JP4009039B2 - ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。詳しくは、流動性がよく、かつ曲げ強度に優れたバランスのとれたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、スーパーエンプラとも呼ばれ、その優れた耐熱性、難燃性、剛性、耐溶剤性、電気絶縁性を活かし、自動車、電気・電子関連の部品等に使用されてきた。
しかし、自動車エンジン廻りなどより過酷な環境下での応用が要請されるものの、従来から使用されてきたポリフェニレンスルフィド樹脂をガラス繊維で複合化した樹脂組成物では、機械的強度がなお、不充分であった。
【0003】
これに対し、カップリング剤を添加する方法(特開昭63−251430号公報、特開平3−12453号公報、特開平9−31632号公報)やポリスルホン等のポリマーブレンドの方法(特開昭63−130662号公報)が提案されているが充分ではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、流動性を低下させることなく機械的強度の高いバランスのとれたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、以下に示す本発明を完成させた。
〔1〕厚み1mmのスパイラルフロー長さx(mm)と曲げ強度y(MPa)が式(I)の関係を満足するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【0006】
y≧−(3x/10)+340 ・・・(I)
ただし、xは100〜300である。
〔2〕ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂50〜70重量部、(B)ガラス繊維30〜50重量部、(C)カップリング剤0〜3重量部((A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して)からなる上記〔1〕記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
〔3〕(A)下記式(II) で表される共重合モノマーと式(III)で表される主原料モノマーをその共重合モノマーの仕込み割合0.5〜15モル%で共重合させたポリアリーレンスルフィド樹脂50〜70重量部、(B)ガラス繊維30〜50重量部、(C)カップリング剤0〜3重量部((A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して)からなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【0007】
【化7】
Figure 0004009039
【0008】
(X1はハロゲン原子であり、それぞれ同一でも異なってもよく、AはOH基であり、jは1〜4である。)
【0009】
【化8】
Figure 0004009039
【0010】
(X2はハロゲン原子であり、R1 は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基若しくはアリールアルキル基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。hは0〜4である。)
〔4〕上記〔3〕記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、かつ上記〔1〕記載の式(I)の関係を満たすポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
〔5〕ポリアリーレンスルフィド樹脂がp−ジクロロベンゼンと2,4−ジクロロフェノールとの共重合体である上記〔3〕又は〔4〕記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
〔6〕(A)下記式(IV) で表される共重合モノマーと式(III)で表される主原料モノマーをその共重合モノマーの仕込み割合0.5〜15モル%で共重合させたポリアリーレンスルフィド樹脂50〜70重量部、(B)ガラス繊維30〜50重量部、(C)カップリング剤0〜3重量部((A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して)からなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【0011】
【化9】
Figure 0004009039
【0012】
(X3はハロゲン原子であり、BはOH基又はNH2 基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。kは1〜4である。Yは単結合、CH2 、SO2 、NH、O、CO又は炭素数2〜20のアルキリデン基、アルキレン基若しくはポリメチレン基である。)
【0013】
【化10】
Figure 0004009039
【0014】
(X2はハロゲン原子であり、R1 は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基若しくはアリールアルキル基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。hは0〜4である。)
〔7〕請求項6記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、かつ上記〔1〕記載の式(I)の関係を満たすポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
〔8〕ポリアリーレンスルフィド樹脂がp−ジクロロベンゼンと3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルの共重合体である上記〔6〕又は〔7〕記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
〔9〕(A)下記式(V) で表される末端停止剤と式(III)で表される主原料モノマーをその末端停止剤の仕込み割合0.5〜5モル%で重合させたポリアリーレンスルフィド樹脂50〜70重量部、(B)ガラス繊維30〜50重量部、(C)カップリング剤0〜3重量部((A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して)からなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【0015】
【化11】
Figure 0004009039
【0016】
(X4はハロゲン原子であり、DはOH基であり、kは1〜5である。)
【0017】
【化12】
Figure 0004009039
【0018】
(X2はハロゲン原子であり、R1 は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基若しくはアリールアルキル基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。hは0〜4である。)
〔10〕上記〔9〕記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、かつ請求項1記載の式(I)の関係を満たすポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
〔11〕ポリアリーレンスルフィド樹脂がp−ジクロロベンゼンとp−ブロモフェノール及び/又はp−クロロフェノールとの重合体である上記〔9〕又は〔10〕記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【0019】
【発明の実施の形態】
〔流動性と機械的強度の物性バランス〕
本発明の第一の発明である物性バランスのとれたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、流動性の指標となる厚さ1mmのスパイラルフロー長さx(mm)と機械的強度の指標となる曲げ強度y(MPa)が式(I)の関係を満足する。
【0020】
y≧−(3x/10)+340 ・・・(I)
ただし、xは100〜300である。
これらの関係は、好ましくは、y≧−(3x/10)+350 (ただし、xは100〜300である。)であり、より好ましくは、y≧−(3x/10)+360 (ただし、xは100〜300である。)である。また、yの上限については、特に制限は不要であるが、好ましくはy≦−(3x/10)+390である。 スパイラルフロー長さx(mm)が100mmより小さいと流動性が劣り、300mmを超えると曲げ強度が低下する。
【0021】
すなわち、一般的には、分子量の調整により流動性を向上させると機械的強度が逆に低下するが、本発明はその流動性に対応する機械的強度のレベルが高いところに特徴がある。従来から知られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物で上記式(I)の関係で示される物性を有するものはなかった。
【0022】
〔ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物〕
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィドに各種繊維状充填剤等を配合したものである。
この中でも、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂50〜70重量部、(B)ガラス繊維30〜50重量部((A)と(B)の合計を100重量部とする)、(C)カップリング剤0〜3重量部((A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して)からなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が好ましい。より好ましくは、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂55〜65重量部、(B)ガラス繊維45〜35重量部、(C)カップリング剤0〜2.5重量部((A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して)からなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物である。 ガラス繊維が50重量部を超えると流動性が低下し、30重量部より少なくなると寸法安定性が悪くなる。カップリング剤は、ガラス繊維に予めカップリング処理していれば、その処理程度に応じて添加量を調整すればよく、それが充分であれば追加的には必要ではないし、全く未処理であれば(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して0.1〜3.0重量部を添加すればよい。
その際、カップリング剤の添加量が3.0重量部より多ければ増量効果が期待できないし、0.1重量部より少なければ機械的強度が低下する。
【0023】
〔ポリアリーレンスルフィド樹脂〕
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂としては、構造式〔−Ar−S−〕(ただし、Arはアリーレン基、Sはイオウである)で示される繰り返し単位を70モル%以上含有する重合体で、その代表的例は、下記化学式(VI)
【0024】
【化13】
Figure 0004009039
【0025】
(式中、R3 は炭素数6以下のアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、カルボキシル基もしくはその金属塩、ニトロ基、及びフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子から選ばれる置換基であり、m3は0〜4の整数である。)で示される繰り返し単位を70モル%以上有するポリアリーレンスルフィドである。
当該繰り返し単位が70モル%未満だと結晶性ポリマーとしての特徴である本来の結晶成分が少なく、機械的強度が不充分となる場合がある。
【0026】
さらに、単独重合体のほか共重合体も用いることができる。
その共重合体の構成単位としては、メタフェニレンスルフィド単位、オルソフェニレンスルフィド単位、p−p’−ジフェニレンケトンスルフィド単位、p−p’−ジフェニレンスルホンスルフィド、p−p’−ビフェニレンスルフィド単位、p−p’−ジフェニレンメチレンスルフィド単位、p−p’−ジフェニレンクメニルスルフィド単位、ナフチルスルフィド単位などが挙げられる。
【0027】
中でも、流動性と機械的強度のバランスに特に優れる下記式(II) および/または式(IV) で表される共重合モノマーと主鎖を構成する式(III)で表される主原料モノマーとを重縮合したポリアリーレンスルフィド樹脂を好適に用いることができる。
【0028】
【化14】
Figure 0004009039
【0029】
(X1はハロゲン原子であり、それぞれ同一でも異なってもよく、AはOH基であり、jは1〜4である。)
【0030】
【化15】
Figure 0004009039
【0031】
(X3はハロゲン原子であり、BはOH基又はNH2 基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。kは1〜4である。Yは単結合、CH2 、SO2 、NH、O、CO又は炭素数2〜20のアルキリデン基、アルキレン基若しくはポリメチレン基である。)
【0032】
【化16】
Figure 0004009039
【0033】
(X2はハロゲン原子であり、R1 は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基若しくはアリールアルキル基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。hは0〜4である。)
さらに、末端停止剤を添加した重合体も用いることができる。
本発明にもちいる末端停止剤としては特に制限はないが、流動性と機械的強度にすぐれる下記式(V)で表される末端停止剤を用いて式(III)で表される主原料モノマーとを重縮合したポリアリーレンスルフィド樹脂を好適に用いることができる。
【0034】
【化17】
Figure 0004009039
【0035】
(X4はハロゲン原子であり、DはOH基であり、kは1〜5である。)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂としては、実質的に線状構造を有するポリマーの他に、モノマーの一部分として3個以上の官能基を有するモノマーを少量使用して重合した分岐構造、あるいは架橋構造を有するポリマーも使用することができる。また、これを前記の実質的に線状構造を有するポリマーにブレンドして用いてもよい。
【0036】
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂は、公知の方法で製造することができる。例えばジハロ芳香族化合物と硫黄源とを有機極性溶媒中で、重縮合反応させ、洗浄、乾燥して得ることが出来る。
前記式(III)で示されるジハロ芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、2,5−ジクロロ−tert−ブチルベンゼン、2,5−ジブロモ−tert−ブチルベンゼン、2,5−ジクロロビフェニール等があり、中でもp−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼンが好ましい。
【0037】
さらに、前記式(II) で示されるジハロ芳香族化合物としては、2,3−ジクロロフェノール、2,3−ジブロモフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,4−ジブロモフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,5−ジブロモフェノール等があり、中でも2,4−ジクロロフェノール、2,5−ジクロロフェノールが好ましい。
【0038】
また、前記式(IV)で示されるジハロ芳香族化合物としては、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジブロモ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジブロモ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ジ(3−クロロ−4−アミノ)フェニルメタン等があり、中でも3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルが好ましい。この3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルを用いると常温ノッチ無しアイゾット衝撃強度も著しく、優れている。
【0039】
これらの共重合モノマーは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの共重合モノマーの仕込み量は、主原料モノマーと共重合モノマーの和に対して、0.5〜15モル%程度が好ましい。0.5モル%より少なければ、流動性と機械的強度のバランスの向上が小さく、15モル%を超えると耐熱性が低下する。
【0040】
また、効果を損なわない範囲で他のコポリマー(m−ジクロロベンゼン等)を共重合させてもよい。
さらに、末端停止剤の前記式(V)で示されるハロゲン化フェノールとしては、p−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、o−ブロモフェノール、p−クロロフェノール、m−クロロフェノール、o−クロロフェノール、p−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、o−フルオロフェノール、p−ヨードフェノール、m−ヨードフェノール、o−ヨードフェノール等があり、中でもp−ブロモフェノール、p−クロロフェノールが好ましい。
【0041】
これらの末端停止剤は単独でも2種以上組み合わせたものを用いてもよい。これらの末端停止剤の仕込み量は、主原料のジハロ芳香族化合物と末端停止剤の和に対して、0.5〜5モル%、好ましくは0.7〜3モル%、より好ましくは1〜2モル%である。末端停止剤の仕込み量が0.5モル%より少ないと機械的強度向上効果が不充分であり、5モル%を超えると分子量が伸びない。
【0042】
硫黄源としては、特に制限はなく、アルカリ金属硫化物が適当である。硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム等があり、硫化リチウム、硫化ナトリウムが好ましい。硫化リチウムの製法としては、特開平7−330312号公報に示されるように、硫化水素と水酸化リチウムを原料とする方法が提案されている。
【0043】
本発明に用いるポリアリーレンスルフィドでは、分子量の目安として固有粘度ηinh (dl/g) をもって表現し、その測定法は後述するが、ηinh (dl/g) が0.14〜0.28であるものを用いることが好ましい。この固有粘度ηinh (dl/g) とスパラルフロー長さ(mm)の関係は、ほぼ直線関係にある(実質的に線状構造を有することを示す)。
〔ガラス繊維〕
ガラス繊維としては、特に制限はなく、アルカリガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスのいずれでもよく、また、繊維長は好ましくは0.1〜8mm、より好ましくは0.3〜6mmであって、繊維径は好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.5〜25μmである。繊維長が0.1mmより小さければ補強効果が低いし、8mmより大きければ、流動性が低下する。また、繊維径は0.1μmより小さければ流動性が低下するし、30μmより大きければ強度が低下する。更に、ガラス繊維の形態としては、特に制限はなく、例えばロービング、ミルドファイバー、チョップトストランドなどの各種のものが挙げられる。これらのガラス繊維は単独でも二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0044】
また、ガラス繊維には、樹脂との親和性を高めるために、アミノシラン系、エポキシシラン系、ビニルシラン系、メタクリルシラン系等のシラン系カップリング剤やテトラメチル・オルソチタネート、テトラエチル・オルソチタネートほかチタネート系カップリング剤、クロム錯化合物、ホウ素化合物で表面処理されたものであってもよい。
【0045】
前記したように、これらのカップリング剤をガラス繊維に表面処理する代わり、別個に添加して用いてもよい。
更に、本発明の効果を損ねない程度にガラス繊維の他に下記の無機フィラーを加えてもよい。例えば、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウイスカ、炭化ケイ素ウイスカ、マイカセラミック繊維、ウオストナイト、マイカ、タルク、シリカ、アルミナ、カオリン、クレー、シリカアルミナ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、炭酸リチウム、二硫化モリブデン、黒鉛、酸化鉄、ガラスビーズ、燐酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、窒化ケイ素、ハイドロタルサイト等である。
【0046】
〔配合〕
前記したようにポリアリーレンスルフィド樹脂、ガラス繊維、カップリング剤を所定の配合比で配合し、リボンタンブラー、ヘンシェルミキサー、バンバリミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機等により混練することができる。混練温度は、通常280〜320℃が適当である。
【0047】
【実施例】
本発明について、更に、実施例を用いて詳細に説明する。
なお、実施例で用いた試験方法は、以下のとおりである。
〔スパイラルフロー長さ〕
東芝機械株式会社製30トン射出成形機(IS30EPN)を用いて、金型厚み1mmのスパイラルフロー金型を用いた。
成形条件は、射出圧力が1000kgf/cm2 (設定49%)で、樹脂温度が320℃で、金型温度が135℃で、射出時間が10秒であり、流動末端までの長さを評価した。
〔曲げ強度〕
株式会社日本製鋼所製50トン射出成形機(J750EP)を用いて、127×12.7×3.18mmの試験片を樹脂温度320℃、金型温度135℃で成形した。測定はASTM−790に準拠した。
〔固有粘度の測定〕
サンプル0.04g±0.001gをα−クロロナフタレン10cc中に235℃、15分間内で溶解させ、206℃の恒温槽内で得られる粘度とポリマーを溶解させていないα−クロロナフタレンの粘度との相対粘度を測定した。
固有粘度ηinh は、次式で示される値を用いた。
ηinh =ln( 相対粘度) / ポリマー濃度 [dl/g]
【0048】
〔実施例1〕
容積10リットルのオートクレーブに硫化リチウム10モル(459.4g)、p−ジクロロベンゼン9モル(1323g)、水酸化リチウム−水和物0.5モル(20.98g)及びNMP(N−メチル−2ピロリドン)4.2リットルを入れ、200℃で5時間反応させ、常温に冷却し、プレポリマーを得た。
プレポリマーに2,4−ジクロロフェノール0.1モル(16.3g)、p−ジクロロベンゼン0.9モル(132.3g)及び水8.0モル(144.1g)を加え、260度で3時間反応させた。なお2,4−ジクロロフェノールの仕込みモル分率は1モル%とした。100℃に冷却し、液相を分離し、沈殿したポリマーを得た。得られたポリマーを冷水で3回洗った。
ポリマーを再び容積10リットルのオートクレーブに入れ、NMP5リットル及び酢酸30ccを加え、150℃で1時間洗浄した。冷却後、固体のポリマーを冷水で、水の電気伝導度が20μS/cm以下になるまで洗浄した。洗浄後120℃の気流乾燥機で24時間乾燥させ、さらに24時間120℃で真空乾燥させた。
得られたポリマー60重量部、ガラス繊維(旭ファイバーガラス株式会社製 JAF591)40重量部及びシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製 SH6040)0.6重量部をドライブレンドし、320℃で押出ペレット化した。
得られたペレットを用い、スパイラルフロー長さ及び曲げ強度を測定し、評価した。評価結果を表1及び図1に示す。
【0049】
〔実施例2〕
実施例1において、2,4−ジクロロフェノールの代わりに2,5−ジクロロフェノールを用いた他は、実施例1と同様に実施した。
〔実施例3〕
実施例1と同様にプレポリマーを合成し、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルの塩酸塩0.2モル(65.21g)、p−ジクロロベンゼン0.8モル(117.6g)、水酸化リチウム−水和物0.4モル(16.79g)及び水4.6モル(82.87g)を加え、260℃で3時間反応させた。なお、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルの塩酸塩の仕込みモル分率は2モル%とした。その他は実施例1と同様に行った。
【0050】
〔実施例4〕
実施例1において、水8.0モルを12.0モル(216.2g)に変更したほかは実施例1と同様に行った。
〔実施例5〕
実施例3において、水4.6モルを9.6モル(172.9g)に変更したほかは実施例3と同様に行った。
〔実施例6〕
容積10リットルのオートクレーブに硫化リチウム10モル(459.4g)、p−ジクロロベンゼン9.9モル(1455.3g)、2,4−ジクロロフェノール0.1モル(16.3g)、水酸化リチウム−水和物0.5モル(20.98g)、水9.0モル(162.1g)及びNMP4.2リットルを入れ、260℃で3時間反応させた。なお2,4−ジクロロフェノールの仕込みモル分率は1モル%とした。100℃で冷却し、液相を分離し、沈殿したポリマーを得た。その後の処理は実施例1と同様に行なった。
【0051】
〔実施例7〕
容積10リットルのオートクレーブに硫化リチウム10モル(459.4g)、p−ジクロロベンゼン9.8モル(1440.6g)、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルの塩酸塩0.2モル(65.21g)、水酸化リチウム−水和物0.9モル(37.77g)、水5.6モル(100.9g)及びNMP4.2リットルを入れ260℃で3時間反応させた。なお、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルの塩酸塩の仕込みモル分率は2モル%とした。100℃に冷却し、液相を分離し、沈殿したポリマーを得た。その後の処理は実施例1と同様に行なった。
〔実施例8〕
実施例1において、得られたプレポリマーに2,4−ジクロロフェノール0.1モルに代えてp−ブロモフェノール0.1モル(17.3g)を、水8.0モルに代えて水5.0モル(90g)を加えて反応させた以外は同様に実施した。なお、p−ブロモフェノールの仕込みモル分率は1モル%である。
【0052】
〔比較例1〕
実施例1と同様にプレポリマーを合成し、p−ジクロロベンゼン1.0モル(147.0g)及び水5モル(90.1g)を加え、260℃で3時間反応させた。その他は実施例1と同様に行なった。
〔比較例2〕
比較例1において、水5モルを10モル(180g)に変更した他は比較例1と同様に行った。
〔比較例3〕
比較例1において、水5モルを15モル(270g)に変更した他は比較例1と同様に行った。
〔比較例4〕
容積10リットルのオートクレーブに硫化リチウム10モル(459.4g)、p−ジクロロベンゼン10モル(1470g)、水酸化リチウム−水和物0.5モル(20.98g)、水6モル(108.1g)及びNMP4.2リットルを入れ260℃で3時間反応させた。100℃に冷却し、液相を分離し、沈殿したポリマーを得た。その後の処理は実施例1と同様に行なった。
〔比較例5〕
ポリマーとして、株式会社トープレン製PPSLN2を用いた他は、実施例1と同様に行った。
【0053】
【表1】
Figure 0004009039
【0054】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、図1に示すとおり、スパイラルフロー長さx(mm)に対する曲げ強度y(MPa)の関係がy≧−(3x/10)+340の関係を満たし、特に実施例2、4、5、6はy≧−(3x/10)+360の関係を満たす。
すなわち、流動性と機械的強度のバランスに優れている。
【0055】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例、比較例の評価結果−スパイラルフロー長さx(mm)に対する曲げ強度y(MPa)の関係を図示する関係図

Claims (4)

  1. (A)下記式(II)で表される共重合モノマーと式(III)で表される主原料モノマーをその共重合モノマーの仕込み割合0.5〜15モル%で共重合させたポリアリーレンスルフィド樹脂50〜70重量部、(B)ガラス繊維30〜50重量部、(C)カップリング剤0〜3重量部((A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して)からなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物
    Figure 0004009039
    (Xはハロゲン原子であり、それぞれ同一でも異なってもよく、AはOH基であり、jは1〜4である。)
    Figure 0004009039
    (Xはハロゲン原子であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基若しくはアリールアルキル基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。hは0〜4である。)
  2. ポリアリーレンスルフィド樹脂がp−ジクロロベンゼンと2,4−ジクロロフェノールとの共重合体である請求項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  3. (A)下記式(IV)で表される共重合モノマーと式(III)で表される主原料モノマーをその共重合モノマーの仕込み割合0.5〜15モル%で共重合させたポリアリーレンスルフィド樹脂50〜70重量部、(B)ガラス繊維30〜50重量部、(C)カップリング剤0〜3重量部((A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して)からなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
    Figure 0004009039
    (Xはハロゲン原子であり、BはOH基又はNH基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。kは1〜4である。Yは単結合、CH、SO、NH、O、CO又は炭素数2〜20のアルキリデン基、アルキレン基若しくはポリメチレン基である。)
    Figure 0004009039
    (Xはハロゲン原子であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基若しくはアリールアルキル基であり、それぞれ同一でも異なってもよい。hは0〜4である。)
  4. ポリアリーレンスルフィド樹脂がp−ジクロロベンゼンと3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルの共重合体である請求項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
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