潜在ガム:JIS K2276「石油製品−航空燃料油試験方法」で規定されている酸化安定度試験方法で酸化させた後、沈殿物を除いて、ろ液を実在ガム試験で求める。潜在ガムは不溶性ガム、可溶性ガムの合計量である。
9)未洗実在ガム:JIS K2261「自動車ガソリン及び航空燃料油−実在ガム試験方法−噴射蒸発法」に規定する方法。試料は後述の循環試験において100時間経過時に採取したものを用いた。
循環試験は、次の方法により行った。
燃料タンクを模した内容積23Lのステンレスタンク中に燃料を16L入れ、この燃料をポンプでシリコンオイルの入った恒温槽中の蛇管に送って加温し、次いで燃料タンク上部に設けた凝縮器を通して冷却してステンレスタンクに戻す循環試験を行った。恒温槽の温度は、65〜66℃に調節して燃料の油温が60℃になるよう調節した。また、凝縮器には、−5〜−10℃の冷却水を流して燃料の蒸発ガスを回収した。燃料は0.10L/分の流量で流し、試験は昼間8〜9時間循環して加温・冷却を繰り返し、夜間は休止するサイクルを延べ300時間に達するまで行った。その間、50時間毎に燃料を抜き出し、未洗実在ガムを測定した。
吸気弁の汚れ及び始動性の評価(実車走行試験)
酸化安定性が悪い燃料を用いると、吸気ポートに燃料を噴射する車両の吸気弁に、吸気ポート内で酸化劣化した粘着性のガム状物質が付着し、吸気弁の作動不良による走行不良や始動不良を起こす。この為、酸化安定性の許容範囲を調査する目的で次の試験を行った。
酸化安定性が異なる燃料を用いて、前述の循環試験装置により、100時間循環試験を行った後に、未洗実在ガムが増加した当該燃料を、2.0LのPFI(Port Fuel Injection)方式の車両(車名:トヨタ チェーサー、型番1G−EU)に給油して下記の条件で実車走行試験を行った。
実車走行試験条件:
エンジン始動10秒後にアクセルを全開して時速88km/hrに到達後、15分間走行し、その後ブレーキにより10秒後に走行停止し、45分間、アイドリング後に運転停止する。
この操作を100回(走行とアイドリングの合計時間100時間)行う。
外気温度は40℃とする。
この循環試験に用いた燃料1は1991年に採取された酸化防止剤が添加されていないオレフィン分が49.8容量%、硫黄分が50質量ppmの流動接触分解ガソリンであり、燃料2は酸化防止剤が添加されたオレフィン分が33.6容量%、硫黄分が50質量ppmの流動接触分解ガソリンである。これら燃料1及び燃料2はいずれもオレフィン分及び硫黄分が高く、燃料2には酸化防止剤が添加されており、酸化安定性の許容範囲を調査する為に選択したものである。
実車走行試験後、CRC法に従い吸気弁の使用前後における重量増加と、汚れの評価に該当するCRC評点(1〜9)にランク付けした。CRC評点は写真による外観(バルブの汚れ具合)判定であり、大きいほど良好である。また、当該車両の始動性を水温20℃でセルを5秒かけて15秒休みの繰り返しを行い、何回で始動するか、そのクランキング回数で評価した。評価結果を表3に示す。
Figure 0005275579
表3から循環試験後の未洗実在ガムが少ないほど、実車試験の吸気弁の汚れ量(IVD:Intake Valve Deposition)が少なく、CRC評点が高いことがわかる。また、循環試験後の未洗実在ガムが少ないほど、実車試験の始動性が良好である。したがって、表2をみると、循環試験後の未洗実在ガムは、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4では少なく、比較例1及び比較例2では多いことから、本発明のガソリン組成物は、吸気弁の汚れ量が少なく、CRC評点が高く、始動性などに優れ、実用性能に優れているものと期待される。

Claims (2)

  1. 硫黄分が10質量ppm以下、ジエン化合物が0.1容量%未満、オレフィン化合物含有量が10.0〜25.5容量%、シクロオレフィン化合物含有量が2.5容量%以下、シクロオレフィン化合物に対する炭素数9の芳香族の容量比が2.4以上4.0以下、酸化安定度(JIS K2287により測定した誘導期間)が600分以上、及び潜在ガムが200mg/100mL以下であるガソリン組成物。
  2. 酸素化合物の含有量が酸素含有量で0〜2.7質量%である請求項1記載のガソリン組成物。
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