JP3578288B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、精密電気・電子部品に特に好適に用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂組成物をカーボンファイバー(CF)で強化することにより、機械強度,摺動性,導電性が向上することは既に知られている。また、この組成物の異方性を低下させ、寸法精度を向上させるために、種々の技術、たとえばCFの繊維長を短くした組成物(特公昭63−63590号公報)、また、マイカを充填した組成物(特公昭64−3230号公報)が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特公昭63−63590号公報に開示された組成物では、繊維長の短いCFだけを用いて機械強度,寸法精度,導電性のバランスを取る場合、特に導電性の面で限界があり、またコストの面からも飛躍的に高価なものとならざるを得なかった。従って、アルミ等の金属部品をPAS樹脂組成物で代替しようとした場合、他の方法を考慮せざるを得なかった。
また、特開昭64−3230号公報に開示されたように、PASとマイカとを単純に混合しただけでは、剛性と導電性が著しく不足するため、寸法精度と導電性のバランスをとるのが非常に困難であった。これに対し、マイカに導電処方を施したり、カーボンファイバーや導電性カーボンブラックを添加することが考えられるが、金属で表面処理したマイカを用いた場合、樹脂の分解が金属により促進され、物性や製品外観に悪影響を起こすおそれがあり、また、導電性向上の効果も少なかった。一方、カーボンファイバーや導電性カーボンブラックを添加した場合、安定した導電性は得られるものの、長繊維が多く1/1000程度の高度な寸法精度を求めることはできなかった。また、この公報に開示されたものは、フロゴバイト系マイカ(金マイカ/スゾライトマイカ)に限定したものであるが、これはマスコバイト系マイカ(白マイカ)と比較すると、軟質であり、他の含有物が多い。従って組成物とした場合も、強度、弾性率、耐酸性などの面で、劣ったものとならざるを得なかった。
【0004】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、安定した導電性および高度な寸法精度を有する部品を、一度の成形処理で得ることができるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明によれば、下記(A),(B),(C)および(D)成分を主要成分として含有し、カーボンファイバー(C)中の、アスペクト比(l/d,l:平均繊維長,d:平均繊維径)が10以下のカーボンファイバーの含有量が、カーボンファイバー(C)全量の60重量%以上であり、かつ、そのカーボンファイバー(C)中の、アスペクト比が10を超えるカーボンファイバーの含有量が、マイカ(B)およびカーボンファイバー(C)の合計量の25重量%以下であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提供される。
【0007】
また、その好ましい態様として、前記マイカ(B)中の、SiO2成分とAl2O3成分との合計含有量が、マイカ(B)全量の75重量%以上であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提供される。
【0010】
さらに、その好ましい態様として、前記カーボンファイバー(C)の全量が、繊維径が18〜30μmのミルドカーボンファイバーであることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提供される。
【0011】
以下、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を具体的に説明する。
1.組成成分
(1)ポリアリーレンスルフィド(A)
本発明に用いられるポリアリーレンスルフィド(PAS)(A)は、構造式−Ar−S−(ただしArはアリーレン基)で示される繰り返し単位を70モル%以上含有する重合体で、その代表的物質は、下記構造式(I)
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R1は炭素数6以下のアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、カルボン酸/金属塩、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、フッ素,塩素,臭素等のハロゲン原子から選ばれる置換基であり、mは0〜4の整数である。また、nは平均重合度を示し1.3〜30の範囲である)で示される繰り返し単位を70モル%以上有するポリフェニレンスルフィドである。中でもα−クロロナフタレン溶液(濃度0.4g/dl)、206℃における対数粘度が0.1〜0.5(dl/g)、好ましくは0.13〜0.4(dl/g)、さらに好ましくは0.15〜0.35(dl/g)の範囲にあるものが適当である。
【0014】
本発明の組成物では、分子量については、前記対数粘度の範囲内で、かつ溶融粘度(ηapp)が、50〜4,000(ポイズ)が好ましく、80〜2,000(ポイズ)がさらに好ましく、極端に機械的強度に悪影響を与えず、低分子量のものを好適に用いることができる。
ここで、ηapp とは、細管粘度計で測定した樹脂温度300℃、剪断速度200sec−1の見かけ粘度をいう。
【0015】
PASは一般にその製造法により実質上線状で分岐、架橋構造を有しない分子構造のものと、分岐や架橋構造を有する構造のものが知られているが本発明においてはその何れのタイプのものについても有効である。本発明に用いるのに好ましいPASは繰り返し単位としてパラフェニレンスルフィド単位を70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである(以下PPSと略称)。この繰り返し単位が70モル%未満だと結晶性ポリマーとしての特徴である本来の結晶性が低くなり充分な機械的物性が得られなくなる傾向があり好ましくない。共重合構成単位としては、例えばメタフェニレンスルフィド単位、オルソフェニレンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンケトンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンスルホンスルフィド単位、p,p’−ビフェニレンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンエーテルスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンメチレンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンクメニルスルフィド単位、ナフチルスルフィド単位などが挙げられる。また、本発明のポリアリーレンスルフィドとしては、前記の実質上線状ポリマーの他に、モノマーの一部分として3個以上の官能基を有するモノマーを少量混合使用して重合した分岐または架橋ポリアリーレンスルフィドも用いることができ、また、これを前記の線状ポリマーにブレンドした配合ポリマーも用いることがで好適である。さらにまた、本発明に使用する(A)成分としてのPASは、比較的低分子量の線状ポリマーを酸化架橋または熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも使用できる。
前記PAS樹脂は、例えばジハロ芳香族化合物と、硫黄源とを有機極性溶媒 中でそれ自体公知の方法により重縮合反応させることにより得ることができる。
【0016】
前記ジハロ芳香族化合物としては、例えばジハロベンゼン類、アルキル置換ジハロベンゼン類または、シクロアルキル置換ジハロベンゼン類、アリール置換ジハロベンゼン類、ジハロビフェニル類、ジハロナフタレン類などを挙げることができる。
これらのジハロ芳香族化合物における2個のハロゲン元素は、それぞれフッ素,塩素,臭素またはヨウ素であり、それらは同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0017】
前記硫黄源としては、硫化リチウム,硫化ナトリウム等のアルカリ金属硫化物、硫化カルシウム,硫化バリウム等のアルカリ土類金属硫化物などを挙げることができる。また、前記アルカリ金属硫化物またはアルカリ土類金属硫化物は、水硫化リチウム,水硫化ナトリウム等のアルカリ金属水硫化物、または、水硫化カルシウム,水硫化バリウム等のアルカリ土類金属水硫化物のそれぞれと、アルカリ金属水酸化物等の塩基との反応によって得られるものであってもよい。
【0018】
前記有機極性溶媒としては、例えばアミド化合物,ラクタム化合物,尿素化合物,環式有機リン化合物、スルホン系化合物等の有機溶媒を挙げることができる。これらの好適例としては、N−アルキルラクタム特にN−アルキルピロリドンおよびスルホランを挙げることができる。
【0019】
この発明においては、前記重縮合反応の際に、活性水素含有ハロ芳香族化合物、1分子中に3個以上のハロゲン原子を有するポリハロ芳香族化合物、ハロ芳香族ニトロ化合物等の分岐剤、モノハロ芳香族化合物等の分子量調整剤などを適宜反応系に添加することにより得られたPAS樹脂であってもよい。前記分岐剤、分子量調整剤等の使用により、重縮合反応により生成するPAS樹脂の分岐度を増加させたり、分子量をさらに増加させたり、または残存含塩量を低下させるなど、PAS樹脂の諸特性が改善される。
【0020】
前記PAS樹脂の好適例としては、例えば下記構造式(II)で示されるポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと称することがある。)樹脂を挙げることができる。
【0021】
【化2】
【0022】
前記PPS樹脂は、米国フィリップスペトローリアム社より「ライトン」の商標で一般に市販されている。その製造方法は米国特許第3,354,129号明細書およびそれに対応する特公昭45−3368号公報に開示されており、N−メチルピロリドン溶媒中で160〜250℃に加熱しながら、加圧条件下にパラジクロルベンゼンと硫化ナトリウム(Na2S・H2O)とを反応させることにより製造することができる。また、特公昭52−12240号公報、特公昭53−25588号公報および特公昭53−25589号公報に開示されているように酢酸リチウムまたは塩化リチウム等の触媒を併用すると更に高重合度化したPPS樹脂を製造することもできる。
【0023】
(2)マイカ(B)
本発明に用いられるマイカ(B)としては、特に制限はないが、たとえば、一般的にプラスチック用充填材として用いられる、マスコバイト系マイカK2Al4(AlSi3O10)2(OH)4(白マイカ)、フロゴバイト系マイカK2Mg6(AlSi3O10)2(OH)4(金マイカ)などを挙げることができる。
中でも、マスコバイト系マイカ(白マイカ)を用いることが好ましい。これを用いると高強度・高剛性のものが得られるため、離型時の変形が抑制され、成形品の寸法精度がさらに向上する。
【0024】
本発明に用いられるマイカの形状としては、特に制限はないが、重量平均粒径が10〜500μm、重量平均アスペクト比が10〜100の範囲にあるものが好ましい。また、重量平均粒径が30〜300μm、重量平均アスペクト比が20〜80の範囲にあるものがさらに好ましい。さらに、重量平均粒径が80〜250μm、重量平均アスペクト比が40〜70の範囲にあるものが最も好ましい。重量平均粒径が、10μm未満であると機械強度及び寸法精度の効果が充分寄与されず、500μmを超えると組成物の混練が困難になる。また、重量平均アスペクト比が10未満であると機械強度への効果が充分寄与されず、100を超えるのは必然的に粒径の大きいものとなるため、組成物の混練が困難になる。
【0025】
また本発明に用いられるマイカ(B)は、シランカップリング剤などで表面処理してあった方が好ましく、また、導電性を上げるために任意の処方を施したものであってもよい。
【0026】
このマイカ(B)の組成割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対して、200〜30重量部とし、150〜50重量部が好ましい。30重量部未満であると、寸法精度への効果が充分寄与されず、200重量部を超えると、組成物の混練が困難になり、成形時の流動性も悪くなる。
【0027】
(3)カーボンファイバー(C)
本発明に用いられるカーボンファイバー(CF)(C)の原料としては特に制限はないが、たとえばPAN(アクリロニトリル)系,ピッチ系,セルロース系、その他芳香族系等を挙げることができる。また、CF表面をエポキシ化合物やポリウレタン樹脂,ポリアミド樹脂などの公知の処理剤で表面処理したものであってもよい。
【0028】
具体的には、平均繊維径が30μm以下のものが好ましい。ただし、このCF中、アスペクト比の平均が10以下のCFの含有量がCF全量の60重量%以上であり、かつ、アスペクト比の平均が10を超えるCFの含有量が、前記マイカ(B)およびCF(C)の合計量の25重量%以下であることが好ましい。CF全量にアスペクト比の平均が6以下のミルドCFを用いることがさらに好ましい。CF全量に繊維径18〜30μmのミルドCFを用いることが表面外観が良く、良導電の成形品を得ることができ、かつ寸法精度に悪影響を与えることがないため最も好ましい。
【0029】
このカーボンファイバー(C)の組成割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対して、150〜30重量部とし、120〜40重量部が好ましい。
30重量部未満であると、補強効果が充分ではなく、また充分な導電性を得ることができない。また、150重量部を超えると、組成物の混練が困難になると同時に、成形した場合異方性が生ずるので寸法精度上好ましくなく、また原料費も上昇する。
【0030】
(4)導電性カーボンブラック(D)
本発明に用いる導電性カーボンブラック(D)としては、特に制限はないが、たとえばアセチレンブラックやオイルファーネスブラックなどの高ストラクチャーカーボンブラックの粒子を挙げることができる。中でも、粒度(d50)が100nm以下、窒素比表面積が10〜5,000m2 /g、DBP吸油量が50cm3 /100g以上、950℃での加熱脱着ガスが2%以下のものが好ましい。
【0031】
この導電性カーボンブラック(D)の組成割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対して、30〜0.5重量部とし、20〜1重量部が好ましい。
0.5重量部未満であると、導電性への効果が充分寄与されず、また30重量部を超えると、組成物の混練が困難になり、成形時の流動性も悪くなる。
【0032】
2.組成物の調製
本発明のPAS樹脂組成物の調製については、特に制限はないが、たとえば、上記各成分を公知の方法で溶融混練し、樹脂中に均一に分散・混合することを挙げることができる。この場合の混練においては、単軸混練機,二軸混練機などを用いることができ、混練条件は通常PASの調製の条件を用いることができる。従って、360℃以上の高温や、極度の高速回転は好ましくない。また、この樹脂組成物には、顔料,熱安定剤,酸化防止剤,耐候剤,核剤,滑剤,可塑剤などを適量添加してもよい。さらに他の熱可塑性樹脂を適量加えてもよい。このようにして得られたペレット状の組成物を、熱可塑性樹脂用の成形機、例えば、射出成形機,圧縮成形機,射出圧縮成形機を用いて成形することによって、所望の形状の成形品を得ることができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
[実施例1]
ポリアリーレンスルフィド樹脂(出光石油化学社製 ηapp =500ポイズ)2,000g、マイカ1(クラレ社製 80−D,成分;K2Al4(AlSi3O10)2(OH)4(白マイカ),重量平均粒径;200μm,重量平均アスペクト比;60,表面処理;無処理)1,840g、CF1(呉羽化学工業社製 ミルドCF M−101T,平均繊維径;18μm,アスペクト比;6)1,720g、およびCB(ライオン社製 ケッチェンブラックEC−600JD,粒度(d50);25nm,窒素比表面積;1,000m2/g,DBP吸油量;350cm3/100g,950℃での加熱脱着ガス;0.8%)160gをドライブレンドした後、二軸混練機(東芝機械社製 TEM35)にて、シリンダー温度300〜340℃に設定して溶融混練して樹脂組成物を得た。
【0034】
[実施例2]
実施例1において、マイカ1の配合量を、1,840gから1,600gに、かつ、CF1の配合量を、1,720gから1,260gに変えたこと以外は実施例1と同様にした。
【0035】
[実施例3]
実施例2において、CF1の代わりに、CF2(三井鉱山社製 ミルドCF M20−100,平均繊維径;20μm,アスペクト比;5)を1,260g配合したこと以外は実施例2と同様にした。
【0036】
[実施例4]
実施例2において、CF1の代わりに、CF3(東邦レーヨン社製 ミルドCF CMF−40−N/S,平均繊維径;7μm,アスペクト比;6)を1,260g配合したこと以外は実施例2と同様にした。
【0037】
[実施例5]
実施例4において、マイカ1の代わりに、マイカ2(クラレ社製 150−K1,成分;K2Mg6(AlSi3O10)2(OH)4(金マイカ),重量平均粒径;200μm,重量平均アスペクト比;60,表面処理;シラン処理)を1,600g配合したこと以外は実施例4と同様にした。
【0038】
[実施例6]
実施例5において、マイカ2の配合量を1,600gから2,540gに、CF3の配合量を1,260gから840gに、かつCBの配合量を160gから320gに変えたこと以外は実施例5と同様にした。
【0039】
[参考例1]
実施例5において、マイカ2の配合量を1,600gから780gに、CF3の配合量を1,260gから2,000gに、かつCBの配合量を160gから80gに変えたこと以外は実施例5と同様にした。
【0040】
[参考例2]
実施例5において、マイカ2の代わりに、マイカ3(クラレ社製 325−K1,成分;K2Mg6(AlSi3O10)2(OH)4(金マイカ),重量平均粒径 ;40μm,重量平均アスペクト比;30,表面処理;シラン処理)を1,260g配合したこと以外は実施例5と同様にした。
【0041】
[参考例3]
実施例5において、CF3の配合量を1,260gから800gに変えるとともに、CF4(東邦レーヨン社製 チョップドCF HTA−C6−SRS,平均繊維径;7μm,アスペクト比;850)を460g配合し、かつCBの配合量を160gから80gに変えたこと以外は実施例5と同様にした。
【0042】
[参考例4]
実施例9において、マイカ2の代わりに、マイカ1を1,600g、かつCF3の代わりにCF1を800g配合したこと以外は実施例9と同様にした。
【0043】
[比較例1]
実施例5において、マイカ2の配合量を1,600gから2,000gに変え、かつ、CF3およびCBを配合しなかったこと以外は実施例5と同様にした。
【0044】
[比較例2]
実施例5において、CBを配合しなかったこと以外は実施例5と同様にした。
【0045】
[比較例3]
実施例5において、CF3の配合量を1,260gから2,260gに変え、かつ、マイカ2およびCBを配合しなかったこと以外は実施例5と同様にした。
【0046】
[比較例4]
実施例5において、CF3の代わりにCF4を1,260g配合し、かつ、CBの配合量を160gから80gに変えたこと以外は実施例5と同様にした。
【0047】
[比較例5]
実施例5において、CF3を1,260gの代わりに、CF3を560gおよびCF4を800g配合し、かつ、CBの配合量を160gから80gに変えたこと以外は実施例5と同様にした。
【0048】
[比較例6]
実施例5において、マイカ2の配合量を1,600gから3,200gに、CF3の配合量を1,260gから700gに、かつCBの配合量を160gから320gに変えたこと以外は実施例5と同様にした。
【0049】
[比較例7]
実施例5において、マイカ2の配合量を1,600gから800gに、CF3の配合量を1,260gから3,400gに、かつCBの配合量を160gから80gに変えたこと以外は実施例5と同様にした。
【0050】
[比較例8]
実施例5において、CBの配合量を160gから640gに変えたこと以外は実施例5と同様にした。
【0051】
得られた樹脂組成物の物性評価のため、真円度(μm)、体積抵抗(Ω・cm)、表面外観、曲げ強度(MPa)、および曲げ弾性率(GPa)を測定した。実施例1〜10における各成分の組成割合と測定結果を表1に、また比較例1〜8における各成分の組成割合と測定結果を表2に示す。
なお、各評価項目の測定は、下記のように行った。
【0052】
<真円度の測定>
直径60mmφ×高さ15mmの円筒形ドラム成形品を射出成形機(日本製鋼所社製 J50E−P)にて成形し、室温で24時間放置後の成形品の真円度を、真円度測定機(三豊製作所社製 RA−2)にて測定した。なお、成形品の成形条件は、樹脂温度340℃、金型温度135℃に設定した。
【0053】
<体積固有抵抗の測定>
後述の曲げ試験片の両端を切り落とし、長さ5cmの板を得、その両断面に銀ペースト(藤倉化成社製 ドータイト)を塗布し、テスターにて両端の抵抗値を測定した。
【0054】
<一般力学的強度の測定>
射出成形機(日本製鋼所社製 J50E−P)にてテストピースを成形し、ASTM D790に準拠して曲げ試験を行った。なお、テストピースの成形条件は、樹脂温度320℃、金型温度135℃に設定した。
【0055】
<表面外観の判定>
真円度測定用に得た、円筒形ドラム成形品側面の表面外観を、下記に従い、目視にて判定した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によって、安定した導電性と高度な寸法精度を有する部品を切削などの工程を必要とすることなく一度の成形処理で得ることができるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提供される。
すなわち、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形することによって20Ω・cm以下の導電性、および1/1,000程度の寸法精度を有する成形品(たとえば、これまでアルミまたはその合金を切削加工して製造された超精密電気・電子部品)を得ることができる。さらに得られる成形品は、表面外観および平滑性が良好なため優れた摺動性を有するとともに、成形品の低コスト化および軽量化を図ることもできる。
Claims (3)
- 前記マイカ(B)中の、SiO2成分とAl2O3成分との合計含有量が、マイカ(B)全量の75重量%以上であることを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記カーボンファイバー(C)の全量が、繊維径が18〜30μmのミルドカーボンファイバーであることを特徴とする請求項1又は2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
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