JP2510904B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP2510904B2 JP3177478A JP17747891A JP2510904B2 JP 2510904 B2 JP2510904 B2 JP 2510904B2 JP 3177478 A JP3177478 A JP 3177478A JP 17747891 A JP17747891 A JP 17747891A JP 2510904 B2 JP2510904 B2 JP 2510904B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気テープ、磁気シー
ト、磁気ディスク等の磁気記録媒体に関するものであ
る。
【0002】
【従来技術】一般に、磁気記録媒体は、磁性粉とバイン
ダー樹脂等を含む磁性塗料を支持体上に塗布乾燥するこ
とによって製造される。
【0003】こうした磁気記録媒体において、磁性層等
のバインダー樹脂としてウレタン樹脂が一般に使用され
ている。従来から公知のウレタン樹脂は、高分子ジオー
ルとジイソシアネートと鎖延長剤と(必要に応じて使用
する)架橋剤とから合成される。
【0004】高分子ジオールとしては、アジピン酸、ブ
タンジオール等から得られるポリエステルジオールや、
ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールが挙
げられ、ジイソシアネートとしてはジフェニルメタンジ
イソシアネート等が使用可能である。また、鎖延長剤は
エチレングリコール、ブタンジオール等からなってお
り、架橋剤はポリオール類、ポリアミン類等であってよ
い。
【0005】しかし、このような一般的なウレタン樹脂
は、柔軟性には優れていても、硬さが不足するためにガ
イドピンや磁気ヘッド等との摺接に対して磁気記録媒体
の機械的強度が不良となり、しかも走行性や粉落ちの面
でも問題がある。
【0006】一方、磁気記録媒体において、高出力を示
すメタル磁性粉が注目されている。メタル磁性粉は高密
度充填することにより他の磁性粉に比べてRF出力の向
上等において有利な材料である。
【0007】しかしながら、メタル磁性粉を用いた磁気
記録媒体は機械的強度が不十分であったり、またメタル
磁性粉の分散性も比較的悪いという問題があり、これを
十分に克服した媒体は未だ提案されていないのが実情で
ある。
【0008】最近の磁気記録媒体においては、その発展
に伴ない、単に柔いだけのウレタン樹脂を磁性粉ととも
に磁性層に含有せしめる場合、媒体走行時の耐久性や、
静止画像安定性、微細化磁性粉の分散性等が不充分であ
る。
【0009】
【発明の目的】本発明の目的は、磁性層に適度な柔軟性
と共に充分な機械的強度、耐久性が付与され、高出力で
走行性が優れかつ磁性層の表面性、静止画像耐久性等の
向上した磁気記録媒体を提供することにある。
【0010】
【発明の構成及びその作用効果】即ち、本発明による磁
気記録媒体は、降伏点を有するウレタン樹脂と、メタル
磁性粉と、カーボンブラックとが磁性層に含有されてい
る磁気記録媒体に係るものである。
【0011】本発明によれば、図1に曲線aで示す従来
のウレタン樹脂の特性に比べ、図1に曲線bで例示して
示すような降伏点YPを有するウレタン樹脂を使用して
いるので、降伏点YPに至るまでは応力が加わっても伸
びが非常に小さく、このためにウレタン樹脂に適度な硬
さが付与され、かつ降伏点YP以降は破壊することなく
応力と共に伸びる性質を示し、バインダー樹脂としての
柔軟性及び結着力も適度に有せしめられる。
【0012】この結果、磁気記録媒体の機械的強度が向
上して摺接時の摩耗等の損傷、粉落ち等が大幅に少なく
なり、走行性も著しく改善されることになる。特に、V
TR用の磁気テープではエッジ折れ等がなく、エッジ近
傍のコントロールトラックを保持してその機能を良効に
発揮させることができる。
【0013】このように、降伏点を有するウレタン樹脂
によって、磁性層の強度が大で強靱となるため、メタル
磁性粉を用いてもこの磁性粉は磁性層中に良好に保持さ
れ、結果的にRF出力等が向上し、メタル磁性粉のもつ
本来の高出力特性を十二分に発揮することができるので
ある。
【0014】これに反し、降伏点を有するウレタン樹脂
を使用しないで、メタル磁性粉を用いた磁気記録媒体の
強度を研磨剤の添加によって補なおうとした場合、磁性
層の面が荒れ易くなり、出力低下等を招いてしまう。本
発明によれば、そうした研磨剤の添加に依存するのでは
なく、降伏点を有するウレタン樹脂によって磁性層の強
度を出せ、しかもその表面性を良好に保持することがで
きる。
【0015】この表面性については更に、降伏点を有す
るウレタン樹脂を用いると通常のウレタン樹脂に比べ、
メタル磁性粉の分散性が良くなり、本来分散性があまり
よくないメタル磁性粉の分散を促進し、これが磁性層の
表面粗さを小さくして表面性の向上に寄与することにな
る。
【0016】一般に、表面性を上げた場合、通常のウレ
タン樹脂を用いると磁性層面上を媒体が走行するに際
し、ジッターが増加する傾向がある。しかし、上記の降
伏点を有するウレタン樹脂の使用によって、媒体の走行
がスムーズとなり、ジッターの発生を大幅に減少させる
ことができる。
【0017】このことは、本発明によって、磁性層中に
カーボンブラックを添加することによって更に一層向上
することになる。即ち、カーボンブラックは磁性層のフ
ィラーとして磁性層表面の粗れを埋めてその表面性を上
げ、また媒体との摺擦性、走行性を高めるのである。
【0018】本発明の磁性層に使用するメタル磁性粉は
一般に、光を透過させ難い色(例えば黒褐色)を呈し、
かつ導電性もあるため、磁性層中にカーボンブラックを
添加することが不要であるとの認識があった。しかし、
本発明者は、そうした認識とは別に、メタル磁性粉の使
用時に、カーボンブラックも積極的に添加することで、
上記した如きフィラーとしての性能を効果的に発揮し、
表面性及び走行性を大きく高め得て、メタル磁性粉使用
の利点を一層促進できることを見い出したのである。
【0019】本発明において、上記降伏点YPは、ウレ
タン樹脂の性能にとって重要であり、50〜600kg /c
m2 、望ましくは100 〜560kg /cm2 の応力範囲(図1
の例では約290kg /cm2 )で降伏点が存在するのが望ま
しい。降伏点が存在する範囲が、応力50kg/cm2 以上と
すれば樹脂が柔かくなりすぎるのを防ぎ、600kg /cm2
以下とすれば樹脂が硬くなってもろくなるのを防止でき
る。
【0020】ここで、降伏点の測定条件は例えばJIS
K−6301に詳しく述べられている。その測定方法につい
て説明すると、厚さ100 μmのウレタン樹脂のフィルム
を80℃で、10分、続いて120 ℃で、10分加熱処理し、そ
の後に25℃、55%RH(相対湿度)の雰囲気下に3日間
放置後、同条件下でJISK−6301に従い、2号ダンベ
ルを用い、引っ張り速度200mm /分で測定する。
【0021】降伏点を有する上記ウレタン樹脂は、上記
の優れた性能を発揮するには、分子中に環状炭化水素残
基を有しているのがよい。この環状炭化水素基残基は飽
和環状炭化水素残基であるのが好ましく、これには2価
又は1価のシクロペンチル基、シクロヘキシル基等、或
いはこれらの誘導体(例えばメチル基等のアルキル基置
換体、塩素原子等のハロゲン置換体)からなるものが挙
げられる。
【0022】これらの飽和環状炭化水素残基はウレタン
樹脂に適度な硬さを付与する点、及び原料入手性の面か
ら望ましいものである。
【0023】また、この環状炭化水素残基の結合位置
は、ウレタン樹脂分子の主鎖中であるのがよいが、その
側鎖に結合していてもよい。
【0024】また、ウレタン樹脂中での環状炭化水素残
基をもつ構成成分の量を変化させることにより、任意の
ガラス転移点(Tg)を持つウレタン樹脂を得ることが
でき、Tgとしては−30℃〜100 ℃、好ましくは0℃〜
90℃である。Tgを−30℃以上とすれば、樹脂が柔らか
くなる(Tg<−30℃)ことによる膜強度の低下を防止
し、また100 ℃以下とすれば、膜が必要以上に硬くても
ろくなるのを防止できる。
【0025】本発明に使用するウレタン樹脂はポリオー
ルとポリイソシアネートとの反応によって合成可能であ
る。この際、上記環状炭化水素残基を導入するには、次
の(1) 〜(4) の方法を採用することができる。
【0026】(1) .ポリオール(例えば高分子ジオー
ル)の原料となる多価アルコールとして、予め環状炭化
水素残基を有した多価アルコールを用いる方法。
【0027】(2) .上記ポリオールの原料となる有機二
塩基酸(ジカルボン酸)として、予め環状炭化水素残基
を有したジカルボン酸を用いる方法。
【0028】(3) .上記(1) と(2) の多価アルコール及
びジカルボン酸をポリオールの原料に用いる方法。
【0029】(4) .上記(1) 〜(3) のいずれかと併用し
て、或いは単独で、鎖延長剤として予め環状炭化水素残
基を有した多価アルコールを用いる方法。
【0030】例えば、上記ウレタン樹脂を得る合成方法
として、1,4−ジ−ヒドロキシメチルシクロヘキサン
【化1】 とアジピン酸(HOOC−(CH2 4 −COOH)と
から得られるポリエステルポリオールをメチレン−ビス
−フェニルイソシアネート
【化2】 でウレタン化する方法が挙げられる。この際、鎖延長剤
は上記の1,4−ジ−ヒドロキシメチルシクロヘキサン
又は他のジオール(例えばブタン−1,4−ジオール)
であってよい。
【0031】環状炭化水素残基を予め有していてよい上
記多価アルコールは、上記した如くエチレングリコール
構造の分子鎖中にシクロヘキシル基を有するものが使用
可能であるが、そうした構造以外にもプロピレングリコ
ール、ブチレングリコール、ジエチレングリコールなど
のグリコール類もしくはトリメチロールプロパン、ヘキ
サントリオール、グリセリン、ヘキサントリオール、ト
リメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどの多価
アルコール類もしくはこれらのグリコール類、又はその
構造中に環状炭化水素残基を有するものが使用できる。
【0032】また、使用可能な二塩基酸はフタル酸、二
量化リノレイン酸、マレイン酸等、又はこれらの分子中
に環状炭化水素残基を有するものも挙げられる。
【0033】上記のポリオールに代えて、s−カプロラ
クタム、α−メチル−1−カプロラクタム、s−メチル
−s−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等のラクタ
ム類から合成されるラクトン系ポリエステルポリオー
ル;またはエチレンオキサイド、ブチレンオキサイドな
どから合成されるポリエーテルポリオール等も使用して
よい。
【0034】これらのポリオールは、トリレンジイソシ
アネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレン
ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等
のイソシアネート化合物と反応せしめ、これによってウ
レタン化したポリエステルポリウレタン、ポリエーテル
ポリウレタンが合成される。
【0035】これらの本発明に係るウレタン樹脂は通常
は主として、ポリイソシアネートとポリオールとの反応
で製造され、そして遊離イソシアネート基及び/又はヒ
ドロキシル基を含有するウレタン樹脂またはウレタンプ
レポリマーの形でも、あるいはこれらの反応性末端基を
含有しないもの(例えばウレタンエラストマーの形)で
あってもよい。
【0036】また、使用可能な鎖延長剤は、上記に例示
した多価アルコール(分子中に環状炭化水素基を有して
いてよいし、或いは有していなくてもよい。)であって
よい。
【0037】なお、バインダー樹脂として上記のウレタ
ン樹脂と共に、フェノキシ樹脂及び/又は塩化ビニル系
共重合体も含有せしめれば、磁性層に適用する場合に磁
性粉の分散性が向上し、その機械的強度が増大する。但
し、フェノキシ樹脂及び/又は塩化ビニル系共重合体の
みでは層が硬くなりすぎるがこれはポリウレタンの含有
によって防止でき、支持体又は下地層との接着性が良好
となる。
【0038】使用可能なフェノキシ樹脂には、ビスフェ
ノールAとエピクロルヒドリンの重合より得られる重合
体であり、下記一般式で表わされる。
【化3】 例えば、ユニオンカーバイド社製のPKHC、PKH
H、PKHT等がある。
【0039】また、使用可能な上記の塩化ビニル系共重
合体としては、 一般式: で表わされるものがある。
【0040】この場合、 におけるl及びmから導き出されるモル比は、前者のユ
ニットについては95〜50モル%であり、後者のユニット
については5〜50モル%である。
【0041】また、Xは塩化ビニルと共重合し得る単量
体残基を表わし、酢酸ビニル、ビニルアルコール、無水
マレイン酸等からなる群より選ばれた少なくとも1種を
表わす。(l+m)として表わされる重合度は好ましく
は100 〜600 であり、重合度が100 未満になると磁性層
等が粘着性を帯び易く、600 を越えると分散性が悪くな
る。
【0042】上記の塩化ビニル系共重合体は、部分的に
加水分解されてもよい。塩化ビニル系共重合体として、
好ましくは塩化ビニル−酢酸ビニルを含んだ共重合体
(以下、「塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体」とい
う。)が挙げられる。
【0043】塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体の例と
しては、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール、
塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸の各共重合体
が挙げられ、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体の中で
も、部分加水分解された共重合体が好ましい。上記の塩
化ビニル−酢酸ビニル系共重合体の具体例としては、ユ
ニオンカーバイド社製の「VAGH」、「VYHH」、
「VMCH」、積水化学(株)製の「エスレックA」、
「エスレックA−5」、「エスレックC」、「エスレッ
クM」、電気化学工業(株)製の「デンカビニル1000
G」、「デンカビニル1000W」等が使用できる。
【0044】また、上記以外にも、バインダー樹脂とし
て繊維素系樹脂が使用可能であるがこれには、セルロー
スエーテル、セルロース無機酸エステル、セルロース有
機酸エステル等が使用できる。
【0045】セルロースエーテルとしては、メチルセル
ロース、エチルセルロース等が使用できる。セルロース
無機酸エステルとしては、ニトロセルロース、硫酸セル
ロース、燐酸セルロース等が使用できる。また、セルロ
ース有機酸エステルとしては、アセチルセルロース、プ
ロピオニルセルロース、ブチリルセルロース等が使用で
きる。これら繊維素系樹脂の中でニトロセルロースが好
ましい。
【0046】また、バインダー組成全体については、上
述のウレタン樹脂と、その他の樹脂(フェノキシ樹脂と
塩化ビニル系共重合体等との合計量)との割合は、重量
比で90/10〜40/60であるのが望ましく、85/15〜45/
55が更に望ましいことが確認されている。この範囲を外
れて、ウレタン樹脂が多いと分散が悪くなり易く、また
その他の樹脂が多くなると表面性不良となり易く、特に
60重量%を越えると塗膜物性が総合的にみてあまり好ま
しくなくなる。塩化ビニル−酢酸ビニルの場合、ウレタ
ン樹脂とかなりの自由度で混合でき、好ましくはウレタ
ン樹脂は15〜75重量%である。
【0047】本発明の磁気記録媒体を構成する層のバイ
ンダー樹脂としては、前記したものの他、熱可塑性樹
脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂、電子線照射硬化型樹脂
が使用されてもよい。
【0048】熱可塑性樹脂としては、軟化温度が150 ℃
以下、平均分子量が10,000〜200,000 、重合度が約200
〜2,000 程度のもので、例えばアクリル酸エステル−ア
クリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビ
ニリデン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重
合体等が使用される。
【0049】熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、
塗布液の状態では200,000 以下の分子量であり、塗布乾
燥後には縮合、付加等の反応により分子量は無限大のも
のとなる。また、これらの樹脂のなかで樹脂が熱分解す
るまでの間に軟化または溶融しないものが好ましい。具
体的には、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素
樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂等である。
【0050】電子線照射硬化型樹脂としては、不飽和プ
レポリマー、例えば無水マレイン酸タイプ、ウレタンア
クリルタイプ、ポリエステルアクリルタイプ等が挙げら
れる。
【0051】本発明の磁気記録媒体において、磁性粉と
して使用するメタル磁性粉としては、Fe、Ni、C
o、Fe−Al、Fe−Ni−Co合金、Fe−Mn−
Zn合金、Fe−Ni−Zn合金、Fe−Co−Ni−
Cr合金、Fe−Co−Ni−P合金、Co−Ni合金
等Fe、Ni、Co等を主成分とするメタル磁性粉が挙
げられる。
【0052】本発明において、磁性層に添加するカーボ
ンブラックは導電性のあるものが望ましいが、遮光性の
あるものも添加してよい。
【0053】こうした導電性カーボンブラックとして
は、例えばコロンビアカーボン社製のコンダクテックス
(Conductex )975 (比表面積250m2 /g 、粒径24m
μ)、コンダクテックス900 (比表面積125m2 /g 、粒
径27mμ)、カボット社製のバルカン(Cabot Vulcan)
XC−72(比表面積254m2 /g 、粒径30mμ)、ラーベ
ン1040、420 、三菱化成(株)製の#44等がある。
【0054】遮光用カーボンブラックとしては、例えば
コロンビアカーボン社製のラーベン2000(比表面積190m
2 /g 、粒径18mμ)、2100、1170、1000、三菱化成
(株)製の#100 、#75、#40、#35、#30等が使用可
能である。
【0055】カーボンブラックは20〜30mμ、好ましく
は21〜29mμの粒径を有しているのがよいが、その吸油
量が90ml(DBP)/100g以上であるとストラクチャー
構造をとり易く、より高い導電性を示す点で望ましい。
【0056】上述の環状炭化水素残基を有するウレタン
樹脂等をバインダー樹脂として含む層は例えば図2に示
すように、支持体1上の磁性層2である。また磁性層2
とは反対側の面にバックコート(BC)層3が設けられ
ている。このBC層は設けられてよいが、設けなくても
よい。
【0057】磁性層2にはまた、潤滑剤(例えばシリコ
ーンオイル、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化
タングステン、炭素原子数12〜20の一塩基性脂肪酸(例
えばステアリン酸)、炭素原子数12〜20の一塩基性脂肪
酸(例えばステアリン酸)と炭素原子数4〜26個の一価
のアルコールからなる脂肪酸エステル等)、研磨材(例
えばアルミナ)、帯電防止剤(例えばグラファイト)等
を添加してよい。
【0058】磁性層2等に添加可能な分散剤として、下
記一般式(A−1)又は(A−2)で表わされる各リン
酸エステルの少なくとも一種を用いることができる。 一般式(A−1): 一般式(A−2):
【化4】 (但し、上記各一般式中、Rは、炭素原子数8〜30のア
ルキル基又はアルキルアリール基、nは、1〜20の実数
である。)
【0059】上記一般式(A−1)又は(A−2)のリ
ン酸エステルの使用によって磁性塗料の経時安定性を保
持しながら磁性粉等を良好に分散せしめ、かつ磁性層等
の表面性を向上させることができる。
【0060】上記リン酸エステルの一般式において、R
は炭素原子数8〜30とすべきであるが、その炭素原子数
を8以上とするのがバインダーとのなじみを良好とした
り、層中での移動を防止したりする点で望ましく、また
30以下とする方が磁性塗料等の分散不良を防いだり、リ
ン酸残基の適度の親水性を保てる点で望ましいからであ
る。上記炭素原子数は更に10〜24であるのが望ましい。
【0061】特に、Rとしては、アルキルアリール基、
更にはアルキルフェニル基が望ましい。また、上記一般
式中のnは1〜20(望ましくは2〜15、更に望ましくは
6〜12)とするのがよいが、これは、nを1以上、20以
下とするのが親油基と親水基を適度に隔てるので望まし
い。
【0062】また、上記リン酸エステルは、10〜14のH
LB(Hydrophilic −Lipophilic Balance:親水性−親
油性バランス)を示すものが望ましい。即ち、HLBが
10より小さいと親油性が強くなり、また14より大きいと
親水性が強くなり、いずれの場合も磁性塗料等の分散剤
として分散不良や分散経時安定性の面で好ましくないこ
とがある。なお、上記リン酸エステルには、微量のトリ
エステルが含まれていてもよい。
【0063】上記リン酸エステルとしては、具体的には 例示化合物(1)
【化5】 及び/又はこのモノリン酸エステル 例示化合物(2)
【化6】 及び/又はこのジリン酸エステル 例示化合物(3)
【化7】 及び/又はこのジリン酸エステル 例示化合物(4)
【化8】 及び/又はこのジリン酸エステル 例示化合物(5)
【化9】 及び/又はこのジリン酸エステル 例示化合物(6)
【化10】 及び/又はこのモノリン酸エステル 例示化合物(7)
【化11】 及び/又はジリン酸エステル 例示化合物(8)
【化12】 及び/又はこのジリン酸エステル 例示化合物(9)
【化13】 及び/又はこのジリン酸エステル 例示化合物(10)
【化14】 及び/又はこのモノリン酸エステル 例示化合物(11)
【化15】 及び/又はこのジリン酸エステル が挙げられる。
【0064】また、上記リン酸エステルの層中への添加
量には適切な範囲があり、磁性層の場合には磁性粉100
重量部に対して1〜10重量部がよく、2〜7重量部が更
によい。添加量を1重量部以上とすることによって分散
を充分に行え、層の表面性を良くし、また10重量部以下
とすることによって塗料の粘度を充分として膜厚の制御
をし易くなる。
【0065】BC層3に含有せしめられる非磁性粉とし
ては、カーボンブラック、酸化珪素、酸化チタン、酸化
アルミニウム、酸化クロム、炭化珪素、炭化カルシウ
ム、酸化亜鉛、α−Fe2 3 、タルク、カオリン、硫
酸カルシウム、窒化ホウ素、フッ化亜鉛、二酸化モリブ
デン、炭酸カルシウム等からなるもの、好ましくはカー
ボンブラック(特に導電性カーボンブラック)及び/又
は酸化チタンからなるものが挙げられる。
【0066】また、前記の非磁性粉として、有機粉末、
例えばベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、フタ
ロシアニン系顔料等を添加してもよい。
【0067】また、図2の磁気記録媒体は、磁性層2と
支持体1との間に下引き層(図示せず)を設けたもので
あってよく、或いは下引き層を設けなくてもよい(以下
同様)。また、BC層3にも、本発明によるウレタン樹
脂を含有させてもよい。
【0068】また、支持体1の素材としては、ポリエチ
レンテレフタレート、ポリプロピレン等のプラスチッ
ク、Al、Zn等の金属、ガラス、BN、Siカーバイ
ド、磁器、陶器等のセラミックなどが使用される。
【0069】なお、上記の磁性層等の塗布形成時には、
塗料中に架橋剤としての多官能イソシアネートを所定量
添加しておくのが望ましい。こうした架橋剤としては、
既述した多官能ポリイソシアネートの他、トリフェニル
メタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネ
ートフェニル)チオホスファイト、ポリメチレンポリフ
ェニルイソシアネート等が挙げられるが、メチレンジイ
ソシアネート系、トリレンジイソシアネート系がよい。
【0070】図3は、他の磁気記録媒体を示すものであ
るが、図2の媒体の磁性層2上にオーバーコート(O
C)層4が設けられている。このOC層4は、磁性層2
を損傷等から保護するために設けられているが、そのた
めに滑性が充分である必要がある。
【0071】そこで、OC層4のバインダー樹脂とし
て、上述の磁性層2に使用したウレタン樹脂を(望まし
くはフェノキシ樹脂及び/又は塩化ビニル系共重合体を
併用して)使用する。
【0072】OC層4の表面粗さは特にカラーS/Nと
の関連でRa≦0.01μm、Rmax≦0.13μmとするの
がよい。この場合、支持体1の表面粗さをRa≦0.01μ
m、Rmax≦0.13μmとし、平滑な支持体1を用いる
のが望ましい。
【0073】図4は、磁気ディスクとして構成された磁
気記録媒体を示し、支持体1の両面に上述と同様の磁性
層2、OC層4が夫々設けられており、OC層4には上
述のウレタン樹脂を主成分とするバインダー樹脂が含有
せしめられてよい。
【0074】
【実施例】以下、本発明を具体的な実施例につき説明す
る。以下に示す成分、割合、操作順序等は、本発明の精
神から逸脱しない範囲において種々変更しうる。
【0075】表−1に示す成分をボールミルに仕込み、
分散させた後、この磁性塗料を1μmフィルターで濾過
後、多官能イソシアネート5部を添加し、リバースロー
ルコータにて支持体上に5μm厚みに塗布してスーパー
カレンダーをかけ、1/2 インチ幅にスリットしてビデオ
テープ(各実施例、比較例の番号に対応する)とした。
但し、表−1の第2欄以後の数字は重量部を表わし、ま
た第2欄以後の「実」は実施例を、「比」は比較例を表
わす。
【0076】 表−1A 磁性塗料成分 実-1 実-2 実-3 実-4 ─────────────────────────────────── Fe系メタル磁性粉 100 100 100 100 Co含有γ−Fe2O3 ポリウレタン(本発明のもの: 11 11 11 11 降伏点約290kg/cm2 、シクロヘ キシル基含有) 塩ビ−酢ビ共重合体(VAGH) 塩ビ−酢ビ−無水マレイン酸共 11 11 重合体 フェノキシ樹脂(PKHH) 11 11 例示化合物(1) のモノエステル 3 3 3 とジエステルの混合体 ポリウレタン(エスタン5701) 3 ミリスチン酸 0.5 0.5 0.5 0.5 パルミチン酸 0.5 0.5 0.5 0.5 ブチルステアレート 0.5 0.5 0.5 0.5 レシチン 3 アルミナ 2 2 2 2 カーボンブラック(コンダクテ 5 5 5 5 ックス975 ) シクロヘキサノン 160 160 160 160 テトラヒドロフラン 50 50 50 50 トルエン 70 70 70 70
【0077】 表−1B 磁性塗料成分 比-1 比-2 比-3 比-4 比-5 ──────────────────────────────────── Fe系メタル磁性粉 100 100 100 Co含有γ−Fe2O3 100 100 ポリウレタン(本発明のもの: 11 11 降伏点約290kg/cm2 、シクロヘ キシル基含有) 塩ビ−酢ビ共重合体(VAGH) 11 11 塩ビ−酢ビ−無水マレイン酸共 11 11 重合体 フェノキシ樹脂(PKHH) 11 例示化合物(1) のモノエステル 3 とジエステルの混合体 ポリウレタン(エスタン5701) 11 11 3 11 ミリスチン酸 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 パルミチン酸 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 ブチルステアレート 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 レシチン 3 3 3 3 アルミナ 2 2 2 2 2 カーボンブラック(コンダクテ 5 5 5 5 ックス975 ) シクロヘキサノン 160 160 160 160 160 テトラヒドロフラン 50 50 50 50 50 トルエン 70 70 70 70 70
【0078】上記の各例によるビデオテープについて次
の測定を行った。
【0079】クロマS/N:カラービデオノイズメータ
ー「Shibasoku 925 D/1」により測定した。
【0080】RF出力:RF出力測定用VTRデッキを
用いて4MHzでのRF出力を測定し、100 回再生後の、
当初の出力に対して低下している値を示した。(単位:
dB)
【0081】ジッター値:メグロ・エレクトロニクス社
製のVTRジッターメーター「MK−612 A」を使用
し、30℃、80%RHの高温多湿下で走行初期値(0回
目:常温常湿での値)、100 回走行後のジッターを測定
した。
【0082】光沢度:変角光度計にて60°の角度で測定
し、比較例1の値を100 %として表示(値が大きい程表
面平滑性良好)。
【0083】それぞれの例のビデオテープの性能を表−
2に示した。
【0084】 表−2 実-1 実-2 実-3 実-4 比-1 比-2 比-3 比-4 比-5 ──────────────────────────────────── クロマS/N(dB) 0 +1.0 +0.9 -0.2 -2.6 -2.7 -0.3 0 -2.2 RF出力(dB) 0 +0.8 +0.7 -0.3 -2.7 -3.0 -0.4 0 -1.8 走行初期のジッ 0.110 0.108 0.109 0.109 0.130 0.150 0.140 0.105 0.123 ター値(μsec ) 100 回走行後の 0.110 0.108 0.110 0.119 0.370 0.380 0.290 0.105 0.220 ジッター値(μsec ) 光沢度(%) 165 170 170 160 120 120 150 140 100
【0085】但し、実−1を0dBとして比−1のクロ
マS/N、RF出力を求めた。比−4を0dBとして比
−5のクロマS/N、RF出力を求めた。ジッターは各
々の値である。
【0086】上記結果から、本発明に基いて磁性層に降
伏点のあるウレタン樹脂とメタル磁性粉とカーボンブラ
ックとを添加することによって、テープ性能が著しく向
上することが分かる。特に、メタル磁性粉の場合、比−
1にみられるように、比−5の酸化鉄磁性粉使用の場合
に比べて性能が悪くなりがちであるが、本発明に基いて
降伏点のあるウレタン樹脂の添加によって実−1のよう
に結果がメタル磁性粉の場合に顕著に改善される。ま
た、カーボンブラックを添加しない比−3に比べて実−
4に示すようにカーボンブラック添加の効果は著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウレタン樹脂の応力−伸び率の関係を示す曲線
図である。
【図2】磁気記録媒体の一例の拡大断面図である。
【図3】磁気記録媒体の他の例の拡大断面図である。
【図4】磁気記録媒体の更に他の例の拡大断面図であ
る。
【符号の説明】
2 磁性層 3 バックコート層(BC層) 4 オーバーコート層(OC層)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 降伏点を有するウレタン樹脂と、メタル
    磁性粉と、カーボンブラックとが磁性層に含有されてい
    る磁気記録媒体。
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