薬物の局所的眼投与を達成するには、直接の注入又は適用を必要とし得るだけでなく、薬物溶出移植片の使用を含む場合もある。薬物溶出移植片の一部は、標的部位が位置する眼内又は眼房内(例えば、前房、後房又は両方同時に)の標的作用部位に近接して配置することができる。薬物溶出移植片を使用すると、特定の眼組織、例えば、斑、網膜、毛様体、視神経などに薬物を標的送達し、又は眼の特定の領域に血管供給することもできる。薬物溶出移植片を使用すると、病態に応じて、制御された量の薬物を所望の時間投与する機会を提供することもできる。例えば、一部の病態は、薬物を定速でほんの数日放出する必要があり得る。別の病態は、定速で最大数か月薬物を放出する必要があり得る。更に別の病態は、ある期間周期的又は異なる放出速度を必要とし得る。さらには、別の病態は、放出のない期間(例えば、「休薬期間」)を必要とし得る。さらに、移植片は、薬物の送達が完了した後、追加の機能を果たすこともできる。移植片は、眼か内の流体通路の開存性を維持することができ、同じ若しくは異なる治療薬を将来投与するための貯蔵所として機能することができ、又は第1の場所から第2の場所への流体流路若しくは通路の開存性を維持する機能を果たすこともでき、例えばステントとして機能することもできる。逆に、薬物を急性的にしか必要としない場合、移植片を完全に生分解性にすることもできる。
本明細書に開示した実施形態による移植片は、好ましくは、薬物(単数又は複数)の放出に浸透圧勾配もイオン勾配も必要とせず、眼の健常組織に対する外傷を最小限に抑えることによって眼の罹病率を低下させるデバイスと一緒に移植され、及び/又は1つ以上の薬物を標的及び制御放出様式で送達して、複数の眼の病態若しくは単一の病態及びその症候を治療するのに使用することができる。しかしながら、ある実施形態においては、浸透圧勾配又はイオン勾配を使用して、移植片からの薬物(単数又は複数)の放出を惹起し、(全体的又は部分的に)制御し、又は調節する。幾つかの実施形態においては、浸透圧は、移植片の内部(単数又は複数)と眼液の間で平衡化されており、認められるほどの勾配を生じない(浸透圧でもイオンでも)。かかる実施形態においては、圧力を平衡化させるために、可変量の溶質をデバイス内の薬物に添加する。
本明細書では「薬物」とは、一般に、単独投与することができる1種類以上の薬物、1種類以上の薬学的に許容される賦形剤(例えば、結合剤、崩壊剤、充填剤、希釈剤、潤滑剤、薬物放出制御ポリマー、他の薬剤など)、助剤、又は本明細書に記載の移植片内に収容することができる化合物と組み合わせて及び/又は混合して投与することができる1種類以上の薬物を指す。「薬物」という用語は、「治療薬」及び「医薬品」又は「薬剤」と区別なく使用することができる広義の用語であり、かかる薬物が天然、合成又は組換えであろうとなかろうと、いわゆる小分子薬物だけでなく、巨大分子薬物、及びタンパク質、核酸、抗体などを含めて、ただしそれだけに限定されない生物学的製剤も含む。薬物とは、薬物単体、又は上記賦形剤と組み合わせた薬物を指し得る。「薬物」とは、活性薬物自体、又は活性薬物のプロドラッグ若しくは塩も指し得る。
本明細書では「患者」は、その通常の意味を有するものとし、ほ乳動物全般も指すものとする。「ほ乳動物」という用語は、とりわけ、ヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、げっ歯類、ブタ、ヒツジ及び霊長類を含むが、それだけに限定されない。さらに、本明細書を通して、個々のパラメータの値の範囲を値のリストと一緒に示す。これらの場合、かかる開示は、リストの値を含むだけでなく、リストの値のうち任意の2つの値の間の整数値及び小数値を含む値の範囲も含むことに留意されたい。
幾つかの実施形態においては、眼腔に放出するために薬物を収容する少なくとも1つの内部管腔を画定する形状である外殻を含む、生体適合性薬物送達眼移植片を提供する。外殻は、幾つかの実施形態においてはポリマーであり、ある実施形態においては、薬物が内部管腔から標的組織により通過しやすい厚さの薄い区域を除いて、厚さがほぼ均一である。換言すれば、薬物放出領域は、厚さを薄くすることによって形成することができる。幾つかの別の実施形態においては、移植片の殻は、(例えば、材料、オリフィスなどの殻の各部の異なる特性に基づいた)薬物透過性が増大した1つ以上の領域を含み、それによって薬物が優先的に放出される明確な領域を形成する。別の実施形態においては、外殻の材料が薬物に対して実質的に透過性がある場合、外殻全体を薬物放出領域にすることができる。更に別の一実施形態においては、デバイスの内部管腔又は空隙において薬物が配置された場所を囲む外殻の部分を薬物放出領域とみなすことができる。例えば、薬物をデバイスの遠位端に向かって又は遠位部に(例えば、デバイスの遠位半分又は遠位2/3)に充填する場合、薬物は、薬物に近接した外殻の部分を通して優先的に溶出する可能性があるので、デバイスの遠位部が薬物放出領域になる。したがって、本明細書では「薬物放出領域」という用語は、その通常の意味を有するものとし、材料及び/又は材料の厚さの特性に基づいた薬物透過性の領域若しくは薬物透過性が増大した領域、(以下にも示すように)移植片を通る1個以上のオリフィス若しくは別の通路、薬物に近接したデバイスの領域、及び/又は移植片からの薬物放出の制御に使用される材料の1つ以上の追加の層と併せたこれらの特徴のいずれかを含めて、この段落に開示した実施形態を含むものとする。状況に応じて、これらの用語及び句は、本開示を通して区別なく又は明示的に使用することができる。
幾つかの実施形態においては、外殻は、眼液が移植片の管腔(単数又は複数)内で薬物と接触して薬物放出を生じるように、1個以上のオリフィスを含む。幾つかの実施形態においては、以下でより詳細に考察するように、単層又は複層の透過性又は半透過性材料を使用して、(全体的又は部分的に)移植片及び(全体的又は部分的に)オリフィス(単数又は複数)を覆うことにより、移植片からの薬物放出速度を制御することができる。さらに、幾つかの実施形態においては、1個以上のオリフィス、1個以上のオリフィスを覆う単層又は複層、及び厚さの薄い区域の組合せを使用して、移植片からの薬物放出速度を調整する。
更に別の実施形態においては、材料の組合せを使用して移植片を構築することができる(例えば、異なる材料を含む外殻に結合、接続、連結又は装着された外殻のポリマー部分)。
更に別の実施形態においては、送達する薬物が外殻に含まれない。幾つかの実施形態においては、薬物は、移植片が展開される環境に曝される圧縮ペレット(又は別の形態)として処方される。例えば、薬物の圧縮ペレットを移植片本体に連結し、次いでそれを眼腔に挿入する(例えば、図19T参照)。幾つかの実施形態においては、移植片本体は流体流路を含む。幾つかの実施形態においては、移植片は、場合によっては、保持機能を含む。幾つかの実施形態においては、薬物は、生分解性被膜に包まれ、被覆され、又は覆われて、最初の薬物放出のタイミングは被膜の生分解速度によって制御される。幾つかの実施形態においては、かかる移植片は、施す療法のタイプ及び期間に応じて異なる量の薬物を導入することができるので有利である(例えば、移植片殻の寸法によって制限されない)。分路機能を有する幾つかの実施形態においては、分路機能は、患者の疾患又は症状の1つ以上の症候を治療する薬物と協同して働く。例えば、幾つかの実施形態においては、分路は前房から液を除去し、同時に薬物は眼液産生を減少させる。別の実施形態においては、本明細書で考察するように、分路は、特定の薬物の投与の1つ以上の副作用を相殺する(例えば、分路は、薬物の作用によって産生された眼液を排出する)。
幾つかの実施形態においては、生体適合性薬物送達移植片は、保持突出部(例えば、固定要素、把持部、爪、又はシート若しくは円盤を眼内組織に持続的若しくは過渡的に固着する他の機構)に場合によっては柔軟に結合された(例えば、係留された)柔軟なシート又は円盤を含む。ある種のかかる実施形態においては、治療薬をシート若しくは円盤と混合する、及び/又はシート若しくは円盤に塗布する。幾つかの実施形態においては、柔軟なシート又は円盤の移植片は、送達器具、例えば小径中空針の管腔内に配置されるように巻く、又は折りたたむことができるような寸法である。
眼内の所望の部位に移植後、薬物は、移植片の様々な態様の設計に基づいて、標的及び制御様式で、好ましくは長期間、移植片から放出される。本明細書に開示した移植片及び関連する方法は、後眼房、前眼房、又は斑、毛様体若しくは他の眼球標的組織などの眼内の特定の組織への薬物投与を必要とする病態の治療に使用することができる。
図1は、眼の解剖図であり、縁21において角膜12に結合する強膜11、虹彩13、及び虹彩13と角膜12の間の前房20を含む。眼は、虹彩13の後にある水晶体26、毛様体16及びシュレム管22も含む。眼は、液の一部を前房から除去する働きをするぶどう膜強膜路、及び脈絡膜28と強膜11の間に位置する脈絡膜上腔も含む。眼は、斑32を含む眼の後方領域30も含む。
<全般>
薬物送達デバイス単体として機能する幾つかの実施形態においては、移植片は、1つ以上の薬物を眼の前方領域に制御様式で送達するように構成され、別の実施形態においては、移植片は、1つ以上の薬物を眼の後方領域に制御様式で送達するように構成される。更に別の実施形態においては、移植片は、薬物を眼の前方領域と後方領域の両方に制御様式で同時に送達するように構成される。更に別の実施形態においては、移植片の構成は、薬物が特定の眼内組織、例えば、斑又は毛様体に標的様式で放出されるようなものである。ある実施形態においては、移植片は、薬物を毛様体突起及び/又は後房に送達する。ある別の実施形態においては、移植片は、薬物を毛様体筋及び/又は腱(又は線維帯)の1つ以上に送達する。幾つかの実施形態においては、移植片は、シュレム管、小柱網、強膜上静脈、水晶体皮質、水晶体上皮、水晶体嚢、強膜、強膜岬、脈絡膜、脈絡膜上腔、網膜動脈及び静脈、視神経乳頭、網膜中心静脈、視神経、斑、窩、及び/又は網膜の1つ以上に薬物を送達する。更に別の実施形態においては、移植片からの薬物の送達は、眼房全般を対象とする。本明細書に記載の実施形態の各々は、これらの領域の1つ以上を標的にすることができ、場合によっては分路機能(後述)と組み合わせられてもよいことを理解されたい。
幾つかの実施形態においては、移植片は外殻を含む。幾つかの実施形態においては、外殻は管状であり、及び/又は細長く、別の実施形態においては、別の形状(例えば、円形、楕円形、円柱状など)を使用する。ある実施形態においては、外殻は生分解性ではなく、別の実施形態においては、殻は場合によっては生分解性である。幾つかの実施形態においては、殻は、少なくとも第1の内部管腔を有するように形成される。ある実施形態においては、第1の内部管腔をデバイスの遠位端又はその近くに配置する。別の実施形態においては、管腔は、外殻の全長にわたることができる。幾つかの実施形態においては、管腔は細分されている。ある実施形態においては、第1の内部管腔をデバイスの近位端又はその近くに配置する。さらに分路としても機能する実施形態においては、殻は、分路として機能するデバイスの部分内に1個以上の追加の管腔を有することができる。
幾つかの実施形態においては、薬物(単数又は複数)を移植片殻の内部管腔(単数又は複数)内に配置する。幾つかの実施形態においては、薬物を管腔のより遠位部内に優先的に配置する。幾つかの実施形態においては、移植片管腔(単数又は複数)の最遠位15mmに、放出される薬物(単数又は複数)を収容する。幾つかの実施形態においては、内部管腔(単数又は複数)の1、2、3、4、5、6、7、8及び9mmを含めた最遠位10mmに、放出される薬物を収容する。幾つかの実施形態においては、薬物を管腔のより近位部内に優先的に配置する。
幾つかの実施形態においては、薬物は、殻を通り眼内環境に拡散する。幾つかの実施形態においては、外殻材料は、内部管腔内に配置された薬物(単数又は複数)に対して透過性又は半透過性であり、したがって、薬物の全溶出の少なくともある部分は、透過性の増大した、厚さの薄い、オリフィスなどの任意の領域を通して起こる上に、殻自体を通しても起こる。幾つかの実施形態においては、薬物の溶出の約1%から約50%は、殻自体を通して起こる。幾つかの実施形態においては、薬物の溶出の約10%から約40%、又は約20%から約30%は、殻自体を通して起こる。幾つかの実施形態においては、薬物の溶出の約5%から約15%、約10%から約25%、約15%から約30%、約20%から約35%、約25%から約40%、約30%から約45%、又は約35%から約50%は、殻自体を通して起こる。ある実施形態においては、薬物(単数又は複数)の全溶出の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13及び14%を含めて、約1%から15%は、殻を通して起こる。「透過性」という用語及び関連用語(例えば「不透過性」又は「半透過性」)は、本明細書では、1種類以上の薬物又は治療薬及び/又は眼液に対してある程度透過性がある(又は透過性がない)材料を指すのに使用する。「不透過性」という用語は、材料を通した薬物の溶出も透過もないことを必ずしも意味せず、その代わりにかかる溶出又は他の透過が、無視し得る、又はごくわずかであり、例えば総量の約2%未満及び約1%未満を含めて、約3%未満である。
幾つかの実施形態においては、移植片殻は、薬物が標的眼組織に制御様式で放出される、薬物透過性の増大した1つ以上の領域を有する。
幾つかの実施形態においては、薬物(単数又は複数)を移植片の内部管腔(単数又は複数)内に配置する。移植片殻は、眼液が薬剤(単数又は複数)と接触して薬物放出を招くように1個以上のオリフィスを含む。幾つかの実施形態においては、移植片は、ポリマー被膜を殻の外面に含む。別の実施形態においては、移植片は、ポリマー被膜を殻の内面に含む。更に別の実施形態においては、ポリマー被膜は、内面と外面の両方にある。更に別の実施形態においては、ポリマー被膜は生分解性である。幾つかの実施形態は、ポリマー被膜の代わりに、又はそれに加えて、非ポリマー被膜(例えば、ヘパリン)を含む。さらに、幾つかの実施形態においては、1個以上のオリフィス、1個以上のオリフィスを覆う単層又は複層、及び厚さの薄い区域の組合せを使用して、移植片からの薬物放出速度を調整する。
幾つかの実施形態においては、薬物(単数又は複数)を含む内部管腔は、眼の前部への薬物の溶出を防止する内部管腔内の近位障害物によって、移植片の近位部から分離される。幾つかの実施形態においては、薬物(単数又は複数)を含む内部管腔(単数又は複数)は、内部管腔内の一方弁によって移植片の近位部から分離される。一方弁は、眼の前部への薬物の溶出を防止するが、眼の前部からの眼液を薬物(単数又は複数)を含む内部管腔(単数又は複数)に到達できるようにする。
幾つかの実施形態においては、移植片は、さらに、同じ若しくは追加の治療薬、複数の薬物、又は1種類若しくは複数のアジュバント化合物を移植片に再装填/再充填するように構成された近位部を含む。
分路を含む幾つかの実施形態においては、分路部は、移植部位に移植後、液を眼房から生理的流出空間に排出して、眼内圧を低下させる。幾つかの実施形態においては、移植片は、移植片の近位端又は遠位端が、薬物送達の標的組織近くの移植部位にあるときには、移植片の流出口が眼液を遠隔領域及び/又は生理的流出経路に排出するような寸法である。
例えば、幾つかの実施形態においては、移植片は、移植後、移植片の遠位端が斑に十分近く、移植片によって送達される薬物が斑に達するような寸法である。分路機能が組み込まれた幾つかの実施形態においては、移植片は、移植片の遠位端が斑の十分近くに配置されるときには、移植片の近位端が前眼房中に延在するような寸法である。それらの実施形態においては、以下により詳細に記述する移植片の流出口は、眼房水がぶどう膜強膜路又は他の生理的流出経路に排出されるように配置される。
更に別の実施形態においては、複合薬物送達−分路移植片は、薬物送達と、第1の生理的部位から(生理的部位又は患者の外部とすることができる)第2の部位までの流体輸送とを同時に必要とする任意の生理的位置に配置することができる。幾つかの実施形態においては、分路機能は、薬物送達機能と一緒に作用して、送達される薬剤の治療効果を増強する。別の実施形態においては、送達される薬剤の治療効果は、流体蓄積又は膨潤などの望ましくない副作用を伴うことがある。幾つかの実施形態においては、分路機能は、送達される薬剤の副作用を軽減する。本明細書に開示した移植片の寸法及び特徴は、生理的流出経路との連通を維持しながら、眼の様々な領域に標的及び/又は制御送達するように調整できることを理解されたい。
例えば、幾つかの実施形態においては、移植片は、移植後、移植片の遠位端が脈絡膜上腔に位置し、移植片の近位端が前眼房に位置するような寸法である。幾つかの実施形態においては、移植片から溶出した薬物は、移植片の近位端から前房に溶出する。分路機能が組み込まれた幾つかの実施形態においては、移植片の1個以上の流出口は、眼房水がぶどう膜強膜路中に流出するように配置される。幾つかの実施形態においては、眼房水は前房から脈絡膜上腔に流出する。
以下により詳細に記述する送達器具を使用して、眼の所望の位置への薬物送達移植片の送達及び/又は移植を容易にすることができる。送達器具は、連続的な移植力を加えることによって、送達器具の遠位部を用いて所定の位置まで移植片を軽くたたくことによって、又はこれらの方法の組合せによって、虹彩の下方部分、斑近くの脈絡膜上腔、前房から脈絡膜上腔までの位置若しくは他の眼内領域などの所望の位置に移植片を配置するのに使用することができる。送達器具の設計には、例えば、切り込みに対する移植角度及び移植片の位置を考慮することができる。例えば、幾つかの実施形態においては、送達器具は、一定の形状を有することができ、形状を調節することができ、又は駆動させることができる。幾つかの実施形態においては、送達器具は、例えば、色素及び/又は粘弾性流体の注入、切開若しくはガイドワイヤとしての使用などの付属又は補助機能を有することができる。本明細書では「切り込み」という用語は、その通常の意味を有するものとし、切り口、開口部、スリット、切欠き、刺し穴なども指し得る。
ある実施形態においては、薬物送達移植片は、生侵食性(bioerodible)ポリマー又は生侵食性ポリマー及び少なくとも1つの追加の薬剤と混合してもしなくてもよい1つ以上の薬物を含むことができる。更に別の実施形態においては、薬物送達移植片を使用して、複数の薬物を順次送達する。さらに、ある実施形態は、個別の仕様に合わせた薬物溶出プロファイルを形成するように、異なる外殻材料及び/又は透過性の異なる材料を用いて構築される。ある実施形態は、個別の仕様に合わせた薬物溶出プロファイルを形成するように、移植片殻のオリフィスの数、寸法及び/又は位置を変えて構築される。ある実施形態は、個別の仕様に合わせた薬物溶出プロファイルを形成するように、移植片上のポリマー被膜及び被膜位置を変えて構築される。幾つかの実施形態は、一定速度で薬物を溶出し、別の実施形態は、ゼロ次放出プロファイルを形成する。更に別の実施形態は、多様な溶出プロファイルを形成する。更に別の実施形態は、溶出を所定の期間完全に又はほぼ完全に停止し(例えば、「休薬期間」)、その後同じ又は異なる溶出速度又は溶出濃度で溶出を再開するように設計される。幾つかのかかる実施形態は、休薬期間の前後で同じ治療薬を溶出し、別の実施形態は、休薬期間の前後で異なる治療薬を溶出する。
<薬物送達移植片>
本開示は、移植部位に移植後、1つ以上の薬物を眼内の所望の標的領域に制御放出し、制御放出が長期間にわたる、眼の薬物送達移植片に関する。移植片の様々な実施形態を図2〜20に示し、本明細書において言及する。
図2は、本明細書に係る移植片の一実施形態の模式的断面図である。移植片は、1種類以上の生体適合性材料でできた外殻54を含む。移植片の外殻は、押し出し、絞り成形、射出成形、焼結、微細加工、レーザー加工及び/又は放電加工、或いはその任意の組合せによって製造される。当該技術分野で公知の他の適切な製造及び組立て方法を使用することもできる。幾つかの実施形態においては、外殻は、管状であり、少なくとも1個の内部管腔58を含む。幾つかの実施形態においては、内部管腔は、外殻と仕切り64によって画定される。幾つかの実施形態においては、仕切りは不透過性であり、別の実施形態においては、仕切りは透過性又は半透過性である。幾つかの実施形態においては、仕切りによって、移植片に新たな用量の薬物(単数又は複数)を再装填することができる。幾つかの別の実施形態においては、やはり少なくとも1個の内部管腔を形成する別の殻形状を使用する。幾つかの実施形態においては、移植片の外殻54は、移植片が遠位部50と近位部52を有するように製造される。幾つかの実施形態においては、外殻54の厚さはほぼ均一である。別の実施形態においては、厚さは、殻の特定の領域で異なる。眼内の所望の移植部位に応じて、移植片の構造的完全性を維持するのに必要な場所に外殻54のより厚い領域を位置する。
幾つかの実施形態においては、移植片は柔軟な材料でできている。別の実施形態においては、移植片の一部は柔軟な材料でできており、移植片の別の部分は硬質材料でできている。幾つかの実施形態においては、移植片は、1個以上の湾曲部(例えば、ヒンジ)を含む。幾つかの実施形態においては、薬物送達移植片は、あらかじめ曲げられているが、送達デバイスの直線の管腔に入れるのに十分柔軟である。
別の実施形態においては、移植片の少なくとも一部(例えば、内部突起又は固定具)は、形状記憶可能な材料でできている。形状記憶可能な材料は、圧縮することができ、放出時に軸方向、半径方向又は軸方向と半径方向の両方に広がり、特定の形状をとることができる。幾つかの実施形態においては、移植片の少なくとも一部は、前もって形成された形状を有する。別の実施形態においては、移植片の少なくとも一部は、超弾性材料でできている。幾つかの実施形態においては、移植片の少なくとも一部はニチノールでできている。別の実施形態においては、移植片の少なくとも一部は、変形可能な材料でできている。
幾つかの実施形態においては、移植片の外殻の表面の大部分は、眼液に対して実質的に不透過性である。幾つかの実施形態においては、移植片の外殻の表面の大部分は、移植片の内部管腔内に収容された薬物62に対しても実質的に不透過性である(以下で考察する)。別の実施形態においては、外殻は、薬物及び/又は眼液に対して半透過性であり、移植片の特定の領域は、外殻内又は外殻上に配置された被膜、層又は不透過性(又は低透過性)材料によって、透過性が低く又は高くなっている。
幾つかの実施形態においては、外殻は、1つ以上の薬物放出領域56も有する。幾つかの実施形態においては、薬物放出領域は、外殻の隣接及び周囲の厚さよりも厚さが薄い。幾つかの実施形態においては、厚さの薄い領域は、アブレーション、延伸、エッチング、研磨、モールディング、及び外殻から材料を除去する他の類似技術のうちの1つ以上によって形成される。別の実施形態においては、薬物放出領域は、周囲の外殻とは厚さが異なるが(例えば、薄い実施形態もあれば、厚い実施形態もある)、薬物62と眼液の一方又は両方に対する透過性を高くして形成される。更に別の実施形態においては、外殻は、厚さが均一又はほぼ均一であるが、管腔内の眼液及び薬物に対する透過性が異なる材料を用いて構築される。したがって、これらの実施形態は、移植片からの明確な薬物放出領域を有する。
薬物放出領域は、眼の特定の標的組織に薬物を十分送達するのに必要な任意の形状とすることができる。例えば、図2においては、領域56は、より薄い材料の明確な区域として示されている。図3Aは、別の実施形態において使用される薬物放出領域、すなわち厚さの薄いらせん形状56を示す。幾つかの実施形態においては、らせんは、実質的に移植片の遠位端に位置し、別の実施形態においては、らせんは内部管腔の長さとすることができる。更に別の実施形態においては、薬物放出のらせん領域は、移植片の近位部上に位置する。幾つかの実施形態においては、らせんは移植片殻の内面にある(すなわち、殻にらせん状の溝が切られている;図3A参照)。別の実施形態においては、らせんは殻の外面にある(図3B参照)。別の実施形態においては、薬物放出領域は、移植片殻周囲の外周帯として形成されている。
図4は、薬物放出領域が移植片の最遠位部に位置する別の一実施形態を示す。ある種のかかる実施形態は、眼のより後方領域を治療するときに使用される。その代わり、又は図4の実施形態と併せて、移植片の近位部が最近位部又はその近くに薬物放出領域を有することもできる。別の実施形態においては、薬物放出領域は、移植片の遠位及び/又は近位部に沿って均一に又はほぼ均一に分布する。幾つかの実施形態においては、薬物放出領域は移植片の遠位端又はその近くに位置し、別の実施形態においては、移植片の近位端又はその近くに位置する(又は更に別の実施形態においては、近位端と遠位端の両方又はその近くに位置する)。ある実施形態においては、(薬物放出領域に基づく(厚さ/透過性、オリフィス、層などに基づく)移植片は、移植後に治療する標的組織に応じて、移植片からの薬物溶出の異なるパターンが得られるように戦略的に配置される。幾つかの実施形態においては、薬物放出領域は、薬物を移植片の遠位端から優先的に溶出させるように構成される。幾つかのかかる実施形態においては、薬物放出領域は、移植手順完了後に眼のより後方領域の標的組織又はその近くに戦略的に位置する。幾つかの実施形態においては、薬物放出領域は、薬物を移植片の近位端から優先的に溶出させるように構成される。幾つかのかかる実施形態においては、薬物放出領域は、移植手順完了後に前眼房の標的組織又はその近くに戦略的に位置する。以下でより詳細に考察するように、幾つかの実施形態においては、薬物放出領域は、移植片の内部管腔と移植片が移植された環境の間の連通を可能にする1個(又は複数)のオリフィスを含む。ある実施形態においては、薬物放出プロファイルを調整するために、(上述した)薬物放出領域の組合せを1個以上のオリフィス及び/又は被膜(下記)と組み合わせることができることも本開示から理解すべきである。同様に、図2〜4に示した上記実施形態は、以下の段落[0221]〜[0227]においてより詳細に記述するように、対象の涙点に移植するように改作することができる。
幾つかの実施形態における移植片は、移植片の遠位端に位置する遠位部を含む。幾つかの実施形態においては、遠位部は、眼の強膜岬近くの眼組織に穿孔するのに十分鋭利である。遠位部は、眼の強膜組織を実質的に穿通しないように、十分に丸くすることができる。幾つかの実施形態においては、移植片は、一般に、切り込み、穴又は開口部を前もって形成せずに組織を通過するように、前端が鋭利であり、自己穿孔性、すなわち自己穿通性である。鋭利な前端は、例えば、円錐形又は先細とすることができる。鋭利な端部のテーパー角は、例えば、幾つかの実施形態においては約30度±15度である。幾つかの実施形態においては、遠位端先端の半径は約70μmから約200μmである。更に本明細書で考察する分路を含む実施形態においては、出口開口部は分路の遠位端に形成され、遠位部は、断面サイズが近位方向に、好ましくは概略一定の逓減率若しくは半径で又は放物線状に、徐々に増加する。
幾つかの実施形態においては、移植片の本体は、少なくとも1個の不規則表面を含む。不規則表面は、例えば、隆起部、溝、高低、穴又は環状溝を含むことができる。不連続又は不規則表面は、移植片外面から延在して移植片がその移植位置から移動するのを阻止することができる、逆とげ又は別の突起部を含むこともできる。幾つかの実施形態においては、突起部は、移植片の変位を阻止する外部骨組みを含む。幾つかの実施形態における不規則表面は、強膜の内壁の組織と、及び/又は毛様体付着組織の組織と相互作用する。幾つかの実施形態においては、移植片は、組織と不規則表面の間の機械的インターロックによって、及び/又は摩擦ばめによって、固定される。幾つかの実施形態においては、本明細書でより詳細に考察するように、不規則表面は、実施形態によっては薬物溶出効率を低下させ得る移植片中又は移植片上への宿主組織の成長(例えば、線維成長)を防止する機能を果たす。
幾つかの実施形態においては、移植片は、柔軟な放射状(すなわち、外向きに広がる)延長部などの固定化機能を内蔵する。延長部は、移植片に装着された別個の小片とすることができ、移植片と一体的に形成することができ、又は移植片壁を細長く切り、延長部を半径方向外向きに熱的に形成若しくは機械的に変形することによって形成することができる。延長部が別個の小片である場合、それらはニチノール又はポリイミドなどの柔軟な材料で構成することができる。延長部は、移植片の近位若しくは遠位端又はその両方に位置して、移植片がその意図された場所から押し出されるのを防止することができる。幾つかの実施形態においては、延長部は、移植片に沿って長軸方向に配置される。延長部間の間隔は規則的でも不規則でもよい。固定化機能が柔軟であることで、角膜の切り込みを通した、さらに毛様体筋付着組織を通した進入が容易になる。
幾つかの実施形態においては、移植片は、一方又は両方の端部にキャップ又は先端部を有する。遠位端キャップは、組織穿孔端部を含むことができる。幾つかの実施形態においては、キャップは、円錐形状の先端部を有する。別の実施形態においては、キャップは、テーパー角度の先端部を有することができる。先端部は、眼の強膜岬近くの眼組織に穿孔するのに十分鋭利なものとすることができる。先端部は、眼の強膜組織を実質的に穿通しないように、十分に丸くすることもできる。幾つかの実施形態においては、円錐形状の先端部は、分路を所望の位置に送るのを容易にする。分路を含む実施形態においては、遠位端キャップは、流体を流す1個以上の出口開口部を有する。1個以上の出口開口部の各々は、1個以上の管腔の少なくとも1個と連通することができる。
幾つかの実施形態においては、移植片は、近位端キャップを有する。例えば、(本明細書で図18K及び18Mを参照してより詳細に考察する)薬物放出領域を有するOリングキャップを移植片の近位端に配置して、前眼房への薬物溶出を可能にすることができる。別の実施形態においては、(本明細書で図18L及び18Nを参照してより詳細に考察する)薬物放出領域を含む圧着キャップを移植片の近位端に配置する。圧着キャップの領域は、キャップが移植片本体上に確実に置かれ、密封され得るように、圧縮性とすることができる。幾つかの実施形態においては、キャップは、キャップ材料の厚さ及び/又は透過性に基づいて、薬物放出領域の代わりに、又は薬物放出領域に加えて、1個以上のオリフィス又は層を含む。幾つかの実施形態においては、被膜がキャップ内に配置されて、オリフィスをその中に包む。被膜は、半透過性ポリマーの膜又は層を含むことができる。幾つかの実施形態においては、被膜は、明確な厚さを有し、したがって種々の薬物及び眼液に対して明確な既知の透過性を有する。幾つかの実施形態においては、被膜は、キャップの外側、オリフィス内、又はその組合せを含めて、別の位置に配置される。幾つかの実施形態においては、上記実施形態は、以下の段落[0221]〜[0227]においてより詳細に記述するように、移植片を対象の涙点に移植するように改作される。
幾つかの実施形態においては、移植片は、移植中に移植片が23ゲージ針内に取り付けられる外径を有する。移植片は、より大きい針を用いて挿入するように設計された直径を有することもできる。例えば、移植片は、18、19又は20ゲージ針を用いて送達することもできる。別の実施形態においては、23ゲージ以下などのより小さいゲージのアプリケータを使用する。幾つかの実施形態においては、移植片は、その長さの大部分を通してほぼ一定の断面形状を有する。あるいは、移植片は、その長さに沿って断面サイズ(例えば、直径)が減少又は増大する部分を有することができる。幾つかの実施形態においては、移植片(implace)の遠位端は、先細部、又は軸の長さに沿った管腔軸に対して半径方向寸法が連続して減少する部分を有する。先細部は、好ましくは、幾つかの実施形態においては、遠位端においてより小さい半径方向寸法で終結する。移植中、先細部は、組織中に形成された切り込み又は刺し穴を型作り、拡張、及び/又はそのサイズを増大させるように操作することができる。先細部の直径は約30ゲージから約23ゲージ、好ましくは約25ゲージとすることができる。
幾つかの実施形態においては、管腔は、移植片の近位部と遠位部の両方に存在する(図5参照;それぞれ58a及び58)。かかる実施形態においては、移植片の近位部52と遠位部50の両方は、1つ以上の薬物放出領域を有する。幾つかのかかる実施形態においては、移植片の近位部と遠位部は、2つの薬物62a(近位)及び62(遠位)を管腔中に収容している。図5を参照されたい。別の実施形態においては、移植片の近位部と遠位部は、同じ薬物、又は異なる濃度の同じ薬物、又は別の賦形剤と組み合わせた同じ薬物を収容することができる。薬物放出領域の配置は、移植片の近位部内、遠位部内又は両方の部内であろうとなかろうと、ある眼内組織を特異的に標的にするのに有用であることを理解されたい。例えば、薬物放出領域を移植片の最遠位部に配置すると、幾つかの実施形態においては、薬物放出を特異的に斑などの特定の眼内領域に向けるのに有用である。別の実施形態においては、薬物放出領域は、毛様体、網膜、眼の脈管構造、上で考察した又は当該技術分野で公知の眼球標的のいずれかなどの別の標的組織に薬物を特異的に放出するように配置される。幾つかの実施形態においては、薬物放出領域を特異的に配置して組織を特異的標的にすると、治療効果を得るのに必要な薬物量が減少する。幾つかの実施形態においては、薬物放出領域を特異的に配置して組織を特異的標的にすると、溶出薬物の非特異的副作用が減少する。幾つかの実施形態においては、薬物放出領域を特異的に配置して組織を特異的標的にすると、移植片からの総薬物送達可能期間が増加する。
薬物放出領域は、移植片の外殻上のその形状及び位置(単数又は複数)にかかわらず、明確な既知の区域である。明確な区域は、移植片からの薬物溶出速度を計算する助けになる(後述)。薬物放出領域は、幾つかの実施形態においては、ある明確な区域における外殻の厚さを削減することによって、及び/又は外殻の特定の領域の透過性を制御することによって、形成される。図6A〜Iは、薬物放出領域の特定の実施形態を示す。図6A及びBは、外殻材料の厚い部分54と薄い部分54aの重複領域を示す。その結果、材料の効果的に薄い領域、すなわち薬物放出領域56が形成される。図6C及び6Dは、外殻材料の厚い部分54と薄い部分54aの接合を示す。生成した材料の薄い領域が薬物放出領域56である。厚い領域と薄い領域の連結は、例えば、突き合わせ溶接、粘着又は生体適合性接着剤を用いた接着、厚さの変わる単一ユニットとして殻を鋳込成形すること、熱溶接、熱融合、圧縮融合、又は熱と圧力の組合せによる領域の融合によって成し得ることを理解されたい。当該技術分野で公知の他の適切な連結方法を使用することもできる。
図6Eは、薄い殻材料と少なくとも部分的に重複した外殻材料の厚いスリーブを示す。薄い非重複区域56が薬物放出領域である。材料の重複度は、非重複殻の領域が、所望の溶出プロファイルのために望ましい面積であるように制御可能であることを理解されたい。
図6Fは、アブレーション、延伸、エッチング、研磨、モールディング、及び材料を外殻から除去する他の類似技術のうち1つ以上によって形成される薄い区域56を有する外殻材料を示す。
図6Gは、第1の厚さのチューブ54が、第2の厚さの第2のチューブ54aに入れられている「チューブ内チューブ」設計を示す。第1のチューブは、殻に1個以上の切れ目又は間隙を有し、覆う薄い殻54aは、切れ目又は間隙を覆い、それによって薬物放出領域を形成する。図6Gに示した実施形態においては、また、ある別の実施形態においては、第1の厚さを有する殻54の切れ目又は間隙は、外部環境と直接連通していない。
図6Hは、薬物放出領域が、外殻54と、連通粒子状物質57が不透過性マトリックス中に分散した実質的に不透過性のマトリックス材料55の両方に接した一実施形態を示す。幾つかの実施形態においては、移植片製造中に連通粒子状物質を不透過性マトリックス材料と混合する。次いで、移植片を溶媒と接触させることができる。続いて、溶媒は、連通粒子状物質を介して運ばれ、移植片の管腔内に収容された薬物に達する。好ましい溶媒としては、水、食塩水、又は眼液、又は不透過性マトリックスの構造若しくは透過特性に影響を及ぼさないと考えられる生体適合性溶媒が挙げられる。
管腔中の薬物が溶媒に溶解すると、薬物は、連通粒子状物質を通り移植片の管腔から眼球標的組織に移動する。幾つかの実施形態においては、移植片を眼に移植前に溶媒に接触させて、薬物が移植中又は移植後すぐに即時放出されやすいようにする。別の実施形態においては、移植片を眼液のみに接触させ、その結果、眼液が連通粒子状物質を通り移植片の管腔に移動する間、移植片からの薬物放出がない短い期間が存在する。
幾つかのかかる実施形態においては、連通粒子状物質は、ヒドロゲル粒子、例えば、ポリアクリルアミド、架橋ポリマー、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA:hydroxyethylmethacrylate)、 ポリエチレンオキシド、ポリAMPS及びポリビニルピロリドン、又はアガロース、メチルセルロース、ヒアルロナンなどの天然由来のヒドロゲルを含む。当該技術分野で公知の別のヒドロゲルを使用することもできる。幾つかの実施形態においては、不透過性材料はシリコーンである。別の実施形態においては、不透過性材料は、テフロン(登録商標)、柔軟なグラファイト、シリコーンゴム、ガラス繊維強化シリコーンゴム、ネオプレン(登録商標)、ガラス繊維、布入りゴム、ビニル、ニトリル、ブチル、天然ゴム、ウレタン、炭素繊維、フルオロエラストマー、及び又は当該技術分野で公知の他のこうした不透過性若しくは実質的に不透過性の材料とすることができる。本実施形態及び本明細書に開示した別の実施形態においては、「実質的に不透過性」又は「不透過性」のような用語は、目的薬物に対する材料の相対的不透過性に関すると解釈すべきである。これは、特定の薬物に対する材料の透過性が、材料の特性(例えば、結晶化度、親水性、疎水性、含水量、空隙率)、さらに薬物の特性に依存するからである。
図6Iは、薬物放出領域が、外殻54と、連通粒子状物質57が不透過性マトリックス中に分散したシリコーンなどの不透過性マトリックス材料55の両方に接した別の一実施形態を示す。別の実施形態においては、不透過性材料は、テフロン(登録商標)、柔軟なグラファイト、ポリジメチルシロキサン及び別のシリコーンエラストマー、ネオプレン(登録商標)、ガラス繊維、布入りゴム、ビニル、ニトリル、ブチル、天然ゴム、ウレタン、炭素繊維、フルオロエラストマー、及び/又は当該技術分野で公知の他のこうした不透過性若しくは実質的に不透過性の材料とすることができる。幾つかの実施形態においては、移植片製造中に連通粒子状物質を不透過性マトリックス材料と混合する。得られるマトリックスは、連通粒子状物質を溶解させる溶媒に入れられるまでは不透過性である。幾つかの実施形態においては、連通粒子は、塩結晶(例えば、炭酸水素ナトリウム結晶又は塩化ナトリウム結晶)である。別の実施形態においては、別の可溶性及び生体適合性材料を連通粒子状物質として使用することができる。好ましい連通粒子状物質は、水、食塩水、眼液、又は不透過性マトリックスの構造若しくは透過特性に影響を及ぼさないと考えられる他の生体適合性溶媒などの溶媒に可溶である。ある実施形態においては、連通粒子状物質と混合された不透過性マトリックス材料は、移植片の外殻を形成するのに十分な構造的完全性を有する(すなわち、追加の殻材料が必要ない)ことを理解されたい。
ある実施形態においては、移植前に連通粒子を溶媒で抽出する。したがって、連通粒子を抽出すると、連通路が不透過性材料内に形成される。不透過性材料中の細孔(又は他の通路)によって、眼液が粒子に入り、粒子は移植片の管腔に液を送ることができる。同様に、粒子は、薬物を移植片の管腔から標的眼組織に送る。
図6H及び6Iに示したような実施形態は、(以下により詳細に記述する)伝統的な細孔又はオリフィスとは対照的に、連通粒子を介して、又は粒子の溶解後に得られる不透過性マトリックス中の空間を介して、薬物を移植片の管腔から眼組織に送る。したがって、これらの実施形態は、移植片の管腔から眼までの間接通路(すなわち、通路の迂回路又は蛇行路)を形成する。したがって、粒子材料、粒子材料が流体を送る速度、又は粒子材料が溶媒に溶解する速度を意図的に設計することによって、薬物放出の速度及び動力学を更に制御することができる。幾つかの実施形態においては、薬物放出領域は、以下の段落[0221]〜[0227]においてより詳細に記述するように、対象の涙点に移植するように改作された移植片上で使用される。例えば、緑内障治療用に構成された幾つかの移植片実施形態においては、涙点移植片は、移植片の近位端ではなく近位部に沿って配置された薬物放出領域を有する。これは、有利なことに、移植片から治療薬を放出させるが、涙の排出によって薬物が下方の鼻涙管に洗い流されるのを防止する。図7〜9も参照されたい。
幾つかの実施形態においては、薬物放出領域は、1個以上のオリフィスを含む。ある実施形態は、予見される療法に適切な制御及び標的薬物放出プロファイルを得るために、オリフィスではない薬物放出領域を単独で、又は1個以上のオリフィスと組み合わせて利用することを理解されたい。図7は、本明細書に係る移植片の一実施形態の模式的断面図である。上述したように、移植片は、遠位部50、近位部52、1種類以上の生体適合性材料でできた外殻54、及び殻を通過する1個以上のオリフィス56aを含む。幾つかの実施形態においては、移植片の外殻は、眼液に対して実質的に不透過性である。幾つかの実施形態においては、移植片は、移植片の内部管腔58内に薬物62を収容する。
以下でより詳細に考察するように、幾つかの実施形態においては、薬物は、特定の眼の病態に対して治療上有効な薬物、及び薬物が適合する形態の治療薬を調製するのに必要な任意の追加の化合物を含む。幾つかの実施形態においては、治療薬は、薬物含有ペレットの形態である。治療薬の幾つかの実施形態は、ポリマー製剤と混合された薬物を含む。ある実施形態においては、ポリマー製剤は、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、すなわちPLGAコポリマー、又は他の生分解性若しくは生侵食性ポリマーを含む。薬物は、図7においては管腔58内に配置されて示されているが、実施形態の別の特徴を明確にするために幾つかの別の図では省略されている。しかしながら、本明細書のすべての実施形態は、場合によっては、1つ以上の薬物を含むことを理解すべきである。
幾つかの実施形態においては、移植片は、さらに、以下に示すように移植片の中又は上の様々な場所に配置することができる被膜60を含む。幾つかの実施形態においては、被膜60はポリマー被膜である。図8は、被膜60が移植片の内側に配置されているが、管腔内に収容された治療薬を包んでいる移植片を示している。一方、図9は、殻54の外面の被膜60を示している。幾つかの別の実施形態は、ポリマー被膜の代わりに、又はそれに加えて、非ポリマー被膜を有する移植片を含むことができる。被膜は、場合によっては、生分解性である。幾つかの別の実施形態は、全体が生分解性材料でできた移植片を含むことができ、移植片全体が次第に分解する。幾つかの実施形態においては、被膜は移植片全体の上に配置され(例えば、移植片を包む)、別の実施形態においては、移植片の一部のみが覆われる。幾つかの実施形態においては、被膜は、移植片の外面にある。幾つかの実施形態においては、被膜は、移植片内の管腔壁上に配置される。同様に、被膜が移植片の内側に配置される幾つかの実施形態においては、被膜は管腔の内面全体を覆い、別の実施形態においては、内面の一部のみが覆われる。本明細書に開示した幾つかの実施形態による移植片は、薬物放出特性を制御するために、上記薬物放出領域に加えて、薬物放出領域を1つ以上の被膜と組み合わせることを理解されたい。
幾つかの実施形態においては、外殻54の厚さを横切る1個以上のオリフィス56aが、移植片の外側の環境と移植片の内部管腔58の間の連通路となる(図7〜9)。1個以上のオリフィスは、個々の移植片の様々な殻に穴を開けることによって、又は当該技術分野で公知の任意の他の技術によって、移植片殻を貫いて形成される。オリフィスは、球状、立方体、楕円体などの任意の形状とすることができる。所与の移植片に形成されるオリフィスの数、位置、サイズ及び形状によって、オリフィスと移植片表面積の比が決まる。この比は、以下に示すように、移植片の特定の実施形態によって送達される薬物の所望の放出プロファイルに応じて変わり得る。幾つかの実施形態においては、オリフィスと移植片の表面積比は、約1:100よりも大きい。幾つかの実施形態においては、オリフィスと移植片の表面積比は、約1:10から約1:50、約1:30から約1:90、約1:20から約1:70、約1:30から約1:60、約1:40から約1:50の範囲である。幾つかの実施形態においては、オリフィスと移植片の表面積比は、約1:70、1:80及び1:90を含めて、約1:60から約1:100の範囲である。
別の実施形態においては、図10A及び10Bに示したように、外殻は、移植片の遠位先端部に1個以上のオリフィス56bを含むことができる。別の実施形態においては、外殻は、例えば、薬物溶出及び/又は流体流入など、移植片の近位先端部に1個以上のオリフィスを含む(例えば、移植片内に収容された薬物の溶解用、及び/又は流体流出経路への液の分路用)。オリフィス(単数又は複数)の形状及びサイズは、所望の溶出プロファイルに基づいて選択することができる。更に別の実施形態は、遠位オリフィスと外殻のより近位に配置された複数のオリフィスとの組合せを含む。更に別の実施形態は、外殻の遠位オリフィス、近位オリフィス及び/又は上記薬物放出領域(及び場合によっては1つ以上の被膜)の組合せを含む。更に別の実施形態は、閉じた遠位端を有する。かかる実施形態においては、(殻の厚さ/透過性、オリフィス、被膜、薬物の配置などに基づく)薬物放出領域が移植片の長軸に沿って配列する。かかる構成は、本明細書に開示した移植手順の幾つかの実施形態において生じる前進遠位端に起因する組織損傷の量を削減するのに有利である。
幾つかの実施形態においては、遠位オリフィスは、挿入/移植中に1個以上のオリフィスが組織で塞がれた場合に移植片からの薬物溶出を維持する複数のオリフィス56bを有する生分解性又は生侵食性栓61を含む。別の実施形態においては、オリフィス(単数又は複数)は、透過性又は半透過性膜、多孔質フィルム又はシートなどを含むことができる。幾つかのかかる実施形態においては、透過性又は半透過性膜、フィルム又はシートは、殻の外側にあってオリフィスを覆っても、殻の内側にあってオリフィスを覆っても、又はその両方であってもよい。材料の透過性によって、移植片からの薬物放出速度がある程度決まる。これについては、以下により詳細に記述する。かかる膜、シート又はフィルムは、外殻のオリフィスが細長い実施形態に有用である。図10Bの矢印は、移植片からの薬物の流れを示す。
幾つかの実施形態においては、管腔内部の追加構造(単数又は複数)によって、移植片からの薬物の溶出がある程度制御される。幾つかの実施形態においては、近位障害物64aが薬物62の近くに配置される(図7及び10C)。移植片の近位領域52にある近位流入管腔68と連通した流出開口部66を含む任意選択の分路機能を含むこともできる。単層又は複層の透過性又は半透過性材料を使用して上で考察した薬物を包むことができる上に、図10Cは、ある実施形態において薬物62と種々のオリフィス56a及び56bの間にある内部栓210を示す。かかる実施形態においては、内部栓は、薬物を完全に取り囲む必要がない。幾つかの実施形態においては、内部栓210の材料は殻54とは異なり、幾つかの実施形態においては、内部栓210の材料は殻54と同じ材料である。内部栓に適した材料としては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチル若しくはHEMA(メタクリル酸ヒドロキシエチル)などのアガロース又はヒドロゲルが挙げられるが、それだけに限定されない。さらに、移植片の殻又は別の部分に使用される本明細書に開示した任意の材料が、ある実施形態においては内部栓に適切であり得る。
材料が同じである実施形態においては、210の構築に使用される材料の物理的特性は、場合によっては殻54と異なる。例えば、210の材料のサイズ、密度、空隙率又は透過性は、殻54と異なってもよい。幾つかの実施形態においては、例えば、分注した液体、粉体又はゲルを原位置で重合、モールディング又は凝固することによって、内部栓を適所に(すなわち、移植片の内部管腔内に)形成する。別の実施形態においては、内部栓は、殻の外部で前もって形成され、移植前に殻内に配置される。かかる実施形態においては、前もって形成される内部栓の選択を個々の薬物、患者、移植片、又は治療する疾患に基づいて最適化することができ、個別の仕様に合わせた移植片が構築される。幾つかの実施形態においては、内部栓は生分解性又は生侵食性であり、幾つかの別の実施形態においては、内部栓は耐久性がある(例えば、生分解性でも生侵食性でもない)。
幾つかの実施形態においては、内部栓は、殻の内壁に近接して取り付け、又は結合させることができる。かかる実施形態においては、内部栓は、好ましくは、薬物透過性があり、それによって薬物を栓を通し、オリフィスを通して標的組織に送ることができる。幾つかの実施形態においては、内部栓は、体液に対しても透過性があり、移植片の外側からの液が薬物に到達することができる。この場合のデバイスからの総薬物放出速度は、オリフィスの面積及び体積、任意の薬物放出領域の表面積、薬物とオリフィスの両方及び/又は薬物放出領域に対する内部栓のサイズ及び位置、並びに薬物及び体液に対する内部栓の透過性を含めて、ただしそれだけに限定されない移植片成分の幾つかの側面の物理的特性によって制御することができる。さらに、幾つかの実施形態においては、内部栓は、薬物とオリフィス及び/又は薬物放出領域の間の経路長を長くし、それによって薬物放出速度の追加の制御点になる。
幾つかの別の実施形態においては、内部栓210は、殻の内部管腔により緩く取り付けることができ、それによって薬物を栓の周りに流し、又は輸送することができる。図10Dを参照されたい。更に別の実施形態においては、内部栓は、2つ以上の小片又は小部分を含むことができる。図10Eを参照されたい。取付けがより緩い、又は細分化された栓を含むかかる実施形態においては、薬物は、内部栓と殻の内壁の間の間隙を通過することによって、移植片から溶出することができる。薬物は、内部栓の小片又は小部分の間の間隙を通過することによって移植片から溶出することもできる。薬物は、透過性の内部栓を通過することによって移植片から溶出することもできる。同様に、体液も、これら又は別の経路のいずれかによって移植片の外部から移植片に入り、薬物に到達することができる。薬物の溶出は、これらの通路又は透過経路のいずれかの組合せの結果として起こり得ることを理解されたい。
幾つかの実施形態においては、オリフィス56aは、移植片殻54の内部管腔58からの薬物62の放出の障害物となる1個以上の溶出膜100で(全体的又は部分的に)覆われる。図10Fを参照されたい。幾つかの実施形態においては、溶出膜は、治療薬、体液又はその両方に対して透過性がある。幾つかの実施形態においては、膜は弾性があり、シリコーンを含む。別の実施形態においては、膜は、生分解性又は生侵食性材料で全体的又は部分的に被覆されて、体液の流入又は移植片からの治療薬の放出の開始を制御することができる。ある実施形態においては、有益である追加の薬剤、例えば、抗線維化剤、血管拡張剤、抗血栓剤又は透過性制御剤を膜に含浸させる。さらに、ある実施形態においては、膜は、例えば、特異的透過性を発現することができる図10Gの1個以上の層100a、100b及び100cを含む。
上記内部栓及び薬物放出領域と同様に、溶出膜の特性によって、移植片からの治療薬の放出速度が少なくとも部分的に決まる。したがって、移植片からの総薬物放出速度は、オリフィスの面積及び体積、任意の薬物放出領域の表面積、薬物とオリフィスの両方及び/又は薬物放出領域に対する任意の内部栓のサイズ及び位置、並びに薬物及び体液に対する任意のオリフィスを覆う任意の層又は薬物放出領域の透過性を含めて、ただしそれだけに限定されない移植片の物理的特性によって制御することができる。
幾つかの実施形態においては、単一又は複数の薬物の複数のペレット62を、移植片の内部管腔内に端と端を接して配置する(図11A)。幾つかのかかる実施形態においては、オリフィス56a(又は薬物放出領域)を移植片殻のより遠位の場所に配置する。別のかかる実施形態においては、オリフィス56a(又は薬物放出領域)を、標的眼組織に応じて、移植片殻のより近位の場所に配置する。幾つかの別の実施形態においては、治療薬が同じ移植片内部管腔内に含まれるときには、仕切り64を使用して治療薬を別々に密封する。幾つかの実施形態においては、仕切り64は、特定の速度で生侵食される。幾つかの実施形態においては、薬物が望ましくない方向に溶出するのを防止するために、仕切り64を薬物ペレットに組み込み、移植片の殻54の内寸に対するシールを設ける。分路をさらに含むある実施形態においては、以下により詳細に記述する分路出口穴の遠位に仕切りを配置することができる。
ある別の実施形態においては、オリフィス又は薬物放出領域を、内部管腔を取り囲む外殻の一部又は実質的に全長に沿って配置することができ、送達する薬物を1個以上の仕切りで分離することができる。
薬物ペレット含有移植片の追加の非限定的な更に別の実施形態を図11B(断面)に示す。ある実施形態においては、ペレットは、以下により詳細に記述する特性を有する微小ペレット62’(例えば、ミクロ錠剤)である。幾つかの実施形態においては、かかる1個以上のかかる微小ペレットは、所望の厚さの壁を有するポリマーチューブ54’内に収容される。幾つかの実施形態においては、ポリマーチューブは押し出し成形され、場合によっては環状断面を有する。別の実施形態においては、別の形状(例えば、楕円形、矩形、八角形など)を形成する。幾つかの実施形態においては、ポリマーは、以下により詳細に考察するものなどの生分解性ポリマーである。材料又は形状にかかわらず、移植片の幾つかの実施形態は、対象の眼に移植するための寸法である(例えば、21ゲージ、23ゲージ、25ゲージ、27ゲージ、又はより小さい針を通過するサイズ)。
その状況内で、かかるデバイスの幾つかの実施形態の寸法は、微小ペレット中の治療薬に所望の放出時間を与えるために、変更することができる。例えば、ポリマーチューブの壁厚は、治療薬に対するポリマーチューブの透過性を変えるように調節することができる。さらに、生分解性ポリマーの場合には、壁厚は、デバイスの総分解速度を制御するために変えることもできる。本明細書により詳細に記述する他の変数、例えば、高分子化学及び使用ポリマーの分子量と組み合わせて、移植片からの治療薬の溶出を高度に制御することができる。
図11Bに全般的に示したように、微小ペレット62’は、末端部又は仕切り64’によって画定される区画内に収容することができる。幾つかの実施形態においては、各管腔又は区画を画定する末端部64’は、チューブ54’と同じ材料から熱成形される。別の実施形態においては、それらは、ポリマーフィラメントの断片で形成することができる。更に別の実施形態においては、末端部は、少量の熱硬化性ポリマー、接着剤、揮発性溶媒中のポリマー溶液などを注入又は塗布することによってチューブ内部に形成される。あるいは、末端部は、硬質ポリマー、金属又は別の材料から機械加工することができ、溶媒又は接着結合によってチューブ内に配置及び保持することができる。末端部がポリマーである実施形態においては、幾つかの実施形態は、微小ペレット治療薬の放出前、放出時、放出後に分解するように設計することができる生分解性ポリマーを採用する。さらに、ポリマー末端部は、押し出しポリマーチューブ54’と同じポリマーを含むことができ、又は異なるポリマーとすることができる。
図11Bでは治療薬62’の1個のミクロ錠剤を保持する寸法で示したが、幾つかの実施形態においては、管腔58は、同じ又は異なる治療薬を含む複数のミクロ錠剤を保持する寸法にすることができることを理解されたい。有利なことに、かかる実施形態は、押し出し殻を使用し、1個以上の微小ペレットによって、押し出しに必要であることが多い高温に治療薬を曝さずに、治療薬を移植片から制御された様式で放出することができる。さらに正確に言えば、殻をまず押し出し、次いで温度が常温に戻った後に微小ペレットを充填することができる。
本明細書でより詳細に考察するように、各錠剤は、場合によっては1種類以上の賦形剤と組み合わせた、治療薬(本明細書では、医薬品有効成分(API:active pharmaceutical ingredient)とも称する)を含む。賦形剤は、とりわけ、チューブ54’の壁を横切る浸透圧勾配を形成するために、自由に水に溶解する小分子(例えば、塩)を含むことができる。幾つかの実施形態においては、かかる勾配は、壁に対する応力を増加させ、薬物放出時間を短縮する。
本明細書に開示した移植片の幾つかの実施形態がその中に配置された生体内環境は、(眼房水、血しょうなどの)水系溶液又は(硝子体液などの)ゲルで構成することができる。周囲の生体内環境からの水は、幾つかの実施形態においては、半透過性又は穿孔したステント壁を通り薬物貯蔵部(例えば、実施形態に応じて、1個以上の内部管腔)中に拡散する。薬物含有内部管腔内に集まった水は、次いで、少量の錠剤又は薬物−賦形剤散剤を溶解させ始める。溶解プロセスは、生体内環境と浸透圧平衡にある管腔内に溶液が形成されるまで続く。
更に別の実施形態においては、糖類又は塩などの浸透圧剤を薬物に添加して、水の移入及び等張溶液の形成を容易にする。比較的不溶性の薬物、例えば、コルチコステロイドを用いて、ある実施形態においては、等張溶液を薬物に関して飽和させることができる。ある種のかかる実施形態においては、薬物供給がほぼ枯渇するまで、飽和を維持することができる。幾つかの実施形態においては、溶出速度は、フィックの法則に従って、本質的に一定である傾向があるので、飽和状態を維持することは特に有利である。
図11Bに全般的に示したものなどの移植片は、単独で(例えば、単一移植片)、場合によっては複数のデバイスとして移植することができる。幾つかの実施形態においては、複数の移植片を(例えば、端と端を接して)連結して、単一のより大きい移植片を形成することができる。上述したように、また、以下でより詳細に考察するように、例えば、押し出しチューブ54’の経時分解性を変えることによって、薬物放出時間の異なる移植片を作製することができる。異なる放出時間、所望の全薬物放出プロファイルを有する複数の多様なデバイスの移植は、複数の移植片から所与の期間連続(又は同時)薬物放出に基づいて得ることができる。例えば、放出時間は、第1の期間の薬物放出が起き、次いで第2の期間の薬物放出前の「休薬期間」が続くように設計することができる。
移植片の幾つかの実施形態は、薬物送達デバイスとしての機能に加えて、分路を含むこともできる。本明細書では「分路」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通例の意味を有し(特別な又は個別の意味に限定されるものではなく)、多くの場合望ましくない第1の場所から1つ以上の別の場所に流体を輸送するための1つ以上の流路を画定する移植片の部分を指すが、それだけに限定されない。幾つかの実施形態においては、分路は、一般に図12Aに示したように、眼房水を前眼房から流出経路に排出して眼内圧を低下させる流体流路になるように構成することができる。別の実施形態においては、分路は、眼房水を流出経路に排出する流体流路になるように構成することができる。更に別の実施形態は、眼液又は間質液を眼の区域及び眼の周囲の区域から遠隔位置に排出するように構成することができる。更に別の複合薬物送達−分路移植片は、生理液を第1の生理的部位から(生理的部位又は患者の外部とすることができる)第2の部位に排出するように構成することができる。更に別の実施形態においては、分路は、さらに(又はあるいは)、薬物の希釈及び/又は溶出を容易にするバルク流体環境を提供する機能を果たす。
移植片の分路部は、流入部68及び1個以上の流出部66を有することができる。上述したように、流出部は、移植片の近位端52又はその近くに配置することができる。図示してはいないが、幾つかの実施形態においては、分路流出部を移植片の遠位端又はその近くに配置することができ、流入部を移植片上の異なる場所(単数又は複数)に置くことができる。幾つかの実施形態においては、移植片を展開するときには、流入部を前眼房に存在するようなサイズ及び構成にすることができ、流出部を毛様体上腔又は脈絡膜上腔に存在するようなサイズ及び構成にすることができる。幾つかの実施形態においては、流出部を、ぶどう膜強膜路の毛様体上領域、脈絡膜上腔、眼の別の部分、又は流体付着しやすい別の生理的空間内に存在するようなサイズ及び構成にすることができる。
幾つかの実施形態においては、少なくとも1つの管腔は、移植片の分路部を通って延在する。幾つかの実施形態においては、移植片の分路部を通して流体を導くように働く少なくとも1個の管腔が存在する。ある実施形態においては、各管腔は、管腔軸に沿って流入端から流出端まで延在する。幾つかの実施形態においては、管腔は、実質的に分路の長軸方向中央を通って延在する。別の実施形態においては、管腔は、分路の長軸方向中央から外れていてもよい。
デバイスの近位部に更に分路を含む移植片においては、移植片の第1の(最も近位の)流出オリフィスを対象の前房から1〜10mmに配置する。デバイスの近位部に更に分路を含む幾つかの実施形態においては、移植片の第1の(最も近位の)流出オリフィスを好ましくは対象の前房から2〜5mmに配置する。追加の流出オリフィスは、より遠位の場所に、すなわち薬物又は治療薬を収容する内部管腔の始点まで、又はそれを越えて、配置することができる。
分路を含む幾つかの実施形態においては、分路流入部は、好ましくは、移植片の近位端又はその近くに配置され、分路流出部は、好ましくは、分路の遠位端又はその近くに配置される。移植されたときに、幾つかの実施形態においては、分路流入部は、前眼房に存在するようなサイズ及び構成であり、分路流出部は、ぶどう膜強膜路に存在するようなサイズ及び構成である。幾つかの実施形態においては、分路流出部は、ぶどう膜強膜路(iveoscleral outflow pathway)の毛様体上領域、又は脈絡膜上腔に存在するようなサイズ及び構成である。実施形態に応じて、複数の流出点を単一のデバイスに使用することができる。
幾つかの実施形態においては、移植片を通る流路は、流量を調節して低眼圧の可能性を低下させるように構成される。幾つかの実施形態においては、眼内圧を約8mmHgに維持する。別の実施形態においては、眼内圧を約8mmHg未満の圧力に維持し、例えば、眼内圧を約6mmHgから約8mmHgに維持することができる。別の実施形態においては、眼内圧を約8mmHgを超える圧力に維持する。例えば、眼内圧を約8mmHgから約18mmHg、より好ましくは8mmHgから16mmHg、最も好ましくは12mmHg以下に維持することができる。幾つかの実施形態においては、流量を約2.5μL/min以下に制限することができる。幾つかの実施形態においては、流量を約1.9μL/minから約3.1μL/minに制限することができる。
例えば、ハーゲン−ポアズイユの式によれば、流量2.5μL/minの長さ4mmの分路は、脈絡膜上腔における圧力より5mmHg高い圧力勾配にするために内径を52マイクロメートルにすべきである。
図12Bは、前房からぶどう膜強膜路(例えば、脈絡膜上腔)に流体を排出するように働くことができる分路を含む薬物溶出移植片430の別の一実施形態を示す。薬物溶出移植片430は、それを通って延在する少なくとも1個の内部管腔436を含むことができ、少なくとも1つの第1の活性薬物を配置することができる。移植片430の内部管腔436は、流入部432及び流出部434と連通することができる。移植されたときに、流入部432は、前眼房に存在するようなサイズ及び構成であり、流出部434は、ぶどう膜強膜路に存在するようなサイズ及び構成である。第1の活性薬物は、流入部432から前房中に溶出して、標的眼組織を治療することができる。第1の活性薬物は内部管腔436から前房中に溶出するので、移植片の内部管腔436を通して流体を導くことができる。
移植片430は、好ましくは、移植中に移植片430を21ゲージ若しくは23ゲージ針又は中空器具内に取り付けることができる外径を有する。しかしながら、より大きい又はより小さいゲージの器具を使用することもできる。移植片430は、より大きい針を用いて送達するように設計された直径を有することもできる。例えば、移植片430は、18、19又は20ゲージ針を用いて送達することもできる。移植片430は、その長さの大部分を通して一定の直径を有することができる。幾つかの実施形態においては、移植片430は、移植されたときに移植片430を適所に機械的にロック又は固定するように働く保持機能446を含む。幾つかの実施形態においては、保持機能446は、近位端438と遠位端440の間に直径の小さい部分、例えば、環状溝を含む。幾つかの実施形態においては、保持機能446は、移植片430の外面から延びた逆とげ又は別の突起部を含み、上述したように、移植片430がその移植位置から移動するのを阻止する。
図12Cに示したように、例えば、移植片430の幾つかの実施形態は、移植片430の外面に形成された複数の環状リブ448を有する。環状リブ448は、近位端438と遠位端440の間に移植片430に沿って長軸方向に配置することができる。環状リブ448の間隔は規則的でも不規則でもよい。
移植片430の流出部434は、好ましくは、移植片430の遠位端440又はその近くに配置される。図12Bに示した実施形態においては、流出部434は、先細部444を有するが、半径方向寸法が軸442の長さに沿って管腔軸442に対して連続的に減少する別の形状(例えば、半球形、放物面、双曲面)を有することもできる。先細部444は、好ましくは、流出端440においてより小さい半径方向寸法で終結する。移植中、先細部444は、組織中に形成された切り込み又は刺し穴を形成、拡張、及び/又はそのサイズを増大させるように操作することができる。例えば、遠位端440は、組織中に穴をあける又は切り込みを入れるトロカールとして機能することができる。移植片430の遠位端440を前進させた後、先細部444を刺し穴又は切り込みを通して前進させることができる。先細部444は、組織を通って前進しながら、刺し穴又は切り込みの周囲の組織を広げ又は拡大して、先細部444の漸増するサイズを収容する働きをする。
先細部444は、毛様体上腔又は脈絡膜上腔中に移植片430を適切に配置するのを容易にすることもできる。例えば、移植片430は、好ましくは、移植中に前房隅角内の組織を通って前進する。この組織は、一般に、線維状又は多孔質であり、移植片430の先端部などの外科デバイスを用いて比較的容易に穿孔又は切断される。移植片430は、この組織を通って前進し、ぶどう膜強膜路中に延びて強膜に接することができる。移植片430は強膜に接するので、先細部444は、好ましくは、強膜の内壁に沿って脈絡膜上腔内の移植片430の滑りを促進する略丸みのある縁部又は表面を与える。例えば、移植片430がぶどう膜強膜路中に前進して、強膜に接すると、移植片430は、強膜の内壁に対してある角度で配向する可能性がある。移植片430の先端部が強膜に入ると、先端部は、好ましくは、移植片430が強膜を穿孔又は実質的に貫通する代わりに強膜に沿って摺動できるようにする半径を有する。移植片430が強膜に沿って摺動すると、先細部444は、移植片430が強膜に接することができる縁部を与え、移植片430が強膜に穿孔する可能性を低下させる。
移植片430が適所に移植され、流入部432が前房に、流出部434がぶどう膜強膜路に存在すると、第1の活性薬物は、移植片430の管腔436から前房に溶出し、眼房水は、前房から移植片430の管腔436を通りぶどう膜強膜路に流出することができる。流体の流れは、好ましくは、所与の圧力に対して流体の流れを制限する毛管作用を生じる管腔436のサイズによって制限される。管腔の毛管作用によって、分路は流れを制限し、流体の流れを弁なしで調節することができる。移植片430を通る流体の流れは、好ましくは、流量を制限して低眼圧の可能性を低下させるように構成される。例えば、幾つかの実施形態においては、流量を約2.5μL/min以下に制限することができる。幾つかの実施形態においては、流量を約1.9μL/minから約3.1μL/minに制限することができる。別の適用例においては、複数の移植片430を単一の眼に使用して、少なくとも第1の薬物を前房に溶出させ、流体を前房からぶどう膜強膜路に導くことができる。かかる適用例においては、移植片を通る累積流量は、好ましくは、約1.9μL/minから約3.1μL/minの範囲であるが、移植片の各々の流量は、約2.5μL/minをかなり下回ってもよい。例えば、適用例が5個の移植片の移植を必要とする場合、各移植片430は、流量が約0.5μL/minになるように構成することができる。
図4に示した管腔436は実質的には移植片430の長軸方向の中央を通り延在しているが、幾つかの実施形態においては、管腔は、分路の長軸方向の中央から外れていてもよい。例えば、図4に示した移植片430は、先細部444が管腔436に接する所で実質的に終結する先細部444を有するが、管腔436は、先細部444の側面の1つに沿って開くように移植片430の中央から外れていてもよい。したがって、先細部444は、管腔軸442から外れた位置で終結してもよく、内部管腔436と外部の先細部444が接する点を越えて延在してもよい。さらに、管腔436は、その長さに沿って方向が変化してもよい。
幾つかの実施形態においては、本明細書に更に記述するように、移植片は、1個以上の管腔又は副管腔を含む。幾つかの実施形態においては、少なくとも1つの第1の活性薬物を少なくとも1個の副管腔中に配置する。副管腔は、閉じた遠位端を有することができ、又は遠位端若しくはその近くに出口を有し、流体が前房からぶどう膜強膜路に流れるようにすることができる。幾つかの実施形態においては、少なくとも1個の副管腔は、活性薬物を含まず、もっぱら流体を前房からぶどう膜強膜路に流出させるように構成される。
移植片430は、好ましくは、本明細書に記載の材料のいずれかを含む。移植片430は、従来の微細加工技術によって、又は光ファイバの製造に一般に使用される手順によって、製造することができる。例えば、幾つかの実施形態においては、移植片430は、絞り成形され、穴又は管腔がそれを通して延在する。幾つかの実施形態においては、流出部434の先細部444は、端部管状体をせん断することによって作製することができる。これによって、移植中に組織に刺し穴又は切り込みを入れ、移植片430の前進中に刺し穴又は切り込みを拡張するのに使用することができる先細部444を形成することができる。図4の移植片430には別の材料を使用することができ、移植片430の別の製造方法を使用することもできる。例えば、移植片430を金属又はプラスチックで作製することができ、移植片を機械加工し、上述したように穴を開けることができる。
図4の移植片430は、移植片430又は管腔436のサイズを変更する機会がある構成を有する移植片である。移植片430は、単一の構成を有する必要もなく、すなわち、同じ材料片で形成する必要もない。例えば、移植片の近位部を、少なくとも1個の小径管腔を有するように絞り成形されたガラスで形成することができる。移植片の遠位部は、異なる材料でできたキャップとすることができる。キャップは、組織穿孔端部及び1個以上の出口開口部を含むことができる。1個以上の出口開口部の各々は、近位部の1個以上の管腔の少なくとも1個と連通している。1つの好ましい形態においては、キャップは、円錐形状の先端部を有し、複数の出口開口部が先端部の遠位端の近位に配置される。
幾つかの実施形態においては、移植片は、近位端キャップを有する。例えば、(本明細書で図18K及び18Mを参照してより詳細に考察する)薬物放出領域を有するOリングキャップを移植片の近位端に配置して、前眼房への薬物溶出を可能にすることができる。別の実施形態においては、(本明細書で図18L及び18Nを参照してより詳細に考察する)薬物放出領域を含む圧着キャップを移植片の近位端に配置する。圧着キャップの領域は、キャップが移植片本体上に確実に置かれ、密封されるように、圧縮性とすることができる。薬物放出領域は、眼房水に対して更に透過性があり、眼房水を前房から移植片の管腔を通して排出することができる。幾つかの実施形態においては、キャップは、キャップ材料の厚さ及び/又は透過性に基づいて、薬物放出領域の代わりに、又は薬物放出領域に加えて、1個以上のオリフィス又は層を含む。1個以上のオリフィス又は層は、眼房水に対して透過性とすることができ、前房から排水することができる。幾つかの実施形態においては、被膜がキャップ内に配置されて、オリフィスをその中に包む。被膜は、半透過性ポリマーの膜又は層を含むことができる。幾つかの実施形態においては、被膜は、明確な厚さを有し、したがって種々の薬物及び眼液に対して明確な既知の透過性を有する。幾つかの実施形態においては、被膜は、キャップの外側、オリフィス内、又はその組合せを含めて、別の位置に配置される。
幾つかの実施形態においては、1個以上の分割部を外殻内の長軸方向に配置して、複数の追加の副管腔を殻の内部管腔内に形成した、移植片を形成する。分割部(単数又は複数)は、2個以上の副管腔を形成するように移植片内に取り付けられる任意の形状(例えば、矩形、円柱状)又はサイズとすることができ、1種類以上のポリマー、コポリマー、金属又はその組合せを含めて、外殻と同じ材料又は異なる材料で作製することができる。一実施形態においては、分割部は、生分解性又は生侵食性材料でできている。複数の副管腔は、互いに任意の構成とすることができる。幾つかの実施形態においては、単一の分割部を用いて、2つの副管腔を移植片殻内に形成することができる。例えば、図13Aを参照されたい。幾つかの実施形態においては、2個の副管腔は寸法が同じである。別の実施形態においては、分割部を用いて、寸法の異なる副管腔を形成することができる。更に別の実施形態においては、複数の分割部を用いて、2個以上の副管腔を殻の内部に形成することができる。幾つかの実施形態においては、管腔は、同じ寸法とすることができる。例えば、図13Bを参照されたい。あるいは、副管腔の寸法が異なるように分割部を配置することができる。
幾つかの実施形態においては、分割部によって形成される副管腔の1個以上は、移植片の全長を横切ってもよい。幾つかの実施形態においては、副管腔の1個以上を、横又は斜めに配置された分割部又は仕切りによって、画定することができ、又はふさぐことができる。塞がれた副管腔は、特定の用量又は濃度の薬物を収容するのに必要な任意の寸法で形成することができる。
分路を含む幾つかの実施形態においては、1個以上の管腔が分路を通って延在して、流路の少なくとも一部を形成する。好ましくは、分路を通して流体を導くように働く少なくとも1個の管腔が存在する。各管腔は、好ましくは、管腔軸に沿って流入端から流出端まで延在する。幾つかの実施形態においては、管腔は、実質的に分路の長軸方向中央を通って延在する。別の実施形態においては、管腔は、分路の長軸方向中央から外れていてもよい。
別の実施形態においては、移植片は、図13Cに示したように、互いに入れ子状態で「チューブ内チューブ」設計を形成する、眼液に対して実質的に不透過性である1個以上の管状殻構造体54の組合せとして形成される。別の実施形態においては、円柱状分割部を用いて、移植片内部を入れ子状態の「チューブ」に仕切る。かかる実施形態においては、被膜60は、場合によってはポリマー系とすることができ、管状移植片の中又は上に位置することができる。かかる実施形態においては、少なくとも第1の内部管腔58及び眼液流管腔70が形成される。幾つかの実施形態においては、眼液流管腔70は中心に位置する。別の実施形態においては、眼液流管腔70は、移植片殻により近接して位置するように偏っていてもよい。更に別の実施形態においては、別の殻構造体を追加して、移植片内に追加の管腔を形成する。薬物62は、形成された前記管腔の1個以上の中に配置することができる。オリフィス又は薬物放出領域を必要に応じて配置して、眼液を治療薬に接触させることができる。ある実施形態においては、被膜を外殻の外面に配置する。ある実施形態においては、2つ以上の生分解性被膜を単一の移植片に使用する。各被膜は、移植片の別々の部分を覆い、又は重複部分を覆う。生分解性被膜を使用する実施形態においては、各被膜は、場合によっては、眼液中の生分解速度が特有である。
幾つかの実施形態においては、移植片は芯82を含む(図14)。芯は、薬物放出領域のオリフィス単独で成し得るよりも迅速に眼液をデバイスの外側から内部管腔に輸送する助けになる任意の形態をとることができる。図14はオリフィスを貫通する芯を示しているが、薬物放出領域しか持たない移植片でも芯を使用できることを理解されたい。かかる実施形態においては、オリフィスを形成しないように、移植片の製造中に外殻を通過するように芯を配置することができる。幾つかの実施形態においては、繊維をオリフィス中に又は外殻を通して配置して、芯の一部が移植片の管腔内の薬物に隣接するようにする。別の実施形態においては、薬物を芯の周囲に形成して、眼液を薬剤の内部に直接送達する。更に別の実施形態においては、1本以上の芯を上述したように使用して、薬物のペレット又は塊の外部及び内部から薬剤を溶解させる。
図15は、移植片を眼組織に固定する保持突出部359を更に含む本明細書に係る移植片の一実施形態の模式的断面図である。図15及び別の図では、遠位部が移植片端部にあり、近位部が保持突出部359端部にあるものとして示したが、幾つかの実施形態においては、移植の部位及び向きに応じて、遠位部及び近位部が図15の向きに対して逆でもよい。さらに、図示した移植片は、外殻を通過するオリフィスの存在を示しているが、殻材料の厚さ及び/又は透過性に基づく薬物放出領域を含む移植片の実施形態は、保持機能を併用することもできることを理解されたい。さらに、1個以上のオリフィスと、透過性及び/又は半透過性材料の1つ以上の層と、殻材料の厚さ及び/又は透過性に基づく1つ以上の薬物放出区域との組合せを含む移植片を幾つかの実施形態において使用する。
幾つかの実施形態においては、移植片は、シート400及び保持突出部359を含む。図16を参照されたい。幾つかの実施形態においては、シートは、保持突出部に連結されていない。シートは、ポリマー、繊維又は複合材料を含めて、ただしそれだけに限定されない任意の生体適合性材料で作製することができる。幾つかの実施形態においては、シートを1種類以上の治療薬と混合する。幾つかの実施形態においては、1種類以上の治療薬と混合した材料でシートを被覆する。別の実施形態においては、第1の治療薬と混合したシートを、第2の治療薬と、異なる濃度の第1の治療薬と、又は助剤と混合した材料で被覆する。幾つかの実施形態においては、シートは生分解性であるが、別の実施形態においては生分解性でない。別の実施形態においては、シートの代わりに円盤402(図17)を使用する。幾つかの実施形態においては、シート又は円盤は柔軟である。
シート又は円盤の移植片の幾つかの実施形態を送達するために、シート又は円盤は、送達器具内に巻く、折りたたむ、又は詰めることができる寸法である。幾つかの実施形態においては、移植片全体が柔軟である。幾つかの実施形態においては、移植片は、前もって湾曲又は前もって屈曲されるが、それでもまだ送達装置の非湾曲管腔内に配置するのに十分柔軟である。幾つかの実施形態においては、柔軟なシート又は円盤の厚さは、約0.01mmから約1.0mmである。好ましくは、送達器具は、器具を眼から引き抜くと、挿入部位が縫合なしに自己封着するように十分小さい断面を有する。例えば、外寸は、好ましくは約18ゲージ以下であり、約27又は30ゲージ以上である。かかる実施形態においては、巻かれた又は折りたたまれたシート又は円盤は、眼組織に取り付け、送達器具を引き抜いた後、その当初の寸法に実質的に戻ることができる。ある実施形態においては、約50から200μm、約100から150μm、約25から100μm及び約100から250μmを含めて、約25から250μmの厚さを使用する。
幾つかの実施形態においては、移植片は、虹彩に固着され(例えば、係留され)、前房水内に浮遊するような寸法である。この状況における「浮遊する」という用語は、移植片の浮力を指すものではなく、移植片のシート表面が、保持突出部によって許容される程度に前房の眼液内で動かせることを指すものである。ある実施形態においては、かかる移植片は、眼内組織に係留されず、眼内に浮遊している。ある実施形態においては、移植片は、生体適合性接着剤を用いて虹彩に接着固定することができる。幾つかの実施形態においては、生体適合性接着剤をあらかじめ活性化することができ、別の実施形態においては、眼液との接触によって接着剤を活性化することができる。更に別の実施形態は、移植片の配置後、送達装置の引き抜き前の外部刺激による接着剤の活性化を含むことができる。外部刺激の例としては、熱、超音波及び高周波又はレーザーエネルギーが挙げられるが、それだけに限定されない。ある実施形態においては、虹彩の表面積が大きいため、虹彩に移植片を固着するのが好ましい。別の実施形態においては、移植片は、虹彩に固着された保持突出部に対して柔軟ではあるが、浮遊しない。本明細書に開示した実施形態は、通常の光が瞳孔を通過できるように虹彩に固着される。
上述したように、本明細書に開示した幾つかの実施形態は、移植片からの薬物放出速度を制御するために透過性の異なる複数の材料を採用する。図18A〜18Qは、移植片からの薬物放出速度を制御するために透過性の異なる材料を採用した別の移植片実施形態を示す。図18Aは、図18Bに示した移植片本体53の上面図である。移植片本体53は、外殻54及び保持突出部359を含む。明示してはいないが、幾つかの実施形態においては、本体及びキャップを含む移植片が保持突出部なしでも構築されることを理解されたい。図18Cは、幾つかの実施形態においては外殻54と同じ材料でできた移植片キャップ53aを示す。別の実施形態においては、キャップ53は、外殻とは異なる材料でできている。薬物放出領域56は、殻54とは異なる透過性を有する材料を使用してキャップ中に形成される。本体及びキャップ(及び場合によっては保持突出部)を含む移植片は、本体又はキャップを通るオリフィスを用いて構築することができ、任意のオリフィスの全部又は一部を覆う透過性又は半透過性材料の層又は被膜を用いて構築することができ、殻材料の厚さ及び/又は透過性に基づく薬物放出領域と上記の組合せを用いて構築することもできることも理解されたい。18E〜18Fを参照されたい。
図18G〜18Jは、本明細書に開示した幾つかの実施形態による組み立てられた移植片を示す。移植片本体53を移植片キャップ53aと連結して、薬物62が充填される管腔58を形成する。幾つかの実施形態においては、移植片本体54の材料はキャップ54aとは異なる。したがって、異なる材料のキャップと本体の組合せによって薬物放出領域56が形成される。
キャップの別の非限定的実施形態を図18K及び18Lに示す。図18Kにおいては、薬物放出領域56を有するOリングキャップ53aの断面を示す。別の実施形態においては、1つ以上の薬物放出領域がキャップ中に存在することができる。流体不透過性シールが組立て時に移植片のキャップと本体の間に設けられるように、oリング99(又は別の密封機構)をキャップの周囲に配置する。図18Lに圧着キャップを示す。キャップの外殻は、キャップが移植片本体に確実に配置され、密封されるように、圧縮性の領域98を含む。上述したように、ある実施形態は、殻材料の厚さ及び/又は透過性に基づく薬物放出領域の代わりに、又はそれに加えて、オリフィス及び層を採用する。図18Mは、Oリングキャップ53aの断面を示す。被膜60がキャップの外殻54内に配置され、オリフィス56aを覆っている。別の実施形態においては、1個以上のオリフィスがキャップ中に存在することができる。幾つかの実施形態においては、被膜60は、半透過性ポリマーの膜又は層を含む。幾つかの実施形態においては、被膜60は、明確な厚さを有し、したがって種々の薬物及び眼液に対して明確な既知の透過性を有する。図18Nに、オリフィス及び被膜を含む圧着キャップを示す。被膜はキャップ内に配置されて示されているが、キャップの外面、オリフィス内、又はその組合せを含めて、別の場所が幾つかの実施形態においては使用されることを理解されたい(図18O参照)。
さらに、図18P及び18Qに示したように、ある実施形態においては、被膜は、層が形成されるように薬物材料内で使用される。被膜は、管腔内の異なる薬物62a、62b、62c、62dを分離することができる(図18P)。ある実施形態においては、被膜を使用して、異なる濃度の同じ薬物を分離する(図18Q)。かかる内部の層は、薬物放出領域(単独で、又は本明細書に開示した他の薬物放出要素、例えば、オリフィスと組み合わせて)を含む実施形態においても有用であることを理解されたい。ある実施形態においては、層が、特に望ましい薬物溶出プロファイルを形成する。例えば、侵食の遅い層を使用して、薬物放出の少ない期間、又は「休薬期間」を設ける。あるいは、以下でより詳細に考察するように、ゼロ次(又は別の動力学的プロファイル)となるように層を処方することができる。
図に示した実施形態及び別の実施形態の各々においては、殻材料の被膜又は外層は、噴霧、浸漬によって形成することができ、又は当該技術分野で公知の幾つかの別の均等手段によって追加することができる。したがって、幾つかの実施形態においては、薬物放出領域、又はオリフィスを覆う層(単数又は複数)の透過性(したがって溶出速度)は、移植片の製造に使用される材料、移植片の(もしあれば)被膜、及び移植片外殻の有効厚さによって、少なくともある程度限定される。
さらに、幾つかの実施形態においては、移植片の1つ以上の部分が、別々に製造され、次いで標的部位に挿入する用意ができた最終移植片のために組み合わせられる(例えば、組み立てられたキャップ及び移植片殻)。例えば、図18Rに示したように、移植片53は、幾つかの実施形態においては、移植片殻54、(見やすいように異なる陰影で示されているが、場合によっては移植片殻と同じ又は異なる材料で構築された)分離したキャップ54aを含む。種々のキャップ構成のいずれかを、移植片殻のいずれかと一緒に使用することができる(部品間の相互作用を可能にする寸法に調節されることは当然であるが)。図18Rに示したように、キャップ54aは、中心開口部を含み、それによって薬物放出領域56を形成する。幾つかの実施形態においては、ある種のかかる実施形態の組立ては、移植片内に収容された薬物(単数又は複数)がそれを通して溶出する膜60の弾性又は半弾性特性を利用する。有利なことに、幾つかの実施形態においては、膜60の弾性によって、移植片のキャップを移植片殻上にプレスばめすることができ、次いで膜の弾性反発によってキャップに対して付与される圧力によって保持することができる(例えば、「自動ロック」機能)。したがって、膜60は、幾つかの実施形態においては、薬物(単数又は複数)の放出速度を規定するのに役立つだけでなく、移植片の内部を外部環境から密封するガスケットとしても機能し、したがって内部と外部の流体連通を膜60を介したものだけに制限する。外殻が構築される可能な材料に関して以下でより詳細に考察するように、膜60は、(実施形態に応じて)類似の材料又はその組合せで構築される。例えば、膜60は、一実施形態においては、エチエレン(ethyelene)酢酸ビニルを含み、別の一実施形態においては、膜は、シリコーン又は別の部分若しくは半透過性材料材料、ホモポリマー、ポリマーブレンド、及びランダムコポリマー、ブロックコポリマーなどのコポリマー、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリ(カルボナートウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、シリコーンポリ(カルボナートウレタン)、シリコーンポリ(エーテルウレタン)、PurSil(登録商標)、Elasthane(登録商標)、CarboSil(登録商標)及び/又はBionate(登録商標)を含む。膜材料及びその寸法(例えば、その厚さ)の選択は、最適な治療薬によって少なくとも部分的に誘導される。
図18Sは、本明細書に開示した移植片の一実施形態の分解組立図である。移植片53は、移植片を標的組織中に固定するために、例えば、保持(rentention)突出部459を一端に含む。移植片は、治療薬(単数又は複数)を収容する少なくとも1個の内部管腔58を含む。上述したように、移植片は、さらに、一緒に組み立てたときに特定の目的治療薬(単数又は複数)に合わせた(膜に基づく)薬物放出領域56を形成する、キャップ54a及び膜60を含む。
種々の実施形態においては、(最適な特定の治療薬(単数又は複数)と併せた)膜60の厚さは、約30から約200μm、約50から約200μm、約70から約200μm、約90から約200μm、約30から約100μm、約30から約115μm、約50から約125μm、約63から約125μm、約84から約110μm、約57から約119μm、及びその重複範囲を含めて、約30から約200μmの範囲である。幾つかの実施形態においては、膜60の厚さも、目的薬物(単数又は複数)の溶出速度を少なくとも部分的に限定する。
本明細書で考察するように、薬物溶出速度は、実施形態に応じて、所望の時間枠にわたって薬物放出可能なように制御される。例えば、幾つかの実施形態においては、期間薬物放出は、実施形態に応じて、数か月から数年、例えば、約6から約12か月、約12から約18か月、約18から約24か月、約24から約30か月、約30から約36か月などの範囲である。
図18Tは、移植片53が、さらに、少なくとも1つの流入経路38k及び少なくとも1つの流体流出経路56kを含む別の一実施形態を示す。別の流体流入/流出構成も本明細書の別の場所に詳述する(例えば、図19R〜19Y参照)。図18Tに示したように、保持突出部359は、移植片(inplant)を眼組織に固定し、移植片が小柱網23又はその近くに静止し、流体流出経路56kが眼液を移植片を通り(流体流入経路38kを介して)、ここではシュレム管22として示される生理的流出空間に誘導することができるようにする。上記実施形態と同様に、目的の標的組織(単数又は複数)に薬物を溶出させることができる薬物放出領域56が存在する)。種々の流体流入/流出構成のどれでも、本明細書に開示した多様な移植片本体のいずれかと一緒に使用するように容易に改作できることを理解されたい。同様に、保持突出部のどれでも、標的組織、送達する薬物、所望の薬物送達期間などに応じて、移植片殻のいずれかと一緒に使用するように容易に構成することができる。例えば、図18Tに示した移植片は、スパイク状又は逆とげ状の保持突出部を有するものとして示されているが、移植片は、例えば、図19Cに示したねじ領域と一緒に構成することもできる。
図18Uは、流体流入経路38K及び流体流出経路56kを有する移植片の一実施形態の断面図である。示したように、移植片は、膜60を通した溶出によって標的組織に送達され、薬物放出領域56を介して移植片から送達される薬物を含む管腔58を含む。膜60が組み込まれたキャップ構造体53aの一実施形態を示す。眼液が(制御放出を確実にする)膜60を通してのみ移植片に入って、薬物を溶解させること(及び移植片からの薬物流出)を確実にするために、キャップ53はシール99を含む。同様に、眼液が流入経路38kに隣接した部分から移植片に侵入するのを防止するために、追加の下部シール99aを薬物(drug)含有管腔58の遠位に配置する。幾つかの実施形態においては、以下の段落[0221]〜[0227]においてより詳細に記述するように、移植片からの治療薬(単数又は複数)の制御放出を可能にする種々の機能を使用することができ、対象の涙点中に移植されるように改作することができる。
ある実施形態の移植片の製造中に、1個以上の内部管腔58を移植片の外殻内に形成する。幾つかの実施形態においては、内部管腔は、移植片の近位部に局在し、別の実施形態においては、内部管腔は、移植片の全長又は任意の中間長に及ぶ。幾つかの実施形態は、単一の内部管腔からなり、別の実施形態は、2つ以上の内部管腔を含む。幾つかの実施形態においては、内部管腔の1つ以上が眼房又は領域、例えば、前房と連通することができる。幾つかの実施形態においては、移植片は、1つを超える眼房又は領域と連通するような寸法である。幾つかの実施形態においては、移植片の近位端と遠位端の両方が単一の眼房又は領域内に配置され、別の実施形態においては、移植片の両端が異なる眼房又は領域に配置される。
薬物62は、移植片の内部管腔58内に収容される。薬物62は、特定の眼の病態に対して治療上有効な薬剤と、薬物を調製するのに必要である薬物が適合する形態の任意の追加の化合物とを含む。幾つかの実施形態においては、内部管腔の1つ以上は、異なる薬物又は異なる濃度の薬物を含むことができ、それらを同時に(併用療法)又は別々に送達することができる。幾つかの好ましい実施形態においては、内部管腔は、移植片内に配置される所望の量の薬物に比例したサイズである。所与の実施形態の内部管腔の最終寸法は、送達される薬物(単数又は複数)のタイプ、量及び所望の放出プロファイル、並びに薬物(単数又は複数)の組成によって決まる。
幾つかの実施形態においては、薬物は、薬物含有ペレットの形態であり、別の実施形態においては、薬物は、液体、スラリー、微小ペレット(例えば、ミクロ錠剤)又は粉体である。ある種のかかる実施形態においては、薬物の形態によって移植片を柔軟にすることができる。幾つかの実施形態においては、薬物をポリマー製剤と混合する。幾つかの実施形態においては、管腔中に配置された薬物は、純粋な薬物である。ある実施形態においては、ポリマー製剤は、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、すなわちPLGAコポリマー、又は他の生分解性若しくは生侵食性ポリマーを含む。更に別の実施形態においては、内部管腔は、薬物のみを含む。
幾つかの実施形態においては、単一又は複数の薬物の複数のペレット62を移植片の内部管腔内に配置する。幾つかの実施形態においては、不透過性の仕切り64を使用して、管腔内の薬物(単数又は複数)を密封し、移植片からの唯一の出口経路が薬物放出領域を通るようにする。幾つかの実施形態においては、不透過性の仕切り64は、特定の速度で生侵食することができる。幾つかの実施形態においては、不透過性の仕切り64を薬物ペレットに組み込み、移植片の殻54の内寸に対してシールを形成する。別の実施形態においては、1個を超える不透過性の仕切りを管腔内で使用して、副管腔を形成する。副管腔は、異なる薬物、異なる濃度の同じ薬物、様々な賦形剤と混合された同じ又は別の薬物などを含むことができる。かかる実施形態においては、連続した薬物放出を行うことができ、又は移植片内では不活性であるが、そのそれぞれの副管腔の外側で混じり合うと活性になる2つの薬剤の放出を行うことができる。
幾つかの実施形態においては、治療薬は、微小ペレット又はミクロ錠剤として処方される。さらに、幾つかの実施形態においては、ミクロ錠剤は、より多量の治療薬を移植片中で使用することができる。これは、幾つかの実施形態においては、打錠によって、ペレットではデバイスに充填することによって得られるよりも高密度が得られるからである。所与の体積中の薬物量の増加は、使用する賦形剤の量を錠剤全体の重量百分率として削減することによっても達成され得る。これは、錠剤の完全性を保持しながら極めて小さなサイズの錠剤を形成すると可能になることを本発明者らは見いだした。幾つかの実施形態においては、活性治療薬の(重量)百分率は約70%以上である。本明細書で考察するように、治療薬は、当該技術分野で公知である賦形剤又は結合剤と組み合わせることができる。幾つかの実施形態においては、治療薬の割合は、約70%から約95%、約75から85%、約75から90%、約70から75%、約75%から約80%、約80%から約85%、約85%から約90%、約90%から約95%、約95%から約99%、約99%から約99.9%の範囲、及びその重複範囲である。幾つかの実施形態においては、治療薬の割合は、81、82、83及び84重量%を含めて約80%から約85%の範囲である。
幾つかの実施形態においては、ミクロ錠剤は、本明細書に開示した移植片に充填する、詰める、又は配置することができる薬剤の量に関して利点がある。得られるミクロ錠剤を含む移植片は、幾つかの実施形態においては、したがって、非ミクロ錠剤を用いて得られるよりも高い密度で治療薬を含む。例えば、幾つかの実施形態においては、移植片内の薬剤の微小ペレット剤形の密度は約0.7g/ccから約1.6g/ccの範囲である。幾つかの実施形態においては、移植片に使用される密度は、約0.7g/ccから約0.9g/cc、約0.9g/ccから約1.1g/cc、約1.1g/ccから約1.3g/cc、約1.1g/ccから約1.5g/cc、約1.3g/ccから約1.5g/cc、約1.5g/ccから約1.6g/ccの範囲、及びその重複範囲である。幾つかの実施形態においては、1.6g/ccを超える治療薬密度が使用される。
本明細書に記載の通り、本明細書に開示したデバイスの幾つかの実施形態は、再装薬可能であり、したがって、ミクロ錠剤のサイズは有利である。幾つかの実施形態においては、デバイスの充填及び/又は再装薬は、治療薬を送達するシリンジ/針を用いて実施される。幾つかの実施形態においては、ミクロ錠剤は、23〜25ゲージ、25から27ゲージ、27〜29ゲージ、29〜30ゲージ、30〜32ゲージ及びその重複範囲を含めて、約23ゲージから約32ゲージの針を通して送達される。幾つかの実施形態においては、針は23、25、27、30又は32ゲージである。幾つかの実施形態においては、ミクロ錠剤は、シリンジ又はカニューレを用いて硝子体腔など、眼に直接導入することができる。
一実施形態においては、上記特性のミクロ錠剤、又はその任意の組合せは、錠剤化、凍結乾燥、顆粒化(湿式又は乾式)、薄片化、直接圧縮、モールディング、押し出しなどを含めて、当該技術分野において公知の技術によって製造される。さらに、以下で考察するように、上で考察した特性の変化は、移植片からのミクロ錠剤治療薬の放出プロファイルを調整するのに使用することができる。
幾つかの実施形態においては、治療薬の凍結乾燥を微小ペレット成形プロセス前に使用する。幾つかの実施形態においては、凍結乾燥は、ミクロ錠剤に混ぜ込まれた治療薬の安定性を改善する。幾つかの実施形態においては、凍結乾燥によって、より高濃度の治療薬を微小ペレット成形前に得ることができ、それによって幾つかの実施形態においては望ましい活性治療薬の割合を高くする能力を高めることができる。例えば、眼疾患の治療に有用である多数の市販治療薬が、別の疾患の第一選択薬剤として開発されている。したがって、その本来の処方が、微小ペレット成形に、又は本明細書に開示したものなどの眼移植片を介した眼球標的への投与に、適切又は理想的でない場合もある。例えば、幾つかの抗VEGF化合物は、静脈内投与用の使い捨てバイアル中の無菌液として供給される(例えば、ベバシズマブ)。その結果、かかる液剤は、固体に比べて微小ペレットの形成に好ましくない。ただし、液体治療薬は、場合によっては、幾つかの実施形態において使用することができる。治療薬の高い割合で微小ペレット成形を行うために、かかる液剤を凍結し(例えば、温度−20から−80℃で16から24時間以上貯蔵し)、次いで乾燥するまで凍結乾燥することができる。あるいは、空気噴霧、結晶化又は他の手段を場合によっては使用して治療薬を乾燥させることができる。
乾燥後、凍結乾燥(又は乾燥)治療薬の純度を場合によっては試験する。幾つかの実施形態においては、非治療成分(例えば、賦形剤又は不活性結合剤)を溶解させ、(蒸発によって)除去するために、溶媒を液剤(又は固形剤)に添加することができる。幾つかの実施形態においては、凍結乾燥前に治療薬を従来法(例えば、抗体を用いたクロマトグラフィ、HPLCなど)によって精製する。かかる実施形態においては、凍結乾燥は、しばしば、回収精製試料中の治療薬の濃度を高める機能を果たす。
幾つかの実施形態においては、(効率目的で、場合によってはバルクで乾燥させた)乾燥治療薬を粉砕し、ふるい分け、液体に浸してほぐし、凍結割断し、又は別の手段によって既知の量に細分し、次いで微小ペレット化する。
凍結乾燥及び又は細分後、治療薬を微小ペレット成形プロセスに送る。幾つかの実施形態においては、標準技術(例えば、圧縮、押し出し、モールディング、又は別の手段)を使用する。しかし、高い割合の活性治療薬を採用した幾つかの実施形態においては、より特化された技術を使用する。
幾つかの実施形態においては、治療薬はタンパク質であり、かかる実施形態においては、乾燥及び/又は錠剤化は、治療薬の生物活性に悪影響を及ぼさない条件下(例えば、温度、酸/塩基など)で完了すべきである。微小ペレット治療薬の生物活性の維持を助けるために、幾つかの実施形態においては、タンパク質治療薬を安定剤(例えば、マンニトール、トレハロース、デンプン又は他のポリヒドロキシポリマー)と一緒に処方して、治療タンパク質の構造(したがって活性)を維持する。
<涙点移植片>
幾つかの実施形態においては、移植片は、対象の眼の涙点(例えば、上部及び/又は下部小管のそれぞれ上部及び/又は下部涙点)に使用(例えば、移植)するために特異的に構成される。涙点は、涙腺によって眼の表面に放出された涙を収集する機能を果たす。しかし、一部の個体においては、涙液産生が低下し、阻止され、減少し、又は眼(単数又は複数)の適切なレベルの水分を維持するのに不十分である。眼の水分が低下したままであると、眼の角膜表面が損傷を受けるおそれがある。(例えば、正常な涙液産生の患者において)正常に機能すると、涙点は、涙液を涙嚢に送り、次いで涙嚢はそれを鼻涙管を通して内鼻に排出することができる。ドライアイ又は類似の症候群の一治療は、時間通りの栓の移植である。移植すると、栓は、涙液の排出を阻止する機能を果たして、眼の涙液の保持を高める。しかし、本明細書に開示した移植片実施形態の幾つかは、有利なことに、低下した涙液産生の1つ以上の態様を治療するために、1種類以上の治療薬を眼に送達して涙液排出の物理的阻止を補うことができる。したがって、幾つかの実施形態においては、涙液産生を増加させ、及び/又は眼及び周囲組織の膨潤、刺激の軽減、及び/又は炎症の軽減を含めて、ただしそれだけに限定されないドライアイの症候を治療するために、1種類以上の治療薬を移植片中に配置する。軽減、改善及びある場合には解消(elimated)される追加の症候としては、眼の刺すような痛み又は炎症、何かが眼の中にあるようなざらざら又はじゃりじゃりした感覚、極度のドライアイ期間後の過剰の涙の発現、眼からの粘質の分泌、眼のとう痛及び発赤、かすみ目の一時的又は長期発症、重い眼けん、泣く能力の低下、コンタクトレンズを装着したときの不快感、読むことの許容度の低下、コンピュータ作業、持続的な視覚的注意を必要とする任意の活動、並びに眼精疲労が挙げられる。
幾つかの実施形態においては、移植片は、有利なことに、追加の局所薬(例えば、軟膏剤、人工涙液など)が不要である。しかし、幾つかの実施形態においては、移植片は、1種類以上のかかる薬剤と相乗的に作用するように構成される(例えば、特定の薬物放出プロファイルを有する)。例えば、幾つかの実施形態においては、移植片は、一定用量の治療薬をある期間にわたって送達して、損傷を受けた又は患部の眼を治療するように構成される。移植片を適所に有する対象は、例えば、人工涙液を使用して、移植片から送達された薬剤の効力を更に高めることもできる。
幾つかの実施形態においては、移植片から送達された薬剤を、緑内障、高眼圧症、及び/又は眼内圧上昇などの別の眼疾患の治療に使用する。
有利なことに、本明細書で考察するように、時間通りの配置のために構成された移植片の幾つかの実施形態は、1種類以上の治療薬を定量送達することができ、すなわち、定速で送達することができ、それによって(例えば、点眼剤による)局所投与で生じる治療薬濃度の山と谷を軽減することができる。
本明細書に開示した関連する特徴のいずれかを、涙点用に構成された実施形態に適用することができる。例えば、移植片寸法、その形状、その薬物放出特性などを涙点用に設定することができる。幾つかの実施形態においては、栓を特定の対象の涙点寸法に合わせることができる。さらに、栓を取り外し可能に、又は幾つかの実施形態においては持続的に(例えば、再装薬可能に)構成することができる。幾つかの実施形態においては、涙点移植片は、少なくとも部分的に、移植片の近位領域に優先的に(例えば、薬剤が対象の涙液膜に放出されるように)充填された少なくとも第1の活性薬剤を含み、移植片の遠位領域は涙管内に配置される。幾つかのかかる実施形態においては、移植片は、移植片の遠位部から活性薬剤(単数又は複数)が意図せずに放出されるのを防止するように特に改作される。幾つかのかかる実施形態においては、栓(例えば、不透過性閉鎖部材)、膜(例えば、活性薬剤(単数又は複数)に対して透過性がほとんど又は全くない膜)、及び/又は弁(例えば、一方弁)は、デバイスの遠位領域における溶出を防止する。
幾つかの実施形態においては、弁又は栓を使用すると、移植片を洗い流すことが可能になる。例えば、治療薬を(例えば、異なる薬剤又は異なる用量の同じ薬剤と)置換する必要がある場合、移植片内の残留薬剤を実質的に除去することが有益であり得る。かかる場合においては、栓を除去し、移植片を近位から遠位方向に流して、移植片に残った治療薬を下方の鼻涙管に洗い流すことができる。その後、移植片に別の用量、別の薬剤などを再充填することができる。同様に、弁を移植片の遠位領域に配置すると移植片を洗い流すことができる。弁は、洗い流し手順で加えられた圧力によって開き、流し出された薬剤が移植片に逆流するのを防止する。
幾つかの実施形態においては、ラタノプロスト又は別の治療薬(単数又は複数)で眼を治療するための移植片及び方法を提供する。この方法は、移植片の遠位端を眼の少なくとも1個の涙点に挿入すること、及び移植片の近位部がラタノプロスト又は別の治療薬(単数又は複数)を眼の近くの涙液に送達するように、移植片を配置することを含む。幾つかの実施形態においては、ラタノプロスト又は別の治療薬(単数又は複数)の送達は、近位端の遠位に阻害される。
図19A〜19Wは、保持突出部の薬物の種々の実施形態の実施形態を示す。本明細書では、保持突出部は、その通常の意味を有するものとし、移植片を(図19A〜19Gにおいて一般に15で示す)適切な標的眼内組織に持続的又は過渡的に固着、固定又は装着する任意の機構又は固定要素も指し得る。例えば、生体適合性接着剤を含む移植片の一部を保持突出部と見なすことができ、逆とげ、穴を有する逆とげ、ねじ状要素、ぎざぎざのある要素なども同様である。幾つかの実施形態においては、移植片を標的組織に縫合する。例えば、幾つかの実施形態においては、移植片を虹彩、好ましくは下方部分に縫合する。任意の保持手段を、任意の図示した(及び/又は記述した)移植片(そういうものとして明示的に図示も記述もされていない場合でも)と一緒に使用できることを理解すべきである。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載の移植片は、特定の望ましい眼腔におけるその形状及び/又はサイズに基づいて(持続的又は過渡的に)くさびで止められ、又は捕捉される。例えば、幾つかの実施形態においては、移植片(例えば、脈絡膜上ステント)は、眼組織に対して十分な量の摩擦を生じて移植片を適所に保持する移植片の外寸に基づいて眼腔(例えば、脈絡膜上腔)内にくさびで止められる。
移植片を固定するための眼内標的としては、眼の線維組織が挙げられるが、それだけに限定されない。幾つかの実施形態においては、移植片を毛様体筋及び/又は腱(又は線維帯)に固定する。幾つかの実施形態においては、移植片をシュレム管、小柱網、強膜上静脈、虹彩、虹彩根部、水晶体皮質、水晶体上皮、水晶体嚢、強膜、強膜岬、脈絡膜、脈絡膜上腔、前房壁に固定し、又は前房隅角内に配置する。本明細書では「脈絡膜上腔」という用語は、その通常の意味を有するものとする。「脈絡膜上腔」という用語に包含され得る他の潜在的な眼腔が、眼の様々な領域に存在することを理解されたい。例えば、眼の前方領域にある脈絡膜上腔は、毛様体上腔としても知られ、したがって、本明細書のある状況においては、「脈絡膜上腔」の使用は、毛様体上腔を包含することを意味するものとする。
保持突出部は、外殻と同じ生体適合性材料から処方することができる。幾つかの実施形態においては、生分解性保持突出部を使用する。別の実施形態においては、保持突出部の1個以上を、外殻とは異なる材料で形成することができる。異なるタイプの保持突出部が単一のデバイスに含まれていてもよい。
幾つかの実施形態においては、例えば、図19Aを参照されたいが、保持突出部359は、基部130の表面に形成された隆起部128又は一連の隆起部を含む、隆起ピン126を含むことができる。かかる隆起部は、移植片の表面の任意の方向に、例えば、それだけに限定されないが、移植片の長軸から偏って、移植片の周囲にらせん状に、又は移植片を取り囲んで、形成することができる(例えば、図19B参照)。同様に、隆起部は、互いが離れていても、接触していてもよい。また、隆起したこぶ、円柱、図19Cに示したような深いねじ山134、図19Dに示したようなリブ140、図19Eに示したようなリベット形状の基部146、図19Fに示したような、保持要素359を取り囲み、眼組織を貫通する生体適合性接着剤150、図19Gに示したような逆とげ170などの他の固定要素を使用することもできる。幾つかの実施形態においては、保持突出部は、一般に20として示される、既存の眼内空洞又は眼内腔内に配置される。例えば、図19Hに示したように、細長いブレード34はシュレム管22内にあり、小柱網21を横切る基部130に装着される。別の実施形態においては、図19Iに示したように、当該技術分野で周知である眼内腔の寸法に基づき、より短い基部130aが使用され、シュレム管22内にある細長いブレード34に装着される。
ある実施形態においては、膨張性材料100を物理的保持突出部と併せて、又はその代わりに使用する。例えば、図19Jにおいては、基部130の特定の区域を膨張性材料100で覆う。この材料は、眼液を含む適切な溶媒に接触すると、(矢印で示したように)膨張し、したがって周囲組織、例えば、図19Jにおける小柱網21及びシュレム管22の基部に圧力を及ぼす。
幾つかの実施形態においては、外部刺激を使用して、膨張性材料100を膨張させる。図19Kに示したように、基部130の特定の区域を膨張性材料100で覆う。この材料は、外部刺激hνによる刺激を受けると、(矢印で示したように)膨張し、したがって周囲組織、例えば、図19Kにおける小柱網21及びシュレム管22の基部に圧力を及ぼす。好適な外部の刺激としては、光エネルギー、電磁エネルギー、熱、超音波、高周波、又はレーザーエネルギーが挙げられるが、それだけに限定されない。
幾つかの別の実施形態においては、膨張性材料100は、外殻54上に被覆又は層形成され、溶媒に接触すると膨張する。図19L〜19Qを参照されたい。幾つかの実施形態においては、移植片を所望の眼内腔内に全体的に配置すると、体液との接触によって膨張性材料が膨潤、凝固若しくはゲル化、又は膨張する。(図19L〜19Qにおいて寸法DとD1を比較されたい)。その結果、膨張した材料は、周囲の眼組織に圧力を及ぼして、移植片を適所に固定する。幾つかの実施形態においては、かかる膨張性材料(又は別の保持機構)は、上の段落[0221]〜[0227]においてより詳細に記述するように、対象の涙点に移植するように改作された移植片上で使用される。
幾つかの実施形態においては、膨張性材料は、移植片殻と周囲眼内組織の間の空隙を満たす。幾つかのかかる実施形態においては、膨張した材料は、流体が移植片の周囲を流れるのを防止し、必ず移植片を通して流れるように、移植片の一部を充填物から遮断し、又は移植片外殻の周囲の体積を密封する。
図19P及び19Qに模式的に示したものなどの別の実施形態においては、膨張性材料100を移植片殻54の選択区域上に配置する。その結果、膨張した材料は、周囲眼組織に圧力を及ぼすだけでなく、移植片殻及び膨張性材料の周囲に流体流れの帯域102を形成して天然の眼液通路の開存性を維持する。更に別の実施形態においては、膨張性材料を移植片の管腔内に配置することができる。その結果、材料の膨張によって、管腔が開存状態で維持されるのを助け、又は管腔が開存状態で維持されるようにする。
膨張性材料は、浸漬、モールディング、被膜、噴霧、又は当該技術分野で公知の他の適切なプロセスによって移植片上に配置することができる。
幾つかの実施形態においては、膨張性材料は、ヒドロゲル又は類似の材料である。ヒドロゲルは、架橋親水性ポリマー鎖の3次元網目構造体である。ポリマー鎖の親水性のため、ヒドロゲルは、十分な量の流体の存在下で膨潤する。別の実施形態においては、膨張性材料は、発泡体、コラーゲン、又は膨潤、凝固若しくはゲル化、又は膨張する任意の他の類似の生体適合性材料である。幾つかの実施形態においては、膨張性材料は、適切な溶媒に接触するとすぐに膨張し始める。別の実施形態においては、膨張は短時間経過後に起こり、材料の膨張前に移植片を所望の標的部位に全体的に配置することができる。膨張を誘発する好ましい溶媒としては、水、食塩水、眼液、眼房水、又は外殻の構造若しくは透過特性に影響を及ぼさないと考えられる他の生体適合性溶媒が挙げられる。
膨張性材料の膨張は、幾つかの実施形態において変動する。幾つかの実施形態においては、上述したように、膨張した材料が周囲眼組織に圧力を及ぼして、移植片を適所に固定するように、材料を移植片の外殻上に配置する。別の実施形態においては、膨張性材料は、(上述したものなどの)別の固定要素に隣接して、その周囲に、又はその下に配置することができ、膨張性材料の膨張によって、固定要素は、第1の引っ込めた状態から第2の膨張した状態に移行し、膨張した状態で移植片を眼球構造体に対して固定する。幾つかの実施形態においては、膨張性材料は2次元にのみ膨張するように設計され、別の実施形態においては、材料は3次元に膨張する。
図19L及び19Mは、膨張性材料を矩形断面として示しているが、断面形状は、ある実施形態においては、異なってもよく、環状、楕円形、不規則及び他の形状を含んでもよいことを理解されたい。幾つかの実施形態においては、材料の相対膨張(寸法DからD1への変化)も制御される。ある実施形態においては、DからD1への変化は、別の実施形態より大きく、幾つかの実施形態においては、より小さいDからD1への変化が材料の膨張によって行われる。
図19P及び19Qは、移植片本体から半径方向外向きに延在する突出部を含む膨張性固定要素100を有する移植片の側面図である。幾つかのかかる実施形態においては、固定要素を個々に移植片本体に接続し、別の実施形態においては、移植片本体上に設けた外筒領域によってそれらを相互接続する。
選択された実施形態においては、移植片及び/又は保持突出部は、さらに、分路機能を含む。本明細書では「分路」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通例の意味を有し(特別な又は個別の意味に限定されるものではなく)、多くの場合望ましくない第1の場所から1つ以上の別の場所に流体を輸送するための1つ以上の流路を画定する移植片の部分を指すが、それだけに限定されない。「ステント」という用語は、分路を指すのに使用することもできる。幾つかの実施形態においては、分路は、例えば、図19R〜19Tに示すように、眼房水を前眼房から流出経路に排出して眼内圧を低下させる流体流路になるように構成することができる。更に別の実施形態においては、移植片の分路機能は、薬物送達と、第1の生理的部位から(生理的部位又は患者の外部とすることができる)第2の部位までの流体輸送とを同時に必要とする任意の生理的位置に配置することができる。
移植片の分路部は、流入部38k及び1個以上の流出部56kを有することができる。幾つかの実施形態においては、流入部及び流出部は、配置すべき生理的空間に応じて、移植片の様々な位置に配置される。図19Rに示したように、流出部は、移植片の近位端52又はその近くに配置することができる。移植片を展開するときには、流入部を前眼房に存在するようなサイズ及び構成にすることができ、流出部を小柱網23又はシュレム管22内に存在するようなサイズ及び構成にすることができる。別の実施形態においては、流出部を、ぶどう膜強膜路の毛様体上領域、脈絡膜上腔、眼の別の部分、又は流体付着しやすい別の生理的空間内に存在するようなサイズ及び構成にすることができる。
少なくとも1個の管腔は、移植片の分路部を通って延在することができる。幾つかの実施形態においては、移植片の分路部を通して流体を導くように働く少なくとも1個の管腔が存在する。ある実施形態においては、各管腔は、管腔軸に沿って流入端から流出端まで延在する。幾つかの実施形態においては、管腔は、実質的に分路の長軸方向中央を通って延在する。別の実施形態においては、管腔は、分路の長軸方向中央から外れていてもよい。
上述したように、幾つかの実施形態においては、外殻で被覆されていない薬物の圧縮ペレット62を、分路及び保持機能を含む移植片に装着又は連結する。図19Tに示したように、移植片の分路部は、1個以上の流入部38k及び1個以上の流出部56kを含む。幾つかの実施形態においては、流入部は、流出部とは異なる生理的空間に配置される。幾つかの実施形態においては、かかる配置によって、第1の場所から第2の場所への流体輸送が可能になる。例えば、幾つかの実施形態においては、眼内に展開されると、流入部は前房に位置し、流出部はシュレム管22に位置する。このようにして、前房に蓄積した眼液は、前房からシュレム管に排出され、それによって前房の流体圧力が低下する。別の実施形態においては、流出部を、ぶどう膜強膜路の毛様体上領域、脈絡膜上腔、眼の別の部分、又は流体付着しやすい別の生理的空間内に存在するようなサイズ及び構成にすることができる。
分路を含む更に別の実施形態は、眼液を第1の場所から異なる場所に排出するのに使用することができる。図19Uに示したように、分路30pは、房水を前房20から直接収集チャネル29に誘導し、房水静脈に排出する。分路30pは、シュレム管の後壁に置かれた遠位端160を有する。取外し可能な位置合わせピン158を利用して、分路管腔42pを収集チャネル29と一直線にする。使用時、ピン158は、移植片管腔及び分路管腔42pを通って延び、基部160から突出し、収集チャネル29に延びて、分路30pを収集チャネル29の中心に配置し、及び/又は収集チャネル29と一直線にする。次いで、分路30pは、シュレム管22の後壁92にしっかりと押し付けられる。持続性バイオ接着剤162を分路基部とシュレム管22の後壁92の間に使用して、分路30pを適所に据え付け、確実に保持する。配置後、ピン158を分路及び移植片管腔42pから引き抜いて、房水を前房20から移植片、分路を通って、収集管29に流す。収集管は、直径が公称20から100マイクロメートルであり、適切な顕微鏡法(超音波生体顕微鏡(UBM:ultrasound biomicroscopy)など)又はレーザーイメージングによって可視化して、分路30pを配置するための指針とする。別の一実施形態においては、ピン158は、眼液中で生分解可能であり、移植片から手作業で除去する必要はない。
幾つかの実施形態においては、分路30pは、小柱網23に以前に入れられた切り込みを通して挿入される。別の実施形態においては、分路30pをブレード形状で形成して、自己穿孔能力を付与することができる。これらの場合には、小柱網23の切り込みは、ブレードをその基部又は基部に近接して有する自己穿孔分路デバイスによって入れられる。
図19Vに示したように、前眼房20から小柱網23を通り、眼のシュレム管22に延在する分路を、それを通る房水の流れに対して軸対称になるように構成することができる。例えば、図19Vに示したように、分路229Aは、前房20に配置され、本明細書に開示した実施形態による薬物送達移植片に結合するように構成された入口端230を含む。分路機能が見やすいように、移植片を示していない。分路229Aの第2の端部231は、シュレム管22中に配置されるように構成される。少なくとも1個の管腔239は、入口端と出口端230、232の間の分路229Aを通って延在する。管腔239は、入口端230の開口部232、及び出口端231の出口233を画定する。
図示した実施形態においては、分路229Aの外面238は円錐形である。したがって、入口端230に隣接する外面238の外周は、出口端231の外面238の外周よりも短い。
小柱網23を通って延在する分路229Aでは、小柱網23の組織は、分路229Aの入口端230を前房に、その出口端231をシュレム管に保持する追加の固定力を与える。例えば、小柱網23は、分路229Aによって占有された開口部を自然に閉じる傾向があると考えられる。したがって、小柱網23は、分路229Aを圧迫しやすいはずである。外面238は円錐形であるので、小柱網23によって加えられる圧迫力は、分路229Aをシュレム管22の方に引き寄せる傾向があるはずである。図示した実施形態においては、分路229Aは、入口端230に隣接した分路229の部分234が前房20にとどまり、出口端231に隣接した分路229の部分235がシュレム管22にとどまるようなサイズである。
図示した実施形態においては、分路229Aの外面238は平滑である。あるいは、外面238は、例えば、湾曲、段階状など、ただしそれだけに限定されない他の輪郭を有することができる。一実施形態においては、外面238は、らっぱ状になるように凹状に湾曲することができる。あるいは、外面238を凸状にすることができる。
ある実施形態においては、分路229Aは、好ましくは、出口開口部233とシュレム管22の壁の間の空間を維持するように構成された1個又は複数の柱又は脚236を含む。したがって、脚236は、シュレム管の壁が分路229Aの出口開口部233を完全に塞ぐのを防止する。図示した実施形態においては、脚236は、分路229Aの最遠位表面に連結され、分路229Aを通って前房20とシュレム管22の間に延在する移植片軸にほぼ平行である。
脚236及び出口233の配置によって、軸対称の流動特性が分路229Aに付与される。例えば、房水は、出口233から任意の方向に流れることができる。したがって、分路229Aは、その移植片軸に対して任意の角度位置でシュレム管に移植することができる。したがって、分路229Aの角度方向を移植前に決定する必要も、特定の向きを移植手順中に保持する必要もない。
図19Wは、一般に参照番号229Bで示される分路229Aの改変形態を示す。この実施形態においては、分路229Bは、部分234から半径方向に延在するフランジ237を含む。好ましくは、フランジ237は、第1の部分234を前房20内に保持するように構成される。一般に、房水は前房20からシュレム管22に向かって流れるが、分路229A、229B又は上記分路のいずれか、及び後述する他の分路は、房水をあらゆる方向に流すことができると理解される。
図19Xは、一般に参照番号229Cで示される分路229Aの別の一改変形態を示す。この実施形態においては、外面238Cは円錐形ではない。そうではなく、外面238Cは円柱状である。分路229Cは、フランジ237と同じサイズ及び形状とすることができるフランジ240を含む。脚236Cがフランジ240から延在する。
このように構築すると、小柱網21の組織は、分路229Cが置かれた穴を自然に閉じる傾向にあり、分路229Cを適所に固定する助けとなる。さらに、脚236Cは、シュレム管の壁が管腔239Cの出口233Cを完全に閉鎖するのを防止するのに役立つ。
図19Yを参照すると、軸対称の小柱分路デバイスの別の一実施形態が示されており、一般に参照番号229Fで示される。
分路229Fは、第1のフランジ240Fを有する入口(近位)セクション、第2のフランジ237Fを有する出口(遠位)セクション、及び入口セクションと出口セクションとを接続する中間セクション284を含む。デバイス229Fの管腔239Fは、房水、液体又は治療薬を入口セクションと出口セクションの間で輸送するように構成される。
分路229Fの入口セクションは、少なくとも1個の入口開口部286を有し、出口セクションは、少なくとも1個の出口開口部287を含む。幾つかの実施形態においては、入口開口部286は移植片の近位端に直接結合し、移植片の管腔を通って流れる眼液は、分路の管腔239Fに流入する。別の実施形態においては、入口開口部286が、眼液を最初に移植片を通さずに眼かから直接受けるように、分路を移植片に連結又は結合させる。更に別の実施形態においては、分路は、両方の出所から(例えば、眼と移植片管腔から)流体を運ぶ。
かかる実施形態の更なる利点は、出口セクション237Fが、房水、液体又は治療薬を実質的に軸対称に排出するのに適切な位置にある少なくとも1個の開口部287、288を含み、開口部287、288が、デバイス281の管腔285と流体連通していることである。図示した実施形態においては、開口部288は、管腔285から半径方向に延在し、出口フランジ237Fの周囲の外向きの面で開口する。
かかる固定要素及び保持突出部もすべて柔軟にすることができることを理解すべきである。別の適切な形状を使用することができ、ここに列挙したものが限定的なものではないことも理解すべきである。さらに、図示したデバイスの幾つかは柔軟ではないように見えるかもしれないが、デバイスを柔軟にすることができることも理解すべきである。再装薬可能なデバイスを含む実施形態においては、保持突出部は、移植片を固定するのに役立つだけでなく、移植片が再装薬中に眼内で位置的により安定するように動きにくくもする。
理解しやすいように、様々な保持突起部を有する移植片の可能な実施形態のうち少数しか示していない。任意の移植片の実施形態は、本明細書に開示した保持突起部のいずれかと容易に組み合わせることができ、その逆も同様であることを理解すべきである。
さらに、上述の幾つかの実施形態は、ある場合には、特定の眼内組織内又は眼内組織に固定して示したが、各実施形態は、本明細書に開示した標的眼内組織のいずれかの中若しくは上に、又は当該技術分野で公知の他の眼組織に、固定又は展開されるように容易に改作できることも理解されたい。
さらに、上記と下記の両方の実施形態は保持突起部の考察を含んでいるものの、本明細書に開示した移植片の幾つかの実施形態は、特定の保持突起部を含む必要がないことも理解されたい。かかる実施形態を使用して、特定の固定点を必要としない眼球標的に薬物を送達し、移植片を所望の眼内腔に単純に展開することができる。かかる標的としては、硝子体液、毛様体筋、毛様体腱、毛様体線維帯、シュレム管、小柱網、強膜上静脈、前房及び前房隅角、水晶体皮質、水晶体上皮、及び水晶体嚢、毛様体突起、後房、脈絡膜、並びに脈絡膜上腔が挙げられる。例えば、幾つかの実施形態においては、本明細書に記載の幾つかの実施形態による移植片を特定の解剖学的部位(例えば、毛様体扁平部)における強膜を通り硝子体液中に(針又は別の貫通送達デバイスを介して)注入する。かかる実施形態は、保持突出部を用いて構築する必要がなく、したがって、ある実施形態においては、保持突出部の使用は特定の標的組織では任意に選択できることを理解されたい。
本明細書に開示した幾つかの実施形態は、対象の眼内に全体が含まれるような寸法であり、その寸法は、標準的眼科技術によって対象ごとに得ることができる。移植手順が完了すると、幾つかの実施形態においては、デバイスの近位端は、前眼房又はその近くに位置することができる。移植片の遠位端は、脈絡膜上腔内のどこに位置してもよい。幾つかの実施形態においては、移植片の遠位端は、縁の近くにある。別の実施形態においては、移植片の遠位端が眼の後方領域の斑の近くにある。別の実施形態においては、デバイスの近位端は、眼の別の領域又はその近くに位置することができる。幾つかのかかる実施形態においては、デバイスの遠位端も、眼の別の領域又はその近くに位置することができる。本明細書では「近く」という用語は、「において(at)」と同義で使用されることもたまにあるが、文脈によっては、薬物が移植片から標的組織に拡散するのに十分隣接した距離を示すこともある。更に別の実施形態においては、移植片は、第1の非眼球生理的空間と第2の非眼球生理的空間の間の距離に及ぶような寸法である。
一実施形態においては、薬物送達移植片は、強膜岬の後方にある毛様体付着組織を通って前進させて、脈絡膜上腔中に配置される。毛様体付着組織は、典型的には、線維性又は多孔性であり、本明細書に開示した送達器具又は別の外科デバイスを用いて強膜岬から比較的容易に穿孔、切断又は分離される。かかる実施形態においては、移植片は、この組織を通って前進し、ぶどう膜強膜路に延在すると、強膜に隣接又は当接する。移植片は、ぶどう膜強膜路の後方部分内の所望の移植部位に達するまで、ぶどう膜強膜路内を強膜の内壁に沿って進められる。
幾つかの実施形態においては、移植片の全長は、長さ1から30mmである。幾つかの実施形態においては、移植片の長さは、2から25mm、6から25mm、8から25mm、10から30mm、15から25mm又は15から18mmである。幾つかの実施形態においては、移植片の長さは、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25mmであり、移植片を含む送達デバイスは、挿入し、角膜を通って虹彩まで前進させ、角膜に自己封着の刺し穴のみを生じさせることができ、幾つかの実施形態においては、移植片の外径は、約100から600μmである。幾つかの実施形態においては、移植片の直径は、約150〜500μm、約125〜550μm、又は約175〜475μmである。幾つかの実施形態においては、移植片の直径は、約100、125、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、460、470、475、480、490又は500μmである。幾つかの実施形態においては、移植片の内径は、約50〜500μmである。幾つかの実施形態においては、内径は、約100〜450μm、150〜500μm、又は75〜475μmである。幾つかの実施形態においては、内径は、約80、90、100、110、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、410、420、425、430、440又は450μmである。デバイスが円盤又はウェーハ形状であるものを含めて、ただしそれだけに限定されない幾つかの実施形態においては、厚さは、約50から200μm、約100から150μm、約25から100μm、及び約100から250μmを含めて、約25から250μmである。涙点への移植のために構成される幾つかの実施形態においては、移植片は(例えば、近位端から遠位端まで)長さ約0.5から約2.5mmの範囲である。移植片の長さは、幾つかの実施形態においては、約0.5mmから約0.7mm、約0.7mmから約0.9mm、約0.9mmから約1.0mm、約1.0mmから約1.1mm、約1.1mmから約1.2mm、約1.2mmから約1.3mm、約1.3mmから約1.35mm、約1.35mmから約1.4mm、約1.4mmから約1.45mm、約1.45mmから約1.5mm、約1.5mmから約1.55mm、約1.55mmから約1.6mm、約1.6mmから約1.65mm、約1.65mmから約1.7mm、約1.7mmから約1.9mm、約1.9mmから約2.1mm、約2.1mmから約2.3mm、約2.3mmから約2.5mmの範囲、又はこれらの範囲の間の長さである。幾つかの実施形態においては、涙点への移植のために構成される移植片の直径は、約0.2mmから約0.3mm、約0.3mmから約0.4mm、約0.4mmから約0.5mm、約0.5mmから約0.6mm、約0.5mmから約0.6mm、約0.6mmから約0.7mm、約0.7mmから約0.8mm、約0.8mmから約0.9mm、約0.9mmから約1.0mm、約1.0mmから約1.1mm、約1.1mmから約1.2mm、約1.2mmから約1.3mm、約1.3mmから約1.4mm、約1.4mmから約1.5mm、約1.5mmから約1.6mm、約1.6mmから約1.7mm、約1.7mmから約1.8mm、約1.8mmから約1.9mm、約1.9mmから約2.0mm、及びこれらの範囲の間の直径を含めて、約0.2mmから2.0mmである。
更なる実施形態においては、移植片の製造中に形成される内部管腔のいずれか又はすべてを親水性材料の層で被覆し、それによって眼液と管腔内に配置された治療薬(単数又は複数)との接触速度を高めることができる。一実施形態においては、親水性材料は、眼液及び/又は薬物に対して透過性がある。逆に、内部管腔のいずれか又はすべてを疎水性材料の層で被覆して、眼液と管腔内に配置された治療薬(単数又は複数)との接触を協調的に抑制することができる。一実施形態においては、疎水性材料は、眼液及び/又は薬物に対して透過性がある。
本明細書に記載の薬物送達移植片の選択実施形態は、移植片の再装薬、すなわち移植片に追加の(同じ又は異なる)治療薬を再充填することを可能にする。図20A〜20Cに示す実施形態においては、移植片の近位端52が開口しており、再装薬デバイス80と相互作用する。再装薬デバイス80は、移植片の近位端52と相互作用する柔軟な締付け把持部74を収容する締付けスリーブ72を含む。ばね負荷をかけることができる柔軟な推進チューブ76は、移植片管腔58に送達される新しい治療薬62を収容する小さい内部凹部78を含む。図20Aにおいては、殻で被覆され、近位障害物でキャップされた新たな用量の薬剤を移植片の管腔に挿入する。図20B及び20Cは、移植片への複数の薬物ペレットの再装填を示す。かかる実施形態においては、一方向通路70は、薬物ペレットを移植片の管腔中に運ぶ再装薬デバイスの挿入を可能にするが、再装薬デバイスを除去すると、通路が閉じて薬物が管腔から漏れるのを防止する。移植片中の薬物の用量を更新する能力を付与することに加えて、移植片に複数のペレットを再装填すると、1つ以上の別の利点が得られることがある。幾つかの実施形態においては、ペレットは、(固体薬物のコアが充填された移植片に比べて)眼液に接触する薬物の表面積を増加させるサイズである。眼液との接触は、総薬物溶出速度の一変数であるので、かかる実施形態においては、ペレットのサイズを必要に応じて調節して特定の所望の放出速度を得ることができる。さらに、ある実施形態においては、薬物充填量が十分なときでも、複数のペレットのサイズを調節して、流体が移植片の管腔を通して流れる速度又は容量を増加させる。さらに、薬物の溶解又は溶出を調節するために、複数のペレットの1個以上をある実施形態においては被覆する。移植片自体に関連して被膜を考察したように、ペレット自体からの薬物放出速度を制御するために、様々な厚さ、組成などの開口部のある又はない被膜でペレットを被覆できることを理解されたい。幾つかの実施形態においては、被覆ペレットを非被覆デバイスに使用し、別の実施形態においては、被覆と非被覆ペレットの組合せを被覆デバイスに使用する。例えば、眼の症状が眼液の除去/分流に加えて薬物療法を必要としていることがわかっている場合、ペレットは、治療効果を得るのに十分な量の薬物を送達すると同時に眼液が移植片の管腔を通り第1の場所から第2の場所に流れるようなサイズにすることができる。さらに、薬物の単一の固体コアとは対照的に、複数のペレット又は複数の粒子が存在すると、ある実施形態においては、移植片を柔軟にすることができる。かかる実施形態においては、移植片が所望の生理的空間内又はそれに隣接して取り付けられるように必要に応じて連結することができ、この継ぎ目がペレットとペレットの接触によって妨げられないように、ペレットの形状をペレットの周囲に空間を与えるように設計することができる。かかる実施形態においては、ペレットは互いにある程度接触してもよく、それでもなお高度の効率で移植片に薬物を充填できることを理解されたい。移植片の柔軟性が不必要又は望ましくないある実施形態においては、ペレットを互いにより密に接触して、移植片の剛性を補う形状にすることができることも理解されたい。
図20D及び20Eに模式的に示したように、細長い移植片は、本明細書に開示した複数の機能を含むことができる。例えば、図20Dは、治療薬62の複数のペレットを含む、近位端52及び遠位端50を有する細長い移植片を示す。本明細書でより詳細に考察するように、治療薬は、実施形態に応じて、ペレット、微小ペレット、小胞、ミセル、又は別の膜状結合構造、オイル、エマルジョン、ゲル、スラリーなどの様々な剤形にすることができる。移植片は、薬物放出領域56を含む。さらに、図20D及び20Eに示した実施形態は、流体流入経路38k及び流出経路56kを含み、したがって治療薬の送達と眼液流出経路(例えば、シュレム管)への流体誘導を組み合わせることができる。
図20Gは、細長い移植片の一実施形態が本明細書に開示した幾つかの実施形態に従って配置されている眼を模式的に示す。示したように、移植片の近位端52は、眼の前部近くにあり、移植片の遠位端50は、より後方の位置にある。移植片は、一実施形態においては脈絡膜上腔に移植することができ、薬物放出領域56が眼の後方領域において治療薬58を移植片から溶出させるように配置することができる。ここで明示されてはいないが、移植片は、場合によっては、本明細書に記載の流体流入及び流出経路を含むことができることを理解されたい。
図20Hは、幾つかの実施形態において使用される追加の構成を示す。例えば、一実施形態においては、移植片は、遠位端50を眼の後方部に、近位端52をより前方の領域にして、眼に(例えば、あつらえの挿入器1000を使用して)配置される。本明細書により詳細に記述されている図示の移植片は、図20Hにおいて56及び56aとして示した複数の薬物放出領域、並びに複数のタイプの治療薬、すなわち58及び58aを含む。かかる移植片の幾つかの実施形態は、例えば、急性又は比較的短期の効果のために(恐らくは、例えば、炎症又は感染リスクを低減させるために)治療薬(58a)の添加又は大量瞬時投与が有益であるときに、使用される。その後、治療薬(例えば、ペレット、58)のより長期処方によって、急性効果を超えた期間、薬物が制御放出される。幾つかの実施形態においては、かかる構成は、デバイスの挿入に伴う合併症を抑制し、挿入から治療する疾患又は障害に付随する1つ以上の症候が軽減するまでの時間を短縮する。
図20Iは、別の薬物溶出戦略による細長いデバイスの更に別の一実施形態を示す。この場合も、移植片は、遠位部50が眼の後方領域に配置される。示した実施形態においては、薬物放出領域56及び56aは、移植片の極遠位端又はその近くに配置される。遠位端は、治療薬58のペレット、及び又は異なる剤形(例えば、微小ペレット、小胞、ゲル)の治療薬、又は異なる治療薬(例えば、第1の治療薬に起因する副作用を軽減又は防止するもの)を移植片の遠位端から洗い流すことができるように構成される。かかる移植片の一模式図を図20Jに示す。移植片の遠位端50は、一方弁70によって形成された薬物放出領域56を含む。幾つかの実施形態においては、弁は、近位端が開き遠位端が可逆的に閉じた2個以上のフラップ70を含む。フラップの近位部にかかる圧力によってフラップが開き、薬物58及び58aが(部分的又は完全に)移植片から排出される。幾つかの実施形態においては、フラップは、(排出された治療薬を含み得る)眼液が移植片に逆流するのを防止するシールが形成されるように、その閉じた(又は実質的に閉じた)位置に戻る。しかし、別の実施形態においては、液密シールは形成されない。実施形態に応じて、別のフラップ又は封止機構を使用する。
かかる実施形態は、幾つかの実施形態においては、初期の移植手術中に使用される。かかる場合においては、治療薬58を洗い流すと、治療薬58は眼内環境に十分曝露されて、治療薬の治療効果を早めることがある。さらに、初期の治療薬58が移植片から洗い流されると、移植片の遠位部が開き(例えば、薬剤で塞がれず)、第2の治療薬58aが送達される。初期の薬剤58をデバイスから洗い流すと、(やはり、第1の薬剤の副作用を軽減又は防止する)第2の薬剤が所望の解剖学的標的組織に確実に到達するのを助ける。デバイスが洗い流されず、依然として治療薬58を含む場合、第2の薬剤58aは、移植片内の第1の薬剤の周りを移動せねばならず、又は(より近位の、したがって後方の標的組織からはさらに遠い)側面の出入口を通って移植片から溶出/流出しなければならないはずである。どちらの手法でも、第2の薬剤58aが眼の後方領域の所望の標的に(少なくとも治療に有効な濃度で)到達することができないという結果になり得る。
更に別の実施形態においては、その治療薬内容物をデバイスの遠位端から洗い流すように構成されたデバイスは、移植後のデバイスの効力及び/又は機能性を評価するときに有用である。こうしたときには、(恐らくは副作用を改善する)第2の薬剤、又は異なる濃度の薬剤を送達できることが有利であり得る。すなわち、これは、移植片を第2の薬剤、又は新たな濃度の第1の薬剤で洗い流すことによって行うことができる。
幾つかの実施形態においては、二次的に、及び/又は第1の治療薬58を流すのと併せて、送達される薬剤58aは、流体、半流体又は流体状の形態である。幾つかの実施形態においては、流体のように挙動する微粒子(例えば、それらは、液体のような流動性を有する)を使用する。幾つかの実施形態においては、第2の薬剤58aは、それ自体の所望の溶出プロファイルを有するように構成される。かかる場合においては、第2の薬剤58aは、場合によっては、制御放出可能な構造に収容又は含有される。幾つかの実施形態においては、これは、治療薬を混合物から既知の溶出速度で放出させる(例えば、「マトリックスを形成する)1種類以上のポリマーと治療薬を混合することを含む。幾つかの実施形態においては、1種類以上のポリマーは、液体又は半液体状態と固体又は半固体状態の間で容易に相互変換できるように選択される。幾つかの実施形態においては、相互変換は、外部刺激(例えば、高周波、光など)に起因する。幾つかの実施形態においては、相互変換は、温度又は圧力によって誘発される。例えば、幾つかの実施形態においては、ポリマーは、室温で液体又は半液体であるが、高温(例えば、生理的温度)に曝されると固体又は半固体になる。そのようにして、ポリマーマトリックスを使用して、治療薬を所望の標的部位に保持し、それによって送達精度及び眼液流による洗い流しの削減を向上させることができる。幾つかの実施形態においては、場合によっては、(繰り返し投与が送達部位におけるポリマーの蓄積を招かないように)ポリマーは生分解性である。幾つかの実施形態においては、ポリマーは、膜結合構造(例えば、ミセル又は小胞)を模倣するように構成されたポリマーの混合物である。幾つかのかかる実施形態においては、薬物は、ミセル又は小胞に組み込まれ、(ポリマーの公知の特性に基づいて)ある速度で溶出するように、ポリマーと混合される。同様に、かかるミセル又は小胞は、場合によっては、液体又は半液体状態と固体又は半固体状態の間で容易に相互変換できるポリマーマトリックスと混合される。
上で考察した要素が、記述した特定の組合せ又は実施形態に移植片を限定するものと解釈すべきではないことを理解されたい。そうではなく、考察した機能は、自由に交換可能であり、本開示による薬物送達移植片の構築を柔軟にする。
<送達器具>
本明細書に記載の系及び方法の別の一態様は、薬物を眼に送達し、場合によっては流体を前房から生理的流出空間に排出するための移植片を移植するための送達器具に関する。幾つかの実施形態においては、移植片は、移植部位から眼球を横切った場所にある部位から眼に挿入される。送達器具は、挿入部位から前房を通り移植部位まで眼球を横切って移植片を前進させるのに十分な長さである。器具の少なくとも一部は、柔軟にすることができる。器具は、互いに長軸方向に移動可能な複数の部材を含むことができる。幾つかの実施形態においては、複数の部材は、1個以上の摺動可能なガイドチューブを含む。幾つかの実施形態においては、送達器具の少なくとも一部は湾曲している。幾つかの実施形態においては、送達器具の一部は堅く、器具の別の部分は柔軟である。
幾つかの実施形態においては、送達器具は、遠位湾曲を有する。送達器具の遠位湾曲は、幾つかの実施形態においては、約10から30mmの半径として特徴づけることができる。幾つかの実施形態においては、遠位湾曲の半径は約20mmである。
幾つかの実施形態においては、送達器具は、(図21のχで示される大きさを有する)遠位角部88を有する。角度χは、送達器具の近位区分94に対して約90から180度として特徴づけることができる。幾つかの実施形態においては、角度χは約145から約170度として特徴づけることができる。幾つかの実施形態においては、角度は、約150から約170度、又は約155から約165度である。角度は、送達器具の近位区分から遠位区分まで滑らかに移行させるように、小さい曲率半径を「肘」に含むことができる。遠位区分の長さは、幾つかの実施形態においては、約0.5から7mmにすることができ、幾つかの別の実施形態においては、遠位区分の長さは約2から3mmである。
別の実施形態においては、湾曲した遠位端が好ましい。かかる実施形態においては、送達器具/分路組立品の高さ(図22の寸法90)は、幾つかの実施形態においては約3mm未満であり、別の実施形態においては2mm未満である。
幾つかの実施形態においては、器具は、切り込み、穴又は開口部を前もって形成せずに組織を通過するように、鋭利な特徴を前端に有し、自己穿孔性、すなわち自己穿通性である。幾つかの実施形態においては、自己穿孔性である器具は、角膜及び/又は縁の組織のみを貫通するように構成される。別の実施形態においては、自己穿孔性である器具は、移植片を送達するために、前房隅角におけるものなどの内部眼組織を貫通するように構成される。あるいは、別個のトロカール、メス、スパチュラ又は類似の器具を使用して、移植片を眼組織(角膜/強膜又はより内部の組織)に通す前にかかる組織に切り込みを前もって形成することができる。幾つかの実施形態においては、移植片は、眼組織の鈍的切開に役立つ(したがって、組織損傷のリスクを低下させる)ように遠位端が丸い。しかし、別の実施形態においては、移植片も鋭利であり、先細であり、又は眼組織を貫通して移植に役立つように構成される。
薬物溶出眼移植片の幾つかの実施形態を送達するために、器具は、器具を眼から引き抜くと、挿入部位が縫合なしに自己封着するように十分小さい断面を有する。送達器具の外寸は、好ましくは、約18ゲージ以下であり、約27又は30ゲージ以上である。
薬物溶出眼移植片の幾つかの実施形態を送達するために、移植片が通過する中空針を用いて角膜組織に切り込みを入れる。針は、切り込みが自己封着するように小さい直径サイズを有し(例えば、18又は19又は20又は21又は22又は23又は24又は25又は26又は27ゲージ)、移植は粘弾性を有する、又は持たない、閉じた房で行われる。自己封着する切り込みは、スパチュラ形状のメスを使用して、角膜を通る略逆V字状の切り込みを入れる、従来の「トンネリング」手順によって形成することもできる。好ましい態様においては、角膜を通る切り込みの形成に使用する器具は、手順中は適所にとどまり(すなわち、角膜の切り込みを通して延在し)、移植後まで除去されない。かかる切り込み形成器具は、切り込み形成器具を引き抜かずに同じ切り込みを通した移植を可能にするために、眼移植片を配置するのに使用することができ、又は送達器具と協働することができる。言うまでもなく、別の態様においては、種々の外科用具を1個以上の角膜の切り込みに複数回通すことができる。
幾つかの実施形態は、ばね負荷推進システムを含む。幾つかの実施形態においては、ばね負荷推進器は、蝶番式ロッドデバイスに作動可能に接続されたボタンを含む。蝶番式ロッドデバイスのロッドは、推進器表面のくぼみに係合し、推進器のばねを圧縮された形態に保つ。使用者がボタンを押すと、ロッドがくぼみから離れ、それによってばねが復元して、推進器を前進させる。
幾つかの実施形態においては、オーバーザワイヤシステムを使用して移植片を送達する。移植片は、ワイヤで送達することができる。幾つかの実施形態においては、ワイヤは自己穿孔性である。ワイヤはトロカールとして機能することもできる。ワイヤは超弾性、柔軟、又は移植片に対して相対的に堅くすることができる。ワイヤは、ある形状を有するように前もって形成することができる。ワイヤは、湾曲していてもよい。ワイヤは、形状記憶を有しても、又は弾性でもよい。幾つかの実施形態においては、ワイヤをプルワイヤとすることができる。ワイヤは、可動カテーテルとすることもできる。
幾つかの実施形態においては、ワイヤを移植片の管腔内に配置する。ワイヤは、管腔内で軸方向に動くことができる。管腔は、弁又は他の流れ調節デバイスを含んでも、含まなくてもよい。
幾つかの実施形態においては、送達器具はトロカールである。トロカールは、屈曲又は湾曲していてもよい。幾つかの実施形態においては、トロカールは柔軟である。別の実施形態においては、トロカールは比較的堅い。別の実施形態においては、トロカールは曲がりにくい。トロカールが曲がりにくい実施形態においては、移植片は比較的柔軟である。トロカールの直径は、約0.001インチから約0.01インチである。幾つかの実施形態においては、トロカールの直径は、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009又は0.01インチである。
幾つかの実施形態においては、移植片の近位端又はその近くに推進力を印加することによって移植片を送達する。推進力は、移植片の端部に印加される引く力でも、押す力でもよい。
器具は、眼中にあるとき、房水が送達器具を通過するのを防止し、及び/又は器具の部材間を通過するのを防止するために、シール又は被膜を含むことができる。シールは、逆流を防止するのに役立つ。幾つかの実施形態においては、器具は、被膜及び親水性又は疎水性薬剤で被覆される。幾つかの実施形態においては、器具の一領域を被膜と親水性薬剤で被覆し、器具の別の一領域を被膜と疎水性薬剤で被覆する。送達器具は、さらに、器具を構成する種々の部材間にシールを含むことができる。シールは、器具の部材の滑りばめ表面間に疎水性又は親水性被膜を含むことができる。シールは、送達器具により運ばれるときに、移植片の近位に配置することができる。幾つかの実施形態においては、シールは、互いに接近して取り付けられるように機械加工された2個のデバイスの各々の少なくとも一区分に存在する。
送達器具は、傾斜形状を有する遠位端を含むことができる。送達器具は、スパチュラ形状を有する遠位端を含むことができる。傾斜又はスパチュラ形状は、移植片を含む凹部を含んでも、含まなくてもよい。凹部は、移植片を押し出す、又は排出する、推進器又は他の適切な手段を含むことができる。
送達器具は、複数の移植片を送達するように構成することができる。幾つかのかかる実施形態においては、移植片をデバイス内に縦に(又は移植片の数が2を超える場合は連続的に)配列することができる。
<手順>
眼移植片の幾つかの実施形態を送達するために、移植は粘弾性を有する、又は持たない、閉じた房で行われる。
移植片は、推進器などのアプリケータを用いて配置することができ、又はその全体を参照により本明細書に援用し、本明細書及び開示の一部とする、2002年8月28日に出願された米国特許出願公開第2004/0050392号(2008年2月19日付けにて許可された米国特許第7,331,984号)に開示されたものなど、エネルギーを器具中に貯蔵した送達器具を用いて配置することができる。幾つかの実施形態においては、アプリケータを通して流体を注入して、高い流体圧力を移植片の前端で生成し、移植を容易にすることができる。
本発明の一実施形態においては、眼の小柱網を通して小柱ステントを留置するのに使用されるものと類似した送達装置(又は「アプリケータ」)を使用する。かかる送達装置のある実施形態は、その各々を参照により援用し、本明細書及び開示の一部とする、2002年8月28日に出願された米国特許出願公開第2004/0050392号(2008年2月19日付けにて許可された米国特許第7,331,984号)、「緑内障治療のために小柱分路を配置するためのアプリケータ及び方法(APPLICATOR AND METHODS FOR PLACING A TRABECULAR SHUNT FOR GLAUCOMA TREATMENT)」と題する米国特許出願公開第2002/0133168号(現在は放棄)、並びに2001年3月16日に出願された「緑内障治療のために小柱分路を配置するためのアプリケータ及び方法(APPLICATOR AND METHODS FOR PLACING A TRABECULAR SHUNT FOR GLAUCOMA TREATMENT)」と題する米国特許仮出願第60/276,609号(現在は満了)、に開示されている。
一実施形態においては、送達装置2000は、ハンドピース、細長い先端部、保持具及び作動装置を含み、図20Fに模式的に示される。ハンドピース1000は、遠位端1002と近位端1004を有する。細長い先端部1010は、ハンドピースの遠位端に接続される。細長い先端部は、遠位部を有し、角膜の切り込みを通り、前眼房に配置されるように構成される。保持具1020(例えば、挿入チューブ)は、細長い先端部の遠位部に装着される。保持具は、薬物送達移植片を保持及び放出するように構成される。作動装置1040は、ハンドピース上にあり、保持具を作動させて、薬物送達移植片を保持具から放出する。一実施形態においては、送達装置内の展開機構は、プッシュプル型プランジャを含む。
幾つかの実施形態においては、保持具はクランプを含む。幾つかの実施形態においては、装置は、さらに、薬物送達移植片が保持具によって保持されているときに負荷がかけられるように構成されたばねをハンドピース内に含む。ばねは、作動装置を作動させると少なくとも部分的に負荷が軽減され、薬物送達移植片を保持具から放出することができる。
種々の実施形態においては、クランプは、薬物送達移植片の少なくとも近位部に締め付け力をかけるように構成された複数の爪を含む。保持具は、複数のフランジも含むことができる。
幾つかの実施形態においては、細長い先端部の遠位部は、柔軟な材料でできている。これは、柔軟なワイヤとすることができる。遠位部は、好ましくはハンドピースの長軸から約45度の偏向範囲を有することができる。送達装置は、さらに、細長い先端部に洗浄口を含むことができる。
幾つかの実施形態においては、方法は、遠位端及び近位端を有するハンドピースと、ハンドピースの遠位端に接続された細長い先端部とを含む送達装置を使用することを含む。細長い先端部は、遠位部を有し、角膜の切り込みを通り、前眼房に配置されるように構成される。装置は、さらに、細長い先端部の遠位部に装着された保持具と、保持具を作動させて薬物送達移植片を保持具から放出するハンドピース上の作動装置とを有する。保持具は、薬物送達移植片を保持及び放出するように構成される。
送達器具は、角膜の挿入部位を通って前進し、眼球を横切って、又は後側に進んで前房隅角に入り、前房隅角の基部に位置することができる。前房隅角を基準点として使用して、送達器具をさらに略後方に進めて、移植片を前房隅角の内側の虹彩に進めることができる。
場合によっては、移植片構造に基づいて、移植片は、前房隅角内に位置し、前房隅角の環状形状に一致した湾曲形状をとることができる。
幾つかの実施形態においては、移植片を前房隅角の組織又は虹彩組織に隣接して配置することができ、推進チューブを送達器具の遠位端に向かって軸方向に前進させることができる。推進チューブが前進すると、移植片も前進する。移植片が組織を通り、もはや送達器具の管腔中にないように前進させてから、送達器具を引っ込めて、移植片を眼組織中に留置する。
移植片の配置及び移植は、ゴニオスコープ又は他の従来の撮像装置を使用して行うことができる。幾つかの実施形態においては、送達器具を使用して、連続的に移植力を加えることによって、送達器具の遠位部を用いて所定の位置まで移植片を軽くたたくことによって、又はこれらの方法の組合せによって、移植片を所望の位置に移動させる。移植片が所望の位置にきたら、送達器具の遠位部を用いて軽くたたいて移植片をさらに据え付けることができる。
一実施形態においては、薬物送達移植片を虹彩の別の部分又は他の眼内組織に固着させて、移植片の固定を助ける。一実施形態においては、この追加の固定を生体適合性接着剤を用いて行うことができる。別の実施形態においては、1つ以上の縫合材を使用することができる。別の一実施形態においては、薬物送達移植片は、移植片本体の外面と前房隅角の周囲組織との相互作用によって、実質的に適所に保持される。
図23は、本明細書の実施形態に記載のように、薬物送達移植片を眼に移植する外科的方法の一実施形態を示す。第1の切り込み又はスリットは、縁21の後方、すなわち、乳白色の強膜11が透明な角膜12になり始める強膜11の領域の後方の場所の結膜及び強膜11に入れられる。幾つかの実施形態においては、第1の切り込みは、縁の約3mm後方を含めて、縁21の後方である。幾つかの実施形態においては、図23に示したように、手術用具が前房に(前後軸に対して)浅い角度で挿入されるように切り込みを入れる。別の実施形態においては、第1の切り込みは、器具の挿入角度を大きくすることができるように入れることができる(例えば、図24〜26参照)。さらに、第1の切り込みを薬物送達移植片の幅よりもわずかに大きくする。一実施形態においては、従来の毛様体解離術用スパチュラを第1の切り込みから毛様体上腔に挿入して、正確な解剖学的位置を確認することができる。
薬物送達移植片の上面及び下面の一部は、移植片の前端が適切に配向するように、手術用具、例えば、鉗子でしっかりと把持することができる。移植片は、粘弾性によって、又は推進チューブ若しくは移植片送達装置の壁との機械的インターロックによって、固定することもできる。一実施形態においては、移植片は、移植片の長軸が実質的に手術用具の把持端の長軸と同軸になるように配向される。薬物送達移植片は、第1の切り込みを通して配置される。
送達器具は、挿入部位から眼球を横切り前房隅角に進み、強膜岬近くの場所に位置することができる。強膜岬を基準点として使用して、送達器具をさらに略後方に進めて、移植片を虹彩方向に強膜岬のちょうど内側の場所の眼組織に進めることができる。
場合によっては、移植片構造に基づいて、移植片の挿入頭部のせん断縁は、強膜岬と小柱網の後方の毛様体16との間を通ることができる。
薬物送達移植片は、その挿入頭部の一部、及び導管の第1の端部が前眼房20内に位置するまで、連続して後方に進めることができる。したがって、導管の第1の端部は前眼房20と流体連通することになる。薬物送達移植片の細長い本体の遠位端は、導管の第2の端部が脈絡膜上腔と流体連通するように、眼の脈絡膜上腔中に配置することができる。あるいは、移植片を前房隅角の組織に隣接して配置することができ、推進チューブを送達器具の遠位端に向かって軸方向に前進させることができる。推進チューブが前進すると、移植片も前進する。移植片が組織を通り、もはや送達器具の管腔中にないように前進させてから、送達器具を引っ込めて、移植片を眼組織中に留置する。
移植片の配置及び移植は、ゴニオスコープ又は他の従来の撮像装置を使用して行うことができる。幾つかの実施形態においては、送達器具を使用して、連続的に移植力を加えることによって、送達器具の遠位部を用いて所定の位置まで移植片を軽くたたくことによって、又はこれらの方法の組合せによって、移植片を所望の位置に移動させる。移植片が所望の位置にきたら、送達器具の遠位部を用いて軽くたたいて移植片をさらに据え付けることができる。
一実施形態においては、薬物送達移植片を強膜11の一部に縫合して、移植片の固定を助ける。一実施形態においては、続いて、第1の切り込みを縫合して閉じる。薬物送達移植片を固定するのに使用される縫合材を、第1の切り込みを閉じるのに使用することもできることを理解されたい。別の一実施形態においては、薬物送達移植片は、移植片本体の外面と強膜11及び毛様体16及び/又は脈絡膜12の組織との相互作用により、移植片を強膜11に縫合せずに実質的に適所に保持される。さらに、一実施形態においては、第1の切り込みは十分小さいので、切り込みは、薬物送達移植片の移植後に手術用具を引き抜くと切り込みを縫合せずに自己封着する。
本明細書で考察するように、幾つかの実施形態においては、薬物送達移植片は、さらに、前房20と脈絡膜上腔の間に排液デバイスを設けるように構成された管腔を構成する分路を含む。移植すると、排液デバイスは、毛様体解離を形成することができ、移植片は、分路をその長さに沿って通る房水の持続的な開存性の連通をもたらす。したがって、房水は、脈絡膜上腔に送達されて、そこで吸収され、さらに眼内圧を低下させることができる。
幾つかの実施形態においては、薬物送達移植片を縁又はその近くの小さい切り込みを通して、眼球を横切ってアブ・インテルノで送達することが望ましい(図24)。このシステム全体の形状によれば、送達器具が遠位湾曲部又は遠位角部を含むことが有利である。前者の場合、薬物送達移植片は、湾曲部に沿った送達を容易にするために柔軟にすることができ、又は正確な経路に沿って動きやすいようにより緩く保持することができる。後者の場合、移植片を相対的に堅くすることができる。送達器具は、遠位角部を通過するのに十分柔軟である移植片前進要素(例えば推進器)を内蔵することができる。
幾つかの実施形態においては、移植片と送達器具は一緒に、縁21又はその近くの切り込みから前房20を通り、虹彩13を越え、さらに毛様体筋付着部を通り、薬物送達移植片出口部がぶどう膜強膜路に位置する(例えば、強膜11と脈絡膜12の間に画定された脈絡膜上腔に接する)まで進む。図24は、送達器具を縁21のかなり上方に挿入して使用することができる経眼移植手法を示す。別の実施形態においては(例えば、図25参照)、切り込みをより後方、より縁21の近くに入れることができる。一実施形態においては、切り込みを眼の鼻側に入れ、薬物送達移植片40の移植場所を眼の耳側にする。別の一実施形態においては、薬物送達移植片の移植場所が眼の鼻側になるように切り込みを耳側に入れることができる。幾つかの実施形態においては、操作者は、送達器具を引き戻しながら、同時に推進装置を押して、図26に示したように、薬物送達移植片出口部がその場所を斑34近くの脈絡膜上腔の後方領域に維持するようにする。移植片は送達器具から放出され、送達器具は近位に引っ込められる。送達器具は、前房から切り込みを通して引き抜かれる。
幾つかの実施形態においては、緑内障患者の眼内圧を低下させるために、房水が線維性付着帯を通って連続的に流出する薬物送達移植片を移植し、前房20をぶどう膜強膜路に接続することが望ましい。幾つかの実施形態においては、縁21の小さな切り込みを通して内部から(アブ・インテルノに)眼球を横切るデバイスを用いて、薬物送達移植片を送達することが望ましい。
幾つかの実施形態においては、薬物送達移植片を移植する微小侵襲法を提供する。幾つかのかかる実施形態においては、眼外技術を利用する。幾つかの実施形態においては、技術は非穿通性であり、それによって移植方法の侵襲性を制限する。本明細書で考察するように、幾つかの実施形態においては、移植された薬物送達デバイスは分路を含む。幾つかの実施形態においては、かかる移植片は、第1の場所からの流体の除去を促進し、同時に薬物を送達する。幾つかの実施形態においては、移植片は、流体を前房から脈絡膜上腔に通して、流体(例えば、眼房水)を前房から除去し、前房の圧力上昇を抑制するのを助ける。
幾つかの実施形態においては(例えば、図27参照)、結膜及び強膜11を通して脈絡膜28の表面に外科的に窓(例えば、スリット又は別の小さい切り込み)を形成する(穿通なしに)。幾つかの実施形態においては、スリットは、眼の光軸に垂直である。幾つかの実施形態においては、深さ止めを切り込みデバイスと併用する。ある実施形態においては、切り込みデバイスは、ダイアモンド又は金属ブレード、レーザーなどの1つである。幾つかの実施形態においては、初期の切り込みを鋭利な装置を用いて入れ、脈絡膜表面の切り込みの最終部分をそれよりは鋭利でない器具を用いて入れ、それによって血管の多い脈絡膜を損なうリスクを低下させる。幾つかの実施形態においては、移植片の進入及び操作を容易にするために、スリットを強膜に接して又はほぼ接して形成する。
幾つかの実施形態においては、やはり脈絡膜の穿通なしに、毛様体扁平部又はその近くにおける強膜の小さなコアを除去する。脈絡膜を穿通しないようにするために、強膜の厚さを、場合によっては、光干渉断層法(OCT:optical coherence tomography)、超音波、又は外科処理中の眼の視覚固定具を用いて測定することができる。かかる実施形態においては、強膜のコアは、場合によっては切り込みを確実に適切な深さにする深さ止めゲージを含む、穿孔器具(例えば、回転式又は静的穿孔器)によって除去される。別の実施形態においては、レーザー、ダイアモンドブレード、金属ブレード、又は別の類似の切り込みデバイスを使用する。
窓又はスリットが強膜に形成され、脈絡膜上腔が露出した後、移植片40を窓又はスリットに差し込み、器具38aを使用して複数の方向に前進させることができる(例えば、図27B〜27C参照)。器具38aを使用して、移植片40を後方、前方、上方又は下方に動かすことができる。器具38aは、特に、脈絡膜又は他の構造を損なわずに、移植片を適切な場所に前進させるように設計される。次いで、器具38aを除去して、移植片40を残すことができる。幾つかの実施形態においては、結膜及び強膜の窓は、切り込みを自己封着するのに十分な小ささである。幾つかの実施形態においては、それは、縫合、ステープル、組織共通創傷接着剤などによって封着することができるより大きい窓又はスリットとすることができる。これらの実施形態によるスリット又は窓は、例えば、長さ又は直径1mm以下とすることができる。幾つかの実施形態においては、切り込みの長さは、約0.2から約0.4mm、約0.4から約0.6mm、約0.6mmから約0.8mm、約0.8mmから約1.0mm、約1.0から約1.5mmの範囲、及びその重複範囲である。幾つかの実施形態においては、より大きい切り込み(スリット又は窓)寸法を使用する。
幾つかの実施形態においては、移植片40は、形状が管状又は楕円管状である。幾つかの実施形態においては、かかる形状は、移植片が小さい開口部を通過するのを容易にする。幾つかの実施形態においては、移植片40は、丸い閉じた遠位端を有し、別の実施形態においては、遠位端は開いている。開口端の移植片を使用する幾つかの実施形態においては、移植片の(例えば、脈絡膜上腔への)前進中に組織閉塞を防止するために、開口端は挿入器具の一部で満たされる(例えば、一時的に塞がれる)。幾つかの実施形態においては、移植片は、本明細書に記載の移植片であり、移植片の貫通孔、細孔又は薬物放出領域を通って溶出する薬物を含む管腔を含む。本明細書で考察するように、薬物溶出は、幾つかの実施形態においては、眼の後部(例えば、斑又は視神経)の方向を標的にし、治療薬(例えば、ステロイド又は抗VEGF)を送達して、網膜又は視神経疾患を治療する。
幾つかの実施形態においては、移植片40及び移植器具38aは、移植片を前進させ、強膜を切開せずに前房を貫通する適切な先端部を有するように設計される。幾つかの実施形態においては、前房を貫通する先端部は移植片の一部であり、幾つかの実施形態においては、挿入器具の一部である。かかる実施形態においては、移植片は、緑内障又は高眼圧症を治療するために眼房水が前房から脈絡膜上腔に通る導管として機能する(例えば、分路)。幾つかの実施形態においては、移植片は、薬物を前房に送達して、緑内障を治療するように構成される。幾つかの実施形態においては、薬物は、比較的長期間(例えば、数週間から数か月、更には数年も)かけて溶出するように構成(例えば、生成)される。かかる薬剤の非限定的例は、ベータ遮断薬又はプロスタグランジンである。幾つかの実施形態においては、単一の移植片が挿入され、別の実施形態においては、2個以上の移植片が、同じ又は異なる場所で、眼房水導管又は薬物送達機構の任意の組合せでこのようにして移植される。
図28は、本明細書に教示又は示唆した種々の移植片実施形態のいずれかを眼10内の移植部位に配置する、説明のための経眼方法を示す。送達装置100bは、一般に、シリンジ部116及びカニューレ部118を含む。カニューレ118の遠位セクションは、場合によっては、少なくとも1個の洗浄用穴120、及び薬物送達移植片30を保持するための遠位空間122を含む。遠位空間122の管腔の近位端124は、カニューレ部118の残りの管腔から遮断される。図28の送達装置は、本明細書に教示又は示唆した種々の薬物送達移植片実施形態のいずれかと一緒に使用することができる。幾つかの実施形態においては、標的移植片部位は、虹彩の下方部分である。図28に示した送達装置の角度は、説明のためのものであり、幾つかの実施形態においては、示した角度より浅い又は浅くない角度が好ましい場合もあることを理解すべきである。
図29は、本明細書に教示又は示唆した種々の移植片実施形態のいずれかを、眼と同じ側の移植片部位に配置するための例示的方法を示す。一実施形態においては、薬物送達移植片は、外側から眼に小さな刺し穴を形成するアプリケータ又は送達装置100cを用いて、虹彩に対して眼10の前房20に挿入される。幾つかの実施形態においては、標的移植片部位は、虹彩の下方部分である。
図30は、本明細書に開示した幾つかの移植方法に沿って眼10の虹彩13に固着された本明細書に開示した幾つかの実施形態に沿った薬物送達移植片を示す。虹彩は、本明細書に記載した移植片を固定することができる多数の組織の1つにすぎないことを理解されたい。
図31は、本明細書に開示した幾つかの実施形態に沿った薬物送達移植片の配置の別の可能な一実施形態を示す。一実施形態においては、本明細書に開示した幾つかの実施形態に沿った移植片の外殻54が前房隅角に配置されて示されている(断面)。一実施形態においては、経眼送達方法及び装置を使用して、薬物送達移植片全体を前房隅角内に配置することができる。薬物送達移植片は、実質的に前角の湾曲をたどる。幾つかの実施形態においては、移植片は、虹彩の下方部分に沿って実質的に前房隅角内に配置される。
幾つかの実施形態においては、移植片を配置すると、薬物標的が眼房水の自然な流れの上流になることもある。例えば、房水は、毛様体突起から前房隅角に流れ、ある実施形態の移植部位によっては、移植片から放出される薬物が標的組織に接触するために移動する必要があり得るのとは逆の流体流れを形成することがある。したがって、ある実施形態においては、例えば、標的組織が毛様体突起であるときには、溶出薬物は、前房から後房の毛様体突起の標的受容体まで進むのに虹彩組織を通って拡散しなければならない。虹彩を通る薬物の拡散、及び房水の流れの要件は、ある場合には、毛様体に達する溶出薬物の量を制限し得る。
これらの課題を克服するために、ある実施形態は、薬物を目的の作用部位(すなわち、標的組織)に直接送達しやすくするために、薬物溶出移植片に隣接する場所に周辺虹彩切開(PI:peripheral iridotomy)、又はデバイスをステント装着したPIを配置することを含む。PIを形成すると、後房と前房の間に比較的大きい連通路が開口する。後房から前房への房水の正味の流れは依然として存在するが、PIの直径が比較的大きいため、線流速が実質的に低下する。したがって、溶出薬物は、房水の流れから大きな抵抗を受けずに、PIを通り拡散することができる。ある種のかかる実施形態においては、移植片の一部は、虹彩を穿通し、薬物を毛様体において直接後房に溶出する構造を有する。別の実施形態においては、移植片は、虹彩に移植及び/又は固定され、薬物を後房及び隣接する毛様体に直接溶出させる。
図22は、ヒトの眼の前方区分の縦割を示し、本明細書に記載の薬物送達移植片の実施形態と一緒に使用することができる送達器具38の別の一実施形態を模式的に示す。図22においては、矢印82は、毛様体筋84と強膜11の線維性付着帯を示す。毛様体筋84は、脈絡膜28と同一の広がりを有する。脈絡膜上腔は、脈絡膜28と強膜11の界面である。眼の他の構造体としては、水晶体26、角膜12、前房20、虹彩13及びシュレム管22が挙げられる。
送達器具/移植片組立品は、虹彩13と角膜12の間を通り虹彩角膜角に到達することができる。したがって、送達器具/分路組立品の高さ(図22の寸法90)は、幾つかの実施形態においては約3mm未満であり、別の実施形態においては2mm未満である。
脈絡膜28と強膜11の間の脈絡膜上腔は、一般に、眼の光軸98と約55度の角度96を成す。この角度は、前段落に記載した高さ条件に加えて、送達器具/移植片組立品の幾何学的設計において考慮すべき特徴である。
薬物送達移植片システム全体の形状によれば、送達器具38が、図22に示したような遠位湾曲部86、図21に示すような遠位角部88、又はその組合せを内蔵することが有利である。遠位湾曲部(図23)は、縁における角膜又は強膜の切り込みを通ってより滑らかに通過すると予想される。この実施形態においては、薬物送達移植片は、湾曲していても、又は柔軟であってもよい。あるいは、図21の設計では、薬物送達移植片は、「肘」、すなわち角部88の遠位にある送達器具の直線区分に装着することができる。この場合、薬物送達移植片は、まっすぐで比較的堅くすることができ、送達器具は、角部を通って前進するのに十分柔軟である送達機構を内蔵することができる。幾つかの実施形態においては、薬物送達移植片は、硬質チューブとすることができる。ただし、移植片は、遠位区分92の長さより長くない。
送達器具38の遠位湾曲部86は、幾つかの実施形態においては約10から30mm、ある実施形態においては約20mmの半径として特徴づけることができる。図21に示した一実施形態における送達器具の遠位角度は、送達器具の近位区分94の軸に対して約90から170度として特徴づけることができる。別の実施形態においては、角度は、約145から約170度とすることができる。角部は、送達器具の近位区分94から遠位区分92まで滑らかに移行させるように、小さい曲率半径を「肘」に含む。遠位区分92の長さは、幾つかの実施形態においては約0.5から7mm、ある実施形態においては約2から3mmにすることができる。
幾つかの実施形態においては、粘弾性又は他の流体を脈絡膜上腔に注入して、脈絡膜と強膜の間に薬物送達移植片が利用できる房又はポケットを形成する。かかるポケットは、薬物送達移植片が分路を含み、眼内圧(IOP:intraocular pressure)を低下させる実施形態においては、脈絡膜及び強膜組織区域のより多くを露出させ、移植中に潤滑及び組織保護をもたらし、ぶどう膜強膜流を増加させる。幾つかの実施形態においては、25又は27Gカニューレを用いて、例えば、毛様体筋付着部の切り込みを通して、又は強膜を通して(例えば、眼の外側から)、粘弾性材料を注入する。粘弾性材料は、移植前、移植中又は移植終了後に、移植片自体を通して注入することもできる。
幾つかの実施形態においては、高浸透圧剤を脈絡膜上腔に注入する。かかる注入は、IOPの低下を遅らせることができる。したがって、脈絡膜吸収を一時的に低下させることによって、術後急性期における低眼圧を回避することができる。高浸透圧剤は、例えば、グルコース、アルブミン、HYPAQUE(商標)媒体、グリセロール又はポリ(エチレングリコール)とすることができる。高浸透圧剤は、患者が回復するにつれて分解又は流出して、安定で許容し得る低IOPになり、一過性の低眼圧を回避することができる。
<制御薬物放出>
本明細書に記載する薬物送達移植片は、薬物を収容し、移植片の種々の成分の設計に基づいて、長期間、制御様式で移植片から薬物を溶出する機能を果たす。移植組成物の種々の要素、移植片の物理的特性、眼中の移植場所、及び薬物の組成は、一緒に働いて所望の薬物放出プロファイルを形成する。
上述したように、薬物送達移植片は、所望の特性を有する任意の生物学的不活性及び生体適合性材料から製造することができる。望ましい特性としては、幾つかの実施形態においては、移植片を製造し、薬物を充填し、乾燥状態で滅菌し、続いて移植時に薬物の再水和を可能にする、液体の水又は水蒸気に対する透過性が挙げられる。さらに、ポリマー鎖間に微視的な孔を含む材料で構築された移植片も望ましい。これらの孔は互いに連結して、移植片材料を通る水のチャネルを形成することができる。幾つかの実施形態においては、得られるチャネルは回旋状であり、それによって、可溶化された薬物が溶出プロセス中に移動する蛇行路を形成する。移植片材料は、有利には、移植片が移植に実用的なサイズであるように薬物に対して十分な透過性も有する。したがって、幾つかの実施形態においては、移植片材料は、送達される薬物に対して十分な透過性があり、移植片は、対象の眼内に全体が収容されて存在する寸法である。移植片材料は、さらに、理想的には、移植中及び移植後の標的の解剖学的構造に適合するだけでなく、移植中及び移植後にねじれが解けたままであり、引き裂かれておらず、穿刺されておらず、開存管腔を有する、十分な弾性、柔軟性及び伸長可能性を有する。幾つかの実施形態においては、移植片材料は、有利には、例えば、モールディング、押出、熱成形などによって、実用的に加工可能である。
外殻に適切な材料の例示的例としては、ポリプロピレン、ポリイミド、ガラス、ニチノール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、コラーゲン、化学処理コラーゲン、ポリエーテルスルホン(PES:polyethersulfone)、ポリ(スチレン−イソブチル−スチレン)、ポリウレタン、エチルビニルアセタート(EVA:ethyl vinyl acetate)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:polyetherether ketone)、Kynar(ポリフッ化ビニリデン;PVDF:Polyvinylidene Fluoride)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA:Polymethylmethacrylate)、Pebax、アクリル、ポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン及び他のシリコーンエラストマー、ポリプロピレン、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapetite)、チタン、金、銀、白金、他の金属及び合金、セラミックス、プラスチック、並びにその混合物又は組合せが挙げられる。移植片のある種の実施形態の構築に使用される別の適切な材料としては、ポリ(乳酸)、ポリ(チロシンカルボナート)、ポリエチレン−酢酸ビニル、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカルボナート)、コラーゲン、ヘパリン化コラーゲン、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸)、及び/又は他のポリマー、コポリマー若しくはブロックコポリマー、ポリエステルウレタン、ポリエステルアミド、ポリエステル尿素、ポリチオエステル、熱可塑性ポリウレタン、シリコーン修飾ポリエーテルウレタン、ポリ(カルボナートウレタン)、又はポリイミドが挙げられるが、それだけに限定されない。熱可塑性ポリウレタンは、脂肪族ポリウレタン、芳香族ポリウレタン、ポリウレタンヒドロゲル形成材料、(その全体を参照により本明細書に援用する米国特許第5,428,123号に記載のものなどの)親水性ポリウレタン又はその組合せを含み得るポリマー又はコポリマーである。非限定的例としては、Elasthane(登録商標)80A、Lubrizol、Tecophilic(登録商標)、Pellethane(登録商標)、carbothane(登録商標)、Tecothane(登録商標)、Tecoplast(登録商標)、Estane(登録商標)などのエラスタン(ポリ(エーテルウレタン))が挙げられる。幾つかの実施形態においては、Carbosil(登録商標)20又はPursil(登録商標)20 80A、Elast−Eon(登録商標)などを含む、ポリシロキサン含有ポリウレタンエラストマーを使用する。親水性及び/又は疎水性材料を使用することができる。かかるエラストマーの非限定的例は、その全体を参照により本明細書に援用する米国特許第6,627,724号に記載されている。ポリ(カルボナートウレタン)としては、Bionate(登録商標)80A又は類似のポリマーが挙げられる。幾つかの実施形態においては、かかるシリコーン変性ポリエーテルウレタンは、シリコーンを含むことによって付与されたポリマーの改善された生物学的安定性に基づいて特に有利である。さらに、幾つかの実施形態においては、酸化安定性及び血栓抵抗も、非変性ポリウレタンに比べて改善されている。幾つかの実施形態においては、シリコーン変性ポリエーテルウレタンを用いると、血管新生、細胞接着、炎症及び/又はタンパク質吸着が減少する。別の実施形態においては、(例えば、移植片を固定するのを助けるために)血管新生、細胞接着又はタンパク質吸着が好ましい場合、シリコーン(又は他の変性剤)の程度を状況に応じて調節することができる。さらに、幾つかの実施形態においては、シリコーン変性は、ポリマーの摩擦係数を低下させ、本明細書に記載のデバイスの移植中の外傷を削減する。幾つかの実施形態においては、シリコーン変性は、本明細書に記載の他の機構に加えて、ポリマーの透過性を調整するのに使用することができる別の変数である。さらに、幾つかの実施形態においては、ポリマーのシリコーン変性は、シリコーン含有表面改質末端基をベースポリマーに添加することによって成される。別の実施形態においては、フッ化炭素(flurorocarbon)又はポリエチレンオキシド表面改質末端基をベースポリマーに添加する。幾つかの実施形態においては、1種類以上の生分解性材料を使用して、移植片のすべて若しくは一部、又は本明細書に開示した任意の他の装置を構築する。かかる材料は、ヒト又は動物の体内に配置されると、特定の化学反応若しくは酵素プロセスに起因しようと、又はかかる反応若しくはプロセスの非存在下であろうと、経時的に分解又は侵食する任意の適切な材料を含む。したがって、この用語を本明細書で使用するときには、生分解性材料は生侵食性材料を含む。かかる生分解性の実施形態においては、生分解性外殻の分解速度は、移植片からの薬物溶出速度の調整に使用することができる(多数の変数のうちの)別の一変数である。
薬物が水分(例えば、液体の水、水蒸気、湿気)に敏感である場合、または水分と接触することによって薬物の長期安定性が悪影響を受けるおそれがある場合などの幾つかの実施形態においては、特にヒトの体温又はその周辺で(例えば、約35〜40℃又は37℃)、液体の水及び/又は水蒸気の侵入に対して有効な障害物になるように、耐水性、水不透過性又は防水性である材料を移植片又は移植片の少なくとも一部に利用することが望ましい場合もある。これは、それ自体が耐水性、水不透過性又は防水性である材料を使用することによって成すことができる。
しかし、一部の状況においては、一般に水不透過性と考えられる材料でも、移植片中の薬物に悪影響を及ぼす十分な水が入る場合もある。例えば、1年間の水の侵入が薬物の5重量%以下であることが望ましい場合もある。移植片の一実施形態においては、これは、約1×10−3g/m2/日以下の材料の水蒸気透過速度に等しいと考えられる。これは、恐らく、耐水性又は水不透過性であると一般にみなされる一部のポリマーの水透過速度の1/10程度である。したがって、材料の耐水性又は水不透過性を高くすることが望ましい場合もある。
材料の耐水性又は水不透過性は、任意の適切な方法によって高くすることができる。かかる処理方法としては、材料に(積層を含めて)被膜を施すこと、又は耐水性を付与する、若しくは不透過性を高くする成分と材料を混合することが挙げられる。例えば、かかる処理は、移植片(又は移植片の一部)自体に施すことができ、製作前に材料に施すことができ(例えば、ポリマーチューブを被覆する)、又は(例えば、樹脂をチューブ又はシートに成形する前に樹脂を材料と混合することによって)材料自体の形成時に施すことができる。かかる処理としては、以下の1つ以上が挙げられるが、それだけに限定されない。材料を疎水性ポリマー又は別の材料で被覆して、又はそれと積層して、耐水性又は不透過性を高くすること、材料を疎水性又は他の材料と混合して、耐水性又は不透過性を高くすること、材料を水又は水蒸気の移入を可能にする材料内の微視的な間隙又は細孔を満たす物質と混合すること、又はそれで処理すること、材料を材料の耐水性又は不透過性を高くするように水を吸収する、吸着する、又は水と反応する水捕捉剤又は吸湿性材料で被覆すること、及び/又はそれと混合すること。
耐水性及び/又は水不透過性を高くする被膜として採用することができる材料の一タイプは、無機材料である。無機材料としては、金属、金属酸化物及び別の金属化合物(例えば、金属硫化物、金属水素化物)、セラミックス、並びに典型元素材料及びその化合物(例えば、炭素(例えば、カーボンナノチューブ)、ケイ素、酸化ケイ素)が挙げられるが、それだけに限定されない。適切な材料の例としては、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)及び酸化ケイ素(例えば、SiO2)が挙げられる。無機材料は、有利には、極端に薄い被膜を基体上に形成する当該技術分野で公知の技術などの技術、例えば、蒸着、原子層堆積、プラズマ蒸着などによって、(材料又は移植片の製造の任意の段階で)材料上に塗布することができる。かかる技術は、ポリマー基体を含めた基体の上に極めて薄い被膜(例えば、厚さ約25nm、厚さ約30nm及び厚さ約35nmを含めて厚さ約20nm〜40nm)を堆積させることができ、本明細書に開示した移植片における使用に適したサイズのものを含めて、小さいチューブの外部及び/又は内部管腔表面の上に被膜を形成することができる。かかる被膜は、柔軟性が望まれる移植片の性能を損なわないように、少なくとも適度に柔軟でありながら、水又は水蒸気の透過に対して優れた抵抗を示すことができる。
治療の用量又は期間を制御するために、治療薬が柔軟な係留された移植片によって送達される実施形態においては(例えば、図16〜17参照)、1個以上の柔軟なシート又は円盤を同時に使用することができる。同様に、シート若しくは円盤及び/又はそれを覆う被膜の構築に使用される材料は、以下に考察するのと同様に、薬物の放出速度を制御するように調製することができる。
薬物送達移植片によって運ばれる薬物は、少なくとも数日間、幾つかの実施形態においては最大数週間、ある好ましい実施形態においては最大数年間の期間にわたって、装置内に適度に保持することができ、その結果、内在薬物(単数又は複数)の溶出が制御される任意の形態とすることができる。ある実施形態は、眼液に溶解しやすい薬物を利用し、別の実施形態は、眼液に部分的に溶解する薬物を利用する。
例えば、治療薬は、圧縮ペレット、固体、カプセル、複数の粒子、液体、ゲル、懸濁液、スラリー、エマルジョンなどを含めて、ただしそれだけに限定されない任意の形態とすることができる。ある実施形態においては、薬物粒子は、微小ペレット(例えば、ミクロ錠剤)、微粉又はスラリーの形態であり、その各々が流体のような性質を有し、内側管腔(単数又は複数)への注入による再装薬が可能である。上述したように、幾つかの実施形態においては、デバイスの充填及び/又は再装薬は、治療薬を送達するシリンジ/針を用いて実施される。幾つかの実施形態においては、ミクロ錠剤は、23〜25ゲージ、25から27ゲージ、27〜29ゲージ、29〜30ゲージ、30〜32ゲージ及びその重複範囲を含めて、約23ゲージから約32ゲージの針を通して送達される。幾つかの実施形態においては、針は23、24、25、26、27、28、29、30、31又は32ゲージである。
1つを超える薬物が特定の病態の治療のために望まれるとき、又は第2の薬物が第1の薬物の副作用を相殺するためなどに投与されるときには、幾つかの実施形態は、同じ形態の2つの薬剤を利用することができる。別の実施形態においては、異なる形態の薬剤を使用することができる。同様に、1つ以上の薬物が、例えば、安定性を高めるために、又は溶出プロファイルを調整するために、アジュバント化合物、賦形化合物又は補助化合物を利用する場合、該化合物(単数又は複数)も、薬物と適合し、移植片によって適度に保持することができる任意の形態とすることができる。
幾つかの実施形態においては、移植片から放出された薬物による特定の病態の治療は、病態を治療し得るだけでなく、ある望ましくない副作用を誘発するおそれがある。ある場合には、ある種の薬物の送達は、病的症状を治療することができるが、眼内圧を間接的に上昇させるおそれがある。例えば、ステロイドは、かかる作用を有することがある。ある実施形態においては、薬物送達分路は、網膜又は本明細書に記載する他の標的組織などの眼球標的組織にステロイドを送達し、それによって網膜の病態を治療するだけでなく、局所炎症又は流体蓄積に起因し得る眼内圧上昇を誘発するおそれもある。かかる実施形態においては、分路機能は、蓄積した流体を運び去ることによって望ましくない眼内圧上昇を低下させる。したがって、幾つかの実施形態においては、薬物送達装置と分路の両方として機能する移植片は、治療薬を送達するのに役立つだけでなく、同時に蓄積流体を排出し、それによって薬物の副作用を軽減するのに役立つこともできる。かかる実施形態は、ある眼球状態で展開することができ、又は移植片の分路機能によって抑制する必要がある流体蓄積を薬物の送達が同調して引き起こす任意の他の生理的状態で展開することができる。幾つかのかかる実施形態においては、特に標的組織が圧力に対する感受性が高い、又は蓄積流体に呼応して膨張する空間若しくは容量が限られているときには、蓄積流体を排出して組織損傷又は機能喪失しないようにする必要がある。眼及び脳は、かかる組織の2つの非限定的例である。
本明細書に記載する実施形態は、生分解性材料、賦形剤、又は薬物の放出特性を変える他の薬剤と混合又は調合された薬物を含むことができることを理解されたい。好ましい生分解性材料としては、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、すなわちPLGAとしても知られる乳酸とグリコール酸のコポリマーが挙げられる。本明細書の一部の開示はPLGAの使用を明確に記載しているが、かかる実施形態においては、別の適切な生分解性材料をPLGAの代わりに使用することができ、又はPLGAと併用できることを当業者は理解されたい。本明細書に記載するある実施形態においては、移植片の管腔内に配置された薬物は、任意の他の化合物又は材料と調合も混合もされておらず、それによって管腔内に配置された薬物の体積が最大になることも理解されたい。
幾つかの実施形態においては、PLGAコポリマー又は他のポリマー材料からの特定の薬物放出速度を規定することが望ましい場合もある。ポリマーからの薬物放出速度は、そのポリマーの分解速度と相関するので、分解速度の制御は、治療薬に含まれる薬物の送達速度を制御するための手段になる。PLGAコポリマー又は他のポリマーを構成するポリマー鎖又はコポリマー鎖の平均分子量の変化を利用して、コポリマーの分解速度を制御し、それによって眼への治療薬送達の所望の期間又は別の放出プロファイルを得ることができる。
PLGAコポリマーを採用したある別の実施形態においては、PLGAコポリマーの生分解速度は、コポリマー中の乳酸単位とグリコール酸単位の比を変えることによって制御することができる。
更に別の実施形態は、コポリマーの構成要素の平均分子量の変更と、コポリマー中の乳酸とグリコール酸の比の変更の組合せを利用して、所望の生分解速度を得ることができる。
上述したように、移植片の外殻は、幾つかの実施形態においてはポリマーを含む。そのうえ、殻は、さらに、移植片上又は移植片内の様々な場所に1つ以上のポリマー被膜を含むことができる。外殻及び任意のポリマー被膜は、場合によっては、生分解性である。生分解性外殻及び生分解性ポリマー被膜は、ポリ(乳酸)、ポリエチレン−酢酸ビニル、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカルボナート)、コラーゲン、ヘパリン化コラーゲン、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸)、及び/又は他のポリマー若しくはコポリマーを含めて、ただしそれだけに限定されない任意の適切な材料とすることができる。
上述したように、移植片の幾つかの実施形態は、殻の形成に使用する構成要素に応じた制御様式で眼液に対して透過性があるポリマー外殻を含む。例えば、ポリマーサブユニットの濃度によって、得られる殻の透過性が決まる。したがって、ポリマー殻を構成するポリマーの組成によって、ポリマーを通る眼液の通過速度が決まり、生分解性の場合、眼液中の生分解速度が決まる。殻の透過性は、殻からの薬物の放出にも影響する。さらに、上述したように、殻の上に形成された薬物放出領域は、移植片からの薬物の放出プロファイルを変化させる。薬物の放出の制御は、さらに、薬物放出領域を形成する、又は薬物放出領域の特性を変える、殻の中又は上の被膜によって制御することができる(例えば、薬物放出領域の上の被膜は、領域を厚くし、したがって薬物放出速度を低下させる)。
例えば、薬物とポリマーの所与の組合せは、以下のように特徴的な拡散係数Dを生じる。
式中、D=拡散係数(cm2/秒)
A=薬物放出領域の面積
(Ci−Co)=装置の内側と外側の薬物濃度差
d=薬物放出領域の厚さ
したがって、薬物放出領域の面積及び厚さは、移植片からの薬物溶出速度をある程度決定する変数であり、移植片の製造プロセス中に制御できる変数でもある。難溶性薬物を使用する幾つかの実施形態においては、薬物放出領域は、薄く(dが小さい)、又は総面積を大きく(Aが大きい)、又は(外殻の構造的充足性によって決定されるように)2つを組み合わせて、製造することができる。いずれの場合も、最終結果として、薬物溶出速度が増加して、移植片の構造及び設計に基づく薬物の低溶解性を補うことができる。
それに対して、高可溶性薬物を使用する幾つかの実施形態においては、薬物放出領域は、外殻の残部と実質的に同じ厚さでできている、小面積でできている、又はその組合せである。
さらに、ある実施形態は、追加のポリマー被膜を使用して、(i)薬物放出領域の有効厚さ(d)を増大させて、又は(ii)移植片の当該部分(薬物放出領域+被膜)の全透過性を低下させて、薬物溶出を減少させる。更に別の実施形態においては、複数の追加のポリマー被膜を使用する。移植片と外殻上の関連する薬物放出領域との異なる又は重なる部分を覆うことによって、移植片の様々な領域からの薬物放出を制御して、移植片全体からの薬物放出パターンを制御する。例えば、少なくとも2つの薬物放出領域を有する移植片を2種類の追加のポリマーで被覆することができ、2つの追加ポリマーはいずれも放出領域をすっかり覆い、しかも単一のポリマーのみでその一方の領域を覆うものである。したがって、2つの薬物放出領域からの薬物溶出速度が異なり、例えば、薬物が2つの領域から順次放出されるように制御することができる。別の実施形態においては、2つの領域は、異なる速度で放出することができる。複数の内部管腔を有する実施形態においては、異なる濃度又は異なる薬物を放出することもできる。これらの変数は、所望の溶出プロファイル又は治療計画を作成することができるように、移植片からの薬物放出の速度又は期間を変更するように制御可能であることを理解されたい。
本明細書に記載する幾つかの実施形態においては、薬物溶出を特に促進又は抑制するのに必要とされる、又は利用される、直接の貫通孔又は貫通開口部が存在しない。したがって、それらの実施形態においては、(極めて高濃度であり得る)薬物のコアと、移植片が配置される部位に隣接する眼組織との直接接触がない。ある場合には、移植片内にある高濃度の薬物と眼組織を直接接触させると、局所的細胞毒性を生じることがあり、局所的細胞死のおそれがある。
しかし、本明細書に開示した幾つかの別の実施形態においては、所望の薬物溶出プロファイルを得るために、移植片の外殻を通る1個以上のオリフィスの数、サイズ及び配置を変更できることを理解すべきである。オリフィスの数、サイズ又はその両方を移植片の表面積に対して増加させると、外殻を通過し、移植片の内部の治療薬に接触する眼液の量が増加する。同様に、オリフィス:外殻面積の比を低下させると、移植片に入る眼液が減少し、それによって移植片からの薬物放出速度が低下する。さらに、1個以上のオリフィスが移植中、又は眼中に存在した後に、閉鎖された場合、オリフィスが複数あると、移植片が移植された眼球環境と移植片内部の間の余剰な連通手段になる。別の実施形態においては、外殻は、移植片の遠位先端部に1個(以上)のオリフィスを含むことができる。上述したように、このオリフィスの形状及びサイズは、所望の溶出プロファイルに基づいて選択される。幾つかの実施形態においては、生分解性ポリマー栓は、遠位オリフィス内に配置され、それによって合成コルク栓として働く。移植プロセス中の眼組織の組織外傷又はコアリングも抑制され、遠位オリフィスの閉塞又は部分的閉鎖を防止することができる。さらに、ポリマー栓は、既知の期間で生分解するように調整できるので、薬物の溶出が起こる前に確実に移植片を全体的に配置することができる。更に別の実施形態は、上述したように、遠位オリフィスと外殻のより近位に配置された複数のオリフィスとの組合せを含む。
さらに、(オリフィス又は薬物放出領域を有する)移植片上の1個以上の透過性又は半透過性被膜の付加によって、溶出プロファイルを調整することもできる。さらに、これらの種々の要素の組合せを幾つかの実施形態においては使用して、薬物放出プロファイルを制御する複数の方法を提供することができる。
本明細書に記載の実施形態を更に利するのは、一部の眼の治療薬の可能な使用範囲が広いことである。例えば、眼液に高可溶性である薬物は、その効力が急性薬物投与によって治療可能な病態に限られるので、治療計画における適用性が狭くなるおそれがある。しかし、本明細書に開示した移植片と組み合わせると、かかる薬物を長期治療計画に利用することができる。1つ以上の薬物放出領域を含む移植片の遠位部内に配置された高可溶性薬物を調製して、特定の長期制御放出プロファイルを形成することができる。
1つ以上の薬物放出領域の代わりに、又はそれに加えて、1つ以上のポリマー被膜を移植片殻の外側又は内部管腔内に設置して、薬物を包むか、又は部分的に包むことができる。1個以上のオリフィスを含む幾つかの実施形態においては、ポリマー被膜は、眼液と接触する移植片の最初の部分であり、したがって、移植片の薬物を含む内部管腔への眼液の流入速度の最初の制御部になる。ポリマー被膜の組成、生分解速度(生分解性である場合)、及びポリマー被膜の空隙率を変更することによって、薬物が眼液に接触し、可溶化する速度を制御することができる。したがって、薬物が移植片のかかる実施形態から眼の標的組織に放出される速度が高度に制御される。同様に、眼液溶解性が低い薬物を、急速に生分解されるポリマー被膜又は多孔性の高いポリマー被膜で被覆された移植片内に配置して、移植片内の薬物の上の眼液の流れを増加させることもできる。
本明細書に記載のある実施形態においては、ポリマー被膜は、移植片の管腔内の治療薬を包む。幾つかのかかる実施形態においては、眼液は、移植片の外殻を通過し、ポリマー層に接触する。かかる実施形態は、ポリマー層が、薬物の溶出を制御するだけでなく、薬物が外部にオリフィスを通って制御されずに漏出又は損失するのを防止する構造上の障害物を与えるのを助けるとも考えられるので、移植片が1個以上のオリフィスを含むとき、及び/又は送達される薬物が液体、スラリー、エマルジョン又は粒子であるときに、特に有用であり得る。しかし、ポリマー層の内部配置も、薬物が任意の形態である移植片に使用することができる。
一部の眼疾患においては、治療は、眼への薬物投与の明確な動力学的プロファイルを必要とし得る。種々の実施形態の上記考察から、同様に、移植片からの薬物放出速度を調整する能力を利用して、所望の動力学的プロファイルを得ることができることを理解されたい。例えば、外殻及び任意のポリマー被膜の組成を操作して、薬物放出の特定の動力学的プロファイルを形成することができる。さらに、殻材料の厚さ、薬物放出領域における殻の厚さ、薬物放出領域の面積、並びに殻中の任意のオリフィスの面積及び/又は数を含めて、移植片自体の設計が、特定の薬物放出プロファイルを形成する手段になる。同様に、PLGAコポリマー及び/又は他の制御放出材料及び賦形剤を使用して、調合薬物の放出の特定の動力学的プロファイルを形成することができる。コポリマー中の乳酸とグリコール酸の比、及び/又はその中に(場合によっては、1種類以上の他の賦形剤と一緒に)薬物を含むポリマー若しくはコポリマーの平均分子量を調整することによって、薬物の徐放性、又は他の望ましい放出プロファイルを得ることができる。
ある実施形態においては、移植片の特性が、移植片からの薬物放出を制御する主要因になるように、上で考察した特徴及び/又は変数のいずれかを単独で又は組み合わせて操作することによって、薬物のゼロ次放出を達成することができる。同様に、薬物と混合されたPLGAを採用する実施形態においては、乳酸とグリコール酸の比、及び/又はコポリマー−薬物組成物の平均分子量を調整して、移植片構造とPLGAコポリマーの生分解性の組合せに基づいて、放出動力学を調節することができる。
別の実施形態においては、移植片殻の組成、薬物放出領域の構造及び寸法、組成任意のポリマー被膜の調整、並びにある種の賦形剤又は配合製剤(PLGAコポリマー)の使用によって、擬ゼロ次放出(又は別の所望の放出プロファイル)を達成することができる。経時的相加作用は、真のゼロ次動力学を再現する。
例えば、一実施形態においては、眼液を移植片に既知の速度で流入させるポリマー被膜を有する移植片は、PLGAを1種類以上の薬物と混合する一連のペレットを含むことができ、ペレットは、少なくとも2種類のPLGAコポリマー製剤を含むことができる。第1の治療薬の処方に基づき、既知量の薬物が所与の単位時間に放出されるように、後続の各薬剤をPLGAと混合することができる。各コポリマーは、その個々の所望の速度で生分解又は侵食されるので、経時的に眼に放出される薬物の総量は、事実上、ゼロ次動力学で放出される。さらに、本明細書に記載の薬物仕切りを採用し、複数のPLGA処方を有するペレットと併せて機能する実施形態は、得られる薬物の放出速度及び動力学的プロファイルに対する別のレベルの制御を追加すると考えられることを理解されたい。
非連続又はパルス放出が望ましいこともある。これは、例えば、各々が1つ以上の薬物放出領域に結合した複数の副管腔を有する移植片を製造することによって成すことができる。幾つかの実施形態においては、追加のポリマー被膜を使用して、ある薬物放出領域からの薬物放出を所与の時間防止しながら、その時間に別の薬物放出領域から薬物を溶出させる。別の実施形態は、さらに、上述したように1個以上の生分解性仕切りを使用して、移植片内に持続的又は一時的な物理的障害物を設けて、移植片からの薬物の放出が少ない又は放出がない期間の幅又は持続期間を更に微調整する。さらに、仕切りの生分解速度を制御することによって、休薬期間の長さを制御することができる。幾つかの実施形態においては、仕切りの生分解は、外部刺激によって惹起又は増強することができる幾つかの実施形態においては、流体の眼内注入は、障害物の生分解を刺激又は増強する。幾つかの実施形態においては、外部由来の刺激は、熱、超音波及び高周波又はレーザーエネルギーの適用の1つ以上である。
ある実施形態は、薬物放出領域が、開口オリフィスではないときに、移植プロセス中の眼組織の組織外傷又はコアリングを最小限に抑えるので、特に有利である。さらに、領域は、厚さ及び面積が既知(したがって、薬物放出プロファイルが既知)であるので、場合によっては、薬物の溶出が起こる前に確実に移植片を全体的に配置できるように製造することができる。
外殻の内部に薬物を配置することは、薬物放出を制御する機構として使用することもできる。治療する病態に応じて、幾つかの実施形態においては、管腔は、遠位の位置に存在することができ、別の実施形態においては、より近位の位置に存在することができる。入れ子状態又は同心のチューブデバイスを採用した実施形態においては、薬剤(単数又は複数)は、入れ子状態又は同心のポリマー殻の間に形成された管腔のいずれかの中に配置することができる。
薬物放出の更なる制御は、複数の管腔を有する特定の実施形態においては、薬物の配置場所によって得られる。例えば、移植後すぐに薬物の放出が望まれるときには、薬物は、移植から治療薬が眼液に接するまでの期間が短い、移植片内の第1の放出管腔内に配置される。これは、例えば、第1の放出管腔を、外殻厚さが薄い(又は面積が大きい、又はその両方の)薬物放出領域に近接させることによって成される。眼液に接するまでの時間がより長い第2の放出管腔に配置された第2の薬剤は、第1の薬物の放出開始後に、薬物を眼に溶出させる。これは、第2の放出管腔を、殻がより厚い、又は面積がより小さい(又はその両方の)薬物放出領域に近接させることによって成すことができる。場合によっては、この第2の薬物は、第1の薬物の放出及び活性に起因する副作用を緩和する。
上述した複数の管腔は、放出薬物の特定の濃度プロファイルを得るのにも有用であることも理解されるはずである。例えば、幾つかの実施形態においては、第1の放出管腔は、第1の薬物濃度の薬物を含むことができ、第2の放出管腔は、異なる濃度の同じ薬物を含むことができる。所望の濃度プロファイルは、薬物濃度の異なる薬物を利用し、それらを薬物溶出の開始時間、したがって眼組織中の濃度を制御するように、移植片内に配置することによって調整することができる。
さらに、薬物の配置場所を利用して、薬物放出期間とそれに続く薬物放出のない期間を得ることができる。例として、薬物が移植後すぐに眼に放出されるように、薬物を第1の放出管腔に配置することができる。第2の放出管腔は、薬物を含まないままでもよく、薬物が放出されない期間が得られる不活性生侵食性物質を含むこともできる。次いで、薬物を含む第3の放出管腔を眼液に接触させて、薬物放出の第2の期間を開始することができる。
殻の特性、任意のポリマー被膜の特性、任意のポリマー−薬物混合物、薬物放出領域の寸法及び数、オリフィスの寸法及び数、並びに移植片内の薬物の位置のいずれか1つ又は組合せを変更できることによって、移植片による薬物送達速度の制御に多大な柔軟度が付与されることを理解されたい。
薬物溶出プロファイルは、1個以上の栓によって分離された、移植片の同じ内部管腔内に含まれる複数の薬物を利用することによって制御することもできる。例として、移植片の遠位先端部に単一の薬物放出領域を含む移植片においては、移植片に流入する眼液は、主に、最も遠位の薬物が実質的に侵食され、溶出する時点まで、最も遠位の薬物と接触する。この期間に、眼液は、第1の半透過性仕切りを通過し、栓の近位に位置する第2の薬物を侵食し始める。以下で考察するように、これらの最初の2つの薬物の組成、及び第1の栓、並びに薬物放出領域の特性を各々制御して、2つの異なる用量の薬物の経時的濃度上昇、時間依存送達など、全体として所望の溶出プロファイルを得ることができる。異なる薬物を類似の移植片実施形態によって順次展開することもできる。
2つの薬物の分離が望ましい場合、仕切りを使用することができる。仕切りは、場合によっては、移植片によって送達される薬物と同じ又はそれより遅い速度で生分解可能である。仕切りは、移植片の内部管腔内の適所に置かれたとき、管腔のより近位の部分を管腔の遠位部から遮断するように、所与の移植片実施形態の内寸に合わせて設計される。したがって、仕切りは、内部管腔内に個々の区画を形成する。第1の薬物をより近位の区画に配置することができ、第2の薬物、第2の濃度の第1の薬物、又はアジュバント剤をより遠位の区画に配置することができる。したがって、上述したように、眼液の流入及び薬物の放出速度を制御可能であり、薬物を経時的に直列に、順に、又は交互に放出することができる。
仕切りを使用して、互いに反応し得るが、その反応が、単純に移植片管腔内ではなく、眼組織又はその近くで起こることが望ましい治療薬又は化合物のための別々の区画を設けることもできる。実例として、2つの化合物の各々が、他方(例えば、プロドラッグ及び変性剤)が存在するうちは不活性である場合、これら2つの化合物を、一方の薬物を含む管腔とのみ関連する少なくとも1つの薬物放出領域を有する単一の移植片で相変わらず送達することができる。化合物が移植片から眼腔に溶出した後、化合物は混じり合い、標的組織近くで活性になるはずである。上記から判断できるように、2つを超える薬物をこのようにして送達する場合、薬物を隔離するのに適したより多数の仕切りを利用することが望ましいであろう。
ある実施形態においては、近位障害物は、移植片の遠位に位置する内部管腔内に治療薬を密封するのに役立つ。かかる障害物の目的は、任意のより遠位に位置する眼液流入点からの眼液を治療薬に接する眼液の主要な供給源に確実にすることである。同様に、前方への薬物の溶出を防止する薬物不透過性シールも形成される。前方への溶出を防止すると、眼の前部から生ずる眼液による薬物の希釈を防止するだけでなく、デバイスによって送達される薬物の効果の潜在的側面も抑制する。移植片の遠位領域から生じる部位への薬物の溶出を制限すると、眼のより後方の領域において標的部位への薬物の送達が増す。十分に生分解性である実施形態においては、近位キャップ又は障害物は、移植片によって送達されるすべての薬物よりも遅い生分解速度を特徴とする、生体適合性生分解性ポリマーを含むことができる。近位キャップは、第1の用量の薬物が十分に溶出した後に移植片への再装薬を可能にする、移植片の長さにわたる単一の中央管腔を有する実施形態において有用であることを理解されたい。それらの実施形態においては、単一の中央管腔は、新たな薬物を装置の遠位部内に配置するために存在するが、前方に誘導された薬物の希釈又は溶出を回避するために、近位端又はその近くで封鎖されることが好ましい。
移植片中に形成することができる長軸方向に位置する複数の区画と同様に、薬物も、入れ子状態の1個以上の管腔内に配置することができる。特に望ましい薬物又は濃度の薬物を入れ子状態の管腔に順序よく配置することによって、上述と同様に制御放出又は動力学的プロファイルを得ることができる。
上述したように、芯を使用して、移植片内の様々な薬物の放出特性を制御することもできる。移植片の別々の内部管腔に導入された1本以上の芯は、眼液を素早く管腔中に移動させるのを助け、眼液は管腔中で薬物と相互作用することができる。より多量の眼液をその放出に必要とする薬物を、場合によっては、芯がオリフィス単独よりも多量の眼液をもたらす管腔中に配置することができる。1本以上の芯を幾つかの実施形態において使用することができる。
幾つかの実施形態においては、薬物は、薬物と内部管腔壁の間の空間への眼液流を増加又は制限することによって放出プロファイルをさらに調整するように、寸法を調節することができる。例えば、第1の固形又は半固形薬物が別の固形又は半固形薬物よりも急速に溶出することが最適である場合、薬物と内部管腔壁の間に実質的な隙間ができる寸法に第1の薬物を形成すると、移植片に入る眼液がより大きな表面積にわたって薬物と接触するので、望ましい場合もある。かかる薬物の寸法は、所与の薬物の溶出及び溶解性特性に基づいて容易に変更することができる。逆に、治療薬と内部管腔壁の間に最小限の空間が残るような寸法の薬物を含む実施形態においては、初期の薬物溶出を遅延させることができる。更に別の実施形態においては、移植片管腔全体を薬物で満たして、薬物放出期間を最大にし、又は移植片に再装薬する必要性を制限する。
ある実施形態は、移植片の薬物送達部分に加えて分路を含むことができる。例えば、移植片を所望の眼内腔に(前後方向に)配置後、少なくとも1つの流出チャネルを含む移植片の分路部を生理的流出空間に挿入することができる(例えば、小柱網に固定し、流体をシュレム管に放出する)。幾つかの実施形態においては、したがって、複数の開口部が、移植片の排液分路部の開存性及び操作性を維持する助けになる。さらに、上述したように、複数の開口部は、移植片によって送達される治療薬の作用に起因し得る過剰な流体の生成又は蓄積を含む任意の望ましくない副作用の軽減を助けることができる。
上述したように、薬物放出期間は長期間が望ましい。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載の実施形態による移植片は、薬物を制御された速度で標的組織に数(すなわち、少なくとも3)か月間送達することができる。ある実施形態においては、移植片は、薬物を制御された速度で標的組織に3、4、5、6、7、8、9、12、15、18及び24か月を含めて約6か月以上、再装薬の必要なしに送達することができる。更に別の実施形態においては、(移植片の再装薬なしに)制御された薬物放出の期間は、2年を超える(例えば、3、4、5年以上)。上記値の2つ以上が境界を成す範囲、重なる範囲、又は上記値の2つ以上を含む範囲を含めた別の時間枠も、ある実施形態においては使用されることを理解されたい。
標的組織への薬物の制御放出に関連して、ある用量の薬物(単数又は複数)がある実施形態においてはある期間にわたることが望ましい。すなわち、幾つかの実施形態においては、移植片の寿命にわたって標的組織に送達される総薬物負荷量、例えば、総ステロイド負荷量は、約10から約1000μgの範囲である。ある実施形態においては、総薬物負荷量は、約100から約900μg、約200から約800μg、約300から約700μg、又は約400から約600μgの範囲である。幾つかの実施形態においては、総薬物負荷量は、約10から約300μg、約10から約500μg、又は約10から約700μgの範囲である。別の実施形態においては、総薬物負荷量は、約200から約500μg、400から約700μg、又は約600から約1000μgの範囲である。更に別の実施形態においては、総薬物負荷量は、約200から約1000μg、約400から約1000μg、又は約700から約1000μgの範囲である。幾つかの実施形態においては、総薬物負荷量は、575、590、600、610及び625μgを含めて、約500から約700μg、約550から約700μg、又は約550から約650μgの範囲である。上記範囲が接する、重なる、又は上記範囲を含む別の薬物範囲も、ある実施形態においては使用されることを理解されたい。
同様に、別の実施形態においては、制御薬物送達量は、移植片からの薬物溶出速度に基づいて計算される。ある種のかかる実施形態においては、薬物、例えば、ステロイドの溶出速度は、約0.05μg/日から約10μg/日である。別の実施形態においては、約0.05μg/日から約5μg/日、約0.05μg/日から約3μg/日、又は約0.05μg/日から約2μg/日の溶出速度が得られる。別の実施形態においては、約2μg/日から約5μg/日、約4μg/日から約7μg/日、又は約6μg/日から約10μg/日の溶出速度が得られる。別の実施形態においては、約1μg/日から約4μg/日、約3μg/日から約6μg/日、又は約7μg/日から約10μg/日の溶出速度が得られる。更に別の実施形態においては、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9μg/日を含めて約0.05μg/日から約1μg/日の溶出速度が得られる。上記範囲が接する、重なる、又は上記範囲を含む別の薬物範囲も、ある実施形態においては使用されることを理解されたい。
上記パラメータの1個以上の代わりに、又はそれに加えて、移植片からの薬物の放出は、標的組織における薬物の所望の濃度に基づいて制御することができる。幾つかの実施形態においては、標的組織における薬物、例えば、ステロイドの所望の濃度は、約1nMから約100nMの範囲である。別の実施形態においては、作用部位における薬物の所望の濃度は、約10nMから約90nM、約20nMから約80nM、約30nMから約70nM、又は約40nMから約60nMの範囲である。更に別の実施形態においては、作用部位における薬物の所望の濃度は、約1nMから約40nM、約20nMから約60nM、約50nMから約70nM、又は約60nMから約90nMの範囲である。更に別の実施形態においては、作用部位における薬物の所望の濃度は、約1nMから約30nM、約10nMから約50nM、約30nMから約70nM、又は約60nMから約100nMの範囲である。幾つかの実施形態においては、作用部位における薬物の所望の濃度は、46、47、48、49、50、51、52、53及び54nMを含めて、約45nMから約55nMの範囲である。上記範囲が接する、重なる、又は上記範囲を含む別の薬物範囲も、ある実施形態においては使用されることを理解されたい。
上述のある実施形態は、再装薬可能である。幾つかのかかる実施形態においては、再装薬は、新しい薬物を管腔(単数又は複数)に注入することによって成される。幾つかの実施形態においては、移植した薬物送達移植片への再充填は、再装薬デバイスを前房を通って移植片の近位端まで前進させる必要があり、締付けスリーブは、移植片の近位端上を摺動することができる。例えば、図20Aを参照されたい。次いで、操作者は、移植片の近位端を柔軟な締付け把持部で把持して、しっかりと保持することができる。次いで、治療薬中の新たな用量の薬物、又は新しい薬物を、ばね負荷をかけることができる柔軟な推進チューブによって移植片内のその位置に押し込む。幾つかの実施形態においては、推進チューブは、移植片への送達に備えながら、治療薬をしっかりと保持する小さい内部凹部を含む。別の実施形態においては、平面が治療薬を移植片内の位置に進ませる。
推進器のばね移動は、場合によっては、治療薬を移植片の内部管腔の最遠位部分まで既知の距離を押し込むように前もって決定される。あるいは、例えば、内在治療薬が移植片から十分溶出する前に新しい治療薬が配置されている場合、ばね移動を手動で設定して、新しい治療薬を前進させなければならない距離を縮めることができる。再装薬プロセスは、任意選択の固定要素と協働して、移植片をその当初の位置から大きく移動させずに行うことができる。
場合によっては、再装薬中の漏出を防止するシールを再装薬デバイスに備えることができる。かかるシールは、例えば、再充填される薬物の形態が液体である場合に望ましい場合もある。漏出を防止する適切なシールとしては、例えば、Oリング、被膜、親水性薬剤、疎水性薬剤及びその組合せが挙げられる。被膜は、例えば、MDX(商標)シリコーン流体などのシリコーンコートとすることができる。
別の実施形態においては、再装薬は、再装薬デバイスを一方弁によって前房を通り前進させる必要がある。図20B及び20Cを参照されたい。弁は、近位端が開き遠位端が可逆的に閉じた2個以上のフラップ70を含む。再装薬デバイスが前進すると、後方端でフラップが開き、薬物を後房に堆積させることができる。再装薬デバイスを除去すると、フラップは、(遠位端における)その閉じた位置に戻り、それによって堆積薬物を管腔内に保持する。幾つかの実施形態においては、管腔からの液体(液体のような流動性を有する粉体又は微小ペレットを含む)薬物の逆流を防止するシールが形成されるように、一方弁を形成する。別の実施形態においては、液密シールは形成されない。
他の適切な保持方法を使用して、新たに配置された薬物ペレットを適所に保持することができる。例えば、幾つかの実施形態においては、新たに配置されたペレットよりも内径が小さい変形可能なOリングを使用する。かかる実施形態においては、再装薬デバイスは、薬物ペレットがOリングを通過できるようにOリングを十分移動させる。しかし、装置を除去すると、Oリングは、その本来の直径に戻り、それによってペレットを管腔内に保持する。
更に別の実施形態においては、再装薬デバイスが貫通できる「自己回復」材料でできた栓を使用する。かかる実施形態においては、再装薬デバイスからの圧力によって、装置が栓を貫通し、新しい薬物を内部管腔に堆積させる。再装薬デバイスを引き抜くと、栓は、薬物を管腔内に再密封し、保持する。
新しい薬物を管腔に挿入及び保持するのに十分柔軟である任意の材料の一方弁を設けることができる。かかる材料としては、シリコーン、テフロン(登録商標)、柔軟なグラファイト、スポンジ、シリコーンゴム、ガラス繊維強化シリコーンゴム、ネオプレン(登録商標)、レッドラバー、ワイヤ入りレッドラバー、コルク&ネオプレン(登録商標)、植物繊維、コルク&ラバー、コルク&ニトリル、ガラス繊維、布入りゴム、ビニル、ニトリル、ブチル、天然ゴム、ウレタン、炭素繊維、フルオロエラストマーなどが挙げられるが、それだけに限定されない。
<薬物>
薬物送達移植片と一緒に利用する治療薬としては、単独又は組み合わせた以下の1種類以上の薬物が挙げられる。利用する薬物は、以下の薬物の1種類以上の等価物、誘導体又は類似体とすることもできる。薬物としては、医薬品、例えば、緑内障治療薬、眼剤、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬、駆虫薬、抗真菌剤)、抗炎症剤(ステロイド又は非ステロイド性抗炎症薬を含む)、生物学的製剤、例えば、ホルモン、酵素又は酵素関連成分、抗体又は抗体関連成分、オリゴヌクレオチド(DNA、RNA、低分子干渉RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどを含む)、DNA/RNAベクター、ウイルス(野生型又は遺伝子改変)又はウイルスベクター、ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外基質成分、及び1種類以上の生物学的成分を産生するように構成された生細胞が挙げられるが、それだけに限定されない。任意の特定の薬物の使用は、その主要効果、又は規制行政機関によって認可された治療適応症若しくは使用法に限定されない。薬物としては、別の薬物又は治療薬の1つ以上の副作用を軽減又は緩和する化合物又は別の材料も挙げられる。多くの薬物は複数の作用様式を有するので、下記の任意の一薬効分類内の任意の特定の薬物の記載は、薬物の可能な一用途の単なる代表にすぎず、眼移植システムを用いたその使用の範囲を限定することを意図したものではない。
上述したように、治療薬は、当該技術分野で公知の任意の数の賦形剤と組み合わせることができる。上で考察した生分解性ポリマー賦形剤に加えて、ベンジルアルコール、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、セチルアルコール、クロスカルメロースナトリウム、デキストラン、デキストロース、フルクトース、ゼラチン、グリセリン、モノグリセリド、ジグリセリド、カオリン、塩化カルシウム、ラクトース、ラクトース一水和物、マルトデキストリン、ポリソルベート、アルファ化デンプン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素(silcon)、コーンスターチ、タルクなどを含めて、ただしそれだけに限定されない他の賦形剤を使用することができる。1種類以上の賦形剤を総量約1%、5%又は10%しか含まなくてもよく、別の実施形態においては、総量50%、70%又は90%も含むことができる。
薬物の例としては、種々の分泌抑制薬;有糸分裂阻害薬及び他の抗増殖剤、例えば、とりわけ、血管新生抑制剤、例えば、アンジオスタチン、酢酸アネコルタブ、トロンボスポンジン、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤及び抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)薬、例えば、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))及びベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ペガプタニブ(MACUGEN(登録商標))、スニチニブ及びソラフェニブ、並びに血管新生抑制作用を有する種々の公知の小分子及び転写阻害剤のいずれか;種々のクラスの公知の眼用薬剤、例えば、緑内障薬、例えば、アドレナリン拮抗薬、例えば、ベータ遮断薬、例えば、アテノロール プロプラノロール、メチプラノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボベタキソロール、レボブノロール及びチモロール;アドレナリン作動薬又は交感神経作動薬、例えばエピネフリン、ジピベフリン、クロニジン、アプラクロニジン(aparclonidine)及びブリモニジン;副交感神経作動薬又はコリン作動性(cholingeric)作動物質、例えば、ピロカルピン、カルバコール、ホスホリンヨウ素及びフィゾスチグミン、サリチラート、塩化アセチルコリン、エゼリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、臭化デメカリウム);ムスカリン作用薬;炭酸脱水酵素阻害薬、例えば、局所薬及び/又は全身薬、例えば、アセトゾラミド(acetozolamide)、ブリンゾラミド、ドルゾラミド及びメタゾラミド、エトキシゾラミド、ダイアモックス並びにジクロフェナミド;散瞳薬−毛様体筋麻ひ薬、例えば、アトロピン、シクロペントレート、サクシニルコリン、ホマトロピン、フェニレフリン、スコポラミン及びトロピカミド;プロスタグランジン、例えば、プロスタグランジンF2アルファ、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体、又はプロスタグランジン類似薬、例えば、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト及びウノプロストンが挙げられる。
薬物の他の例としては、抗炎症剤、例えば、グルココルチコイド及びコルチコステロイド、例えば、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21−ホスファート、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21−ホスファート、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン(fluroometholone)、ロテプレドノール、メドリゾン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルオロメトロン、フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、リメキソロン、並びに非ステロイド性抗炎症薬、例えば、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ブロムフェナク、ネパフェナク及びケトロラック、サリチラート、インドメタシン、イブプロフェン、ナキソプレン、ピロキシカム及びナブメトン;感染症治療薬又は抗菌剤、例えば、抗生物質、例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウム、アミノ配糖体、例えば、ゲンタマイシン及びトブラマイシン;フルオロキノロン、例えば、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン;バシトラシン、エリスロマイシン、フシジン酸、ネオマイシン、ポリミキシンB、グラミシジン、トリメトプリム及びスルファセタミド;抗真菌薬、例えば、アムホテリシンB及びミコナゾール;抗ウイルス剤、例えば、イドクスウリジン トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロン;抗真菌剤;免疫調節剤、例えば、抗アレルギー薬、例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリレン(methapyriline)、クロルフェニラミン、セチリジン(cetrizine)、ピリラミン、プロフェンピリダミン;抗ヒスタミン剤、例えばアゼラスチン、エメダスチン及びレボカバスチン;免疫薬(ワクチン、免疫刺激薬及び/又は免疫抑制薬など);肥満細胞安定剤、例えば、クロモリンナトリウム、ケトチフェン、ロドキサミド、ネドクロミル(nedocrimil)、オロパタジン及びペミロラスト毛様体切除剤、例えば、ゲンタマイシン(gentimicin)及びシドフォビル;並びに他の眼用薬剤、例えばベルテポルフィン、プロパラカイン、テトラカイン、シクロスポリン及びピロカルピン;細胞表面糖タンパク質受容体の阻害剤;うっ血除去薬、例えば、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン(tetrahydrazoline);脂質又は降圧脂質;ドパミン作動性作動物質及び/又は拮抗物質、例えば、キンピロール、フェノルドパム及びイボパミン;血管れん縮阻害剤;血管拡張剤;降圧剤;アンジオテンシン変換酵素(ACE:angiotensin converting enzyme)阻害剤;アンジオテンシン−1受容体拮抗物質、例えばオルメサルタン;微小管阻害剤;分子モーター(ダイニン及び/又はキネシン)阻害剤;アクチン細胞骨格制御因子、例えば、サイトカラシン(cyctchalasin)、ラトランクリン、スウィンホリドA、エタクリン酸、H−7及びRho−キナーゼ(ROCK)阻害剤;リモデリング阻害剤;細胞外基質の調節物質、例えば、tert−ブチルヒドロ−キノロン及びAL−3037A;アデノシン受容体作動物質及び/又は拮抗物質、例えばN−6−シクロヘキシルアデノシン(N-6-cylclophexyladenosine)及び(R)−フェニルイソプロピルアデノシン;セロトニン作動薬;ホルモン薬、例えば、エストロゲン、エストラジオール、黄体ホルモン、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチド及びバソプレシン視床下部放出因子;上皮成長拮抗物質又は上皮成長、例えば、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子又はその拮抗物質(例えば、その各々のその全体を参照により本明細書に援用する米国特許第7,759,472号又は米国特許出願第12/465,051号、米国特許出願12/564,863号若しくは米国特許出願12/641,270号に開示されたもの)、トランスフォーミング増殖因子ベータ、ソマトトロピン(somatotrapin)、フィブロネクチン、結合組織成長因子、骨形成タンパク質(BMP:bone morphogenic protein);サイトカイン、例えば、インターロイキン、CD44、コクリン(cochlin)及び血清アミロイド、例えば血清アミロイドAも挙げられる。
他の治療薬としては、神経保護薬、例えば、ルベゾール(lubezole)、ニモジピン及び関連化合物、例えば、血流改善剤、例えば、ドルゾラミド又はベタキソロール;血液酸素化を促進する化合物、例えば、エリスロポイエチン(erythropoeitin);ナトリウムチャネル遮断薬;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ニルバジピン又はロメリジン;グルタミン酸阻害剤、例えばメマンチン ニトロメマンチン、リルゾール、デキストロメトルファン又はアグマチン;アセチルコリンエステラーゼ(acetylcholinsterase)阻害剤、例えば、ガランタミン;ヒドロキシルアミン又はその誘導体、例えば、水溶性ヒドロキシルアミン誘導体OT−440;シナプス調節物質、例えば、硫化水素化合物を含むフラボノイド配糖体及び/又はテルペノイド、例えば、イチョウ;神経栄養因子、例えば、グリア細胞系由来の神経栄養(neutrophic)因子、脳由来の神経栄養因子;タンパク質のIL−6ファミリーのサイトカイン、例えば、毛様体神経栄養因子又は白血病抑制因子;一酸化窒素レベルに影響する化合物又は因子、例えば、一酸化窒素、ニトログリセリン又は一酸化窒素シンターゼ阻害剤;カンナビノイド受容体作動薬、例えば、WIN55−212−2;遊離基捕捉剤、例えば、メトキシポリエチレングリコールチオエステル(MPDTE:methoxypolyethylene glycol thioester)、又はEDTAメチルトリエステルと結合したメトキシポリエチレングリコールチオール(MPSEDE:methoxypolyethlene glycol thiol coupled with EDTA methyl triester);抗酸化剤、例えば、アスタキサンチン(astaxathin)、ジチオールチオン、ビタミンE又はメタロコロール(例えば、鉄、マンガン又はガリウムコロール);酸素ホメオスタシスに関与する化合物又は因子、例えば、ニューログロビン又はサイトグロビン;ミトコンドリア分割又は分裂に影響する阻害剤又は因子、例えば、Mdivi−1(ダイナミン関連タンパク質1(Drp1:dynamin related protein 1)の選択的阻害剤);キナーゼ阻害剤又は調節物質、例えば、Rhoキナーゼ阻害剤H−1152又はチロシンキナーゼ阻害剤AG1478;インテグリン機能に影響する化合物又は因子、例えば、ベータ1−インテグリン活性化抗体HUTS−21;N−アシル−エタノールアミン(ethanaolamines)及びその前駆体、N−アシル−エタノールアミンリン脂質;グルカゴン様ペプチド1受容体の刺激物質(例えば、グルカゴン様ペプチド1);ポリフェノール含有化合物、例えば、レスベラトロール;キレート化合物;アポトーシス関連プロテアーゼ阻害剤;新たなタンパク質合成を抑制する化合物;放射線治療薬;光線力学的治療薬;遺伝子治療薬;遺伝子調節因子;神経又は神経の一部の損傷(例えば、脱髄)を防止する自己免疫調節物質、例えば、グラチミル(glatimir);ミエリン阻害剤、例えば、抗NgR遮断タンパク質、NgR(310)エクトFc;他の免疫調節物質、例えば、FK506結合タンパク質(例えば、FKBP51);並びにドライアイ薬、例えば、シクロスポリン、シクロスポリンA、粘滑剤(delmulcents)、及びヒアルロン酸ナトリウムを挙げることができる。
使用することができる他の治療薬として、他のベータ遮断薬、例えば、アセブトロール、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール、エスモロール(asmolol)、ラベタロール、ナドロール、ペンブトロール及びピンドロール;他のコルチコステロイド及び非ステロイド性抗炎症薬、例えば、アスピリン、ベタメタゾン、コルチゾン、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルドロコルチゾン、フルルビプロフェン、ヒドロコルチゾン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、メチルプレドニゾロン、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、プレドニゾロン、ピロキシカム(prioxicam)、サルサラート、スリンダク及びトルメチン;COX−2阻害剤、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ及びバルデコキシブ;他の免疫調節薬、例えば、アルデスロイキン、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、アザチオプリン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、ヒドロキシクロロキン、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、レフルノミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル及びスルファサラジン;他の抗ヒスタミン剤、例えば、ロラタジン、デスロラタジン、セチリジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン及びプロメタジン;他の抗感染薬、例えば、アミノ配糖体、例えば、アミカシン及びストレプトマイシン;抗真菌薬、例えば、アムホテリシンB、カスポファンギン、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ボリコナゾール、テルビナフィン及びナイスタチン;抗マラリア薬、例えば、クロロキン、アトバコン、メフロキン、プリマキン、キニジン及びキニーネ;抗マイコバクテリウム薬、例えば、エタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピン及びリファブチン;抗寄生虫剤、例えば、アルベンダゾール、メベンダゾール、チオベンダゾール(thiobendazole)、メトロニダゾール、ピランテル、アトバコン、ヨードキノール(iodoquinaol)、イベルメクチン、パロマイシン(paromycin)、プラジカンテル及びトリメトレキサート(trimatrexate);他の抗ウイルス薬、例えば、抗CMV又は抗ヘルペス薬、例えば、アシクロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル(gangciclovir)、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、トリフルリジン及びホスカルネット;プロテアーゼ阻害剤、例えば、リトナビル、サキナビル、ロピナビル、インジナビル、アタザナビル、アンプレナビル及びネルフィナビル;ヌクレオチド/ヌクレオシド/非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、アバカビル、ddI、3TC、d4T、ddC、テノホビル及びエムトリシタビン、デラビルジン、エファビレンツ及びネビラピン;他の抗ウイルス薬、例えば、インターフェロン、リバビリン及びトリフルリジエン(trifluridiene);他の抗菌薬、例えば、カルバペネム(cabapenems)、例えば、エルタペネム、イミペネム及びメロペネム;セファロスポリン、例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セフジニル、セフジトレン、セファレキシン、セファクロル、セフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム(ceftaxidime)、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム及びロラカルベフ;他のマクロライド及びケトライド、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン及びテリスロマイシン;(クラブラン酸を含む、及び含まない)ペニシリン、例えば、アモキシシリン、アンピシリン、ピバンピシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン及びチカルシリン;テトラサイクリン、例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン及びテトラサイクリン;他の抗菌剤、例えば、アズトレオナム、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リネゾリド、ニトロフラントイン及びバンコマイシン;アルファ遮断薬、例えば、ドキサゾシン、プラゾシン及びテラゾシン;カルシウム−チャネル遮断薬、例えば、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン及びベラパミル;他の降圧薬、例えば、クロニジン、ジアゾキシド、フェノルドパム(fenoldopan)、ヒドララジン、ミノキシジル、ニトロプルシド、フェノキシベンザミン、エポプロステノール、トラゾリン、トレプロスチニル及びニトラート系薬剤;抗凝固薬、例えば、ヘパリン及びヘパリノイド、例えば、ヘパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、チンザパリン及びフォンダパリヌクス;他の抗凝固薬、例えば、ヒルジン、アプロチニン、アルガトロバン、ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、ワルファリン及びキシメラガトラン;抗血小板薬、例えば、アブシキシマブ、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド(optifibatide)、チクロピジン及びチロフィバン;プロスタグランジンPDE−5阻害剤及び他のプロスタグランジン剤、例えば、アルプロスタジル、カルボプロスト、シルデナフィル、タダラフィル及びバルデナフィル;トロンビン阻害剤;抗血栓薬;抗血小板凝集剤;血栓溶解剤及び/又は線維素溶解剤、例えば、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ及びウロキナーゼ;抗増殖剤、例えば、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、パクリタキセル及びミコフェノール酸;ホルモン関連薬、例えば、レボチロキシン、フルオキシメステロン(fluoxymestrone)、メチルテストステロン、ナンドロロン、オキサンドロロン、テストステロン、エストラジオール、エストロン、エストロピペート、クロミフェン、ゴナドトロピン、ヒドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ミフェプリストン、ノルエチンドロン、オキシトシン、プロゲステロン、ラロキシフェン及びタモキシフェン;抗腫よう薬、例えば、アルキル化剤、例えば、カルムスチン ロムスチン、メルファラン、シスプラチン、フルオロウラシル3、及びプロカルバジン抗生物質様薬剤、例えば、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン及びプリカマイシン;抗増殖薬(例えば、1,3−シスレチノイン酸、5−フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンC及びシスプラチンなど);代謝拮抗薬、例えば、シタラビン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン及び5−フルオロウラシル(5−FU:fluorouracil);免疫調節薬、例えば、アルデスロイキン、イマチニブ、リツキシマブ及びトシツモマブ;有糸分裂阻害剤ドセタキセル、エトポシド、ビンブラスチン及びビンクリスチン;放射性薬剤、例えば、ストロンチウム89;並びに他の抗腫よう薬、例えば、イリノテカン、トポテカン及びミトタンがある。
本開示のある実施形態を記述したが、これらの実施形態は、単なる例として示したものにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。実際、本明細書に記載した新規な方法、システム及び装置を様々な別の形態で実施することができる。例えば、図示又は記述した一移植片の実施形態を、別の図示又は記述した分路の実施形態と組み合わせることができる。さらに、上記移植片を別の目的で利用することができる。例えば、移植片を使用して、流体を前房から眼又は眼の外側の他の場所に排出することができる。さらに、本明細書に記載の方法、システム及び装置の形態に様々な省略、置換及び変更を本開示の趣旨から逸脱することなく行うことができる。