JP2920060B2 - 断熱容器とその製造方法 - Google Patents

断熱容器とその製造方法

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JP2920060B2 JP6011977A JP1197794A JP2920060B2 JP 2920060 B2 JP2920060 B2 JP 2920060B2 JP 6011977 A JP6011977 A JP 6011977A JP 1197794 A JP1197794 A JP 1197794A JP 2920060 B2 JP2920060 B2 JP 2920060B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、魔法瓶、クーラーボッ
クス、アイスボックス、断熱コップ、保温弁当箱、保温
電気ポット、炊飯保温ジャー、冷蔵庫や冷凍庫のボック
ス材、浴槽の断熱用などに利用され、製造コストが安く
優れた断熱性能を有するとともに容積効率に優れた断熱
容器に関する。
【０００２】
【従来の技術】従来の断熱容器としては、二重壁構造を
有する内容器と外容器との間隙に、硬質ウレタンフォー
ムや発泡ポリスチレン等の有機質発泡体やその成形体を
充填したり、パーライト等の無機質の粉末を充填したも
のがある。また、金属製の内容器と外容器とを一体化し
てなる二重容器の内容器と外容器との間隙を真空封止し
て真空断熱空間層を形成した真空断熱容器がある。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
断熱容器は断熱材自体の熱伝導率が真空断熱に比べて大
きいために、高度な断熱性能は得られない。また、製造
上或いは性能上の面から断熱材層を数ｃｍ以上と厚くす
る必要があるので、断熱容器の外容積に対する内容積の
割合、即ち容積効率が小さくなる問題があった。また、
後者の真空断熱容器は優れた断熱性能を有する上に断熱
空間層の厚みが小さく、容積効率は大きいが、製造工程
が複雑なために製造コストが高くなる問題があった。
【０００４】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、優れた断熱性能を有するとともに、軽く、しかも容
積効率を高くすることが可能な断熱容器を提供すること
を目的としている。
【０００５】
【課題を解決するための手段】本発明に係る断熱容器
は、内容器と外容器とを一体に接合した二重壁構造を有
する二重容器の内容器と外容器との間隙に、キセノン、
クリプトン、アルゴンのうちの１種又は２種以上よりな
る低熱伝導性ガスを封入して断熱層を形成してなるとと
もに、内容器の外表面と外容器の内表面とのいずれか一
方または両方に、金属箔よりなる輻射防止材を配したこ
とを特徴とするものである。この断熱容器において、前
記二重容器の内容器と外容器との間隔は、１〜１０ｍｍ
とすることが望ましい。また、前記内容器と外容器との
間隙に、前記断熱層を厚さ方向に区画する１つまたはそ
れ以上の区画材を配し、断熱層を複数層として構成して
も良く、その区画材で区画されたそれぞれの断熱層の間
隔を１〜１０ｍｍとするのが良い。さらに、前記二重容
器の内容器と外容器との空間に封入された低熱伝導性ガ
スの封入圧力は常温で大気圧程度とすることが望まし
い。
【０００６】また、本発明に係る断熱容器の製造方法
は、内容器と外容器とを一体に接合し、これら内容器と
外容器とのいずれかに排気孔又はガス封止管を有し、か
つ内容器の外表面と外容器の内表面とのいずれか一方ま
たは両方に、金属箔よりなる輻射防止材を配した二重容
器を作製し、次いで該二重容器の排気孔又はガス封止管
を通して内容器と外容器との間隙の空気を排気し、続い
て該間隙にキセノン、クリプトン、アルゴンのうちの１
種又は２種以上よりなる低熱伝導性ガスを充填し、次い
で排気孔又はガス封止管を封止することを特徴としてい
る。
【０００７】この方法において、前記二重容器の作製方
法としては、有底筒状の内容器と筒状の外容器とのそれ
ぞれの口元部を接合一体化し、その内容器の外表面と外
容器の内表面とのいずれか一方または両方に、金属箔よ
りなる輻射防止材を固定し、次いで外容器の底部開口に
排気孔又はガス封止管を有する底板を接合する方法、有
底筒状の内容器と、排気孔又はガス封止管を有する有底
筒状の外容器とを用意し、内容器の外表面と外容器の内
表面とのいずれか一方または両方に、金属箔よりなる輻
射防止材を固定してこれら内容器と外容器の口元部を接
合一体化する方法、或いは、一体二重成形により有底筒
状の内容器と筒状の外容器とが口元部で一体化された形
状の二重壁構造体を作製し、その内容器の外表面と外容
器の内表面とのいずれか一方または両方に、金属箔より
なる輻射防止材を固定し、次いで外容器の底部開口に排
気孔又はガス封止管を有する底板を接合する方法が好適
である。さらに、前記二重容器の内容器と外容器との間
隙の空気を排気する工程及び低熱伝導性ガスを充填する
工程を、該間隙と二重容器外部との圧力差を小さくし或
いは圧力差を無くして行うことが望ましい。
【０００８】
【作用】本発明の断熱容器は、二重壁構造を有する二重
容器の内容器と外容器との間隙に、キセノン、クリプト
ン、アルゴンのうちの１種又は２種以上よりなる低熱伝
導性ガスを封入して断熱層を形成してなるとともに、内
容器の外表面と外容器の内表面とのいずれか一方または
両方に、金属箔よりなる輻射防止材を配した構成とした
ものであり、内外容器間に有機又は無機材質の固形断熱
材を充填した従来の断熱容器に比べ、断熱性能を大幅に
向上させることができる。また、固形断熱材を充填する
ことがないので、断熱容器を軽量化することができる。
さらに、従来の真空断熱容器に比べ、断熱層とその外部
との圧力差が少なくなり、二重容器に要求される耐圧強
度が小さくて済むので、二重容器を角形にするなど、形
状の自由度及び材料の自由度を広げることが可能とな
り、断熱容器の容積効率を向上させることができる。ま
た本発明の断熱容器の製造方法では、内容器の外表面と
外容器の内表面とのいずれか一方または両方に、金属箔
よりなる輻射防止材を配した二重容器を作製し、この二
重容器の排気孔又はガス封止管を通して内容器と外容器
との間隙の空気を排気し、続いて該間隙にキセノン、ク
リプトン、アルゴンのうちの１種又は２種以上よりなる
低熱伝導性ガスを充填して排気孔又はガス封止管を封止
することにより、優れた断熱性能を持つ断熱容器を作製
でき、製造工程が単純で容易である。また、金属箔より
なる輻射防止材を用いたことにより、内外容器の断熱層
に面した表面をめっきするのに比べ、低コストで作製が
可能となる。さらに、金属箔よりなる輻射防止材を用い
たことにより、二重容器及び金属箔の再利用が容易とな
る。
【０００９】
【実施例】図１は本発明の断熱容器の第１実施例を示す
ものであり、この断熱容器Ａは、ステンレス鋼などの金
属材料、ガラス、セラミックや高いガスバリア性を有す
る合成樹脂材料のいずれかよりなる外容器１と内容器２
とをそれぞれの口元部３で一体に接合した二重壁構造を
有する二重容器４の外容器１と内容器２との間隙に、キ
セノン、クリプトン、アルゴンのうちの１種又は２種以
上よりなる低熱伝導性ガスを封入して断熱層５を形成す
るとともに、断熱層５に面する内外容器１，２の表面の
うち少なくとも内容器２の外表面に、金属箔よりなる輻
射防止材６を配して構成されている。
【００１０】この外容器１は筒状の外容器側部７と、そ
の底部開口に気密に接合された底板８とからなり、この
底板８の中央部にはガス封止管９が設けられている。こ
のガス封止管９は先端が圧着されて封じ切られている。
この外容器１と内容器２間に封入されるガスとしては、
熱伝導率κが空気（２.４１×１０2Ｗ・ｍ-1・Ｋ-1；０
℃）よりも小さく、しかも不活性なガスであるキセノン
（κ＝０.５２×１０2Ｗ・ｍ-1・Ｋ-1；０℃）、クリプト
ン（κ＝０.８７×１０2Ｗ・ｍ-1・Ｋ-1；０℃）、アルゴ
ン（１.６３×１０2Ｗ・ｍ-1・Ｋ-1；０℃）の各ガスやそ
れらの混合ガスが用いられる。これらキセノン、クリプ
トン及びアルゴンガスは、熱伝導率が小さく、しかもそ
の使用により環境保全上の問題もなく、特に好適であ
る。この低熱伝導性のガスの封入圧力は常温で大気圧程
度とするのが望ましい。封入圧力がこの範囲であると、
断熱層５の断熱性能が良好であるとともに、断熱層５と
外部との圧力差が小さいために、二重容器４に圧力差に
よる外圧が加わって凹みや膨らみを生じることがない。
【００１１】この断熱層５の厚みは、好ましくは１〜１
０ｍｍの範囲に設定される。この厚みが１０ｍｍより大
きいと、内部の低熱伝導性ガスの対流を生じ易く、断熱
層５の厚さ方向の伝熱量が大きくなって断熱効率が悪化
することになり、かつ断熱層５が厚くなり、断熱容器Ａ
の容積効率を向上する効果が十分に得られなくなる。ま
た、この厚さが１ｍｍより小さいと内容器２と外容器１
との接触を避けて二重容器４を形成するのが難しくな
り、製造に手間がかかり、製造コストの上昇を招いてし
まう。
【００１２】上記輻射防止材６は、内容器２の外形状に
合わせて成形された金属箔を内容器２の外部に接着した
もの、或いは金属テープを内容器２の外面に巻き付けた
ものが好適に用いられる。この輻射防止材６は輻射によ
る熱の移動を阻止するために配されたものであり、熱線
の反射率の高い銀、銅、アルミニウムなどの種々の金属
箔材料が使用され、好ましくは銅箔が使用される。この
輻射防止材６は、他方の容器に接しないように、一方の
容器の表面に接着剤、ろう付けなどで固定しておく。
この輻射防止材６には、いずれかの位置に通気孔１０が
設けられ、内容器２と外容器１との間隙に低熱伝導性ガ
スを封入する際に、輻射防止材６の内外の気体の流通が
滞らないようにするのが好ましい。
【００１３】この断熱容器Ａを製造するには、まず、ス
テンレス鋼などの金属材料、ガラス、セラミックや高い
ガスバリア性を有する合成樹脂材料のいずれかの材料に
より筒状の外容器側部７と有底筒状の内容器２、及び好
ましくは同一材料にて封止管付の底板８とを形成する。
次いで、内容器２の外表面に接着剤を塗布して金属箔を
接着するか、金属テープを巻き付けて接着するととも
に、内容器２の口元部３と外容器側部７の一端とを接合
一体化する。この接合は、使用される容器材料に応じ、
溶接、はんだ付け、接着等のうちから適宜選択する。次
いで、外容器側部７の底部開口に、封止管付の底板８を
気密に接合し、内容器２の外表面に輻射防止材６が固定
されるとともに、内容器２と外容器１とが一体に接合さ
れた二重壁構造を有する二重容器４を作製する。
【００１４】次いで、この二重容器４のガス封止管９
を、真空ポンプとキセノン等の低熱伝導性ガスの供給源
とを備えた真空排気／ガス供給手段に接続し、まず、内
外容器１，２間の間隙を真空排気し、続いて該間隙にキ
セノン、クリプトン、アルゴンのうちの１種又は２種以
上よりなる低熱伝導性ガスを充填し、ガス封止管９を圧
着して封止する。これにより内外容器１，２間に断熱層
５が形成され、図１に示す断熱容器Ａが得られる。この
ようにして得られた断熱容器Ａは、その用途に応じて底
部材を取り付けたり、把手や握りを有する肩部材、或い
は断熱性の蓋部材を開閉可能に取り付けて製品とする。
【００１５】この内外容器１，２間の真空排気及びキセ
ノン等のガス封入工程は、好ましくは上記隙間と外部と
の圧力差ができるだけ生じないようにして行われる。即
ち、隙間と外部との圧力差を小さくして真空排気及びガ
ス封入を行うことにより二重容器４に圧力差による外力
が加わるのを防止でき、耐圧構造を有しない二重容器を
用いた場合でも容器に凹みを生じることなく、内部を真
空排気することが可能となる。このように内外容器１，
２間の隙間とその外部との圧力差を小さくして真空排気
及びガス封入を行うには、上述したように、ガス封止管
９を真空排気／ガス供給手段に接続し、さらに二重容器
４を真空チャンバ内に入れ、ガス封止管９を通して内外
容器１，２間の隙間を真空排気する際に、この真空チャ
ンバ内を減圧し、隙間と真空チャンバ内との圧力差を小
さくし、次いでガス封止管９を通して隙間内にキセノン
等の低熱伝導性のガスを充填する際に、真空チャンバ内
に空気等のガスを入れて隙間と真空チャンバ内との圧力
差が生じないようにしながら低熱伝導性のガスを充填
し、ガス封入管を圧着して封じ切る。さらに、ガス封止
管９に代えて、二重容器４に小孔状または細溝状の排気
孔を形成し、これらの周囲にろう材と封止板を載せ、こ
れらを加熱してろう材を溶融して排気孔を封止板で封止
するか、或いはろう材を排気孔に流し込んで封止するタ
イプの断熱容器を作製する場合には、排気孔の周囲にろ
う材や封止板を配した後、二重容器４を加熱真空炉内に
入れ、まず、この炉内を真空排気することによって排気
孔を通して内外容器１，２間を真空排気し、次いでこの
炉内にキセノン等の低熱伝導性のガスを入れ、排気孔を
通して内外容器１，２間にこのガスを充填し、次いで加
熱してろう材を溶融して排気孔を封止する。
【００１６】この断熱容器Ａは、二重壁構造を有する二
重容器４の内容器２と外容器１との間隙に、キセノン、
クリプトン、アルゴンのうちの１種又は２種以上よりな
る低熱伝導性ガスを封入して断熱層５を形成したものな
ので、内外容器１，２間に有機又は無機材質の固形断熱
材を充填した従来の断熱容器に比べ、断熱性能を大幅に
向上させることができる。また、固形断熱材を充填する
ことがないので、断熱容器を軽量化することができる。
さらに、従来の真空断熱容器に比べ、断熱層５とその外
部との圧力差が少なくなり、二重容器４の耐圧強度が小
さくて済み、二重容器を角形にするなど、形状の自由度
及び材料の自由度を広げることが可能となり、断熱容器
の容積効率を向上させることができる。また、この断熱
容器Ａは、少なくとも内容器２の外表面に金属箔よりな
る輻射防止材６を配したものなので、内外容器１，２の
断熱層５に面した表面をめっきするのに比べ、低コスト
で作製が可能となる。さらに、金属箔よりなる輻射防止
材６を用いたことにより、二重容器４及び金属箔の再利
用が容易となり、製造コストが小さくなるとともに資源
リサイクルに好都合となる。さらに、この断熱容器Ａ
は、少なくとも内容器の外表面に金属箔よりなる輻射防
止材６を固定した二重壁構造の二重容器４を作製し、こ
の二重容器４のガス封止管９を通して内容器２と外容器
１との間隙の空気を排気し、続いて該間隙にキセノン等
の低熱伝導性ガスを充填し、ガス封止管９を封止するこ
とにより、優れた断熱性能を持つ断熱容器を作製でき、
製造工程が単純で容易であるので、製造コストの低減化
を図ることができる。
【００１７】なお、先の実施例では、二重容器４の外容
器底板８にガス封止管９を設け、ガス封入後にこれを圧
着して封じ切る構成としたが、ガス封止管９の位置はこ
れに限定されることなく、他部に設けてもよく、さらに
ガス封止管９を底部材や把手で覆った構成としても良
い。また、ガス封止管９に代えて、二重容器４のいずれ
かに小孔又は細溝よりなる排気孔を設け、この排気孔の
周囲にろう材等を配して封止板をろう付け接合するも
の、或いは二重容器４のいずれかに凹部を設けるととも
にこの凹部内に排気孔を設け、この凹部内に配したろう
材を溶融流動させて排気孔を封止する構成のものでも良
い。
【００１８】図２は本発明の断熱容器の第２実施例であ
る断熱コップを示すものであり、この断熱コップＢは、
合成樹脂よりなる有底筒状の外容器１１と内容器１２と
を、それぞれの口元部で接合、一体化した二重壁構造を
有する二重容器１３に、その内容器１２の外表面に銅箔
よりなる輻射防止材１４を接着剤で固定するとともに、
これら内外容器１１，１２間の間隙に、キセノン、クリ
プトン、アルゴンのうちの１種又は２種以上よりなる低
熱伝導性ガスを封入して断熱層１５を形成してなるもの
である。外容器１１の底板部には、先端が封じ切られた
ガス封入管１６が設けられ、さらに外容器１１の底部に
は、このガス封入管１６を覆うように底カバー１７が強
制嵌合されている。これら外容器１１、内容器１２及び
底カバー１７の材料は、１００℃以上の耐熱性を有し、
成形性が良好な合成樹脂材料が用いられ、好ましくはポ
リプロピレン、ＡＢＳ、ポリカーボネートなどが用いら
れる。断熱層１５内の低熱伝導性のガスの封入圧力は、
先の実施例と同様に常温で大気圧程度とするのが望まし
い。また、断熱層１５の厚みは、好ましくは１〜１０ｍ
ｍ程度とされる。
【００１９】この断熱コップＢの製造方法を説明する
と、まず、ポリプロピレン等の樹脂材料を射出成形等の
適宜な成形手段を用いて成形し、上端にフランジを有す
る有底筒状の内容器１２と、上端に該フランジと係合す
る段部を設けた有底筒状の外容器１１とを作製する。そ
して外容器１１の底部にガス封止管となる金属管を融着
接合或いはエポキシ接着剤等を用いて接合する。次に、
内容器１２の外表面にエポキシ接着剤を所々に塗布し、
その上に銅箔よりなるテープ材を巻き付けて輻射防止材
１４を形成する。この際、輻射防止材１４には、いずれ
かに通気用の小孔を形成しておく。次に、外容器１１内
に内容器１２を入れて重ね合わせ、内容器１２のフラン
ジを外容器１１の段部に嵌め込み、これらの口元部を加
熱融着或いは接着剤を用いて接合し、内容器１２と外容
器１１とをそれぞれの口元部で一体化して二重容器１３
を形成する。より好ましくは、この接合工程は超音波溶
着もしくは高周波加熱溶着により行われる。
【００２０】次に、この二重容器１３の金属管（ガス封
止管１６）を、真空ポンプとキセノン等の低熱伝導性ガ
スの供給源とを備えた真空排気／ガス供給手段に接続
し、まず、内外容器１１，１２間の間隙を真空排気し、
続いて該間隙にキセノン、クリプトン、アルゴンのうち
の１種又は２種以上よりなる低熱伝導性ガスを所定圧力
で充填し、続いて金属管（ガス封止管１６）を圧着して
封止する。これにより内外容器１１，１２間に低熱伝導
性ガスが封入された断熱層１５が形成される。次に、外
容器１１の底部に、底カバー１７を強制嵌合し、図２に
示す断熱コップＢが得られる。この底カバー１７を強制
嵌合する手段は特に限定されず、図２に示したように、
外容器１１の底部近傍の外面に突条を設け、底カバー１
７の内面に凹溝を設け、底カバー１７を外容器１１底部
に嵌め込んで、突条と凹溝とを係合させる構造の他、ネ
ジ嵌合により底カバー１７を取り付ける構成としても良
い。この断熱コップＢには必要に応じて、握りが設けら
れた肩部材等を装着して製品とする。
【００２１】この断熱コップＢによれば、先の第１実施
例による断熱容器Ａとほぼ同様の効果が得られる他、ガ
ス封入管１６を接合した有底筒状の外容器１１を用い、
これと内容器とを口元接合部で溶着して二重容器１３を
形成するので、底板８を外容器側部７下端に接合する工
程が省略でき、生産効率を向上させることができる。
【００２２】なお、上記断熱コップＢを製造するための
他の好適な製造方法を説明すれば、ポリプロピレン等の
樹脂材料を射出成形等の適宜な成形手段を用いて一体二
重成形を行い、外容器１１の底部のみ開口した二重壁構
造体を形成し、上述の製造方法と同様に銅箔テープなど
を用いて内容器外表面又は外容器内表面に輻射防止材１
４を形成し、次いでガス封入管１６となる金属管を取り
付けた底板を、上記二重壁構造体の底部開口に超音波溶
着や高周波加熱等の接合方法で一体に接合して二重容器
とする。次いで、上述の製造方法と同じく、金属管を真
空排気／ガス供給手段に接続し、二重容器の壁間を真空
排気し、キセノン等の低熱伝導性ガスを入れた後、この
管を圧着して封じ切り、さらに底カバー１７を強制嵌合
することにより断熱コップを作製する。この製造方法で
は、一体二重成形によって二重壁構造体を形成するの
で、内外容器の口元接合工程が省略される。また、この
ように一体二重成形で二重容器を形成することにより、
この二重容器の口元部の凹凸を無くすことができ、口触
りの良好な断熱コップが得られる。
【００２３】図３は本発明の断熱容器の第３実施例を示
す図であり、この断熱容器Ｃは、上述の第１実施例によ
る断熱容器Ａとほぼ同様の構成要素を備えて構成され、
さらに、外容器１と内容器２との壁間に、断熱層５を厚
さ方向に区画するための区画材２１を配したことを特徴
としている。この区画材２１は、好ましくはいずれかに
製造時のガス通気用の小孔が設けられた他は、キセノン
等の封入ガスの透過を実質的に防止し得るような状態で
内外容器１，２間に配置される。この区画材２１の材質
は特に限定されず、金属や合成樹脂が用いられ、特に輻
射熱の反射効率の高い金属材料を用いることにより、輻
射防止材６とともに輻射ロスを低減し得るので好まし
い。また、このような輻射防止効果を有する区画材２１
を設けることにより、輻射防止材６を省くことも可能で
ある。
【００２４】なお、この区画材２１は２層以上形成して
も良い。また、区画材２１の配置方法としては、例え
ば、金属薄板材などを用いて内容器２の外面形状に合う
内容器２よりやや大型の容器形状の区画材２１を形成
し、これを輻射防止材６を固定した内容器２に重ね合
せ、区画材２１の上端を内容器２のフランジ下面に接合
し、次いでその外側に外容器１を重ね合せ、内外容器
１，２をそれぞれの口元部で接合して一体化する方法が
好適である。この際、区画材２１が内容器２や外容器１
に触れないようにする必要がある。
【００２５】この実施例による断熱容器Ｃは、先の第１
実施例とほぼ同様の効果が得られる他、断熱層５をその
厚さ方向に区画する区画材２１を設けた構成としたこと
により、内容器２と外容器１の壁間に封入された封入ガ
スの厚さ方向への移動が阻止されるので、複数の断熱層
を重ねたものと同様の断熱構造となり、一層優れた断熱
性能を得ることができる。
【００２６】なお、本発明は先の各実施例に限定される
ことなく、種々の改変が可能であることは言うまでもな
い。例えば、断熱容器の形状は、その使用用途に応じ、
円筒状、角形筒状、半球状など様々な形状として良く、
また、断熱容器の開口に、同様の断熱構造の蓋を開閉自
在に取り付けて構成しても良い。また、本発明の断熱容
器と他の断熱構造、例えば固体断熱材を充填した断熱構
造や真空断熱構造とを組み合わせて用いることも可能で
ある。
【００２７】
【発明の効果】本発明は、上記の通り構成されているの
で、以下のような効果を奏する。本発明に係る断熱容器
は、二重壁構造を有する二重容器の内容器と外容器との
間隙に、キセノン、クリプトン、アルゴンのうちの１種
又は２種以上よりなる低熱伝導性ガスを封入して断熱層
を形成し、かつ断熱層内に金属箔よりなる輻射防止材を
配したものであるので、内外容器間に有機又は無機材質
の固形断熱材を充填した従来の断熱容器に比べ、断熱性
能が格段に向上する。また、固形断熱材を充填すること
がないので、断熱容器を軽量化できる。さらに、従来の
真空断熱容器に比べ、断熱層とその外部との圧力差が少
なくなり、二重容器に要求される耐圧強度が小さくて済
むので、二重容器を角形にするなど、形状の自由度及び
材料の自由度を広げることが可能となり、さらに断熱容
器の容積効率が向上する。従って、この断熱容器によれ
ば、優れた断熱性能を有するとともに、軽く、しかも容
積効率が高い断熱容器を提供することができる。また、
この断熱層の厚さを１〜１０ｍｍとすることにより、封
入ガスの対流が抑制されるので、優れた断熱効果が得ら
れる。また、内容器と外容器との間隙に、断熱層を厚さ
方向に区画する１つまたはそれ以上の区画材を配し、断
熱層を複数層とした構成とすることにより、内容器と外
容器の壁間に封入された封入ガスの厚さ方向への移動が
阻止されるので、複数の断熱層を重ねたものと同様の断
熱構造となり、一層優れた断熱性能を得ることができ
る。また、低熱伝導性ガスの封入圧力を常温で大気圧程
度としたことにより、冷水や湯などの内容物を入れた際
にも断熱層と外部との圧力差が小さくなり、二重容器に
加わる大気圧荷重が低減され、容器に必要な耐圧強度が
低下する分、容器の軽量化が図れ、また形状の自由度及
び材料の自由度をより一層広げることができる。さら
に、本発明に係る断熱容器の製造方法では、内容器の外
表面と外容器の内表面とのいずれか一方または両方に、
金属箔よりなる輻射防止材を配した二重容器を作製し、
この二重容器の排気孔又はガス封止管を通して内容器と
外容器との間隙の空気を排気し、続いて該間隙に前記低
熱伝導性ガスを充填して排気孔又はガス封止管を封止す
ることにより、優れた断熱性能を持つ断熱容器を作製で
き、製造工程が単純で容易であり、かつ成形が容易な合
成樹脂材料を用いて作製が可能であるので、製造コスト
の低減化を図ることができる。また、金属箔よりなる輻
射防止材を用いたことにより、内外容器の断熱層に面し
た表面をめっきするのに比べ、低コストで作製が可能と
なる。また、金属箔よりなる輻射防止材を用いたことに
より、二重容器及び金属箔の再利用が容易となり、製造
コストが小さくなるとともに資源リサイクルに好都合と
なる。また、内外容器間の隙間の真空排気及びキセノン
等の低熱伝導性ガスの封入工程を、この隙間と外部との
圧力差を小さくして行うことにより、二重容器に気圧差
による外力が加わるのを防止でき、耐圧構造を殆ど有し
ない二重容器を用いた場合でも容器に凹みを生じること
なく、内部を十分に真空排気することが可能となるの
で、容器の形状の自由度及び材料の自由度をさらに広げ
ることができ、より一層の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の断熱容器の第１実施例を示す断面図で
ある。
【図２】本発明の断熱容器の第２実施例の断熱コップを
示す断面図である。
【図３】本発明の断熱容器の第３実施例を示す要部断面
図である。
【符号の説明】
１，１１……外容器、２，１２……内容器、３……口元
部、４，１３……二重容器、５，１５……断熱層、６，
１４……輻射防止材、７……外容器側部、８……底板、
９，１６……ガス封入管、１０……通気孔、１７……底
カバー、２１……区画材、Ａ……断熱容器、Ｂ……断熱
コップ、Ｃ……断熱容器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 精一 東京都港区西新橋１丁目16番７号 日本 酸素株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.6，ＤＢ名) A47J 41/00 301 - 302

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 内容器と外容器とを一体に接合した二重
    壁構造を有する二重容器の該内容器と外容器との間隙
    に、キセノン、クリプトン、アルゴンのうちの１種又は
    ２種以上よりなる低熱伝導性ガスを封入して断熱層を形
    成してなる断熱容器であって、前記内容器の外表面と外
    容器の内表面とのいずれか一方または両方に、金属箔よ
    りなる輻射防止材を配したことを特徴とする断熱容器。
  2. 【請求項２】 二重容器の内容器と外容器との間隔を１
    〜１０ｍｍとしたことを特徴とする請求項１記載の断熱
    容器。
  3. 【請求項３】 内容器と外容器との間隙に、前記断熱層
    を厚さ方向に区画する１つまたはそれ以上の区画材を配
    し、断熱層を複数層としたことを特徴とする請求項１記
    載の断熱容器。
  4. 【請求項４】 区画材にて区画した複数の断熱層のそれ
    ぞれの間隔を１〜１０ｍｍとしたことを特徴とする請求
    項３記載の断熱容器。
  5. 【請求項５】 二重容器の内容器と外容器との空間に封
    入された低熱伝導性ガスの封入圧力を、常温で大気圧程
    度としたことを特徴とする請求項１から４のいずれか１
    項記載の断熱容器。
  6. 【請求項６】 内容器と外容器とを一体に接合し、これ
    ら内容器と外容器とのいずれかに排気孔又はガス封止管
    を有し、かつ内容器の外表面と外容器の内表面とのいず
    れか一方または両方に、金属箔よりなる輻射防止材を配
    した二重容器を作製し、次いで該二重容器の排気孔又は
    ガス封止管を通して内容器と外容器との間隙の空気を排
    気し、続いて該間隙にキセノン、クリプトン、アルゴン
    のうちの１種又は２種以上よりなる低熱伝導性ガスを充
    填し、次いで排気孔又はガス封止管を封止する断熱容器
    の製造方法。
  7. 【請求項７】 二重容器を作製する工程を、有底筒状の
    内容器と筒状の外容器とのそれぞれの口元部を接合一体
    化し、その内容器の外表面と外容器の内表面とのいずれ
    か一方または両方に、金属箔よりなる輻射防止材を固定
    し、次いで外容器の底部開口に排気孔又はガス封止管を
    有する底板を接合するようにしたことを特徴とする請求
    項６記載の断熱容器の製造方法。
  8. 【請求項８】 二重容器を作製する工程を、有底筒状の
    内容器と、排気孔又はガス封止管を有する有底筒状の外
    容器とを用意し、内容器の外表面と外容器の内表面との
    いずれか一方または両方に、金属箔よりなる輻射防止材
    を固定してこれら内容器と外容器の口元部を接合一体化
    するようにしたことを特徴とする請求項６記載の断熱容
    器の製造方法。
  9. 【請求項９】 二重容器を作製する工程を、一体二重成
    形により有底筒状の内容器と筒状の外容器とが口元部で
    一体化された形状の二重壁構造体を作製し、その内容器
    の外表面と外容器の内表面とのいずれか一方または両方
    に、金属箔よりなる輻射防止材を固定し、次いで外容器
    の底部開口に排気孔又はガス封止管を有する底板を接合
    するようにしたことを特徴とする請求項６記載の断熱容
    器の製造方法。
  10. 【請求項１０】 二重容器の内容器と外容器との間隙の
    空気を排気する工程及び低熱伝導性ガスを充填する工程
    を、該間隙と二重容器外部との圧力差を小さくして行う
    ことを特徴とする請求項６から９のいずれか１項記載の
    記載の断熱容器の製造方法。
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