発明の要約
低内毒素治療物質の精製方法およびその組成物
本発明は、治療物質を、実質上内毒素を含まないように精製するための方法に関するものである。薬用物質を含む治療的投与に好適な調製物[ここでこの調製物は実質上内毒素を含まない]もまた本発明において提供する。このような調製物は、癌の治療における適応、血管新生疾患の治療における適応、血管形成阻害における適応、および眼科病態の治療における適応を包含する(但しこれらに限定されない)様々な治療適応に使用できる。
或る態様では、本発明は、薬用物質および薬学上許容し得る担体を含む、ヒトへの投与に好適な(医薬)薬用調製物[ここで、この薬用調製物中の内毒素量は、薬用物質1mgあたり約10内毒素単位未満である]に関するものである。或る態様では、この薬用物質はポリペプチドである。
別の態様では、本発明は、ポリペプチドおよび薬学上許容し得る担体を含む、ヒトへの投与に好適な薬用調製物[ここで、この薬用調製物中の内毒素量は、ポリペプチド1mgあたり約10内毒素単位未満である]に関するものである。
別の態様では、本発明は、ポリペプチドおよび薬学上許容し得る担体を含む、ヒトの腫瘍治療または眼科的投与における使用に好適な薬用調製物[ここで、この薬用調製物中の内毒素量は、ポリペプチド1mgあたり約10内毒素単位未満である]に関するものである。
前記態様のいずれか一つにおいて、ポリペプチドは組換え合成する。これらの局面の別の態様では、ポリペプチドを形質転換された原核細胞またはその子孫において産生させ、そこから回収する。別の態様では、ポリペプチドを形質転換された真核細胞またはその子孫において産生させ、そこから回収する。別の態様では、ポリペプチドを形質転換された真核細胞またはその子孫の細胞質において産生させ、そこから回収する。別の態様では、このポリペプチドは血管新生を調節することができる。別の態様では、このポリペプチドは黄斑変性、糖尿病性網膜症、または、望ましくない眼の血管新生に関連するその他の疾患または状態の処置に使用できる。別の態様では、このポリペプチドは、約8未満の等電点を有する。別の態様では、このポリペプチドは約5.5および約8.0の間の等電点を有する。別の態様では、このポリペプチドは約6.0および約7.5の間の等電点を有する。別の態様では、このポリペプチドは疎水性の溝を含み、この態様をさらに洗練させたものにおいては、このポリペプチドは約8.0未満の等電点を有する。
前記態様のいずれか一つにおいて、このポリペプチドはトリプトファンtRNAシンセターゼの全体または一部である。前記態様のいずれか一つにおいて、該調製物は T2-TrpRSまたはその相同体を含む。
別の態様では、本発明は、前記ポリペプチドまたは薬用物質のいずれかを精製する方法であって、清澄化工程実施後に、そして緩衝液交換工程実施前に、内毒素低減濾過工程を実施する事を含む方法に関するものである。さらにこの内毒素低減濾過工程は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程実施前に実施できる。或いはこの内毒素低減濾過工程は、濃縮工程実施前に実施できる。
別の態様では、本発明は、前記ポリペプチドまたは薬用物質のいずれかを精製する方法であって、清澄化工程実施後に、そして濃縮工程実施前に、内毒素低減濾過工程を実施する事を含む方法に関するものである。さらにこの内毒素低減濾過工程は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程実施前に実施できる。或いはこの内毒素低減濾過工程は、緩衝液交換工程実施前に実施できる。
別の態様では、本発明は、前記ポリペプチドまたは薬用物質のいずれかを精製する方法であって、清澄化工程実施後に、そして陽イオン交換クロマトグラフィー工程実施前に、内毒素低減濾過工程を実施する事を含む方法に関するものである。或いはこの内毒素低減濾過工程は、濃縮工程実施前に実施できる。或いはこの内毒素低減濾過工程は、緩衝液交換工程実施前に実施できる。
別の態様では、本発明は、前記ポリペプチドまたは薬用物質のいずれかを精製する方法であって、内毒素低減濾過工程を、濃縮工程実施前に、且つ陽イオン交換クロマトグラフィー工程実施前に、そして緩衝液交換工程前に実施する方法に関するものである。
前記精製法のいずれかにおける濃縮、緩衝液交換、および陽イオン交換クロマトグラフィー工程の順序は変えることができるが、或る態様では、少なくとも一つの濃縮工程を緩衝液交換工程の前に実施する。或いは、陽イオン交換クロマトグラフィー工程を緩衝液交換工程の後に実施する。或いは、少なくとも一つの濃縮工程を陽イオン交換クロマトグラフィー工程の前に実施する。或いは、陽イオン交換クロマトグラフィー工程を緩衝液交換工程および少なくとも一つの濃縮工程の後に実施する。或いは、少なくとも一つの濃縮工程を緩衝液交換工程および陽イオン交換クロマトグラフィー工程の前に実施する。そして或いは、さらなる濃縮工程を任意の緩衝液交換工程の後に実施する。
任意の前記精製法のさらなる態様では、内毒素低減濾過工程を、陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に実施する。さらなる態様では、この陰イオン交換クロマトグラフィー工程は、陰イオン交換樹脂の使用を含む。さらに別の態様では、陰イオン交換樹脂は、Qセファロース、DEAEセファロース、およびANXセファロースより成る群から選択する。さらに別の態様では、陰イオン交換樹脂はQセファロースである。これらの陰イオン交換樹脂の使用のいずれかにおいて、原材料グレード、高速流グレードおよび高性能グレードを包含する(但しこれらに限定されない)種々のグレードおよびサイズを使用できる。
陽イオン交換クロマトグラフィー工程を含む任意の前記精製法の態様では、この陽イオン交換クロマトグラフィー工程は陽イオン交換樹脂の使用を含み得る。さらなる態様では、この陽イオン交換樹脂は、CMセファロース、SPセファロース、およびDEAEセファロースより成る群から選択する。さらに別の態様では、この陽イオン交換樹脂はCMセファロースである。これらの陽イオン交換樹脂の使用において、原材料グレード、高速流グレードおよび高性能グレードを包含する(但しこれらに限定されない)種々のグレードおよびサイズを使用できる。
別の態様では、本発明は、患者への投与に好適なポリペプチドを精製する方法であって、陰イオン交換クロマトグラフィー工程、内毒素低減手段を含む工程、および緩衝液交換工程を含む方法[ここで、この内毒素低減手段を含む工程は、緩衝液交換工程の前に実施する]に関するものである。さらなる態様では、患者への投与に好適なポリペプチドは、眼科的投与に好適である。さらに別の態様では、この、眼科的投与に好適なポリペプチドは、血管形成のモジュレーターである。さらに別の態様では、この、眼科的投与に好適なポリペプチドは、黄斑変性、糖尿病性網膜症、または、望ましくない眼の血管新生に関連する疾患もしくは状態の処置に使用できる。この段落に記載の任意の態様をさらに洗練させたものにおいて、このポリペプチドは実質上内毒素を含まない。
別の態様では、本発明は、眼科的投与に使用するためのポリペプチド調製物であって、陰イオン交換クロマトグラフィー工程、内毒素低減手段を含む工程、および緩衝液交換工程を含む方法[ここで、この内毒素低減手段を含む工程は、緩衝液交換工程の前に実施する]により製造された精製ポリペプチドを含む調製物に関するものである。さらなる態様では、このポリペプチド調製物は薬学上許容し得る担体をさらに含む。さらなる態様では、このポリペプチドはtRNAシンセターゼの全体または一部である。さらに別の態様では、このポリペプチドはトリプトファニルtRNAシンセターゼの全体または一部である。さらに別の態様では、このポリペプチドはT2-TrpRSまたはその相同体である。この段落に記載した任意のポリペプチド調製物のさらなる態様では、ポリペプチド調製物中の内毒素濃度は、ポリペプチド1mgあたり約10内毒素単位未満である。
別の態様では、本発明は、ポリペプチドを含むポリペプチド組成物[ここで、このポリペプチドはtRNAシンセターゼの全体または一部であり、ポリペプチド組成物は実質上内毒素を含まない]に関するものである。さらなる態様では、このポリペプチドはトリプトファニルtRNAシンセターゼの全体または一部である。これに代わる局面は、ポリペプチドを含むポリペプチド組成物であって、このポリペプチドがT2-TrpRSもしくはその相同体の全体または一部であり、ポリペプチド組成物が実質上内毒素を含まないポリペプチド組成物である。この段落に記載した任意の側面のさらなる態様では、このポリペプチド組成物はさらに薬学上許容し得る担体を含む。
別の態様では、本発明は、前段落に記載のポリペプチド組成物を製造する方法であって、収集され洗練されたポリペプチド画分[ここで、この収集され洗練されたポリペプチド画分は実質上内毒素を含まない]に濃縮工程を実施することを含む方法に関するものである。さらなる態様は、前記態様に記載の収集され洗練されたポリペプチド画分を製造する方法であって、洗練されていないポリペプチド試料[ここで、この洗練されていないポリペプチド試料は実質上内毒素を含まない]に陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実施し、それにより前記態様の収集され洗練されたポリペプチド画分を生成することを含む方法である。さらなる態様は、前記態様に記載の洗練されていないポリペプチド試料を生成する方法であって、陰イオン交換後緩衝液中のポリペプチド試料[ここで、この陰イオン交換後緩衝液中のポリペプチド試料は実質上内毒素を含まない]に緩衝液交換工程を実施し、それにより前記態様に記載の洗練されていないポリペプチド試料を生成することを含む方法である。さらなる態様は、前記態様に記載の陰イオン交換後緩衝液中のポリペプチド試料を生成する方法であって、陰イオン交換カラムから収集されたポリペプチド画分[ここで、陰イオン交換カラムから収集されたポリペプチド画分は実質上内毒素を含まない]に、緩衝液交換工程の前に濃縮工程を実施し、それにより、前段落に記載の陰イオン交換後緩衝液中のポリペプチド試料を生成することを含む方法である。さらなる態様は、前記態様に記載の陰イオン交換カラムから収集されたポリペプチド画分を生成する方法であって、前記態様に記載の濃縮工程の前に、内毒素低減濾過工程を実施することを含む方法である。さらなる態様は、内毒素低減濾過工程の前に、陰イオン交換クロマトグラフィー工程を実施することを含む方法である。
別の態様では、本発明は、眼の疾患または病態を有する患者を処置する方法であって、治療有効量のポリペプチド[ここで、治療有効量のポリペプチド中の内毒素レベルは、ポリペプチド1mgあたり約10内毒素単位未満である]を投与することを含む方法に関するものである。或る態様では、眼の疾患または病態は、望ましくない眼の血管新生に関連する。別の態様では、このポリペプチドは、形質転換された原核細胞またはその子孫から単離される。さらなる態様では、この単離は、洗練化工程前の内毒素低減濾過工程を含む。さらに別の態様では、単離はさらに、内毒素低減濾過工程前の清澄化工程を含む。さらに別の態様では、単離はさらに、洗練化工程後の濃縮工程を含む。さらに別の態様では、単離はさらに、内毒素低減濾過工程後の緩衝液交換工程を含む。
マルチユニット複合体およびその使用
本発明はさらに、tRNAシンセターゼフラグメントまたはその相同体もしくは類似体より成るマルチユニット複合体を含む組成物に関するものである。好ましくはこの、tRNAシンセターゼフラグメントのマルチユニット複合体は、単離されそして/または可溶性である。マルチユニット複合体の例は、二量体(ホモ二量体を包含する)、三量体などを包含する。本発明に係るマルチユニット複合体は、第一単量体および第二単量体を包含できる[ここで、この第一および第二単量体は、共有結合しているか、または非共有結合的に関連している]。
本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントは、例えばトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼフラグメントの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。幾つかの態様では、tRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにこれらの任意の相同体および類似体より成る群から選ばれる。
tRNAシンセターゼフラグメントを包含する種々のマルチユニット複合体
幾つかの態様では、本発明は、第一tRNAシンセターゼフラグメントまたはその任意の相同体もしくは類似体、および、第二tRNAシンセターゼフラグメントまたはその任意の相同体もしくは類似体を含む組成物に関するものである[ここで、第一トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントはN末端にメチオニンを持ち、第二トリプトファニルtRNAシンセターゼはN末端にメチオニンを持たない]。
幾つかの態様では、この組成物の50%以上が第一tRNAシンセターゼフラグメントで構成される。別の態様では、この組成物の50%以上が第二tRNAシンセターゼフラグメントで構成される。
本発明に係る第一および/または第二tRNAシンセターゼフラグメントは、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。tRNAシンセターゼの血管形成抑制フラグメントの例は、配列番号15-17、27-29、39-41、51-53、およびこれらの任意の相同体または類似体を包含するが、これらに限定される訳ではない。
幾つかの態様では、本発明に係る組成物は約7.4-7.8のpIを有する。より好ましい態様では、本発明に係る組成物は約7.6のpIを有する。
本発明に係る組成物はさらに治療物質をも含む。本発明に係る治療物質は、抗新生物物質、抗炎症物質、抗菌物質、抗ウイルス物質、および抗血管形成物質より成る群から選択できる。
本発明に係る任意のマルチユニット複合体は、マルチユニット複合体および薬学上許容し得る賦形剤を含む薬用製剤に製剤化することができる。この製剤はさらに、抗新生物物質、抗炎症物質、抗菌物質、血管形成物質、抗ウイルス物質、および抗血管形成物質より成る群から選ばれる第二の治療物質を含むことができる。眼科的投与のためには、薬用製剤は保存剤を含まない。好ましい態様では、薬用製剤は溶液である。
本発明に係る任意の組成物(薬用製剤を包含する)は凍結乾燥できる。本発明に係る組成物(薬用製剤を包含する)を使用して、細胞に本発明に係る組成物を接触させる事により、細胞における血管形成を阻害することができる。本発明に係る組成物はさらに、本発明に係る薬用製剤を個体に投与することにより、血管形成状態に陥っている個体を処置するために使用できる。
血管形成を調節するための組成物および方法
本発明はさらに、第一tRNAシンセターゼフラグメントおよび第二tRNAシンセターゼフラグメント[この第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントは非共有結合により二量体化しており、マーカー配列、例えばヘキサヒスチジンタグを含まない]を含む薬用製剤に関するものである。このような薬用製剤は、N末端にメチオニンを持つ第一tRNAシンセターゼフラグメント、およびN末端にメチオニンを含まない第二tRNAシンセターゼフラグメントを有し得る。
幾つかの態様では、このような薬用製剤の第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントである。幾つかの態様では、この第一tRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号15-17、27-29、39-41、51-53、これらの相同体および類似体より成る群から選ばれる。幾つかの態様では、第二tRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12-14、24-26、36-38、48-50、これらの相同体および類似体より成る群から選ばれる。幾つかの態様では、第一tRNAシンセターゼフラグメントは配列番号15またはその相同体もしくは類似体であり、そして/または第二tRNAシンセターゼフラグメントは配列番号12、またはその相同体もしくは類似体である。幾つかの態様では、第一tRNAシンセターゼフラグメントは配列番号27またはその相同体もしくは類似体であり、そして/または第二tRNAシンセターゼフラグメントは配列番号24、またはその相同体もしくは類似体である。
本発明に係る任意の薬用製剤において、第一tRNAシンセターゼフラグメントは、第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントの合計量の約5%(重量)未満とすることができる。本発明に係る薬用製剤の幾つかの態様では、第二tRNAシンセターゼフラグメントは、第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントの合計量の約5%(重量)未満である。幾つかの態様では、本発明に係る薬用製剤は、第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントの合計重量の約50%の第一tRNAシンセターゼフラグメント、および、第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントの合計量の約50%(重量)の第二tRNAシンセターゼフラグメントを含む。
本発明に係る任意の薬用製剤において、内毒素濃度は、tRNAシンセターゼフラグメント1mgあたり1内毒素単位未満とすることができる。さらに、本発明に係る薬用製剤は、好ましくは洗浄剤および/または保存剤を実質上含まないか、または全く含まない。
本発明はさらに、本発明に係る任意の薬用製剤を内包する容器および血管形成を調節するための一組の使用説明書を含むキットを企図している。このようなキットはさらに、1またはそれ以上の前もって充填された注射筒[ここで、各々の注射筒は該薬用製剤の単一用量を内包する]を含む。
本発明はさらに、細胞または生物において血管形成を調節するための方法を企図する。そのような方法は、細胞または生物を本発明に係る薬用製剤に接触させる事を包含する。好ましくは、このような血管形成は眼の血管形成または眼の血管新生である。
本発明はさらに、患者に本明細書に開示する薬用製剤を投与することを含む、或る状態に陥っている患者を処置するための方法を企図する。好ましくは、そのような状態は眼の血管形成または眼の血管新生を含む。処置または防止は、本発明に係る薬用製剤を局所投与(例えば眼に)することを含む。
tRNAシンセターゼフラグメントをコードしているポリヌクレオチドおよびその使用
本発明はさらに、第一tRNAシンセターゼフラグメントおよび第二tRNAシンセターゼフラグメントをコードしているポリヌクレオチド配列に関するものである。幾つかの態様では、このようなtRNAシンセターゼフラグメントのうち少なくとも一つがトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントである。幾つかの態様では、このようなtRNAシンセターゼフラグメントの両方がトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントである。トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントは哺乳動物またはヒトのものであってよく、血管形成抑制活性を有する。
幾つかの態様では、第一tRNAシンセターゼフラグメントおよび/または第二tRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにそれらの任意の相同体および類似体より成る群から選ばれる。本発明に係るポリヌクレオチド配列は、第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントを縦列でコードしているかも知れない。幾つかの態様では、このようなポリヌクレオチド配列はリンカーをもコードしている。リンカーをコードしているポリヌクレオチド配列は、第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントをコードしているポリヌクレオチド配列の間に位置することができる。本発明に係るリンカーは、発現された第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントが自由に回転し相互に二量体化できるほど充分に長い。リンカーならびに第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは同じオープンリーディングフレームにある。
幾つかの態様では、少なくとも二つのtRNAシンセターゼフラグメントをコードしているポリヌクレオチド配列は、リーダー配列をもコードしている。本発明に係るリーダーは、このポリペプチドを特定領域に局在させる抗体または抗体フラグメントであってよい。本発明に係るポリヌクレオチド配列はプロ配列をもコードし得る。プロ配列は、コードされているtRNAシンセターゼポリペプチドが所望の位置(例えば眼の硝子体)に到達すると、開裂し得る。
好ましくは、本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにそれらの任意の相同体および類似体より成る群から選ばれる。そのようなポリペプチドは、例えば配列番号18-23、30-35、42-47、54-59、ならびにそれらの任意の相同体および類似体によってコードされ得る。
本発明はさらに、本明細書に開示されるポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター、およびそのような発現ベクターを含む宿主細胞をも企図する。
幾つかの態様では、本発明は、本発明に係る発現ベクターを含む標的化リポソームを企図する。
本発明に係る発現ベクターは、マルチユニット複合体の製造に有用となり得る。したがって幾つかの態様では、本発明はマルチユニット複合体を創成する方法であって、本明細書に開示する発現ベクターを提供し;その発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクトし;そして、その宿主細胞を発現に好適な条件下に維持する、という工程を含む方法に関するものである。
tRNAシンセターゼフラグメントに特異的な抗体およびエピトープ
本発明はさらに、tRNAシンセターゼまたはそのフラグメント、相同体もしくは類似体に特異結合する抗体に関するものである。例えば、本発明に係る抗体は、tRNAシンセターゼまたはそのフラグメント、相同体もしくは類似体のエピトープに結合できる。本発明に係るtRNAシンセターゼ(またはそのフラグメント)は、トリプトファニルtRNAシンセターゼ、ヒトtRNAシンセターゼ、またはtRNAシンセターゼの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。好ましくは、本発明に係る抗体は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにこれらの任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるポリペプチドに特異結合する。本発明に係る抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体、抗体フラグメントであってよい。
この抗体は、エピトープ担持ポリペプチド[このエピトープ担持ポリペプチドは、tRNAシンセターゼ(またはそのフラグメント、相同体、もしくは類似体)の約5ないし約30アミノ酸を含む]に結合できる。このようなエピトープ担持ポリペプチドまたはエピトープは、好ましくはN末端エピトープであるか、またはtRNAシンセターゼ(またはそのフラグメント、相同体もしくは類似体)のN末端を含む。
幾つかの態様では、本発明はエピトープ担持ポリペプチドに関するものである。本発明に係るエピトープ担持ポリペプチドは、tRNAシンセターゼフラグメントの少なくとも約5アミノ酸配列を包含できる。このtRNAシンセターゼフラグメントは、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。
エピトープ担持ポリペプチドの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体の、約1ないし約5、約1ないし約15、または約1ないし約25のアミノ酸残基;配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体の、約10ないし約15、約10ないし約25、または約10ないし約35のアミノ酸残基;配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体の、約20ないし約25、約20ないし約35、または約20ないし約45のアミノ酸残基を含む、またはそれらで構成されるポリペプチドを包含する。
別の態様では、本発明は、本発明に係るエピトープ担持ポリペプチドのうち1またはそれ以上をコードしているポリヌクレオチド配列に関するものである。
tRNAシンセターゼフラグメントの変異体およびその使用
本発明はさらに、単離されたtRNAシンセターゼフラグメント[ここでこのtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12、15、24、27、36、39、48または51のアミノ酸配列を含む、または本質的にそれらで構成される、またはそれらで構成される]に関するものである。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは、45kD未満、より好ましくは44kD未満、43.9kD、43.8kD、43.7kD、43.6kD未満、またはより好ましくは43.5kD未満である。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは抗血管形成性である。
幾つかの態様では、単離されたtRNAシンセターゼフラグメント[ここでこのtRNAシンセターゼフラグメントは配列番号13、16、25、28、37、40、49、または52を含む、または本質的にそれらで構成される、またはそれらで構成される]を含む組成物。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは48kD未満、より好ましくは47kD未満、またはより好ましくは46kD未満である。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは抗血管形成性である。
幾つかの態様では、本発明は、単離されたtRNAシンセターゼフラグメント[ここでこのtRNAシンセターゼフラグメントは配列番号14、17、26、29、38、41、50、または53を含む、または本質的にそれらで構成される、またはそれらで構成される]を含む組成物に関するものである。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは53kD未満、より好ましくは52kD未満、より好ましくは51kD未満、より好ましくは50kD未満、またはより好ましくは49kD未満である。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは抗血管形成性である。
本発明における任意の態様では、tRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは単離されている。本発明における任意の態様では、tRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは精製されている。このような精製工程は、薬用組成物中の内毒素量を低下させることができる。幾つかの態様では、組成物中の内毒素量は、30、20、10内毒素単位未満、または、より好ましくは9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1内毒素単位未満である。
血管形成を処置する方法
本発明はさらに、血管形成状態に陥っている個体を処置する方法に関するものである。この方法は、そのような個体に、tRNAシンセターゼフラグメントまたはその相同体もしくは類似体のマルチユニット複合体を含む薬用製剤を投与する工程を包含する。
本発明によって処置され得る血管形成状態の例は、加齢性黄斑変性、癌、発達異常、糖尿病性失明、子宮内膜症、眼の血管新生、乾癬、関節リウマチ(RA)、皮膚変色、例えば血管腫、および創傷治癒を包含するがこれらに限定される訳ではない。
本発明方法で使用されるtRNAシンセターゼフラグメントは、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、もしくはヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、またはそれらの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。本発明により企図されるフラグメントの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体のフラグメントを包含するがこれらに限定されない。
幾つかの態様では、本発明に係るマルチユニット複合体は二量体またはホモ二量体である。マルチユニット複合体が二量体である時、この二量体は第一単量体および第二単量体を包含できる[ここで、この第一および第二単量体は、異なっているか、相同的であるか、実質上相同的であるか、または同一である]。本発明により企図される第一および第二単量体ならびにマルチユニット複合体は、共有結合しているか、または非共有結合的に連結している。
幾つかの態様では、血管形成に陥っているそして/またはそれに陥り易い個体に、抗新生物物質、抗炎症物質、抗菌物質、抗ウイルス物質、および抗血管形成物質より成る群から選ばれる治療物質をさらに投与、または同時投与することができる。
本発明方法で使用される薬用製剤は全身的または局所的に投与できる。全身投与のためには、本発明に係る薬用製剤を0.1-100mg/kgの用量で投与できる。局所投与のためには、本発明に係る薬用製剤を50-1000μg/cm2の用量で投与できる。特に眼内投与のためには、本発明に係る薬用製剤を50-1000μg/眼の用量で投与できる。眼に投与する場合、好ましくは保存剤を含まない薬用製剤を単一単位用量で包装する。
抗血管形成物質についてスクリーニングする方法
本発明はさらに、血管形成抑制物質についてスクリーニングする方法[ここでこの方法は、tRNAシンセターゼフラグメントのレセプターを候補物質のライブラリーの成員と接触させ、レセプターと選択的に結合するライブラリー由来候補物質を選択する工程を包含する]に関するものである。ライブラリー(2またはそれ以上の物質)の候補物質は、例えばポリペプチド、擬似ペプチド、ペプチド核酸、核酸、炭水化物、および、小さなまたは大きな有機または無機分子であってよい。
幾つかの態様では、上のスクリーニング方法はさらに、血管形成を阻害する候補物質の能力を評価する工程を包含する。評価は、候補物質を哺乳動物の網膜に投与し、その網膜の血管新生を視覚化する工程を包含する。
スクリーニング方法で使用されるtRNAシンセターゼフラグメントの例は、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼのその他の血管形成抑制フラグメントを包含する。
幾つかの態様では、本発明は、tRNAシンセターゼフラグメントのレセプターのための最適化されたリガンドを取得する方法に関するものである。そのような方法は、該フラグメントを伴う該レセプターのX線構造を取得し;コンピュータープログラムを用いてレセプターとtRNAシンセターゼフラグメントの接触点を解析し;そして、このtRNAシンセターゼフラグメントをレセプターに対する親和性が増すよう修飾することを包含する。これらの態様に使用できるコンピュータープログラムの例は、GRID、MCSS、AUTODOCK、DOCK、AMBER、QUANTA、およびINSIGHT IIを包含するがこれらに限定される訳ではない。
最適化されたリガンドを取得するための方法に使用するtRNAシンセターゼフラグメントは、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼの任意の血管形成抑制フラグメントを包含する。好ましい態様では、このようなフラグメントは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、およびそれらの任意の相同体または類似体より成る群から選択できる。
血管形成を調節する方法
本発明はさらに、血管形成を調節する方法に関するものである。そのような方法は、血管形成を経験しているまたはそれに陥り易い細胞もしくは組織を、tRNAシンセターゼフラグメントまたはその相同体もしくは類似体を含むマルチユニット複合体に接触させる工程を含む。
本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントは、例えばトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。本発明により企図されるtRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるものを包含する。
本発明に係るマルチユニット複合体は可溶性でありそして/または単離されていてよい。マルチユニット複合体は2またはそれ以上の単量体を含むことができる。幾つかの例では、マルチユニット複合体は二量体またはホモ二量体である。マルチユニット複合体の2またはそれ以上の単量体単位は、共有結合しているか、または非共有結合的に関連していてよい。
幾つかの態様では、マルチユニット複合体は第一単量体および第二単量体を持つことができる[ここで、この第一単量体は、N末端にメチオニンを有するtRNAシンセターゼフラグメントを含み、第二単量体はN末端にメチオニンを持たないtRNAシンセターゼフラグメントを含む]。そのような組成物は約7.4-7.8のpI値を持ち得る。
第一単量体の例は、配列番号15-17、27-29、39-41、51-53およびそれらの相同体または類似体より成る群から選ばれるものを包含する。
第二単量体の例は、配列番号12-14、24-26、36-38、48-50およびそれらの相同体または類似体より成る群から選ばれるものを包含する。
幾つかの態様では、マルチユニット複合体は第一単量体および第二単量体を含み、ここでこの第一単量体は、その二量体化ドメインに少なくとも1つの天然に存在しないシステインを含むよう修飾されたtRNAシンセターゼフラグメントを含み、そして第二単量体は、その二量体化ドメインに少なくとも1つの天然に存在しないシステインを含むよう修飾されたtRNAシンセターゼフラグメントを含む。
このようなtRNAシンセターゼフラグメントは、例えばトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。
本明細書に記載の任意の態様では、細胞または組織をさらに、抗新生物物質、抗炎症物質、抗菌物質、抗ウイルス物質、および抗血管形成物質より成る群から選ばれる第二の治療物質に接触させることができる。
血管形成を調節するためのキット
本発明は、血管形成を調節するためのキットに関するものである。幾つかの態様では、本発明に係るキットは、マルチユニット複合体を含む容器[ここで、該マルチユニット複合体のうち少なくとも一つのユニットはtRNAシンセターゼフラグメントまたはその相同体もしくは類似体を含む];および、個体を処置する際のその使用のための書面による説明書を含む。マルチユニット複合体は、例えば二つのユニットを持つ二量体であってよい。マルチユニット複合体の単量体は、互いに異なっているか、相同的であるか、実質上相同的であるか、または同一であってよい。幾つかの態様では、マルチユニット複合体は、二つの相同的単量体を有する二量体である。
本発明の任意の態様において、tRNAシンセターゼフラグメントは、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼ、またはtRNAシンセターゼフラグメントの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。例えばtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、およびその任意の相同体または類似体より成る群から選択できる。
マルチユニット複合体中の任意の二つの単量体は、共有結合または非共有結合していてよい。第一容器内の組成物は、単一用量単位での全身投与のために包装されていてよい。単一用量単位で包装される場合、用量は50-1000μg/用量の範囲とすることができる。本発明に係るキットはまた、第二の治療物質を含めることができる。こうした第二治療物質は、第二容器に入れる。第二治療物質の例は、抗新生物物質、抗炎症物質、抗菌物質、抗ウイルス物質、および抗血管形成物質を包含するがこれらに限定されない。
幾つかの態様では、本発明に係るキットは、tRNAシンセターゼフラグメントのエピトープに特異結合する抗体を含む容器およびその使用のための書面による説明書を含み得る。このような例では、tRNAシンセターゼフラグメントは、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントまたはヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼの任意の血管形成抑制フラグメントである。幾つかの態様では、血管形成抑制性tRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体より成る群から選択できる。
幾つかの態様では、本発明に係るキットは、第一tRNAシンセターゼフラグメントおよび第二tRNAシンセターゼフラグメントの組成物を含む容器[ここで、第一tRNAシンセターゼフラグメントはN末端にメチオニンを持ち、第二tRNAシンセターゼフラグメントはN末端にメチオニンを持たない];およびその使用のための書面による説明書を含む。
第一tRNAシンセターゼフラグメントは、例えばトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼの血管形成抑制フラグメントであってよい。第二tRNAシンセターゼフラグメントは、例えばトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼの血管形成抑制フラグメントであってよい。
N末端にメチオニンを有する血管形成抑制tRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号15-17、27-29、36-38、48-50、ならびにそれらの任意の相同体および類似体を包含するが、これらに限定される訳ではない。
N末端にメチオニンを持たない血管形成抑制tRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号12-14、24-26、36-38、48-50、ならびにそれらの任意の相同体および類似体を包含するが、これらに限定される訳ではない。
本発明に係る任意の態様において、第一容器内の組成物は約7.4-7.8のpIを有し得る。
このようなキットはさらに、第二の治療物質、例えば抗新生物物質、抗炎症物質、抗菌物質、抗ウイルス物質、または抗血管形成物質を含むことができる。第二治療物質は、別個の容器に入れることができる。
血管形成を調節するためのビジネス方法
本発明はさらに、血管形成を調節するためのビジネス方法に関するものである。幾つかの態様では、本発明に係るビジネス方法は、tRNAシンセターゼフラグメントのレセプターを調節する、またはそれに結合する物質を探索する工程;およびその物質を商品化する工程を包含する。
本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントは、例えばトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントまたはチロシルtRNAシンセターゼであってよい。好ましくはこのようなフラグメントは、哺乳動物、より好ましくはヒトのものである。幾つかの態様では、tRNAシンセターゼフラグメントは血管形成抑制活性を有する。そのような血管形成抑制tRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および変異体より成る群から選ばれるフラグメントを包含するが、これらに限定されない。
本発明の任意の態様において、探索工程は、血管形成を調節する物質を同定するために候補物質のライブラリーをスクリーニングすることを含み得る。このような物質は、例えば小分子、ペプチド、または擬似ペプチドであってよい。幾つかの態様では、探索工程は、該tRNAシンセターゼフラグメントの擬似ペプチドを作製するためのコンピュータープログラムの仕様を含み得る。
本発明はさらに、(i) 二量体化能力を増強させるようtRNAシンセターゼフラグメントを修飾し;そして、(ii) その増強されたtRNAシンセターゼフラグメントまたはその二量体化型を商品化する、工程を含むビジネス方法に関するものである。
このようなtRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは血管形成抑制フラグメント、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、および/またはヒトtRNAシンセターゼフラグメントである。このようなフラグメントの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるフラグメントを包含する。
幾つかの態様では、本発明に係る修飾工程は、二量体化ドメインが1またはそれ以上の天然に存在しないシステインを含むよう修飾されたtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている発現ベクターを作製することを含み得る。
幾つかの態様では、この修飾工程は、二つのtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている発現ベクターを作製することを含む。本発明に係る発現ベクターはさらにリンカーをコードしていてよい。このようなリンカーは、第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントの間に位置することができる。
幾つかの態様では、この修飾工程は、tRNAシンセターゼフラグメントを最適化するコンピュータープログラムの使用を含む。有用なコンピュータープログラムの例は、GRID、MCSS、AUTODOCK、DOCK、AMBER、QUANTA、およびINSIGHT IIを包含するがこれらに限定される訳ではない。
幾つかの態様では、本発明は、(i) 組換えtRNAシンセターゼフラグメントを作製し;そして、(ii) 血管形成を調節するためにこのフラグメントを商品化する、という工程を包含するビジネス方法に関するものである。作製できる組換えtRNAシンセターゼフラグメントの例は、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントおよびチロシルtRNAシンセターゼフラグメントを包含するがこれらに限定されない。好ましくは、このようなフラグメントはヒトのものである。また、好ましくはこのようなフラグメントは血管形成を調節できる。
血管形成抑制フラグメントの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体を包含するがこれらに限定されない。
本発明に係る任意の血管形成調節tRNAシンセターゼフラグメントは、単量体単位またはマルチユニット複合体であってよい。
本発明に係るビジネス方法は、まず、該フラグメントをコードしている発現ベクターを作製し、その後この発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクトし、最後にその宿主細胞を、該tRNAシンセターゼフラグメントの発現をさせる条件下に維持することによって、係る血管形成調節tRNAシンセターゼフラグメントを作製する。
引用による組み込み
本明細書に記載する全ての刊行物および特許出願は、各々の刊行物または特許出願が具体的且つ個別的に引用により本明細書の一部とされる旨の指示があるごとくに、引用により本明細書の一部とする。
発明の詳細な説明
定義
「アミノ酸」または「アミノ酸残基」という語は、アミノ酸を指し、好ましくはL異性体型である。アミノ酸残基がポリペプチド鎖の一部である時、そのアミノ酸のD異性体型は、所望の機能的性質が保持される限り、L-アミノ酸残基に置換することができる。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を指す。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基を指す。
J. Biol. Chem., 243:3552-59(1969)に記載され37 C.F.R. §§1.821-1.822に採用された標準ポリペプチド命名法に従い、本明細書に記載する全ての式によるアミノ酸残基配列は、常套的なアミノ末端からカルボキシ末端に至る左から右への向きを有する。さらに、「アミノ酸残基」という句は、37 C.F.R. §§1.821-1.822に言及されているとおり(これは引用により本明細書の一部とする)、修飾された、および非常套的なアミノ酸を包含するよう、広く定義する。アミノ酸残基配列の始めまたは終わりのダッシュは、さらなる1またはそれ以上のアミノ酸残基配列との、または、NH2のようなアミノ末端基との、またはCOOHのようなカルボキシ末端基とのペプチド結合を意味する。
ペプチドまたは蛋白において、アミノ酸の適当な保存的置換が当業者に知られており、これは、生成する分子の生物活性を変化させることなく一般的に実施することができる。一般に当業者は、或るポリペプチドの非本質的領域における1アミノ酸置換が生物活性を実質上変化させないことが理解できるであろう(例えば、Watson et al. Molecular Biology of the Gene, 4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. Co. p.224)。
このような置換は好ましくは以下に開示するものによってなされる:
本明細書で使用する「類似体(群)」という語は、本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸と同じ構造または機能(例えば、レセプターとの結合)を保持する組成物を指す。類似体の例は、擬似ペプチド、ペプチド核酸、小および大有機または無機化合物、ならびに本明細書に記載のポリペプチドまたは核酸の誘導体および変異体を包含する。本明細書で使用する「誘導体」または「変異体」という語は、1またはそれ以上のアミノ酸または核酸の欠失、付加、置換または側鎖修飾によって天然に存在するポリペプチドまたは核酸と相違しているペプチドまたは核酸を指す。アミノ酸置換は、或るアミノ酸が、異なる天然または非常套的アミノ酸残基に置き換わっている変化を包含する。このような置換は「保存的」として分類でき、この場合、ポリペプチドに含まれるアミノ酸残基が、極性、側鎖官能性またはサイズの点で類似の性質を持つ別の天然アミノ酸に置き換わっている。
本発明が包含する置換はさらに、「非保存的」であってもよく、この場合、ペプチド中に存在するアミノ酸残基が、異なる性質を有するアミノ酸、例えば異なる群の天然アミノ酸に置換されている(例えば、荷電または疎水性アミノ酸がアラニンに置換されている)、或いは、天然アミノ酸が非常套的アミノ酸に置換されている。好ましくは、アミノ酸置換は保存的である。
アミノ酸置換は典型的には単一残基の置換であるが、一群となった、または分散した複数残基の置換であってもよい。付加は、1またはそれ以上の天然または非常套的アミノ酸残基の付加を包含する。欠失は、1またはそれ以上のアミノ酸残基の欠失を包含する。
上記のように、ペプチド誘導体は、1またはそれ以上のアミノ酸が側鎖修飾を受けたペプチドを包含する。本発明により企図される側鎖修飾の例は、アルデヒドとの反応とこれに続くNaBH4での還元による還元的アルキル化;メチルアセトイミダートによるアミド化;無水酢酸によるアシル化;シアン酸塩によるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水琥珀酸および無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化;およびピリドキサル-5-燐酸塩によるリジンのピリドキシ化とこれに続くNaBH4による還元によるアミノ基の修飾を包含する。
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサルおよびグリオキサルといった試薬によるヘテロ環縮合生成物の形成によって修飾できる。カルボキシ基は、O-アシルイソ尿素の形成によるカルボジイミド活性化とこれに続く例えば対応アミドへの誘導体化により修飾できる。スルフヒドリル基は、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;システイン酸への過蟻酸酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸またはその他の置換マレイミドとの反応;4-クロロ水銀安息香酸、4-クロロ水銀フェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノールおよびその他の水銀剤を用いる水銀誘導体の形成;アルカリ性pHでのシアン酸塩によるカルバモイル化のような方法で修飾できる。システイン残基のいかなる修飾も、そのペプチドが必要なジスルフィド結合を形成する能力に影響を及ぼしてはならない。ペプチドが1またはそれ以上のジスルフィド結合の代わりにジセレニウム結合を形成するよう、システインのスルフヒドリル基をセレニウム等価物に置き換えることも可能である。
トリプトファン残基は、例えばN-ブロモスクシンイミドによる酸化または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミドまたはハロゲン化スルフェニルによるインドール環のアルキル化によって修飾できる。一方チロシン残基は、テトラニトロメタンによるニトロ化によって変化させて3-ニトロチロシン誘導体を形成させることができる。ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化またはジエチルピロカルボナートによるN-カルベトキシル化によって達成できる。プロリン残基は、例えば4位のヒドロキシ化により修飾できる。本発明により企図されるその他の誘導体は、完全にグリコシル化されていない分子から修飾されたグリコシル化分子までの範囲のグリコシル化変異体を包含する。異なる宿主細胞における組換え分子の発現から種々のグリコシル化パターンが生成するかも知れない。
さらなる誘導体は、細菌またはその他の宿主系におけるポリペプチドの発現により引き起こされる変化、および化学修飾によるものを包含する。好ましくは、この誘導体は所望の活性を保持している。例えば、T2の誘導体は、天然に存在するレセプターの一つに結合する、または血管形成を阻害するT2の能力を保持する、T2の末端切除型であってよい。
本明細書で使用する「アンタゴニスト」という語は、生物活性を阻害する分子を指す。アンタゴニスト分子の例は、抗体、アンチセンス核酸、siRNA核酸、およびその他の結合物質を包含するがこれらに限定されない。
本明細書中使用する「抗体」または「抗体群」という語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体、可溶性または結合型で標識され得る抗体に対する抗イディオタイプ(抗Id)抗体、ならびにそれらのフラグメント、領域または誘導体(例えば、分離した重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、およびFv)を包含する。
本明細書で使用する「有効量」という語は、示された効果を達成するのに必要な組成物の量を意味する。
「遺伝子治療」および「遺伝学的治療」という語は、当該治療が求められる疾患または状態にある哺乳動物、特にヒトの、或る細胞、標的細胞に、異種の核酸を移入させることを指す。この核酸は、その異種DNAが発現され、それによりコードされている治療生成物が生成されるように、選択された標的細胞中に導入される。或いはこの異種核酸は、治療生成物をコードしている核酸の発現を何らかの方法で仲介することができ;これは、生成物、例えばペプチド、または何らかの方法で治療生成物の発現を直接的または間接的に仲介するRNAを、コードすることができる。遺伝学的治療はさらに、遺伝子産物をコードしている核酸を、欠損遺伝子に置き換える、またはそれが導入されている哺乳動物または細胞により産生される遺伝子産物を補完するために使用することもできる。導入された核酸は、治療化合物、例えば、哺乳動物宿主において通常産生されない、または、治療有効量で、もしくは治療上有用な時期に産生されることのない、その増殖因子インヒビター、または腫瘍壊死因子もしくはそのインヒビター、例えばそのレセプターをコードしているかも知れない。治療生成物をコードしている異種DNAは、該生成物またはその発現を増強またはそれ以外に変化させるため、罹患した宿主の細胞中に導入する前に修飾することができる。
本明細書で使用する「ホモ二量体」という語は、共有結合により、または非共有結合的に複合体形成した2個の単量体[ここで、この2個の単量体は同一である]を指す。
本明細書で使用する「相同体」または「相同的」という語は、構造および/または機能についての相同性を指す。配列相同性に関しては、もし配列が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%一致、より好ましくは少なくとも97%一致、またはより好ましくは少なくとも99%一致するならばそれらは相同体である。「実質上相同的」という語は、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%一致、より好ましくは少なくとも97%一致、またはより好ましくは少なくとも99%一致する配列を指す。相同的な配列は、異なる種における同じ機能の遺伝子であり得る。
本明細書で使用する「宿主」という語は、その細胞のうち少なくとも1個において本発明に係る核酸を発現する生物を指す。本明細書で使用する「宿主細胞」という語は、本発明に係るヌクレオチド配列を発現する細胞を指す。
本明細書で使用する「阻害する」という語は、或る状態の防止または任意の検出可能な低減もしくは排除を指す。
本明細書で使用する「単離された」という語は、通常インビボでそれに付随する他の化合物または分子を相対的に含まない化合物または分子(例えば、ポリペプチドまたは核酸)を指す。一般に、単離されたポリペプチドは、それを含有する試料の少なくとも約75%、より好ましくは約80%、より好ましくは約85%、より好ましくは約90%、より好ましくは約95%、またはより好ましくは約99%(重量)を構成する。
本明細書で使用する「ミニTrpRS」という語は、配列番号2、3、14、17、26、29、38、41、50、53より成る群から選ばれるアミノ酸配列を有するポリペプチドならびにその任意の相同体および類似体を指す。
本明細書で使用する「マルチユニット複合体」という語は、共有結合により、または非共有結合的に複合体形成している1またはそれ以上の単量体単位より成る複合体を指す。マルチユニット複合体の例は、二量体、三量体などを包含する。
本明細書で使用する「核酸」または「核酸分子」という語は、オリゴヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド配列を指し、その変異体、相同体、フラグメント、または類似体を包含する。核酸はDNA、RNA、またはその組み合わせを包含できる。核酸は天然または合成、二本鎖または一本鎖、センスまたはアンチセンス鎖であってよい。
第二の核酸配列に機能的に結合した第一の核酸配列を指す場合の、本明細書で使用する「機能的に結合した」という語は、第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的関係に置かれている状況を指す。例えば、或るプロモーターがコード配列の転写または発現をもたらすならば、そのプロモーターはコード配列と機能的に結合している。一般に、機能的に結合した核酸配列は隣接しており、二つの蛋白コード領域を連結する必要がある場合、それらのオープンリーディングフレームは並列している。
本明細書で使用する「擬似ペプチド」という語は、ポリペプチドに外観が似たペプチドおよび非ペプチドの両者を指す。ベンゾジアゼピン(Freidinger et al. Peptides: Chemistry and Biology, G. R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、アゼピン(Huffman et al. Peptides: Chemistry and Biology, G. R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、置換γラクタム環(Garvey et al. Peptides: Chemistry and Biology, G. R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988)、ケト-メチレンプソイドペプチド(Ewenson et al.(1986) J Med Chem 29:295;およびEwenson et al. Peptides: Structure and Function(Proceedings of the 9th American Peptide Synposium) Pierce Chemical Co. Rockland, III., 1985)、β-ターンジペプチドコア(Nagai et al. (1985) Tetrahedron Lett 26:647; およびSato et al. (1986) J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、およびβ-アミノアルコール(Gordon et al. (1985) Biochem Biophys Res Commun 126:419;およびDann et al. (1986) Biochem Biophys Res Commun 134:71)を用いて、決定的残基を有する加水分解され得ないペプチド類似体を製造できる。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「オリゴペプチド」または「蛋白」という語は、ペプチド結合によって連結している2またはそれ以上のアミノ酸を含む任意の組成物を指す。ポリペプチドはしばしば、20の天然に存在するアミノ酸として一般的に言及される20のアミノ酸以外のアミノ酸を含む事、そして、末端アミノ酸を包含する多くのアミノ酸が、与えられたポリペプチドの中で、天然プロセス、例えばグリコシル化およびその他の翻訳後修飾によって、または当業者に周知の化学修飾技術によって、修飾され得る事が理解できるであろう。
本発明に係るポリペプチド中に存在し得る既知の修飾には、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合による付加、ヘム部分の共有結合による付加、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド誘導体の共有結合による付加、脂質または脂質誘導体の共有結合による付加、ホスホチジルイノシトールの共有結合による付加、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合による架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、γ-カルボキシ化、糖化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシ化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、蛋白分解プロセス、ホスホリル化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、蛋白へのトランスファー-RNA仲介アミノ酸付加、例えばアルギニル化、およびユビキチン化があるが、これらに限定される訳ではない。
「レセプター」という語は、他の分子に(または他の分子と)特異的に結合する生物学的に活性な分子を指す。「レセプター蛋白」という語は、特定レセプターの蛋白的性質をより具体的に示すために使用できる。例えば、「T2レセプター」という語は、T2に(またはT2と)特異的に結合する生物活性分子を指す。
「T1」または「T1-TrpRS」という語は、配列番号13、25、37、49を含むアミノ酸配列、その相同体または類似体、およびそれをコードしている任意のポリヌクレオチドド配列を指す。
「T2」または「T2-TrpRS」という語は、配列番号12、24、36、48を含むアミノ酸配列、その相同体または類似体、およびそれをコードしている任意のポリヌクレオチド配列を指す。
本明細書で使用する「処置する」という語は、対象の症状を排除、低減、もしくは緩和すること、または症状の出現、悪化、もしくは進行を防止することを指す。
本明細書で使用する「TrpRS」または「トリプトファニルtRNAシンセターゼ」という語は、図1に示す全長トリプトファニルtRNAシンセターゼを指し、ここで、アミノ酸残基213はGlyまたはSerのいずれかであり、アミノ酸残基214はAspまたはTyrのいずれか(他方に対して独立している)である。したがって、本明細書で使用する「GD変異体」、「SD変異体」、「GY変異体」および「SY変異体」という語は、当該ポリペプチド内の上記位置に対応アミノ酸残基を有するTrpRSまたはそのフラグメントを指す。
本明細書で使用する「tRS」という語は、天然に存在するか否かに拘わらず、tRNAシンセターゼポリペプチドおよび/またはこのポリペプチドをコードしている核酸を意味する。
「末端切除tRNAシンセターゼポリペプチド」という語は、対応する全長tRNAシンセターゼよりも短いポリペプチドを意味する。
組成物
アミノアシルtRNAシンセターゼ(tRS)は、翻訳プロセス中に遺伝情報を解読するために必須の昔ながらの蛋白である。tRSには二つのクラスがある。第一のクラスであるクラスIは、シグニチュア配列KMSKS(および、平行βシートのロスマンジヌクレオチド結合フォールドの一部としてのHIGH(「ロスマンフォールドドメイン」))を持つ共通ループを含む。Sever et al., Biochem. 35, 32-40(1996)。第二のクラスであるクラスIIは、逆平行βシート上に全く異なったトポロジーのジヌクレオチド結合塩基を有する。
トリプトファニルtRNAシンセターゼ(TrpRS)はクラスIのtRSである。TrpRSの発現はインターフェロン(「IFN」)(例えばIFN-γ)および/または腫瘍壊死因子(「TNF」)(例えばTNF-α)により刺激されると考えられている。IFN-γは動物細胞の抗ウイルスおよび抗増殖状態の原因である。Kisselev, L., Biochimie 75, 1027-1039(1993)を参照されたい。IFNによるTrpRSの刺激は、IFN刺激反応エレメント(「ISRE」)と称せられるコンセンサス調節配列によって転写レベルで起こる。幾つかのIFN反応遺伝子由来のISRE配列を調べると、GGAAAN(N/-)GAAAという共通モチーフが示される。したがって本発明は、IFNおよび/またはTNFにより仲介される状態、特にIFN-γおよび/またはTNF-αにより仲介される状態を処置するための、本発明に係る組成物の使用を企図するものである。
哺乳動物のTrpRS分子はアミノ末端付随ドメインを有する。正常なヒト細胞では、検出可能なTrpRSの型が二つある。全長分子から成る主要な型(配列番号1のアミノ酸残基1-471)、および、少量の末端切除型(「ミニTrpRS」。配列番号3、14、19または20のアミノ酸配列を含むポリペプチド)である。本発明に係る任意のTrp-RS態様において、アミノ酸213はGlyまたはSerのいずれかであり、アミノ酸214はAspまたはTyrのいずれかである。このような変異体は本明細書においてGD変異体、GY変異体、SD変異体およびSY変異体と呼ぶことができる。
少量の型は、プレmRNAのオルターナティブスプライシングによるアミノ末端ドメインの除去によって生成する(Tolstrup et al., J. Biol. Chem. 270:397-403(1995))。ミニTrpRSのアミノ末端は、全長TrpRS分子の48位にあるメチオニン残基であることが決定されている。或いは末端切除TrpRSは蛋白分解により生成し得る。Lemaire et al., Eur. J. Biochem. 51:237-52(1975)。例えば、ウシTrpRSは膵臓で高発現されて膵液中に分泌され(Kisselev, Biochimie 75:1027-39(1993))、そのようにして末端切除TrpRS分子の生成がもたらされる。これらの知見は、末端切除TrpRSがtRNAのアミノアシル化以外の機能を持つかも知れないことを示唆している。
研究により、全長TrpRSは血管形成を阻害しないがミニTrpRSはVEGFにより誘発される細胞の増殖および遊走を阻害することが示されている(Wakasugi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 99:173-177(2002))。特にヒヨコCAM検定は、ミニTrpRSがVEGFの血管形成活性を遮断することを示す。このように、最初の47アミノ酸残基の除去が、TrpRSの抗血管形成活性を顕在化させる。TrpRSおよびミニTrpRSは、さらに、国際出願第PCT/US01/08966およびPCT/US01/8975号(共に2001年3月21日出願)に記載されており、これらを引用によりその全内容を本明細書の一部とする。
血管形成抑制活性を有するTrpRSのさらなるフラグメントを本明細書においてT1およびT2と称する。PMNエラスターゼによるTrpRSの処置は、二つのさらなる生成物:47kDaフラグメント(スーパーミニTrpRSまたはT1;例えば、配列番号13、16、25、28、37、40、49、および52)、および、およそ43kDaフラグメント(T2-TrpRSまたはT2;例えば、配列番号12、15、24、27、36、39、48、および51)をもたらす。末端アミノ酸分析により、これらのフラグメントのNH2末端残基としてそれぞれSer-71およびSer-94が明らかとなった。下記実施例に示すように、T1およびT2はいずれもインビボ血管形成の強力なアンタゴニストであることが示された。T1およびT2はさらに、2001年2月23日出願の米国仮出願第60/270951号(「血管形成の調節にとって有用なトリプトファニルtRNAシンセターゼ由来ポリペプチド」)、および2002年2月22日出願の米国特許出願第10/080839号、および2002年2月22日出願の国際出願第PCT/US02/05185号に記載されており、これらの内容は引用によりその全体を本明細書の一部とする。T2の製造方法はさらに、「低内毒素治療物質の組成物およびその精製方法」なる標題の米国仮出願60/598019号(2004年8月8日出願)に開示されており、これは引用によりその全体を本明細書の一部とする。
1. ポリペプチド
本発明は、血管形成または血管形成抑制(抗血管形成)活性を有するtRNAシンセターゼフラグメントを含む組成物に関するものである。
好ましくは、このような組成物および/またはtRNAシンセターゼフラグメントは実質上純粋である。別の態様では、本発明に係る組成物および/またはtRNAシンセターゼフラグメントは、少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%または99.95%の純度である。パーセント純度とは、該組成物および/またはtRNAシンセターゼフラグメントの総重量あたりの該組成物および/またはtRNAシンセターゼフラグメントの各々の重量(w/w)を指す。tRNAシンセターゼフラグメントを含む組成物に関して言えば、例えば総生成物の80%が180-220nmのUV吸収において単一のクロマトグラフィーピークの下に観察されるならば、この組成物は純度80%であるとみなす。同様に、tRNAシンセターゼフラグメントに関して言えば、例えば総生成物の90%が180-220nmのUV吸収において単一のクロマトグラフィーピークの下に観察されるならば、このtRNAシンセターゼフラグメントは純度90%であるとみなす。
幾つかの態様では、tRNAシンセターゼフラグメント(および係るフラグメントを含む組成物)は血管形成性である。幾つかの態様では、tRNAシンセターゼフラグメント(および係るフラグメントを含む組成物)は血管形成抑制性である。血管形成抑制活性に関して言えば、tRNAシンセターゼフラグメントは、実施例18に開示される方法により測定される血管形成抑制活性を有すると言える。好ましくは、tRNAシンセターゼフラグメント(またはtRNAシンセターゼフラグメントを含む組成物)は、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、または75血管形成抑制活性単位以上の血管形成抑制活性を有する。幾つかの態様では、tRNAシンセターゼフラグメント(およびそれを含む組成物)は、50血管形成抑制活性単位以上の血管形成抑制活性を有する。
本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントの例は、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントおよびチロシルtRNAシンセターゼフラグメントを包含する。このようなフラグメントは好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトのものである。このようなフラグメントは好ましくはHisタグ(例えば、通常、C末端に付加されている一連のヒスチジンアミノ酸残基)を含まない。Hisタグを含まないtRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにそれらの相同体および変異体を包含する。或る種の化合物に対するHisタグの親和性、およびポリペプチドの溶解度に及ぼす影響、ならびにHisタグが抗原性であって望ましくない免疫反応を導く可能性のため、生物に投与される薬用製剤についてはHisタグの除去が好ましい。しかしながら、Hisタグの除去は些末なことではなく、時にポリペプチドの他の局面に影響を及ぼすことがある。
本発明により企図されるトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントの例には、ミニTrpRS、T1、T2およびそれらの任意の血管形成性または血管形成抑制性フラグメントがある。好ましくは、こうしたポリペプチドは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成されるアミノ酸配列を有する。このようなフラグメントは天然に存在するものであってもよいし天然に存在しないものであってもよい。このようなフラグメントは好ましくは単離され、そして/または精製されている。
幾つかの態様では、本発明に係る組成物はtRNAシンセターゼフラグメントを含み、ここでこのtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12、15、24、27、36、39、48、51、ならびにそれらの任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるアミノ酸配列を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成される。好ましくは、このようなtRNAシンセターゼフラグメントはHisタグを含まない。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは、45kD未満、より好ましくは44kD、43.9kD、43.8kD、43.7kD、43.6kD未満、またはより好ましくは43.5kD未満である。好ましくはこのようなフラグメントは抗血管形成性である。このようなtRNAシンセターゼフラグメントは本明細書に記載の方法または当分野で既知のその他の方法によって単離および/または精製され得る。
幾つかの態様では、本発明に係る組成物はtRNAシンセターゼフラグメントを含み、ここでこのtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号13、16、25、28、37、40、49、52、ならびにそれらの任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるアミノ酸配列を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成される。好ましくは、このようなtRNAシンセターゼフラグメントはHisタグを含まない。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは、48kD未満、より好ましくは47kD未満、またはより好ましくは46kD未満である。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは抗血管形成性である。このようなtRNAシンセターゼフラグメントは本明細書に記載の方法または当分野で既知のその他の方法によって単離および/または精製され得る。
幾つかの態様では、本発明に係る組成物はtRNAシンセターゼフラグメントを含み、ここでこのtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号14、17、26、29、38、41、50、53、ならびにそれらの任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるアミノ酸配列を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成される。好ましくは、このようなtRNAシンセターゼフラグメントはHisタグを含まない。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは、53kD未満、より好ましくは52kD未満、より好ましくは51kD未満、より好ましくは50kD未満、またはより好ましくは49kD未満である。好ましくはこのようなフラグメントは43kDより大きい。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントは抗血管形成性である。このようなtRNAシンセターゼフラグメントは本明細書に記載の方法または当分野で既知のその他の方法によって単離および/または精製され得る。
本発明に係る任意の態様では、tRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは単離されている。さらに、本発明に係る任意の態様では、tRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは精製されている。tRNAシンセターゼフラグメントを精製する方法は米国仮出願第60/598019号に記載されており、これを引用により本明細書の一部とする。
幾つかの態様では、tRNAシンセターゼフラグメントを含む組成物またはtRNAシンセターゼフラグメントは、10.0未満、より好ましくは9.0未満、またはより好ましくは8.0未満の実験的等電点(pI)を有する。幾つかの態様では、tRNAシンセターゼフラグメントは5.0ないし9.0、より好ましくは6.0ないし8.0、またはより好ましくは7.4ないし7.8の等電点を有する。幾つかの態様では、本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントは5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、または7.5より大きな実験的pIを有する。好ましくは、本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントは約7.6の実験的pIを有する。幾つかの態様では、本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントは疎水性の溝を持つ。
本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントはマルチユニット複合体中の単量体であってよい。本発明に係るマルチユニット複合体は、例えば少なくとも2、3、4、5、または6個の単量体を含むことができる。本発明に係る単量体およびマルチユニット複合体はいずれも可溶性であり、単離でき、または均質となるまで精製できる。本発明に係るマルチユニット複合体は、互いに共有結合により、または非共有結合的に、または共有結合および非共有結合の両者により結合している少なくとも2個の単量体を含む。非共有結合的に結合した単量体から成るマルチユニット複合体は、高い塩濃度、洗浄剤、および/または熱といったある種の条件下で個々の単量体ユニットに分解され得る。故に、マルチユニット複合体の構造を維持するため、この生成物に対して変性剤、例えば実質的な熱、洗浄剤および/または高濃度の塩を適用するのを回避せねばならない。
マルチユニット複合体中の単量体ユニットは互いに、相違して、または相同的で、または実質上相同的で、または同一であってよい。本発明に係るマルチユニット複合体は、本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントを含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成される少なくとも1、2、3、4、5または6個の単量体を含む。
例えば、本発明に係る組成物は二量体を含み、ここでこの二量体中の各単量体ユニットは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその相同体および類似体より成る群から選ばれる。好ましくは本発明に係る組成物は、2個の単量体のうち少なくとも一方が、配列番号24を含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成される二量体を含む。幾つかの態様では、二量体中の単量体ユニットの両方が、配列番号24を含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成される。
例えば、本発明は、T2フラグメントである2個の単量体を有する二量体を企図する。幾つかの態様では、本発明は、配列番号12、15、24、27、36、39、48、51、またはそれらの任意の相同体もしくは類似体を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成される2個の単量体を有する二量体を企図する。好ましい態様では、本発明は、配列番号12、24、36、48またはそれらの相同体もしくは類似体を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成される2個の単量体を有する二量体を企図する。より好ましくは、本発明に係る二量体は、配列番号24またはそれの任意の相同体もしくは類似体を含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成される。好ましくは各単量体ユニットはHisタグを含まない。幾つかの態様では、このような二量体組成物は単離され、そして/または精製されている。幾つかの態様では、このような二量体組成物は可溶性である。幾つかの態様では、このような二量体はホモ二量体である。
マルチユニット複合体中の2またはそれ以上の単量体は共有結合で連結していてよい。共有結合により連結した単量体は、直接(結合により)または間接的に(例えばリンカーを介して)連結していてよい。本発明に係る単量体を直接連結するためには、二量体化を促進するために本発明に係るポリペプチドを修飾するのが有益であるかも知れない。例えば、tRNAシンセターゼフラグメントの1またはそれ以上のアミノ酸残基を1またはそれ以上のシステインにより付加または置換することによって修飾できる。本発明の下で修飾されたtRNAシンセターゼフラグメントは好ましくはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントである。このようなフラグメントは好ましくは哺乳動物、またはより好ましくはヒトのものである。このようなフラグメントは、血管形成抑制活性を持ち、好ましくは配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、または本質上それらで構成され、またはそれらで構成されている。好ましくはこうしたアミノ酸配列はHisタグを含まない。例えば位置指定突然変異誘発によりシステイン置換を創成する方法は当業者に周知である。
好ましくは、このような修飾はtRNAシンセターゼフラグメントの二量体化ドメインで起こる。二量体化ドメインとは、第二の単量体と共有および/または非共有結合を形成するドメインを指す。例えば、全長Trp-RS(配列番号1)の二量体化ドメインは、アミノ酸残基約200ないし約300の間、またはより好ましくはアミノ酸残基約237ないし約292の間である。別の例では、配列番号13で示されるポリペプチドT1の二量体化ドメインは、アミノ酸残基約160ないし約230の間、またはより好ましくはアミノ酸残基約167ないし約222の間である。別の例では、配列番号12、24、36、または42で示されるポリペプチドT2の二量体化ドメインは、アミノ酸残基約137ないし約157の間、またはより好ましくはアミノ酸残基約144ないし約149の間である。tRNAシンセターゼの他の血管形成フラグメントについては、二量体化領域は、上記の領域または配列番号60と相同的である任意の領域であってよい。
システインの付加または置換は、2またはそれ以上の単量体を共有結合により連結してジスルフィド橋を作り出すことができる。好ましくは、本発明に係る2またはそれ以上の修飾ポリペプチドが共有結合により連結してマルチユニット(単量体)複合体を形成する。マルチユニット複合体は少なくとも2、3、4、5、または6個の単量体を含む。マルチユニット複合体中の種々の単量体は、相互に、異なっているか、相同的であるか、実質上相同的であるか、または同一である。好ましい態様では、マルチユニット複合体中のこの種々の単量体のうち2またはそれ以上が、相互に実質上相同的であるか、相互に同一である。
本発明に係る2またはそれ以上の単量体は、リンカーを介して共有結合していてもよい。本発明に係るリンカーは好ましくは2またはそれ以上の単量体が頭-尾結合の向き(N末端からC末端に至る)に並ぶことを可能にする程充分に長い。幾つかの態様では、リンカーは少なくとも約3、より好ましくは約30、より好ましくは約150、より好ましくは約300、またはより好ましくは約450原子長である。一般に2および25アミノ酸長の間であるリンカー配列は当分野で周知であり、Chaudhary et al.(1989)の記載したグリシン(4)-セリンスペーサー(GGGGSx3)を包含するがこれに限定される訳ではない。これらのおよびその他のリンカーを本発明に使用できる。
幾つかの態様では、リンカーを用いて本発明に係るマルチユニット複合体を局在させることができる。例えば、リンカーは抗体フラグメントまたは結合剤を含む、または本質上それで構成され、またはそれで構成されている。幾つかの態様では、リンカーは、抗体または抗体フラグメントまたは眼に局在する光受容体もしくはその他の受容体に特異結合する結合剤を含む、または本質上それで構成され、またはそれで構成されている。
非共有結合(関係)の例には静電結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、および疎水性効果がある。
本発明の態様の任意の一つにおいて、ポリペプチドは上記のもののうち任意のものであってよく、ここで、(i) 1またはそれ以上のアミノ酸残基は、保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されており、そのような置換されたアミノ酸残基は遺伝コードによりコード化されているか、またはコード化されておらず;(ii) 1またはそれ以上のアミノ酸残基は置換基を含み;(iii) このポリペプチドは他の化合物(例えば、該ポリペプチドの半減期を増大させる、またはそれを特異的レセプター、細胞、組織、もしくは細胞小器官へと標的化する化合物)と融合しており;(iv) さらなるアミノ酸、例えばリーダーもしくは分泌配列または該ポリペプチドの精製に使用される配列またはプロ蛋白配列が該ポリペプチドに融合しており;または、(v) 1またはそれ以上のアミノ酸残基が非保存的アミノ酸残基(好ましくはシステイン)に置換されており、そのような置換されたアミノ酸残基が第二のポリペプチドとジスルフィド橋を形成している(例えば、二量体またはホモ二量体を形成するため)。このような誘導体は、本明細書の教示から、当業者の範囲内にあるとみなす。
例えば、本発明に係る任意のポリペプチドを、当分野で既知の手段により安定性を改善し力価を増大させるよう修飾できる。例えば、L-アミノ酸をD-アミノ酸に置き換え、またはアミノ末端をアセチル化し、またはカルボキシ末端を修飾、例えばエチルアミンキャッピング(Dawson, D. W., et al., Mol. Pharmacol., 55:332-338(1999))またはグリコシル化することができる。
別の例では、本発明に係るポリペプチドを他の蛋白またはその一部と融合させることができる。例えば、ミニTrpRS、T1もしくはT2ポリペプチドまたはその一部を他のポリペプチド部分と機能的に結合させて溶解度を高めることができる。幾つかの態様では、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその相同体および類似体を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成されるアミノ酸を有するポリペプチドを、他のポリペプチド部分と機能的に結合させて溶解度を高めることができる。好ましくはこのようなポリペプチドはHisタグを含まない。溶解度を高めるためにミニTrpRS、T1もしくはT2またはその一部と融合させ得る蛋白の例は、血漿蛋白またはそのフラグメントを包含する。別の態様では、ミニTrpRS、T1もしくはT2ポリペプチドまたはその一部を他のポリペプチド部分と機能的に結合させて、この分子を特定の組織または細胞型へと標的化することができる。例えば、ミニTrpRS、T1もしくはT2ポリペプチドまたはその一部を、眼の光受容体細胞に特異結合する抗体、特定の腫瘍細胞、または特定の細胞小器官と機能的に結合させることができる。幾つかの態様では、ミニTrpRS、T1またはT2ポリペプチドを、免疫反応の低下を助けるポリペプチド部分、例えば免疫グロブリンの定常F(c)領域と機能的に結合させることができる。
別の態様では、本発明に係るポリペプチドはリーダー配列を含む。リーダー配列は、ポリペプチドが特定の細胞または細胞コンパートメント中に入るのを可能にするために使用できる。したがって本発明は、リーダー配列を有する、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその相同体および類似体を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成されるポリペプチドを企図する。幾つかの態様では、このようなポリペプチドはHisタグを含まない。
別の態様では、本発明に係るポリペプチドを、二量体化を促進するよう修飾できる。ポリペプチドの二量体化を促進する修飾は、そのポリペプチドと他の単量体との共有結合的および/または非共有結合的相互作用を増強する、天然に存在する配列への交代(例えば、置換または付加)を包含する。好ましくは、修飾は二量体化ドメイン内で施す。
トリプトファニルtRNAシンセターゼおよびそのフラグメントに関して、二量体化ドメインは大体、全長Trp-tRS(配列番号1)のアミノ酸残基230および300の間、またはより好ましくはアミノ酸残基237および292の間である。このようなポリペプチド(好ましくはミニTrpRS、T1、およびT2)は増強された二量体化能を持っている。したがって幾つかの態様では、本発明は、大体アミノ酸残基183および253の間、またはより好ましくは大体アミノ酸残基190および245の間にシステイン付加または置換を有するミニTrpRS単量体を企図する。幾つかの態様では、本発明は、大体アミノ酸残基160および230の間、またはより好ましくは大体アミノ酸残基167および222の間にシステイン付加または置換を有するT1単量体を企図する。幾つかの態様では、本発明は、大体アミノ酸残基137および208の間、またはより好ましくは大体アミノ酸残基144および200の間にシステイン付加または置換を有するT2単量体を企図する。
システイン修飾された任意のポリペプチドは二量体化してtRNAシンセターゼ二量体を形成できるということが、本発明によってさらに企図される。好ましい態様では、このような二量体化は、単一のtRNAシンセターゼフラグメントをコードしているベクターを用いて上記ポリペプチドのうち任意のものを発現および/または精製し、発現されたこのようなフラグメントを自然に二量体化させた結果として、自然に、そして/または自動的に起こる。
したがって幾つかの態様では、組成物は好ましくは同一の単量体ユニットより成るホモ二量体を含む。例えば幾つかの態様では、組成物は、配列番号12を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号13を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号14を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号15を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号16を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号17を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号24を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号25を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号26を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号27を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号28を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号29を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号36を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号37を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号38を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号39を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号40を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号41を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号48を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号49を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号50を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号51を有する2個の単量体より成る二量体、配列番号52を有する2個の単量体より成る二量体、または配列番号53を有する2個の単量体より成る二量体を含む。
幾つかの態様では、本発明に係る組成物は上記の同一のホモ二量体のうちいずれかの組み合わせを含む。例えば組成物は、配列番号12を有する2個の単量体より成る二量体および配列番号24を有する2個の単量体より成る二量体を含み得る。その他、上の二量体の全ての組み合わせもまた企図される。
幾つかの態様では、本発明は、第一のtRNAシンセターゼフラグメントおよび第二のtRNAシンセターゼフラグメントを含む組成物を企図し、ここで、第一のtRNAシンセターゼフラグメントはN末端にメチオニンを持ち(「Met-tRSフラグメント」)、第二のtRNAシンセターゼはN末端にメチオニンを持たない(「非Met-tRSフラグメント」)。
好ましくは、本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントである。したがって幾つかの態様では、N末端にメチオニンを持つ第一のtRNAシンセターゼフラグメントは「Met-TrpRSフラグメント」であり、N末端にメチオニンを持たない第二のtRNAシンセターゼフラグメントは「非Met-TrpRSフラグメント」である。
Met-TrpRSフラグメント、またはN末端にメチオニンを持つトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号15-17、27-29、39-41、51-53のアミノ酸配列またはそれらの任意の相同体、類似体もしくはフラグメントを含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成されるポリペプチドを包含する。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
Trp-RSフラグメント、またはN末端にメチオニンを持たないトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号12-14、24-26、36-38、48-50またはそれらの任意の相同体、類似体もしくはフラグメントを含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成されるポリペプチドを包含する。Trp-tRNAシンセターゼのその他の血管形成抑制フラグメントを全て本発明において企図する。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号15、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号16、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号13、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号17、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号14、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号27、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号24、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号28、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号25、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号29、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号26、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号39、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号36、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号40、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号37、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号41、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号38、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号51、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号48、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号52、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号49、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号53、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号50、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってよい。好ましくはこのようなフラグメントはHisタグを含まない。
N末端にメチオニンを持つ第一tRNAシンセターゼフラグメントおよびN末端にメチオニンを持たない第二tRNAシンセターゼフラグメントを含む、本発明に係る幾つかの態様では、第一tRNAシンセターゼフラグメントはtRNAシンセターゼフラグメントの総量の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%(重量)を占める。別の態様では、第一tRNAシンセターゼフラグメントはtRNAシンセターゼフラグメントの総量の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%(重量)未満を占める。
N末端にメチオニンを持つ第一tRNAシンセターゼフラグメントおよびN末端にメチオニンを持たない第二tRNAシンセターゼフラグメントを含む、本発明に係る幾つかの態様では、第二tRNAシンセターゼフラグメントはtRNAシンセターゼフラグメントの総量の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%(重量)を占める。別の態様では、N末端にメチオニンを持たない第二tRNAシンセターゼフラグメントはtRNAシンセターゼフラグメントの総量の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%(重量)を占める。
組成物の重量パーセントを記載するのに使用する「約」という語は、その重量パーセント±4、3、2、または1%を意味する。
本発明に係る組成物は、約50%(重量)の第一tRNAシンセターゼフラグメントおよび約50%(重量)の第二tRNAシンセターゼフラグメントを含むことができる。例えば幾つかの態様では、組成物は約50%(重量)のMet-tRSフラグメントおよび約50%(重量)の非Met-tRSフラグメントを含む。幾つかの態様では、組成物は約50%(重量)のMet-TrpRSフラグメントおよび約50%(重量)の非Met-TrpRSフラグメントを含む。別の態様では、組成物の50%以上がMet-Trp-RSフラグメントまたは非Met-Trp-RSフラグメントいずれかで占められる。好ましくは上のフラグメントはHisタグを含まない。
いかなる上記組成物も、治療物質、例えば抗新生物物質、抗炎症物質、抗菌物質、血管形成物質、抗ウイルス物質、および抗血管形成物質をさらに含むことができる。このような物質の例は本明細書に開示する。好ましくはこの治療物質は抗血管形成物質であり、VEGFアンタゴニストまたはインテグリンアンタゴニストのいずれかである。
2. 抗体
別の局面では、本発明は、本明細書に記載のポリペプチドのエピトープ担持部分を含む、または本質上それで構成される、またはそれで構成されるペプチドを提供する。本明細書で使用する「エピトープ」という語は、動物、好ましくは哺乳動物、そして最も好もしくはヒトにおける抗原性または免疫原性活性を有するポリペプチドの一部を指す。本発明に係るポリペプチドの抗原性エピトープ担持ペプチドは、本発明に係るポリペプチドに特異結合するモノクローナル抗体を包含する抗体の作製に有用である。本明細書で使用する「抗原性エピトープ」という語は、抗体がその抗原を結合させる蛋白の一部として定義され、それは当分野で周知の方法、例えばイムノアッセイによって判定される。
本発明に係る抗原性エピトープ担持ポリペプチドは、好ましくは、tRNAシンセターゼフラグメント、またはより好ましくはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント内に、少なくとも約5または約7、より好ましくは少なくとも約9または約11のアミノ酸、そしてより好ましくは少なくとも約5ないし約30の間、またはより好ましくは約10ないし約20の間のアミノ酸を有する配列を含む。このようなフラグメントは好ましくは哺乳動物、またはより好ましくはヒトのものである。本発明に係るtRNAフラグメントは血管形成抑制活性を有する。血管形成抑制活性を有するヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにそれらの相同体および類似体を包含するがこれらに限定されない。この文脈中、「約」とは、具体的に述べられた値と数アミノ酸(5、4、3、2、または1)大きなまたは小さな値とを包含する。
幾つかの態様では、このようなエピトープ担持ポリペプチドは「N末端エピトープ」である。本明細書で使用する「N末端エピトープ」という句は、本発明に係るポリペプチドのC末端よりもN末端により近いアミノ酸配列を有するペプチドを指す(例えば、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにそれらの相同体および類似体)。幾つかの態様では、このようなエピトープ担持ポリペプチドは、本発明に係るポリペプチドのN末端を含む、またはそれで構成される(例えば、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその相同体および類似体)。
このようなエピトープ担持ポリペプチドの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、およびその任意の相同体または類似体のアミノ酸残基約1ないし約5、約1ないし約15、または約1ないし約25;配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、およびその相同体または類似体のアミノ酸残基約10ないし約15、約10ないし約25、または約10ないし約35;配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにそれらの任意の相同体および類似体のアミノ酸残基約20ないし約25、約20ないし約35、または約20ないし約45を含む、またはそれらで構成されるポリペプチドを包含する。
上記のポリペプチドは、研究目的(例えば、或るフラグメントを他と識別するため)、診断目的(例えば、血管形成/血管形成抑制フラグメントを同定および定量するため);そして/または治療目的(例えば、血管形成抑制性tRNAシンセターゼフラグメントの血管形成抑制活性を阻害するため)に使用できる。
例えば幾つかの態様では、本発明に係る抗体は、TrpRS、ミニTrpRS、T1、およびT2のうち任意の二者を識別できる。幾つかの態様では、本発明に係る抗体は、N末端にメチオニンを持つtRNAシンセターゼフラグメントと持たないtRNAシンセターゼフラグメントを識別できる。(例えば、或る抗体は、配列番号12および15;または配列番号13および16;または配列番号14および17;またはそれらの相同体もしくは類似体を識別できる。)幾つかの態様では、本発明に係る抗体は、tRNAシンセターゼフラグメントの二つの変異体を識別できる。(例えば、本発明に係る抗体は、以下の群:配列番号12、24、36、および48から選ばれる二つのポリペプチドを識別できる。)
二量体化ドメインまたはレセプター結合ドメインに結合するその他の抗体もまた、血管増殖の低下に関連する状態(抗血管形成状態)を処置または防止する治療薬として有用となり得る。
さらに、血管形成性および/または非血管形成性であるtRNAフラグメントの量のキャリブレーションは、血管形成により仲介される状態の診断を可能にするかも知れない。
これらの抗原性エピトープ担持ペプチドをコードしているポリヌクレオチドもまた本発明によって包含される。
本発明に係るエピトープ担持ポリペプチドを使用して、インビボ免疫、インビトロ免疫、およびファージディスプレー法を包含する(但しこれらに限定されない)当分野で周知の方法に従い抗体を誘導できる。
インビボ免疫を使用する場合、動物を遊離ペプチドで免疫できるが、そのペプチドを巨大分子担体、例えばスカシガイヘモシアニン(KLH)または破傷風トキソイドに結合させることにより、抗ペプチド抗体価を高めることができる。例えば、システイン残基を含むペプチドは、マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)のようなリンカーを用いて担体に結合させ得るが、別のペプチドはグルタルアルデヒドのようなより一般的な結合剤を用いて担体に結合させ得る。
ポリクローナル抗体を作製するためには、例えばウサギ、ラット、およびマウスのような動物を、例えばエピトープ担持ペプチド約100マイクログラムおよびことによると担体蛋白およびフロイントアジュバントまたは免疫反応を刺激することがわかっているその他任意のアジュバントを含有するエマルジョンを腹腔内および/または皮内注射することにより、遊離または担体に結合させたペプチドで免疫する。例えば固体表面に吸着させた遊離ペプチドを用いるELISA検定により検出できる抗ペプチド抗体の有用な力価を得るため、数回のブースター注射を、例えば約2週間の間隔で行う必要があるかも知れない。例えば、選択された抗体を当分野で周知の方法により固体支持体上のペプチドに吸着させ溶出させることで抗ペプチド抗体を選択することにより、免疫された動物由来の血清中の抗ペプチド抗体価を上げることができる。
より好ましくは、本発明は、本発明に係るポリペプチドの1またはそれ以上に特異結合できるモノクローナル抗体を企図する。モノクローナル抗体は、米国特許第4196265号(これは引用により本明細書の一部とする)に例示のような周知の技術を使用して製造できる。典型的には、技術は、まず適当な動物を、免疫反応を起こすに充分な方法で、選択された抗原(例えば本発明に係るポリペプチドまたはポリヌクレオチド)で免疫することを含む。マウスおよびラットのような齧歯類が好ましい動物である。次に、免疫された動物の脾臓細胞を不死骨髄腫細胞と融合させる。免疫された動物がマウスである場合、好ましい骨髄腫細胞はマウスNS-1骨髄腫細胞である。
融合させた脾臓/骨髄腫細胞を選択培地で培養し、親細胞から、融合した脾臓/骨髄腫細胞を選択する。融合した細胞を、例えば組織培地中でのde novoヌクレオチド合成を遮断する物質の添加により、非融合親細胞の混合物から分離する。この培養により、特定のハイブリドーマがそこから選択できるハイブリドーマ集団が得られる。典型的には、この細胞を微量定量プレート中で単一クローン希釈により培養し、その後個々のクローン上清を抗原-ポリペプチドとの反応性について試験することによって、ハイブリドーマの選択を実施する。次いで選択したクローンを無限に増殖させ、モノクローナル抗体を得ることができる。好ましくは本発明に係るモノクローナル抗体を、さらにヒト化する。
当業者は理解できるであろうが、そして上に述べたように、免疫原性または抗原性エピトープを含む本発明に係るポリペプチドを他のポリペプチド配列に融合させることができる。例えば、本発明に係るポリペプチドを、免疫グロブリン(IgA、IgE、IgG、IgM)の定常ドメインまたはその一部(CH1、CH2、CH3、またはそれらの任意の組み合わせおよびそれらの一部)と融合させてキメラポリペプチドを得ることができる。このような融合蛋白は精製を容易にし、インビボ半減期を増大させ得る。
本発明はさらに、上記抗体のフラグメント、領域または誘導体を企図する。このようなフラグメントには分離した重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、およびFvがある。
3. 核酸
本発明はさらに、本発明に係るポリペプチドのうち任意のものをコードしているポリヌクレオチド配列を企図する。幾つかの態様では、ポリヌクレオチド配列は本発明に係る2またはそれ以上のポリペプチドをコードしている。好ましくは本発明に係るポリヌクレオチド配列は単離されている。
例えば本発明は、1もしくはそれ以上の、または2もしくはそれ以上のtRNAシンセターゼフラグメントをコードしているポリヌクレオチド配列を企図する。このtRNAシンセターゼフラグメントは当分野で既知のtRNAシンセターゼのうち任意の1またはそれ以上であってよいが、より好ましくはトリプトファニルtRNAシンセターゼまたはチロシルtRNAシンセターゼのいずれかであってよい。本発明に係るtRNAシンセターゼは好ましくは哺乳動物、またはより好ましくはヒトのものである。さらに、このようなtRNAシンセターゼのフラグメントは好ましくは血管形成抑制活性を有する。
例えば幾つかの態様では、本発明に係るポリヌクレオチド配列は、tRNAシンセターゼの1またはそれ以上の血管形成抑制フラグメントをコードしている。トリプトファニルtRNAシンセターゼの血管形成抑制フラグメントの例は、ミニTrpRS、T1、およびT2ならびにそれらの任意の血管形成抑制フラグメント、相同体もしくは類似体を包含する。したがって幾つかの態様では、本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにそれらの任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるポリペプチドを含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成されるトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている。好ましくは、本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号24または27を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成されるトリプトファニルフラグメントをコードしている。
このようなフラグメントをコードしているポリヌクレオチド配列の例は、配列番号18-23、30-35、42-47、54-59のポリヌクレオチド配列ならびにそれらの相同体および類似体である。本発明により企図される単離されたポリヌクレオチドのさらなる例は、配列番号70-75のポリヌクレオチドを包含する。
DNAコードは縮重して1以上のコドンが1個のアミノ酸残基をコードしているため、上のポリヌクレオチド配列は例示的なものであって限定的であることを意図している訳では決してない。上のポリヌクレオチドのいかなるものも好ましくは単離されている。
幾つかの態様では、本発明に係るポリヌクレオチド配列は本発明に係るポリペプチドのうち2またはそれ以上をコードしている。例えば、本発明に係るポリヌクレオチドは第一のtRNAシンセターゼフラグメントおよび第二のtRNAシンセターゼフラグメントをコードすることができる。第一のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、またはそれらの相同体もしくは類似体を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成されるアミノ酸を有するポリペプチドであってよい。第二のtRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、またはそれらの相同体もしくは類似体を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成されるアミノ酸を有するポリペプチドであってよい。第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントは、異なっているか、相同的であるか、実質上相同的であるか、または同一であってよい。
幾つかの態様では、ポリペプチド配列の2またはそれ以上のコピーをコードしているヌクレオチド配列を縦列に融合させることができる。ポリペプチドをコードしている2個のヌクレオチド配列を縦列に融合させる場合、各ポリペプチドは自身の向きとなり、その結果、二つのヌクレオチド配列が発現される時、コードされているポリペプチドはC-N、N-N、C-C、またはC-N末端接続を生ずる。好ましい態様では、本発明に係るヌクレオチド配列の発現は、第一ポリペプチドのC末端と共有結合した第二ポリペプチドのN末端を生成する。
幾つかの態様では、2またはそれ以上のtRNAシンセターゼフラグメントをコードしているポリヌクレオチド配列は、リンカーをもコードしている。リンカーをコードしているヌクレオチド配列は、2個のヌクレオチド配列tRNAシンセターゼフラグメントの間に挿入できる。リンカーをコードしているヌクレオチド配列は、第一tRNAシンセターゼフラグメントおよび第二tRNAシンセターゼフラグメントが生産的に配置され相互に二量体化できるほど充分に長くすることができる。幾つかの態様では、リンカーをコードしているヌクレオチド配列は、少なくとも9、少なくとも30、少なくとも60前後、少なくとも90前後、少なくとも120前後、少なくとも150前後、少なくとも180前後、少なくとも210前後、少なくとも240前後、少なくとも270前後、または少なくとも300前後のヌクレオチド長である。
幾つかの態様では、第一tRNAシンセターゼフラグメントをコードしているポリヌクレオチド配列を第二tRNAシンセターゼフラグメントをコードしているポリヌクレオチド配列内部に挿入できる。このことにより、第一tRNAシンセターゼフラグメントの第一セグメントの翻訳、第二tRNAシンセターゼフラグメントの完全な翻訳、そして次に第一tRNAシンセターゼフラグメントの残りのセグメントの翻訳がもたらされる。
幾つかの態様では、本発明に係るポリヌクレオチド配列は修飾されたtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている。修飾されたtRNAシンセターゼフラグメントの一例は、そのフラグメント中に(例えば、アミノ酸の付加または置換によって)1またはそれ以上の非天然システインが挿入されるように修飾されているフラグメントである。好ましくは、tRNAシンセターゼフラグメントはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、またはより好ましくは配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、およびそれらの任意の相同体または類似体より成る群から選ばれるフラグメントである。
好ましくは、非天然システインを(例えば付加または置換によって)このフラグメントの二量体化ドメイン中に挿入する。係るシステインの挿入は、組換え技術を用いて核酸レベルで行うことができる。以下の発明によりシステインを含むように修飾できる核酸配列は、配列番号18-23、30-35、42-47、54-59、ならびにそれらの任意の相同体および類似体を包含するがこれらに限定されない。
幾つかの態様では、本発明に係るポリヌクレオチドは2またはそれ以上の修飾されたtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている。例えば、本発明に係るポリヌクレオチドは、2またはそれ以上のトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントをコードすることができるが、ここで、少なくとも1個の非天然システインをその二量体化ドメインに含むよう、各フラグメントは修飾されている。以下のごとく修飾できるトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントの例は配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、およびそれらの相同体または類似体を包含するが、これらに限定される訳ではない。
本発明に係る任意のポリヌクレオチドを、好ましくは宿主細胞からのポリペプチドの発現および分泌を助けるポリヌクレオチド配列と、同じリーディングフレームで融合させる。このことにより発現ベクターが生成する。発現ベクターを用いて宿主細胞中でポリヌクレオチドを発現させることができる。
幾つかの態様では、細胞からのポリペプチドの移動を制御する分泌配列として機能するリーダー配列を、オープンリーディングフレーム配列の後に融合させることができる。リーダー配列を持つポリペプチドはプレ蛋白であり、そのリーダー配列を宿主細胞により開裂させて成熟型ポリペプチドを形成できる。このポリヌクレオチドはさらに、成熟蛋白にさらなる5’アミノ酸残基が加わったプロ蛋白をコードすることもできる。プロ配列を持つ成熟蛋白はプロ蛋白であり、当該蛋白の不活性型である。プロ配列が開裂すると活性な成熟蛋白が残る。したがって、例えば本発明に係るポリヌクレオチドは、成熟蛋白、またはプロ配列を持つ蛋白、またはプロ配列とプレ配列(リーダー配列)の両方を持つ蛋白をコードすることができる。好ましくは、本発明に係るポリヌクレオチド配列がプロ配列をコードしている場合、このようなプロ配列は、眼の硝子体内または標的癌細胞もしくは腫瘍において開裂する。
幾つかの態様では、プレまたはプロ配列は、標的細胞(例えば光受容体)に結合する抗体または抗体フラグメントをコードしている。さらに、プレまたはプロ配列は、その配列が所望部位に到達した時に自動的に開裂して本発明に係る組成物を活性化するようにさせるプロテアーゼ開裂部位を含むことができる。
本発明に係るポリヌクレオチドはさらに、本発明に係るポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列にフレーム内で融合したコード配列を有し得る。マーカー配列は、pQE-9ベクターにより供給されるヘキサヒスチジンタグであってよく、これは細菌宿主の場合にはマーカーと融合した成熟ポリペプチドの精製を提供し、または、例えば哺乳動物宿主、例えばCOS-7細胞を使用する場合には、マーカー配列をヘマグルチニン(HA)タグとすることができる。HAタグはインフルエンザヘマグルチニン蛋白から誘導されるエピトープに相当する(Wilson, I., et al., Cell, 37:767(1984))。
本発明はさらに、本明細書に記載の任意の配列と、好ましくは緊縮条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに関するものである。緊縮条件とは、核酸二本鎖をそれらのミスマッチの度合いに基づいて識別できるような条件を指す。求められる結果に応じて、血管形成抑制tRNAフラグメントまたは血管形成tRNAフラグメントを阻害するため、こうしたポリヌクレオチド(例えばアンチセンスおよびRNAi)を使用できる。このようなポリヌクレオチドはまた、研究および診断目的のプローブおよびプライマーとして働くこともできる。
アンチセンス核酸は、好ましくは正の血管形成因子、例えばVEGFをコードしている、二本鎖cDNA分子のコード鎖または標的ヌクレオチド配列のmRNA配列に相補的なヌクレオチド配列である。アンチセンス核酸は、本明細書に記載の方法において血管形成を阻害する物質として使用できる。これはセンス核酸と水素結合を形成することにより翻訳を阻害する。アンチセンス核酸は血管形成コード領域(例えばVEGF)全体に相補的であるか、またはその一部にのみ相補的であってよい。
本発明に係るアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50ヌクレオチド長であってよい。アンチセンス核酸は当分野で既知の方法を使用し化学合成および酵素ライゲーション反応を用いて構築できる。例えば、アンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、または当該分子の生物学的安定性を増大させるよう、またはアンチセンスおよびセンス核酸間に形成される二本鎖の物理的安定性を増大させるよう設計された様々に修飾されたヌクレオチドを用いて化学合成でき、例えばホスホロチオアート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用できる。アンチセンス核酸の生成に使用できる修飾されたヌクレオチドの例は、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキュェオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキュェオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キュェオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンを包含する。或いはアンチセンス核酸は、核酸をアンチセンスの向きにサブクローニングした発現ベクターを用いて生物学的に生成することもできる(即ち、挿入された核酸から転写されたRNAは、目的とする標的核酸に対してアンチセンスの向きとなる)。
幾つかの態様では、RNA干渉により血管形成に関連する遺伝子(例えばトリプトファニルtRNAシンセターゼおよび/またはチロシルtRNAシンセターゼ)を沈黙させるため、二本鎖核酸が使用できる。RNA干渉(「RNAi」)は、目的遺伝子(またはコード領域)に対応する二本鎖RNA(dsRNA)を細胞または生物中に導入して、その対応mRNAの分解をもたらす、転写後遺伝子沈黙のメカニズムである。RNAi効果は遺伝子発現が回復するまで、複数の細胞分割が起こる間持続する。故にRNAiは、RNAレベルにおける標的化ノックアウトまたは「ノックダウン」を起こすための極めて強力な方法である。RNAiは、ヒト胚腎臓およびHeLa細胞を包含するヒト細胞において成功することが証明されている(例えばElbashir et al. Nature May 24, 2001;411(6836):494-8を参照されたい)。
或る態様では、小さな(50未満、より好ましくは40、より好ましくは30またはより好ましくは20未満のヌクレオチド(nt))dsRNAのトランスフェクションが遺伝子発現を特異的に阻害する(Caplen(2002) Trends in Biotechnology 20:49-51に論評されている)。簡潔に述べると、RNAiは以下のように働くと考えられる。沈黙させようとする遺伝子の一部に対応するdsRNAを細胞に導入する。このdsRNAを小さなdsRNAヌクレオチドsiRNA、または短い干渉RNAへと消化する。siRNA二本鎖はヌクレアーゼ複合体に結合して、RNA誘導性沈黙複合体、またはRISCとして知られるものを形成する。RISCは、siRNA鎖の一方および内因性mRNAの間の塩基対形成相互作用によって相同的転写物を標的とする。次いでこれがsiRNAの3’末端から約12ヌクレオチドの所でmRNAを開裂する(Sharp et al(2001) Gene Dev 15:485-490;およびHammond et al.(2001) Nature Rev Gen 2:110-119に論評されている)。
遺伝子沈黙におけるRNAiテクノロジーは標準的分子生物法を利用している。不活性化しようとする標的遺伝子由来の配列に対応するdsRNAは標準法、例えば鋳型DNA(標的配列に対応する)の両鎖をT7 RNAポリメラーゼで同時転写することによって生成できる。RNAiで使用するためのdsRNAを生成するためのキットが、例えばNew England Biolabs, Inc.から市販されている。dsRNAまたはdsRNAを作り出すよう改変されたプラスミドのトランスフェクション法は当分野において常套的である。
RNAiの遺伝子沈黙作用と類似の遺伝子沈黙作用が、mRNA-cDNAハイブリッド構築物のトランスフェクションを伴う哺乳動物細胞で報告されており(Lin et al., Biochem Biophys Res Commun Mar. 2, 2001;281(3):639-44)、これがさらに別の遺伝子沈黙のための戦略を提供している。幾つかの態様では、本発明は、細胞または組織をRNAiまたはtRNAシンセターゼ(例えばTyrRSまたはTrpRS)に相補的なアンチセンスまたはそのフラグメントと接触させることにより血管形成を調節する方法に関するものである。例えば、本発明に係るアンチセンスまたはRNAiは、配列番号18-23、30-35、42-47、54-60より成る群から選ばれるポリヌクレオチド配列ならびにそれらの任意の相同体および類似体に相補的であってよい。
本発明に係るポリヌクレオチドは好ましくは単離された形態で提供され、そして好ましくは均質となるまで精製されている。
4. ベクター
本発明はさらに、本発明に係るポリヌクレオチドを含むベクター(好ましくは発現ベクター)、本発明に係るベクターを用いて遺伝子組み換えされた宿主細胞、および組換え技術による本発明に係るポリペプチドの生成を包含する。
本発明に係るベクターは、当業者が広く利用可能な標準組換え技術を用いて構築できる。このような技術は、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、D. Goeddel, ed., Gene Expression Technology, Methods in Enzymology series, Vol.185, Academic Press, San Diego, Calif. (1991)、およびInnis, et al. PCR Protocols: A guide to Methods and Applications Academic Press, San Diego, Calif. (1990)といった一般的な分子生物学の文献に見いだすことができる。
好ましい態様では、本発明は、上記のポリヌクレオチド配列のうち1もしくはそれ以上、またはより好ましくは2もしくはそれ以上を含むベクターの組換えによる構築を企図する。この構築物は、ベクター、例えばプラスミドまたはウイルスベクターを含み、その中に1もしくはそれ以上、またはより好ましくは2もしくはそれ以上の本発明に係るポリヌクレオチド配列が前向きまたは逆向きに挿入されている。好ましくは二つのポリヌクレオチド配列がベクター中に縦列に挿入される。このポリヌクレオチド配列は相互に隣接していてもよいしリンカーで隔てられていてもよい。
5. 宿主細胞
本発明に係る宿主細胞は、本明細書に記載のヌクレオチド配列を発現する細胞である。適当な宿主の代表例は、細菌細胞、例えばE. coli、Salmonella typhimurium、Streptomyces
;真菌細胞、例えば酵母;昆虫細胞、例えばDrosophilaおよびSf9;動物細胞、例えばCHO、COSまたはBowesメラノーマ;植物細胞などを包含する。適切な宿主の選択は、本明細書の教示から当業者の範囲内にあるとみなす。
標的宿主細胞へのこうしたヌクレオチド配列の導入に好適な、数多くのウイルスおよび非ウイルス法が当業者に利用可能である。
ウイルス導入法は、標的細胞を感染させるためのシアリルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白の発現を促進または阻害する核酸配列を含む組換えDNAまたはRNAウイルスの使用を含む。本発明における使用に好適なDNAウイルスは、アデノウイルス(Ad)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスまたはポリオウイルスを包含するがこれらに限定されない。本発明における使用に好適なRNAウイルスは、レトロウイルスまたはシンドビスウイルスを包含するがこれらに限定されない。本発明における使用に好適なこのようなDNAおよびRNAウイルスが幾つかあるということを、当業者は理解すべきである。
遺伝子治療に使用されている、または遺伝子治療のために提唱されている「非ウイルス」デリバリー技術は、DNA-リガンド複合体、アデノウイルス-リガンド-DNA複合体、DNAの直接注入、CaPO4沈殿、遺伝子銃技術、エレクトロポレーション、リポソームおよびリポフェクションを包含する。これらの方法のうちいかなるものも当業者により広く利用でき、本発明における使用に好適であろう。他の適当な方法も当業者に利用可能であり、本発明が任意の利用可能なトランスフェクション法を用いて達成できる事を理解すべきである。このような方法の幾つかが当業者により利用されているが、その成果はまちまちである。リポフェクションは、単離されたDNA分子をリポソーム粒子内に封入し、そのリポソーム粒子を標的細胞の細胞膜に接触させることによって達成できる。リポソームとは、自己集合性のコロイド粒子であり、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルコリンといった両親媒性分子より成る脂質二重層が、親水性である内部を取り囲むように周囲の媒質の一部を封入しているものである。内部に所望の化学物質、薬物、または本発明の場合のように単離されたDNA分子の入った単層または複層リポソームを組み立てることができる。
a. 発現
発現ベクターを用いて本発明に係るポリヌクレオチドを宿主細胞中で発現させることができる。適当なポリヌクレオチド配列、例えば本明細書に記載のポリヌクレオチド配列、および適当なプロモーターまたは調節配列を含む発現ベクターを利用して、適当な宿主を形質転換し、その宿主に蛋白を発現させることができる。好ましくは本発明に係る発現ベクターは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにこれらの任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるポリペプチドを発現する。よって本発明に係る組成物は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53のアミノ酸配列またはこれらの任意の相同体もしくは類似体を含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成されるポリペプチドをコードしている発現ベクターまたはポリヌクレオチド配列で宿主細胞をトランスフェクトすることによって製造できる。次いでこの宿主細胞を、本発明に係るポリペプチドまたは組成物を産生させる条件下に維持する。
宿主細胞内での本発明に係るポリヌクレオチド配列の転写を実現するため、標的細胞における遺伝子発現を促進できる転写調節領域を利用する。転写調節領域は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサーまたはレプレッサーエレメントを含み得、本発明に係る核酸と機能的に関連している。好ましくはこの転写調節領域は、標的細胞における高レベルの遺伝子発現を促進する。本発明における使用に好適な転写調節領域は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)即時初期エンハンサー/プロモーター、SV40初期エンハンサー/プロモーター、JCポリオーマウイルスプロモーター、アルブミンプロモーター、CMVエンハンサーと共役したPGKおよびα-アクチンプロモーター、E. coli lacまたはtrpプロモーター、ファージλPLプロモーター、ならびに原核もしくは真核細胞またはそれらのウイルス中で遺伝子発現を調節することが知られているその他のプロモーターを包含するが、これらに限定される訳ではない。発現ベクターはさらに、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写ターミネーターを含む。
さらに、発現ベクターは、真核細胞培養のためのジヒドロ葉酸レダクターゼもしくはネオマイシン耐性、または、E. coliにおけるテトラサイクリン、カナマイシンもしくはアンピシリン耐性といった、形質転換された宿主細胞の選択のための表現型形質を提供する遺伝子をも含むことができる。
この態様の好ましい局面では、この構築物はさらに、当該配列と機能的に連結した、例えばプロモーターを包含する調節配列を含む。数多くの適当なベクターおよびプロモーターが当業者に知られており、商業的に入手できる。以下のベクターを例示のために記載する:(a) 細菌性:pQE70、pQE-9(Qiagen)、pBs、ファージスクリプト、PsiX174、pブルースクリプトSK、pBsKS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene)、pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、およびPRIT5(Pharmacia);(b) 真核細胞性:pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene) pSVK3、pBPV、PMSG、pSVL(Pharmacia)およびpET20B。或る好ましい態様では、このベクターは、カナマイシンスクリーニングベクターであるpET24Bである。しかしながら、宿主においてそれらが複製可能且つ生存可能である限り、その他任意のプラスミドまたはベクターを使用できる。
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクターまたは選択マーカーを有するその他のベクターを用いて任意の所望遺伝子から選択できる。二つの適当なベクターがpKK232-8およびpCM7である。命名された具体的な細菌プロモーターには、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、λPR、PLおよびtrpがある。真核細胞プロモーターには、CMV即時初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロチオネイン-Iがある。適切なベクターおよびプロモーターの選択は当分野の通常技術のレベル内にある。
さらなる態様では、本発明は上記構築物を含む宿主細胞に関するものである。宿主細胞は、高等真核生物細胞、例えば哺乳動物細胞、または下等真核生物細胞、たとえば酵母細胞であってよく、または、宿主細胞は原核細胞、例えば細菌細胞であってよい。宿主細胞中への構築物の導入は、燐酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン仲介トランスフェクション、エレクトロポレーション、ウイルストランスフェクション(例えばアデノウイルスまたはレトロウイルスを使用)、および当分野で既知のその他の手段によって実行できる。Davis, L., et al., Basic Methods in Molecular Biology, 1986を参照されたく、またWO 0/009813をも参照されたく、これらはいずれも引用により本明細書の一部とする。
宿主細胞中の構築物を常套的に使用して、組換え配列によりコードされているポリペプチド生成物が製造できる。例えば本発明は、血管形成抑制活性を持つマルチユニット複合体を製造する方法を企図するものである。そのような方法は、1またはそれ以上のtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている発現ベクターを提供し、その発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクトし、そしてその宿主細胞を発現に適した条件下に維持する、と言う工程を含む。好ましい態様では、宿主細胞のトランスフェクトに使用される発現ベクターは1、2またはそれ以上のtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている。より好ましくは、このようなtRNAシンセターゼフラグメントはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントである。幾つかの態様では、このようなフラグメントは哺乳動物tRNAシンセターゼ、またはより好ましくはヒトtRNAシンセターゼから誘導される。幾つかの態様では、発現ベクターは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53ならびにこれらの任意のフラグメント、相同体および類似体より成る群から選ばれるtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている。幾つかの態様では、このような発現ベクターは第二のtRNAシンセターゼフラグメントをコードしており、ここで、この第二のtRNAシンセターゼフラグメントもまた配列番号12-17、24-29、36-41、48-53ならびにこれらの任意のフラグメント、相同体および類似体より成る群から選ばれる。この二つのtRNAシンセターゼフラグメントは異なっているか、相同的であるか、実質上相同的であるか、または同一である。
本発明はまた、宿主細胞内部の天然プロセスに応じて、宿主細胞(例えば細菌)が、本発明に係る任意のポリペプチドのN末端メチオニンを開裂できたりできなかったりすることを企図するものである。したがって、或る組成物がMet-および非Met-tRNAシンセターゼフラグメントの組み合わせを含み得るという事もまた本発明によって企図される。例えば、配列番号15-17、27-29、39-41、51-53をコードしているポリヌクレオチド配列でトランスフェクトされた細菌は、Met-tRNAシンセターゼフラグメントおよび非Met-tRNAシンセターゼフラグメントの両方より成る組み合わせ、全てmet-tRNAシンセターゼのフラグメント、または全て非met-tRNAシンセターゼのフラグメントをもたらし得る。
或いは、本発明に係るポリペプチドを常套的ペプチド合成によって合成的に製造することもできる。
蛋白は、適当なプロモーターの調節下に、哺乳動物細胞、酵母、細菌、またはその他の細胞中で発現させることができる。本発明に係るDNA構築物から誘導したRNAを用いてこうした蛋白を生成するために、無細胞翻訳系を使用することもできる。原核および真核宿主と共に使用するための適当なクローニングおよび発現ベクターが、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y., (1989)に記載されており、この内容を引用により本明細書の一部とする。
高等真核生物による、本発明に係るポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの転写は、このベクター内にエンハンサー配列を挿入することで増強される。エンハンサーは、プロモーターに作用してその転写を増大させる、通常約10ないし約300塩基対(bp)のDNAのシス作動性エレメントである。例として、複製起点の後期側にあるSV40エンハンサー(bp100ないし270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーがある。
一般に、組換え発現ベクターは、複製起点および宿主細胞の形質転換をさせる選択マーカー、例えば、E. coliのアンピシリン耐性遺伝子、pET24Bのカナマイシン、およびS. cerevisiae TRP1遺伝子、ならびに、下流の構造配列の転写を指令する、高発現遺伝子から誘導されるプロモーターを含む。このようなプロモーターは、3-ホスホグリセラートキナーゼ(PGK)のような解糖酵素、α因子、酸ホスファターゼ、または熱ショック蛋白などをコードしているオペロンから誘導できる。異種構造配列を、適当な相において、翻訳開始および終止配列、そして好ましくは周辺腔または細胞外培地への翻訳された蛋白の分泌を指令することのできるリーダー配列と共に組み立てる。所望により、この異種配列は、所望の性質、例えば発現された組換え生成物の安定化または単純化された精製を付与するN末端同定ペプチドを含む融合蛋白をコードすることもできる。
適当な宿主株を形質転換し、その宿主株を適当な細胞密度まで増殖させた後、選ばれたプロモーターを適当な手段(例えば、温度シフトまたは化学的誘導)で活性化し、そして細胞をさらなる期間培養する。
細胞は、典型的には遠沈で収穫し、物理的または化学的手段で破壊し、得られた粗抽出物をさらなる精製のために保存する。
蛋白の発現に使用する細菌細胞は、凍結-融解循環、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む任意の簡便な方法により、破壊できる。
種々の哺乳動物細胞培養系を、組換え蛋白発現のために使用できる。哺乳動物発現系の例は、Gluzman, Cell, 23:175(1981)の記載したサル腎線維芽細胞のCOS-7ライン、ならびに、適合性ベクターを発現できるその他のセルライン、例えばC127、3T3、CHO、HeLaおよびBHKセルラインを包含する。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適当なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに任意の必要とされるリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終結配列、および5’フランキング非転写配列を含むであろう。SV40ウイルスゲノムから誘導されるDNA配列、例えばSV40起点、初期プロモーター、エンハンサー、スプライス、およびポリアデニル化部位を使用して必要な非転写遺伝エレメントを提供することができる。
したがって、その最も基本的な形態において、本発明に係るポリペプチドは、適当な発現ベクターを提供し、この発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクトし、そしてこの宿主細胞を発現に適した条件下に維持することによって製造できる。好ましくは、本発明で使用する発現ベクターは、tRNAシンセターゼフラグメントまたはより好ましくはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、またはその任意の相同体もしくは類似体をコードしているヌクレオチド配列を少なくとも1個含む。このようなトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントをコードしているベクターは、該ポリペプチドの二量体化ドメインに1またはそれ以上の天然に存在しないシステインをコードするよう修飾することができる。幾つかの態様では、発現ベクターは2またはそれ以上のtRNAシンセターゼフラグメント、またはより好ましくは2またはそれ以上のトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている。このようなベクターは、好ましくは第一および第二フラグメントの間に位置するリンカーをコードしている。
ポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを包含する従来使用されてきた方法によって組換え細胞培養から回収、精製する。精製中、低濃度(およそ0.1-5mM)のカルシウムイオンを存在させるのが好ましい(Price, et al., J. Biol. Chem., 244:917(1969))。成熟蛋白の立体配置を完成させる際、必要に応じて蛋白折りたたみ工程を使用できる。最後に、最終精製工程のために高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用することができる。さらなる精製法は本明細書に開示する。
b. 遺伝子治療
本発明に係るポリヌクレオチドは、こうしたポリペプチドのインビボ発現により、本発明による遺伝子治療にも利用できる。
本明細書に教示する遺伝子治療に利用できる種々のウイルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または好ましくはレトロウイルスのようなRNAウイルスがある。好ましくは、レトロウイルスベクターはマウスまたはトリレトロウイルスの誘導体であるか、レンチウイルスベクターである。好ましいレトロウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。1個の外来遺伝子を挿入できるレトロウイルスベクターの例は、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)を包含するがこれらに限定される訳ではない。幾つかのさらなるレトロウイルスベクターは複数の遺伝子を組み込むことができる。これらのベクターは全て選択マーカーの遺伝子を運び、または取り込んで、形質導入された細胞が同定され生成されるようにすることができる。例えば、目的とする亜鉛フィンガー由来DNA結合ポリペプチド配列を、特異的標的細胞上のレセプターのためのリガンドをコードしている別の遺伝子と共にウイルスベクター中に挿入することにより、このベクターを標的特異的とする。レトロウイルスベクターは、例えば蛋白をコードしているポリヌクレオチドを挿入することによって標的特異的とすることができる(二量体)。好ましい標的化は、そのレトロウイルスベクターを標的とする抗体を使用することによって達成する。当業者は、過度の実験を行うことなく、レトロウイルスゲノム中に挿入して亜鉛フィンガー-ヌクレオチド結合蛋白ポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的デリバリーを可能にする特異的ポリヌクレオチド配列について知悉し、またはそれらを容易に確認することができる。
組換えレトロウイルスは不完全であるため、感染性ベクター粒子を産生するためには助けが要る。この支援は、例えばそのレトロウイルスの全構造遺伝子をコードしているプラスミドを含むヘルパーセルラインをLTR内にある調節配列の調節の下に使用することによって提供できる。これらのプラスミドは被包のためのRNA転写物を認識するパッケージングメカニズムを実現するヌクレオチド配列を欠いている。パッケージングシグナルの欠失を有するヘルパーセルラインには、例えばPSI.2、PA317およびPA12があるがこれらに限定されない。ゲノムがパッケージングされないためこれらのセルラインは空のビリオンを生成する。パッケージングシグナルが無傷であって構造遺伝子が目的とする他の遺伝子に置き換えられている細胞内にレトロウイルスベクターが導入されると、このベクターはパッケージングされ、ベクタービリオンを生成することができる。次にこの方法により生成されたベクタービリオンを用いて組織セルライン、例えばNIH 3T3細胞を感染させ、大量のキメラレトロウイルスビリオンを生成させる。
c. 亜鉛フィンガー
亜鉛フィンガー由来DNA結合ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドのためのもう一つの標的化デリバリー系は、コロイド分散系である。コロイド分散系は、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および脂質に基づく系(水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを包含する)を包含する。本発明に係る好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボでのデリバリー媒質として有用な人工膜小胞である。サイズが0.2-4.0μmの範囲の大きな単層小胞(LUV)が、実質的なパーセンテージの巨大分子を含有する水性緩衝液を被包できることが示されている。この水性内部にRNA、DNAおよび無傷のビリオンを被包し生物活性型で細胞にデリバリーすることができる(Fraley, et al., Trends Biochem. Sci., 6:77, (1981))。
d. 標的化されたリポソーム
幾つかの態様では、標的化リポソームを用いて本発明に係るポリヌクレオチドをデリバリーすることができる。幾つかの態様では、このポリヌクレオチド配列は本明細書に記載の発現ベクターである。リポソームが有効な遺伝子移動媒質であるためには、以下の性質が存在しなければならない:(1) 目的遺伝子が、生物活性を損なうことなく高い効率で被包されること;(2) 非標的細胞に比して標的細胞が優先的且つ実質的に結合すること;(3) 小胞の水性内容物が高い効率で標的細胞の細胞質にデリバリーされること;そして、(4) 遺伝情報の正確且つ有効な発現(Mannino, et al., Biotechniques, 6:682(1988))。
リポソームの組成は通常、ステロイド、特にコレステロールと組み合わされた、燐脂質、特に高い相転移温度の燐脂質の組み合わせである。その他の燐脂質またはその他の脂質も使用できる。リポソームの物理的性質は、pH、イオン強度、および二価陽イオンの存在に依存する。
リポソーム生成に有用な脂質の例は、ホスファチジル化合物、例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴリピド、セレブロシド、およびガングリオシドを包含する。特に有用なのはジアシルホスファチジルグリセロールであって、この場合脂質部分は14-18の炭素原子、特に16-18の炭素原子を含み、飽和している。燐脂質の例には卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンがある。
リポソームの標的化は解剖学的およびメカニズム的因子に基づいて分類されてきた。解剖学的分類は、例えば臓器特異的、細胞特異的、および細胞小器官特異的といったような選択性のレベルに基づいている。メカニズム的標的化は、それが受動的である可能動的であるかに基づいて識別できる。受動的標的化は、洞様毛細血管を含む臓器の網内系(RES)の細胞に分布するというリポソームの本来の傾向を利用するものである。これに対して能動的標的化は、リポソームをモノクローナル抗体、糖、糖脂質、または蛋白のような特異的リガンドに結合させることにより、または、臓器および細胞型への標的化を達成するためにリポソームの組成もしくはサイズを変えることにより、リポソームを変化させることを含むものである。例えば、標的化リポソームデリバリー系は、癌細胞、腫瘍細胞、光受容体細胞、心筋組織などに特異結合する抗体を包含できる。
標的化デリバリー系の表面を様々な方法で修飾できる。リポソームによる標的化デリバリー系の場合、標的化リガンドとリポソーム二重層の安定な結合を維持するため、このリポソームの脂質二重層に脂質基を組み込む。脂質鎖を標的化リガンドに組み込むため様々な結合基が使用できる。
一般に、標的化デリバリー系表面に結合した化合物は、標的化デリバリー系が所望の細胞を発見し「狙いを定める」事を可能にするリガンドおよびレセプターである。リガンドは、他の化合物、例えばレセプターに結合する、任意の目的化合物であってよい。
一般に、特異的なエフェクター分子に結合する表面膜蛋白をレセプターと称する。本発明において、抗体は好ましいレセプターである。リポソームを特異的な細胞表面リガンドに標的化するために抗体を使用することができる。例えば、腫瘍細胞上で特異的に発現される腫瘍関連抗原(TAA)と呼ばれる或る種の抗原を、抗体-亜鉛フィンガー-ヌクレオチド結合蛋白含有リポソームを悪性腫瘍に直接標的化する目的のために開発できる。亜鉛フィンガー-ヌクレオチド結合蛋白遺伝子産物は、その作用の際、細胞型を区別できないため、標的化デリバリー系が、非特異的リポソームを無作為に注射することに優る著しい改善を提供する。幾つかの方法を用いてリポソーム二重層にポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を共有結合させることができる。抗体を標的とするリポソームは、それらが標的細胞上の抗原性エピトープに有効に結合する限り、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体またはそれらのフラグメント、例えばFab、もしくはF(ab’)2を包含する。リポソームはホルモンのレセプターまたはその他の血清因子を発現する細胞を標的とさせることもできる。
e. 細胞に基づく治療
本発明に係る任意の態様において、本発明に係るポリヌクレオチドでトランスフェクトされた細胞を患者に投与することができる。幾つかの態様では、トランスフェクトされた細胞は当該患者に由来する。別の態様では、トランスフェクトされた細胞は当該患者のものではない。いずれにせよその細胞は本発明に係る構築物によりインビボ、エクスビボ、またはインビトロでトランスフェクトされ得る。より好ましい態様では、トランスフェクトされた細胞は幹細胞である。造血幹細胞の作製方法がPCT/US2003/024839に記載されており、引用によりその全内容を本明細書の一部とする。
類似体
本発明は、本発明に係る組成物の類似体、特にミニTrpRS、T1、およびT2の類似体を得るためのスクリーニング方法を企図する。本明細書で使用する「類似体」という語は、構造および/または機能を共有する化合物、例えば擬似ペプチド、および任意の小さなまたは大きな有機または無機化合物を意味する。好ましい態様では、本発明に係る類似体は、ミニTrpRS、T1、またはT2のレセプターと類似の相互作用をすることにより、それらの機能および構造を模倣する、小さな有機または無機化合物である。
1. 精製
本発明に係る任意の態様、特に眼科適用のための態様では、本発明に係る組成物(例えば医薬(薬用)製剤および/またはポリペプチド)は好ましくは実質上内毒素を含まない。
薬用調製物またはポリペプチド調製物中の内毒素レベルは既知の任意の方法によって決定でき、このような技術は、薬学およびバイオテクノロジー分野の当業者によって広く且つ一般的に利用されている。例えば、FDAは、試料中の内毒素レベルを定量する幾つかの方法を記したGood Guidance Practicesを1997年2月に刊行しており、この方法には、発色性、終点濁度分析および動態濁度分析技術を使用するリムルス血球抽出成分試験が包含されている。これらの全ての技術およびその他の技術(ウサギ発熱性物質試験コロニーの使用を包含するがこれに限定されない)を適宜使用して、本明細書に記載の試料の内毒素レベルを決定することができる。
したがって、例えば、全身投与または局所投与のための薬用製剤は、生成物(例えばポリペプチド)1mgあたり好ましくは約500、400、300、200、100、90、80、70、50、40、30、25、20、または15未満、またはより好ましくは約10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満、またはより好ましくは約0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.001内毒素単位未満の内毒素濃度を有し得る。
他の投与形態、例えば眼内、吸入、点眼液、膣、直腸などについては、本発明に係る薬用製剤は、生成物(例えばポリペプチド)1mgあたり好ましくは50、40、30、25、20、または15未満、またはより好ましくは約10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満、またはより好ましくは約0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.001内毒素単位未満の内毒素濃度を有し得る。
試料中の内毒素量とは、試料中の目的ポリペプチドまたは薬用物質の量と比較した、当該試料中の内毒素の量(例えば内毒素単位(またはE.U.)で測定する)を指す(一般にポリペプチドまたは薬用物質1mgあたりで表す)。内毒素の量は様々な技術のうち任意のものによって測定できる。しかしながら、本発明において使用する特定の単位は例示的であるに過ぎず、一貫性および読み易さの理由により全体を通じて使用する。即ち、本明細書に記載の方法および材料は、試料中の内毒素量を表すのに用いられる特定の「単位」に限定されない。様々な単位間の変換(一例に過ぎないが、E.U./mg(ポリペプチド)をE.U./mL(試料)に変換)は当業者の能力の範囲内にあると考えられる。
幾つかの態様では、内毒素の低減は精製工程の最終または最終近くの工程である。別の態様では、内毒素低減工程は、精製工程の初期段階にある(例えば、強力なそして/または不可逆的な内毒素とポリペプチドの結合を導き得る工程の前)。
図7は、本発明に係る薬用物質および/またはポリペプチドを精製するための一連の精製工程(それぞれ次工程の前に起こる)を例示するフローチャートを示す。或る工程が別の工程の「前に」起こる場合、第一の工程は、次の工程が始まる前に、ポリペプチドを含有する特定試料に関して少なくとも部分的に完結してしまっている。
工程100において、発酵槽で増殖した細胞から細胞ペーストが形成される(細胞ペーストは必要となるまで適切に保存できる)。次に工程120では、この細胞ペーストを緩衝液に再懸濁する。工程130では、細胞を破壊する。
工程140では、細胞溶解液を清澄化する。清澄化は一般に、目的とするポリペプチドを含有する溶液(例えば細胞溶解液またはホモジネート)から不溶性物質(例えば細胞残屑、細胞小器官および膜)を全てまたは一部取り除くことを含む。本明細書に記載の方法および組成物は、細胞ペースト、溶解液、またはホモジネート(または材料分野で使用されるその他任意の類似用語)の製造に使用される技術に限定されない。清澄化は、単純濾過、遠沈、透析、深層濾過、およそ100Kのカットオフを持つ膜を用いる限外濾過(この場合、所望生成物は濾液であり、非透過物質は廃棄される)、デカンテーションを包含する、当分野で既知の数多くの方法、または、このような分離のために当業者が知悉するその他適当な手段によって達成できる。即ち一般に、清澄化の後、一方の画分は主に細胞の不溶性部分を含み、他方の画分は主に細胞の可溶性部分を含む。清澄化工程のもう一つの局面では、スラリーが澄んだ溶液となる。内毒素低減は、残留する細胞膜(大フラグメント)の包含に反するように選択することにより、清澄化工程中に非特異的に起こるということが当業者には無論理解できるであろう。しかしながら清澄化それ自体は、実質上内毒素を含まないポリペプチド調製物を提供するために設計されるものではない。
工程150では、清澄化された細胞溶解液に陰イオンクロマトグラフィーを実施する。この工程は所望の溶出画分を集めることを含む。陰イオン交換クロマトグラフィーとは、負に荷電した蛋白がそれと共にイオン相互作用をする、正に荷電した表面の使用を指す。次いで蛋白を、溶離溶媒の塩濃度および/またはpHを操作することにより、正に荷電した表面から選択的に溶離することができる。正に荷電した表面の例は陰イオン交換樹脂を包含する。
陰イオン交換樹脂の例は、ジエチルアミノエチル-(DEAE-)、四級アンモニウム-(Q-またはQAE-)、およびアンバーライト型樹脂を包含するがこれらに限定される訳ではない。陰イオン交換樹脂のための異なる樹脂基質、サイズ(例えば、高速流またはFF、原材料、または高性能もしくはHP)、および孔径が、標準的な化学製品供給業者によって市販されており、それらの使用は本明細書に記載する方法の範囲内にあると考えられる。好ましくは、陰イオン交換樹脂は、Qセファロース、DEAEセファロース、およびANXセファロースより成る群から選ばれる。さらに別の態様では、陰イオン交換樹脂はQセファロースである。当業者には理解できるであろうが、小さなサイズの樹脂は生成物のよりきれいな分離を実現できるが、そのような生成物がクロマトグラフィーカラムから溶出する速度がそれと引き替えになる。陰イオン交換樹脂を選択する際のこのような二律背反の分析は、充分当業者の能力の範囲内にある。陰イオン交換クロマトグラフィーは好ましくは、集めた溶出液の内毒素レベルを低減させる前に実施する。
工程160は、集めた溶出画分の内毒素レベルを低減させることを含む。このような工程は、試料から全ての、または実質上全ての、または幾らかの内毒素を除去できる。この工程が蛋白(例えばT1、T2、ミニtrpRS)の全体としての純度を必ずしも上げる必要はない。内毒素低減技術には、例として、限外濾過(例えば、カットオフおよそ100Kの膜を使用し、この場合、所望ポリペプチド生成物は非透過物質中にあり、濾液は廃棄される);逆相、アフィニティ、サイズ排除、疎水性相互作用および/または陰イオン交換クロマトグラフィー(例えばQセファロースを包含する);スクロース遠沈勾配;活性炭、シリカ、ヒドロキシアパタイト、ガラス、および/またはポリスチレン上への内毒素の吸着;イソプロパノール、酢酸アンモニウム、またはポリエチレングリコールを用いた沈殿化;界面活性剤、例えば洗浄剤を使用する相分離技術;荷電フィルター表面の使用、ならびに工業所有権を有する解毒媒質、例えばActiclean Etox(登録商標)、Prosep-Remtox、Mustang E、およびCUNO Zeta Plus ZAがある。後者は、典型的にはその中をポリペプチド試料が流れる装置に提供される。本発明に係るいかなる態様においても、内毒素レベルの低減に関連して生成物を回収する際、濾過に基づく技術が、カラムに基づく技術よりも好ましい。
幾つかの態様では、限外濾過を使用して内毒素レベルを低下させる。限外濾過は、所望ポリペプチドの全てまたは少なくとも幾らかまたは少なくとも一つを、異なるサイズの分子および/または所望ポリペプチド(群)とは異なる分子量の分子から分離することを含む。限外濾過は接線流濾過(軸流濾過の逆)として知られる技術を含み得る。溶液を膜の接線方向に通過させ、溶液(非透過物質とも称する)を再循環させる能力を持つことにより、材料はこの膜をより穏やかに通過できる。膜を通過する能力は二つの因子:膜の孔径(分子量カットオフとも言う)、および膜貫通圧(ポンプおよびバルブによってユーザーが設定する)によって決定される。この設定の様々な態様を用いて目的蛋白が膜を通過したり(濾液中に移行。清澄化系で使用される)しなかったり(非透過物質中に残留。緩衝液交換および濃縮系で使用される)する。幾つかの態様では、限外濾過を使用して、100kDaないし1000kDa、200kDaないし900kDa、300kDaないし800kDa、または400kDaないし500kDaの範囲の平均カットオフ分子量を持つ小孔を有する半透膜で、液体媒質および溶質小分子を濾過する。幾つかの態様では、限外濾過を用いて、少なくとも90kDa、100kDa、200kDa、300kDa、400kDa、500kDa、600kDa、700kDa、800kDa、900kDa、または1000kDaの平均カットオフ分子量を持つ小孔を有する半透膜で、液体媒質および溶質小分子を濾過する。限外濾過工程の実施は、溶液中の球形蛋白を低分子量溶質から分離するための透析プロセスを含み得る。このような工程には、蛋白分子を保持し溶質小分子および水を通過させる半透膜を利用できる。このような膜は、例に過ぎないが、1kDaないし100kDa、2kDaないし90kDa、3kDaないし80kDa、4kDaないし70kDa、5kDaないし60kDa、または6kDaないし50kDa、7kDaないし40kDa、8kDaないし30kDa、または9kDaないし20kDaの範囲の分子量カットオフを有し得る。幾つかの態様では、この分子量カットオフは、90kDa、85kDa、80kDa、75kDa、70kDa、65kDFa、60kDa、55kDa、50kDa、45kDa、40kDa、35kDa、30kDa、25kDa、20kDa、15kDa、10kDa、5kDa、または1kDa未満であってよい。好ましくは、tRNAシンセターゼ分子を保持し溶質小分子および水を通過させる分子量カットオフは50kDa未満、25kDa未満、または1kDa未満である。
好ましい態様では、本発明によって精製されたポリペプチドは、内毒素低減プロセス中に修飾されたり変性したりしない。内毒素低減工程は好ましくは緩衝液交換工程の前に行う。
工程170では、濾過された溶出画分を濃縮する。濃縮工程の実施は、溶媒中の所望のポリペプチドまたは薬用物質(例えば本発明に係る任意のポリペプチド)の濃度の、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、200、300、400、または500倍の増大をもたらすことができる。好ましくはこのような濃度増大プロセスは第一のクロマトグラフィー工程(例えば、陰イオン交換および/または陽イオン交換クロマトグラフィー)の後に実施する。一般に濃縮工程は、試料から相対量の溶媒を減少させることを含む。このような濃縮工程を実施する方法は、限外濾過、蒸発、凍結乾燥、および沈殿化(その後再溶解)を包含するがこれらに限定されない。
濃縮工程は典型的にはポリペプチドおよび/または薬用物質の精製中に少なくとも1、2、3、4、5、または6回実施する。例えば、最初のイオン交換クロマトグラフィー工程が陰イオンクロマトグラフィー工程である場合、濃縮工程は、所望のポリペプチドおよび/または薬用物質を含有する溶出画分の合併時に実施できる(この場合、陰イオン交換カラムから集められたポリペプチド画分とも言う)。同様に、第二のイオン交換クロマトグラフィーカラムが陽イオンクロマトグラフィー工程(洗練化工程とも言う)である場合、濃縮工程は、所望のポリペプチドおよび/または薬用物質を含有する溶出画分の合併時に実施できる(この場合、収集され洗練されたポリペプチド画分、または陽イオン交換カラムから集められたポリペプチド画分)。
濃縮工程(群)は、緩衝液交換工程の前または緩衝液交換工程と同時に行う。
工程180では、陽イオン交換クロマトグラフィー工程に備えて緩衝液を交換する。緩衝液の交換は、「溶媒」を変える、即ちポリペプチドの液体環境を全てまたは一部変えることを含む。溶媒は、所望ポリペプチドが見いだされる低分子溶質(例えば塩類)の媒質および/または巨大分子溶質を包含できる。緩衝液交換を実施するための一つの好適な技術は限外濾過である。別の好適な技術は、実質上より大量の異なる緩衝液に対して該ポリペプチドを含有する溶液を透析することである。別の緩衝液交換技術には、例えばゲル透過およびダイアフィルトレーションがある。緩衝液交換工程は濃縮工程の前、後、またはそれと同時に実施できる。後者のアプローチの一例は、定体積ダイアフィルトレーションとして知られる技術によるものである。緩衝液交換工程は、本発明に係る薬用物質および/またはポリペプチドの精製に際して1回または複数回使用できる。例に過ぎないが、特定のポリペプチド試料(即ち、配列番号70のベクターを組換え発現することにより生成されるT2)が陰イオン交換カラム(即ち陰イオン交換クロマトグラフィー工程)から集められた試料を合併したものを含む場合、このポリペプチド試料(陰イオン交換後緩衝液中のポリペプチド試料とも言う)は、ポリペプチド試料を陽イオン交換カラムにロードする前に緩衝液交換を受ける(即ち、陽イオン交換クロマトグラフィー工程)。ポリペプチド試料に対して緩衝液交換工程が有利に実施できる別の例は、完成したポリペプチド試料の保存前であって洗練化工程(例えば最後のイオン交換クロマトグラフィー工程)の後である。
工程190では、陽イオン交換クロマトグラフィーを実施する。この工程は所望の溶出画分の収集を含み得る。陽イオン交換クロマトグラフィーとは、それと共に正荷電蛋白がイオン相互作用を形成できる、負に荷電した表面の使用を指す。陽イオン交換クロマトグラフィー工程が、既に陰イオン交換クロマトグラフィー工程に付された試料に対して実施される時、この陽イオン交換クロマトグラフィー工程は時に「洗練化工程」と呼ばれる。陽イオン交換カラムにロードされた試料が洗練化されていない試料であり、所望ポリペプチド試料を含有する溶出画分が洗練され、これを洗練されたポリペプチド試料と呼ぶこともある。次いでこの蛋白を、塩濃度および/または溶離溶媒のpHを操作することにより、負に荷電した表面から選択的に溶出させる。負に荷電した表面の例は陽イオン交換樹脂を包含する。
例に過ぎないが、陽イオン交換樹脂の例はカルボキシメチル-(CM-)およびスルホプロピル-(SP-)型樹脂を包含する。陽イオン交換樹脂のための異なる樹脂基質、サイズ(例えば、高速流またはFF、原材料、または高性能もしくはHP)、および孔径が、標準的な化学製品供給業者によって市販されており、それらの使用は本明細書に記載する方法の範囲内にあると考えられる。当業者には理解できるであろうが、小さなサイズの樹脂は生成物のよりきれいな分離を実現できるが、そのような生成物がクロマトグラフィーカラムから溶出する速度がそれと引き替えになる。陽イオン交換樹脂を選択する際のこのような二律背反の分析は、充分当業者の能力の範囲内にある。
最後に工程200では、再度試料を濃縮し、所望により緩衝液を再度交換する。これにより、内毒素レベルの低下したポリペプチド試料が生成する。この低内毒素調製物を、工程220で生物(例えばヒト)に投与する前に、工程210でさらに調合することができる。
図8は本明細書に開示する精製方法の別の例である。
本発明方法の幾つかの局面では、内毒素低減濾過工程を、清澄化工程実施後、且つ緩衝液交換工程前に実施する。さらにこの内毒素低減濾過工程は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程実施前に行うことができる。或いは内毒素低減濾過工程を濃縮工程実施前に行うこともできる。
本発明方法の幾つかの局面では、内毒素低減濾過工程を、清澄化工程実施後、且つ濃縮工程実施前に行う。さらにこの内毒素低減濾過工程は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程実施前に行うことができる。或いは内毒素低減濾過工程を緩衝液交換工程実施前に行うこともできる。
本発明方法の幾つかの局面では、内毒素低減濾過工程を、清澄化工程実施後、且つ陽イオン交換クロマトグラフィー工程実施前に行う。或いはこの内毒素低減濾過工程は濃縮工程実施前に行うことができる。或いは内毒素低減濾過工程を緩衝液交換工程実施前に行うこともできる。
本発明方法の幾つかの局面では、内毒素低減濾過工程を、濃縮工程実施前、且つ陽イオン交換クロマトグラフィー工程実施前、且つ緩衝液交換工程実施前に行う。
本発明に係る任意の精製法における濃縮、緩衝液交換、および陽イオン交換クロマトグラフィー工程の順序は変わり得るが、或る態様では、少なくとも一つの濃縮工程を緩衝液交換工程の前に実施する。或いは、陽イオン交換クロマトグラフィー工程を緩衝液交換工程の後に実施する。或いは、少なくとも一つの濃縮工程を陽イオン交換クロマトグラフィー工程の前に実施する。或いは、陽イオン交換クロマトグラフィー工程を緩衝液交換工程および少なくとも一つの濃縮工程の後に実施する。或いは、少なくとも一つの濃縮工程を緩衝液交換工程および陽イオン交換クロマトグラフィー工程の前に実施する。そして或いは、さらなる濃縮工程を緩衝液交換工程の後に実施する。
本発明に係る任意の精製法についてのさらなる態様では、内毒素低減濾過工程を陰イオン交換クロマトグラフィー工程の後に実施する。さらなる態様では、陰イオン交換クロマトグラフィー工程は陰イオン交換樹脂の使用を含む。さらに別の態様では、陰イオン交換樹脂は、Qセファロース、DEAEセファロース、およびANXセファロースより成る群から選択する。さらに別の態様では、陰イオン交換樹脂はQセファロースである。これらの陰イオン交換樹脂の使用において、原材料グレード、高速流グレードおよび高性能グレードを包含する(但しこれらに限定されない)種々のグレードおよびサイズを使用できる。
本発明に係る任意の精製法では、この陽イオン交換クロマトグラフィー工程は陽イオン交換樹脂の使用を含み得る。さらなる態様では、この陽イオン交換樹脂は、CMセファロース、SPセファロース、およびDEAEセファロースより成る群から選択する。さらに別の態様では、この陽イオン交換樹脂はCMセファロースである。これらの陽イオン交換樹脂の使用において、原材料グレード、高速流グレードおよび高性能グレードを包含する(但しこれらに限定されない)種々のグレードおよびサイズを使用できる。
別の態様では、ポリペプチドを精製する方法は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程、内毒素低減手段を含む工程、および緩衝液交換工程を含み得る[ここで、この内毒素低減手段を含む工程は、緩衝液交換工程の前に実施する]。さらなる態様では、患者への投与に好適なポリペプチドは、眼科的投与に好適である。さらに別の態様では、この、眼科的投与に好適なポリペプチドは、血管形成のモジュレーターである。さらに別の態様では、この、眼科的投与に好適なポリペプチドは、黄斑変性、糖尿病性網膜症、または、望ましくない眼の血管新生に関連するその他の疾患または状態の処置に使用できる。この段落に記載の任意の態様をさらに洗練させたものにおいて、このポリペプチドは実質上内毒素を含まない。
幾つかの態様では、ポリペプチドの精製は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程、内毒素低減手段を含む工程、および緩衝液交換工程を含み得る[ここで、この内毒素低減手段を含む工程は、緩衝液交換工程の前に実施する]。
本発明の任意の態様において、精製工程は、収集され洗練されたポリペプチド画分の濃縮工程を含み、ここでこの収集され洗練されたポリペプチド画分は実質上内毒素を含まない。さらなる態様は、前記態様に記載の収集され洗練されたポリペプチド画分を調製する方法であって、これは、洗練されていないポリペプチド試料に対して陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実施し、それにより前記態様に記載の収集され洗練されたポリペプチド画分を生成させることを含む[ここでこの洗練されていないポリペプチド試料は実質上内毒素を含まない]。さらなる態様は、前記態様に記載の洗練されていないポリペプチド試料を生成する方法であって、これは、陰イオン交換後緩衝液中のポリペプチド試料に対して緩衝液交換工程を実施し、それにより前記態様に記載の洗練されていないポリペプチド試料を生成させることを含む[ここでこの陰イオン交換後緩衝液中のポリペプチド試料は実質上内毒素を含まない]。さらなる態様は、前記態様に記載の陰イオン交換後緩衝液中のポリペプチド試料を生成する方法であって、これは、陰イオン交換カラムから収集したポリペプチド画分に対して緩衝液交換工程の前に濃縮工程を実施し、それにより前記態様に記載の陰イオン交換後緩衝液中のポリペプチド試料を生成させることを含む[ここでこの陰イオン交換カラムから収集したポリペプチド画分は実質上内毒素を含まない]。さらなる態様は、前記態様に記載の陰イオン交換カラムから収集したポリペプチド画分を生成する方法であって、これは、内毒素低減濾過工程を、前記態様に記載の濃縮工程の前に実施することを含む。さらなる態様は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程を内毒素低減濾過工程の前に実施することを含む方法である。
ポリペプチド試料の純度は任意の前記工程の前、最中および/または後に確認できる。
上記のように、様々な宿主-発現ベクター系を利用して本発明に係る任意のポリペプチドを発現させることができる(例えば、好ましくは配列番号12-17、24-29、36-41、48-53のポリペプチドを含む、または本質上それらで構成される、またはそれらで構成される、tRNAシンセターゼフラグメント、例えばT1、T2、またはミニTrpRS)。使用できる発現系は、本発明に係る任意のポリペプチドを少なくとも一部コードしているポリヌクレオチド配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された微生物、例えば細菌(例えばE. coli、およびB. subtilis);本発明に係る任意のポリペプチドを少なくとも一部コードしているポリヌクレオチド配列を含む組換え酵母発現ベクターでトランスフェクトされた酵母(例えばSaccharomycesおよびPichia);本発明に係る任意のポリペプチドを少なくとも一部コードしているポリヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;本発明に係る任意のポリペプチドを少なくとも一部コードしているヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させた、または、該ヌクレオチド配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)でトランスフェクトした植物細胞系;または、哺乳動物細胞のゲノムから(例えばメタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルスから(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)誘導されたプロモーターを含む組換え発現構築物を内包する哺乳動物細胞系(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3、U937)を包含するがこれらに限定される訳ではない。
真核生物系では、それぞれtk-、hprt-またはaprt-細胞で使用できる、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wilkie et al., 1979,Nucleic Acids Res., 7:859-77)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., 1980, Cell 22:817)のような遺伝子を包含する(但しこれらに限定されない)、幾つかの選択系が利用できる。さらに、代謝拮抗物質耐性を選択の基礎として使用できる。以下の遺伝子はこのアプローチを例示するものである:dhfr。これは特にdhfr細胞において(Urlaub & Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci, (1980), 77(7):4216-4220)メトトレキサートに対する耐性を付与する(Subramani S, et al., Mol Cell Biol. 1:854-64(1981);Gasser et al., Proc Natl. Acad. Sci, 1982, 79(21):6522-26(1982);O’Hare et al., (1981), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527);gpt。これはミコフェノール酸に対する耐性を付与する(Mulligan & Berg, (1981), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2027);neo。これはアミノグリコシドG-418に対する耐性を付与する(Colberre-Garapin et al., (1981), J. Mol. Biol. 150:1);hygro。これはハイグロマイシンに対する耐性を付与する(Santerre et al., (1984), Gene 30:147);bar遺伝子。これはビアラホスに対する耐性を付与する;ならびにD-アミノ酸オキシダーゼ。これはD-アラニンまたはD-セリンに対する耐性を付与する(Erikson et al., Nat Biotechnol., (2004), 22(4):455-58)。
細菌系では、本発明に係る任意のポリペプチドまたはその相同体もしくは類似体に対して意図する用途に応じて、幾つかの発現ベクターを選択できる。例に過ぎないが好適な細菌は、グラム陽性およびグラム陰性細菌を包含する。一つの態様では、このポリペプチドはE. coli細菌中で発現され、その後本明細書に記載の精製法を用いて細胞から単離される。
このポリペプチドは、バイオテクノロジー分野の当業者が知悉する発現系を用いて原核細胞中で発現させることができる。本発明に係る方法および組成物にとって有用な発現系は、米国特許第5795745;5714346;5637495;5496713;5334531;4634677;4604359;4601980号に記載されており、これらは全て引用によりその全体を本明細書の一部とする。
原核細胞は当業者に既知の様々な条件下に増殖させ得る。一つの局面では、この細胞を、こうした細胞の増殖にとって適当な培地、例えば最少培地または完全(即ちリッチ)培地で増殖させる。一般にこの細胞の増殖に使用する培地は、抽出法の間のポリペプチドの分配や相の形成を妨害するほど高い濃度の塩またはその他の化学物質を含有すべきでない。
本発明に係る任意のポリペプチドまたはその相同体もしくは類似体をトランスジェニック動物で発現させることができる。マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ミニブタ、ヤギ、および非ヒト霊長類、例えばヒヒ、サル、およびチンパンジーを包含する(但しこれらに限定されない)動物種を用いて、本発明に係る任意のポリペプチドまたはその相同体もしくは類似体をコードしているトランスジーンを発現するトランスジェニック動物を作製することができる。さらに、T1-TrpRS、T2-TrpRS、およびミニTrpRSを包含する(これらは単なる例である)本発明に係る任意のポリペプチドを、本明細書に記載の組成物および方法に使用でき、トランスジェニック植物中で発現させることもできる。
本発明に係る精製法は、混入物質に富む粗製混合物、例えば細胞抽出物または細胞残屑から本発明に係る任意のポリペプチドを精製するのに有用である。本発明に係るポリペプチドを発現する細胞は、精製操作の前に様々な方法で調製できる。例えば、凍結した死細胞のペーストを調製でき、また、凍結した生細胞を使用することもでき、また生細胞を抽出操作に直接使用することもできる。
本発明に係るポリペプチドを細胞から精製する場合、このポリペプチドの抽出前に細胞を破壊またはホモジナイズする。細胞を破壊またはホモジナイズする目的は、本発明に係るポリペプチドを細胞から放出させることである。多様な起源の細胞を破壊またはホモジナイズする様々な方法が当分野でよく知られており、例えば、ビーズミル、浸透圧ショック、加圧型細胞破壊装置、douncing、超音波、ミクロ流動化、高圧ホモジナイズ、および凍結破砕の使用がある。ポリペプチドがそれが合成される細胞から分泌される場合、その細胞を溶解する必要はなく、細胞外液または培地からポリペプチドを抽出できる。例えば相形成物質を発酵槽に直接添加する。
本明細書に記載の精製法は、所望の薬用物質またはポリペプチドを他の望ましくない物質から分離するための任意の技術を包含できる。例に過ぎないがこれらの技術には、接線流濾過(TFFとも言う)、深層濾過、限外濾過、透析、二相抽出、デカンテーション、「塩析」技術、拡張床吸着系、および遠沈を包含する。
本明細書に記載の組成物および精製法に従い、細胞、細胞ホモジネート、破壊細胞、ポリペプチドの化学合成後に得られる粗製混合物、または、ポリペプチドの精製が望まれる、目的ポリペプチドおよび混入物質を含有する任意の種類の混合物から、該ポリペプチドを精製できる。
各精製工程の後、バイオアッセイ、HPLC、アミノ酸決定または免疫学的検定、例えばラジオイムノアッセイ、ELISA、抗体結合を用いるウェスタンブロット、SDS-PAGEを包含する(但しこれらに限定されない)種々の方法でポリペプチドを検出できる。このような抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab発現ライブラリーにより生成されたフラグメント、および上の任意のもののエピトープ結合フラグメントを包含するがこれらに限定される訳ではない。
精製されたポリペプチドの量およびその純度レベルを当分野で周知の方法により決定できる。例えば、限定するものではないが、本発明者等の精製法を用いて製造されたポリペプチド調合物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびこれに続くゲルの染色により調べて、ゲル中の総ポリペプチドを視覚化することができる。一つの態様では、二相抽出後のポリペプチドの収量および純度を逆相HPLCを用いて決定する。
本発明者等の精製法を用いて製造したポリペプチド調合物の純度は出発物質によって変わり得る。例に過ぎないが、E. coliで発現されるポリペプチドを精製する場合、得られる調製物は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約85%、そして好ましくは少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、またはより好ましくは少なくとも約99.5%(重量)の目的ポリペプチドを含有する。
当業者の知悉する全てのポリペプチド精製法をさらなる精製に使用することができる。このような技術はBerger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Volume 152, Academic Press, San Diego, Calif.(1987); Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T.(1989);Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, all Viols., (1989)およびその定期的更新版;New Polypeptide Techniques: Methods in Molecular Biology, Walker, J. M., ed., Humana Press, Clifton, N.J., (1988);およびPolypeptide Purification: Principles and Practice, 3rd. Ed., Scopes, R. K., Springer-Verlag, New York, N.Y., (1987)に詳細に記載されている。このポリペプチドをさらに精製するさらなる方法には、硫酸アンモニウム沈殿化、イオン交換、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー(およびそのHPLCまたはFPLC型)、および疎水性相互作用クロマトグラフィーがあるがこれらに限定されない。
2. ライブラリースクリーニング
一つの態様では、本発明に係る任意の組成物のレセプターを用いて、そのレセプターを調節できる物質についてスクリーニングする。好ましくはその物質を2またはそれ以上の候補物質を含むライブラリーと合する。レセプターと結合するまたは相互作用する候補物質を、さらなる評価のために選択する(例えば、マウスまたはその他の哺乳動物における眼の血管新生を防止/処置する能力を検出する事による。実施例3および4を参照されたい)。候補物質の例は、ポリペプチド(例えば、直線状、環状、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、擬似ペプチド化合物、およびペプチド核酸)、核酸、炭水化物、および小さなまたは大きな有機または無機分子を包含する。このようなライブラリーは、当業者により作製でき、特定の検定用に作り替えることができる。
候補物質は、合成または天然化合物のライブラリーを包含する多岐にわたる供給源から取得できる。例えば、多岐にわたる有機化合物および生体分子のランダムおよび方向性を持った合成のために、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現を包含する多くの手段が利用できる。或いは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態で天然化合物のライプラリーが利用可能、または容易に作製できる。さらに、天然のまたは合成によって作製されたライブラリーおよび化合物を、常套的な化学的、物理的および生化学的手段によって容易に修飾することができる。既知の薬理物質を、方向性を持った、またはランダムな化学修飾、例えばアシル化、アルキル化、エステル化、またはアミド化に付して、構造類似体を製造することができる。
次に、レセプターに結合する物質を、本明細書に開示する、または当分野で既知の任意の血管形成検定モデルを用いて血管形成抑制活性についてさらに評価できる。血管形成を測定する検定例は、実施例3に記載の検定および実施例4に記載のマトリゲル血管形成検定を包含する。血管形成に著明な影響を及ぼす物質を本発明に係る組成物の類似体とみなす。
3. 分子モデリング
幾つかの態様では、コンピューターモデリングツールを使用して、この組成物を修飾したり、新たな組成物を設計したりできる。リガンド(T2または本発明に係るその他任意のホモ二量体)およびそのレセプター(群)の間の結合が確認されたならば、そのリガンドを修飾することで、結合能の増大または合理的な薬物設計が可能である。
これは、典型的には、リガンド/レセプター複合体の結晶構造を解釈し;リガンドおよびレセプター成分間になされる接触を分析し;リガンドが如何にしてレセプターと相互作用するかをコンピューターシミュレーションおよび適当なソフトウェアを用いて比較し;そして、リガンドとの結合を立体障害している、またはその他の理由でリガンドとの結合と共存しないリガンドの部分を改変することを含む。分子モデリングに典型的に利用されるソフトウェアは、これらの各工程を達成できると同時に、天然の第二キナーゼとの関係を増大させるようなリガンドの様々な部分への置換の可能性を示唆できる。好ましくはこのソフトウェアは、同じ作用を達成するためにリガンド(例えばT2)の代わりに使用できる小さな有機もしくは無機化合物を示唆することもできる。
好ましい態様では、分子モデリング系を用いて、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントおよびそのレセプターによってなされる相互作用を解析する。その後、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントを修飾して、これら二つの化合物の結合親和性を改善できる。
当業者は、天然レセプターとの結合を最適化するような、リガンドの一部に置き換わるべき化学基をスクリーニングする幾つかの方法のうちの一つを使用できる。このプロセスは、リガンドおよびレセプターのX線構造に基づき、コンピュータースクリーン上で二つの化合物を並列目視検査する事で開始できる。次に、修飾されたリガンドを、DOCKおよびAUTODOCKのようなソフトウェア、その後エネルギー最小化および標準分子力学力場を持つ分子動力学、例えばCHARMMおよびAMBERを使用して、天然レセプターに結合する能力について調べる。
やはりフラグメント置換プロセスを支援することのできるその他の特化されたコンピュータープログラムには以下のものがある:
1. GRID(P. J. Goodford, “A Computational Procedure for Determining Energetically Favorable Binding Sites on Biologically Important Macromolecules”, J. Med. Chem., 28, pp.849-857(1985))。GRIDはOxford University, Oxford, UKから取得できる。
2. MCSS(A. Miranker et al., “Functionality Maps of Binding Sites: A Multiple Copy Simultaneous Search Method.” Proteins: Structure, Function and Genetics, 11, pp.29-34(1991))。MCSSはMolecular Simulations, Burlington, Mass.から取得できる。
3. AUTODOCK(D. S. Goodsell et al., “Automated Docking of Substrates to Proteins by Simulated Annealing”, Proteins: Structure, Function and Genetics, 8, pp.195-202(1990))。AUTODOCKはScripps Research Institute, La Jolla, Calif.から取得できる。
4. DOCK(I. D. Kuntz et al., “A Geometric Approach to Macromolecule-Ligand Interactions”, J. Mol. Biol., 161, pp.269-288(1982))。DOCKはUniversity of California, San Francisco, Calif.から取得できる。
その他の分子モデリング技術もまた本発明に従って利用できる。例えば、N. C. Cohen et al., “Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry, J. Med. Chem., 33, pp.883-894(1990)を参照されたい。さらに、M. A. Navia et al., “The Use of Structural Information in Drug Design”, Current Opinions in Structural Biology, 2, pp.202-210(1992)をも参照されたい。
上の方法によって或る化合物を設計または選択したならば、そのものがレセプターに結合する効率を調べ、それをコンピューターでの評価によってさらに最適なものとする。
天然レセプターに結合するものとして設計または選択された物質を、それが好ましくは結合状態において標的レセプターとの反発型静電相互作用を欠失するよう、コンピューターでさらに最適化する。このような非相補的(例えば静電的)相互作用には、反発型電荷-電荷、双極子-双極子および電荷-双極子相互作用がある。具体的には、リガンドがレセプターに結合している時、リガンドとレセプターの間の静電的相互作用の総和が、結合エンタルピーへの中立的または好都合な寄与を行うのが好ましい。
化合物の変形エネルギーおよび静電相互作用を評価する、特別なコンピューターソフトウェアが当分野で利用できる。係る用途のために設計されたプログラムの例は、Gaussian 92、改訂版C[M. J. Frisch, Gaussian, Inc., Pittsburgh, Pa. (c) 1992];AMBER、バージョン4.0[P. A. Kollman, University of California at SanFrancisco, (c) 1994];QUANTA/CHARMM[Molecular Simulations, Inc., Burlington, Mass. (c) 1994];およびInsight II/Discover(Biosysm Technologies Inc., San Diego, Calif. (c) 1994)を包含する。これらのプログラムは例えばSilicon Graphicsワークステーション、Indigo2またはIBM RISC/6000ワークステーション モデル550を用いて実行できる。その他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージは当業者に既知である。
上記のように、修飾されたリガンドを最適に選択または設計したならば、その結合性を改善または修飾するため、その原子または側鎖の幾つかに置換を施すことができる。一般に最初の置換は保存的、即ち置き換えられる基は元の基とほぼ同じサイズ、形状、疎水性および電荷を持っているであろう。次いで、このように置換された化学化合物を上に詳細に記載した同じコンピューター法により、レセプターとの適合の有効性について分析する。
医薬(薬用)製剤
任意の本組成物および類似体ならびにそれらの任意の塩、プロドラッグ、または代謝産物を、薬学上許容し得る担体の添加により、個体への投与のために調合できる。薬学上許容し得る塩は、投与される濃度において非毒性の塩である。このような塩の製造は、組成物がその生理学的効果を発揮する事を妨げることなく組成物の物理化学的性質を変えることにより、薬理学的使用を容易にできる。物理的性質の有用な変化の例は、経粘膜投与を促進するための融点の低下、および、より高い濃度の薬物投与を促進するための溶解度の増大を包含する。
薬学上許容し得る塩は、酸付加塩、例えば硫酸塩、塩酸塩、燐酸塩、スルホン酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、およびキナ酸塩を含むものを包含する。薬学上許容し得る塩は、塩酸、硫酸、燐酸、スルホン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、およびキナ酸といった酸から得ることができる。このような塩は、例えば、生成物の遊離酸または塩基型を、その塩が溶解しない溶媒または媒質中で、または、その後に減圧で、または凍結乾燥で、または存在する塩のイオンを適当なイオン交換樹脂上で別のイオンに交換することにより後で除去できる水のような溶媒中で、1またはそれ以上の当量の適当な塩基または酸と反応させることによって製造できる。
眼科的に許容し得る担体は、処置される眼もしくはその機能、または処置される対象の全体的な健康に持続的悪影響を及ぼさない物質である。典型的には、眼内投与用薬用製剤は、洗浄剤および/または保存剤を実質上含まない、または洗浄剤および/または保存剤を全く含まない。
眼科用製剤のための有用な水性懸濁液は、懸濁化剤として1またはそれ以上のポリマーを含有できる。有用なポリマーは、セルロースポリマーのような水溶性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、および、架橋カルボキシを含むポリマーのような水不溶性ポリマーを包含する。有用な眼科用製剤はさらに、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/アクリル酸ブチルコポリマー、アルギン酸ナトリウムおよびデキストランから選ばれる、眼科的に許容し得る粘膜付着性ポリマーを含むことができる。
本発明に係る任意の組成物の溶解性を助けるための眼科的に許容し得る可溶化剤は、その物質のミセル溶液または真性溶液の形成をもたらす物質を包含する。或る種の非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80は可溶化剤として有用であり、グリコール類、ポリグリコール類、例えばポリエチレングリコール400、およびグリコールエーテルもまた同様である。しかしながら一般に、このような界面活性剤およびグリコール類は、或る種の有害な副作用、例えば網膜剥離を起こす可能性のため、極めて低い用量以外では眼内投与用組成物に使用されることはない。したがってこのような界面活性剤およびグリコール類は好ましくは使用されないか、必要とされる場合でも少量を使用するだけである。
有用な眼科的に許容し得るpH調節剤または緩衝化剤は、例えば酢酸、硼酸、クエン酸、乳酸、燐酸および塩酸のような酸;水酸化ナトリウム、燐酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびトリス-ヒドロキシメチルアミノメタンのような塩基;ならびにクエン酸塩/デキストロース、重炭酸ナトリウムおよび塩化アンモニウムのような緩衝剤を包含する。このような酸、塩基および緩衝剤は組成物のpHを眼科的に許容し得る範囲に維持するのに必要な量を含有させる。
有用な眼科的に許容し得る塩は、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム陽イオンならびに塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、硼酸塩、燐酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩または重亜硫酸塩陰イオンを有する塩を包含し;好適な塩は塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムおよび硫酸アンモニウムを包含する。
物理的安定性を増強する、または他の目的のための有用な眼科的に許容し得る界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油;ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えばオクトキシノール10、オクトキシノール40を包含する。
本発明に係る眼科用薬用製剤はさらに、眼と眼瞼の間または結膜嚢中に挿入して該物質を放出できる、固体物品の形態をとることができる。放出は、角膜表面を濡らす涙液へと、または角膜自身に直接行われ、この固体物品は一般に角膜と緊密に接触している。このようなやり方で眼に移植するために好適な固体物品は一般に、主としてポリマーでできており、生分解性であっても非生分解性であってもよい。
本発明の任意の態様において、薬学上許容し得る担体は、tRNAシンセターゼフラグメントのマルチユニット複合体を破壊しないまたはこれに影響しないものであってよい。
本発明に係る薬用製剤はさらに、抗新生物物質、抗炎症物質、抗菌物質、抗ウイルス物質、血管形成物質、および抗血管形成物質より成る群から選ばれる治療物質を含むことができる。このような物質の例は本明細書に開示する。
例えば抗新生物物質は、塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスパーリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィド;ジメシラート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;カデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;ドゥアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロミチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;燐酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エチオダイズド油 I 131;エトポシド;燐酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスリジン;燐酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲンシタビン;塩酸ゲンシタビン;金Au 198;ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イフォスファミド;イモフォシン;インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-1a;インターフェロンγ-1b;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;マイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;
メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メトゥレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;ミトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォサートナトリウム;スパルソミシンル;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;塩化ストロンチウムSr 89;スロフェヌール;タリソマイシン;タキサン;タキソイド;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;燐酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシナート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシンより成る群から選択できる。
抗血管形成物質は、本明細書に開示されているか当分野で既知であるかに拘わらず、血管形成を阻害する任意の物質である。好ましい態様では、抗血管形成物質は抗VEGF物質、例えばMacugen(登録商標)(Eyetech, New York, NY);または抗BEGF抗体である。
薬用組成物は標準技術により、1またはそれ以上の適当な担体、賦形剤、および希釈剤を用いて製剤化できる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, (19th Ed. Williams & Wilkins, 1995)(引用により本明細書の一部とする)を参照されたい。
好適な担体、賦形剤および希釈剤の例は、乳糖、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アラビアゴム、燐酸カルシウム、アルギン酸塩、珪酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、トラガカント、ゼラチンシロップ、メチルセルロース、メチルおよびプロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水および鉱油を包含する。その他の添加物には所望により潤滑剤、湿潤剤、乳濁化および懸濁化剤がある。眼科用担体は、好ましくは無菌の実質上等張性水溶液となっている。
この薬用組成物を、該化合物の即時、持続または遅延放出を提供するように製剤化できる。緩徐放出を提供する適用のためには、或る種の担体が特に好ましい。好適な緩徐放出担体は、デキストロース、デキストラン、ポリアクチン酸、および種々のセルロース誘導体、例えばエチルヒドロキシセルロースからマイクロカプセルの形態で製剤化できる。
本発明に係る製剤に様々な添加物を加えることができる。このような添加物は、乳濁化、保存、湿潤、稠度改善などの役割を果たす物質を包含し、常套的に薬用調製物に使用される。その他の添加物には、イオン性または非イオン性の界面活性を有する化合物、例えばモノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ジオクチルナトリウムスルホスクシナート、モノチオグリセロール、チオソルビトール、エチレンジアミン四酢酸などがある。
非眼科適応のためには、賦形剤は保存剤を包含できる。非眼科用薬用調製物に使用するための好適な保存剤は、塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、フェニルエチルアルコール、クロロブタノール、チメロサール等を包含する。好適な緩衝剤は、pHを約3および約9.5、最も好ましくは約7および7.5の間に維持するのに充分な量の硼酸、重炭酸ナトリウムおよびカリウム、硼酸ナトリウムおよびカリウム、炭酸ナトリウムおよびカリウム、酢酸ナトリウム、重燐酸ナトリウム、トリスなどを包含する。好適な張度剤は、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなどであり、その眼科用溶液の塩化ナトリウム相当量が0.9±0.2%の範囲となるようにする。
好適な抗酸化剤および安定剤は、重亜硫酸ナトリウムおよびカリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびカリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオウレアなどを包含する。好適な湿潤および清澄化剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールを包含する。好適な増粘剤は、デキストラン40、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ワセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどを包含する。使用可能なキレート化剤のような安定剤は、例えばEDTA、EGTA、DTPA、DOTA、エチレンジアミン、ビピリジン、1,10-フェナントロレン、クラウンエーテル、アザクラウン、カテコール類、ジメルカプロール、D-ペニシラミンおよびデフェロキサミンを包含する。安定剤としても作用できる抗酸化剤は、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、メタ重亜硫酸カリウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウムといった化合物を包含する。
製剤は、カプセル剤、ゲル、カシェー剤、錠剤、発泡剤または非発泡性散剤もしくは錠剤、散剤または顆粒剤;水性または非水性液体中の溶液もしくは懸濁液;または水中油型エマルジョンもしくは油中水型エマルジョンを包含する。カプセル剤または錠剤は容易に製剤化でき、嚥下または咀嚼が容易になるように製造できる。錠剤は、適当な担体、結合剤、潤滑剤、希釈剤、崩壊剤、着色料、香料、流動化剤、または融解剤を含有できる。錠剤は、所望により1またはそれ以上のさらなる成分と共に圧縮または成型によって製造できる。圧縮錠剤は、所望により結合剤(例えば、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、グリコール酸澱粉ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース)、界面活性または分散剤と混合した自由流動形態(例えば、粉末,顆粒)の活性成分を圧縮することにより製造できる。好適な結合剤は、澱粉、ゼラチン、天然の糖、例えばグルコースまたはβ-乳糖、コーンシロップ、天然および合成ゴム、例えばアラビアゴム、トラガカントゴム、またはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどを包含する。所望により錠剤は被覆または割線を入れることができ、また、活性成分をゆっくりとまたは制御して放出させるように製剤化することができる。さらに錠剤は所望により、胃ではなく腸の所々で放出されるよう腸溶被覆を施して提供できる。
活性成分が適当な担体に溶解または懸濁している場合、口内での局所投与(例えば創傷治癒)に好適な製剤は、トローチ剤(これは着香担体、通常スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴム;ゼラチン、グリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴム中に活性成分を含み得る);および適当な液体担体中に活性成分を含む洗口剤を包含する。本発明方法による投与のための局所適用は、軟膏、クリーム、懸濁剤、ローション、散剤、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたは油を包含する。或いは、製剤は、経皮パッチまたは包帯剤、例えば活性成分および所望により1またはそれ以上の担体もしくは希釈剤を含浸させた包帯を含み得る。
経皮デリバリー系の形態で投与するためには、投与は無論、その投与計画全体を通じて間欠的ではなく持続的となるであろう。局所製剤は、皮膚またはその他の患部領域を介した活性成分の吸収または浸透を増強する化合物を含むのが望ましい。このような皮膚浸透増強剤の例にはジメチルスルホキシドおよび関連類似体がある。
非経口投与に好適な製剤は、目的とするレシピエントの血液と等張な水性および非水性製剤;ならびに、血液成分または1もしくはそれ以上の臓器が標的となるよう設計された懸濁系を含み得る水性および非水性無菌懸濁液を包含する。製剤は単位用量または複数用量の密封容器、例えばアンプルまたはバイアルに入れて供することができる。眼内製剤のためには、この製剤中には保存剤がないため、単位用量が好ましい。他の非経口製剤のためには保存剤を使用してもよく、これにより複数用量の容器が可能となる。
即時注射溶液および懸濁液は、前記の種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から製造できる。非経口および静脈内剤型は、それらを選ばれた注射のタイプまたはデリバリー系に適合させるための鉱物およびその他の材料をも含み得る。
本発明により企図される特定の非経口投与は眼内および眼への硝子体内投与を包含する。眼内および硝子体内投与のための薬用製剤は、賦形剤、例えば蛋白安定剤としてのマンニトールもしくはソルビトールを含むまたは含まない燐酸緩衝化生理食塩水(PBS)および平衡等張食塩水(BSS)を包含する。
一般に、水、適当な油、生理食塩水、水性デキストロース(グルコース)、または関連する糖溶液およびグリコール類、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが非経口溶液のための好適な担体である。非経口投与用溶液は、好ましくは活性成分、適当な安定剤、そして必要ならば緩衝物質を含有する。抗酸化剤、例えば単独または組み合わせた重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸は好適な安定剤である。これらのクエン酸塩またはEDTAナトリウムもまた使用される。さらに、非経口溶液は保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、メチルもしくはプロピルパラベン、またはクロロブタノールを含有できる。好適な薬用担体は上に引用したRemingtonに記載されている。
本発明の任意の態様において、本発明に係る組成物または薬用製剤を凍結乾燥できる。
本発明の任意の態様において、この薬用製剤は好ましくは治療物質1mgあたり約30、20または10未満、より好ましくは9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満、またはより好ましくは0.1、0.01、または0.001未満の内毒素単位を含む。
適応
本発明に係る任意の組成物(薬用製剤を包含する)を、細胞または組織における血管形成を調節するために使用できるということが、本発明により企図される。このような方法は、適当な抗血管形成(例えば血管形成抑制)または血管形成物質を細胞または組織に接触させる事を含む。例えば幾つかの態様では、血管形成を経験しているまたはそれに陥り易い(例えば血管形成状態)細胞または組織を、tRNAシンセターゼフラグメントまたはその相同体もしくは類似体のマルチユニット複合体に接触させて血管形成状態を阻害する。別の態様では、不充分な血管形成を経験しているまたはそれに陥り易い(例えば血管形成抑制状態)細胞または組織を、tRNAシンセターゼフラグメントのインヒビター、例えばRNAi、アンチセンス核酸、抗体、もしくはその他の結合物質またはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントの血管形成抑制活性を妨害する物質に接触させることができる。
本発明により調節され得る細胞/組織は、好ましくは哺乳動物細胞、またはより好ましくはヒト細胞である。このような細胞は、健康な状態であっても疾病状態であってもよい。幾つかの態様では、癌細胞、腫瘍細胞、または血管新生を経験している細胞を本発明に係る組成物と接触させる。幾つかの態様では、VEGF、インターフェロンγ、および/またはTNF-αの増大により血管形成を経験している細胞を本発明に係る組成物に接触させる。一例では、光受容体細胞を本発明に係るマルチユニット複合体に接触させる。
血管形成は、細胞または組織で、その細胞に本発明に係るマルチユニット複合体、例えば二量体、三量体などを接触させる事によって調節できる。好ましい態様では、このようなマルチユニット複合体は単離されている。さらに本発明の任意の態様では、マルチユニット複合体は可溶性であってよい。
血管形成を調節する時、本発明に係るマルチユニット複合体の有効量を細胞または組織に接触させることによって血管形成速度が阻害される。本発明に係るマルチユニット複合体の例は、第一単量体および第二単量体を包含する。本発明に係る第一および第二単量体
は、相互に異なっているか、相同的であるか、実質上相同的であるか、または同一である。本発明に係る任意の単量体はtRNAシンセターゼフラグメントを含み得る。本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントは、例えばトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、および/またはtRNAシンセターゼの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。本発明により企図される血管形成抑制トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにそれらの任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるものを包含する。
マルチユニット複合体のユニットは共有結合で連結していても非共有結合的に連結していてもよい。共有結合で連結している単量体は本明細書に開示する任意の方法、例えばリンカー、ジスルフィド結合によって連結することができる。幾つかの態様では、2またはそれ以上の単量体が1またはそれ以上の天然に存在しないシステインによって連結している。このようなシステインは好ましくは単量体の二量体化ドメインに位置する。幾つかの態様では、単量体はリンカーによって連結している。本発明に係るリンカーは、2またはそれ以上の単量体に、生産的に配置され相互に二量体化する自由度を与えるに充分な程長くなくてはならない。
血管形成を調節する場合、血管形成抑制活性を有するtRNAシンセターゼフラグメントのインヒビターの有効量を細胞または組織に接触させることにより、血管形成速度を高めることができる。このようなインヒビターの例は、抗体、アンチセンス核酸、RNAi核酸、擬似ペプチド、ペプチド核酸、ペプチド、ならびに小さなまたは大きな有機または無機分子を包含するがこれらに限定されない。このようなインヒビターは、例えば該tRNAシンセターゼフラグメントのレセプターと競合的に結合することにより;該tRNAシンセターゼフラグメントの結合部位に結合することにより;該tRNAシンセターゼフラグメントに結合してその立体配座を変化させることにより;該tRNAシンセターゼの発現を阻害することにより、そして/または該tRNAシンセターゼフラグメントを形成する全長tRNAシンセターゼの開裂を阻害することにより、機能できる。
本発明に係る組成物を使用して新生血管の安定化および/または成熟を調節できる。したがって本発明に係る組成物を使用して創傷治癒および血管内皮細胞機能の調節を増強することができる。
本発明に係る任意の組成物を、血管形成の増大(血管の形成)(「血管形成状態」)または血管形成能力の低下(「抗血管形成状態」)(まとめて「血管形成により仲介される状態」)に関連する状態に陥っている、または陥り易い患者に投与できるということが、本発明によってさらに企図される。
本発明に係る組成物/方法によって処置/防止され得る血管形成状態の例は、加齢性黄斑変性(AMD)、新生物状態(固形腫瘍および血液疾患の両方)、発達異常(器官発生)、糖尿病性失明、子宮内膜症、眼の血管新生、乾癬、関節リウマチ(RA)、未熟児網膜症(ROP)および皮膚変色(例えば、血管腫、火炎状母斑、または単純性母斑)を包含するがこれらに限定される訳ではない。
本発明に係る組成物/方法によって処置/防止され得る抗血管形成状態の例は、心血管疾患(例えばアテローム性動脈硬化症(Moulton, K., PNAS, Vol. 100, No.8:4736-4741(2003)を参照されたい)、再狭窄(Brasen JH., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. Nov;21(11):1720-6(2001)を参照されたい)、末梢血管疾患、末梢動脈疾患、虚血組織の再潅流または心不全後の組織損傷(The U. of Tenn., The Vessel, 4(1)(2003)を参照されたい)、慢性炎症および創傷治癒を包含するがこれらに限定される訳ではない。
例えば本発明は、本発明に係る任意の組成物/方法を用いて眼の血管新生に関連する状態を処置または防止する方法に関するものである。眼の血管新生に関連する状態は、糖尿病性網膜症、加齢関連黄斑変性(「ARMD」)、血管新生緑内障、角膜実質炎、新生児網膜症、虚血性網膜症(例えば鎌状赤血球)、病的近視、眼のヒストプラスマ症、翼状片、punitiate inner脈絡膜症などを包含するがこれらに限定される訳ではない。
本発明に係る組成物/方法によって処置可能または防止可能となり得る新生物状態の例は、乳癌;皮膚癌;骨癌;前立腺癌;肝癌;肺癌;脳腫瘍;喉頭癌;胆嚢;膵臓;直腸;副甲状腺;甲状腺;副腎;神経組織;頭頸部;結腸;胃;気管支;腎臓;基底細胞癌腫;潰瘍型および乳頭型の扁平上皮癌腫;転移性皮膚癌腫;骨肉腫;ユーイング肉腫;細網肉腫;骨髄腫;巨細胞腫瘍;小細胞肺腫瘍;胆石;ランゲルハンス島細胞腫瘍;原発性脳腫瘍;急性および慢性リンパ球および顆粒球腫瘍;ヘアリーセル白血病;腺腫;過形成;髄様癌;褐色細胞腫;mucosal neuronms;腸管神経節細胞腫;過形成角膜神経腫瘍;マルファン症候群様体質腫瘍;ウィルムス腫瘍;セミノーマ;卵巣腫瘍;leiomyomater腫瘍;子宮頸部形成異常およびin situ癌腫;神経芽腫;網膜芽腫;軟組織肉腫;悪性カルチノイド;局所皮膚病変;菌状息肉腫;横紋筋肉腫;カポジ肉腫;骨原性およびその他の肉腫;悪性高カルシウム血症;腎細胞腫瘍;真性多血症;腺癌;多形性神経膠芽腫;白血病(急性骨髄性白血病を含む);リンパ腫;悪性黒色腫;類表皮癌;慢性骨髄性リンパ腫;消化管間質腫瘍;および黒色腫を包含するがこれらに限定されない。
本発明に係る方法は、マルチユニット複合体を含む薬用製剤を個体に投与することにより、血管形成状態に陥っている個体を処置する方法を包含する。本発明に係るマルチユニット複合体は、2もしくはそれ以上の単量体、3もしくはそれ以上の単量体、4もしくはそれ以上の単量体、5もしくはそれ以上の単量体、または6もしくはそれ以上の単量体より成る複合体である。
幾つかの態様では、マルチユニット複合体の単量体はtRNAシンセターゼフラグメントまたはその相同体もしくは類似体である。好ましくはこのtRNAシンセターゼフラグメントはトリプトファニルtRNAシンセターゼ(配列番号61-64)、またはその任意の相同体もしくは誘導体である。tRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは哺乳動物tRNAシンセターゼ、またはより好ましくはヒトtRNAシンセターゼ由来のフラグメントである。幾つかの態様では、マルチユニット複合体の単量体は、配列番号12-17、24-29、36-41、および48-53より成る群から選ばれる。マルチユニット複合体の第一単量体および第二単量体は、異なっているか、相同的であるか、実質上相同的であるか、または同一であってよい。好ましい態様では、マルチユニット複合体は二量体(相同的または実質上相同的な単量体を持つ)、またはより好ましくはホモ二量体(同一の単量体を持つ)である。
マルチユニット複合体の2またはそれ以上の単量体は共有結合により連結しているか、非共有結合的に連結しているか、またはその両方であってよい。
本発明に係る組成物は、少なくとも一つの血管形成レセプターと特異的に相互作用できるということもまた本発明で企図される。血管形成レセプターとは、血管形成(異常な発生上の増殖、腫瘍発生性、リンパ球生成性、および脈管形成性を包含する)を仲介できる任意の細胞表面レセプターである。本発明に係る血管形成レセプターは好ましくは内皮細胞上に、またはより好ましくは血管内皮細胞上に位置する。幾つかの態様では、本発明に係る組成物は血管形成レセプターの調節に、または血管形成レセプターにより仲介される状態の処置に使用する。
既知の血管形成レセプターは、VEGF、IGF、EGF、PDGFおよびFGFの増殖因子レセプターを包含するがこれらに限定される訳ではない。その他の好ましい血管形成レセプターには、下記のような細胞接着分子がある。血管形成レセプターはCXCレセプターまたはケモカインレセプターをも包含する。CXCレセプターの例は、IL8RA、IL8RB、IL8RBP、CXCR3、CXCR4、BLR1、およびCXCR6より成る群を包含するがこれらに限定されない。ケモカインレセプターの例は、CCR1-CCR9、GPR2、CCRL1-CCRL2およびFPRL1より成る群を包含するがこれらに限定されない。
幾つかの態様では、本明細書に開示する処置方法は、抗新生物物質、抗ウイルス物質、抗炎症物質、抗菌物質、抗血管形成物質、または抗血管形成物質より成る群から選ばれる1またはそれ以上の治療物質を、血管形成状態に陥っている個体に投与することをさらに包含する。
このような併用処置は、本発明に係る組成物とさらなる治療物質を一緒に調合したものを個体に投与することにより、または、本発明に係る組成物と治療物質を二つの別個の薬用製剤として投与することによって達成できる。1以上の組成物/治療物質を個体に投与する態様では、両活性物質の相乗作用のため、その組成物および/または治療物質を低い方の用量で利用できる。
抗新生物物質の例は本明細書に記載してあり、当分野で既知である。
個体に投与できる抗菌物質は、ペニシリン、アミノグリコシド、マクロライド、モノバクタム、リファマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、イミペネム、フシジン酸、ノボビオシン、ホスホマイシン、フシジン酸ナトリウム、ネオマイシン、ポリミキシン、カプレオマイシン、コリスチメタート、コリスチン、グラミシジン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、バノマイシン、バシトラシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシンおよびセファロスポリンを包含するがこれらに限定されない。
個体に投与できる抗炎症物質は、NSAID(例えば、アスピリン(サリチルアミド)、サリチルアミドナトリウム、インドプロフェン、インドメタシン、インドメタシンナトリウム三水和物、Bayer(登録商標)、Bufferin(登録商標)、Celebrex(登録商標)、ジクロフェナク、Ecotrin(登録商標)、ジフルニサル、フェノプロフェン、ナプロキセン、スリンダク、Vioxx(登録商標))、コルチコステロイドまたはコルチコトロピン(ACTH)、コルヒチン、および酢酸アネコルタブを包含するがこれらに限定されない。
個体に投与できる抗ウイルス物質は、α-メチル-P-アダマンタンメチルアミン、1,-D-リボフラノシル-1,2,4-トリアゾール-3カルボキサミド、9-[2-ヒドロキシエトキシ]メチルグアニン、アダマンタンアミン、5-ヨード-2’-デオキシウリジン、トリフルオロチミジン、インターフェロン、アデニンアラビノシド、CD4、3’-アジド-3’-デオキシチミジン(AZT)、9-(2-ヒドロキシエトキシメチル)-グアニン(アシクロビル)、ホスホノ蟻酸、1-アダマンタンアミン、ペプチドT、および2’,3’ジデオキシシチジンを包含するがこれらに限定されない。
個体に投与できる血管形成物質は、アンギオゲニン、アンギオポエチン-1、Del-1、線維芽細胞増殖因子:酸性(aFGF)および塩基性(bFGF)、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)/散乱因子(SF)、インターロイキン-8(IL-8)、レプチン、ミドカイン、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)、血小板由来増殖因子-BB(PDFG-BB)、プレイオトロフィン(PTN)、プログラヌリン、プロリフェリン、形質転換増殖因子-α(TGF-α)、形質転換増殖因子-β(TGF-β)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)/血管透過性因子(VPF)を包含するがこれらに限定されない。
個体に投与できる抗血管形成物質は、血管形成物質のアンタゴニストを包含する。本明細書において「血管形成物質のアンタゴニスト」という語は、血管形成物質の生物活性を阻害する任意の分子を指すのに用いられる。血管形成物質のアンタゴニストの例は、血管形成物質に特異結合する抗体、血管形成物質の翻訳を阻害するiRNA、および血管形成物質に結合する/その生物活性を妨害するその他の物質を包含するがこれらに限定されない。
血管形成物質の例は、(1) 増殖因子およびそのレセプター;(2) リモデリングおよび形態形成レセプターおよびそれらのリガンド;(3) 接着レセプターおよびそのリガンド;(4) マトリックス分解酵素、例えばマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP);(5) シグナル伝達分子、例えばRafおよびMAPK、PKA、RhosファミリーGTPアーゼ、PKB;ならびに(6) 転写因子および調節因子(例えば低酸素誘導因子(HIF)-1、同1/3、および核因子-B)およびhomobox遺伝子産物(例えばHox D3、およびB3)を包含するがこれらに限定されない。
幾つかの態様では、血管形成物質は増殖因子および/またはそのレセプターである。増殖因子レセプターの例は、VEGFレセプター(例えば、可溶性VEGFR1、VEGFR1(Flt-1)、VEGFR2(Flk-1)、およびVEGFR3(Flt-4)ならびにそれらのリガンド(例えば、VEGF A、B、C、およびD)を包含する。したがって幾つかの態様では、抗血管形成物質は、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3といったVEGFレセプターのアンタゴニスト、または、VEGFA、VEGFB、VEGFC、もしくはVEGFDといったVEGFリガンドのアンタゴニストである。幾つかの態様では、抗血管形成物質はVEGFリガンド(例えばVEGFA-VEGFD)のアンタゴニストである。より好ましくは、抗血管形成物質はVEGFAのアンタゴニストである。抗VEGF、抗血管形成物質の例は、Avastin(Genentech, Inc.)、Macugen(EyeTech Pharmaceuticals, Inc.)またはVisudyne(Novartis, Crop.)および抗VEGFモノクローナル抗体M293を包含する。抗VEGF抗血管形成物質のさらなる例は米国特許第5730977、6383484、6403088、6479654、6559126、および6676941号に開示されており、これらは全て引用により、意図する目的のため本明細書の一部とする。
増殖因子およびそのレセプターのさらなる例は、アンギオゲニン、アンギオポエチン-1、Del-1、線維芽細胞増殖因子(「FGF」)およびFGFR(酸性aFGFおよび塩基性bFGFを包含する)、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン-8(IL-8)、レプチン、ミドカイン、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)、血小板由来増殖因子-BB(PDFG-BB)、プレイオトロフィン(PTN)、プログラヌリン、プロリフェリン、形質転換増殖因子-α(TGF-α)、TGF-β、および腫瘍壊死因子 (TNF) -αを包含するがこれらに限定されない。
幾つかの態様では、本発明に係る抗血管形成物質は、リモデリングおよび形態形成レセプターおよび/またはリガンドのアンタゴニストである。リモデリングおよび形態形成レセプターおよびリガンドの例は、Tieレセプター(例えばTie1およびTie2)およびそれらのリガンド(例えばANG-1、ANG-2、およびANG-3/4)ならびにエフリンレセプター(例えばEphB1、EphB2、EphB3、EphB4、EphB6、EphA4)およびそれらのリガンド(例えばエフリンB1、B2、およびB3)を包含するがこれらに限定されない。
幾つかの態様では、本発明に係る抗血管形成物質は、接着レセプターおよび/またはそのリガンドのアンタゴニストである。接着レセプターおよびそのリガンドの例は、インテグリン、カドヘリン、セモホリン、およびフィブロネクチンを包含するがこれらに限定されない。18個のαおよび8個のβ哺乳動物サブユニットがあり、これらが組み立てられてインテグリンレセプターの24の異なるヘテロ二量体を形成する。幾つかの態様では、接着レセプターのアンタゴニストは、α1β1、α2β1、α3β1、α4β1、α5β1、α6β1、α8β1、α9β1、αVβ1、αVβ3、αVβ5、α6β4、およびαVβ8より成る群から選ばれる血管インテグリンレセプターのアンタゴニストである。より好ましい態様では、接着レセプターのアンタゴニストは、α1β1、α2β1、α5β1、およびαVβ3より成る群から選ばれる血管インテグリンレセプターのアンタゴニストである。より好ましい態様では、接着レセプターのアンタゴニストはαVβ3のアンタゴニストである。
このインテグリンのペプチドおよび抗体アンタゴニストは、増殖している血管内皮細胞のアポトーシスを選択的に誘導することにより、血管形成を阻害する。インテグリン抗体は例えばChemicon Internation、Biocompare、Soretec等から市販されている。
血管形成のサイトカイン依存性経路が二つ存在し、相異なる血管細胞インテグリンへの依存性によりαVβ3およびαVβ5と定義できる。具体的には、塩基性FGFおよびVEGFにより誘発される血管形成が、それぞれインテグリンαVβ3およびαVβ5に依存する。何故なら各々のインテグリンの抗体アンタゴニストは、ウサギ角膜およびヒヨコ絨毛尿膜(CAM)モデルにおいてこれら血管形成経路のうち一方を選択的に遮断するためである。全αVインテグリンを遮断するペプチドアンタゴニストは、FGFおよびVEGFで刺激される血管形成を阻害する。正常なヒトの眼血管はいずれのインテグリンも提示しないが、活発な血管新生眼疾患患者由来の組織では、αVβ3およびαVβ5インテグリンが選択的に血管に提示される。ARMD患者由来の組織にはαVβ3のみが一貫して観察されたが、PDR患者由来の組織にはαVβ3およびαVβ5の両者が存在した。インテグリンのペプチドアンタゴニストの全身投与は、マウスの網膜脈管形成モデルにおいて新血管の形成を遮断した。
多くの異なるタイプのカドヘリンがある。最も詳細に研究されているカドヘリンの群は、古典的またはI型カドヘリンとして知られる。細胞外ドメインカドヘリンリピート内部にカルシウム結合モチーフを含み、HAV CAR配列を含まないカドヘリンは、非古典的カドヘリンであると考えられる。今日までに9群の非古典的カドヘリンが同定されている(II-X型)。これらのカドヘリンは膜糖蛋白である。II型、または非定型カドヘリンは、カドヘリン-11としても知られるOB-カドヘリン(Getsios et al., Developmental Dynamics 211:238-247, (1998));VE-カドヘリンとしても知られるカドヘリン-5(Navarro et al., J. Cell Biology 140:1475-1484(1998));K-カドヘリンとしても知られるカドヘリン-6(Shimoyama et al., Cancer Research 55:2206-2211(1995));カドヘリン-7(Nakagawa et al., Develompent 121:1321-1332(1995);カドヘリン-8(Suzuki et al., Cell Regulation 2:261-270(1991))、Br-カドヘリンとしても知られるカドヘリン-12(Tanihara et al., Cell Adhesion and Communication 2:15-26, (1994));カドヘリン-14(Shibata et al., J. Biological Chemistry 272:5236-5240(1997))、M-カドヘリンとしても知られるカドヘリン-15(Shimoyama et al., J. Bilogical Chemistry 273:10011-10018(1998))、およびPB-カドヘリン(Sugimoto et al., J. Biological Chemistry 271:11548-11556(1996))を包含する。非定型カドヘリンに関する一般的総説については、Redies and Takeichi, Developmental Biology 180:413-423(1996)およびSuzuki et al., Cell Regulation 2:261-270(1991)を参照されたい。
血管形成レセプターのさらなる例には、ニューロピリン(例えば、ニューロピリン-1およびニューロピリン-2)、エンドグリン、PDFGβR、CXCR-4、組織因子(「TF」)、トロンビンレセプター、Gα13、およびEP3がある。T-2はさらにニューロピリン-1および2に結合する事が示唆されており、例えば、国際公開第WO 03/009813号である国際出願第PCT/US02/23868号を参照されたく、これは引用により本明細書の一部とする。したがって本発明は、tRS、またはより好ましくはT2と特異的に相互作用および/または結合できる他の結合相手を同定するための方法を企図する。このような方法は、酵母二ハイブリッド系、ファージディスプレーライブラリー系、スクリーニングペプチドライブラリー、コンピューター画像プログラムなどの使用を含む。
本発明の任意の態様において、抗血管形成物質は、核酸、ポリペプチド、擬似ペプチド、PNA、抗体、抗体フラグメント、血管形成関連分子に結合する小さなまたは大きな有機または無機核酸を包含できる。
生体中で発見されたその他の既知抗血管形成物質は、アンギオアレスチン、アンギオスタチン(プラスミノーゲンフラグメント)、抗血管形成アンチトロンビンIII、軟骨由来インヒビター(CDI)、CD59補体フラグメント、エンドスタチン(コラーゲンXVIIIフラグメント)、フィブロネクチンフラグメント、Gro-β、へパリナーゼ、ヘパリン六糖類フラグメント、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、インターフェロンα/β/γ、インターフェロン誘導性蛋白(IP-10)、インターロイキン-12、クリングル5(プラスミノーゲンフラグメント)、メタロプロテイナーゼインヒビター(TIMP)、2-メトキシエストラジオール、胎盤リボヌクレアーゼインヒビター、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター、血小板因子-4(PF4)、プロラクチン16kDaフラグメント、プロリゲリン関連蛋白(PRP)、レチノイド、テトラヒドロコルチゾール-S、トロンボスポンリン-1(TSP-1)、形質転換増殖因子-β、バスキュロスタチン、バソスタチン(カルレティキュリンフラグメント)を包含するがこれらに限定される訳ではない。
投与
標的細胞への本発明組成物のインビボ投与は、当業者に周知の様々な技術のうち任意のものを用いて達成できる。
例えば、本発明に係る組成物は、当分野で既知の任意の手段により、常套的な薬学上許容し得る担体、アジュバントおよび媒質を含有する投薬単位調合物で、全身的または局所的に投与できる(例えば、経口、眼内、血管内(i.v.)、皮内、筋肉内、経皮、経粘膜、経腸的、非経口的、吸入スプレーにより、直腸、または局所的に)。
本発明の目的のため、「眼科的投与」という語は、眼内注射、網膜下注射、硝子体内注射、眼周囲投与、結膜下注射、眼球後注射、カメラ内注射(前眼房内または硝子体腔内を含む)、テノン嚢下注射またはインプラント、眼科用溶液、眼科用懸濁液、眼軟膏、眼科用インプラントおよび眼科用挿入物、眼内溶液、イオントフォレシスの使用、外科用洗浄溶液への配合、およびパック(例に過ぎないが、円蓋に挿入される飽和綿撒糸)を包含するがこれらに限定されない。
本明細書で使用する非経口的という語は、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、輸液技術または腹腔内注射を包含する。この薬物の直腸投与用坐剤は、適当な非刺激性賦形剤、例えば、常温では固体であるが直腸温度で液体となり、故に直腸内で融解して薬物を放出するカカオ脂およびポリエチレングリコールを、薬物と混合することによって製造できる。
本発明のベクターおよび/または本発明の組成物によって異常または疾病を処置するための投与計画は、疾病の種類、患者の年齢、体重、性別、病状、状態の重篤度、投与経路、および使用する特定化合物を包含する様々な因子に基づく。したがって、投与計画は広範に変わり得るが、標準法を用いて常套的に決定できる。
全身投与のためには、本発明に係るポリペプチド(好ましくは二量体またはホモ二量体)および/または小分子を、好ましくは少なくとも0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、20、30、40、50、75、100、または150mg/kg(体重)の用量で投与する。別の態様では、本発明に係るポリペプチド(好ましくは二量体またはホモ二量体)および/または小分子を、0.1-100mg/kg、より好ましくは0.5-50mg/kg、より好ましくは1-30mg/kg(体重)、またはより好ましくは5-20mg/kgの用量で全身投与する。
局所投与のためには、本発明に係るポリペプチド(好ましくは二量体またはホモ二量体)および/または小分子を、好ましくは少なくとも50μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、600μg、650μg、または700μgの用量で投与する。別の態様では、本発明に係るポリペプチド(好ましくは二量体またはホモ二量体)および/または小分子を、部位あたり50-1000μg、より好ましくは100-800μg 、より好ましくは200-500μg、またはより好ましくは300-400μgの用量で局所投与する。別の態様では、本発明に係るポリペプチド(好ましくは二量体またはホモ二量体)および/または小分子を、部位あたり1000μg、900μg、800μg、700μg、600μg、500μg、400μg、300μg、200μg、100μg、50μg、25μg、10μg、または5μg未満の用量で局所投与する。
例えば、経皮投与のためには、本発明に係るポリペプチド(例えば二量体)および/または擬似ペプチドおよび/または小分子を、50-1000μg/cm2、より好ましくは100-800μg/cm2、またはより好ましくは200-500μg/cm2の用量で投与する。別の例では、眼科的投与のために本発明に係るポリペプチド(例えば二量体)および/または擬似ペプチドおよび/または小分子を、50-1000μg/眼、より好ましくは100-800μg/眼、またはより好ましくは200-500μg/眼の用量で投与する。
この薬用組成物は、好ましくは活性成分(例えばT2)を、有効量、即ち治療的または予防的利益を達成するのに有効な量で含む。特定の適用のために有効な実際の量は、処置される状態および投与経路に依存する。有効量の決定は、特に本明細書の開示に照らして充分に当業者の能力の範囲内にある。
好ましくは、活性成分、例えばT2の有効量は、患者の体重1kgあたり約0.0001mgないし約500mgの活性物質、より好ましくは患者の体重1kgあたり約0.001mgないし約250mgの活性物質、さらに好ましくは患者の体重1kgあたり約0.01mgないし約100mgの活性物質、さらに好ましくは患者の体重1kgあたり約0.5mgないし約50mgの活性物質、そして最も好ましくは患者の体重1kgあたり約1mgないし約15mgの活性物質である。
重量パーセントに関して、本発明に係る製剤は好ましくは活性成分、例えばT2-TrpRSを約0.0001ないし約10wt%、より好ましくは約0.001ないし約1wt%、より好ましくは約0.05ないし約1wt%、またはより好ましくは約0.1wtないし約0.5wt%の量で含む。幾つかの眼科製剤においては、本発明に係る組成物を、0.01-1000mg/mL、0.1-100mg/mL、1-10mg/mL、2-10mg/mL、2-9mg/mL、3-9mg/mL、4-8mg/mL、5-8mg/mL、5-7mg/mLまたは6-7mg/mLの間で調合する。全身用製剤のためには、本発明に係る組成物を0.001-100mg/mL、0.01-10mg/mL、0.1-10mg/mL、2-10mg/mL、2-9mg/mL、3-9mg/mL、4-8mg/mL、5-8mg/mL、5-7mg/mL、または6-7mg/mLで調合できる。
スクリーニング/診断
本発明に係る任意の態様において、細胞または組織を血管形成により仲介される状態(例えば、抗血管形成状態または血管形成状態)についてスクリーニングすることができる。これは当分野で既知の任意の技術により達成できる。例えば、タグ付きプローブ、WO2004/011900に記載のタグ付きプローブ(これは引用により本明細書の一部とする)を使用して、試料中の血管形成抑制および/または血管形成tRNAシンセターゼフラグメントを同定および/または定量できる。一般に、このようなタグ付きプローブは、tRNAシンセターゼフラグメント(例えばミニTrp-RS、T1、またはT2)に特異的な結合部分、検出可能なリポーター(例えば蛍光基)、および所望により運動性調節物質を含む。運動性調節物質および検出可能なリポーターは、開裂可能なリンカーによって結合部分に連結している。結合部分は、例えば本明細書に開示するtRNAシンセターゼフラグメントに特異的な抗体(例えば、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体から選ばれるポリペプチド)であってよい。
標的物質に結合後、開裂可能なタグは開裂し、その運動性に従って分離する。1以上のタグ付きプローブを同時に使用して、細胞/組織/生物の血管形成状態を決定することができる。
幾つかの態様では、処置の前または後に、血管形成に関連する1またはそれ以上の状態(血管形成により仲介される状態)について患者を診断またはスクリーニングすることができる。例えば、肥満、心血管疾患、再狭窄、癌、慢性炎症、再潅流後の組織損傷、神経変性、関節リウマチ、クローン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病、子宮内膜症、乾癬、創傷治癒不全、および眼の血管新生より成る群から選ばれる状態について、個体をスクリーニングできる。患者がこのような状態にある、またはこのような状態に陥り易いと診断されたならば、本発明に係る組成物の治療有効量をその患者に投与できる。同様に、治療的処置が成された後にさらなる処置が必要であるかどうかを判断するために患者を監視することができる。
状態について患者を診断またはスクリーニングする方法は当分野で既知であり、そのような状態に対する抵抗性または感受性に関連する一塩基多型(SNP)またはアレレの検出を包含する。好ましい態様では、このような診断はマイクロアレー装置を用いて行う。眼の血管新生状態(またはその感受性)にある個体を検出/診断するのに使用できるSNPの例は米国特許第6713300号に開示されており、引用によりこれを本明細書の一部とする。血管形成により仲介される状態に関連するさらなるSNPは、NCBIによりhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov において維持されているdbSNPデータベースで特定できる。
ビジネス方法
本明細書に記載の発明はさらに、血管形成状態に陥っているまたは陥り易い個体を処置するための治療および/または診断を提供することによるビジネス方法を企図している。幾つかの態様では、本発明に係るビジネス方法は、tRNAシンセターゼフラグメントのレセプターを調節するまたはそれに結合する物質を探索し、係る物質を商品化することを企図する。tRNAシンセターゼフラグメントは好ましくはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントである。本発明に係るトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは哺乳動物、またはより好ましくはヒトのものである。ヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、その相同体および類似体を含む、または本質上それらで構成されている、またはそれらで構成されているポリペプチドを包含する。好ましくは本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントは血管形成抑制性である。幾つかの態様では、tRNAシンセターゼフラグメントのレセプターを調節またはそれに結合する物質を探索する工程は、tRNAシンセターゼフラグメントの擬似ペプチドを作成するコンピュータープログラムの使用を含む。幾つかの態様では、この探索工程は、候補物質のライブラリーをスクリーニングして、該レセプターを調節するまたはそれに結合する物質を特定することを含む。候補物質をスクリーニングするための様々な形態のライブラリーが利用できる。このようなライブラリーには、ペプチドライブラリー、および小分子ライブラリー、ならびに本明細書に開示されるまたは当分野で既知のその他のライブラリーがある。
本発明はさらに、二量体化能力を増強させるためにtRNAシンセターゼフラグメントを修飾し、増強されたフラグメントまたはその二量体型を商品化する工程を含む。やはり、tRNAシンセターゼフラグメントはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、より好ましくは配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、その相同体および類似体を含む、または本質上それらで構成されている、またはそれらで構成されているポリペプチドであるフラグメントであってよい。幾つかの態様では、このようなビジネス方法は、本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントを最適化するためのコンピュータープログラムの使用を企図する。リガンドの最適化に使用できるコンピュータープログラムの例は、GRID、MCSS、AUTODOCK、DOCK、AMBER、QUANTA、およびINSIGHT IIを包含するがこれらに限定される訳ではない。別の態様では、本発明に係るビジネス方法は、1またはそれ以上の非天然システインを含むよう修飾されたtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている発現ベクターを作成することを企図する。好ましくはこのような修飾は、該フラグメントの二量体化ドメインで起こる。別の態様では、本発明に係るビジネス方法は、2個のtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている発現ベクターを作成することを企図する。このようなベクターはさらに、好ましくは2個のフラグメントの間に位置するリンカーをもコードしている。
本発明に係るビジネス方法はさらに、血管形成を調節するtRNAシンセターゼのフラグメントを商品化することを企図する。幾つかの態様では、このようなフラグメントは血管形成を阻害できる(例えば、tRNAシンセターゼの血管形成抑制フラグメント)。別の態様では、このようなフラグメントは血管形成を亢進する(例えば、tRNAシンセターゼの血管形成抑制フラグメントのインヒビター)。好ましくは本発明に係るビジネス方法は、血管形成を調節するために使用できる組成物を商品化することを企図する。このような組成物は本発明により記載される任意の組成物であってよい。好ましくはこのような組成物は、N末端にメチオニンを有する第一のtRNAシンセターゼフラグメント、およびN末端にメチオニンを持たない第二のtRNAシンセターゼフラグメントを含む。このメチオニンは天然に存在するものであっても天然に存在しないものであってもよい。N末端にメチオニンを有する第一tRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号15-17、27-29、39-41、51-53、およびその任意の相同体、類似体、またはフラグメントを包含するがこれらに限定される訳ではない。N末端にメチオニンを持たない第二tRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号12-14、24-26、36-38、48-50、およびその任意の相同体、類似体、またはフラグメントを包含するがこれらに限定される訳ではない。幾つかの態様では、本発明に係る組成物は、N末端にメチオニンを有するtRNAシンセターゼフラグメントを約50%(重量)、そしてN末端にメチオニンを持たないtRNAシンセターゼフラグメントを約50%(重量)含む。好ましくはこのような組成物は単離されそして/または精製されている。このようなtRNAシンセターゼは適当な条件下で二量体を形成する。
或る態様では、本発明は、tRNAシンセターゼフラグメントをコードしている発現ベクターを発現させ、血管形成を調節するためにそのフラグメントを商品化する工程を包含するビジネス方法に関するものである。本発明に係るtRNAシンセターゼフラグメントは例えば、トリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトtRNAシンセターゼフラグメント、またはtRNAシンセターゼの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。このようなフラグメントの例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体を包含するがこれらに限定される訳ではない。
幾つかの態様では、商品化されるフラグメントはマルチユニット複合体の一部である。本発明に係るマルチユニット複合体は、共有結合により結合した、または非共有結合的に関連している2またはそれ以上の単量体を含み得る。
幾つかの態様では、発現ベクターは第二tRNAシンセターゼフラグメントをもコードしている。第一tRNAシンセターゼフラグメントおよび第二tRNAシンセターゼフラグメントは、異なっているか、相同的であるか、実質上相同的であるか、または同一であってよい。さらに、幾つかの態様では、第一tRNAシンセターゼフラグメントおよび第二tRNAシンセターゼフラグメントは少なくとも1個の天然に存在しないシステインを含むよう修飾されている。このような天然に存在しないシステインは好ましくはそのtRNAシンセターゼフラグメントの二量体化ドメインに位置する。
2またはそれ以上のtRNAシンセターゼフラグメントをコードしている発現ベクターは、縦列に並んだ2またはそれ以上のフラグメントを有し得る。幾つかの態様では、この発現ベクターはリンカーをもコードしている。リンカーをコードしているポリヌクレオチド配列は、第一tRNAシンセターゼフラグメントをコードしている配列と第二tRNAシンセターゼフラグメントをコードしている配列の間に位置することができる。本発明に係るリンカーは、好ましくはこの第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントが自由に回転且つ二量体化できるほど充分に長い。
本発明に係るフラグメントおよびマルチユニット複合体は、本明細書に開示する発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクトし、その宿主細胞を1またはそれ以上のtRNAシンセターゼフラグメントの発現をさせる条件下に維持することによって製造できる。
本発明に係るビジネス方法はさらに、血管形成により仲介される状態(例えば、血管形成抑制または血管形成状態)を検出する診断法を商品化することを企図する。
例えば、独立した、または本明細書に開示する血管形成抑制組成物(例えば、tRNAシンセターゼの血管形成抑制フラグメント、より好ましくはトリプトファニルtRNAシンセターゼ、またはより好ましくはミニtrpRS、T1および/またはT2の血管形成抑制フラグメント)と組み合わせた、血管形成状態、例えば眼の血管新生状態またはAMDを検出するための診断法が商品化できる。眼の血管新生状態の検出に使用できる遺伝子変異および診断法の例は、米国特許第6713300号に開示されるものを包含し、これは引用により本明細書の一部とする。
別の例において、独立した、または本明細書に開示する血管形成組成物(例えば、tRNAシンセターゼ、例えばトリプトファニルtRNAシンセターゼ、例えばミニtrpRS、T1および/またはT2の血管形成抑制フラグメントのインヒビター)と組み合わせた、抗血管形成状態、例えば心血管疾患を検出するための診断法が商品化できる。
幾つかの態様では、患者または生物において本発明に係る組成物(例えば、ミニTrpRS、T1、またはT2)の量を測定するための診断法を使用する。このようなデータは薬物動態学的または薬力学的研究に利用できる。本発明に係る組成物の検出は、ELISA、HPLCのような方法、および/または本明細書に記載の任意の抗体を使用して実施できる。その後、患者または生物中の組成物の量またはレベルを用いて、さらなる処置を行うべきかどうかを決定できる。
本発明に係る任意の態様において、本発明に係る組成物および/または診断法を商品化するために第三者パートナーと提携する工程がさらに企図される。パートナーの例は、バイオテクノロジーパートナー、薬学的パートナー、消費財パートナー、農産物パートナー、科学的パートナー、政府パートナーなどを包含できる。
幾つかの態様では、パートナーは、例えば本発明に係る組成物の類似体を発見する、本発明に係る組成物のレセプターを発見する、該組成物を最適化する、本発明に係る組成物についての治験を実施する、本発明に係る組成物のインヒビターを開発する、等のための資金または研究能力を提供できる。
キット
本発明はさらに、本発明に係る1またはそれ以上の組成物を満たした1またはそれ以上の容器を含むキットを提供する。このキットは、係る組成物の使用方法(例えば、血管形成を調節するための、または血管形成状態に陥っている患者を処置するための)についての書面による説明書を含むことができる。
或る態様においてこのキットは容器を含み、その容器は本発明に係る1またはそれ以上の組成物を含む。容器内にあってよい組成物の例は、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53ならびにその任意の相同体および類似体を含む、または本質的にそれらで構成される、またはそれらで構成されるアミノ酸配列を有する単離されたtRNAシンセターゼフラグメントを含む組成物を包含する。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントはHisタグを含まない。さらに、tRNAシンセターゼフラグメントが配列番号12、15、24、27、36、39、48、51、またはその任意の相同体もしくは類似体を含む、または本質的にそれらで構成される、またはそれらで構成される場合、そのようなtRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは45kD未満、より好ましくは44kD、43.9kD、43.8kD、43.7kD、43.6kD未満、またはより好ましくは43.5kD未満である。tRNAシンセターゼフラグメントが配列番号13、16、25、28、37、40、49、52、またはそれらの任意の相同体および類似体を含む、または本質的にそれらで構成される、またはそれらで構成される場合、そのようなtRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは48kD未満、より好ましくは47kD未満、またはより好ましくは46kD未満である。tRNAシンセターゼフラグメントが配列番号14、17、26、29、38、41、50、53、またはそれらの任意の相同体もしくは類似体を含む、または本質的にそれらで構成される、またはそれらで構成される場合、そのようなtRNAシンセターゼフラグメントは好ましくは53kD未満、より好ましくは52kD未満、より好ましくは51kD未満、より好ましくは50kD未満、またはより好ましくは49kD未満である。好ましくは容器内のtRNAシンセターゼフラグメントは精製されている。
幾つかの態様では、本発明に係るキットは、マルチユニット複合体を含む容器を含み、ここでこのマルチユニット複合体の少なくとも1ユニットはtRNAシンセターゼフラグメントまたはその相同体もしくは類似体を含む。マルチユニット複合体は例えば2ユニットを有する二量体であってよい。マルチユニット複合体の単量体は、互いに異なっているか、相同的であるか、実質上相同的であるか、または同一であってよい。幾つかの態様では、マルチユニット複合体は2個の相同的な単量体を有する二量体である。
幾つかの態様では、本発明に係るキットは、第一のtRNAシンセターゼフラグメントおよび第二のtRNAシンセターゼフラグメントを含む容器を包含し、ここで第一tRNAシンセターゼフラグメントはN末端にメチオニンを持つ。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメントである。より好ましくは、第一tRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号15-17、27-29、39-41、51-53、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質的にそれらで構成される、またはそれらで構成されるアミノ酸配列を有する。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントはHisタグを含まない。
第二tRNAシンセターゼフラグメントは、N末端にメチオニンを持っていても持っていなくてもよい。N末端にメチオニンを持たないtRNAシンセターゼフラグメントの例は、配列番号12-14、24-26、36-38、48-50、またはその任意の相同体、類似体、もしくはフラグメントを含む、または本質的にそれらで構成される、またはそれらで構成されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを包含する。好ましくはこのようなtRNAシンセターゼフラグメントはHisタグを含まない。
幾つかの態様では、第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントはこの組成物の約50%(重量)である。別の第一および第二tRNAシンセターゼフラグメントの比率もまた使用できる。
本発明に係る任意の態様において、tRNAシンセターゼフラグメントはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトトリプトファニルtRNAシンセターゼ、および/またはtRNAシンセターゼフラグメントの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。このようなフラグメントはさらに、共有結合によりまたは非共有結合的に連結したマルチユニット複合体を形成することができる。
第一の容器内の組成物は全身投与または局所投与用にパッケージングされていてよい。好ましくはこの組成物は一回投与用量をパッケージングされている。一回投与用量をパッケージングする場合、用量は50-1000μg/用量の範囲とすることができる。
本発明に係るキットはさらに第二の治療物質を含むことができる。このような第二治療物質は第二の容器に入れる。第二治療物質の例は、抗新生物物質、抗炎症物質、抗菌物質、抗ウイルス物質、血管形成物質、および抗血管形成物質を包含するがこれらに限定される訳ではない。好ましい態様では、第二治療物質は抗血管形成物質である。
本発明に係る任意のキットにおいて、tRNAシンセターゼフラグメントを含む組成物は7.1、7.2、7.3、7.4、または7.5より大きな実験的pIを有し得る。
幾つかの態様では、本発明に係るキットは、tRNAシンセターゼフラグメントのエピトープに特異結合する抗体を含む容器、およびその使用のための書面による説明書を包含する。このような例では、tRNAシンセターゼフラグメントはトリプトファニルtRNAシンセターゼフラグメント、ヒトtRNAシンセターゼフラグメント、および/またはtRNAシンセターゼの任意の血管形成抑制フラグメントであってよい。幾つかの態様では、血管形成抑制tRNAシンセターゼフラグメントは、配列番号12-17、24-29、36-41、48-53、ならびにその任意の相同体および類似体より成る群から選ばれるものである。
本発明に係るキットはさらに、1またはそれ以上の注射筒またはその他のデリバリー器具(例えば、ステント、移植可能なデポ等)を含み得る。このキットはさらに、その使用のための、書面による一組の説明書を含み得る。
実施例
実施例1
内毒素を含まない組換えTrpRSの製造
内毒素を含まない組換えヒトTrpRS(GDおよびSY変異体)を以下のように製造した:全長TrpRS(配列番号1のアミノ酸残基1-471およびそのSY変異体)または、本質上、全長TrpRSの残基94-471より成る末端切除TrpRS(以後T2(配列番号12(GD変異体)または配列番号24(SY変異体))と称する)、および、本質上、全長TrpRSの残基71-471より成る第二の末端切除TrpRSフラグメント(以後T1(配列番号13(GD変異体)または配列番号25(SY変異体))と称する)をコードしているプラスミドを作製した。各プラスミドは、6個のヒスチジン残基で構成されるC末端タグ(例えば配列番号1のアミノ酸残基472-482)および最初のメチオニン残基をもコードしている。His6タグを有するT1(配列番号13および25)は配列番号5(またはそのSY変異体)のアミノ酸配列を有し、一方His6タグを有するT2は配列番号7(またはそのSY変異体)のアミノ酸配列を有する。
T2のSYおよびGD変異体を含む上記のプラスミドをE. coli菌株BL21(DE3)(Novagen, Madison, Wis.)に導入した。6個のヒスチジン残基より成るC末端タグをもコードしているヒト成熟EMAPIIを、使用するため同様に作製した。この細胞をイソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシドで4時間処理することにより、組換えTrpRSの過剰発現を誘導した。次に細胞を溶解し、上清由来の蛋白を、HIS-BIND(登録商標)ニッケルアフィニティカラム(Novagen(登録商標))上で製造者の推奨プロトコルに従って精製した。精製後、TrpRS蛋白を、1μM ZnSO4を含有する燐酸緩衝化生理食塩水(PBS)と共にインキュベートし、その後遊離のZn2+を除去した(Kisselev et al., Eur. J. Biochem. 120:511-17(1981))。
Triton X-114を用いる相分離によって蛋白試料から内毒素を除去した(Liu et al., Clin. Biochem. 30:455-63(1997))。E-TOXATE(登録商標)ゲル-クロット検定(Sigma, St. Louis, Mo.)を使用して、蛋白試料が1mLあたり0.01単位未満の内毒素を含有することを決定した。蛋白濃度は、牛血清アルブミン(BSA)を標準とするブラッドフォード検定(Bio-Rad, Hercules, Calif.)によって決定した。
実施例2
PMNエラスターゼによるヒトTrpRSの開裂
PMNエラスターゼによるヒト全長TrpRSの開裂を調べた。TrpRSをPBS(pH7.4)中、1:3000のプロテアーゼ:蛋白比のPMNエラスターゼで0、15、30、または60分間処理した。開裂の後、試料を12.5% SDS-ポリアクリルアミドゲル上で分析した。約53kDaの全長TrpRSの、PMNエラスターゼ開裂は、約46kDaの主たるフラグメント(配列番号5、C末端ヒスチジンタグを有するT1、またはそのSY変異体)および約43.5kDaの少量のフラグメント(配列番号7、C末端ヒスチジンタグを有するT2またはそのSY変異体)を生成した。特にPMNエラスターゼによる全長TrpRS(SYフラグメント)の開裂は、約46kDaの主たるフラグメント(配列番号25)および約43.5kDaの少量のフラグメント(配列番号24)を生成した。
組換えTrpRS蛋白の、カルボキシ末端His6タグに対する抗体を用いたウェスタンブロットは、GDまたはSY変異体に対しておよそ46kDaおよび43.5kDaの位置に現れた両フラグメントが、それらのカルボキシ末端にHis6タグを有することを示した。したがって、二つのTrpRSフラグメントのアミノ末端のみが切除されている。TrpRSフラグメントのアミノ末端配列を、ABIモデル494シークエンサーを用いてエドマン分解により決定した。これらのフラグメントの配列決定は、N末端配列が、T1ではS-N-H-G-PでありT2ではS-A-K-G-Iであることを示したが、この事は、主たるおよび少量のTrpRSフラグメントのアミノ末端残基が、各々全長TrpRSの71位および94位に位置することを示している。GD変異体についてのこれらヒトTrpRS構築物を図1にまとめる。
主たるおよび少量のTrpRSフラグメントの血管形成抑制活性を血管形成検定で分析した。それぞれC末端ヒスチジンタグ(配列番号1のアミノ酸残基472-482)を有する主たるおよび少量のTrpRSフラグメント配列番号5および7(およびそれらのSY変異体)の組換え型をこれらの検定で使用した。T2-TrpRSフラグメントのGDおよびSY変異体はいずれも血管形成を阻害することができた。
実施例3
Trp-RSの末端切除フラグメントは網膜の血管形成に対して強力な血管形成抑制効果を示す
全長トリプトファニルtRNAシンセターゼから誘導した末端切除型の血管形成抑制活性を、出生後マウスの網膜血管形成モデルで調べた。Friedlander et al.(Abstracts 709-B84 and 714-B89, IOVS 41(4):138-139(Mar. 15, 2000))は、このマウスにおいて出生後網膜の血管形成が段階的に進行することを報告した。本発明は、この段階的網膜血管形成を利用して血管形成の阻害を検定する方法を提供する。
内毒素を含まない組換えミニTrpRSおよびT2(例えば配列番号12および24)を組換え蛋白として製造した。これらの蛋白を、生後(P)7または8日の出生後Balb/Cマウスに硝子体内注射し、P12またはP13に網膜を収穫した。コラーゲンIV抗体およびフルオレセインコンジュゲートした二次抗体を用いて、網膜全載標本中の血管を視覚化した。注射された蛋白が深部、外部、血管叢の形成に及ぼす効果に基づき、共焦点顕微鏡検査によって抗血管形成活性を評価した。硝子体内注射および網膜単離は解剖顕微鏡(SMZ 645, Nikon, Japan)を用いて実施した。生後7日(P7)のマウスに薄い刃で眼瞼裂溝を作製し、T2(5pmol)またはTrpRS(5pmol)の注射のために眼球を露出させた。試料(0.5μL)は32ゲージ針を付けた注射筒(Hamilton Company, Reno, Nev.)で注射した。注射は赤道および角膜輪部の間に行い、注射の間、針先端が硝子体腔にあることを判定するため、直接視覚化することによりこれを監視した。針が誘発した水晶体または網膜の損傷がある眼は、この研究から除外した。注射後、眼瞼を元の位置に戻し、裂溝を閉鎖した。
生後12日目(P12)に動物を安楽死させ、眼を摘出した。4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で10分後、角膜、水晶体、強膜、および硝子体を輪部切開により切り取った。単離した網膜を、氷上でメタノールに10分間浸漬し、その後50%牛胎児血清(Gibco, Grand Island, N.Y.)中、PBS中の20%正常ヤギ血清(The Jackson Laboratory, Bar Harbor, Me.)でブロックすることにより、染色用に準備した。網膜を、ブロッキング緩衝液で1:200に希釈したウサギ抗マウスコラーゲンIV抗体(Chemicon, Temecula, Calif.)で4℃で18時間染色することにより、血管を特異的に視覚化した。ALEXA FLUOR(登録商標) 594-コンジュゲートしたヤギ抗ウサギIgG抗体(Molecular Probes, Eugene, Oregon - ブロッキング緩衝液中1:200希釈)をこの網膜と共に4℃で2時間インキュベートした。この網膜をスローフェイド・マウンティング・メディアM(Molecular Probes, Eugene, Oregon)を用いて顕微鏡標本とした。
P8およびP12の間に形成された深部、外部網膜血管層(二次層)の血管形成程度に基づいて血管形成抑制活性を評価した。内部血管網(一次層)の外観を正常な発生および毒性徴候について評価した。この実施例で使用された蛋白構築物のいかなるものも、一次層に有害作用をもたらさなかった。
図2は、マウス網膜の二次深部血管網の血管新生を阻害するT2の能力を示す顕微鏡写真である。図2において、A列はTrpRSに暴露された網膜の血管網を示し、B列はミニTrpRSに暴露された網膜の血管網を示し、そしてC列は本発明に係るポリペプチドT2に暴露された網膜の血管網を示す。第一(左)の欄は浅在性一次血管網を示し、第二の欄は深部二次血管網を示す。図2から明らかなように、浅在性一次血管網にはどのポリペプチドも影響を及ぼさなかったが、T2のみが深部二次血管網の脈管形成を著明に阻害した。
PBSで処置された殆どの眼は正常な網膜血管の発達を示したが、処置された眼の約8.2%(n=73)に外部血管層の完全な阻害が観察された。外部血管網の完全な阻害が、ミニTrpRS(0.5mg/mL)で処置された眼(n=75)の28%に観察された。より小さい末端切除型(T2)は、遙かに強力な血管形成の用量依存的インヒビターであった;0.1mg/mLのT2による処置後に14.3%が完全に阻害され(n=14)、0.25mg/mLによる処置後に40%(n=20)、そして0.5mg/mLでは69.8%(n=53)が阻害された。0.5mg/mL処置についてのデータをグラフによって図3に示す。ヒトTrpRSの末端切除型、特にT2(例えば配列番号12、24、36、および48)は、網膜の血管発達に強力な血管形成抑制効果を有する。
実施例4
マトリゲル血管形成検定
Brooks et al. Methods Mol. Biol., 129:257-269(1999)およびEliceiri et al. Mol. Cell, 4:915-924(1999)に記載の方法に従い、マウスマトリゲル血管形成検定を使用してT2(配列番号7またはそのSY変異体)の血管形成抑制活性を調べた。これは記載に従い以下の改変を施して実施した。胸腺欠損WEHIマウスにVEGF 20nMを含有する増殖因子涸渇マトリゲル400μL(Becton Dickinson, Franklin Lakes, N.J.)を皮下移植した。マトリゲル栓子に2.5μMのT2を含有させることにより、T2の血管形成抑制活性を最初に試験した。この力価は、栓子に種々の濃度のT2を含有させることにより力価を決定した。5日目に、フルオレセイン標識した内皮細胞結合レクチンGriffonia(Bandeiraea) Simplicifolia I、イソレクチンB4(Vector Laboratories, Burlingame, Calif.)をこのマウスに静脈注射し、マトリゲル栓子を摘出した。栓子をRIPA緩衝液(10mM燐酸ナトリウム、pH7.4、150mM塩化ナトリウム、1% Nonidet P-40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)中で粉砕した後、各栓子のフルオレセイン含有量を分光光度分析によって定量した。実施例4のデータを図4に示す。
実施例5
網膜内部のT2結合の局在
網膜に注射されたT2の取り込みおよび局在を評価するため、生後7日目(P7)の眼の硝子体中にALEXA(登録商標) 488標識した(Molecular Probes, Inc., Eugene, Oregon)T2-TrpRSを注射した。P8およびP12に眼球を収穫し、4% PFAで15分間固定した。この網膜をさらに切開して、付着している非網膜組織を取り除き、4℃で一夜4% PFAに入れ、その後ドライアイス上で媒質(TISSUE-TEK(登録商標) O.C.T., Sakura Fine Technical Co., Japan)中に包埋した。クライオスタット切片(10ミクロン)をPBSで再度水分補給し、PBS中の5% BSA、2%正常ヤギ血清でブロックした。抗マウスコラーゲンIV抗体で上記のように血管を視覚化した。DAPI核染色を含有するVECTASHIELD(登録商標)(Vector Laboratories, Burlingame, Calif.)を用いてこの組織をスライドガラスで標本とした。
或いは、染色していない網膜切片を、ブロッキング緩衝液中の、ALEXA(登録商標) 488標識した全長TrpRSまたはALEXA(登録商標) 488標識したT2 200nMと共に4℃で一夜インキュベートした。切片をそれぞれPBS中で5分間、6回洗浄し、その後、核を視覚化するためにDAPI 1μg/mLと共に5分間インキュベートした。1μMの非標識化T2を4℃で8時間インキュベートし、その後ALEXA(登録商標) 488標識したT2と共にインキュベートすることにより、非標識化T2によるプレブロッキングを行った。網膜を多光子BioRad MRC1024共焦点顕微鏡で調べた。Confocal Assistantソフトウェア(BioRad, Hercules, Calif.)を使用して、一組のZシリーズ画像から三次元血管像を作製した。
マウスマトリゲル栓子検定におけるT2の血管形成抑制力価
T2フラグメント(配列番号7およびそのSY変異体)を調べて、これらがアミノアシル化活性を喪失しても血管形成抑制活性を有するかどうかを決定した。マウスマトリゲル検定を利用してT2の血管形成抑制活性をインビボで調べた。VEGF165はマウスマトリゲル栓子中に血管の発生を誘導する。マトリゲルにVEGF165と共にT2を加えた場合、図4に示すように、血管形成は1.7nMのIC50で用量依存的に遮断された。
ALEXA(登録商標)488標識したT2は網膜血管に局在する。T2の眼内局在を視覚化するため、本発明者等は、生後7日目に硝子体内注射した後のALEXA(登録商標) 488標識したT2の分布を調べた。網膜を翌日単離し、切片作製し共焦点顕微鏡で調べた。注射された蛋白の分布は血管に限定されていた。この局在は、標識化T2処置眼を、ウサギ抗マウスコラーゲンIV抗体(データは示していない)および二次的にALEXA FLUOR(登録商標) 594標識したヤギ抗ウサギIgG抗体で同時染色することにより確認された。ALEXA FLUOR(登録商標)488標識したT2注射の5日後(P12)、依然として標識化T2の緑色蛍光が見えた(図5A)。これらの網膜ではP12では二次血管層は観察されず、この事は、ALEXA FLUOR(登録商標) 488標識したT2が、非標識化T2に匹敵する血管形成抑制活性を保持していたことを示している。ALEXA FLUOR(登録商標) 488標識した全長TrpRSをP7に注射した網膜は、P12までに二次血管層を発生させたが血管の染色は観察されなかった(図5B)。図5では、ALEXA FLUOR(登録商標) 488標識した蛋白は緑色、ALEXA FLUOR(登録商標) 594標識したコラーゲン含有血管は赤色、そして核は青色である。
標識化T2の結合性をさらに評価するため、正常な新生仔網膜の横断切片をALEXA FLUOR(登録商標) 488標識したT2で染色した。これらの条件下でALEXA FLUOR(登録商標) 488標識したT2のみが血管に結合した(図5C)。非標識化T2と共にプレインキュベートすることによりブロックされる(データは示されていない)ことから、この結合は特異的であった。ALEXA FLUOR(登録商標) 488標識した全長TrpRSを網膜に適用した場合、網膜血管の染色は観察されず(図5D)、この事は、全長酵素に血管形成抑制活性がないことと矛盾しない。
図5に示すように、ALEXA FLUOR(登録商標) 488標識したT2は血管形成抑制性であり、網膜血管に局在する。ALEXA FLUOR(登録商標) 488標識したT2(図5A)または全長TrpRS(図5B)を生後7日目(P7)に注射した(0.5μL。硝子体内)。網膜をP8に収穫し、抗コラーゲンIV抗体およびDAPI核染色で染色し、標識化T2(図5A中、血管を指し示す上部の矢印)が浅在性一次血管叢の血管に局在した(1°)。深部二次血管叢は全く存在しないことに留意されたい(2°)。ALEXA FLUOR(登録商標) 488標識した全長TrpRSを注射した眼には一次(1°)および二次(2°)血管層がいずれも存在する(図5B中の矢印)が、標識化は観察されない。
別の研究では、P15網膜の凍結切片をALEXA FLUOR(登録商標) 488標識したT2(図5C)またはALEXA FLUOR(登録商標) 488標識した全長TrpRS(図5D)で染色し、共焦点走査レーザー顕微鏡で画像化した。標識化したT2は血管に選択的に局在し、表示「2°」の直下で一次および二次網膜血管層を貫通する鮮緑色の血管として現れる。蛍光標識した全長TrpRSには染色は観察されなかった(図5D)。
全長TrpRSはユニークなNH2末端ドメインを含み、血管形成抑制活性を欠失する。このドメインを一部または全て除去すると、血管形成抑制活性を有する蛋白が生成する。オルターナティブスプライシングまたは蛋白分解によって除去され得るこのNH2末端ドメインは、ことによると全長TrpRSではアクセスできない血管形成抑制に必要な結合部位を表出させることによってTrpRSの血管形成抑制活性を調節するのかも知れない。
VEGFにより誘導されるマウスマトリゲルモデルの血管形成は、新生仔網膜における生理的血管形成と同様T2により完全に阻害された。興味深いことに、インビトロならびにCAMおよびマトリゲルにおけるTrpRSフラグメントの最も強力な抗血管形成効果は、VEGFで刺激された血管形成において観察される。マウス新生仔の網膜血管形成結果は、VEGF刺激された血管形成およびTrpRSフラグメントの血管形成抑制効果のつながりとの整合性があり、この系の網膜血管形成はVEGFによって促進され得る。さらに、網膜モデルで観察されるこの阻害は、新たに発生した血管に特異的なものであり、既存の(注射の時点で)一次血管層の血管はこの処置によって変化を受けなかった。T2の血管形成抑制活性のメカニズムはわかっていないが、網膜内皮血管系に対するT2の特異的局在および新たに発生しつつある血管に及ぼすT2の選択的効果は、T2が、増殖または移動しつつある細胞上で発現される内皮細胞レセプターを介して機能するのかも知れない事を示唆している。T2の血管形成抑制活性のメカニズムへのさらなる理解には、作用メカニズムのより詳細な特定が必要である。
インターフェロンγ刺激時に血管形成抑制性ミニTrpRSを産生する様々な細胞型は、IP-10およびMIGといった血管形成抑制因子をも産生する。したがってこれらの結果は、正常な生理的に適切な血管形成経路におけるTrpRSの役割の可能性を浮上させる。もう一つの遍在する細胞蛋白プロEMAPII(p43)は、本明細書でTrpRSに関して報告したものと同様の、二つの見かけ上無関係の役割を持っている。プロEMAPIIは、哺乳動物のアミノアシルtRNAシンセターゼのマルチシンセターゼ複合体と関係することにより、蛋白翻訳を支援する。これはプロセシングされてEMAPIIとして分泌され、肺の発生中の血管形成抑制仲介物質としてのEMAPIIの役割が示唆されている。
このようにT2は、正常なまたは病的条件下で観察される生理的に適切な血管形成リモデリングで利用され得る。正常な血管形成において、T2は、幾つかの臓器に存在する生理的に重要な無血管野、例えば網膜中央の中心窩の無血管野の樹立を助けることができる。全長TrpRSの開裂が阻害されると病的血管形成が起こり、血管の過剰増殖が導かれる。
眼科疾患では、血管新生が悲惨な視力喪失を招き得る。このような患者は、治療による血管形成阻害から多大な利益を受ける可能性がある。血管内皮増殖因子は網膜の血管新生および黄斑浮腫に関わっているが、網膜の血管形成には他の血管形成刺激も役割を担っていると考えられる。本発明者等は、VEGF刺激された血管形成とTrpRSフラグメントの強力な血管形成抑制活性の間の関連に気づいたが、この関連性は、これらの分子を、低酸素性およびその他の増殖性網膜症の処置に有用とする。本発明に係るT2のように(図5)、血管形成を完全に阻害する抗血管形成物質に関する文献報告はなされていない。TrpRSのもう一つの利点は、これらが天然に存在し、故に潜在的に非免疫原性の抗血管形成物質であることである。したがってこれらの分子は、標的化細胞またはウイルスベクターに基づく治療によってデリバリーできる。血管新生眼疾患を持つ多くの患者は、関連する全身性虚血疾患を有するため、眼内に直接入れる遺伝子組み換えされた細胞またはウイルスベクターによる局所抗血管形成治療が望ましい。
血管形成網膜症の処置に加えて、本発明に係るTrpRSフラグメント、特にT2-TrpRSおよびその血管形成阻害フラグメントは、腫瘍の血管新生を防止することによって固形腫瘍の成長を潜在的に阻害する。本発明に係るTrpRSフラグメントはVEGF-誘導性増殖および内皮細胞の走化性をインビトロで遮断し、したがって、望ましくない内皮細胞増殖および血管新生を含む病理の処置に有用である。
実施例6
下の表6はtRNAシンセターゼフラグメントの様々なベクター構築物をまとめたものである。
表6に特定したベクターは以下の方法で作製した:
プラスミドpAS-001。T2-TrpRSフラグメントを、TrpRSの全長クローン(Invitrogen、クローン3542671)を鋳型に用いてPCR増幅した。PCR用オリゴヌクレオチドはT2-TrpRS配列に基づいており、5’-Ndel部位および3’-HindIII部位(太字イタリック)を含んでいた。
増幅後、精製したPCRフラグメントをNdelおよびHindIIIで開裂し、次いでプラスミドpET24b+(Novagen)のこれらと同じ制限消化された部位にクローニングした。得られたプラスミドはT2-TrpRS配列を含み、その直後に停止コドンを持っていた。故にHisタグ配列はT2-TrpRS遺伝子配列と融合しなかった。
プラスミドpAS-002。T2-TrpRSフラグメントを、全長TrpRSクローン(Invitrogen、クローン3542671)を鋳型に用いてPCRにより増幅した。PCR用オリゴヌクレオチドは5’-Ndel部位および3’-HindIII部位(太字イタリック)を含んでいた。
増幅後、精製したPCRフラグメントをNdelおよびHindIIIで開裂し、次いでプラスミドpET20b+(Novagen)のこれらと同じ制限消化された部位にクローニングした。得られたプラスミドは、pET20b+ベクターに存在するカルボキシ末端Hisタグ配列およびT2-TrpRS間のインフレーム遺伝子融合を含んでいた。
プラスミドpAS-004。トロンビン開裂部位のPCRに基づくオリゴヌクレオチド仲介導入を用いてpAS-002のベクター配列を修飾した。PCR用オリゴヌクレオチドはT2-TrpRS配列に基づいており、トロンビン開裂部位(太字イタリック)を含んでいた。
PCR反応中、プライマーがプラスミドの反対の鎖にある同じ配列とアニーリングし、次いでこれをPfuターボDNAポリメラーゼ(Stratagene)で伸張させ、6-Hisタグのすぐ上流にトロンビン挿入を持つプラスミドを作製した。このトロンビン開裂部位は蛋白精製後に6-Hisタグの除去を可能にする。
プラスミドpAS-006。ミニTyrRSフラグメントを、全長TyrRSクローン(Invitrogen、4386850)を鋳型に用いてPCRにより増幅した。PCR用オリゴヌクレオチドは5’-Ndel部位および3’-XhoI部位(太字イタリック)を含んでいた。
増幅後、精製したPCRフラグメントをNdelおよびXhoIで開裂し、次いでプラスミドpET24b+(Novagen)のこれらと同じ制限消化された部位にクローニングした。得られたプラスミドは、pET24b+ベクターに存在するカルボキシ末端Hisタグ配列およびミニTyrRS間のインフレーム遺伝子融合を含んでいた。
プラスミドpAS-007。ミニTrpRSフラグメントを、全長TrpRSクローン(Invitrogen、3542671)を鋳型に用いてPCRにより増幅した。PCR用オリゴヌクレオチドは5’-Ndel部位および3’-HindIII部位(太字イタリック)を含んでいた。
増幅後、精製したPCRフラグメントをNdelおよびHindIIIで開裂し、次いでプラスミドpET24b+(Novagen)のこれらと同じ制限消化された部位にクローニングした。得られたプラスミドは、pET24b+ベクターに存在するカルボキシ末端Hisタグ配列およびミニTyrRS間のインフレーム遺伝子融合を含んでいた。
プラスミドpAS-009。ミニTyrRSフラグメントを、TyrRSの全長クローン(Invitrogen、クローン4386850)を鋳型に用いてPCRにより増幅した。PCR用オリゴヌクレオチドはミニTyrRS配列に基づいており、5’-Ndel部位および3’-XhoI部位(太字イタリック)を含んでいた。
増幅後、精製したPCRフラグメントをNdelおよびXhoIで開裂し、次いでプラスミドpET24b+(Novagen)のこれらと同じ制限消化された部位にクローニングした。得られたプラスミドはT2-TrpRS配列を含み、その直後に停止コドンを持つ。故にHisタグ配列はT2-TrpRS遺伝子配列と融合しなかった。
pAS-002およびpAS-007の場合、ミニTyrRSまたはT2-TrpRSの遺伝子を、宿主系から研究グレードの物質を精製するのを助けるため、6-Hisタグに融合させた。しかしながらこの6-Hisタグは、前臨床開発用材料の発現および精製のために選ばれた最終システムでは使用されなかった。
形質転換。プラスミドを化学的にコンピテントなE. coli BL21(DE3)細胞(Novagen)に加え、氷上で30分間インキュベートした。インキュベート後、細胞/DNA混合物に42℃で45秒間熱ショックを与えた。37℃の回転台上で細胞を30分間回復させ、次に適当な抗生物質を加えたLBプレートに撒いた。
蛋白精製。BL21(DE3)中での研究グレード(Hisタグ付き蛋白)蛋白の発現を、1mMイソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド(Novagen)の添加によりA600=0.6で4時間誘導した。遠沈により細胞を収穫し、カラム緩衝液(20mMトリス-HCl(pH7.9)、500mM NaCl、30mMイミダゾールおよび5mM β-メルカプトエタノール)中での超音波処理により氷上で溶菌し、溶菌液を35000gで30分間の遠沈により清澄化した。上清を、カラム緩衝液でプレ平衡化したNi-NTAアフィニティカラム(Qiagen)にロードした。0.1% Triton-X 114(Sigma)を含有するカラム緩衝液でカラムを洗浄して蛋白からリポ多糖(LPS)を解離し、次いでさらなるカラム緩衝液で残留する洗浄剤を除去した。この蛋白を、カラム緩衝液中30-250mMイミダゾールの勾配で溶離し、PBS(pH7.5)/50%グリセロールおよび2mM DTT中に保存した。精製蛋白をリムルス血球抽出成分試験(LAL)(BioWhittaker)によって内毒素について検定した。ポリアクリルアミドゲル電気泳動(4-12%ビス-トリスNuPAGEゲル、Invitrogen)で判定したところ、全ての精製蛋白は95%以上の純度であった。蛋白濃度は、Bio-Rad蛋白検定試薬(Bio-Rad)を用いるBradford検定によって決定した。
本明細書に開示するさらなる変異体は、上記と同様の方法を用いて当業者により組み立てることができる。
実施例7
上記実施例6において同定した配列番号70のベクターでE. coli細胞をトランスフェクトした。産生されたT2蛋白を以下の方法によって約95%まで精製した。
細胞破壊および溶解液の清澄化
以下の細胞破壊および溶解液清澄化操作において、全ての工程を4℃で行い、全緩衝液のpHを4℃で調節した。
発酵タンクから集めた細胞ペーストの総量を、各々がおよそ90gの細胞ペーストを含む7個のバッチに分割した。各バッチの細胞ペーストをホモジナイザーを用いて冷溶解緩衝液(25mMトリスpH8.0、10%グリセロール、1mM EDTA)950mLとおよそ3分間混合した。
次に各バッチの懸濁液を10000ないし20000 PSIのAvestin EmulsiFlex C-50高圧ホモジナイザーに2回通し、溶解液の温度が10℃を超えないよう注意しながら氷上で集めた。次いでこのホモジナイザーを溶解緩衝液で洗い流し、残留する溶解液を除去した。
次に、各バッチの溶解液(〜1150mL)を38250gで55分間遠沈した。上清(〜1100mL)を取り置き、ペレットを廃棄した。各バッチについて上清をできるだけ速やかにQセファロースHPカラムにロードした(Qセファロースクロマトグラフィーを参照されたい)。さらなる細胞のバッチに対して細胞破壊および清澄化の上記全工程を実施し、その後清澄化に続いて直ちにQセファロースカラムへのロードを行った。
Qセファロースクロマトグラフィー
遠沈工程で得た上清を2.2L(直径13cm、高さ16.6cm)Qセファロース高速カラムにロードした。カラムへの蛋白ロードは樹脂1mLあたり溶解液5mLを超えてはならない。このカラムは緩衝液B(25mMトリスpH8.0、10%グリセロール、1M NaCl)2.5L、引き続き緩衝液A(25mMトリスpH8.0、10%グリセロール)11Lでプレ平衡化した。ロードの流速(可溶性物質に対して)は20-50mL/分(〜10-25cm/時)であり、カラム流出液を集めた。
このカラムを30カラム体積(66L)の緩衝液Aによって60mL/分(〜30cm/時)で洗浄した。次いでカラムを、緩衝液Aから20%緩衝液Bに至る20カラム体積(44L)の直線勾配により100mL/分(〜50cm/時)で溶出し、溶出ピーク中に500mLの画分を集めた(「Q画分」)。Q画分をSDS-PAGEで分析し(この画分中のT2-TrpRS量およびこの物質の相対純度の両方について)、最大量の精製T2-TrpRSを含有する画分をプールした。画分の分析にSDS-PAGEを使用する代わりの一つの代替手段は逆相HPLCである。
内毒素低減濾過
Q画分の全プールを、4℃でMustang Eメンブレンを付けた2本のPall内毒素低減濾過カートリッジで濾過し(10mL/分)、流出液を集めた。試料は2本のフィルターカートリッジに分割し、フィルターメンブレンに1回暴露した。この内毒素低減濾過の後、全蛋白のおよそ93%が回収された。
濃縮および緩衝液交換
内毒素低減濾過されたプール(8500mL)を、Cross-Flow(Ultrafiltration)フィルター(分子量カットオフ10000)を用いて圧力5-7psiで<1Lに濃縮した。濾液を集め、漏出ポリペプチドについてBradford検定で調べた。濃縮されたプール(<1L)をCM緩衝液A(25mM HEPES pH8.0、10%グリセロール)で5倍に希釈し、試料の体積を5Lに増やした。最終希釈プールの伝導度は1.02mSであり、CM緩衝液Aの伝導度は0.74mSであった。
CMセファロースクロマトグラフィー
緩衝液交換プロセスから得た試料を、6.5Lの緩衝液A(25mM HEPES pH8.0、10%グリセロール)でプレ平衡化した1300mL(直径13cm、高さ9.8cm)のCMセファロース高速流カラムにロードした。このロードの流速は90mL/分(〜40cm/時)であった。カラムを15カラム体積(19.5L)の緩衝液Aにより70mL/分(〜30cm/時)で洗浄した。次いでカラムを、緩衝液Aから50%緩衝液B(25mM HEPES pH8.0、10%グリセロール、1M NaCl)に至る20カラム体積(26L)の直線勾配により100mL/分(〜50cm/時)で溶出し、溶出ピーク中に500mLの画分を集めた。CM画分をSDS-PAGEで分析し(この画分中のT2-TrpRS量およびこの物質の相対純度の両方について)、最大量の精製T2-TrpRSを含有する画分をプールした。画分の分析にSDS-PAGEを使用する代わりの一つの代替手段は逆相HPLCである。
最終試料濃縮および緩衝液交換
プールされたCM画分(5500mL)を、Cross-Flow(Ultrafiltration)フィルター(分子量カットオフ10000ダルトン)を用いて圧力2-7psiで〜150mLに濃縮した。濾液を集め、漏出ポリペプチドについてBradford検定で調べた。濃縮されたプール(145mL)を、6000-8000ダルトンの分子量カットオフを有する透析管を用いて最終保存緩衝液(5mM燐酸ナトリウム pH7.4、150mM NaCl、50%グリセロール)15Lに対して4℃で(〜16時間)透析した。
透析されたプール(〜50mL)を透析から除去し、この試料について検定を完了した。濃縮試料の最終体積は52mLであり、この試料の最終濃度は標準Bradford検定に基づくと26.3mg/mLであった。純度決定のため、試料に対する最終的な変性SDS-PAGE分析を完了し、これを図9に示す。レーン1および10はインビトロゲン・ベンチマークMW蛋白マーカーを示す。二つの大分子量マーカーおよびその間の三つの小分子量マーカーがゲルの左側に特定されている。これらの分子量は20kDaから50kDaまで異なっている。レーン2および9はブランクである。レーン3-8は様々な量のT2-TrpRS最終生成物を示す。見てわかるように、配列番号70のE. coliトランスフェクションによって産生されたT2-TrpRS生成物は、約43kDaの分子量であった。Invitrogen Corporation社製PyroGene(登録商標)内毒素検定を用いて測定したこの試料の内毒素レベルは6.25E.U./mg(蛋白)と決定された。
下の表2は、上記精製プロトコルの様々な段階から得たT2-TrpRS生成物の分析を示す。
実施例8
配列番号70を持つT7誘導プラスミドを用いてE. coli宿主(BL21-DE3)中で発現させることにより、低内毒素T2-TrpRSを製造した。この細胞をcGMP条件下に増殖させ、Master Cell Bank(MCB)およびWorking Cell Bank(WCB)の両者を製造した。
増殖培地(酵母抽出物46.4g/L、グリセロール4g/L、およびグルコース4g/L)を作製し濾過滅菌した。カナマイシンを最終濃度50μg/mL(培地)となるようこの溶液に加えた。250mLの増殖培地アリコートを7個の1L滅菌フラスコに入れ、接種に使用した。
このプロセスには一段階接種を利用した。接種の前にWCBバイアルを融解した。4個の振盪フラスコをさらなるプロセス操作用に選択した。生物学的負荷試験のため、使用しない3個の振盪フラスコから、さらなるプロセス用に培地50mLを取り除いた。増殖培地0.25Lの入った4個の1L振盪フラスコの各々にWCBの0.2mLアリコートを加えた。各フラスコ間には滅菌ピペットチップを使用した。このフラスコを、環境調節された振盪機中37℃、200rpmで8-10時間インキュベートした。4個のうち1個を増殖の監視に使用し、他の3個を発酵槽への接種に使用した。振盪フラスコインキュベーションの間、発酵槽には、加熱滅菌し放冷した発酵培地を満たした。発酵培地の組成は以下のとおりとした:酵母抽出物37.1g/L、KH2PO4 6.67g/L、K2HPO4 9.67g/L、Na2HPO4 18.6g/L、NH4Cl 1.47g/LおよびNaCl 0.736g/L。
供給溶液(無水MgSO4 7.3g/L、グリセロール160g/L、CaCl2 0.22g/L、グルコース32.0g/L)および微量元素溶液(FeCl3・6H2O 27.0g/L、ZnCl2 1.3g/L、CuCl2・2H2O 1.0g/L、CoCl2 2.0g/L、(NH4)6Mo7O24・4H2O 2.0g/L、硼酸0.5g/L、濃HCl 100ml/L)のようなさらなる材料を適正な割合(各々0.147L/Lおよび0.0022mL/L)で反応混合物に添加した。プルロニックL-61消泡液(25%、v/v)を0.02mL/L(発酵溶液)の割合で発酵槽に添加した。トランスフェクトされた細胞の選択を維持するため、さらなるカナマイシンを発酵槽に添加した。水酸化アンモニウムまたは燐酸のいずれかを用いて溶液のpHを7.0とし、温度は37℃に維持した。
試料フラスコの培養がOD600 3に到達した後、他の3個の振盪フラスコの内容物をプールし、発酵槽中の発酵培地への接種に使用した。接種物プールの内容物から試料体積を差し引いたものを発酵槽に加えた。OD600は接種直後および1時間間隔で測定した。攪拌を増加させ、溶存酸素(DO)を30%以上に維持するため、自動制御を用いて必要に応じて酸素を供給した。発酵槽がOD600 10に達した時、プレ誘導試料を採取し処理した。
IPTGを最終濃度0.1mMとなるまで加えることにより、誘導を実施した。増殖を、グリセロールが涸渇するまで毎時監視した。グリセロールの消費は誘導後6-8時間におけるDOの急上昇をもたらした。この時点で試料を採取して処理した。残りのスラリーは細胞収穫用に準備した。
収穫操作を、温度設定を10℃に下げることで開始した。pHおよびDO制御を停止し、スターラーを100rpmに減速した。スラリー温度が25℃に到達した時、発酵槽の内容物を遠沈瓶に分配した。このスラリーを2-8℃、4000(公称3300xg)rpmで15分間遠沈した。細胞ペレットを集め、秤量し、細胞ペースト1gにつき緩衝液10mLを使用して細胞溶解緩衝液(トリス塩基3.02g/L、EDTA 0.29g/Lおよびグリセロール100g/L、pH8.0)に再懸濁し、緩衝液10mLを使用し、溶解させるまで2-8℃で保存した。次に、懸濁した細胞を>9000psiのAvestin Emulsiflux 50に3回通すことによって2-8℃でホモジナイズした。ホモジナイズしたスラリーを遠沈瓶に分注し、2-8℃、4000rpmで45分間遠沈した。上清を集め、さらなる処理まで2-8℃で保存した。一般的な流れに沿った処理方法を図8に図解する。この精製法は以下の工程より成る一般主題に従った:上清の清澄化;Qセファロース高速カラムクロマトグラフィー;Mustang E濾過;濃縮/緩衝液交換;CMセファロース高速流カラムクロマトグラフィー;濃縮/緩衝液交換;および滅菌濾過および充填。
上清の清澄化
溶解緩衝液を、圧力<20psigを維持しつつ0.45/0.2ミクロン滅菌カプセルフィルター(Sartobran P、2平方フィートメンブレン)で洗い流した。この系から全ての空気を一掃した。上清を、130-150mL/分の速度でこの系を通過させた。ポンプのスピードを調節して背圧<25psiを達成した。得られた溶液を「清澄化上清」と称した。
Qセファロース高速(HP)カラムクロマトグラフィー
第一のカラムクロマトグラフィー系は、結合性および溶離性を選択することにより、蛋白純度を増加させるように設計した。この工程の間に、蛋白純度はおよそ90%に増加し、内毒素は始発含有量のおよそ5%に低下した(EU/mg蛋白)。
QセファロースHP樹脂をAmersham BPG 200/500カラムにロードし、0.5N水酸化ナトリウムで消毒した。樹脂床のおよその体積は5Lであった。このカラムをAmersham 6mm バイオプロセスクロマトグラフィーに接続した。全ての溶液を準備し、この系を最低5カラム体積のローディング緩衝液(25mMトリス+10%(w/w)グリセロール、pH8.0)で洗い流した。清澄化した上清を流速9.4L/時でカラムにロードした。このカラムを、9.4L/時の速度の洗浄緩衝液(25mMトリス+10%(w/w)グリセロール+30mM NaCl、pH8.0)で、12カラム体積の溶液がカラムを通過し、吸光度(A280nm)が<0.05AUに低下するまで洗浄した。溶離緩衝液(25mMトリス+10%(w/w)グリセロール+80mM NaCl、pH8.0)を15L/時の速度でカラムを通過させることによってカラムから生成物を溶出させた。生成物は9カラム体積が溶出し、これを6個の1000mL画分(F1-F6)、その後20個の2000mL画分(F7-F26)として集めた。吸光度(A280nm)が基線上0.04AUに戻るまでピークを集めた。各々の画分から試料を採取し、T2-TrpRS含有量について分析した。分析が全て終了するまで画分を2-8℃で保存した。T2-TrpRS純度が≧20%である画分が特定されたならば、これらを一つの容器に合し、「QセファロースHPプール」と再命名した。最低5カラム体積の再生緩衝液(25mMトリス+10%(w/w)グリセロール+1M NaCl、pH8.0)を9.1L/時の速度でカラムに流すことにより、カラムを洗浄した。その後、5カラム体積の0.5N水酸化ナトリウムを17L/時の速度でカラムに流すことにより、カラムを消毒した。このカラムを0.1N水酸化ナトリウム中に保存した。
Mustang E濾過
Mustang E濾過系は、溶液から内毒素を除去するため特別に設計された固相濾過系であった。この工程は、総タンパク量と比較したT2-TrpRS量、即ち溶液中の他のポリペプチドに対するT2-TrpRSの純度の感知可能なほどの増加をもたらさなかった。
Pall Mustang Eカプセル(NP6MSTGEP1)を蠕動ポンプに接続し、注射用水(WFI)で洗い流した。圧力を<20psigに維持し、フィルターの非滅菌(入り口)側のパージバルブを開放して空気を放出した。およそ3LのWFIがフィルターを通過した。QセファロースHPプールを、入り口圧が<20psigとなるような速度でフィルターを介して脱発熱性物質カーボイ中に流した。500mL未満のQセファロースHPプールが残った時、Qセファロース洗浄緩衝液(25mMトリス+10%(w/w)グリセロール+30mM NaCl、pH8.0)2Lをこのプールに加えた。ポンプの設定を下げ、残りの物質を濾過した。得られた濾液を「Mustang E濾液」と命名した。
濃縮/緩衝液交換
この限外濾過/ダイアフィルトレーション系は、体積を減らし緩衝液系を次のクロマトグラフィー系(CMセファロース高速流カラムクロマトグラフィー)の緩衝液系に変えるために設計された。
Pellicon 2 限外濾過ダイアフィルトレーション(UFDF)系に5個の10kDa 0.1m2クロスフローフィルターを取り付けた。この系を最低20LのWFIで洗い流し、清水流水率(CWF)を膜貫通圧(TMP)10psigで算出した。この系を最低10Lの0.5N水酸化ナトリウムによりTMP 5psigで消毒した。水酸化ナトリウムをWFIでこの系から洗い流した。最低10LのCMセファロース高速流(FF)ローディング緩衝液(25mM HEPES+10%(w/w)グリセロール、pH8.0)でこの系を洗い流した。この系にCMセファロースFFローディング緩衝液の新鮮溶液をロードし、Mustang E濾液を入り口ラインに接続した。Mustang E濾液をTMP 10-12psigで最終体積15Lに濃縮した。濃縮が終了したならば、CMセファロースFFローディング緩衝液へのダイアフィルトレーションを、6倍体積の濃縮Mustang E 濾液を用いて開始した。溶液の伝導度が1.3mS/cmに到達した時、ダイアフィルトレーションが完了した。最終溶液を「UFDF #1残留成分」と命名した。この系を使用の合間に0.5N塩化ナトリウムおよびWFIで洗浄し、0.1N水酸化ナトリウム中に保存した。
CMセファロース高速流カラムクロマトグラフィー
第二のカラムクロマトグラフィー系は、結合および溶出特性について選択することにより蛋白純度を増大させるように設計した。この工程の間に、蛋白純度は≧98%に増大し、内毒素は<10EU/mg(蛋白)に低下した。
CMセファロースFF樹脂をAmersham BPG 200/500カラムにロードし、0.5N水酸化ナトリウムで消毒した。樹脂床のおよその体積は3.2Lであった。このカラムをAmersham 6mmバイオプロセスクロマトグラフィー系に接続した。全ての溶液を準備し、この系を最低5カラム体積のローディング緩衝液(25mM HEPES+10%(w/w)グリセロール、pH8.0)で洗い流した。UFDF #1残留成分をOpticap 4インチカプセルフィルター(孔径0.2μm)に<20psigで流し、この溶液を「UFDF #1 残留成分濾液」と改称した。後者の溶液をCMセファロースカラムに31.4L/時で直ちにロードした。その後、15カラム体積のローディング緩衝液を用いて、吸光度(A280nm)が<0.01AUまで下がり、洗浄緩衝液の全量が使用されるまで同じ流速でカラムを洗浄した。溶離緩衝液(25mM HEPES+1.0M NaCl+10%グリセロール、pH8.0)6カラム体積を31.4L/時の速度で流すことにより、生成物をカラムから溶出した。この溶出量を、吸光度(A280nm)が基線上0.01AUに低下するまで、1Lずつの画分(F1、F2等)として集めた。各画分から試料を採取し、T2-TrpRS含有量について分析した。全ての分析が終了するまで画分を2-8℃で保存した(24時間を超えない)。最低5カラム体積の再生緩衝液(25mM HEPES+10%(w/w)グリセロール+1M NaCl、pH8.0)を31.4L/時の速度でカラムに流すことにより、カラムを洗浄した。その後、5カラム体積の0.5N水酸化ナトリウムを31.4L/時の速度でカラムに流すことにより、カラムを消毒した。このカラムを0.1N水酸化ナトリウム中に保存した。
濃縮/緩衝液交換
この限外濾過/ダイアフィルトレーション系は、体積を減らし緩衝液系を最後の薬物調合の緩衝液系(5mM燐酸ナトリウム+150mM塩化ナトリウム、pH7.4)に変えるために設計された。
Pellicon 2 限外濾過ダイアフィルトレーション(UFDF)系に1個の10kDa 0.1m2クロスフローフィルターを取り付けた。この系を最低10LのWFIで洗い流し、CWFをTMP 5psigで算出した。この系を最低5Lの0.5N水酸化ナトリウムによりTMP 5psigで消毒した。水酸化ナトリウムをWFIでこの系から洗い流した。最低2Lの最終薬物調合緩衝液でこの系を洗い流した。この系に最終薬物調合緩衝液の新鮮溶液をロードし、>95%のT2-TrpRS含有純度であると同定されたCM溶出画分を再び合し、穏やかに混合して「CMセファロース溶出プール」と命名した。限外濾過モードにおいて、このCMセファロース溶出プールをTMP 10-12psigで15.0g/Lの目標まで濃縮した。この濃度が達成されたならば、濃縮されたCMセファロース溶出プール体積の8倍を用いて最終薬物調合緩衝液中へのダイアフィルトレーションを開始した。ダイアフィルトレーションが終了したならば、この系を排水し、試料を品質管理に送って蛋白濃度および純度の迅速測定を行った。濃度が10-15mg/mLの範囲であれば、UFDF工程は完了した。濃度がこの範囲外であれば、系を再開し、濃度を特記した範囲に調節するための改善策をとった。この系を使用の合間に0.5N塩化ナトリウムおよびWFIで洗浄し、0.1N水酸化ナトリウム中に保存した。
滅菌濾過および充填
最終溶液を、Millipak 20(0.22μm)フィルターを通して1L PETG瓶に入れた。内毒素単位は蛋白1mgあたり0.003I.U.と測定された。
図6は、実施例7および8の方法によって生成した配列番号70のベクターでトランスフェクトした後のE. coliにより組換え産生された生成物の実験的pI(有効電荷)測定値を示す。試料1は実施例7の方法で製造し、試料2は実施例8の方法で製造した。試料1の純度は約95%であり、試料2の純度は99%より大である。試料はNovex pH3-10試料緩衝液で1:1に希釈した。使用マーカーはInvitrogen(登録商標)社製IEFマーカーであった。
配列番号24または27を有する単量体T2の理論的pIが7.1であるのに対して、組換え産生生成物の実験的pIは図6に示すように約7.6と測定された。これは、一次配列の負電荷の幾らかが「隠れて」または局所環境にとってアクセス不能であることを示唆している。
実施例10
図10は、E. coli中で配列番号70のベクターを組換え発現することにより作製されたT2-TrpRSのSDS pageゲルを示す。この方法で産生されたT2-TrpRS物質はおよそ99%純度であり、およそ0.003E.U./mg(蛋白)を含有していた。
レーン1はMark 12 Ladderである。レーン2は、ゲルの分離を開始する前に加熱しなかったCM-セファロースカラムを用いる、最終精製工程前の処理工程におけるロード物質の試料を示す。レーン3は、100℃またはその付近で少なくとも5分間の加熱を試料に適用した後の、同じ物質である。レーン4、6、および8は、ゲル分離を開始する前に試料を加熱しなかったCMセファロースカラム由来の画分である。試験されたT2-TrpRS含有溶出画分は、溶出緩衝液適用後のCMセファロースカラム由来の、初期、中間、および後期溶出である。この実験では5個の溶出画分があった。レーン5、7、および9はそれぞれレーン4、6、および8の画分であるが、ゲル分離開始前に蛋白の熱変性を行っている。レーン10は、やはりE. coli中で配列番号27をコードしているポリヌクレオチドを組換え発現することにより製造した、リファレンス標準(およそ95%純度の生成物)である。
このゲルによって視覚化されているように、レーン2、4、6、8、および10は全てほぼ86kDaに上方のバンドを含んでいる。このバンドは試料を加熱すると消失する(レーン3、5、7および9)。全てのレーンはほぼ43kDaに1個のバンドを含み、これは当該生成物の単量体型であると考えられる。E. coli中で配列番号27を組換え発現することにより生成された生成物がマルチユニット複合体、例えば非共有結合的に結びついた二量体であるが故にこのようなことが起こるというのが最も可能性が高い。加熱によって二量体の解離および蛋白単量体成分の視覚化が起こる。
実施例11
図11は、E. coli中で配列番号70のベクターを組換え発現することにより産生されたT2-TrpRSの未変性ゲルを示し、これをさらに約99%純度およびおよそ0.003E.U./mg(蛋白)にまで精製した。
このゲルはNovex NuPageトリス酢酸塩ゲルであり、非共有結合を破壊し得るSDSまたは洗浄剤を含んでいなかった。レーン1-3はレーン5-7よりも低濃度の生成物を示す(各々3μgおよび5μg/レーン)。見てわかるように、試料は全て単一バンドとしてランした。これは、精製された生成物が単一の分子型であることを示唆している(即ち、この検出法を用いると、単量体および二量体は同時に存在しない)。
実施例12
配列番号70のベクターを組換え発現することによって生成されたT2-TrpRS生成物の分子量および複雑度を、サイジングHPLCカラムを用いて検出した。T2-TrpRS生成物は約99%および0.003E.U./mg(蛋白)まで精製した。
使用HPLCカラムはAmersham Superdex 200 10/300 GL(登録商標)であったが、これは架橋されたアガロースおよびデキストランカラムである。移動相は0.2M燐酸カリウムおよび0.15塩化カリウム(pH6.5)であった。流速(mL/分)は0.5であった。検出は3つの異なる波長:215、254および280nmで行った。
キャリブレーションはブルーデキストラン、β-アミラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルブミン、炭酸脱水素酵素、シトクロムc、およびアジ化ナトリウムを用いて実施した。
下の表3は、各キャリブラントの分子量(MW)、log MW、保持時間(RT)、および溶出体積を示す。空隙容量(V0)をブルーデキストランの溶出体積として測定し8.667であった。内部容量(Vi)をアジ化ナトリウムの溶出体積として測定し、26.977であった。そして総容量(Wm)は35.654であった。
図12は検量線を示し、ここでx軸はキャリブラントの1分あたりの保持時間であり、y軸はlog MWである。
配列番号70の発現から得た精製蛋白生成物の試料を、分子量特定のためカラムにロードした。分子量の大きな生成物は分子量の小さな生成物よりも早くカラムから出てくる。図13-15に示すように、組換え産生された生成物は約27.3分の保持時間を有していた。図13は、215nmのUV吸光度で検出された生成物を示す。図14は、254nmのUV吸光度で検出された生成物を示す。図15は、280nmのUV吸光度で検出された生成物を示す。
下の表5は、組換え産生された生成物の分子量の計算を示す。この生成物は分子量87.283kDであると算出された。これは、この生成物が、各々およそ43kDaの2個の単量体ユニットで構成されることを裏付けるものである。
実施例13
本発明に係るT2フラグメント(例えば配列番号27)をコードしているポリヌクレオチドを組換え発現することにより産生された生成物の実体を確認し純度を分析するため、逆相HPLCを実施した。使用したHPLC系は、Vydac Protein C4カラム、2.1 x 150mm、5μm、Part # 214TP5215と、210nmでの検出ができるUV検出器を含んでいた。移動相A(希釈剤)は水中0.1% TFAを含み、これはTFA 1mLを水1Lと混合して作製した。移動相Bはアセトニトリル中0.1% TFAを含み、これはTFA 1mLをアセトニトリル1Lと混合して作製した。アセトニトリルは水より疎水性が低く、よって蛋白とカラム樹脂表面の脂質相互作用を阻害する。Vydacカラムを取り付けた後、ブランク試料として希釈剤を注入する。様々な量のリファレンス物質(例えば、約99%純度まで精製したT2)をさらに注入して標準曲線を作製できる。後に、室温で3日間放置した部分精製T2生成物の試料(例えば、配列番号27をコードしているポリヌクレオチドを組換え発現させることにより得られた生成物)を25μLの体積で注入する。二つの移動相(AおよびB)より成る勾配の組を以下のように作製する:
カラムの流速を0.50mL/分に維持し、カラム温度を40℃に維持する。主生成物のピーク保持時間は、試料の保持時間をリファレンス物質の保持時間と比較することによって同定できる。逆相HPLCカラムからの結果を図20に示す。X軸は保持時間(分)を示す。Y軸は吸光度単位を示す。
ほぼ18.825の単一ピークは、この生成物が一つの種であることを示す(この曲線下面積のほぼ99.56%が18.825分±1分の保持時間にあった)。二量体であるこの生成物は、室温に3日間放置する時、開裂または分解しないこともまた証明されている。
実施例14
配列番号70で示されるベクターのE. coli発現により生成された二つのT2-TrpRS生成物にエドマン分解を施した。第一の生成物は約95%純度まで、そして第二の生成物は約99.5%純度まで精製した。いずれの生成物もSAKで始まるN末端配列を持っていた。
実施例15
配列番号70のベクターでトランスフェクトしたE. coliにより生成され、純度約95%±4%(生成物A)および約99.5%±0.5%(生成物B)まで精製された生成物約0.5μLを、MALDI-TOF(Voyager DE-STR)質量分析に付した。
二つの主要な質量が、生成物A(43210/43400Da±30Da)および生成物B(43194/43380Da±30Da)の両方についてMALDI-TOFスペクトルで観察された。潜在的な二重荷電イオンは、試料あたり1以上の蛋白質量の存在を示しているかも知れない。図21は生成物AのMALDI-TOFスペクトルを示す。図22は生成物BのMALDI-TOFスペクトルを示す。この二つのピークは、N-ホルミルメチオニンを含有する幾らかの生成物が蛋白翻訳後に開裂されなかったこと;MALDI-TOF装置のマトリックス効果;または該生成物のその他の化学的もしくは翻訳後修飾の結果であるかも知れない。
実施例16
配列番号70のベクターによるE. coliのトランスフェクションにより生成されたT2-TrpRS生成物をエレクトロスプレー(ESI)質量分析(QSTARpulsar、Applied Biosystems)およびMALDI-TOF質量分析(Voyager De STR、 Applied Biosystems)を用いて分析し、得られたT2-TrpRS生成物をさらに特性解明し、その末端が修飾されているかどうかを決定し、そしてN末端がメチオニンを持つか、メチオニンを持たないか、または修飾メチオニンを持つかを決定した。
図23は、配列番号70のベクターによるE. coliのトランスフェクションにより生成され、純度約99.5%および0.003E.U./mg蛋白にまでさらに精製し、GluCで消化したT2-TrpRS生成物の質量分析を示す。
図24は、配列番号70のベクターによるE. coliのトランスフェクションにより生成され、純度約99.5%および0.003E.U./mg蛋白にまでさらに精製し、トリプシンで消化したT2-TrpRS生成物の質量分析を示す。
図25は、配列番号70のベクターによるE. coliのトランスフェクションにより生成され、純度約99.5%および0.003E.U./mg蛋白にまでさらに精製し、GluCで消化したT2-TrpRS生成物の質量分析であって、494m/z(Mr=2468)においてメチオニンのないN末端ペプチドを示す。メチオニン、またはホルミル、酸化された、メチル化された、もしくはアセチル化されたメチオニンを有するN末端に対応する質量は観察されなかった。このペプチドの電荷状態は5である事が認められる。このシリーズの同位体質量は1/5または0.2Daだけ相違している。全体として、メチオニンを持たないN末端のシグナル強度は、蛋白濃度を0.4μg/μLまで高くしたとしても10カウントより低かった。
図26は、配列番号70のベクターによるE. coliのトランスフェクションにより生成され、純度約99.5%および0.003E.U./mg蛋白にまでさらに精製し、GluCで消化したT2-TrpRS生成物の質量分析であって、618m/z(Mr=2468)においてメチオニンのないN末端ペプチドを示す。このT2-TrpRS生成物の電荷状態は4である事が認められた。このシリーズの同位体質量は1/4または0.25Daだけ相違している。全体として、生成されたT2-TrpRS生成物のスペクトルは、この生成物が部分消化されていることを示した。
図27は、配列番号70のベクターによるE. coliのトランスフェクションにより生成され、GluC消化され、純度約99.5%および0.003E.U./mg蛋白にまでさらに精製したT2-TrpRS生成物の質量分析であって、N末端メチオニンのないC末端ペプチドを示した。このペプチドはm/z=759にあった。このペプチドは二重荷電しているため、その質量も二倍、またはMr=1516であった。
図28は、図28由来のm/z=759の二重荷電質量のフラグメント化を示す。単一荷電フラグメントのみを標識した。このスペクトルの分析は、配列番号70のベクターを組換え発現することにより生成されたT2-TrpRS生成物のC末端が配列番号69の配列を有することを裏付けている。非重複データベースをこのフラグメント化データを用いて検索すると、ヒト蛋白IFP53に相当する重要なヒットがあった。このペプチドの配列は、配列番号70のベクターによるE. coliのトランスフェクションにより生成されたT2-TrpRS生成物のC末端ペプチドと100%合致した。これらの結果は、配列番号70のベクターによるE. coliのトランスフェクションにより生成されたT2-TrpRS生成物が凹凸のある末端を持たないこと、そしてこの組換え生成物のC末端がHisタグを持たない配列番号69である事を示した。
図29は、配列番号70のベクターを用いてE. coli中で組換え産生されたT2-TrpRS生成物[ここでこの生成物は純度約99.5%にまで精製し、内毒素は0.003E.U./mg蛋白まで除去した]のMALDI-TOFマススペクトルを示す。次いでこの生成物をGluCで消化した。
図30は、配列番号70のベクターを用いてE. coli中で組換え産生されたT2-TrpRS生成物[ここでこの生成物は純度約99.5%であり、内毒素は0.003E.U./mg蛋白まで除去した]のMALDI-TOFマススペクトルを示す。次いでこの生成物をトリプシンで消化した。
これらのMALDI-TOFスペクトルは、Metを持つまたは持たないN末端に対応する質量を示さなかった。
図31は、配列番号70のベクターによるE. coliのトランスフェクション、純度約99.5%までの精製、および約0.003E.U./mg蛋白までの内毒素の除去により産生されたT2-TrpRS生成物のエレクトロスプレーイオン化スペクトルを示す。この生成物はC4ZipTip(Millipore)で脱塩した。このスペクトルは、存在し得る数種類の多価イオンを示している。図32に示すように、コンボルーションした場合これらのデータは分子量43329Daの主成分を示し、これは、N末端Met残基を除いた予想蛋白に対する理論的質量43329Daと矛盾しない。さらに、質量43507Daおよび43588Daを有する二つの顕著なさらなる種もまた帰属できる。これらの成分の質量差は燐酸化に対して予想されるものに近いが、主成分(43329Da)および質量(43507Da)を持つ成分の相違は容易には帰属できない。
図33は、配列番号70のベクターによるE. coliのトランスフェクション、純度約99.5%までの精製、および約0.003E.U./mg蛋白までの内毒素除去により産生されたT2-TrpRS生成物のMALDI-TOFマススペクトルを示す。この生成物はC4ZipTip(Millipore)で脱塩した。このスペクトルは、m/z 43215および43415に中心を持ち、関連する二重荷電イオンをm/z 21621および21715に持つ、主要な単一荷電擬似分子イオンクラスターを有する。単一荷電領域の拡大は、43415Daのクラスターが1以上の種で構成され、それが図31のエレクトロスプレースペクトルで観察される二つのより高質量の種に対応しているかも知れないことを示唆している。
実施例17
酵素的アミノアシル化活性の定量的測定
図13はPPi交換検定を示す。TrpRSは、エネルギー的にATPの消費により促進される二段階メカニズムで、トリプトファンをその同族のtRNAと共有結合させる。PPi交換検定は、トリプトファニル-AMPへの無機ピロ燐酸(PPi)取り込みの酵素触媒作用を測定する。
この反応生成物は遊離トリプトファンおよび遊離ATPである(これは、tRNAへのアミノ酸の結合を活性化するために使用される反応の逆反応である)。これは、アミノアシルtRNAシンセターゼにより触媒される前半の反応における酵素活性の尺度に用いられる。したがってこれは、酵素活性の評価に一般的に使用される。他方(または反応の後半)は、これに続くtRNAへのアミノ酸の結合である。tRNA上へのTrpの全体的取り込みを測定するこの完全な二段階酵素反応を、「アミノアシル化検定」と称し、それは以下のように要約できる:
第一の反応:Trp + ATP は可逆的に Trp-AMP + PPiを産生する。
第二の反応:Trp-AMP + tRNA は Trp-tRNA + AMP を産生する。
全体として:Trp + ATP + tRNA は Trp-tRNA + AMP + PPi を産生する。
第一の工程(アミノ酸活性化と称する)では、TrpRSがATPとの縮合反応によってアミノ酸を活性化し、Trp-AMPを生成すると共にピロリン酸(PPi)を放出する。第二の工程では、この活性化アミノ酸が同族tRNAの3’末端に結合し、アミノアシルtRNA(Trp-tRNA)およびAMPの放出を産む。
故に、TrpRSの触媒活性は、トリプトファン依存性ATP-PPi交換(式1)およびアミノアシル化検定(式1および2の合算)において特性決定できる。
PPi交換反応は、ATPへの[32P]-PPiの取り込みを測定することによりアミノ酸活性化の逆を評価する(式1)。これに対してアミノアシル化検定(式1および2の合算)は、[3H]-トリプトファンがその同族tRNAにライゲーションした量を測定する。
PPi交換反応 - PPi交換反応は、100mMトリスHCl、pH7.8、10mM弗化カリウム、2mM塩化マグネシウム、1mM ATP、2mM PPiナトリウム、[32P]-PPiナトリウム、1mMトリプトファン、および5mM β-メルカプトエタノールで実施した。酵素0.2μMの添加により反応を開始し、室温で実施した。各時点で試料を4%活性炭、11%過塩素酸、および200mM PPiナトリウム中で反応停止させた。活性炭を集め、シンチレーション計数前に1%過塩素酸および200mM PPiナトリウムで2回洗浄した。
ATPへの[32P]-PPiの取り込みを示すカウント毎分(「CPM」)を、全長TrpRSおよび生成されたT2について検出した。図17(左)は、全長TrpRS(「FLWRS」;配列番号63または64);Pro287がAspに変換されている全長変異体(「FLWRS/P287D」)、および、配列番号70のベクターを本発明方法に従ってE. coli中で組換え発現させることにより誘導したT2-TrpRSの変異体(「T2-WRS」)のCPMを示す。図17(中央)は、時刻0におけるCPM単位を差し引いたデータであるバックグラウンド下CPMを示す。図17(右)は[32P]-PPiの最終的CPMを示す。
図16に示すように、全長TrpRSは、T2-TrpRSより実質的に多くの[32P]-PPiをATP中に取り込んだ。この結果は、T2が、そのtRNAシンセターゼ活性において全長TrpRSに比較して概して「不活性」であることを示唆している。
実施例18
血管形成抑制活性の定量的測定
出生直後(P0)にはマウスの網膜血管系は事実上存在しない。生後約3週間(P21)までに網膜は、画一的二相発生パターンの血管形成により、成体パターンの網膜血管を獲得する。最初、スポーク様乳頭周囲血管が中心網膜動静脈から放射状に成長し、その間に形成される毛細血管叢により徐々に相互接続するようになる。網膜血管形成の第二相は、生後8日(P8)前後に始まり、側副枝が浅部叢の毛細血管から出芽し、網膜に貫入する。次いで血管枝が横方向に吻合して内顆粒層の外縁に平面状「深部血管叢」を形成し、それがP12までに所定の位置に納まる。中間血管叢もまた、P14およびP20の間に内顆粒層の内縁に形成される。新生仔マウスにおけるこれらの血管網の発生は、第三トリメスターのヒト胎児において起こる事象に酷似している。
このプロセスの再現性および出生後動物におけるアクセス容易性は、生理的に関連する血管形成モデルにおいて抗血管形成化合物の有効性を試験する好機を提供する。T2-TrpRSまたはその他の血管形成抑制分子の血管形成抑制活性を、深部血管出芽形成の直前であるP8に硝子体内注射することにより試験し、P12までに形成された深部網膜血管叢の血管形成程度に基づいて評価した。浅部血管叢(一次層)の外観を、既に形成されている血管系に及ぼす当該薬物の毒性徴候および副作用について評価した。各網膜に関して、網膜全体への相対的阻害レベルに基づいて阻害レベルを等級付けた。図18は、深部血管叢の発生前にP8に注射した化合物による様々な阻害パーセント、および4日後に評価した血管新生の効果を示す。
図19は、3つの異なるT2製造ロットによる血管形成の、様々な用量での阻害パーセントの比較を示す。各用量比較の左端は、C末端His6タグを付加した配列番号27をコードしているポリヌクレオチドをE. coli中で発現させ、その後実験技術(ニッケルアフィニティカラムおよびトリトンX-114)を用いて精製することにより産生された生成物である、「T2-TrpRS SY」による阻害である。各用量比較の中央は、配列番号27(C末端His6タグ無し)をコードしているポリヌクレオチドをE. coli中で発現させ、その後直線勾配カラムクロマトグラフィー系と内毒素フィルターを用いて試料が純度約95%となるよう精製することにより産生された生成物である、「T2-TrpRS 40448」である。各用量比較レベルの右端は、配列番号27(C末端His6タグ無し)のベクターをE. coli中で発現させ、その後、大規模製造プロセス(バッチ溶出カラムクロマトグラフィーおよび内毒素フィルター面積の拡大を包含する)を用いて、試料が純度約99%であり内毒素レベルがさらに低下するよう精製することにより産生された生成物である、「T2-TrpRS PD195」による阻害である。
僅かに鐘形をした有効性曲線が明らかであり、0.25または0.50μg/眼(それぞれ5.22または10.44ピコモル)の注射で最大の有効性が表れた。最新の製造プロトコルによって著しい有効性の改善がなされている(1st=T2-TrpRS SY、2nd=T2-TrpRS 40448、3rd=T2-TrpRS PD195-DG30L(PD195))。さらに、新しく製造されたバッチの各々では、有効性曲線はかなり幅広くなった(図19)。これらの改善は、改善された精製法の結果であると思われ、その方法ではT2-TrpRS PD195バッチでほぼ100%レベルの純度をもたらした。
図19のy軸は、>75%阻害を伴う網膜のパーセンテージを示す。この阻害パーセンテージは、本明細書において活性単位とも称する。例えば、網膜の50%が>75%阻害を経験したならば、蛋白活性は50活性単位とみなされ、網膜の70%が>75%阻害を経験するならば蛋白活性は70活性単位とみなされる。
本発明の好ましい態様を本明細書に示し記載してきたが、このような態様が例示のためにのみ提供されることは当業者には明白であろう。当業者にとって本発明から逸脱することなく、ここに多数の変形、変化、および置換がなされる。本発明の実施にあたり、本明細書に記載の発明の態様に対する様々な代替物を利用できるということを理解すべきである。以下の請求項が本発明の範囲を規定するという事、そしてこれら請求項の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物が、請求項によって包含されるという事が意図されている。
配列の要約
配列番号1 - Met-TrpRS-Hisタグ(アミノ酸に核酸ベクターを加えたもの)(GD変異体)
配列番号2 - Met-ミニTrp-Hisタグ(アミノ酸に核酸を加えたもの)(GD変異体)
配列番号3 - Met-ミニTrpRS-Hisタグ(アミノ酸)(GD変異体)
配列番号4 - Met-T1-Hisタグ(アミノ酸に核酸ベクターを加えたもの)(GD変異体)
配列番号5 - Met-T1-Hisタグ(アミノ酸)(GD変異体)
配列番号6 - Met-T2-Hisタグ(アミノ酸に核酸ベクターを加えたもの)(GD変異体)
配列番号7 - Met-T2-Hisタグ(アミノ酸)(GD変異体)
配列番号8 - SNHGP(T1の開始配列)(GD変異体)
配列番号9 - SAKGI(T2の開始配列)(GD変異体)
配列番号10 - HVGH(内部配列)
配列番号11 - KMSAS(内部配列)
配列番号12 - T2(GD変異体)
配列番号13 - T1(GD変異体)
配列番号14 - ミニTrpRS(GD変異体)
配列番号15 - Met-T2(GD変異体)
配列番号16 - Met-T1(GD変異体)
配列番号17 - Met-ミニTrpRS(GD変異体)
配列番号18 - T2(GD変異体)をコードしている核酸
配列番号19 - Met-T2(GD変異体)をコードしている核酸
配列番号20 - T1(GD変異体)をコードしている核酸
配列番号21 - Met-T1(GD変異体)をコードしている核酸
配列番号22 - ミニTrpRS(GD変異体)をコードしている核酸
配列番号23 - Met-ミニTrpRS(GD変異体)をコードしている核酸
配列番号24 - T2(SY変異体)
配列番号25 - T1(SY変異体)
配列番号26 - ミニTrpRS(SY変異体)
配列番号27 - Met-T2(SY変異体)
配列番号28 - Met-T1(SY変異体)
配列番号29 - Met-ミニTrpRS(SY変異体)
配列番号30 - T2(SY変異体)をコードしている核酸
配列番号31 - Met-T2(SY変異体)をコードしている核酸
配列番号32 - T1(SY変異体)をコードしている核酸
配列番号33 - Met-T1(SY変異体)をコードしている核酸
配列番号34 - ミニTrpRS(SY変異体)をコードしている核酸
配列番号35 - Met-ミニTrpRS(SY変異体)をコードしている核酸
配列番号36 - T2(GY変異体)
配列番号37 - T1(GY変異体)
配列番号38 - ミニTrpRS(GY変異体)
配列番号39 - Met-T2(GY変異体)
配列番号40 - Met-T1(GY変異体)
配列番号41 - Met-ミニTrpRS(GY変異体)
配列番号42 - T2(GY変異体)をコードしている核酸
配列番号43 - Met-T2(GY変異体)をコードしている核酸
配列番号44 - T1(GY変異体)をコードしている核酸
配列番号45 - Met-T1(GY変異体)をコードしている核酸
配列番号46 - ミニTrpRS(GY変異体)をコードしている核酸
配列番号47 - Met-ミニTrpRS(GY変異体)をコードしている核酸
配列番号48 - T2(SD変異体)
配列番号49 - T1(SD変異体)
配列番号50 - ミニTrpRS(SD変異体)
配列番号51 - Met-T2(SD変異体)
配列番号52 - Met-T1(SD変異体)
配列番号53 - Met-ミニTrpRS(SD変異体)
配列番号54 - T2(SD変異体)をコードしている核酸
配列番号55 - Met-T2(SD変異体)をコードしている核酸
配列番号56 - T1(SD変異体)をコードしている核酸
配列番号57 - Met-T1(SD変異体)をコードしている核酸
配列番号58 - ミニTrpRS(SD変異体)をコードしている核酸
配列番号59 - Met-ミニTrpRS(SD変異体)をコードしている核酸
配列番号60 - 二量体化ドメイン(T2 144-199より)
配列番号61 - N末端Metを持ちHisタグを持たない全長GD変異体
配列番号62 - N末端Metが無くHisタグを持たない全長GD変異体
配列番号63 - N末端Metを持ちHisタグを持たない全長SY変異体
配列番号64 - N末端Metが無くHisタグを持たない全長SY変異体
配列番号65 - N末端Metを持ちHisタグを持たない全長GY変異体
配列番号66 - N末端Metが無くHisタグを持たない全長GY変異体
配列番号67 - N末端Metを持ちHisタグを持たない全長SD変異体
配列番号68 - N末端Metが無くHisタグを持たない全長SD変異体
配列番号69 - C末端:FMTPRKLSFDFQ
配列番号70 - プラスミド01 - ヒトT2-TrpRS(SY変異体)のNdeI/HindIII挿入物を持ち6-Hisタグの無いpET24b+
配列番号71 - プラスミド02:ヒトT2-TrpRS(SY変異体)のNdeI/HindIII挿入物を持ち6-Hisタグの無いpET20b+
配列番号72 - プラスミド04 T2-TrpRS(SY変異体)のNdeI/HindIII挿入物を持ちトロンビン開裂部位を持つ6-Hisタグを有するpET24b+
配列番号73 - プラスミド06 ヒトミニ-TyrRSのNdeI/XhoI挿入物を持ち6-Hisタグを持つpET24b+
配列番号74 - プラスミド07 ヒトミニ-TrpRS(SY変異体)のNdeI/HindIII挿入物を持ち6-Hisタグを持つpET24b+
配列番号75 - プラスミド09 :ヒトミニ-TyrRSのNdeI/XhoI挿入物を持ちHisタグの無いpET24b+
本発明の新規な特徴を、付記する請求項に詳細に開示する。例示的態様を開示している以下の詳細な説明(その中で本発明の原理を利用している)および添付図面を参照することにより、本発明の特徴および利点をよりよく理解することができる。その図面において、