本発明の実施は、逆を具体的に示さない限り、当業者の技術範囲内の分子生物学および組換えDNA技術の従来の方法を使用し、これらの多くは、例示目的のために以下に記載される。かかる技術は、文献中で十分に説明されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第3版、2000年);DNA Cloning: A Practical Approach、第I巻および第II巻(D. Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N. Gait編、1984年);Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications(P. Herdewijn編、2004年);Nucleic Acid Hybridization(B. HamesおよびS. Higgins編、1985年);Nucleic Acid Hybridization: Modern Applications(Buzdin およびLukyanov編、2009年);Transcription and Translation(B. HamesおよびS. Higgins編、1984年);Animal Cell Culture(R. Freshney編、1986年); Freshney, R.I. (2005年)Culture of Animal Cells、a Manual of Basic Technique、第5版、Hoboken NJ、John Wiley & Sons;B. Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning(第3版、2010年);Farrell, R.、RNA Methodologies: A Laboratory Guide for Isolation and Characterization(第3版、2005年). Poly(ethylene glycol)、Chemistry and Biological Applications、ACS、Washington、1997年;Veronese, F.およびJ.M. Harris編、Peptide and protein PEGylation、Advanced Drug Delivery Reviews、54巻(4号)453〜609頁(2002年);Zalipsky, S.ら「Use of functionalized Poly(Ethylene Glycols) for modification of polypeptides」、Polyethylene Glycol Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applicationsを参照のこと。
本明細書で引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体が本明細書で参照により組み込まれる。
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または等価な任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が記載される。本発明の目的のために、以下の用語を以下に定義する。
冠詞「1つの(「a」および「an」)は、その冠詞の文法的客体のうちの1つまたは1つよりも多く(即ち、少なくとも1つ)を指すために、本明細書で使用される。例として、「1つの(「an」)エレメント」は、1つのエレメントまたは1つよりも多いエレメントを意味する。
「約」とは、参照の量(quantity)、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量(amount)、重量または長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%ほどもが変動する、量(quantity)、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量(amount)、重量または長さを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の両方ならびにアミノ酸アナログおよび模倣物を意味する意図である。天然に存在するアミノ酸には、タンパク質生合成の間に利用される20種の(L)−アミノ酸、ならびに例えば4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリンおよびオルニチンなどの他のアミノ酸が含まれる。天然に存在しないアミノ酸には、例えば、当業者に公知の(D)−アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p−フルオロフェニルアラニン、エチオニンなどが含まれる。アミノ酸アナログには、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の改変形態が含まれる。かかる改変には、例えば、アミノ酸上の化学基および部分の置換もしくは置き換え、またはアミノ酸の誘導体化が含まれ得る。アミノ酸模倣物には、例えば、参照アミノ酸の電荷および荷電空間特徴などの機能的に類似の特性を示す有機構造が含まれる。例えば、アルギニン(ArgまたはR)を模倣する有機構造は、天然に存在するArgアミノ酸の側鎖のe−アミノ基と類似の分子空間中に位置付けられ、同じ程度の移動性を有する、正の電荷部分を有する。模倣物は、アミノ酸のまたはアミノ酸官能基の最適な空間および電荷相互作用を維持するような、拘束された構造もまた含む。当業者は、機能的に等価なアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を構成する構造がなんであるかを知っている、または決定することができる。
本明細書で使用する場合、疾患または有害反応を発生させる「危険性がある」被験体は、検出可能な疾患または疾患の症状を有していてもいなくてもよく、本明細書に記載される処置方法の前に検出可能な疾患または疾患の症状を示していてもいなくてもよい。「危険性がある」とは、被験体が、本明細書に記載され当該分野で公知のように、疾患の発生と相関する測定可能なパラメーターである、1つまたは複数の危険因子を有することを示す。これらの危険因子のうちの1つまたは複数を有する被験体は、これらの危険因子(複数可)のうちの1つまたは複数を有さない被験体よりも、疾患または有害反応を発生させるより高い可能性を有する。
「自己免疫性疾患」は、本明細書で使用する場合、個体自身の組織から生じる、および個体自身の組織に対する、疾患または障害である。自己免疫性疾患または自己免疫性障害の例には、以下が含まれるがこれらに限定されない:炎症性応答、例えば、乾癬および皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患;全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)と関連する応答;呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ぶどう膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;アレルギー性状態、例えば、湿疹および喘息、ならびにT細胞の浸潤および慢性炎症性応答が関与する他の状態;アテローム動脈硬化症;白血球接着欠損症;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);糖尿病(例えば、I型糖尿病またはインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群(Reynaud’s syndrome);自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群(Sjorgen’s syndrome);若年発症糖尿病;ならびに結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、炎症性ミオパチー、間質性肺疾患、肉芽腫症および血管炎において典型的に見出されるサイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症と関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球血管外漏出が関与する疾患;中枢神経系(CNS)炎症性障害;多臓器傷害症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症(cryoglobinemia)またはクームス陽性貧血が含まれるがこれらに限定されない);重症筋無力症;抗原−抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜抗体病;抗リン脂質抗体症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート・イートン筋無力症症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター病;スティフ・マン症候群;ベーチェット病;巨細胞動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発ニューロパチー;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)または自己免疫性血小板減少症など。
本明細書を通じて、文脈が特に要求しない限り、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」は、述べられたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を含めるが、任意の他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を排除しないことを意味することが理解される。「からなる」とは、語句「からなる」に先行するいずれのものをも含みかつそれらに限定されることを意味する。従って、語句「からなる」は、列挙された要素が必要とされるかまたは必須であり、他の要素が存在しなくてもよいことを示す。「本質的に〜からなる」とは、この語句の前に列挙された任意の要素を含み、列挙された要素について本開示において特定された活性または作用を妨害することもそれらに寄与することもない他の要素に限定されることを意味する。従って、語句「本質的に〜からなる」とは、列挙された要素が必要とされるかまたは必須であるが、他の要素は任意選択であり、列挙された要素の活性または作用に実質的に影響を与えるか否かに依存して存在してもしなくてもよいことを示す。
用語「クローン除去」とは、自己反応性T細胞の除去(例えば、喪失または死)を指す。クローン除去は、胸腺において、もしくは末梢において、または両方において、中心的に達成され得る。
用語「コンジュゲート」は、免疫グロブリンFc領域への、生物学的に活性な分子(例えば、HRSポリペプチド)などの分子の共有結合の結果として形成される実体を指す意図である。コンジュゲートポリペプチドの一例は、「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」、即ち、別々のポリペプチドを元々コードする2つまたはそれ超のコード配列の接続によって創出されたポリペプチドである;接続されたコード配列の転写は、別々のポリペプチドの各々に由来する機能的特性を典型的には有する、単一の融合ポリペプチドを生じる。
記述「エンドトキシンを含まない」または「エンドトキシンを実質的に含まない」とは、多くても微量(例えば、被験体に対して臨床的に有害な生理学的影響を有さない量)のエンドトキシン、好ましくは検出不能な量のエンドトキシンを含む、組成物、溶媒および/または容器を一般に指す。エンドトキシンは、特定の細菌、典型的にはグラム陰性細菌と関連する毒素であるが、エンドトキシンは、Listeria monocytogenesなどのグラム陽性細菌においても見いだされ得る。最も流行のエンドトキシンは、種々のグラム陰性細菌の外膜において見出されるリポポリサッカリド(LPS)またはリポオリゴサッカリド(LOS)であり、これらの細菌が疾患を引き起こす能力において中心的な病原性特徴を示す。ヒトにおける少量のエンドトキシンは、他の有害な生理学的影響の中でも、発熱、血圧の低下、ならびに炎症および凝固の活性化を生じ得る。
従って、医薬品生成では、薬物製品および/または薬物コンテナから、エンドトキシンのほとんどまたは全ての痕跡を除去することが望ましい場合が多いが、これは、少量でさえも、ヒトにおいて有害な影響を引き起こし得るからである。300℃を超える温度が、ほとんどのエンドトキシンを分解するために典型的には必要とされるので、発熱物質除去(depyrogenation)オーブンが、この目的のために使用され得る。例えば、シリンジまたはバイアルなどの主要な包装材料に基づいて、250℃のガラス温度と30分間の保持時間との組合せが、エンドトキシンレベルにおける3logの低減を達成するために十分である場合が多い。本明細書に記載され当該分野で公知の、例えばクロマトグラフィーおよび濾過方法を含む、エンドトキシンを除去する他の方法が企図される。本発明の組成物中にエンドトキシンが存在する危険性を低減させる、そうでないならば排除するために、哺乳動物細胞などの真核生物細胞においてHRS−Fcコンジュゲートを生成し、かかる細胞からHRS−Fcコンジュゲートを単離する方法もまた、含まれる。無血清細胞においてHRS−Fcコンジュゲートを生成し、かかる細胞からHRS−Fcコンジュゲートを単離する方法が好ましい。
エンドトキシンは、当該分野で公知の慣用的な技術を使用して検出され得る。例えば、カブトガニ由来の血液を利用するリムルスアメボサイト溶解物アッセイは、エンドトキシンの存在を検出するための非常に高感度のアッセイである。この試験では、非常に低いレベルのLPSが、この反応を増幅する強力な酵素カスケードに起因して、リムルス溶解物の検出可能な凝固を引き起こし得る。エンドトキシンは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によっても定量され得る。エンドトキシンを実質的に含まないように、エンドトキシンレベルは、約0.001EU/ml未満、0.005EU/ml未満、0.01EU/ml未満、0.02EU/ml未満、0.03EU/ml未満、0.04EU/ml未満、0.05EU/ml未満、0.06EU/ml未満、0.08EU/ml未満、0.09EU/ml未満、0.1EU/ml未満、0.5EU/ml未満、1.0EU/ml未満、1.5EU/ml未満、2EU/ml未満、2.5EU/ml未満、3EU/ml未満、4EU/ml未満、5EU/ml未満、6EU/ml未満、7EU/ml未満、8EU/ml未満、9EU/ml未満または10EU/ml未満であり得る。典型的には、1ngのリポポリサッカリド(LPS)は、約1〜10EUに対応する。
本明細書で使用する場合、用語「機能」および「機能的」などは、生物学的機能、酵素的機能または治療的機能を指す。
「相同性」とは、同一であるまたは保存的置換を構成するアミノ酸の百分率数を指す。相同性は、参照により本明細書に組み込まれるGAP(Deverauxら、Nucleic Acids Research. 12巻、387〜395頁、1984年)などの配列比較プログラムを使用して決定され得る。この方法で、本明細書に引用される配列に対して類似または実質的に異なる長さの配列が、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって例えば決定されるギャップなどの、アラインメント中へのギャップの挿入によって、比較され得る。
「生理学的に安定な」リンカーとは、水中で、または生理学的条件(例えば、例えば1つまたは複数のプロテアーゼの存在下での、in vivo、in vitro培養条件)下で実質的に安定なリンカー、即ち、延長された期間にわたって任意の感知できる程度まで、生理学的条件下での分解反応(例えば、酵素的に分解可能な反応)を受けないリンカーを指す。一般に、生理学的に安定なリンカーは、生理学的条件下で1日当たり約0.5%未満、約1%未満、約2%未満、約3%未満、約4%未満または約5%未満の分解の割合を示すリンカーである。
「単離された」とは、そのネイティブ状況において通常付随する構成要素を、実質的にまたは本質的に含まない材料を意味する。例えば、「単離されたペプチド」または「単離されたポリペプチド」などは、本明細書で使用する場合、その天然の細胞環境からの、および細胞の他の構成要素との関連からの、ペプチドまたはポリペプチド分子のin vitroでの単離および/または精製を含む;即ち、単離された分子は、in vivoの物質と顕著には関連しない。
用語「半数効果濃度」または「EC50」とは、いくらかの特定された曝露時間の後に、ベースラインと最大との間の中間の応答を誘導する、本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートの濃度を指す;従って、段階的用量反応曲線のEC50は、その最大効果の50%が観察される化合物の濃度を示す。ある特定の実施形態では、本明細書に提供された薬剤のEC50は、上述のように、「非正準」活性に関して示される。EC50は、in vivoで最大効果の50%を得るために必要とされる血漿濃度もまた示す。同様に、「EC90」とは、その最大効果の90%が観察される薬剤または組成物の濃度を指す。「EC90」は、「EC50」およびHill勾配から計算でき、または当該分野における慣用的な知識を使用して、データから直接決定され得る。一部の実施形態では、HRS−FcコンジュゲートのEC50は、約0.01nM未満、0.05nM未満、0.1nM未満、0.2nM未満、0.3nM未満、0.4nM未満、0.5nM未満、0.6nM未満、0.7nM未満、0.8nM未満、0.9nM未満、1nM未満、2nM未満、3nM未満、4nM未満、5nM未満、6nM未満、7nM未満、8nM未満、9nM未満、10nM未満、11nM未満、12nM未満、13nM未満、14nM未満、15nM未満、16nM未満、17nM未満、18nM未満、19nM未満、20nM未満、25nM未満、30nM未満、40nM未満、50nM未満、60nM未満、70nM未満、80nM未満、90nM未満または100nM未満である。好ましくは、生物療法組成物は、約1nMまたはそれ未満のEC50値を有する。
HRS−Fcコンジュゲートの「半減期」は、生物の血清もしくは組織中への投与の時点におけるかかる活性と比較して、または任意の他の規定された時点と比較して、その薬理学的活性、生理学的活性または他の活性の半分をこのコンジュゲートが喪失するのにかかる時間を指し得る。「半減期」は、生物の血清もしくは組織中への投与の時点におけるかかる量もしくは濃度と比較して、または任意の他の規定された時点と比較して、生物の血清または組織中に投与される出発量の半分、HRS−Fcコンジュゲートの量または濃度が低減するのにかかる時間もまた指し得る。半減期は、血清および/または任意の1つもしくは複数の選択された組織において測定され得る。
用語「連結」、「リンカー」、「リンカー部分」または「L」は、別のHRSポリペプチドからおよび/または1つもしくは複数のFc領域からHRSポリペプチドを分離するために使用され得るリンカーを指すために本明細書で使用される。このリンカーは、生理学的に安定であり得るか、または放出可能なリンカー、例えば酵素的に分解可能なリンカー(例えば、タンパク質分解的に切断可能なリンカー)を含み得る。ある特定の態様では、このリンカーは、例えばHRS−Fc融合タンパク質の一部としての、ペプチドリンカーであり得る。一部の態様では、このリンカーは、非ペプチドリンカーであり得る。
用語「モジュレートすること」および「変更すること」には、典型的には、対照と比較して統計的に有意なまたは生理学的に顕著な量または程度で、「増加させること」、「増強すること」または「刺激すること」ならびに「減少させること」または「低減させること」を含む。「増加した」、「刺激された」または「増強された」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、組成物なし(例えば、本発明のHRS−Fcコンジュゲートのいずれかの非存在下)または対照の組成物、試料もしくは試験被験体によって生成される量の1.1倍、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍またはそれ超(例えば、500倍、1000倍)(それらの間および1を上回る全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7.1.8などを含む)である増加を含み得る。「減少した」または「低減した」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、組成物なし(薬剤または化合物の非存在下)または対照組成物によって生成される量における、これらの間の全ての整数を含め、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の減少を含み得る。1つの非限定的な例として、正準活性と非正準活性とを比較する際の対照は、対応する(配列で)未改変または異なって改変されたHRSポリペプチドと比較して、目的のHRS−Fcコンジュゲートを含み得る。比較および「統計的に有意な」量の他の例は、本明細書に記載される。
「非正準」活性とは、本明細書で使用する場合、一般に、i)インタクトなネイティブ全長親タンパク質によっては任意の顕著な程度まで所有されない、本発明のHRSポリペプチドによって所有される新たな非アミノアシル化活性、またはii)インタクトなネイティブ全長親タンパク質によって所有されていた活性いずれかを指し、ここで、例えば、インタクトなネイティブ全長親タンパク質によって所有される他の活性からその活性を単離することによって、HRSポリペプチドは、インタクトなネイティブ全長親タンパク質と比較して、非正準活性に関して顕著により高い(例えば、少なくとも20%高い)比活性を示すか、もしくは新たな文脈において活性を示すかのいずれかである。HRSポリペプチドの場合、非正準活性の非限定的な例には、細胞増殖のモジュレーション、細胞遊走のモジュレーション、細胞分化(例えば、造血、神経発生、筋形成、骨形成および脂肪生成)のモジュレーション、遺伝子転写のモジュレーション、アポトーシスまたは他の形態の細胞死のモジュレーション、細胞シグナル伝達のモジュレーション、細胞取り込みまたは分泌のモジュレーション、血管新生のモジュレーション、細胞結合のモジュレーション、細胞代謝のモジュレーション、サイトカインの産生または活性のモジュレーション、サイトカイン受容体活性のモジュレーション、炎症、免疫原性のモジュレーションなどを含む、細胞外シグナル伝達が含まれる。
ある特定の実施形態では、組成物中の任意の所与の薬剤(例えば、融合タンパク質などのHRS−Fcコンジュゲート)の「純度」は、具体的に規定され得る。例えば、特定の組成物は、例えば、決して限定ではなく、化合物を分離、同定および定量するために生化学および分析化学において頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィーの周知の一形態、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定されるように、それらの間の全ての小数を含めて、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%純粋である薬剤を含み得る。
特定の理論に束縛されることは望まないが、「酵素的に分解可能なリンカー」とは、1つまたは複数の酵素、例えば、ペプチダーゼまたはプロテアーゼによる分解に供されるリンカー、例えばアミノ酸配列を意味する。
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーならびにそのバリアントおよび合成アナログを指すために、本明細書で交換可能に使用される。従って、これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、合成の天然に存在しないアミノ酸、例えば、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログである、アミノ酸ポリマーに、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーに、適用される。
「放出可能なリンカー」には、生理学的に切断可能なリンカーおよび酵素的に分解可能なリンカーが含まれるがこれらに限定されない。従って、「放出可能なリンカー」は、生理学的条件下での、自発的加水分解またはいくつかの他の機構(例えば、酵素触媒、酸触媒、塩基触媒など)による切断のいずれかを受け得るリンカーである。例えば、「放出可能なリンカー」には、駆動力としてプロトン(例えば、イオン化可能な水素原子、Hα)の塩基引き抜きを有する脱離反応が関与し得る。本明細書の目的のために、「放出可能なリンカー」は、「分解可能なリンカー」と同義である。特定の実施形態では、放出可能なリンカーは、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間もしくは約96時間またはそれ超の、pH7.4、25℃、例えば、生理学的pH、ヒト体温(例えば、in vivo)における半減期を有する。
「統計的に有意な」とは、その結果が偶然起こる可能性が低いことを意味する。統計的有意性は、当該分野で公知の任意の方法によって決定され得る。有意性の一般に使用される尺度には、帰無仮説が真であるとした場合に、観察された事象が発生する頻度または確率であるp値が含まれる。得られたp値が有意性レベルよりも小さい場合、この帰無仮説は棄却される。単純な例では、この有意性レベルは、0.05またはそれ未満のp値において規定される。
用語「溶解度」とは、液体溶媒中で溶解し、均質溶液を形成する、本明細書で提供されるHRS−Fcコンジュゲートポリペプチドの特性を指す。溶解度は典型的に、単位体積の溶媒当たりの溶質の質量(溶媒1kg当たりの溶質のg数、g/dL(100mL)、mg/mlなど)、容積モル濃度、重量モル濃度、モル分率または濃度の他の類似の記述のいずれかによって、濃度として表される。溶媒の量当たり溶解し得る溶質の最大平衡量は、温度、圧力、pH、および溶媒の性質を含む特定の条件下での、その溶媒におけるその溶質の溶解度である。ある特定の実施形態では、溶解度は、生理学的pHまたは他のpH、例えば、pH5.0、pH6.0、pH7.0もしくはpH7.4で測定される。ある特定の実施形態では、溶解度は、水または生理学的緩衝液、例えばPBSもしくはNaCl(NaPありまたはなし)中で測定される。具体的な実施形態では、溶解度は、比較的低いpH(例えば、pH6.0)および比較的高い塩(例えば、500mM NaClおよび10mM NaP)において測定される。ある特定の実施形態では、溶解度は、生体液(溶媒)、例えば血液または血清中で測定される。ある特定の実施形態では、温度は、約室温(例えば、約20、21、22、23、24、25℃)または約体温(37℃)であり得る。ある特定の実施形態では、HRS−Fcコンジュゲートポリペプチドは、室温または37℃で、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25または30mg/mlの溶解度を有する。
「被験体」には、本明細書で使用する場合、本発明のHRS−Fcコンジュゲートポリペプチドを用いて処置もしくは診断され得る症状を示しているか、またはかかる症状を示す危険性がある任意の動物が含まれる。適切な被験体(患者)には、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはモルモット)、家畜および飼育動物またはペット(例えば、ネコまたはイヌ)が含まれる。非ヒト霊長類および好ましくはヒト患者が含まれる。
「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼ全体的にまたは完全に、例えば、ある所与の量のうちの95%、96%、97%、98%、99%またはそれ超を意味する。
「処置」または「処置すること」には、本明細書で使用する場合、疾患または状態の症状または病理に対する任意の望ましい効果を含み、処置されている疾患または状態の1つまたは複数の測定可能なマーカーにおける最小の変化または改善さえも含み得る。「処置」または「処置すること」は、疾患もしくは状態またはそれらの関連する症状の完全な根絶または治癒を必ずしも示さない。この処置を受けている被験体は、それを必要とする任意の被験体である。臨床的改善の例示的なマーカーは、当業者に明らかである。
ヒスチジル−tRNAシンテターゼ由来ポリペプチド
本発明の実施形態は、野生型HRS配列、天然に存在する配列、天然に存在しない配列ならびに/またはそれらのバリアントおよび断片を含むHRS−Fcコンジュゲートを含む、ヒスチジル−tRNAシンテターゼポリペプチド(「HRSまたはHisRSポリペプチド」)−Fcコンジュゲートに関する。HRS由来ポリペプチドの具体的な例には、変更されたシステイン含量を有するものが含まれる。ヒスチジル−tRNAシンテターゼは、3つの高度に保存された配列モチーフを有する、クラスIIのtRNAシンテターゼファミリーに属する。クラスIおよびIIのtRNAシンテターゼは、2ステップ反応においてその同族tRNAへのアミノ酸の特異的結合を担うと広く認識されている:アミノ酸(AA)は、ATPによって最初に活性化されてAA−AMPを形成し、次いで、tRNAのアクセプター末端に転移される。全長ヒスチジル−tRNAシンテターゼは、典型的に、サイトゾルホモダイマーまたは選択的スプライシングされたミトコンドリア形態のいずれかとして存在する。
より最近、真核生物のヒスチジル−tRNAシンテターゼのいくつかの生物学的断片もしくは選択的スプライシングされたアイソフォーム(PhysiocrineまたはHRSポリペプチド)、または一部の文脈ではインタクトなシンテターゼが、特定の細胞シグナル伝達経路をモジュレートし、または抗炎症特性を有することが確立されている。タンパク質合成におけるtRNAシンテターゼの古典的役割とは異なるこれらの活性は、本明細書で「非正準活性」と集合的に称される。これらのPhysiocrineは、選択的スプライシングまたはタンパク質分解のいずれかによって天然に生成され得、種々の恒常性機構を調節するために、細胞自律的様式(即ち、宿主細胞内)または非細胞自律的様式(即ち、宿主細胞の外側)で作用し得る。例えば、本発明に提供されるように、HRSポリペプチド、例えばヒスチジル−tRNAシンテターゼのN末端断片(例えば、HRS 1−48、HRS 1−60)は、とりわけ、活動性炎症の部位と関連する炎症性細胞(例えば、単球、マクロファージ、T細胞、B細胞)の遊走、活性化または分化をin vivoで遮断することによって、抗炎症性シグナルを働かせることが可能である。さらに、全長HRSポリペプチド配列と比較して特定の変異または欠失(例えば、HRS 1−506、HRS 1−60)は、増加した活性および/または改善された薬理学的特性を付与する。特定の例示的なHRSポリペプチドの配列は、表D1中に提供される。
いくつかの天然に存在するヒスチジル−tRNAシンテターゼ一塩基多型(SNP)およびヒト遺伝子の天然に存在するバリアントは、配列決定されており、少なくとも部分的に機能的に相互交換可能であることが当該分野で公知である。ヒスチジル−tRNAシンテターゼのいくつかのかかるバリアント(即ち、代表的なヒスチジル−tRNAシンテターゼSNP)が、表D2中に示される。
さらに、ヒト遺伝子のホモログおよびオルソログが、表D3中に列挙されるように、他の種において存在し、従って、表D1、D4〜D6またはD8中に列挙したヒトHRSポリペプチド配列のいずれかの代わりに、天然に存在するアミノ酸、またはSNP中に存在するヌクレオチドバリアント、または他の天然に存在するホモログを選択することは、慣
用的な事項である。
従って、本発明の方法、治療用組成物およびキットのいずれかにおいて、用語「HRSポリペプチド」「HRSタンパク質」または「HRSタンパク質断片」には、抗炎症活性などの非正準活性を所有するおよび/またはヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する自己抗体と関連する疾患を有する被験体由来の自己抗体もしくは自己反応性T細胞と特異的に交差反応する少なくとも1つのエピトープを保持する、ヒスチジル−tRNAシンテターゼの全ての天然に存在する形態および合成形態が含まれる。かかるHRSポリペプチドには、全長ヒトタンパク質、ならびに表D1、D3〜D6またはD8に列挙した全長タンパク質から誘導されたHRSペプチドが含まれる。一部の実施形態では、用語HRSポリペプチドとは、約45または50〜約250アミノ酸長の、ヒトヒスチジル−tRNAシンテターゼ(表D1中の配列番号1)から誘導されたポリペプチド配列を指す。本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかにおいて、HRSポリペプチドのN末端アミノ酸(例えば、N末端Met)が、融合タンパク質またはコンジュゲートを創出する場合に、表D1、D3〜D6またはD8中に列挙した配列のいずれかから欠失し得ることが理解される。
一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、約20〜509、20〜508、20〜507、50〜506、20〜505、50〜504、20〜503、20〜502、20〜501、20〜500、20〜400、20〜300、20〜250、20〜200または20〜100アミノ酸長の間である。例えば、具体的な実施形態では、このポリペプチドは、約20〜25、20〜35、20〜40、20〜45、20〜55、20〜60、20〜65、20〜70、20〜75、20〜80、20〜85、20〜90、20〜95もしくは20〜100アミノ酸長の間、または約30〜35、30〜40、30〜45、30〜55、30〜60、30〜65、30〜70、30〜75、30〜80、30〜85、30〜90、30〜95もしくは30〜100アミノ酸長の間、または約40〜45、40〜55、40〜60、40〜65、40〜70、40〜75、40〜80、40〜85、40〜90、40〜95、もしくは40〜100アミノ酸長の間、または約45〜50、45〜55、50〜55、50〜60、50〜65、50〜70、50〜75、50〜80、50〜85、50〜90、50〜95、もしくは50〜100アミノ酸長の間、または約60〜65、60〜70、60〜75、60〜80、60〜85、60〜90、60〜95、もしくは60〜100アミノ酸長の間、または約70〜75、70〜80、70〜85、70〜90、70〜95、もしくは70〜100アミノ酸長の間、または約80〜85、80〜90、80〜95、もしくは80〜100アミノ酸長の間である。ある特定の実施形態では、このHRSポリペプチドは、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、150、200、250、300、350、400、450、500、501、502、503、504、505、506、507、508、または509アミノ酸長である。
一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、最大約1〜5×10−7Mまたはそれ超の濃度まで、競合的ELISAにおいて、野生型ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する疾患関連自己抗体の結合(例えば、Jo−1抗体)について顕著には競合しない。従って、一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、競合的ELISAにおいて測定した場合、野生型ヒスチジル−tRNAシンテターゼ(配列番号1)よりも、疾患関連自己抗体に対する低い親和性を有する。一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、野生型ヒト(配列番号1)に対する疾患関連自己抗体の親和性よりも、少なくとも約10倍少ない、または少なくとも約20倍少ない、または少なくとも約50倍少ない、または少なくとも約100倍少ない、疾患関連自己抗体(例えば、Jo−1抗体)に対する見かけの親和性を有する。
従って、ヒスチジル−tRNAシンテターゼ(例えば、表D1、D3〜D6またはD8中に列挙したタンパク質のいずれか)の全てのかかるホモログ、オルソログ、および天然に存在するまたは合成のアイソフォームは、ヒスチジルtRNAシンテターゼに対する自己抗体と関連する疾患を有する被験体由来の自己抗体もしくは自己反応性T細胞と特異的に交差反応する少なくとも1つのエピトープを保持し、または非正準活性を所有する限り、本発明の方法、HRS−Fcコンジュゲート、キットおよび組成物のいずれか中に含まれる。これらのHRSポリペプチドは、そのネイティブ形態で、即ち、異なる種において天然に出現する場合にヒトヒスチジル−tRNAシンテターゼの機能的に等価なバリアントとみなされ得る異なるバリアントとして存在し得、あるいはこれらは、例えば短縮(例えば、N末端もしくはC末端または両方からの)または他のアミノ酸の欠失、付加、挿入、置換もしくは翻訳後修飾によって、そのアミノ酸配列が異なり得る、その機能的に等価な天然の誘導体であり得る。例えば、HRSポリペプチドまたはHRS−Fcコンジュゲートのピログルタミル、イソ−アスパルチル、タンパク質分解、リン酸化、グリコシル化、酸化、異性化および脱アミノ化バリアントを含む、任意のHRSポリペプチドの翻訳後修飾および分解産物を含む天然に存在する化学的誘導体もまた、本発明の方法および組成物のいずれか中に具体的に含まれる。HRSポリペプチドおよびHRS−Fcコンジュゲートはまた、本明細書に記載されるように、天然に存在するアミノ酸および/または天然に存在しないアミノ酸から構成され得る。
上述のように、本発明の実施形態は、ヒスチジル−tRNAシンテターゼの全てのホモログ、オルソログおよび天然に存在するアイソフォーム(例えば、表もしくは配列表中に列挙されるタンパク質、またはかかる表もしくは配列表中から誘導可能なタンパク質、またはかかる表もしくは配列表中に列挙されるそれらの対応する核酸のいずれか)ならびにこれらのHRS参照ポリペプチドの「バリアント」を含む。記述ポリペプチド「バリアント」とは、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換によって参照HRSポリペプチドから識別され、参照HRSポリペプチドの1つまたは複数の非正準活性を典型的に保持(例えば、模倣)またはモジュレートする(例えば、アンタゴナイズする)、ポリペプチドを指す。バリアントには、改善された安定性または他の医薬的特性を有するように、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換によって改変されたポリペプチドもまた含まれる。
ある特定の実施形態では、ポリペプチドバリアントは、本明細書に記載され当該分野で公知のように、保存的または非保存的であり得る1つまたは複数の置換によって、参照ポリペプチドから識別される。ある特定の実施形態では、このポリペプチドバリアントは、保存的置換を含み、これに関して、いくつかのアミノ酸が、ポリペプチドの活性の性質を変化させることなく、広く類似した特性を有する他のアミノ酸に変化され得ることは、当該分野で十分理解される。一部の実施形態では、このバリアントは、Leu7、Gln14、Gly15、Val18、Arg19、Leu21、Lys22、Lys25、Ala26、Val35、Leu38、Leu39、Leu41およびLys42(配列番号1の番号付けに基づく)のうちの1つまたは複数を含む、1つまたは複数の保存された残基を含む。
本発明の方法および組成物のいずれかにおいて有用なHRSポリペプチドバリアントの具体的な例には、i)検出可能な非正準活性を保持するおよび/またはヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する自己抗体と関連する疾患を有する被験体由来の自己抗体もしくは自己反応性T細胞と特異的に交差反応する少なくとも1つのエピトープを保持する、ならびにii)1つまたは複数のさらなるアミノ酸の挿入、置換、欠失および/または短縮を有する、全長HRSポリペプチド、またはその短縮もしくはスプライスバリアント(例えば、表もしくは配列表中に列挙されるタンパク質またはかかる表もしくは配列表から誘導可能なタンパク質のいずれか)が含まれる。ある特定の実施形態では、バリアントポリペプチドは、本明細書に記載されるように、HRS参照ポリペプチドの対応する配列(例えば、表もしくは配列表中に列挙されるタンパク質またはかかる表もしくは配列表から誘導可能なタンパク質のいずれか)に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはそれ超の配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含み、その参照ポリペプチドの非正準活性を実質的に保持する。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150またはそれ超のアミノ酸の付加、欠失または置換によって参照HRS配列とは異なるが、参照HRSポリペプチドの特性を保持する配列もまた含まれる。ある特定の実施形態では、このアミノ酸の付加または欠失は、HRS参照ポリペプチドのC末端および/またはN末端において生じる。ある特定の実施形態では、このアミノ酸付加は、HRS参照ポリペプチドのC末端および/またはN末端に対して近位である1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50またはそれ超の野生型残基(即ち、対応する全長HRSポリペプチド由来)を含む。
一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、配列番号1〜106、170〜181または185〜191のうちの1つまたは複数中に示されるHRSポリペプチド配列のアミノ酸を含むか、かかるアミノ酸からなるか、またはかかるアミノ酸から本質的になる、約45〜250アミノ酸または約50〜250アミノ酸の、全長ヒスチジルtRNAシンテターゼのポリペプチド断片を含む。一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、配列番号1の残基1〜141、1〜408、1〜113または1〜60を含むか、またはかかる残基からなるか、またはかかる残基から本質的になる。一部の態様では、このHRSポリペプチドは、配列番号1の残基1〜60+175〜509、1〜60+211〜509または1〜60+101〜509を含むか、またはかかる残基からなるか、またはかかる残基から本質的になる、スプライスバリアントである。特定の態様では、このHRSポリペプチドは、配列番号1の残基1〜48または1〜506を含むか、またはかかる残基からなるか、またはかかる残基から本質的になる。
ある特定の実施形態では、本発明のHRSポリペプチドは、抗炎症活性をin vivoでモジュレートすることが可能であるか、または抗体もしくは自己反応性T細胞遮断活性を有することが可能な全長HRSポリペプチドの最小活性断片を含むか、またはかかる断片からなるか、またはかかる断片から本質的になる。一態様では、かかる最小活性断片は、WHEPドメイン(即ち、配列番号1の約アミノ酸1〜43)を含むか、またはかかるドメインからなるか、またはかかるドメインから本質的になる。一部の態様では、この最小活性断片は、アミノアシル化ドメイン(即ち、配列番号1の約アミノ酸54〜398)を含むか、またはかかるドメインからなるか、またはかかるドメインから本質的になる。一部の態様では、この最小活性断片は、アンチコドン結合ドメイン(即ち、配列番号1の約アミノ酸406〜501)を含むか、またはかかるドメインからなるか、またはかかるドメインから本質的になる。他の例示的な活性断片は、以下の表D4中に示される。
一部のHRSポリペプチドについて、HRSポリペプチドの約20〜40、20〜45、20〜50、20〜55、もしくは20〜60、20〜65、もしくは20〜67の連続もしくは非連続アミノ酸または少なくとも約20〜40、20〜45、20〜50、20〜55、もしくは20〜60、20〜65、もしくは20〜67の連続もしくは非連続アミノ酸は、配列番号1のアミノ酸1〜67由来である。特定の実施形態では、HRSポリペプチドの約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66または67の連続または非連続アミノ酸は、配列番号1のアミノ酸1〜67由来である。このHRSポリペプチドは、WHEPドメイン、アミノアシル化ドメイン、アンチコドン結合ドメインまたはそれらの任意の組合せのうちの1つまたは複数を含み得る。特定の実施形態では、このHRSポリペプチドは、機能的アミノアシル化ドメインを欠く。一部の実施形態では、このポリペプチドは、ヒトHRS由来のWHEPドメインから本質的になる。いずれか1つの理論に束縛されることは望まないが、特定のHRSポリペプチド中のWHEPドメインの独自の配向またはコンフォメーションは、これらのタンパク質において観察される増強された非正準活性および/または抗体遮断活性に寄与し得る。
従って、ある特定の実施形態では、このHRSポリペプチドは、ヒトHRSのWHEPドメイン配列を含むか、またはかかるドメイン配列からなるか、またはかかるドメイン配列から本質的になる。一部の実施形態では、このヒトHRSのWHEPドメイン配列は、特定の保存された残基によって規定される。例えば、一部の態様では、このHRSポリペプチドは、以下の表D5中のヒトHRSのWHEPドメインコンセンサス配列を含むか、またはかかる配列からなるか、またはかかる配列から本質的になる。
ある特定の実施形態では、このHRSポリペプチドは、最小ドメインを異種タンパク質(例えば、Fcドメイン)またはスプライスバリアントに接続する可撓性リンカーの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または全29アミノ酸を含み得る。
記述「配列同一性」または例えば、「〜に対して50%同一の配列」を含むとは、本明細書で使用する場合、比較のウインドウにわたってヌクレオチド毎を基礎にしてまたはアミノ酸毎を基礎にして、それらの配列が同一である程度を指す。従って、「配列同一性の百分率」は、比較のウインドウにわたって2つの最適にアラインされた配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両方の配列において存在する位置の数を決定して、一致した位置の数を得、比較のウインドウ中の位置の総数(即ち、ウインドウサイズ)によってこの一致した位置の数を除算し、その結果に100を乗じて配列同一性の百分率を得ることによって、計算され得る。
2つまたはそれ超のポリペプチド間の配列の関係性を記述するために使用される用語には、「参照配列」、「比較ウインドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」および「実質的同一性」が含まれる。「参照配列」は、長さにおいてヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含めて、少なくとも12であるが、頻繁には15〜18およびしばしば少なくとも25のモノマー単位である。2つのポリペプチドの各々が、(1)2つのポリペプチド間で類似している配列(即ち、完全ポリペプチド配列の一部分のみ)、および(2)2つのポリペプチド間で多様である配列を含み得るので、2つ(またはそれ超の)ポリペプチド間の配列比較は典型的に、配列類似性の局所的領域を同定および比較するために、「比較ウインドウ」にわたって2つのポリペプチドの配列を比較することによって実施される。「比較ウインドウ」とは、2つの配列を最適にアラインした後に、配列が、同じ数の連続位置の参照配列と比較される、少なくとも6連続する位置、通常は約50〜約100、より通常は約100〜約150の概念的セグメントを指す。比較ウインドウは、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して、約20%またはそれ未満の付加または欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。比較ウインドウをアラインするための配列の最適なアラインメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USAにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)のコンピューター化実行によって、または検査および選択された種々の方法のいずれかによって生成された最良のアラインメント(即ち、比較ウインドウにわたって最も高い百分率の相同性を生じる)によって、実施され得る。例えばAltschulら、1997年、Nucl. Acids Res. 25巻:3389頁によって開示されるような、BLASTファミリーのプログラムに対しても参照がなされ得る。配列分析の詳細な議論は、Ausubelら、「Current Protocols in
Molecular Biology」、John Wiley & Sons Inc、1994年〜1998年、第15章のユニット19.3において見出すことができる。
配列間の配列類似性または配列同一性(これらの用語は、本明細書で相互交換可能に使用される)の計算は、以下のように実施され得る。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、これらの配列は、最適な比較目的のためにアラインされ得る(例えば、ギャップが、最適なアラインメントのために第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方中に導入され得、非相同配列が、比較目的のために無視され得る)。ある特定の実施形態では、比較目的のためにアラインされる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有される場合、これらの分子は、その位置において同一である。
2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい一実施形態では、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossum62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれかを使用し、16、14、12、10、8、6または4のギャップ重みおよび1、2、3、4、5または6の長さ重みを使用して、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム中に組み込まれたNeedlemanおよびWunsch(1970年、J. Mol. Biol. 48巻:444〜453頁)のアルゴリズムを使用して決定される。さらに別の好ましい一実施形態では、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、NWSgapdna.CMPマトリクスならびに40、50、60、70または80のギャップ重みおよび1、2、3、4、5または6の長さ重みを使用して、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを使用して決定される。特に好ましいセットのパラメーター(および特記しない限り使用すべき1つ)は、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティおよび5のフレームシフトギャップペナルティを用いる、Blossum62スコアリングマトリクスである。2つのアミノ酸配列間またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれたE. MeyersおよびW. Miller(1989年、Cabios、4巻:11〜17頁)のアルゴリズムを使用しても、決定され得る。
本明細書に記載される核酸配列およびタンパク質配列は、例えば他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために、公的データベースに対する検索を実施するための「クエリー配列」として使用され得る。かかる検索は、Altschulら(1990年、J. Mol. Biol、215巻:403〜10頁)のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施され得る。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施され得る。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施され得る。比較目的のためにギャップ付きアラインメントを得るために、Gapped BLASTが、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25巻:3389〜3402頁、1997年)に記載されるように利用され得る。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、代表的プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが使用され得る。
ある特定の実施形態では、バリアントポリペプチドは、残基の少なくとも1%であるが20%未満、15%未満、10%未満または5%未満が、対応するHRS参照配列とは異なる。この比較がアラインメントを必要とする場合、これらの配列は、最大の類似性になるようにアラインすべきである。欠失もしくは挿入から「ループ」アウトされた配列、またはミスマッチは、差異とみなされる。これらの差異は、適切には、非必須残基における差異もしくは変化または保存的置換である。ある特定の実施形態では、バリアントHRSポリペプチドの分子量は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%またはそれ超、HRS参照ポリペプチドの分子量とは異なる。
HRS参照ポリペプチドの生物学的に活性な「断片」、即ち、HRSタンパク質断片の生物学的に活性な断片もまた含まれる。代表的な生物学的に活性な断片は一般に、相互作用、例えば、分子内相互作用または分子間相互作用に関与する。分子間相互作用は、特異的結合相互作用または酵素的相互作用であり得る。分子間相互作用は、HRSポリペプチドと細胞性結合パートナー、例えば、HRSポリペプチドの非正準活性に関与する細胞性受容体または他の宿主分子との間の相互作用であり得る。
HRS参照ポリペプチドの生物学的に活性な断片は、それらの間の全ての整数(例えば、101、102、103)および範囲(例えば、50〜100、50〜150、50〜200)を含め、本明細書に記載されるHRS参照ポリペプチドのいずれか1つに示されるアミノ酸配列の、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280、300、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、38、359、360、361、362、363、364、365、380、400、450、500、505またはそれ超の連続または非連続アミノ酸である、ポリペプチド断片であり得る。ある特定の実施形態では、生物学的に活性な断片は、非正準活性関連の配列、ドメインまたはモチーフを含む。ある特定の実施形態では、任意のHRS参照ポリペプチドのC末端またはN末端領域は、その短縮型HRSポリペプチドが参照ポリペプチドの非正準活性を保持する限り、それらの間の全ての整数および範囲(例えば、101、102、103、104、105)を含め、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500もしくはそれ超のアミノ酸、または約10〜50、20〜50、50〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜350、350〜400、400〜450、450〜500もしくはそれ超のアミノ酸だけ短縮され得る。特定の例示的な短縮型HRSポリペプチドおよびヒトHRSのWHEPドメインのコンセンサス配列は、以下の表D5中に示される。
本発明のHRS−Fcコンジュゲートのいずれかにおいて、HRSポリペプチドのN末端アミノ酸(例えば、N末端Met)が、本明細書に記載される例示的な短縮型HRSポリペプチドまたは他のHRS配列のいずれかからさらに欠失し得ることが理解される。
典型的に、生物学的に活性な断片は、それが誘導される生物学的に活性なHRS参照ポリペプチドの活性(即ち、非正準活性)の約1%、10%、25%または50%以上を有する。かかる非正準活性を測定するための例示的な方法は、実施例に記載される。
一部の実施形態では、HRSタンパク質、バリアントおよびそれらの生物学的に活性な断片は、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、100または150nMの親和性で、1つまたは複数の細胞性結合パートナーと結合する。一部の実施形態では、選択された細胞性結合パートナー、特に非正準活性に関与する結合パートナーに対する、HRSタンパク質断片の結合親和性は、少なくとも約1.5×、2×、2.5×、3×、3.5×、4×、4.5×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、15×、20×、25×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、100×、200×、300×、400×、500×、600×、700×、800×、900×、1000×またはそれ超(それらの間の全ての整数を含む)、対応する全長HRSポリペプチドまたは特定の選択的スプライシングされたHRSポリペプチドバリアントのものよりも強力であり得る。
上述のように、HRSポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、短縮および挿入を含む種々の方法で変更され得る。かかる操作のための方法は、当該分野で一般に公知である。例えば、HRS参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNA中の変異によって調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列変更のための方法は、当該分野で周知である。例えば、Kunkel(1985年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82巻:488〜492頁)、Kunkelら(1987年、Methods in Enzymol、154巻:367〜382号)、米国特許第4,873,192号、Watson, J. D.ら(「Molecular Biology of the Gene」、第4版、Benjamin/Cummings、Menlo
Park、Calif.、1987年)およびこれらの中で引用される参考文献を参照のこと。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を与えないアミノ酸置換を充当するためのガイダンスは、Dayhoffら(1978年)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl. Biomed. Res. Found.、Washington、D.C.)のモデルにおいて見出され得る。
生物学的に活性な短縮型および/またはバリアントHRSポリペプチドは、参照HRSアミノ酸残基と比較して、その配列に沿った種々の位置において保存的アミノ酸置換を含み得、かかるさらなる置換は、変更されたシステイン含量を有するHRSポリペプチドの活性または安定性をさらに増強し得る。「保存的アミノ酸置換」は、類似の側鎖を有するアミノ酸残基でアミノ酸残基が置き換えられる置換である。以下のように一般に下位分類され得る、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当該分野において規定されている:
酸性:この残基は、生理学的pHにおけるHイオンの喪失に起因して負の電荷を有し、この残基は、ペプチドが生理学的pHにおいて水性媒体中に存在する場合に、この残基が含まれるペプチドのコンフォメーションにおける表面位置を求めるように、水性溶液によって引きつけられる。酸性側鎖を有するアミノ酸には、グルタミン酸およびアスパラギン酸が含まれる。
塩基性:この残基は、生理学的pHにおけるまたはその1もしくは2のpH単位内でのHイオンとの会合に起因して正の電荷を有し(例えば、ヒスチジン)、この残基は、ペプチドが生理学的pHにおいて水性媒体中に存在する場合に、この残基が含まれるペプチドのコンフォメーションにおける表面位置を求めるように、水性溶液によって引きつけられる。塩基性側鎖を有するアミノ酸には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれる。
荷電:これらの残基は、生理学的pHにおいて荷電し、従って、これには酸性側鎖または塩基性側鎖を有するアミノ酸(即ち、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リシンおよびヒスチジン)が含まれる。
疎水性:これらの残基は、生理学的pHにおいて荷電せず、この残基は、ペプチドが水性媒体中に存在する場合に、この残基が含まれるペプチドのコンフォメーションにおける内部位置を求めるように、水性溶液によって反発される。疎水性側鎖を有するアミノ酸には、チロシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニンおよびトリプトファンが含まれる。
中性/極性:これらの残基は、生理学的pHにおいて荷電しないが、この残基は、水性溶液によって十分には反発されず、その結果、この残基は、ペプチドが水性媒体中に存在する場合に、この残基が含まれるペプチドのコンフォメーションにおける内部位置を求める。中性/極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、システイン、ヒスチジン、セリンおよびスレオニンが含まれる。
この説明はまた、特定のアミノ酸を「小さい」として特徴付けているが、これは、それらの側鎖が、極性基を欠いていても、疎水性を付与するのに十分には大きくないからである。プロリンを除いて、「小さい」アミノ酸は、少なくとも1つの極性基が側鎖上に存在する場合、4つまたはそれ未満の炭素を有するアミノ酸であり、存在しない場合には、3つまたはそれ未満の炭素を有するアミノ酸である。小さい側鎖を有するアミノ酸には、グリシン、セリン、アラニンおよびスレオニンが含まれる。遺伝子にコードされる二次アミノ酸プロリンは、ペプチド鎖の二次コンフォメーションに対するその公知の効果に起因して、特別の場合である。プロリンの構造は、その側鎖が、α−アミノ基の窒素ならびにα−炭素に結合しているという点で、他の全ての天然に存在するアミノ酸とは異なる。いくつかのアミノ酸類似性マトリクスが、当該分野で公知である(例えば、Dayhoffら、1978年、A model of evolutionary change in
proteinsによって例えば開示される、PAM120マトリクスおよびPAM250マトリクスを参照のこと)。しかし、M. O. Dayhoff(編)、Atlas of protein sequence and structure、5巻、345〜358頁、National Biomedical Research Foundation、Washington DCにおける;およびGonnetら(Science、256巻:14430〜1445頁、1992年)による距離の関係性を決定するためのマトリクスは、プロリンを、グリシン、セリン、アラニンおよびスレオニンと同じ群中に含めている。従って、本発明の目的のために、プロリンは、「小さい」アミノ酸として分類される。
極性または非極性としての分類のために必要とされる引きつけまたは反発の程度は任意であり、従って、本発明によって具体的に企図されるアミノ酸は、一方または他方として分類されている。具体的に命名されていないほとんどのアミノ酸は、既知の挙動を基礎として分類され得る。
アミノ酸残基は、環式または非環式、および芳香族または非芳香族、残基の側鎖置換基に関して自明の分類、および小型または大型として、さらに下位分類され得る。残基は、さらなる極性置換基が存在することを条件として、カルボキシル炭素を含めて、合計4つまたはそれ未満の炭素原子を含む場合に小さいとみなされる;そうでない場合には3つまたはそれ未満を含む場合に小さいとみなされる。小さい残基は、当然、常に非芳香族である。その構造的特性に依存して、アミノ酸残基は、2つまたはそれ超のクラスに入り得る。天然に存在するタンパク質アミノ酸について、このスキームに従う下位分類は、表A中に提示される。
保存的アミノ酸置換は、側鎖に基づく群分けもまた含む。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。例えば、イソロイシンもしくはバリンによるロイシンの置き換え、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置き換え、セリンによるスレオニンの置き換え、または構造的に関連するアミノ酸によるあるアミノ酸の類似の置き換えが、得られたバリアントポリペプチドの特性に対して大きな影響を有さないであろうと予測することは合理的である。アミノ酸変化が機能的な短縮型および/またはバリアントHRSポリペプチドを生じるかどうかは、本明細書に記載されるように、その非正準活性をアッセイすることによって、容易に決定され得る。保存的置換は、例示的な置換の見出しの下に、表B中に示される。本発明の範囲内に入るアミノ酸置換は、一般に、(a)置換の領域におけるペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、(c)側鎖の嵩高さ、または(d)生物学的機能を維持することに対するその影響が顕著には異ならない置換を選択することによって達成される。置換が導入された後、これらのバリアントは、生物学的活性についてスクリーニングされる。
あるいは、保存的置換を行うための類似のアミノ酸は、側鎖の正体に基づいて3つのカテゴリーに群分けされ得る。Zubay, G.、Biochemistry、第3版、Wm.C. Brown Publishers(1993年)に記載されるように、第1の群は、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リシン、ヒスチジンを含み、その全てが荷電側鎖を有する;第2の群は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギンを含み;第3の群は、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンを含む。
ヒトHRSのWHEPドメインのNMR構造は、決定されている(Namekiら、Accession 1X59_Aを参照のこと)。さらに、全長ヒトHRSおよびHRSの内部触媒ドメイン欠失変異体(HRSΔCD)の結晶構造もまた、決定されている(Xuら、Structure. 20巻:1470〜7頁、2012年;および米国特許出願第61/674,639号を参照のこと)。HRSの一次アミノ酸配列と併せて、このタンパク質のこれらの詳細な物理的記述は、タンパク質内の特定のアミノ酸によって果たされる役割に関する正確な洞察を提供する。従って、当業者は、他の構造的特徴のうちで、構造的に保存されたドメイン、連結領域、二次構造、例えばアルファ−ヘリックス、表面または溶媒曝露されたアミノ酸、曝露されていないまたは内部領域、触媒部位およびリガンド相互作用表面を同定するために、この情報を使用できる。かかる当業者は、次いで、例えば、これらおよび他の構造的特徴内のまたはそれらに隣接したアミノ酸残基の特徴を保存または変更することによって、例えば、野生型残基と比較して、選択されたアミノ酸側鎖(複数可)の極性、ハイドロパシー指標、電荷、サイズおよび/または位置付け(即ち、内向き、外向き)を保存または変更することによって、目的の非正準活性を保持または改善するHRSバリアントを容易に操作するために、その情報または他の情報を使用できる(例えば、Zaiwaraら、Mol Biotechnol. 51巻:67〜102頁、2012年;PeronaおよびHadd、Biochemistry. 51巻:8705〜29頁、2012年;Morinら、Trends Biotechol. 29巻:159〜66頁、2011年;Collinsら、Annu. Rev.
Biophys. 40巻:81〜98頁、2011年;および米国特許出願第61/674,639号を参照のこと)。
従って、短縮型および/またはバリアントHRSポリペプチド中の予測された非必須アミノ酸残基は、典型的に、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置き換えられる。あるいは、変異が、例えば飽和変異誘発によって、HRSコード配列の全てまたは一部に沿ってランダムに導入され得、得られた変異体は、その活性を保持する変異体を同定するために、親ポリペプチドの活性についてスクリーニングされ得る。コード配列の変異誘発後に、コードされたペプチドは組換え発現され得、ペプチドの活性が決定され得る。「非必須」アミノ酸残基は、その非正準活性のうちの1つまたは複数を無効にすることも実質的に変更することもなしに、実施形態ポリペプチドの参照配列から変更され得る残基である。適切には、この変更は、これらの活性のうちの1つを実質的に無効にしない、例えば、この活性は、参照HRS配列の少なくとも20%、40%、60%、70%または80%、100%、500%、1000%またはそれ超である。「必須」アミノ酸残基は、HRSポリペプチドの参照配列から変更された場合に、参照活性の20%未満が存在するように、親分子の活性の無効化を生じる残基である。例えば、かかる必須アミノ酸残基には、種々の供給源由来のHRSポリペプチドの活性な結合部位(複数可)またはモチーフ(複数可)において保存された配列を含む、異なる種にわたってHRSポリペプチドにおいて保存された残基が含まれる。
in vitro細胞からのサイトカイン放出の慣用的な測定ベースの、および動物研究を含む、抗炎症活性を決定するためのアッセイは、当該分野で十分確立されており(例えば、Wittmannら、J Vis Exp.(65巻):e4203頁.doi:10.3791/4203、2012年;Feldmanら、Mol Cell. 47巻:585〜95頁、2012年;Clutterbuckら、J Proteomics. 74巻:704〜15頁、2011年、GiddingsおよびMaitra、J
Biomol Screen. 15巻:1204〜10頁、2010年;Wijnhovenら、Glycoconj J. 25巻:177〜85頁、2008年;ならびにFrowら、Med Res Rev. 24巻:276〜98頁、2004年を参照のこと)、抗炎症活性をプロファイリングおよび最適化するために、容易に使用され得る。例示的なin vivo実験系もまた、添付の実施例中に記載されている。
一部の実施形態では、HRSポリペプチドは、1つまたは複数のシステイン置換を有し得、ここで、1つまたは複数の天然に存在する(非システイン)残基が、(例えば、安定性を変更するために、Fc断片のチオールベースのコンジュゲート化を促進するために、PEGまたは他の分子のチオールベースの結合を促進するために)システインで置換されている。一部の実施形態では、システイン置換は、HRSポリペプチド(例えば、配列番号1〜106、170〜181または185〜191)のN末端および/もしくはC末端、またはHRSポリペプチドの他の表面曝露された領域の近傍である。特定の実施形態は、配列番号1〜106、170〜181または185〜191のいずれか1つのN末端および/またはC末端に対して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸以内の残基のうちの1つまたは複数がシステイン残基で置換される場合を含む。一部の実施形態では、システイン残基は、N末端またはC末端融合タンパク質の創出を介して、HRSポリペプチドに付加され得る。かかる融合タンパク質は、任意の長さのものであり得るが、典型的には約1〜5、または約5〜10、約10〜20、または約20〜30アミノ酸長である。一部の実施形態では、C末端への融合が好ましい。
HRSポリペプチドHRS(1−60)に基づく、かかるシステイン改変タンパク質の具体的な例示的な実施形態は、表D6中に示される。このアプローチは、表D5のHRSポリペプチドおよび本明細書に記載される他のHRSポリペプチドに、直接適用可能である。
一部の実施形態では、このHRSポリペプチドには、内因性または天然に存在するシステイン残基が代替的アミノ酸に変異しているまたは欠失している変異体が含まれ得る。一部の実施形態では、HRSポリペプチド中へのシステイン残基(複数可)の挿入または置換は、他の表面曝露された反応性システイン残基の排除と組み合わされ得る。従って、一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、例えば天然に存在するシステイン残基を除去するために、Cys83、Cys174、Cys191、Cys196、Cys224、Cys235、Cys379、Cys455、Cys507および/またはCys509(配列番号1によって規定される)において、1つまたは複数の置換および/または欠失を含み得る。
具体的な実施形態には、Cys83、Cys174、Cys191、Cys196、Cys224、Cys235、Cys379、Cys455のうちいずれか1つもしくは複数の変異もしくは欠失、または例えばC末端3アミノ酸の欠失(Δ507−509)によるCys507およびCys509の欠失を有する、配列番号1〜106、170〜181もしくは185〜191のいずれか1つ、またはそれらのバリアントもしくは断片が含まれる。これらの位置における例示的な変異には、例えば、システインからセリン、アラニン、ロイシン、バリンまたはグリシンへの変異が含まれる。ある特定の実施形態では、特異的システイン置換のためのアミノ酸残基は、他の種および生物由来のHRSオルソログにおいて見出される天然に存在する置換から選択され得る。この型の例示的な置換は、表D7中に示される。
一部の実施形態では、変異誘発のために選択される天然に存在するシステインは、その表面曝露に基づいて選択される。従って、一態様では、置換のために選択されるシステイン残基は、Cys224、Cys235、Cys507およびCys509から選択される。一部の実施形態では、配列番号1の最後の3つの(C末端)残基は、残基507〜509を欠失するように欠失している。一部の実施形態では、これらのシステインは、分子内システイン対、例えばCys174およびCys191を排除するように、変異または欠失のために選択される。
表面曝露されたシステイン残基を低減させるための所望のシステイン変異/置換(太字下線で示される)の具体的なさらなる例には、表D8中に以下に列挙されるものが含まれる。
一部の実施形態では、かかるシステイン置換変異体は、規定された表面曝露された位置において新たな表面曝露されたシステイン残基を操作して入れ込む、挿入するまたは他の方法で導入するために改変され、ここで、導入された残基は、HRSポリペプチドの非正準活性を実質的に妨害しない。具体的な例には、例えば、上記低減したシステインのHRSポリペプチドのいずれかのN末端またはC末端における、さらなるシステイン残基の挿入(または再挿入戻し)が含まれる。一部の実施形態では、かかるN末端またはC末端の表面曝露されたシステインの挿入は、HRSポリペプチドの低減したシステインバリアントへの、全長ヒトHRSの最後の1つ、最後の2つまたは最後の3つの天然に存在するC末端アミノ酸の再挿入、例えば、配列CIC(Cys Ile Cys)の全てまたは一部の再挿入を含む。例示的な低減したシステイン変異体には、例えば、配列番号1〜106、170〜181もしくは185〜191または表D1、D3〜D6もしくはD8のHRSポリペプチドのいずれかにおける、残基Cys174、Cys191、Cys224およびCys235における変異(またはそれらの欠失)の任意の組合せ、ならびに/またはCys507およびCys509の欠失もしくは置換(全長ヒトHRS(配列番号1)の番号付けに基づく)が含まれる。
Fc領域またはPEGまたは他の異種分子などの異種分子への部位特異的なコンジュゲート化または結合のいくつかの型について、HRSポリペプチドは、1つまたは複数のグルタミン置換を有し得、ここで、1つまたは複数の天然に存在する(非グルタミン)残基は、例えば、グルタミンのアミド基への分子(複数可)のトランスグルタミナーゼ触媒性の結合を促進するために、グルタミンで置換される。一部の実施形態では、グルタミン置換は、HRSポリペプチド(例えば、配列番号1〜106、170〜181もしくは185〜191、または表D1、D3〜D6もしくはD8のHRSポリペプチド)のN末端および/またはC末端の近傍に導入される。特定の実施形態は、配列番号1〜106、170〜181または185〜191のいずれか1つのN末端および/またはC末端に対して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸以内の残基のうちの1つまたは複数が、グルタミン残基で置換される場合を含む。これらおよび関連のHRSポリペプチドはまた、任意の天然に存在するグルタミン残基を除去し、所望の場合、それによって部位特異的なコンジュゲート化または結合の程度を調節するために、置換(例えば、保存的置換)を含み得る。
Fc領域またはPEGまたは他の異種分子などの異種分子への部位特異的なコンジュゲート化または結合の特定の型について、HRSポリペプチドは、1つまたは複数のリシン置換を有し得、ここで、1つまたは複数の天然に存在する(非リシン)残基は、例えば、リシンのアミノ基への分子(複数可)のアシル化またはアルキル化に基づく結合を促進するために、リシンで置換される。これらの方法はまた、典型的には、N末端残基への分子(複数可)の結合を生じる。一部の実施形態では、リシン置換は、HRSポリペプチド(例えば、配列番号1〜106、170〜181もしくは185〜191、または表D1、D3〜D6もしくはD8のHRSポリペプチド)のN末端および/またはC末端の近傍である。特定の実施形態は、配列番号1〜106、170〜181もしくは185〜191(または表D1、D3〜D6もしくはD8のHRSポリペプチド)のいずれか1つのN末端および/もしくはC末端に対して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25アミノ酸以内の残基のうちの1つもしくは複数が、リシン残基で置換される場合を含む。これらおよび関連のHRSポリペプチドはまた、任意の天然に存在するリシン残基を除去し、所望の場合、それによって部位特異的なコンジュゲート化または結合の程度を調節するために、置換(例えば、保存的置換)を含み得る。
HRSポリペプチドへの部位特異的なコンジュゲート化は、HRSポリペプチドの1つまたは複数の溶媒アクセス可能な表面アミノ酸を置換することによっても、実施され得る。例えば、適切な溶媒アクセス可能なアミノ酸は、例示的なHRSポリペプチドの公開された結晶構造を使用し、SPIDDERサーバー(http://sppider.cchmc.org/)を使用して予測された溶媒アクセス可能性に基づいて決定され得る(Xuら、Structure. 20巻:1470〜7頁、2012年;および米国特許出願第61/674,639号を参照のこと)。この分析に基づいて、表面上のいくつかのアミノ酸は、コンジュゲート化または結合に適切な官能基を導入するための変異部位として潜在的に使用され得る。結晶構造に基づくアミノ酸の表面アクセス可能性スコアが計算され得、ここで、より高いスコアは、より良いアクセス可能性を示す。特定の実施形態では、より高いスコア(例えば、>40)が好ましい。従って、一部の実施形態では、40よりも大きい表面アクセス可能性スコアを有するアミノ酸位置が、システイン、リシン、グルタミンまたは他の天然に存在しないアミノ酸を導入するために使用され得る。
特定の実施形態では、溶媒アクセス可能な表面アミノ酸は、アラニン、グリシンおよびセリンからなる群から選択され、システイン、グルタミンもしくはリシンが含まれるがこれらに限定されない天然に存在するアミノ酸、または部位特異的なコンジュゲート化もしくは結合のために最適化された天然に存在しないアミノ酸で置換され得る。
種々の実施形態では、本発明は、Fc領域またはPEGまたは他の異種分子などの異種分子に結合した官能基と共有結合を形成する官能基を含む天然に存在しないアミノ酸を置換することによる、HRSポリペプチド中の任意のアミノ酸位置における部位特異的なコンジュゲート化または結合を企図する。非天然アミノ酸は、例えば、配列番号1〜106、170〜181もしくは185〜191(または表D1、D3〜D6もしくはD8のHRSポリペプチド)のいずれか1つのN末端および/もしくはC末端に対して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25アミノ酸以内の残基のうちの1つもしくは複数において;配列番号1〜106、170〜181もしくは185〜191(または表D1、D3〜D6もしくはD8のHRSポリペプチド)のいずれか1つのN末端および/もしくはC末端において;あるいは本明細書に記載される溶媒アクセス可能な表面アミノ酸残基において、挿入または置換され得る。
特定の実施形態では、天然に存在しないアミノ酸には、任意のアミノ酸、改変アミノ酸、またはセレノシステイン以外のアミノ酸アナログ、および以下の20種の遺伝子にコードされるアルファ−アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンが含まれるがこれらに限定されない。アルファ−アミノ酸の一般構造は、以下の式によって例示される:
非天然アミノ酸は、典型的には、上述の式を有する任意の構造であり、式中、R基は、20種の天然アミノ酸において使用される置換基以外の任意の置換基である。20種の天然アミノ酸の構造については、例えば、生化学の教科書、例えば、Biochemistry by L. Stryer、第3版、1988年、Freeman and Company、New Yorkを参照のこと。本明細書に開示される非天然アミノ酸は、上記20種のアルファ−アミノ酸以外の天然に存在する化合物であり得ることに留意されたい。本明細書に開示される非天然アミノ酸は、典型的には、側鎖のみが天然アミノ酸と異なるので、これらの非天然アミノ酸は、天然に存在するタンパク質において形成されるのと同じ様式で、例えば天然または非天然の他のアミノ酸とアミド結合を形成する。しかし、これらの非天然アミノ酸は、天然アミノ酸からそれらを識別する側鎖基を有する。例えば、上述の式中のRは、任意選択で、アルキル−、アリール−、アリールハライド、ビニルハライド、アルキルハライド、アセチル、ケトン、アジリジン、ニトリル、ニトロ、ハライド、アシル−、ケト−、アジド−、ヒドロキシル−、ヒドラジン、シアノ−、ハロ−、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、エポキシド、スルホン、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボラン、フェニルボロン酸、チオール、セレノ−、スルホニル−、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式−、ピリジル、ナフチル、ベンゾフェノン、シクロオクチンなどの束縛された環、チオエステル、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミノ、カルボン酸、アルファ−ケトカルボン酸、アルファもしくはベータ不飽和酸およびアミド、グリオキシルアミド、またはオルガノシラン基など、あるいはそれらの任意の組合せを含む。
非天然アミノ酸の具体的な例には、p−アセチル−L−フェニルアラニン、O−メチル−L−チロシン、L−3−(2−ナフチル)アラニン、3−メチル−フェニルアラニン、O−4−アリル−L−チロシン、4−プロピル−L−チロシン、トリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、β−O−GlcNAc−L−セリン、トリ−O−アセチル−GalNAc−α−スレオニン、α−GalNAc−L−スレオニン、L−Dopa、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、p−アジド−L−フェニルアラニン、p−アシル−L−フェニルアラニン、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、L−ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p−ヨード−フェニルアラニン、p−ブロモフェニルアラニン、p−アミノ−L−フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、以下に列挙されるもの、または本発明の他の場所に列挙されるものなどが含まれるがこれらに限定されない。
従って、所望の分子(例えば、Fc領域、PEG)の任意の好ましい官能基と共有結合を形成する官能基を含む天然に存在しないアミノ酸を選択することができる。非天然アミノ酸は、一旦選択されると、供給業者から購入され得るか、または化学的に合成され得るかのいずれかである。任意の数の非天然アミノ酸が、標的分子中に取り込まれ得、これは、結合される所望の分子の数に従って変動し得る。これらの分子は、非天然アミノ酸の全てまたは一部のみに結合され得る。さらに、同じまたは異なる非天然アミノ酸が、所望の成果に依存して、HRSポリペプチド中に取り込まれ得る。ある特定の実施形態では、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ超の非天然アミノ酸が、HRSポリペプチド中に取り込まれ、そのうちいずれかまたは全てが、所望の官能基を含む分子にコンジュゲート化され得る。
ある特定の態様では、非天然アミノ酸の使用は、HRSポリペプチドの選択された非正準活性を改変する(例えば、増加させる)ために、またはタンパク質のin vivoもしくはin vitro半減期を変更するために、利用され得る。非天然アミノ酸は、本明細書の別の箇所に記載するように、HRSタンパク質の(選択的)化学的改変(例えば、ペグ化)を促進するためにも使用され得る。例えば、特定の非天然アミノ酸は、所与のタンパク質へのFc領域またはPEGなどのポリマーの選択的結合を可能にし、それによって、その薬物動態学的特性を改善する。
アミノ酸アナログおよび模倣物の具体的な例は、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるRobertsおよびVellaccio、The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology、編者GrossおよびMeinhofer、5巻、341頁、Academic Press, Inc.、New York、N.Y.(1983年)中に記載されるのが見出され得る。他の例には、過アルキル化アミノ酸、特に過メチル化アミノ酸が含まれる。例えば、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるCombinatorial Chemistry、編者WilsonおよびCzarnik、第11章、235頁、John Wiley
& Sons Inc.、New York、N.Y.(1997年)を参照のこと。なお他の例には、そのアミド部分(および従って、得られたペプチドのアミド骨格)が、例えば、糖環、ステロイド、ベンゾジアゼピンまたはカルボサイクル(carbo cycle)によって置き換えられたアミノ酸が含まれる。例えば、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるBurger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery、編者Manfred E. Wolff、第15章、619〜620頁、John Wiley & Sons Inc.、New York、N.Y.(1995年)を参照のこと。ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物およびタンパク質を合成する方法は、当該分野で周知である(例えば、その各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,420,109号;M. Bodanzsky、 Principles of Peptide Synthesis(第1版および改訂第2版)、Springer−Verlag、New York、N.Y.(1984年および1993年)、第7章を参照;StewartおよびYoung、Solid Phase Peptide Synthesis、(第2版)、Pierce
Chemical Co.、Rockford、Ill.(1984年)を参照のこと)。従って、本発明のHRSポリペプチドは、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸ならびにアミノ酸アナログおよび模倣物から構成され得る。
ポリヌクレオチド
ある特定の実施形態は、HRSポリペプチドまたはHRS−Fc融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する。単独で、またはHRSコード配列と組み合わせて、本明細書に記載されるFc領域のうちの任意の1つまたは複数をコードするポリヌクレオチドもまた含まれる。他の使用のうちで、これらの実施形態は、所望のHRS、Fc領域、またはHRS−Fcポリペプチドもしくはそのバリアントを組換え生成するために、あるいは選択された細胞または被験体においてHRS、Fc領域またはHRS−Fcポリペプチドを発現させるために利用され得る。遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書に記載されるHRSポリペプチドHRS−Fc融合タンパク質をコードする多くのヌクレオチド配列が存在することが、当業者に理解される。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意のネイティブ遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有し得る。それにもかかわらず、コドン使用頻度における差異に起因して変動するポリヌクレオチド、例えば、ヒト、酵母または細菌のコドン選択について最適化されたポリヌクレオチドが、本発明によって具体的に企図される。
当業者に認識されるように、ポリヌクレオチドは、一本鎖(コード鎖またはアンチセンス鎖)または二本鎖であり得、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)分子またはRNA分子であり得る。さらなるコード配列または非コード配列は、必ずではないが、本発明のポリヌクレオチド内に存在し得、ポリヌクレオチドは、必ずではないが、他の分子および/または支持体材料に連結され得る。
ポリヌクレオチドは、ネイティブ配列(即ち、HRS−Fc融合ポリペプチドまたはその一部分をコードする内因性配列)を含み得るか、またはバリアント、もしくはかかる配列の生物学的機能的等価物を含み得る。ポリヌクレオチドバリアントは、以下にさらに記載するように、1つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含み得、その結果、好ましくは、コードされたポリペプチドの活性は、未改変ポリペプチドと比較して実質的に減退されない。
さらなる実施形態では、本発明は、HRSポリペプチドまたはHRS−Fc融合タンパク質に対して同一または相補的な配列の種々の長さの連続ストレッチを含む単離されたポリヌクレオチドを提供し、ここで、この単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載される短縮型HRSポリペプチドをコードする。
従って、複数のポリヌクレオチドが、HRSポリペプチド、Fc領域および本発明の融合タンパク質をコードし得る。さらに、このポリヌクレオチド配列は、種々の理由のために操作され得る。例には、種々の生物におけるポリヌクレオチドの発現を増強するための好ましいコドンの取り込みが含まれるがこれに限定されない(一般に、Nakamuraら、Nuc. Acid. Res. 28巻:292頁、2000年を参照のこと)。さらに、サイレント変異が、制限部位を導入もしくは排除するため、CpGジヌクレオチドモチーフの密度を減少させるため(例えば、Kamedaら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 349巻:1269〜1277頁、2006年を参照のこと)、または一本鎖配列がステム−ループ構造を形成する能力を低減させるために(例えば、Zuker M.、Nucl. Acid Res. 31巻:3406〜3415頁、2003年を参照のこと)、取り込まれ得る。さらに、哺乳動物発現は、開始コドンにおいてKozakコンセンサス配列(即ち、(a/g)cc(a/g)ccATGg)(配列番号199)を含むことによって、さらに最適化され得る。この目的のために有用なKozakコンセンサス配列は、当該分野で公知である(Mantyhら、PNAS 92巻:2662〜2666頁、1995年;Mantyhら、Prot.
Exp. & Purif. 6巻:124頁、1995年)。例示的な野生型およびコドン最適化バージョンの種々のHRSポリペプチドが、以下の表D9中に提供される。
さらなるコード配列または非コード配列は、必ずではないが、本発明のポリヌクレオチド内に存在し得、ポリヌクレオチドは、必ずではないが、他の分子および/または支持体材料に連結され得る。従って、本発明のポリヌクレオチドは、コード配列自体の長さにかかわらず、他のDNAまたはRNA配列、例えばプロモーター、ポリアデニル化シグナル、さらなる制限酵素部位、マルチクローニング部位、他のコードセグメントなどと組み合わされ得、その結果、それらの全体的な長さは、かなり変動し得る。
従って、ほとんど任意の長さのポリヌクレオチド断片が使用され得、その合計長さは、好ましくは、意図した組換えDNAプロトコールにおける調製および使用の容易さによって限定されることが企図される。HRS参照ポリヌクレオチド(例えば、塩基番号X〜Y、ここで、Xは約1〜3000またはそれ超であり、Yは約10〜3000またはそれ超である)またはその相補体の任意の一部分または断片(例えば、約6ヌクレオチド長超、7ヌクレオチド長超、8ヌクレオチド長超、9ヌクレオチド長超または10ヌクレオチド長超)を含む、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、41、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、270、280、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000またはそれ超(その間の全ての整数を含む)塩基長のポリヌクレオチドが含まれる。
本発明の実施形態は、HRS参照ポリヌクレオチド配列の「バリアント」もまた含む。ポリヌクレオチド「バリアント」は、参照ポリヌクレオチドと比較して、1つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含み得る。一般に、HRS参照ポリヌクレオチド配列のバリアントは、デフォルトパラメーターを使用して本明細書の別の箇所に記載される配列アラインメントプログラムによって決定されるように、特定のヌクレオチド配列(例えば、配列番号111〜127、182〜184、192〜198など;実施例も参照のこと)に対して少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、一般には少なくとも約75%、80%、85%、望ましくは約90%〜95%またはそれ超、より適切には約98%またはそれ超の配列同一性を有し得る。ある特定の実施形態では、バリアントは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、41、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100(その間の全ての整数を含む)塩基またはそれ超が、参照配列とは異なり得る。ある特定の実施形態では、例えば、ポリヌクレオチドバリアントが非正準活性を有するHRSポリペプチドをコードする場合、コードされたHRSポリペプチドの所望の活性は、未改変ポリペプチドと比較して実質的に減退されない。コードされたポリペプチドの活性に対する影響は、本明細書に記載するように一般に評価され得る。一部の実施形態では、これらのバリアントは、例えば、異なる実施形態においてモノマー、ダイマーまたはマルチマーとして主に存在するHRSポリペプチドを提供するために、HRSポリペプチドの凝集状態を変更し得る。
ある特定の実施形態は、以下に記載するストリンジェンシー条件下で、参照HRSポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号111〜127、182〜184、192〜198など;実施例も参照のこと)またはそれらの相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用する場合、用語「低いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、高いストリンジェンシーまたは非常に高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を記述する。ハイブリダイゼーション反応を実施するためのガイダンスは、Ausubelら(1998年、上記)、セクション6.3.1〜6.3.6中に見出され得る。水性および非水性の方法が、その参考文献中に記載され、いずれも使用され得る。
低いストリンジェンシー条件に対する本明細書の言及は、42℃でのハイブリダイゼーションのために少なくとも約1%v/vから少なくとも約15%v/vホルムアミドまで、および少なくとも約1Mから少なくとも約2M塩まで、ならびに42℃での洗浄のために少なくとも約1Mから少なくとも約2M塩までを含み、それらを包含する。低いストリンジェンシー条件は、65℃でのハイブリダイゼーションのために1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDS、および室温での洗浄のために(i)2×SSC、0.1%SDS;または(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、5%SDSもまた含み得る。低いストリンジェンシー条件の一実施形態は、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーションと、その後の少なくとも50℃(洗浄の温度は、低いストリンジェンシー条件に関して55℃まで増加し得る)での0.2×SSC、0.1%SDS中での2回の洗浄とを含む。
中程度のストリンジェンシー条件は、42℃でのハイブリダイゼーションのために少なくとも約16%v/vから少なくとも約30%v/vホルムアミドまで、および少なくとも約0.5Mから少なくとも約0.9M塩まで、ならびに55℃での洗浄のために少なくとも約0.1Mから少なくとも約0.2M塩までを含み、それらを包含する。中程度のストリンジェンシー条件は、65℃でのハイブリダイゼーションのために1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDS、および60〜65℃での洗浄のために(i)2×SSC、0.1%SDS;または(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、5%SDSもまた含み得る。中程度のストリンジェンシー条件の一実施形態は、約45℃での6×SSC中でのハイブリダイゼーションと、その後の60℃での0.2×SSC、0.1%SDS中での1回または複数の洗浄とを含む。高いストリンジェンシー条件は、42℃でのハイブリダイゼーションのために少なくとも約31%v/vから少なくとも約50%v/vホルムアミドまで、および約0.01Mから約0.15M塩まで、および55℃での洗浄のために約0.01Mから約0.02M塩までを含み、それらを包含する。
高いストリンジェンシー条件は、65℃でのハイブリダイゼーションのために1%BSA、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDS、および65℃を超える温度での洗浄のために(i)0.2×SSC、0.1%SDS;または(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、1%SDSもまた含み得る。高いストリンジェンシー条件の一実施形態は、約45℃での6×SSC中でのハイブリダイゼーションと、その後の65℃での0.2×SSC、0.1%SDS中での1回または複数の洗浄とを含む。非常に高いストリンジェンシー条件の一実施形態は、65℃での0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS中でのハイブリダイゼーションと、その後の65℃での0.2×SSC、1%SDS中での1回または複数の洗浄とを含む。
他のストリンジェンシー条件は、当該分野で周知であり、当業者は、種々の因子がハイブリダイゼーションの特異性を最適化するために操作され得ることを認識している。最終洗浄のストリンジェンシーの最適化は、高い程度のハイブリダイゼーションを確実にするように機能し得る。詳細な例については、Ausubelら、上記、2.10.1〜2.10.16頁およびSambrookら(1989年、上記)、セクション1.101〜1.104を参照のこと。ストリンジェントな洗浄は、典型的には、約42℃〜68℃の温度で実施されるが、当業者は、他の温度が、ストリンジェントな条件に適切であり得ることを理解する。最大ハイブリダイゼーション速度は、典型的には、DNA−DNAハイブリッドの形成のためのTmを下回って、約20℃〜25℃で生じる。Tmは、融解温度または2つの相補的ポリヌクレオチド配列が解離する温度であることが、当該分野で周知である。Tmを推定するための方法は、当該分野で周知である(Ausubelら、上記、2.10.8頁を参照のこと)。
一般に、完全に一致したDNAの二重鎖のTmは、式:Tm=81.5+16.6(log10M)+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−(600/長さ)によって近似値として予測され得、式中、Mは、好ましくは0.01モル濃度〜0.4モル濃度の範囲の、Na+の濃度であり;%G+Cは、30%と75%との間のG+C範囲内の、塩基の総数の百分率としてのグアノシン塩基およびシトシン塩基の合計であり;%ホルムアミドは、体積パーセントのホルムアミド濃度であり;長さは、DNA二重鎖中の塩基対の数である。二重鎖DNAのTmは、ランダムにミスマッチした塩基対の数における1%の増加毎に、およそ1℃減少する。洗浄は一般に、高いストリンジェンシーについてはTm−15℃で、または中程度のストリンジェンシーについてはTm−30℃で実施される。
ハイブリダイゼーション手順の一例では、固定化されたDNAを含むメンブレン(例えば、ニトロセルロースメンブレンまたはナイロンメンブレン)を、標識されたプローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液(50%脱イオン化ホルムアミド、5×SSC、5×Denhardt溶液(0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドンおよび0.1%ウシ血清アルブミン)、0.1%SDSおよび200mg/mL変性サケ精子DNA)中で、42℃で一晩ハイブリダイズさせる。次いで、このメンブレンは、2回の連続的な中程度のストリンジェンシーの洗浄(即ち、45℃で15分間にわたって2×SSC、0.1%SDS、その後50℃で15分間にわたって2×SSC、0.1%SDS)と、その後の2回の連続的なより高いストリンジェンシーの洗浄(即ち、55℃で12分間にわたって0.2×SSC、0.1%SDS、その後65〜68℃で12分間にわたって0.2×SSCおよび0.1%SDS溶液)とに供される。
HRSポリペプチドおよびHRS−Fcコンジュゲートの生成
HRS−Fcコンジュゲートポリペプチドは、当該分野に公知の任意の適切な手順によって、例えば、標準的な固相ペプチド合成(Merrifield、J. Am. Chem. Soc. 85巻:2149〜2154頁(1963年))を使用し、または遺伝的に改変された宿主を使用した組換え技術によって、調製され得る。タンパク質合成は、手動技術を使用して、または自動化によって実施され得る。自動化合成は、例えばApplied Biosystems 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer)を使用して達成され得る。あるいは、種々の断片が、所望の分子を生成するために、別々に化学的に合成され得、化学的方法を使用して組み合わされ得る。
HRS−Fcコンジュゲートは、周知の技術によって、適切な宿主細胞において問題のHRSポリペプチドまたはHRS−FcコンジュゲートをコードするDNA配列またはRNA配列を発現させることによっても生成され得る。HRS−FcコンジュゲートまたはHRSポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、確立された標準的な方法、例えば、Beaucageら、Tetrahedron Letters 22巻:1859〜1869頁、1981年によって記載されるホスホラミダイト(phosphoamidite)法;またはMatthesら、EMBO Journal 3巻:801〜805頁、1984年によって記載される方法によって、合成により調製され得る。ホスホラミダイト法によれば、オリゴヌクレオチドは、合成DNA構築物を形成するために、例えば自動DNA合成器中で合成され、精製され、二重鎖化され、ライゲーションされる。あるいは、DNAまたはRNA構築物は、制限酵素媒介性のクローニングおよびPCRベースの遺伝子増幅を含む標準的な組換え分子生物学的技術を使用して構築され得る。一部の実施形態では、直接的なmRNA媒介性の発現のために、このポリヌクレオチドは、効率的な送達および細胞中への取り込みを可能にするために、ナノ粒子またはリポソーム中に封入され得、任意選択で、安定性および翻訳を増強するために、改変されたキャップまたはテイル構造を含む。
これらのポリヌクレオチド配列はまた、混合ゲノム、cDNA、RNAおよび合成起源のものであり得る。例えば、リーダーペプチドをコードするゲノムまたはcDNA配列は、HRSポリペプチドまたはHRS−FcコンジュゲートをコードするゲノムまたはcDNA配列に接続され得、その後、このDNAまたはRNA配列は、周知の手順に従う相同組換えのために所望のアミノ酸配列をコードする合成オリゴヌクレオチドを挿入することによって、または好ましくは適切なオリゴヌクレオチドを使用するPCRによって所望の配列を生成することによって、1つの部位において改変され得る。一部の実施形態では、シグナル配列は、コード配列の前に含まれ得る。この配列は、細胞表面へとポリペプチドを指向させるようにまたはポリペプチドを培地中に分泌するように宿主細胞と連絡する、コード配列に対してN末端のシグナルペプチドをコードする。典型的には、このシグナルペプチドは、タンパク質が細胞を離れる前に宿主細胞によって切り取られる。シグナルペプチドは、原核生物および真核生物中の種々のタンパク質において見出され得る。
種々の発現ベクター/宿主系が公知であり、ポリヌクレオチド配列を含むためおよび発現させるために利用され得る。これらには、微生物、例えば、組換えバクテリオファージ、プラスミドもしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)もしくは細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系;またはウイルス性、プラスミド、エピソーム性もしくは組込み発現ベクターで形質転換された哺乳動物細胞およびより具体的にはヒト細胞系を含む動物細胞系が含まれるがこれらに限定されない。
発現ベクター中に存在する「制御エレメント」または「調節配列」は、転写および翻訳を実施するために宿主の細胞性タンパク質と相互作用する、ベクターの非翻訳領域−−エンハンサー、プロモーター、5’および3’非翻訳領域−−である。かかるエレメントは、その強度および特異性が変動し得る。利用されるベクター系および宿主に依存して、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む、任意の数の適切な転写および翻訳エレメントが使用され得る。例えば、細菌系においてクローニングする場合、誘導性プロモーター、例えばPBLUESCRIPTファージミド(Stratagene、La Jolla、Calif.)またはPSPORT1プラスミド(Gibco BRL、Gaithersburg、Md.)のハイブリッドlacZプロモーターなどが、使用され得る。哺乳動物細胞系では、哺乳動物遺伝子由来または哺乳動物ウイルス由来のプロモーターが、一般に好ましい。ポリペプチドをコードする配列の複数のコピーを含む細胞株を生成することが必要な場合、SV40またはEBVに基づくベクターが、適切な選択可能なマーカーとともに有利に使用され得る。
ある特定の実施形態は、E.coliベースの発現系を使用し得る(例えば、Structural Genomics Consortiumら、Nature Methods. 5巻:135〜146号、2008年を参照のこと)。これらおよび関連の実施形態は、適切な発現ベクターを生成するために、ライゲーション非依存的クローニング(LIC)に部分的にまたは全体的に依存し得る。具体的な実施形態では、タンパク質発現は、T7 RNAポリメラーゼ(例えば、pETベクターシリーズ)、または例えばTACプロモーターを含む代替的プロモーターを有する改変されたpETベクターによって、制御され得る。これらおよび関連の実施形態は、T7媒介性の発現を支持し、改善された標的タンパク質安定性のためにlonおよびompTプロテアーゼにおいて欠損しているBL21のλDE3溶原菌、発現宿主株BL21(DE3)を利用し得る。E.coliにおいて稀にしか使用されないtRNAをコードするプラスミドを保有する発現宿主株、例えばROSETTA(商標)(DE3)株およびRosetta 2(DE3)株もまた含まれる。一部の実施形態では、発酵の間に低減したレベルの翻訳後修飾を生じ得る、他のE.coli K−12株、例えばW3110(F−ラムダ−IN(rrnD−rrnE)1 rph−1)、およびUT5600(F、araC14、leuB6(Am)、secA206(aziR)、lacY1、proC14、tsx67、Δ(ompTfepC)266、entA403、glnX44(AS)、λ−、trpE38、rfbC1、rpsL109(strR)、xylA5、mtl−1、thiE1)を含む、他のE.coli株が利用され得る。細胞溶解および試料の取り扱いは、商標BENZONASE(登録商標)ヌクレアーゼおよびBUGBUSTER(登録商標)Protein Extraction Reagentの下で販売される試薬を使用しても、改善され得る。細胞培養のために、自己誘導性培地は、ハイスループット発現系を含む多くの発現系の効率を改善し得る。この型の培地(例えば、OVERNIGHT EXPRESS(商標)Autoinduction System)は、IPTGなどの人工の誘導剤の添加なしに、代謝シフトを介してタンパク質発現を段階的に惹起する。
特定の実施形態は、ヘキサヒスチジンタグ(例えば、商標HIS・TAG(登録商標)融合物の下で販売されるもの)を使用し、その後固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)精製または関連の技術を使用する。しかし、ある特定の態様では、臨床グレードのタンパク質は、アフィニティタグの使用を伴ってまたは伴わずに、E.coli封入体から単離され得る(例えば、Shimpら、Protein Expr Purif. 50巻:58〜67頁、2006年を参照のこと)。さらなる一例として、ある特定の実施形態は、寒冷ショック誘導性のE.coli高収量産生系を使用し得るが、これは、低温でのEscherichia coliにおけるタンパク質の過剰発現が、その溶解度および安定性を改善するからである(例えば、Qingら、Nature Biotechnology. 22巻:877〜882頁、2004年を参照のこと)。
高密度細菌発酵系もまた含まれる。例えば、Ralstonia eutrophaの高い細胞密度でのカルチベーションは、150g/Lを超える細胞密度でのタンパク質産生、および10g/Lを超える力価における組換えタンパク質の発現を可能にする。酵母Saccharomyces cerevisiaeでは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えばアルファ因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHを含むいくつかのベクターが、使用され得る。総説については、Ausubelら(上記)およびGrantら、Methods Enzymol. 153巻:516〜544頁、1987年を参照のこと。Pichia pandoris発現系(例えば、Liら、Nature Biotechnology. 24巻、210〜215頁、2006年;およびHamiltonら、Science、301巻:1244頁、2003年を参照のこと)もまた含まれる。ある特定の実施形態は、とりわけ、ヒト化N−グリコシル化経路を有する酵母を含む、タンパク質を選択的にグリコシル化するように操作された酵母系を含む(例えば、Hamiltonら、Science. 313巻:1441〜1443頁、2006年;Wildtら、Nature Reviews Microbiol. 3巻:119〜28頁、2005年;およびGerngrossら、Nature−Biotechnology. 22巻:1409〜1414頁、2004年;米国特許第7,629,163号;米国特許第7,326,681号;および米国特許第7,029,872号を参照のこと)。単に例として、組換え酵母培養物は、とりわけ、Fernbach Flaskまたは15L、50L、100Lおよび200Lの発酵槽中で増殖され得る。
植物発現ベクターが使用される場合、ポリペプチドをコードする配列の発現は、いくつかのプロモーターのいずれかによって駆動され得る。例えば、ウイルスプロモーター、例えばCaMVの35Sおよび19Sプロモーターは、単独で、またはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わせて、使用され得る(Takamatsu、EMBO J. 6巻:307〜311頁、1987年)。あるいは、植物プロモーター、例えば、RUBISCOの小サブユニットまたはヒートショックプロモーターが使用され得る(Coruzziら、EMBO J. 3巻:1671〜1680頁、1984年;Broglieら、Science. 224巻:838〜843頁、1984年;およびWinterら、Results Probl. Cell Differ. 17巻:85〜105頁、1991年)。これらの構築物は、直接的DNA形質転換または病原体媒介性トランスフェクションによって、植物細胞中に導入され得る。かかる技術は、いくつかの一般に入手可能な総説中に記載されている(例えば、Hobbs in McGraw Hill、Yearbook of Science and Technology、191〜196頁、1992年を参照のこと)。
昆虫系もまた、目的のポリペプチドを発現させるために使用され得る。例えば、1つのかかる系では、Autographa californica核多角体病ウイルスウイルス(AcNPV)が、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia細胞において外来遺伝子を発現させるためのベクターとして使用される。ポリペプチドをコードする配列は、ポリヘドリン遺伝子などの、ウイルスの非必須領域中にクローニングされ得、ポリヘドリンプロモーターの制御化に置かれ得る。ポリペプチドコード配列の首尾よい挿入は、ポリヘドリン遺伝子を不活性化し、コートタンパク質を欠く組換えウイルスを生成する。次いで、これらの組換えウイルスは、例えば、目的のポリペプチドが発現され得るS.frugiperda細胞またはTrichoplusia細胞に感染するために使用され得る(Engelhardら、PNAS USA. 91巻:3224〜3227頁、1994年)。SF9、SF21およびT.ni細胞を利用する発現系を含むバキュロウイルス発現系もまた含まれる(例えば、MurphyおよびPiwnica−Worms、Curr Protoc Protein Sci.
第5章:ユニット5.4、2001年を参照のこと)。昆虫系は、哺乳動物系と類似した翻訳後修飾を提供し得る。
哺乳動物宿主細胞では、いくつかの発現系が当該分野で周知であり、市販されている。例示的な哺乳動物ベクター系には、例えば、InvitrogenのpCEP4、pREP4およびpREP7、CrucellのPerC6系、ならびにInvitrogenのpLP1などのレンチウイルスベースの系などが含まれる。例えば、アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、目的のポリペプチドをコードする配列は、後期プロモーターおよび三者間(tripartite)リーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体へとライゲーションされ得る。ウイルスゲノムの非必須E1またはE3領域中の挿入は、感染宿主細胞においてポリペプチドを発現させることが可能な生存ウイルスを得るために使用され得る(LoganおよびShenk、PNAS USA. 81巻:3655〜3659頁、1984年)。さらに、転写エンハンサー、例えばラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーが、哺乳動物宿主細胞において発現を増加させるために使用され得る。
有用な哺乳動物宿主細胞株の例には、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓株(293または懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J. Gen
Virol. 36巻:59頁、1977年);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol. Reprod. 23巻:243〜251頁、1980年);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);buffaloラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TR1細胞(Matherら、Annals N.Y. Acad. Sci. 383巻:44〜68頁、1982年);MRC 5細胞;FS4細胞;ならびにヒトヘパトーマ株(Hep G2)が含まれる。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR−CHO細胞(Urlaubら、PNAS USA. 77巻:4216頁、1980年)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびに骨髄腫細胞株、例えばNSOおよびSp2/0が含まれる。抗体産生に適切な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説については、例えば、YazakiおよびWu、Methods in Molecular Biology、第248巻(B. K.C Lo編、Humana Press、Totowa、N.J.、2003年)、255〜268頁を参照のこと。特定の好ましい哺乳動物細胞発現系には、CHOおよびHEK293細胞ベースの発現系が含まれる。哺乳動物発現系は、当該分野で公知のもののうちで、例えば、T−フラスコ、ローラーボトルもしくは細胞工場中に付着した細胞株を、または例えば、1Lおよび5Lスピナー、5L、14L、40L、100Lおよび200L撹拌タンクバイオリアクタ、もしくは20/50Lおよび100/200L WAVEバイオリアクタ中での懸濁培養を、利用し得る。
無細胞タンパク質発現の方法もまた含まれる。これらおよび関連の実施形態は、典型的に、精製されたRNAポリメラーゼ、リボソーム、tRNAおよびリボヌクレオチドを利用する。かかる試薬は、例えば、細胞からまたは細胞ベースの発現系からの抽出によって生成され得る。
さらに、宿主細胞株は、挿入された配列の発現をモジュレートする能力または発現されたタンパク質を所望の様式でプロセシングする能力について、選択され得る。ポリペプチドのかかる改変には、翻訳後修飾、例えばアセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化、または天然に存在しないアミノ酸の挿入が含まれるがこれらに限定されない(米国特許第7,939,496号;米国特許第7,816,320号;米国特許第7,947,473号;米国特許第7,883,866号;米国特許第7,838,265号;米国特許第7,829,310号;米国特許第7,820,766号;米国特許第7,820,766号;米国特許第7,7737,226号、米国特許第7,736,872号;米国特許第7,638,299号;米国特許第7,632,924号;および米国特許第7,230,068号を一般に参照のこと)。一部の実施形態では、かかる天然に存在しないアミノ酸は、位置Cys130において挿入され得る。タンパク質の「プレプロ」形態を切断する翻訳後プロセシングは、正確な挿入、折り畳みおよび/または機能を促進するためにも使用され得る。細菌細胞に加えて、かかる翻訳後活性のための特定の細胞機械および特徴的機構を有するまたはさらには欠く異なる宿主細胞、例えば酵母、CHO、HeLa、MDCK、HEK293およびW138が、外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実にするために、選択され得る。
組換え細胞によって産生されるHRSポリペプチドまたはHRS−Fcコンジュゲートは、当該分野で公知の種々の技術に従って、精製および特徴付けされ得る。タンパク質精製を実施し、タンパク質の純度を分析するための例示的な系には、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(fast protein liquid chromatography)(FPLC)(例えば、AKTAおよびBio−Rad FPLC系)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)(例えば、BeckmanおよびWaters HPLC)が含まれる。精製のための例示的な化学には、当該分野で公知の他のもののうちで、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Q、S)、サイズ排除クロマトグラフィー、塩勾配、アフィニティ精製(例えば、Ni、Co、FLAG、マルトース、グルタチオン、プロテインA/G)、ゲル濾過、逆相、セラミックHYPERD(登録商標)イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用カラム(HIC)が含まれる。いくつかの例示的な方法は、実施例のセクションにも開示されている。
HRS−Fcコンジュゲート
上述のように、本発明の実施形態は、1つまたは複数のHRSポリペプチドと共有結合した少なくとも1つのFc領域を含むHRS−Fcコンジュゲートに関する。HRS−Fcコンジュゲートの例には、融合タンパク質および種々の形態の化学的に架橋されたタンパク質が含まれる。任意の数の種由来の野生型配列、ならびにそれらのバリアント、断片、ハイブリッドおよび化学的に改変された形態を含む、広範な種々のFc領域配列が、本発明のHRS−Fcコンジュゲートにおいて使用され得る。これらのHRS−Fcポリペプチドは、本明細書に記載され当該分野で公知のように、ペプチドリンカーおよび化学的リンカーを含む、Fc領域(複数可)をHRSポリペプチド(複数可)から典型的には分離する1つまたは複数のリンカーもまた、(任意選択で)含み得る。これらのHRS−Fcコンジュゲートのいずれかにおいて、HRSポリペプチドのネイティブのN末端もしくはC末端アミノ酸、またはFcドメイン中のネイティブのN末端もしくはC末端アミノ酸が、例えば、発現およびもしくはクローニングを促進するため、または2つのタンパク質間のリンカー配列として機能するために、欠失し得るおよび/または非ネイティブアミノ酸(複数可)で置き換えられ得ることが理解される。
HRS−Fcコンジュゲートポリペプチドは、非コンジュゲート化または未改変HRSポリペプチド、例えば、それに結合されたFc領域(複数可)を有さない同じまたは類似の配列の対応するHRSポリペプチドと比較して、種々の利点を提供し得る。単なる例示として、1つまたは複数のFc領域の共有結合は、同じまたは類似の配列を有する未改変HRSポリペプチドと比較して、例えば、Fc領域関連エフェクター機能(例えば、古典的補体カスケードの活性化、Fc受容体(FcR)を介した免疫エフェクター細胞との相互作用、免疫グロブリンの区画化)、細胞取り込み、細胞内輸送、組織分布および/またはバイオアベイラビリティを提供することによって、HRSポリペプチドの溶解度、半減期(例えば、血清中、選択された組織中、保存条件下での試験管中、例えば、室温でまたは冷蔵下で)、ダイマー化またはマルチマー化特性、生物学的活性(単数または複数)を変更(例えば、増加、減少)させ得る。ある特定の態様では、Fc領域は、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)に関するエフェクター機能を付与でき、これらは、腫瘍細胞および感染細胞などの特定の標的細胞を一掃するにあたり、役割を果たすと考えられている。
ある特定の実施形態は、HRS−Fc融合タンパク質を使用する。「融合タンパク質」は、融合タンパク質を作製する方法と同様、本明細書の他の場所に定義され、当該分野で周知である(例えば、Fc融合タンパク質に関する一般的な開示および方法については、米国特許第5,116,964号;米国特許第5,428,130号;米国特許第5,455,165号;米国特許第5,514,582号;米国特許第6,406,697号;米国特許第6,291,212号;および米国特許第6,300,099号を参照のこと)。HRS−Fc融合タンパク質では、Fc領域は、HRSポリペプチドのN末端、C末端または両方に融合され得る。一部の実施形態では、1つまたは複数のFc領域は、例えば、第1のHRS配列(例えば、ドメイン)と第2のHRS配列(例えば、ドメイン)との間にFc領域を配置することによって、HRS配列に対して内部に融合され得、ここで、第1のHRS配列は、Fc領域のN末端に融合され、第2のHRS配列は、Fc領域のC末端に融合される。具体的な実施形態では、この第1および第2のHRS配列は、同一である。他の実施形態では、この第1および第2のHRS配列は、異なる(例えば、これらは、HRSポリペプチドの異なる機能的ドメインを含む)。特定のHRS−Fc融合タンパク質は、さらなる異種タンパク質配列、即ち、非Fc領域および非HRSポリペプチド配列もまた含み得る。
用語「HRS−Fc」は、HRSポリペプチドへのFc領域のN末端結合またはC末端結合を示し得るが、必ずしも示すわけではない。例えば、ある特定の例では、用語「Fc−HRS」は、HRSポリペプチドのN末端へのFc領域の融合を示し、用語「HRS−Fc」は、HRSポリペプチドのC末端へのFc領域の融合を示す。しかし、いずれの用語も、Fc領域およびHRSポリペプチドの任意の融合タンパク質またはコンジュゲートをより一般に指すために使用され得る。
一部の実施形態では、このHRS−Fc融合タンパク質は、任意選択でリンカーペプチドによって分離された、単一のFcドメインにカップリングされたHRSポリペプチドのタンデム反復コピーを含み得る。例示的なタンデム反復HRS−Fc融合タンパク質は、表D10中に提供される。特定のタンデム反復HRS−Fcコンジュゲートの調製および配列は、実施例に例示される。
ある特定の実施形態は、例えば、1つまたは複数のFc領域がHRSポリペプチド(複数可)に化学的にコンジュゲート化または架橋されたHRS−Fcコンジュゲートに関する。これらおよび関連の態様では、このFc領域は、N末端領域(例えば、最初の10、20、30、40、50、60、70、80、90、100などのアミノ酸内)、内部領域(N末端領域とC末端領域との間)、および/またはC末端領域(例えば、最後の10、20、30、40、50、60、70、80、90、100などのアミノ酸内)において、HRSポリペプチドにコンジュゲート化され得る。ポリペプチドは、当該分野の種々の慣用的な技術に従って、他のポリペプチドにコンジュゲート化または架橋され得る。例えば、特定の技術は、D、E、およびC末端カルボキシル基を介して共有結合するカルボキシル−反応性カルボジイミドクロスリンカーEDC(またはEDAC)を使用する。他の技術は、KおよびN末端アミノ基を介して共有結合する活性化EDCを使用する。なお他の技術は、システイン残基のチオール基を介して共有結合するm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)またはスルホ−MBSを使用する(チオールコンジュゲート化に使用され得るシステイン操作されたIg領域については、米国特許出願第2007/0092940号もまた参照のこと)。かかる架橋されたタンパク質は、切断可能なまたは他の方法で放出可能なリンカー(例えば、酵素的に切断可能なリンカー、加水分解可能なリンカー)、および切断不能なリンカー(即ち、生理学的に安定なリンカー)を含むリンカーもまた含み得る。ある特定の実施形態は、例えば、米国特許出願第2006/0269553号に記載されるように、Fc領域(複数可)とHRSポリペプチド(複数可)との間のクロスリンカーとして、非ペプチドポリマー(例えば、PEGポリマー;HRS−N−PEG−N−Fcコンジュゲート)を使用し得る。Fc領域コンジュゲート化部位の例示的な記載については、米国特許出願第2007/0269369号もまた参照のこと。
ある特定の実施形態では、以下により詳細に議論されるように、野生型Fc領域(複数可)と比較して変更された特性または生物学的活性を有するものを含む、バリアントまたは他の方法で改変されたFc領域が使用され得る。改変されたFc領域の例には、例えば、野生型配と比較して1つもしくは複数のアミノ酸の置換、挿入、欠失もしくは短縮によって変異した配列を有するもの、異なる免疫グロブリンクラス/サブクラス由来のドメインから構成されるハイブリッドFcポリペプチド、変更されたグリコシル化/シアル酸付加パターンを有するFcポリペプチド、ならびに例えばビオチン化(例えば、米国特許出願第2010/0209424号を参照のこと)、リン酸化、硫酸化などによって改変もしくは誘導体化されたFcポリペプチド、または上述の任意の組合せが含まれる。かかる改変は、対応する野生型Fc配列と比較して、本明細書に記載される他の特性の中で、1つもしくは複数の特定のFcR(例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、FcγRIIIb、FcRn)に対するFc領域の結合特性、その薬物動態学的特性(例えば、安定性または半減期、バイオアベイラビリティ、組織分布、分布容積、濃度、排出速度定数、排出速度、曲線下面積(AUC)、クリアランス、Cmax、tmax、Cmin、変動)、その免疫原性、その補体結合(fixation)もしくは活性化、および/またはFc領域のCDC/ADCC/ADCP関連活性を変更(例えば、増加、減少)させるために使用され得る。
本明細書に提供されるHRS−Fcコンジュゲートの「Fc領域」は、免疫グロブリン(Ig)分子の重鎖から通常誘導される。典型的なIg分子は、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成される。これらの重鎖は、少なくとも3つの機能的領域:Fd領域、Fc領域(断片結晶化可能な領域)およびヒンジ領域へと分割され得(図1を参照のこと)、後者は、IgG、IgAおよびIgD免疫グロブリンにおいてのみ見出される。Fd領域は、重鎖の可変(VH)ドメインおよび定常(CH1)ドメインを含み、軽鎖の可変(VL)ドメインおよび定常(CL)ドメインと一緒になって、抗原結合性断片またはFab領域を形成する。
IgG、IgAおよびIgD免疫グロブリンのFc領域は、それぞれCH2およびCH3領域と称される重鎖定常ドメイン2および3を含む;IgEおよびIgM免疫グロブリンのFc領域は、それぞれCH2、CH3およびCH4領域と称される、重鎖定常ドメイン2、3および4を含む。このFc領域は、例えば、エフェクター細胞の同族Fc受容体への補体結合および結合(binding)を含む免疫グロブリンのエフェクター機能を主に担う。
ヒンジ領域(IgG、IgAおよびIgDにおいて見出される)は、Fab部分がFc領域に対して空間的に自由に動くように、可撓性スペーサーとして作用する。定常領域とは対照的に、ヒンジ領域は、免疫グロブリンクラスおよびサブクラスの中で、配列および長さの両方において変動して、構造的に多様である。ヒンジ領域は、炭水化物結合のためのいくつかの構造的に別個の型の部位を含む、1つまたは複数のグリコシル化部位(複数可)もまた含み得る。例えば、IgA1は、ヒンジ領域の17アミノ酸のセグメント内に5つのグリコシル化部位を含み、腸プロテアーゼに対するヒンジ領域ポリペプチドの顕著な抵抗性を付与する。CH2ドメインのヒンジ近位領域中の残基は、免疫グロブリンとそのそれぞれのFc受容体(複数可)との間の相互作用の特異性にも影響し得る(例えば、Shinら、Intern. Rev. Immunol. 10巻:177〜186頁、1993年を参照のこと)。
従って、用語「Fc領域」または「Fc断片」または「Fc」とは、本明細書で使用する場合、それらの断片およびバリアントならびに組合せを含めた、1つまたは複数の選択された免疫グロブリン(複数可)由来のCH2領域、CH3領域および/またはCH4領域のうちの1つまたは複数を含むタンパク質を指す。「Fc領域」は、免疫グロブリンの重鎖定常領域の1つまたは複数のヒンジ領域(複数可)もまた含み得る。ある特定の実施形態では、Fc領域は、免疫グロブリンのCH1、CL、VLおよび/またはVH領域のうちの1つまたは複数を含まない。
このFc領域は、それらのサブクラスおよび組合せを含む、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMが含まれるがこれらに限定されない任意の1つまたは複数の免疫グロブリンクラスのCH2領域、CH3領域、CH4領域および/またはヒンジ領域(複数可)から誘導され得る。一部の実施形態では、このFc領域は、サブクラスIgA1および/またはIgA2を含むIgA免疫グロブリンから誘導される。ある特定の実施形態では、このFc領域は、IgD免疫グロブリンから誘導される。特定の実施形態では、このFc領域は、IgE免疫グロブリンから誘導される。一部の実施形態では、このFc領域は、サブクラスIgG1、IgG2、IgG2、IgG3および/またはIgG4を含むIgG免疫グロブリンから誘導される。ある特定の実施形態では、このFc領域は、IgM免疫グロブリンから誘導される。図2は、ヒトIgA1(配列番号156)、IgA2(配列番号157)、IgM(配列番号158)、IgG1(配列番号159)、IgG2(配列番号160)、IgG3(配列番号161)、IgG4(配列番号162)およびIgE(配列番号163)由来のFc領域のアラインメントを示す。
特定のFc領域は、1つまたは複数のFc受容体(FcR)に対する特異的結合を実証する。Fc受容体のクラスの例には、Fcγ受容体(FcγR)、Fcα受容体(FcαR)、Fcε受容体(FcεR)および新生児Fc受容体(FcRn)が含まれる。例えば、特定のFc領域は、FcαR、FcεRおよび/またはFcRnと比較して、1つまたは複数のFcγRに対する増加した結合(またはそれに対する親和性)を有する。一部の実施形態では、Fc領域は、1つまたは複数のFcγR、FcεRおよび/またはFcRnと比較して、FcαRに対する増加した結合を有する。他の実施形態では、Fc領域は、1つまたは複数のFcγR、FcαRおよび/またはFcRnと比較して、FcεR(例えば、FcαRI)に対する増加した結合を有する。特定の実施形態では、Fc領域は、1つまたは複数のFcγR、FcαRおよび/またはFcεRと比較して、FcRnに対する増加した結合を有する。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の選択されたFcR(複数可)へのFc領域の結合(または親和性)は、典型的には約1.5×、2×、2.5×、3×、3.5×、4×、4.5×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、15×、20×、25×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、100×、200×、300×、400×、500×、600×、700×、800×、900×、1000×またはそれ超(その間の全ての整数を含む)、1つまたは複数の異なるFcR(複数可)に対するその結合(またはそれに対する親和性)と比較して増加する。
FcγRの例には、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIaおよびFcγRIIIbが含まれる。FcγRI(CD64)は、マクロファージおよび樹状細胞上で発現され、食作用、呼吸性バースト、サイトカイン刺激および樹状細胞エンドサイトーシス輸送において役割を果たす。FcγRIの発現は、GM−CSFおよびγ−インターフェロン(γ−IFN)の両方によって上方調節され、インターロイキン−4(IL−4)によって下方調節される。FcγRIIaは、多形核白血球(PMN)、マクロファージ、樹状細胞および肥満細胞上で発現される。FcγRIIaは、食作用、呼吸性バーストおよびサイトカイン刺激において役割を果たす。FcγRIIaの発現は、GM−CSFおよびγ−IFNによって上方調節され、IL−4によって減少される。FcγIIbは、B細胞、PMN、マクロファージおよび肥満細胞上で発現される。FcγIIbは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)媒介性の応答を阻害し、従って、阻害受容体である。FcγRIIcの発現は、静脈内免疫グロブリン(IVIG)およびIL−4によって上方調節され、γ−IFNによって減少される。FcγRIIcは、NK細胞上で発現される。FcγRIIIaは、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、肥満細胞および血小板上で発現される。この受容体は、食作用、呼吸性バースト、サイトカイン刺激、血小板凝集および脱顆粒、ならびにNK媒介性ADCCに関与する。FcγRIIIの発現は、C5a、TGF−βおよびγ−IFNによって上方調節され、IL−4によって下方調節される。FcγRIIIbは、PMN上で発現されるGPI結合型受容体である。
特定のFc領域は、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIaおよび/またはFcγRIIIbと比較して、FcγRIに対する増加した結合を有する。一部の実施形態は、FcγRI、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIaおよび/またはFcγRIIIbと比較して、FcγRIIaに対する増加した結合を有する。特定のFc領域は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIc、FcγRIIIaおよび/またはFcγRIIIbと比較して、FcγRIIbに対する増加した結合を有する。特定のFc領域は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaおよび/またはFcγRIIIbと比較して、FcγRIIcに対する増加した結合を有する。一部のFc領域は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIcおよび/またはFcγRIIIbと比較して、FcγRIIIaに対する増加した結合を有する。特定のFc領域は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIcおよび/またはFcγRIIIaと比較して、FcγRIIIbに対する増加した結合を有する。
FcαRにはFcαRI(CD89)が含まれる。FcαRIは、好中球、好酸球、単球、特定のマクロファージ(例えば、クッパー細胞)および特定の樹状細胞の表面上で見出される。FcαRIは、2つの細胞外Ig様ドメインから構成され、免疫グロブリンスーパーファミリーおよび多重鎖免疫認識受容体(MIRR)ファミリーの両方のメンバーであり、2つのFcRγシグナル伝達鎖と会合することによってシグナル伝達する。
FcεRには、FcεRIおよびFcεRIIが含まれる。高親和性受容体FcεRIは、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、上皮ランゲルハンス細胞、好酸球、肥満細胞および好塩基球上で発現され、アレルギー性応答の制御において主要な役割を果たす。FcεRIは、抗原提示細胞上でも発現され、炎症促進性サイトカインの産生を調節する。低親和性受容体FcεRII(CD23)は、膜結合型または可溶性受容体として機能し得るC型レクチンである。FcεRIIは、B細胞の増殖および分化を調節し、好酸球、単球および好塩基球のIgE結合を遮断する。特定のFc領域は、FcεRIIと比較して、FcεRIに対する増加した結合を有する。他のFc領域は、FcεRIと比較して、FcεRIIに対する増加した結合を有する。
以下の表F1は、特定のFcRの特徴をまとめる。
Fc領域は、ウシ、ヤギ、ブタ、イヌ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモット、非ヒト霊長類およびヒトなどの哺乳動物などの脊椎動物を含む、任意の動物の免疫グロブリン分子から誘導され得る。例示的な野生型ヒトIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgM免疫グロブリン由来のCH2、CH3、CH4およびヒンジ領域のアミノ酸配列は、以下に示される(配列番号128〜154)。
配列番号128は、ヒトIgA1ヒンジ領域のアミノ酸配列(VPSTPPTPSPSTPPTPSPS)である。
配列番号129は、ヒトIgA1 CH2領域のアミノ酸配列(CCHPRLSLHRPALEDLLLGSEANLTCTLTGLRDASGVTFTWTPSSGKSAVQGPPERDLCGCYSVSSVLPGCAEPWNHGKTFTCTAAYPESKTPLTATLSKS)である。
配列番号130は、ヒトIgA1 CH3領域のアミノ酸配列(GNTFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRLAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY)である。
配列番号131は、ヒトIgA2ヒンジ領域のアミノ酸配列(VPPPPP)である。
配列番号132は、ヒトIgA2 CH2領域のアミノ酸配列(CCHPRLSLHRPALEDLLLGSEANLTCTLTGLRDASGATFTWTPSSGKSAVQGPPERDLCGCYSVSSVLPGCAQPWNHGETFTCTAAHPELKTPLTANITKS)である。
配列番号133は、ヒトIgA2 CH3領域のアミノ酸配列(GNTFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRLAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY)である。
配列番号134は、ヒトIgDヒンジ領域のアミノ酸配列(ESPKAQASSVPTAQPQAEGSLAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTP)である。
配列番号135は、ヒトIgD CH2領域のアミノ酸配列(ECPSHTQPLGVYLLTPAVQDLWLRDKATFTCFVVGSDLKDAHLTWEVAGKVPTGGVEEGLLERHSNGSQSQHSRLTLPRSLWNAGTSVTCTLNHPSLPPQRLMALREP)である。
配列番号136は、ヒトIgD CH3領域のアミノ酸配列(AAQAPVKLSLNLLASSDPPEAASWLLCEVSGFSPPNILLMWLEDQREVNTSGFAPARPPPQPRSTTFWAWSVLRVPAPPSPQPATYTCVVSHEDSRTLLNASRSLEVSYVTDHGPMK)である。
配列番号137は、ヒトIgE CH2領域のアミノ酸配列(VCSRDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCA)である。
配列番号138は、ヒトIgE CH3領域のアミノ酸配列(DSNPRGVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTS)である。
配列番号139は、ヒトIgE CH4領域のアミノ酸配列(GPRAAPEVYAFATPEWPGSRDKRTLACLIQNFMPEDISVQWLHNEVQLPDARHSTTQPRKTKGSGFFVFSRLEVTRAEWEQKDEFICRAVHEAASPSQTVQRAVSVNPGK)である。
配列番号140は、ヒトIgG1ヒンジ領域のアミノ酸配列(EPKSCDKTHTCPPCP)である。
配列番号341は、改変されたヒトIgG1ヒンジ領域由来の配列のアミノ酸配列(SDKTHTCPPCP)である。
配列番号141は、ヒトIgG1 CH2領域のアミノ酸配列(APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAK)である。
配列番号142は、ヒトIgG1 CH3領域のアミノ酸配列(GQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)である。
配列番号342は、ヒトIgG1重鎖配列のアミノ酸配列(MSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)である。このヒトIgG1重鎖配列中のMet残基は、例えば、HRSポリペプチドへのN末端融合の際に欠失し得ることが理解される(配列番号340を参照のこと)。
配列番号143は、ヒトIgG2ヒンジ領域のアミノ酸配列(ERKCCVECPPCP)である。
配列番号144は、ヒトIgG2 CH2領域のアミノ酸配列(APPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTK)である。
配列番号145は、ヒトIgG2 CH3領域のアミノ酸配列(GQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)である。
配列番号146は、ヒトIgG3ヒンジ領域のアミノ酸配列(ELKTPLGDTTHTCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCP)である。
配列番号147は、ヒトIgG3 CH2領域のアミノ酸配列(APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFKWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTFRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKTK)である。
配列番号148は、ヒトIgG3 CH3領域のアミノ酸配列(GQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESSGQPENNYNTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNIFSCSVMHEALHNRFTQKSLSLSPGK)である。
配列番号149は、ヒトIgG4ヒンジ領域のアミノ酸配列(ESKYGPPCPSCP)である。
配列番号150は、ヒトIgG4 CH2領域のアミノ酸配列(APEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAK)である。
配列番号151は、ヒトIgG4 CH3領域のアミノ酸配列(GQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK)である。
配列番号152は、ヒトIgM CH2領域のアミノ酸配列(VIAELPPKVSVFVPPRDGFFGNPRKSKLICQATGFSPRQIQVSWLREGKQVGSGVTTDQVQAEAKESGPTTYKVTSTLTIKESDWLGQSMFTCRVDHRGLTFQQNASSMCVP)である。
配列番号153は、ヒトIgM CH3領域のアミノ酸配列(DQDTAIRVFAIPPSFASIFLTKSTKLTCLVTDLTTYDSVTISWTRQNGEAVKTHTNISESHPNATFSAVGEASICEDDWNSGERFTCTVTHTDLPSPLKQTISRPK)である。
配列番号154は、ヒトIgM CH4領域のアミノ酸配列(GVALHRPDVYLLPPAREQLNLRESATITCLVTGFSPADVFVQWMQRGQPLSPEKYVTSAPMPEPQAPGRYFAHSILTVSEEEWNTGETYTCVVAHEALPNRVTERTVDKSTGKPTLYNVSLVMSDTAGTCY)である。
従って、本発明のHRS−Fcコンジュゲートは、それらのバリアント、断片、ホモログ、オルソログ、パラログおよび組合せを含む、配列番号128〜163または339〜342のヒトFc領域アミノ酸配列のうちの1つまたは複数を含み得るか、これらからなり得るか、または本質的にこれらからなり得る。特定の例示的な実施形態は、サイズが約20〜50、20〜100、20〜150、20〜200、20〜250、20〜300、20〜400、50〜100、50〜150、50〜200、50〜250、50〜300、50〜400、100〜150、100〜200、100〜250、100〜300、100〜350、100〜400、200〜250、200〜300、200〜350または200〜400アミノ酸長の範囲であるFc領域を含み、任意選択で、配列番号128〜154または341〜342のうちの任意の1つまたは複数を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。ある特定の実施形態は、最大約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、300、350、400またはそれ超のアミノ酸のFc領域を含み、任意選択で、配列番号128〜154または339〜342のうちの任意の1つまたは複数を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。
特定のFc領域は、それらの組合せ(例えば、配列番号128および129および130、配列番号128および129;配列番号128および130;配列番号129および130)、ならびにそれらのバリアントおよび断片を含め、N末端からC末端へと読む任意の順序で、配列番号128〜130または156に示されるヒトIgA1配列を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。特定のFc領域は、配列番号128に示されるヒトIgA1配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号129に示されるヒトIgA1配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号130に示されるヒトIgA1配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。
一部のFc領域は、それらの組合せ(例えば、配列番号131および132および133、配列番号131および132;配列番号131および133;配列番号132および133)、ならびにそれらのバリアントおよび断片を含む、N末端からC末端へと読む任意の順序で、配列番号131〜133または157に示されるヒトIgA2配列を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。特定のFc領域は、配列番号131に示されるヒトIgA2配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号132に示されるヒトIgA2配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号133に示されるヒトIgA2配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。
特定のFc領域は、それらの組合せ(例えば、配列番号134および135および136、配列番号134および135;配列番号134および136;配列番号135および136)、ならびにこれらの配列のバリアントおよび断片ならびに組合せを含む、N末端からC末端へと読む任意の順序で、配列番号134〜136に示されるヒトIgD配列を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。特定のFc領域は、配列番号134に示されるヒトIgD配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号135に示されるヒトIgD配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号136に示されるヒトIgD配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。
特定のFc領域は、それらの組合せ(例えば、配列番号137および138および139、配列番号137および138;配列番号137および139;配列番号138および139)、ならびにこれらの配列のバリアントおよび断片ならびに組合せを含む、N末端からC末端へと読む任意の順序で、配列番号137〜139または163に示されるヒトIgE配列を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。特定のFc領域は、配列番号137に示されるヒトIgE配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号138に示されるヒトIgE配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号139に示されるヒトIgE配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。
特定のFc領域は、それらの組合せ(例えば、配列番号140および141および142、配列番号140および141;配列番号140および142;配列番号141および142)、ならびにこれらの配列のバリアントおよび断片ならびに組合せを含む、N末端からC末端へと読む任意の順序で、配列番号140〜142または159または339〜342に示されるヒトIgG1配列を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。特定のFc領域は、配列番号140に示されるヒトIgG1配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号141に示されるヒトIgG1配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号142に示されるヒトIgG1配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号339に示されるヒトIgG1配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号340に示されるヒトIgG1配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号341に示されるヒトIgG1配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号342に示されるヒトIgG1配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。
特定のFc領域は、それらの組合せ(例えば、配列番号143および144および145、配列番号143および144;配列番号143および145;配列番号144および145)、ならびにこれらの配列のバリアントおよび断片ならびに組合せを含む、N末端からC末端へと読む任意の順序で、配列番号143〜145または160に示されるヒトIgG2配列を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。特定のFc領域は、配列番号143に示されるヒトIgG2配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号144に示されるヒトIgG2配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号145に示されるヒトIgG2配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。
特定のFc領域は、それらの組合せ(例えば、配列番号146および147および148、配列番号146および147;配列番号146および148;配列番号147および148)、ならびにこれらの配列のバリアントおよび断片ならびに組合せを含む、N末端からC末端へと読む任意の順序で、配列番号146〜148または161に示されるヒトIgG3配列を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。特定のFc領域は、配列番号146に示されるヒトIgG3配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号147に示されるヒトIgG3配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号148に示されるヒトIgG3配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。
特定のFc領域は、それらの組合せ(例えば、配列番号149および150および151、配列番号149および150;配列番号149および151;配列番号150および151)、ならびにこれらの配列のバリアントおよび断片ならびに組合せを含む、N末端からC末端へと読む任意の順序で、配列番号149〜151または162に示されるヒトIgG4配列を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。特定のFc領域は、配列番号149に示されるヒトIgG4配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号150に示されるヒトIgG4配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号151に示されるヒトIgG4配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。
特定のFc領域は、それらの組合せ(例えば、配列番号152および153および154、配列番号152および153;配列番号152および154;配列番号153および154)、ならびにこれらの配列のバリアントおよび断片ならびに組合せを含む、N末端からC末端へと読む任意の順序で、配列番号152〜154または158に示されるヒトIgM配列を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなる。特定のFc領域は、配列番号152に示されるヒトIgM配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号153に示されるヒトIgM配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。特定のFc領域は、配列番号154に示されるヒトIgM配列を含むか、これからなるか、または本質的にこれからなる。
上述のように、ある特定の実施形態は、本明細書に記載され当該分野で公知のFc領域(例えば、配列番号128〜163のヒトIg配列)の、バリアント、断片、ハイブリッドおよび/または他の方法で改変された形態を使用する。
配列番号128〜163に示される参照配列のうちの任意の1つまたは複数などの参照配列と比較して、1つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入、欠失および/または短縮を有するバリアントが含まれる。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域は、配列番号128〜163のうちの任意の1つまたは複数に対して、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%またはそれ超の配列同一性または類似性または相同性を有するアミノ酸配列を含む。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150またはそれ超のアミノ酸の付加、欠失、挿入または置換により、配列番号128〜163のうちの1つまたは複数とは異なるFc領域もまた含まれる。ある特定の実施形態では、これらのアミノ酸の付加または欠失は、Fc参照配列のC末端および/またはN末端において存在する。
特定の実施形態では、バリアントFc領域は、配列番号128〜163のうちの任意の1つまたは複数と最適にアラインされて、それらの間の全ての整数および範囲を含む、少なくとも約50、60、70、80、90、100、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000またはそれ超のBLASTビットスコアまたは配列類似性スコアを生成し得るアミノ酸配列を含み、ここでBLASTアラインメントは、BLOSUM62マトリクス、11のギャップ存在ペナルティおよび1のギャップ伸長ペナルティを使用した。
ハイブリッドFc領域、例えば、異なる種、異なるIgクラスおよび/または異なるIgサブクラスの免疫グロブリン由来のFcドメイン(例えば、ヒンジ、CH2、CH3、CH4)の組合せを含むFc領域もまた含まれる。一般的な例には、CH2/CH3ドメインの以下の組合せ:IgA1/IgA1、IgA1/IgA2、IgA1/IgD、IgA1/IgE、IgA1/IgG1、IgA1/IgG2、IgA1/IgG3、IgA1/IgG4、IgA1/IgM、IgA2/IgA1、IgA2/IgA2、IgA2/IgD、IgA2/IgE、IgA2/IgG1、IgA2/IgG2、IgA2/IgG3、IgA2/IgG4、IgA2/IgM、IgD/IgA1、IgD/IgA2、IgD/IgD、IgD/IgE、IgD/IgG1、IgD/IgG2、IgD/IgG3、IgD/IgG4、IgD/IgM、IgE/IgA1、IgE/IgA2、IgE/IgD、IgE/IgE、IgE/IgG1、IgE/IgG2、IgE/IgG3、IgE/IgG4、IgE/IgM、IgG1/IgA1、IgG1/IgA2、IgG1/IgD、IgG1/IgE、IgG1/IgG1、IgG1/IgG2、IgG1/IgG3、IgG1/IgG4、IgG1/IgM、IgG2/IgA1、IgG2/IgA2、IgG2/IgD、IgG2/IgE、IgG2/IgG1、IgG2/IgG2、IgG2/IgG3、IgG2/IgG4、IgG2/IgM、IgG3/IgA1、IgG3/IgA2、IgG3/IgD、IgG3/IgE、IgG3/IgG1、IgG3/IgG2、IgG3/IgG3、IgG3/IgG4、IgG3/IgM、IgG4/IgA1、IgG4/IgA2、IgG4/IgD、IgG4/IgE、IgG4/IgG1、IgG4/IgG2、IgG4/IgG3、IgG4/IgG4、IgG4/IgM、IgM/IgA1、IgM/IgA2、IgM/IgD、IgM/IgE、IgM/IgG1、IgM/IgG2、IgM/IgG3、IgM/IgG4、IgM/IgM(またはそれらの断片もしくはバリアント)を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなり、任意選択で、IgA1、IgA2、IgD、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4のうちの1つもしくは複数由来のヒンジ、ならびに/またはIgEおよび/もしくはIgM由来のCH4ドメインを含む、ハイブリッドFc領域が含まれる。具体的な実施形態では、このヒンジ、CH2、CH3およびCH4ドメインは、ヒトIg由来である。
さらなる例には、CH2/CH4ドメインの以下の組合せ:IgA1/IgE、IgA2/IgE、IgD/IgE、IgE/IgE、IgG1/IgE、IgG2/IgE、IgG3/IgE、IgG4/IgE、IgM/IgE、IgA1/IgM、IgA2/IgM、IgD/IgM、IgE/IgM、IgG1/IgM、IgG2/IgM、IgG3/IgM、IgG4/IgM、IgM/IgM(またはそれらの断片もしくはバリアント)を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなり、任意選択で、IgA1、IgA2、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のうちの1つもしくは複数由来のヒンジおよび/またはIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4もしくはIgMのうちの1つもしくは複数由来のCH3ドメインを含む、ハイブリッドFc領域が含まれる。具体的な実施形態では、このヒンジ、CH2、CH3およびCH4ドメインは、ヒトIg由来である。
特定の例には、CH3/CH4ドメインの以下の組合せ:IgA1/IgE、IgA2/IgE、IgD/IgE、IgE/IgE、IgG1/IgE、IgG2/IgE、IgG3/IgE、IgG4/IgE、IgM/IgE、IgA1/IgM、IgA2/IgM、IgD/IgM、IgE/IgM、IgG1/IgM、IgG2/IgM、IgG3/IgM、IgG4/IgM、IgM/IgM(またはそれらの断片もしくはバリアント)を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなり、任意選択で、IgA1、IgA2、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のうちの1つもしくは複数由来のヒンジおよび/またはIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4もしくはIgMのうちの1つもしくは複数由来のCH2ドメインを含む、ハイブリッドFc領域が含まれる。具体的な実施形態では、このヒンジ、CH2、CH3およびCH4ドメインは、ヒトIg由来である。
特定の例には、ヒンジ/CH2ドメインの以下の組合せ:IgA1/IgA1、IgA1/IgA2、IgA1/IgD、IgA1/IgE、IgA1/IgG1、IgA1/IgG2、IgA1/IgG3、IgA1/IgG4、IgA1/IgM、IgA2/IgA1、IgA2/IgA2、IgA2/IgD、IgA2/IgE、IgA2/IgG1、IgA2/IgG2、IgA2/IgG3、IgA2/IgG4、IgA2/IgM、IgD/IgA1、IgD/IgA2、IgD/IgD、IgD/IgE、IgD/IgG1、IgD/IgG2、IgD/IgG3、IgD/IgG4、IgD/IgM、IgG1/IgA1、IgG1/IgA2、IgG1/IgD、IgG1/IgE、IgG1/IgG1、IgG1/IgG2、IgG1/IgG3、IgG1/IgG4、IgG1/IgM、IgG2/IgA1、IgG2/IgA2、IgG2/IgD、IgG2/IgE、IgG2/IgG1、IgG2/IgG2、IgG2/IgG3、IgG2/IgG4、IgG2/IgM、IgG3/IgA1、IgG3/IgA2、IgG3/IgD、IgG3/IgE、IgG3/IgG1、IgG3/IgG2、IgG3/IgG3、IgG3/IgG4、IgG3/IgM、IgG4/IgA1、IgG4/IgA2、IgG4/IgD、IgG4/IgE、IgG4/IgG1、IgG4/IgG2、IgG4/IgG3、IgG4/IgG4、IgG4/IgM(またはそれらの断片もしくはバリアント)を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなり、任意選択で、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4もしくはIgMのうちの1つもしくは複数由来のCH3ドメインならびに/またはIgEおよび/もしくはIgM由来のCH4ドメインを含む、ハイブリッドFc領域が含まれる。具体的な実施形態では、このヒンジ、CH2、CH3およびCH4ドメインは、ヒトIg由来である。
特定の例には、ヒンジ/CH3ドメインの以下の組合せ:IgA1/IgA1、IgA1/IgA2、IgA1/IgD、IgA1/IgE、IgA1/IgG1、IgA1/IgG2、IgA1/IgG3、IgA1/IgG4、IgA1/IgM、IgA2/IgA1、IgA2/IgA2、IgA2/IgD、IgA2/IgE、IgA2/IgG1、IgA2/IgG2、IgA2/IgG3、IgA2/IgG4、IgA2/IgM、IgD/IgA1、IgD/IgA2、IgD/IgD、IgD/IgE、IgD/IgG1、IgD/IgG2、IgD/IgG3、IgD/IgG4、IgD/IgM、IgG1/IgA1、IgG1/IgA2、IgG1/IgD、IgG1/IgE、IgG1/IgG1、IgG1/IgG2、IgG1/IgG3、IgG1/IgG4、IgG1/IgM、IgG2/IgA1、IgG2/IgA2、IgG2/IgD、IgG2/IgE、IgG2/IgG1、IgG2/IgG2、IgG2/IgG3、IgG2/IgG4、IgG2/IgM、IgG3/IgA1、IgG3/IgA2、IgG3/IgD、IgG3/IgE、IgG3/IgG1、IgG3/IgG2、IgG3/IgG3、IgG3/IgG4、IgG3/IgM、IgG4/IgA1、IgG4/IgA2、IgG4/IgD、IgG4/IgE、IgG4/IgG1、IgG4/IgG2、IgG4/IgG3、IgG4/IgG4、IgG4/IgM(またはそれらの断片もしくはバリアント)を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなり、任意選択で、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4もしくはIgMのうちの1つもしくは複数由来のCH2ドメインならびに/またはIgEおよび/もしくはIgM由来のCH4ドメインを含む、ハイブリッドFc領域が含まれる。具体的な実施形態では、このヒンジ、CH2、CH3およびCH4ドメインは、ヒトIg由来である。
一部の例では、ヒンジ/CH4ドメインの以下の組合せ:IgA1/IgE、IgA1/IgM、IgA2/IgE、IgA2/IgM、IgD/IgE、IgD/IgM、IgG1/IgE、IgG1/IgM、IgG2/IgE、IgG2/IgM、IgG3/IgE、IgG3/IgM、IgG4/IgE、IgG4/IgM(またはそれらの断片もしくはバリアント)を含むか、これらからなるか、または本質的にこれらからなり、任意選択で、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4もしくはIgMのうちの1つもしくは複数由来のCH2ドメインおよび/またはIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4もしくはIgMのうちの1つもしくは複数由来のCH3ドメインを含む、ハイブリッドFc領域が含まれる。
IgGサブクラスの組合せまたはヒトIgDおよびIgGの組合せから誘導される、ハイブリッドFc領域の具体的な例は、例えばWO 2008/147143において見出され得る。
誘導体化または他の方法で改変されたFc領域もまた含まれる。ある特定の態様では、このFc領域は、例えば、野生型または天然に存在するFc領域と比較して、リン酸化、硫酸化、アクリル化、グリコシル化、メチル化、ファルネシル化、アセチル化、アミド化などによって改変され得る。ある特定の実施形態では、このFc領域は、野生型もしくはネイティブのグリコシル化パターンを含み得るか、あるいは、ネイティブ形態と比較して増加したグリコシル化、ネイティブ形態と比較して減少したグリコシル化を含み得るか、または完全に脱グリコシル化され得る。改変されたFcグリコフォームの一例として、Fc領域の減少したグリコシル化は、第1の補体構成要素C1のC1q領域への結合、ADCC関連活性における減少および/またはCDC関連活性における減少を低減させる。従って、ある特定の実施形態は、脱グリコシル化されたまたは非グリコシル化されたFc領域を使用する。例示的な非グリコシル化されたFc領域の生成については、例えば、WO
2005/047337を参照のこと。Fc領域グリコフォームの別の例は、Kabatらの番号付け系に従って、Q295位をシステイン残基で置換することによって(例えば、米国特許出願第2010/0080794号を参照のこと)生成され得る。ある特定の実施形態は、Fc領域中の糖タンパク質の約80〜100%がフルクトースを欠く成熟コア炭水化物構造を含む、Fc領域を含み得る(例えば、米国特許出願第2010/0255013号を参照のこと)。一部の実施形態は、例えば、FcγRI、FcγRIaもしくはFcγRIIIaに対する親和性を増加させるためおよび/またはFcγRIIa発現細胞による食作用を改善するために、フコシル化のレベルを低減させるために置換または欠失によって最適化されたFc領域を含み得る(米国特許出願第2010/0249382号および米国特許出願第2007/0148170号を参照のこと)。
改変されたFcグリコフォームの別の例として、Fc領域は、オリゴマンノース型N−グリカンを含み得、任意選択で、以下のうちの1つまたは複数を有する:複合型N−グリカンを含む対応するFc領域またはHRS−Fcコンジュゲートと比較して、増加したADCC活性、FcγRIIIA(および特定の他のFcR)に対する増加した結合親和性、HRSポリペプチドの標的に対する類似のもしくは増加した結合特異性、HRSポリペプチドの標的に対する類似のもしくはより高い結合親和性、および/またはマンノース受容体に対する類似のもしくはより低い結合親和性(例えば、米国特許出願第2007/0092521号および米国特許第7,700,321号を参照のこと)。別の例として、FcγRに対するFc領域の増強された親和性は、操作されたまたはバリアント細胞株における抗体の発現によって生成される操作されたグリコフォームを使用して達成されている(例えば、Umanaら、Nat Biotechnol. 17巻:176〜180頁、1999年;Daviesら、Biotechnol Bioeng. 74巻:288〜294頁、2001年;Shieldsら、J Biol Chem. 277巻:26733〜26740頁、2002年;Shinkawaら、2003年、J Biol Chem. 278巻:3466〜3473頁、2003年;および米国特許出願第2007/0111281号を参照のこと)。特定のFc領域グリコフォームは、糖鎖の還元末端においてN−アセチルグルコサミンの6位に結合したフコースの1位を有さない、N−グリコシド結合型複合糖鎖の増加した割合を含む(例えば、米国特許出願第2010/0092997号を参照のこと)。特定の実施形態は、α−2,6結合によってそれぞれの末端シアル酸部分に接続された少なくとも1つのガラクトース部分によってグリコシル化されたIgGのFc領域を含み得、任意選択で、このFc領域は、対応する野生型Fc領域と比較して、より高い抗炎症活性を有する(米国特許出願第2008/0206246号を参照のこと)。これらおよび関連の変更されたグリコシル化アプローチの特定のものは、本明細書に記載するように、Fc領域がFcγRIIIなどのFcRに選択的に結合する能力、ADCCを媒介する能力、およびFc領域の他の特性を変更する能力の、実質的な増強を生じている。
特定のバリアント、断片、ハイブリッドまたは他の方法で改変されたFc領域は、対応する野生型Fc配列(例えば、同じ種、同じIgクラス、同じIgサブクラス)と比較して、1つまたは複数のFcRに対する変更された結合を有し得る。例えば、かかるFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して、Fcγ受容体、Fcα受容体、Fcε受容体および/または新生児Fc受容体のうちの1つまたは複数に対する増加した結合を有し得る。他の実施形態では、バリアント、断片、ハイブリッドまたは改変されたFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して、Fcγ受容体、Fcα受容体、Fcε受容体および/または新生児Fc受容体のうちの1つまたは複数に対する減少した結合を有し得る。特異的FcRは、本明細書の他の場所に記載される。
変更された(例えば、増加した、減少した)FcR結合を有するFcバリアントの具体的な例は、例えば、米国特許第5,624,821号および米国特許第7,425,619号;米国特許出願第2009/0017023号、米国特許出願第2009/0010921号および米国特許出願第2010/0203046号;ならびにWO 2000/42072およびWO 2004/016750中に見出され得る。特定の例には、活性化受容体FcγRIIIaに対する結合を増加させることおよび阻害受容体FcγRIIbに対する結合を低減させることが示されている、298位、333位および/または334位における1つまたは複数の置換、例えば、S298A、E333Aおよび/またはK334A(KabatらのEU指標の番号付けに基づく)を有するヒトFc領域が含まれる。これらの変異は、FcRに対する結合におけるさらなる改善を有する二重変異および三重変異バリアントを得るために、組み合わされ得る。ある特定の実施形態は、FcγRIIIaに対する増加した結合、FcγRIIbに対する減少した結合、および増加したADCCを有する、S298A/E333A/K334A三重変異体を含む(例えば、Shieldsら、J Biol Chem. 276巻:6591〜6604頁、2001年;およびPrestaら、Biochem Soc Trans. 30巻:487〜490頁、2002年を参照のこと)。Umanaら、上記;および米国特許第7,662,925号に開示されるような、FcRに対する増加した結合を有する操作されたFcグリコフォームもまた参照のこと。一部の実施形態は、KabatらのEU指標に基づいて、434S、252Y/428L、252Y/434Sおよび428L/434S(米国特許出願第2009/0163699号および米国特許出願第20060173170号を参照のこと)から選択される1つまたは複数の置換を含むFc領域を含む。
特定のバリアント、断片、ハイブリッドまたは改変されたFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して変更されたエフェクター機能を有する。例えば、かかるFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して、増加した補体結合もしくは活性化、増加したClq結合親和性、増加したCDC関連活性、増加したADCC関連活性および/または増加したADCP関連活性を有し得る。他の実施形態では、かかるFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して、減少した補体結合もしくは活性化、減少したClq結合親和性、減少したCDC関連活性、減少したADCC関連活性および/または減少したADCP関連活性を有し得る。単なる例示的な一例として、Fc領域は、C1q結合部位などの補体結合部位における欠失もしくは置換および/またはADCC部位における欠失もしくは置換を含み得る。かかる欠失/置換の例は、例えば、米国特許第7,030,226号中に記載される。多くのFcエフェクター機能、例えばADCCは、当該分野における慣用的な技術に従ってアッセイされ得る(例えば、Zuckermanら、CRC Crit Rev Microbiol. 7巻:1〜26頁、1978年を参照のこと)。かかるアッセイのために有用なエフェクター細胞には、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージおよび他の末梢血単核球(PBMC)が含まれるがこれらに限定されない。あるいは、またはさらに、特定のFcエフェクター機能は、例えば、Clynesら PNAS. 95巻:652〜656頁、1998年に記載される動物モデルを使用することによって、in vivoで評価され得る。
特定のバリアントハイブリッドまたは改変されたFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して変更された安定性または半減期を有し得る。ある特定の実施形態では、かかるFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して増加した半減期を有し得る。他の実施形態では、バリアントハイブリッドまたは改変されたFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して減少した半減期を有し得る。半減期は、放射標識、ELISAまたは他の方法などの、当該分野における慣用的な技術に従って、in vitro(例えば、生理学的条件下)またはin vivoで測定され得る。安定性または半減期のin vivo測定は、血液、血清、血漿、尿もしくは脳脊髄液を含む1つもしくは複数の体液、または所与の組織、例えば肝臓、腎臓、筋肉、中枢神経系組織、骨などにおいて、測定され得る。一例として、FcRnに結合するその能力を変更するFc領域への改変は、その半減期をin vivoで変更し得る。in vivo薬物動態学的特性(例えば、in vivo平均排出半減期)を測定するためのアッセイ、およびFcRnに対するその結合を変更するFc改変の非限定的な例は、例えば、米国特許第7,217,797号および米国特許第7,732,570号;ならびに米国特許出願第2010/0143254号および米国特許出願第2010/0143254号に記載されている。
安定性または半減期を変更するための改変のさらなる非限定的な例には、Kabatらの番号付け系に従って、CH2ドメイン中の251〜256、285〜290および308〜314、ならびにCH3ドメイン中の385〜389および428〜436から選択されるアミノ酸残基のうちの1つまたは複数における、置換/欠失が含まれる。米国特許出願第2003/0190311号を参照のこと。具体的な例には、任意のそれらの組合せを含め、251位におけるロイシンによる置換、252位におけるチロシン、トリプトファンもしくはフェニルアラニンによる置換、254位におけるスレオニンもしくはセリンによる置換、255位におけるアルギニンによる置換、256位におけるグルタミン、アルギニン、セリン、スレオニンもしくはグルタミン酸による置換、308位におけるスレオニンによる置換、309位におけるプロリンによる置換、311位におけるセリンによる置換、312位におけるアスパラギン酸による置換、314位におけるロイシンによる置換、385位におけるアルギニン、アスパラギン酸もしくはセリンによる置換、386位におけるスレオニンもしくはプロリンによる置換、387位におけるアルギニンもしくはプロリンによる置換、389位におけるプロリン、アスパラギンもしくはセリンによる置換、428位におけるメチオニンもしくはスレオニンによる置換、434位におけるチロシンもしくはフェニルアラニンによる置換、433位におけるヒスチジン、アルギニン、リシンもしくはセリンによる置換、および/または436位におけるヒスチジン、チロシン、アルギニンもしくはスレオニンによる置換、が含まれる。かかる改変は、任意選択で、対応する野生型Fc領域と比較して、FcRnに対するFc領域の親和性を増加させ、それによって半減期を増加させる。
特定のバリアントハイブリッドまたは改変されたFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して変更された溶解度を有し得る。ある特定の実施形態では、かかるFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して増加した溶解度を有し得る。他の実施形態では、バリアントハイブリッドまたは改変されたFc領域は、対応する野生型Fc配列と比較して、減少した溶解度を有し得る。溶解度は、当該分野における慣用的な技術に従って、例えば、in vitro(例えば、生理学的条件下)で測定され得る。例示的な溶解度測定は、本明細書の他の場所に記載される。
バリアントのさらなる例には、重鎖の250位、314位もしくは428位のうちの1つもしくは複数またはそれらの任意の組合せ、例えば、250位および428位、もしくは250位および314位、もしくは314位および428位、もしくは250位、314位および428位において、保存的もしくは非保存的置換(本明細書の他の場所に記載される)を有するIgGのFc領域が含まれる(例えば、米国特許出願第2011/0183412号を参照のこと)。具体的な実施形態では、250位における残基は、グルタミン酸もしくはグルタミンで置換され、および/または428位における残基は、ロイシンもしくはフェニルアラニンで置換される。IgGのFcバリアントの別の例示的な例として、214〜238位、297〜299位、318〜322位および/または327〜331位におけるアミノ酸残基のうちの任意の1つまたは複数が、改変(例えば、保存的または非保存的置換、欠失)のための適切な標的として使用され得る。特定の実施形態では、このIgGのFcバリアントのCH2ドメインは、Fc領域のエフェクター機能を減弱させるために、228位、234位、235位および/または331位においてアミノ酸置換を含む(例えば、Ser228Pro変異およびLeu235Ala変異を有するヒトIgG4)(米国特許第7,030,226号を参照のこと)。ここで、重鎖中の残基の番号付けは、EU指標の番号付けである(Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年)を参照のこと)。これらおよび関連の実施形態のうち特定のものは、任意選択でADCC関連活性またはCDC関連活性などのエフェクター機能の低減を伴わずに、FcRn結合および/または血清半減を変更(例えば、増加、減少)させている。
さらなる例には、野生型Fc領域の279位、341位、343位もしくは373位またはそれらの任意の組合せにおいて、1つまたは複数のアミノ酸置換を含むバリアントFc領域が含まれる(例えば、米国特許出願第2007/0224188号を参照のこと)。ヒトIgGについてこれらの位置における野生型アミノ酸残基は、バリン(279)、グリシン(341)、プロリン(343)およびチロシン(373)である。置換(複数可)は、保存的もしくは非保存的であり得、または本明細書に記載される、天然に存在しないアミノ酸もしくは模倣物を含み得る。単独でまたはこれらの置換と組み合わせて、ある特定の実施形態は、以下から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ超のアミノ酸置換を含むバリアントFc領域もまた使用し得る:235G、235R、236F、236R、236Y、237K、237N、237R、238E、238G、238H、238I、238L、238V、238W、238Y、244L、245R、247A、247D、247E、247F、247M、247N、247Q、247R、247S、247T、247W、247Y、248F、248P、248Q、248W、249L、249M、249N、249P、249Y、251H、251I、251W、254D、254E、254F、254G、254H、254I、254K、254L、254M、254N、254P、254Q、254R、254V、254W、254Y、255K、255N、256H、256I、256K、256L、256V、256W、256Y、257A、257I、257M、257N、257S、258D、260S、262L、264S、265K、265S、267H、267I、267K、268K、269N、269Q、271T、272H、272K、272L、272R、279A、279D、279F、279G、279H、279I、279K、279L、279M、279N、279Q、279R、279S、279T、279W、279Y、280T、283F、283G、283H、283I、283K、283L、283M、283P、283R、283T、283W、283Y、285N、286F、288N、288P、292E、292F、292G、292I、292L、293S、293V、301W、304E、307E、307M、312P、315F、315K、315L、315P、315R、316F、316K、317P、317T、318N、318P、318T、332F、332G、332L、332M、332S、332V、332W、339D、339E、339F、339G、339H、339I、339K、339L、339M、339N、339Q、339R、339S、339W、339Y、341D、341E、341F、341H、341I、341K、341L、341M、341N、341P、341Q、341R、341S、341T、341V、341W、341Y、343A、343D、343E、343F、343G、343H、343I、343K、343L、343M、343N、343Q、343R、343S、343T、343V、343W、343Y、373D、373E、373F、373G、373H、373I、373K、373L、373M、373N、373Q、373R、373S、373T、373V、373W、375R、376E、376F、376G、376H、376I、376L、376M、376N、376P、376Q、376R、376S、376T、376V、376W、376Y、377G、377K、377P、378N、379N、379Q、379S、379T、380D、380N、380S、380T、382D、382F、382H、382I、382K、382L、382M、382N、382P、382Q、382R、382S、382T、382V、382W、382Y、385E、385P、386K、423N、424H、424M、424V、426D、426L、427N、429A、429F、429M、430A、430D、430F、430G、430H、430I、430K、430L、430M、430N、430P、430Q、430R、430S、430T、430V、430W、430Y、431H、431K、431P、432R、432S、438G、438K、438L、438T、438W、439E、439H、439Q、440D、440E、440F、440G、440H、440I、440K、440L、440M、440Q、440T、440Vまたは442K。上記のように、重鎖中の残基の番号付けは、EU指標の番号付けである(Kabatら、上記を参照のこと)。かかるバリアントFc領域は、典型的には、バリアントFc領域が作動可能に結合されるHRSポリペプチドに、変更されたエフェクター機能または変更された血清半減期を付与する。好ましくは、この変更されたエフェクター機能は、かかるアミノ酸置換(複数可)を欠く対応するFc領域と比較した、ADCCにおける増加、ADCCにおける減少、CDCにおける増加、CDCにおける減少、Clq結合親和性における増加、Clq結合親和性における減少、FcR(好ましくはFcRn)結合親和性における増加またはFcR(好ましくはFcRn)結合親和性における減少である。
さらなる例には、221位、222位、224位、227位、228位、230位、231位、223位、233位、234位、235位、236位、237位、238位、239位、240位、241位、243位、244位、245位、246位、247位、249位、250位、258位、262位、263位、264位、265位、266位、267位、268位、269位、270位、271位、272位、273位、274位、275位、276位、278位、280位、281位、283位、285位、286位、288位、290位、291位、293位、294位、295位、296位、297位、298位、299位、300位、302位、313位、317位、318位、320位、322位、323位、324位、325位、326位、327位、328位、329位、330位、331位、332位、333位、334位、335位、336位および/または428位のうちの1つまたは複数においてアミノ酸置換を含むバリアントFc領域が含まれる(例えば、米国特許第7、662、925号を参照のこと)。具体的な実施形態では、このバリアントFc領域は、P230A、E233D、L234E、L234Y、L234I、L235D、L235S、L235Y、L235I、S239D、S239E、S239N、S239Q、S239T、V240I、V240M、F243L、V264I、V264T、V264Y、V266I、E272Y、K274T、K274E、K274R、K274L、K274Y、F275W、N276L、Y278T、V302I、E318R、S324D、S324I、S324V、N325T、K326I、K326T、L328M、L328I、L328Q、L328D、L328V、L328T、A330Y、A330L、A330I、I332D、I332E、I332N、I332Q、T335D、T335R、およびT335Yからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。他の具体的な実施形態では、このバリアントFc領域は、V264I、F243L/V264I、L328M、I332E、L328M/I332E、V264I/I332E、S298A/I332E、S239E/I332E、S239Q/I332E、S239E、A330Y、I332D、L328I/I332E、L328Q/I332E、V264T、V240I、V266I、S239D、S239D/I332D、S239D/I332E、S239D/I332N、S239D/I332Q、S239E/I332D、S239E/I332N、S239E/I332Q、S239N/I332D、S239N/I332E、S239Q/I332D、A330Y/I332E、V264I/A330Y/I332E、A330L/I332E、V264I/A330L/I332E、L234E、L234Y、L234I、L235D、L235S、L235Y、L235I、S239T、V240M、V264Y、A330I、N325T、L328D/I332E、L328V/I332E、L328T/I332E、L328I/I332E、S239E/V264I/I332E、S239Q/V264I/I332E、S239E/V264I/A330Y/I332E、S239D/A330Y/I332E、S239N/A330Y/I332E、S239D/A330L/I332E、S239N/A330L/I332E、V264I/S298A/I332E、S239D/S298A/I332E、S239N/S298A/I332E、S239D/V264I/I332E、S239D/V264I/S298A/I332E、S239D/V264I/A330L/I332E、S239D/I332E/A330I、P230A、P230A/E233D/I332E、E272Y、K274T、K274E、K274R、K274L、K274Y、F275W、N276L、Y278T、V302I、E318R、S324D、S324I、S324V、K326I、K326T、T335D、T335R、T335Y、V240I/V266I、S239D/A330Y/I332E/L234I、S239D/A330Y/I332E/L235D、S239D/A330Y/I332E/V240I、S239D/A330Y/I332E/V264T、S239D/A330Y/I332E/K326E、およびS239D/A330Y/I332E/K326Tからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、このバリアントFc領域は、N297D/I332E、F241Y/F243Y/V262T/V264T/N297D/I332E、S239D/N297D/I332E、S239E/N297D/I332E、S239D/D265Y/N297D/I332E、S239D/D265H/N297D/I332E、V264E/N297D/I332E、Y296N/N297D/I332E、N297D/A330Y/I332E、S239D/D265V/N297D/I332E、S239D/D265I/N297D/I332E、およびN297D/S298A/A330Y/I332Eからなる群から選択される一連の置換を含む。具体的な実施形態では、このバリアントFc領域は、332位においてアミノ酸置換を含む(EU指標、Kabatら、上記の番号付けを使用する)。置換の例には、332A、332D、332E、332F、332G、332H、332K、332L、332M、332N、332P、332Q、332R、332S、332T、332V、332Wおよび332Yが含まれる。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatらのEU指標の番号付けである。本明細書に記載される他の特性のうちで、かかるバリアントFc領域は、対応する野生型Fc領域と比較して、FcγRに対する増加した親和性、増加した安定性および/または増加した溶解度を有し得る。
さらなる例には、以下のアミノ酸置換:224N/Y、225A、228L、230S、239P、240A、241L、243S/L/G/H/I、244L、246E、247L/A、252T、254T/P、258K、261Y、265V、266A、267G/N、268N、269K/G、273A、276D、278H、279M、280N、283G、285R、288R、289A、290E、291L、292Q、297D、299A、300H、301C、304G、305A、306I/F、311R、312N、315D/K/S、320R、322E、323A、324T、325S、326E/R、332T、333D/G、335I、338R、339T、340Q、341E、342R、344Q、347R、351S、352A、354A、355W、356G、358T、361D/Y、362L、364C、365Q/P、370R、372L、377V、378T、383N、389S、390D、391C、393A、394A、399G、404S、408G、409R、411I、412A、414M、421S、422I、426F/P、428T、430K、431S、432P、433P、438L、439E/R、440G、441F、442T、445R、446A、447Eのうちの1つまたは複数を含むバリアントFc領域が含まれ、ここで、任意選択で、このバリアントは、親Fcポリペプチドと比較して、Fcリガンドの変更された認識および/または変更されたエフェクター機能を有し、残基の番号付けは、KabatらのEU指標の番号付けである。これらおよび関連の実施形態の具体的な例には、以下の置換のセット:(1)N276D、R292Q、V305A、I377V、T394A、V412AおよびK439E;(2)P244L、K246E、D399GおよびK409R;(3)S304G、K320R、S324T、K326EおよびM358T;(4)F243S、P247L、D265V、V266A、S383NおよびT411I;(5)H224N、F243L、T393AおよびH433P;(6)V240A、S267G、G341EおよびE356G;(7)M252T、P291L、P352A、R355W、N390D、S408G、S426FおよびA431S;(8)P228L、T289A、L365Q、N389Sおよび5440G;(9)F241L、V273A、K340QおよびL441F;(10)F241L、T299A、I332TおよびM428T;(11)E269K、Y300H、Q342R、V422IおよびG446A;(12)T225A、R301c、S304G、D312N、N315D、L351SおよびN421S;(13)S254T、L306I、K326RおよびQ362L;(14)H224Y、P230S、V323A、E333D、K338RおよびS364C;(15)T335I、K414MおよびP445R;(16)T335IおよびK414M;(17)P247A、E258K、D280N、K288R、N297D、T299A、K322E、Q342R、S354AおよびL365P;(18)H268N、V279M、A339T、N361DおよびS426P;(19)C261Y、K290E、L306F、Q311R、E333GおよびQ438L;(20)E283G、N315K、E333G、R344Q、L365PおよびS442T;(21)Q347R、N361YおよびK439R;(22)S239P、S254P、S267N、H285R、N315S、F372L、A378T、N390D、Y391C、F404S、E430K、L432PおよびK447E;および(23)E269G、Y278H、N325SおよびK370Rを含むかまたはこれらからなるバリアントFc領域が含まれ、ここで、残基の番号付けは、KabatらのEU指標の番号付けである(例えば、米国特許出願第2010/0184959号を参照のこと)。
Fcバリアントの別の具体的な例は、配列番号155の配列を含み、式中、1位におけるXaaは、Alaであるかもしくは存在せず;16位におけるXaaは、ProもしくはGluであり;17位におけるXaaは、Phe、ValもしくはAlaであり;18位におけるXaaは、Leu、GluもしくはAlaであり;80位におけるXaaは、AsnもしくはAlaであり;および/または230位におけるXaaは、Lysであるかもしくは存在しない(例えば、米国特許出願第2007/0253966号を参照のこと)。これらのFc領域の特定のものおよび関連のHRS−Fcコンジュゲートは、増加した半減期、低減したエフェクター活性を有し、および/または野生型Fc配列よりも免疫原性が顕著に低い。
バリアントFc領域は、例えば、米国特許出願第2003/0118592号に記載されるように、1つまたは複数の変異したヒンジ領域もまた有し得る。例えば、ヒンジ領域中の1つまたは複数のシステインは、欠失し得るまたは異なるアミノ酸で置換され得る。変異したヒンジ領域は、システイン残基を含まないか、または対応する野生型ヒンジ領域よりも1つ、2つまたは3つ少ないシステイン残基を含み得る。一部の実施形態では、この型の変異したヒンジ領域を有するFc領域は、野生型Igヒンジ領域と比較して、低減したダイマー化する能力を示す。
上述のように、HRS−Fcコンジュゲート、例えばHRS−Fc融合タンパク質は、典型的に、対応するHRSポリペプチドと比較して、変更された(例えば、改善された、増加した、減少した)薬物動態学的特性を有する。薬物動態学的特性の例には、安定性もしくは半減期、バイオアベイラビリティ(吸収される薬物の分率)、組織分布、分布容積(静脈内注射された直後に薬物が分布し、血漿と周辺組織との間で平衡に達する、見かけの容積)、濃度(血漿中の薬物の初期または定常状態濃度)、排出速度定数(薬物が身体から除去される速度)、排出速度(排出のバランスをとるために必要とされる注入の速度)、曲線下面積(AUCまたは曝露;単一の用量後の、または定常状態における、濃度−時間曲線の積分)、クリアランス(単位時間当たりの薬物が一掃される血漿の体積)、Cmax(経口投与後の薬物のピーク血漿濃度)、tmax(Cmaxに達するまでの時間)、Cmin(次の用量が投与される前に薬物が到達する最も低い濃度)、および変動(定常状態における1回の投薬間隔内のピークトラフ変動)が含まれる。一部の態様では、これらの改善された特性は、二次構造を顕著に変更することおよび/またはHRSポリペプチドの非正準生物学的活性を低減させることなしに、達成される。実際、一部のHRS−Fcコンジュゲートは、増加した非正準生物学的活性を有する。
従って、一部の実施形態では、このHRS−FcコンジュゲートまたはHRS−Fc融合ポリペプチドは、同じまたは匹敵する条件下で哺乳動物に投与した場合、対応する未改変または異なって改変されたHRSポリペプチドよりも、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、50、100、200、300、400または500倍大きい、血漿または血清薬物動態学的AUCプロファイルを有する。ある特定の実施形態では、このHRS−FcコンジュゲートまたはHRS−Fc融合ポリペプチドは、室温における類似の条件下、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日間または1、2、3、4週間などにわたりpH7.4のPBS中と比較した場合、対応する未改変または異なって改変されたHRSポリペプチドよりも、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%または500%大きい安定性(例えば、半減期によって測定される)を有する。
特定の実施形態では、HRS−FcコンジュゲートまたはHRS−Fc融合ポリペプチドは、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約12時間、約18時間、約20時間、約24時間、約30時間、約36時間、約40時間、約48時間、約50時間、約60時間、約70時間、約72時間、約80時間、約84時間、約90時間、約96時間、約120時間もしくは約144時間またはそれ超の、あるいは少なくとも約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約12時間、約18時間、約20時間、約24時間、約30時間、約36時間、約40時間、約48時間、約50時間、約60時間、約70時間、約72時間、約80時間、約84時間、約90時間、約96時間、約120時間もしくは約144時間またはそれ超の、pH7.4、25℃、例えば、生理学的pH、ヒト体温(例えば、in vivo、血清中、所与の組織中、ラット、マウス、サルまたはヒトなどの所与の種中)における生物学的半減期、あるいは任意の介在する半減期を有する。
ある特定の実施形態では、このHRS−FcコンジュゲートまたはHRS−Fc融合ポリペプチドは、対応する未改変HRSポリペプチドと比較して、皮下(SC)投与後により大きいバイオアベイラビリティを有する。ある特定の実施形態では、このHRS−FcコンジュゲートまたはHRS−Fc融合ポリペプチドは、対応する未改変HRSポリペプチドと比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%もしくは少なくとも約100%またはそれ超のバイオアベイラビリティを有する。
ある特定の実施形態では、このHRS−Fc融合ポリペプチドは、UV円偏光二色性分析を介して決定されるとおり、対応する未改変または異なって改変されたHRSポリペプチドと実質的に同じ二次構造を有する。ある特定の実施形態では、このHRS−Fc融合ポリペプチドは、抗炎症活性のアッセイにおいて、対応する未改変または異なって改変されたHRSポリペプチドと実質的に同じ活性を有する。他の実施形態では、このHRS−Fc融合ポリペプチドは、抗炎症活性のアッセイにおいて、対応する未改変または異なって改変されたHRSポリペプチドの活性の、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20倍超の活性を有する。
ペプチドリンカー
ある特定の実施形態では、ペプチドリンカー配列は、各ポリペプチドがその所望の二次構造および三次構造へと折り畳まるのを確実にするのに十分な距離、HRSポリペプチド(複数可)とFc領域(複数可)とを分離するために使用され得る。かかるペプチドリンカー配列は、当該分野で周知の標準的な技術を使用して、融合タンパク質中に組み込まれ得る。
特定のペプチドリンカー配列は、以下の例示的な因子に基づいて選択され得る:(1)可撓性の伸展されたコンフォメーションをとる能力;(2)第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用できる二次構造をとることができないこと;(3)生理学的安定性;ならびに(4)ポリペプチドの機能的エピトープと反応し得る疎水性残基または荷電残基の欠如、または他の特徴。例えば、GeorgeおよびHeringa、J Protein Eng. 15巻:871〜879頁、2002年を参照のこと。
リンカー配列は、一般に、1〜約200アミノ酸長であり得る。特定のリンカーは、約1〜200アミノ酸、1〜150アミノ酸、1〜100アミノ酸、1〜90アミノ酸、1〜80アミノ酸、1〜70アミノ酸、1〜60アミノ酸、1〜50アミノ酸、1〜40アミノ酸、1〜30アミノ酸、1〜20アミノ酸、1〜10アミノ酸、1〜5アミノ酸、1〜4アミノ酸、1〜3アミノ酸または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100もしくはそれ超のアミノ酸の、全体的アミノ酸長を有し得る。
ペプチドリンカーは、本明細書の他の場所に記載され当該分野で公知の、任意の1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸(複数可)、アミノ酸アナログおよび/またはアミノ酸模倣物を使用し得る。リンカーとして有用に使用され得る特定のアミノ酸配列には、Marateaら、Gene 40巻:39〜46頁、1985年;Murphyら、PNAS USA. 83巻:8258〜8262頁、1986年;米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示されるものが含まれる。特定のペプチドリンカー配列は、Gly残基、Ser残基および/またはAsn残基を含む。他の近中性のアミノ酸、例えばThrおよびAlaもまた、所望の場合、ペプチドリンカー配列中で使用され得る。
特定の例示的なリンカーには、以下のような、Gly、Serおよび/またはAsn含有リンカー:[G]x、[S]x、[N]x、[GS]x、[GGS]x、[GSS]x、[GSGS]x(配列番号200)、[GGSG]x(配列番号201)、[GGGS]x(配列番号202)、[GGGGS]x(配列番号203)、[GN]x、[GGN]x、[GNN]x、[GNGN]x(配列番号204)、[GGNG]x(配列番号205)、[GGGN]x(配列番号206)、[GGGGN]x(配列番号207)リンカーが含まれ、式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20またはそれ超である。これらおよび関連のアミノ酸の他の組合せは、当業者に明らかである。
リンカーペプチドのさらなる例には、以下のアミノ酸配列が含まれるがこれらに限定されない:Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−(配列番号208);Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−(配列番号209);Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−(配列番号210);Asp−Ala−Ala−Ala−Lys−Glu−Ala−Ala−Ala−Lys−Asp−Ala−Ala−Ala−Arg−Glu−Ala−Ala−Ala−Arg−Asp−Ala−Ala−Ala−Lys−(配列番号211);およびAsn−Val−Asp−His−Lys−Pro−Ser−Asn−Thr−Lys−Val−Asp−Lys−Arg−(配列番号212)。
リンカーペプチドのさらなる非限定的な例には、DGGGS(配列番号213);TGEKP(配列番号214)(例えば、Liuら、PNAS. 94巻:5525〜5530頁、1997年を参照のこと);GGRR(配列番号215)(Pomerantzら
1995年);(GGGGS)n(配列番号203)(Kimら、PNAS. 93巻:1156〜1160頁、1996年);EGKSSGSGSESKVD(配列番号216)(Chaudharyら、PNAS.87巻:1066〜1070頁、1990年);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号217)(Birdら、Science.242巻:423〜426頁、1988年)、GGRRGGGS(配列番号218);LRQRDGERP(配列番号219);LRQKDGGGSERP(配列番号220);LRQKd(GGGS)2ERP(配列番号221)が含まれる。具体的な実施形態では、このリンカー配列は、3つのグリシン残基を含む、Gly3リンカー配列を含む。特定の実施形態では、可撓性のリンカーは、DNA結合部位およびペプチド自体の両方をモデル化することが可能なコンピュータープログラムを使用して(DesjarlaisおよびBerg、PNAS.90巻:2256〜2260頁、1993年;およびPNAS.91巻:11099〜11103頁、1994年)、またはファージディスプレイ法によって、合理的に設計され得る。
このペプチドリンカーは、生理学的に安定であり得るか、または放出可能なリンカー、例えば生理学的に分解可能なリンカーまたは酵素的に切断可能なリンカー(例えば、タンパク質分解的に切断可能なリンカー)を含み得る。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の放出可能なリンカーは、コンジュゲートのより短い半減期およびより迅速なクリアランスを生じ得る。これらおよび関連の実施形態は、例えば、血流中でのHRSポリペプチドの溶解度および血液循環寿命を増強するために使用され得、一方でまた、リンカー分解に引き続いて、血流中にFc領域(複数可)を実質的に含まないHRSポリペプチドを送達する。これらの態様は、HRSポリペプチドが、Fc領域へと永久的にコンジュゲート化された場合に、低減した活性を実証する場合に、特に有用である。本明細書に提供されるリンカーを使用することによって、かかるHRSポリペプチドは、コンジュゲート化形態にあるとき、その治療活性を維持し得る。別の例として、大きい、比較的不活性なHRS−Fcコンジュゲートポリペプチドが投与され得、これは次いで、Fc領域の一部分を所有するまたはFc領域を全体的に欠く生理活性HRSポリペプチドを生成するために、in vivoで(分解可能なリンカーを介して)分解される。これらおよび他の方法において、HRS−Fcコンジュゲートポリペプチドの特性は、HRSポリペプチドの生理活性および循環半減期のバランスを経時的にとるために、より効率的に個別化され得る。
特定の実施形態では、このリンカーペプチドは、自己触媒的または自己切断性ペプチド切断部位を含む。特定の一実施形態では、自己切断性ペプチドは、ポティウイルスおよびカルジオウイルス2Aペプチド、FMDV(口蹄疫ウイルス)、ウマ鼻炎Aウイルス、Thosea asignaウイルスならびにブタテッショウウイルスから得られるポリペプチド配列が含まれる。ある特定の実施形態では、この自己切断性ポリペプチド部位は、2Aまたは2A様の部位、配列またはドメインを含む(Donnellyら、J. Gen. Virol.82巻:1027〜1041頁、2001年を参照のこと)。例示的な2A部位には、以下の配列が含まれる:LLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号222);TLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号223);LLKLAGDVESNPGP(配列番号224);NFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号225);QLLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号226);APVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号227);VTELLYRMKRAETYCPRPLLAIHPTEARHKQKIVAPVKQT(配列番号228);LNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号229);LLAIHPTEARHKQKIVAPVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号230);およびEARHKQKIVAPVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号231)。一実施形態では、この自己触媒的ペプチド切断部位は、例えば、18アミノ酸の配列であるアフトウイルス口蹄疫ウイルス(FMDV)ポリタンパク質の2A領域などの、翻訳2Aシグナル配列を含む。使用され得る2A様配列のさらなる例には、例えば、Donnellyら、Journal of General Virology.82巻:1027〜1041頁、2001年に記載されるような、昆虫ウイルスポリタンパク質、C型ロタウイルスのNS34タンパク質、およびTrypanosoma spp.中の反復配列が含まれる。
適切なプロテアーゼ切断部位および自己切断性ペプチドは、当業者に公知である(例えば、Ryanら、J. Gener. Virol.78巻:699〜722頁、1997年;およびScymczakら、Nature Biotech.5巻:589〜594頁、2004年を参照のこと)。例示的なプロテアーゼ切断部位には、ポティウイルスNIaプロテアーゼ(例えば、タバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ)、ポティウイルスHCプロテアーゼ、ポティウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビオウイルス(byovirus)NIaプロテアーゼ、ビオウイルスRNA−2コード化プロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(ライスツングロスフェリカルウイルス(rice tungro spherical virus))3C様プロテアーゼ、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、ヘパリン、トロンビン、第Xa因子およびエンテロキナーゼの切断部位が含まれるがこれらに限定されない。その高い切断ストリンジェンシーに起因して、一部の実施形態では、EXXYXQ(G/S)(配列番号232)、例えば、ENLYFQG(配列番号233)およびENLYFQS(配列番号234)などのTEV(タバコエッチ病ウイルス)プロテアーゼ切断部位が含まれ、式中、Xは、任意のアミノ酸を示す(TEVによる切断は、QとGとの間またはQとSとの間で起きる)。
本発明の特定の実施形態における使用のために適切な酵素的に分解可能なリンカーの更なる例には、セリンプロテアーゼ、例えばトロンビン、キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カリクレインまたはスブチリシン(substilisin)によって切断されるアミノ酸配列が含まれるがこれに限定されない。トロンビン切断可能なアミノ酸配列の例示的な例には、−Gly−Arg−Gly−Asp−(配列番号235)、−Gly−Gly−Arg−、−Gly−Arg−Gly−Asp−Asn−Pro−(配列番号236)、−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−(配列番号237)、−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−Lys−(配列番号238)、−Gly−Pro−Arg−、−Val−Pro−Arg−および−Phe−Val−Arg−が含まれるがこれらに限定されない。エラスターゼ切断可能なアミノ酸配列の例示的な例には、−Ala−Ala−Ala−、−Ala−Ala−Pro−Val−(配列番号239)、−Ala−Ala−Pro−Leu−(配列番号240)、−Ala−Ala−Pro−Phe−(配列番号241)、−Ala−Ala−Pro−Ala−(配列番号242)および−Ala−Tyr−Leu−Val−(配列番号243)が含まれるがこれらに限定されない。
酵素的に分解可能なリンカーには、マトリックスメタロプロテイナーゼ、例えばコラゲナーゼ、ストロメライシンおよびゼラチナーゼによって切断され得るアミノ酸配列もまた含まれる。マトリックスメタロプロテイナーゼ切断可能なアミノ酸配列の例示的な例には、−Gly−Pro−Y−Gly−Pro−Z−(配列番号244)、−Gly−Pro−、Leu−Gly−Pro−Z−(配列番号245)、−Gly−Pro−Ile−Gly−Pro−Z−(配列番号246)および−Ala−Pro−Gly−Leu−Z−(配列番号247)が含まれるがこれらに限定されず、式中、YおよびZはアミノ酸である。コラゲナーゼ切断可能なアミノ酸配列の例示的な例には、−Pro−Leu−Gly−Pro−D−Arg−Z−(配列番号248)、−Pro−Leu−Gly−Leu−Leu−Gly−Z−(配列番号249)、−Pro−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Trp−(配列番号250)、−Pro−Leu−Gly−Cys(Me)−His−(配列番号251)、−Pro−Leu−Gly−Leu−Tyr−Ala−(配列番号252)、−Pro−Leu−Ala−Leu−Trp−Ala−Arg−(配列番号253)、および−Pro−Leu−Ala−Tyr−Trp−Ala−Arg−(配列番号254)が含まれるがこれらに限定されず、式中、Zはアミノ酸である。ストロメライシン切断可能なアミノ酸配列の1つの例示的な例は、−Pro−Tyr−Ala−Tyr−Tyr−Met−Arg−(配列番号255)である;ゼラチナーゼ切断可能なアミノ酸配列の一例は、−Pro−Leu−Gly−Met−Tyr−Ser−Arg−(配列番号256)である。
本発明の特定の実施形態における使用に適切な酵素的に分解可能なリンカーには、アンギオテンシン変換酵素によって切断され得るアミノ酸配列、例えば、−Asp−Lys−Pro−、−Gly−Asp−Lys−Pro−(配列番号257)および−Gly−Ser−Asp−Lys−Pro−(配列番号258)などもまた含まれる。
本発明の特定の実施形態における使用に適切な酵素的に分解可能なリンカーには、カテプシンBによって分解され得るアミノ酸配列、例えば、Val−Cit、Ala−Leu−Ala−Leu−(配列番号259)、Gly−Phe−Leu−Gly−(配列番号260)およびPhe−Lysなどもまた含まれる。
特定の実施形態では、放出可能なリンカーは、pH7.4、25℃、例えば、生理学的pH、ヒト体温(例えば、in vivo、血清中、所与の組織中)において、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間もしくは約96時間またはそれ超の半減期、あるいは任意の介在する半減期を有する。当業者は、HRS−Fcコンジュゲートポリペプチドの半減期が、特定の放出可能なリンカーを使用することによって精密に個別化され得ることを理解する。
しかし、ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーのうちの任意の1つまたは複数は、任意選択である。例えば、第1および第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、立体障害を防止するために使用され得る非必須のN末端および/またはC末端アミノ酸領域を有する場合には、リンカー配列は、必要とされない可能性がある。
使用のための方法
本発明の実施形態は、Fc領域−ヒスチジル−tRNAシンテターゼ(HRS−Fc)コンジュゲートポリペプチド、ならびにそれらの断片およびバリアントが、in vitroおよびin vivoの両方で、有用な種々の方法で炎症性応答をモジュレートする改善された方法を提供するという発見に関連する。従って、本発明の組成物は、かかる炎症性および/または自己免疫性の疾患、状態および障害を、直接的にまたは間接的にのいずれかで媒介する細胞をモジュレートすることによって、炎症性応答、慢性炎症、急性炎症および免疫性疾患を含む広範な炎症促進性、炎症性および/または自己免疫性の適応症を処置するための免疫調節剤として有用であり得る。免疫調節剤としての本発明の組成物の有用性は、例えば、遊走アッセイ(例えば、白血球またはリンパ球を使用する)、サイトカイン産生アッセイ、または細胞生存度もしくは細胞分化アッセイ(例えば、B細胞、T細胞、単球またはNK細胞を使用する)を含む、いくつかの当該分野で公知の利用可能な技術のいずれかを使用して、モニタリングされ得る。
「炎症」とは、一般に、有害刺激、例えば病原体、損傷細胞(例えば、創傷)および刺激物に対する組織の生物学的応答を指す。用語「炎症性応答」とは、例示のみとして、本明細書に記載され当該分野で公知の他のもののうちで、免疫細胞の活性化もしくは遊走、遊走、自己免疫および自己免疫性疾患、サイトカイン産生、キニン放出、線維素溶解および凝固を含む血管拡張を含む、炎症が達成および調節される特定の機構を指す。理想的には、炎症は、傷害性刺激を除去し、罹患組織(単数または複数)のための治癒プロセスを開始することの両方のための、身体による防御の試みである。炎症の非存在下では、創傷および感染は決して治癒せず、組織の進行性の破壊が生存を脅かすという情況を生み出す。他方で、過剰なまたは慢性の炎症は、本明細書に記載され当該分野で公知の他のもののうちで、枯草熱、アテローム動脈硬化症および関節リウマチなどの種々の疾患と関連し得る。
慢性炎症の臨床的徴候は、疾病の持続時間、炎症性病変、原因および罹患した解剖学的領域に依存する(例えば、Kumarら、Robbins Basic Pathology−第8版、2009年 Elsevier、London;Miller, LM、Pathology Lecture Notes、Atlantic Veterinary College、Charlottetown、PEI、Canadaを参照のこと)。慢性炎症は、本明細書に記載され当該分野で公知の他のもののうちで、例えば、アレルギー、アルツハイマー病、貧血、大動脈弁狭窄症、関節炎、例えば関節リウマチおよび変形性関節症、がん、うっ血性心不全、線維筋痛症、線維症、心臓発作、腎臓不全、ループス、膵炎、脳卒中、手術合併症、炎症性肺疾患、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)を含む炎症性腸疾患、アテローム動脈硬化症、神経学的障害、糖尿病、代謝障害、肥満ならびに乾癬を含む、種々の病理学的状態または疾患と関連する。多くの他の慢性疾患は、炎症性構成要素もまた含み得、従って、例えば、筋ジストロフィーおよび横紋筋融解を含め、本発明のHRS−Fcコンジュゲートで処置され得る。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、慢性炎症を処置もしくは管理するため、個々の慢性炎症性応答のうちの1つもしくは複数のいずれかをモジュレートするため、または慢性炎症と関連する任意の1つもしくは複数の疾患もしくは状態を処置するために、使用され得る。
特定の具体的な炎症性応答には、サイトカインの産生および活性、または関連経路が含まれる。例えば、特定の例示的な実施形態は、例えば、この転写因子の下流の活性を増加させることによって、核因子−kB(NF−kB)を介した細胞シグナル伝達をモジュレートすることに関する。ある特定の場合には、NF−kB活性における増加は、サイトカインのシグナル伝達または活性、例えば炎症促進性サイトカイン(例えば、TNF−アルファまたはベータ)、および抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−10)における増加をもたらし得る。
例えば受容された臨床的基準に従って改善を決定することによって、治療有効用量が処置の過程において投与されたかどうかを決定するなど、鑑別診断を行う目的のためおよびまた処置をモニタリングするためを含む、炎症性状態および他の状態の徴候および症状を評価するための基準は、当業者に明らかであり、例えば、Berkowら編、The Merck Manual、第16版、Merck and Co.、Rahway、N.J.、1992年;Goodmanら編、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版、Pergamon Press, Inc.、Elmsford、N.Y.、(2001年);Avery’s Drug Treatment: Principles and Practice of Clinical Pharmacology and Therapeutics、第3版、ADIS Press, Ltd.、Williams and Wilkins、Baltimore、MD.(1987年);Ebadi、Pharmacology、Little、Brown and Co.、Boston、(1985年);Osolciら編、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1990年);Katzung、Basic and Clinical Pharmacology、Appleton and Lange、Norwalk、CT(1992年)の教示によって例示される。
本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかの使用を介した、自然免疫応答または適応免疫応答などの免疫応答をモジュレートする方法もまた含まれる。本明細書で使用する場合、用語「免疫応答」は、免疫系の1つまたは複数の細胞によって媒介される、抗原、ワクチン組成物または免疫調節性分子に対する測定可能なまたは観察可能な反応を含む。免疫応答は典型的に、免疫系細胞に対する抗原または免疫調節性分子の結合で始まる。抗原または免疫調節性分子に対する反応は、自然免疫応答、体液性免疫応答、細胞媒介性免疫応答を媒介することに関与する抗原または免疫調節性分子および細胞に最初に結合する細胞を含む、多くの細胞型によって媒介され得る。
免疫性疾患を処置する方法もまた含まれる。本発明に従って処置され得る例示的な免疫系の疾患、障害または状態には、原発性免疫不全、免疫性媒介性血小板減少症、川崎症候群、骨髄移植(例えば、成人または小児における最近の骨髄移植)、慢性B細胞リンパ性白血病、HIV感染(例えば、成人または小児科HIV感染)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、輸血後紫斑病などが含まれるがこれらに限定されない。
さらに、本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかで処置され得るさらなる疾患、障害および状態には、ギラン・バレー症候群、貧血(例えば、パルボウイルスB19と関連する貧血、感染(例えば、反復感染)の危険性が高い、安定な多発性骨髄腫を有する患者、自己免疫性溶血性貧血(例えば、温式自己免疫性溶血性貧血)、血小板減少症(例えば、新生児血小板減少症)および免疫性媒介性好中球減少症)、移植(例えば、CMV陽性臓器のサイトメガロウイルス(CMV)陰性レシピエント)、低ガンマグロブリン血症(例えば、感染または罹患率の危険因子を有する低ガンマグロブリン血症新生児)、てんかん(例えば、難治性てんかん)、全身性血管炎症候群、重症筋無力症(例えば、重症筋無力症における代償不全)、皮膚筋炎ならびに多発性筋炎が含まれる。
本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかで処置され得るさらなる自己免疫性疾患、障害および状態には、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性新生児血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性血球減少症、溶血性貧血、抗リン脂質抗体症候群、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、心筋炎、再発性多発軟骨炎、リウマチ性心疾患、糸球体腎炎(例えば、IgA腎症)、多発性硬化症、神経炎、ぶどう膜炎眼炎、多腺性内分泌障害(polyendochnopathy)、紫斑病(例えば、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(Henloch−Scoenlein purpura))、ライター病、スティフ・マン症候群、自己免疫性肺炎症、ギラン・バレー症候群、インスリン依存性糖尿病および自己免疫性炎症性眼疾患が含まれるがこれらに限定されない。
本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかで処置され得るさらなる自己免疫性疾患、障害または状態には、自己免疫性甲状腺炎;橋本甲状腺炎ならびに例えば細胞媒介性および体液性の甲状腺細胞傷害性を特徴とする甲状腺炎を含む、甲状腺機能低下症;SLE(例えば、循環するおよび局所的に生成された免疫複合体を特徴とする場合が多い);グッドパスチャー症候群(例えば、抗基底膜抗体を特徴とする場合が多い);天疱瘡(例えば、上皮棘融解抗体を特徴とする場合が多い);例えば、グレーブス病(例えば、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する抗体を特徴とする場合が多い;例えば、アセチルコリン受容体抗体を特徴とする場合が多い重症筋無力症)などの受容体自己免疫;インスリン抵抗性(例えば、インスリン受容体抗体を特徴とする場合が多い);自己免疫性溶血性貧血(例えば、抗体感作赤血球の食作用を特徴とする場合が多い);ならびに自己免疫性血小板減少性紫斑病(例えば、抗体感作血小板の食作用を特徴とする場合が多い)が含まれるがこれらに限定されない。
本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかで処置され得るさらなる自己免疫性疾患、障害または状態には、関節リウマチ(例えば、関節における免疫複合体を特徴とする場合が多い);抗コラーゲン抗体を伴う強皮症(例えば、核小体および他の核抗体を特徴とする場合が多い);混合性結合組織病(例えば、抽出可能な核抗原、例えばリボヌクレオタンパク質に対する抗体を特徴とする場合が多い);多発性筋炎/皮膚筋炎(例えば、非ヒストン抗核抗体を特徴とする場合が多い);悪性貧血(例えば、抗壁細胞、抗ミクロソームおよび抗内因子抗体を特徴とする場合が多い);特発性アジソン病(例えば、体液性および細胞媒介性の副腎細胞傷害性を特徴とする場合が多い);不妊症(例えば、抗精子(antispennatozoal)抗体を特徴とする場合が多い);糸球体腎炎(例えば、糸球体基底膜抗体または免疫複合体を特徴とする場合が多い);原発性糸球体腎炎による、IgA腎症による;水疱性類天疱瘡(例えば、基底膜におけるIgGおよび補体を特徴とする場合が多い);シェーグレン症候群(例えば、多組織抗体および/または特異的非ヒストン抗核抗体(SS−B)を特徴とする場合が多い);糖尿病(例えば、細胞媒介性および体液性島細胞抗体を特徴とする場合が多い);および喘息または嚢胞性線維症を伴うアドレナリン作動性薬抵抗性を含む、アドレナリン作動性薬抵抗性(例えば、ベータ−アドレナリン作動性受容体抗体を特徴とする場合が多い)が含まれるがこれらに限定されない。
本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかで処置され得るなおさらなる自己免疫性疾患、障害または状態には、慢性活動性肝炎(例えば、平滑筋抗体を特徴とする場合が多い);原発性胆汁性肝硬変(例えば、抗ミトコンドリア抗体を特徴とする場合が多い);他の内分泌腺不全(例えば、一部の場合には特異的組織抗体を特徴とする);白斑(例えば、抗メラニン細胞抗体を特徴とする場合が多い);血管炎(例えば、血管壁中の免疫グロブリンおよび補体ならびに/または低い血清補体を特徴とする場合が多い);心筋梗塞後状態(例えば、抗心筋抗体を特徴とする場合が多い);開心術症候群(例えば、抗心筋抗体を特徴とする場合が多い);蕁麻疹(例えば、IgEに対するIgGおよびIgM抗体を特徴とする場合が多い);アトピー性皮膚炎(例えば、IgEに対するIgGおよびIgM抗体を特徴とする場合が多い);喘息(例えば、IgEに対するIgGおよびIgM抗体を特徴とする場合が多い);炎症性ミオパチー;ならびに他の炎症性、肉芽腫性、変性および萎縮性障害が含まれるがこれらに限定されない。
本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかで処置され得るさらなる疾患および障害には、Th17もしくは他のTh細胞サブタイプの不均衡から生じるまたはかかる不均衡と関連するものが含まれる。例には、乾癬、乾癬性関節炎、アトピー性皮膚炎(湿疹)、バロー同心円硬化症、シルダーびまん性硬化症、マールブルグ型MS、IBD、クローン、潰瘍性大腸炎、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置性大腸炎(diversion colitis)、ベーチェット病、不確定大腸炎、喘息、自己免疫性心筋炎、子宮内膜症、成人発症スチル障害(AOSD)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、フォークト・小柳・原田(VKH)、歯周疾患、臓器移植の失敗、移植片対宿主疾患およびデビック病(視神経脊髄炎)が含まれる。
一部の態様では、本発明は、自己免疫性疾患と関連する筋肉または肺の炎症を低減させる方法であって、本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかを含む組成物を、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、方法を含む。例示的な筋肉の炎症性疾患および障害には、筋ジストロフィー、運動誘導性筋肉炎症、筋肉傷害または手術と関連する炎症、横紋筋融解、ならびに本明細書に記載される関連の疾患および障害が含まれる。
自己抗体と関連する疾患を処置する方法であって、本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかを含む治療用組成物を、それを必要とする被験体に投与するステップを含み、このHRSポリペプチドは、自己抗体によって特異的に認識される少なくとも1つのエピトープを含む、方法を含む。
ある特定の実施形態は、ヒスチジル−tRNAシンテターゼ(HisRS)抗原に対する寛容を誘導する方法であって、本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかを含む組成物を被験体に投与するステップを含み、このHRSポリペプチドは、自己抗体によって特異的に認識される少なくとも1つのエピトープを含み、この組成物の投与は、自己抗原に対する寛容化を引き起こす、方法を含む。
ヒスチジルtRNAシンテターゼ(HisRS)自己抗原に対する自己免疫性応答に関与するT細胞のセットもしくはサブセットを排除する方法であって、本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかを含む組成物を被験体に投与するステップを含み、このHRSポリペプチドは、自己抗体または自己反応性T細胞によって特異的に認識される少なくとも1つのエピトープを含み、この組成物の投与は、自己反応性T細胞のクローン除去を引き起こす、方法もまた含まれる。
別の実施形態では、本発明は、ヒスチジルtRNAシンテターゼ(HRS)自己抗原に対する自己免疫性応答に関与するT細胞においてアネルギーを誘導する方法であって、本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかを含む組成物を被験体に投与するステップを含み、このHRSポリペプチドは、自己抗体またはT細胞によって特異的に認識される少なくとも1つのエピトープを含み、この組成物の投与は、自己免疫性応答に関与するT細胞の機能的不活性化を引き起こす、方法を含む。
別の実施形態では、本発明は、ヒスチジルtRNAシンテターゼの不十分と関連する疾患を処置するための補充療法であって、本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートのいずれかを含む治療用組成物を、それを必要とする被験体に投与するステップを含み、このHRSポリペプチドは、ヒスチジルtRNAシンテターゼの不十分を機能的に補償する、補充療法を含む。
この補充療法の一態様では、このヒスチジルtRNAシンテターゼの不十分は、抗Jo−1抗体の存在によって引き起こされる。この補充療法の一態様では、このヒスチジルtRNAシンテターゼの不十分は、内因性ヒスチジルtRNAシンテターゼの活性、発現または細胞分布をモジュレートする、内因性ヒスチジルtRNAシンテターゼにおける変異によって引き起こされる。一態様では、このヒスチジルtRNAシンテターゼの不十分は、ペロー症候群(Perrault syndrome)またはアッシャー症候群と関連する。
これらの方法のいずれかでは、用語「寛容」とは、哺乳動物、特にヒトにおける特異的抗原に対する免疫応答の、持続性の低減または非存在を指す。寛容は、全般性の免疫抑制とは別個であり、ここで、免疫応答の全て、または免疫応答の免疫細胞の特定のクラスの全て、例えば、B細胞媒介性免疫応答が、減少または排除される。寛容の発生は、処置性のHRS−Fcコンジュゲートの単一用量または逐次的用量での投与後の宿主被験体の血清における、HRSポリペプチドに対する抗体の濃度における非存在または減少によって、慣用的にモニタリングされ得る。寛容の発生は、典型的には、患者における自己免疫性疾患の症状を減少させるのに十分であり、例えば、患者は、コルチコステロイドなどの一般的免疫抑制剤の非存在下または低減した量の存在下で正常な活性を維持するように、十分に改善され得る。
これらの方法および組成物のいずれかでは、寛容は、典型的には持続性であり、これは、寛容が、約1カ月間、約2カ月間、約3カ月間、約4カ月間、約5カ月間もしくは約6カ月間またはそれ超の持続時間を有することを意味する。寛容は、選択的なB細胞アネルギーもしくはT細胞アネルギーまたは両方を生じ得る。
これらの方法、処置および治療用組成物のいずれかでは、用語「ヒスチジルtRNAシンテターゼに対して特異的な自己抗体と関連する疾患」とは、他の自己抗体もまた検出されるかどうか、または疾患の進行もしくは原因において役割を果たすと考えられるかどうかにかかわらず、ヒスチジルtRNAシンテターゼに対する抗体が検出されるかまたは検出可能である、任意の疾患または障害を指す。患者試料中の抗体を検出するための方法は、例えば、RIAによって、ELISA、免疫沈降によって、組織もしくは細胞(トランスフェクトした細胞を含む)の染色によって、抗原マイクロアレイ、質量分析、特異的中和アッセイ、または所望の抗原特異性を同定するための当該分野で公知のいくつかの他の方法のうちの1つを含む、任意の標準的な手順によって実施され得る。一部の態様では、抗体特異性は、ヒスチジルtRNAシンテターゼの異なるスプライスバリアントおよび短縮型またはタンパク質分解形態に選択的に結合する抗体の能力を決定することによって、さらに特徴付けられ得る。ヒスチジルtRNAシンテターゼに対する比較的周知のヒト自己抗体には、例えば、Jo−1に対する抗体が含まれる。
特許請求された方法および組成物のいずれかの一部の実施形態では、このHRSポリペプチドまたはHRS−Fcコンジュゲートは、ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する疾患関連自己抗体と特異的に交差反応する、ヒスチジルtRNAシンテターゼ由来のエピトープを含む。特許請求された方法および組成物のいずれかの一部の実施形態では、このHRSポリペプチドまたはHRS−Fcコンジュゲートは、ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する疾患関連自己反応性T細胞と特異的に交差反応する、ヒスチジルtRNAシンテターゼ由来のエピトープを含む。特許請求された方法および組成物のいずれかの一部の実施形態では、このHRSポリペプチドまたはHRS−Fcコンジュゲートは、いずれかの別のtRNAシンテターゼに対する疾患関連自己抗体または非tRNAシンテターゼ自己抗体と特異的に交差反応するエピトープを含む。
特許請求された方法のいずれかの一部の実施形態では、このHRSポリペプチドまたはHRS−Fcコンジュゲートは、ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する自己抗体と関連する疾患を有する患者の血清由来の抗体の大部分によって特異的に認識される免疫優性エピトープを含む。特許請求された方法のいずれかの一部の実施形態では、このHRSポリペプチドまたはHRS−Fcコンジュゲートは、ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する自己抗体と関連する疾患を有する患者の血清由来の自己反応性T細胞の大部分によって特異的に認識される免疫優性エピトープを含む。
一部の実施形態では、このエピトープは、HRSポリペプチドのWHEPドメイン(配列番号1のおよそアミノ酸1〜43);アミノアシル化ドメイン(配列番号1のおよそアミノ酸54〜398);もしくはアンチコドン結合ドメイン(配列番号1のおよそアミノ酸406〜501)またはそれらの任意の組合せ内に含まれる。
一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する疾患関連自己抗体と特異的に交差反応するエピトープを含まない。一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、最大で約1×10−7Mの濃度まで、競合的ELISAにおいて、ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する疾患関連自己抗体の結合について顕著には競合しない。一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、最大で約5×10−7Mの濃度まで、競合的ELISAにおいて、ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する疾患関連自己抗体の結合について顕著には競合しない。一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、最大で約1×10−6Mの濃度まで、競合的ELISAにおいて、ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する疾患関連自己抗体の結合について顕著には競合しない。
従って、一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、競合的ELISAで測定されるとおり、野生型ヒスチジル−tRNAシンテターゼ(配列番号1)よりも、疾患関連自己抗体に対する低い親和性を有する。一部の実施形態では、このHRSポリペプチドは、野生型ヒト(配列番号1)に対する疾患関連自己抗体の親和性よりも、少なくとも約10倍少ない、または少なくとも約20倍少ない、または少なくとも約50倍少ない、または少なくとも約100倍少ない、疾患関連自己抗体に対する見かけの親和性を有する。一態様では、ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対する自己抗体は、Jo−1抗原に対する抗体である。
ヒスチジル−tRNAシンテターゼに対して特異的な自己抗体と関連する疾患(ならびにヒスチジル−tRNAシンテターゼの不十分と関連する疾患)の例には、特発性炎症性ミオパチー、多発性筋炎、スタチン誘導性ミオパチー、皮膚筋炎、間質性肺疾患(および他の肺線維性状態)および関連障害、例えば多発性筋炎−強皮症重複および封入体筋炎(IBM)ならびに例えば、間質性肺疾患、関節炎、食道蠕動低下、心血管疾患および他の血管所見、例えばレイノー現象を含む、抗シンテターゼ症候群において見出される状態などの状態を含む、自己免疫性疾患、炎症性疾患および炎症性ミオパチーが含まれるがこれらに限定されない;ヒスチジル−tRNAシンテターゼの不十分と関連する疾患の他の例には、アッシャー症候群およびペロー症候群を含む、活性なヒスチジル−tRNAシンテターゼの不十分を生じる遺伝子障害が含まれる。
多発性筋炎は、身体の両方の側の骨格筋(動くことに関与する)に罹患する。多発性筋炎は、18歳未満の人においては稀にしか見られない;ほとんどの症例は、31歳と60歳との間の人においてである。上に列挙した症状に加えて、進行性の筋脱力は、嚥下、発話、座位からの立ち上がり、階段上り、物の持ち上げまたは腕上げの困難をもたらす。多発性筋炎を有する人は、関節炎、息切れおよび心不整脈もまた経験し得る。多発性筋炎は、HisRSを含むシンテターゼに対する抗体と関連する場合が多く、損傷筋肉細胞中への免疫細胞浸潤を生じる。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、免疫細胞の活性化および浸潤を低減させ、多発性筋炎を処置するために、使用され得る。
皮膚筋炎は、進行性の筋脱力に先行するまたは進行性の筋脱力に付随する皮膚発疹を特徴とする。この発疹は、パッチ状に見え、紫色および赤色の変色を有し、瞼上で、ならびに指関節、肘関節、膝関節およびつま先を含む関節を伸ばすまたはまっすぐにするために使用される筋肉上で、特徴的に発生する。赤色の発疹は、顔、首、肩、胸郭上部、背中および他の位置上でも発生し得、罹患領域において腫脹が存在し得る。発疹は時折、明白な筋肉の関与なしに生じる。皮膚筋炎を有する成人は、体重減少または低グレードの発熱を経験し得、炎症を起こした肺を有し得、光に対して敏感であり得る。成人皮膚筋炎は、多発性筋炎とは異なり、乳房、肺、雌性生殖器または腸の腫瘍を伴い得る。皮膚筋炎を有する小児および成人は、皮膚の下または筋肉中の固い隆起として現れるカルシウム沈着(石灰沈着症と呼ばれる)を発生させ得る。石灰沈着症は、疾患発症の1〜3年後に生じる場合が最も多いが、何年も経過してから生じる場合もある。これらの沈着は、成人において始まる皮膚筋炎においてよりも、小児期皮膚筋炎においてより頻繁に見られる。皮膚筋炎は、コラーゲン−血管疾患または自己免疫性疾患と関連し得る。
多発性筋炎および皮膚筋炎の一部の場合には、遠位筋肉(体幹部から離れている、例えば、前腕中ならびに足首および手首の周囲の筋肉)が、疾患が進行するにつれて罹患し得る。多発性筋炎および皮膚筋炎は、損傷筋肉細胞中への免疫細胞浸潤を生じるコラーゲン−血管疾患または自己免疫性疾患と関連し得る。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、免疫細胞の活性化および浸潤を低減させ、皮膚筋炎を処置するために、使用され得る。
封入体筋炎(IBM)は、進行性の筋脱力および筋消耗を特徴とする。筋脱力の発症は、一般に漸進的であり(数カ月間または数年間にわたる)、近位筋肉および遠位筋肉の両方に罹患する。筋脱力は、身体の一方の側のみに罹患し得る。空砲と呼ばれる小さい穴が、罹患した筋線維の細胞において時折見られる。転倒および躓きは、通常、IBMの最初の目立った症状である。一部の個体について、この障害は、物をつまむこと、ボタンかけおよび物を握ることの困難を引き起こす、手首および手指における脱力で始まる。手首および手指筋肉の脱力ならびに前腕筋肉および脚の大腿四頭筋の萎縮症(筋肉容積の菲薄化または喪失)が存在し得る。嚥下困難は、IBM症例のおよそ半分において生じる。この疾患の症状は、通常、50歳後に始まるが、この疾患はより早期に生じ得る。多発性筋炎および皮膚筋炎とは異なり、IBMは、女性においてよりも男性においてより頻繁に生じる。他の筋ジストロフィーと同様、IBMもまた、損傷筋肉細胞中への進行性の免疫細胞浸潤を生じる。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、免疫細胞の活性化および浸潤を低減させ、IBMを処置するために、使用され得る。
若年性筋炎は、成人皮膚筋炎および多発性筋炎に対していくらかの類似性を有する。若年性筋炎は、2歳〜15歳の小児に典型的に罹患し、その症状は、近位筋肉の脱力および炎症、浮腫(腫脹を引き起こす、身体組織内の流体の異常な収集)、筋肉疼痛、疲労、皮膚発疹、腹部疼痛、発熱ならびに拘縮(関節が自由に動くことを妨げる、筋肉腱における炎症によって引き起こされる、関節周囲の筋肉または腱の慢性短縮)を含む。若年性筋炎を有する小児は、嚥下困難および呼吸困難もまた有し得、心臓が罹患し得る。若年性皮膚筋炎を有する小児のうちのおよそ20〜30パーセントは、石灰沈着症を発生させる。罹患した小児は、その血液中に正常レベルよりも高い筋肉酵素クレアチンキナーゼを示さない可能性があるが、正常レベルよりも高い他の筋肉酵素を有する。若年性筋炎は、損傷筋肉細胞中への進行性の免疫細胞浸潤もまた生じる。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、免疫細胞の活性化および浸潤を低減させ、若年性筋炎を処置するために、使用され得る。
スタチン誘導性ミオパチーは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素Aレダクターゼ(HMGCR)の阻害を介して作用するスタチンの長期使用と関連する。一般に十分には耐容されるが、これらの薬物療法は、筋毒性の誘導剤として記載されてきた。より最近、スタチンミオパチーが薬物休止後であっても持続する患者の報告が存在しており、これは、自己免疫性の原因を有すると仮説が立てられている。スタチンの利益は、冠動脈心疾患および冠状動脈アテローム性硬化症の進行の危険性を低減させることにおいて、議論の余地がない。それにもかかわらず、関連する合併症は、生命を危うくし得る。米国における3800万人よりも多くが、現在スタチンを摂取していると推定され、これらのうち最大7%(>260万)が筋肉症状を発生させると予測され、これらのうち最大0.5%(>190,000)が、生命を危うくするミオパチーを発生させるように潜在的に進行する。
全てのスタチンは、筋肉の問題を引き起こし得、その危険性は、その親油性、コレステロール低下能力および投薬量における増加と共に増加する。セリバスタチンは、特に、より高い危険性を有すると暗示されており、米国の市場から引き上げられている。残りのスタチンのうち、アトルバスタチンおよびシンバスタチンは、より高い筋毒性率を有する。他の非スタチン脂質低下剤、例えばナイアシンおよびフィブレートもまた、特にスタチンと組み合わせた場合、筋肉の問題の危険性を有する。どの患者がスタチン誘導性の筋肉の問題を有するかを予測することは不可能であるが、以前の筋肉の問題は、危険因子であり得、スタチン処置を開始する場合に考慮すべきである。ミオパチーの家族歴は、患者が遺伝的ミオパチーのキャリアであり得るかどうかに関連するが、それは、これがスタチン処置の追加されたストレスによってマスクされない可能性があるからである。他の危険因子には、80歳を超える年齢、低体重、雌性の性別、甲状腺機能低下症、特定の遺伝的欠損およびアジア系の家系、ならびにカルシウムチャネルブロッカー、マクロライド系抗生物質、オメプラゾール、アミオダロン、アゾール系抗真菌剤、ヒスタミンH2受容体アンタゴニスト、ネファゾドン、シクロスポリン、HIVプロテアーゼ阻害剤、ワルファリンおよびグレープフルーツジュースを含む特定の薬物療法の随伴する使用が含まれ得る。
スタチンによって引き起こされる最も一般的な筋肉症状は、筋肉疼痛または筋肉痛であり、スタチン使用者の約7%において生じる。筋肉痛は、軽度から重度までのどこかであり得、筋肉の活動によって悪化する場合が多い。例えば、高コレステロール血症および最近の心筋梗塞を有する患者において、その症状が耐容可能であり、強いスタチン処置のための適応症である場合、継続されたスタチン処置が適切であり得る。
ベースラインクレアチンキナーゼ(CK)レベルは、スタチン処置を指導する機関によって、スタチン処置の開始前に一律に推奨されるわけではないが、CKレベルは、筋肉症状が後に発生するかどうかの非常に有用な情報を提供し得る。筋脱力もまた生じ得、これは、質の面で疲労性である場合が多く、疼痛および上昇したCKと組み合わされる。ほとんどのミオパチーと同様に、脱力は、近位において最も顕著である。横紋筋融解の稀なエピソードもまた、スタチン治療で生じている;これらは、はるかに低頻度であるが、おそらくは致死的であり得る。スタチンミオパチーに最も典型的な、筋肉組織学で見られ得る変化は、チトクロムオキシダーゼ陰性線維、増加した脂質含量および赤色ぼろ線維である。自己免疫性壊死性ミオパチーは、スタチンミオパチーの稀な形態である。これらの患者では、スタチン薬物の中断は、数カ月間の薬物の中断の後でさえも、回復につながることがない。患者は、優勢に近位の、しばしば無痛性の脱力を有する。
診断は、個体の診療歴、身体検査および筋肉強度の試験の結果、ならびに上昇したレベルの種々の筋肉酵素および自己抗体を示す血液試料に基づく。診断ツールには、収縮の間および安静時に筋肉を制御する電気的活動を記録するための筋電図検査、筋肉炎症を探すための超音波、ならびに異常な筋肉を明らかにし、筋肉疾患を評価するための核磁気共鳴画像化が含まれる。筋肉生検は、慢性炎症の徴候、筋線維の死、血管変形、またはIBMの診断に特異的な変化について、顕微鏡によって試験され得る。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、免疫細胞の活性化および損傷筋肉中への浸潤を低減させ、スタチン誘導性ミオパチーおよび横紋筋融解を処置するために、使用され得る。
間質性肺疾患(ILD)は、肺の瘢痕(即ち、「線維症」)および/または炎症を特徴とする130よりも多い障害を含む、肺疾患の広いカテゴリーである。ILDは、呼吸器科医によって診察された症例の15パーセントを占める。間質性肺疾患(ILD)は、他の疾患から環境因子までの範囲の種々の供給源から発生し得る。ILDの公知の原因のいくつかには、以下が含まれる:例えば、強皮症/進行性の全身性硬化症、ループス(全身性エリテマトーデス)、関節リウマチおよび多発性筋炎/皮膚筋炎を含む、結合組織疾患または自己免疫性疾患;ならびに例えば、粉塵および特定のガス、毒物、化学療法ならびに放射線療法への曝露を含む、職業性曝露および環境曝露。
ILDでは、肺中の組織は、炎症および/または瘢痕化する。肺の間質は、酸素と二酸化炭素との交換が起こる小血管および肺胞(空気嚢)の中ならびにそれらの周囲の領域を含む。間質の炎症および瘢痕は、この組織を破壊し、肺が空気から酸素を抽出する能力における減少をもたらす。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、免疫細胞の活性化および損傷肺中への浸潤を低減させ、ILDを処置するために、使用され得る。
ILDの進行は、疾患によって異なり、人によって異なる。間質性肺疾患は、肺における酸素および二酸化炭素の移行を破壊するので、その症状は典型的に、呼吸に関する問題として顕在化する。ILDの2つの最も一般的な症状は、運動による息切れおよび非湿性咳である。
アッシャー症候群は、聴覚および視覚の両方に罹患する最も一般的な状態である。アッシャー症候群の主要な症状は、難聴および網膜色素変性症(RP)である。RPは、網膜の進行性の変性を介して、夜盲症および末梢視覚(側視(side vision))の喪失を引き起こす。RPが進行するにつれて、視野は、中心視野のみが残るまでに狭まる。アッシャー症候群を有する多くの人は、重度の平衡問題もまた有する。全ての難聴小児のおよそ3〜6パーセントおよび聴覚障害を有する小児の別の3〜6パーセントが、アッシャー症候群を有する。米国などの先進国では、100,000人の出生当たり約4人の赤ん坊が、アッシャー症候群を有する。アッシャー症候群は、常染色体劣性形質として遺伝する。ヒスチジルt−RNAシンテターゼを含むいくつかの遺伝子座が、アッシャー症候群と関連付けられてきた(Puffenbergerら、(2012年)PLoS ONE 7巻(1号)e28936頁 doi:10.1371/journal.pone.0028936)。
アッシャー症候群には、3つの臨床的な型が存在する:1型、2型および3型。米国では、1型および2型が、最も一般的な型である。合わせると、これらは、アッシャー症候群を有する小児の全ての症例のうちのおよそ90〜95パーセントを占める。
1型アッシャー症候群を有する小児は、誕生時から深刻に難聴であり、重度の平衡問題を有する。1型アッシャー症候群と関連する平衡問題に起因して、この障害を有する小児は、サポートなしに座るのに手間取り、典型的には、年齢18カ月になる前に独立して歩くことはない。これらの小児は通常、大抵は10歳に達する時までに、初期小児期において視覚の問題を発生させ始める。視覚の問題は、夜間の視覚困難で始まる場合が最も多いが、その人が完全に盲目になるまで、迅速に進行する傾向がある。
2型アッシャー症候群を有する小児は、中程度から重度の難聴および正常な平衡を伴って誕生する。難聴の重症度は変動するが、これらの小児のほとんどは、補聴器から利益を受け得、口頭でコミュニケートできる。2型アッシャー症候群における視覚の問題は、1型における視覚の問題よりも緩徐に進行する傾向があり、RPの発症は、10代まで明らかでない場合が多い。
3型アッシャー症候群を有する小児は、誕生時に正常な聴覚を有する。この障害を有するほとんどの小児は、正常からほぼ正常な平衡を有するが、一部は後に平衡問題を発生させ得る。聴覚および視力は時間と共に悪化するが、それらが減退する速度は、同じ家族内であっても、人によって変動し得る。3型アッシャー症候群を有する人は、10代までに難聴を発生させ得、彼らは、通常、中期成人期から後期成人期までに、補聴器を必要とする。夜盲症は通常、思春期の間のあるときに始まる。盲点が、10代後期から初期成人期までに現れ、中期成人期までに、その人は通常、法律的に盲目になる。
ペロー症候群(PS)は、感音性聴覚障害を有する雌性における卵巣発育異常、ならびに一部の被験体においては、進行性の小脳性運動失調症および知的障害を含む神経学的異常の関連を特徴とする。ペロー症候群の正確な有病率は未知であり、特に、性腺機能低下症が特徴ではなく、症状が検出されないままである雄性において、おそらくは過小診断される。診断時の平均年齢は、感音性難聴を有する雌性における思春期遅発症の提示後の、22歳である。聴覚欠損が、報告された症例の1つを除いて注目された(診断時の平均年齢8歳)。難聴は、常に感音性であり両側性であるが、同じ家族由来の罹患患者においてさえも、重症度は変動する(軽度から重度まで)。卵巣発育異常は、全ての雌性の症例において報告されているが、生殖腺欠損は雄性においては検出されない。無月経症は一般に原発性であるが、二次的無月経症もまた報告されている。遅延した成長(3パーセンタイルを下回る身長)が、報告された症例の半分において報告された。神経学的異常の正確な頻度は未知であるが、神経学的異常を欠く9人の雌性および2人の雄性(16〜37歳)が報告されている。神経学的徴候は進行性であり、一般に、高齢期になってから現れるが、歩行の遅延または初期の頻繁な転倒が、若いPS患者において注目されている。一般的な神経学的徴候は、運動失調、統合運動障害、限定的な外眼運動および多発ニューロパチーである。脊柱側弯症を有する一部の症例もまた報告されている。PSの伝播は、常染色体劣性であり、ミトコンドリアヒスチジルtRNAシンテターゼにおける変異は、ペロー症候群と関連する卵巣発育異常および感音性難聴を引き起こすことが、最近同定されている(Pierceら、PNAS USA.108巻(16号)6543〜6548頁、2011年)。
筋ジストロフィーとは、強度および筋肉容積が漸進的に減退する遺伝性障害の一群を指す。全ての筋ジストロフィーは、1つまたは複数の筋肉特異的遺伝子における原発性の遺伝的欠損によって駆動される筋脱力を特徴とする。さらに、筋ジストロフィーは、典型的には、筋肉炎症を駆動し、筋肉組織の変性を最終的に増強する、可変性の炎症性構成要素を有する。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、免疫細胞の活性化および損傷筋肉中への浸潤を低減させ、筋ジストロフィーを処置するために、使用され得る。少なくとも9つの型の筋ジストロフィーが、一般に認識されている。一部の態様では、この筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、エメリ・ドレフュス型筋ジストロフィー、肢帯筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー、眼咽頭筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィーおよび先天性筋ジストロフィーから選択される。
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD):DMDは、若い少年に罹患し、進行性の筋脱力を引き起こし、通常は脚において始まる。これは、最も重度の形態の筋ジストロフィーである。DMDは、3,500人の雄性の出生のうちの約1人において生じ、米国において、およそ8,000人の少年および若い男性に罹患している。より軽度の形態が、非常に少数の雌性キャリアにおいて生じる。
DMDは、機能的タンパク質の産生を防止するジストロフィン関連糖タンパク質複合体(DGC)内で機能する筋細胞膜下タンパク質ジストロフィンをコードする遺伝子中の変異によって引き起こされる。ジストロフィンの量は、疾患の重症度と相関する(即ち、存在するジストロフィンが少ないほど、表現型はより重度になる)。このDGC複合体は、細胞内細胞骨格を細胞外マトリックスに接続する。DGCは、サルコメアのZ線において濃縮し、筋線維に及ぶ力の伝達を付与する。この連結の破壊は、筋細胞膜破裂を最終的にもたらす膜不安定性を生じる。細胞外カルシウムの流入は、筋肉収縮などの分子プロセスを変更し、タンパク質分解活性を活性化する。罹患した筋線維は、壊死性またはアポトーシス性になり、分裂促進的化学誘引物質を放出し、これが炎症性プロセスを開始させる。変性および再生のサイクルは、不可逆的な筋消耗、ならびに線維性組織および脂肪性組織による置き換えを最終的にもたらす。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する少年は、通常、未就学児のときに症状を示し始める。脚が最初に罹患し、歩行を困難にし、平衡問題を引き起こす。ほとんどの患者は、予測よりも3〜6カ月後に歩行し、走行困難を有する。拘縮(恒久的な筋肉の緊張)は通常、腓腹筋肉において最も重度に、5歳または6歳までに始まる。頻繁な転倒および骨折がこの年齢で始まるのが一般的である。階段上りおよび助けなしの立ち上がりは、9歳または10歳までに不可能になり得、ほとんどの少年は、12歳までに可動性のために車椅子を使用する。この年齢辺りの体幹筋肉の衰弱は、脊柱側弯症(左右の脊椎湾曲)および脊柱後弯症(前から後ろへの湾曲)をもたらす場合が多い。
DMDの最も重篤な脱力のうちの1つは、呼吸および咳嗽の主な機能を実施する腹部の上部にある筋肉のシート、横隔膜の脱力である。横隔膜の脱力は、低減したエネルギーおよびスタミナ、ならびに効率的に咳嗽できないことに起因する増加した肺感染をもたらす。DMDを有する若い男性は、20代およびそれ超まで生存できるが、ただし、彼らは、機械的人工呼吸の補助および良好な呼吸器衛生を有する。
一部の実施形態では、DMDを有する被験体は、例えば、筋肉生検によって測定される、以下のうちの1つまたは複数を特徴とする:下肢筋肉の障害を反映する陽性のガワーズ徴候(Gower’s sign);血液中の高レベルのクレアチンキナーゼ(CPK−MM);Xp21遺伝子における遺伝的エラー;またはジストロフィンの非存在の低減したレベル。
HRS−Fcコンジュゲートは、単独で、または他の治療、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、Eteplirsenなどのエクソンスキッピング治療)、コルチコステロイド、ベータ2−アゴニスト、理学療法、呼吸支援、幹細胞治療および遺伝子置換療法と組み合わせてのいずれかで、DMDの処置において使用され得る。一部の実施形態では、HRS−Fcコンジュゲートの投与は、6分間歩行試験における統計的に有意な改善をもたらす。
ベッカー型筋ジストロフィー(BMD):BMDは、年上の少年および若い男性に罹患し、DMDよりも軽度の過程に従う。BMDは、30,000人の雄性の出生のうち約1人において生じる。ベッカー型筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの重症度の低いバリアントであり、短縮型ではあるが部分的に機能的な形態のジストロフィンの産生によって引き起こされる。
BMDの症状は、通常、後期小児期から初期成人期にかけて現れる。症状の進行は、DMDの進行と並行であり得るが、これらの症状は、通常はより軽度であり、その過程はより可変性である。脊柱側弯症が生じ得るが、通常はより軽度であり、より緩徐に進行する。心筋疾患(心筋症)は、BMDにおいてより一般的に生じる。問題は、不規則な心拍(不整脈)およびうっ血性心不全を含み得る。症状は、疲労、息切れ、胸部疼痛およびめまいを含み得る。呼吸器脱力もまた生じ、機械的人工呼吸の必要性をもたらし得る。HRS−Fcコンジュゲートは、単独で、または他の治療と組み合わせてのいずれかで、BMDの処置において使用され得る。
エメリ・ドレフュス型筋ジストロフィー(EDMD):EDMDは、若い少年に罹患し、腓腹における拘縮および脱力、肩および上腕における脱力、ならびに電気インパルスが心臓を伝わって心臓を拍動させる経路における問題(心臓伝導欠損)を引き起こす。遺伝のパターンによって識別可能な、エメリ・ドレフュス型筋ジストロフィーの3つのサブタイプが存在する:X連鎖、常染色体優性および常染色体劣性。X連鎖形態が最も一般的である。各型は、有病率および症状が異なる。この疾患は、LMNA遺伝子における変異によって、またはより一般的にはEMD遺伝子における変異によって、引き起こされる。両方の遺伝子が、核膜のタンパク質構成要素をコードする。
EDMDは通常、筋脱力に先行する拘縮をしばしば伴って、初期小児期に始まる。脱力は、腓腹筋肉と共に、元々は肩および上腕に罹患し、下垂足をもたらす。EDMDを有するほとんどの男性は、中年になるまで生き延びるが、心調律における欠損(心ブロック)は、ペースメーカーで処置しない場合には、致死的であり得る。HRS−Fcコンジュゲートは、単独で、または他の治療と組み合わせてのいずれかで、EDMDの処置において使用され得る。
肢帯筋ジストロフィー(LGMD):LGMDは、後期小児期から初期成人期にかけて始まり、男性および女性の両方に罹患して、臀部および肩の周囲の筋肉における脱力を引き起こす。これは、筋ジストロフィーの中で最も可変性であり、いくつかの異なる型の疾患が現在認識されている。LGMDが疑われる多くの人は、おそらくは過去に誤診されており、従って、この疾患の有病率を推定するのは困難である。米国における罹患した人の数は、数千人であり得る。
種々の型のLGMDを引き起こす少なくとも半ダースの遺伝子が存在するが、LGMDの2つの主要な臨床形態が通常は認識される。重度小児期形態は、外見がDMDと類似しているが、常染色体劣性形質として遺伝する。
肢帯筋ジストロフィー2B型(LGMD2B)は、ジスフェリン遺伝子中の機能喪失型変異によって引き起こされる。ジスフェリンは、骨格筋および心筋において主に発現されるが、単球、マクロファージおよび他の組織においても発現され、ここで、ジスフェリンは細胞質小胞および細胞膜に局在化する。ジスフェリンは、膜融合および膜輸送、ならびに修復プロセスに関与するようである。LGMD2Bは、進行性の対称的筋脱力、および顕著に悪性の免疫性/炎症性病理を特徴とする、遅発性(10代/若い成人)の筋肉疾患である。筋肉生検は、典型的には、筋線維の変性/再生と一緒に、マクロファージ/マクロファージ活性化マーカー(HLA−DR、HLA−ABC、CD86)、CD8+細胞傷害性T細胞およびCD4+T細胞から主になる、顕著な炎症性細胞浸潤を示す。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、免疫細胞の活性化および損傷筋肉中への浸潤を低減させ、肢帯筋ジストロフィーを処置するために、使用され得る。
成人発症型LGMDの症状は、通常、人の10代または20代において現れ、体幹に最も近い筋肉の進行性の脱力および消耗を特徴とする。拘縮が生じ得、歩行する能力は、通常、発症の約20年後に喪失する。LGMDを有する一部の人は、人工呼吸器の使用を必要とする呼吸器脱力を発生させる。寿命はいくらか短縮され得る(常染色体優性形態は、通常、高齢期に発生し、比較的緩徐に進行する)。
顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSH):FSHは、ランドゥジー・デジュリン病(Landouzy−Dejerine disease)としても公知であり、後期小児期から初期成人期にかけて始まり、男性および女性の両方に罹患し、顔、肩および上腕の筋肉における脱力を引き起こす。臀部および脚もまた罹患し得る。FSHは、20,000人に約1人において生じ、米国においておよそ13,000人の人に罹患している。
FSHは、同じ家族のメンバーの中であっても、その重症度および発症の年齢が異なる。症状は、10代または20代初期において最も一般には始まるが、乳児または小児期の発症があり得る。症状は、より初期の発症を有する人において、より重度である傾向がある。この疾患は、この疾患によって最もひどく罹患される身体の領域:顔面(facio−)、肩(scapulo−)および上腕(humeral)の筋肉にちなんで命名されている。臀部および脚が、同様に罹患され得る。FSHを有する小児は、部分的または完全な難聴を発生させる場合が多い。
2つの欠損がFSHDに必要とされ、第1は、D4Z4リピートの欠失であり、第2は、DUX4遺伝子の「毒性機能獲得型」である。注目される最初の症状は、肩より上に物を持ち上げることの困難である場合が多い。脱力は、他方の側よりも一方の側においてより大きい可能性がある。肩脱力はまた、肩甲骨を後方に突出させ、これは、スカプラリオ翼(scapular winging)と呼ばれる。FSHDは、特定の筋肉群における炎症性浸潤と関連し、従って、HRS−Fcコンジュゲートは、免疫細胞の活性化および損傷筋肉中への浸潤を低減させ、FSHDを処置するために使用され得る。
筋緊張性ジストロフィー:筋緊張性ジストロフィーは、スタイナート病(Steinert’s disease)としても公知であり、男性および女性の両方に罹患し、顔、足および手において最初に見られる全般性の脱力を引き起こす。これには、罹患した筋肉を弛緩させることができないこと(筋強直)が伴う。症状は、誕生時から成人期を通じて始まり得る。筋強直性筋ジストロフィー1型(DM1)は、筋ジストロフィーの最も一般的な形態であり、米国において30,000人よりも多い人に罹患している。これは、DMPK(筋緊張性ジストロフィータンパク質キナーゼ)遺伝子のDNA配列中の短い(CTG)リピートの増加から生じる。筋強直性筋ジストロフィー2型(DM2)は、かなり稀であり、ZNF9(ジンクフィンガータンパク質9)遺伝子中のCCTGリピートの増加の結果である。
筋緊張性ジストロフィーの症状には、顔面脱力およびポカーンと開いた口(slack
jaw)、眼瞼下垂(下垂症)、ならびに前腕および腓腹における筋消耗が含まれる。このジストロフィーを有する人は、特に物体が冷たい場合、握りを弛緩させることに困難を有する。筋緊張性ジストロフィーは、心筋に罹患し、不整脈および心ブロック、ならびに消化器系の筋肉を引き起こし、運動障害および便秘症をもたらす。他の身体系が同様に罹患する:筋緊張性ジストロフィーは、白内障、網膜変性、低IQ、前頭部脱毛、皮膚障害、精巣萎縮症、睡眠時無呼吸およびインスリン抵抗性を引き起こし得る。睡眠に対する増加した必要性または熱望は、減少した意欲と同様、一般的である。重度能力障害は、発症の20年以内にこの型のジストロフィーを有するほとんどの人に罹患するが、ほとんどが、高齢期においても車椅子を必要としない。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、例えば、他の組織の中で、骨格筋(例えば、大腿四頭筋)および/または心臓組織を含む筋肉組織と関連する炎症を低減させることによって、筋緊張性ジストロフィーを処置するために使用され得る。
眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD):OPMDは、両方の性別の成人に罹患し、眼の筋肉および咽頭における脱力を生じる。これは、Quebecのフランス系カナダ人の家族の間、および米国南西部のスペイン系アメリカ人の家族において最も一般的である。
OPMDは通常、人の30代または40代において始まり、眼および咽頭を制御する筋肉における脱力を伴う。症状には、眼瞼下垂、嚥下困難(嚥下障害)、ならびに顔、首および時折は上肢の他の筋肉への脱力の進行、が含まれる。嚥下困難は、気道中への食品または唾液の誤嚥または導入を引き起こし得る。肺炎が後に続き得る。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、例えば、筋肉組織と関連する炎症を低減させることによって、OPMDを処置するために使用され得る。
遠位型筋ジストロフィー(DD):DDは、中年またはそれ以降で始まり、足および手の筋肉における脱力を引き起こす。これは、スウェーデンにおいて最も一般的であり、世界の他の場所では稀である。DDは通常、20代または30代に始まり、手、前腕および下腿における脱力を伴う。タイピングまたはボタン留めなどの細かい動きの困難が、最初の症状であり得る。症状は緩徐に進行し、この疾患は通常、寿命には影響しない。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、筋肉組織炎症と関連する炎症を低減させることによって、DDを処置するために使用され得る。
先天性筋ジストロフィー(CMD):CMDは、誕生時から存在し、全般性の脱力を生じ、通常は緩徐に進行する。福山型CMDと呼ばれるサブタイプは、精神遅滞にも関与する。両方とも稀である;福山型CMDは、日本においてより一般的である。
CMDは、誕生時からの重度の筋脱力を特徴とし、乳児は、「筋緊張低下(floppiness)」および非常に少ない随意運動を示す。それにもかかわらず、CMDを有する小児は、ある種の補助器具ありまたはなしのいずれかで、歩行を習得し得、若い成人期またはそれ超まで生存する。対照的に、福山型CMDを有する小児は、歩行がほとんどできず、重度の精神遅滞を有する。この型のCMDを有するほとんどの小児は、小児期に死亡する。従って、他の筋ジストロフィーと同様、HRS−Fcコンジュゲートは、例えば、筋肉組織炎症と関連する炎症を低減させることによって、CMDを処置するために使用され得る。
悪液質:悪液質(または消耗症候群)は、典型的に、減量を積極的に試みていない人における体重減少、筋肉萎縮症、疲労、脱力および顕著な食欲低下を特徴とする。悪液質の公式の定義は、栄養的に逆転できない体重減少である。罹患した患者がより多くのカロリーを消費する場合であっても、除脂肪体重が喪失され、原発性病理の存在を示す。
悪液質は、他の疾患のうちで、がん、AIDS、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイド多発ニューロパチー、水銀中毒(肢端疼痛症)およびホルモン欠損症を有する患者によって経験される。
悪液質は、がん、代謝性アシドーシス(即ち、減少したタンパク質合成および増加したタンパク質異化反応)、特定の感染性疾患(例えば、結核、AIDS)、慢性膵炎、自己免疫性障害、またはアンフェタミンに対する耽溺を含む、種々の基礎障害の徴候でもあり得る。悪液質は、肉体的に、食欲低下、無力症および貧血が原因で起こる不動の状態まで患者を衰弱させ、標準的な処置に対する応答は、通常は乏しい。
全てのがん患者の約50%が、悪液質に罹患している。上部胃腸および膵臓のがんを有する患者は、悪液質性症状を発生させる頻度が最も高い。罹患率および死亡率を増加させ、化学療法の副作用を悪化させ、生活の質を低減させることに加えて、悪液質は、患者の22%〜40%の範囲の大きい割合のがん患者の死亡の直接の原因とみなされている。がん悪液質の症状には、進行性の体重減少ならびに脂肪性組織および骨格筋の宿主の予備の枯渇が含まれる。伝統的な処置アプローチには、食欲刺激剤、5−HT3アンタゴニスト、栄養素補給およびCOX−2阻害剤の使用が含まれる。
悪液質の病理発生はあまり理解されていないが、炎症促進性サイトカイン、例えばTNF−α、神経内分泌ホルモン、IGF−1、および腫瘍特異的因子、例えばタンパク質分解誘導因子を含む、複数の生物学的経路が関与すると予測されている。
従って、HRS−Fcコンジュゲートは、悪液質およびその関連の、基礎にあるまたは二次的な障害または合併症のいずれかを処置するために使用され得る。HRS−Fcコンジュゲートは、単独で、またはの中でとりわけ、他の治療、例えば、高タンパク質、ロイシンおよび魚油の組合せによる食品栄養補給、抗酸化薬、プロゲストーゲン(酢酸メゲストロール、酢酸メドロキシプロゲステロン)、ならびに抗シクロオキシゲナーゼ−2薬物、食欲刺激剤、および5−HT3アンタゴニストと組み合わせて、使用され得る。
横紋筋融解:横紋筋融解は、骨格筋組織中の筋線維の分解である。分解産物は、血流中に放出され、これらの産物のうちの特定の一部、例えばミオグロビンは、腎臓にとって有害であり、腎臓不全をもたらし得る。
症状には、筋肉疼痛、嘔吐、錯乱、昏睡、または異常な心拍および心調律が含まれ、それらの重症度は、通常、筋肉損傷の程度および腎臓不全が発生するかどうかに依存する。腎臓への損傷は、通常は初回の筋肉損傷の約12〜24時間後に、減少したまたは非存在の尿生成を引き起こし得る。損傷筋肉の腫脹は、同じ筋膜コンパートメントにおいて、コンパートメント症候群、または神経および血管などの周辺組織の圧迫を引き起こし得、血液喪失および罹患身体部分への損傷(例えば、機能喪失型)をもたらし得る。この合併症の症状には、罹患した四肢における疼痛または低減した感覚が含まれる。他の合併症には、播種性血管内凝固(DIC)、制御できない出血をもたらし得る、血液凝固における重度の破壊が含まれる。
初回の筋肉損傷は、例えば、肉体的要因(例えば、挫滅傷、激しい運動)、変更された血液供給(例えば、動脈血栓症、塞栓症)、変更された代謝(例えば、高血糖性高浸透圧性状態、高ナトリウム血症および低ナトリウム血症、低カリウム血症、低カルシウム血症、低リン血症、ケトアシドーシス、甲状腺機能低下症)、変更された体温(高体温、低体温)、薬物療法および毒素(例えば、スタチン、抗精神病薬物療法、神経筋遮断剤、利尿薬、重金属、ヘムロック、昆虫またはヘビ毒)、薬物乱用(例えば、アルコール、アンフェタミン、コカイン、ヘロイン、ケタミン、LDS、MDMA)、感染(例えば、コクサッキーウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、エプスタイン・バーウイルス、原発性HIV感染、Plasmodium falciparum、ヘルペスウイルス、Legionella pneumophila、サルモネラ)および自己免疫性筋肉損傷(例えば、多発性筋炎、皮膚筋炎)によって引き起こされ得る。また、特定の遺伝性状態は、解糖および糖原分解欠損(例えば、マッカードル病、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、糖原病VIII、IX、XおよびXI)、脂質代謝欠損(例えば、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIおよびII欠損症、アシルCoAデヒドロゲナーゼのサブタイプの欠損症(例えば、LCAD、SCAD、MCAD、VLCAD、3−ヒドロキシアシル−補酵素Aデヒドロゲナーゼ欠損症)、チオラーゼ欠損症)、ミトコンドリアミオパチー(例えば、コハク酸デヒドロゲナーゼ、チトクロムcオキシダーゼおよび補酵素Q10の欠損症)、ならびにその他、例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症および筋ジストロフィーを含め、横紋筋融解の危険性を増加させる。
横紋筋融解は、通常、血液試験および尿検査で診断され、異常に上昇したまたは漸増するクレアチニンおよび尿素レベル、尿量の低下、または尿のえび茶色の変色によって示され得る。一次処置には、静脈内輸液、透析および血液濾過が含まれる。
従って、HRS−Fcコンジュゲートは、横紋筋融解およびその関連の、二次的なまたは基礎にある障害または合併症のいずれかを処置するために使用され得る。HRS−Fcコンジュゲートは、単独で、またはショックを処置し、腎臓機能を保存することを意図されているものを含む他の治療と組み合わせて、使用され得る。例示的な治療には、静脈内輸液、通常は等張生理食塩水(体積当たり0.9重量%の塩化ナトリウム溶液)ならびに腎代替療法(RRT)、例えば血液透析、連続的血液濾過および腹膜透析の投与が含まれる。
より一般には、本明細書に記載されるHRS−Fcコンジュゲートは、例えば、他の機構の中でも、免疫細胞の活性化、分化、遊走もしくは選択された組織中への浸潤を低減させ、抗炎症性サイトカインの産生を増加させ、または炎症促進性サイトカインの産生もしくは活性を低減させることによって、炎症性応答を低減させ得る。さらに、抗ヒスチジル−tRNAシンテターゼ抗体または自己反応性T細胞の結合、作用または産生を遮断することによる本発明の特定の方法は、抗ヒスチジル−tRNAシンテターゼ抗体、他の自己抗体ならびにヒスチジル−tRNAシンテターゼの不十分の他の原因と関連する、広範な自己免疫性および炎症性の疾患および障害を処置するための有用性を有する。
医薬的製剤、投与およびキット
本発明の実施形態は、単独で、または1つもしくは複数の治療の他のモダリティと組み合わせてのいずれかで、細胞、被験体または動物への投与のために薬学的に許容される溶液または生理学的に許容される溶液中に製剤化されたHRS−Fcコンジュゲートポリペプチドを含む組成物を含む。所望の場合、本発明の組成物は、他のタンパク質もしくはポリペプチドまたは種々の薬学的に活性な薬剤などの他の薬物と組み合わせて同様に投与され得ることもまた理解される。これもまた組成物中に含まれ得る他の構成要素には事実上制限は存在しないが、ただし、このさらなる薬剤は、達成することが所望される修飾効果または他の効果には、有害に影響を与えない。
医薬品製造のために、HRS−Fcコンジュゲート治療用組成物は、典型的には、エンドトキシンを実質的に含まない。エンドトキシンは、特定の細菌、典型的にはグラム陰性細菌と関連する毒素であるが、エンドトキシンは、Listeria monocytogenesなどのグラム陽性細菌においても見出され得る。最も流行のエンドトキシンは、種々のグラム陰性細菌の外膜において見出されるリポポリサッカリド(LPS)またはリポオリゴサッカリド(LOS)であり、これらの細菌が疾患を引き起こす能力において中心的な病原性特徴を示す。ヒトにおける少量のエンドトキシンは、他の有害な生理学的影響の中でも、発熱、血圧の低下、ならびに炎症および凝固の活性化を生じ得る。
エンドトキシンは、当該分野で公知の慣用的な技術を使用して検出され得る。例えば、カブトガニ由来の血液を利用するリムルスアメボサイト溶解物アッセイは、エンドトキシンの存在を検出するための非常に高感度のアッセイである。この試験では、非常に低いレベルのLPSが、この反応を増幅する強力な酵素カスケードに起因して、リムルス溶解物の検出可能な凝固を引き起こし得る。エンドトキシンは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によっても定量され得る。
エンドトキシンを実質的に含まないためには、エンドトキシンレベルは、タンパク質1mg当たり、約0.001EU未満、0.005EU未満、0.01EU未満、0.02EU未満、0.03EU未満、0.04EU未満、0.05EU未満、0.06EU未満、0.08EU未満、0.09EU未満、0.1EU未満、0.5EU未満、1.0EU未満、1.5EU未満、2EU未満、2.5EU未満、3EU未満、4EU未満、5EU未満、6EU未満、7EU未満、8EU未満、9EU未満または10EU未満であり得る。典型的には、1ngのリポポリサッカリド(LPS)は、約1〜10EUに対応する。
ある特定の実施形態では、本明細書で留意されるように、HRS−Fcコンジュゲート組成物は、HRS−Fcコンジュゲート1mg当たり約10EU未満、またはHRS−Fcコンジュゲート1mg当たり約5EU未満、HRS−Fcコンジュゲート1mg当たり約3EU未満、またはHRS−Fcコンジュゲート1mg当たり約1EU未満またはHRS−Fcコンジュゲート1mg当たり約0.1EU未満、またはHRS−Fcコンジュゲート1mg当たり約0.01EU未満のエンドトキシン含量を有する。ある特定の実施形態では、上述のように、HRS−Fcコンジュゲート医薬組成物は、wt/wtタンパク質ベースで、約95%エンドトキシンを含まない、好ましくは約99%エンドトキシンを含まない、より好ましくは約99.99%エンドトキシンを含まない。
治療用量のHRS−Fcコンジュゲートポリペプチドを含む医薬組成物は、ヒスチジル−tRNAシンテターゼの全てのホモログ、オルソログおよび天然に存在するアイソフォームを含む。
一部の実施形態では、かかる医薬組成物は、約1mM〜約100mMの範囲内で医薬組成物のいずれか中に存在し得るヒスチジン緩衝液を含み得る。一部の実施形態では、このヒスチジン緩衝液は、これらの濃度の間の全ての整数および範囲を含む、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約25mM、約30mM、約40mM、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mMまたは約100mMの濃度で存在し得る。
一態様では、かかる組成物は、実質的に単分散であるHRS−Fcコンジュゲートポリペプチドを含み得、このことは、HRS−Fcコンジュゲート組成物が、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、動的光散乱または分析的超遠心分離によって評価した場合、1つの見かけの分子量形態で主に(即ち、少なくとも約90%またはそれ超)存在することを意味する。
別の一態様では、かかる組成物は、少なくとも約90%の純度(タンパク質に基づく)、または一部の態様では、少なくとも約95%の純度、または一部の実施形態では、少なくとも98%の純度を有する。純度は、当該分野で公知の任意の慣用的な分析方法を介して決定され得る。
別の一態様では、かかる組成物は、存在するタンパク質の総量と比較して、約10%未満の高分子量凝集体含量を有し、または一部の実施形態では、かかる組成物は、約5%未満の高分子量凝集体含量を有し、または一部の態様では、かかる組成物は、約3%未満の高分子量凝集体含量を有し、または一部の実施形態では、約1%未満の高分子量凝集体含量を有する。高分子量凝集体含量は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、動的光散乱または分析的超遠心分離によるものを含む、種々の分析技術を介して決定され得る。
医薬組成物は、HRS−Fcコンジュゲートポリペプチドの薬学的に許容される塩を含み得る。適切な塩に関する概説については、StahlおよびWermutによるHandbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use(Wiley−VCH、2002年)を参照のこと。適切な塩基性塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。代表的な例には、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン(diolamine)、グリシン、リシン、マグネシウム、メグルミン、オラミン(olamine)、カリウム、ナトリウム、トロメタミンおよび亜鉛の塩が含まれる。酸および塩基の半塩(hemisalt)、例えば、ヘミリン酸(hemisulphate)塩およびヘミカルシウム(hemicalcium)塩もまた、形成され得る。非経口投与に適切な本発明で使用される組成物は、塩化ナトリウム、グリセリン、グルコース、マンニトール、ソルビトールなどを一般に使用して、好ましくはレシピエントの血液と等張にされた、薬学的に活性な成分の無菌水性溶液および/または懸濁物を含み得る。薬学的に許容される酸付加塩を形成するために適切な有機酸には、例として、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、パルミチン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、アルキルスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸)、4−メチルビシクロ(2.2.2)−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などが含まれるがこれらに限定されない。
特定の実施形態では、この担体は、水を含み得る。一部の実施形態では、この担体は、例えば、生理学的pHにおいて生理学的濃度のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびクロライドを含む水などの、生理食塩水の水性溶液であり得る。一部の実施形態では、この担体は水であり得、この製剤は、NaClをさらに含み得る。一部の実施形態では、この製剤は、等張であり得る。一部の実施形態では、この製剤は、低張であり得る。他の実施形態では、この製剤は、高張であり得る。一部の実施形態では、この製剤は、等浸透圧であり得る。一部の実施形態では、この製剤は、ポリマー(例えば、ゲル形成性ポリマー、ポリマー性粘度増強剤)を実質的に含まない。一部の実施形態では、この製剤は、粘度増加剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアニオン性ポリマー)を実質的に含まない。一部の実施形態では、この製剤は、ゲル形成性ポリマーを実質的に含まない。一部の実施形態では、製剤の粘度は、同じ濃度のHRS−Fcコンジュゲート(またはその薬学的に許容される塩)を含む生理食塩水溶液の粘度とおよそ同じである。
本発明の医薬組成物では、薬学的に許容される賦形剤および担体溶液の製剤は、例えば、経口、非経口、静脈内、鼻腔内および筋内の投与および製剤を含む、種々の処置レジメンにおける本明細書に記載される特定の組成物を使用するのに適切な投薬および処置レジメンの開発と同様、当業者に周知である。
ある特定の実施形態では、このHRS−Fcコンジュゲートポリペプチドは、静脈内投与などの、特定の様式の投与にとって望ましい溶解度を有する。望ましい溶解度の例には、少なくとも約1mg/ml、少なくとも約10mg/ml、少なくとも約25mg/mlおよび少なくとも約50mg/mlが含まれる。
ある特定の適用では、本明細書に開示される医薬組成物は、経口投与を介して被験体に送達され得る。このように、これらの組成物は、不活性希釈剤もしくは食用担体を用いて製剤化され得、または硬シェルもしくは軟シェルゼラチンカプセル中に封入され得、または錠剤へと圧縮され得、またはダイエット食品と共に直接取り込まれ得る。
HRS−Fcコンジュゲートの送達に適切な医薬組成物およびその調製のための方法は、当業者に容易に明らかである。かかる組成物およびその調製のための方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company、1995年)中に見出され得る。
治療用量のHRS−Fcコンジュゲートの投与は、例えば、経口、鼻腔内、硝子体内、結膜下、テノン嚢下(sub−tenon)、眼球後、脈絡膜上静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、胸骨内(intrasternal)、頭蓋内、筋内、滑膜内(intrasynovial)、眼内、外用および皮下を含む非経口投与を含む、医療分野で公知の任意の適切な方法により得る。非経口投与に適切なデバイスには、針(極微針を含む)注射器、針なし注射器および注入技術が含まれる。
非経口製剤は、典型的には、塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくは、3から9までのpHまで)などの賦形剤を含み得る水性溶液であるが、一部の適用については、非経口製剤は、無菌非水性溶液として、または無菌の発熱物質を含まない水などの適切なビヒクルと併せて使用される乾燥形態として、より適切に製剤化され得る。例えば凍結乾燥による、無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な医薬品技術を使用して、容易に達成され得る。
非経口投与のための製剤は、即時および/または持続性の放出になるように製剤化され得る。持続性の放出の組成物には、遅延された、改変された、パルス状の、制御された、標的化されたおよびプログラムされた放出が含まれる。従って、HRS−Fcコンジュゲートは、懸濁物として、またはHRS−Fcコンジュゲートの持続性の放出を提供する移植されたデポーとしての投与のために固体、半固体もしくはチキソトロピック液体として、製剤化され得る。かかる製剤の例には、以下が含まれるがこれらに限定されない:薬物積載ポリ(DL−乳酸−co−グリコール酸)(PGLA)、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)(PLG)もしくはポリ(ラクチド)(PLA)の層状小胞もしくは微小粒子、ヒドロゲル(Hoffman AS: Ann. N.Y. Acad. Sci.944巻:62〜73頁(2001年))、Flamel Technologies Inc.によって開発されたMedusa系などのポリ−アミノ酸ナノ粒子系、Atrix,Inc.によって開発されたAtrigelなどの非水性ゲル系、ならびにDurect Corporationによって開発されたSABER(Sucrose Acetate Isobutyrate Extended Release)、ならびにSkyePharmaによって開発されたDepoFoamなどの脂質ベースの系を含む、薬物被覆ステントならびに半固体および懸濁物。
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中で、ならびに油中でも調製され得る。貯蔵および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含む。
注射可能な使用に適切な医薬品形態には、無菌の水性溶液または分散物、および無菌の注射可能な溶液または分散物の即座の調製のための無菌粉末が含まれる(その全体が参照により組み込まれる、米国特許第5,466,468号)。全ての場合において、この形態は、無菌でなければならず、容易な注射可能性(syringability)が存在する程度まで流体でなければならない。これは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して防腐されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物および/または植物油を含む、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆の使用によって、分散物の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって促進され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用によって、もたらされ得る。
水性溶液中での非経口投与のために、例えば、この溶液は、必要に応じて適切に緩衝化され、液体希釈剤は、十分な生理食塩水またはグルコースで最初に等張にされるべきである。これらの特定の水性溶液は、静脈内、筋内、皮下および腹腔内投与に特に適切である。これに関して、使用され得る無菌水性媒体は、本開示の教示の下に、当業者に公知である。例えば、1つの投薬量は、1mlの等張NaCl溶液中に溶解され得、1000mlの皮下注入(hypodermoclysis)流体に添加され得るか、または注入の提案された部位において注射され得る(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、1035〜1038頁および1570〜1580頁を参照のこと)。投薬量におけるいくつかのバリエーションが、処置されている被験体の状態に依存して必然的に生じる。投与を担う人は、任意の事象において、個々の被験体にとって適切な用量を決定する。さらに、ヒト投与のために、調製物は、FDA
Office of Biologics標準によって要求される無菌性、発熱性、ならびに一般的安全性および純度標準を満たすべきである。
無菌注射可能な溶液は、必要に応じて、上に列挙した種々の他の成分と共に、適切な溶媒中で必要な量で活性化合物を取り込み、その後濾過無菌化することによって調製され得る。一般に、分散物は、基礎的分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含む無菌ビヒクル中に、種々の無菌化活性成分を取り込むことによって、調製される。無菌注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、その予め無菌濾過した溶液から、活性成分+任意のさらなる所望の成分の粉末を得る、真空乾燥技術およびフリーズドライ技術である。
本明細書に開示される組成物は、中性または塩形態で製剤化され得る。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が含まれ、これらは、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基からも誘導され得る。製剤化の際に、溶液は、投薬量製剤と適合性の様式で、治療有効量などの量で、投与される。これらの製剤は、注射可能な溶液、薬物放出カプセルなどの種々の投薬形態で、容易に投与される。
本明細書で使用する場合、「担体」には、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、ビヒクル、被覆、希釈剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁物、コロイドなどが含まれる。薬学的に活性な物質へのかかる媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合性である場合を除き、治療用組成物におけるその使用が企図される。補充的な活性成分もまた、組成物中に取り込まれ得る。
語句「薬学的に許容される」とは、ヒトに投与した場合に、アレルギー性反応または類似の望ましくない反応を生じない、分子実体および組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製は、当該分野で十分理解されている。典型的には、かかる組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかとして、注射剤として調製される;注射前の、液体中の液体または液体中の懸濁物に適切な固体形態もまた、調製され得る。この調製物はまた、乳化され得る。
本発明での使用のためのHRS−Fcコンジュゲートポリペプチドはまた、単独で、あるいは1つもしくは複数の抗ヒスタミン薬、1つもしくは複数の抗生物質、1つもしくは複数の抗真菌剤、1つもしくは複数のベータブロッカー、1つもしくは複数の抗炎症剤、1つもしくは複数の抗新生物剤、1つもしくは複数の免疫抑制剤、1つもしくは複数の抗ウイルス剤、1つもしくは複数の抗酸化剤、または他の活性薬剤と組み合わせてのいずれかで、皮膚、粘膜、または眼の表面に、外用的に、経皮(皮内)的に((intra)dermally)または経皮的に(transdermally)投与され得る。外用および眼投与のための製剤は、即時および/または改変された放出になるように製剤化され得る。改変された放出の組成物には、遅延された、持続性の、パルス状の、制御された、標的化されたおよびプログラムされた放出が含まれる。
この目的のための典型的な製剤には、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、点眼薬、クリーム、軟膏、散布剤、包帯材、発泡体、フィルム、皮膚パッチ、ウエハ、インプラント、スポンジ、線維、絆創膏およびマイクロエマルションが含まれる。リポソームもまた使用され得る。典型的な担体には、アルコール、水、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールが含まれる。浸透エンハンサーが取り込まれ得る−例えば、FinninおよびMorgan: J. Pharm. Sci.88巻(10号):955〜958頁(1999年)を参照のこと。外用投与の他の手段には、エレクトロポレーション、イオントフォレーシス、フォノフォレーシス、ソノフォレーシス、および極微針または針なし注射(例えば、商標POWDERJECT(商標)、BIOJECT(商標)の下で販売されるシステム)による送達が含まれる。
抗ヒスタミン薬の例には、ロラタジン(loradatine)、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリメプラジン(trimprazine)ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、クロルシクリジン(chiorcyclizine)、トンジルアミン、ならびにそれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。
抗生物質の例には、アミノグリコシド系(例えば、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン類、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、フォーチミシン(複数可)、ゲンタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、ミクロノマイシン、ネオマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、トロスペクトマイシン)、アムフェニコール(amphenicol)系(例えば、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、チアンフェニコール)、アンサマイシン系(例えば、リファミド、リファンピン、リファマイシンsv、リファペンチン、リファキシミン)、ラクタム系(例えば、カルバセフェム系(例えば、ロラカルベフ)、カルバペネム系(例えば、ビアペネム、イミペネム、メロペネム、パニペネム)、セファロスポリン系(例えば、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフカペンピボキシル、セフクリジン(cefclidin)、セフジニル、セフジトレン、セフェピム、セフェタメト、セフィキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファセトリルナトリウム、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロスポリン、セファロチン、セファピリンナトリウム、セフラジン、ピブセファレキシン(pivcefalexin))、セファマイシン系(例えば、セフブペラゾン、セフメタゾール、セフミノクス、セフォテタン、セフォキシチン)、モノバクタム系(例えば、アズトレオナム、カルモナム、チゲモナム(tigemonam))、オキサセフェム系、フロモキセフ、モキサラクタム)、ペニシリン系(例えば、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、アンピシリン、アパルシリン、アスポキシシリン、アジドシリン、アズロシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、カルベニシリン、カリンダシリン、クロメトシリン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロキサシリン、エピシリン、フェンベニシリン(fenbenicillin)、フロキサシリン、ヘタシリン、レナンピシリン、メタンピシリン、メチシリンナトリウム、メズロシリン、ナフシリンナトリウム、オキサシリン、ペナメシリン、ペネタメートヒドリオジド(penethamate hydriodide)、ペニシリンgベネタミン(benethamine)、ペニシリンgベンザチン、ペニシリンgベンズヒドリルアミン、ペニシリンgカルシウム、ペニシリンgヒドラバミン(hydrabamine)、ペニシリンgカリウム、ペニシリンgプロカイン、ペニシリンn、ペニシリンo、ペニシリンv、ペニシリンvベンザチン、ペニシリンvヒドラバミン、ペニメピサイクリン、フェネチシリンカリウム、ピペラシリン、ピバンピシリン、プロピシリン、キナシリン(quinacillin)、スルベニシリン、スルタミシリン、タランピシリン、テモシリン、チカルシリン)、その他(例えば、リチペネム(ritipenem))、リンコサミド系(例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン)、マクロライド系(例えば、アジスロマイシン、カルボマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシストレート(erythromycin acistrate)、エリスロマイシンエストレート、グルコヘプトン酸エリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、プロピオン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロイコマイシン系、ミデカマイシン系、ミオカマイシン、オレアンドマイシン、プリマイシン(primycin)、ロキタマイシン、ロサラマイシン(rosaramicin)、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン)、ポリペプチド類(例えば、アンフォマイシン(amphomycin)、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンジュラシジン(enduracidin)、エンビオマイシン、フサファンギン、グラミシジンs、グラミシジン(複数可)、ミカマイシン、ポリミキシン、プリスチナマイシン、リストセチン、テイコプラニン、チオストレプトン、ツベラクチノマイシン、チロシジン、チロスリシン、バンコマイシン、バイオマイシン、ヴァージニアマイシン、亜鉛バシトラシン)、テトラサイクリン系(例えば、アピサイクリン(apicycline)、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、グアメサイクリン(guamecycline)、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン(pipacycline)、ロリテトラサイクリン、サンサイクリン、テトラサイクリン)、およびその他(例えば、シクロセリン、ムピロシン、ツベリン)、2.4−ジアミノピリミジン類(例えば、ブロジモプリム、テトロキソプリム(tetroxoprim)、トリメトプリム)、ニトロフラン系(例えば、フラルタドン、塩化フラゾリウム(furazolium chloride)、ニフラデン(nifuradene)、ニフラテル、ニフルフォリン(nifurfoline)、ニフルピリノール(nifurpirinol)、ニフルプラジン(nifurprazine)、ニフルトイノール、ニトロフラントイン)、キノロン系およびアナログ(例えば、シノキサシン、シプロフロキサシン、クリナフロキサシン、ジフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、グレパフロキサシン、ロメフロキサシン、ミロキサシン、ナジフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、オキソリニン酸、パズフロキサシン、ペフロキサシン、ピペミド酸、ピロミド酸、ロソクサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、トロバフロキサシン)、スルホンアミド系(例えば、アセチルスルファメトキシピラジン(sulfamethoxypyrazine)、ベンジルスルファミド、クロラミン−b、クロラミン−t、ジクロラミンt、n2−ホルミルスルフイソミジン、マフェニド、4’−(メチルスルファモイル)スルファニラニリド(4’−(methylsulfamoyl)sulfanilanilide)、ノプリルスルファミド(noprylsulfamide)、フタリルスルファセタミド、フタリルスルファチアゾール、サラゾスルファジミジン(salazosulfadimidine)、サクシニルスルファチアゾール、スルファベンズアミド、スルファセタミド、スルファクロルピリダジン、スルファクリソイジン(sulfachrysoidine)、スルファシチン(sulfacytine)、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファドキシン、スルファエチドール(sulfaethidole)、スルファグアニジン、スルファグアノール(sulfaguanol)、スルファレン、スルファロクス酸(sulfaloxic acid)、スルファメラジン、スルファメータ、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトミジン、スルファメトキサゾール、スルファメトキシピリダジン、スルファメトロール(sulfametrole)、スルファミドクリソイジン(sulfamidochrysoidine)、スルファモキソール、スルファニルアミド、4−スルファニルアミドサリチル酸(4−sulfanilamidosalicylic acid)、n4−スルファニリルスルファニルアミド、スルファニリル尿素、n−スルファニリル−3,4−キシラミド(n−sulfanilyl−3,4−xylamide)、スルファニトラン、スルファペリン(sulfaperine)、スルファフェナゾール、スルファプロキシリン(sulfaproxyline)、スルファピラジン、スルファピリジン、スルファソミゾール(sulfasomizole)、スルファシマジン(sulfasymazine)、スルファチアゾール、スルファチオウレア、スルファトラミド、スルフイソミジン、スルフイソキサゾール)スルホン系(例えば、アセダプソン、アセジアスルホン(acediasulfone)、アセトスルホン(acetosulfone)ナトリウム、ダプソン、ジアチモスルホン(diathymosulfone)、グルコスルホンナトリウム、ソラスルホン(solasulfone)、サクシスルホン(succisulfone)、スルファニル酸、p−スルファニリルベンジルアミン、スルホキソンナトリウム、チアゾールスルホン(thiazolsulfone))、およびその他(例えば、クロホクトール、ヘキセジン、メテナミン、メテナミンアンヒドロメチレン−シトレート(methenamine anhydromethylene−citrate)、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、スルホサリチル酸メテナミン、ニトロキソリン、タウロリジン、キシボルノール)が含まれるがこれらに限定されない。
抗真菌剤の例には、ポリエン系(例えば、アンホテリシンb、カンジシジン、デルモスタチン、フィリピン、フンギクロミン(fungichromin)、ハチマイシン、ハマイシン、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ニスタチン、ペチロシン、ペリマイシン(perimycin))、その他(例えば、アザセリン、グリセオフルビン、オリゴマイシン類、ウンデシレン酸ネオマイシン、ピロールニトリン、シッカニン、ツベルシジン、ビリジン(viridin))、アリルアミン系(例えば、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン)、イミダゾール系(例えば、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン(chlordantoin)、クロルミダゾール、クロコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール、フェンチコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、硝酸オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール)、チオカルバメート系(例えば、トルシクラート、トリンデート(tolindate)、トルナフテート)、トリアゾール系(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、サペルコナゾール(saperconazole)、テルコナゾール)その他(例えば、アクリソルシン(acrisorcin)、アモロルフィン、ビフェナミン、ブロモサリチルクロラニリド(bromosalicylchloranilide)、ブクロサミド(buclosamide)、プロピオン酸カルシウム、クロルフェネシン、シクロピロクス、クロキシキン(cloxyquin)、コパラフィネート(coparaffinate)、ジアムタゾール二塩酸塩(diamthazole dihydrochloride)、エキサラミド、フルシトシン、ハレタゾール(halethazole)、ヘキセチジン、ロフルカルバン(loflucarban)、ニフラテル、ヨウ化カリウム、プロピオン酸、ピリチオン、サリチルアニリド、プロピオン酸ナトリウム、スルベンチン、テノニトロゾール、トリアセチン、ウジョチオン(ujothion)、ウンデシレン酸、プロピオン酸亜鉛)が含まれるがこれらに限定されない。
ベータブロッカーの例には、アセブトロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、およびそれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。
抗新生物剤の例には、抗生物質およびアナログ(例えば、アクラシノマイシン類、アクチノマイシンf1、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン(cactinomycin)、カルビシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類(olivomycines)、ペプロマイシン、ピラルビシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ジノスタチン、ゾルビシン)、代謝拮抗薬(例えば、葉酸アナログ(例えば、デノプテリン(denopterin)、エダトレキセート、メトトレキセート、ピリトレキシム、プテロプテリン(pteropterin)、Tomudex(登録商標)、トリメトレキセート)、プリンアナログ(例えば、クラドリビン、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン)、ピリミジンアナログ(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エミテフル(emitefur)、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、テガフール(tagafur))が含まれるがこれらに限定されない。
抗炎症剤の例には、ステロイド性抗炎症剤および非ステロイド性抗炎症剤が含まれるがこれらに限定されない。例示的なステロイド性抗炎症剤には、アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコート(fluazacort)、フルクロロニド(flucloronide)、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、25−ジエチルアミノ酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル(prednival)、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド(triamcinolone benetonide)およびトリアムシノロンヘキサセトニドが含まれる。
例示的な非ステロイド性抗炎症剤には、アミノアリールカルボン酸誘導体(例えば、エンフェナム酸(enfenamic acid)、エトフェナメート、フルフェナム酸、イソニキシン(isonixin)、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸、タルニフルメート、テロフェナメート(terofenamate)、トルフェナム酸)、アリール酢酸誘導体(例えば、アセクロフェナク、アセメタシン、アルクロフェナク、アンフェナク、アムトルメチングアシル(amtolmetin guacil)、ブロムフェナク、ブフェキサマク、シンメタシン(cinmetacin)、クロピラク、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、フェルビナク、フェンクロズ酸(fenclozic acid)、フェンチアザク、グルカメタシン(glucametacin)、イブフェナク、インドメタシン、イソフェゾラク(isofezolac)、イソキセパク(isoxepac)、ロナゾラク、メチアジン酸、モフェゾラク、オキサメタシン(oxametacine)、ピラゾラク(pirazolac)、プログルメタシン、スリンダク、チアラミド、トルメチン、トロペシン(tropesin)、ゾメピラック)、アリール酪酸誘導体(例えば、ブマジゾン、ブチブフェン(butibufen)、フェンブフェン、キセンブシン(xenbucin))、アリールカルボン酸類(例えば、クリダナク、ケトロラク、チノリジン)、アリールプロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ベルモプロフェン(bermoprofen)、ブクロクス酸(bucloxic acid)、カプロフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピケトプロレン(piketoprolen)、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プロチジン酸、スプロフェン、チアプロフェン酸、キシモプロフェン(ximoprofen)、ザルトプロフェン)、ピラゾール系(例えば、ジフェナミゾール(difenamizole)、エピリゾール)、ピラゾロン系(例えば、アパゾン、ベンズピペリロン(benzpiperylon)、フェプラゾン、モフェブタゾン、モラゾン(morazone)、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン(pipebuzone)、プロピフェナゾン、ラミフェナゾン(ramifenazone)、スキシブゾン、チアゾリノブタゾン(thiazolinobutazone))、サリチル酸誘導体(例えば、アセトアミノサロール(acetaminosalol)、アスピリン、ベノリレート(benorylate)、ブロモサリゲニン(bromosaligenin)、アセチルサリチル酸カルシウム、ジフルニサル、エテルサレート(etersalate)、フェンドサール(fendosal)、ゲンチジン酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸イミダゾール、アセチルサリチル酸リシン、メサラミン、サリチル酸モルホリン、サリチル酸1−ナフチル、オルサラジン、パルサルミド(parsalmide)、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サラセタミド(salacetamide)、サリチルアミドo−酢酸、サリチル硫酸、サルサラート、スルファサラジン)、チアジンカルボキサミド系(例えば、アンピロキシカム、ドロキシカム、イソキシカム(isoxicam)、ロルノキシカム、ピロキシカム、テノキシカム)、ε−アセトアミドカプロン酸(ε−acetamidocaproic acid)、s−アデノシルメチオニン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン(amixetrine)、ベンダザック、ベンジダミン、ブコローム、ジフェンピラミド、ジタゾール、エモルファゾン、フェプラジノール(fepradinol)、グアイアズレン、ナブメトン、ニメスリド、オキサセプロール、パラニリン(paranyline)、ペリソキサール、プロカゾン、スーパーオキシドジスムターゼ、テニダップおよびジロートン含まれる。
抗ウイルス剤の例には、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バラシクロビル(valciclovir)、ジデオキシシチジン、ホスホノギ酸、ガンシクロビル、およびそれらの誘導体が含まれる。
抗酸化剤の例には、アスコルベート、アルファ−トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン(cryotpxanthin)、アスタキサンチン(astazanthin)、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、ガンマ−グルタミルシステイン、ケルセチン(quercitin)、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、Ginkgo Biloba抽出物、茶カテキン、ビルベリー抽出物、ビタミンE類またはビタミンEのエステル、パルミチン酸レチニル、およびそれらの誘導体が含まれる。他の治療剤には、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害剤、アルファ−2アドレナリン作動性受容体アゴニスト、抗寄生虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体が含まれる。
投与される各構成要素の正確な用量は、もちろん、処方された特定の構成要素、処置されている被験体、疾患の重症度、例えば炎症性反応の重症度、投与の様式、および処方医師の判断に依存して異なる。従って、患者毎の可変性に起因して、上に与えられる投薬量はガイドラインであり、医師は、医師が適切とみなす処置を達成するために、化合物の用量を調整し得る。
当業者に理解されるように、担体がゲル形成性ポリマーを含むHRS−Fcコンジュゲート製剤について、特定の製剤では、特に生理食塩水溶液中に塩(複数可)を含めることは、塩を含めることが、特定のin situゲル形成性ポリマー(例えば、ジェランゲル)と同様に、外用投与の前に溶液をゲルにし得る場合、または塩を含めることが、ゲル形成性ポリマーのゲル化特性を阻害し得る場合、禁忌である。当業者は、製剤の所望の特性および当該分野で公知のゲル形成性ポリマーの特徴に基づいて、適切な組合せを選択することができる。
適切な水性生理食塩水溶液は、当業者に理解され、例えば、約pH4.5〜約pH8.0のpHの溶液を含み得る。水性溶液(水が担体中に含まれる場合)のさらなるバリエーションでは、製剤のpHは、約6と約8.0との間;約6と約7.5との間;約6と約7.0との間;約6.2と約8との間;約6.2と約7.5との間;約7と約8との間;約6.2と約7.2との間;約5.0と約8.0との間;約5と約7.5との間;約5.5と約8.0との間;約6.1と約7.7との間;約6.2と約7.6との間;約7.3と約7.4との間;約6.0;約7.1;約6.2;約7.3;約6.4;約6.5;約6.6;約6.7;約6.8;約6.9;約7.0;約7.1;約7.2;約7.3;約7.4;約7.5;約7.6;または約8.0のいずれかである。一部のバリエーションでは、このHRS−Fcコンジュゲート製剤は、約6.0〜約7.0のpHを有する。一部のバリエーションでは、この製剤は、約7.4のpHを有する。特定のバリエーションでは、この製剤は、約6.2〜約7.5のpHを有する。
ある特定の実施形態では、塩(例えば、NaCl)の濃度は、例えば約0%〜約0.9%(w/v)である。例えば、塩の濃度は、約0.01〜約0.9%、約0.02%〜約0.9%、約0.03%〜約0.9%、約0.05%〜約0.9%、約0.07%〜約0.9%、約0.09%〜約0.9%、約0.1%〜約0.9%、約0.2%〜約0.9%、約0.3%〜約0.9%、約0.4%〜約0.9%、約0.5%〜約0.9%、約0.6%〜約0.9%、約0.7%〜約0.9%、約0.8%〜約0.9%、約0.9%、約0%、約0.05%、約0.01%、約0.09%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%または約0.8%であり得る。ある特定の実施形態では、この水性生理食塩水溶液は、等張(例えば、約0.9%NaCl(w/v)のNaCl濃度)である。ある特定の実施形態では、この水性溶液は、約0.5%、約0.7%、約0.8%、約0.85または約0.75%のNaCl濃度を含む。当業者に明らかなように、他の構成要素の濃度に依存して、例えば、HRS−Fcコンジュゲートがその塩として存在する場合、投与に適切な製剤を達成するために必要とされるNaClまたは他の塩の濃度は、変動し得る。
一部の実施形態では、製剤が粘度増加剤を実質的に含まない場合、この製剤は、例えば、ポリアニオン性ポリマー、水溶性セルロース誘導体(例えば、ヒプロメロース(HPMC、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースとしても公知)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(carboxmethylcellulose)など)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、可溶性デンプンなどであるがこれらに限定されない粘度増加剤を実質的に含んでいなくてもよい。一部のバリエーションでは、この製剤は、ヒドロゲルも他の保持剤(例えば、米国特許出願公開第2005/0255144号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものなど)も取り込まず、ここで、例えば、ヒドロゲルには、ホモポリマー;コポリマー(例えば、ヒドロキシメチルメタクリレート、エチレングリコール、ジメチルメタクリレートおよびメタクリル酸のテトラポリマー)、炭酸トリメチレンおよびポリグリコール酸のコポリマー、ポリグラクチン910、グリコネート(glyconate)、ポリ−p−ジオキサノン、ポリグリコール酸、ポリグリコール酸フェルト、ポリ−4−ヒドロキシブチレート、ポリ(L−ラクチド)およびポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)の組合せ、グリコールメタクリレート、ポリ−DL−ラクチドまたはPrimacryl);酸化再生セルロース、ポリプロピレンおよびポリジオキサノンの複合材料またはポリプロピレンおよびポリグレカプロン(poligelcaprone)の複合材料などを取り込むヒドロゲルが含まれ得る。一部のバリエーションでは、この製剤は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール400ヒマシ油エマルション、カルボキシメチルセルロースナトリウム、プロピレングリコール、グアーヒドロキシプロピル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、白色ワセリン、鉱油、デキストラン70、グリセリン、ヒプロメロース、アマニ油、魚油、オメガ3およびオメガ6脂肪酸、ルテインまたはプリムローズ油のうちの1つまたは複数を含まない。一部のバリエーションでは、この製剤は、米国特許第4,888,354号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)中に記載される担体のうちの1つまたは複数、例えば、オレイン酸、エタノール、イソプロパノール、モノオレイン酸グリセロール、ジオレイン酸グリセロール(glycerol diooleate)、ラウリン酸メチル、プロピレングリコール、プロパノールまたはジメチルスルホキシドのうちの1つまたは複数などを含まない。一部のバリエーションでは、これらの製剤は、ジオレイン酸グリセロールおよびイソプロパノールを実質的に含まない。
特定の実施形態では、このゲル形成性ポリマーは、例えば、ポリサッカライドであり得る。ある特定の実施形態では、このポリサッカライドは、ジェランガムである。ジェランガムとは、細菌Pseudomonas elodeaによって作り出されるヘテロポリサッカライドを指すが、名称「ジェランガム」は、この分野においてより一般的に使用される。ジェランガム、特に製剤GELRITE(登録商標)は、特にチモロールの製剤におけるその使用において、米国特許第4,861,760号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)中に詳細に記載される。GELRITE(登録商標)、低アセチル清澄化グレードのジェランガムは、Merck&Co(Rahway、N.J.)から市販され、ジェランガムは、の中でとりわけ、CPKelco(Atlanta、Ga.)から市販され得る。ジェランガムなどのポリサッカライドの調製は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,326,053号および米国特許第4,326,052号に記載されている。
ある特定の実施形態では、このゲル形成性ポリマーは、約0.03%〜約2%(w/v)の濃度で存在する。一部の実施形態では、このゲル形成性ポリマーは、約0.03%〜約1.75%;約0.03%〜約1.5%、約0.03%〜約1.25%、約0.03%〜約1%、約0.03%〜約0.9%、約0.03%〜約0.8%、約0.03%〜約0.7%、約0.03%〜約0.6%、約0.03%〜約0.5%、約0.05%〜約2%、約0.05%〜約1.75%、約0.05%〜約1.5%、約0.05%〜約1.25%、約0.05%〜約1%、約0.05%〜約0.9%、約0.05%〜約0.8%、約0.05%〜約0.7%、約0.05%〜約0.6%、約0.05%〜約0.5%、約0.1%〜約2%、約0.1%〜約1.75%、約0.1%〜約1.5%、約0.1%〜約1.25%、約0.1%〜約1%、約0.1%〜約0.9%、約0.1%〜約0.8%、約0.1%〜約0.7%、約0.1%〜約0.6%、約0.1%〜約0.5%、約0.2%〜約2%、約0.2%〜約1.75%、約0.2%〜約1.5%、約0.2%〜約1.25%、約0.2%〜約1%、約0.2%〜約0.9%、約0.2%〜約0.8%、約0.2%〜約0.7%、約0.2%〜約0.6%、約0.2%〜約0.5%または約0.5%〜約1.5%の濃度で存在する。一部の実施形態では、ゲル形成性ポリマーの濃度は、約0.1%、約0.2%、約0.4%、約0.6%、約0.8%、約1%である。
特定の実施形態では、このゲル形成性ポリマーは、約0.05%〜約2%(w/v)、約0.1%〜約2%(w/v)、約0.1%〜約1%(w/v)、約0.05%〜約1%(w/v)または約0.1%〜約0.6%(w/v)の濃度のジェランガムである。一部の実施形態では、ジェランガムの濃度は、約0.1%、約0.2%、約0.4%、約0.6%、約0.8%、約1%である。
製剤の一部の実施形態では、この製剤は、1つもしくは複数の防腐剤、1つもしくは複数の界面活性剤または1つもしくは複数の医薬品薬剤などのさらなる構成要素を含み得る。特定の実施形態では、この製剤は、1つもしくは複数の防腐剤、1つもしくは複数の界面活性剤、1つもしくは複数の等張化剤、1つもしくは複数の緩衝剤、1つもしくは複数のキレート剤、1つもしくは複数の粘度増加剤、1つもしくは複数の塩または1つもしくは複数の医薬品薬剤などのさらなる構成要素を含み得る。これらの実施形態のある特定のものでは、この製剤は、(HRS−Fcコンジュゲート(またはその薬学的に許容される塩)および担体に加えて):1つまたは複数の防腐剤、1つまたは複数の緩衝剤(例えば、1つ、2つ、3つなど)、1つまたは複数のキレート剤および1つまたは複数の塩を含み得る。一部の実施形態では、この製剤は、(HRS−Fcコンジュゲート(またはその薬学的に許容される塩)および担体に加えて):1つまたは複数の防腐剤、1つまたは複数の等張化剤、1つまたは複数の緩衝剤、1つまたは複数のキレート剤および1つまたは複数の粘度増加剤を含み得る。
一部の実施形態では、この製剤の粘度は、同じ濃度のHRS−Fcコンジュゲート(またはその薬学的に許容される塩)を含む生理食塩水溶液とおよそ同じ粘度である。一部の実施形態では、この製剤は、ゲル形成性ポリマーを実質的に含まない。ある特定の実施形態では、担体が水である場合、この製剤は、1つまたは複数のキレート剤(例えば、EDTA二ナトリウム(EDTA)、1つまたは複数の防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、メチルパラベン、フェニルエチルアルコール、プロピルパラベン、チメロサール、硝酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、または上述の2つもしくはそれ超の組合せ)、塩(例えば、NaCl)および1つまたは複数の緩衝剤(例えば、1つまたは複数のリン酸塩緩衝液(例えば、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、それらの組合せなど)、クエン酸塩緩衝液、マレイン酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、および上述の2つもしくはそれ超の組合せ)をさらに含み得る。
特定の実施形態では、このキレート剤は、EDTA二ナトリウムであり、この防腐剤は、塩化ベンザルコニウムであり、この塩は、NaClであり、この緩衝剤は、二塩基性リン酸ナトリウムおよび一塩基性リン酸ナトリウムである。これらの実施形態の特定のものでは、この製剤は、ポリマーを実質的に含まない。一部の実施形態では、この製剤は、実質的に、粘度増加剤(複数可)(例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアニオン性ポリマーなど)を実質的に含まない。一部の実施形態では、この製剤の粘度は、同じ濃度のHRS−Fcコンジュゲート(またはその薬学的に許容される塩)を含む生理食塩水溶液とおよそ同じ粘度である。これらの実施形態の一部では、HRS−Fcコンジュゲート(またはその薬学的に許容される塩)の濃度は、約0.02%〜約3%、約0.02%〜約2%、約0.02%〜約1%(w/v)である。ある特定の実施形態では、HRS−Fcコンジュゲート(またはその薬学的に許容される塩)の濃度は、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.05%、約0.07%、約0.1%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.8%または約1%(w/v)である。
ある特定の実施形態では、担体が水を含む場合、粘度増加剤もまた、製剤中に含まれ得る。当業者は、適切である粘度増加剤(例えば、水溶性セルロース誘導体(例えば、ヒプロメロース(HPMC、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースとしても公知)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸および可溶性デンプン)をよく承知している。粘度増加剤が使用される場合、これらは、投与の前または後に製剤がゲルを形成するような高い十分な濃度では含まれない(例えば、このとき、粘度増加剤の濃度は、ゲル形成を誘導するのに十分ではない)ことが、意図される。
粘度増加剤の正確な濃度は、製剤中の他の構成要素の選択および濃度ならびに選択された特定の粘度増加剤(複数可)に依存し、一般に、粘度増加剤は、得られた溶液の粘度が約1000センチポアズ未満であるような濃度で存在し得る。ある特定の実施形態では、この製剤の粘度は、約900センチポアズ未満、約800センチポアズ未満、約700センチポアズ未満、約600センチポアズ未満、約500センチポアズ未満、約400センチポアズ未満、約300センチポアズ未満、約200センチポアズ未満、約150センチポアズ未満、約100センチポアズ未満、約50センチポアズ未満である。一部の実施形態では、この製剤の粘度は、約200、約150、約100、約50センチポアズである。特定の実施形態では、この粘度は、約200センチポアズ未満である。他の場合には、約120センチポアズ未満または約100センチポアズ未満である。一部の実施形態では、この粘度は、約100センチポアズである。他の場合には、約50センチポアズである。なお他の実施形態では、この粘度は、約200センチポアズである。粘度を測定するための方法は、当業者に周知である。例えば、米国薬局方29(第911章)Viscosity、2785頁(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。当業者に周知のように、一般に「ゲル」とみなされる製剤は、1000センチポアズよりも顕著に大きい、例えば、約2000センチポアズよりも大きい、約5000センチポアズよりも大きい粘度を有する。
塩の使用が上記のように禁忌である場合を含む(しかしそれらに限定されない)一部の実施形態では、この製剤は、1つまたは複数の等張化剤をさらに含み得る。本明細書で使用する場合、用語「等張化剤」およびその同語源語は、製剤の浸透圧を調整するが塩ではない(例えば、NaClではない)薬剤を指し、これは、本明細書に提供される教示を考慮して当業者に理解されるように、特定のゲル形成性ポリマーまたは粘度増加剤の存在に起因して一部の製剤にとっては禁忌である。これらの薬剤は、等張または近等張(例えば、幾分高〜等張または低〜等張;例えば、等張の約±20%、約±15%、約±10%、約±5%以内)である製剤を調製するために使用され得る。等張化剤(複数可)は、塩の使用が禁忌ではない製剤中でも使用され得る。
本明細書に記載される製剤の浸透圧を調整するために使用され得る等張化剤は、当業者に公知であり、本明細書に提供される教示に基づいて選択され得る。例えば、等張化剤には、ポリオール(例えば、糖アルコール(例えば、マンニトールなど)、トリヒドロキシアルコール(例えば、グリセリンなど)、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなど)、または2つもしくはそれ超のポリオールの組合せが含まれる。同様に、等張化剤(複数可)の濃度は、製剤中の他の構成要素の正体および濃度に依存し、本明細書に提供される教示を考慮して、当業者によって容易に決定され得る。
ある特定の実施形態では、この等張化剤は、グリセリンまたはマンニトールである。一部の実施形態では、この等張化剤はグリセリンである。他の実施形態では、これはマンニトールである。なお他の場合には、マンニトールとグリセリンとの組合せが使用され得る。等張化剤の例示的な濃度には、例えば、約0.001〜約3%が含まれる。一部の実施形態では、等張化剤(例えば、マンニトールまたはグリセリン)の濃度は、例えば、約0.001%〜約2.7%、約0.001%〜約2.5%、約0.001%〜約2%、約0.001%〜約1.5%、約0.001%〜約1%、約0.01%〜約3%、約0.01%〜約2.7%、約0.01%〜約2.5%、約0.01%〜約2%、約0.01%〜約1.5%、約0.01%〜約1%、約0.1%〜約3%、約0.1%〜約2.7%、約0.1%〜約2.5%、約0.1%〜約2%、約0.1%〜約1.5%、約0.1%〜約1%、約0.001%、約1%〜約3%、約1%〜約2.5%、約1%〜約2%、約1%〜約1.8%、約1%〜約1.5%、または約0.001%、約0.01%、約0.05%、約0.08%、約0.1%、約0.2%、約0.5%、約0.8%、約1%、約1.5%、約1.8%、約2%、約2.2%、約2.5%、約2.8%もしくは約3%(w/v)である。ある特定の実施形態では、この等張化剤はマンニトールである。これらの実施形態の一部では、この担体は、ゲル形成性薬剤(例えば、ジェランガム)を含む。
一部の実施形態では、この等張化剤は、マンニトールである。これらの実施形態の特定のものでは、この担体には、粘度増加剤(例えば、水溶性セルロース誘導体(例えば、ヒプロメロース)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸または可溶性デンプン)が含まれる。
一部の実施形態では、この製剤は、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、メチルパラベン、フェニルエチルアルコール、プロピルパラベン、チメロサール、硝酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀または酢酸フェニル水銀、過酸化物)、または上述の防腐剤の2つもしくはそれ超の組合せを、さらに含み得る。ある特定の実施形態では、この防腐剤は、塩化ベンザルコニウムである。
当業者に理解されるように、防腐剤は、約0.001%〜約0.7%(w/v)の濃度で存在し得る。特定の実施形態では、この防腐剤(複数可)は、約0.001%〜約0.5%(w/v);約0.001%〜約0.05%(w/v)、約0.001%〜約0.02%(w/v)、約0.001%〜約0.015%(w/v)、約0.001%〜約0.005%(w/v)、約0.01%〜約0.02%、約0.002%〜約0.01%、約0.015%〜約0.05%、約<0.5%未満、約0.005%〜約0.01%、約0.001%〜約0.15%、約0.002%〜約0.004%、約0.001%〜約0.002%の濃度で存在し得る。一部の実施形態では、この防腐剤の濃度は、例えば、約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.5%または約0.7%(w/v)であり得る。種々の一般に使用される防腐剤について典型的な濃度(w/v)は、以下の表Cに列挙される。
ある特定の実施形態では、この製剤は、1つの界面活性剤、または2もしくはそれ超の界面活性剤をさらに含み得る。特定の実施形態では、この製剤は、界面活性剤を実質的に含まない。本明細書で使用する場合、用語「実質的に含まない」は、当業者に公知の慣用的な検出方法およびプロトコールを使用して検出不能な、特定の構成要素のレベルを指す意図である。例えば、HPLC(キラルHPLC、キラルHPLC/MS、LC/MS/MSなどを含む)、薄層クロマトグラフィー、質量分析、旋光分析測定、ガスクロマトグラフィー質量分析など。
特定の実施形態では、この製剤は、キレート剤(例えば、クエン酸EDTA二ナトリウム(EDTA)(例えば、EDTA二ナトリウム(二水和物)など)など)をさらに含み得る。一部の実施形態では、キレート剤の組合せが存在し得る。当業者に理解されるように、キレート剤は、製剤構成要素の分解を妨げるために使用され得、それによって、製剤の有効期間を増加させ得る。当業者に理解されるように、EDTAは、ジェランガム製剤の投与前にゲル形成を引き起こし得るので、ジェランガム製剤と組み合わせたEDTAの使用は、禁忌であり得る。
キレート剤についての典型的な濃度は、約0.005%〜0.1%(w/v)である。例えば、約0.005%〜約0.09%、約0.005%〜約0.08%、約0.005%〜約07%、約0.005%〜約0.06%、約0.005%〜約0.05%、約0.005〜約0.04%、約0.005%〜約0.03%、約0.01%〜約0.1%、約0.01%〜約0.09%、約0.01%〜約0.08%、約0.01%〜約0.07%、約0.01%〜約0.06%、約0.01%〜約0.05%、約0.01%〜約0.04%など。ある特定の実施形態では、キレート剤(複数可)の濃度は、約0.005%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%または約0.1%である。
特定の実施形態では、このキレート剤は、EDTA二ナトリウムである。ある特定の実施形態では、このキレート剤は、EDTA二ナトリウム(二水和物)である。これらの実施形態の一部では、このEDTA二ナトリウム二水和物は、約0.01%(w/v)の濃度で存在する。
一部の実施形態では、この製剤は、1つまたは複数の緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液(複数可)(例えば、リン酸ナトリウム緩衝液(例えば、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウムなど)、クエン酸塩緩衝液、マレイン酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液など)を、さらに含み得る。当業者に理解されるように、1つまたは複数の緩衝剤(複数可)は、使用に適切なpH(例えば、約4.5〜約8のpH)を達成するために、所与の製剤の他の構成要素と組み合わせて選択すべきである。
ある特定の実施形態では、この緩衝剤は、1つのリン酸塩緩衝液または2つもしくはそれ超のリン酸塩緩衝液の組合せである。ある特定の実施形態では、この緩衝剤は、二塩基性リン酸ナトリウムおよび一塩基性リン酸ナトリウムである。
緩衝剤(複数可)、例えば、リン酸塩緩衝剤(複数可)について典型的な濃度は、約0.005モル濃度〜0.1モル濃度であり得る。一部の実施形態では、この緩衝剤(複数可)は、約0.01〜約0.1、約0.01〜約0.08、約0.01〜約0.05、約0.01〜約0.04、約0.02〜約0.1、約0.02〜約0.08、約0.02〜約0.06、約0.02〜約0.05、約0.02〜約0.04モル濃度などの濃度であり得る。特定の実施形態では、2つの緩衝剤が存在する。例示的な緩衝剤には、二塩基性リン酸ナトリウム(例えば、二塩基性リン酸ナトリウム.7H2O)と一塩基性リン酸ナトリウム(例えば、一塩基性リン酸ナトリウム無水物)との組合せが含まれる。一部の実施形態では、緩衝剤(複数可)の濃度は、約0.005モル濃度、約0.01モル濃度、約0.02モル濃度、約0.03モル濃度、約0.04モル濃度、約0.05モル濃度、約0.06モル濃度、約0.07モル濃度または約0.1モル濃度である。
本発明のさらなる一態様は、医薬の製造における、本明細書に記載される製剤の使用を含む。特に、本明細書に記載される状態の処置および/または予防における使用のための医薬の製造。さらに、本明細書中で様々に記載される製剤は、特記しない限り、本明細書に記載される方法に従う、状態の処置および/または予防における使用のための医薬の製造における使用のためにも意図される。
製剤化の方法は、当該分野で周知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、第19版(1995年)中に開示されている。本明細書に提供される組成物および薬剤は、任意の治療的に有効な投薬レジメンにおいて、本発明の方法に従って投与され得る。投薬量および頻度は、有害な影響なしに薬剤の有効なレベルを創出するために選択される。本発明の化合物の有効量は、投与の経路、処置されている温血動物の型、および考慮されている特定の温血動物の肉体的特徴に依存する。この量を決定するためのこれらの因子およびそれらの関係性は、医学分野の当業者に周知である。この量および投与の方法は、最適な効力を達成するために個別化され得るが、体重、食餌、同時発生的薬物療法および医薬分野の当業者が認識する他の因子などの因子に依存する。
ある特定の実施形態では、これらの医薬組成物は、鼻腔内スプレー、吸入および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達され得る。鼻エアロゾルスプレーを介して遺伝子、ポリヌクレオチドおよびペプチド組成物を肺に直接送達するための方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および米国特許第5,804,212号(各々、その全体が参照として本明細書に具体的に組み込まれる)中に記載されている。同様に、鼻腔内微小粒子樹脂(Takenagaら、1998年)およびリゾホスファチジル−グリセロール化合物(その全体が参照として本明細書に具体的に組み込まれる米国特許第5,725,871号)を使用した薬物の送達もまた、医薬品の分野において周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroetheylene)支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,045号(その全体が参照として本明細書に具体的に組み込まれる)に記載されている。
ある特定の実施形態では、この送達は、適切な宿主細胞中への本発明の組成物の導入のための、リポソーム、ナノカプセル、微小粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞などの使用によって生じ得る。特に、本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、ナノ粒子などのいずれかの中に封入されて、送達のために製剤化され得る。製剤化およびかかる送達ビヒクルの使用は、公知の従来の技術を使用して実施され得る。
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される薬剤は、生体適合性および生分解性の基材、例えばポリマーおよびマトリックスを含む、薬学的に許容される固体基材に結合され得る。かかる固体基材の例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタミン酸のコポリマー、分解不能なエチレン酢酸ビニール、分解可能な乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)およびLUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドから構成される注射可能なミクロスフェア)、ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸、コラーゲン、金属、ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミネート、バイオセラミック材料および精製されたタンパク質が含まれるがこれらに限定されない。
特定の一実施形態では、この固体基材は、Atrigel(商標)(QLT,Inc.、Vancouver、B.C.)を含む。このAtrigel(登録商標)薬物送達系は、生体適合性の担体中に溶解された生分解性のポリマーからなる。医薬品は、製造の時点でこの液体送達系中にブレンドされ得、または製品に依存して、使用の時点で医師によって後に添加され得る。液体製品が、小ゲージ針を介して皮下空間中に注射されるか、またはアクセス可能な組織部位中にカニューレを介して配置される場合、組織液中の水は、ポリマーを沈降させ、固体インプラント中の薬物を捕捉させる。次いで、インプラント内に封入された薬物は、ポリマーマトリックスが時と共に生分解する場合に、制御された様式で放出される。
特定の実施形態では、投与されるHRS−Fcコンジュゲート組成物の量は、一般に、約0.1〜約100mg/kgの投薬量の範囲であり、典型的には、経口、皮下または静脈内で投与される場合、約0.1〜10または20mg/kgの範囲である。特定の実施形態では、投薬量は、約1mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約7.5mg/kgまたは約10mg/kgである。ある特定の実施形態では、組成物は、0.1〜10mg/kgまたは0.5〜5mg/kgの単一投薬量で投与される。一部の実施形態では、組成物は、0.1〜50mg/kg、0.5〜20mg/kgまたは5〜20mg/kgの投薬量で投与される。
ヒトについて、使用される1日投薬量は、約0.1mg/kg〜0.5mg/kg、約1mg/kg〜5mg/kg、約5mg/kg〜10mg/kg、約10mg/kg〜20mg/kg、約20mg/kg〜30mg/kg、約30mg/kg〜50mg/kgおよび約50mg/kg〜100mg/kg/24時間の範囲であり得る。
より長い半減期を有するHRS−Fcコンジュゲートについて、使用されるヒト投薬量は、例えば、約0.1mg/kg/週〜0.5mg/kg/週、約1mg/kg/週〜5mg/kg/週、約5mg/kg/週〜10mg/kg/週、約10mg/kg/週〜20mg/kg/週、約20mg/kg/週〜30mg/kg/週、約30mg/kg/週〜50mg/kg/週または約50mg/kg/週〜100mg/kg/週の範囲であり得る。
なおより長い半減期を有するHRS−Fcコンジュゲートは、ヒトにおいて、約0.1mg/kg/月〜0.5mg/kg/月、約1mg/kg/月〜5mg/kg/月、約5mg/kg/月〜10mg/kg/月、約10mg/kg/月〜20mg/kg/月、約20mg/kg/月〜30mg/kg/月、約30mg/kg/月〜50mg/kg/月または約50mg/kg/月〜100mg/kg/月で投薬され得る。
種々の実施形態では、この投薬量は、約50〜2500mg/日、100〜2500mg/日、300〜1800mg/日もしくは500〜1800mg/日、または500〜2500mg/週、1000〜2500mg/週、300〜1800mg/週もしくは500〜1800mg/週、または500〜2500mg/月、1000〜2500mg/月、300〜1800mg/月もしくは500〜1800mg/月である。一部の実施形態では、この投薬量は、約100〜600mg/日の間、100〜600mg/週の間または100〜600mg/月の間である。一部の実施形態では、この投薬量は、約300mg/日と1200mg/日との間、300mg/週と1200mg/週との間、または300mg/月と1200mg/月との間である。特定の実施形態では、この組成物または薬剤は、1週間当たりまたは1カ月当たり1つまたは複数の用量で(即ち、組み合わせた用量が所望の1週間または1カ月間の投薬量を達成する)、100mg/週、2.4mg/週、300mg/週、600mg/週、1000mg/週、1200mg/週または1800mg/週の投薬量で投与される。一部の実施形態では、投薬量は、1日2回100mg、1日2回150mg、1日2回240mg、1日2回300mg、1日2回500mgまたは1日2回600mgである。種々の実施形態では、この組成物または薬剤は、単一の投薬または反復投薬で投与される。初回投薬量および引き続く投薬量は、同じでも異なってもよい。
一部の実施形態では、総1日用量は、約0.001mg、約0.005mg、約0.01mg、約0.05mg、約0.1mg、0.5mg、1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mgまたは約100mg/24時間であり得る。
一部の実施形態では、総1週間用量は、約0.001mg、約0.005mg、約0.01mg、約0.05mg、約0.1mg、0.5mg、1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mgまたは約100mg/週であり得る。
一部の実施形態では、総1カ月用量は、約0.001mg、約0.005mg、約0.01mg、約0.05mg、約0.1mg、0.5mg、1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mgまたは約100mg/月であり得る。
数日間またはそれ超にわたる反復投与のために、その状態に依存して、処置は、疾患症状の所望の抑制が生じるまで、持続される。これらおよび他の治療(例えば、ex vivo治療)の進行は、従来の方法およびアッセイによって容易にモニタリングされ得、医師または他の当業者に公知の基準に基づき得る。
持続性の送達デバイスおよび組成物について、かかる送達系中に含まれるHRSの総用量は、持続性の放出系の放出プロファイルに依存して、対応してより大きいことが、さらに理解される。従って、5日間の期間にわたってHRS−Fcコンジュゲートを送達するために意図された持続性の放出組成物またはデバイスは、典型的に、HRS−Fcコンジュゲートの1日用量の少なくとも約5〜10倍を含む;365日間の期間にわたってHRS−Fcコンジュゲートを送達するために意図された持続性の放出組成物またはデバイスは、典型的に、HRS−Fcコンジュゲートの1日用量の少なくとも約400〜800倍を含む(持続性の放出系を使用して投与される場合の、HRS−Fcコンジュゲートの安定性およびバイオアベイラビリティに依存する)。
ある特定の実施形態では、組成物または薬剤は、例えば、約10分間〜90分間の期間にわたる注入などによって、静脈内投与される。他の関連の実施形態では、組成物または薬剤は、例えば、ある期間にわたって約0.1〜約10mg/kg/時間の間の投薬量で、連続的注入によって投与される。この期間は変動し得るが、ある特定の実施形態では、この期間は、約10分間〜約24時間の間または約10分間〜約3日間の間であり得る。
特定の実施形態では、有効量または治療有効量は、約300pM超、約1nM超、約10nM超、約100nM超または約1000nM超の、被験体の血漿中のHRS−Fcコンジュゲートの濃度を維持するのに十分な量である。
ある特定の実施形態では、静脈内または皮下投薬量は、約1,000nM〜約5,000nMの間または約200nM〜約1,000nMの間または約20nM〜約200nMの間の血漿濃度(Cmax)を達成するのに十分な量である。
特定の実施形態では、HRS−Fcコンジュゲートは、約300pMと約1nMとの間の平均トラフ値濃度および/または約300pMと約1nMとの間の定常状態濃度を有する、哺乳動物中での血漿濃度を達成するのに十分な量および頻度で投与される。一部の実施形態では、哺乳動物の血漿中のHRS−FcコンジュゲートのCminは、約1nM超および/または約1nMと約10nMとの間の定常状態濃度で維持される。ある特定の実施形態では、哺乳動物の血漿中のHRS−FcコンジュゲートのCminは、約10nM超および/または約10nMと約100nMとの間の定常状態濃度で維持される。ある特定の実施形態では、哺乳動物の血漿中のHRS−FcコンジュゲートのCminは、約100nM超および/または約100nMと約1000nMとの間の定常状態濃度で維持される。
本発明の特定の実施形態では、HRS−Fcコンジュゲートの有効量またはHRS−Fcコンジュゲートの血漿濃度は、例えば、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間、少なくとも60分間、少なくとも90分間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、または少なくとも6カ月間にわたり、単一の投与で達成または維持される。
特定の実施形態では、この有効投薬量は、本明細書に記載される組成物または薬剤の血漿レベルまたは平均トラフ値濃度を達成する。これらは、慣用的手順を使用して容易に決定され得る。
本発明の実施形態は、他の態様では、本明細書に記載される、本発明のHRS−Fcコンジュゲート、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、多ユニット複合体、それらの組成物などのうちの1つまたは複数で満たされた1つまたは複数のコンテナを含むキットを提供する。これらのキットは、かかる組成物を使用する方法についての書面による指示を含み得る(例えば、細胞シグナル伝達、血管新生、がん、炎症性状態、診断などをモジュレートするため)。
本明細書中のキットは、処置されている適応症のためにまたは所望の診断適用のために適切なまたは望まれる、1つまたは複数のさらなる治療剤または他の構成要素もまた含み得る。さらなる治療剤は、所望に応じて、第2のコンテナ中に含まれ得る。さらなる治療剤の例には、抗新生物剤、抗炎症剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、血管新生剤などが含まれるがこれらに限定されない。
本明細書中のキットは、送達の意図した様式(例えば、ステント、移植可能なデポーなど)を促進するために必要なまたは望まれる1つまたは複数のシリンジまたは他の構成要素もまた含み得る。
ここで、本発明のある特定の実施形態は、以下の実施例によって説明される。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化され得、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈すべきではない;むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全になり、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるように、提供されている。
(実施例1)
Hisタグ化Resokine(アミノ酸1〜60を含むHRS)の生成
コドン最適化および遺伝子合成。
Resokine(HRS(1−60))をコードするDNAを、DNA2.0(Menlo Park、CA)が開発したアルゴリズムを使用して、E.coli発現のためにコドン最適化した。
コドン最適化DNA配列は以下の通りである:
ATGGCAGAACGTGCGGCATTGGAAGAATTGGTTAAACTGCAAGGTGAACGTGTTCGTGGTCTGAAGCAGCAGAAGGCTAGCGCGGAGCTGATCGAAGAAGAGGTGGCCAAACTGCTGAAGCTGAAGGCGCAGCTGGGCCCGGACGAGAGCAAACAAAAGTTCGTCCTGAAAACCCCGAAACACCACCATCACCATCAC(配列番号261) 。
翻訳されたタンパク質配列は以下の通りである:
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPKHHHHHH(配列番号262) 。
さらに、操作されたバージョンのこの構築物を、N末端(さらなるN末端のMet残基およびCys残基を含む)、C末端(61位におけるさらなるC末端システインを含む)の近傍に、およびこの分子の2つのアルファヘリックスセクションを接続するリンカードメイン(変異Ala26→Cysを含む)中に挿入されたシステイン残基によって調製した。これらの構築物についてのコドン最適化DNA配列および対応するアミノ酸配列を、以下に列挙する
H−N4:1−H(コドン−HRS(1−60)−M1MC−6×His):
ATGTGTGCAGAAAGAGCCGCCCTGGAAGAGTTAGTTAAGTTGCAAGGTGAACGTGTCCGTGGTCTGAAGCAGCAGAAGGCTAGCGCGGAGCTGATCGAAGAAGAGGTGGCCAAACTGCTGAAGCTGAAGGCGCAGCTGGGCCCGGACGAGAGCAAACAAAAGTTCGTCCTGAAAACCCCGAAACACCACCATCACCATCAC(配列番号263) 。
翻訳されたタンパク質配列は以下の通りである:
MCAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPKHHHHHH(配列番号264)
H−N4:2−H(コドン−HRS(1−60)−A26C−6×His):
ATGGCAGAACGTGCGGCATTGGAAGAATTGGTTAAACTGCAAGGTGAACGTGTTCGTGGTCTGAAGCAGCAGAAGTGCAGCGCGGAGCTGATCGAAGAAGAGGTGGCCAAACTGCTGAAGCTGAAGGCGCAGCTGGGCCCGGACGAGAGCAAACAAAAGTTCGTCCTGAAAACCCCGAAACACCACCATCACCATCAC(配列番号265) 。
翻訳されたタンパク質配列は以下の通りである:
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKCSAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPKHHHHHH(配列番号266)
H−N4:3−H(コドン−HRS(1−60)−C61−6×His):
ATGGCAGAACGTGCGGCATTGGAAGAATTGGTTAAACTGCAAGGTGAACGTGTTCGTGGTCTGAAGCAGCAGAAGGCTAGCGCGGAGCTGATCGAAGAAGAGGTGGCCAAACTGCTGAAGCTGAAGGCGCAGCTGGGCCCGGACGAGAGCAAACAAAAGTTCGTCCTGAAAACCCCGAAATGCCACCACCATCACCATCAC(配列番号267) 。
翻訳されたタンパク質配列は、以下の通りである:
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPKCHHHHHH(配列番号268) 。
対応する遺伝子を、C末端6×Hisタグと共に合成し(DNA2.0)、pJexpress411発現ベクター中にサブクローニングし、ここでは、T7プロモーターを、転写を駆動するために使用し、カナマイシン抵抗性を、抗生物質選択のために使用した。
発現株。
BL21(DE3)コンピテント細胞(Novagen、カタログ番号69450)を、記載されるように、適切なコドン最適化発現構築物で形質転換した。簡潔に述べると、このプラスミド(1μL)を、50μLのコンピテント細胞中に添加した。反応物を混合し、氷上で30分間インキュベートした。この反応は、42℃で30秒間ヒートショックし、その後氷上で2分間寒冷ショックした。次いで、SOC培地(500μL)を添加し、チューブを、37℃、250rpmで1時間インキュベートした。最後に、1アリコートの培養物(50μL)を、カナマイシンプレート(Teknova S9641)上に広げ、37℃で一晩インキュベートした。単一コロニーを選別し、発現のスケールアップに使用した。
培地。
M9YE培地を、200mLの無菌M9最小塩5×(BD248510)、無菌精製水中778mLの30g/L酵母抽出物(BD212750)、20mLの無菌化20%グルコース(Sigma G7021)および2mL無菌1.0M MgSO4(Sigma
M7506)を混合することによって調製した。供給溶液は、5%酵母抽出物、50%グルコース、微量元素および2g/L硫酸マグネシウムを含む。硫酸カナマイシン(Invitrogen 15160)を、M9YEおよび供給溶液の両方中100μg/mLの最終濃度になるように添加した。
流加発酵。
MFCS/DAソフトウェアを備えた4L発酵槽(Sartorius Biostat
B plus)を、流加発酵に使用した。かき混ぜを、1000rpmに設定した。pH値を、30%水酸化アンモニウム(Sigma 221228)および30%リン酸(Sigma P5811)の添加によって自動的に7.0に制御した。空気を、オイルフリーダイヤフラム空気圧縮機(Cole−Parmer)によって4L/分の流速で提供した。空気を、0.2μm Midisart 2000フィルター(Sartorius 17805)を通過させた。純粋酸素(West Air)を供給して、溶解酸素レベルを70%に自動的に制御した。温度を、Neslab RTE7サーキュレーター(Thermo Scientific)を用いて30℃に制御した。発泡を、antifoam 204(Sigma A8311)の添加によって制御した。発酵槽中のM9YE培地の初期体積は、3Lであった。発酵槽に、30℃および250rpmで一晩増殖させた種培養物150mLを接種した。容器中のグルコースが枯渇した場合、濃縮供給溶液を、0.9mL/分に設定した蠕動ポンプによって容器中に導入した。600nmにおける細胞の光学密度が約30に達した時に、培養物を、0.5mM IPTG(Fisher Scientific BP1755)で誘導した。培養を一晩(約18時間の流加相)行い、6,000×gで1時間の遠心分離によって回収した。細胞ペレットを、精製まで−20℃で貯蔵した。Resokineの発現を、SDS−PAGE上で確認した。
タンパク質の精製。ResokineおよびそのCysバリアントを、細胞溶解および清澄化;固定化金属アフィニティクロマトグラフィーおよびカチオン交換クロマトグラフィーを介してE.coli細胞ペーストから精製した。ResokineまたはCysバリアントを含む10gの重量の凍結細胞を解凍し、5mMベータ−メルカプトエタノール(Sigmaカタログ番号M7154−25ML)および1つのプロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(Rocheカタログ番号05 056 489 001)と一緒に、4:1のml/gペースト比で、1×NiNTA緩衝液(50mM Tris、0.3M NaCl 25mMイミダゾール pH8)中に再懸濁した。全ての細胞を再懸濁した後、細胞を、Microfluidizer M−110Yにおいて氷上で溶解させ、氷上で15000psiで2回通過させて、可溶性ResokineまたはCysバリアントを放出させた。NiNTA緩衝液を、2回の通過後に追加して、残りの溶解物をMicrofluidizerを通して流した(溶解後に100〜120mlの最終体積)。溶解物を、15000×gで4℃で30分間遠心分離した。上清を、Acropak 200(Pallカタログ番号12094)で0.45/0.2um濾過した。濾過した上清は、清澄化された溶解物である。
固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)精製。10gの細胞ペースト由来の清澄化された溶解物を、3ml NiNTA樹脂(Qiagen番号30210)を含む、NiNTA緩衝液で予め平衡化した重力流カラム上にロードした。樹脂を、50カラム体積(CV)の、1×NiNTA緩衝液中0.1%のTriton X−114で洗浄してエンドトキシンを除去し、次いで、30CVの1×NiNTA緩衝液で洗浄し、その後、5CVのNiNTA溶出緩衝液(50mM Tris、0.3M NaCl、0.3Mイミダゾール pH8で4℃で溶出した。
カチオン交換(CEX)クロマトグラフィー精製。CEXロードを、CEX A緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、pH7.0、2mM DTT)中でNiNTA溶離液を1/20×希釈することによって調製し、次いで、CEX Aで平衡化したSP Sepharose High Performanceカラム上にロードした。タンパク質を、20CVにわたって0〜100%Bの直線勾配で溶出し、214nmにおいて吸光度をモニタリングしたが、ここで、A=10mMリン酸ナトリウム、pH7.0、2mM DTTであり、B=10mMリン酸ナトリウム、1M塩化ナトリウム、2mM DTT pH7.0である。214nmにおける吸光度によって、溶出勾配中の主要ピークに対応する画分をプールした。CEXプールを、Amicon Ultra−15 3kD MWCO超遠心分離デバイスを使用して、1×PBS pH7.4(Gibco番号10010)へと緩衝液交換した。
(実施例2)
Hisタグ化全長ヒスチジル−tRNAシンテターゼ(HRS)の生成
コドン最適化および遺伝子合成。全長HisRS遺伝子を、E.coli発現のためにコドン最適化し、pET21aベクター中にサブクローニングし、このとき、T7プロモーターを使用して転写を駆動した。さらに、5−アミノ酸リンカーおよび6×Hisタグを、C末端に結合させた。
DNA配列は以下の通りである:
ATGGCGGAACGTGCCGCACTGGAAGAATTGGTTAAATTACAGGGAGAACGCGTACGTGGTCTTAAACAACAAAAAGCCTCTGCGGAATTGATTGAAGAAGAAGTTGCCAAATTACTGAAACTGAAAGCTCAACTTGGACCCGATGAAAGTAAACAAAAATTTGTGTTGAAAACGCCCAAAGGAACCCGTGATTATAGTCCACGTCAAATGGCCGTTCGTGAAAAAGTGTTCGACGTTATTATTCGCTGTTTTAAACGTCACGGTGCTGAAGTAATCGATACCCCCGTATTTGAATTGAAAGAGACTCTGATGGGCAAATATGGTGAAGATTCTAAACTGATTTATGATTTGAAAGACCAAGGAGGTGAACTGCTGAGCCTGCGCTACGACTTAACTGTGCCTTTTGCCCGTTACTTAGCCATGAATAAaTTaACCAACATCAAACGTTACCATATTGCAAAAGTATATCGCCGCGACAACCCTGCAATGACTCGTGGACGCTATCGCGAATTCTATCAGTGTGATTTTGATATTGCCGGAAATTTCGACCCGATGATCCCGGATGCCGAGTGTTTGAAAATTATGTGTGAAATTCTGAGTTCGTTGCAGATCGGAGACTTTCTTGTAAAAGTTAATGACCGCCGTATTCTGGATGGTATGTTTGCTATTTGCGGTGTTTCTGATTCCAAATTCCGTACAATCTGCTCAAGCGTGGACAAATTGGATAAAGTGTCTTGGGAAGAAGTAAAAAATGAAATGGTGGGAGAAAAAGGCCTGGCTCCAGAAGTAGCAGACCGTATTGGTGACTATGTTCAACAACATGGCGGTGTGTCCTTAGTCGAACAGTTATTACAGGATCCTAAACTGAGCCAAAATAAACAAGCACTTGAAGGACTGGGAGATCTGAAATTACTCTTTGAATATCTGACCTTATTTGGGATTGATGATAAAATTAGCTTTGATCTGAGCTTGGCCCGCGGTCTTGATTATTATACCGGCGTGATTTACGAAGCTGTTCTCTTGCAAACCCCAGCCCAGGCGGGCGAAGAGCCTTTGGGAGTCGGCAGTGTGGCAGCCGGTGGTCGTTATGATGGTTTGGTAGGAATGTTTGACCCTAAAGGCCGTAAAGTACCATGTGTGGGGCTTTCTATCGGTGTCGAACGTATCTTTTCTATTGTTGAACAACGTCTTGAAGCTTTGGAGGAAAAGATCCGTACCACGGAAacCCAAGTCTTAGTTGCaAGTGCCCAAAAAAAACTGTTAGAAGAACGCCTGAAACTCGTATCAGAACTTTGGGACGCCGGCATCAAGGCCGAACTGCTGTATAAAAAGAACCCGAAATTGTTAAACCAACTCCAGTATTGTGAAGAAGCTGGGATCCCACTCGTAGCTATTATTGGTGAGCAAGAATTAAAAGATGGCGTGATTAAACTGCGTTCAGTAACAAGCCGTGAAGAGGTAGATGTACGTCGCGAAGACTTAGTGGAAGAAATTAAACGCCGCACCGGTCAACCGTTATGTATTTGCGCGGCCGCACTCGAGCACCACCACCACCACCACTGA(配列番号269) 。
翻訳されたタンパク質の配列は以下の通りである:
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPKGTRDYSPRQMAVREKVFDVIIRCFKRHGAEVIDTPVFELKETLMGKYGEDSKLIYDLKDQGGELLSLRYDLTVPFARYLAMNKLTNIKRYHIAKVYRRDNPAMTRGRYREFYQCDFDIAGNFDPMIPDAECLKIMCEILSSLQIGDFLVKVNDRRILDGMFAICGVSDSKFRTICSSVDKLDKVSWEEVKNEMVGEKGLAPEVADRIGDYVQQHGGVSLVEQLLQDPKLSQNKQALEGLGDLKLLFEYLTLFGIDDKISFDLSLARGLDYYTGVIYEAVLLQTPAQAGEEPLGVGSVAAGGRYDGLVGMFDPKGRKVPCVGLSIGVERIFSIVEQRLEALEEKIRTTETQVLVASAQKKLLEERLKLVSELWDAGIKAELLYKKNPKLLNQLQYCEEAGIPLVAIIGEQELKDGVIKLRSVTSREEVDVRREDLVEEIKRRTGQPLCICAAALEHHHHHH(配列番号270) 。
発現株。BL21(DE3)コンピテント細胞(Novagen、カタログ番号69450)を、コドン最適化発現構築物で形質転換した。簡潔に述べると、このプラスミド(1μL)を、50μLのコンピテント細胞中に添加した。反応物を混合し、氷上で30分間インキュベートした。この反応は、42℃で30秒間ヒートショックし、その後氷上で2分間寒冷ショックした。次いで、SOC培地(500μL)を添加し、チューブを、37℃、250rpmで1時間インキュベートした。最後に、1アリコートの培養物(50μL)を、アンピシリンプレート(Teknova S9641)上に広げ、37℃で一晩インキュベートした。単一コロニーを選別し、発現のスケールアップに使用した。
培地。M9YE培地を、200mLの無菌M9最小塩5×(BD248510)、無菌精製水中778mLの30g/L酵母抽出物(BD212750)、20mLの無菌化20%グルコース(Sigma G7021)および2mL無菌1.0M MgSO4(Sigma M7506)を混合することによって調製した。供給溶液は、5%酵母抽出物、50%グルコース、微量元素および2g/L硫酸マグネシウムを含む。アンピシリンを、M9YEおよび供給溶液の両方中100μg/mLの最終濃度になるように添加した。
流加発酵。MFCS/DAソフトウェアを備えた4L発酵槽(Sartorius Biostat B plus)を、流加発酵に使用した。かき混ぜを、1000rpmに設定した。pH値を、30%水酸化アンモニウム(Sigma 221228)および30%リン酸(Sigma P5811)の添加によって自動的に7.0に制御した。空気を、オイルフリーダイヤフラム空気圧縮機(Cole−Parmer)によって4L/分の流速で提供した。空気を、0.2μm Midisart 2000フィルター(Sartorius 17805)を通過させた。純粋酸素(West Air)を供給して、溶解酸素レベルを70%に自動的に制御した。温度を、Neslab RTE7サーキュレーター(Thermo Scientific)を用いて30℃に制御した。発泡を、antifoam 204(Sigma A8311)の添加によって制御した。発酵槽中のM9YE培地の初期体積は、3Lであった。発酵槽に、30℃および250rpmで一晩増殖させた種培養物150mLを接種した。容器中のグルコースが枯渇した場合、濃縮供給溶液を、0.9mL/分に設定した蠕動ポンプによって容器中に導入した。600nmにおける細胞の光学密度が約30に達した時に、培養物を、0.5mM IPTG(Fisher Scientific BP1755)で誘導した。培養を一晩(約18時間の流加期)行い、6,000×gで1時間の遠心分離によって回収した。細胞ペレットを、精製まで−20℃で貯蔵した。HisRSの発現を、SDS−PAGE上で確認した。
HisRSの精製
凍結細胞ペースト(40g)を、160mL(即ち、4mL/g細胞ペースト)の溶解緩衝液(20mM Tris、400mM NaCl、20mMイミダゾール、14mM
β−ME、pH8.0、4℃)中に再懸濁した。完全EDTA−FREEプロテアーゼ阻害剤錠剤(Roche)を、1錠剤/50mLの比率で懸濁物に添加した。この懸濁物を、氷で冷却しながら、15,000psiでmicrofluidizer(Microfluidics)を2回通過させた。この溶解物を、35,000×gで45分間4℃で遠心分離した。上清を、0.22μm Acropak 200カプセルフィルター(Pall)を通して濾過した。
この清澄化された溶解物を、Ni−NTA結合緩衝液(20mM Tris、400mM NaCl、20mMイミダゾール、5mM β−ME、pH8.0、4℃)で予め平衡化したNi−NTA樹脂(Qiagen)に結合させた。このカラムを、500カラム体積のNi−NTA結合緩衝液+0.1%Triton X−114で洗浄し、その後50カラム体積のNi−NTA結合緩衝液で洗浄した。結合したタンパク質、HisRSを、5カラム体積のNi−NTA溶出緩衝液(20mM Tris、400mM NaCl、500mMイミダゾール、5mM β−ME、pH8.0、4℃)で溶出させた。
このNi−NTA溶出物を、アニオン交換カラムによってさらに精製した。具体的には、このNi−NTA溶出物を、Q結合緩衝液(20mM Tris、50mM NaCl、1mM DTT、pH7.4)に対して透析し、Q結合緩衝液で予め緩衝化した5mL
Q−セファロースカラム上にロードした。所望の生成物を、10カラム体積にわたって、Q結合緩衝液中の0〜1M NaClの直線勾配でカラムから溶出した。精製されたHisRSを濃縮し、PBS(Invitrogen製品番号10010)+1mM DTTへと緩衝液交換し、0.22μm無菌フィルターを通して濾過した。
(実施例3)
全長HARS中のシステイン残基の活性部位力価決定
全長HARS中の表面曝露されたシステイン残基の位置および正体を決定するために、精製された組換えタンパク質を、ネイティブ条件下および変性条件下でヨードアセトアミドと共にインキュベートして、任意の表面曝露されたシステイン残基をアルキル化した。次いで、試料を、限定的タンパク質分解とその後のLC質量分析によって分析して、改変されたシステイン残基の位置および正体を決定した。
アルキル化研究を実施するために、最初に、全長ポリヒスチジンタグ化HARS(PBS、10%グリセロール、2mM DTT、pH7.4中6.65mg/ml)(実施例2)を、室温で45分間の10mM DTTとのインキュベーションによって、完全に還元した。ヨードアセトアミドとのインキュベーションは、暗中で30分間、30mM(「低」)または100mM(「高」)のいずれかのヨードアセトアミド濃度で実施し、HARSのネイティブ試料および変性試料に対して実施して、反応が成功したことを確認した。変性HARSを、50℃で45分間の4Mグアニジンとのタンパク質のプレインキュベーションによって調製した。ヨードアセトアミドとのインキュベーション後、試料を、少なくとも3回の緩衝液交換で、10KDa分子量カットオフ透析膜を使用して4℃でPBS pH7.4中で透析し、次いで、以下に記載されるように質量分析に使用した。
簡潔に述べると、試料を、0.1%ギ酸中に1m/mlの最終濃度になるようにタンパク質を希釈することによって調製し、タンパク質の5μg試料を注入し、逆相HPLCとその後のAgilent TOF質量分析器を使用する質量分析とによって分析した。最初に、試料を、18分間にわたる(2〜60%の移動相B)の直線勾配(移動相A:0.1%ギ酸;移動相B:アセトニトリル中0.1%のギ酸)を使用して、C3 HPLCカラム(Agilent ZORBAX 300SB−C3、5μm、2.1×150mmカラム)上で分離した。試料の質量分析は、プロファイルモードであった。データを取得し、MassHunter(Agilent)によって分析した。測定された分子量を、MassHunter Bioconfirm Agilent)によって計算した。
これらの結果(データ示さず)は、ネイティブ条件下で、3つまたは4つのみのシステイン残基が容易に改変されるが、比較として、このタンパク質がそのネイティブコンフォメーションを破壊するために最初に変性される場合には10個全てのシステインが容易に変性されたことを実証した。
改変されたシステイン残基の正体を同定するために、ヨードアセトアミドとのインキュベーションの前および後の試料を、37℃で30分間にわたる4MグアニジンHCl中での変性に供し、その後、室温で20時間にわたり10:1比(w/w)を使用する、LysCによるタンパク質分解切断に供した。タンパク質消化物を、Dionex HPLCおよびThermo LTQ XL質量分析器を使用してLC/MS/MSによって分析した。最初に、試料を、移動相Bの勾配(移動相A:0.1%ギ酸;移動相B:アセトニトリル中0.1%のギ酸)を使用して、C18 HPLCカラム(Agilent ZORBAX 300SB−C18、5μm、2.1×150mm)上で分離した。この勾配は、10分間の1〜3%Bで始まり、次いで、76分間の40%Bにする。分離されたタンパク質消化物を、プロファイルモードのフルMSまたはフルMSスキャンのいずれかによって分析し、上位3つの同定されたイオンに対するタンデムMS/MSスキャンによって分析した。データを取得し、Xcalibur(Thermo)によって分析した。ペプチド配列決定は、各ペプチドのMS/MSスペクトルに基づいたが、ここで、bイオンピークおよびyイオンピークは、その理論上のイオンと一致する。ペプチドの同定および改変部位のマッピングは、分子量に基づき、MS/MSスペクトルを使用したペプチド配列決定によって確認され、表E1中に列挙される。
これらの結果は、Cys235、Cys507およびCys509が、ヨードアセトアミド処理によって容易に改変され、従って、化学的改変を容易に受け入れる表面曝露された残基である可能性が高いことを明らかにした(データ示さず)。
(実施例4)
変更されたシステイン含量を有する改変されたHRSポリペプチドの創出
全長HRS中の10個の天然に存在するシステイン残基のいずれが代替的な天然に存在するアミノ酸残基へと変異し得るかまたは欠失し得るかを決定するために、プライマーを、各システイン残基を選択的に変異させるように設計した。これを達成するために、以下に基づくプライマーが使用され得る(表E2を参照のこと)。
活性部位力価決定データを確認するために、全長HRSの結晶構造を、プログラムGetarea1.1を使用して分析して、10個のシステイン残基の相対的位置を評価した。これらの結果(データ示さず)は、C235、C507およびC509に加えて、配列番号1のC174位、C191位およびC224位におけるシステインが、少なくとも部分的に表面に曝露され、標準的な試薬によって改変され得る可能性が高いことを示唆している。さらに、HRSの結晶構造の分析は、C174およびC191は、内部ジスルフィド結合を形成することが可能であるが、C507およびC509は、HRSダイマー内の鎖間ジスルフィド結合を形成することが可能であり、両方とも、有益に排除され得る微小不均一性に潜在的に寄与することを示唆している。
鎖間ジスルフィド結合形成に寄与することにおける2つのC末端システイン残基の重要性を直接評価するために、全長のHis−タグ化バージョンおよびHRSのC末端欠失バージョン(HRS(1−506))を、還元の前および後にSDS PAGE分析によって比較した。図3に示される結果は、全長HRSが、非共有結合およびSS−結合ダイマーの約50:50混合物であるが、HRS(1−506)はSS−結合ダイマーを劇的に低減させることを実証している。以下に記載するような競合的ELISAによる2つのタンパク質の比較は、両方のタンパク質が、Jo−1抗体結合に関して匹敵するIC50値を有することを明らかにした(データ示さず)。HRS(1−506)と関連する劇的に低減した鎖間ジスルフィド結合形成は、このバリアントが、改善された次世代生成物形態の開発のための適切な出発点であることを示唆している。
全長HRS中の残りの4つの部分的に曝露されたシステイン残基のいずれが代替的な天然に存在するアミノ酸残基へと変異し得るかを決定するために、C174残基、C191残基、C224残基およびC235残基を選択的に変異させるようにプライマーを設計した。これを達成するために、表E3中に列挙される以下のプライマーを使用した:
変異を、製造業者の指示に従って、QuikChange Lightning Site−Directed Mutagenesis Kit(Agilent、カタログ番号210518)を使用した変異誘発によって導入した。変異誘発後、試料を、37℃でDpn I酵素で処理し、慣用的手順を使用してXL10 goldコンピテント細胞中に形質転換した。複数のコロニーを、37℃で一晩terrificブロス中で増殖させ、得られたプラスミドを、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagenカタログ番号27106)を用いて精製する。これらのプラスミドを配列決定して、各クローンのアミノ酸置換の正体を確認する。代表的なクローンを、NovaBlueコンピテント細胞(Novagenカタログ番号70181)中に形質転換し、37℃で一晩250mlのM9YE培地中で増殖させた。maxiprepを、HiSpeed Plasmid Maxi Kit(Qiagenカタログ番号12663)を使用して実施して、さらなる分析のための変異体のプラスミドストックを創出した。濃度および純度を、A260、A280およびA230を測定することによって決定した。精製されたプラスミドを、標準的なプロトコールに従って、E.coliまたは哺乳動物細胞中へのトランスフェクション前に−20℃で貯蔵した。
各残基の変異の影響を評価するために、代表的なクローンを、E.coliまたは哺乳動物細胞中に形質転換し、以下に記載されるJo−1抗体結合を決定するためのELISAアッセイにおける、その生成収量、エンドトキシン含量、安定性および相対的活性。
タンパク質生成。BL21(DE3)コンピテント細胞(Novagen、カタログ番号69450)またはW3110細胞(ATTC)を、上記のように低減したシステインの構築物をコードするコドン最適化発現構築物で形質転換した。組換えタンパク質を生成するために使用した発現系、発酵培地、発酵条件および精製ステップは、生成規模および使用される細胞ペーストの量について調整した後、以下の実施例4に記載されるものと本質的に同じであった。以下の表E4は、生成されたタンパク質についての精製収量およびのエンドトキシンレベルを示す。
これらの結果は、低減型バリアントの全てが、比較的良好に発現され、低いエンドトキシンレベルで首尾よく精製されたことを示す。特に、Cys191およびCys235の変異に基づく低減したシステインバリアントは、好ましい発現レベルを示した;しかし、全てのクローンは、合理的なレベルの発現、および低いエンドトキシンレベルを示した。
精製されたタンパク質の電荷不均一性に対するシステイン変異の影響を評価するために、各クローンの試料を、等電点電気泳動によって分析した。試料(10μg)を、Life Technologies Novex pH 3−10 IEFゲル1.0mm(カタログ番号P/N EC6645BOX)、Novex IEFマーカー3−10(カタログ番号P/N 391201)、Novex pH 3−10IEF緩衝液キット(カタログ番号P/N LC5317)を使用して等電点電気泳動ゲル(pH3〜10)上にロードし、100Vで1時間、200Vで1時間、および500Vで30分間、1×カソード緩衝液(上部チャンバ)および1×アノード緩衝液(下部チャンバ)で泳動した。ゲルを、3.5%スルホサリチル酸を含む12%TCAで30分間固定し、Expedeon InstantBlue(カタログ番号P/N ISB1L)で染色した。データ(結果示さず)は、174位におけるシステインの変異が、このシステイン残基がシステイン191との分子内ジスルフィド結合形成を受ける可能性と一致して、等電点不均一性を顕著に低減させたことを示している。
得られたタンパク質の熱安定性、凝集傾向、構造およびtRNAシンテターゼ活性に対するシステイン改変の影響を評価するために、これらのタンパク質を、示差走査蛍光定量、サイズ排除HPLC(SE−HPLC)、競合的ELISAおよび活性部位力価決定によって評価した。結果を以下の表E5に示す。
示差走査蛍光定量を、熱変性の間の親油性色素の蛍光強度の関数として蛍光をモニタリングすることによって、タンパク質試料に対して実施した。研究を、100μLの最終体積のPBS pH7.0(150mM NaCl、20mMリン酸塩)中に0.5mg/mLになるように試料を希釈し、超高純度蒸留水(Gibco、P/N 10977)中にストック溶液(Applied Biosystems/Life Technologies、P/N 4461146)を20倍希釈することによって調製した熱シフト色素溶液と混合した後に、これらの試料に対して実施した。5μLの希釈色素を、100μLの試料に添加した。この混合物を、各ウェル20μLで384ウェル透明光学反応プレート(Applied Biosystems/Life Technologies P/N 4309849)中にプレーティングし、1試料当たり4ウェル複製する。このプレートを、ViiA 7 Real Time PCR Instrument(Applied Biosystems/Life Technologies、P/N 4453552)によって読み取った。熱変性プロトコールは、25℃の温度が達成されるまで、1.6℃/秒の変化速度で開始し、達成の時点で、機器を2分間この温度に維持し、その後0.5℃/秒の速度で温度を99℃までさらに増加させ、この時点で、この温度をさらに2分間維持した。
サイズ排除HPLC分析を、TSKgel Super SW3000、4.6mm ID×30cm、4μm粒子サイズ、250Åカラム(Tosoh、18675)を使用し、200mMリン酸Na、150mM NaCl pH7.0の移動相を使用し、0.3ml/分の流速で、真空脱気装置、バイナリ/クオータナリポンプ、サーモスタット付オートサンプラー、サーモスタット付カラムコンパートメント、ダイオードアレイ検出器(DAD)およびChemstationクロマトグラフィーソフトウェアを備えたAgilent 1260 HPLCシステムを用いて、精製されたタンパク質試料に対して完了した。各タンパク質の未希釈試料(40μg)を、短時間の遠心分離後に注入した。系適合性試料(ウシ血清アルブミン、BSA、Thermo Scientific、P/N:23209)および内部対照(野生型HRS)を使用して、試料をひとくくりにして、試験の妥当性を確実にした。
競合的ELISAを、全長hisタグ化HARSの、PBSで2μg/mLの濃度に調整した50μL溶液で被覆した96ウェルプレート(Immulon 4HBX)において実施した。プレートを密封し、4℃で一晩インキュベートした。使用前に、プレートを、PBSTで5回洗浄し、引き続いて、室温で1時間にわたってPBS中1%のBSA 100μlでブロッキングした。ELISAプレートをブロッキングしながら、低減したシステイン競合分子(1×10−6M〜1×10−13Mの濃度範囲にわたる)を、別々のインキュベーションプレート(Costar 3357 96ウェル)中で、4℃で1時間にわたって、1%BSA PBS中1:10,000希釈のα−Jo−1抗体(GenWay GWB−FB7A3DまたはImmunovision HJO−0100)と共にインキュベートした。ブロッキングが終了した後に、これらのELISAプレートを、PBSTで3回洗浄し、抗体および競合物を含む溶液50μLを、このELISAプレートに添加し、試料を、室温で1.5時間インキュベートした。最初の結合インキュベーション後、プレートをPBSTで5回洗浄した。次に、50μLの検出抗体(AbD Serotec Goat Anti−Human IgG F(ab’)2:HRP 0500−0099)を、1:5,000希釈で添加し、室温で1時間インキュベートした。二次的結合インキュベーション後、プレートを、PBSTで5回洗浄し、50μLのTMB基質(Thermo Scientific Pierce TMB Substrate PI−34021)を添加した。反応を8分間進行させ、この時点で、50μLの2M硫酸停止溶液を添加した。比色分析定量を、450nMでSpectraMaxプレートリーダーを使用して実施した。
各HARS506システインバリアント中の触媒活性部位の数を決定するために、活性部位力価決定アッセイ(Fershtら、(1975年)Biochemistry中に記載される)を使用した。簡潔に述べると、アッセイを、標準緩衝液(100mM HEPES pH7.5、20mM KCl)中の5μM HARS、10mM MgCl2、50μM ATP、20mM L−ヒスチジン、2ug/mL無機ピロホスファターゼ、1.65μM[γ−32P]ATPを用いて、室温で実施した。反応を、低プロファイルPCRプレートにおいて酵素で開始させ、30秒、1分、2分、4分、6分および10分において、時点を、HClO4/木炭スラリー(1:4 7%HClO4:10%木炭スラリー)を含む96ウェルPVDF multiScreenフィルタープレートMillipore中でクエンチした。ピペッティングすることによって出し入れして混合した後、試料を、Supermixシンチラント(scintillant)を含む収集プレート中にスピンし、Microbetaeプレートリーダー中で計数した。
これらの研究からの結果により、活性部位力価決定、ELISA結合および熱変性のためのTm決定によって測定した場合、システイン変異体の全てが活性であり、活性、安定性またはコンフォメーションにおける喪失がほとんどまたは全くないことが確認される。tRNAシンテターゼ活性の活性部位力価決定により、低減したシステイン変異体の全てが活性であり、従って、本発明の組成物、方法およびキットのいずれかにおける使用に適切であることが明らかである。一般に、Cys191置換は、全体的なより低い熱安定性を示したが、Cys174変異体は、等電点電気泳動で決定した場合、顕著により低い不均一性を示した。
(実施例5)
C末端短縮を有する改変された(Tagなし)HRSポリペプチド(HisRSN8)または(HRS(1−506)の創出
最後の3つのアミノ酸および野生型HisRSとHisタグとの間のリンカーを欠失させるために、プライマーを、QuikChange Lightning Site−Directed Mutagenesis Kit(Agilent、カタログ番号210519)との使用のために設計した。これを達成するために、表E6中に列挙された以下のプライマーを使用する。
欠失を、QuikChange Lightning Site−Directed Mutagenesis Kitの製造者の指示に従って作成した。変異誘発後、この試料を、37℃でDpn I酵素で処理し、慣用的手順を使用してXL10 goldコンピテント細胞中に形質転換した。複数のコロニーを、37℃で一晩luria−bertaniブロス中で増殖させ、得られたプラスミドを、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagenカタログ番号27106)を用いて精製した。これらのプラスミドを配列決定して、各クローンのアミノ酸置換の正体を確認した。Hisタグを欠失させるために、プライマーを、QuikChange Lightning Site−Directed Mutagenesis Kit(Agilent、カタログ番号210519)との使用のために設計した。これを達成するために、表E7中に列挙された以下のプライマーを使用した。
欠失を、上記のように、QuikChange Lightning Site−Directed Mutagenesis Kitの製造者の指示に従って作成した。
タンパク質産生。BL21(DE3)コンピテント細胞(Novagen、カタログ番号69450)またはW3110細胞(ATTC)を、実施例2に記載したように、HisRSN8(HRS(1−506))をコードするコドン最適化発現構築物で形質転換した。組換えタンパク質を生成するために使用した発現系、発酵培地および発酵条件は、実施例2に記載されたものと本質的に同じであった。
タグなしHisRSN8(HisRS(1−506))の精製。凍結細胞ペースト(400g)を、4体積(1600mL)の溶解緩衝液(50mM Tris、50mM NaCl、5mM MgCl2、2mM L−システイン、pH7.4)中に再懸濁した。完全EDTA−FREEプロテアーゼ阻害剤錠剤(Roche、カタログ番号05 056 489 001)を、1錠剤/50mLの比率で懸濁物に添加した。この懸濁物を、氷で冷却しながら、18,000psiでmicrofluidizer(Microfluidics)を2回通過させた。この溶解物を、15,000×gで45分間4℃で遠心分離した。上清を、2〜3個のAcroPak 1500カプセル(0.8/0.2μm、Pall、PN12675)を通して濾過した。
この清澄化された溶解物を、Q緩衝液A(50mM Tris、50mM NaCl、pH7.4)で予め平衡化した382mlのQ HPカラム(5×19.5cm)上にロードした。この生成物を、10カラム体積(CV)にわたって0〜30%Q緩衝液B(50mM Tris、1M NaCl、pH7.4)の直線勾配で溶出させた。画分を、1/2 CV/画分において収集し、SDS−PAGEによって分析した。プールはゲル分析に基づいた。
3.5M硫酸アンモニウム溶液を、上記Q HPプールに、1.2Mの最終濃度になるように添加した。この混合物を、AcroPak 200(0.2um)を通して濾過し、20mM Tris、1.2M硫酸アンモニウム、pH7.0で予め平衡化した481mlのフェニルHPカラム(5×24.5cm)上にロードした。この生成物を、10CVにわたって、20mM Tris/pH7.0中1.2〜0Mの硫酸アンモニウムの直線勾配で溶出した。SDS−PAGE分析に基づいて、生成物を含む画分(1/2 CV/画分)をプールした。
上記からのフェニルプールを、Pellicon Miniカセットホルダー(Milliporeカタログ番号XX42PMINI)、Masterflex I/Pポンプおよび2×0.1m2カセット(30kD MWCO、Novasepカタログ番号PP030M01L)からなるTFF系を介して、0.5Lに濃縮した。次いで、この濃縮溶液を、6ダイアボリューム(diavolume)(3L)のCHT緩衝液A(10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.0)で緩衝液交換した。残余分を、次のステップに進む前に、0.2μm Millex GP−50フィルター(Millipore部品番号SLGP 05010)を通して濾過した。
上記溶液を、CHT緩衝液Aで予め平衡化した380mlのセラミックヒドロキシアパタイト(CHT)カラム(5×19.4cm)上にロードした。このカラムを、緩衝液Aで洗浄し、その後6%緩衝液B(500mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.0)で洗浄した。生成物を、10CVにわたって6〜56%緩衝液Bの直線勾配で溶出した。SDS−PAGE分析に基づいて、生成物を含む画分(1/2 CV/画分)をプールした。
同じTFF系を使用して、このCHTプールを、約0.2Lに濃縮し、6ダイアボリュームの現在の製剤緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.0)で緩衝液交換し、約10mg/mlの標的濃度まで濃縮した。生成物溶液を、0.2μm Millex GP−50フィルター(Millipore部品番号SLGP 05010)を通して濾過し、−80℃の冷凍庫中で貯蔵した。
(実施例6)
抗炎症剤としてのHRS(1−60)(Resokine)の評価
HRS由来ポリペプチドの潜在的な抗炎症特性を評価するために、HRSのアミノ酸1〜60を含む、N末端の天然に存在するスプライスバリアント(「Resokine」)を、大腸炎のTNBS誘導性モデルにおいて試験した。研究を、12マウス/群で雄性BDF−1マウスにおいて実施した;ブデソニドを、5mg/kgで経口で追加した。
この研究では、Resokineを、1mg/Kgまたは5mg/Kgの濃度で、TNBS処置の3日前に開始して、静脈内注射によって毎日投与した。図4に示されるデータは、いずれの濃度でのResokineによる処置も、生存における顕著な増加を生じたことを実証している。従って、Resokineは、強力な抗炎症効果を有するようであり、これは、HRSポリペプチドが炎症性プロセスの局所的制御に関与するという仮説と一致している。
(実施例7)
スタチン誘導性の筋炎および横紋筋融解の処置についてのHRSポリペプチドの評価
スタチンは、コレステロール合成における律速段階であるメバロネートの合成を阻害するHMG CoAレダクターゼ阻害剤である。スタチン治療は、患者においてコレステロールレベルを低下させることにおいて利益を提供している。しかし、スタチン治療の副作用および合併症には、筋脱力、筋炎および横紋筋融解が含まれる。筋肉ミオパチーは、市場にあるいくつかのスタチンによる合併症であり、患者は、これらの症状のいずれかを示す場合、そのスタチン治療から除外される場合が多い。多くの他のミオパチー、筋ジストロフィーおよび筋肉の炎症性障害と同様に、スタチン誘導性ミオパチーにおける疾患進行は、初回の化学的、遺伝的または肉体的傷害の結果として生じるようであり、損傷筋肉細胞中への免疫細胞浸潤の結果としてますます炎症を起こしていく。
従って、スタチン誘導性ミオパチーは、他のミオパチーおよび筋ジストロフィーに直接適用可能である、薬物誘導性筋炎を研究するために広く適用可能なモデル系を示し、それらの全てが、全て、損傷筋肉組織の免疫細胞浸潤を促進することによって疾患進行を媒介する一般的な炎症性構成要素を共有する。
この研究の目的は、変更された循環酵素レベルによって示される、スタチン誘導性の筋肉筋炎の影響を逆転させることにおけるHRS(1−506)の効力、ならびにHRS(1−506)による処置に応答した筋肉機能および炎症マーカーの遺伝子発現における変化を評価することであった。
これを達成するために、ラットに、1mg/kgセリバスタチンを毎日投薬し、次いで、セリバスタチンによる1日おきの(qod)投薬に切り替えた。この投薬レジメンの目的は、動物において持続性の疾患を維持することであったが、ラットの生存が大きく影響されるような重度の疾患を有することではなかった。次いで、HRS(1−506)の用量範囲の効力を、筋炎の循環マーカーにおける測定可能な変化をスタチン投薬が既に開始した後に、ラットにおいて評価した。
プロトコールおよび方法。この研究では、10週齢の雌性Sprague−Dawleyラットを、経口経管栄養を介して1日目に開始して、0.5%メチルセルロース中の1mg/kgセリバスタチン((Sigma、カタログ番号SML0005)で処置した。7日間の毎日の投与の後に、ラットを、9日目、11日目および13日目の、1日おきの投薬戦略(qod)に切り替えた。HRS(1−506)およびビヒクル投与を、静脈内注射によって6日目に開始し、ラットに、14日目まで毎日投薬した(図5A中に模式的に示される)。全てのラットを、15日目に、最終試験物品投薬の24時間後および最後のスタチン投与の48時間後に屠殺した。HRS(1−506)を、20mM NaPO4、0.15M NaCl、pH7.0中3種の用量(0.3、1.0および3.0mg/kg)で、毎日投与した。
この研究の主目的に取り組むために、以下の研究測定およびエンドポイントを実施した:ラットの生存、体重、12日目および15日目における循環血清CKレベル、15日目の大腿屈筋試料に対するH&E染色、トロポニン−I ELISA、15日目の血液に対するCBC、大腿屈筋試料に対するqPCR、および血清内因性HARSレベル。
qPCR法。マウス大腿屈筋を、動物から切り出し、分析まで−80℃で貯蔵した。組織を、QiagenのRNeasy Fibrous Tissue Midi Kit(カタログ番号75742)を使用して、10個の大腿屈筋の群において調製した。RNAをQiagenカラムから溶出させた時点で、RNA完全性を試験するためにAgilentのBioanalyzer 2100に、RNAの濃度および純度を決定するためにNanoDropに、RNAをかけた。次いで、RNAを−80℃で貯蔵した。
RNAのcDNAへの逆転写(RT)を、以下のプログラムを用いて、EppendorfのMastercycler PCR機械において、96ウェルPCRプレート形式で実施した:37℃で60分間、95℃で5分間。96ウェルプレートの端のウェルは使用せず、50mcLの水を満たして、内側のウェルの蒸発を防止した。20mcLのRNAおよび30mcLの逆転写マスターミックス(AmbionのTaqMan PreAmp Cell to CT Kit、カタログ番号4387299)を、1回の試料RT当たり使用した。RTが完了した時点で、次のステップは、試料cDNA中の目的の遺伝子を予め増幅することであった。目的の遺伝子のプライマー(Fluidigmによって設計されたDELTAgeneプライマー)を合わせて、200nMの最終濃度にした。これらのプライマーを使用して、目的の遺伝子を、各試料において予め増幅した。予めの増幅を、以下のプログラムを用いて、Applied Biosystems ViiA7 PCR機械を使用して、384ウェル形式で、10mcLの反応(2.5mcL cDNA、7.5mcL Pre−Ampマスターミックス)において実施した:95℃で10分間、95℃で15秒間の14サイクルおよび60℃で4分間。予めの増幅ステップの後、エキソヌクレアーゼ(New England BioLabsカタログ番号M0293L)を添加して、取り込まれていないプライマーを各試料から除去した。このエキソヌクレアーゼ反応もまた、以下のプログラムを用いて、ViiA7 PCR機械において完了させた:37℃で30分間、80℃で15分間。エキソヌクレアーゼ後、RT試料を、さらに1:5希釈した(7mcLエキソヌクレアーゼ試料+18mcL低EDTA緩衝液)。
FluidigmのBiomarkシステム上でqPCRを実行するために使用したチップは、96.96 Dynamic Array IFC for Gene Expressionであった。最初に、このチップを、試料およびアッセイをロードする前に、製造業者の推奨に従ってIFCコントローラーHXを用いてプライムした。チップ上にロードするアッセイを調製するために、目的の各遺伝子についての3.6mcLの20mcMフォワードプライマーおよびリバースプライマーに対して、4.4mcLのアッセイマスターミックス(Fluidigmの2×Assay Loading Reagentカタログ番号8500736および低EDTA TE)を、96ウェルプレートにおいて調製した。試料を調製するために、4.5mcLの試料マスターミックス(Ambionの2×TaqMan Gene Expression Master Mix、Fluidigmの20×DNA Binding Dye Sample Loading
Reagentカタログ番号100−0388、およびBiotiumの20×EvaGreenカタログ番号31000)を、96ウェルプレート中の、3mcLの希釈された予め増幅された/エキソヌクレアーゼ試料に添加した。チップがプライムされた時点で、上で調製した5mcLの試料またはアッセイを、そのチップ上にロードした。次いで、このチップを、チップ中に試料をロードするために、IFCコントローラー中に戻した。次いで、チップのロードが終了した後に、qPCRが、プライマー特異性を決定するための融解曲線と共に、96.96 Dynamic Array for Gene Expressionのためのプリセットプログラムを使用して、Biomark上で実行できた。相対的遺伝子発現を、デルタデルタCt法によって決定した。
細胞外HARSの定量。96ウェルベースのELISAを、サンドイッチ形式で、2つのマウス抗HARSモノクローナル抗体M03(Sigma番号SAB1403905およびAbnova番号H00003035−M03)およびM01(Abgent番号AT2317a)を使用して、社内で開発して、ラット血清中のHARSを検出した。アッセイを、75ng/mlから0.1ng/mlの範囲で作成した7ポイント検量線を使用し、HRS(1−506)のストック溶液;(20mM NaPO4、0.15M NaCl pH7.0中7.5mg/ml、希釈剤として1×PBST(0.05% Tween−20)を使用)を使用して、96ウェルCostarプレート(Costar96ウェルプレート番号3369)において実行した。M01マウスモノクローナル、クローン1C8(Abgent番号AT2317a)を、社内でビオチン化し、検出抗体として使用し、M03マウスモノクローナル抗体(Sigma番号SAB1403905、ロット番号11238、0.5mg/mLおよびAbnova番号H00003035−M03、ロット番号11238、0.5mg/mL)を、捕捉抗体として使用した。カゼイン(Thermo Scientific番号37528)をブロッキング剤として使用し、1×PBST(0.05% Tween−20)を洗浄緩衝液として使用した。抗体結合を、TMB基質(Thermo番号34021)を使用し、停止溶液として2M硫酸を用いて、ストレプトアビジン−HRP(Invitrogenカタログ番号434323、ロット番号816755A)を使用して定量した。
ELISAアッセイを、1×PBS中0.6〜2μg/mlのM03抗体でプレートを一晩被覆し、次いで、これを、1時間にわたるカゼインとのインキュベーションによってブロッキングし、PBSTで3回洗浄することによって実行した。次いで、プレートを、標準および試料と共に1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、次いで、PBST中に希釈した500ng/mlビオチン化−M01と共に1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、200ng/mlストレプトアビジン−HRPと共に1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、次いで、TMB基質を4分間添加した。反応を、停止溶液で停止させ、450nmで吸光度を読み取った。
結果を、バックグラウンドの減算なしの平均生吸光度値に基づく検量線に基づいて定量した。Prismを、検量線フィッティングのために使用した。モデル:Log(アゴニスト)対応答フィット[4パラメーターロジスティック回帰]パーセント回復を、各個々の濃度点(平均していない)について、以下:
(測定−実際)×100%/(実際)
によって計算した。
他の読み出し。ラットを毎日体重測定した。血清試料を、1日目、8日目、12日目(尾部静脈を介して)および15日目(末端)に採取して、循環酵素分析(Idexx)に使用し、血清骨格筋トロポニン−I測定を、市販のELISAキットを使用して測定した。尿検査を、その日の投薬の前に、3日目、5日目、8日目、10日目、12日目および15日目に実施した。CBC分析を、ラットを安楽死させる前に、15日目に単離した血液に対して実行した。15日目に、ラットを安楽死させ、大腿屈筋および肺(炎症を起こしていない)の一部分を、切片のパラフィン包埋およびH&E染色のために、10%NBF中に配置した(Premier Laboratory)。大腿屈筋および肺の別の一部分を、RNA抽出およびプロファイリングに使用するために、−80℃に配置した。肝臓、腎臓および心臓もまた、15日目に単離し、長期組織貯蔵のために、パラフィン包埋(TSRI組織学)のために亜鉛−ホルマリン中に配置した。
結果。この研究において100%の生存があり、全てのラットが、15日目の計画された屠殺まで生存した。スタチン投薬したラットは、スタチンを投薬しなかった対照ラットよりも低い平均体重を有した。15日目に、スタチン+ビヒクル群は、全ての群のうちで最も低い平均ラット体重を有したが、スタチン+3mg/kg HRS(1−506)投薬群は、全てのスタチン処置動物のうちで最も高い体重平均を有した(データ示さず)。CBC分析により、異なる動物処置群間の変化の、全体的に類似のパターンが示された(データ示さず)。
12日目および15日目の未処置の対照を超える、血清CKにおける小さい増加が、スタチン処置ラットにおいて観察された。12日目に、1mg/kgおよび3mg/kgのHRS(1−506)を投薬したラットは、スタチン+ビヒクル処置動物と比較して、より小さく、より詰まったCK平均を有し(図6A〜B)、これは、スタチン誘導性筋炎に対するHRS(1−506)処置の正の影響と一致し、筋肉機能に対するHRS(1−506)の正の効果とも一致しており、筋肉トロポニンCレベルもまた、HRS(1−506)処置動物において低減した(図5B)。さらに、内因性血清HRSレベルは、スタチンを受けていないラットと比較して、スタチン処置ラットにおいて上昇しており(図7)、これは、HRSの放出が、筋肉炎症の内因性調節因子として役割を果たし得ることを示唆している。大腿屈筋に対するH&E染色は、ビヒクル投薬ラットおよび0.3mg/kg HRS(1−506)投薬ラットと比較して、1mg/kgおよび3mg/kgのHRS(1−506)が投薬されたスタチン処置ラットにおいて、低減した筋肉変性/壊死および炎症スコアを実証した(図8)。
スタチン誘導性ミオパチーに対するHRSの効果についての基本メカニズムをさらに調査するために、処置動物由来の大腿屈筋における遺伝子発現の変化を、研究の完了後に試験した。RNAプロファイリングを、上記のように15日目にラットから単離した大腿屈筋に対して実施した。これらの研究からの結果は、スタチン処置に応答して5倍超上昇した13全ての遺伝子が、HRS(1−506)による処置によって低減したことを実証した(表E8;および図9〜10を参照のこと)。
スタチン処置ラット大腿屈筋の転写プロファイリングは、10個の糖尿病/メタボリックシンドローム関連遺伝子(図11)およびいくつかのハウスキーピング遺伝子(データ示さず)が、HRS処置によって顕著には影響を受けなかったことを明らかにした。対照的に、26の免疫細胞マーカー遺伝子の、スタチン処置ラット大腿屈筋の転写プロファイリングは、ITGAL(CD11a)、CD11b、CD8a、CD8b、CD18、CCR5、PTPPCおよび(CD45R)発現の用量依存的阻害を含む、多数の遺伝子における顕著な変化を明らかにした(図12〜14を参照のこと)。さらに、HRS(1−506)は、IL6、MCP1、IL10およびIFNガンマを含むいくつかの炎症マーカー遺伝子の発現を低減させるのに有効であった(図15〜16を参照のこと)。転写変化は、14の接着、発生および線維症関連遺伝子(図17〜18を参照のこと)、筋肉収縮性遺伝子Neb(データ示さず)、ならびに筋消耗、萎縮症および筋形成と関連する遺伝子(図19〜20を参照のこと)においても、観察された。
結論。減少したCK、血清トロポニン−Iならびに筋肉細胞変性/壊死および筋肉炎症が、全て、ビヒクルまたは低用量0.3mg/kg HRS(1−506)のいずれかを受けている動物とは対照的に、1.0mg/kgまたは3.0mg/kgのいずれかのより高い用量のHRS(1−506)を受けている動物において観察された。RNAプロファイリングデータは、より高い用量のHRS(1−506)を投薬したスタチン処置ラットの大腿屈筋における、低減したCD8a、IL−6、MCP−1およびMMP−9発現を実証することによって、これらの結果を支持した。これらの遺伝子の上方調節は、損傷筋肉組織中への増加した免疫細胞浸潤物に起因する可能性が最も高い。発現された遺伝子の正体に基づいて、浸潤する免疫細胞は、以下の細胞型、T細胞、樹状細胞、NK細胞およびマクロファージ/単球のうちの1つまたは複数で構成される可能性が高い。これらの細胞型の全てが筋肉炎症と関連付けられており、この免疫細胞流入の劇的な阻害を媒介する、HRS(1−506)を含むHRSポリペプチドの能力は、HRS(1−506)などのHRSポリペプチドが、広範な炎症性および自己免疫性の疾患および障害において強力な免疫調節剤として作用することが可能な強力な免疫調節因子であることを示唆している。
(実施例8)
HRS−Fcポリペプチドの調製
N末端およびC末端Fc−ヒスチジルtRNAシンテターゼ(HRS−Fc)融合タンパク質を、以下のように調製し、精製し、分析した。
プラスミド構築。ヒトIgG1 Fcドメインを、以下のプライマーを使用して、連続的PCR反応によって、HRSポリペプチドHRS(1−60)のC末端またはN末端中に挿入する前に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、得られた増幅されたDNA断片を、pET28発現ベクター(Novagen 69864)中に位置付けられたHRS(1−60)のC末端またはN末端中に挿入した。N末端Fc融合タンパク質の創出は、HRS(1−60)中のN末端メチオニンの欠失/FcドメインのC末端アミノ酸による置き換え、ならびに必要に応じてその逆を生じることが理解される。
以下のプライマーを使用して、N末端融合したHRS(1−60)Fc融合タンパク質(Fc−HRS(2−60))を創出した(表E9):
以下のプライマーを使用して、C末端融合したHRS(1−60)Fc融合タンパク質(HRS(1−60)−Fc)を創出した(表E10)。
これらのPCR反応を、推奨される熱サイクリングパラメーターを使用して実施し、PCR増幅断片を、ゲル電気泳動によって検証した。配列を、EMBOSS Pairwise Alignment Algorithmsを使用して、理論的配列とのアラインメントを実施することによって確認した。Fc−HRS(2−60)およびHRS(1−60)−FcのクローニングされたDNAおよびタンパク質配列を以下に示す。
Fc−HRS(2−60)(N末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAAGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCAAACAGAAATTTGTGCTCAAAACCCCCAAG TGA(配列番号335) 。
HRS(1−60)−Fc(C末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAGCAAACAGAAATTTGTGCTCAAAACCCCCAAGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGC CTC TCC CTG TCT CCG GGTAAATGA(配列番号336) 。
Fc−HRS(2−60)(N末端Fc融合物)のタンパク質配列
MSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPK(配列番号337) 。
HRS(1−60)−Fc(C末端Fc融合物)のタンパク質配列
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPKSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
(配列番号338) 。
さらなるN末端およびC末端Fc−ヒスチジルtRNAシンテターゼ(HRS−Fc)のDNA構築物を、以下のように調製した。
プラスミド構築。N末端Fcを有するHRS(2−60)またはC末端Fcを有するHRS(1−60)(実施例8)を、T7の代わりにTACプロモーターを含む改変pET24bベクター(EMD、Gibbstown、NJ)(「pET24b_TAC」)中にサブクローニングした。Fc−HRS(2−60)およびHRS(1−60)−Fcを、5’NdeI部位および3’XhoI部位を含む以下のプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、得られた増幅されたDNAを、NdeIおよびXhoI制限部位を使用してpET24b_TAC中にサブクローニングした。
以下のプライマーを使用して、Fc−HRS(2−60)(N末端Fc融合物)を増幅した(表E11):
以下のプライマーを使用して、HRS(1−60)−Fc(C末端Fc融合物)を増幅した(表E12)。
これらのPCR反応を、推奨される熱サイクリングパラメーターを使用して実施し、PCR増幅断片を、ゲル電気泳動によって検証した。配列を、DNASTAR Lasergene SeqMan Proを使用して、理論的配列とのアラインメントを実施することによって確認した。Fc−HRS(2−60)およびHRS(1−60)−FcのクローニングされたDNAおよびタンパク質配列を以下に示す。
Fc−HRS(2−60)(N末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAAGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCAAACAGAAATTTGTGCTCAAAACCCCCAAG tga(配列番号347) 。
HRS(1−60)−Fc(C末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCAAACAGAAATTTGTGCTCAAAACCCCCAAGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAA tga(配列番号348) 。
Fc−HRS(2−60)(N末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPK。(配列番号349) 。
HRS(1−60)−Fc(C末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPKSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号350) 。
さらなるN末端およびC末端Fc−ヒスチジルtRNAシンテターゼ(HRS−Fc)のDNA構築物を、以下のように調製した。
プラスミド構築。N末端Fcを有するHRS(2−40)、(2−45)、(2−50)、(2−55)、(2−66)またはC末端Fcを有するHRS(1−40)、(1−45)、(1−50)、(1−55)、(1−66)を、Quikchange Mutagenesis(Agilent、Santa Clara、CA)を使用して生成した。以下に列挙したプライマーと組み合わせて、Fc−HRS(2−60)およびHRS(1−60)−Fcを含む以前に生成したpET24b_TAC構築物をQuikchange反応において使用して、HRS−Fc構築物を生成した。
以下のプライマーを使用して、Fc−HRS(2−40)、(2−45)、(2−50)、(2−55)、(2−66)ポリペプチド(N末端Fc融合物)を増幅した(表E13):
以下のプライマーを使用して、HRS(1−40)、(1−45)、(1−50)、(1−55)、(1−66)−Fc(C末端Fc融合物)を増幅した:(表E14)。
これらのPCR反応を、製造者の推奨する熱サイクリングパラメーターを使用して実施した。配列を、DNASTAR Lasergene SeqMan Proを使用して、理論的配列とのアラインメントを実施することによって確認した。HRS−Fc構築物のクローニングされたDNAおよびタンパク質配列を以下に示す。
Fc−HRS(2−40)(N末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAAGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAATGA(配列番号371) 。
Fc−HRS(2−45)(N末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAAGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGTGA(配列番号372) 。
Fc−HRS(2−50)(N末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAAGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCTGA(配列番号373) 。
Fc−HRS(2−55)(N末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAAGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCAAACAGAAATTTGTGTGA(配列番号374) 。
Fc−HRS(2−66)(N末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAAGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCAAACAGAAATTTGTGCTCAAAACCCCCAAGGGAACCCGTGATTATAGTTGA(配列番号375) 。
HRS(1−40)−Fc(C末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAATCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAATGA(配列番号376) 。
HRS(1−45)−Fc(C末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAATGA(配列番号377) 。
HRS(1−50)−Fc(C末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAATGA(配列番号378) 。
HRS(1−55)−Fc(C末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCAAACAGAAATTTGTGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAATGA(配列番号379) 。
HRS(1−66)−Fc(C末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCAAACAGAAATTTGTGCTCAAAACCCCCAAGGGAACCCGTGATTATAGTTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAATGA(配列番号380) 。
Fc−HRS(2−40)(N末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLK(配列番号381) 。
Fc−HRS(2−45)(N末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQL(配列番号382) 。
Fc−HRS(2−50)(N末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDES(配列番号383) 。
Fc−HRS(2−55)(N末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFV(配列番号384) 。
Fc−HRS(2−66)(N末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPKGTRDYS(配列番号385) 。
HRS(1−40)−Fc(C末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号386) 。
HRS(1−45)−Fc(C末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号387) 。
HRS(1−50)−Fc(C末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号388) 。
HRS(1−55)−Fc(C末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号389) 。
HRS(1−66)−Fc(C末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPKGTRDYSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号390) 。
N末端Fc−ヒスチジルtRNAシンテターゼ(HRS−Fc)タンデム融合DNA構築物を、以下のように調製した。
プラスミド構築。N末端Fcを有するHRS(2−60)_HRS(2−60)を、pET24b_TAC_Fc−HRS(2−60)構築物を使用して生成した。HRS(2−60)遺伝子を、5’および3’のXhoI部位を含む、以下に列挙したプライマーでPCR増幅した。これらのPCR反応を、推奨される熱サイクリングパラメーターを使用して実施した。pET24b_TAC_Fc−HRS(2−60)構築物を、XhoIで消化し、脱リン酸化し、ゲル精製した。PCR生成された断片もまた、XhoIで消化し、ゲル精製した。ゲル精製されたHRS(2−60)を、pET24b_TAC_Fc−HRS(2−60)のXhoI部位中にサブクローニングした。最終構築物を生成するために、QuikChange変異誘発を使用し、以下に列挙したプライマーを使用して、タンデムHRS(2−60)断片間の終止コドンおよびXhoI部位を除去した。配列を、DNASTAR Lasergene SeqMan Proを使用して、理論的配列とのアラインメントを実施することによって確認した。
以下のプライマーを使用して、Fc−HRS(2−60)を増幅した(表E15):
Fc−HRS(2−60)HRS(2−60)(N末端Fc融合物)のDNA配列:
ATGTCTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCACGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAAGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCAAACAGAAATTTGTGCTCAAAACCCCCAAGGCAGAGCGTGCGGCGCTGGAGGAGCTGGTGAAACTTCAGGGAGAGCGCGTGCGAGGCCTCAAGCAGCAGAAGGCCAGCGCCGAGCTGATCGAGGAGGAGGTGGCGAAACTCCTGAAACTGAAGGCACAGCTGGGTCCTGATGAAAGCAAACAGAAATTTGTGCTCAAAACCCCCAAGTGA(配列番号395) 。
Fc−HRS(2−60)HRS(2−60)(N末端Fc融合物)のタンパク質配列:
MSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPKAERAALEELVKLQGERVRGLKQQKASAELIEEEVAKLLKLKAQLGPDESKQKFVLKTPK(配列番号396) 。
HRS(1−60)−FcおよびFc−HRS(2−60)融合タンパク質の調製および精製。E.coli株。上記pET発現構築物で形質転換したE.coli BL21−CodonPlus(登録商標)(DE3)RIPLコンピテント細胞(Agilent 230280)を、Fc融合タンパク質の初回生成のために使用した。
培地。M9YE培地を、無菌5×M9最小塩(BD 248510)、無菌精製水中の酵母抽出物溶液(BD 212750)、無菌化20%グルコース(Sigma G7021)および無菌1.0M MgSO4(Sigma M7506)を混合することによって調製した。供給溶液に関して、酵母抽出物溶液(5%)、グルコース溶液(50%)および10mlの濃縮微量元素溶液(Fe3+、Mn2+、ホウ酸、Mo6+、Co2+、Cu2+、Zn2+およびEDTAを含む)を、10ml硫酸マグネシウム溶液と同様、別々にオートクレーブした。これらの構成要素を、流加期の直前に混合した。硫酸カナマイシンを、培養培地中100μg/mlの最終濃度になるように添加した。
流加発酵。Irisソフトウェアを備えた0.5L Multifors発酵槽(HT−Infors)を、流加発酵プロセスに使用した。かき混ぜを、1000rpmに設定した。pH値を、30%水酸化アンモニウム(Sigma 221228)および30%リン酸(Sigma P5811)の添加によって自動的に7.0に制御した。空気を、オイルフリーダイヤフラム空気圧縮機(Cole−Parmer)によって0.5L/分の流速で提供し、0.2μmフィルターを通過させた。溶解酸素レベルを、純粋酸素(West Air)を提供することによって70%に制御した。温度を、Neslab RTE7サーキュレーター(Thermo Scientific)を用いて30℃に制御した。発泡を、antifoam 204(Sigma A8311)の添加によって制御した。
発酵槽中のM9YE培地の初期体積は、0.3Lであった。発酵槽に、30℃および250rpmで一晩増殖させた種培養物15mLを接種した。容器中の炭素供給源が枯渇した場合、濃縮供給溶液を、0.12mL/分に設定した蠕動ポンプによって容器中に導入した。600nmにおける細胞の光学密度が対数期に達した時に、培養物を、0.5mM
IPTG(Fisher Scientific BP1755)で誘導した。培養物を一晩増殖させたところ(約17時間の誘導)、最終OD600は約120に達した。細胞を、8,000gで30分間の遠心分離によって回収した。上清をデカントし、ペレットを精製まで−20℃で貯蔵した。
さらなるHRS−Fc融合タンパク質を、T7の代わりにTACプロモーターを含む改変pET24bベクター(EMD、Gibbstown、NJ)(「pET24b_TAC」)を使用して調製し、UT5600コンピテント細胞中に形質転換した。UT5600コンピテント細胞を、Coli Genetic Stock Center(CGSC、Yale)から得た細菌ストックから調製した。UT5600は、E.coliのK12誘導体株であり、以下の遺伝子型として表される:F、araC14、leuB6(Am)、secA206(aziR)、lacY1、proC14、tsx−67、Δ(ompT−fepC)266、entA403、glnX44(AS)、λ−、trpE38、rfbC1、rpsL109(strR)、xylA5、mtl−1、thiE1。
これらの構築物を含む発現ベクターを、標準的な手順を使用してUT5600細胞中に形質転換し、グリセロールストックを調製した。
発酵培地。UT5600_M9_YE培地を、バッチ培地について、以下:16グラム/L酵母抽出物(Difco 212750)、8g/Lグリセロール(Sigma G2025)、11.28g/L M9塩(Difco 248510)および100μl/L Antifoam 204(Sigma AG6426)を脱イオン化水中に混合することによって調製し、オートクレーブで無菌化した。オートクレーブ後に、0.64ml/L微量金属溶液、2.3ml/L 100×硫酸マグネシウムおよび45.83g/L L−ロイシンを添加した。フィード培地を、250g/L酵母抽出物、225g/Lグリセロールおよび100μl/L Antifoam 204を脱イオン化水中に混合することによって調製し、オートクレーブで無菌化した。無菌化後、10ml/L微量金属溶液、2.3ml/L 100×硫酸マグネシウム、45.83ml/L L−ロイシンを添加した。
流加発酵。MFCS/DAソフトウェアを備えた0.5L発酵槽(Infors)を、流加発酵に使用した。かき混ぜを、500〜1200rpmのカスケードに設定した。pH値を、30%水酸化アンモニウム(Sigma 221228)および30%リン酸(Sigma P5811)の添加によって自動的に7.0±0.1に制御した。空気を、オイルフリーダイヤフラム空気圧縮機(Cole−Parmer)によって0.5L/分の流速で提供した。空気を、0.2μm Midisart 2000フィルター(Sartorius 17805)を通過させた。純粋酸素(West Air)を供給して、溶解酸素レベルを30%に自動的に制御した。温度を、Neslab RTE7サーキュレーター(Thermo Scientific)を用いて30℃に制御した。発泡を、必要に応じて、antifoam 204(Sigma A8311)の添加によって制御した。発酵槽中のUT5600_M9_YE培地の初期体積は、0.24Lであった。発酵槽に、37℃および250rpmで6時間増殖させた種培養物約10OD単位(およそ1〜2mlの、OD5〜10の種)を接種した。容器中のバッチグリセロールが枯渇した場合(約4時間)、濃縮供給溶液を、対数供給プログラム上に設置した蠕動ポンプによって容器中に導入した。600nmにおける細胞の光学密度が約150に達した時に、培養物を、0.5mM IPTG(Fisher Scientific BP1755)で誘導した。培養物を誘導後4時間インキュベートし、10,000×gで30分間の遠心分離によって回収した。およその最終細胞ペレット収量は、1リットルの湿細胞重量(WCW)当たり150〜200グラムであった。細胞ペレットを、精製まで−80℃で貯蔵した。標的タンパク質の発現を、SDS−PAGEおよびヤギ抗ヒトIgG、HRPコンジュゲート化抗体(Thermo p/n 31413)に対するウエスタンブロットによって確認した。
FC融合タンパク質の精製。凍結細胞ペレットを、4体積(即ち、4mL/g細胞ペレット)の溶解緩衝液(50mM Tris、500mM NaCl、14mM β−ME、pH7.5)中に再懸濁した。完全EDTA−FREEプロテアーゼ阻害剤錠剤(Roche)を、1錠剤/50mLの比率で懸濁物に添加した。この懸濁物を、氷で冷却しながら、14,000psiでmicrofluidizer(Microfluidics)を2回通過させた。この溶解物を、≧10,000×gで45分間4℃で遠心分離した。上清を、0.45+0.22μm Sartobranカプセルフィルター(Sartorius)を通して濾過した。
この清澄化された溶解物を、1ml樹脂/10g細胞ペーストの比率で、結合緩衝液(50mM Tris、500mM NaCl、pH7.5)で予め平衡化したMabSelect樹脂(GE Healthcare)に結合させた。このカラムを、500カラム体積の結合緩衝液+0.1%Triton X−114で洗浄し、その後100カラム体積の結合緩衝液で洗浄した。結合したタンパク質、融合タンパク質を、1.25カラム体積の中和緩衝液(1M Tris、pH8.0)を含む収集チューブ中に、3.75カラム体積の溶出緩衝液(0.1Mグリシン、0.5Mアルギニン、pH3.0)で溶出させた。
任意選択で、高分子量種のさらなる除去のために、材料を、Amicon 30kDa超遠心分離濃縮デバイス(Millipore)において濃縮し、HiLoad Superdex 200pg 16/600サイズ排除クロマトグラフィーカラム(GE Healthcare)上にロードした。この材料を、1.1カラム体積の1×PBS pH7.4(Gibco番号10010)中で溶出させ、280nmでのプロセスクロマトグラム吸光度に基づいて主要ピークに対応する画分をプールした。
サイズ排除クロマトグラフィーを実施しなかった場合、精製されたFc融合タンパク質を、PBS、pH7.4を含む緩衝液へと緩衝液交換した。透析したタンパク質を、さらなるエンドトキシン除去のためにQメンブレンフィルター(SartoriusのSartobind−QまたはPallのMustang−Q)またはQ−Sepharoseカラム(GE Healthcare)を通過させ、0.22μm無菌フィルターを通して濾過した。
FC融合タンパク質のための拡大縮小可能な精製プロセス
MabSelectとその後のサイズ排除クロマトグラフィーとを使用する精製プロセスを使用し、最小精製の開発で有効なロバストプロセスを使用して、複数のFc融合タンパク質を精製した。しかし、プロテインA(MabSelect)およびサイズ排除クロマトグラフィーステップの間の洗剤洗浄の使用は、精製をスケールアップする能力を制限する。スケールアップのための精製プロセスもまた、溶解物綿状沈殿、プロテインAクロマトグラフィー、カチオン交換(CEX)およびセラミックヒドロキシアパタイト(CHT)クロマトグラフィーを使用して、Fc融合タンパク質のために開発した。
再懸濁および溶解を、溶解緩衝液からプロテアーゼ阻害剤錠剤およびβ−MEを省いて、上記のように実施した。溶解後、溶解物を、0.04%(v/v)までのポリエチレンイミン、分子量1300(Sigma Aldrich)の添加によって綿状沈殿させ、4℃で30分間インキュベートした。遠心分離および清澄化を、上記のように実施した。プロテインAクロマトグラフィーを、4gの細胞ペースト当たり1mlの樹脂のロード比で充填済みクロマトグラフィーカラム中のMabSelect樹脂を使用して、清澄化された溶解物に対して実施し、50mM Tris、500mM NaCl、pH7.5中5カラム体積の洗浄ステップを行い、その後、3カラム体積の0.1Mグリシン pH3.0中で溶出させ、0.3カラム体積の1M Tris pH8.0中で中和した。プロテインAの後、CEXロードを、CEX平衡化緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.0)中の5×希釈のプロテインA後溶離液によって調製し、SP Sepharose High Performanceカラム上にロードし、5カラム体積の平衡化緩衝液で洗浄し、10カラム体積にわたって0〜300mMのNaClの直線塩化ナトリウム勾配で溶出させた。CEX画分を、溶出ピーク画分のSDS−PAGE分析に基づいてプールした。セラミックヒドロキシアパタイトを、CHT平衡化緩衝液(5mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、1μM塩化カルシウム、pH6.5)中で平衡化したCHT Type I 40μmカラム(Bio−Rad)上にロードすることによってCEXプールに対して実施し、5カラムの平衡化緩衝液で洗浄し、10カラム体積にわたって150mM〜1.5Mの塩化ナトリウムの直線塩化ナトリウム勾配で溶出させ、最大20カラム体積まで1.5M NaClを維持して、溶出を完了させた。CHT後、タンパク質を、Amicon 30kDa遠心分離濃縮デバイス(Millipore)を使用して1×PBS pH7.4へと緩衝液交換した。
融合タンパク質濃度を、Bradfordタンパク質アッセイ(Thermo Scientific)または280nmにおけるUV吸光度によって決定した。融合タンパク質濃度を、Bradfordタンパク質アッセイ(Thermo Scientific)によって決定した。エンドトキシンレベルは、EndoSafe PTS LALアッセイ(Charles River)によって決定したとき、4EU/mgを下回った。
HRS−Fc融合タンパク質の分析。精製されたHRS−Fc融合タンパク質を、図21に示したように、SDS−PAGEによって分析した。10μgタンパク質ロードの試料を、NuPAGE 4〜12% Bis−Trisゲル上で、MOPS−SDS緩衝液中で150Vで60分間泳動し、Instant Blueで染色した。還元された試料は、25mM DTTを有し、ロードする前に1×LDS緩衝液中で95℃で10分間加熱した。
精製されたHRS−Fc融合タンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法によっても分析した。試料を、Agilent 1260 HPLCシステム上でTSK−Gel Super SW3000カラム(TOSOH、4.6mm ID×30cm、4μm)にロードした。30分の均一濃度泳動を、pH7の0.1M NaCl、0.2Mリン酸Naおよび5% 2−プロパノールを含む移動相を用いて0.3ml/分で実施した。UV検出を、280nmで実施した。クロマトグラムは図22中に示される。
タンパク質のおよそ83%は、プロテインA後およびサイズ排除クロマトグラフィー精製前に、所望のダイマー形態で存在し、残りの量は高分子量種として存在する。サイズ排除クロマトグラフィー後、ダイマーの割合は、95〜99%に増加する。プロテインA、カチオン交換およびヒドロキシアパタイト精製プロセスを使用すると、ダイマーの割合は99%よりも大きい。ダイマータンパク質のほとんどが、Fcヒンジ領域中に鎖間ジスルフィド結合を含むが、一部の非共有結合ダイマーもまた存在する。
LC/ESI−MSを使用して得られたインタクトな質量スペクトルデータの分析は、非還元条件下でのFC融合タンパク質の分子サイズが、およそ64,520ダルトンの予測分子量と一致することを実証している(データ示さず)。遠UV領域および近UV領域におけるFc融合タンパク質のCDスペクトルは、この融合タンパク質の構造が、予測されたドメイン構造と一致することを明らかにしている。さらに、HRS−Fc融合タンパク質から得られたデコンボリューション示差走査熱量測定データは、このFc融合タンパク質が、予測された構造と一致して、Fc構成要素のCH1ドメインおよびCH2ドメインに特徴的な2つの主要な熱転移で折り畳まっていることを実証している(データ示さず)。
未改変HRSタンパク質と比較したHRS−Fc融合タンパク質構築物の薬物動態学的特徴を評価するために、タンパク質を、8mg/kgの用量の単一の静脈内または皮下ボーラスを介して正常C57BL/6マウスに投与した。血液を、1つの生成物形態当たり9匹の動物にわたって分布する試料採取時間で、連続的に試料採取した。各時点について、3匹の独立したマウスから血清を引き出した。試験物品濃度を、ELISAによって測定し、薬物動態学的パラメーターを、Phoenixソフトウェア上での非コンパートメント分析を使用して導出した。
図23A、23Bおよび23C中に示される結果は、Fc融合タンパク質の創出が、顕著に増強された半減期、曝露および皮下バイオアベイラビリティを生じたことを実証している。
表E16中に示される薬物動態学的分析は、HRS−Fc融合構築物が、未改変タンパク質と比較して、顕著に改善された全身性曝露、クリアランスおよび半減期を示すことを実証している。Fc融合タンパク質の創出は、未改変タンパク質と比較して、このタンパク質の皮下バイオアベイラビリティもまた改善した。特に、投与の経路に依存して、Fc−HRS(1−60)は、未改変タンパク質と比較して曝露を200〜300倍増加させ、さらに皮下バイオアベイラビリティおよび半減期は、両方とも顕著に増強された。
(実施例9)
TNBS誘導性大腸炎におけるFc融合タンパク質の試験
大腸は、フラスコ様構造、陰窩中に陥入した上皮粘膜によって裏打ちされている。小腸とは異なり、この領域中には絨毛は存在せず、陰窩の上部は、フラットテーブル(flat table)領域上に開口している。陰窩の細胞は、陰窩基部に位置する幹細胞によって生成され、その娘細胞は、迅速に分裂し、優勢な結腸細胞およびムチン産生杯細胞へと分化する(より少数の内分泌細胞およびM細胞もまた生成される)。陰窩のサイズおよび陰窩1つ当たりの杯細胞の数は、おそらくは糞便の通過を補助し、水が糞便から吸収される際の十分な粘膜細胞および幹細胞を提供するために、盲腸から直腸へと大腸に沿って増加する。
正常では、腸陰窩における細胞生成の速度は、細胞喪失の速度と正確に一致する−非常に敏感な恒常性機構が動作する。粘膜関門の破壊は、身体中への細菌の侵入を可能にし、疾患の関与を生じる。逆に、過形成は、ポリープを生じ得、最終的に腫瘍を生じ得る。腸関門の破壊は、非細胞型特異的(しばしば増殖特異的)細胞傷害剤−典型的には抗がん治療−への曝露によって引き起こされ得る。しかし、上皮細胞ターンオーバーの乱れもまた、炎症性疾患の一般的特徴である。
炎症性腸疾患(IBD)の現在のげっ歯類モデルには、例えば、T細胞集団の操作によって自己免疫性疾患を誘発すること、大腸における粒状材料の蓄積によって腸の粘膜裏打ちを刺激すること(例えば、DSS、デキストラン硫酸ナトリウムによる)、または上皮の化学的破壊(例えば、トリニトロベンゼンスルホン酸、TNBSによる)によって生成されたモデルが含まれる。
これらのモデルのいずれかにおいて、疾患重症度は、基礎的生物学に関するより有意義な洞察を提供するために、観察された病理学的グレードの種々の主観的評価、ならびに損傷のより客観的かつ定量的な測定によって評価され得る。粘膜/粘膜下層における変化をマッピングし、損傷のより定量的な測定、および従って治療的効力を得るために、コンピューター補助された長さ/面積測定を使用することによって、分析を広げることが可能である。これらのモデルの各々は、異なる良い点および悪い点があるものの、このTNBS大腸炎モデルは、ヒトにおける炎症性腸疾患の種々の態様の確立されたモデルであり、ヒト治療効力を検証および最適化するために首尾よく使用されてきた。
TNBSマウスモデル。大腸炎のこのモデルでは、結腸刺激は、エタノール中のTNBSの結腸内投与によって誘導される。これは、とりわけTNF−α、IFN−γおよびIL−12をコードする遺伝子の発現を特徴とするTH1型サイトカインプロファイルを有する急性大腸炎を誘発する(Fichtner−Feiglら J. Clin. Invest.2005年.115巻:3057〜3071頁)。この大腸炎は、重度であり得、TNBSが導入される結腸の領域に限局化される。この炎症性応答は、限局化された腫脹、炎症性細胞浸潤および上皮喪失を生じる。
この研究では、未改変HRSポリペプチド、(HRS(1−60)の効力を、Fc融合タンパク質Fc−HRS(2−60)およびHRS(1−60)−Fcと比較して、マウスにおけるTNBS誘導性の急性大腸炎を寛解させることにおけるその効力を評価した。試験品目の静脈内投与または皮下投与のいずれかを使用する3つの異なる投薬レジメンを評価した。ブデソニド(経口)を、この研究のための参照品目として使用した。
動物およびケージング:合計100匹のBDF−1(H.Pyloriなし、マウスノロウイルスなし)雄性マウス(Harlan Laboratories、UK)を、この研究において使用した。動物は、供給時に8〜10週齢であり、10〜12週齢で使用した。全てのマウスを、SPF(特定病原体除去)バリアユニット中の個々に換気するケージ(IVC)中に保持した。これらの動物を、番号を付けたケージおよび耳のパンチによって同定した。
食餌および動物福祉:これらの動物に、B&KのRat and Mouse Expanded食を給餌した。水を、HYDROPAC(商標)水パウチ(濾過RO水;Hydropac/labの製品、Delaware、USA)で供給した。餌および水の両方は、自由裁量で入手可能であった。21±2℃の一定温度および55±10%の平均相対湿度であった。昼−夜サイクルは一定であり、各々12時間の明期および暗期であった(07:00時/19:00時に切り替え)。動物の健康を、毎日モニタリングし、ケージを一定の間隔で掃除した。全ての手順は、UK Animal(Scientific
Procedures)Act 1986年に従って認証された。
群、投薬量、投与および製剤:合計100匹のマウスを、10個の研究群に無作為化した(表E17)。任意の1つのケージ中の全てのマウスは、同じ処置を受け、同定目的のために耳パンチした。毎日の体重測定を使用して、適用可能な群に投与した試験品目またはビヒクルの体積を計算した。
TNBSおよび試験品目の調製および投与。TNBS:TNBS(Sigma;ロット番号SLBD6811V)を、生理食塩水/50%エタノール中の15mg/ml溶液として調製した。200μl(3mgのTNBS)の単一用量を、研究0日目の11:00時に、肛門縁の近位4cmに配置したプラスチックカテーテルを使用して、結腸中に注入した。動物を、化合物の漏出を最小化するために、結腸中へのTNBSの導入後1分間にわたって逆位で維持した。
HRS(1−60):この試験品目を、使用まで−80℃で貯蔵した17.1mg/mlの凍結ストック溶液の4つのバイアル(各々において0.033ml体積)として受け取った。試験品目投与の各日に、単一のアリコートを取り、湿った氷上で解凍した。解凍後、バイアルの内容物を、10回ピペッティングして出し入れすることによって混合した。引き続いて、この試験品目を、冷ビヒクル(無菌、×1 PBS、pH7.4)で希釈して、0.2mg/mlの溶液を得た;この溶液を、10回ピペッティングして出し入れすることによって混合した。この溶液を、1mg/kgの用量を得るために、5ml/kgで静脈内注射によって毎日投与した(研究0日目から研究3日目まで)。
Fc−HRS(2−60):この試験品目を、使用まで−80℃で貯蔵した4.7mg/mlの凍結ストック溶液の4つのバイアル(2.51mlの1つのバイアルおよび2.01mlの3つのバイアル)として受け取った。試験品目投与の各日に、単一のアリコートを取り、湿った氷上で解凍した。解凍後、バイアルの内容物を、10回ピペッティングして出し入れすることによって混合した。引き続いて、この試験品目を、冷ビヒクル(無菌、×1 PBS、pH7.4)で希釈して、3mg/mlおよび1mg/mlの溶液を得た;これらの溶液を、10回ピペッティングして出し入れすることによって混合した。Fc−HRS(2−60)を、以下の3つの異なるレジメンに従って投与した:i)1mg/ml溶液を、5mg/kgの用量を得るために、5ml/kgで静脈内注射によって毎日投与した(研究0日目から研究3日目まで);ii)1mg/ml溶液を、5mg/kgの用量を得るために、5ml/kgで静脈内注射によって、研究0日目に1回だけ、毎日投与した;iii)3mg/ml溶液を、15mg/kgの用量を得るために、5ml/kgで皮下注射によって、毎日投与した(研究0日目から研究3日目まで)。
HRS(1−60)−Fc:この試験品目を、使用まで−80℃で貯蔵した4.99mg/mlの凍結ストック溶液の4つのバイアル(2.37mlの1つのバイアルおよび1.89mlの3つのバイアル)として受け取った。試験品目投与の各日に、単一のアリコートを取り、湿った氷上で解凍した。解凍後、バイアルの内容物を、10回ピペッティングして出し入れすることによって混合した。引き続いて、この試験品目を、冷ビヒクル(無菌、×1 PBS、pH7.4)で希釈して、3mg/mlおよび1mg/mlの溶液を得た;これらの溶液を、10回ピペッティングして出し入れすることによって混合した。HRS(1−60)−Fcを、以下の3つの異なるレジメンに従って投与した:i)1mg/ml溶液を、5mg/kgの用量を得るために、5ml/kgで静脈内注射によって毎日投与した(研究0日目から研究3日目まで);ii)1mg/ml溶液を、5mg/kgの用量を得るために、5ml/kgで静脈内注射によって、研究0日目に1回だけ、毎日投与した;iii)3mg/ml溶液を、15mg/kgの用量を得るために、5ml/kgで皮下注射によって、毎日投与した(研究0日目から研究3日目まで)。
ブデソニド:ブデソニドを、Tocrisから取得し(Tocris 1101、ロット番号1A/128902)、使用まで周囲温度で暗中で貯蔵した。投与の各日に、ブデソニドを、落花生油(Sigma)中の1mg/ml溶液として製剤化した。ブデソニドを、5mg/kgの用量を得るために、5ml/kgで経口経管栄養によって毎日投与した(研究0日目から研究3日目まで)。
臨床試験および鎮痛。15%よりも多い体重減少を示している任意の動物を、体調不良とみなし、処置が差し控えられ得る。体重減少が20%よりも大きかった場合、任意の動物を間引いた。動物の福祉を、毎日モニタリングした。−1日目から研究の最後まで、1日1回、全てのマウスを計量し、表E18中の基準に従って、大便の硬さについて、ならびに大便中および肛門周辺の顕性血液の存在について評価した。
鎮痛の使用:鎮痛は、スポンサーの指示で、この研究では使用しなかったが、これは、鎮痛が試験品目の作用を妨害した可能性があるからである。
組織学的試験のための組織の回収および準備:屠殺の際に、マウスを、2L/分のO2および2L/分のN2Oと共に、4%イソフルラン(isofluorane)で麻酔した。完全に麻酔した時点で、血液を、直接的心穿刺によって引き出し、頸椎脱臼によって死亡を確認した。
全血および血漿試料の調製。血液を、1.5ml微量遠心管中に、全てのマウスからの心穿刺によって収集した。血液試料を、氷上に即座に配置し、60分間凝血させた。次いで、試料を、3000gで7分間、4℃で遠心分離した。遠心分離の直後、血清を、無菌ピペットによって、予めラベルを付けたバイアル中に移し、ドライアイス上で即座に凍結させた。
腸試料の調製。大腸を取り出し、PBSで流し、その長さおよび湿重量を記録し、その後、近位、中央および遠位領域へと切り分け、Carnoy溶液中で固定した。さらに、結腸の小さい試料を、液体窒素中で即座に凍結させた。固定した組織を、Leica TP1020組織プロセッサーおよびEG1140Hワークステーションを使用して、一連のアルコールおよびキシレンを通して脱水し、パラフィン中に包埋した。切片(厚さ5μm)を、Leica RM2125RTFミクロトームを使用して切り、37℃で一晩、顕微鏡スライド上で風乾した。引き続いて、スライドを、キシレン中で脱脂し、段階的なアルコールによってPBSまで再水和した。次いで、全ての切片を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、マウントした。
組織学的分析:組織学的切片を、盲検様式で評価した。切片を、顕微鏡により観察し、表E19中に概要を示した基準に従って、0と5との間の範囲の主観的重症度スコアを割り当てた。中央および遠位大腸からの最大12の横断面を評価した。
統計的分析:言及する場合、群データの統計的比較を、Graph Pad Prismを使用して、事後試験と組み合わせてANOVAを使用して実施した。
qPCR分析:マウス結腸を、動物から切り出し、分析まで−80℃で貯蔵した。RNAを、QiagenのRNeasy Mini Kit(カタログ番号74106)を使用して、結腸から調製した。RNAをQiagenカラムから溶出させた時点で、RNA完全性を試験するためにAgilentのBioanalyzer 2100に、RNAの濃度および純度を決定するためにNanoDropに、RNAをかけた。次いで、RNAを−80℃で貯蔵した。
RNAのcDNAへの逆転写(RT)を、以下のプログラムを用いて、EppendorfのMastercycler PCR機械において、96ウェルPCRプレート形式で実施した:37℃で60分間、95℃で5分間。96ウェルプレートの端のウェルは使用せず、50mcLの水を満たして、内側のウェルの蒸発を防止した。25mcLの逆転写マスターミックス(Life Technologies番号4387406)中100ngのRNAを、1回の試料RT当たり使用した。RTが完了した時点で、次のステップは、試料cDNA中の目的の遺伝子を予め増幅することであった。目的の遺伝子のプライマー(Fluidigmによって設計されたDELTAgeneプライマー)を合わせて、200nMの最終濃度にした。これらのプライマーを使用して、目的の遺伝子を、各試料において予め増幅した。予めの増幅を、以下のプログラムを用いて、Applied
Biosystems ViiA7 PCR機械を使用して、384ウェル形式で、10mcLの反応(2.5mcL cDNA、7.5mcL Pre−Ampマスターミックス)において実施した:95℃で10分間、95℃で15秒間の14サイクルおよび60℃で4分間。予めの増幅ステップの後、エキソヌクレアーゼ(New England
BioLabsカタログ番号M0293L)を添加して、取り込まれていないプライマーを各試料から除去した。このエキソヌクレアーゼ反応もまた、以下のプログラムを用いて、ViiA7 PCR機械において完了させた:37℃で30分間、80℃で15分間。エキソヌクレアーゼ後、RT試料を、さらに1:5希釈した(7mcLエキソヌクレアーゼ試料+18mcL低EDTA緩衝液)。
FluidigmのBiomarkシステム上でqPCRを実行するために使用したチップは、96.96 Dynamic Array IFC for Gene Expressionであった。最初に、このチップを、試料およびアッセイをロードする前に、製造業者の推奨に従ってIFCコントローラーHXを用いてプライムした。チップ上にロードするアッセイを調製するために、目的の各遺伝子についての3.6mcLの20mcMのフォワードプライマーおよびリバースプライマーに対して、4.4mcLのアッセイマスターミックス(Fluidigmの2×Assay Loading Reagentカタログ番号8500736および低EDTA TE)を、96ウェルプレートにおいて調製した。試料を調製するために、4.5mcL試料マスターミックス(Ambionの2×TaqMan Gene Expression Master Mix、Fluidigmの20×DNA Binding Dye Sample Loading
Reagentカタログ番号100−0388、およびBiotiumの20×EvaGreenカタログ番号31000)を、96ウェルプレート中の、3mcLの希釈された予め増幅された/エキソヌクレアーゼ試料に添加した。チップがプライムされた時点で、上で調製した5mcLの試料またはアッセイを、そのチップ上にロードした。次いで、このチップを、チップ中に試料をロードするために、IFCコントローラー中に戻した。次いで、チップのロードが終了した後に、qPCRが、プライマー特異性を決定するための融解曲線と共に、96.96 Dynamic Array for Gene Expressionのためのプリセットプログラムを使用して、Biomark上で実行できた。相対的遺伝子発現を、複数のハウスキーピング遺伝子を使用して、デルタデルタCt法によって決定した。
結果:
存命中パラメーター−全てのTNBSレシピエント群は、大腸炎剤の投与後の最初の24時間にわたって、出発体重の8〜10%の間の、平均体重における急性の減少を実証した;引き続いて、平均体重におけるより緩徐な減少が存在し、全ての群が、研究の最後までに、出発体重の80〜90%の間までの、平均体重における顕著な減退を示した(p≦0.0158)。ビヒクルのみで処置したマウスの体重は、研究4日目までに、出発体重の99.6±1.7%(平均±標準偏差)の最終平均体重で、研究の期間にわたって最小限の変化を示した。TNBS/ビヒクル群は、79.8±1.8%において最低の平均最終体重を有した。一部の群(即ち、TNBS/Fc−HRS(2−60)−皮下群およびTNBS/ブデソニド群)についての最終平均体重は、これらの群における初期罹患率のより高い発生率に起因して、人為的に高かった。最下位の初期罹患率を実証した群のうち、TNBS/Fc−HRS(2−60)−1日1回−静脈内群は、85.6±7.1%の最高の平均最終体重を有したが、これは、TNBS/ビヒクル群から有意には異ならなかった(p>0.05)(データ示さず)。
TNBSレシピエントマウスの大部分は、この研究の間にある段階において下痢を実証したが、粘膜出血の観察は、あまり一般的でなかった。一部の試験品目処置に応答して、下痢の発生率において低減があった。TNBS/ビヒクル群は、4日目の研究の最後までに、31の累積(標準化)下痢スコアを有した;TNBS/Fc−HRS(2−60)−1日1回−静脈内およびTNBS/HRS(1−60)−Fc−1日1回−静脈内群は、26の最低スコアを有した(データ示さず)。
マウスの臨床状態は、疾患活動性指標(DAI)スコアを得るために、出血および下痢に関する情報を体重減少についてのスコアと一緒に組み合わせることによって、最良に得ることができる。これは、マウスを安楽死させる日に最も正確に決定され得るが、これは、大便の硬さの観察データがないことが、直腸中の大便の観察で補足され得るからである。4日目に生存しているマウスについて、TNBS/Fc−HRS(2−60)−皮下群を除いて、未処置対照群と比較して(p≦0.0062で)、全てのTNBSレシピエント群について平均DAIスコアにおける有意な増加が存在したが、この皮下群では、3匹のマウスのみが、計画されたエンドポイントにおいて研究に残留していた。TNBS/ビヒクル群中の4日目の生存マウスについての平均DAIは、7.13±0.64であった;比較して、TNBS/ブデソニド群およびTNBS/HRS(1−60)−Fc−1回−静脈内群は、それぞれ4.33±1.97および4.20±3.03において、有意により低い平均DAIを有した(p≦0.0304)。少なくとも1日目の07:00時まで生存している全てのマウスを含むことは、DAIの計算において、類似の結果を与えたが、TNBS/ブデソニド群およびTNBS/HRS(1−60)−Fc−1回−静脈内群において観察された効果は、もはや有意ではなかった(p>0.05)(図24Aを参照のこと)。
死後観察−ビヒクルのみマウスについて、平均大腸重量および長さは、それぞれ200.4±21.7mgおよび108.3±7.8mmであった;平均大腸重量:長さ比は、1.85±0.12(mg/mm)であった。全てのTNBS処置群は、未処置の対照マウスと比較して、大腸重量における有意な増加を実証し(p≦0.0215)、TNBS/ビヒクル群は368.4±70.1mgの平均大腸重量を有した。TNBS/ブデソニド群は、298.0±62.0mgにおいて、全てのTNBSレシピエント群のうちで最低の平均大腸重量を有した。TNBS投与は、全てのTNBSレシピエント群における大腸長さにおける有意な低減とも関連し(p≦0.0285)、TNBS/ビヒクル群は、75.6±9.3mmの平均大腸長さを有した;比較して、TNBS/HRS(1−60)−Fc−1日1回−静脈内群は、94.9±11.8mmの平均大腸長さで、大腸の短縮の有意な寛解を実証した(p=0.0019)。大腸の重量および長さにおける変化は、全てのTNBSレシピエント群について大腸重量:長さ比における有意な増加を生じた(p≦0.0116)。TNBS/ビヒクル群は、4.92±0.99(mg/mm)において、全ての群のうちで最高の平均大腸重量:長さ比を有した。TNBS/ブデソニド群、TNBS/Fc−HRS(2−60)−皮下群、TNBS/HRS(1−60)−Fc−1日1回−静脈内群およびTNBS/HRS(1−60)−Fc−1回−静脈内群は、全て、TNBS/ビヒクル対照群と比較して、大腸重量:長さ比における有意な低減を実証したが、TNBS/HRS(1−60)−Fc−1日1回−静脈内群についての平均比は、この研究において早期に安楽死させたマウスの数によって歪められた。TNBS/ブデソニド群およびTNBS/HRS(1−60)−Fc−1日1回−静脈内群についての平均大腸重量:長さ比は、それぞれ、3.57±1.01および3.56±0.80であった(p=0.0143およびp=0.0456)(図24Bを参照のこと)。
組織病理学−TNBS誘導性の大腸炎と関連する組織病理学的変化を、Epistemの標準的な組織学的スコアリング手順に従って評価した。全てのTNBSレシピエント群は、組織病理学スコアにおける有意な増加を実証した(p≦0.0036)。T細胞/ビヒクル群は、2.32±0.65の平均組織病理学スコアを有し、TNBS/HRS(1−60)−Fc−皮下群は、2.41±0.68において、最高の平均組織病理学スコアを有した。他の処置群は、TNBS/ビヒクル群よりも低い平均組織病理学スコアを有し、TNBS/ブデソニド群およびTNBS/Fc−HRS(2−60)−1日1回−静脈内群は、それぞれ1.66±1.08および1.68±1.03の最低スコアを有したが、これらの低減は、統計的に有意ではなかった。領域ごとに、これらの処置の効果は、大腸の遠位3分の1においてより明白であったが、なおも統計的に有意なものではなかった。
罹患率−1群のみ、TNBS/HRS(1−60)−Fc−1日1回−静脈内が、全ての(適格)マウスの生存を実証した(マウス75は、TNBS投与の間の大腸穿孔に起因して排除し、マウス78は、疾患誘導の欠如に起因して排除した)。他の群における生存は、80%(TNBS/Fc−HRS(2−60)−1日1回−静脈内群)から33.3%(TNBS/Fc−HRS(2−60)−皮下群)の範囲であった);TNBS/ブデソニド群における生存は60%であった。マウスを、不良な状態(正常な挙動を示すことをやめたこと/示せないこと)を提示した場合に、安楽死させた;6時間毎のチェックにもかかわらず、2匹のマウス(40および50)は、研究3日目の19:00時に死亡して見出された(データ示さず)。
qPCR結果。TNBS誘導性大腸炎に対するHRS(1−60)およびFc−HRS(2−60)の効果の基本メカニズムをさらに調査するために、動物由来の結腸における遺伝子発現の変化を、研究の完了後に試験した。RNAプロファイリングを、上記のような日にマウスから単離した結腸に対して実施した。これらの研究からの結果は、TNBS処置に応答して10倍超上昇した7つの遺伝子が、Fc−HRS(2−60)による処置によって顕著に低減したことを実証した(表E20;および図25を参照のこと)。
TNBS処置マウス結腸の転写プロファイリングは、いくつかのハウスキーピング遺伝子を含む多くの遺伝子(データ示さず)が、Fc−HRS(2−60)処置によって顕著には影響を受けなかったことを明らかにした。対照的に、TNBS処置マウス結腸の転写プロファイリングは、TNBS調節された免疫性および炎症性関連遺伝子の、Fc−HRS(2−60)による顕著な低減を明らかにした。この結果は、HRS(1−60)もまた、MCP1、MMP3、CD11bおよびIL10のTNBS誘導されたレベルを顕著に低減させるという知見によって補強された(図26A〜26Hを参照のこと)。
結論:BDF−1マウスへのTNBSの結腸内投与は、急性体重減少を特徴とする大腸炎の発生を生じ、下痢および粘膜出血の発生率における中程度の増加を生じた。死後試験は、腸内の狭窄および付随する大便蓄積を伴って、大腸重量:長さ比および大腸における潰瘍性病変における顕著な変化を実証した。ブデソニドによる処置は、存命中および死後の両方の疾患パラメーターにおける改善と関連し、全てのTNBSレシピエント群のうちで最低の平均組織病理学スコアを有したが、この疾患パラメーターにおける低減は、有意性を達成しなかった。Fc−HRS(2−60)−1日1回−静脈内による処置は、組織病理学スコアを低減させることにおいてブデソニドと類似の効果を有し、優れた生存と関連した。TNBS/HRS(1−60)−Fc−1日1回−静脈内群は、最高レベルの生存および大腸重量:長さ比における顕著な改善を示したが、組織病理学スコアを低減させることにおいて、ブデソニドまたはFc−HRS(2−60)のいずれよりも有効性が低かった。組織病理学スコアに関して、これらの試験品目のうち3つ全てが、大腸の遠位3分の1に対してその最大の効果を有するようであった。疾患パラメーターにおける改善が、TNBS/Fc−HRS(2−60)−皮下群およびTNBS/HRS(1−60)−Fc−1回−静脈内群について観察された(例えば、体重および大腸重量:長さ比)。さらに、TNBS処置マウス結腸の転写プロファイリングは、Fc−HRS(2−60)による、TNBS調節された免疫性および炎症性関連遺伝子の顕著な低減を明らかにした。この結果は、HRS(1−60)もまた、MCP1、MMP3、CD11bおよびIL10のTNBS誘導されたレベルを顕著に低減させるという知見によって補強され、HRS−Fc融合タンパク質が、この系において免疫調節遺伝子発現において活性であったことを実証している。
全体として、このデータは、Fc−HRS(2−60)およびHRS(1−60)−Fcが、腸炎症および他の炎症性状態の処置において、顕著な潜在性を有することを示唆している。
(実施例10)
T細胞集団に対するHRS−Fc融合タンパク質の影響
T細胞集団に対するHRS−Fcコンジュゲートの潜在的な影響をin vivoで評価するために、Fc−HRS(2−60)を、上記と類似した、大腸炎のTNBS誘導性モデルにおいて試験した。研究を、雄性BDF−1マウスにおいて実施した。簡潔に述べると、雄性BDF−1マウス(Jackson Laboratories)を、実験前に最低1週間にわたって順応させ、TNBS投与の16時間前および投薬の13時間前に開始して絶食させた。Fc−HRS(2−60)を、TNBS処置を開始するのと同じ時点で、単一用量、0.5mg/Kg、静脈内で投与した。1群当たり3匹の動物由来の脾細胞を、免疫性集団について分析した。分析のための動物を選択するために、最も重度の疾患スコアを有したマウスおよび最も重症度が低い疾患スコアを有したマウスを排除した(臨床的観察、大便の硬さおよび体重に基づく)。残りの動物から、各処置群由来の3匹の動物を、そのそれぞれの群の平均を示すことに基づいて選別した。
手順。脾臓を、BDF−1マウスから回収し、10ml冷細胞染色緩衝液(Biolegend、カタログ番号420201、ロット番号B166478)中に氷上で直接配置した。脾臓を、組織培養皿中の2つの急速冷凍したオートクレーブしたスライド間で機械的に解離させた。細胞懸濁物を、70μmフィルターを通して濾過し、細胞を、300gで5分間、4℃での遠心分離によってペレット化した。細胞を、10ml細胞染色緩衝液中で1回洗浄し、Nexcelom Cellometer Auto 2000 Cell Viability Counterを使用して計数した。脾細胞を、細胞染色緩衝液中5×105細胞/mlで再構成し、フローサイトメトリーのために抗体で即座に染色した。
合計1×106細胞を、製造業者の指示に従ってOne Step Staining
Mouse Treg Flow Kit(Biolegendカタログ番号13680、ロット番号B177852、B177853、B174309、B176365)を使用して、調節性Tマーカー(CD4、CD25およびFOXP3)について染色した。
免疫細胞の表現型決定のために、合計1×106細胞を、CD3εに対する蛍光標識抗体(カタログ番号100334、ロット番号162956)、CD4に対する蛍光標識抗体(カタログ番号100529、ロット番号B152907)およびCD8に対する蛍光標識抗体(カタログ番号100714、ロット番号B165226)(抗体は、Biolegendから購入した)で染色した。細胞を、細胞染色緩衝液中に製造業者の推奨する濃度で希釈した抗体で染色し、4℃で30分間インキュベートした。細胞を、細胞染色緩衝液で徹底的に洗浄し、安定化固定緩衝液(BD Biosciencesカタログ番号338036、ロット番号2291614)を使用して固定した。
フローサイトメトリーを、VA Flow Cytometry Research Core設備(VA San Diego、La Jolla、CA)において実施した。試料を、3レーザーBD Canto機器(488 Argon、633 HeNe、405 Violet)で分析した。生FACSファイルを、FlowJoソフトウェア(TreeStar)を使用して分析した。
結果。細胞外染色された脾細胞を、生リンパ球集団およびCD3+細胞に対してゲートをかけて、合計T細胞百分率を決定した。CD4+およびCD8+の集団百分率を生成するために、細胞を、生リンパ球ゲートから、CD3+CD4+T細胞およびCD3+CD8+T二重陽性細胞へとゲートをかけた。調節性T細胞(Treg)を、生リンパ球ゲートに対して、次いでCD4+細胞に対してゲートをかけた。Treg細胞を、CD25およびFoxP3の発現に基づいて決定した。これらのデータのうちで(図27A〜27Dを参照のこと)、各ドットは1匹の動物を示し、線は平均を示す。
TNBS処置マウスでは、ナイーブ動物と比較して、CD3+T細胞における増加があった(図27A)。対照的に、3匹のFc−HRS(2−60)処置マウスのうち2匹は、TNBS処置動物と比較して、CD3+T細胞における低減を示した。どのCD3+集団がこの変化の主原因であるのかを決定するために、CD8+、CD4+およびTreg細胞集団をさらに調査した。図27Bおよび図27Cは、CD8+T細胞およびCD4+細胞が、TNBS処置動物において上昇し、Fc−HRS(2−60)による処置が両方の場合においてレベルを低減させたことを示している。さらに、Treg細胞は、ナイーブ動物と比較して、TNBS処置動物において枯渇したが、TNBS処置動物と比較して、Fc−HRS(2−60)処置群においては上昇した(図27D)。さらに、1匹のFc−HRS(2−60)で処置したマウスは、ナイーブ動物と類似のTregレベルを示した。合わせると、これらの結果は、TNBSが、脾臓中のT細胞集団を、増加したCD8+T細胞および減少したTreg細胞を介してより炎症性の表現型に変更させること、ならびにFc−HRS(2−60)による処置が、恒常的レベルに向けてこれらの集団を回復させることを示唆している。
これらおよび他の変化が、上に詳述した説明の教示の下に、実施形態に対してなされ得る。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用された用語は、これらの特許請求の範囲を本明細書および特許請求の範囲中に開示された具体的な実施形態に限定すると解釈すべきではないが、かかる特許請求の範囲が権利付与される等価物の全範囲に沿った、全ての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。従って、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。