上記に照らすと、上記で言及した短所のうちの少なくともいくつかを克服する改善された薬物送達用インプラントを製造することが望ましいであろう。
本発明は、体組織、体液、体腔または体管の中に配置されるように適合されているインプラント本体中で使用するための、薬物挿入体、および治療薬剤を含有する薬物コアの種々の実施形態を対象とする。このインプラント本体は、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合させることができる。このインプラントは、薬剤を身体、例えば、眼内もしくは周囲組織内または両方に、一定期間にわたり放出して、治療薬剤の使用が医学的に必要とされる患者の不全状態を治療する。本発明はまた、薬物挿入体および薬物コアを製造する方法の種々の実施形態、ならびに1つまたは複数の薬物挿入体を含有するインプラントを使用して患者を治療する方法も対象とする。
種々の実施形態では、本発明は、インプラント内部に配置されるように適合されている薬物挿入体を提供し、インプラントは、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されており、薬物挿入体は、薬物コアを含み、薬物コアを部分的に覆うシース本体(シース体)を含むことができ、薬物コアは、治療薬剤およびマトリックスを含み、マトリックスはポリマーを含み、シース本体は、薬物コアの一部を覆って配置されて、インプラントが患者体内に挿入された場合に、前記一部からの薬剤の放出を制御し、したがって、薬剤またはその任意の組合せを放出するように適合されている、薬物コアの少なくとも1つの暴露(露出)表面を画定し、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似する。例えば、治療薬剤は、マトリックス全体にわたり均一かつ均質に分散してもよく、またはマトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成してもよい。例えば、薬物コアの容積部内部の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部内部の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なる。例えば、薬物コアの容積部内部の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の治療薬剤の量と約10%以下だけ異なる。例えば、薬物コアの容積部内部の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なる。例えば、薬物コアの容積部内部の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の治療薬剤の量と同一である。種々の実施形態では、薬剤を眼、周囲組織、全身またはそれらの任意の組合せに放出する、かつ/または治療薬剤を眼もしくは周囲組織または全身あるいはそれらの任意の組合せに持続的に放出するように、薬物挿入体を適合させることができる。
種々の実施形態では、本発明は、複数の上記の薬物挿入体を提供し、複数の挿入体がそれぞれ、その内部に個々に分散した類似量の薬剤を含む。例えば、その中に個々に分散した類似量の薬剤は、それらの間で約30%以下異なっていてもよい。例えば、その中に個々に分散した類似量の薬剤は、それらの間で約20%以下異なっていてもよい。例えば、その中に個々に分散した類似量の薬剤は、それらの間で約10%以下異なっていてもよい。例えば、その中に個々に分散した類似量の薬剤は、それらの間で約5%以下異なっていてもよい。
種々の実施形態では、本発明は、薬物挿入体またはインプラントの中に配置される、治療薬剤およびマトリックスを含む薬物コアを提供し、マトリックスはポリマーを含み、薬物挿入体またはインプラントは、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されており、治療薬剤は、マトリックス全体にわたり均一かつ均質に分散するか、またはマトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し;薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似する。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部内部の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の治療薬剤の量と同一である。種々の実施形態では、薬剤を眼、周囲組織、全身またはそれらの任意の組合せに放出する、かつ/または治療薬剤を眼もしくは周囲組織または全身あるいはそれらの任意の組合せに持続的に放出するように、薬物挿入体を適合させることができる。
種々の実施形態では、本発明は、治療薬剤の患者への持続送達のためのインプラントを提供し、インプラント全体が、治療薬剤およびマトリックスを含む薬物コアを含み、マトリックスはポリマーを含む。あるいは、多孔性または吸収性の材料を使用して、活性薬剤を浸み込ませることができるインプラントまたはプラグの全体を構成することもできる。
種々の実施形態では、本発明は、複数の薬物挿入体が充填済み前駆体シースからその分割によって製造されるように適合されている充填済み前駆体シースを提供し、各薬物挿入体は、個々のインプラント内部に配置されるように適合されており、インプラントは、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されており、充填済み前駆体シースは、前駆体シース本体およびその内部に含有する前駆体薬物コアを含み、前駆体薬物コアは、治療薬剤およびマトリックスを含み、マトリックスはポリマーを含み、治療薬剤は、マトリックス全体にわたり均一かつ均質に分散するか、またはマトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し、前駆体薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似し、前駆体シース本体は、薬剤に対して実質的に不浸透性であり、そこから分割した複数の挿入体のそれぞれは、薬剤を放出するように適合されており、充填済み前駆体シースから分割した複数の挿入体のそれぞれの個々のシース本体は、複数の挿入体のそれぞれの個々の薬物コアの一部を覆って配置されて、挿入体がインプラント中に配置されインプラントが患者体内に挿入された場合に、前記一部からの薬剤の放出を阻害し、したがって、薬剤を放出するように適合された、薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定する。例えば、前駆体薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、前駆体薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、前駆体薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、前駆体薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部内部の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の治療薬剤の量と同一である。種々の実施形態では、薬剤を眼、周囲組織、全身またはそれらの任意の組合せに放出する、かつ/または治療薬剤を眼もしくは周囲組織または全身あるいはそれらの任意の組合せに持続的に放出するように、薬物挿入体を適合させることができる。
種々の実施形態では、本発明は、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるインプラント本体を提供し、インプラント本体は、薬物挿入体がインプラント内部に配置されており、インプラントが眼内にまたは眼に隣接して配置された場合に、薬物挿入体の暴露表面が涙液に曝されるように薬物挿入体を受容するように適合されている経路をその中に備え、薬物挿入体は、薬剤に対して実質的に不浸透性であるシース本体を備え、その内部に、治療薬剤、およびポリマーを含むマトリックスを含む薬物コアを含有し、治療薬剤は、マトリックス全体にわたり均一かつ均質に分散するか、またはマトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似し、本体は、生体適合性材料を含み、眼内でまたは眼に隣接して一定期間にわたり保持されるように適合されている。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部内部の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の治療薬剤の量と同一である。種々の実施形態では、薬剤を眼、周囲組織、全身またはそれらの任意の組合せに放出する、かつ/または治療薬剤を眼もしくは周囲組織または全身あるいはそれらの任意の組合せに持続的に放出するように、薬物挿入体を適合させることができる。
種々の実施形態では、本発明は、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるインプラント本体を提供し、インプラント本体は、薬物コアがインプラント内部に配置されており、インプラントが眼内にまたは眼に隣接して配置された場合に、薬物コアの暴露表面が涙液に曝されるように薬物コアを受容するように適合されている経路をその中に備え、薬物コアは、治療薬剤、およびポリマーを含むマトリックスを含み、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似しており、インプラント本体が眼内にまたは眼に隣接して配置された場合に、薬剤の治療分量が、薬物コアの暴露表面から、暴露表面と接触している涙液に放出するように、治療薬剤はマトリックス中で十分に溶解性であり、本体は、生体適合性材料を含み、眼内でまたは眼に隣接して一定期間にわたり保持されるように適合されている。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の等しい容積部中の治療薬剤の量と約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なっていてもよい。種々の実施形態では治療薬剤を眼、周囲組織、全身またはそれらの任意の組合せに放出する、かつ/または治療薬剤を眼もしくは周囲組織または全身あるいはそれらの任意の組合せに持続的に放出するように、薬物コアを適合させることができる。
種々の実施形態では、本発明は、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されているインプラント本体のための薬物挿入体を製造する方法を提供し、挿入体は、治療薬剤およびマトリックスを含む薬物コアを含み、マトリックスはポリマーを含み、治療薬剤は、マトリックス全体にわたり一様かつ均一に分散するか、またはマトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似し、シース本体は、薬物コアの一部を覆って配置されて、インプラントが患者体内に挿入された場合に、前記一部からの薬剤の放出を阻害し、したがって、薬剤を放出するように適合されている、薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定し;この方法は、約20℃未満の周囲温度より低い温度において、マトリックス前駆体および薬剤を含む混合物をシース本体内に注入し、その結果、シース本体を、混合物を用いて実質的に充填するステップと;次いで、マトリックス前駆体を含む混合物をシース本体内部で硬化させて、薬物挿入体を形成し、その結果、暴露表面を有する薬物コアをその中に形成するステップとを含む。種々の実施形態では、薬剤を眼、周囲組織、全身またはそれらの任意の組合せに放出する、かつ/または治療薬剤を眼もしくは周囲組織または全身あるいはそれらの任意の組合せに持続的に放出するように、薬物挿入体を適合させることができる。
種々の実施形態では、本発明は、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されているインプラント本体のための薬物挿入体を製造する方法を提供し、この方法は、約20℃未満の室温より低い温度において、治療薬剤およびマトリックス前駆体を含む混合物を前駆体シース本体内に注入するステップであって、治療薬剤は、マトリックス全体にわたり一様かつ均一に分散するか、またはマトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似し、前駆体シース本体は、薬剤に対して実質的に不浸透性であり、その結果、前駆体シースを、混合物を用いて実質的に充填して、充填済み前駆体シースを得るステップと;次いで、混合物を硬化させ、その結果、前駆体薬物コアを前駆体シース本体内部に形成するステップと、次いで、充填済み前駆体シースを分割して、そこから複数の薬物挿入体を形成するステップとを含み、各薬物挿入体が、薬物コアおよびシース本体を備え、シース本体は、薬物コアの一部を覆って配置されて、挿入体がインプラントの内部に配置されインプラントが患者体内に挿入された場合に、前記一部からの薬剤の放出を阻害し、したがって、薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定し;各挿入体は、個々のインプラント本体内部にはまり、薬剤の治療分量を挿入体の暴露表面を通して涙液に放出するように適合されており;複数の薬物挿入体のそれぞれは、実質的に同一の長さであり、充填済み前駆体シースから分割した複数の挿入体のそれぞれの中の薬剤の量は類似する。
例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なっていてもよい。例えば、複数の挿入体のそれぞれの中の薬剤の量は、それらの間で約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、複数の挿入体のそれぞれの中の薬剤の量は、それらの間で約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、複数の挿入体のそれぞれの中の薬剤の量は、それらの間で約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、複数の挿入体のそれぞれの中の薬剤の量は、それらの間で約5%以下だけ異なっていてもよい。
さらなる実施形態では、薬物挿入体を製造する方法は、本明細書に記載する硬化ステップの後に、充填済みシース本体を複数の薬物挿入体に分割する前または後に、シース本体から薬物コアを押し出すステップをさらに含み、それによって、シース本体材料を含有しない薬物コアを形成する。
種々の実施形態では、上記の方法を利用して、治療薬剤を患者に持続的に送達するためのインプラントを製造し、インプラント全体が、治療薬剤およびマトリックスを含む薬物コアを含み、マトリックスはポリマーを含む。あるいは、多孔性または吸収性の材料を使用して、活性薬剤を用いて飽和させることができるインプラントまたはプラグの全体を構成することもできる。他の実施形態では、本明細書に記載する治療薬剤およびマトリックスを型に添加して、薬物コアを形成し;次いで、薬物コアを硬化させ、次いで、治療薬剤を患者に持続的に送達するためのインプラントとして使用する。
種々の実施形態では、本発明は、本発明の方法によって作製する薬物挿入体を提供する。
種々の実施形態では、本発明は、治療を必要とする患者の不全状態を治療する方法を提供し、この方法は、本発明の薬物挿入体または本発明の薬物コアまたは本発明の充填済み前駆体シースの分割によって得る薬物コアまたは本発明の薬物インプラントまたは本発明の方法によって調製する薬物挿入体を含むインプラントを配置するステップを含み、治療薬剤は、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して不全状態を治療するように適合されており、その結果、薬物が身体組織中または体液中に放出される。
種々の実施形態では、本発明は、治療を必要とする患者の不全状態を治療するように適合されているインプラントの製造における、本発明の薬物挿入体または本発明の薬物コアまたは本発明の充填済み前駆体シースの分割によって得る薬物コアまたは本発明の薬物インプラントまたは本発明の方法によって調製する薬物挿入体の使用を提供する。
種々の実施形態では、本発明は、緑内障の治療のためにラタノプロストを眼に持続的に放出させるための涙点プラグ内部に配置されるように適合されている薬物挿入体を提供し、挿入体は、コア、およびコアを部分的に覆うシース本体を含み、コアは、ラタノプロストおよびマトリックスを含み、マトリックスは、シリコーンポリマーを含み、ラタノプロストは、シリコーン内部にその液滴として含有され、薬物コアの容積部中のラタノプロストの量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中のラタノプロストの量に類似し、シース本体は、コアの一部を覆って配置されて、前記一部からのラタノプロストの放出を阻害し、シース本体によって覆われていないコアの暴露表面は、ラタノプロストを眼に放出するように適合されている。
種々の実施形態では、本発明は、乾燥眼(ドライアイ)または炎症の治療のためにシクロスポリンを眼に持続的に放出させるための涙点プラグ内部に配置されるように適合されている薬物挿入体を提供し、挿入体は、コア、およびコアを部分的に覆うシース本体を含み、コアは、シクロスポリンおよびマトリックスを含み、マトリックスは、ポリウレタンポリマーを含み、シクロスポリンは、ポリウレタン内部に含有され、薬物コアの容積部中のシクロスポリンの量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中のシクロスポリンの量に類似し、シース本体は、コアの一部を覆って配置されて、前記一部からのシクロスポリンの放出を阻害し、シース本体によって覆われていないコアの暴露表面は、シクロスポリンを眼に放出するように適合されている。
種々の実施形態では、本発明は、インプラント内部に配置されるように適合されている薬物挿入体を提供し、インプラントは、体腔、体組織、体管もしくは体液の内部にまたはそれらに隣接して配置されるように適合されていて、治療薬剤を、体腔、体管、体組織もしくは周囲組織またはそれらの任意の組合せに持続的に放出し、挿入体は、薬物コア、および薬物コアを部分的に覆うシース本体を含み、薬物コアは、治療薬剤およびマトリックスを含み、マトリックスはポリマーを含み、治療薬剤は、マトリックス全体にわたり一様かつ均一に分散するか、またはマトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似し、シース本体は、薬物コアの一部を覆って配置されて、インプラントが患者体内に挿入された場合に、前記一部からの薬剤の放出を阻害し、したがって、薬剤を、体腔、体管、体組織もしくは周囲組織またはそれらの任意の組合せに放出するように適合されている、薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定する。
種々の実施形態では、本発明は、インプラント内部に配置されるように適合されている薬物挿入体を提供し、インプラントは、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されていて、治療薬剤を全身に持続的に放出し、挿入体は、薬物コア、および薬物コアを部分的に覆うシース本体を含み、薬物コアは、治療薬剤およびマトリックスを含み、マトリックスはポリマーを含み、治療薬剤は、マトリックス全体にわたり一様かつ均一に分散するか、またはマトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似し、シース本体は、薬物コアの一部を覆って配置されて、インプラントが患者体内に挿入された場合に、前記一部からの薬剤の放出を阻害し、したがって、薬剤を全身に放出するように適合されている、薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定する。
種々の実施形態では、本発明は、薬物挿入体もしくはインプラントとしてまたは薬物挿入体もしくはインプラントの中に配置される、治療薬剤およびマトリックスを含む薬物コアを提供し、マトリックスはポリマーを含み、薬物挿入体またはインプラントは、体腔、体組織、体管もしくは体液の内部にまたはそれらに隣接して配置されるように適合されていて、治療薬剤を、体腔、体管、体組織もしくは周囲組織またはそれらの任意の組合せに持続的に放出し、治療薬剤は、マトリックス全体にわたり一様、均一に分散するか、またはマトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し;薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似する。
種々の実施形態では、本発明は、薬物挿入体もしくはインプラントとしてまたは薬物挿入体もしくはインプラントの中に配置される、治療薬剤およびマトリックスを含む薬物コアを提供し、マトリックスはポリマーを含み、薬物挿入体またはインプラントは、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されていて、治療薬剤を全身に持続的に放出し、治療薬剤は、マトリックス全体にわたり一様、均一に分散するか、またはマトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し;薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似する。薬物コアは、マトリックスを治療薬剤と共に適切な形状に成型することによって、インプラントまたは薬物挿入体に形成することができる。この形態のインプラントには、シースも、外側のインプラント本体も、ハウジングもない。
本発明を制限する意図はないが、治療薬剤は、マトリックスからその表面に輸送され、そこで、薬剤は、分散するか、溶解するかまたはそれ以外では体液と共に取り込まれて、標的組織まで送達されると考えられている。輸送は、拡散、分子の相互作用、ドメインの形成および輸送、体液のマトリックス内への流れ込みもしくは他の機構の結果である場合もあり、かつ/またはそれらに影響される場合もある。眼への送達については、薬剤の治療分量が、マトリックスの暴露表面に輸送され、そこで薬剤は、涙液によって洗い取られて、1つまたは複数の標的組織まで送達される。
本明細書に記載する発明をより良好に説明するために、本発明の例示的な態様および実施形態を、以下に非限定的に列挙する。
態様A1は、インプラント内部に配置されるように適合されている薬物挿入体に関し、前記インプラントは、体腔、体組織、体管もしくは体液の内部にまたはそれらに隣接して配置されるように適合されており、前記挿入体は、薬物コアと、前記薬物コアを部分的に覆うシース本体とを備え、前記薬物コアは、治療薬剤およびマトリックスを含み、前記マトリックスはポリマーを含み、前記シース本体は、前記薬物コアの一部を覆って配置されて、前記インプラントが患者体内に挿入された場合に、前記一部からの前記薬剤の放出を阻害し、したがって、前記薬剤を前記体腔、体組織、体管もしくは体液またはそれらの任意の組合せに放出するように適合されている、前記薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量は、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量に類似する。
実施形態A2は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの前記容積部内部の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の前記治療薬剤の量と約30%以下だけ異なる。
実施形態A3は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの前記容積部内部の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の前記治療薬剤の量と約20%以下だけ異なる。
実施形態A4は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの前記容積部内部の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の前記治療薬剤の量と約10%以下だけ異なる。
実施形態A5は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの前記容積部内部の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部内部の前記治療薬剤の量と約5%以下だけ異なる。
実施形態A6は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記インプラントが涙点プラグである。
実施形態A7は、態様A1の複数の薬物挿入体に関し、それぞれが、その他の挿入体と比べて、前記薬剤の類似濃度を含む。
実施形態A8は、実施形態A7の複数の薬物挿入体に関し、前記薬剤の類似濃度が、それらの間で約30%以下異なる。
実施形態A9は、実施形態A7の複数の薬物挿入体に関し、前記薬剤の類似濃度が、それらの間で約20%以下異なる。
実施形態A10は、実施形態A7の複数の薬物挿入体に関し、前記薬剤の類似濃度が、それらの間で約10%以下異なる。
実施形態A11は、実施形態A7の複数の薬物挿入体に関し、前記薬剤の類似濃度が、それらの間で約5%以下異なる。
実施形態A12は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記インプラントが前記患者体内に挿入された場合に、前記暴露表面が、前記薬剤の治療分量を涙液中に少なくとも数日の期間にわたり放出するように適合されている。
実施形態A13は、実施形態A7の複数の薬物挿入体に関し、前記インプラントが前記患者体内に挿入された場合に、前記複数の薬物挿入体のそれぞれの前記暴露表面が、前記薬剤の治療分量を涙液中に少なくとも数日の期間にわたり放出するように適合されており、前記複数の薬物挿入体のそれぞれによって放出される前記薬剤の前記治療分量が類似する。
実施形態A14は、実施形態A13の複数に関し、前記複数の薬物挿入体のそれぞれによって放出される前記薬剤の前記治療分量が、それらの間で約30%以下だけ異なる。
実施形態A15は、実施形態A13の複数に関し、前記複数の薬物挿入体のそれぞれによって放出される前記薬剤の前記治療分量が、それらの間で約20%以下だけ異なる。
実施形態A16は、実施形態A13の複数に関し、前記複数の薬物挿入体のそれぞれによって放出される前記薬剤の前記治療分量が、それらの間で約10%以下だけ異なる。
実施形態A17は、実施形態A13の複数に関し、前記複数の薬物挿入体のそれぞれによって放出される前記薬剤の前記治療分量が、それらの間で約5%以下だけ異なる。
実施形態A18は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアが、約0.1wt%から約50wt%の薬剤を含む。
実施形態A19は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記マトリックスが、非生分解性シリコーンもしくはポリウレタンまたはそれらの組合せを含む。
実施形態A20は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記シース本体が、ポリイミド、PMMAもしくはPETのうちの少なくとも1つを含むポリマー、またはステンレス鋼もしくはチタンを含む金属を含み、前記ポリマーは、押し出されるかまたは成型される。
実施形態A21は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬剤が、緑内障医薬品、ムスカリン性薬剤、β遮断薬、α作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤またはプロスタグランジンもしくはプロスタグランジン類似体;抗炎症剤;抗感染剤;乾燥眼医薬品;あるいはそれらの任意の組合せを含む。
実施形態A22は、実施形態A21の薬物挿入体に関し、前記抗炎症剤が、ステロイド、軟ステロイドまたはNSAID、および鎮痛特性を示す他の化合物を含む。
実施形態A23は、実施形態A21の薬物挿入体に関し、前記抗感染剤が、抗生物質、抗ウイルス剤または抗真菌剤を含む。
実施形態A24は、実施形態A21の薬物挿入体に関し、前記乾燥眼医薬品が、シクロスポリン、抗ヒスタミン剤、オロパタジン等の肥満細胞安定化剤、粘滑薬またはヒアルロン酸ナトリウムを含む。
実施形態A25は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬剤がラタノプロストを含み、前記薬物挿入体中の前記薬剤の量が約10〜50μgである。
実施形態A26は、態様A1の薬物挿入体に関し、不活性充填剤材料、塩、界面活性剤、分散剤、第2のポリマー、オリゴマーまたはそれらの組合せを含む放出速度改変材料を含む。
実施形態A27は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアが、軸を有する実質的に円筒形の形態であり、前記薬物コアの前記露表面が、前記円筒形の形態の一端部上に配置され、前記シース本体によって覆われている前記薬物コアの表面が、前記円筒形の形態の前記表面の残部を構成する。
実施形態A28は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬剤が、前記薬物コア内部の前記マトリックス中に溶解している。
実施形態A29は、実施形態A28の薬物挿入体に関し、前記薬剤がシクロスポリンを含み、前記マトリックスがポリウレタンを含む。
実施形態A30は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬剤が、前記マトリックス全体にわたり少なくとも部分的に複数の固体または液体の内包物として存在し、前記内包物が、前記薬剤が約25℃未満で液体である場合に、約100μm以下の直径の前記薬剤の液滴を、または前記薬剤が約25℃未満で固体である場合に、約100μm以下の直径の前記薬剤の粒子を約25℃未満の温度において含む。
実施形態A31は、実施形態A30の薬物挿入体に関し、内包物集団内における平均内包物直径および複数の内包物の直径のサイズ分布が、前記薬物コアから前記患者への前記薬剤の放出速度に影響を及ぼす。
実施形態A32は、実施形態A30の薬物挿入体に関し、前記内包物が、約20μm未満の平均直径を有する。
実施形態A33は、実施形態A32の薬物挿入体に関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約8μm未満である。
実施形態A34は、実施形態A30の薬物挿入体に関し、前記内包物が、約15μm未満の平均直径を有する。
実施形態A35は、実施形態A34の薬物挿入体に関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約6μm未満である。
実施形態A36は、実施形態A30の薬物挿入体に関し、前記内包物が、約10μm未満の平均直径を有する。
実施形態A37は、実施形態A36の薬物挿入体に関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約4μm未満である。
実施形態A38は、実施形態A30の薬物挿入体に関し、前記内包物の直径の分布が、単分散分布である。
実施形態A39は、実施形態A30の薬物挿入体に関し、前記内包物が、約0.1μmから約50μmの範囲内の横断面のサイズを主に含む。
実施形態A40は、実施形態A30の薬物挿入体に関し、前記薬剤が、前記マトリックス中に、約25℃未満で液体の物理的状態である内包物を形成する。
実施形態A41は、実施形態A40の薬物挿入体に関し、前記内包物が実質的にすべて、前記マトリックス内部において、約30μm未満の直径の前記薬剤の液滴である。
実施形態A42は、実施形態A40の薬物挿入体に関し、前記液滴が、約10μm未満の平均直径を有する。
実施形態A43は、実施形態A42の薬物挿入体に関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約4μm未満である。
実施形態A44は、実施形態A40の薬物挿入体に関し、前記薬剤が、ラタノプロストである。
実施形態A45は、実施形態A30の薬物挿入体に関し、前記薬剤が、前記マトリックス中に、約25℃未満で固体の物理的状態である内包物を形成する。
実施形態A46は、実施形態A45の薬物挿入体に関し、前記内包物が実質的にすべて、前記マトリックス内部において、約30μm未満の直径の前記薬剤の粒子である。
実施形態A47は、実施形態A45の薬物挿入体に関し、前記マトリックス内部の平均粒子直径が約5〜50μmである。
実施形態A48は、実施形態A45の薬物挿入体に関し、前記薬剤が、ビマトプロスト、オロパタジンまたはシクロスポリンである。
実施形態A49は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記コアが、2つ以上の治療薬剤を含む。
実施形態A50は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアが、第1および第2の薬物コアを含む。
実施形態A51は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記薬物挿入体が、前記シース本体内部に配置された2つの薬物コアを含み、第1の薬物コアが第1の薬剤および第1のマトリックスを含み、第2の薬物コアが第2の薬剤および第2のマトリックスを含み、前記第1の薬剤と前記第2の薬剤とが異なり、前記第1のマトリックスと前記第2のマトリックスとが、同一であるまたは相互に異なるのいずれかであり、前記インプラント本体は、前記シース本体内部に配置される前記第1および前記第2のコアを受容するように適合されている開口部を含み、前記薬物コアは、前記シース内部に前記インプラント本体の前記開口部内部において配置されるように適合されている。
実施形態A52は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記第1のマトリックスと前記第2のマトリックスとが、組成、暴露表面面積、界面活性剤、架橋剤、添加剤、マトリックス材料、処方、放出速度改変試薬または安定性のうちの少なくとも1つに関して相互に異なる。
実施形態A53は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記薬物挿入体が前記インプラント本体内部に配置されており、前記インプラント本体が前記患者の眼内にまたは前記患者の眼に隣接して配置された場合に、前記第1の薬物コアが涙液に直接曝される表面を有し、前記第2の薬物コアが涙液に直接曝される表面を有さないように、前記第1の薬物コアおよび前記第2の薬物コアが、前記シース本体内部に配置される。
実施形態A54は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記第1の薬物コアおよび前記第2の薬物コアが、前記シース本体内部で並んで配置される。
実施形態A55は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記第1の薬物コアおよび前記第2の薬物コアがそれぞれ、円筒形の形状であり、前記シース本体の内部に配置され、前記薬物挿入体が前記インプラント本体内部に配置された場合に、前記第1の薬物コアは、前記インプラント本体中の開口部の近位端部付近に位置し、前記第2の薬物コアは、前記開口部の遠位端部付近に位置する。
実施形態A56は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記第1の薬物コアおよび前記第2の薬物コアがそれぞれ、円筒形の形状であり、ただし、前記第1の薬物コアが第1の中心穴を有し、前記薬物コアは、前記シース本体内部に、前記薬物挿入体を受容するように適合されている前記インプラント本体の開口部内部において同心円状に位置し、前記第2の薬物コアは、前記第1の薬物コアの前記第1の中心穴内部にはまるように構成されている。
実施形態A57は、実施形態A56の薬物挿入体に関し、前記第1および第2の薬物コアが、前記インプラント本体の前記開口部内部において同心円状に位置し、前記第1の薬物コアは、第1の内部表面を暴露する第1の中心穴を有し、前記第2の薬物コアは、第2の内部表面を暴露する第2の中心穴を有し、前記第2の薬物コアは、前記第1の薬物コアの前記第1の中心穴内部にはまるように構成されており、前記開口部は、前記インプラント本体の近位端部から遠位端部まで伸びており、それによって、前記インプラント本体が患者内に挿入された場合に、涙液が前記開口部を通過し、前記第1および第2の中心穴の前記第1および第2の内部表面に接触し、前記第1および第2の治療薬剤を前記患者の小管内に放出することが可能となるように適合されている。
実施形態A58は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記第1の治療薬剤が、前記第1の薬剤が第1の期間を通して治療レベルで放出される放出プロファイルを有し、前記第2の治療薬剤が、前記第2の薬剤が第2の期間を通して治療レベルで放出される第2の放出プロファイルを有する。
実施形態A59は、実施形態A58の薬物挿入体に関し、前記第1の期間および前記第2の期間が、1週間から5年の間である。
実施形態A60は、実施形態A58の薬物挿入体に関し、前記第1の放出プロファイルと前記第2の放出プロファイルとが実質的に同一である。
実施形態A61は、実施形態A58の薬物挿入体に関し、前記第1の放出プロファイルと前記第2の放出プロファイルとが異なる。
実施形態A62は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記第1の薬物コア中および前記第2の薬物コア中の任意の内包物が個々に、約20μm未満の平均直径を有する。
実施形態A63は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記第1の薬物コア中および前記第2の薬物コア中の任意の内包物が個々に、約8μm未満の直径の標準偏差を有する。
実施形態A64は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記インプラント本体が、前記インプラント本体の近位端部から遠位端部まで伸びる中心孔を含み、したがって、涙液が前記インプラント本体を通過することが可能となるように適合されており、前記インプラント本体が前記患者の眼内にまたは前記患者の眼に隣接して配置された場合に、前記第1および第2の治療薬剤が小管内の涙液中に放出される。
実施形態A65は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、前記第1の薬剤が、第1の効果および副作用を患者にもたらし、前記第2の薬剤が、前記第1の薬剤の前記副作用を緩和しまたは打ち消す第2の効果をもたらす。
実施形態A66は、実施形態A50の薬物挿入体に関し、医薬品含浸多孔性材料を前記第1のマトリックス、前記第2のマトリックスまたは両方の内部に配置することをさらに含み、薬物コア含有インプラントが涙点内に配置された場合に、前記医薬品含浸多孔性材料は、涙液に、前記医薬品含浸多孔性材料から前記第1の薬剤、前記第2の薬剤または両方を治療レベルで持続した期間にわたり放出させるように適合されており、前記医薬品含浸多孔性材料は、涙液と接触すると、第1の直径から第2の直径に膨潤することができるゲル材料である。
実施形態A67は、実施形態A66の薬物挿入体に関し、前記第2の直径が、前記第1の直径より約50%大きい。
実施形態A68は、実施形態A66の薬物挿入体に関し、前記医薬品含浸多孔性材料が、HEMA親水性ポリマーである。
実施形態A69は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記マトリックスが、ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーを含む。
実施形態A70は、実施形態A69の薬物挿入体に関し、前記ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーが、脂肪族ポリウレタン、芳香族ポリウレタン、ポリウレタンヒドロゲル形成材料、親水性ポリウレタン、またはそれらの組合せを含む。
実施形態A71は、実施形態A69の薬物挿入体に関し、前記ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーが、水性媒体と接触すると膨潤するように適合されているヒドロゲルを含み、前記シース本体が、それに応答して膨張するために十分な弾性を示すように適合されている。
実施形態A72は、実施形態A71の薬物挿入体に関し、前記膨潤が、前記インプラント本体を前記患者の涙点の管内部に保持するように適合されている。
実施形態A73は、実施形態A69の薬物挿入体に関し、前記治療薬剤が、シクロスポリンもしくはオロパタジン、シクロスポリンもしくはオロパタジンのプロドラッグもしくは誘導体、またはそれらの任意の組合せを含む。
実施形態A74は、実施形態A73の薬物挿入体に関し、前記シクロスポリンもしくは前記オロパタジン、または前記シクロスポリンのプロドラッグもしくは誘導体、または前記オロパタジンのプロドラッグもしくは誘導体、あるいは前記それらの組合せの、前記ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーに対する重量比が、約1wt%から約70wt%である。
実施形態A75は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記コア中の前記薬剤の濃度が、前記暴露表面の近位の前記薬物コアの部分、前記暴露表面の遠位の部分、および前記近位の部分と前記遠位の部分との間に配置された部分において類似する。
実施形態A76は、実施形態A75の薬物挿入体に関し、前記近位の部分が、前記薬物コアの長さの少なくとも約10分の1の長さである。
実施形態A77は、態様A1の薬物挿入体に関し、前記薬物挿入体または前記インプラントが、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されている。
実施形態A78は、態様A1の薬物挿入体に関し、a)前記治療薬剤が、前記マトリックス全体にわたり一様かつ均一に分散するか;またはb)前記治療薬剤が、前記マトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成する。
薬物挿入体の態様、ならびに態様A1の実施形態および実施形態A2〜A76は、組合せに内部的矛盾が生じない限り、任意の様式で組み合わせることができる。例えば、実施形態A6を、実施形態A2〜A5のうちのいずれかと組み合わせることができる。これらの組合せは、複数従属請求項が有するものと同一の概念および意味を、かつまた、他の複数従属請求項に関する複数従属請求項が有する概念および意味も示すことを意図し、したがって、前後の主題のあらゆる組合せが、この態様と実施形態とのセットについて含まれる。
態様Blは、薬物挿入体もしくはインプラントの中にまたは薬物挿入体もしくはインプラントとして配置される、治療薬剤およびマトリックスを含む薬物コアに関し、薬物挿入体またはインプラントは、患者の体腔、体組織、体管もしくは体液の内部にまたはそれらに隣接して配置されるように適合されており、マトリックスはポリマーを含み、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似する。
実施形態B2は、態様B1の薬物コアに関し、薬物挿入体またはインプラントは、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されている。
実施形態B3は、態様B1のコアに関し、a)治療薬剤が、マトリックス全体にわたり一様かつ均一に分散するか;またはb)治療薬剤が、マトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成する。
実施形態B4は、態様B1の薬物コアに関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約30%以下だけ異なる。
実施形態B5は、態様B1の薬物コアに関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約20%以下だけ異なる。
実施形態B6は、態様B1の薬物コアに関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約10%以下だけ異なる。
実施形態B7は、態様B1の薬物コアに関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約5%以下だけ異なる。
実施形態B8は、態様B1の薬物コアに関し、前記治療薬剤が、前記マトリックス全体にわたり一様、均一に分散する。
実施形態B9は、態様B1の薬物コアに関し、前記治療薬剤が、前記マトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成する。
実施形態B10は、態様B1の薬物コアに関し、前記治療薬剤が、前記マトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し、前記内包物が、約20μm未満の平均直径を有する。
実施形態B11は、実施形態B10の薬物コアに関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約8μm未満である。
実施形態B12は、態様B1の薬物コアに関し、前記治療薬剤が、前記マトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成し、前記内包物が、約10μm未満の平均直径を有する。
実施形態B13は、実施形態B12の薬物コアに関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約4μm未満である。
実施形態B14は、態様B1の薬物コアに関し、前記薬物コアの近位部分の周り、中位部分の周り、および遠位部分の周りにおける等しい容積部中の前記治療薬剤の量が類似する。
実施形態B15は、実施形態B14の薬物コアに関し、前記治療薬剤の量が、約30%以下だけ異なる。
実施形態B16は、実施形態B14の薬物コアに関し、前記治療薬剤の量が、約20%以下だけ異なる。
実施形態B17は、実施形態B14の薬物コアに関し、前記治療薬剤の量が、約10%以下だけ異なる。
実施形態B18は、実施形態B16の薬物コアに関し、前記量が、約5%以下だけ異なる。
実施形態B19は、態様B1の薬物コアに関し、前記ポリマーが、非生分解性のシリコーンもしくはポリウレタンまたはそれらの組合せを含む。
実施形態B20は、態様B1の薬物コアに関し、前記薬剤が、緑内障医薬品、ムスカリン性薬剤、β遮断薬、α作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤またはプロスタグランジンもしくはプロスタグランジン類似体;抗炎症剤;抗感染剤;乾燥眼医薬品;あるいはそれらの任意の組合せを含む。
実施形態B21は、実施形態B20の薬物コアに関し、前記抗炎症剤が、ステロイド、軟ステロイドもしくはNSAID、および/または鎮痛特性を示す他の化合物を含む。
実施形態B22は、実施形態B20の薬物コアに関し、前記抗感染剤が、抗生物質、抗ウイルス剤または抗真菌剤を含む。
実施形態B23は、実施形態B20の薬物コアに関し、前記乾燥眼医薬品が、シクロスポリン、抗ヒスタミン剤および肥満細胞安定化剤、オロパタジン、粘滑薬、またはヒアルロン酸ナトリウムを含む。
実施形態B24は、態様B1の薬物コアに関し、前記ポリマーがシリコーンを含む。
実施形態B25は、態様B1の薬物コアに関し、前記治療薬剤がシクロスポリンを含み、前記ポリマーがポリウレタンを含む。
実施形態B26は、態様B1の薬物コアに関し、不活性充填剤材料、塩、界面活性剤、分散剤、第2のポリマー、オリゴマーまたはそれらの組合せを含む放出速度改変材料を含む。
実施形態B27は、態様B1の薬物コアに関し、シース本体内部に配置される。
実施形態B28は、態様B1の薬物コアに関し、患者の体腔、体組織、体管もしくは体液の中にまたはそれらに隣接して配置されるインプラント本体の形状に形成されている。
薬物挿入体の態様、ならびに態様B1の実施形態および実施形態B2〜B28は、組合せに内部的矛盾が生じない限り、任意の様式で組み合わせることができる。例えば、実施形態B6を、実施形態B2〜B5のうちのいずれかと組み合わせることができる。これらの組合せは、複数従属請求項が有するものと同一の概念および意味を、かつまた、他の複数従属請求項に関する複数従属請求項が有する概念および意味も示すことを意図し、したがって、前後の主題のあらゆる組合せが、この態様と実施形態とのセットについて含まれる。
実施形態C1は、前駆体薬物コアを含有する前駆体シース本体を含む充填済み前駆体シースに関し、前記薬物コアは、治療薬剤およびマトリックスを含み、前記マトリックスはポリマーを含み、前記前駆体シース本体は、前記薬剤に対して実質的に不浸透性であり、前記前駆体薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量は、前記前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量に類似する。
実施形態C2は、態様C1の充填済み前駆体シースに関し、複数の薬物挿入体が前記充填済み前駆体シースの分割によって製造されるように適合されており、各薬物挿入体は、個々のインプラント内部に配置されるように適合されており、前記インプラントは、体腔、体組織、体管もしくは体液の内部にまたはそれらに隣接して配置されるように適合されている。
実施形態C3は、態様C1の充填済み前駆体シースに関し、前記インプラントが、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されている。
実施形態C4は、態様C1の前駆体シースに関し、前記前駆体薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約30%以下だけ異なる。
実施形態C5は、態様C1の前駆体シースに関し、前記前駆体薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約20%以下だけ異なる。
実施形態C6は、態様C1の前駆体シースに関し、前記前駆体薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約10%以下だけ異なる。
実施形態C7は、態様C1の前駆体シースに関し、前記前駆体薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約5%以下だけ異なる。
実施形態C8は、態様C1の前駆体シースに関し、前記複数の挿入体の第1の挿入体中の前記薬剤の量が、前記複数の挿入体の任意の他の挿入体中の薬剤の量に類似する。
実施形態C9は、実施形態C8の前駆体シースに関し、前記第1の挿入体中の前記薬剤の量が、任意の他の挿入体中の薬剤の量と比較して約30%以下だけ異なる。
実施形態C10は、実施形態C8の前駆体シースに関し、前記第1の挿入体中の前記薬剤の量が、任意の他の挿入体中の薬剤の量と比較して約20%以下だけ異なる。
実施形態C11は、実施形態C8の前駆体シースに関し、前記第1の挿入体中の前記薬剤の量が、任意の他の挿入体中の薬剤の量と比較して約10%以下だけ異なる。
実施形態C12は、実施形態C8の前駆体シースに関し、前記第1の挿入体中の前記薬剤の量が、任意の他の挿入体中の薬剤の量と比較して約5%以下だけ異なる。
実施形態C13は、態様C1の前駆体シースに関し、前記インプラントが涙点プラグを含み、前記複数の挿入体のそれぞれが、その複数の個々の内部に配置されるように適合されている。
実施形態C14は、実施形態C13の前駆体シースに関し、前記挿入体が涙点プラグ内部に配置されており、前記涙点プラグが患者の涙点内に配置した場合に、そこから分割された各薬物挿入体の各暴露表面が、前記薬剤の治療分量を涙液中に少なくとも数日の期間にわたり放出するように適合されている。
実施形態C15は、態様C1の前駆体シースに関し、前記薬物コアが、約0.1wt%から約50wt%の前記薬剤を含む。
実施形態C16は、態様C1の前駆体シースに関し、前記マトリックスが、非生分解性シリコーンもしくはポリウレタンまたはそれらの組合せを含む。
実施形態C17は、態様C1の前駆体シースに関し、前記シース本体が、ポリイミド、PMMA、PETのうちの少なくとも1つを含むポリマー、またはステンレス鋼もしくはチタンを含み、前記ポリマーは、押し出されるかまたは成型される。
実施形態C18は、態様C1の前駆体シースに関し、前記薬剤が、緑内障医薬品、ムスカリン性薬剤、β遮断薬、α作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤またはプロスタグランジンもしくはプロスタグランジン類似体;抗炎症剤;抗感染剤;乾燥眼医薬品;あるいはそれらの任意の組合せを含む。
実施形態C19は、実施形態C18の前駆体シースに関し、前記抗炎症剤が、ステロイド、軟ステロイドもしくはNSAID、および/または鎮痛特性を示す他の化合物を含む。
実施形態C20は、実施形態C18の前駆体シースに関し、前記抗感染剤が、抗生物質、抗ウイルス剤または抗真菌剤を含む。
実施形態C21は、実施形態C18の前駆体シースに関し、前記乾燥眼医薬品が、シクロスポリン、抗ヒスタミン剤および肥満細胞安定化剤、オロパタジン、粘滑薬、またはヒアルロン酸ナトリウムを含む。
実施形態C22は、態様C1の前駆体シースに関し、前記薬剤がラタノプロストを含み、前記複数の薬物挿入体のそれぞれの中の前記薬剤の量が、約10〜50μgである。
実施形態C23は、態様C1の前駆体シースに関し、前記薬物挿入体が、不活性充填剤材料、塩、界面活性剤、分散剤、第2のポリマー、オリゴマーまたはそれらの組合せを含む放出速度改変材料を含む。
実施形態C24は、態様C1の前駆体シースに関し、刃物またはレーザーを用いて切断することによって分割されるように適合されている。
実施形態C25は、態様C1の前駆体シースに関し、前記薬剤が、前記マトリックス中に溶解している。
実施形態C26は、態様C1の前駆体シースに関し、前記薬剤が、前記マトリックス全体にわたり複数の固体または液体の内包物として分散し、前記内包物が、前記薬剤が約25℃未満で液体である場合に、約100μm以下の直径の前記薬剤の液滴を、または前記薬剤が約25℃未満で固体である場合に、約100μm以下の直径の前記薬剤の粒子を約25℃未満の温度において含む。
実施形態C27は、実施形態C26の前駆体シースに関し、前記内包物が、約20μm未満の平均直径を有する。
実施形態C28は、実施形態C27の前駆体シースに関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約8μm未満である。
実施形態C29は、実施形態C26の前駆体シースに関し、前記内包物が、約10μm未満の平均直径を有する。
実施形態C30は、実施形態C29の前駆体シースに関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約4μm未満である。
実施形態C31は、実施形態C26の前駆体シースに関し、前記複数の内包物の直径のサイズ分布が単分散である。
実施形態C32は、態様C1の前駆体シースに関し、a)前記治療薬剤が、前記マトリックス全体にわたり一様かつ均一に分散するか;またはb)前記治療薬剤が、前記マトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成する。
充填済み前駆体シースの態様、ならびに態様C1の実施形態および実施形態C2〜C32は、組合せに内部的矛盾が生じない限り、任意の様式で組み合わせることができる。例えば、実施形態C6を、実施形態C2〜C5のうちのいずれかと組み合わせることができる。これらの組合せは、複数従属請求項が有するものと同一の概念および意味を、かつまた、他の複数従属請求項に関する複数従属請求項が有する概念および意味も示すことを意図し、したがって、前後の主題のあらゆる組合せが、この態様と実施形態とのセットについて含まれる。
態様D1は、患者の体腔、体組織、体管もしくは体液の中にまたはそれらに隣接して配置されるインプラント本体に関し、前記挿入体が前記インプラント内部に配置されており、前記インプラントが前記体腔、体組織、体管もしくは体液の中にまたはそれらに隣接して配置された場合に、前記挿入体の暴露表面が前記体腔、体組織、体管または体液に曝されるように薬物挿入体を受容するように適合されている経路をその中に備え、前記薬物挿入体は、薬剤に対して実質的に不浸透性であるシース本体を含み、前記シース本体は、治療薬剤、およびポリマーを含むマトリックスを含む薬物コアを含有し、前駆体薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量は、前記前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量に類似する。
実施形態D2は、態様D1のインプラント本体に関し、前記インプラントが、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して配置されるように適合されている。
実施形態D3は、態様D1のインプラント本体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約30%以下だけ異なる。
実施形態D4は、態様D1のインプラント本体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約20%以下だけ異なる。
実施形態D5は、態様D1のインプラント本体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約10%以下だけ異なる。
実施形態D6は、態様D1のインプラント本体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約5%以下だけ異なる。
実施形態D7は、態様D1のインプラントに関し、前記暴露表面が、前記患者の眼内にまたは前記患者の眼に隣接して配置された場合に、前記治療分量を、強膜、角膜または硝子体のうちの少なくとも1つの中に放出することができる。
実施形態D8は、態様D1のインプラントに関し、前記薬剤を涙液中に放出するための、患者の涙点内に配置されるように適合されている涙点プラグを含む。
実施形態D9は、態様D1のインプラントに関し、前記治療薬剤が、前記マトリックス中で溶解性である。
実施形態D10は、態様D1のインプラントに関し、前記治療薬剤が、前記マトリックス内部で内包物を形成するが、前記インプラントが眼内にまたは眼に隣接して配置された場合に、前記暴露表面が前記薬剤の治療分量を涙液に一定期間にわたり放出することができるように十分に前記マトリックス中で溶解性であるかまたは前記マトリックスを通して輸送可能である。
実施形態D11は、態様D1のインプラントに関し、前記薬剤の放出速度が、前記マトリックス中に溶解する前記薬剤の濃度によって部分的には決定される。
実施形態D12は、態様D1のインプラントに関し、前記マトリックスが、前記内包物を含有する、架橋結合した水不溶性の固体材料を含む。
実施形態D13は、実施形態D12のインプラントに関し、前記架橋結合した水不溶性の固体材料が、シリコーンまたはポリウレタンを含む。
実施形態D14は、態様D1のインプラントに関し、前記マトリックスが、有効量の放出速度変更材料をさらに含み、前記放出速度変更材料は、架橋剤、不活性充填剤材料、界面活性剤、分散剤、第2のポリマーもしくはオリゴマーまたはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。
実施形態D15は、態様D1のインプラントに関し、前記薬物コアが、約5%から約50%の前記治療薬剤を含む。
実施形態D16は、実施形態D10のインプラントに関し、薬剤の前記内包物が、液体または固体の物理形態である。
実施形態D17は、態様D1のインプラントに関し、前記シース本体が、ポリイミド、PMMA、PETのうちの少なくとも1つを含むポリマー、またはステンレス鋼もしくはチタンを含み、前記ポリマーは、押し出されるかまたは成型される。
実施形態D18は、態様D1のインプラントに関し、前記インプラント本体が、シリコーンまたはヒドロゲルうちの少なくとも1つを含む。
実施形態D19は、態様D1のインプラントに関し、前記薬剤が、前記マトリックス全体にわたり複数の固体または液体の内包物として含有され、前記内包物が、前記薬剤が約25℃未満で液体である場合に、約200μm以下の直径の前記薬剤の液滴を、または前記薬剤が約25℃未満で固体である場合に、約200μm以下の直径の前記薬剤の粒子を約25℃未満の温度において含む。
実施形態D20は、実施形態D19のインプラントに関し、前記内包物が、約20μm未満の平均直径を有する。
実施形態D21は、実施形態D20のインプラントに関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約8μm未満である。
実施形態D22は、実施形態D19のインプラントに関し、前記内包物が、約15μm未満の平均直径を有する。
実施形態D23は、実施形態D22のインプラントに関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約6μm未満である。
実施形態D24は、実施形態D19のインプラントに関し、前記内包物が、約10μm未満の平均直径を有する。
実施形態D25は、実施形態D24のインプラントに関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約4μm未満である。
実施形態D26は、実施形態D19のインプラントに関し、前記複数の内包物の直径のサイズ分布が単分散である。
実施形態D27は、実施形態D19のインプラントに関し、前記内包物が、約0.1μmから約50μmの範囲内の横断面サイズを含む。
実施形態D28は、実施形態D19のインプラントに関し、前記薬剤が、前記マトリックス中に、約25℃未満で液体の物理的状態である内包物を形成する。
実施形態D29は、実施形態D19のインプラントに関し、前記薬剤が、前記マトリックス中に、約25℃未満で固体の物理的状態である内包物を形成する。
実施形態D30は、態様D1のインプラントに関し、a)治療薬剤が、マトリックス全体にわたり一様かつ均一に分散するか;またはb)治療薬剤が、マトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成する。
インプラント本体の態様、ならびに態様D1の実施形態および実施形態D2〜D30は、組合せに内部的矛盾が生じない限り、任意の様式で組み合わせることができる。例えば、実施形態D6を、実施形態D2〜D5のうちのいずれかと組み合わせることができる。これらの組合せは、複数従属請求項が有するものと同一の概念および意味を、かつまた、他の複数従属請求項に関する複数従属請求項が有する概念および意味も示すことを意図し、したがって、前後の主題のあらゆる組合せが、この態様と実施形態とのセットについて含まれる。
態様E1は、患者の体腔、体組織、体管もしくは体液の内部にまたはそれらに隣接して配置されるように適合されているインプラント本体のための薬物挿入体を製造する方法に関し、前記挿入体は、薬物コアと、前記薬物コアを部分的に覆うシース本体とを備え、前記薬物コアは、治療薬剤およびマトリックスを含み、前記マトリックスはポリマーを含み、前記シース本体は、前記薬物コアの一部を覆って配置されて、前記インプラントが患者体内に挿入された場合に、前記一部からの前記薬剤の放出を阻害し、したがって、前記薬剤を放出するように適合されている、前記薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定し、前記方法は、前記シース本体内に、約25℃未満の温度において、マトリックス前駆体および前記治療薬剤を含む混合物を注入し、その結果、前記シース本体を、それを用いて実質的に充填するステップと;次いで、前記混合物を前記シース本体内部で硬化させて、前記シース本体内部に前記薬物コアを形成するステップとを含み、前記薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似する。
態様E2は、患者の体腔、体組織、体管もしくは体液の内部にまたはそれらに隣接して配置されるように適合されているインプラント本体のための薬物挿入体を製造する方法に関し、前駆体シース本体内に、約25℃未満の温度において、治療薬剤および前駆体マトリックスを含む混合物を注入し、その結果、前記前駆体シースを、それを用いて実質的に充填するステップであって、前記前駆体シース本体は、前記薬剤に対して実質的に不浸透性であるステップと、前記混合物を前記前駆体シース本体中で硬化させて、前駆体薬物コアを含有する硬化した充填済み前駆体シース本体をもたらすステップと、前記硬化した充填済み前駆体シースを分割して、複数の薬物挿入体を形成するステップとを含み、各薬物挿入体は、個々のインプラント本体内部にはまるように適合されており、各薬物挿入体は、薬物コアおよびシース本体を含み、前記シース本体は、前記薬物コアの一部を覆って配置されて、前記挿入体がインプラントの内部に配置されており、前記インプラントが患者体内に挿入された場合に、前記一部からの前記薬剤の放出を阻害し、したがって、前記薬剤を放出するように適合されている、前記薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量は、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量に類似する。
実施形態E3は、態様E2の薬物挿入法を製造する方法に関し、前記複数の薬物挿入体のそれぞれが、実質的に同一の長さであり、前記複数の第1の挿入体中の前記薬剤の量が、前記複数の任意の他の挿入体中の薬剤の量に類似する。
実施形態E4は、態様E1、態様E2または実施形態E3による薬物挿入法を製造する方法に関し、前記インプラントが、患者の眼内または患者の眼に隣接して配置されるように適合されている。
実施形態E5は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約30%以下だけ異なる。
実施形態E6は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約20%以下だけ異なる。
実施形態E7は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約10%以下だけ異なる。
実施形態E8は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬物コアの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量と約5%以下だけ異なる。
実施形態E9は、態様E2の方法に関し、前記複数の挿入体のそれぞれの中の前記薬剤の量が、それらの間で約30%以下だけ異なる。
実施形態E10は、態様E2の方法に関し、前記複数の挿入体のそれぞれの中の前記薬剤の量が、それらの間で約20%以下だけ異なる。
実施形態E11は、態様E2の方法に関し、前記複数の挿入体のそれぞれの中の前記薬剤の量が、それらの間で約10%以下だけ異なる。
実施形態E12は、態様E2の方法に関し、前記複数の挿入体のそれぞれの中の前記薬剤の量が、それらの間で約5%以下だけ異なる。
実施形態E13は、態様E2の方法に関し、前記前駆体挿入体を分割するステップが、前記前駆体挿入体を刃物またはレーザーを用いて切断することを含む。
実施形態E14は、態様E1またはE2の方法に関し、前記インプラントが、前記患者の涙点内に配置されるように適合されている涙点プラグを含む。
実施形態E15は、実施形態E14の方法に関し、前記挿入体が、前記涙点プラグ中に配置されており、前記涙点プラグが患者の涙点内に配置した場合に、前記暴露表面が、前記薬剤の治療分量を涙液中に少なくとも数日の期間にわたり放出するように適合されている。
実施形態E16は、態様E1またはE2の方法に関し、前記混合物が、前記マトリックス前駆体および前記薬剤が溶解性を示す溶媒をさらに含み、硬化ステップが、前記シース本体または前駆体シース本体のそれぞれの中への注入ステップの後に、前記溶媒の少なくとも部分的な除去を含む。
実施形態E17は、実施形態E16の方法に関し、硬化ステップが、加熱、真空処理または両方を含む。
実施形態E18は、実施形態E16の方法に関し、前記溶媒が、炭化水素、エステル、ハロカーボン、アルコール、アミドまたはそれらの組合せを含む。
実施形態E19は、実施形態E16の方法に関し、前記溶媒がハロカーボンを含み、前記薬剤がシクロスポリンを含む。
実施形態E20は、態様E1またはE2の方法に関し、前記混合物を硬化するステップが、前記混合物を、ある相対湿度において一定期間である温度までに加熱することを含む。
実施形態E21は、実施形態E20の方法に関し、前記温度が約20℃から約100℃の範囲を含み、前記相対湿度が約40%から約100%の範囲を含み、前記期間が約1分から約48時間の範囲を含む。
実施形態E22は、実施形態E21の方法に関し、前記温度が少なくとも約40℃であり、前記相対湿度が少なくとも約80%であり、または両方である。
実施形態E23は、態様E1またはE2の方法に関し、硬化ステップが、前記マトリックス前駆体の重合もしくは架橋結合または両方のステップを含む。
実施形態E24は、実施形態E23の方法に関し、触媒の存在下における重合もしくは架橋結合または両方を含む。
実施形態E25は、実施形態E24の方法に関し、前記触媒が、スズ化合物または白金化合物を含む。
実施形態E26は、実施形態E24の方法に関し、前記触媒が、ビニル水素化物系を有する白金またはアルコキシ系を有するスズのうちの少なくとも1つを含む。
実施形態E27は、態様E1またはE2の方法に関し、前記混合物が、超音波処理を含む方法によって調製される。
実施形態E28は、態様E1またはE2の方法に関し、注入ステップが、少なくとも約40psiの圧力下における注入を含む。
実施形態E29は、態様E1またはE2の方法に関し、前記温度が、約−50℃から約25℃の温度を含む。
実施形態E30は、態様E1またはE2の方法に関し、前記温度が、約−20℃から約0℃の温度を含む。
実施形態E31は、態様E1またはE2の方法に関し、前記シース本体または前駆体シース本体がそれぞれ、約0.5cm/秒以下の速度で充填されるように、前記混合物が注入される。
実施形態E32は、態様E1またはE2の方法に関し、各薬物挿入体が、その一端部において密封され、第2の端部が暴露表面をもたらす。
実施形態E33は、実施形態E32の方法に関し、各薬物挿入体が、UV硬化性接着剤、シアノアクリレート、エポキシを用いて、つまむことによって、加熱溶接を用いて、または蓋を用いて、その一端部において密封される。
実施形態E34は、実施形態E33の方法に関し、前記薬物挿入体に、UV硬化性接着剤を加えてUV光を照射するステップをさらに含む。
実施形態E35は、実施形態E33の方法に関し、各薬物挿入体を、その一端部を密封した後に、前記挿入体をその中に受容するように適合されているインプラント本体の経路中に挿入するステップをさらに含む。
実施形態E36は、態様E1またはE2の方法に関し、前記挿入体が、約0.1wt%から約50wt%の前記薬剤を含む。
実施形態E37は、態様E1またはE2の方法に関し、前記マトリックスが、非生分解性シリコーンまたはポリウレタンを含む。
実施形態E38は、態様E1またはE2の方法に関し、前記シースまたは前駆体シースが、ポリイミド、PMMA、PET、ステンレス鋼またはチタンのうちの少なくとも1つを含む。
実施形態E39は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬剤が、緑内障医薬品、ムスカリン性薬剤、β遮断薬、α作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤またはプロスタグランジンもしくはプロスタグランジン類似体;抗炎症剤;抗感染剤;乾燥眼医薬品;あるいはそれらの任意の組合せを含む。
実施形態E40は、実施形態E39の方法に関し、前記抗炎症剤が、ステロイド、軟ステロイドもしくはNSAID、および/または鎮痛特性を示す他の化合物を含む。
実施形態E41は、実施形態E39の方法に関し、前記抗感染剤が、抗生物質、抗ウイルス剤または抗真菌剤を含む。
実施形態E42は、実施形態E39の方法に関し、前記乾燥眼医薬品が、シクロスポリン、オロパタジン、粘滑薬またはヒアルロン酸ナトリウムを含む。
実施形態E43は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬剤がラタノプロストを含み、前記マトリックスがシリコーンまたはポリウレタンを含み、前記複数の薬物挿入体のそれぞれの中の前記薬剤の量が約10〜50μgである。
実施形態E44は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬剤がシクロスポリンを含み、前記マトリックスがシリコーンまたはポリウレタンを含み、前記複数の薬物挿入体のそれぞれの中の前記薬剤の相対的な量が、前記コアの約1%から約50%の範囲である。
実施形態E45は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬物挿入体が、不活性充填剤材料、塩、界面活性剤、分散剤、第2のポリマー、オリゴマーまたはそれらの組合せを含む放出速度改変材料を含む。
実施形態E46は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬物コアが、軸を有する実質的に円筒形の形態であり、前記シースによって覆われていない前記薬物コアの表面が、前記円筒形の形態の一端部上に配置され、前記シースによって覆われている前記薬物コアが、前記円筒形の形態の前記表面の残部上に配置される。
実施形態E47は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬剤が、前記マトリックス中に溶解している。
実施形態E48は、実施形態E47の方法に関し、前記薬剤がシクロスポリンを含み、前記マトリックスがポリウレタンを含む。
実施形態E49は、態様E1またはE2の方法に関し、前記薬剤が、前記マトリックス内部で複数の固体または液体の内包物として分散し、前記内包物が、前記薬剤が約25℃未満で液体である場合に、約200μm以下の直径の前記薬剤の液滴を、または前記薬剤が約25℃未満で固体である場合に、約200μm以下の直径の前記薬剤の粒子を約25℃未満の温度において含む。
実施形態E50は、実施形態E49の方法に関し、前記内包物が、約20μm未満の平均直径を有する。
実施形態E51は、実施形態E50の方法に関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約8μm未満である。
実施形態E52は、実施形態E49の方法に関し、前記内包物が、約15μm未満の平均直径を有する。
実施形態E53は、実施形態E52の方法に関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約6μm未満である。
実施形態E54は、実施形態E49の方法に関し、前記内包物が、約10μm未満の平均直径を有する。
実施形態E55は、実施形態E54の方法に関し、前記内包物の直径の標準偏差が、約4μm未満である。
実施形態E56は、実施形態E49の方法に関し、前記内包物の直径の分布が、単分散分布である。
実施形態E57は、実施形態E49の方法に関し、前記混合物が、超音波処理を含む工程によって調製される。
実施形態E58は、実施形態E49の方法に関し、前記内包物が、約0.1μmから約50μmの範囲内の横断面サイズを含む。
実施形態E59は、実施形態E49の方法に関し、前記薬剤が、前記マトリックス内部に、約25℃未満で液体の物理的状態である内包物を形成する。
実施形態E60は、実施形態E59の方法に関し、前記内包物が実質的にすべて、前記マトリックス内部において、約50μm未満の直径の前記薬剤の液滴である。
実施形態E61は、実施形態E59の方法に関し、前記マトリックス内部の平均液滴直径が、約5〜50μmである。
実施形態E62は、実施形態E59の方法に関し、前記薬剤がラタノプロストである。
実施形態E63は、実施形態E49の方法に関し、前記薬剤の物理的状態が、約25℃未満で固体である。
実施形態E64は、実施形態E63の方法に関し、前記薬剤が、前記マトリックス中に内包物を形成し、前記内包物の物理的状態が、約25℃未満で固体である。
実施形態E65は、実施形態E63の方法に関し、前記内包物が実質的にすべて、前記マトリックス内部において、約50μm未満の直径の前記薬剤の粒子である。
実施形態E66は、実施形態E63の方法に関し、前記マトリックス内部の平均粒子直径が、約5〜50μmである。
実施形態E67は、実施形態E63の方法に関し、前記薬剤が、ビマトプロスト、オロパタジンまたはシクロスポリンである。
実施形態E68は、態様E1またはE2の方法に関し、各薬物挿入体が、2つ以上の治療薬剤を含む。
実施形態E69は、態様E1またはE2の方法に関し、各薬物コアが、第1および第2の薬物コアを含む。
実施形態E70は、実施形態E69の方法に関し、前記第1および第2の薬物コアが並んで位置し、一緒になって、前記シース本体内部において前記薬物コアである円柱を形成する。
実施形態E71は、実施形態E69の方法に関し、前記薬物コアが、2つの薬物コアを含み、第1の薬物コアが、第1の薬剤および第1のマトリックスを含み、第2の薬物コアが、第2の薬剤および第2のマトリックスを含み、前記第1の薬剤と前記第2の薬剤とが異なり、前記第1のマトリックスと前記第2のマトリックスとが、同一であるまたは相互に異なるのいずれかであり、前記インプラント本体は、前記第1および前記第2の薬物コアを含む前記薬物挿入体を受容するように適合されている開口部を含み、前記薬物コアを前記挿入体内部に配置してから、前記挿入体を前記インプラント本体の前記開口部内部に配置するステップをさらに含む。
実施形態E72は、実施形態E71の方法に関し、前記第1のマトリックスと前記第2のマトリックスとが、組成、暴露表面面積、界面活性剤、架橋剤、添加剤、マトリックス材料、処方または安定性のうちの少なくとも1つに関して相互に異なる。
実施形態E73は、実施形態E71の方法に関し、前記第1の薬物コアが涙液に直接曝される表面を有し、前記第2の薬物コアが前記第1の薬物コアに曝される表面を有するように、前記第1の薬物コアおよび前記第2の薬物コアが、前記シース内部に配置される。
実施形態E74は、実施形態E71の方法に関し、前記第1の薬物コアおよび前記第2の薬物コアが、前記シース内部で並んで配置される。
実施形態E75は、実施形態E71の方法に関し、前記第1の薬物コアおよび前記第2の薬物コアがそれぞれ、円筒形の形状であり、前記薬物コアの内部に配置され、前記第1の薬物コアは、前記薬物コアを受容するように適合されている前記インプラント本体中の開口部の近位端部付近に位置し、前記第2の薬物コアは、前記開口部の遠位端部付近に位置する。
実施形態E76は、実施形態E71の方法に関し、前記第1の薬物コアおよび前記第2の薬物コアがそれぞれ、円筒形の形状であり、前記薬物コアを受容するように適合されている前記インプラント本体の開口部内部において同心円状に位置し、前記第1の薬物コアは、第1の中心穴を有し、前記第2の薬物コアは、前記第1の薬物コアの前記第1の中心穴内部にはまるように構成されている。
実施形態E77は、実施形態E71の方法に関し、前記第1および第2の薬物コアが、前記開口部内部において同心円状に位置し、前記第1の薬物コアは、第1の内部表面を暴露する第1の中心穴を有し、前記第2の薬物コアは、第2の内部表面を暴露する第2の中心穴を有し、前記第2の薬物コアは、前記第1の薬物コアの前記第1の中心穴内部にはまるように構成されており、前記開口部は、涙液または涙膜液が前記開口部を通過し、前記第1および第2の中心穴の前記第1および第2の内部表面に接触し、前記第1および第2の治療薬剤を小管内に放出することが可能となるように適合されている埋込み型本体の近位端部から遠位端部まで伸びている。
実施形態E78は、実施形態E71の方法に関し、前記挿入体が、埋め込まれた場合に、前記第1の治療薬剤が第1の期間を通して治療レベルで放出し、前記第2の治療薬剤が第2の期間を通して治療レベルで放出するように適合されている。
実施形態E79は、実施形態E71の方法に関し、前記第1の治療薬剤が第1の期間を通して治療レベルで放出し、前記第2の治療薬剤が第2の期間を通して治療レベルで放出する。
実施形態E80は、実施形態E79の方法に関し、前記第1の期間および前記第2の期間が、1週から5年の間である。
実施形態E81は、実施形態E79の方法に関し、前記第1の期間と前記第2の期間とが実質的に同一である。
実施形態E82は、実施形態E79の方法に関し、前記第1の期間と前記第2の期間とが異なる。
実施形態E83は、実施形態E71の方法に関し、前記開口部を覆う、前記インプラント本体に連結している頭部を配置するステップをさらに含み、前記頭部は、前記第1および第2の治療薬剤に対して浸透性である。
実施形態E84は、実施形態E71の方法に関し、前記治療レベルが、滴下投与分量以下である。
実施形態E85は、実施形態E71の方法に関し、前記治療レベルが、滴下投与分量の10%未満である。
実施形態E86は、実施形態E71の方法に関し、医薬品含浸多孔性材料を前記第1のマトリックス、前記第2のマトリックスまたは両方の内部に配置するステップをさらに含み、前記医薬品含浸多孔性材料は、薬物コア含有インプラントが涙点内に配置した場合に、涙液がそこから前記第1の薬剤、前記第2の薬剤または両方を治療レベルで持続した期間にわたり放出するように適合されており、第1の直径から第2の直径に膨潤することができるゲル材料である。
実施形態E87は、実施形態E86の方法に関し、前記第2の直径が、前記第1の直径より約50%大きい。
実施形態E88は、実施形態E86の方法に関し、前記医薬品含浸多孔性材料が、HEMA親水性ポリマーである。
実施形態E89は、実施形態E71の方法に関し、涙液が前記インプラント本体を通過し、前記第1および第2の治療薬剤を小管内に放出することが可能となるように適合されている前記インプラント本体の近位端部から遠位端部に伸びる中心孔を、前記インプラント本体が含む。
実施形態E90は、実施形態E71の方法に関し、前記第1の薬剤が、第1の効果および副作用を患者にもたらし、前記第2の薬剤が、前記第1の薬剤の前記副作用を和らげるまたは無効にする第2の効果をもたらす。
実施形態E91は、態様E1またはE2の方法に関し、前記マトリックスが、ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーを含む。
実施形態E92は、実施形態E91の方法に関し、前記ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーが、脂肪族ポリウレタン、芳香族ポリウレタン、ポリウレタンヒドロゲル形成材料、親水性ポリウレタン、またはそれらの組合せを含む。
実施形態E93は、実施形態E91の方法に関し、前記ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーが、水性媒体と接触すると膨潤するように適合されているヒドロゲルを含み、前記シースが、それに応答して膨張するために十分な弾性を示すように適合されている。
実施形態E94は、実施形態E93の方法に関し、前記膨潤が、前記プラグを涙点の管内部に保持するように適合されている。
実施形態E95は、実施形態E91の方法に関し、前記治療薬剤が、シクロスポリンもしくはオロパタジン、シクロスポリンもしくはオロパタジンのプロドラッグもしくは誘導体、またはそれらの任意の組合せを含む。
実施形態E96は、実施形態E95の方法に関し、前記シクロスポリンもしくは前記オロパタジン、または前記シクロスポリンのプロドラッグもしくは誘導体、または前記オロパタジンのプロドラッグもしくは誘導体、あるいは前記それらの組合せの、前記ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーに対する重量比が、約1wt%から約70wt%である。
実施形態E97は、実施形態E95の方法に関し、前記ポリウレタンのポリマーまたはコポリマー、および前記シクロスポリンもしくはオロパタジンまたはシクロスポリンもしくはオロパタジンの前記プロドラッグもしくは誘導体あるいはそれらの組合せの分量または濃度を選択して、前記薬剤の、前記患者の涙液中への放出プロファイルを得る。
実施形態E98は、実施形態E91の方法に関し、前記薬物コアが、第2の治療薬剤をさらに含む。
実施形態E99は、実施形態E91の方法に関し、前記ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーと前記治療薬剤とを融解および混合することによって前記混合物を形成するステップを含む。
実施形態E100は、実施形態E99の方法に関し、前記治療薬剤が、前記混合物中の溶融した形態である。
実施形態E101は、実施形態E99の方法に関し、前記治療薬剤が、前記混合物中の固体の形態である。
実施形態E102は、態様E1またはE2の方法によって作製される薬物挿入体に関する。
実施形態E103は、態様E1またはE2の方法に関し、温度は、約25℃未満の温度を含む。
実施形態E104は、態様E1またはE2の方法に関し、温度は、約15℃未満の温度を含む。
実施形態E105は、態様E1またはE2の方法に関し、温度は、約10℃未満の温度を含む。
実施形態E106は、態様E1またはE2の方法に関し、温度は、約5℃未満の温度を含む。
実施形態E107は、態様E1またはE2の方法に関し、a)治療薬剤が、マトリックス全体にわたり一様かつ均一に分散するか;またはb)治療薬剤が、マトリックス内部に少なくとも部分的に固体もしくは液体の内包物を形成する。
製造方法の態様、さらに態様E1およびE2の実施形態ならびに実施形態E3〜E107は、組合せに内部的矛盾が生じない限り、任意の様式で組み合わせることができる。例えば、実施形態E6を、実施形態E3〜E5のうちのいずれかと組み合わせることができる。これらの組合せは、複数従属請求項が有するものと同一の概念および意味を、かつまた、他の複数従属請求項に関する複数従属請求項が有する概念および意味も示すことを意図し、したがって、前後の主題のあらゆる組合せが、この態様と実施形態とのセットについて含まれる。
態様F1は、治療を必要とする患者の不全状態を治療する方法に関し、この方法は、態様A1および実施形態A2〜A78のうちのいずれか1つの薬物挿入体、または態様B1および実施形態B2〜B28のうちのいずれか1つの薬物コア、または態様C1および実施形態C2〜C32のうちのいずれか1つの充填済み前駆体シースの分割によって得る薬物コア、または態様D1および実施形態D2〜D30のうちのいずれか1つの薬物インプラント、または実施形態E102の薬物挿入体を含むインプラントを、患者内に配置するステップを含み、治療薬剤は、患者の眼内にまたは患者の眼に隣接して不全状態を治療するように適合されており、その結果、薬物が身体組織中または体液中に放出される。
実施形態F2は、態様F1の方法に関し、前記不全状態が緑内障を含み、前記薬剤がプロスタグランジン類似体である。
実施形態F3は、実施形態F2の方法に関し、前記マトリックスが、非生分解性のシリコーンまたはポリウレタンのポリマーを含む。
実施形態F4は、実施形態F2の方法に関し、前記プロスタグランジン類似体がラタノプロストである。
実施形態F5は、態様F1の方法に関し、前記不全状態が、乾燥眼または眼の炎症を含み、前記薬剤が、シクロスポリンもしくはオロパタジン、またはシクロスポリンもしくはオロパタジンのプロドラッグもしくは誘導体である。
実施形態F6は、実施形態F5の方法に関し、前記マトリックスがポリウレタンを含む。
態様G1は、ラタノプロストを緑内障の治療を必要とする患者の眼に持続的に放出させるための涙腺インプラント内部に配置されるように適合されている薬物挿入体に関し、薬物コアと、前記薬物コアを部分的に覆うシース本体とを備え、前記薬物コアは、ラタノプロストおよびマトリックスを含み、前記マトリックスはシリコーンポリマーを含み、前記シース本体は、前記薬物コアの一部を覆って配置されて、その一部からの前記ラタノプロストの放出を阻害し、したがって、前記シース本体によって覆われていない、前記薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定し、それによって、前記ラタノプロストを前記眼に放出するように適合されており、前記薬物コアの容積部中の前記ラタノプロストの量は、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記ラタノプロストの量に類似する。
実施形態G2は、態様G1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記ラタノプロストの量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記ラタノプロストの量と約30%以下だけ異なる。
実施形態G3は、態様G1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記ラタノプロストの量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記ラタノプロストの量と約20%以下だけ異なる。
実施形態G4は、態様G1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記ラタノプロストの量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記ラタノプロストの量と約10%以下だけ異なる。
実施形態G5は、態様G1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記ラタノプロストの量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記ラタノプロストの量と約5%以下だけ異なる。
実施形態G6は、態様G1の薬物挿入体に関し、ラタノプロストが、シリコーン内部にその液滴として分散している。
薬物挿入体の態様、ならびに態様G1の実施形態および実施形態G2〜G6は、組合せに内部的矛盾が生じない限り、任意の様式で組み合わせることができる。例えば、実施形態G6を、実施形態G2〜G5のうちのいずれかと組み合わせることができる。これらの組合せは、複数従属請求項が有するものと同一の概念および意味を、かつまた、他の複数従属請求項に関する複数従属請求項が有する概念および意味も示すことを意図し、したがって、前後の主題のあらゆる組合せが、この態様と実施形態とのセットについて含まれる。
態様H1は、シクロスポリンを乾燥眼または眼の炎症の治療のために眼に持続的に放出させるための涙点プラグ内部に配置されるように適合されている薬物挿入体に関し、薬物コアと、前記薬物コアを部分的に覆うシース本体とを備え、前記薬物コアは、シクロスポリンおよびマトリックスを含み、前記マトリックスはポリウレタンポリマーを含み、前記シース本体は、前記薬物コアの一部を覆って配置されて、前記一部からの前記シクロスポリンの放出を阻害し、したがって、前記シース本体によって覆われていない、前記薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定し、前記シクロスポリンを前記眼に放出するように適合されており、前記薬物コアの容積部中の前記シクロスポリンの量は、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記シクロスポリンの量に類似する。
実施形態H2は、態様H1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記シクロスポリンの量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記シクロスポリンの量と約30%以下だけ異なる。
実施形態H3は、態様H1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記シクロスポリンの量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記シクロスポリンの量と約20%以下だけ異なる。
実施形態H4は、態様H1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記シクロスポリンの量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記シクロスポリンの量と約10%以下だけ異なる。
実施形態H5は、態様H1の薬物挿入体に関し、前記薬物コアの容積部中の前記シクロスポリンの量が、前記薬物コアの任意の他の等しい容積部中の前記シクロスポリンの量と約5%以下だけ異なる。
実施形態H6は、態様H1の薬物挿入体に関し、シクロスポリンが、ポリウレタン内部に溶解している。
薬物挿入体の態様、ならびに態様H1の実施形態および実施形態H2〜H6は、組合せに内部的矛盾が生じない限り、任意の様式で組み合わせることができる。例えば、実施形態H6を、実施形態H2〜H5のうちのいずれかと組み合わせることができる。これらの組合せは、複数従属請求項が有するものと同一の概念および意味を、かつまた、他の複数従属請求項に関する複数従属請求項が有する概念および意味も示すことを意図し、したがって、前後の主題のあらゆる組合せが、この態様と実施形態とのセットについて含まれる。
さらなる態様および実施形態として、以下を含む。
眼もしくは周囲組織または全身あるいはそれらの任意の組合せに持続的に放出するように適合されている態様A1および実施形態A1〜A78のうちのいずれか1つの薬物挿入体、または態様B1および実施形態B2〜B28のうちのいずれか1つの薬物コア、または態様C1および実施形態C2〜C32のうちのいずれか1つの充填済み前駆体シースの分割によって得る薬物コア、または態様D1および実施形態D2〜D30のうちのいずれか1つの薬物インプラント、または実施形態E102の薬物挿入体。
患者の体腔、体組織、体管もしくは体液の中にまたはそれらに隣接して配置されるインプラント本体の形状に形成されている、態様A1および実施形態A2〜A78のいずれか一項に記載の薬物コア。
本発明の別の態様は、治療を必要とする患者の不全状態を治療するように適合されているインプラントの製造における、態様A1および実施形態A2〜A78のうちのいずれか1つの薬物挿入体、または態様B1もしくは実施形態B2〜B28のうちのいずれか1つの薬物コア、または態様C1もしくは実施形態C2〜C32のうちのいずれか1つの充填済み前駆体シースの分割によって得る薬物コア、または態様D1もしくは実施形態D2〜D30のうちのいずれか1つの薬物インプラント、または実施形態E102の薬物挿入体の使用に関する。
本発明の別の態様は、ポリマーおよびその中に配置されている治療薬剤を含むインプラントに関し、前記インプラントの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記インプラントの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量に類似する。
本発明のさらなる態様は、ポリマーおよびその中に配置されている治療薬剤を含むインプラントを製造する方法に関し、前記インプラントの容積部中の前記治療薬剤の量が、前記インプラントの任意の他の等しい容積部中の前記治療薬剤の量に類似し、ポリマーおよび治療薬剤を含む混合物を型内に注入するステップを含む方法において、前記方法が、前記混合物を約25℃未満の温度において注入するステップを含む。
[定義]
別段の記載がない限り、この文書に提示する単語および句は、当業者にとってのそれらの通常の意味を有する。そのような通常の意味は、当技術分野におけるそれらの使用を参照したり、一般的および科学的な辞書、例えば、Webster’s Third New International Dictionary,Merriam−Webster Inc,Springfield,MA,1993、The American Heritage Dictionary of the English Language,Houghton Mifflin,Boston MA,1981、およびHawley’s Condensed Chemical Dictionary,14th edition,Wiley Europe,2002を参照したりすることによって得ることができる。
特定の用語の以下の説明は、包括的ではなく、むしろ例示的であることを意図している。これらの用語には、当技術分野における使用によって生じるそれらの通常の意味があり、さらに、以下の説明も含まれる。
本明細書で使用する場合、用語「約(about)」は、特定する値の10パーセントの変動を指し;例えば、約50パーセントには、45〜55パーセントの変動が伴う。
本明細書で使用する場合、用語「および/または(and/or)」は、項目のうちの任意の1つ、項目の任意の組合せ、またはこの用語が関係する項目のすべてを指す。
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、そうでないことが文脈から明確に示されない限り、複数についての言及も包含する。
本明細書で使用する場合、「対象」または「患者」は、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシおよびブタ等の哺乳動物を包含する。
「治療薬剤」は、患者の不全状態を治療するために有効であり、医学的に必要とされる薬用化合物またはその混合物である。
本明細書における意味の範囲内での「治療する」または「治療」は、障害もしくは疾患に伴う症状の軽減、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化の阻害、または疾患もしくは障害の予防もしくは予防法を指す。同様に、本明細書で使用する場合、治療薬剤の文脈における「有効量」、または治療薬剤の「治療有効量」は、障害もしくは状態に伴う症状を全部もしくは一部軽減する、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化を停止させるもしくは緩慢にする、または障害もしくは状態を予防するもしくはそれらについての予防法を提供する薬剤の量を指す。特に、「有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要である投与量および期間において有効である量を指す。また、治療有効量は、本発明の化合物の何らかの毒性効果または有害効果を、治療に有益な効果が上回る量でもある。用語「有効量」を、分散剤の有効量等の機能材料の文脈において使用する場合に、使用する機能材料の量が、所望の結果を達成するために有効であることを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「インプラント」は、患者の身体の一部の内部にまたはそれに隣接して挿入されるように適合されている物理的な装置を指すが、必ずしも外科的な設置によるとは限らない。例えば、涙点プラグ等のインプラントを、患者の眼の涙点を通して小管内に挿入する場合に、眼瞼下で眼球と接触して保たれるように適合されている装置を設置する場合と同様、外科的介入の関与を必要としない。材料を動作する場所に配置した場合に、それらが身体組織または体液と実際に接触するようになる範囲では、インプラントは生体適合性材料で形成される。本明細書で定義するように、インプラントは、「薬物挿入体」を受容するように適合されている、すなわち、特定の状態を治療するために特定の患者に投与すべき治療薬剤を含有する構造であり、かつ治療薬剤を標的の組織または臓器に一定期間にわたり放出するように適合されている。薬剤の治療分量を一定期間にわたり放出することは、当技術分野ではよく知られているように、「持続放出」または「制御放出」と呼ばれる。
用語「眼および周囲組織」とは、眼球のみならず、周囲の結膜、涙管、小管(涙液を副鼻腔に排出する管)、眼瞼および関連の身体構造もまた意味する。
本明細書で使用する場合、用語「ポリマー」は、当技術分野ではよく知られているように、1つまたは複数の反復単位を含有する有機巨大分子を指す。「コポリマー」は、少なくとも2つの型の反復単位が含まれるポリマーを指す。コポリマーは、ブロックコポリマーであってよく、この中には、1つの型の複数の反復単位を含有するセグメントであって、第2の型の複数の反復単位を含有するセグメントに結合したセグメントがある。「ポリマー」または「ポリマー材料」は、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、多糖、ポリイミド等であってもよく、または任意のそれらのコポリマーであってもよい。ポリマー材料が、身体組織または体液と接触することになるはずである場合に、ポリマー材料は生体適合性である。
「マトリックス」は、中に治療薬剤が分散する有機ポリマーを含む材料であり、これらの材料の組合せを「コア」と呼び、これは、薬剤を一定期間にわたり放出する薬剤のリザーバとして働く。
用語「前駆体」は、本発明の文脈において使用する場合、および任意の特定の項目に適用する場合、続いて操作して、最終の品目、装置、項目または化合物等を形成する中間または前駆または前の品目、装置、項目または化合物を意味する。例えば、「前駆体シース」は、細長いチューブであって、マトリックスを用いて充填し、次いで、切断すると、挿入体のシースを形成するチューブである。本明細書で使用するこの言葉の別の例では、「マトリックス前駆体」を「硬化」させて、マトリックスを形成する。マトリックス前駆体自体がポリマーであってよく、例えば、架橋させることによって硬化させることができる。または、マトリックス前駆体は、溶媒中に溶解させたポリマーであってもよく、硬化には、溶媒を除去して、ポリマー性のマトリックス材料を得ることが含まれる。または、マトリックス前駆体は、モノマーであってもよく、硬化には、モノマーの重合が関与することができ、また、溶媒の除去、および重合によって形成したポリマーの架橋が関与する場合もある。さらなる例では、前駆体薬物コアは、適切な長さに切断して、薬物コアを形成することができる、治療薬剤を含有する硬化させたマトリックスである。前駆体薬物コアの典型的な適用例が、充填済み前駆体シースである。充填済み前駆体シースは、適切な長さに切断することができる、前駆体薬物コアを含有する前駆体シース本体であり、それによって、本発明の薬物挿入体が生成される。
本明細書で使用する場合、用語「薬剤」、「治療薬剤」または「薬物」は、患者の不全状態を治療するために適切であり、医学的に必要とされる薬用材料、化合物またはそれらの混合物を指す。薬剤は、材料の融点に依存して、室温付近または体温付近において、固体の物理形態であっても、または液体の物理形態であってもよい。本明細書において、治療薬剤の例を提供する。眼の不全状態の治療については、本発明の挿入体に含ませることができる薬剤の型またはクラスの特異的な例として、緑内障医薬品、ムスカリン性薬剤、β遮断薬、α作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤またはプロスタグランジンもしくはプロスタグランジン類似体;抗炎症剤;抗感染剤;乾燥眼医薬品;あるいはそれらの任意の組合せが挙げられる。より具体的には、緑内障医薬品の例は、プロスタグランジンまたはプロスタグランジン類似体である。ムスカリン性薬剤の例は、ピロカルピンである。β遮断薬の例は、ベタキソロールである。α作動薬の例は、ブリモニジンである。炭酸脱水酵素阻害剤の例は、ドルゾラミドまたはブリンゾラミドである。抗炎症剤の例として、ステロイド、軟ステロイド、またはイブプロフェン等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。鎮痛剤の例として、サリチル酸およびアセトアミノフェンが挙げられる。抗生物質(抗細菌剤)は、ベータ−ラクタム系抗生物質、エリスロマイシン等の大環状抗生物質、フルオロキノロン等であってよい。抗ウイルス化合物は、逆転写酵素阻害剤またはウイルスプロテアーゼ阻害剤であってよい。抗真菌剤は、トリアゾール系抗真菌化合物であってよい。乾燥眼医薬品は、シクロスポリン、オロパタジン、粘滑薬またはヒアルロン酸ナトリウムであってよい。
種々の実施形態では、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量が、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似するように、治療薬剤をマトリックス中に含有させる。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なっていてもよい。さらに、薬剤が、一様、均一な分散系として存在する実施形態を含めた特定の実施形態、および薬剤が、マトリックス全体にわたり固体または液体の内包物として存在する実施形態では、薬物コアの容積部中の治療薬剤の濃度は、薬物コアの任意の他の等しい容積部と同一であってよい。
いくつかの実施形態では、薬剤およびマトリックスの化学的正体、ならびにマトリックス中の薬剤の濃度が、溶解を達成するようなものである場合に、薬剤はマトリックス中に溶解し得る。例えば、当技術分野では知られているように、特定の親油性ステロイド誘導体は、シリコーン中に顕著な濃度で溶解し得る。この場合、化合物が溶媒中に溶解し得るのと同様に、薬剤は、ポリマー中に「溶解」する、またはマトリックス全体にわたり一様、均一に分散するもしくはポリマー中に「分子レベルで分散」すると表現し、マトリックスのポリマー材料中において薬剤の「固体溶液」が形成される。
他の実施形態では、薬剤は、マトリックス中に完全には溶解しないが、ポリマーのマトリックス内部において、薬剤のドメインまたは「内包物」として存在する。内包物は、室温付近またはヒトの体温付近では、液体であってもまたは固体であってもよい。マトリックス前駆体を硬化させて、マトリックスを形成した後には、内包物が、今では固体となった、またはほぼ固体のマトリックス中に偏って分布し、したがって、内包物相互の、液滴の付着等による再結合が少なくともある程度までは阻止される。この形態を、マトリックス中での薬剤の「不均一」分布と呼ぶ。薬剤の内包物が存在する場合に、また、薬剤が特定の割合でマトリックス中に溶解する場合もあると考えられている。しかし、溶解は、本発明の動作および機能に必ずしも必要であるとは限らない。さらに、以下に示す「濃度」および「類似」という用語の定義に関連して論じるように、薬剤のマトリックスとの不均一分布は、巨視的レベルで操ることができる。
本明細書で使用する場合、治療薬剤の「濃度」という用語は、マトリックス−薬剤のコアの巨視的な部分の内部における薬剤の濃度を指し、この濃度は、コアの試料間においてある程度の再現性を示すように制御される。コアの巨視的な部分中の薬剤の濃度は、コアの任意の他の等しい巨視的な部分と比べて、変動してよいが、変動は限度以内に限られる。この用語は、薬剤の不連続かつ/または不規則なドメインまたは内包物が、濃縮された形態で存在する場合がある分子レベルにおける濃度には関係せず、しかしむしろ、少なくとも約0.1mm3超、例えば、一辺が約100μmのコアの立方体試料、または約1mm2の横断面面積を有するコアの0.1mm厚さの薄片であるコア容積中の薬剤のバルク濃度を指す。
治療薬剤の「類似」濃度という場合、用語「類似」は、定義された限界内で、薬剤の濃度等の、例えばμg/mm3の単位で示す分量が、測定値間において特定の程度内に限って変動することを意味する。変動の程度を制御または調節して、コア材料をある程度一様となし、したがって、コアが組織にもたらすことができる薬剤の用量が、試料間において特定の限度内であるという点で、複数のコアまたは挿入体は医学的に適切となる。例えば、コア材料の2つの等しい容積間、または充填済み前駆体シースから調製した2つの挿入体間においては、「類似」濃度は、約30%以下だけ異なってもよく、または約20%以下だけ異なってもよく、または約10%以下だけ異なってもよく、または約5%以下だけ異なってもよい。また、用語「類似」は、本明細書において定義する固体溶液および一様、均一な分散系も包含する。これらは、治療薬剤の濃度が、コアの異なる部分中または複数のコア間において同一である状況に関係する。これは、より一般的なカテゴリーの「類似」のサブカテゴリーである。
内包物は、本明細書に定義するように、種々のサイズであってよく、複数の内包物の種々のサイズ分布が可能である。内包物直径が約100μm以下であると言及する場合、本発明の薬物挿入体内部において観察される最も大きな内包物が、約100μm以下の最大寸法を有することを意味する。内包物の特定のサイズ分布について述べる場合、すべての内包物のうちの圧倒的な割合が、言及した寸法を示すことを意味する。内包物集団内における内包物の平均サイズまたは「平均直径」について言及する場合、すべての内包物の最大寸法の数値平均を意味する。内包物集団内における内包物直径の分布の「標準偏差」について言及する場合、内包物直径の分布が正規分布またはほぼ正規分布であり、標準偏差は、当技術分野ではよく知られているように、値の広がりの尺度であることを意味する。平均直径のわりに小さな標準偏差は、内包物直径の狭い分布を意味し、これは、本発明の種々の実施形態の特色である。
種々の実施形態では、内包物は、約20μm未満の平均直径を有し得、内包物直径の標準偏差は、約8μm未満である。または、内包物は、約15μm未満の平均直径を有し得、内包物直径の標準偏差は、約6μm未満である。または、内包物は、約10μm未満の平均直径を有し得、内包物直径の標準偏差は、約4μm未満である。内包物のサイズ分布が比較的一様であること、および挿入体内部のコア単位容積当たりの分散する薬剤の量が比較的一様であることは、本発明による種々の実施形態の特色である。
内包物直径のサイズ分布は、単分散であり得、狭い単分散であってよい。「単分散」とは、本明細書においては、複数の内包物の直径のサイズ分布が、分布が正規分布でない場合であっても、平均内包物直径の周りの比較的狭い範囲に集まることを意味する。例えば、分布は、平均直径より大きい、内包物のサイズのかなり急な上限を有し得、次第に減少する平均直径未満の内包物の分布を示してよい。それにもかかわらず、サイズ分布は、狭い範囲に集まるかまたは単分散であり得る。
「ポリウレタン」は、ウレタンすなわちカルバメート結合−N−C(O)−O−[式中、N原子およびO原子は有機基に結合している]を通して共有結合している反復単位を含有する多様なポリマーまたはコポリマーを指す。有機基は、脂肪族、芳香族または混合型であってよく;他の官能基を含有する場合がある。分子鎖の端部の基以外の各基は、2つ(またはそれ以上)のウレタン基を介して他の基に結合している。ポリウレタンポリマーは、反復単位をつなぐウレタン型の基のみを含有する。ポリウレタンコポリマー、例として、ポリウレタン−シリコーンコポリマーまたはポリウレタン−カーボネートコポリマーは、反復単位をつなぐウレタン基、および他の型の基、すなわち、それぞれシリコーン型の基およびカーボネート型の基を含有する。
ポリウレタン−シリコーンコポリマーは、当技術分野ではよく知られているように、ポリウレタン鎖のセグメントおよびシリコーン鎖のセグメントを含有する。ポリウレタン−カーボネートコポリマーは、ウレタンのセグメントおよびカーボネート(−O−C(O)O−)のセグメントを含有する。ポリウレタン−カーボネートコポリマーの例が、Carbothane TPU(登録商標)(Lubrizol)である。
本明細書で使用する場合、用語「ヒドロゲル」は、ポリマー構造内部に100wt%超、例えば、最大500〜2000wt%までの水を吸収しており、その結果、物理的なサイズが大幅に膨潤しているポリマー材料を指す。ヒドロゲルは、物理的な整合性を有し、引張強度を示し、実質的に流動性がない。「ヒドロゲル形成ポリマー」は、水と接触した際にヒドロゲルを形成することができるポリマー材料である。例として、TG−500およびTG−2000が挙げられる。
「TG−500」および「TG−2000」は、Lubrizol Advanced
Materials,Inc.、Wilmington、マサチューセッツ州のThermedics Polymer Products事業部が製造するポリウレタン系ヒドロゲル形成ポリマーである。これらは、製造元の記載によると、ヒドロゲルを形成することができる、脂肪族、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンである。そのようなヒドロゲル形成ポリマーは、100wt%超、例えば、最大500〜2000wt%までの水を吸収することができ、その結果、物理的な寸法が膨潤する。
「親水性ポリマー」は、水によって湿潤させることができる、すなわち、撥水性表面を有さないポリマーである。親水性ポリマーは、多少の水、例えば、約0〜100wt%の水を吸収することができるが、ヒドロゲル形成ポリマーが膨潤するようには、容積が大きく膨潤することはない。
「シクロスポリン」は、患者の免疫系の活性、したがって、臓器拒絶のリスクを低下させるために、同種間臓器移植後に広く使用されている免疫抑制剤である。これは、皮膚、心臓、腎臓、肺、膵臓、骨髄および小腸の移植において研究されている。最初にノルウェーの土壌から単離された試料であるシクロスポリンAは、この薬物の主要な形態であり、真菌Tolypocladium inflatum Gamsが産生する11個のアミノ酸からなる環状の非リボゾーム性ペプチド(ウンデカペプチド)である。シクロスポリンの構造は、
である。
「オロパタジン」は、その構造を以下に示すが、塩酸塩の形態で投与することができるNSAIDである。
「プロドラッグ」は、哺乳動物に投与した場合に、例えば、シクロスポリンもしくはオロパタジン等の治療薬剤、またはこれらの物質のいずれかの生物学的に活性な誘導体を放出する物質である。プロドラッグは、哺乳動物の循環系の内因性酵素、例として、エステラーゼまたはホスファターゼによって切断可能である結合を含有する化学的な誘導体であってよい。例えば、シクロスポリンのアミドのNHを、エステル基で置換して、ROC(O)N−シクロスポリン構造のカルバメートを得ることができる。内因性エステラーゼは、このエステル結合を切断して、N−カルボキシアミドをもたらすことができ、これは自発的に脱炭酸することができ、シクロスポリンが生じる。内因性エステラーゼによって切断されて、オロパタジンをもたらすことができるオロパタジンのエステルは、オロパタジンのプロドラッグの例である。プロドラッグの形成によって、シクロスポリンまたはオロパタジンの極性(疎水性/親水性)を改変することができる。
「誘導体」は、治療薬剤と化学的に関係があり、治療薬剤の生物学的活性のうちの少なくともいくつかを保持する物質であるが、これは、所望の有益な結果をもたらすために、哺乳動物体内で薬剤そのものに代謝される必要はない。
「定義された放出プロファイル」という場合の「放出プロファイル」は、本発明のプラグから眼内への治療薬剤の放出の時間の関数としての速度を指し、これは、特定の治療薬剤のために、特定のポリウレタンのポリマーまたはコポリマーを選択することによって、定義または決定することができる。したがって、放出プロファイルは、プラグが薬剤を放出する間の期間にわたり、薬剤の眼内および周囲組織中の両方における濃度に影響を与える。
[詳細な説明]
本発明は、体組織、体液、体腔または体管の中に配置されるように適合されているインプラント本体中で使用するための、薬物挿入体、および治療薬剤を含有する薬物コアの種々の実施形態を対象とする。このインプラント本体は、患者の眼内にまたは眼に隣接して配置されるように適合させることができる。このインプラントは、薬剤を身体に、例えば、眼内もしくは周囲組織内またはその両方に、一定期間にわたり放出して、治療薬剤の使用が医学的に必要とされる患者の不全状態を治療する。本発明はまた、薬物挿入体を製造する方法の種々の実施形態、および薬物挿入体を含有するインプラントを使用して患者を治療する方法も対象とする。
種々の実施形態では、本発明は、シース内、ひいてはインプラント内に配置されるように適合されている薬物コアを提供する。インプラントは、眼または周囲組織またはその両方に治療薬剤を持続的に放出するように、患者の眼内にまたは眼に隣接して配置されるように適合されている。
薬物コアは、治療薬剤と、ポリマーを含み、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量が薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似しているマトリックスとを含む。
この挿入体は、薬物コアと、薬物コアを部分的に覆うシース本体とを備える。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%未満だけ異なる。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%未満だけ異なる。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約10%未満だけ異なる。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%未満だけ異なる。
シース本体は、薬物コアの一部分を覆って配置されることで、インプラントが患者体内に挿入された場合に、前記一部分からの薬剤の放出を阻止し、かつ、該薬剤を眼または周囲組織またはその両方に放出するように適合された、薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定する。
種々の実施形態では、本発明は、複数の上記薬物挿入体を提供し、複数の挿入体がそれぞれ、その内部に個々に分散した類似量の薬剤を含む。例えば、その中に個々に分散されている類似量の薬剤は、それらの間で約30%以下異なっていてもよい。例えば、その中に個々に分散されている類似量の薬剤は、それらの間で約20%以下異なっていてもよい。例えば、その中に個々に分散されている類似量の薬剤は、それらの間で約10%以下異なっていてもよい。例えば、その中に個々に分散されている類似量の薬剤は、それらの間で約5%以下異なっていてもよい。
コアの暴露表面は、インプラントが患者体内に挿入された場合に、治療分量の薬剤を体組織または体液の中、例えば涙液中に、少なくとも数日の期間にわたり涙液中に放出するように適合されている。薬剤に不浸透性のシースは、非標的組織が薬剤に暴露されるのを少なくとも部分的に遮断するように機能する。例えば、眼の涙小管中へ挿入されるインプラント内に薬物挿入体が配置される際、シースは、涙小管または副鼻腔の内部などの非標的組織への放出を遮断しながら、治療標的(例えば眼)への薬剤の放出を阻害するように作用する。
一実施形態では、薬物コアは、軸を有する実質的に円筒形の形態であり、薬物コアの暴露表面が円筒形の形態の一端部上に配置され、シース本体によって覆われている薬物コアの表面が円筒形の形態の表面の残部を構成するものであってもよい。
本発明の複数の薬物挿入体では、各薬物挿入体により放出される薬剤の治療分量は、1つの挿入体と別の挿入体との間で類似している。例えば、本発明の複数の薬物挿入体の間では、複数の挿入体のそれぞれにより放出される薬剤の治療分量は、それらの間で約30%以下だけ、またはそれらの間で約20%以下だけ、またはそれらの間で約10%以下だけ、またはそれらの間で約5%以下だけ異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、本発明の複数の薬物挿入体の間では、複数の挿入体のそれぞれにより放出される薬剤の治療分量は同じであってもよい。
薬物コアまたは薬物挿入体は、その中に多様な相対含有量の治療薬剤を有することができる。例えば、薬物コアは、約0.1wt%〜約50wt%の薬剤を含むことができる。ポリマーを含むマトリックス内にこの薬剤を分散させて、シース内に配置できる複合材料を形成する。例えば、マトリックスは、非生分解性のシリコーンまたはポリウレタンまたはその組合せから形成できる。シースは、実質的に薬物不浸透性の物質から形成されて、暴露表面を経由する以外の薬剤の放出を遮断する。シースは、ポリイミド、PMMAまたはPETのうち少なくとも1つを含む、ポリマー、またはステンレス鋼もしくはチタンを含む金属など、任意の適当な生体適合性材料から形成でき、ポリマーは、押し出されるかまたは成型される。
本発明の挿入体またはコア中で使用するための治療薬剤としては、抗緑内障医薬品(例えば、アドレナリン作動薬、アドレナリン拮抗薬(β遮断薬)、炭酸脱水酵素阻害薬(CAI、全身性および局所性)、副交感神経様作用薬、ラタノプロストなどのプロスタグランジン、および降圧脂質、およびそれらの組合せ)、抗微生物剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬、抗真菌薬など)、シクロスポリンまたはオロパチジン(olopatidine)などのコルチコステロイドまたは他の抗炎症薬(例えば、NSAIDまたは他の鎮痛薬および疼痛管理化合物)、鬱血除去薬(例えば血管収縮薬)、アレルギー応答を防止または軽減する薬剤(例えば、抗ヒスタミン薬、サイトカイン阻害薬、ロイコトリエン阻害薬、IgE阻害薬、シクロスポリンなどの免疫調節薬)、肥満細胞安定化剤、毛様体筋麻痺薬、散瞳薬などを挙げることができる。
薬剤の例としては以下がさらに挙げられるが、これらに限定されない:トロンビン阻害薬;抗血栓剤;血栓溶解剤;線維素溶解剤;血管攣縮阻害薬;血管拡張薬;降圧剤;抗生物質(テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリトロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウムなど)、抗真菌薬(アンホテリシンBおよびミコナゾールなど)および抗ウイルス薬(イドクスウリジントリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロンなど)などの抗微生物剤;表面糖タンパク質受容体阻害薬;抗血小板剤;抗有糸分裂薬;微小管阻害薬;抗分泌剤;活性阻害薬;リモデリング阻害薬;アンチセンスヌクレオチド;代謝拮抗薬;抗増殖薬(抗血管新生剤など);抗癌化学療法薬;抗炎症薬(シクロスポリン、オロパチジン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、21−リン酸デキサメタゾン、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、21−リン酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン(fluoromethalone)、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドなど);非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカムインドメタシン、イブプロフェン、ナキソプレン(naxopren)、ピロキシカムおよびナブメトンなど)。本発明の涙点プラグと共に使用するように企図されたそのような抗炎症ステロイドの例としては以下が挙げられる:トリアムシノロンアセトニドおよびコルチコステロイド(例えば、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、フルメトロンおよびそれらの誘導体が挙げられる);抗アレルギー薬(ナトリウムクロモグリケート、アンタゾリン、メタピリリン(methapyriline)、クロルフェニラミン、セトリジン(cetrizine)、ピリラミン、プロフェンピリダミンなど);抗増殖剤(1,3−シスレチノイン酸、5−フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンCおよびシスプラチンなど);鬱血除去薬(フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドラゾリン(tetrahydrazoline)など);縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ薬(ピロカルピン、サリチル酸塩、カルバコール、塩化アセチルコリン、フィゾスチグミン、エゼリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、ホスホリンヨード、臭化デメカリウムなど);抗新生物薬(カルムスチン、シスプラチン、フルオロウラシルなど);免疫薬(ワクチンおよび免疫刺激薬など);ホルモン剤(エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロン作用薬、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチドおよびバソプレシン視床下部放出因子など);免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗薬、成長因子(上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、ソマトトラピン(somatotrapin)、フィブロネクチンなど);血管新生阻害薬(アンギオスタチン、酢酸アネコルタブ、トロンボスポンジン、抗VEGF抗体など);ドパミン作動薬;放射線治療薬剤;ペプチド;タンパク質;酵素;細胞外マトリックス;成分;ACE阻害薬;フリーラジカル捕捉剤;キレート剤;抗酸化薬;抗ポリメラーゼ;光線力学的療法剤;遺伝子療法剤;ならびに、プロスタグランジン、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体など他の治療薬剤(チモロール、ベタキソロール、レボブノロール、アテノロールなどのβ遮断薬、および、ビマトプロスト、トラボプロスト、ラタノプロストなどのプロスタグランジン類似体を包含する抗緑内障薬など);アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ジクロルフェナミド、ダイアモックスなどの炭酸脱水酵素阻害薬;ならびに、ルベゾール(lubezole)、ニモジピンおよび関連化合物などの神経保護薬;ならびに、ピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミンなどの副交感神経様作用薬など。
本発明のインプラントと共に使用できる追加的な薬剤としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:米国連邦食品医薬品化粧品法の505条の下に、または、公衆衛生法の下に認可されている薬物であり、そのいくつかは、米国食品医薬品局(FDA)ウェブサイトhttp://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/drugsatfda/indexで見つけることができる。本発明の涙点プラグは、オレンジブック(書籍版または電子版いずれの形態でもよい)中に掲載されている薬物と共に使用してもよく、そのような薬物は、FDAオレンジブックのウェブサイト(http://www.fda.gov/cder/ob/))で見つけることができ、同ウェブサイトには、本特許書類の出願日と同日、それより早い日またはそれより遅い日が掲載され、または記録してある。例えば、このような薬物としては、中でも、ドルゾラミド、オロパタジン、トラボプロスト、ビマトプロスト、シクロスポリン、ブリモニジン、モキシフロキサシン、トブラマイシン、ブリンゾラミド、マレイン酸アシクロビルチモロール、ケトロラックトロメタミン、酢酸プレドニゾロン、ヒアルロン酸ナトリウム、ネパフェナク、ブロムフェナク、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、スプロフェナク(suprofenac)、ビノキサン(binoxan)、パタノール、デキサメタゾン/トブラマイシン複合薬、モキシフロキサシンまたはアシクロビルを挙げることができる。
種々の実施形態では、薬剤は、シクロスポリンまたはそのプロドラッグもしくは誘導体、あるいはオロパチジンまたはそのプロドラッグもしくは誘導体、および場合により前記の治療薬剤から選択される第2の薬剤であってもよい。
種々の実施形態では、薬剤は、ラタノプロスト、ビマトプロストまたはトラボプロストなどのプロスタグランジン類似体であってもよく、薬物挿入体中の薬剤の量は約10〜50μgであってもよい。
種々の実施形態では、治療薬剤は、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量が薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似するように、マトリックス中に含有される。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と、約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なっていてもよい。加えて、薬剤が一様で均一な分散系として存在するような実施形態など特定の実施形態、および、薬剤がマトリックス全体にわたり固体または液体の内包物の形態で存在する実施形態では、薬物コアの容積部中の治療薬剤の濃度は、薬物コアの任意の他の等しい容積部と同じであってもよい。
種々の実施形態では、ポリマー中で十分に可溶性であることから薬剤の内包物または高濃度の分域が存在しない薬剤は、薬物コア内のマトリックス中に、すなわち、インプラント同様に使用するための有効濃度で溶解できる。このことは、固体ポリマーが溶媒の役割を果たし、液体溶媒が存在しない固体溶液、すなわち分子レベルでの一様で均一な分散系として当技術分野で公知である。例えば、薬剤がシクロスポリンを含みマトリックスがポリウレタンを含むとき、固体溶液は、挿入体中のシクロスポリンの有用濃度で形成される。この可溶性(溶解度)は、少なくとも部分的には、ポリウレタンポリマーのアミド様のウレタン結合を有するシクロスポリン分子(環状ペプチドである)中で見られる豊富なアミド結合の相互作用に起因すると考えられる。
種々の実施形態では、薬剤はマトリックス中での可溶性が不十分で、固体溶液を形成する。このような実施形態では、薬剤は、少なくとも部分的には複数の固体または液体の内包物としてマトリックス全体にわたり分布でき、この内包物は、約20℃の温度では、薬剤が約20℃で液体である場合は直径約100μm以下の薬剤の小滴を含み、または、薬剤が約20℃で固体である場合に、直径約100μm以下の薬剤の粒子を含み、この薬剤の内包物は、各薬物コア全体にわたり分散されている。
前述のように、内包物のサイズおよびサイズ分布は、薬物コアから患者への薬剤の放出速度に影響を及ぼすことがある。例えば、より小さく、より一様な内包物は、より好ましい表面積対容積比により、より有効により高速で薬剤をバルクマトリックスに注入するように機能できる。したがって、本発明の方法は、内包物の平均直径または内包物直径の分布を制御または調節する。例えば、内包物の平均直径は約20μm未満であってもよい。この平均直径の内包物は、内包物の直径の標準偏差が約8μm未満であってもよい。例えば、内包物の平均直径は約15μm未満であってもよい。この平均直径の内包物は、内包物の直径の標準偏差が約6μm未満であってもよい。または、内包物の平均直径は約10μm未満であってもよい。この平均直径の内包物は、内包物の直径の標準偏差が約4μm未満であってもよい。種々の実施形態では、内包物の直径の分布は、単分散分布であってもよい。種々の実施形態では、内包物は、約0.1μm〜約50μmの範囲内の断面サイズを主に備える。狭い(または単分散の)内包物直径分布は、薬物コアまたはこのコアを含有する薬物挿入体の治療面の観点から好ましいと考えられる。
本発明の種々の実施形態は、薬剤が、約20℃で液体の物理的状態をしている内包物をマトリックス中で形成する、薬物コアまたは薬物コアを含有する挿入体も提供する。例えば、内包物は実質的にすべて、マトリックス内の直径約30μm未満の薬剤の小滴であってもよい。また、この小滴は、平均直径が約10μm未満であってもよく、または内包物の直径の標準偏差が約4μm未満であってもよい。約20℃で液体の物理的状態をしている薬剤の例は、ラタノプロストである。
本発明の種々の実施形態は、薬剤が、約20℃で固体の物理的状態をしている内包物をマトリックス中で形成する、薬物コアまたは薬物コアを含有する挿入体も提供する。例えば、内包物は実質的にすべて、マトリックス内の直径約30μm未満の薬剤の粒子であってもよい。例えば、マトリックス内の粒子の平均直径は、約5〜50μmであってもよい。約20℃で固体の物理的状態をしている薬剤の例としては、ビマトプロスト、オロパタジンまたはシクロスポリンが挙げられる。
種々の実施形態では、薬物挿入体または薬物コアは、2つ以上の治療薬剤を含むことができ、または複数の薬物コアを含むことができる。そのような複数の薬物コアは、一緒になって薬物コア全体を形成する複数の薬物サブコアと呼ぶこともできる。これに関する場合、第1および第2の薬物コアは、透明性を目的とした第1および第2の薬物サブコアと呼ぶこともできる。例えば、本発明の薬物挿入体は、シース本体内に配置された2つの薬物コアを含むことができ、第1の薬物コアは第1の薬剤および第1のマトリックスを含み、第2の薬物コアは第2の薬剤および第2のマトリックスを含み、第1の薬剤と第2の薬剤とは異なり、第1のマトリックスと第2のマトリックスとは同じであるまたは相互に異なるのいずれかであり、インプラント本体はシース本体内に配置された第1および第2のコアを受容するように適合されている開口部を含み、薬物コアは、シース内部に、インプラント本体の開口部内部に配置されるように適合されている。第1のマトリックスおよび第2のマトリックスは、組成、暴露表面面積、界面活性剤、架橋剤、添加剤、マトリックス材料、処方、放出速度改変試薬または安定性のうちの少なくとも1つに関して相互に異なっていてもよい。薬物挿入体がインプラント本体内部に配置されており、インプラント本体が患者の眼の中または眼に隣接して配置された場合に、第1の薬物コアは涙液に直接暴露される表面を有し、第2の薬物コアは涙液に直接暴露される表面を有さないように、第1の薬物コアおよび第2の薬物コアが、シース本体内部に配置できる。または、第1の薬物コアおよび第2の薬物コアは、シース本体内部に並んで配置できる。または、第1の薬物コアおよび第2の薬物コアはそれぞれ、円筒形の形状であり、シース本体の内部に配置されていてもよく、薬物挿入体がインプラント本体内部に配置された場合に、第1の薬物コアはインプラント本体中の開口部の近位端部付近に位置し、第2の薬物コアは開口部の遠位端部付近に位置する。または、第1の薬物コアおよび第2の薬物コアはそれぞれ、円筒形の形状であってもよく、ただし、第1の薬物コアは第1の中心穴を有し、この薬物コアは、シース本体内部に、薬物挿入体を受容するように適合されているインプラント本体の開口部内部において同心円状に位置し、第2の薬物コアは、第1の薬物コアの第1の中心穴内部にはまるように構成されている。または、第1および第2の薬物コアはインプラント本体の開口部内部において同心円状に位置してもよく、第1の薬物コアは第1の内表面を暴露する第1の中心穴を有し、第2の薬物コアは第2の内部表面を暴露する第2の中央穴を有し、第2の薬物コアは第1の薬物コアの第1の中央穴内部にはまるように構成されており、開口部はインプラント本体の近位端部から遠位端部まで伸びており、それによって、インプラント本体が患者体内に挿入された場合に、涙液が開口部を通過し、第1および第2の中心穴の第1および第2の内部表面に接触し、第1および第2の治療薬剤を患者の小管内に放出することが可能となるように適合されている。
種々の実施形態では、第1の治療薬剤は、第1の薬剤が第1の期間を通して治療レベルで放出される放出プロファイルを有することができ、第2の治療薬剤は、第2の薬剤が第2の期間を通して治療レベルで放出される第2の放出プロファイルを有することができる。例えば、第1の期間および第2の期間は、1週間から5年の間であってもよい。第1の放出プロファイルおよび第2の放出プロファイルは、実質的に同一であっても異なっていてもよい。
種々の実施形態では、第1の薬剤は、第1の作用および副作用を患者にもたらすことがあり、第2の薬剤は、第1の薬剤の副作用を緩和しまたは打ち消す第2の作用をもたらしてもよい。
種々の実施形態では、第1の薬物コア中および第2の薬物コア中の任意の内包物の平均直径は個々に約20μm未満であり、直径の標準偏差は約8μm未満であってもよい。
種々の実施形態では、インプラント本体は、インプラント本体が眼の中または眼に隣接して配置された場合、涙液にインプラント本体を通過させることで、第1および第2の治療薬剤を患者の涙小管中の涙液中に放出させるように適合されるように、インプラント本体の近位端部から遠位端部まで伸びる中心孔を備えることができる。
種々の実施形態では、薬物挿入体または薬物コアは、第1のマトリックス、第2のマトリックスまたはその両方の内部に医薬品含浸多孔性材料をさらに含むことができ、このとき、医薬品含浸多孔性材料は、薬物コアを含有するインプラントが涙点内または涙小管内に配置された場合、涙液に、医薬品含浸多孔性材料から第1の薬剤、第2の薬剤または両方を治療レベルで持続した期間にわたり放出させるように適合されており、医薬品含浸多孔性材料は、涙液と接触すると第1の直径から第2の直径に膨潤することができるゲル材料である。第2の直径は、第1の直径より約50%大きくてもよい。医薬品含浸多孔性材料に適した材料の例は、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)親水性ポリマーである。
種々の実施形態では、薬物挿入体または薬物コアは、ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーを含むことができる。例えば、ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーは、脂肪族ポリウレタン、芳香族ポリウレタン、ポリウレタンヒドロゲル形成材料、親水性ポリウレタンまたはそれらの組合せであってもよい。種々の実施形態では、ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーは、水性媒体と接触すると膨潤するように適合されているヒドロゲルを含むことができ、シース本体はそれに応答して膨張するために十分な弾性を示すように適合されている。例えば、膨潤は、インプラント本体を患者の管内(涙点の管内部など)に保持するように適合させることができる。
種々の実施形態では、マトリックスがポリウレタンを含むとき、治療薬剤は、シクロスポリンもしくはオロパタジン、シクロスポリンもしくはオロパタジンのプロドラッグもしくは誘導体、またはその任意の組合せを含む。例えば、シクロスポリンもしくはオロパタジン、またはシクロスポリンのプロドラッグもしくは誘導体、またはオロパタジンのプロドラッグもしくは誘導体、またはそれらの組合せは、ポリウレタンのポリマーもしくはコポリマーに対する重量比で約1wt%から約70wt%存在できる。コア中のシクロスポリンの濃度は、暴露表面の近位の薬物コアの部分、暴露表面の遠位の部分、および近位の部分と遠位にある部分との間に配置された部分において類似していてもよい。例えば、近位の部分の長さは、薬物コアの長さの少なくとも約10分の1であってもよい。
種々の実施形態では、本発明は、薬物挿入体またはインプラントの中へ配置するための、治療薬剤と、ポリマーを含むマトリックスとを含む薬物コアを提供する。薬物挿入体またはインプラントは、眼または周囲組織またはその両方へ治療薬剤を持続的に放出するために、患者の眼の内または眼に隣接して配置されるように適合されている。治療薬剤は、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量が薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似するようにマトリックス中に含有される。例えば、治療薬剤は、固体溶液中などマトリックス全体にわたり一様もしくは均一のいずれかの状態で分散されてもよく、または治療薬剤は、マトリックス内部に固体または液体の内包物を少なくとも部分的に形成する。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と同じであってもよい。
患者の眼の中または眼に隣接して配置するためのインプラントのための本発明の薬物挿入体の種々の実施形態では、インプラントは、一般に涙点プラグと呼ばれる、涙小管中に挿入可能な涙小管インプラント、すなわち、眼の涙点経由で挿入して眼の涙小管内に留まるように適合されている、薬物挿入体が涙液と接触し、それにより眼または周囲組織またはその両方と接触するように治療薬剤を放出できるインプラントであってもよい。
種々の実施形態では、薬剤と、ポリマー材料を含むマトリックスとを含む挿入体のコアは、シース本体によって取り囲まれる。シース本体は薬剤に実質的に不浸透性であることから、薬剤は、涙液と接触するコアの暴露表面経由でのみ涙液に放出される。コア内に含有される薬剤は、治療分量または濃度の薬剤を、ある期間(数日から数カ月の範囲であってもよい)にわたり放出するためのリザーバとして機能する。例えば、緑内障の治療では、薬物挿入体は、ラタノプロストなどのプロスタグランジン類似体を含有してもよい。
薬物コアは、より大きな構造体であるインプラント内に配置されるように適合されており、さらにインプラントは、体組織、体腔または体管内に配置されるように適合されている。種々の実施形態では、インプラントは、眼の涙小管内、すなわち、眼の表面から涙を排出する(1つまたは複数の)管内に設置するように適合された涙点プラグであってもよい。
例えば、薬物コアの種々の実施形態は、眼の不全状態に罹患している患者を、涙液中への拡散などによりインプラント内のコアから眼の表面上へ1つまたは複数の薬物を放出することにより治療するために、眼の近くに設置するように適合されているインプラント(涙点プラグなど)中で使用できる。眼の涙小管内で使用するための薬物送達能力を有する涙点プラグに具体的に言及してはいるが、このインプラントの種々の実施形態は、薬物の持続放出、および、例えば、強膜、結膜、眼瞼の円蓋、小柱網、毛様体、角膜、脈絡膜、脈絡膜上腔、強膜、硝子体液、房水および網膜など眼の近くおよび/または眼の内の他の構造体の治療に有用である場合がある。さらに、コアを有する本発明のインプラントは、眼または隣接する構造体以外の組織、体腔または管の中への治療薬剤の放出にも使用できる。種々の実施形態では、薬物コアは、耳および/または耳管、鼻腔および/または副鼻腔、尿道、皮膚、胃腸管(大腸管、小腸管などを含む)の中へ、ならびに、膝、指および椎間関節などの関節の中または近くでの治療薬剤の持続放出に使用できる。
種々の実施形態では、治療薬剤とマトリックスとの複合物を含む薬物コアは、薬剤に実質的に不浸透性のシース内に部分的に含有されているか、またはそれにより取り囲まれている。シースは、薬物とマトリックス材料とを含むコアであり、それを通して治療薬剤を放出できるように暴露表面を有するコアの表面の一部(ただしすべてではない)を覆うことができる。薬物コアおよびそのシースは共に、体腔内、体組織内、体管内または体液内など患者の体内への埋込みにそれ自体が適合されているインプラント構造内に含まれるように適合されている。例えば、インプラントは、眼球および周囲組織と接触するように眼の涙点経由で薬剤を放出できるように眼の涙小管の内部に配置されるように適合されている涙点プラグなど、眼の中または周囲に配置されるように適合されている眼用インプラントであってもよい。
シースは、治療薬剤に実質的に不浸透性の任意の適当な生体適合性材料から成っていてもよい。例えば、シースは、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチルなどの不浸透性のポリマー材料、またはPETなどのポリエステル、またはステンレス鋼もしくはチタンなどの生体適合性金属、または酸化ケイ素から形成されるものなど無機ガラスであってもよい。薬剤は、ポリマーを含むマトリックス経由で少なくともいくらか拡散可能な任意の治療物質であってもよく、それにより、薬剤を体組織または体液の中へ放出できる。マトリックスはポリマー材料を含むことができ、例えば、マトリックスは、シリコーン、ポリウレタンまたは任意の非生分解性ポリマーを含むことができ、このとき、薬剤は、マトリックス経由で拡散できるだけ十分な可溶性を少なくとも有する。マトリックスは、他の材料を含むことができ、そのような材料としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコールまたは酢酸ポリビニル、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなど他の種類のポリマー、セルロースまたはキチンなどの多糖類を非限定的に含み、ただし、この材料は生体適合性である。したがって、マトリックス用の材料の選択は、標的組織中の薬剤の治療レベルをある期間にわたって維持できようにするためにマトリックス中の薬剤の十分な溶解度が達成できるように、少なくとも部分的には、意図した特定の用途向けに選択された薬剤に基づいて行うことができる。
界面活性剤、分散剤、充填剤、他のポリマーおよびオリゴマーなどの放出速度調節物質など他の物質を、コア中にマトリックスと共に含ませることができる。
実質的に不浸透性のシースは、シース経由で薬剤が拡散することを防止する。したがって、薬剤は、周囲の体液、組織などの中へ、シースにより覆われていないコアの当該部分を主に経由して拡散する。周囲の体液、組織などの中への薬剤の拡散速度は、マトリックスを経由した薬剤の拡散速度により少なくとも部分的に支配される。薬剤の分子は、周囲と接触する複合物の暴露表面に一旦到達すると、周囲の液体または組織の中に拡散できる。特定の実施形態では、最初に、標的に隣接して組織構造体中へ、例えば、標的眼組織の近くに位置する患者の涙点中へ治療薬剤を放出でき、治療薬剤はそこから作用部位に拡散できる。
種々の実施形態では、薬剤は、ポリマーマトリックス材料中で可溶性または実質的に不溶性であってもよい。ポリマーマトリックス材料中で使用される濃度で薬剤が可溶性である実施形態では、薬物コアは、ポリマーマトリックス材料内で薬剤が分子レベルで分散する均一な複合物を含む。例えば、二酢酸エチノジオールなど高度に親油性の薬剤はシリコーンポリマー中において相当な濃度で溶解できることから、コアは分子レベルでのマトリックス中での薬剤の均一な分散系であってもよい。例えば、環状のペプチド類似体であるシクロスポリンは、アミド結合に似た連結を有するポリマーであるポリウレタン中で相当な濃度で溶解できる。マトリックス中に薬剤の均一な分散系が存在するとき、コアの暴露表面から体液または体組織の中への薬剤の放出速度は、マトリックス経由での薬剤の拡散または輸送の速度により制御できる。ポリマーマトリックス材料中で薬剤が可溶性である実施形態では、体組織または体液中への薬剤の放出速度は、コアのマトリックス中で溶解する薬剤の濃度により少なくとも部分的に決定できる。種々の実施形態では、マトリックス中で溶解される治療薬剤の濃度は、飽和濃度であってもよい。そのような放出動態は、ゼロ次の、一次の、またはゼロ次と一次との間の非整数次であってもよい。
薬剤が、使用される濃度でマトリックス中において部分的にのみ可溶性または難溶性または不溶性である実施形態では、コアは、原薬がポリマーマトリックス材料全体にわたり固体または液体の内包物として分散されている不均一な組成物を含む。わずかではあってもいくらか溶解性が存在する場合は、ある量の薬物がマトリックス中で溶解されよう。種々の実施形態では、内包物は、サイズが約0.1μm〜約100μmにわたってもよい。マトリックス中に薬剤の内包物が存在するときは、薬剤は、マトリックス中で少なくともわずかに可溶性で内包物から薬物コアの暴露表面へ薬剤が少なくともいくらか拡散することが可能になることがあるので、薬剤は体液または組織の中へさらに拡散でき、例えば、薬剤は、涙液中へ拡散できる。薬剤がマトリックス中で不溶性であるとき、薬剤は、マトリックス内で分離相として分域または内包物を形成することになり、この分域または内包物が協同することで、マトリックス表面へ薬剤を輸送するための微小経路ができることがある。種々の実施形態では、薬剤は、体液が透過できるマトリックス中の経路または細孔を経由して輸送できる。種々の実施形態では、薬剤は、マトリックス中に存在する細孔または経路を経由して輸送できる。
薬剤は、ある濃度で、コア中に存在し、マトリックス中に分散する。この濃度は、マトリックス−薬剤コアの肉眼で見える部分内の薬剤の濃度であり、コアの試料間で類似であるように制御される。コアの肉眼で見える部分における薬剤の類似濃度は、コアの任意の他の等しい肉眼で見える部分中のものと比較して異なっていてもよいが、ただし限度内である。この用語は、濃縮された形態での薬剤の分域または内包物が存在してもよい分子レベルでの濃度に関するものではなく、むしろ、コアの容積中の薬剤のバルク濃度を指し、その容積は、少なくとも約0.1mm3、例えば、一辺が約100μmのコアの立方体試料、または断面積が約1mm2のコアの0.1mm厚の切片を超える。この濃度は、約30%以下または約20%以下または約10%以下または約5%以下の範囲内で変化してもよい。
種々の実施形態では、内包物の平均直径は、約20μm未満または約15μm未満または約10μm未満であってもよい。内包物の直径の分布は、単分散、すなわち、平均直径周辺に比較的密集していてもよい。内包物直径の分布が正規分布またはほぼ正規分布であり、単分散度が標準偏差を単位として表現できる場合、内包物の直径の標準偏差は、約8μm未満または約6μm未満または約4μm未満であってもよい。
本発明を限定することを意図するものではないが、涙液中への眼用薬物の放出など、マトリックスから患者への薬剤の放出の速度を制御する因子は、複雑で、多くの変数に依存すると考えられる。例えば、薬物およびマトリックス材料は、共に、マトリックス中の薬剤の飽和濃度を規定することがある。いくつかの薬物−マトリックスの組合せについては、高濃度の薬物がマトリックス中で溶解できる。他のものについては、飽和濃度はより低い。さらに他のものについては、可溶性が一切なく、別々の分域相により放出速度が操られることが多い。可能性のある別の因子は、内包物からマトリックスの表面への物質移動速度である。可能性のあるまた別の因子は、マトリックスから涙液などの体液中への薬剤の拡散速度である。
治療分量の治療薬剤の放出速度は、薬物コアのマトリックス中の治療薬剤の濃度により少なくとも部分的に決定できる。治療薬剤は、内包物からマトリックス中へ十分溶解する能力があるものであってもよく、存在する場合は、マトリックス中で溶解される治療薬剤の濃度を維持することにより、持続した期間にわたり放出速度が治療域内にあるようにする。この結果、薬剤の実質的なリザーバが内包物中に存在することから、望ましいゼロ次の薬剤放出速度を得ることができ、一方、マトリックス中の薬剤の限られた可溶性は、涙液または他の媒体の中で放出できるコアの暴露表面に薬剤を運ぶうえで速度を決定する。薬剤がマトリックス材料中で不溶性であり内包物を形成する実施形態では、薬剤は内包物からマトリックス材料中の別々の分域を通り体組織または体液に暴露される点へ拡散するため、体組織または体液の中への薬剤の放出速度は、薬剤の濃度により少なくとも部分的に決定できる。
種々の実施形態では、マトリックスは、使用のために埋め込んだ際に、持続する期間にわたり薬物コアから治療分量で治療薬剤を放出するのに十分な分量で、放出速度を変化させる材料を含んでいる。この放出速度調節材料としては、不活性な充填剤材料、塩、界面活性剤、分散剤、第2のポリマー、オリゴマーまたはそれらの組合せを挙げることができる。例えば、コアは、1つまたは複数の薬物およびポリマーマトリックス材料に加えて、界面活性剤または分散剤材料、または充填剤、オリゴマー、別のポリマーなどを含むことができる。例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、アルギン酸ナトリウム、低分子量のシリコーンまたはポリウレタンなどのポリマーが挙げられる。非ポリマー性の添加剤としては、エチレングリコールまたはグリセロールなどの親水性溶媒を挙げることができる。
種々の実施形態では、コアは、約5%〜約50%の薬物を含む。薬物と、マトリックス用に選択されたポリマーからの薬物の放出速度とに応じて、治療分量の薬物が涙液などの体液中に放出される期間は濃度により制御できる。
前述のように、種々の実施形態では、コアは2つ以上の薬物を含むことができる。特定の実施形態では、両方の薬物は、マトリックス材料中で実質的に可溶性である。他の実施形態では、第1の薬物は、マトリックス材料中で実質的に可溶性であり、第2の薬物は、マトリックス材料内で内包物を形成する。いくつかの実施形態では、インプラントは、マトリックス内で混合される2つの治療薬剤を有する単一の薬物コアを含む。他の実施形態では、インプラントは、それぞれが単一の治療薬剤を有する2つの薬物コアを含む。
いくつかの実施形態では、第2の薬物は、第1の治療薬剤の副作用を回避するための中和性の薬剤であってもよい。一例では、第1の薬物は、毛様体筋麻痺薬、すなわち、眼の遠近調節(焦点調節)を遮断するもの、例えばアトロピンまたはスコポラミンであってもよく、第2の治療薬剤は、緑内障を誘発する毛様体筋麻痺薬の公知の副作用を低減するため、または、アトロピンもしくはスコポラミンの公知の散瞳薬作用を中和する瞳孔収縮をもたらすために選択される、抗緑内障薬または縮瞳薬のうち少なくとも1つであってもよい。抗緑内障薬は、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、β遮断剤、炭酸脱水酵素阻害薬またはプロスタグランジン類似体のうち少なくとも1つを含んでもよい。別の例では、第1の治療薬剤はステロイドであってもよく、第2の治療薬剤は抗生物質であってもよく、このとき、ステロイドは免疫応答を損なうが、抗生物質は感染症を防御する。別の例では、第1の治療薬剤はピロカルピンであってもよく、第2の治療薬剤は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であってもよい。鎮痛薬は、治療に良好なコンプリメント(compliment)であってもよい。
特定の実施形態では、コア挿入体は、2つの薬物が中に含有されている単一の薬物−マトリックス複合物を含む。他の実施形態では、コア挿入体は、シース内で相互に隣接して配置された2つの別々の薬物−マトリックス複合物(「サブコア」または第1および第2のコア)を含む。2つの別々の複合物は、同心性の空間配置で、扇形の配置で、または他の方式で配置できるが、ただし、患者の体組織内、体腔内または体管内に配置されると、両方の複合物の暴露表面は、体組織または体液に暴露される。
いくつかの実施形態では、治療薬剤は、治療薬剤放出の速度次数に相当するプロファイルで放出でき、その次数は、約0〜約1の範囲内であってもよい。特定の実施形態では、この範囲は、約0〜約1.5、例えば約0〜約1.25である。治療薬剤は、治療薬剤放出の速度次数に相当するプロファイルで放出してもよく、その次数は、構造体が挿入された少なくとも約1カ月後については約0〜約1.5の範囲内であり、例えばその次数は、構造体が挿入された少なくとも約3カ月後の範囲内であってもよい。
種々の実施形態では、本発明は、複数の薬物挿入体が充填済み前駆体シースからその分割によって製造されるように適合されている充填済み前駆体シースであり、各薬物挿入体は個々のインプラント内に配置されるように適合されており、インプラントが、眼または周囲組織またはその両方へ治療薬剤を持続的に放出するように患者の眼の内または眼に隣接して配置されるように適合されている充填済み前駆体シースを提供する。充填済み前駆体シースは、前駆体シース本体、ならびに、その内に含有され、治療薬剤と、ポリマーおよび治療薬剤を含むマトリックスとを含む前駆体薬物コアを含む。前駆体薬物コア中では、前駆体薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似する。前駆体シース本体は、薬剤に実質的に不浸透性である。そこから分割された複数の挿入体のそれぞれは、涙液と接触した際に薬剤を眼または周囲組織またはその両方に放出するように適合されている。充填済み前駆体シースから分割された複数の挿入体のそれぞれの個々のシース本体は、複数の挿入体のそれぞれの個々の薬物コアの部分を覆って配置されて、挿入体がインプラント中に配置されインプラントが患者体内に挿入されたときに、前記一部からの薬剤の放出を阻害し、眼または周囲組織またはその両方に薬剤を放出するように適合されている、薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定する。例えば、前駆体薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、前駆体薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、前駆体薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、前駆体薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、前駆体薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なっていてもよい。
種々の実施形態では、充填済み前駆体シースは、充填済み前駆体シースの分割により、前述の薬物挿入体のいずれかをもたらすように適合させることができる。種々の実施形態では、前駆体シースは、刃で、またはレーザーなどで切断することにより分割できる。
種々の実施形態では、本発明は、ある期間にわたり眼または周囲組織またはその両方に治療薬剤を放出するために、患者の眼の中または眼に隣接して配置するためのインプラント本体を提供する。インプラント本体は、挿入体がインプラント内に配置された場合に、およびインプラントが眼の中または眼に隣接して配置された場合に挿入体の暴露表面が涙液に暴露されることになるように、薬物挿入体を受容するように適合されている経路をその中に備える。薬物挿入体は、治療薬剤とポリマーを含むマトリックスとを含む薬物コアを中に含有する、薬剤に実質的に不浸透性のシース本体であって、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量が薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量に類似するシース本体を備える。インプラント本体は、生体適合性材料を含み、ある期間にわたり、眼の内または眼に隣接して保持されるように適合されている。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約30%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約20%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約10%以下だけ異なっていてもよい。例えば、薬物コアの容積部中の治療薬剤の量は、薬物コアの任意の他の等しい容積部中の治療薬剤の量と約5%以下だけ異なっていてもよい。
種々の実施形態では、インプラント内に含有された薬物コアの暴露表面は、患者の眼の中または眼に隣接して配置された場合に、治療分量を、強膜、角膜または硝子体のうち少なくとも1つの中に放出する能力を有する。例えば、インプラントは、涙液中への薬剤の放出のための、患者の涙点内に配置されるように適合されている涙点プラグであってもよい。
前述の本発明の方法の種々の実施形態では、混合物は、中でマトリックス前駆体および薬剤が可溶性である溶媒をさらに含むことができ、硬化は、シース本体または前駆体シース本体の中へそれぞれ注入するのに次いで溶媒を少なくとも部分的に除去することを含んでもよい。硬化は、加熱、真空処理またはその両方を含んでもよい。溶媒は、炭化水素、エステル、ハロカーボン、アルコール、アミドまたはそれらの組合せであってもよい。例えば、薬剤がシクロスポリンであるとき、溶媒はハロカーボンであってもよい。
種々の実施形態では、混合物の硬化は、相対湿度でのある温度にある期間にわたり混合物を加熱することを含んでもよい。例えば、この温度は約20℃〜約100℃の範囲を含んでもよく、相対湿度は約40%〜約100%の範囲を含んでもよく、この期間は約1分〜約48時間の範囲を含んでもよい。より具体的には、温度は少なくとも約40℃であってもよく、相対湿度は少なくとも約80%であってもよく、またはその両方であってもよい。種々の実施形態では、硬化は、マトリックス、マトリックス前駆体またはその両方の重合または架橋またはその両方のステップを含んでもよい。例えば、重合または架橋またはその両方は、触媒の存在下で実施できる。例えば、触媒は、白金+水素化ビニルの触媒系、またはスズ+アルコキシの触媒系などのスズ化合物または白金化合物であってもよい。
種々の実施形態では、混合物は、超音波処理を含む方法により調製できる。マトリックス前駆体と薬剤とを混合して、完全に分散したエマルジョン様の複合物を得ることができ、このとき薬剤は、マトリックス前駆体中で不溶性またはわずかに可溶性である場合に、小さな粒子または小滴の形態で分散する。
種々の実施形態では、混合物をシース中に注入するステップは、少なくとも約40psiの圧力下で実施できる。混合物は、シース本体または前駆体シース本体が個々に約0.5cm/秒以下の速度で充填されるように注入できる。
薬剤とマトリックス前駆体もしくはマトリックスとを含む混合物の注入もしくは押出しは、室温(20℃)もしくは室温超で実施でき、または、20℃未満の周囲温度より低い温度で実施できる。例えば、周囲温度より低い温度が約−50℃〜約20℃の温度を含むか、または、周囲温度より低い温度が約−20℃〜約0℃の温度を含む注入が実施できる。
追って論じるように、図15および16は、両方とも、内包物直径の一様性に関する、また、充填済み前駆体シースの長さ全体にわたる治療薬剤の分布の一様性に関する周囲温度未満での押出しの優位性をグラフで明らかにするものである。図15は、多様な温度で押出しが実施された場合の薬物コアの低温での切片部分の電子顕微鏡写真を示す。図からわかるように、内包されているラタノプロスト小滴の平均直径は、0℃または−25℃で押出しが実施されるときのほうが、25℃または40℃で押出しが実施されるときより小さい。
実施例12および13に記載の並行実験では、内包物の平均直径および直径サイズ分布を、室温で、また、ラタノプロスト−シリコーン混合物の場合は−5℃で実施した押出しについて定量した:
低温押出し(−5℃):0.006±0.002mm(内包物n=40)、
室温(22℃):0.019±0.019mm(内包物n=40)、
低温押出し法により、周囲温度で押出しを実施したときと比較して、平均直径がより小さくサイズがより一様な内包物が作製されたことが示される。
図16は、実施例12および13において論じるように、ラタノプロスト−シリコーン混合物を充填した10cmの前駆体シース中のラタノプロストの含有量をグラフで示すものである。図からわかるように、−25℃および0℃(四角)での低温押出しは、予想外にも、硬化後のシリコーンマトリックス中に、10cmの前駆体シースの長さ全体に沿って治療薬剤ラタノプロストをより一様に分布させ、次いでこの前駆体シースを1mmの切片に分割し、各切片(薬物挿入体)のラタノプロスト含有量を定量した。室温(丸)および40℃(三角)で実施した押出しは、変動性が顕著に高かった。結果は、この方法により製造された複数の薬物挿入体間では治療薬剤の一様な含有量を維持することが望ましいことから、医学上有用な装置の製造に関して顕著である。
種々の実施形態では、各薬物挿入体は、その一端部で密封でき、それにより、第2の端部は、挿入体がインプラント内に配置され患者の体内に挿入されたときに薬剤を放出するための暴露表面をもたらす。各薬物挿入体は、熱溶接またはキャップを用いて挟むことにより、紫外線硬化性接着剤、シアノアクリレート、エポキシを使用して、その一端部で密封できる。紫外線硬化性接着剤を使用すると、硬化は紫外線を用いた照射により実施される。
種々の実施形態では、本発明の方法は、その一端部を密封した後で、各薬物挿入体を、中で挿入体を受容するように適合されている個々のインプラント本体の経路中に挿入することをさらに含む。
種々の実施形態では、薬物コアが2つの薬物コアを含み、第1の薬物コアは第1の薬剤と第1のマトリックスとを含み、第2の薬物コアは第2の薬剤と第2のマトリックスとを含み、第1の薬剤と第2の薬剤とは異なり、第1のマトリックスと第2のマトリックスとは同じであるまたは相互に異なるのいずれかであり、インプラント本体は、第1および第2の薬物コアを含む薬物挿入体を受容するように適合されている開口部を含むとき、この方法は、薬物コアを含む挿入体をインプラント本体の開口部内部に配置するのに先立ち薬物コアを挿入体内に配置することをさらに含むことができる。
種々の実施形態では、治療薬剤が、シクロスポリンまたはオロパタジン、シクロスポリンまたはオロパタジンのプロドラッグまたは誘導体またはその任意の組合せを含む場合、マトリックスはポリウレタンを含み、シクロスポリンもしくはオロパタジン、またはシクロスポリンのプロドラッグもしくは誘導体、またはオロパタジンのプロドラッグもしくは誘導体、またはそれらの組合せの、ポリウレタンのポリマーもしくはコポリマーに対する重量比は約1wt%〜約70wt%であり、この方法は、ポリウレタンのポリマーもしくはコポリマーと治療薬剤とを融解および混合することにより混合物を形成することを含んでもよい。治療薬剤は、混合物中で融解された形態をしていてもよく、または、混合物中で固形をしていてもよい。
いくつかの実施形態では、マトリックスは、暴露表面が、持続した期間にわたり治療分量で治療薬剤を放出するように、治療薬剤と混合された不活性の充填剤材料を含む。
いくつかの実施形態では、硬化後にマトリックスの暴露表面が、持続した期間にわたり治療分量で治療薬剤を放出するように、塩をマトリックス前駆体と混合する。
いくつかの実施形態では、硬化後にマトリックスの暴露表面が、持続した期間にわたり治療分量で治療薬剤を放出するように、界面活性剤をマトリックス前駆体と混合する。
いくつかの実施形態では、第2のポリマーまたはオリゴマーをマトリックス前駆体と混合し、マトリックスを形成するために硬化させた後では、第2のポリマーまたはオリゴマーの存在は、治療薬剤の放出速度が変化するように機能できる。
本発明の種々の実施形態は、患者の涙点管中に挿入するための涙点プラグを提供し、このプラグは、遠位端部および近位端部を有する薬物コアであって、その少なくとも遠位端部は涙点を通した挿入に適した断面を有し、眼または周囲組織の中に送達可能な治療薬剤を含むポリウレタンのポリマーもしくはコポリマーを含む薬物コアと;薬物コアの少なくとも1つの暴露表面を画定するように、薬物コアの部分を覆って配置された実質的に不浸透性のシースであって、薬物コアの少なくとも1つの暴露表面は、プラグが患者の涙点管内で使用されるように埋め込まれた場合に患者の涙液または涙液膜の液体と接触して、治療レベルの治療薬剤を持続した期間にわたり放出するように近位端部の近くに位置している、シースとを備える。本発明のプラグは、ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーから形成される、治療薬剤が中に含有されているコアを含む。コアのポリウレタンのポリマーもしくはコポリマーは、脂肪族ポリウレタン、芳香族ポリウレタン、ポリウレタンヒドロゲル形成材料、親水性ポリウレタンまたはそれらの組合せであってもよい。例えば、コアは、ポリウレタンヒドロゲル形成材料であるTG−500またはTG−2000という、ヒドロゲルを形成する能力のあるポリエーテルベースの熱可塑性の脂肪族ポリウレタンから形成できる。そのようなヒドロゲル形成ポリマーは、100wt%超、例えば最大500〜2000wt%の水を吸収し、結果的に物理的寸法において膨潤することができる。あるいは、コアは、水性媒体と接触するとはるかに少ない、約20〜100%の程度まで膨潤するPursilなどの親水性ポリウレタンから形成できる。他の例としては、HP−60D20、HP−60D35、HP−60D60またはHP−93A100などのTecophilicグレードを含めたLubrizol製品が挙げられる。
種々の実施形態では、治療薬剤は、シクロスポリン、またはシクロスポリンのプロドラッグもしくは誘導体を含むことができる。シクロスポリンは、当技術分野で周知のように免疫調節薬であり、ドライアイおよび眼の炎症(アレルギー応答が原因で生じるものなど)の治療において使用できる。シクロスポリンまたはシクロスポリンのプロドラッグもしくは誘導体の、ポリウレタンのポリマーもしくはコポリマーに対する個々の重量比は、約1wt%から約70wt%もの高さ、またはさらにはそれを超えるものであってもよい。シクロスポリン、またはそのプロドラッグもしくは誘導体の放出速度は、コア用の特定の種類のポリウレタンの選択により、および、治療薬剤の極性(疎水性/親水性)を調節することにより、制御できる。シクロスポリンは、どちらかといえば疎水性の化合物であるが、エステラーゼのような内因性酵素によりin vivoで切断できる基など、親水性部分が含まれている官能基を組み込むことにより、親水性を高めることができる。
種々の実施形態では、治療薬剤は、オロパチジン、またはオロパチジンのプロドラッグもしくは誘導体であってもよい。例えば、薬剤は、塩酸オロパチジン、別名パタノールであってもよい。アレルギー性結膜炎(眼のかゆみ)を治療するために使用すると、オロパタジンは、肥満細胞からのヒスタミンの放出を阻害する。オロパタジンは、ヒト結膜上皮細胞に対しヒスタミンが誘発する作用の阻害など、in vivoおよびin vitroでの1型の即時型過敏反応を阻害する比較的選択的なヒスタミンH1拮抗薬である。
プラグは、薬物コアの少なくとも1つの暴露表面への治療薬剤の放出区域または領域を限定するための実質的に不浸透性のシースをさらに含み、これを眼の涙点に隣接して速やかに配置することにより、治療薬剤は、涙液により容易に接触され、それにより眼の表面にわたり拡散できる。例えば、シクロスポリンは、涙液中に放出されて乾燥または炎症(アレルギー反応が原因で生じるものなど)についての眼の治療に役立つことができる。シースは、必要に応じ、プラグの遠位端部近くに位置する薬物コアの第2の暴露表面をもたらすように適合させて治療薬剤を涙点管中に放出することもできる。例えば、涙点管の感染症の治療のための抗生物質などの第2の治療薬剤を含ませることができる。
コアが、水性媒体と接触した際に膨潤するように適合されているとき(コアが、親水性ポリウレタンまたはヒドロゲル形成ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーで構成されているときなど)、シースは、親水性ポリウレタンまたはヒドロゲル形成ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーの膨潤に応答し膨張できる十分な弾性または柔軟性を示すものであってもよい。膨潤は、涙点管内のプラグの保持に役立つように適合されている。
コアは、下記に掲載するものなど、二次的な状態の治療のため、または、例えば、シクロスポリンまたはオロパチジンまたはその両方の投与が医学上適応される病態の治療に役立つなど第2の生物活性剤をさらに含有できる。
涙小管インプラントは、眼の涙点管中に挿入するように適合されている任意の適当な形状であってもよい。例えば、インプラントは、プラグの任意のヒドロゲル形成コアの膨潤に先立つ管中への挿入時点では実質的に円筒状であってもよい。または、インプラントは、眼を浸す涙液中にコアから治療薬剤を放出できるように、円錐形状のものであってもよく、または「L」の形状に曲がったものであってもよく、または患者の眼の涙点管内に配置できる任意の他の形状を有していてもよい。したがって、インプラントのコアは、インプラントが涙点管内に配置されると薬剤が涙液中に拡散し、それにより眼の表面を浸すことができるように、涙点の開口部への接続手段を有する。種々の実施形態では、コアは、涙点管の内部に薬剤を放出するための、涙点管の内部への接続手段を有する。
例えば、このインプラントは、本願と共に同時出願された特許出願中で開示されるように「ベントデザイン」と呼ばれる形状であってもよい。または、このインプラントは、本願と共に同時出願された特許出願中で開示されるように「Hデザイン」と呼ばれるデザインであってもよい。または、このインプラントは、本願と共に同時出願された特許出願中で開示されるような「スケルトン」デザインと呼ばれるものであってもよい。
種々の実施形態では、本発明のインプラントの製造の方法であって、ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーを融解および混合することと、治療薬剤を加えて、融解混合物を形成してから、この融解混合物をシース内で成型するか、または、この融解混合物を成型してコアを形成するかいずれかを行ってから、コアの周囲にシースを配置することとを含む方法が提供される。
インプラントのコアを形成するために選択されるポリウレタンは、インプラントが融解押出しまたは成型の過程により製造できるように、熱可塑性であってもよい。例えば、コアのポリウレタンの融解物を調製でき、治療薬剤をその中に組み込むことができる。種々の実施形態では、薬剤は、適当なポリウレタンのポリマーもしくはコポリマーの融点周囲の温度で融解でき、薬剤は、溶融状態で自身を組み込むことができるが、ただし、融点は、ポリウレタンの分解温度またはそれを下回る温度であり、ポリウレタンの融点は、薬剤が顕著な熱分解を起こす温度を下回る。例えば、シクロスポリンは約135℃で融解するが、TG−500は約170℃で融解し、TG−2000は約115℃で融解する。したがって、融解混合物は、TG−2000を用いて約135℃またはそれより高い温度で調製でき、このとき、シクロスポリンおよびポリウレタンのコア材料は両方とも融解された状態である。シクロスポリンが、用いられる過程において上昇した温度で維持される期間にわたって安定であるとき、TG−500のようなより高度に融解する材料を使用できる。
種々の実施形態では、薬剤は、溶融ポリウレタン中では融解しないが、微粒子形態など微細粉末の形態をしている固体として分散する。例えば、200℃超で融解するオロパチジンは、ポリウレタンの融解物中で固形の形態で分散できる。次に、固体薬剤を含有するポリウレタン融解物を場合によりシース内で成型して、本発明のプラグを得る。
したがって、融解混合工程は、本発明のインプラントを形成するための成型であってもよい。例えば、融解混合物は、より高度に融解するシース材料ですでに裏打ちされた型の中に成型でき、このシース材料は、シクロスポリンの拡散に実質的に浸透性でないポリウレタンであってもよい。このようにして、シース付きインプラントを調製できる。あるいは、コアを型の中に収めてから、コア材料が暴露したままにすべき領域を除いて、シース材料をインプラントの表面上にコーティングまたは成型できる。または、シース材料は、インプラント全体を覆うように成型してから、シクロスポリンが容易に涙液と接触し、それにより眼の中に拡散できる、近位端部近くの少なくとも1つの位置においてコア材料を暴露させるように、部分を除去する。
種々の実施形態では、本発明のインプラントの製造の方法であって、ポリウレタンのポリマーもしくはコポリマーを溶解し溶媒中の治療薬剤中で混合して混合溶液を形成した後、シース内で混合溶液を成型してから溶媒を除去するか、または、混合溶液を成型してコアを形成してから溶媒を除去し、その後コア周囲にシースを配置するかいずれかを行うことを含む方法が提供される。
インプラントのコアを形成するために選択されるポリウレタンは、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフランなどの有機溶媒中で可溶性であってもよい。多くの治療薬剤(例えばシクロスポリン)は、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフランなど多くの有機溶媒中でも可溶性である。このようにして、混合溶液を調製できる。次に、この溶液を使用して、溶媒を除去してインプラントのコアを成型できる。溶媒は、周囲条件下で実施できる蒸発か、または、加熱、気圧低下またはその両方を含むことができる蒸発により除去できる。溶媒の除去後、シースをコア周囲にコーティングまたは成型してから、コアの暴露区画を残すか、または、シースの部分を除去して暴露区画を得るか、いずれかを行うことができる。
種々の実施形態では、本発明のインプラントの製造の方法は、ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーを溶媒中で溶解してから、溶媒中で実質的に不溶性な固形の治療薬剤を加え、その後溶媒を除去してコアを成型することを含む。固形の薬剤は、好ましい表面積/重量比をもたらすように、微粒子形態などの微細粉末であってもよい。種々の実施形態では、インプラントは、ポリウレタンのポリマーまたはコポリマーの中の固形の薬剤の分散系を含む。
コアを構成するポリウレタンのポリマーまたはコポリマーは、脂肪族ポリウレタン、芳香族ポリウレタン、ポリウレタンヒドロゲル形成材料、親水性ポリウレタンまたはそれらの組合せであってもよい。治療薬剤用に使用される特定のポリウレタンは、薬剤の放出プロファイルを長時間制御するように選択できる。
本発明のインプラントは、眼または周囲組織の不全状態を治療するために使用できる。例えば、シクロスポリンまたはオロパチジンまたはその両方を組み込むインプラントは、ドライアイまたは眼の炎症を含む眼の不全状態を治療するために使用できる。治療薬剤は、眼の中だけでなく、涙点管の内部など周囲組織の中にもある期間にわたって放出できる。この期間は、約1週間〜約6カ月であってもよい。膨潤するポリウレタンを使用するときは、インプラントの膨潤は、その期間をかけて薬物が放出されるように適合されている全期間にわたり涙点管内のプラグを固定するために使用できる。
種々の実施形態では、本発明は、本発明の方法により作製された薬物挿入体を提供する。
種々の実施形態では、本発明は、治療を必要とする患者における不全状態を治療する方法であって、本発明の薬物挿入体、または本発明の薬物コア、または本発明の充填済み前駆体シースを分割することによって得た薬物コア、または本発明の薬物インプラント、または本発明の方法により調製される薬物挿入体を含むインプラントを配置することを含み、治療薬剤が、患者の眼内にまたは眼に隣接して不全状態を治療するように適合されており、その結果、薬物が体組織中または体液中に放出される方法を提供する。
種々の実施形態では、本発明は、治療を必要とする患者の不全状態を治療するように適合されているインプラントの製造における、本発明の薬物挿入体、または本発明の薬物コア、または本発明の充填済み前駆体シースを分割することによって得た薬物コア、または本発明の薬物インプラント、または本発明の方法により調製される薬物挿入体の使用を提供する。
種々の実施形態では、本発明は、緑内障の治療のためにラタノプロストを眼に持続的に放出させるための、涙点プラグ内に配置されるように適合されている薬物挿入体であって、コアと、該コアを部分的に覆うシース本体とを含み、該コアはラタノプロストおよびマトリックスを含み、マトリックスはシリコーンポリマーを含み、ラタノプロストはその小滴としてシリコーン内に分散されており、薬物コアの容積部中のラタノプロストの量が薬物コアの任意の他の等しい容積部中のラタノプロストの量に類似しており、シース本体がコアの一部を覆って配置されて、前記一部からのラタノプロストの放出を阻害し、コアの暴露表面はラタノプロストを眼に放出するように適合されているシース本体によって覆われていない薬物挿入体を提供する。
種々の実施形態では、本発明は、ドライアイまたは炎症の治療のために眼にシクロスポリンを持続的に放出するための、涙点プラグ内に配置されるように適合されている薬物挿入体であって、コアと、該コアを部分的に覆うシース本体とを含み、該コアはシクロスポリンおよびマトリックスを含み、マトリックスがポリウレタンポリマーを含み、シクロスポリンがポリウレタン内で溶解されており、薬物コアの容積部中のシクロスポリンの量は薬物コアの任意の他の等しい容積部中のシクロスポリンの量に類似しており、シース本体はコアの一部を覆って配置されて、前記一部からのシクロスポリンの放出を阻害し、コアの暴露表面は眼へシクロスポリンを放出するように適合されているシース本体によって覆われていない薬物挿入体を提供する。
[図の考察]
図1Aは、本発明の一実施形態による、眼の視覚欠損を治療するための持続放出用インプラント100の水平断面図を示すものである。インプラント100は、薬物コア110を含む。薬物コア110は、治療薬剤を保持する埋込み可能な構造体である。薬物コア110は、治療薬剤の内包物160を含有するマトリックス170を含む。内包物160は、濃縮された形態の治療薬剤、例えば、結晶形態の治療薬剤を含むことが多いと思われ、治療薬剤は、薬物コア110のマトリックス170中へ長時間溶解できる。マトリックス170は、シリコーンマトリックスなどを含むことができ、マトリックス170内の治療薬剤の混合物は、非均一なものであってもよい。多くの実施形態では、非均一な混合物は、治療薬剤を浸み込ませたシリコーンマトリックス部分と、治療薬剤の内包物を含む内包物部分とを含むことから、非均一な混合物は多相の非均一な混合物を含む。いくつかの実施形態では、内包物160は、治療薬剤の油、例えばラタノプロスト油の小滴を含む。いくつかの実施形態では、内包物160は、治療薬剤の粒子、例えば、結晶形態をした固体のビマトプロスト粒子を含んでもよい。多くの実施形態では、マトリックス170は内包物160を封入し、内包物160は、約1μm〜約100μmの寸法を有する微小粒子を含んでもよい。封入された内包物は、微小粒子を封入する周囲の固体マトリックス(例えばシリコーン)中に溶解することから、治療薬剤がコアから放出される間、マトリックス170は治療薬剤で実質的に飽和されている。
薬物コア110は、シース本体(シース体)120で取り囲まれる。シース本体120は、治療薬剤に実質的に不浸透性であってもよいことから、治療薬剤は、シース本体120で覆われていない薬物コア110の端部上の暴露(露出)表面から放出されることが多い。保持構造体130は、薬物コア110およびシース本体120に接続される。保持構造体130は、中空の組織構造体、例えば、上述のような涙小管の涙点中でインプラントを保持するように形作られる。
密閉要素140は、保持構造体130の上および周囲に配置される。密閉要素140は、涙液の流れに不浸透性であり、中空の組織構造体を閉鎖し、より穏やかに組織と接する表面を供給することにより、保持構造体130から組織構造体の組織を保護するように機能してもよい。シース本体120は、保持構造体130に接続してシース本体120と薬物コア110とを保持するためのシース本体部分150を含む。シース本体部分150は、シース本体120および薬物コア110の動きを制限するための栓を備えることができる。多くの実施形態では、シース本体部分150は、膨らみのある先端部150Bで形成できる。膨らみのある先端部150Bは、涙小管中に導入すると非侵襲的に入り込む、丸みを帯びた凸状の外側部分を備えることができる。多くの実施形態では、シース本体部分150Bは、密閉要素140と一体になっていてもよい。
図1Bは、図1Aの持続放出用インプラントの側断面図を示すものである。薬物コア110は円筒状であり、円形断面を用いて示してある。シース本体120は、薬物コア110上に配置された環状部分を備える。保持構造体130は、いくつかの長軸方向の支柱131を備える。長軸方向の支柱131は、保持構造体の端部近くに一緒に接続される。長軸方向の支柱を示してあるが、外周の支柱を使用することもできる。密閉要素140は、保持構造体130の長軸方向の支柱131により支持され、それを覆って配置され、放射状に拡張可能な膜などを備えてもよい。
図1Cは、本発明の一実施形態による、コイル保持構造体132を有する持続放出用インプラント102の斜視図を示すものである。保持構造体132は、コイルを備え、薬物コア112を保持する。管腔、例えば経路112Cは、薬物コア112を通って伸び、治療薬剤の経鼻および全身の施用のための、治療薬剤の送達のための管腔経由での涙液の流れを可能にしてもよい。経路112Cに加え、またはそれと併せ、保持構造体132およびコア112は、保持部材が、薬物コアから離れた場所の涙小管の組織を保持する間、涙液が薬物コアおよびシース本体の周囲を流れることを可能にするような大きさにできる。薬物コア112は、部分的に覆われていてもよい。シース本体は、薬物コア112の第1の端部を覆う第1の部品122Aと、薬物コアの第2の端部を覆う第2の部品122Bとを備える。密閉要素は、保持構造体を覆って設置でき、および/または、保持構造体は、前述の要領で浸漬コーティングしてもよい。
図1Dは、本発明の一実施形態による、支柱を備える保持構造体134を有する持続放出用インプラント104の斜視図を示すものである。保持構造体134は、長軸方向の支柱を備え、薬物コア114を保持する。薬物コア114は、薬物コア114の大部分にわたりシース本体124で覆われる。薬物コアは、暴露された端部経由で治療薬剤を放出し、シース本体124は、前述の要領で薬物コアの大部分を覆う環状のものである。密閉要素は、保持構造体を覆って設置でき、または、保持構造体は、前述の要領で浸漬コーティングできる。器具とかみ合うことができる突起(例えば、フック、ループ、縫合糸またはリング124R)は、保持構造体が涙小管中に埋め込まれた状態を保ちながらシース本体124から伸びて、シース本体および薬物コアの交換を容易にするように、薬物コアおよびシース本体を共に取り出すことができる。いくつかの実施形態では、フック、ループ、縫合糸またはリングを備える器具とかみ合うことができる突起は、保持構造体134から伸びて、突起、薬物コアおよびシース本体を有する保持構造体を取り出すことにより、持続放出用インプラントを取り出すことができる。
図1Eは、本発明の一実施形態による、ケージ保持構造体136を有する持続放出用インプラント106の斜視図を示すものである。保持構造体136は、いくつかの連結した金属糸を備え、薬物コア116を保持する。薬物コア116は、薬物コア116の大部分にわたりシース本体126で覆われる。薬物コアは、暴露(露出)した端部経由で治療薬剤を放出し、シース本体126は、前述のように薬物コアの大部分を覆う環状のものである。密閉要素は、保持構造体を覆って設置でき、または、保持構造体は、前述の要領で浸漬コーティングできる。
図1Fは、本発明の一実施形態による、コアおよびシースを備える持続放出用インプラントの斜視図を示すものである。薬物コア118は、薬物コア118の大部分にわたりシース本体128で覆われる。薬物コアは、暴露された端部経由で治療薬剤を放出し、シース本体128は、前述の要領で薬物コアの大部分を覆う環状のものである。治療薬剤放出の速度は、暴露した薬物コアの表面積と、薬物コア118内に含まれる材料とにより制御される。多くの実施形態では、治療薬剤の溶出速度は、薬物コアの暴露表面面積に強力および実質的に関連し、薬物コア中の内包物中に配置された薬物の濃度にはあまり依存しない。円形の暴露表面の場合は、溶出速度は、暴露表面の直径、例えば円筒状薬物コアの端部近くの暴露した薬物コア表面の直径に強く依存する。そのようなインプラントは、眼組織中、例えば、眼の結膜組織層9の下、および、図1Fに示すように強膜組織層8の上か、または強膜組織層内に部分的にのみのいずれかで、強膜組織を貫通しないように埋め込むことができる。薬物コア118は本明細書に記載のような保持構造体および密閉要素のいずれかと共に使用できることに注目すべきである。
一実施形態では、薬物コアは、シース本体128を用いずに、強膜8と結膜9との間に埋め込まれる。シース本体を用いないこの実施形態では、薬物コアの物理的特徴は、例えば、本明細書に記載のような薬物コアマトリックス中の溶解された治療薬剤の濃度を低下させることにより、薬物コアの暴露表面の増加を補うように調節できる。
図1Gは、本発明の一実施形態による、流れを制限する保持構造体186、コア182およびシース184を備える持続放出用インプラント180を模式的に示すものである。シース本体184は、薬物コア182を少なくとも部分的に覆うことができる。薬物コア182は、その中に治療薬剤の内包物を含有して、治療薬剤を持続的に放出してもよい。薬物コア182は、暴露した凸面の表面積182Aを含むことができる。暴露した凸面の表面積182Aは、治療薬剤を放出するための表面積が増加していてもよい。密閉要素188は、保持構造体186を覆って配置して、涙小管を通した涙液の流れを遮断できる。多くの実施形態では、保持構造体186は、密閉構造体188内に位置して、保持構造体と一体化した密閉要素となることができる。流れを制限する保持構造体186および密閉要素188は、涙小管を通した涙液の流れを遮断する大きさにできる。
本明細書に記載のコアおよびシース本体は、いくつかの方式でさまざまな組織中に埋め込むことができる。本明細書に記載のコアおよびシースの多く、とりわけ、図2A〜2Jに関連して説明される構造体は、涙点プラグとして単独で埋め込むことができる。あるいは、本明細書に記載のコアおよびシース本体の多くは、本明細書に記載の保持構造体および密閉要素と共に埋め込むために、薬物コア、シース本体などを備えることができる。
図2Aは、本発明の一実施形態による、拡張された暴露表面面積を有するコアを備えた持続放出用インプラント200の断面図を示すものである。薬物コア210は、シース本体220で覆われる。シース本体220は、開口部220Aを備える。開口部220Aの直径は、薬物コア210の断面の最大直径に近い。薬物コア210は、暴露表面210E、別名活性表面を含む。暴露表面210Eは、3つの表面を含む:環状表面210A、円筒状表面210Bおよび端部表面210C。環状表面210Aの外径は、コア210の断面の最大直径に近く、内径は、円筒状表面210Bの外径に近い。端部表面210Cの直径は、円筒状表面210Bの直径に適合されている。暴露表面210Eの表面積は、環状表面210A、円筒状表面210Bおよび端部表面210Cの面積の合計である。表面積は、コア210の軸に沿って長軸方向に伸びる円筒状表面積210Bのサイズにより増加してもよい。
図2Bは、本発明の一実施形態による、拡張された暴露表面面積212Aを有するコア212を備えた持続放出用インプラント202の断面図を示すものである。シース本体222は、コア212を覆って伸びる。治療薬剤は、前述の要領で、コアから放出できる。暴露表面面積212Aはほぼ円錐形であり、楕円形または球形であってもよく、シース本体から外向きに伸びて薬物コア212の暴露表面面積を増やす。
図2Cおよび2Dは、個々に、本発明の一実施形態による、減少した暴露表面面積214Aを有する薬物コア214を備えた持続放出用インプラント204の斜視図および断面図を示すものである。薬物コア214は、シース本体224内に囲い込まれる。シース本体224は、環状端部部分224Aを含み、それにより、それを通って薬物コア214が伸びる開口部が規定される。薬物コア214は、治療薬剤を放出する暴露表面214Aを含む。暴露表面214Aの直径214Dは、薬物コア214を横断する最大寸法(例えば最大直径)より小さい。
図2Eは、本発明の一実施形態による、そこから伸びる城郭状構造を有する拡張された暴露表面面積216Aを有する薬物コア216を備えた持続放出用インプラント206の断面図を示すものである。城郭状構造は、暴露表面216Aの表面積を増加させるために、間隔を空けて配置されたいくつかの指状構造216Fを含む。城郭状構造によりもたらされた表面積増加に加え、薬物コア216は、窪み216Iを備えてもよい。窪み216Iは、逆円錐形の形状を有してもよい。コア216は、シース本体226で覆われる。シース本体226は、一端部上で開いており、薬物コア216上に暴露表面216Aをもたらす。シース本体226は、指状構造も含み、コア216に合う城郭状構造パターンを有する。
図2Fは、本発明の一実施形態による、折畳み構造を有するコアを含む持続放出用インプラント250の斜視図を示すものである。インプラント250は、コア260およびシース本体270を含む。コア260は、コアの端部上に暴露表面260Aを有し、これにより、周囲の涙液または涙液膜の液体への薬物移動が可能になる。コア260は、折畳み構造260Fも含む。折畳み構造260Fは、周囲の流動性の涙液または涙液膜の液体に暴露されるコアの表面積を増やす。このようにして暴露表面面積を増やすと、折畳み構造260Fはコア260から涙液または涙液膜の液体および標的となる治療領域の中への治療薬剤の移動を増やす。折畳み構造260Fは、経路260Cがコア260中で形成されるように、形成される。経路260Cは、暴露表面260A中の開口部へのコアの端部に接続し、治療薬剤の移動をもたらす。したがって、コア260の合計の暴露表面面積は、涙液または涙液膜の液体、および、暴露表面260Aおよび涙液または涙液膜の液体との経路260Cの接続を介して涙液または涙液膜の液体に暴露されている折畳み構造260Fの表面に直接暴露している暴露表面260Aを含む。
図2Gは、本発明の一実施形態による、内表面を有する経路を備えるコアを有する持続放出用インプラントの斜視図を示すものである。インプラント252は、コア262およびシース本体272を含む。コア262は、コアの端部上に暴露表面262Aを有し、これにより、周囲の涙液または涙液膜の液への薬物移動が可能になる。コア262は、経路262Cも含む。経路262Cは、コアに対し経路の内側上に形成される内表面262Pを有する経路の表面積を増やす。いくつかの実施形態では、内部の暴露表面は、多孔性であってもよい。経路262Cは、コアの暴露表面262A近くのコアの端部に伸びる。周囲の涙液または涙液膜の液体に暴露されるコアの表面積は、経路262Cに暴露されるコア262の内側を含むことができる。こうして暴露表面面積が増加すると、コア262から涙液または涙液膜の液体および標的の治療領域の中への治療薬剤の移動を増やすことができる。したがって、コア262の合計の暴露表面面積は、涙液または涙液膜の液体に直接暴露される暴露表面262A、および、暴露表面262Aおよび涙液または涙液膜の液体を有する経路262Cの接続を介して涙液または涙液膜の液体に暴露されている内表面262Pを含むことができる。
図2Hは、本発明の一実施形態による、薬物移動を増やすための経路を備えたコア264を有する持続放出用インプラント254の斜視図を示すものである。インプラント254は、コア264およびシース本体274を含む。暴露表面264Aは、他の場所に位置してもよいが、暴露表面は、コア264の端部上に位置する。暴露表面264Aは、周囲の涙液または涙液膜の液への薬物移動を可能にする。コア264は、経路264Cも含む。経路264Cは、暴露表面264に伸びる。経路264Cは、十分に大きいため、涙液または涙液膜の液は経路に入ることができ、それにより涙液または涙液膜の液と接触するコア264の表面積を増やす。周囲の流動性の涙液または涙液膜の液に暴露されるコアの表面積は、経路264Cを画定するコア262の内表面264Pを含む。こうして暴露表面面積が増えると、経路264Cは、コア264から涙液または涙液膜の液および標的の治療領域の中への治療薬剤の移動を増やす。したがって、コア264の合計の暴露表面面積は、涙液または涙液膜の液に直接暴露される暴露表面264A、および、暴露表面264Aと涙液または涙液膜の液と共に経路262Cの接触を介して涙液または涙液膜の液に暴露される内表面264Pを含む。
図2Iは、本発明の一実施形態による、凸面の暴露表面266Aを備える薬物コア266を有する持続放出用インプラント256の斜視図を示すものである。薬物コア266は、薬物コア266を少なくとも部分的に覆って伸びて凸面の暴露表面266Aを画定するシース本体276で部分的に覆われる。シース本体276は、シャフト部分276Sを備える。凸面の暴露表面266Aは、シース本体上に暴露表面面積増加をもたらす。凸面の暴露表面266Aの断面積は、シース本体276のシャフト部分276Sの断面積より大きい。より大きい断面積に加え、凸面の暴露表面266Aは、コアから外に向かって伸びる凸面の形状により、より大きい表面積を有する。シース本体276は、シース本体中で薬物コア266を支持するいくつかの指状構造276Fを備え、シース本体276中の所定の場所に薬物コア266を保持するために薬物コアを支持する。指状構造276Fは、間隔を空けて配置されており、薬物が、コアから、指状構造間の涙液または涙液膜の液に移動するのを可能にする。突起276Pは、シース本体276上で外向きに伸びる。突起276Pを内向きに押すと、シース本体276から薬物コア266を排出できる。薬物コア266は、適切な時間の後、例えば、薬物コア266が治療薬剤の大部分を放出した後で別の薬物コアと交換できる。
図2Jは、本発明の一実施形態による、いくつかの軟らかいブラシ様部材268Fを有する、暴露表面面積を備えるコア268を有する持続放出用インプラント258の側面図を示すものである。薬物コア268は、薬物コア268を少なくとも部分的に覆って伸びて暴露表面268Aを画定するシース本体278で部分的に覆われる。シース本体278はシャフト部分278Sを備える。軟らかいブラシ様部材268Fは、薬物コア268から外向きに伸び、薬物コア268に暴露表面面積増加をもたらす。軟らかいブラシ様部材268Fも軟らかく弾力があり簡単に向きがそれることから、これらの部材は、隣接する組織に対し刺激を引き起こさない。薬物コア268は、上で説明したような多くの材料でできていてもよいが、軟らかいブラシ様部材268Fも備える薬物コア268の製造には、シリコーンが適した材料である。薬物コア268の暴露表面268Aは、窪み268Iも備えることから、暴露表面268Aの少なくとも一部分が凹面である。
図2Kは、本発明の一実施形態による、凸面の暴露表面269Aを備える薬物コア269を有する持続放出用インプラント259の側面図を示すものである。薬物コア269は、薬物コア269を少なくとも部分的に覆って伸びて凸面の暴露表面269Aを画定するシース本体279で部分的に覆われる。シース本体279は、シャフト部分279Sを備える。凸面の暴露表面269は、シース本体の上に暴露表面面積増加をもたらす。凸面の暴露表面269Aの断面積は、シース本体279のシャフト部分279Sの断面積より大きい。より大きい断面積に加え、凸面の暴露表面269Aは、コア上で外向きに伸びる凸面の形状により、より大きい表面積を有する。保持構造体289は、シース本体279に取り付けることができる。保持構造体289は、本明細書中に記載のような保持構造体のいずれか、例えば、Nitinol(商標)などの超弾性形状記憶合金を含むコイルを備えることができる。保持構造体289を浸漬コーティングして、保持構造体289を生体適合性にすることができる。
図2Lは、本発明の一実施形態による、コアの暴露表面面積を増やすための窪んだ凹表面232Aを備える薬物コア232を有する持続放出用インプラント230の側面図を示すものである。シース本体234は、薬物コア232を少なくとも部分的に覆って伸びる。窪んだ凹表面232Aは、薬物コア232の暴露された端部上に形成され、薬物コアの暴露表面面積増加をもたらす。
図2Mは、本発明の一実施形態による、コアの暴露表面面積を増やすためにその中に形成された経路242Cを有する凹表面242Aを備える薬物コア242を有する持続放出用インプラント240の側面図を示すものである。シース本体244は、薬物コア242を少なくとも部分的に覆って伸びる。窪んだ凹表面242Aは、薬物コア232の暴露された端部上に形成されて薬物コアの暴露表面面積増加をもたらす。経路242Cは、薬物コア242中に形成されて、薬物コアの暴露表面面積増加をもたらす。経路242Cは、経路242Cが、涙液または涙液膜に暴露されるコアの表面積の増加をもたらすように、窪んだ凹表面242Aに伸びていてもよい。
次に、図3Aおよび3Bを参照して、本発明の一実施形態による、シリコーン本体310、薬物コア320および保持構造体330を備えるインプラント、例えば涙点プラグ300が示される。本体310は、薬物コア挿入体320を受容する大きさの近位経路314を備える。本体310は遠位経路318を備える。遠位経路318は、ヒドロゲルロッド332を受容する大きさにできる。仕切り319は、遠位経路から近位経路を分離してもよい。フィラメント334を本体310中に埋め込み、ヒドロゲルロッド332の周囲に巻いて、ヒドロゲルロッド332を本体310に取り付けることができる。
薬物コア挿入体320は、薬物コアの暴露表面326に向けて薬物を誘導するように、薬物に実質的に不浸透性のシース322を備えてもよい。薬物コア320は、その中に封入された薬物の内包物324を有するシリコーンマトリックス328を含んでもよい。薬物コア挿入体、および、薬物コア挿入体の製造については、米国出願第11/695,537号および同第11/695,545号中に記載がある。いくつかの実施形態では、本体310は、シース本体に窪みを付け本体の近位端部の近くの薬物コアの暴露表面面積を減らすように、近位経路314中に伸び、シース本体322上を圧迫する環状の縁315を暴露表面326の近くに備えてもよい。いくつかの実施形態では、シース本体の窪みがなく、任意選択的な環状縁315がシース本体上を圧迫して経路内で薬物コアを保持してもよい。
保持構造体330は、ヒドロゲルロッド332、ヒドロゲルコーティング336、突起312および突起316を備えてもよい。ヒドロゲルロッド332は、涙点を通って狭い外形形状で涙小管の管腔中に挿入できる。管腔中への挿入後、ヒドロゲルロッド332およびヒドロゲルコーティング336を水和させ、広い外形形状に拡張することができる。突起312および突起316は、例えば、ヒドロゲルのコーティングおよびロッドが拡張する間、管腔中のインプラント300を保持および/または安定化できる。
図3Cは、図3Aにあるような眼の上涙小管中への涙点プラグ300の挿入を示すものである。涙点プラグ300は、上涙小管中に設置するように並べられたヒドロゲルロッド332と方向を合わせることができる。涙点プラグ300は、涙小管の垂直部分10V中に進めることにより、薬物コアの暴露表面およびインプラントの近位端部が涙点開口部の外部と実質的に一線上に揃えることができる。
図3Dは、図3Aにあるような眼の涙小管中に埋め込んだ後の拡張された外形形状での涙点プラグを示すものである。ヒドロゲルロッド332およびヒドロゲルコーティング336を、拡張された外形形状で示す。
図4は、本発明の一実施形態による、インプラントと共に使用するのに適した薬物コア挿入体400を示すものである。薬物コア挿入体は、第1の近位端部402および遠位端部404を備える。薬物コア挿入体400は、シース本体410(例えばポリイミドのチューブ)を備える。シース本体410は、治療薬剤の流れをシース本体によって阻害できるように、治療薬剤に実質的に不浸透性の材料を含むことができる。治療薬剤に実質的に不浸透性である可能性がある材料の例としては、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)およびポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。シース本体410は、第1の近位端部412および第2の遠位端部414を備える。薬物コア挿入体400は、マトリックス材料426中に封入された内包物424を含む薬物コア420を備える。薬物コアの近位端部上に一定の面積を有する暴露表面422は、治療レベル、例えば治療分量の治療薬剤の持続放出を可能にする。多くの実施形態では、治療薬剤は、マトリックス材料426中で少なくとも部分的に可溶性であることから、内包物由来の治療薬剤が、例えば拡散によりマトリックス材料を透過し、マトリックス材料から、暴露表面422と接触する組織表面および/または体液中に放出されることができる。材料430は、薬物コア挿入体の遠位端部404を備える。多くの実施形態では、ポリイミドのチューブは、薬物コアを暴露させるようにチューブの両端が切断されているカット長のチューブを中に備える。材料430は、治療薬剤の流れを阻害するように挿入された薬物コアの遠位端部上に接着できる。多くの実施形態では、材料430は、治療薬剤に実質的に不浸透性の接着剤材料、例えば、アクリル接着剤、シアノアクリレート接着剤、エポキシ接着剤、ウレタン接着剤、ホットメルト接着剤、および、UV硬化を用いたloctite(商標)を含む。
シース本体410は、インプラントの経路内に適合する大きさである。薬物コア挿入体の遠位端部404は、薬物コア挿入体がインプラント中に挿入された場合に暴露表面422が暴露されたままになるように、インプラント中に挿入できる。
図4Bは、図4Aにあるような本発明の一実施形態による薬物コア挿入体400と共に使用するのに適したインプラント450の例を示すものである。インプラント450は、近位端部452および遠位端部454を備える。インプラント450は、眼の涙点中でインプラント450を保持するための窪みを備える保持構造体460を備える。インプラント450は、インプラント内から、開口部が形成されている近位端部452に伸びる経路456を備える。経路456は、薬物コア挿入体400を受容する大きさにすることができる。薬物コア挿入体400は、表面422を備える近位端部402が暴露されている間、薬物コア挿入体400の遠位端部404がインプラント450内に埋め込まれるように、経路456中に挿入できる。インプラント450が涙点中に設置されると、表面422は、治療薬剤を眼に送達できるように、眼の涙液に暴露される。多くの実施形態では、涙点プラグの長さは約2mm、幅は約1mmである。
多くのインプラントは、薬物コア挿入体400と共に使用できる。いくつかの実施形態は、市販のインプラント、例えば、Glendora CaliforniaのOasis Medicalから市販されているSoft Plugシリコーン涙点プラグ、Medtronicから市販されているTear Pool Punctal Plug、Memphis、TNのOdysseyから入手可能な「Parasol Punctal
Occluder System」、および/または、Memphis、TNのEagle Visionから入手可能なEagle Vision Plugを採用できる。いくつかの実施形態では、涙点プラグは、特注の涙点プラグ、例えば、患者の測定値に応じて選択されている大きさの特注プラグを備えてもよい。いくつかの実施形態では、薬物コア挿入体と共に使用されるインプラントは、以下の文献中に記載のようなインプラントを備えてもよい:2007年4月2日に出願された米国出願第11/695,537号、発明の名称「DRUG DELIVERY METHODS,STRUCTURES,AND COMPOSITIONS FOR NASOLACRIMAL SYSTEM」(代理人整理番号SLW2755.001US1);2007年4月2日に出願された米国出願第11/695,545号、発明の名称「NASOLACRIMAL DRAINAGE SYSTEM IMPLANTS FOR DRUG THERAPY」(代理人整理番号SLW2755.003US1);および2006年12月26日に出願された米国出願第60/871,867号、発明の名称「DRUG DELIVERY IMPLANTS FOR INHIBITION OF OPTICAL DEFECTS」(代理人整理番号2755.024PRV)、その優先権はPCT出願第PCT/US2007/088701号;および2004年4月15日に出願された米国出願第10/825,047号、発明の名称「DRUG DELIVERY VIA PUNCTAL
PLUG」、(代理人整理番号SLW2755.025US1)中で主張された。
図36に示され、本発明と共に出願される米国特許出願第 号(代理人整理番号SLW2755.044US1)、発明の名称「LACRIMAL IMPLANTS AND
RELATED METHODS」中で論じられているようないくつかの実施形態では、インプラントは、涙点経由で、結合している涙小管中に挿入できるものであってもよい。涙点を通って、結合している涙小管中へのインプラントの挿入は、以下の1つまたは複数を可能にすることができる:それを通っての涙液の流れの阻害または遮断(例えば、ドライアイを治療するため)、または、眼への薬物もしくは他の治療薬剤の持続放出(例えば、感染症、炎症、緑内障もしくは他の眼の疾患もしくは障害を治療するため)、鼻腔(例えば、副鼻腔もしくはアレルギー障害を治療するため)または内耳系(例えば、めまいもしくは偏頭痛を治療するため)。インプラントは、第1および第2の部分を含むインプラント本体を備えることができ、第1の部分の近位端部から第2の部分の遠位端部へ伸びることができる。多様な例では、近位端部は、長軸方向の近位軸を画定でき、遠位端部は、長軸方向の遠位軸を画定できる。インプラント本体は、涙点および結合している涙小管内に埋め込んだ際に、涙小管の屈曲部に、またはそのより遠位に位置する涙小管の少なくとも部分に対してインプラント本体の少なくとも部分にバイアスをかけるために、少なくとも45度の角度の交差が近位軸と遠位軸との間に存在するように、構成できる。いくつかの例では、インプラント本体は、角を成す交差が約45度〜約135度の間であるように構成できる。この例では、インプラント本体は、角を成す交差が約90度である(すなわち、交差がほぼ直角である)ように構成される。多様な例では、第1の部分の遠位端部は、第2の部分の近位端部、またはその近くの第2の部分と一体になっていてもよい。
特定の例では、インプラント本体は、近位端部の近くに配置された第1の空洞または遠位端部の近くに配置された第2の空洞の1つまたは両方を備える、角を成して配置された円筒様構造体を含むことができる。この例では、第1の空洞は、第1の部分の近位端部から内向きに伸び、第2の空洞は第2の部分の遠位端部から内向きに伸びる。第1の薬物を放出するまたは他の薬剤を放出する薬物コア挿入体を第1の空洞中に配置して、眼への薬物または他の治療薬剤を持続的に放出することができ、一方、第2の薬物コア挿入体を第2の空洞中に配置して、例えば、鼻腔または内耳系への薬物または他の治療薬剤を持続的に放出することができる。インプラント本体の隔壁は、第1の空洞と第2の空洞との間に位置させることができ、第1の薬物コア挿入体と第2の薬物コア挿入体との間で材料(例えば薬剤)の連絡を阻害または防止するように使用できる。いくつかの例では、インプラント本体は固体であり、1つまたは複数の空洞または他の空隙を含まない。
図4Cは、治療薬剤の全身送達用のインプラントと共に使用するのに適した環状の薬物コア挿入体470を示すものである。薬物コア挿入体470は、シース本体を通る治療薬剤の流れを阻害するように、治療薬剤に実質的に不浸透性のシース本体472を備える。薬物コア挿入体470は、固体の薬物コア474を備える。薬物コア474は、前述のように、治療薬剤の内包物が中に分散されているマトリックス材料を含む。薬物コア474は、暴露表面478を備える。薬物コア474は、暴露表面478が内向きに誘導され、経路中で体液に、例えば、経路中に埋め込まれた際に涙液に暴露されるように、その中に形成された経路476を有する一般に環状の形状を備える。治療薬剤の、治療分量またはレベルは、内側の暴露表面478から経路内の体液に放出できる。
図4Dは、図4Cにあるような薬物コア挿入体と共に使用するのに適したインプラント480を示すものである。インプラント480は、本体484(例えば、成型されたシリコーン本体)と保持構造体482とを備える。本体484内の経路486は、薬物コア挿入体470を受容する大きさである。インプラント480は、外側上にヒドロゲルコーティング488を備えてもよい。ヒドロゲルコーティング488は、保持構造体488の近くに位置してもよい。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルコーティング488は、患者体内に埋め込まれた際に薬物コア挿入体の経路476を通る流れをヒドロゲルが阻害しないように、インプラント480の端部から離れた場所に位置してもよい。いくつかの実施形態では、保持構造体は、本体484中に埋め込まれた近位部分、および、涙点と涙嚢との間のコイルを通る流れを容認するように拡張する暴露された遠位部分を有する拡張可能なコイルまたはステント様構造体(例えば、涙小管中でインプラントを固定するように拡張する能力のある形状記憶)を含んでもよい。
図4Eおよび4Fは、個々に、第1の薬物コア494および第2の薬物コア496を備える薬物コア挿入体490の側断面図および端面図を示すものである。第1の薬物コア494は、第1の治療薬剤の内包物494Iを含み、第2の薬物コア496は、第2の治療薬剤の内包物496Iを含む。治療分量の第1の治療薬剤は第1の薬物コア494の暴露表面494Sを通って放出され、治療分量の第2の治療薬剤は、第2の薬物コア496の暴露表面496Sを通って放出される。
挿入体490は、一方の薬物コアが他方の薬物コアへ放出されるのを阻害するように、薬物コア496の周囲の外側シース本体492と、薬物コア494と薬物コア496との間に配置された内側シース本体498とを備える。シース本体492およびシース本体498は、暴露表面から離れた場所での治療薬剤の放出を阻害するように、治療薬剤に実質的に不浸透性の材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、シース本体は、薄壁のチューブを備えてもよい。
いくつかの実施形態では、薬物コア挿入体は、眼の中または近くの組織、例えば、強膜、結膜、眼瞼の円蓋、小柱網、毛様体、角膜、脈絡膜、脈絡膜上腔、強膜、硝子体液、房水および網膜の中に挿入するためのインプラントと共に使用できる。
いくつかの実施形態では、薬物コア挿入体は、薬物コア挿入体の取出しを容易にするための構造体、例えば、以下の文献中に記載のようなフィラメントと共に製造できる:2007年9月7日に出願された米国出願第60/970,696号、および2007年9月21日に出願された同第60/974,367号、発明の名称「EXPANDABLE NASOLACRIMAL DRAINAGE SYSTEM IMPLANTS」、(代理人整理番号は個々にSLW2755.004PRVおよび2755.005PRV)、その優先権は、本発明と同時に出願された米国出願第 号中で主張されている。
図5A〜5Cは、本発明の一実施形態による、薬物コア510およびシース本体520の再設置を模式的に示すものである。インプラント500は、薬物コア510、シース本体520および保持構造体530を備える。インプラント500は、保持構造体530で支持され、それと共に可動する密閉要素を含むことができる。保持構造体530は、埋込みに先立つ第1の小さな外形形状と、埋込み中の第2の大きな外形形状とを呈することができる場合が多い。保持構造体530は大きな外形形状で示され、涙小管の管腔中に埋め込まれる。シース本体520は、シース本体および薬物コアが保持構造体530により保持されるように、シース本体および薬物コアを保持構造体530に取り付けるための拡張体525Aおよび拡張体525Bを含む。薬物コア510およびシース本体520は、矢印530により示されるように、薬物コア510を近位方向に引くことにより一緒に取り出すことができる。保持構造体530は、図5Bに示されるように薬物コア510およびシース本体520が取り出された後で、涙小管組織中に埋め込まれたままにすることができる。交換用コア560および交換用シース本体570は、図5Cに示すように一緒に挿入できる。そのような交換は、薬物コア中での治療薬剤の供給が減少し、治療薬剤の放出速度が最低の有効レベルに近付くように、薬物コア510が有効量の治療薬剤を放出した後で行われることが望ましい場合がある。交換用シース本体570は、拡張体575Aおよび拡張体575Bを含む。交換用薬物コア560および交換用シース本体570は、矢印590により示されるように遠位に進み、保持構造体530中に交換用薬物コア560および交換用シース本体570を挿入できる。保持構造体530は、交換用薬物コア560および交換用シース本体570が弾力性の部材530中に挿入される間、実質的に同じ位置に留まる。
図5Dおよび5Eは、本発明の一実施形態による、インプラント800から薬物コア挿入体808を取り出すための、薬物コア挿入体808から伸びるフィラメント810を備えるインプラント800を示すものである。インプラント800は、前述のように、本体805および拡張可能な保持構造体820を備える。本体810は、近位端部802および遠位端部803を備える。インプラント800は、保持構造体820の近位端部802から遠位端部804へ伸びる。インプラント800は、前述のように、薬物コア挿入体を受容するための経路を備える。フィラメント810は、薬物コア挿入体の近位端部から薬物コア挿入体の遠位端部へ伸びる。フィラメント810を成型して、薬物コア挿入体とすることができる。フィラメント840は、前述のフィラメントの多く、例えば、縫合糸、熱硬化性ポリマー、形状記憶合金などを含んでもよい。
図5Fは、本発明の一実施形態による、インプラントの本体832から薬物コア挿入体を取り出すための薬物コア挿入体の遠位端部に結合された薬物コア挿入体831に沿って伸びるフィラメント840を備えるインプラント830を示すものである。インプラント830は、近位端部833を備える。フィラメント840は、接着剤842を用いて、薬物コア挿入体831の遠位端部に結合されてもよい。フィラメント840は、多くの方式で、例えば、シアノアクリレート接着剤、アクリル接着剤、エポキシ接着剤、ウレタン接着剤およびホットメルト接着剤などを用いて、薬物コア挿入体831の遠位端部に結合できる。
[シース本体(シース体)]
シース本体は、薬物コアからの治療薬剤の移動を制御するための適切な形状および材料を備える。シース本体はコアを内蔵し、コアに対しぴったり適合できる。シース本体は、治療薬剤に実質的に不浸透性の材料からできていることから、治療薬剤の移動速度は、シース本体によって覆われていない薬物コアの暴露表面面積により大部分制御されてもよい。多くの実施形態では、シース本体を経由した治療薬剤の移動は、薬物コアの暴露表面を経由した治療薬剤の移動の約10分の1以下であってもよく、100分の1以下であることが多い。言い換えれば、シース本体を経由した治療薬剤の移動は、薬物コアの暴露表面を経由した治療薬剤の移動より少なくとも約1桁分少ない。適当なシース本体材料としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート」(以下「PET」)、ポリメタクリル酸メチル(「PMMA」)、ステンレス鋼(例えば、316型ステンレス鋼、チューブ径25XX)、またはチタンが挙げられる。シース本体の壁厚は、約0.00025”〜約0.0015”である。いくつかの実施形態では、壁厚は、コアに隣接するシース表面から、コアから離れた場所の反対側のシース表面までの距離と定義できる。コアを横切って伸びるシースの総直径は、約0.2mm〜約1.2mmの範囲である。コアは、シース材料中のコアを浸漬コーティングすることにより形成してもよい。あるいは、または、併せて、シース本体は、チューブと、例えば、シース本体チューブ中に滑らせ、注入し、および/または押し出すことができる液体または固体としてのシース中に導入されるコアとを備えることができる。シース本体は、コアの周囲を浸漬コーティング、例えば、あらかじめ形成されたコアの周囲を浸漬コーティングすることもできる。
インプラントの臨床使用を容易にするための追加的な特徴を備えたシース本体を提供できる。例えば、シースは、保持構造体およびシース本体が患者体内に埋め込まれたままである間、交換可能な薬物コアを受容してもよい。シース本体は、前述のような保持構造体に強固に取り付けてもよく、保持構造体がシース本体を保持する間、コアは交換可能である。特定の実施形態では、押し出されてシース本体からコアを排出するときにシース本体に力を加える外部突起を有するシース本体を提供できる。次に、別の薬物コアをシース本体中に配置できる。多くの実施形態では、シース本体および/または保持構造体は、設置を示すための識別する特徴(例えば、識別する色)を有してもよく、これにより、涙小管または他の体組織構造体の中のシース本体および/または保持構造体の配置を患者が容易に見つけることができる。保持部材および/またはシース本体は、涙小管中の設置の深さを示す少なくとも1つの印を備えてもよく、これにより、保持部材および/またはシース本体は、少なくとも1つの印に基づき、涙小管中の所望の深さに配置できる。
[保持構造体]
保持構造体は、インプラントが所望の組織位置、例えば涙小管中に簡単に配置できるような大きさおよび形状の適切な材料を含む。保持構造体は、機械的に展開可能であり、例えば、Nitinol(商標)などの超弾性形状記憶合金を含む保持構造体を用いれば、所望の断面形状に典型的に拡張する。所望の拡張をもたらすために、Nitinol(商標)に加え、他の材料、例えば、弾力性の金属またはポリマー、可塑的に変形可能な金属またはポリマー、形状記憶ポリマーなども使用できる。いくつかの実施形態では、San
Diego、CaliforniaのBiogeneral,Inc.から入手できるポリマーおよびコーティングされた繊維を使用してもよい。ステンレス鋼および非形状記憶合金などの多くの金属を使用して、所望の拡張を得ることができる。この拡張能力は、インプラントをさまざまなサイズ、例えば0.3分〜1.2mmの範囲の涙小管の中空の組織構造体中に適合させる(すなわち1つのサイズがすべてに適合する)。単一の保持構造体は0.3〜1.2mmの涙小管を横断して適合するように作製できるが、代わりに選択可能な複数の保持構造体は、必要に応じ、この範囲、例えば、0.3〜約0.9mmの涙小管用の第1の保持構造体、および、約0.9〜1.2mmの涙小管用の第2の保持構造体に適合するように使用できる。保持構造体は、保持構造体が取り付けられる解剖学上の構造体に適切な長さ、例えば、涙小管の涙点の近くに位置する保持構造体については約3mmの長さを有する。異なる解剖学上の構造体については、この長さは、妥当な保持力をもたらすのに適切な長さ、例えば、適切なものとしては1mm〜15mmの長さであってもよい。
シース本体および薬物コアは、前述のように保持構造体の一端部に取り付けることができるが、多くの実施形態では、保持構造体の他方の端部は、薬物コアおよびシース本体に取り付けられていないため、保持構造体は、保持構造体が拡張する間、シース本体および薬物コアの上を滑ることができる。保持構造体の幅が拡張して所望の断面の幅になるに従って保持構造体は長さが縮むことがあるので、一端部上でのこの滑る能力は望ましい。しかし、多くの実施形態は、コアに対応して滑らないシース本体を採用してもよいことに注目すべきである。
多くの実施形態では、保持構造体は、組織から回収できる。突起、例えば、フック、ループまたはリングは、保持構造体から伸びて、保持構造体の取出しを容易にすることができる。
[密閉要素]
密閉要素は、インプラントが中空の組織構造体を通る液体の、例えば、涙小管を通る涙液の流れを少なくとも部分的に阻害、さらには遮断できるような大きさおよび形状の適切な材料を含む。示してある密閉材料は、拡張して保持構造体と共に収縮できる生体適合性材料(例えばシリコーン)の薄壁の膜である。密閉要素は、保持構造体の端部上を滑る材料の別々の薄いチューブとして形成され、前述のように保持構造体の一端部に固定される。あるいは、密閉要素は、生体適合性ポリマー、例えばシリコーンポリマー中で保持構造体を浸漬コーティングすることにより形成できる。密閉要素の厚さは、約0.01mm〜約0.15mm、多くは約0.05mm〜0.1mmの範囲であってもよい。
[治療薬剤]
「治療薬剤」は、薬物を含むことができ、以下のいずれかまたはその等価物、誘導体または類似体であってもよく、以下のようなものを挙げることができる:抗緑内障医薬品(例えば、アドレナリン作動薬、アドレナリン拮抗薬(β遮断薬)、炭酸脱水酵素阻害薬(CAI、全身性および局所性)、副交感神経様作用薬、プロスタグランジン、プロスタグランジン類似体および降圧脂質ならびにそれらの組合せ)、抗微生物剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬、抗真菌薬など)、オロパタジンなどのコルチコステロイドまたは他の抗炎症薬(例えばNSAID)、鬱血除去薬(例えば血管収縮薬)、アレルギー応答を防止または軽減する薬剤(例えば、シクロスポリン、抗ヒスタミン薬、サイトカイン阻害薬、ロイコトリエン阻害薬、IgE阻害薬、免疫調節薬)、肥満細胞安定化剤、毛様体筋麻痺薬など。(1つまたは複数の)治療薬剤で治療できる状態の例としては、緑内障、外科手術前後の処置、ドライアイおよびアレルギーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、治療薬剤は、潤滑剤または界面活性剤、例えば、ドライアイを治療するための潤滑剤であってもよい。
例示的な治療薬剤としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:トロンビン阻害薬;抗血栓剤;血栓溶解剤;線維素溶解剤;血管攣縮阻害薬;血管拡張薬;降圧剤;抗生物質(テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリトロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウムなど)、抗真菌薬(アンホテリシンBおよびミコナゾールなど)および抗ウイルス薬(イドクスウリジントリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロンなど)などの抗微生物剤;表面糖タンパク質受容体阻害薬;抗血小板剤;抗有糸分裂薬;微小管阻害薬;抗分泌剤;活性阻害薬;リモデリング阻害薬;アンチセンスヌクレオチド;代謝拮抗薬;抗増殖薬(抗血管新生剤など);抗癌化学療法剤;抗炎症薬(ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、21−リン酸デキサメタゾン、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、21−リン酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドなど);非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカムインドメタシン、イブプロフェン、ナキソプレン、ピロキシカムおよびナブメトンなど)。本発明の方法における使用のために企図されるそのような抗炎症ステロイドとしては以下が挙げられる:トリアムシノロンアセトニド(一般名)、および、例えば、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、フルメトロンおよびそれらの誘導体)を包含するコルチコステロイド;抗アレルギー薬(ナトリウムクロモグリケート、アンタゾリン、メタピリリン、クロルフェニラミン、セトリジン、ピリラミン、プロフェンピリダミンなど);抗増殖剤(1,3−シスレチノイン酸、5−フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンCおよびシスプラチンなど);鬱血除去薬(フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドラゾリンなど);縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ(ピロカルピン、サリチル酸塩、カルバコール、塩化アセチルコリン、フィゾスチグミン、エゼリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、ホスホリンヨード、臭化デメカリウムなど);抗新生物薬(カルムスチン、シスプラチン、フルオロウラシル3など;免疫薬(ワクチンおよび免疫刺激薬など);ホルモン剤(エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロン作用薬、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチドおよびバソプレシン視床下部放出因子など);シクロスポリンなどの免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗薬、成長因子(上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、ソマトトラピン、フィブロネクチンなど);血管新生阻害薬(アンギオスタチン、酢酸アネコルタブ、トロンボスポンジン、抗VEGF抗体など);ドパミン作動薬;放射線治療薬剤;ペプチド;タンパク質;酵素;細胞外マトリックス;成分;ACE阻害薬;フリーラジカル捕捉剤;キレート剤;抗酸化薬;抗ポリメラーゼ;光線力学的療法剤;遺伝子療法剤;ならびに、プロスタグランジン、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体など他の治療薬剤(チモロール、ベタキソロール、レボブノロール、アテノロールなどのβ遮断薬、および、ビマトプロスト、トラボプロスト、ラタノプロストなどのプロスタグランジン類似体を包含する抗緑内障薬など);アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ジクロルフェナミド、ダイアモックスなどの炭酸脱水酵素阻害薬;ならびに、ルベゾール(lubezole)、ニモジピンおよび関連化合物などの神経保護薬;ならびに、ピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミンなどの副交感神経様作用薬など。
眼科用途での使用の場合、使用できるいくつかの特定の治療薬剤としては、緑内障用医薬品(ムスカリン作用薬、β遮断薬、α作動薬、炭酸脱水酵素阻害薬、プロスタグランジンおよびそれらの類似体)、抗炎症薬(ステロイド、軟ステロイド、NSAID)、βラクタム、フルオロキノロンなどの抗生物質を包含する抗感染薬)、抗ウイルス薬、および抗真菌薬、ドライアイ用医薬品(CsA、デルムルセント、ヒアルロン酸ナトリウム)またはそれらの組合せが挙げられる。
薬物送達用装置に付随する薬物の量は、特定の薬剤、所望の治療利益、および、その間にこの装置が治療薬を送達することが意図される時間に応じて変化してもよい。本発明の装置は、さまざまな形状、サイズおよび送達機序を呈することから、装置に付随する薬物の量は、治療対象となる特定の疾患または状態および用量、ならびに、治療効果を達成するのに望ましい継続期間に依存することになる。一般に、薬物の量は、少なくとも、装置からの放出時に、所望の生理学的または薬理学的な効果を達成するのに有効な薬物の量である。
本発明の薬物送達用装置の実施形態は、安全域の広い大きな治療範囲をもたらすように、治療薬の治療上有効な液滴形態を実質的に下回る1日当たりの速度で薬物を送達するように適合させることができる。例えば、多くの実施形態は、1日当たりの液滴の用量の5または10パーセント以下である治療レベルで、持続する期間にわたり眼を治療する。結果として、約7日、より典型的には約1〜3日の初期の間は、インプラントは、持続放出レベルよりは実質的に高いが1日当たりの液滴形態の用量を未だ下回る速度で治療薬剤を溶出できる。例えば、1日当たり100ngの平均持続放出レベル、および1日当たり1000〜1500ngの初期放出速度の場合、初期に放出される薬物の量は、眼に送達される薬物の液滴中に存在してもよい2500ngの薬物より少ない。このようにして、毎日投与される液滴および/または複数の液滴中の薬物の量を実質的に下回る持続放出レベルを使用すると、意図した部位または領域での不適切または過剰な量の薬物を回避しながら、装置は、安全域が広く所望の治療利益を達成するための治療上有益な量の薬物を放出できる。
持続する期間は、比較的短期間、例えば分または時間(麻酔薬を使用する場合など)、数日または数週間にわたる(外科手術前または外科手術後の抗生物質、ステロイド、またはNSAlDなどの使用など)、またはより長い(緑内障治療の場合など)、例えば数カ月または数年(装置の反復ベースの使用時)を意味してもよい。
例えば、マレイン酸チモロール、β1およびβ2(非選択的)アドレナリン受容体遮断剤などの薬物は、3カ月などの持続する期間にわたる放出用装置において使用できる。3カ月は、緑内障薬を用いた局所性液滴療法を受けている緑内障患者のための医師の訪問の間の比較的典型的な経過時間であるが、この装置は、より長いか、またはより短い継続期間にわたる治療を提供できると考えられる。3カ月の例においては、0.25%濃度のチモロールは、言い換えれば、2.5〜5mg/1000μL、典型的には2.5mg/1000μLである。局所施用のためのチモロールの液滴は、通常は40〜60μLの範囲であり、典型的には50μLである。したがって、液滴中には、0.08〜0.15mg、典型的には0.125mgのチモロールが存在していてもよい。5分後に眼の中におよそ8%(例えば6〜10%)の液滴が残っていてもよく、したがって、その時点で約10μgの薬物が利用できる。チモロールの生体利用率は30〜50%であってもよく、それは、1.5〜7.5μg、例えば4μgの薬物を眼が利用できることを意味する。チモロールは、一般には1日2回施用され、したがって、毎日8(または3〜15)μgを眼が利用できる。したがって、送達装置は、270〜1350μg、例えば720μgの薬物を90日間または3カ月間の持続放出にわたり含有してもよいと考えられる。薬物は、装置内に含有され、装置のデザイン(使用されるポリマー、および、薬物溶出のために利用できる表面積など)に基づいて溶出されることになろう。塩酸オロパタジン(Patanol(登録商標))および他の薬物の場合は、薬物は、チモロールに類似する様式で、装置上に同じように含有させ、溶出させることができる。
マレイン酸チモロールの市販の溶液は、0.25%および0.5%の調製品の形態で入手でき、初期用量は、0.25%溶液1日当たり1滴2回であってもよい。0.25%濃度のチモロールは、1000μl当たり2.5mgに相当する。薬物コアから毎日放出されるチモロールの持続放出の分量は、毎日約3〜15μgであってもよい。装置から毎日送達される持続放出の分量は変化してもよいが、1日当たり約8μgの持続放出送達は、0.25%溶液2滴で施用される約3.2%のチモロール0.250mgに相当する。
例えば、ラタノプロスト(Xalatan)、プロスタグランジンF2α類似体の場合では、この緑内障医薬品の濃度は、チモロールの濃度の約50分の1である。したがって、埋込み可能な装置上の薬物の量は、生体利用率によるが、ラタノプロストおよび他のプロスタグランジン類似体の場合は相当少なく、およそ5〜135μg、典型的には10〜50μgであると考えられる。これは、言い換えれば、β遮断薬の送達の場合に必要なものより小さいか、または、より長い放出期間にわたり多くの薬物を内蔵できるか、いずれかの装置でもよい。
Xalatanの液滴は、液滴の体積を50μLと仮定すると、約2.5μgのラタノプロストを含有する。したがって、2.5μgの約8%が点眼後5分存在すると仮定すると、約200ngの薬物しか眼の上には残らない。ラタノプロストの臨床試験に基づけば、この量は、少なくとも24時間眼圧を低下させるうえで有効である。Pfizer/Pharmaciaは、XalatanについてNDAの支援においていくつかの用量応答試験を行った。用量は、1mL当たりラタノプロスト12.5μg〜115μgの範囲であった。1日1回投与される現在の用量のラタノプロスト50pg/mLが最適であることが示された。しかし、最低用量である12.5μg/mLを1日1回でも、15μg/mLを1日2回でも、1日1回用量である50μg/mLの約60〜75%の眼圧低下が一貫してもたらされた。前述の仮定に基づけば、12.5μg/mLの濃度は、50μL液滴中でラタノプロスト0.625μgとなり、その結果、約50ng(8%)の薬物のみが5分後に眼の中に残ることになる。
多くの実施形態では、ラタノプロストの濃度は、チモロールの濃度の約1/100または1パーセントであり、特定の実施形態では、ラタノプロストの濃度は、チモロールの濃度の約1/50または2パーセントであってもよい。例えば、ラタノプロストの市販の溶液調製品は、濃度0.005%で入手でき、1日1滴を用いて送達されることが多い。多くの実施形態では、涙液のウオッシュアウトおよび生体利用率がチモロールに類似すると仮定すると、1日に装置から放出される治療上有効濃度の薬物は、チモロールの約1/100、1日当たり約30〜150ng、例えば約80ngであってもよい。例えば、埋込み可能な装置上の薬物の量は、相当少なく、チモロールのおよそ1%〜2%、例えば2.7〜13.5μgであってもよく、ラタノプロストおよび他のプロスタグランジン類似体の場合は約3〜20μgであってもよい。毎日放出されるラタノプロストの持続放出量は変化してもよいが、1日当たり80ngの持続放出は0.005%溶液の単一の液滴を用いて施用されるラタノプロスト2.5μgの約3.2%に相当する。
例えば、合成のプロスタミドプロスタグランジン類似体であるビマトプロスト(Lumigan)の場合では、この緑内障医薬品の濃度は、チモロールの濃度の1/20以下であってもよい。したがって、3〜6カ月の持続放出にわたり持続放出用装置上に担持される薬物の量は、生体利用率によるが、ビマトプロストならびにその類似体および誘導体については相当少なく、およそ5〜30μg、典型的には10〜20μgであってもよい。多くの実施形態では、インプラントは、より長い持続放出期間にわたりより多くの薬物を、例えば、ビマトプロストおよびその誘導体の場合は、6〜12カ月の持続放出期間にわたり20〜40μgを内蔵できる。薬物濃度のこの低下は、言い換えれば、β遮断薬送達の場合に必要なものより小さい可能性のある装置であってもよい。
ビマトプロストの市販の溶液濃度は0.03wt%であり、1日1回送達されることが多い。毎日放出されるビマトプロストの持続放出量は変化してもよいが、1日当たり300ngの持続放出は、0.03%溶液の単一の液滴を用いて施用されるビマトプロスト15μgの約2%に相当する。本発明に関する研究から、より低い持続放出用量のビマトプロスト、例えば、ビマトプロスト20〜200ng、および、1日当たりの持続放出用量である1日当たりの液滴用量の0.2〜2%でも、眼内圧を少なくともいくらかは低下させることができることが示唆される。
例えば、プロスタグランジンF2α類似体であるトラボプロスト(Travatan)の場合では、この緑内障医薬品の濃度は、チモロールの濃度の2%以下であってもよい。例えば、市販の溶液濃度は0.004%であり、1日1回送達されることが多い。多くの実施形態では、涙液のウオッシュアウトおよび生体利用率がチモロールに類似すると仮定すると、1日に装置から放出される薬物の治療上有効濃度は、約65ngであってもよい。したがって、埋込み可能な装置上の薬物の量は、生体利用率によっては、相当少ないと考えられる。これは、言い換えれば、β遮断薬送達の場合に必要なものより小さいか、または、より長い放出期間にわたりより多くの薬物を内蔵できるか、いずれかの可能性のある装置でもある。例えば、埋込み可能な装置上の薬物の量は、トラボプロスト、ラタノプロストおよび他のプロスタグランジンF2α類似体の場合は、相当少なく、チモロールのおよそ1/100、例えば、2.7〜13.5μg、典型的には約3〜20μgであってもよい。毎日放出されるラタノプロストの持続放出量は変化してもよいが、1日当たり65ngの持続放出は、0.004%溶液の単一の液滴を用いて施用されるトラボプロスト2.0μgの約3.2%に相当する。
いくつかの実施形態では、治療薬剤は、標的である眼組織を治療するために、コルチコステリオド(corticosteriod)、例えばフルオシノロンアセトニドを含んでもよい。特定の実施形態では、フルオシノロンアセトニドは、涙小管から放出され、糖尿病性黄斑浮腫(DME)の治療薬として網膜に送達できる。
高速の放出速度、低速の放出速度、ボーラス放出、バースト放出またはそれらの組合せを送達するために装置を改変または適合させることも、本発明の範囲内である。ボーラス量の薬物は、涙液または涙液膜の中で速やかに溶解する浸食性のポリマーキャップの形成により放出されてもよい。ポリマーキャップが涙液または涙液膜と接触すると、ポリマーの可溶性によりキャップを浸食でき、薬物は一斉に放出される。薬物のバースト放出は、ポリマーの可溶性に基づき涙液または涙液膜の中でも浸食するポリマーを用いて実施できる。この例では、薬物およびポリマーは、外側のポリマー層が溶解すると薬物が速やかに放出されるように、装置の長さに沿って重層化されていてもよい。薬物の高いまたは低い放出速度は、薬物層が急速または徐々に放出されるように、浸食性のポリマー層の可溶性を変化させることにより達成できると考えられる。薬物を放出するための他の方法は、薬物分子のサイズによっては、多孔性の膜、可溶性ゲル(典型的な眼用溶液中のものなど)、薬物の微小粒子の封入またはナノ粒子封入により達成できると考えられる。
[薬物コア]
薬物コアは、治療薬剤、および治療薬剤の持続放出を実現するマトリックス材料を含む。マトリックス材料は、シリコーン、またはポリウレタンなどのポリマーを含むことができる。治療薬剤は、薬物コアから標的組織、例えば、眼の毛様体に移動する。治療薬剤は、場合によりマトリックス中でほんのわずかしか溶けない場合があり、その結果、少量の治療薬剤がマトリックス中に溶解し、薬物コア110の表面からの放出可能であり、追加の薬物が、マトリックス中で固体または液体の物理的状態を取りうる内包物の形態で存在する追加の薬物である。治療薬剤は、コアの暴露表面から涙液または涙液膜に向けて拡散するので、コアから涙液または涙液膜に向けての移動速度は、マトリックス中に溶解している治療薬剤の濃度に関係しうる。これに加え、またはこれと複合して、コアから涙液または涙液膜に向けての治療薬剤の移動速度は、治療薬剤が溶解しているマトリックスの特性に関係しうる。具体的な実施形態では、薬物コアから涙液または涙液膜に向けての移動速度は、シリコーン製剤に依存しうる。いくつかの実施形態では、所望の治療薬剤放出速度を実現するように、薬物コア中に溶解している治療薬剤の濃度を制御することができる。コアに含まれる治療薬剤として、液体、固体、固体ゲル、固体結晶、固体非晶質、固体微粒子、および/または治療薬剤の溶解形態を挙げることができる。ある実施形態では、薬物コアは、治療薬剤を含むシリコーンマトリックスを含む。治療薬剤には、液体または固体の内包物、例えば、シリコーンマトリックス中にそれぞれ分散した、液体ラタノプロストの液滴、または固体のビマトプロスト粒子が含まれうる。薬物コアから、例えば眼の涙液への薬物の溶出速度を制御するために、液滴母集団または粒子母集団全体の平均直径、および直径の分布を利用することができる。
別の実勢形態では、治療薬剤は、薬物が治療上有用な濃度で存在するときに、内包物が形成されないように、マトリックス中で比較的高いレベルで溶解することができる。例えば、シクロスポリンはポリウレタンマトリックス中に高濃度で溶解することができ、このシクロスポリンは、ポリウレタン全体に分子レベルで分散し、すなわち、ポリウレタンマトリックス中で、シクロスポリンの「固体溶液」を実現することができる。
内包物が固体の場合に、特定の平均粒子直径、および直径分布を実現するために、固体材料のさまざまな粉砕形態を用いることができる。そのような、固体粉体は、当該分野で既知の任意の方法により入手可能である。例えば、http://www.glatt.com/e/00_home/00.htm.のGlatt GmbHにより、製薬工業のために製造された機械を参考にすること。製粉プロセスでは、ある幅をもったサイズを生み出すことができる。所望の寸法に粒子サイズを増大させるために、流動層およびコーターを用いることができる。粒子サイズは表面積に影響を及ぼし、また溶解にも影響を与える可能性がある。内包物が、ビマトプロストなどの固体である場合、および内包物が、ラタノプロストオイルなどの液体である場合、の両方の状況において、薬物コアからの薬物の溶出速度を制御するために、内包物のサイズおよび関連するサイズ分布を利用することができる。
薬物コアは、治療薬剤の持続放出を実現することができる1種類または複数の生体適合性のある材料を含みうる。薬物コアは、本質的に非生分解性のシリコーンマトリックスを、これに溶解し、この中に存在する薬物の内包物と共に備えるマトリックスを含む実施形態の観点から、上記で説明しているが、この薬物コアには、治療薬剤の持続放出を実現する構造、例えば、生分解性のマトリックス、多孔性薬物コア、液体薬物コア、および固体薬物コアを含めることができる。治療薬剤を含むマトリックスを、生分解性ポリマーまたは非生分解性ポリマーのいずれかにより形成することができる。非生分解性の薬物コアとして、シリコーン、アクリレート、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリウレタン、ヒドロゲル、ポリエステル(例えば、E. I. Du Pont de Nemours and Company、Wilminton、DEから入手可能なDACRON(登録商標))、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE(ePTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、押出コラーゲン、ポリマーフォーム、シリコーンゴム、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン、ポリイミド、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金(例えば、Nitinol)、チタン、ステンレス鋼、コバルトクロム合金(例えば、Elgin Specialty Metals、Elgin、ILから入手可能なELGILOY(登録商標);Carpenter Metals Corp.、Wyomissing、PAから入手可能なCONICHROME(登録商標))、を挙げることができる。生分解性の薬物コアとして、1種類または複数の生分解性のポリマー、例えば、タンパク質、ヒドロゲル、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(L−グリコール酸)(PLGA)、ポリグリコリド、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリ(アミノ酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコネート、ポリ乳酸−ポリエチレンオキサイドコポリマー、修飾セルロース、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリアンヒドリド、ポリホスホエステル、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、およびこれらの組合せを挙げることができる。いくつかの実施形態においては、薬物コアは、少なくともヒドロゲルポリマーのうちの1つを含むことができる。
[有効なレベルでの治療薬剤の放出]
治療薬剤の放出速度は、薬物コア中の治療薬剤濃度に関係しうる。多くの実施形態においては、薬物コアは、治療薬剤に所望の溶解度をもたらすように選択された非治療薬剤を、その薬物コア中に含む。薬物コアの非治療薬剤は、本明細書に記載のポリマー、および添加剤を含みうる。コアのポリマーは、マトリックス中の治療薬剤に所望の溶解度、および/または分散性をもたらすように選択されうる。例えば、コアは、親水性治療薬剤の溶解度または分散性を促進することができるヒドロゲルを含みうる。いくつかの実施形態においては、マトリックス中の治療薬剤に、所望の溶解度または分散性をもたらすように、ポリマーに官能基を付加することができる。例えば、シリコーンポリマーに官能基を付加することができる。
いくつかの実施形態では、治療薬剤の放出動力学を制御するために、放出速度を調節する添加剤を使用することができる。例えば、治療薬剤の放出動力学を制御するために、薬物コア中の治療薬剤の溶解度を増減させることによって、治療薬剤濃度を制御するように、添加剤を用いることができる。溶解度は、マトリックスに対する治療薬剤の溶解度を増減させる適切な分子、および/または物質を導入することにより制御可能である。治療薬剤の溶解度は、マトリックスおよび治療薬剤の疎水的特性および/または親水的特性に関連しうる。例えば、界面活性剤、チヌビン(tinuvin)、塩、および水を、マトリックスに添加することができ、これらはマトリックス中の親水性治療薬剤の溶解度を増加させることができる。塩は、塩化ナトリウムなどの水溶性であっても、また二酸化チタンなどの非水溶性であってもよい。さらに、オイル、および疎水性分子を、マトリックスに添加することができ、これらはマトリックス中の疎水性治療薬剤の溶解度を増加させることができる。あるいは、さまざまなオリゴマーおよびポリマー、例えば、アルギン酸などの多糖、またはアルブミンなどのタンパク質を添加することもできる。また、グリセリンなどの溶媒も、薬物がマトリックスから涙液中に放出される速度を調整するために用いることができる。
マトリックス中に溶解している治療薬剤の濃度に基づき、移動速度を制御する代わりに、またはこれに付加して、コアから標的部位への所望の薬物移動速度を実現するために、薬物コアの表面積も制御することができる。例えば、コアの暴露表面面積がより大きいと、薬物コアから標的部位への治療薬剤の移動速度は増加し、また薬物コアの暴露表面面積がより小さいと、薬物コアから標的部位への治療薬剤の移動速度は減少する。薬物コアの暴露表面面積は、任意のいくつかの方法、例えば、暴露表面のあらゆるキャスタレーション(castellation)、涙液または涙液膜と連結した暴露経路を有する表面、暴露表面のインデンテーション(indentation)、暴露表面のプロトゥルージョン(protrusion)により、増加させることができる。溶解する塩であって、この塩が、一旦溶けると空孔を形成するような塩を添加することにより、暴露表面を増加させることができる。ヒドロゲルも使用することができ、これは、より広い暴露表面面積を提供するようにサイズを膨張させることができる。
さらに、米国特許出願公開第2002/0055701号に開示されているように、薬物を浸透させた多孔性材料、例えばメッシュなど、または米国特許出願公開第2005/0129731号に記載されているように、生物学的安定性を有するポリマーの層を用いることができる。本発明の機器に薬物を組み込むために、特定のポリマープロセスを用いることができ、例えば、いわゆる「自己送達型薬物(self−delivering drugs)」、またはPolymerDrugs(Polymerix Corporation、Piscataway、NJ)などが、治療上有用な化合物と、生理学的に不活性なリンカー分子とにのみ分解するように設計されており、米国特許出願公開第2005/0048121号(East)にさらに詳しい。このような送達型ポリマーは、ポリマー侵食速度およびポリマー分解速度に等しく、治療期間全体を通じて一定である放出速度を実現するために、本発明の機器に利用することができる。このような送達型ポリマーは機器のコーティング物として、または薬物デポー注射剤用のミクロスフェアの形態(例えば、本発明のリザーバ)で利用することができる。さらなるポリマー送達技術も、本発明の機器、例えば米国特許出願公開第2004/0170685号(Carpenter)に記載されている機器や、Medivas(San Diego、CA)から入手可能な技術に適用できる。
具体的な実施形態では、薬物コアマトリックスは、薬物の内包物を封入する固体材料、例えばシリコーンを含む。薬物は、水に非常に溶けにくく、また封入薬物コアマトリックスにわずかにしか溶けない分子を含む。薬物コアによって封入された内包物は、直径約1μm〜約100μmの寸法を有する微粒子でありうる。薬物内包物には、結晶、例えば、ビマトプロスト結晶、および/または油滴、例えばラタノプロストオイルを含めることができる。薬物内包物は、個体薬物コアマトリックス中に溶解し、薬物コアマトリックスを実質的に薬物で飽和させることができ、例えば、ラタノプロストオイルを個体薬物コアマトリックス中に溶解させる。薬物コアマトリックス中に溶解した薬物は、多くの場合拡散によって、薬物コアの暴露表面から涙液膜内に輸送される。薬物コアは実質的に薬物で飽和しているので、多くの実施形態においては、薬物送達の律速段階は、涙液膜に暴露している薬物コアマトリックス表面からの薬物の輸送である。薬物コアマトリックスは、実質的に薬物で飽和しているので、マトリックス中での薬物濃度の低下は最小限に留まり、薬物送達速度に本質的に寄与しない。涙液膜に暴露した薬物コアの表面積はほぼ一定なので、薬物コアから涙液膜への薬物輸送速度は実質的に一定でありうる。本発明に関連する研究では、治療薬剤の水溶解度、および薬物の分子量は、固体マトリックスから涙液への薬物輸送に影響を及ぼしうることが示唆される。多くの実施形態では、治療薬剤は水にほとんど溶けず、水溶解度は約0.03重量%〜約0.002重量%であり、また分子量は約400g/mol〜約1200g/molである。
多くの実施形態においては、治療薬剤の水溶解度は非常に低く、例えば、約0.03重量%〜約0.002重量%であり、また分子量は約400g/mol(g/mol)〜約1200g/molであり、有機溶媒に易溶である。シクロスポリンA(CsA)は、25℃における水溶解度が27.67μg/mL、または約0.0027重量%で、分子量(M.W.)は1202.6g/molの固体である。ラタノプロスト(キサラタン(Xalatan))は、プロスタグランジンF2α類似体で、室温で液体の油であり、また、25℃における水溶解度が50μg/mL、または約0.005重量%で、M.W.は432.6g/molである。
ビマトプロスト(ルミガン(Lumigan))は、合成プロスタミド類似体で、室温で固体であり、25℃における水溶解度が300μg/mL、または0.03重量%であり、M.W.は415.6g/molである。
本発明に関連する研究では、涙液膜中の天然の界面活性剤、例えば、界面活性剤Dおよびリン脂質は、固体マトリックス中に溶解している薬物の、コアから涙液膜への輸送に影響を及ぼしうることが示唆される。治療レベルで薬物を涙液膜中に持続的に送達できるように、涙液膜中の界面活性剤に応じて薬物コアを改変できる。例えば、涙液を収集し、界面活性剤含量を分析する対象となる患者母集団、例えば10名の患者から、実験的データを生み出すことができる。水に難溶性の薬物、例えばシクロスポリンに関する収集涙液中の溶出プロファイルも測定することができ、また涙液界面活性剤のインビトロモデルが構築されるように、緩衝液中の溶出プロファイルと界面活性剤中の溶出プロファイルとを比較することができる。涙液膜の界面活性剤に応じて薬物コアを調節するために、この実験的データに基づいた界面活性剤を含むインビトロ溶液を用いることができる。
また、薬物コアは、複合材料用の潜伏反応性ナノファイバー組成物やナノ組織化表面(Innovative Surface Technologies、LLC、St.Paul、MN)などの、送達対象となる分子サイズに依存したナノ粒子または微粒子などの担体賦形剤、ミクロンサイズの粒子、膜、織物繊維、またはマイクロマシン化された移植機器を含むBioSilicon(登録商標)として知られているナノ構造化多孔性シリコン(pSividia、Limited、UK)、および薬物を送達するために選択細胞を標的とするタンパク質ナノケージシステム(Chimeracore)を利用するためにも、改変されうる。
多くの実施形態では、薬物挿入体は、薬物送達用マトリックスとして機能する医療グレードの固体シリコーンである、Nusil6385(MAF970)に分散されたラタノプロストを含む薬物コアを備えた、薄肉ポリイミド製管状シースを含む。薬物挿入体の遠位端部は、固体Loctite4305医療グレード接着剤からなる硬化フィルムで密封されている。薬物挿入体は涙点プラグの孔部に設置されうるので、Loctite4305接着剤は、組織または涙液膜のいずれの一方にも接触しない。薬物挿入体の内径は0.32mmでありえ、長さは0.95mmでありうる。完成医薬品中の3種類のラタノプロスト濃度を、臨床的に試験することができ、薬物コアは、3.5、7、または14μgのラタノプロストを含むことができ、重量%濃度はそれぞれ5、10、および20%である。全期間の溶出速度を、約100ng/日と仮定すれば、14μgのラタノプロストを含む薬物コアは、少なくとも約100日、例えば、120日間薬物を送達するのに利用される。ラタノプロストを含む薬物コアの全重量は、約70μgでありうる。ポリイミド製スリーブを含む薬物挿入体の重量は約100μgでありうる。
多くの実施形態では、薬物コアは、治療薬剤を初期に高めの濃度レベルで溶出させ、その後、実質的に一定に治療薬剤を溶出させることができる。多くの例では、コアから毎日放出される治療薬剤の量は、点眼薬に見出される濃度レベルより低くなる可能性があるが、それでもなお、患者にベネフィットをもたらす。溶出治療薬剤の濃度レベルを高めることにより、残りの治療薬剤量および/または残りの治療薬剤の効果で患者に救済がもたらされるようにすることができる。治療濃度レベルが約80ng/日である実施形態では、機器は、初期送達期間中、約100ng/日送達することができる。過剰な20ng/日を送達することにより、有益な急速効果を得ることができる。送達される薬物の量を精密に制御できるので、初期用量を増加しても、患者に合併症および/または有害事象をもたらすおそれはない。
さらに、米国特許第4,281,654号(Shell)に開示されている構造のように、2種類以上の薬物を組み合わせて放出する能力を含むインプラントを用いることができる。例えば、緑内障治療の場合、複数のプロスタグランジン、またはプロスタグランジンとコリン作動薬もしくはアドレナリン拮抗薬(β遮断薬)、例えば、Alphagan(登録商標)など、またはプロスタグランジンと炭酸脱水酵素阻害薬で患者を治療するのが好ましい場合もある。
さまざまな実施形態では、インプラントが、涙液または涙液膜液に少なくとも1つの面が暴露して埋め込まれる場合に、インプラントは少なくとも1つの表面を有し、少なくとも1週間の期間、眼の涙液または涙液膜液内に、2種類の治療薬剤の治療分量を放出することができる。例えば、インプラントを、約1〜12カ月の期間にわたり、治療量で治療薬剤を放出するために利用することができる。各治療薬剤の放出速度は同一であってもよく、また各治療薬剤は異なる放出速度を有してもよい。
いくつかの実施形態では、インプラントは、マトリックス中で混合した2種類の治療薬剤を含む単一の薬物コアを含む。別の実施形態では、インプラントは、単一の治療薬剤をそれぞれ含む2つの薬物コアを含む。
具体的な実施形態では、少なくともインプラントの一部は、生体侵食性であってもよく、またインプラントの一部が侵食を受ける間、治療薬剤を放出させることができる。
いくつかの実施形態では、第2の治療薬剤は、第1の治療薬剤の副作用を回避するための中和性の薬剤を含むことができる。一例では、第2の治療薬剤は、少なくとも1つの抗緑内障薬または縮瞳薬を含むことができる。抗緑内障薬は、交感神経興奮薬、副交感神経作用薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、またはプロスタグランジン類似体のうち、少なくとも1つを含むことができる。別の実施形態では、第1の治療薬剤はステロイドであってもよく、また第2の治療薬剤は抗生物質であってもよく、このステロイドは免疫反応を阻害する一方、この抗生物質は感染症を防ぐ。別の実施形態では、第1の治療薬剤はピロカルピン(pilocarpine)であってもよく、また第2の治療薬剤は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)であってもよい。鎮痛薬は、治療上好ましい薬物である。
いくつかの実施形態では、治療薬剤放出の動力学的次数に関連するプロファイルで、治療薬剤を放出することができ、次数は約0〜約1の範囲内でありうる。具体的な実施形態では、この範囲は、約0〜約0.5、例えば、約0〜約0.25である。治療薬剤放出の動力学的次数に関連するプロファイルで、治療薬剤を放出させことができ、構造物が挿入された後少なくとも約1カ月間、この次数は約0〜約0.5の範囲内であり、例えば、この次数は、この構造物が挿入された後少なくとも約3カ月間、この範囲内にありうる。
ここで、図17を参照すると、本発明の一実施形態に基づき、インプラント、例えば、シリコーン本体1710、薬物コア1720、および保持構造体1730を備える、涙点プラグ1700が図示されている。本体1710は、薬物コア挿入体1720を受容するようにサイズ調整された近位側経路1714を含む。フィラメント1734は、本体1710内に組み込むことができ、ヒドロゲルロッド1732を本体1710に固定するように、ヒドロゲルロッド1732の周りに巻き付けられうる。薬物コア挿入体および薬物コア挿入体の製造は、米国特許出願公開第11/695,537号および第11/695,545号に記載されている。薬物コア挿入体について示されているが、いくつかの実施形態では、米国特許第6,196,993号(Cohan)、および米国特許出願公開第10/899,416号(Prescott)、第10/899,417号(Prescott)、第10/762,421号(Ashton)、第10/762,439号(Ashton)、第11/571,147号(Lazar)、および第10/825,047号(Odrich)に記載されている薬物リザーバ、半透膜、薬物コーティング物などを含むことができる。いくつかの実施形態では、インプラントは、インプラント上に薬物を担持しない涙点プラグ、例えば、経路1714および薬物コア挿入体1720を有さない涙点プラグ1700に類似したインプラントを含む。
保持構造体1730は、ヒドロゲルロッド、ヒドロゲルコーティング物、および突起部を備えることができる。ヒドロゲルロッド1732を、涙点を経由して細いプロファイル形状の細管内に挿入することができる。管内に挿入後、ヒドロゲルロッド、ヒドロゲルコーティング物、またはこれら両方は、水和し、太いプロファイル形状に拡張することができる。
図18Aは、本発明の一実施形態に基づく、眼を治療するための2種類の治療薬剤を有する、持続放出性インプラント1800の断面図を示す。インプラント1800は、薬物が放出される近位端部1812、および遠位端部1814を有する。インプラント1800は、2つの同心円状の薬物コア1810、1815を含む。第1の薬物コア1810は、第1の治療薬剤を含む、中心部に空孔を備えた円筒形状構造物であり、第2の薬物コア1815は、第2の治療薬剤を含む円筒形状構造物である。第2の薬物コア1815は、図示の通り、第1の薬物コア1810の中心部空孔内に収まる形状である。第1の薬物コア1810は、第1の治療薬剤の第1の内包物1860を含む第1のマトリックス1870を含み、第2の薬物コア1815は、第2の治療薬剤の第2の内包物1865を含む第2のマトリックス1875を含む。第1および第2の内包物1860、1865は、第1および第2の治療薬剤の濃縮された形態、例えば、治療薬剤の液体形態または固体形態を含む場合が多く、また、治療薬剤は、第1の薬物コア1810の第1のマトリックス1870、および第2の薬物コア1815の第2のマトリックス1875に、持続的に溶解しうる。第1および第2のマトリックス1870、1875は、シリコーンマトリックスなどを含むことができ、マトリックス中の治療薬剤の混合物は、不均一でありうる。多くの実施形態では、不均一混合物が、多相不均一混合物を含むように、不均一な混合物は、治療薬剤で飽和したシリコーンマトリックス部分、および治療薬剤の内包物を含む内包部分を含む。第1のマトリックスは、第2のマトリックスと異なってもよく、この差異には、例えば、暴露表面面積、界面活性剤、架橋剤、添加剤、および/または剤型および/または溶解度を含むマトリックス材料が含まれる。いくつかの実施形態では、第1および第2の内包物1860、1865は、治療薬剤の油滴、例えば、ラタノプロストオイルを含む。いくつかの実施形態では、第1および第2の内包物1860、1865は、治療薬剤の粒子、例えば、固体のビマトプロスト粒子を含むことができる。多くの実施形態では、第1のマトリックス1870は、第1の内包物1860を含み、また、第2のマトリックス1875は、第2の内包物1865を含む。第1および第2の内包物1860、1865は、約0.1μm〜約100μmまたは200μmの寸法を有する微粒子を含むことができる。治療薬剤がコアから放出される間、第1および第2のマトリックス1870、1875が、治療薬剤で実質的に飽和されるように、含まれている内包物は、微粒子を含む周囲を取り巻く固体マトリックス、例えば、シリコーンに、少なくとも部分的に溶解する。
第1および第2の薬物コア1810、1815は、治療薬剤が放出される暴露表面部分、この場合は近位端部1812を除き、シース本体1820に取り囲まれている。シース本体1820で覆われていない、第1および第2の薬物コア1810、1815の開放端部の暴露表面から、治療薬剤が放出されるように、シース本体1820は治療薬剤に対して実質的に不浸透性である。いくつかの実施形態では、インプラントを、涙点プラグなどの異なる構造物内に組み込むことができる。
図18Bは、図18Aの持続放出性インプラントの垂直断面図を示している。第1の治療薬剤を含む第1の薬物コア1810は円筒形状構造物で、中心部に空孔を備えた円形断面として示されている。第2の治療薬剤を含む第2の薬物コア1815は円筒形状構造物で、円形断面として示されており、この図に示す通り、第1の薬物コア1810に収まるように構成されている。シース本体1820は、第1の薬物コア310上に配置された環状部分を含む。
図19Aは、本発明の一実施形態に基づく、眼を治療するための治療薬剤を有する持続放出性インプラント1900の断面図を示している。インプラント1900は、治療薬剤が放出される近位端部1912、および遠位端部1914を有する。インプラント1900は、隣り合う構成で配置された第1および第2の薬物コア1910、1915を含む。第1の薬物コア1910は、第1の治療薬剤を含む円筒形状構造物であり、また第2の薬物コア1915は、第2の治療薬剤を含む円筒形状構造物である。第1および第2の薬物コア、1910および1915は、図示のように相互に隣接し、同一の長さまたは異なる長さを有することができる。第1の薬物コア1910は、第1の治療薬剤の第1の内包物1960を含む、第1のマトリックス1970を含み、第2の薬物コア415は、第2の治療薬剤の第2の内包物1965を含む、第2のマトリックス1975を含む。第1および第2の内包物1960、1965は、第1および第2の治療薬剤の濃縮された形態、例えば、治療薬剤の液体形態または固体形態を含む場合が多く、また、治療薬剤は、第1の薬物コア1910の第1のマトリックス1970、および第2の薬物コア1915の第2のマトリックス1975に、持続的に溶解しうる。第1および第2のマトリックス1970、1975は、シリコーンマトリックスなどを含むことができ、マトリックス中の治療薬剤の混合物は、不均一でありうる。多くの実施形態では、不均一混合物が、多相不均一混合物を含むように、不均一な混合物は、治療薬剤で飽和したシリコーンマトリックス部分、および治療薬剤の内包物を含む内包部分を含む。第1のマトリックスは、第2のマトリックスと異なってもよく、この差異には、例えば、暴露表面面積、界面活性剤、架橋剤、添加剤、および/または剤型および/または溶解度を含むマトリックス材料が含まれる。いくつかの実施形態では、第1および第2の内包物1960、1965は、治療薬剤の油滴、例えば、ラタノプロストオイルを含む。いくつかの実施形態では、内包物は治療薬剤の粒子、例えば、固体のビマトプロスト粒子を含むことができる。第1および第2の内包物1960、1965は、約0.1μm〜約100μmまたは200μmの寸法を有する微粒子を含むことができる。治療薬剤がコアから放出される間、第1および第2のマトリックス1970、1975が、治療薬剤で実質的に飽和されるように、含まれている内包物は、微粒子を含む周囲を取り巻く固体マトリックス、例えば、シリコーンに、少なくとも部分的に溶解する。
第1および第2の薬物コア1910、1915は、治療薬剤が放出される暴露表面、この場合は近位端部1912を除き、シース本体1920に取り囲まれている。シース本体1920で覆われていない、第1および第2の薬物コア1910、1915の開放端部の暴露表面から、第1および第2の治療薬剤が放出されるように、シース本体1920は、第1および第2の治療薬剤に対して実質的に不浸透性である。いくつかの実施形態では、インプラントを、涙点プラグなどの異なる構造物内に組み込むことができる。
図19Bは、図19Aの持続放出性インプラントの垂直断面図を示している。第1の治療薬剤を含む第1の薬物コア1910は円筒形状構造物で、円形断面として示されている。第2の治療薬剤を含む第2の薬物コア1915も円筒形状構造物で、円形断面として示されている。この図に示す通り、第1および第2の薬物コア1910、1915は、相違する直径を有しても、または同一の直径を有してもよい。シース本体1920は、第1および第2の薬物コア1910、1915の周りに配置された環状部分を含む。
図20Aは、本発明の一実施形態に基づく、眼を治療するための治療薬剤を有する、持続放出性インプラント2000の断面図を示す。インプラント2000は、近位端部2012、および遠位端部2014を有する。インプラント2000は、インプラント2000を通じて液を流せるように、中空の中心部を有する、2つの同心円状の薬物コア2010、2015を含む。第1の薬物コア2010は、第1の治療薬剤を含む中空の円筒形状構造物であり、第2の薬物コア2015は、第2の治療薬剤を含む中空の円筒形状構造物である。第2の薬物コア2015は、図示の通り、第1の薬物コア2010の中心部空孔内に収まる形状である。第1および第2の薬物コア2010,2015は、図示の通り、同一の長さ、または相違する長さを有することができる。第1の薬物コア2010は、第1の治療薬剤の第1の内包物2060を含む第1のマトリックス2070を含み、第2の薬物コア2015は、第2の治療薬剤の第2の内包物2065を含む第2のマトリックス2075を含む。第1および第2の内包物2060、2065は、第1および第2の治療薬剤の濃縮された形態、例えば、治療薬剤の液体形態または固体形態を含む場合が多く、また、治療薬剤は、第1の薬物コア2010の第1のマトリックス2070、および第2の薬物コア2015の第2のマトリックス2075に、それぞれ持続的に溶解しうる。第1および第2のマトリックス2070、2075は、シリコーンマトリックスなどを含むことができ、マトリックス中の治療薬剤の混合物は、不均一でありうる。多くの実施形態では、不均一混合物が、多相不均一混合物を含むように、不均一な混合物は、治療薬剤で飽和したシリコーンマトリックス部分、および治療薬剤の内包物を含む内包部分を含む。第1のマトリックスは、第2のマトリックスと異なってもよく、この相違には、例えば、暴露表面面積、界面活性剤、架橋剤、添加剤、および/または剤型および/または溶解度を含むマトリックス材料が含まれる。いくつかの実施形態では、第1および第2の内包物2060、2065は、治療薬剤の油滴、例えば、ラタノプロストオイルを含む。いくつかの実施形態では、内包物は、治療薬剤の粒子、例えば固体のビマトプロスト粒子を含むことができる。第1および第2の内包物2060、2065は、約0.1μm〜約100μmまたは約200μmの寸法を有する微粒子を含むことができる。治療薬剤がコアから放出される間、第1および第2のマトリックス2070、2075が、治療薬剤で実質的に飽和されるように、含まれている内包物は、微粒子を含む周囲を取り巻く固体マトリックス、例えば、シリコーンに、少なくとも部分的に溶解する。
第1の薬物コア2010は、その外面がシース本体2020に取り囲まれており、中空内部表面2085を有する第1の薬物コア2010、および暴露した近位端部表面と遠位端部表面とを有する。薬物コア2010の暴露表面から、第1の治療薬剤が放出されるように、シース本体2020は、第1の薬物コア2010内にある第1の治療薬剤に対して、実質的に不浸透性である。第2の薬物コア2015は、その外面が第1の薬物コア2010に取り囲まれており、中空内部表面2080、および暴露した近位端部表面と遠位端部表面とを有する。第2の薬物コア2015は、内部表面2085の部分が暴露するように、第1の薬物コア2010よりも短い。第1の治療薬剤は、シース本体2020および第2の薬物コア2015によって覆われていない、第1の薬物コア2010の暴露表面から放出され、第2の治療薬剤は、第1の薬物コア2010で覆われていない第2の薬物コア2015の暴露表面から放出される。いくつかの実施形態では、インプラントを、涙点プラグなどの異なる構造物内に組み込むことができる。
図20Bは、同心円状の薬物コアを有する図20Aの持続放出性インプラントの垂直断面図を示している。第1の治療薬剤を含む第1の薬物コア510は、第1の中空中心部を備えた円形断面として示されている。第2の治療薬剤を含む第2の薬物コア2015は、この図に示す通り、第2の中空中心部を備えた円形断面として示され、第1の薬物コア2010の第1の中空中心部分内に収まるように構成されており、第2の薬物コア2015の中心を経由する液流を可能にしている。シース本体2020は、第1の薬物コア2010上に配置された環状部分を含む。
上記で開示した薬物コアは、第1および第2の治療薬剤、ならびに第1および第2の治療薬剤の持続的な放出を実現する材料を含む。第1および第2の治療薬剤は、薬物コアから標的組織、例えば、眼の毛様体に移動する。眼表面は、シクロスポリンA(炎症を制御する)およびドライアイ治療用のムチン誘発物質の標的となりうる。ブドウ膜は、ブドウ膜炎治療用のステロイド剤、NSAID、およびCSAの標的となりうる。マトリックスに溶かしたときに、第1および第2の治療薬剤が放出される全期間にわたり、放出速度が「0次」に保たれ、また薬物コアの暴露表面からの放出が可能となるように、第1および第2の治療薬剤は、場合により、マトリックス中にほんのわずかしか溶けないようにすることができる。第1および第2の治療薬剤は、涙液または涙液膜への薬物コアの暴露表面とは異なるので、薬物コアから涙液または涙液膜への移動速度は、マトリックス中に溶解した第1および第2の治療薬剤の濃度に関係する。いくつかの実施形態では、薬物コア中に溶解する第1および第2の治療薬剤の濃度は、所望の第1および第2の治療薬剤の放出速度を実現するように制御されうる。いくつかの実施形態では、第1の治療薬剤の所望の放出速度は、第2の治療薬剤の所望の放出速度と同一でありうる。いくつかの実施形態では、第1の治療薬剤の所望の放出速度は、第2の治療薬剤の所望の放出速度と異なる場合もある。薬物コアに含まれる第1および第2の治療薬剤には、治療薬剤の液体、固体、固体ゲル、固体結晶、固体非晶質、固体微粒子、および/または溶解状態が含まれうる。いくつかの実施形態では、薬物コアは、第1および第2の治療薬剤を含むシリコーンマトリックスを含む。
薬物コアは、治療薬剤の持続放出を実現できる生体適合性のある任意の材料を原料とすることができる。薬物コアは、実質的に非生分解性シリコーンマトリックスを、その中に存在し、それに少なくとも部分的に溶解する薬物粒子と共に備えたマトリックスを含む実施形態に関して、上記で説明されているが、薬物コアは、第1および第2の治療薬剤の持続放出を実現する任意の構造物、例えば、生分解性マトリックス、多孔性薬物コア、液体薬物コア、および固体薬物コアを含むことができる。いくつかの実施形態では、薬物コアは同一の構造物を有し、一方、別の実施形態では、薬物コアは異なる構造物を有する。この構造物は、第1および第2の治療薬剤を、構造物を眼に挿入した後約1〜12カ月の期間にわたり治療量放出するために利用可能である。いくつかの実施形態では、第1および第2の治療薬剤の放出速度は、同一でありえ、または類似しうる。別の実施形態では、第1および第2の治療薬剤の放出速度は、相違する場合があり、1つの治療薬剤は、もう一方の治療薬剤よりも速い速度で放出される。第1および第2の治療薬剤を含むマトリックスを、生分解性ポリマーまたは非生分解性ポリマーのいずれかを用いて形成することができる。生分解性ポリマーの例として、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(L−グリコール酸)(PLGA)、ポリグリコリド、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリ(アミノ酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコネート、ポリ乳酸−ポリエチレンオキサイドコポリマー、修飾セルロース、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリアンヒドリド、ポリホスホエステル、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、コラーゲンマトリックス、およびこれらの組合せを挙げることができる。本発明の機器は、全体または一部が生分解性または非生分解性でありうる。非生分解性材料の例として、市販されているさまざまな生体適合性ポリマーが挙げられ、これには、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート、アクリレート、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンを含むポリオレフィン、延伸ポリテトラフロロエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、被覆コラーゲンが、これらに限定されずに含まれる。ポリマーのさらなる例として、シクロデキストラン、キタン、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、およびこれらポリマーの任意の相互制限誘導体を挙げることができる。いくつかの実施形態では、薬物コアは、生分解性または非生分解性のいずれかのヒドロゲルポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、治療薬剤を、コーティング物として用いられる薬物溶出性材料、例えば、Surmodics of Eden Prairie、Minnesota、およびAngiotech Pharmaceuticals of British Columbia、Canadaから市販されている薬物溶出性材料などの中に含めることができる。
第1および第2の治療薬剤は、任意の物質、例えば眼に効果のある薬物を含めることができる。いくつかの実施形態においては、第1および第2の治療薬剤は、眼の治療において共に作用する。別の実施形態においては、第1の治療薬剤は、第2の治療薬剤の起こりうる副作用を打ち消すように働く。追加の中和性の治療薬剤を、例えば図2Aに示すように、眼を治療する治療薬剤を放出するコア内に含めることができ、または、別の薬物コアを、例えば図3A、4A、および5Aに示すように、追加の中和性の治療薬剤を別々に放出するように提供することもできる。
例えば、毛様体筋麻痺性治療薬剤の副作用の1つの可能性として、光恐怖症を引き起こすおそれのある瞳孔拡張が挙げられる。したがって、毛様体筋麻痺薬によって引き起こされた瞳孔拡張を相殺するように、縮瞳性治療薬剤が眼内に放出される。毛様体筋麻痺性の治療薬剤には、アトロピン、シクロペントレート、スクシニルコリン、ホマトロピン、スコポラミン、およびトロピカミドを含めることができる。縮瞳性治療薬剤には、エコチオフェート、ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、ジイソプロピルフルオロホスフェート、カルバコール、メタコリン、ベタネコール、エピネフリン、ジピベフリン、ネオスチグミン、沃化エコチオフェート、および臭化デメシウムを含めることができる。他の適する治療薬剤には、ヒドロキシアンフェタミン、エフェドリン、コカイン、トロピカミド、フェニレフリン、シクロペントレート、オキシフェノニウム、およびオイカトロピンなどの散瞳薬が含まれる。さらに、抗コリン薬として、ピレンゼピンなどを利用することができる。適用可能な治療薬剤の例は、米国特許出願第20060188576号および第20030096831号に見出すことができる。
毛様体筋麻痺性治療薬剤の別の副作用の可能性として、おそらく散瞳に関連する緑内障が挙げられる。したがって、第2の治療薬剤は、眼を治療するために用いられた第1の治療薬剤がもたらす、緑内障誘発性の副作用の可能性に対抗して作用するように放出される抗緑内障薬である。適する抗緑内障治療薬剤として、交感神経興奮薬、例えば、アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン、ジピベフリン、およびエピネフリンなど、副交感神経興奮薬、例えば、アセクリジン、アセチルコリン、カルバコール、デメカリウム、エコチオフェート、フルオスチグミン、ネオスチグミン、パラオキソン、フィゾススチグミン、およびピロカルピンなど、炭酸脱水酵素阻害薬、例えば、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、およびメタゾタミドなど、β遮断薬、例えば、ベフノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボブノロール、メチプラノロール、およびチモロールなど、プロスタグランジン類似体、例えば、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト、およびウノプロストンなど、ならびに他の薬物、例えばダピプラゾール、およびグアネチジンなどが挙げられる。好ましい実施形態では、小児の発育性の近視を治療するために、アトロピンが第1の治療薬剤として放出され、抗緑内障治療のために、ビマトプロストおよび/またはラタノプロストが第2の治療薬剤として放出される。
本発明と共に使用するのに適した活性薬剤または医薬品の限定されない他の例として、緑内障の局所治療に用いられるラタノプロスト、トラバプロスト、およびビマトプロストなどの局所プロスタグランジン誘導体が挙げられるが、ただし、例として挙げたに過ぎない。シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、またはガチフロキサシンを使用することも、角膜感染症の治療に適する。本発明にとって有用な全身的投薬用医薬品として、高血圧の治療に用いられる薬物、例えばアテノロール、ニフェジピン、またはヒドロクロロチアジドなどが挙げられる。慢性疾患が必要とする、任意の他の長期投薬用医薬品を利用することも可能である。活性薬剤または医薬品は、抗感染症薬であってもよい。例えば、バクテリア用として、フルオロキノロン、β−ラクタン、アミノグリコシド、またはセファラスポリンが挙げられる。抗ウイルス薬として抗真菌薬を使用する。抗炎症薬として、グルココルチコイドステロイド、NSAIDおよび他の鎮痛薬を使用する。
アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎の治療、例えば、インプラント内またはインプラント上にオロパタジンおよびクロマリンナトリウムなどの抗ヒスタミン薬および抗アレルギー医薬品を用いた治療も本発明の適用に含まれる。
本発明と共に、多くの他の薬物を使用することができることから、この活性薬剤のリストは網羅的ではない。例えば、局所シクロスポリンによるドライアイの治療は、本発明による投与にとって特に興味深いが、この治療では、毎日の点眼投与量よりも少ないシクロスポリンの治療量が、毎日送達され、例えば、治療量は、Allergan社より市販されているシクロスポリンまたはRestasis(登録商標)の点眼投与量の5〜10%でありうる。また、本発明の方法および用具を用いて投与することが可能な他の多くの活性薬剤も存在する。活性薬剤は、PVA、PVP、カルボキシメチルセルロースなどの修飾セルロース分子、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにヒアルロン酸およびムチン刺激剤などの潤滑剤およびエモリエント剤であってもよい。
治療薬剤によっては、眼に対して2種類以上の効果を有する場合があることに留意する必要がある。例えば、抗緑内障治療薬剤は、瞳孔収縮も引き起こす可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、第2の治療薬剤は、眼を治療するために放出される第1の治療薬剤の2種類以上の副作用に対抗して作用することができる。
第1および第2の治療薬剤は、上記で開示したインプラントが組織内または眼近傍に埋め込まれたときに、所望の治療効果を実現するような治療レベルで放出される。治療薬剤が他の次数の反応速度、例えば、1次の反応速度に関連する速度で放出されうるとしても、第1および第2の治療薬剤は、一定速度、例えば、0次の反応速度に関連する速度で放出されるのが好ましい。多くの実施形態では、反応の速度論的次数は、第1および第2の治療薬剤が放出されるに従い、0次〜1次に変化する。したがって、第1および第2の治療薬剤は、約0次〜約1次に変化する速度論的次数の範囲に対応したプロファイルで放出される。理想的には、第1および第2の治療薬剤が放出される速度が大きく変化する前に、第1および第2の治療薬剤の均一な送達を実現するように、薬物コアは取り除かれる。一定の送達速度が望ましいことから、反応速度が完全に1次に移行する前に、薬物コアを除去および/または交換することが望ましいと考えられる。他の実施形態では、第1および第2の治療薬剤の放出プロファイルが、安全かつ有効な範囲に留まる限り、治療の一部またはすべての期間において、1次またはより高い次数の放出速度が好ましい場合もある。いくつかの実施形態では、薬物コアは、1週間〜5年の期間、より具体的には3〜24カ月の範囲の期間、第1および第2の治療薬剤を効果的な速度で放出することができる。上記で指摘したように、いくつかの実施形態では、薬物コアが、第1および第2の治療薬剤について、類似した放出速度を有するのが好ましい場合もある。また別の実施形態では、薬物コアが、使用する治療薬剤に応じて第1および第2の治療薬剤について、異なる放出速度を有するのが好ましい場合もある。
第1および第2の治療薬剤の放出速度は、薬物コアに溶解している第1および第2の治療薬剤の濃度に関連しうる。多くの実施形態では、薬物コアは、この薬物コア中の第1および第2の治療薬剤の望ましい溶解度を実現するように選択される追加の非治療薬剤を含む。薬物コアの非治療薬剤は、上記のようなポリマーおよび添加剤を含むことができる。薬物コアのポリマーは、マトリックス中の第1および第2の治療薬剤の望ましい溶解度を実現するように選択されうる。例えば、薬物コアは、親水性治療薬剤の溶解度を高めることができるヒドロゲルを含むことができる。いくつかの実施例では、治療薬剤の1つまたは両方の放出速度を調節するために、ポリマーに官能基を付加することができる。例えば、官能基は、シリコーンポリマーに付加することができる。いくつかの実施形態では、異なるイオンは、異なる溶解度を有する異なる塩を生成しうる。
いくつかの実施形態では、薬物コア中の治療薬剤の溶解度を増減して、第1および第2の治療薬剤の濃度を制御するために、添加剤を使用することができる。溶解度は、マトリックスに対する溶解状態にある治療薬剤の溶解度を増減する適当な分子および/または物質を提供することにより制御されうる。溶解状態にある治療薬剤の溶解度は、マトリックスおよび治療薬剤の疎水的特性および/または親水的特性に関連しうる。例えば、放出速度を調節するために、界面活性剤、塩、疎水性ポリマーを、マトリックスに添加することができる。さらに、マトリックスの放出速度を調節するために、油および疎水性分子をマトリックスに添加することができる。
マトリックス中に溶解している第1および第2の治療薬剤の濃度に基づき、移動速度を制御することに代えて、またはこれに付加して、薬物がコアから標的部位に移動する際に、望ましい速度を実現するように、薬物コアの表面積も制御することができる。例えば、薬物コアの暴露表面面積が大きくなるほど、第1および第2の治療薬剤が、薬物コアから標的部位に移動する速度は増大し、薬物コアの暴露表面面積が小さくなるほど、第1および第2の治療薬剤が、薬物コアから標的部位に移動する速度は減少する。薬物コアの暴露表面面積は、任意のいくつかの方法で増加させることができ、例えば、暴露表面を蛇行させ、または多孔性にすることにより、薬物コアの表面積を増加させることができる。
上記で開示したインプラントのシース本体は、第1および第2の治療薬剤が、薬物コアから移動するのを制御するために適当な形状および材料を含む。シース本体は薬物コアを収納し、コアにしっかりと適合することができる。シース本体は、治療薬剤の移動速度が、主として、シース本体によって覆われていない薬物コアの暴露表面面積によって制御されうるように、治療薬剤に対して実質的に不浸透性の材料を原料とする。一般的に、シース本体を経由する治療薬剤の移動は、薬物コアの暴露表面を経由する治療薬剤の移動の1/10以下であり、1/100以下である場合が多い。換言すれば、シース本体を経由する治療薬剤の移動は、薬物コアの暴露表面を経由する治療薬剤の移動よりも、少なくとも約1次数少ない大きさである。適するシース本体材料として、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(以後「PET」と表す)が挙げられる。シース本体は、約0.00025インチ〜約0.0015インチの壁厚を有する。薬物コアを横切るシースの全直径は、約0.2mm〜約1.2mmの範囲である。薬物コアは、シース材料内に薬物コアを浸漬被覆することにより形成することができる。あるいは、シース本体はチューブ状でありえ、薬物コアは、液体または固体としてシース本体チューブ内に導入されうる。
シース本体には、インプラントの臨床用途が向上するように追加の特徴を備えることができる。例えば、シースは、保持要素およびシース本体が患者内に埋め込まれている間に交換することができる交換可能型の薬物コアを受容することができる。シース本体は、上記のような保持要素にしっかりと固定されている場合が多く、薬物コアは、保持要素がシース本体を保持している間、交換可能である。例えば、シース本体は、圧迫されたとき、およびシース本体から薬物コアを取り出すときにシース本体に力を加える外部突起物を備えることができる。したがって、別の薬物コアをシース本体に配置することができる。
別の実施形態では、治療用インプラントは、患者身体に挿入できるような大きさと形状を有する埋め込み可能な本体を含む。埋め込み可能な本体は、第1の容器および第2の容器を有する。第1の容器は、第1の治療薬剤、および第1の治療薬剤を放出するための第1の表面を含む。第2の容器は、第2の治療薬剤、および第2の治療薬剤を放出するための第2の表面を含む。第1および第2の治療薬剤は、本明細書に記載の任意の治療薬剤でありうる。インプラントが使用目的で埋め込まれると、長期間にわたり、第1および第2の治療薬剤は、第1および第2の容器の第1および第2の表面を経由して、治療レベルで放出されうる。本明細書で開示するように、第1および第2の治療薬剤の放出速度、および/または放出期間は、同じでも、また異なってもよい。別の実施形態では、第1および第2の容器は、本出願に記載の持続放出性インプラントおよび治療用インプラント内に形成、配置される。
図21は、第1および第2の治療薬剤を含む、少なくとも1つの薬物コアを備えた持続放出性インプラントを保持するように構成された、治療用インプラントで使用するための涙点プラグ2100の形状をした涙管挿入体の1つの実施形態を図式的に表している。涙点プラグ2100は、涙点11、13(図34を参照)の外部に配置する近位端部にあるカラレット(Collarette)2110、小管10、12(図34を参照)内にブロックするように突き出る、遠位端部にあるチップ2135で終わるテーパー部分2125を備えたバルブ2120、およびカラレット2110およびバルブ2120を結び付ける本体部分2130を含む。涙点プラグ2100は、約2.0mmの長さである。バルブ2120は、涙点プラグ2100が小管10、12から簡単に脱離するのを防ぐように設計され、これには、涙点11、13内への挿入を容易にするようにテーパーをつけることができる。カラレット2110は、涙点プラグ2100が小管10、12に完全に入り込んでしまうのを防ぐような直径を有するように設計され、また眼に対する刺激を最低限に抑えるように滑らかであるのが好ましい。涙点プラグ2100の本体部分2130は、本質的に機能を有さない、カラレット2110およびバルブ2120間の接合部である。カラレット2110は、本体部分2130内に伸びた、インプラント2145を収納する開口部2140を含む。開口部2140のサイズは、治療期間中インプラントをその場に保持するように選択される。いくつかの実施形態では、インプラントのシース本体(シース体)を省略することができ、(1つまたは複数の)薬物コアは、涙点プラグ2100の開口部2140に直接挿入されうる。いくつかの実施形態では、チップ2135は閉鎖している。別の実施形態では、遠位端部にあるチップ2135の開口部2150は、開口部2140にアクセスできるようにし、涙点プラグを経由した液流を可能にする。いくつかの実施形態では、任意選択的な非多孔性ヘッド2115を、開口部2140を封入するようにカラレット2110上に備える。本発明の1つの態様に基づき、本体2110およびヘッド2115は、異なる材料を原料とし、本体2110は、治療薬剤に対して不浸透性の柔軟な材料、例えばシリコーンなどから成型、または形成することができ、またヘッド2115は、生体適合性があり、好ましくは柔らかく柔軟で、薬物に対して浸透性のある第2の材料から作製される。涙点プラグ2100が埋め込まれると、治療薬剤は、(1つまたは複数の)薬物コアから涙湖の涙液内に拡散し、そこで治療薬剤は、涙滴と同様に涙液と混合し、眼を貫通して意図する薬理学的効果を有するようになる。開口部2140のサイズは、治療期間中、インプラントをその場に保持するように選択される。
図22〜25は、涙点プラグ2100などの構造を有する治療用インプラントの異なる実施形態を示している。本発明と共に組み込むのに適する他の構造は、2006年1月26日にPrescottの名前で発表された米国特許出願公開第2006/0020253号、題名「薬物の放出が制御された埋め込み型機器およびその製造方法」、および2006年10月10日に、Prescottの名前で発行された、米国特許第7,117,870号、題名「薬物の放出が制御されたリザーバを有する涙管挿入物およびその製造方法」に記載されている。リザーバには、眼を治療するための本明細書に記載の任意の治療薬剤、例えば、眼の視覚欠損を治療するための薬物を含めることができる。
図22は、涙点プラグ2100、ならびに第1および第2の治療薬剤を含む持続放出性インプラントを有する、治療用インプラント2200の1つの実施形態を図式的に示している。ここに示す実施形態では、持続放出性インプラントとは、第1の治療薬剤の第1の内包物2260、および第2の治療薬剤の第2の内包物2265を備えた薬物コア2210を有する、上記で議論した持続放出性インプラント2200である。治療用インプラント2200のこの実施形態は、第1および第2の治療薬剤に対して浸透性のある、近位端部の任意選択的なヘッド2115をさらに含む。治療用インプラント2200が埋め込まれると、第1および第2の治療薬剤は、薬物コアの近位端部から、浸透性ヘッドを経由して、涙湖の涙液内に拡散し、そこで第1および第2の治療薬剤は、涙滴と同様に涙液と混合し、眼を貫通して意図する薬理学的効果を有するようになる。開口部2240のサイズは、治療期間中、持続放出性インプラントをその場に保持するように選択される。ここに示す実施形態では、シース本体も、開口部2140内にある。別の実施形態では、シース本体2220を省略することができ、薬物コア2210は、涙点プラグ2100の開口部2140に直接挿入されうる。
図23は、涙点プラグ2100、ならびに第1および第2の治療薬剤を含む、第1および第2の同心円状の薬物コアを備えた持続放出性インプラントを有する、治療用インプラント2300の1つの実施形態を図式的に示している。ここに示す実施形態では、持続放出性インプラントとは、第1の治療薬剤の第1の内包物2360を備えた、外側の第1の薬物コア2310、および第2の治療薬剤の第2の内包物2365を備えた、内側の第2の薬物コア2315を有する、持続放出性インプラント2300である。治療用インプラント2300が埋め込まれると、第1および第2の治療薬剤は、暴露した、または近位端部の薬物コアから、涙湖の涙液内に拡散し、そこで第1および第2の治療薬剤は、涙滴と同様に涙液と混合し、眼を貫通して意図する薬理学的効果を有するようになる。開口部2140のサイズは、治療期間中、持続放出性インプラントをその場に保持するように選択される。いくつかの実施形態では、インプラント2300のシース本体2320を省略することができ、第1および第2の薬物コア2310、2315は、涙点プラグ2100の開口部2140に直接挿入されうる。場合により、第1および第2の治療薬剤に対して浸透性のあるヘッド2115を用いることができ、第1および第2の治療薬剤は、第1および第2の薬物コア2310、2315から浸透性ヘッド2115を経由して拡散する。
図24は、涙点プラグ2100、ならびに第1および第2の治療薬剤を含む、第1および第2の薬物コアを備えた持続放出性インプラントを有する、治療用インプラント2400の1つの実施形態を図式的に示している。ここに示す実施形態では、持続放出性インプラントとは、第2の治療薬剤の第2の内包物2465を備えた、第2の薬物コア2415の隣に、第1の治療薬剤の第1の内包物2460を備えた、第1の薬物コア2410を有する持続放出性インプラント2400である。治療用インプラント2400が埋め込まれると、第1および第2の治療薬剤は、暴露した、または近位端部の薬物コアから、涙湖の涙液内に拡散し、そこで第1および第2の治療薬剤は、涙滴と同様に涙液と混合し、眼を貫通して意図する薬理学的効果を有するようになる。開口部2140のサイズは、治療期間中、持続放出性インプラント2400をその場に保持するように選択される。いくつかの実施形態では、インプラント400のシース本体2420を省略することができ、第1および第2の薬物コア2410、2415は、涙点プラグ2100の開口部2140に直接挿入されうる。場合により、第1および第2の治療薬剤に対して浸透性のあるヘッド2115を用いることができ、第1および第2の治療薬剤は、第1および第2の薬物コア2410、2415から浸透性ヘッド2115を経由して拡散する。
図25は、涙点プラグ2100、ならびにフロースルー形状の第1および第2の同心円状の薬物コアを備えた持続放出性インプラントを有し、各薬物コアが治療薬剤を含む、治療用インプラント2500の1つの実施形態を図式的に示している。ここに示す実施形態では、持続放出性インプラントとは、第1の治療薬剤の第1の内包物2560を備えた外側の第1の薬物コア2510、および第2の治療薬剤の第2の内包物2565を備えた内側の第2の薬物コア2515を有する持続放出性インプラント2500である。ここに示す実施形態では、涙点プラグ2100は、遠位端部のチップ2135内に開口部2150を含み、涙点プラグ2100の本体を通過する近位端部から遠位端部への、また第1および第2の薬物コア2510,2515を通過する液流を可能にする。治療用インプラント2500が埋め込まれると、第1および第2の治療薬剤は、液流が通過するに従い、暴露した端部の薬物コア2510,2515、および暴露した内部表面2585,2580から拡散する。涙点プラグ2100の開口部2140のサイズは、治療期間中、インプラントをその場に保持するように選択され、また開口部2150は、インプラント2100、ならびに第1および第2の薬物コア2510,2515を通過する十分な流れを可能にするようなサイズを有する。いくつかの実施形態では、インプラントのシース本体を省略することができ、第1および第2の薬物コア510、2515は、涙点プラグ2100の開口部2140に直接挿入されうる。場合により、第1および第2の治療薬剤に対して浸透性のあるヘッド2115を使用することができる。本発明と共に組み込むのに適した、他のフロースルー構造は、2007年4月2日に申請された、米国特許出願公開第11/695,545号、題名「薬物療法のための鼻涙排液システムインプラント」に記載されている。
図26A〜26Cは、本発明の一実施形態に基づく、涙点プラグ、ならびに第1および第2の治療薬剤を放出する構造物を含む、治療用インプラント2600、2600’、2600”を示している。本発明と共に組み込むのに適する構造物は、Freemanの名前で1976年4月13日に発行された米国特許出願第3,949,750、題名「涙点プラグ、ならびにこれを使用した乾性角結膜炎、および他の眼の病気を治療するための方法」に記載されている。ヘッド部分は、眼を治療するための、本明細書に記載する任意の2種類の治療薬剤を含むことができる。
眼の病気の治療において、涙液および/または薬物の眼からの排出を防ぐ、または低減することが望ましい場合に、上蓋および下蓋の一方、または両方の涙点開口部は、治療用インプラントで閉ざされ、それらのうちの2種類の実施形態がそれぞれ図26Aおよび26Bに示されている。最初に図26Aの実施形態を参照すると、治療用インプラント2600は、遠位端部にゆるく角度のついたチップまたは返しのついた部分2620、このチップよりも若干小さい直径の中間ネックまたはくびれ部分2630、および相対的に大きい直径の近位端部に、平滑な円盤状のヘッド部分2610を有する。図26Bの治療用インプラント2600’は、一般的に最初に記載した実施形態と類似の寸法を有するが、ゆるく角度のついたチップまたは返しのついた部分2620’、実質的に同一の寸法の円筒状の中間部分2630’、および図26Aの実施形態の対応する部分よりも若干小さめの直径のドーム型ヘッド部分2610’を備える。両実施形態のヘッド部分2610、2610’は、鉗子で掴むように変更した方が望ましい場合に、本明細書で以下に記載するように、治療用インプラントを挿入操作するときに、治療用インプラント上に解除可能なグリップを提供するための、挿入ツールの突起状のチップを受容するように改造された、中心孔穴2640、2640’を備えることができる。
図26Cは、一般的に、最初に説明した実施形態と類似の寸法を有する中空の治療用インプラント2600”を示しており、ゆるく角度のついたチップまたは返しのついた部分2620”、このチップよりも若干小さい直径の中間ネックまたはくびれ部分2630”、相対的に大きい直径の平滑な円盤状のヘッド部分2610”、およびプラグを貫く中心孔2640”を有する。中心孔2640”は、治療用インプラント2600”の近位端部から遠位端部に向けた液流を可能にする。
本発明のいくつかの実施形態では、米国特許出願公開第2005/0197614号に記載されているように、本明細書に記載する2種類の治療薬剤が、涙点プラグ内に組み込まれる。治療用インプラント2600、2600’、2600”を形成するためにゲルを用いることができ、このゲルは、第1の直径から第2の直径に、第2の直径が第1の直径よりも約50%大きくなるように膨張することができる。第1および第2の治療薬剤を封入するために、例えば、薬物が均一に分散している微孔構造内にゲルを用いることができ、このゲルは、第1および第2の治療薬剤を徐々に患者体内に溶出させることができる。さまざまな治療薬剤が、本明細書に記載されてきたが、さらなる治療薬剤は、米国特許仮出願第60/550,132、題名「涙点プラグ、材料、および機器」に記載されており、その治療薬剤を本明細書に記載されているゲルおよび機器と組み合わせることができる。
本発明の別の実施形態では、治療用インプラント2600、2600’、2600”の本体全体または一部のみを、眼科薬を貯蔵し、涙液により眼科薬が溶出されるに従い、眼科薬が眼に徐々に拡散するように、HEMA親水性ポリマーなどの薬物を含浸させることのできる多孔性材料を原料とすることができ、または、キャピラリーなどのようなものとして改造することができる。例えば、各実施形態のヘッド部分2610、2610’、2610”は、第1および第2の治療薬剤で含浸された薬物を含浸させることのできる多孔性材料でありうる。
図27は、眼に適用されるような、第1および第2の薬物を含む治療用インプラントを示している。ここに示す実施形態では、治療用インプラント2700は、眼2の下側涙点開口部内に、および開口部と連絡している小管12に沿って挿入されるように設計されている。治療用インプラント2700は、近位端部のカラレット2710、遠位端部の広口部分2720、ネック部分2730を含む。カラレット2710は、開口部13に収まるように設計される。2種類の治療薬剤を含む、適する治療用インプラント2700の例は、上記に記載されており、これには治療用インプラント2200、2300、2400、2500、2600、2600’、および2600”が含まれる。治療用インプラント2700を、液流を遮断するために用いてもよく、また液流を可能にするように中空部分を有してもよい。図27に示す実施形態では、治療用インプラント2700は、涙液を通過させるための中空状のストロー形状として示されている。これらの例として、治療用インプラント2500および2600”が挙げられる。涙液を遮断する治療用インプラント2200、2300、2400、2600、および2600’とは異なり、中空の治療用インプラント2500および2600”は、非常に異なる薬物投与法、仕組み、構造を提供する。中空の治療用インプラントは、この治療用インプラントの内側表面または内部で活性薬剤が利用できるという点で特に有用であり、また涙液を通過させ、したがって、治療薬剤の担体として振舞う涙液の流れによって制御されるような方法で、涙液の流れに対して治療活性薬剤を投与するための独自の構造を有する。
図27は、さらに、下側涙点プラグ2700が小管12に涙液を通過させるのに対して、涙液が小管10に流れるのを遮断するように、上側涙点開口部11内に挿入された、実質的に円柱形状の、第1および第2の治療薬剤を含むインプラント2700’を示している。2種類の治療薬剤を含む、適するインプラント2700’の例は、本明細書に開示されるインプラントの任意の1つでありえ、またはそれは、若干不活性な生体適合性のある材料の密閉プラグでありうる。
治療用インプラント2700およびインプラント2700’は、分離した状態または組み合わされた状態のいずれかの、任意の所望の組合せで用いることができる(図27に示す)。例えば、インプラント2700’は、下側小管に配置することができ、また治療用インプラント2700は、上側小管に配置することができる。あるいは、治療用インプラントの2700または2700’の同一の2つを、両方の小管に配置することができる。
図28、29A〜29D、30A、および30Bは、患者のニーズに基づき個々の患者に合わせて作製されうる、治療用インプラントで使用するためのさまざまな薬物送達のコア要素の実施形態を示している。治療用インプラントのコア要素は、パイをカットしたような形状をしており、多くの異なる治療薬剤を含む、多くの異なる形状をした円筒形状薬物コアに組み込むことができる。こうすれば、個々の患者の管理を最大にする、治療用インプラントを構成することができる。このアプローチは、疾患を管理するために複数の治療薬剤を使用するように、治療のオーダーメードを可能にする。このアプローチは、患者の遺伝学的および/または生理学的状態に基づき、治療薬剤の用量をオーダーメードすることを可能にする。
図28は、例えば、本発明の一実施形態に基づく円筒形状薬物コア内に組み込み可能なさまざまなコア要素、または薬物コアを示している。薬物コアは円筒状である必要はないが、円筒状の薬物コアは製造を容易にするのに好ましい。薬物コア2810は、治療薬剤を含まないブランクコア要素であり、薬物コア2820は、濃度Xの治療薬剤2825を含み、薬物コア2830は、濃度Yの治療薬剤2835を含み、また薬物コア2840は、濃度Zの治療薬剤2845を含む。これらのコアおよび治療薬剤は、本明細書に開示される任意のコアおよび治療薬剤でありうる。薬物コアは、パイをカットした形状(扇形)として示されているが、薬物コアは、何らかの具体的な形状に限定されるものではない。薬物コア2810、2820、2830、および2840、またはこれらの任意の組合せは、共に直円柱形状を形成しうるが(例えば、図29A〜Dを参照)、この例の各薬物コアは、特定の断面において、例えば扇状の断面を有する直角柱形状である。薬物コアは、多くの異なる組合せ可能な形状、2〜3例を挙げると、例えば、正方形、長方形、楕円形、ジグソーパズルピースの形状を有することができる。
それぞれの薬物コアは、固体溶液として存在しうる、または内包物として存在しうる治療薬剤を含むマトリックスを含む。内包物は、多くの場合、治療薬剤の濃縮形態、例えば、治療薬剤の結晶形態を含み、また治療薬剤は、薬物コアのマトリックス内に長期間にわたり溶解しうる。薬物はある濃度で、薬物の内包物と平衡状態を保ってマトリックス内に溶解することができる。溶解している薬物の濃度は、飽和濃度でありうる。マトリックスは、シリコーンマトリックス、またはポリウレタンマトリックスなどを含むことができる。多くの実施形態では、不均一混合物は、この不均一混合物が多相不均一混合物を含むように、治療薬剤で飽和されシリコーンマトリックス部分、および治療薬剤の内包物を含む内包部分を含む。第1のマトリックスは、第2のマトリックスと異なってもよく、この相違には、例えば、暴露表面面積、界面活性剤、架橋剤、添加剤、および/または剤型および/または溶解度を含むマトリックス材料が含まれる。いくつかの実施形態では、内包物は、治療薬剤の油滴、例えば、ラタノプロストオイルを含む。いくつかの実施形態では、内包物は、治療薬剤の粒子、例えば、結晶形態の固体のビマトプロスト粒子を含むことができる。多くの実施形態では、マトリックスは内包物を封入し、内包物は、約0.1μm〜約100μmまたは約200μmの寸法を有する微粒子を含むことができる。治療薬剤がコアから放出される間、マトリックスが治療薬剤で実質的に飽和されるように、封入された内包物は、微粒子を封入する周囲を取り巻く固体マトリックス、例えば、シリコーンに溶解する。
図29A〜29Dは、シース本体2920で囲まれた図28のコア要素を用いた、円筒形状薬物コアの異なる実施形態を示している。治療薬剤が、シース本体2920で覆われていない円筒形状薬物コア端部上の暴露表面から、頻繁に放出されるように、シース本体2920は、治療薬剤に対して実質的に不浸透性でありえる。いくつかの実施形態では、シース本体(シース体)を省略することができ、また円筒形状薬物コアを、涙点プラグの開口部内への配置などのように、直接インプラントに設置することができる。円筒形状薬物コアについて、4種類の実施形態に限り示したが、任意の適する薬物コア、および治療薬剤を用いることができる。
図29Aは、2つのコア要素2810(ブランクコア)、1つのコア要素2820、および1つのコア要素2830を用いて組み立てられた、円筒形状薬物コア2900の1つの実施形態を示している。したがって、円筒形状薬物コア2900は、濃度Xの治療薬剤2825、および濃度Yの治療薬剤2835を送達することができる。
図29Bは、1つのコア要素2810(ブランクコア)、1つのコア要素2820、1つのコア要素2830、および1つのコア要素2840を用いて組み立てられた、円筒形状薬物コア2905の1つの実施形態を示している。したがって、この円筒形状薬物コア2905は、濃度Xの治療薬剤2825、濃度Yの治療薬剤2935、および濃度Zの治療薬剤2845を送達することができる。
図29Cは、2つのコア要素2810(ブランクコア)、2つのコア要素2840を用いて組み立てられた、円筒形状薬物コア2910の1つの実施形態を示している。したがって、円筒形状薬物コア2910は、濃度Zの治療薬剤2845の2種類の用量を送達することができる。
図29Dは、4つのコア要素2840を用いて組み立てられた、円筒形状薬物コア2915の1つの実施形態を示している。したがって、円筒形状薬物コア2915は、濃度Zの治療薬剤2845の4種類の用量を送達することができる。
図30Aおよび30Bは、異なる形状のコア要素から組み立てられた、円筒形状薬物コアの別の実施形態を示している。図30Aは、シース本体3020に囲まれた半円形の2つのコア要素3010、3015から作製された、円筒形状薬物コア3000を示している。図30Bは、シース本体3020に囲まれた、3つのコア要素3040、3045、3050から作製された、円筒形状薬物コア3030を示している。実施形態には、ここに示す通り、本質的に等しいサイズの複数のコア要素を含めうるが、他の実施形態では、2種類以上の異なるサイズのコア要素を含めることができる。例えば、半円形のコア要素3010では、2つの四分円状のコア要素2830、2840を組み合わせることができる。幅広くさまざまに異なるサイズ、および不等形も、隣接する薬物コア要素の間に配置されたシース本体材料(または治療薬剤の1つ以上に対して実質的に不浸透性の他の材料)の有無を問わず、さまざまな形状と組み合わせることができる。例えば、薬物コア材料のシート(マトリックスおよび関連薬物を含む)を別々に形成し、積み重ねる、または積層することができ、および/または基材または基礎的な薬物コア要素のシート上にマトリックスを重合させることにより順番に形成することができる。次に、多層薬物コア要素のシートは、所望の薬物コアの長さおよび/または幅に各層を横断して切断されうる。シートの端部および/または側面が、関連する薬物コアの層またはシートの厚さに応じた表面積を有する、各層状の薬物コア要素の暴露した端部または側面を伴ってインプラント機器内に暴露されうる。
図31は、眼を治療するための第1の治療薬剤3160を含む第1の薬物コア3110、および第2の治療薬剤3615を含む第2の薬物コア3115を有する持続放出性インプラント3100の断面図を示しており、第1および第2の薬物コアは、本発明の一実施形態に基づき積み重なった形状の状態にある。
図31は、本発明の一実施形態に基づく、眼2を治療するための2種類の治療薬剤を有する持続放出性インプラント3100の断面図を示している。インプラント3100は、薬物が放出される近位端部3112、および遠位端部3114を有する。インプラント3100は、2種類の薬物コア3110、3115を有する。第1の薬物コア3110は、第1の治療薬剤を含む円筒状の構造物であり、また第2の薬物コア3115は、第2の治療薬剤を含む円筒状の構造物である。第1の薬物コア3110および第2の薬物コア3115は、図に示すような積み重なった形状で組み立てられており、第1の薬物コア3110は近位端部3112の近傍に位置する。第1の薬物コア3110は、第1の治療薬剤の第1の内包物3160を含む第1のマトリックス3170、および第2の薬物コア3115は、第2の治療薬剤の第2の内包物3165を含む第2のマトリックス3175を含む。第1および第2の内包物3160、3165は、多くの場合、第1および第2の治療薬剤の濃縮形態、例えば、治療薬剤の液体形態または固体形態を含み、また治療薬剤は、第1の薬物コア3110の第1のマトリックス3170、および第2の薬物コア3115の第2のマトリックス3175内に長期間にわたり溶解しうる。第1および第2のマトリックス3170、3175は、シリコーンマトリックスなどを含むことができ、マトリックス内の治療薬剤の混合物は、不均一でありうる。多くの実施形態では、不均一混合物は、この不均一混合物が多相不均一混合物を含むように、治療薬剤で飽和されシリコーンマトリックス部分、および治療薬剤の内包物を含む内包部分を含む。第1のマトリックスは、第2のマトリックスと異なってもよく、この相違には、例えば、暴露表面面積、界面活性剤、架橋剤、添加剤、および/または剤型および/または溶解度を含むマトリックス材料が含まれる。いくつかの実施形態では、第1および第2の内包物3160、3165は、治療薬剤の油滴、例えば、ラタノプロストオイルを含む。いくつかの実施形態では、第1および第2の内包物3160、3165は、治療薬剤の粒子、例えば、固体のビマトプロスト粒子を含むことができる。多くの実施形態では、第1のマトリックス3170は、第1の内包物3160を含み、第2のマトリックス3175は、第2の内包物3165を含む。第1および第2の内包物3160、3165は、約0.1μm〜約100μmまたは約200μmの寸法を有する微粒子を含むことができる。治療薬剤がコアから放出される間、第1および第2のマトリックス3170、3175が治療薬剤で実質的に飽和されるように、含まれる内包物は、微粒子を含む周囲を取り巻く固体マトリックス、例えば、シリコーンに、少なくとも部分的に溶解する。
第1および第2の薬物コア3110、3115は、治療薬剤が放出される暴露表面、この場合は近位端部3112を除きシース本体3120により取り囲まれている。シース本体3120は、治療薬剤が、シース本体3120で覆われていない第1および第2の薬物コア3110、3115の開口端部上の暴露表面から放出されるように、実質的に治療薬剤に対して不浸透性である。いくつかの実施形態では、シース本体は、上記で開示されたシース本体3120に類似しており、上記で開示された保持要素および閉鎖要素などの保持構造体および閉鎖要素は、シース本体に連結されうる。別の実施形態では、インプラントを、例えば涙点プラグなどの異なる構造物に組み込むことができる(図32を参照)。
図32は、涙点プラグ、ならびに第1および第2の治療薬剤を含む、第1および第2の積み重なった薬物コアを含む持続放出性インプラントを有する、治療用インプラント3200の1つの実施形態を図式的に示している。ここに示す実施形態では、持続放出性インプラントとは、第1の治療薬剤の第1の内包物3160を備えた、近位側の第1の薬物コア3110、および第2の治療薬剤の第2の内包物3165を備えた、遠位側の第2の薬物コア3115を有する持続放出性インプラント3100である。治療用インプラント3200が埋め込まれると、第1の治療薬剤は、暴露端部または近位端部の近位側の第1の薬物コアから、涙湖の涙液内に拡散し、そこで第1の治療薬剤は、涙滴と同様に涙液と混合し、眼を貫通して意図する薬理学的効果を有するようになる。これに続き、第2の治療薬剤は、遠位側の第2の薬物コアから、第1の薬物コアを経由して暴露端部または近位端部に拡散し、涙湖の涙液内に進入し、そこで第2の治療薬剤は、涙滴と同様に涙液と混合し、眼を貫通して意図する薬理学的効果を有するようになる。開口部2140のサイズは、治療期間中、持続放出性インプラント3100をその場に保持するように選択される。いくつかの実施形態では、インプラント3100のシース本体3120を省略することができ、第1および第2の薬物コア3110、3115は、涙点プラグ2100の開口部2140に直接挿入されうる。場合により、図22に示すように、第1および第2の治療薬剤に対して浸透性のあるヘッド2115を用いることができ、第1および第2の治療薬剤は、第1および第2の薬物コア3110、3115から浸透性ヘッド3115を経由して拡散する。
図33を参考とする別の実施形態では、複数の薬物送達を行う治療用インプラント3310を、涙点だけでなく、図33に示すように身体3300の別の部分に、身体状態を治療するために埋め込むことができる。治療用インプラント3310は、他の身体状態または眼以外の疾患を治療するように、複数の薬物を送達するために用いられる第1および第2の治療薬剤を含む、少なくとも1つの薬物コアを備えた持続放出性インプラントである。治療用インプラント3310は、上記に記載する治療用インプラントなどのような、(1つまたは複数の)コアの暴露表面から放出される2種類以上の治療薬剤を有する治療用インプラントを含むことができる。治療用インプラントは、既知の手段により埋め込まれうる。
インプラントが体内に埋め込まれると、第1および第2の治療薬剤は、所望の治療反応をもたらすように治療レベルで放出される。第1および第2の治療薬剤は、長期間治療レベルで放出されるのが好ましい。いくつかの実施形態では、薬物コアは、1週間〜5年、より具体的には3〜24カ月の範囲において効果的な速度で第1および第2の治療薬剤を放出することができる。いくつかの実施形態では、薬物コアが第1および第2の治療薬剤について類似した放出速度を有するのが好ましい場合がある。別の実施形態では、薬物コアが第1および第2の治療薬剤について、使用する治療薬剤に応じて異なる放出速度を有するのが好ましい場合がある。いくつかの実施形態では、治療レベルは投与分量よりも少なく、または投与量の5〜10%未満、一般的には、10%未満、多くの場合5%未満、または長期にわたり毎日投与される量よりも少ない。投与量は、経口用量または注射用量でありうる。
使用する際には、治療用インプラント3310は、身体3300内に埋め込まれ、体液は、第1および第2の治療薬剤を放出する(1つまたは複数の)薬物コアの暴露表面に接触することができる。埋め込み場所に応じて、治療用インプラントに近接するあらゆる体液、例えば血液などは、インプラントから第1および第2の治療薬剤を放出する暴露表面に接触することができる。治療用インプラントの場所には、関節、例えば肩、膝、肘など、または外傷箇所3315、または外傷箇所3320近傍に局所薬物送達するための身体箇所、および他の場所、例えば腹部などの全身的薬物送達するための身体箇所が含まれうる。治療用インプラント3310は、上記身体箇所などの身体箇所近傍に治療用インプラント3310を保持するための、1つまたは複数の当分野で既知の保持要素を含むことができる。
1つの実施形態では、化学療法に、主要な腫瘍型に応じたカクテルの使用が含まれる場合に、治療用インプラントを腫瘍学で使用することができる。局所的な治療用インプラント薬物送達を利用すれば、手術後に腫瘍部位の治療に特別なベネフィットがもたらされ、身体の残りの部分に及ぶ巻き添え被害が最小限に抑えられると考えられる。1つの例として、治療用インプラントが癌部位近傍に埋め込まれる場合の、乳がんの腫瘍摘出手術または前立腺癌の外科治療が挙げられよう。実際、あらゆる固形癌が標的対象となり、治療用インプラントが腫瘍近傍に埋め込まれることとなる。
別の実施形態では、治療用インプラントは、HIV治療するために、カクテルと呼ばれることもある複数の薬物の送達用として用いることができる。この例では、治療用インプラントは全身性疾患を治療することとなる。治療用インプラントにおける複数薬物の一例は、プロテアーゼインヒビターおよび核酸標的である。
他の疾患状態により、禁止される治療もある。1つの例は、患者に循環および創傷治癒に障害がある場合に、このような患者では切断を含む手術が必要とされることが多いが、このような場合の糖尿病患者である。このような患者では、ステロイド剤は全身的に使用されることはなく、局所的に使用されうる。この実施形態では、治療用インプラントは、ステロイド剤、および抗炎症薬または抗感染症薬などの別の薬物を局所送達するために、適当な場所の体内に手術後配置される。いくつかの実施形態では、ステロイド剤は、治療レベルで8週間以上にわたり放出されうるが、また抗炎症薬は、2〜4週間治療レベルで放出されうる。
関節では、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を、変形性関節症および関節リウマチなどの疾患を治療するために用いることができる。NSAIDを局所送達することにより、全身性COX IIインヒビターに関連するリスク、例えば、胃潰瘍または胃の出血、およびおそらくは生命を脅かす胃壁または腸壁に生ずる穿孔(裂け目または空孔)を含みうる胃腸の問題(胃または腸における問題)などが低減される。この実施形態では、治療用インプラントは、NSAIDを局所的に送達するように、関節近傍に配置され、またこれには、グルコサミンのような栄養補給剤の送達も含むことが可能で、おそらくは局部組織において好ましい生理学的反応が得られるであろう。
別の実施形態では、治療用インプラントを、外傷部位に複数の薬物を局所的に送達するために、例えば、鎮痛剤および抗感染症薬の送達などに用いることができる。
図34および35は、本発明の一実施形態に基づき、インプラントによる治療に適する眼2の解剖学的組織構造を示している。眼2は、角膜4および虹彩6を含む。強膜8は、角膜4および虹彩6を取り囲み、白く見える。結膜層9は、本質的に透明で強膜8上に配置する。透明レンズ5は、眼の内部に位置する。網膜7は、眼2の後方近傍に位置し、一般的に光に感じる。網膜7は、高い視力および色覚をもたらす中心窩7Fを含む。角膜4およびレンズ5は、光を屈折させて、画像を中心窩7Fおよび網膜7上に形成する。角膜4およびレンズ5の屈折力は、中心窩7Fおよび網膜7上に画像を形成するのに寄与する。角膜4、レンズ5、および中心窩7Fの相対的位置も画像の質にとって重要である。例えば、角膜4から網膜7Fまでの眼2の軸長が長いと、眼2は近眼となりうる。また、調節中にレンズ5が角膜4に向かって移動すると、眼に近い物体が近くでよく見えるようになる。
図34に示す解剖学的組織構造は、涙器系も含み、これは上側小管(canaliculus)10および下側小管12の、併せて複数形ではcanaliculae、および鼻涙管または鼻涙嚢14を含む。上側小管10および下側小管12は、涙嚢14から伸びて、涙点開口部としても呼ばれる上側涙点11、および下側涙点13のそれぞれで終わっている。涙点開口部は、睫毛の分岐部15にある眼瞼縁の内側端において、若干持ち上がった部分、および内眼角17近傍の涙嚢部の位置にある。涙点開口部は、組織の結合リングで囲まれた円形または若干卵形をした開口部である。各小管は、涙点開口部11、13から伸び、水平に向きを変えて涙嚢14の入り口のもう一方の小管と連結する前に、各小管の垂直な位置10v、12vを含む。小管は管状で、小管が拡張するのを可能にする弾性組織で囲まれた層状の扁平上皮で裏打ちされている。上側小管および下側小管は、それぞれ、各小管内に膨大部10a、12a、または小さな拡張部を含む場合がある。
[インプラントの製造]
図6Aは、本発明の一実施形態に基づく、インプラントの製造方法600を示している。サブメソッド610は、涙点プラグを製造する。サブメソッド650は、例えば上記のような薬物コア挿入体を製造する。サブメソッド690は、構成部材を組み立てて統合された薬物送達システムにする。
図6Bは、図6Aの方法600に基づく涙点プラグ用のヒドロゲルロッドを製造する方法620を示している。いくつかの実施形態では、方法620は、方法610のサブメソッドまたはサブステップを含む。ステップ622は、40重量%のヒドロゲルを有機溶媒と混合する。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルの割合(%)は、約5%〜約50%の範囲のヒドロゲル、例えば、約20%〜約40%のヒドロゲルを含む。ステップ624は、ヒドロゲルを溶媒と混合する。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは有機溶媒に溶解することができる。ステップ626は、ヒドロゲルをシリコーンチューブ内に注入する。多くの実施形態では、シリコーンチューブは有機溶媒に対して浸透性である。シリコーンチューブはヒドロゲルを形成する金型を含む。ステップ628は、ヒドロゲルを硬化する。熱または圧力のうちの少なくとも一方、多くの実施形態では両方を、例えば浸透性の金型によって溶媒を除去してヒドロゲルを硬化させるために用いることができる。ステップ629は、硬化済みのヒドロゲルを所望の長さに裁断する。硬化は、全期間にわたる材料のばらつきおよび/またはプロセスのばらつきを求めるのに適当なサンプルサイズ、例えば、硬化済みヒドロゲルのサンプル10個を用いて、実験的プロセス/妥当性確認試験により最適化されうる。最適化することのできるプロセス変数として、硬化の時間、圧力、および温度が挙げられる。プロセスに関連する公差分析を実施することも可能である。
図6Cは、図6Aの方法600に基づくシリコーンプラグ本体637を成型する方法630を示している。ステップ632は固体材料、例えばコイル632Cを含むフィラメントを巻き上げ、熱でフィラメントをセットする。ステップ634は、熱によりセットしたコイル632Cを含むフィラメントを、金型の中に設置する。ステップ636は、プラグ本体637を、これに組み込まれたコイル632Cと共に成型する。プラグ本体はスリーブ、チューブ、保持構造体、および/または上記に記載の少なくとも1つのチャンバーを含むことができる。フィラメントは、加熱により活性化する材料、Nitinol、形状記憶材料、ポリマー、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、天然繊維、ステンレス鋼、ポリメチルメタアクリレート、またはポリイミドの内の少なくとも1つを含みうる。いくつかの実施形態では、フィラメントは、吸収性の熱可塑性ポリマー、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、またはポリ−乳酸−co−グリコール酸(PLGA)の内の少なくとも1つを含みうる。フィラメントの加熱によるセッティングは、加熱によりセットするフィラメントのサンプル、例えば、10個のフィラメントから得られた実験的データに基づき、フィラメントを加熱する時間および/または温度を適切に制御することにより最適化されうる。ステップ636でのプラグの成型は、いくつかの方法、例えば、適当な時間および温度、成型のハードツール、多数個取り金型、および成型機器パラメータなどにより最適化されうる。いくつかの実施形態では、上記に記載するような薬物コア挿入体を除去するためのフィラメントは、フィラメントがプラグ本体に組み込まれ、薬物コア挿入体を受容する経路近傍に配置されるように、プラグ本体と共に成型されうる。
図6Dは、図6Aの方法600に基づく涙点プラグ構成部材を組み立てる方法640を示している。ステップ630は、コイル632Cと共に涙点プラグ本体637を成型する。ステップ620は、ヒドロゲルロッドを成型する。ステップ642は、ヒドロゲルロッド構成部材を、プラグ本体構成部材の経路内に挿入する。ステップ644は、コイル632Cの巻き線をヒドロゲルロッド上に引き伸ばす。ステップ648は、ヒドロゲルロッドおよびプラグ本体を浸漬被覆する。ステップ646は、例えばヒドロゲル5重量%の溶液を含むヒドロゲルコーティング溶液646を調製することができる。ニードル648Nは、ヒドロゲルロッドおよびプラグ本体が溶液に浸漬されている間、本体を保持するように、プラグ本体の経路内に配置されうる。
図6Eは、図6Aの方法600に基づき、薬物コア挿入体の製造方法650を示している。ステップ661は、薬物マトリックスをポリイミドチューブ内に注入するためのシリンジ組立部品を作製する。ステップ662は、注入用のポリイミドチューブを作製する。ステップ670は、チューブ内に注入するための薬物コアマトリックスを作製する。ステップ672は、薬物コアマトリックスを、ポリイミドチューブに注入する。ステップ680は、ポリイミドチューブ内のマトリックスを硬化させる。ステップ682は、ポリイミドチューブおよび硬化済みのマトリックスをある長さに切断し、接着剤を塗布する。
ステップ661では、既知の市販シリンジをシリンジ組立部品で使用することができる。シリンジ組立部品は、シリンジチューブ、およびカートリッジ組立部品を含みうる。シリンジチューブおよびカートリッジ組立部品は、シリンジに取り付けられた改変されたニードルチップに取り付けられたチューブを含みうる。シリンジは、チューブに圧力を加えるためのシリンジポンプまたは他の機械と接続されうる。シリンジ組立部品は、薬物コア混合物および/または材料をポリイミドチューブに注入するために用いることができる。いくつかの実施形態では、複数のシリンジを、例えば、2つ以上の薬物コアを含む薬物挿入体の製造で使用することができる。いくつかの実施形態では、シリンジ組立部品は、各シリンジが異なる薬物コア混合物を含む個別のシリンジと共に使用することができる、2つ以上の注入ポットを備えた連結管を含みうる。
ステップ662は、15cmの長さのポリイミドチューブをルアに取り付けることにより、注入用のポリイミドチューブを作製することができる。ルアを、薬物コア混合物および/または材料を注入するためのシリンジに連結することができる。いくつかの実施形態では、シリンジに連結したチューブは、PMMAおよび/またはPETを含みうる。多くの実施形態では、チューブは、治療薬剤の流れが薬物コアの暴露端部に向かうように、チューブ経由で薬物コアから治療薬剤が放出されるのを阻止する材料、例えば、チューブを経由する治療薬剤の流れに対して、実質的に不浸透性の材料を含む。いくつかの実施形態では、例えば、2つ以上の同心円状の薬物コアを含む薬物コア挿入物では、チューブは、外側薬物コア混合物を受容するように配置された外側チューブ、および内側薬物コア混合物を受容するように配置された内側チューブを備えた同心円状のチューブ、例えば、同心円状のポリイミドチューブを含みうる。上記に記載するような環状薬物コアについては、環状薬物コアを形成するために、薬物コアマトリックス材料が固形化した後に除去されうる内側チューブと共に、同心円状のチューブを利用することができる。
いくつかの実施形態では、薬物コア挿入体を除去するためのフィラメントを、薬物コアに組み込むことができる。フィラメントは、シース、例えばチューブを貫通することができ、また混合物はチューブに注入されうる。次に、マトリックス材料は、マトリックスに組み込まれたフィラメントと共に硬化される。
ステップ670は、マトリックス材料、例えばシリコーンと共に治療薬剤を含む薬物コア混合物を作製することができる。いくつかの実施形態では、治療薬剤はラタノプロスト、ビマトプロスト、またはトラボプロストのうちの少なくとも1つを含むことができる。実施形態は、ジメチルシロキサン、例えば、Med−4011、Med−6385、およびMed−6380を含むシリコーンを使用することができ、これらは、それぞれLafayette、CAのNuSilから購入可能である。いくつかの実施形態では、2種類以上の薬物コア混合物を作製することができ、それぞれは、個別の薬物コアに注入するための、例えば、1つが内側薬物コア用で、1つは外側薬物コア用の2種類の混合物である。
具体的な実施形態では、ステップ670は、シリコーン中にラタノプロストオイルの内包物を含む薬物コア混合物を作製することができる。治療薬剤を薬物コアマトリックス材料と混合する前に、治療薬剤および薬物コアマトリックス材料を、作製することができる。
[治療薬剤の調製]:
ラタノプロストオイルは、メチルアセテートに溶かした1%溶液として提供されうる。1%溶液の適当量をディッシュに入れることができる。ラタノプロストだけが残留するまで、溶液を蒸発させるために乾燥窒素気流を利用することができる。ラタノプロストオイルの入ったディッシュを真空条件下で30分間置くことができる。いくつかの実施形態では、例えば、治療薬剤として、結晶状態で利用可能なビマトプロストを使用する実施形態では、治療薬剤を調製するために蒸発および真空を利用しなくてもよい。
固体の治療薬剤、例えば、ビマトプロストの結晶を用いる実施形態では、治療薬剤を、マトリックス材料と混合する前に、粉砕し、ふるいに通すことができる。いくつかの実施形態では、ふるいは120ふるい(125μm)および/または170ふるい(90μm)を含むことができる。本発明の一実施形態に関連する研究では、ふるいは治療薬剤の非常に細かい分画を除去することができること、および多くの実施形態では、最適なふるいよりも大きいサイズを有する治療薬剤の内包物を用いて実施されることが示唆される。多くの実施形態では、放出速度は、内包物のサイズおよび/または内包物のサイズ分布に依存せず、また放出速度は、約0.1μm〜約100μmの粒子の場合、粒子サイズに依存しないと考えられる。いくつかの実施形態では、粒子および/または内包物のサイズ、および/または、粒子および/または内包物のサイズ分布は、ふるい、コアの光散乱測定法、コアの光学顕微鏡法、コアの走査電子顕微鏡法、またはコアの断面の透過電子顕微鏡法のうちの少なくとも1つにより特徴づけることができる。マトリックスと混合する前に、好ましい粒子サイズを得るために、および/または望ましくない粒子サイズを排除するために、ふるいを一般的に用いることができる。典型的なふるいは、所望のサイズの粒子、またはこれより小さい粒子のみを通過させる細かいメッシュを含み、これにより治療薬剤をより細かい薬物粒子に限定する。粒子サイズには無視し得ないばらつきは残りうるものの、このようにして、過剰に大きな粒子を含む場合よりも、シリコーンマトリックスと容易に混合する、より均一な薬物コアおよび/または薬物粒子サイズを作製するために用いることができる。さまざまなふるいを用いることができる。例えば、通過する最大粒子径が約0.0049インチとなるように、ふるい#120を用いることができる。ふるい#170は、直径0.0035インチまたはこれよりも小さい粒子を通過させることができる。ふるい#70は、直径0.0083インチの粒子サイズを通過させることができる。場合により、ふるいを連続して使用することができる。
[シリコーンの作製]:
シリコーン、例えばNuSil 6385を、製造業者から密封容器に入った状態で入手することができる。作製物のロットサイズに基づき、シリコーンの適当量を秤量することができる。
[治療薬剤とシリコーンとの混合]:
薬物コアマトリックス中の治療薬剤の意図したおよび/または測定した割合(%)に基づき、治療薬剤、例えばラタノプロストをシリコーンと混合することができる。シリコーンに対するラタノプロストの割合(%)は、薬物マトリックスの総重量により決定されうる。治療薬剤、例えばラタノプロストは、構成部材の適切量を測りとることによりシリコーンに組み込まれる。次式を薬物コアマトリックス中の治療薬剤の割合(%)を求めるのに用いることができる:
薬物の割合(%)=(薬物の重量)/(薬物の重量+シリコーンの重量)×100
シリコーン中のラタノプロストの具体的な例として、シリコーン中のラタノプロストの割合(%)は次式により与えられる:
(ラタノプロスト20mg)/(ラタノプロスト20mg+シリコーン80mg)×100=20%
シリコーンを混合するための既知の方法および用具を用いて、治療薬剤、例えばラタノプロストを、シリコーンと組み合わせ、混合する。いくつかの実施形態では、ラタノプロストオイルを含む治療薬剤は、光を散乱し、白く見えうる内包物を含むマイクロエマルジョンを形成することができる。
およそ室温(22℃)で液体の物理的状態にある、従ってヒト体温(37℃)でも液体の物理的状態にあるラタノプロストなどの治療薬剤を用いる場合、薬物およびマトリックス材料は、ラタノプロストが本質的に不溶でありうるマトリックス材料において、ラタノプロスト液滴の高度な分散物を実現する技術により、混合されうる。混合技術は、硬化が行われたときに、液体の治療薬剤が、固体シリコーン材料のマトリックス内で、比較的小型で、比較的均一に分散した、個々の液滴として存在するように、マトリックス材料内に液滴の分散物を提供する必要がある。例えば、混合には、超音波処理、すなわち超音波プローブにより発生されるような超音波周波数の使用が含まれうる。このプローブを、マトリックス材料および液体治療薬剤の混合物に接触させて、2種類の本質的に非混和材料の緊密な混合物を作製することができる。例えば、下記の実施例12を参照。
ステップ672は、治療薬剤とシリコーンとの混合物をチューブ内に注入することができる。シリンジ、例えば1mlのシリンジを、シリンジチューブおよびカートリッジ組立部品に連結することができる。シリコーンにふさわしい触媒、例えばMED−6385硬化剤の1滴を、シリンジ内に添加することができ、次にシリンジはシリコーンおよび治療薬剤の未硬化の混合物、またはシリコーン薬物マトリックスで満たされる。この混合物、すなわち、未硬化のシリコーンと治療薬剤との混合物は、流動またはポンプ送液するのになおも十分な液体状態で、これを準大気温度まで冷却することができる。例えば、この混合物を20℃未満に冷却することができる。例えば、この混合物を0℃または−25℃まで冷却することができる。ポリイミドチューブには、これが満たされるまで薬物/マトリックス混合物が注入される。また、チューブおよび関連用具も、シースを混合物で満たす、またはこれに注入するプロセス全体を通じて、混合物の準大気温度が維持されるように冷却することができる。さまざまな実施形態では、加圧条件下、例えば高圧ポンプを使用することにより、ポリイミドチューブまたはシースを薬物マトリックス混合物で満たすことができる。例えば、触媒Part Bのある量が添加済みのラタノプロストとMED−6385Part Aとの混合物として得られるような薬物/マトリックス混合物を、少なくとも約40psiの圧力でチューブ内にポンプ送液することができる。任意の適する速度、ただし、好ましく線形速度約0.5cm/sec未満の速度でチューブを満たすことができる。比較的高い圧力ヘッド条件下で比較的速い速度でチューブを満たすと、重合(「硬化」)して最終的なシリコーン重合産物が得られる際に、ラタノプロストの液滴が、この液滴がほとんど溶解しない固体マトリックス中に細かく分散するように、本質的に非混和なラタノプロストオイルおよびシリコーンモノマー材料の層分離の程度を押さえることができる、と本明細書の発明者らは考えている。
硬化は、NuSil Med−6385の触媒(「Part B」)の存在下で起こり、この硬化は、少なくとも約40℃の温度、少なくとも80%の相対湿度(RH)、または両方の条件下で実施可能である。硬化は、チューブに充填し、また空隙ができ、またチューブ端部から前駆体材料が流失するのを防ぐように充填済みのチューブの端部を止めた後に、すぐに開始することができる。
硬化は、40℃、80%RH、約16時間〜24時間で完了するが、硬化後、シリコーンは完全に硬化するので、チューブ両端から止め具を取り外すことができる。チューブは、薬物挿入体として使用するために適当な長さ、例えば約1mmの長さの切片に切断することができる。
準大気温度で押し出しを行うと、微小でより均一な薬物の内包物を得ることができる。例えば、薬物が室温で液体のラタノプロストの場合、−5℃で押し出しを行うと、かなり微小で、より均一な内包物の液滴ができる。1つの例では、冷間押し出しを行えば、平均直径6μmで、直径の標準偏差が2μmのラタノプロストの液滴を含有するシリコーンマトリックスを含む薬物コアが得られる。これとは対照的に、室温で押し出しを行うと、平均直径19μmで、液滴直径の標準偏差が19μmのラタノプロストの液滴を含有するシリコーンマトリックスを含む薬物コアが得られる。冷間押し出し技術では、室温での押し出しよりも微小で均一な内包物ができるのは明白である。これは、すなわちより均一な薬物濃度を、コアまたはコアを含む挿入体全体にもたらし、用量の均一性が改善されるので、医療用途として望ましい。
シリコーンが固まり始めるまで、ポリイミドチューブの開放されている端部を閉鎖することができる。2つ以上の薬物コアを用いるいくつかの実施形態では、2種類以上の別々の混合物を、それぞれ別々に2つ以上のシリンジに注入することができる。
ステップ680は、シリコーンと治療薬剤との混合物を含む薬物コアマトリックスを硬化させる。シリコーンは、硬化させるために、例えば12時間放置される。硬化の時間と温度は制御可能で、硬化の理想的な時間および温度を求めるために、実験データを得ることができる。本発明の一実施形態に関連する研究では、シリコーン材料およびコアの薬物負荷、例えば、コア中の治療薬剤の割合(%)は、硬化の最適時間および最適温度に影響を及ぼす可能性があることが示唆される。いくつかの実施形態では、注入された混合物を硬化させるための最適な時間を求めるために、各シリコーンマトリックス材料および各治療薬剤の割合(%)について、実験データを得ることができる。薬物コア挿入体中に2つ以上の薬物コアを用いるいくつかの実施形態では、挿入体の薬物コアを硬化させるために、2つ以上の混合物を共に硬化させることができる。
表1は、本発明の一実施形態に基づく、使用可能な薬物挿入体シリコーンおよび関連する硬化特性を示している。薬物コア挿入体マトリックス材料には、ジメチルシロキサン、例えば、MED−4011、MED6385、およびMED6380などを含むベースポリマーを含めることができるが、これらは、それぞれNuSil社より市販されている。硬化系、例えば、白金−ビニルヒドリド硬化系、および/またはスズ−アルコキシ硬化系などを用いてベースポリマーを硬化させることができるが、両系ともNuSil社より市販されている。多くの実施形態では、硬化系には、既知の材料について市販されている既知の硬化系、例えば、既知のMED−4011を含む既知の白金−ビニルヒドリド硬化系を含めることができる。表1に示す具体的な実施形態では、架橋剤が混合物の10%を占めるように、MED−4011の90部分を、架橋剤の10部分と混合することができる。MED−6385を含む混合物は、架橋剤2.5%を含むことができ、またMED−6380の混合物は、架橋剤を2.5%または5%含みうる。
本発明の一実施形態に関連する研究では、硬化系およびシリコーン材料の種類は、固体薬物コア挿入体の硬化特性に影響を及ぼす可能性があり、また薬物コアマトリックス材料からの治療薬剤の収率に影響を及ぼす可能性がありうることが示唆される。具体的な実施形態では、白金−ビニルヒドリド系におけるMED−4011の硬化は、ラタノプロストの濃度が高いと、例えば、ラタノプロストが20%を超えると、固体の薬物コアが形成されえなくなるように阻害される可能性がある。具体的な実施形態では、スズ−アルコキシ系におけるMED6385および/またはMED630の硬化は、ラタノプロストの濃度が高いと、例えば、ラタノプロストが20%であると、若干阻害される可能性がある。このわずかな硬化阻害は、硬化プロセスの時間および/または温度を増大させることによって補うことができる。例えば、本発明の一実施形態では、適当な硬化時間および硬化温度を用いれば、スズ−アルコキシ系により、ラタノプロストを40%、およびMED−6385を60%含む薬物コアを作製することができる。スズ−アルコキシ系および適当な硬化時間および/または温度を用いたMED−6380について同様の結果を得ることができる。多くの実施形態では、固体の薬物コアは、固体の構造を形成するように、例えば、チューブの寸法に対応する固体のシリンダーを薬物コア内に形成する。スズ−アルコキシ硬化系で優れた結果が得られるにもかかわらず、本発明の一実施形態に関連する研究では、上限がありうることが示唆され、例えば、ラタノプロストの割合が50%を超えると、この割合では、スズ−アルコキシ硬化系は固体の薬物コアを生成することができない。多くの実施形態では、治療薬剤は、薬物固体内にプロスタグランジン類似体、例えばラタノプロストを含み、薬物コアは、薬物コアの重量として、少なくとも約5%、例えば約5%〜50%の範囲でありえ、また、約20%〜約40%である可能性がある。薬物コアに治療薬剤を中〜高程度で負荷する具体的な実施形態では、薬物コアは、薬物コア内に治療薬剤を約25%〜約50%、例えば、薬物コアおよび/またはマトリックス材料内に、ラタノプロストオイル50%を含むことができる。
いくつかの実施形態では、治療薬剤は、硬化系と反応することができ、少なくともその可能性がある官能基を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療薬剤はプロスタグランジン類似体、例えば、ラタノプロスト、ビマトプロスト、またはトラボプロストなどを含むことができ、これらのそれぞれは、白金−ビニルヒドリド硬化系と反応する可能性を有する不飽和の炭素−炭素二重結合を含みうる。これらの不飽和二重結合は、白金硬化ビニルヒドリド系のビニル基に類似しうるが、また、ヒドロシラン化反応によりビニルヒドリド硬化系と反応できる可能性がある。ラタノプロストは、複数ある側鎖の1つに1つの不飽和炭素−炭素二重結合を含む。ビマトプロストおよびトラバプロストは、それぞれ2個の不飽和炭素−炭素二重結合を、各側鎖に1つずつ含む。本発明の一実施形態に関連する研究では、プロスタグランジン類似体にある不飽和の二重結合が、白金−ビニルヒドリド硬化系においてヒドロシラン化反応を行っても、薬物コアから放出させるのに利用可能なプロスタグランジン類似体の量を顕著には減少させないことが示唆される。
いくつかの実施形態では、治療薬剤にはプロスタグランジン類似体、例えば、ラタノプロスト、ビマトプロスト、またはトラボプロストなどを含むことができ、これらのそれぞれは、スズ−アルコキシ硬化系と反応できる可能性があるヒドロキシル基を含みうる。これらのヒドロキシル基は、アルコキシ濃縮反応によりアルコキシ基と反応できる可能性を有する。ビマトプロスト、ラタノプロスト、およびトラボプロストは、それぞれ、アルコキシ濃縮反応により反応できる可能性のある3つのヒドロキシル基を有する分子を含む。本発明の一実施形態に関連する研究では、スズ−アルコキシ硬化系において、プロスタグランジン類似体中にあるヒドロキシル基がアルコキシ濃縮反応を起こしても、薬物コアから放出させるのに利用可能なプロスタグランジン類似体の量が顕著には減少しないことが示唆される。本発明の一実施形態に関連する研究では、固体コアに関する治療薬剤の抽出データは、少なくとも95%、例えば、97%以上の治療薬剤が薬物コアから抽出されることを示しているので、ごくわずかな量の治療薬剤しか固化により消費されないか、さもなければ利用されないことが示唆される。
いくつかの実施例では、硬化したマトリックスに剛性を付与するために、シリコーン材料は不活性な充填剤を含むことができる。本発明の一実施形態に関連する研究では、充填材料は、治療薬剤の放出速度を増大させることができることが示唆される。MED−4011およびMED−6385材料は、充填材料と共に市販されている。MED−4011材料は、硬化したシリコーンマトリックスに剛性を付与するために、不活性なシリカ充填材料を含むことができる。MED−4385は、硬化したシリコーンマトリックスに剛性を付与するために、不活性な珪藻土充填材料を含むことができる。
充填材料は、実質的に治療薬剤を吸収しえないので、充填材料は、構成材料マトリックスのシリコーン中の薬物濃度を増加させることができ、また不活性な充填材料は、材料薬物コアマトリックス内に占めるシリコーンの割合を低下させることができる。いくつかの実施形態では、MED−4385は、約25%の珪藻土充填剤および約75%のジメチルシロキサンを含む。具体的な実施形態では、薬物コアは、40%の治療薬剤、および60%の材料を含みうる。60%の材料、例えばMED−4385は、45%のジメチルシロキサンベースポリマー、および15%の不活性珪藻土に対応している。治療薬剤は不活性な充填材料にほとんど吸収されないことを仮定すれば、ベースポリマー中の治療薬剤の濃度が47%または約50%となるように、40%の治療薬剤が45%のジメチルシロキサンベースポリマー内に含まれる。したがって、マトリックス材料のシリコーン部分に存在する治療薬剤の濃度は、充填材料の存在によって高められうるので、シリコーン薬物コア挿入体の暴露表面からの治療薬剤放出速度は若干増加されうる。いくつかの実施形態では、治療薬剤、例えば、ラタノプロストオイルが、硬化した固体薬物コア内に、約50%の材料を含み、またこの治療薬剤は、マトリックスベースポリマー内に、やはり約50%の濃度を含みうるように、薬物コアは、充填材料を含まないマトリックス材料を含みうる。
多くの実施形態では、コア内の内包物のサイズおよび/またはサイズ分布は、コアの光散乱測定法、コアの光学顕微鏡法、コアの走査電子顕微鏡法、またはコアの断面の透過電子顕微鏡法のうちの少なくとも1つで特徴づけることができる。
ステップ680は、硬化した固体マトリックス混合物を含むポリイミドチューブを、意図した長さに切断し、またチューブの定尺物の一端部に接着剤を塗布することができる。多くの実施形態では、切断固体薬物コアの暴露表面が、患者に埋め込まれたときに、実質的にその形状を保持するように、マトリックス材料は、固体薬物コア構造、例えば、チューブの形状に対応する円筒状のロッドを形成するように硬化される。薬物コア挿入体に2つ以上の薬物コアを用いるいくつかの実施形態では、2つ以上の薬物コアを一緒に、例えば、同心円状の薬物コアのチューブおよびコアを一緒に切断することができる。
[薬物挿入体の定尺切断]:
ポリイミドチューブを固定具に挿入し、定尺切片に切断することができる。いくつかの実施形態では、ポリイミドチューブの切断部分を、30分間真空中に置くことができる。薬物コア挿入体を含むポリイミドチューブの切断部分を、真空処理後に検査および秤量することができ、その秤量結果を記録することができる。
[薬物コア挿入体端部の閉鎖]:
接着剤を薬物コア挿入体の一端部に塗布することができる。接着剤を液体として塗布し、UV光の下で硬化させる、例えば、UV光の下で5秒間硬化させることができる。具体的な実施形態では、接着剤は、Loctite 4305 UV接着剤を含みうる。多くの実施形態では、薬物コア挿入体の一端部に塗布される材料は、被覆された端部から治療薬剤が放出されるのを阻止するように、治療薬剤に対して実質的に不浸透性である材料を含む。このように、被覆された端部を経由して薬物コアから放出されるのを阻止すると、反対端部の薬物コア暴露表面から、効果的および/または十分な薬物送達を実現することができ、その結果、薬物が、標的組織および/または体液、例えば、涙液の涙液膜に選択的に放出されるようになる。いくつかの実施形態では、インプラントから薬物コア挿入体を取り除きやすくするように、上記に記載するように、フィラメントを端部に結合させることができる。
いくつかの実施形態では、加熱溶接する、チューブ端部を締め付けて閉鎖することにより、またキャップから治療薬剤が放出されるのを阻止するように、治療薬剤に対して実質的に不浸透性である材料を含むキャップを用いてチューブ端部を被覆することにより、端部を閉鎖することができる。薬物コア挿入体において2つ以上の薬物コアを用いる実施形態では、被覆された端部は、両方のコア、例えば、内側の円筒状コアおよび外側の環状コアを被覆することができる。
いくつかの実施形態では、薬物コアを経由する薬物の流れを伴う場合において、薬物コアの端部を閉鎖しなくてもよく、また例えば、キャップの周辺部がコアの環状端部を被覆する一方で、コア内の経路を経由して液体を流通させるような開口部を有するキャップで端部を部分的に閉鎖してもよい。
いくつかの実施形態では、閉鎖端部の反対側の暴露端部は、上記に記載するように、暴露端部の表面積を増加させるような形状を有しうる。いくつかの実施形態では、シャープペンシルの先端部に類似した鋭利な先端を有する円錐体を暴露表面に挿入して、表面積を増加させる逆円錐形で暴露表面に刻み目を入れることができる。いくつかの実施形態では、表面積が減少するように暴露した端部を締め付けることができる。
図6Fは、図6Aの方法600に基づく最終組立方法690を示している。ステップ692は、涙点プラグ内の経路に薬物コア構成部材を挿入する。ステップ694は、経路内に薬物コア挿入体を備えた涙点プラグを包装する。ステップ696は、包装されたプラグおよび薬物コア挿入体を滅菌処理する。ステップ698は製品をリリースする。
ステップ692は、薬物コアをインプラント、例えば、涙点プラグに挿入する。薬物コアは挿入前に検査を受けることができ、また挿入ステップの一部となりうる。切断されたチューブを含むスリーブが、隙間なく、またはシリコーンマトリックス中に異物もなく完全に満たされていること、シリコーンは、平滑でポリイミドチューブと同じ長さであること、シアノアクリレートを含む接着剤が、完全にチューブの一端部を被覆していること、およびチューブは正しい長さであることを確認するために、検査には目視検査を含めることができる。薬物挿入体および涙点プラグを含むインプラントを、薬物挿入体ツールおよび保持固定具に装填することができる。薬物挿入体を、薬物挿入体ツール上のプランジャーを用いて、インプラント孔部または経路内に装填することができる。薬物挿入体挿入ツールは、取り除くことができる。薬物コア挿入体が孔部に完全に収まっていること、薬物コア挿入体が、涙点プラグフランジの面より下がっていること、およびインプラント組立部品/薬物コア組立部品には、目に見える損傷が存在しないことを確認するために、涙点プラグを含むインプラントを検査することができる。
ステップ694は、経路内に薬物コアが挿入された涙点プラグを包装する。涙点プラグは、既知の包材および方法、例えば、内側パウチ、外側マイラーパウチ、パウチシーラー、アルゴンガス、およびインフレーションニードルを用いて包装されうる。具体的な実施形態では、薬物コア挿入体を備えた涙点プラグインプラントをそれぞれ含む、2つの完成した薬物送達システムが、内側パウチ内に配置され、内側パウチ内に密封される。密封された内側パウチは、外側パウチ内に配置される。外側パウチは、パウチシーラー要素よりも約1/4大きめでありうる。25番ゲージニードルをパウチ内に挿入することができ、アルゴン気流と共に密封要素の下に置くことができる。シーラー要素を固定し、包装を膨張させることができる。アルゴン気流ニードルを取り除き、密封操作を繰り返すことができる。アルゴンで満たされたパウチ上を軽く押してリークをチェックすることにより、包装を検査することができる。リークが見つかった場合に、内側パウチを取り出し、新しいマイラー外側パウチ内に再包装することができる。
ステップ696は、包装済みのプラグおよび薬物コア挿入体を、既知の滅菌処理法、例えば、Nutek Corporation of Hayward、CAより市販されているe−ビームを用いて滅菌することができる。
ステップ698は、最終試験結果およびリリース手順に基づき、製品をリリースすることができる。
図6A〜6Eに示す具体的ステップは、本発明のいくつかの実施形態に基づき、薬物コア挿入体を備えたプラグを製造する具体的な方法を提供すると理解すべきである。別の実施形態に基づき、ステップの別の順序も実施可能である。例えば、本発明の別の実施形態は、上記に概説するステップを、異なる順序で実施することができる。さらに、図6A〜6Eに示す個々のステップは、個々のステップにとって適切なように、さまざまな順序で実施可能な複数のサブステップを含むことができる。またさらに、具体的な用途に基づき、追加のステップを追加または除去することができる。通常の当業者は、多くの変法、改善法、および代替法を理解するであろう。
[実施例1]
[Latanoprostの薬物コアの溶出データ]
上記のような薬物コアを、0.006インチ、0.012インチおよび0.025インチのさまざまな断面サイズで、シリコーンマトリックス中の薬物濃度が5%、10%および20%で、製造した。これらの薬物コアは、注射器チューブおよびカートリッジを組み立て、Latanoprostとシリコーンを混合し、混合物をポリイミドチューブに注入し、これを所望の長さに切断し、密封して製造できる。薬物コアの長さは、約0.80〜0.95mmであり、直径0.012インチ(0.32mm)の薬物コアは、5%、10%および20%の濃度に関して、総Latanoprost含有量が個々に約3.5μg、7μgおよび14μgに相当する。
注射器チューブおよびカートリッジの組み立て。1.0.006インチ、0.0125インチおよび0.025インチの3種のさまざまな直径のポリイミドチューブを用意する。2.さまざまな直径のポリイミドチューブを約15cmの長さに切断する。3.ポリイミドチューブを注射器のアダプタに挿入する。4.ポリイミドチューブをルアアダプタに接着接合する(Loctite、低粘度UV硬化)。5.組み立て端部を整える。6.組み立てたカートリッジアセンブリを蒸留水できれいにし、その後メタノールできれいにし、オーブンにおいて600℃で乾燥させる。
Latanoprostとシリコーンとの混合。Latanoprostの調製。Latanoprostは、酢酸メチル中の1%溶液として提供する。適当量の溶液を皿に取り、窒素気流を使用して、Latanoprostだけが残るまで溶液を蒸発させる。Latanoprost油の入った皿を、30分間真空下に置く。Latanoprostとシリコーンを組み合わせる。シリコーンのNusil6385中で3種の異なるLatanoprost濃度(5%、10%および20%)を調製し、異なる3種の直径のチューブに注入し(0.006インチ、0.012インチおよび0.025インチ)、3×3のマトリックスを製造する。シリコーンに対するLatanoprostのパーセントは、薬物マトリックスの総重量によって決定する。計算:Latanoprostの重量/(Latanoprostの重量+シリコーンの重量)×100=薬物のパーセント。
チューブへの注入。1.組み立てたカートリッジおよびポリイミドチューブを1mlの注射器に挿入する。2.注射器に1滴の触媒(MED−6385 硬化剤)を加える。3.過剰な触媒を、清浄な空気によりポリイミドチューブの外に強制的に出す。4.注射器をシリコーン薬物マトリックスで満たす。5.チューブが満たされるまで、または注射器のプランジャーが押せなくなるまで薬物マトリックスを注入する。6.ポリイミドチューブの遠位端部を閉鎖し、シリコーンが凝固し始めるまで、圧力を維持する。7.室温で12時間硬化させる。8.真空下で30分放置する。9.(異なるサイズのチューブを保持するために、実験室内で調製した)正しいサイズの調整固定具にチューブを配置し、薬物挿入体を長さ(0.80〜0.95mm)に切断する。
試験。溶出調査(インビトロ)。1.遠心分離管ごとに同じサイズで同じ濃度の10個のプラグを配置し、1.5mlの7.4pHのバッファー溶液を加える。2.適切な時間の後で、溶媒を新鮮な7.4pHのバッファーと交換する。3.溶離液のHPLCを、Sunfire C18、3mm×10mmのカラム(Waters Corporation、Milford、MA)を使用して、PDA検出器2996で210nmにおいて収集する。アセトニトリルおよび水の混合物を勾配溶出に使用する。正確に秤量したLatanoprostの濃度を用いた実験室内の標準を使用して、各分析の前後に実験室内で較正を行った。4.異なるLatanoprost濃度を有する異なるサイズのチューブに関して薬物放出量/日/装置を計算する。5.溶出速度対面積および濃度を、1日目および14日目に関してプロットする。
図7Aおよび7Bは、0.006、0.012および0.025インチの3種のコア直径ならびに約5%、11%および18%の3種のLatanoprost濃度に関する、個々に1日目および14日目におけるLatanoprostの溶出データを示す。ナノグラム(ng)/日のLatanoprostの溶出速度を、濃度のパーセントに対してプロットする。これらのデータは、両方の期間において、溶出速度の濃度への依存は少なく、暴露表面面積に強く依存することを示す。1日目において、0.006インチ、0.012インチおよび0.025インチの直径のコアは、個々に約200ng、400ngおよび1200ngのLatanoprostを放出し、放出されたLatanoprostの量は、薬物コアの暴露表面面積のサイズが増加するに従って増加することを示す。各チューブ直径に関して、放出されたLatanoprostの量を、薬物コア中の薬物の濃度と、最小二乗法による回帰直線を用いて比較する。0.006、0.012および0.025インチの薬物コアに関して、回帰直線の勾配は個々に、11.8、7.4および23.4である。これらの値は、上記のように薬物コアマトリックスに懸濁されたLatanoprostの液滴および溶解されたLatanoprostによる薬物コアマトリックスの実質的飽和に一致して、コア中のLatanoprost濃度が倍加しても、コアからのLatanoprostの溶出速度は倍加しないことを示す。
14日目において、0.006インチ、0.012インチ(0.32mm)および0.025インチの直径のコアは、個々に約25ng、100ngおよび300ngのLatanoprostを放出し、放出されるLatanoprostの量は、長期間では、薬物コアの暴露表面面積のサイズの増加に従って増加し、放出されるLatanoprostの量は、コア中の治療薬の濃度に少し依存することを示す。各チューブ直径に関して、放出されたLatanoprostの量を、薬物コア中の薬物の濃度と、最小二乗法による回帰直線を用いて比較する。0.006、0.012および0.025インチの薬物コアに関して、回帰直線の勾配は個々に、3.0、4.3および2.2である。0.012および0.025インチのコアに関して、これらの値は、上記のように薬物コアマトリックスに懸濁されたLatanoprostの液滴および溶解されたLatanoprostによる薬物コアマトリックスの実質的飽和に一致して、コア中のLatanoprost濃度が倍加しても、コアからのLatanoprostの溶出速度は倍加しないことを示す。しかし、0.006インチの直径のコアに関しては、コア中のLatanoprostの薬物液滴の減少によって起こり得る、コア中の初期量と14日目の薬物放出量の間には、およその一次関係が存在する。
図7Dおよび7Eは、本発明の一実施形態による、個々に1日目および14日目における図7Aおよび7BのLatanoprostのような3種のコア直径および3種の濃度において、溶出速度が薬物コアの暴露表面面積に依存することを示す。ナノグラム(ng)/日のLatanoprostの溶出速度を、薬物コアの直径により決定した、薬物コアの暴露表面面積mm2に対してプロットする。これらのデータは、1日目および14日目の両方において、溶出速度がコア中の薬物濃度に少し依存し、暴露表面面積に強く依存することを示す。0.006インチ、0.012インチおよび0.025インチの直径のコアの暴露表面面積は、個々に約0.02、0.07および0.32mm2である。1日目において、0.02、0.07および0.32mm2のコアは、個々に約200ng、400ngおよび1200ngのLatanoprostを放出し、薬物コアの暴露表面面積のサイズの増加に従って、放出されたLatanoprostの量が増加することを示す。薬物コア中の治療薬の各濃度に関して、放出されたLatanoprostの量を、薬物コアの暴露表面面積と、最小二乗法による回帰直線を用いて比較する。5.1%、11.2%および17.9%の薬物コアに関して、回帰直線の勾配は個々に、2837.8、3286.1および3411.6であり、係数R2は個々に、0.9925、0.9701および1である。14日目において、0.02、0.07および0.32mm2のコアは、個々に約25ng、100ngおよび300ngのLatanoprostを放出し、薬物コアの暴露表面面積の増加に従って、放出されたLatanoprostの量が増加することを示す。5.1%、11.2%および17.9%の薬物コアに関して、回帰直線の勾配は個々に、812.19、1060.1および764.35であり、係数R2は個々に、0.9904、0.9924および0.9663である。これらの値は、コアからのLatanoprostの溶出速度は、上記のような暴露表面面積を調節できる薬物のシースに一致して、薬物コアの表面積に対して直線的に増加することを示す。薬物コア中の濃度に対するLatanoprostの溶出の弱い依存は、上記のように薬物コアマトリックスに懸濁されたLatanoprostの液滴および溶解されたLatanoprostによる薬物コアマトリックスの実質的飽和に一致する。
図7Cは、本発明の一実施形態による、個々に濃度が5、10および20%ならびに薬物重量が3.5、7および14μgの直径0.32mm、長さ0.95mmの薬物コアからの、Latanoprostの溶出データを示す。薬物コアは、上記のように製造した。溶出速度は、0日目から40日目までng/日でプロットする。14μgのコアは、約10から40日目までは約100ng/日の速度を示す。7μgのコアは、10から20日目までは同等の速度を示す。これらのデータは、上記のように薬物コアマトリックスに懸濁されたLatanoprostの液滴および溶解されたLatanoprostによる薬物コアマトリックスの実質的飽和に一致する。
表2は、各薬物濃度の予想パラメーターを示す。図7Cに示すように、緩衝食塩水による溶出系におけるインビトロの結果は、プラグは初期には約500ngのLatanoprost/日を溶出し、7〜14日のうちに急速に約100ng/日に減少し、薬物の初期濃度に依存することを示す。
多くの実施形態において、薬物コアの期間は、薬物のもとの量の約10%が薬物挿入体に残っているとき、例えば、溶出速度が横ばいになり、約100ng/日で実質的に一定のままである場合の計算時間に基づいて決定できる。
[実施例2]
[シクロスポリン薬物コアの溶出データ]
実施例1に記載の薬物コアを、濃度21.2%のシクロスポリンを用いて製造した。図8Aは、本発明の一実施形態による、薬物コアから界面活性剤を含まないバッファー溶液ならびに界面活性剤を含むバッファー溶液へのシクロスポリンの溶出プロファイルを示す。バッファー溶液は、上記のように調製した。界面活性剤を含む溶液は、95%のバッファーおよび5%の界面活性剤、Dow Corning、Midland MIのUP−1005 Ultra Pure Fluidを含む。本発明の一実施形態に関連する作業により、少なくともいくつかの場合において、眼球は、涙液膜中に天然の界面活性剤、例えばサーファクタントタンパク質Dを含み得るので、界面活性剤をインビトロで使用して、眼球からのインサイツの溶出をモデル化できることが示される。シクロスポリンの界面活性剤への溶出プロファイルは、30〜60日間は約50〜100ng/日である。患者集団、例えば10例の患者の涙由来の実験に基づくデータは、測定可能であり、適当量の界面活性剤を用いたインビトロのモデルを改良するために使用できる。薬物コアマトリックスは、改変in vitroモデルで決定されるヒト涙液の界面活性剤に応じて修正してもよい。薬物コアは、ヒトの涙液膜の界面活性剤に応じて、必要に応じて、コアからの溶出を治療レベルに増加するために、例えば、上記のように暴露表面面積の増加および/またはコア中に溶解されるシクロスポリン薬物量を増加するための添加物を用いて多くの方法で修正できる。
[実施例3]
[Bimatoprostのバルク溶出データ]
既知の直径0.076cm(0.76mm)を有する1%のBimatoprostのバルク試料を調製した。各試料の高さを、試料の重量および既知の直径から決定した。
計算による高さは、0.33cmから0.42cmまでの範囲に及ぶ。各バルク試料の各端部の暴露表面面積は、約0.045cm2であり、0.42および0.33cmの試料に関して個々に体積が0.019cm3および0.015cm3である。薬物のシースを含まない高さと直径から計算した、試料の暴露された暴露表面面積は、約0.1cm2であった。3種の製剤、1)シリコーン4011、1%のBimatoprost、0%の界面活性剤;2)シリコーン4011、1%のBimatoprost、約11%の界面活性剤;および3)シリコーン4011、1%のBimatoprost、約33%の界面活性剤、を評価した。製剤1、2および3を用いてバルク試料に関して測定した溶出データを、バルク装置の表面積が0.1cm2および臨床装置の表面積が0.00078cm2(直径0.3mm)と仮定して、1日装置当たりのng数(ng/装置/日)に標準化した。図9Aは、本発明の一実施形態による、装置の端部の暴露表面直径が0.3mmと仮定して標準化した、1%のBimatoprostを含むシリコーンのバルク試料に関する100日にわたる、ng/装置/日の溶出プロファイルを示す。標準化した溶出プロファイルは、約10ng/日である。このデータは、各製剤に関して約10日から約90日まで、ほぼ0次の放出速度論を示す。これらのデータは、上記のように薬物コアマトリックスに懸濁されたBimatoprostの粒子および溶解されたBimatoprostによる薬物コアマトリックスの実質的飽和に一致する。類似の製剤も、薬物コアのシースおよび涙に暴露されたコアの成形暴露表面を使用して、上記のように暴露表面面積を増加させることができ、長期にわたり治療量の薬物を送達できる。
いくつかの実施形態において、コアは、0.0045cm2の暴露表面面積に相当する、0.76mmの暴露表面面積直径を有する0.76mmのコア直径を含み得る。コアを、上記のようにシースで覆い、コアの暴露面積を画定できる。このような装置に関する、上記のバルク試料のデータに基づく標準化溶出プロファイルは、0.3mmの直径の暴露表面面積を有する装置の溶出プロファイルのおよそ6倍(0.0045cm2/0.00078cm2)である。したがって、溶出速度が約60ng/日の0次の溶出プロファイルを、約90日の期間にわたって得ることができる。例えば、上記のような多くの暴露表面の形状を用いて暴露表面面積が約0.0078cm2に増加した場合、0次の溶出速度は、約90日の期間にわたって約100ng/日である。濃度を1%から上昇させることもできる。Latanoprostに関しても同様の溶出プロファイルを得ることができる。
[実施例4]
[Latanoprostの溶出データ]
薬物コアを、Latanoprostおよびシリコーン4011、6385および/またはNaClを用いて、上記の実施例1のように製造した。以下のような4種の製剤:A)シリコーン4011、約20%のLatanoprostおよび約20%のNaCL;B)シリコーン 4011、約20%のLatanoprostおよび約10%のNaCl;C)シリコーン4011、約10%のLatanoprostおよび約10%のNaCl;ならびにD)シリコーン6385、約20%のLatanoprost、を製造した。図10Aは、本発明の一実施形態による、Latanoprostの4種の製剤のコアからのLatanoprostの溶出のプロファイルを示す。この結果は、初速が約300ng/装置/日であり、3週間(21日)で約100ng/装置/日に減少することを示す。示された結果は、非滅菌薬物コアに関するものである。同様の結果が、Latanoprostの滅菌薬物コアでも得られている。これらのデータは、上記のように、薬物コアマトリックス中に懸濁されたLatanoprostの液滴および溶解されたLatanoprostによる薬物コアマトリックスの実質的飽和と一致する。
[実施例5]
[架橋に応じた薬物放出]
図11Aは、本発明の一実施形態による、材料の溶出および20%のlatanoprostを含む薬物コアとの架橋に関する効果を示す図である。薬物コアを、図6Eおよび表1のような製造方法で、上記のように製造した。薬物コアは、4011シリコーン、2.5%の架橋剤を含む6385シリコーン、2.5%の架橋剤を含む6380ならびに5%の架橋剤を含む6380を含んだ。すべての試料中の治療薬は、約20%のlatanoprostを含んだ。5%の架橋剤を含む6380材料は、全時点で最も遅い溶出速度を提供した。5%の架橋剤を含む6380材料は2.5%の架橋剤を含む6385材料より溶出速度が遅いので、架橋剤の増加および付随する架橋により溶出速度は低下すると思われる。2.5%の架橋剤を含む6385材料は、1、4、7および14日目において、最も早い溶出速度を提供する。2.5%の架橋剤を含む6380材料は、6385材料より、1、4、7および14日目においてわずかに溶出速度が遅い。6385および6380の材料は双方とも、充填材を含まない4011材料より早く溶出する。4011、6380および6385の材料は、ジメチルシロキサンを基本ポリマーとして含む。上で述べたように、6385材料は珪藻土の充填材を含み、6380材料はシリカの充填材を含み、上記の溶出速度に基づくと、不活性な充填材が溶出速度を上昇させ得ることが示唆される。
[実施例6]
[Latanoprostの溶出についての薬物濃度の効果]
図11Bは、本発明の一実施形態による、latanoprostの溶出についての薬物濃度の効果を示す。薬物コアを、図6Eおよび表1のような製造方法で、上記のように製造した。薬物コアは、個々に5、10、20、30および40%のlatanoprostを含む6385材料を含んだ。スズ−アルコキシ硬化系の量は、全試料において2.5%であった。latanoprostの放出は、全時点でlatanoprostの濃度にわずかに依存しており、40%のlatanoprost材料は最も溶出速度が速く、5%のlatanoprostは最も溶出速度が遅い。全試料に関する溶出速度は、7日目までに500ng/日に下がり、その後治療レベルで放出を続ける。
[実施例7]
[薬物コア挿入体の一端部を被覆することの効果]
図11Cは、本発明の一実施形態による、薬物コア挿入体の一端部を被覆することの効果を示す。薬物コアを、図6Eおよび表1のような製造方法で、上記のように製造した。薬物コアは、20%のlatanoprostを含む6385材料を含んだ。両端部開放と称する、各切断チューブの両端が開放された、上記のような切断チューブの溶出速度を測定した。一端部を暴露させ、一端部がUV硬化したLoctiteで被覆された、一端部開放と称する、上記のような切断チューブの溶出速度を測定した。比較のために、「両端部開放/2」と称する、両端部が開放された薬物コア挿入体に関する溶出速度を2で割って示した。両端部開放/2の値は、全時点で一端部開放のデータの値と非常に近く、薬物がチューブの開放端部にある薬物コアの暴露表面を介して効果的に送達されるように、治療薬が実質的に不浸透性の接着材料で薬物コア挿入体の一端部を被覆することで、薬物コアからの治療薬の放出を阻害することができることを示唆する。
[実施例8]
[フルオレセインの溶出およびフルオレセインの溶出についての界面活性剤の効果]
図12Aは、本発明の一実施形態による、フルオレセインの溶出およびフルオレセインの溶出についての界面活性剤の効果を示す。フルオレセインの溶出データは、上記の薬物コアの柔軟性ならびに水溶性と不水溶性との両方の治療薬および相対的に低分子量と高分子量との治療薬を含む多くの治療薬の持続放出の製造方法を示す。フルオレセインは332.32g/molの分子量を有し、水に可溶性であり、眼球から放出される水溶性治療薬の放出モデルの役目を果たすことができる。本発明の一実施形態に関連する作業により、分子量および水への溶解度が、固体の薬物コアマトリックスルからの薬物放出速度に個々に作用し得ることが示唆される。例えば、比較的低分子量は固体マトリックス材料、すなわちシリコーンの中で拡散しやすく、比較的低分子量の化合物はより迅速に放出され得る。さらに、水中の溶解度もまた薬物の放出速度に作用することができ、いくつかの場合において、薬物の水への溶解度が増加することにより、例えば固体マトリックス材料から涙液などの体液への輸送を介して、固体薬物コアマトリックスからの放出速度が上昇し得る。これらの実施形態に従って、フルオレセインより分子量が大きく、フルオレセインより水への溶解度が小さい治療薬、例えば上記のようにシクロスポリンおよびプロスタグランジンが、低い速度で固体コアから放出され得る。界面活性剤もまた、薬物コアから周囲の体組織および/または体液、例えば涙膜液への治療薬の放出速度に作用することができる。
各被験薬物コアは、MED4011シリコーンを含んだ。一実施形態において、薬物コア製剤1210は、9%の界面活性剤および0.09%のフルオレセインを含んだ。指数フィット1212は、薬物コア製剤1210の溶出速度を示す。別の実施形態において、薬物コア製剤1220は、16.5%の界面活性剤および0.17%のフルオレセインを含んだ。指数フィット1222は、薬物コア製剤1220の溶出速度を示す。別の実施形態において、薬物コア製剤1230は、22.85%の界面活性剤および0.23%のフルオレセインを含んだ。指数フィット1232は、薬物コア製剤1230の溶出速度を示す。界面活性剤を含まない実施形態において、薬物コア製剤1240は、0%の界面活性剤および0.3%のフルオレセインを含んだ。指数フィット1242は、薬物コア製剤1240の溶出速度を示す。
薬物コアを、シリコーン界面活性剤「190Fluid」(Dow Corning);界面活性剤混合物「190Fluid」+フルオレセイン;シリコーン(Nusil):MED4011パートA、MED4011パートBを含むキー製剤;遠心分離管;3mLの注射器;20ga.針;0.031インチの内径のテフロンのチューブ;およびバッファーを用いて製造した。
キーパラメーターは、2.5gのシリコーン界面活性剤および0.025gのフルオレセインの混合物の調製;3.5gのパートAおよび0.37gのパートB(比率10:1)を含むNusil MED4011のシリコーン組成物の調製;個々に、0.5gのシリコーンおよび以下のようなさまざまな重量の界面活性剤混合物:A.0.05g界面活性剤混合物:9%の界面活性剤、0.09%のフルオレセイン;B.0.1gの界面活性剤混合物:16.5%の界面活性剤、0.17%のフルオレセイン;C.0.15の界面活性剤混合物:22.85%の界面活性剤、0.23%のフルオレセイン;D.0.0015gのフルオレセイン:0%の界面活性剤、0.3%のフルオレセイン;を含む四(4)本の遠心分離管の調製;4種の製剤それぞれを、個別のテフロンチューブに注射器と針を使用して注入すること;注入したチューブを140℃で45分間オーブンにおいて硬化させること;各チューブを、4mmの長さに3つに切断すること;切断した各チューブを0.3mLのバッファーを含む遠心分離管に浸すこと、を含んだ。
データの収集は、24、48、72、192および312時間の時点で試料を回収すること;各試料をUV分光分析に供すること;各溶出速度を、テフロンチューブの寸法(長さ4mm、内径0.031インチ)を使用して、μg/mL/時からμg/cm2/時に変換すること;溶出速度対時間のデータをプロットし、各界面活性剤混合物製剤の速度を比較すること、を含んだ。
分析は、表4に示すように各溶出速度に関するトレンドラインを指数曲線にフィットさせることを含んだ。
表4のトレンドライン方程式は、以下を示す:データは、実験曲線によく適合し、R2値は0.8785から0.9554である。トレンドライン方程式は、指数係数が−1.0711から−1.3706であることを示す。溶出速度は界面活性剤のレベルが上昇するに従って早くなった。比較的同等の量のフルオレセインにもかかわらず、試料Cと試料Dの間の溶出速度は劇的に上昇し、このことはシリコーンマトリックスに界面活性剤を添加することが、水溶性化合物の溶出速度に劇的に作用することを実証する。試料Aは、わずか1/3の量のフルオレセインしか含まないにもかかわらず、試料Aの溶出速度は、試料Dの溶出速度と同程度である。このことはまた、溶出速度が、シリコーンマトリックスに界面活性剤を添加することにより作用を受け得ることを実証する。
−1.0711から−1.3706までのトレンドライン方程式の指数係数は一次放出に一致するが、データは、コアからのフルオレセインのボーラス放出が観察される初めの48時間を含む。高レベル治療薬が送達されるこのような2〜3日の初期の洗い出し期間、その後の治療レベルの持続放出期間は、例えば短期間のレベルの上昇が許容される場合、いくつかの実施形態において有益であり、眼球に促進効果をもたらす。本発明の一実施形態に関連する作業により、48時間後の溶出データが0次に近い、例えば約0次から約1次の範囲内であり得ることが示唆される。いくつかの実施形態において、放出治療薬のレベルは、薬物コアの暴露表面面積の減少に従って減少する可能性があり、例えば上記のように、持続放出期間の間治療レベルで薬物を放出する。
[実施例9]
[治療薬の溶出についての滅菌の効果]
本発明の一実施形態に関連する作業により、滅菌過程において発生する基が、薬物コアマトリックス材料から治療薬の初期放出速度を阻害するように、薬物コアマトリックス材料を架橋する可能性があることが示唆される。e−ビーム滅菌を用いた特定の実施形態において、この架橋は、薬物コアマトリックスの表面および/または表面近くに限定され得る。いくつかの実施形態において、既知のMylarの袋にe−ビームを貫通させ、薬物コアの表面を滅菌することができる。いくつかの実施形態において、滅菌作用があり、薬物コアの表面に制限されずに完全におよび/または一様に薬物コア材料を貫通する他の滅菌技術、例えば、γ線滅菌も使用できる。
薬物コアを、上記のように合成し、Mylar包装においてe−ビーム滅菌した。図13Aは、滅菌および非滅菌薬物コアの溶出を示す。滅菌および非滅菌薬物コアは、個々に上記のように合成された6385中に20%のlatanoprostを含んだ。薬物コアを、e−ビーム滅菌し、上記のように溶出速度を測定した。滅菌および非滅菌薬物コアは、1日目に個々に約450および1400ng/日の溶出速度を示す。4日目および7日目に、滅菌および非滅菌薬物コアは、約400ng/日の同程度の溶出速度を示す。14日目に、滅菌および非滅菌薬物コアは、個々に200および約150ng/日の溶出速度を示す。これらのデータは、滅菌により治療薬の初期放出またはボーラスが減少し得、例えば、上記の実施形態と組み合わせて、より一様な治療薬の放出速度を提供するために滅菌を使用できる。
[実施例10]
[治療薬の溶出についての塩の効果]
本発明の一実施形態に関連する作業により、既知の塩、例えば塩化ナトリウムが薬物コアからの溶出速度に作用し得ることが示唆される。
図14は、治療薬の溶出についての塩の効果を示す。20%のbimatoprost(BT)を含む薬物コアおよびNuSil6385を含むシリコーン薬物コアマトリックスを、上記のように製造した。薬物コアを、塩濃度0%、10%および20%を用いて製造した。1日目に薬物コアは、20%、10%および0%に関して、個々に約750ng/日、400ng/日および約100ng/日の溶出速度を示した。2週間までに測定した全期間において、20%の塩のデータが最も早い溶出速度を示し、0%の塩のデータが最も遅い溶出速度を示した。このデータは、塩、例えば塩化ナトリウムなどの多くの既知の塩をマトリックスに添加して、治療薬の溶出速度の次数を上げることができることを示す。
[実施例11][治療薬の収率を決定するための、薬物コアからの治療薬の抽出]
MED−6385ならびに20%および40%のlatanoprostを含む薬物コア挿入体を、上記のように合成した。各薬物コアを秤量し、薬物チューブおよび接着剤の重量を補正して、固体薬物コア材料の重量を決定した。各試料中に存在する治療薬の量を、上記のような薬物コア材料の重量および薬物コア材料中の治療薬のパーセントに基づき、決定した。治療薬を、1mlアリコートの酢酸メチルを用いて薬物コアから抽出した。各試料の溶液中の治療薬濃度を、逆相勾配HPLCならびに210nmにおける光学検出およびピーク積分を用いて決定した。測定は、20%のlatanoprostを含む6種の薬物コアおよび40%のlatanoprostを含む4種の薬物コアに関して実施した。20%の試料に関しては、latanoprostの平均抽出は104.8%であり、標準偏差は約10%であった。40%の試料に関しては、latanoprostの平均抽出は96.8%であり、標準偏差は約13%であった。
[実施例12]
[高圧充填]
2つのパートのシリコーン製剤(MED6385、Nusil Technologies)をlatanoprostを含有する複合樹脂の調製に使用し、これをポリイミドのシースの一部を充填するために使用した。重合シリコーンを含むシースを、最大直径約25μm未満の液滴の形態で存在する、マトリックス内の離散latanoprost領域と組み合わせる。いくつかの実験を実施した。
MED6385シリコーン製剤のパートAと、0.43μLのパートB、スズの触媒とを注射器を使用して混合し、30分の間ポリマーの部分凝固を引き起こした。その後、37mgのその材料を、0.14μLの追加の触媒および13mgのlatanoprostのあらかじめ混合した溶液と混合し、この混合物を、超音波プローブを用いて超音波処理によりさらに混合できた。得られた混合物をHP7x注射器アダプタに接続した注射針に移し、これはEFDポンプに接続してあり、ポンプは次に圧縮空気システムに接続してあり、送達圧は40psiに設定する。その後、シリコーン−latanoprost混合物を、長さ(10cm)のポリイミドチューブ(IWG High Performance Conductors,Inc.)に押し出した。粘性混合物がポリイミドチューブの底に達した時、クランプをチューブの底および注射器アダプタの上部接続部に用いて、その後圧を放出してチューブ部分を取り外した。チューブのクランプ部分を、40℃および相対湿度(RH)80%の湿度室(Thunder Scientific)に、硬化のために約16〜24時間置いた。
Latanoprostを含有する現在固体のマトリックスが入った充填されたポリイミドチューブを、個別の薬物挿入体に加工するために、その後充填済み前駆体シースを、ジグおよび剃刀の刃を用いて、1mmの断片に切断した。その後1mmの各断片の一端部を、Loctite 4305 UV Flash硬化接着剤で密封し、Loctite UV棒で硬化させる。この時点の各断片は、内端部が密封され、挿入体を受け入れるために適合された涙点プラグ(Quintess)へ挿入できる状態であった。
[結果]
硬化したマトリックスを含有するシース、すなわち充填済み前駆体シースの走査電子顕微鏡写真を、表示の倍率で図15A〜Dに示す。挿入体は低温で切片にした。図15Aおよび15Bは、個々に押し出しを40℃(A)または25℃(B)で実施した挿入体コアを示す。
[実施例13]
混合物の温度およびポリイミドシースへの充填に関与する関連装置の温度は、注入過程の間さまざまな温度を維持した。温度は、やや高い温度(40℃)、ほぼ室温(25℃)および0℃、−5℃および−25℃などの周囲温度より低い温度を使用した。周囲温度より低い注入過程を、この実施例において提供する。
[Latanprost/シリコーン混合物の製造]
シリコーン製剤(MED6385)は2つのパートの系である。パートAはシリコーンおよび架橋剤を含有し、一方パートBはスズ触媒を含有し、架橋を促進する。2つのパートは、最終比率200:1(パートA:パートB)で組み合わされる。所要量のLatanoprost、MED6385のパートAおよびBをガラスのスライド上に秤量し、プラスチックの小型へらを使用して約2分間混合する。押し出す混合物を50mg調製するために必要な成分の重量または体積を、以下の表に提示する。
[ポリイミドチューブへの押し出し]
[注射器押し出し系の調製]
プラスチックのルアアダプタに15cmの切片を通し、Loctite 4304 UV flash硬化接着剤を使用して適所に接着する(図2)。1mLの注射器(Henke Sass Wolf NORMJect)をプランジャーフラッシュの先端部を切断することによって修正する。あらかじめ組み立てたチューブ/アダプタ部品を注射筒に挿入し、ルアの出口を通し、適所に適合させる。
[押し出し]
シリコーン/latanoprostの混合を完了した後、混合物を注射機押し出し系の筒に充填する。プランジャーを挿入し、過剰な空気を取り除く。その後、注射器を冷却した押し出し装置に取り付ける準備をする。装置は、衛生的に熱交換器に接合されたチューブのすべてステンレス製の被覆チューブであり、熱交換器の冷却材側の内部を渦巻き状に進むことによって内部で冷却されるガスパージを含む。冷却系の動作温度の設定値は−10℃であるべきである。熱交換器内部の温度は、ポリイミドチューブの使用可能な長さにわたって+/−2.5℃に一様であるべきである。冷却系の定常状態の温度は、注射器およびチューブの挿入前に確認すべきである。
設定後、EFDを活性化し、シリコーンlatanoprost混合物をポリイミドチューブの長さに押し出す。混合物がチューブの底に達したら、視覚的に気付くことができる。チューブを含む注射器を、すばやく冷却系から取り外す。注射器を、チューブを剃刀の刃で切断することによって取り外し、その後チューブの両端部をクランプで締める。
[硬化]
チューブのクランプで締めた部分を湿度室(Thunder Scientific)に配置し、40℃でRH80%で約16〜24時間硬化させる。
[結果]
硬化マトリックスを含有するシース、すなわち、充填済み前駆体シースの走査電子顕微鏡写真を図15A〜Dに表示の倍率で示す。挿入体は低温で切片にした。図15Cおよび15Dは、個々に0℃および−25℃で実施した押し出しの結果を示す。これらを室温(25℃)または室温より高い温度(40℃)で実施した図15Aおよび15Bと比較できる。
平均内包物直径およびそれらの標準偏差の測定は以下の通りである:
冷却押し出し(−5℃):0.006±0.002mm(n=40内包物)
室温(22℃):0.019±0.019mm(n=40内包物)
充填前駆体チューブから分割(剃刀の刃)した平均latanoprost含有量(μg)/1mm切片(コア)の測定は以下の通りである:
冷却押し出し(−5℃):20.9±0.5(平均±SD)RSD=2.4
室温(22℃):20.2±1.9(平均±SD)RSD=9.4
[さらなる実施形態]
主に眼球の治療に関して上に記載したが、本明細書に記載の薬物放出構造の実施形態は、異なる疾患状態の範囲を治療する、広範な組織の治療への適用もまた見出すことができる。いくつかの実施形態において、これらの構造は、治療薬の全身および/または局所(より一般的)溶出に使用し、癌を治療できる。化学療法に使用する実施形態において、マトリックスは、原発腫瘍の型に依存する治療用カクテルを放出するように構成できる。局所送達の使用は、外科手術後の腫瘍部位の治療に特に有益であり得、副作用および体の健康な組織に対する付随的な損傷を最小限にするために役に立つことができる。いくつかの実施形態において、乳がんの摘出手術および/または前立腺癌の外科治療を治療できる。多くの実施形態において、腫瘍は、標的腫瘍内および/または標的腫瘍に隣接するマトリックスの位置決めの標的である。いくつかの実施形態において、インプラントは、放射性医薬品を含むことができ、治療薬と併用して腫瘍を治療できる。
さらに別の実施形態は、患者の耳組織内、口腔内、尿道内、皮膚内、膝関節(または他の関節)などへの治療薬の溶出を容易にできる。治療できる関節の状態は、関節炎および他の関節疾患を含み、使用できる治療薬は、(例えば)少なくとも1種のCOX II阻害剤、NSAIDおよび/または同等物を含むことができる。NSAIDおよびCOX II阻害剤のこのような局所使用は、これらの化合物の全身使用に伴うリスクを減少できる。いくつかの実施形態において、マトリックスは、局所組織および/または関節の近くにおいて、陽性の生理反応をもたらすために、グルコサミンなどの栄養補助剤を含むことができる。椎間関節内にまたは椎間関節に隣接して治療薬を溶出するためのインプラントは、特に有利である。類似の(または他の)鎮痛剤、抗生物質、抗菌剤および/または同等物もまた、局所外傷内に1種または複数種の治療薬を溶出するためのインプラントに含まれ得る。インプラント(場合により、上記の涙点インプラントに由来する構造を有するインプラント)は、鼻腔内に1種または複数種の治療薬を溶出可能である。このような鼻用インプラントと上記の涙点インプラントとの差の修正は、小管内腔の中を通る仲介涙液の制御放出用通路を提供することを含む。別の鼻組織構造は、全体の形態とまったく異なることがあり、場合により、さまざまな既知の鼻腔用薬物放出形態のいずれかを含むが、場合により薬物コアの1つまたは複数の態様あるいは1種または複数種の適切な治療薬の長期放出のための上記の薬物放出構造を利用する。
さらに別の実施形態は、化粧用途への適用を見出す。例えばこれらの使用は、まつ毛の成長を強化するためのプロスタグランジンの投与を含む。
例示的実施形態を少し詳しく、実施例を用いて明確な理解のために記載したが、当業者は、さまざまな変形、適合および変更を適用できることを認識するであろう。例えば、複数の送達機序を用いることができ、各装置の実施形態が他の特性または材料を含むように適合でき、さらに複数の特性または複数の材料を単一の装置に用いることもできる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され得る。