JP3244020B2 - 炭化ケイ素系無機繊維及びその製造方法 - Google Patents

炭化ケイ素系無機繊維及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた力学的特性
と共に優れた耐アルカリ性及び高い耐熱性を有する炭化
ケイ素系無機繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭化ケイ素系繊維は、その優れた耐熱性
及び力学的特性を生かして、プラスチックス又はセラミ
ックスの強化繊維として利用されている。そして、この
炭化ケイ素系無機繊維及びその製法については既に多く
の提案がされている。例えば、特公昭58−38535
号公報には、ケイ素及び炭素を主な骨格成分とする有機
ケイ素重合体を紡糸し、紡糸繊維を酸化性雰囲気中で低
温加熱して不融化し、不融化繊維を高温焼成して炭化ケ
イ素繊維を製造する方法が開示されている。
【0003】また、特公昭62−52051号公報に
は、ケイ素−炭素−チタン−酸素からなる炭化ケイ素系
無機繊維が開示されており、特公昭58−5286号公
報には、ポリカルボシランのケイ素原子の一部をチタン
原子と酸素原子を介して結合させたポリチタノカルボシ
ランを紡糸し、紡糸繊維を不融化し、不融化繊維を焼成
して、上記のケイ素−炭素−チタン−酸素からなる炭化
ケイ素系無機繊維を製造する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらの炭化ケイ素系
無機繊維は、上記したように、優れた耐熱性及び力学的
特性を有している一方で、耐アルカリ性が充分ではない
ことが指摘されている。炭化ケイ素系無機繊維の耐アル
カリ性を試験する方法が、ジャーナル・オブ・アメリカ
ン・セラミック・ソサイアティ、78[7]1992−
96(1995)に記載されている。この試験方法は、
炭化ケイ素系繊維を塩化ナトリウムの室温における飽和
水溶液に浸漬した後乾燥し、ついで、空気中、1000
℃で2時間加熱処理した後に、その力学的特性を測定す
る方法(以下この方法を「耐アルカリ試験法」と言
う。)である。この耐アルカリ試験法は炭化ケイ素系無
機繊維のNaClに対する耐久性を調べるために行われ
る加速試験法である。
【0005】上記文献には、炭化ケイ素系無機繊維を耐
アルカリ試験法に供した場合、繊維が酸化による著しい
分解を受け、繊維表面にはトリジマイト(鱗珪石塩)の
結晶相が生成し、またその近傍ではβ−SiCの結晶粒
の成長も認められ、繊維の力学的特性に重大な悪影響を
及ぼすことが記載されている。
【0006】炭化ケイ素系無機繊維は、航空機のエンジ
ン部材のような、高温構造材料の強化繊維としての用途
が期待されている。航空機が海洋上を飛行する場合に
は、海水中に含まれるNaClがエンジン部材に付着す
ることを考慮する必要があり、それによる急激な力学的
特性の低下は重大事故を引き起こす可能性がある。従っ
て、上記の高温構造材料に使用される炭化ケイ素系無機
繊維のNaClに対する耐久性を改善することはきわめ
て重要な課題である。
【0007】一方、前記公報に記載の方法で得られる無
機繊維は、1300℃までの環境下では優れた引張強度
及び弾性率を示すが、上記方法において、不融化繊維を
1400℃以上の高温で熱処理して無機繊維を調製する
場合には、無機繊維の引張強度が低下する傾向を示すと
いう問題があった。
【0008】これは、上述の炭化ケイ素系無機繊維には
酸素が含まれているが、この酸素の多くは、基本的には
繊維中のケイ素と何らかの結合を有しており、ケイ素の
酸化物の状態として存在している。また、前駆体法によ
り得られる炭化ケイ素系無機繊維は、一般にケイ素に対
して非化学量論的組成の余剰炭素を含有している。従っ
て、高温における上記繊維の分解では、このケイ素の酸
化物が繊維中の余剰炭素と反応してCO及びSiOを生
成する。この過程が上記繊維の高温における強度低下の
主原因であると考えられている。
【0009】
【課題を解決するための手段】一般に、塩基性の酸化物
は塩基には侵されないが、酸によって侵される。他方、
酸性の酸化物や化合物は酸には侵されないが、塩基によ
って侵される。例えば、SiO2、TiO2、SiC、B
4C、Si34は、いずれも弱酸性で耐酸性には優れて
いるが、耐アルカリ性には劣る化合物である。これに対
して、Al23は両性で、耐酸性及び耐アルカリ性共に
比較的バランスの取れた化合物である。さらに、Mg
O、ThO2は弱塩基性であり、耐アルカリ性には優れ
ているが耐酸性には劣る化合物である。BeO及びMg
Al24は、いずれもAl23よりは塩基性が強く、い
ずれも耐アルカリ性に優れた化合物である。このように
材料自体の酸性度あるいは塩基性度が、その材料の耐食
性と密接に関連している。
【0010】本発明者らは、単独では耐アルカリ性に劣
る炭化ケイ素系無機繊維であっても、その酸化物が両性
又は塩基性を示する金属元素を少量含有するだけで、予
想を大幅に上回って、飛躍的に耐アルカリ性が向上する
ことを見いだした。
【0011】さらに、本発明者らは、炭化ケイ素系無機
繊維が17重量%以下の酸素を含有していても、その酸
素の一部又は大部分を強固に捕獲し得る金属元素を繊維
中に含有させておくことにより、1500℃以上の高温
においても酸素の脱離が抑制され、その結果、きわめて
耐熱性の優れた無機繊維が得られることを知見した。
【0012】本発明によれば、2A族、3A族及び3B
族の金属原子からなる群から選択され、その酸化物が両
性又は塩基性を示す金属原子を0.1重量%以上含有
し、酸素含有量が17重量%以下であり、ケイ素に対す
る炭素の割合(C/Si)が原子比で1〜1.7の範囲
内であり、密度が2.7g/cm3 未満である炭化ケイ
素系無機繊維が提供される。また、本発明によれば、ケ
イ素原子に対する炭素原子の割合がモル比で1.5以上
であるポリシランに、2A族、3A族及び3B族の金属
原子からなる群から選択され、その酸化物が両性又は塩
基性を示す金属原子の化合物を添加し、不活性ガス中、
加熱反応して金属含有有機ケイ素重合体を調製する第1
工程、金属含有有機ケイ素重合体を溶融紡糸して紡糸繊
維を得る第2工程、紡糸繊維を酸素含有雰囲気中50〜
170℃で不融化して不融化繊維を調製する第3工程、
不融化繊維を不活性雰囲気中で予備加熱して予備加熱繊
維を調製する第4工程、予備加熱繊維を不活性ガス雰囲
気あるいは還元性ガス雰囲気で高温焼成して炭化ケイ素
系無機繊維を調製する第5工程からなる炭化ケイ素系無
機繊維の製造方法が提供される。
【0013】本発明の炭化ケイ素系無機繊維についてま
ず説明する。本発明の炭化ケイ素系無機繊維は、ケイ素
及び炭素と、2A族、3A族及び3B族の金属原子から
なる群から選択され、その酸化物が両性又は塩基性を示
す金属原子、及び場合により酸素から構成される。そし
て、この繊維は、上記の金属原子を含有していること、
及びケイ素に対する炭素の割合が特定範囲内にあり、密
度が2.7g/cm3 未満であることを特徴としてい
る。
【0014】本発明において、酸化物として両性又は塩
基性を示す金属原子とはつぎのように定義される。即
ち、金属酸化物の試料を数十μm程度にまで粉砕し、無
水ベンゼンに分散させ、分散液にハメット指示薬の中で
共役酸のpKaが最も大きいニュートラル・レッド(p
Ka:6.8)を滴下したときに、色の変化が認められ
ない場合に、酸化物が両性又は塩基性を示す金属原子と
する。この試験法の詳細は、触媒、11[6]210−
216(1969)に記載されている。
【0015】2A族、3A族及び3B族の金属原子から
なる群から選択され、その酸化物として両性又は塩基性
を示す金属原子の具体例としては、アルミニウム、マグ
ネシウム、ベリリウム、バリウム、ストロンチウム、ト
リウム、イットリウム及びカルシウムを挙げることがで
きる。これらの金属原子の炭化ケイ素系無機繊維中の割
合は、0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上
である。金属原子の割合が0.1重量%未満であると、
炭化ケイ素系無機繊維の耐アルカリ性が充分には改善さ
れない。炭化ケイ素系無機繊維中の金属原子の含有割合
の上限については特別の制限はないが、過度に含有割合
を大きくすると、炭化ケイ素系無機繊維の力学的特性が
低下するようになるので、金属原子の含有割合の上限は
通常10重量%である。尚、上記金属原子は単独で導入
されていてもよく、2種以上が導入されていてもよい。
【0016】本発明の炭化ケイ素系無機繊維において
は、ケイ素に対する炭素の割合が原子比で1〜1.7の
範囲内であることが必要である。この比が1未満である
と、本質的に高い強度を有する繊維とならず、また、繊
維の耐アルカリ性が低下する。この比が1.7を越える
と、高温の空気中での炭素の引き抜き反応による劣化が
激しく起こり、耐アルカリ性が低下する。
【0017】本発明の炭化ケイ素系無機繊維は、後述す
る製造方法の第1工程において使用されることのあるホ
ウ素含有重合体であるポリボロシロキサンに由来するホ
ウ素を含有することがある。しかし、ホウ素は本発明の
無機繊維の耐アルカリ性に悪影響を及ぼすので、無機繊
維中のホウ素の含有量は0.4重量%以下であることが
好ましい。
【0018】本発明の炭化ケイ素系無機繊維は、好まし
くは、耐アルカリ試験後の強度が試験前の強度の50%
以上を保持している。また、本発明の炭化ケイ素系無機
繊維は酸素を含むこともあるが、酸素の含有割合は繊維
に対して17重量%以下、好ましくは15重量%以下で
ある。酸素の含有割合が17重量%を超えると、140
0℃以上での酸素の脱離量が増大し、それに伴って繊維
中のβ−SiC結晶の成長が顕著になり、1500℃で
の強度保持率が低下する。
【0019】さらに、炭化ケイ素系無機繊維に含有させ
る金属元素として、酸素を強固に捕獲し得る金属元素を
選択することにより、1500℃以上の高温においても
酸素の脱離が抑制され、繊維は優れた耐アルカリ性と共
にきわめて優れた耐熱性を示す。このような金属原子と
しては、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、バ
リウム、ストロンチウム、トリウム、イットリウム及び
カルシウムを挙げることができる。本発明の無機繊維
は、1500℃のアルゴン中で1時間加熱処理した後の
強度保持率が50%以上、好ましくは、70%以上であ
る。
【0020】つぎに、本発明の炭化ケイ素系無機繊維の
製造方法を工程毎に説明する。 第1工程 第1工程では、前駆重合体である金属含有有機ケイ素重
合体を調製する。ポリシランは、例えば「有機ケイ素化
合物の化学」化学同人(1972年)に記載の方法に従
い、1種類以上のジクロロシランをナトリウムを用いて
脱塩素反応させることにより得られる、鎖状又は環状の
重合体であり、その数平均分子量は通常300〜100
0である。本発明におけるポリシランは、ケイ素の側鎖
として、水素原子、低級アルキル基、アリール基、フェ
ニル基又はシリル基を有することができるが、いずれの
場合も、ケイ素原子に対する炭素原子の割合がモル比で
1.5以上であることが必要である。この条件を満足し
ないと、最終的に得られる炭化ケイ素系無機繊維におけ
るケイ素に対する炭素の原子比が1以上にならない場合
もあり、好ましくない。
【0021】本発明におけるポリシランは、上記の鎖状
又は環状のポリシランを加熱して得られる、ポリシラン
結合単位に加えて一部にカルボシラン結合を含む有機ケ
イ素重合体を包含する。このような有機ケイ素重合体は
それ自体公知の方法で調製することができる。調製法の
例としては、鎖状又は環状のポリシランを400〜70
0℃の比較的高い温度で加熱反応する方法、このポリシ
ランにフェニル基含有ポリボロシロキサンを加えて25
0〜500℃の比較的低い温度で加熱反応する方法を挙
げることができる。こうして得られる有機ケイ素重合体
の数平均分子量は通常1000〜5000である。
【0022】フェニル含有ポリボロシロキサンは、特公
昭53−42330号公報及び同53−50299号公
報に記載の方法に従って調製することができる。例え
ば、フェニル含有ポリボロシロキサンは、ホウ酸と1種
類以上のジオルガノクロロシランとの脱塩酸縮合反応に
よって調製することができ、その数平均分子量は通常5
00〜10000である。フェニル基含有ポリボロシロ
キサンの添加量は、ポリシラン100重量部に対して通
常15重量部以下である。フェニル基含有ポリボロシロ
キサンの添加量が過度に高いと、最終的に得られる炭化
ケイ素系無機繊維中のホウ素の含有量が高くなり、この
無機繊維の耐アルカリ性が低下するようになる。従っ
て、フェニル基含有ポリボロシロキサンは、本発明の無
機繊維中のホウ素の含有割合が0.4重量%以下となる
量で使用することが好ましい。
【0023】ポリシランに対して、前述した酸化物とし
て両性又は塩基性を示す金属(M)のアルコキシド、ア
セチルアセトキシド化合物、カルボニル化合物、又はシ
クロペンタジエニル化合物の所定量を添加し、不活性ガ
ス中、通常250〜350℃の範囲の温度で1〜10時
間反応することにより、原料である金属含有有機ケイ素
重合体を調製することができる。上記金属は、最終的に
得られる炭化ケイ素系無機繊維中の金属の含有割合が
0.1重量%以上になる割合で使用され、具体的割合は
本発明の教示に従って当業者が適宜に決定することがで
きる。
【0024】上記の金属アルコキシドは、例えばM(O
R)n(式中、Mは前記金属を、Rは炭素数1〜8のア
ルキル基を示し、nはMの原子値である。)で表すこと
ができ、金属のエトキシド、ブトキシド、ヘキソキシ
ド、オクトキシドを例示することができる。
【0025】上記の金属含有有機ケイ素重合体は、ポリ
シランのケイ素原子の少なくとも一部が、金属原子と酸
素原子を介してあるいは介さずに結合された構造を有す
る、橋かけ重合体である。
【0026】第2工程 第2工程においては、金属含有有機ケイ素重合体の紡糸
繊維を得る。前駆重合体である金属含有有機ケイ素重合
体を溶融紡糸及び乾式紡糸のようなそれ自体公知の方法
によって紡糸し、紡糸繊維を得ることができる。
【0027】第3工程 第3工程においては、紡糸繊維を不融化処理して不融化
繊維を調製する。不融化の目的は、紡糸繊維を構成する
ポリマ−間に酸素原子による橋かけ点を形成させて、後
続の第4工程における予備加熱において不融化繊維が溶
融せず、かつ隣接する繊維同士が融着しないようにする
ことである。酸素含有雰囲気を構成するガスとしては、
空気、酸素、オゾンが例示される。不融化温度は50〜
170℃であり、不融化時間は不融化温度に依存する
が、通常、数分から30時間である。
【0028】酸素含有雰囲気中での紡糸繊維の不融化処
理によって、得られる不融化繊維に酸素が取り込まれる
が、本発明の無機繊維における酸素含有量を17重量%
以下にするために、不融化繊維中の酸素含有量が14重
量%になるように、不融化条件を制御することが好まし
い。従って、後続する第4工程で繊維の溶融及び融着が
防止できるに必要最小限の酸素が繊維中に取り込まれる
温度条件を採用することが重要である。なお、上記のよ
うに最終の無機繊維の酸素含有量が14重量%以下にな
る条件下では、電子線あるいはγ線を用いた不融化方法
も採用することができる。
【0029】第4工程 第4工程においては、不融化繊維を不活性雰囲気中で予
備加熱して予備加熱繊維を調製する。不活性雰囲気を構
成するガスとしては、窒素、アルゴンなどを例示するこ
とができる。加熱温度は通常150〜800℃であり、
加熱時間は数分ないし20時間である。不融化繊維を不
活性雰囲気中で予備加熱することによって、繊維への酸
素の取り込みを防止しつつ、繊維を構成するポリマ−の
橋かけ反応をより進行させ、前駆体金属重合体からの不
融化繊維の優れた伸びを維持しつつ、強度をより向上さ
せることができる、これにより、最終工程における焼成
を作業性よく安定に行うことができる。
【0030】第5工程 第5工程においては、予備加熱繊維を、連続式又は回分
式で、アルゴンのような不活性ガス雰囲気中、あるいは
水素のような還元性ガス雰囲気中、1000〜1700
℃の範囲内の温度で加熱処理することによって、本発明
の無機繊維を調製する。
【0031】
【実施例】以下に実施例及び比較例を示す。以下におい
て、特別の言及がない限り、「部」及び「%」は、それ
ぞれ、「重量部」及び「重量%」を示す。無機繊維の引
張強度及び弾性率はモノフィラメント法によりチャック
間長さ25mmにより測定した。また、無機繊維の強度
保持率は、初期強度(σ0 )と1500℃のアルゴン中
で1時間加熱処理した繊維の強度(σt )から下記式に
より求めた。 強度保持率(%)=(σt /σ0 )×100
【0032】参考例1 ナトリウム400部を含有する無水キシレンに、窒素ガ
ス気流下にキシレンを加熱還流させながら、ジメチルジ
クロロシラン1034重量部を滴下し、引き続き10時
間加熱還流し沈澱物を生成させた。この沈澱をろ過し、
メタノール、ついで水で洗浄して、白色のポリジメチル
シラン420部を得た。
【0033】参考例2 ジフェニルジクロロシラン750部及びホウ酸124部
を窒素ガス雰囲気下にn−ブチルエーテル中、100〜
120℃で加熱し、生成した白色樹脂状物をさらに真空
中400℃で1時間加熱することによって、フェニル基
含有ポリボロシロキサン530部を得た。
【0034】実施例1 参考例1で得られたポリジメチルシラン100部に参考
例2で得られたフェニル基含有ポリボロシロキサン10
部を添加し、窒素ガス雰囲気中、350℃で熱縮合し
て、カルボシラン単位とシロキサン単位との比が10
0:0.93である有機ケイ素重合体を得た。この有機
ケイ素重合体におけるケイ素原子に対する炭素原子の割
合はモル比で2.05であった。この有機ケイ素重合体
100部を溶解したキシレン溶液にアルミニウムトリブ
トキシド16部を加え、窒素ガス気流下に320℃で架
橋反応させることによって、ポリアルミノカルボシラン
を調製した。
【0035】このポリアルミノカルボシランを240℃
で溶融紡糸した後、空気中150℃で1時間加熱処理し
て不融化した。不融化繊維中の酸素含有量は5.8重量
%であった。不融化繊維をさらに窒素中320℃で10
時間加熱して、予備加熱繊維を得た。
【0036】予備加熱繊維を窒素中1300℃で加熱処
理して無機繊維を得た。得られた無機繊維の化学組成
は、Si:55.1%、C:35.5%、O:7.95
%、Al:1.06%であり、原子比で示すと、Si:
C:O:Al=1:1.50:0.25:0.020で
あった。この無機繊維の引張強度は305kg/mm2
であり、弾性率は18.5t/mm2 であり、1500
℃のアルゴン中で1時間加熱処理した後の強度保持率は
87%であった。
【0037】この無機繊維を耐アルカリ試験法に供した
後の引張強度及び弾性率は、それぞれ、192kg/m
2及び18.3t/mm2であり、初期強度の63%を
保持していた。耐アルカリ試験法に供した後の無機繊維
の表面の粒子構造を図1に示す。図1から、表面はきわ
めてきれいな状態を保っていた。
【0038】実施例2 実施例1におけると同様にして得た有機ケイ素重合体1
00部のキシレン溶液にアルミニウムトリブトキシド8
部を加え、窒素ガス気流下に290℃で架橋反応させ
て、ポリアルミノカルボシランを得た。このポリアルミ
ノカルボシランを255℃で溶融紡糸し、紡糸繊維を空
気中160℃で1時間加熱処理して不融化繊維を得た。
不融化繊維の酸素含有量は6.1%であった。不融化繊
維を窒素中300℃で10時間加熱処理して予備加熱繊
維を得た。
【0039】予備加熱繊維を窒素中1300℃で加熱処
理して無機繊維を得た。得られた無機繊維の化学組成
は、Si:55.2%、C:34.3%、O:9.8
%、Al:0.55%であり、原子比で示すと、Si:
C:O:Al=1:1.45:0.31:0.010で
あった。この無機繊維の引張強度は325kg/mm2
であり、弾性率は17.2t/mm2 であり、1500
℃のアルゴン中で1時間加熱処理した後の強度保持率は
78%であった。
【0040】この無機繊維を耐アルカリ試験法に供した
後の引張強度及び弾性率は、それぞれ、182kg/m
2及び17.1t/mm2であり、初期強度の56%を
保持していた。また、耐アルカリ試験法に供した後の無
機繊維の表面は実施例1のそれと同様に、きわめてきれ
いな状態を保っていた。
【0041】実施例3 実施例1におけると同様にして得た有機ケイ素重合体1
00部のキシレン溶液にマグネシウムエトキシド16部
を加え、窒素ガス気流下に300℃で架橋反応させて、
ポリマグネノカルボシランを得た。このポリマグネノカ
ルボシランを248℃で溶融紡糸し、紡糸繊維を空気中
163℃で1時間加熱処理して不融化繊維を得た。不融
化繊維の酸素含有量は5.8%であった。不融化繊維を
窒素中310℃で10時間加熱処理して予備加熱繊維を
得た。
【0042】予備加熱繊維を窒素中1300℃で加熱処
理して無機繊維を得た。得られた無機繊維の化学組成
は、Si:55.9%、C:33.2%、O:10.1
%、Mg:0.61%であり、原子比で示すと、Si:
C:O:Mg=1:1.39:0.32:0.013で
あった。この無機繊維の引張強度は301kg/mm2
であり、弾性率は16.8t/mm2 であり、1500
℃のアルゴン中で1時間加熱処理した後の強度保持率は
73%であった。
【0043】この無機繊維を耐アルカリ試験法に供した
後の引張強度及び弾性率は、それぞれ、175kg/m
2及び16.3t/mm2であり、初期強度の58%を
保持していた。また、耐アルカリ試験法に供した後の無
機繊維の表面は実施例1のそれと同様に、きわめてきれ
いな状態を保っていた。
【0044】実施例4 実施例1におけると同様にして得た有機ケイ素重合体1
00部のキシレン溶液にイットリウムアセチルアセトネ
ート20部を加え、窒素ガス気流下に310℃で架橋反
応させて、イットリウム変成ポリカルボシランを得た。
この変成ポリカルボシランを253℃で溶融紡糸し、紡
糸繊維を空気中155℃で1時間加熱処理して不融化繊
維を得た。不融化繊維の酸素含有量は6.2%であっ
た。不融化繊維を窒素中290℃で12時間加熱処理し
て予備加熱繊維を得た。
【0045】予備加熱繊維を窒素中1300℃で加熱処
理して無機繊維を得た。得られた無機繊維の化学組成
は、Si:54.8%、C:33.4%、O:9.8
%、Y:2%であり、原子比で示すと、Si:C:O:
Y=1:1.43:0.31:0.011であった。こ
の無機繊維の引張強度は298kg/mm2 であり、弾
性率は17.3t/mm2 であり、1500℃のアルゴ
ン中で1時間加熱処理した後の強度保持率は79%であ
った。
【0046】この無機繊維を耐アルカリ試験法に供した
後の引張強度及び弾性率は、それぞれ、182kg/m
2及び16.9t/mm2であり、初期強度の61%を
保持していた。また、耐アルカリ試験法に供した後の無
機繊維の表面は実施例1のそれと同様に、きわめてきれ
いな状態を保っていた。
【0047】比較例1 参考例1で得られたポリジメチルシラン100部に参考
例2で得られたフェニル基含有ポリボロシロキサン10
部を添加し、窒素ガス雰囲気中、430℃で熱縮合し
て、カルボシラン単位とシロキサン単位との比が10
0:0.4である有機ケイ素重合体を得た。この有機ケ
イ素重合体を250℃で溶融紡糸したした後、空気中1
60℃で1時間加熱処理して不融化繊維を調製し、この
不融化繊維を、さらに、窒素中300℃で10時間加熱
して予備加熱繊維を得た。この予備加熱繊維を窒素中1
300℃で加熱処理して無機繊維を調製した。得られた
無機繊維の化学組成は、Si:56.0%、C:34.
0%、O:10.0%であり、原子比で示すと、Si:
C:O=1:1.42:0.31であった。この無機繊
維の引張強度は305kg/mm2 であり、弾性率は1
7.5t/mm2 と高い値を示したが、1500℃のア
ルゴン中で1時間加熱処理した後の強度保持率は10%
に過ぎなかった。
【0048】この無機繊維を耐アルカリ試験法に供した
後に繊維の状態を観察したところ、繊維束の状態で融着
しており、非常に脆く、繊維強度の測定が不可能であっ
た。また、耐アルカリ試験後の繊維の表面は図2に示す
ように、激しく浸食されていた。
【0049】比較例2 参考例1で得られたポリジメチルシラン100部に参考
例2で得られたフェニル基含有ポリボロシロキサン1部
を添加し、窒素ガス雰囲気中380℃で10時間熱縮合
して、数平均分子量1700の有機ケイ素重合体を得
た。この有機ケイ素重合体100部を溶解したキシレン
溶液にテトラブトキシチタン10部を加え、窒素ガス気
流下に320℃で架橋反応させて、ポリチタノカルボシ
ランを得た。このポリチタノカルボシランを225℃で
溶融紡糸した後、空気中170℃で1時間加熱処理して
不融化繊維を調製し、この不融化繊維を、さらに、窒素
中300℃で10時間加熱して予備加熱繊維を得た。こ
の予備加熱繊維を窒素中1300℃で加熱処理して無機
繊維を調製した。
【0050】この無機繊維の化学組成は、Si:54
%、C:31%、O:12.6%、Ti:2%であり、
原子比で示すと、Si:C:O:Ti=1:1.34:
0.41:0.02であった。この無機繊維の引張強度
は350kg/mm2、弾性率は17t/mm2であっ
た。1500℃のアルゴン中で1時間加熱処理した後の
強度保持率は35%に過ぎなかった。耐アルカリ試験法
に供した後の無機織維は非常に脆く、繊維強度の測定が
不可能であった。また、耐アルカリ試験後の繊維の表面
は図3に示すように、激しく浸食されていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られた無機繊維の耐アル
カリ試験後の繊維表面の粒子構造を示す図面に代える写
真である。
【図2】図2は、比較例1で得られた無機繊維の耐アル
カリ試験後の繊維表面の粒子構造を示す図面に代える写
真である。
【図3】図3は、比較例2で得られた無機繊維の耐アル
カリ試験後の繊維表面の粒子構造を示す図面に代える写
真である。
フロントページの続き (72)発明者 佐藤 光彦 山口県宇部市大字小串1978番地の5 宇 部興産株式 会社宇部研究所内 (72)発明者 渋谷 昌樹 山口県宇部市大字小串1978番地の5 宇 部興産株式 会社宇部研究所内 審査官 中島 庸子 (56)参考文献 特開 平5−86509(JP,A) 特開 平7−11573(JP,A) 特開 平7−189039(JP,A) 特開 平9−41225(JP,A) 特開 平5−43338(JP,A) 特開 平5−58735(JP,A) 特開 平5−263320(JP,A) 特開 平8−337929(JP,A) 特開 昭52−103529(JP,A) 特開 平8−295565(JP,A) 特開 昭64−3073(JP,A) 特開 平11−12852(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 9/10

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2A族、3A族及び3B族の金属原子から
    なる群から選択され、その酸化物が両性又は塩基性を示
    す金属原子を0.1重量%以上含有し、酸素含有量が1
    7重量%以下であり、ケイ素に対する炭素の割合(C/
    Si)が原子比で1〜1.7の範囲内であり、密度が
    2.7g/cm3 未満であることを特徴とする炭化ケイ
    素系無機繊維。
  2. 【請求項2】NaClの室温における飽和水溶液に浸漬
    した後乾燥し、ついで1000℃の空気中で2時間加熱
    処理した際の強度保持率が50%以上である請求項1記
    載の炭化ケイ素系無機繊維。
  3. 【請求項3】金属原子がアルミニウム、マグネシウム、
    ベリリウム、バリウム、ストロンチウム、トリウム、イ
    ットリウム及びカルシウムから選択される少なくとも一
    種である請求項1記載の炭化ケイ素系無機繊維。
  4. 【請求項4】1500℃のアルゴン中で1時間加熱処理
    した後の強度保持率が50%以上である請求項3記載の
    炭化ケイ素系無機繊維。
  5. 【請求項5】ケイ素原子に対する炭素原子の割合がモル
    比で1.5以上であるポリシランに、2A族、3A族及
    び3B族の金属原子からなる群から選択され、その酸化
    物が両性又は塩基性を示す金属原子の化合物を添加し、
    不活性ガス中、加熱反応して金属含有有機ケイ素重合体
    を調製する第1工程、金属含有有機ケイ素重合体を溶融
    紡糸して紡糸繊維を得る第2工程、紡糸繊維を酸素含有
    雰囲気中50〜170℃で不融化して不融化繊維を調製
    する第3工程、不融化繊維を不活性雰囲気中で予備加熱
    して予備加熱繊維を調製する第4工程、予備加熱繊維を
    不活性ガス雰囲気あるいは還元性ガス雰囲気で高温焼成
    して炭化ケイ素系無機繊維を調製する第5工程からなる
    炭化ケイ素系無機繊維の製造方法。
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