以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面中に「前方」「後方」「左方」「右方」「上方」「下方」の注記がある場合は、明細書中の説明における「前方(前)」「後方(後)」「左方(左)」「右方(右)」「上方(上)」「下方(下)」とは、その注記された方向を指す。
<印刷装置の概略構成>
まず、図1〜図4を参照しつつ、本実施形態に係わるテープ印刷装置の概略構成について説明する。
<筐体>
図1〜図4において、本実施形態のテープ印刷装置1(印刷装置に相当)は、装置外郭を構成する筐体2を有している。筐体2は、筐体本体2aと、後方側開閉部8と、前方側開閉カバー9と、を備えている。
筐体本体2a内には、後方側に設けられた第1収納部3と、前方側に設けられた第2収納部5及び第3収納部4と、が備えられている。
後方側開閉部8は、筐体本体2aの後方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この後方側開閉部8は、回動することで、第1収納部3の上方を開閉可能である。この後方側開閉部8は、第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bにより構成されている。
第1開閉カバー8aは、筐体本体2aの後方側の上部に設けられた所定の回動軸心K1まわりに回動することで、第1収納部3のうち前方側の上方を開閉可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、第1収納部3のうち前方側の上方を覆う閉じ位置(図1、図2の状態)から、第1収納部3のうち前方側の上方を露出させる開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
第1開閉カバー8aの内部には、ヘッド保持部10が設けられている(図3も参照)。そして、第1開閉カバー8aは、上記の回動軸心K1まわりに回動することで、ヘッド保持部10に備えられた印字ヘッド11を、筐体本体2aに設けられた搬送ローラ12に対して相対的に離反・近接可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、印字ヘッド11が搬送ローラ12に対して近接した閉じ位置(図1、図2の状態)から、印字ヘッド11が搬送ローラ12から離反した開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
第2開閉カバー8bは、上記第1開閉カバー8aよりも後方側に設けられており、筐体本体2aの後方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K2まわりに回動することで、第1収納部3のうち後方側の上方を、上記第1開閉カバー8aの開閉とは別個に開閉可能である。詳細には、第2開閉カバー8bは、第1収納部3のうち後方側の上方を覆う閉じ位置(図1及び図2の状態)から、第1収納部3のうち後方側の上方を露出させる開き位置(図3及び図4の状態)までの間で回動可能である。
そして、これら第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bは、それぞれが閉じ状態であるときに、当該第1開閉カバー8aの外周部18と当該第2開閉カバー8bの縁部19とが互いに略接触して、第1収納部3の上方の略全部を覆うように構成されている。
前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K3まわりに回動することで、第3収納部4の上方を開閉可能である。詳細には、前方側開閉カバー9は、第3収納部4の上方を覆う閉じ位置(図1、図2の状態)から、第3収納部4の上方を露出させる開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
<被印字テープロール及びその周辺>
このとき、図2〜図4に示すように、筐体本体2aにおける、閉じ状態での前方側開閉カバー9の下方にある第1所定位置13には、テープカートリッジTK(図2参照)が着脱可能に装着される。このテープカートリッジTKは、軸心O1まわりに巻回形成された被印字テープロールR1を備えている。
すなわち、テープカートリッジTKは、図5に示すように、被印字テープロールR1と、連結アーム16とを備えている。連結アーム16は、後方側に設けられた左・右一対の第1ブラケット部20,20と、前方側に設けられた左・右一対の第2ブラケット部21,21とを備えている。
第1ブラケット部20,20は、上記被印字テープロールR1を、軸心O1に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では被印字テープロールR1を巻芯39(図2参照)のまわりに回転可能に保持する。これら第1ブラケット部20,20は、上端部において左右方向に略沿って延設された第1接続部22により被印字テープロールR1の外径との干渉を回避しつつ接続されている。
被印字テープロールR1は、テープカートリッジTKが筐体本体2aの内部に装着された際には回転自在となる。被印字テープロールR1は、繰り出しにより消費される被印字テープ150(被印字媒体に相当。後述する被印字層154、基材層153、粘着剤層152、剥離材層151を備える。図2中拡大図参照)を、あらかじめ左右方向の軸心O1を備えた上記巻芯39まわりに巻回している。
第1収納部3には、上記テープカートリッジTKの装着によって、被印字テープロールR1が上方から受け入れられ、被印字テープ150の巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、被印字テープ150を繰り出す。
本実施形態では、粘着性を備えた被印字テープ150が用いられる場合を例示している。すなわち、被印字テープ150は、被印字層154、基材層153、粘着剤層152、剥離材層151が、厚さ方向一方側(図2中の上方側)から他方側(図2中の下方側)へ向かって、この順序で積層されている。被印字層154は、上記印字ヘッド11によるインクの熱転写によって所望の印字部155(図2中の部分拡大図参照)が形成される層である。粘着剤層152は、基材層153を適宜の被着体(図示省略)に貼り付けるための層である。剥離材層151は、粘着剤層152を覆う層である。
<搬送ローラ及び印字ヘッド>
図2〜図4に戻り、筐体本体2aにおける第1収納部3及び第2収納部5の中間上方側には、上記搬送ローラ12(搬送手段に相当)が設けられている。搬送ローラ12は、筐体本体2aの内部に設けられた搬送用モータM1によりギア機構(図示省略)を介して駆動されることで、第1収納部3に収納された被印字テープロールR1から繰り出される被印字テープ150を、テープ幅方向が左右方向となるテープ姿勢で搬送する。
また、第1開閉カバー8aに設けられた上記ヘッド保持部10には、上記印字ヘッド11が備えられている。印字ヘッド11は、上述したように、第1開閉カバー8aが回動軸心K1まわりに回動することで、搬送ローラ12に対して相対的に離間・近接可能である。すなわち、第1開閉カバー8aが閉じ状態となると、印字ヘッド11が搬送ローラ12に近接し、第1開閉カバー8aが開き状態となると、印字ヘッド11が搬送ローラ12から離間する。この印字ヘッド11は、搬送ローラ12により搬送される被印字テープ150を当該搬送ローラ12と協働して挟持するように、ヘッド保持部10のうち閉じ状態での第1開閉カバー8aにおいて搬送ローラ12の上方に対向する位置に配置されている。したがって、第1開閉カバー8aが閉じ状態である場合には、印字ヘッド11と搬送ローラ12とは、互いに上下方向に対向して配置される。そして、印字ヘッド11は、搬送ローラ12との間に挟まれた状態の被印字テープ150の被印字層154に対し、後述するインクリボンカートリッジRKのインクリボンIBを用いて所望の印字を形成して、印字済みテープ150′とする。
<インクリボンカートリッジ>
図2及び図3に示すように、筐体本体2aにおける閉じ状態での第1開閉カバー8aの下方でかつテープカートリッジTKの上方となる第2所定位置14には、インクリボンカートリッジRKが着脱可能に装着される。インクリボンカートリッジRKの詳細構造を図6に示す。
図6に示すように、インクリボンカートリッジRKは、カートリッジ筐体80と、未使用のインクリボンIBを繰り出し可能に巻回したリボン繰り出しロールR4と、リボン巻き取りロールR5とを備えている。カートリッジ筐体80は、後方側の繰り出しロール収納部81と、前方側の巻き取りロール収納部82と、それら両収納部81,82を連結する連結部83と、を有している。連結部83は、リボン繰り出しロールR4から繰り出された上記インクリボンIBをカートリッジ筐体80外に露出させるようにしつつ、上記巻き取りロール収納部82と上記繰り出しロール収納部81とを連結する。
繰り出しロール収納部81は、略半円筒の上部81aと、下部81bと、が組み合わされることにより構成されている。リボン繰り出しロールR4は、繰り出しロール収納部81内において回転自在に支持されており、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のD方向)に回転することで、印字ヘッド11による印字形成を行うためのインクリボンIBを繰り出す。
巻き取りロール収納部82は、略半円筒の上部82aと、下部82bと、が組み合わされることにより構成されている。リボン巻き取りロールR5は、巻き取りロール収納部82内において回転自在に支持されており、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のE方向)に回転することで、印字形成後の使用済みのインクリボンIBを巻き取る。
すなわち、図2において、リボン繰り出しロールR4から繰り出されるインクリボンIBは、印字ヘッド11と搬送ローラ12との間に挟まれた状態の被印字テープ150のさらに印字ヘッド11側に配置されて印字ヘッド11の下方に接触する。そして、印字ヘッド11からの加熱によりインクリボンIBのインクが、被印字テープ150の被印字層154に転写されて印字形成が実行された後、使用済みのインクリボンIBが、リボン巻き取りロールR5に巻き取られる。
<剥離材ロール及びその周辺>
図5に示すように、テープカートリッジTKの連結アーム16は、例えば略水平なスリット形状を含む。引き剥がし部17を備えている。この引き剥がし部17は、被印字テープロールR1から繰り出されて前方側へと搬送される印字済みテープ150′から、剥離材層151を引き剥がす部位である。上記のようにして印字が形成された印字済みテープ150′は、図2に示すように、上記引き剥がし部17によって上記剥離材層151が引き剥がされることで、剥離材層151と、それ以外の被印字層154、基材層153及び粘着剤層152からなる印字済みテープ150″とに分離される。
テープカートリッジTKは、図2及び図5に示すように、上記引き剥がされた剥離材層151が軸心O3を備えた巻芯29まわりに巻回されることで形成される、上記剥離材ロールR3を有している。すなわち、上述したテープカートリッジTKの装着によって、剥離材ロールR3が上方から上記第2収納部5に受け入れられ、軸心O3が左右方向となる状態で収納される。そして、巻芯29は、第2収納部5に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において、筐体本体2a内に設けられた剥離紙巻取用モータM3によりギア機構(図示省略)を介して駆動され、第2収納部5内で所定の回転方向(図2中のC方向)に回転することで、剥離材層151を巻き取る。
このとき、図5に示すように、テープカートリッジTKの上記第2ブラケット部21,21は、上記剥離材ロールR3を、軸心O3に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では巻芯29(言い換えれば剥離材ロールR3)を当該軸心O3まわりに回転可能に保持する。これら第2ブラケット部21,21は、上端部において左右方向に略沿って延設された第2接続部23により接続されている。そして、後方側の第1ブラケット部20,20及び第1接続部22と、前方側の第2ブラケット部21,21及び第2接続部23とは、左・右一対のロール連結ビーム部24,24により連結されている。
また、図5中では、巻芯29のまわりに剥離材層151が巻回され剥離材ロールR3が形成される前の状態(未使用のテープカートリッジTKである場合)を示している。すなわち、当該剥離材層151の幅方向両側を挟み込むように設けられている略円形の上記ロールフランジ部f3,f4を図示するとともに、便宜的に剥離材ロールR3が形成される箇所に符号「R3」を付している。
<印字済みテープロール及びその周辺>
一方、図2及び図4に示すように、上記第3収納部4には、上記印字済みテープ150″を順次巻回するための巻芯41を備えた巻き取り機構40が上方から受け入れられる。巻き取り機構40は、印字済みテープ150″の巻回の軸心O2が左右方向となる状態で、上記巻芯41が軸心O2まわりに回転可能に支持されるように収納される。そして、巻き取り機構40が、第3収納部4に収納された状態において、筐体本体2aの内部に設けられた粘着巻き取り用モータM2により不図示のギア機構を介して巻芯41が駆動され、第3収納部4内で所定の回転方向(図2中のB方向)に回転することで、印字済みテープ150″を巻芯41の外周側に巻き取って積層する。これにより、巻芯41の外周側に印字済みテープ150″が順次巻回されることで、印字済みテープロールR2が形成される。
<カッター機構>
また、図2に示すように、テープ搬送方向に沿って印字ヘッド11の下流側でかつ印字済みテープロールR2の上流側に、カッター機構30が設けられている。
カッター機構30は、詳細な図示を省略するが、可動刃と、可動刃を支持しテープ幅方向(言い替えれば左右方向)に走行可能な走行体とを有している。そして、カッターモータMC(後述の図7参照)の駆動により走行体が走行し可動刃がテープ幅方向に移動することで、上記印字済みテープ150″を幅方向に切断する。
<テープ印刷装置の動作の概略>
次に、上記構成のテープ印刷装置1の動作の概略について説明する。
すなわち、上記第1所定位置13にテープカートリッジTKが装着されると、筐体本体2aの後方側に位置する第1収納部3に被印字テープロールR1が収納され、筐体本体2aの前方側に位置する第2収納部5に剥離材ロールR3を形成する軸心O3側が収納される。また、筐体本体2aの前方側に位置する第3収納部4には、印字済みテープロールR2を形成するための巻き取り機構40が収納される。
この状態で、ユーザが、被印字テープ150(この時点ではまだ印刷が始まっていない)から剥離材層151を手動で引き剥がし、基材層153及び粘着剤層152からなるテープの先端を、上記巻き取り機構40の巻芯41に取り付ける。そして、搬送ローラ12が駆動されると、第1収納部3に収納された被印字テープロールR1の回転により繰り出される被印字テープ150が、前方側へ搬送される。そして、搬送される被印字テープ150の被印字層154に対し、印字ヘッド11により所望の印字(上記印字部55)が形成されて、印字済みテープ150′となる。印字形成された印字済みテープ150′は、さらに前方側へ搬送されて引き剥がし部17まで搬送されると、当該引き剥がし部17において剥離材層151が引き剥がされて印字済みテープ150″となる。引き剥がされた剥離材層151は、下方側へ搬送されて第2収納部5へ導入され、当該第2収納部5内において巻回されて剥離材ロールR3が形成される。
一方、剥離材層151が引き剥がされた印字済みテープ150″は、さらに前方側へ搬送されて第3収納部4へ導入され、当該第3収納部4内の巻き取り機構40の巻芯41の外周側に巻回されて印字済みテープロールR2が形成される。その際、搬送方向下流側(すなわち前方側)に設けられたカッター機構30が印字済みテープ150″を切断する。これにより、ユーザの所望のタイミングで、印字済みテープロールR2に巻回されていく印字済みテープ150″を切断し、切断後は印字済みテープロールR2を第3収納部4から取り出すことができる。
なお、このとき、図示による説明を省略するが、被印字テープロールR1に、非粘着テープ(上記粘着剤層152及び剥離材層151のないもの)が巻回されていても良い。この場合においても、第1収納部3には、テープカートリッジTKの装着によって、非粘着テープが巻回された被印字テープロールR1が上方から受け入れられ、非粘着テープの巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、非粘着テープを繰り出す。
またこのとき、上記非粘着テープ(又は上記被印字テープ150でもよい)の搬送経路を、印字済みテープロールR2へ向かう側と排出口(図示省略)へ向かう側との相互間で切り替える、シュート15(図2参照)が配されていても良い。すなわち、切替レバー(図示省略)によるシュート15の切替操作でテープ経路を切り替えることで、印字形成後の非粘着テープ(又は印字済みテープ150″)を後述のように第3収納部4内において巻回することなく、筐体2の例えば第2開閉カバー8b側に設けた排出口(図示省略)から、そのまま筐体2外部へ排出するようにしても良い。
<制御系>
次に、図7を用いて、テープ印刷装置1の制御系について説明する。図7において、テープ印刷装置1には、所定の演算を行う演算部を構成するCPU212が備えられている。CPU212は、RAM213及びROM214に接続されている。CPU212は、RAM213の一時記憶機能を利用しつつROM214に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それによってテープ印刷装置1全体の制御を行う。
また、CPU212は、上記搬送ローラ12を駆動する上記搬送用モータM1の駆動制御を行うモータ駆動回路218と、上記巻き取り機構40の巻芯41を駆動する上記粘着巻取用モータM2の駆動制御を行うモータ駆動回路219と、上記剥離材ロールR3を駆動する上記剥離紙巻取用モータM3の駆動制御を行うモータ駆動回路220と、上記印字ヘッド11の発熱素子(図示省略)の通電制御を行う印字ヘッド制御回路221(パルス信号生成手段に相当)と、上記可動刃を備えた走行体を走行させるカッターモータMCの駆動制御を行うモータ駆動回路222と、適宜の表示を行う表示部215と、ユーザが適宜に操作入力可能な操作部216と、印字ヘッド11の温度を検出するヘッド温度センサ223(温度検出手段に相当)に接続されている。また、CPU212は、この例では、外部端末としてのPC217に接続されるが、テープ印刷装置1が(いわゆるスタンドアローンタイプで)単独で動作する場合には、接続されなくてもよい。
ROM214には、所定の制御処理を実行するための制御プログラム(後述する図20のフローの処理を実行するプログラムを含む)が記憶されている。RAM213には、例えば上記操作部216(又はPC217)での操作者の操作に対応して生成された印字データ(後述のステップS20参照)を、上記被印字層154の所定の印字領域に印字するためのドットパターンデータ(=1つの単位印字データに相当。詳細は後述)に展開して記憶する、イメージバッファ213aが備えられている。CPU212は、上記制御プログラムに基づき、搬送ローラ12により被印字テープ150を繰り出しつつ、イメージバッファ213aに記憶された上記ドットパターンデータに対応した1つのイメージ(=単位印字イメージ)を、印字ヘッド11によって被印字テープ150に対し繰り返して印刷する(詳細は後述)。
<実施形態の特徴>
以上において、本実施形態の特徴は、上記印字データから展開されたドットパターンデータに基づいて上記1つのイメージが形成されるときの、印字ヘッド11の上記発熱素子に対する予熱の態様を可変に設定する処理にある。以下、その詳細を順を追って説明する。
<印字データ処理の概要>
まず、本実施形態における、(操作者の操作に対応して生成された)上記印字データの処理の流れについて説明する。本実施形態のCPU212には、上記イメージバッファ213aと、イメージメモリ213cと、ワークメモリ213bと、が設けられている。
ワークメモリ213bは、前述のように操作部216(又はPC217)での操作者の操作に対応して生成された印字データ(詳細には複数の印字オブジェクトデータ。後述)が記憶される。記憶された印字データは、目的とする印字内容の各部を構成する要素データであり、テキストデータ、画像データ、及び枠線などの、印字オブジェクト(文字列や図像列)ごとに対応して作成されている。
イメージバッファ213aは、被印字テープ150の被印字層154上の印字領域に幾何的に対応して上記の各印字オブジェクトにそれぞれ対応するドットパターンを配置したイメージデータを、書き換え可能に記憶する。
イメージメモリ213cには、当該テープ印刷装置1が印字可能な文字や線図にそれぞれ対応して予め作成された複数種類のドットパターンデータが書き換え不能に記憶されている。
そして、図8に示すように、操作者が当該テープ印刷装置1の操作部216(又はPC217)を操作して被印字テープ150への印字内容を編集した際に、その印字内容が文字列や図像列ごとに分解されてそれぞれ対応する印字オブジェクトデータが生成され、それら複数の印字オブジェクトデータが上記ワークメモリ213bに記憶される。これら印字オブジェクトに対して、CPU212が、イメージメモリ213cのドットパターンを参照しつつイメージ変換処理を行うことでイメージデータが生成され、イメージバッファ213aに記憶される。印字ヘッド11は、このイメージバッファ213aに記憶されているイメージデータを印字ラインデータ毎に逐次出力することで、被印字テープ150の被印字層154上に印字像の形態で印字形成する(上記印字部55)。
イメージバッファ213aに記憶されるイメージデータは、上記印字ヘッド11でそのまま印字出力が可能な印字ラインデータを出力順に並べたドットパターンで構成される電子データである。すなわち、印字ヘッド11の出力単位である印字ラインデータは、被印字テープ150の被印字層154の印字領域に対応させた場合のその搬送方向に直交する方向(以下適宜、単に「直交方向」という)の1ドットラインにおけるドットデータである。
<ドットパターン>
イメージデータを形成する上記ドットパターンの例を図9(a)〜(g)に示す。なお、図9(a)〜(g)に示す例では、説明の便宜のために、ドットパターンが、イメージバッファ213aのうち、1ライン当たりA〜Lの12ドットのドットラインデータを最大16ラインまで配置可能に形成された記憶領域に、展開された場合を例にとって説明する。
図9(a)に示す例では、1つのオンドットを含むドットパターンPaが形成されている。すなわち、ドットパターンPaには、オンドットして、E1ドットが含まれている。
図9(b)に示す例では、10個のオンドットを含むドットパターンPbが形成されている。すなわち、ドットパターンPbには、オンドットして、E1ドット、G1ドット、D2ドット、F2ドット、E3ドット、G3ドット、D4ドット、F4ドット、E5ドット、G5ドット、が含まれている。
図9(c)に示す例では、20個のオンドットを含むドットパターンPcが形成されている。すなわち、ドットパターンPcには、オンドットとして、C1〜D1ドット、G1〜H1ドット、C2〜D2ドット、G2〜H2ドット、E3〜F3ドット、E4〜F4ドット、C5〜D5ドット、G5〜H5ドット、C6〜D6ドット、G6〜H6ドットが含まれている。
図9(d)に示す例では、54個のオンドットを含むドットパターンPdが形成されている。すなわち、ドットパターンPdには、オンドットとして、C1〜F1ドット、I1〜K1ドット、C2〜F2ドット、I2〜K2ドット、C3〜F3ドット、I3〜K3ドット、F4〜H4ドット、F5〜H5ドット、F6〜H6ドット、C7〜F7ドット、I7〜K7ドット、C8〜F8ドット、I8〜K8ドット、C9〜F9ドット、I9〜K9ドット、F10〜H10ドット、F11〜H11ドット、F12〜H12ドットが含まれている。
図9(e)に示す例では、96個のオンドットを含むドットパターンPeが形成されている。すなわち、ドットパターンPeには、オンドットして、A1〜D1ドット、I1〜L1ドット、A2〜D2ドット、I2〜L2ドット、A3〜D3ドット、I3〜L3ドット、A4〜D4ドット、I4〜L4ドット、E5〜H5ドット、E6〜H6ドット、E7〜H7ドット、E8〜H8ドット、A9〜D9ドット、I9〜L9ドット、A10〜D10ドット、I10〜L10ドット、A11〜D11ドット、I11〜L11ドット、A12〜D12ドット、I12〜L12ドット、E13〜H13ドット、E14〜H14ドット、E15〜H15ドット、E16〜H16ドットが含まれている。
図9(f)に示す例では、12個のオンドットを含むドットパターンPfが形成されている。すなわち、ドットパターンPfには、オンドットとして、C1〜D1ドット、G1〜H1ドット、E3〜F3ドット、C5〜D5ドット、G5〜H5ドット、E7〜F7ドットが含まれている。
図9(g)に示す例では、10個のオンドットを含むドットパターンPgが形成されている。すなわち、ドットパターンPgには、オンドットして、C1ドット、G1ドット、C2ドット、G2ドット、E3ドット、E4ドット、C5ドット、G5ドット、C6ドット、G6ドットが含まれている。
<各ONドットに対する駆動パルスの出力>
本実施形態では、印字ヘッド制御回路221から、ドットパターンに含まれる各オンドットに対応する印字ヘッド11の発熱素子に対し、駆動パルスが出力され、当該発熱素子が発熱することによって上記ドットパターンに対応した印字を行う。すなわち、発熱素子からは、各オンドットごとに、例えば図10(a)に示すように1つの主パルスm(パルス信号に相当)と1つの副パルスs(パルス信号に相当)からなる上記駆動パルスが出力される。なお、図10(a)において、横軸は時間、縦軸は電圧値(又は電流値)を示している。主パルスmは、比較的長い時間幅を有しており、投入するエネルギーが比較的大きい。副パルスsは、比較的短い時間幅を有しており、投入するエネルギーが比較的小さい。なお、図10(b)及び図10(c)については、後述する。
<基本パルス出力パターン>
上記図9(a)〜(g)に示される各ドットパターンにおける各オンドットに対し、(上記主パルスm及び副パルスsを備えた)駆動パルスが出力されるときの、基本的なパルス出力パターン(以下適宜、「基本パルス出力パターン」という)を、概念的に図11に示す。
図11(a)は、上記図9(a)のドットパターンPaを形成するために印字ヘッド11の発熱素子に出力される上記駆動パルスの出力パターンを示している。図示のように、この例では、上記ドットパターンPaのオンドットである上記E1ドットに対し、主パルスm及び副パルスsが出力される。
図11(b)は、上記図9(b)のドットパターンPbを形成するために印字ヘッド11の発熱素子に出力される上記駆動パルスの出力パターンを示している。図示のように、この例では、上記ドットパターンPbのオンドットである、E1ドット、G1ドット、D2ドット、F2ドット、E3ドット、G3ドット、D4ドット、F4ドット、E5ドット、G5ドットに対し、主パルスm及び副パルスsが出力される。
図11(c)は、上記図9(c)のドットパターンPcを形成するために印字ヘッド11の発熱素子に出力される上記駆動パルスの出力パターンを示している。図示のように、この例では、上記ドットパターンPcのオンドットである、C1〜D1ドット、G1〜H1ドット、C2〜D2ドット、G2〜H2ドット、E3〜F3ドット、E4〜F4ドット、C5〜D5ドット、G5〜H5ドット、C6〜D6ドット、G6〜H6ドットに対し、主パルスm及び副パルスsが出力される。
図11(d)は、上記図9(d)のドットパターンPdを形成するために印字ヘッド11の発熱素子に出力される上記駆動パルスの出力パターンを示している。図示のように、この例では、上記ドットパターンPdのオンドットである、C1〜F1ドット、I1〜K1ドット、C2〜F2ドット、I2〜K2ドット、C3〜F3ドット、I3〜K3ドット、F4〜H4ドット、F5〜H5ドット、F6〜H6ドット、C7〜F7ドット、I7〜K7ドット、C8〜F8ドット、I8〜K8ドット、C9〜F9ドット、I9〜K9ドット、F10〜H10ドット、F11〜H11ドット、F12〜H12ドットに対し、主パルスm及び副パルスsが出力される。
図11(e)は、上記図9(e)のドットパターンPeを形成するために印字ヘッド11の発熱素子に出力される上記駆動パルスの出力パターンを示している。図示のように、この例では、上記ドットパターンPeのオンドットである、A1〜D1ドット、I1〜L1ドット、A2〜D2ドット、I2〜L2ドット、A3〜D3ドット、I3〜L3ドット、A4〜D4ドット、I4〜L4ドット、E5〜H5ドット、E6〜H6ドット、E7〜H7ドット、E8〜H8ドット、A9〜D9ドット、I9〜L9ドット、A10〜D10ドット、I10〜L10ドット、A11〜D11ドット、I11〜L11ドット、A12〜D12ドット、I12〜L12ドット、E13〜H13ドット、E14〜H14ドット、E15〜H15ドット、E16〜H16ドットに対し、主パルスm及び副パルスsが出力される。
図11(f)は、上記図9(f)のドットパターンPfを形成するために印字ヘッド11の発熱素子に出力される上記駆動パルスの出力パターンを示している。図示のように、この例では、上記ドットパターンPfのオンドットである、C1〜D1ドット、G1〜H1ドット、E3〜F3ドット、C5〜D5ドット、G5〜H5ドット、E7〜F7ドットに対し、主パルスm及び副パルスsが出力される。
図11(g)は、上記図9(g)のドットパターンPgを形成するために印字ヘッド11の発熱素子に出力される上記駆動パルスの出力パターンを示している。図示のように、この例では、上記ドットパターンPgのオンドットである、C1ドット、G1ドット、C2ドット、G2ドット、E3ドット、E4ドット、C5ドット、G5ドット、C6ドット、G6ドットに対し、主パルスm及び副パルスsが出力される。
<蓄熱処理の概略>
ここで、上記図11(a)〜(g)に示したような基本パルス出力パターンによる駆動パルスの出力を想定したとき、以下の懸念が生じる場合がある。すなわち、主パルスmの出力がある複数のドットがテープ搬送方向(図示左右方向)に沿って連続して存在した場合、先行するドットへの主パルスmの出力タイミング(駆動タイミング)で生じた熱が、後行するドットへの主パルスmの出力タイミングでも残存する(蓄熱している)結果、当該後行のドットに対する主パルスmの出力タイミングで当該発熱素子の発熱が過剰になり、過発色による印字の潰れ等が起こりやすくなる。そこで、本実施形態では、この発熱素子の蓄熱による弊害を回避するために、いわゆる蓄熱処理(履歴処理ともいう)が行われる。
本実施形態における蓄熱処理では、ドットパターンにおいてオンドットが搬送方向に2つ以上隣接して連続する場合に、その連続するときの2番目以降のオンドットについては、副パルスsを省略して主パルスmのみからなる駆動パルスが出力される(上記図10(c)参照)。これにより、上記2番目以降のドットの出力タイミングにおける当該発熱素子の発熱が低減され、上記蓄熱が抑制される。但し、上記2番目以降のオンドットであっても、当該ドットに対し上記直交方向に隣接するオンドットがない場合は、当該隣接するドット部位に対して熱が逃散可能であることから上記の例外とされ、すなわち副パルスsの出力は省略されない(主パルスmと副パルスsの両方を含む駆動パルスが出力される)。
<蓄熱処理後出力パターン>
上記図11(a)〜(g)の上記基本パルス出力パターンに対し、上記蓄熱処理を適用した場合の駆動パルスの出力パターン(以下適宜、「蓄熱処理後出力パターン」という)を、概念的に図12に示す。
図12(a)は、上記図11(a)に対応する出力パターンである。この場合、ドットパターンPaにおいて、搬送方向に隣接して連続するオンドットが存在しないので、上記副パルスsの省略はなされない。すなわち、図12(a)は図11(a)と同一のパターンとなる。
図12(b)は、上記図11(b)に対応する出力パターンである。この場合も、ドットパターンPbにおいて、搬送方向に隣接して連続するオンドットが存在しないので、上記副パルスsの省略はなされない。すなわち、図12(b)は図11(b)と同一のパターンとなる。
図12(c)は、上記図11(c)に対応する出力パターンである。この場合、図11(c)のドットパターンPcにおける各オンドットのうち、C1ドットに隣接しているC2ドット、C5ドットに隣接しているC6ドット、D1ドットに隣接しているD2ドット、D5ドットに隣接しているD6ドット、E3ドットに隣接しているE4ドット、E7ドットに隣接しているE8ドット、F3ドットに隣接しているF4ドット、F7ドットに隣接しているF8ドット、G1ドットに隣接しているG2ドット、G5ドットに隣接しているG6ドット、H1ドットに隣接しているH2ドット、H5ドットに隣接しているH6ドット、の出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から(副パルスsが省略された)主パルスmのみからなる駆動パルスが出力される。
図12(d)は、上記図11(d)に対応する出力パターンである。この場合、図11(d)のドットパターンPdにおける各オンドットのうち、C1ドットに連続するC2〜C3ドット、C7ドットに連続するC8〜C9ドット、D1ドットに連続するD2〜D3ドット、D7ドットに連続するD8〜D9ドット、E1ドットに連続するE2〜E3ドット、E7ドットに連続するE8〜E9ドット、F4ドットに連続するF5〜F6ドット、F10ドットに連続するF11〜F12ドット、G4ドットに連続するG5〜G6ドット、G10ドットに連続するG11〜G12ドット、H4ドットに連続するH5〜H6ドット、H10ドットに連続するH11〜H12ドット、I1ドットに連続するI2〜I3ドット、I7ドットに連続するI8〜I9ドット、J1ドットに連続するJ2〜J3ドット、J7ドットに連続するJ8〜J9ドット、K1ドットに連続するK2〜K3ドット、K7ドットに連続するK8〜K9ドットの出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から(副パルスsが省略された)主パルスmのみからなる駆動パルスが出力される。
図12(e)は、上記図11(e)に対応する出力パターンである。この場合、図11(e)のドットパターンPeにおける各オンドットのうち、A1ドットに連続するA2〜A4ドット、A9ドットに連続するA10〜A12ドット、B1ドットに連続するB2〜B4ドット、B9ドットに連続するB10〜B12ドット、C1ドットに連続するC2〜C4ドット、C9ドットに連続するC10〜C12ドット、D1ドットに連続するD2〜D4ドット、D9ドットに連続するD10〜D12ドット、E5ドットに連続するE6〜E8ドット、E13ドットに連続するE14〜E16ドット、F5ドットに連続するF6〜F8ドット、F13ドットに連続するF14〜F16ドット、G5ドットに連続するG6〜G8ドット、G13ドットに連続するG14〜G16ドット、H5ドットに連続するH6〜H8ドット、H13ドットに連続するH14〜H16ドット、I1ドットに連続するI2〜I4ドット、I9ドットに連続するI10〜I12ドット、J1ドットに連続するJ2〜J4ドット、J9ドットに連続するJ10〜J12ドット、K1ドットに連続するK2〜K4ドット、K9ドットに連続するK10〜K12ドット、L1ドットに連続するL2〜L4ドット、L9ドットに連続するL10〜L12ドットの出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から(副パルスsが省略された)主パルスmのみからなる駆動パルスが出力される。
図12(f)は、上記図11(f)に対応する出力パターンである。この場合、ドットパターンPfにおいて、搬送方向に隣接して連続するオンドットが存在しないので、上記副パルスsの省略はなされない。すなわち、図12(f)は図11(f)と同一のパターンとなる。
図12(g)、上記図11(g)に対応する出力パターンである。この場合、ドットパターンPgにおけるオンドットである、C1〜C2ドット、C5〜C6ドット、E3〜E4ドット、G1〜G2ドット、G5〜G6ドットは、それぞれ搬送方向に隣接して2ドットが連続しているが、いずれのドットも、上記直交方向に隣接するオンドットがないことから上記例外に該当し、副パルスsの省略はない。
上記のような蓄熱処理(履歴処理)を実行することにより、印字ヘッド11の発熱素子の蓄熱による熱履歴を緩和して、印字の潰れ等が起こりにくくすることができる。
<予熱処理の概略>
ここで、上記図12(a)〜(g)に示したような蓄熱処理後出力パターン(又は上記図11(a)〜(g)の上記基本パルス出力パターンでもよい)による駆動パルスの出力を想定したとき、以下の懸念が生じる場合がある。すなわち、特定の1つのオンドットに対して駆動パルスを出力する際、当該特定のオンドットに対する駆動パルスの出力では発熱素子の発熱が十分でなく、印字のかすれ等が起こりやすくなることがある。そこで、本実施形態では、これを防ぐために、いわゆる予熱処理が行われる。
予熱処理では、ドットパターンにおいて、特定の1つのオンドットに隣接して搬送方向に先行するNドット(この例ではN=3。但しNは正の整数の他の値でもよい。詳細は後述)以内に主パルスm及び副パルスsの両方が揃って生成されていない(主パルスmも副パルスもない。あるいは主パルスmのみ生成)ドットがあった場合、先立って当該発熱素子の予熱を実行するために、上記3ドット以内の各ドット(予熱対象ドット)に対し、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される(上記図10(b)参照)。但し、予熱対象ドット範囲内(上記3ドット以内)に主パルスm及び副パルスsを備えた本来のオンドットがある場合には当該ドットは予熱処理の対象から除外され、その本来のオンドットに対する駆動パルス(主パルスm及び副パルスs)がそのまま出力される。
<予熱処理後パターン>
上記図12(a)〜(g)の上記蓄熱処理後出力パターンに対し、上記予熱処理を適用した場合の駆動パルスの出力パターン(以下適宜、「予熱処理後出力パターン」という)を、概念的に図13に示す。なお、上記N=3の場合を例示している。
図13(a)は、上記図12(a)に対応する出力パターンである。この場合、図12(a)のドットパターンPaのオンドットであるE1ドットに隣接して搬送方向に先行する3ドット、すなわち、E−2〜E0ドットの出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。
図13(b)は、上記図12(b)に対応する出力パターンである。この場合、図12(b)のドットパターンPbの各オンドットに隣接して搬送方向に先行する3ドット以内、すなわち、D2ドットに先行するD−1〜D1ドット、D4ドットに先行するD1,D3ドット、E1ドットに先行するE−2〜E0ドット、E3ドットに先行するE0,E2ドット、E5ドットに先行するE2,E4ドット、F2ドットに先行するF−1〜F1ドット、F4ドットに先行するF1,F3ドット、G1ドットに先行するG−2〜G0ドット、G3ドットに先行するG0,G2ドット、G5ドットに対するG2,G4ドット、の出力タイミング(注:予熱対象として重複する場合はいずれか1つの対象として適用。以下同様)において、対応する発熱素子から、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。
図13(c)は、上記図12(c)に対応する出力パターンである。この場合、図12(c)のドットパターンPcの各オンドットに隣接して搬送方向に先行する3ドット以内、すなわち、C1ドットに先行するC−2〜C0ドット、C5ドットに先行するC2〜C4ドット、D1ドットに先行するD−2〜D0ドット、D5ドットに先行するD2〜D4ドット、E3ドットに先行するE0〜E2ドット、E7ドットに先行するE4〜E6ドット、F3ドットに先行するF0〜F2ドット、F7ドットに先行するF4〜F6ドット、G1ドットに先行するG−2〜G0ドット、G5ドットに先行するG2〜G4ドット、H1ドットに先行するH−2〜H0ドット、H5ドットに先行するH2〜H4ドット、の出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。
図13(d)は、上記図12(d)に対応する出力パターンである。この場合、図12(d)のドットパターンPdの各オンドットに隣接して搬送方向に先行する3ドット以内、すなわち、C1ドットに先行するC−2〜C0ドット、C7ドットに先行するC4ドット〜C6ドット、D1ドットに先行するD−2〜D0ドット、D7ドットに先行するD4〜D6ドット、E1ドットに先行するE−2〜E0ドット、E7ドットに先行するE4〜E6ドット、F4ドットに先行するF1〜F3ドット、F10ドットに先行するF7〜F9ドット、G4ドットに先行するG1〜G3ドット、G10ドットに先行するG7〜G9ドット、H4ドットに先行するH1〜H3ドット、H10ドットに先行するH7〜H9ドット、I1ドットに先行するI−2〜I0ドット、I7ドットに先行するI4〜I6ドット、J1ドットに先行するJ−2〜J0ドット、J7ドットに先行するJ4〜J6ドット、K1ドットに先行するK−2〜K0ドット、K7ドットに先行するK4〜K6ドット、の出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。
図13(e)は、上記図12(e)に対応する出力パターンである。この場合、図12(e)のドットパターンPeの各オンドットに隣接して搬送方向に先行する3ドット以内、すなわち、A1ドットに先行するA−2〜A0ドット、A9ドットに先行するA6〜A8ドット、B1ドットに先行するB−2〜B0ドット、B9ドットに先行するB6〜B8ドット、C1ドットに先行するC−2〜C0ドット、C9ドットに先行するC6〜C8ドット、D1ドットに先行するD−2〜D0ドット、D9ドットに先行するD6〜D8ドット、E5ドットに先行するE2〜E4ドット、E13ドットに先行するE10〜E12ドット、F5ドットに先行するF2〜F4ドット、F13ドットに先行するF10〜F12ドット、G5ドットに先行するG2〜G4ドット、G13ドットに先行するG10〜G12ドット、H5ドットに先行するH2〜H4ドット、H13ドットに先行するH10〜H12ドット、I1ドットに先行するI−2〜I0ドット、I9ドットに先行するI6〜I8ドット、J1ドットに先行するJ−2〜J0ドット、J9ドットに先行するJ6〜J8ドット、K1ドットに先行するK−2〜K0ドット、K9ドットに先行するK6〜K8ドット、L1ドットに先行するL−2〜L0ドット、L9ドットに先行するL6〜L8ドット、の出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。
図13(f)は、上記図12(f)に対応する出力パターンである。この場合、図12(f)のドットパターンPfの各オンドットに隣接して搬送方向に先行する3ドット以内、すなわち、C1ドットに先行するC−2〜C0ドット、C5ドットに先行するC2〜C4ドット、D1ドットに先行するD−2〜D0ドット、D5ドットに先行するD2〜D4ドット、E3ドットに先行するE0〜E2ドット、E7ドットに先行するE4〜E6ドット、F3ドットに先行するF0〜F2ドット、F7ドットに先行するF4〜F6ドット、G1ドットに先行するG−2〜G0ドット、G5ドットに先行するG2〜G4ドット、H1ドットに先行するH−2〜H0ドット、H5ドットに先行するH2〜H4ドット、の出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。
図13(g)は、上記図12(g)に対応する出力パターンである。この場合、図12(g)のドットパターンPgの各オンドットに隣接して搬送方向に先行する3ドット以内、すなわち、C1ドットに先行するC−2ドット〜C0ドット、C5ドットに先行するC3,C4ドット、E3ドットに先行するE0〜E2ドット、G1ドットに先行するG−2〜G0ドット、G5ドットに先行するG3,G4ドット、の出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。
<予熱抑制処理の概略>
ところで、上記図13(a)〜(g)に示したような予熱処理後出力パターンを想定したとき、以下の懸念が生じる場合がある。すなわち、特定のオンドットから先行するNドット(上記の例ではN=3)以内に主パルスmが生成されない場合であっても、ドットパターンにおける当該オンドットの周囲におけるパルス生成状況によっては、当該ドットに対応した駆動タイミングで既に発熱素子がある程度高温となっており、上記予熱処理による副パルスsの出力を行うと予熱過剰となる場合がある。このような予熱過剰が生じた場合には、本来発色を実行したいドット以外の、本来非発色としたいドットにおいて、不要な発色が生じるおそれがある。
<予熱過剰となる例〜第1ドット>
上記予熱過剰となる一例としては、まず、上記ドットパターンにおいて、予熱対象ドットから搬送方向に先行する数ドット以内のドットに対し、主パルスmが生成される場合である。この場合には、その主パルスmの出力タイミングでの発熱素子の発熱の余熱によって、その後の上記予熱対象ドットに対応した出力タイミングでも発熱素子がある程度の高温を維持している。このような場合に上記副パルスsの生成を行うと、予熱過剰が生じ、(本来発色を実行したいドット以外の)本来非発色としたいドットにおいて、不要な発色が生じるおそれがある。したがって、予熱のために改めて副パルスsの生成は必要ない。
そこで、本実施形態においてはまず、上記に対応し、上記予熱対象ドットの中に、当該ドットに隣接して搬送方向に先行するMドット以内のドットであって、かつ主パルスmが生成されるドット(以下適宜、「第1ドット」という)が含まれる場合は、その第1ドットでの上記副パルスsの生成が中止される(以下適宜、「第1中止処理」という)。なお、この例ではM=3であるが、Mは正の整数の他の値であってもよい(詳細は後述)。この第1中止処理により、第1ドットにおける予熱過剰による不要な発色が生じるのを防止できるので、印字品質を向上することができる。
<予熱過剰となる別の例〜第2ドット>
上記予熱過剰となる別の例としては、上記予熱対象ドットに上記直交方向に隣接するドットにおいて、主パルスmが生成されている場合である。この場合には、その隣接ドットでの主パルスmによる発熱が上記直交方向へ熱伝達されて、当該予熱対象ドットにおける副パルスsによる予熱と同等の効果を得られることから、予熱のために改めて上記副パルスsの生成を行う必要はない。
そこで、本実施形態においては、上記に対応し、上記予熱対象ドットの中に、上記直交方向に隣接するドットで主パルスmが生成されるドット(以下適宜、「第2ドット」という)が含まれる場合は、その第2ドットでの上記副パルスsの生成が中止される(以下適宜、「第2中止処理」という)。この第2中止処理により、第2ドットにおける予熱過剰による不要な発色が生じるのを防止し、確実に印字品質を向上することができる。
<予熱過剰となるさらに別の例〜第3ドット>
上記予熱過剰となるさらに他の例としては、上記ドットパターンにおいて、予熱対象ドット自体に対し主パルスmが生成される場合である。この場合には、その主パルスmによる発熱により十分に発熱素子が加熱されているので、予熱のために改めて副パルスsの生成は必要ない。
そこで、本実施形態においては、上記に対応し、上記予熱対象ドットの中に、当該ドットにおいて主パルスmが生成されるドット(以下適宜、「第3ドット」という)が含まれる場合は、その第3ドットでの上記副パルスsの生成が中止される(以下適宜、「第3中止処理」という)。この第3中止処理により、第3ドットにおける予熱過剰による不要な発色が生じるのを防止し、さらに確実に印字品質を向上することができる。
なお、上記第1〜第3ドットのうち複数に重複して該当する場合には、いずれかを適用して副パルスsの生成を中止すれば足りる。以下の記述では、適宜、第1〜第3ドットのうち若い番号のドットを優先的に適用して副パルスsの生成を中止するものとして、説明を行う。すなわち例えば、第2ドットにも第3ドットにも該当する場合には、第2ドットに該当するものとして「第2中止処理によって副パルスsの生成が中止される」のように、適宜説明する。
<予熱抑制処理後パターン>
上記図13(a)〜(g)の上記予熱処理後出力パターンに対し、上記の第1中止処理、第2中止処理、第3中止処理(以下適宜、これらを総称して「予熱抑制処理」という)を適用した場合の駆動パルスの出力パターン(以下適宜、「予熱抑制処理後出力パターン」という)を、概念的に図14に示す。なお、上記M=3の場合を例示している。
図14(a)は、上記図13(a)に対応する出力パターンである。この場合、図13(a)のドットパターンPaにおける上記予熱対象ドットであるE−2〜E0ドットの中に、上記第1ドット、第2ドット、第3ドットに該当するドットがない。したがって、上記第1中止処理、第2中止処理、第3中止処理による副パルスsの生成中止はない。すなわち、図14(a)は図13(a)と同一のパターンとなる。
図14(b)は、上記図13(b)に対応する出力パターンである。この場合、図13(b)のドットパターンPbにおける上記予熱対象ドットのうち、D2ドットに関して上記第2ドットに該当するD1ドット、D4ドットに関して上記第1ドットに該当するD3ドット、E3ドットに関して上記第1ドットに該当するE2ドット、E5ドットに関して上記第1ドットに該当するE4ドット、F2ドットに関して上記第2ドットに該当するF1ドット、F4ドットに関して上記第1ドットに該当するF3ドット、G3ドットに関して上記第1ドットに該当するG2ドット、G5ドットに関して上記第1ドットに該当するG4ドット、のそれぞれにおいて、副パルスsの出力が省略される。
図14(c)は、上記図13(c)に対応する出力パターンである。この場合、図13(c)のドットパターンPcにおける上記予熱対象ドットのうち、C5ドットに関して上記第1ドットに該当するC2ドット(上記第3ドットにも該当)、C3ドット、C4ドット、D5ドットに関して上記第1ドットに該当するD2ドット(上記第3ドットにも該当)、D3ドット、D4ドット、E3ドットに関して上記第2ドットに該当するE1ドット、E2ドット、E7ドットに関して上記第1ドットに該当するE4ドット、E5ドット、E6ドット、F3ドットに関して上記第2ドットに該当するF1ドット、F2ドット、F7ドットに関して上記第1ドットに該当するF4ドット、F5ドット、F6ドット、G5ドットに関して上記第1ドットに該当するG2ドット(上記第3ドットにも該当)、G3ドット、G4ドット、H5ドットに関して上記第1ドットに該当するH2ドット(上記第3ドットにも該当)、H3ドット、H4ドット、のそれぞれにおいて、副パルスsの出力が省略される。
図14(d)は、上記図13(d)に対応する出力パターンである。この場合、図13(d)のドットパターンPdにおける上記予熱対象ドットのうち、C7ドットに関して上記第1ドットに該当するC4ドット、C5ドット、C6ドット、D7ドットに関して上記第1ドットに該当するD4ドット、D5ドット、D6ドット、E7ドットに関して上記第1ドットに該当するE4ドット、E5ドット、E6ドット、F4ドットに関して上記第2ドットに該当するF1ドット、F2ドット、F3ドット、F10ドットに関して上記第1ドットに該当するF7ドット、F8ドット、F9ドット、G10ドットに関して上記第1ドットに該当するG7ドット、G8ドット、G9ドット、H4ドットに関して上記第2ドットに該当するH1ドット、H2ドット、H3ドット、H10ドットに関して上記第1ドットに該当するH7ドット、H8ドット、H9ドット、I7ドットに関して上記第1ドットに該当するI4ドット、I5ドット、I6ドット、J7ドットに関して上記第1ドットに該当するJ4ドット、J5ドット、J6ドット、K7ドットに関して上記第1ドットに該当するK4ドット、K5ドット、K6ドット、のそれぞれにおいて、副パルスsの出力が省略される。
図14(e)は、上記図13(e)に対応する出力パターンである。この場合、図13(e)のドットパターンPeにおける上記予熱対象ドットのうち、A9ドットに関して上記第1ドットに該当するA6ドット、A7ドット、B9ドットに関して上記第1ドットに該当するB6ドット、B7ドット、C9ドットに関して上記第1ドットに該当するC6ドット、C7ドット、D9ドットに関して上記第1ドットに該当するD6ドット、D7ドット、及び上記第2ドットに該当するD8ドット、E5ドットに関して上記第2ドットに該当するE2ドット、E3ドット、E4ドット、E13ドットに関して上記第2ドットに該当するE10ドット、E11ドット、及び上記第2ドットに該当するE12ドット、F13ドットに関して上記第1ドットに該当するF10ドット、F11ドット、G13ドットに関して上記第1ドットに該当するG10ドット、G11ドット、H5ドットに関して上記第2ドットに該当するH2ドット、H3ドット、H4ドット、H13ドットに関して上記第1ドットに該当するH10ドット、H11ドット、及び上記第2ドットに該当するH12ドット、I9ドットに関して上記第1ドットに該当するI6ドット、I7ドット、及び上記第2ドットに該当するI8ドット、J9ドットに関して上記第1ドットに該当するJ6ドット、J7ドット、K9ドットに関して上記第1ドットに該当するK6ドット、K7ドット、L9ドットに関して上記第1ドットに該当するL6ドット、L7ドット、のそれぞれにおいて、副パルスsの出力が省略される。
図14(f)は、上記図13(f)に対応する出力パターンである。この場合、図13(f)のドットパターンPfにおける上記予熱対象ドットのうち、C5ドットに関して上記第1ドットに該当するC2ドット、C3ドット、C4ドット、D5ドットに関して上記第1ドットに該当するD2ドット、D3ドット、D4ドット、E3ドットに関して上記第2ドットに該当するE4ドット、E7ドットに関して上記第1ドットに該当するE4ドット、E5ドット、E6ドット、F3ドットに関して上記第2ドットに該当するF1ドット、F7ドットに関して上記第1ドットに該当するF4ドット、F5ドット、F6ドット、G5ドットに関して上記第1ドットに該当するG2ドット、G3ドット、G4ドット、H5ドットに関して上記第1ドットに該当するH2ドット、H3ドット、H4ドット、のそれぞれにおいて、副パルスsの出力が省略される。
図14(g)は、上記図13(g)に対応する出力パターンである。この場合、図13(g)のドットパターンPgにおける上記予熱対象ドットのうち、C5ドットに関して上記第1ドットに該当するC3ドット、C4ドット、G5ドットに関して上記第1ドットに該当するG3ドット、G4ドット、のそれぞれにおいて、副パルスsの出力が省略される。
<本実施形態による処理の第1の特徴>
ところで、上記予熱処理においては、上記Nの値を固定値(上述の例ではN=3)としたが、上記Nの値をどれくらいに設定するのが適正であるかは、例えば印字ヘッド11の温度によって異なる。例えば、印字ヘッド11の温度が低い場合、Nの値が小さすぎると、印字ヘッド11が十分に温まりきらずに予熱不足となり、カスレが生じる恐れがあることから、Nの値を比較的大きな値とする必要がある。逆に印字ヘッド11の温度が高い場合、Nの値が大きすぎると予熱過剰となり、蓄熱、尾引き、ツブレ、誤転写等が生じる恐れがあることから、Nの値を比較的小さくする必要がある。
また、上記予熱処理においては、上記Mの値を固定値(上述の例ではM=3)としたが、上記同様、上記Mの値をどれくらいに設定するのが適正であるかについても印字ヘッド11の温度によって異なる。例えば印字ヘッド11の温度が低い場合、Mの値が大きいと予熱不足となる恐れがあることから、Mの値を比較的小さな値とすることが好ましい。逆に印字ヘッド11の温度が高い場合、Mの値が小さいと予熱過剰となる恐れがあることから、Mの値を比較的大きくすることが好ましい。
そこで、本実施形態では、まず第1の特徴として、以上の予熱処理の基本手法において、印字ヘッド11の予熱過剰や予熱不足を防止するために、印字ヘッド11の温度に応じて(被印字感度が異なる被印字テープ150の種類に応じた処理については後述する)上記Nの値を可変に制御する(以下適宜、「予熱可変処理」という)とともに、上記Mの値も可変に制御する。
<N、Mの値の設定例>
上記N、Mの値を印字ヘッド11の温度に応じて設定するための設定テーブルの一例を図15に示す。図15に示すように、例えば被印字テープ150がOPP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)である場合には、Nの値を、概ね、印字ヘッド11のヘッド温度Tが高くなるほど減少させる挙動とする。具体的には、T=0〜10℃(ヘッド温度Tが0℃以上10℃未満の範囲にあることを略記してこのように記す。以下、同様)及び10〜20℃でN=5、T=20〜30℃及び30〜40℃でN=4、T=40〜50℃、50〜60℃、60〜70℃、70〜80℃でN=3としている。
また、Mの値については、概ね、ヘッド温度Tが高くなるほどと増加させる挙動とする。具体的には、T=0〜10℃及び10〜20℃でM=1、T=20〜30℃でM=2、T=30〜40℃、40〜50℃、50〜60℃、60℃〜70℃、70〜80℃でM=3とする。
なお、被印字テープ150が布の場合については、後述する。
<Nの可変制御の結果の一例>
前述の上記図12の上記蓄熱処理後出力パターンに対し、本実施形態による上記予熱可変処理を適用した場合の駆動パルスの出力パターン(以下適宜、「予熱可変処理後出力パターン」という)の一例を、概念的に図16(a)及び図16(b)に示す。なお、被印字テープ150は上記OPPである。これら図16(a)及び図16(b)は、上記図12(e)のドットパターンPeに対応する出力パターンを示している。
まず、図16(b)は、ヘッド温度Tが50〜60℃のときにおける、上記図12(e)のドットパターンPeに対し上記Nの可変制御を適用した場合の出力パターンである。図15に示したように、OPPの被印字テープ150においてヘッド温度Tが50〜60℃の場合は、N=3に設定される。したがって、図16(b)に示す予熱可変処理後出力パターンは、上記図13(e)と同一パターンとなっている。
上述したように、本実施形態ではヘッド温度Tに応じてNが可変に制御される。ヘッド温度Tが50〜60℃でN=3であった上記図16(b)のパターンに対し、図16(a)は、ヘッド温度Tが0〜10℃のときの例を示している。この場合、図15に示すように、Nの値が増加してN=5となる。これにより、図12(e)のドットパターンPeの各オンドットに隣接して搬送方向に先行する5ドット以内の出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。
この結果、N=3であった図16(b)に比べ、A−4〜A−3,A4〜A5ドット、B−4〜B−3,B4〜B5ドット、C−4〜C−3,C4〜C5ドット、D−4〜D−3,D4〜D5ドット、E−0〜E−1,E8〜E9ドット、F−0〜F−1,F8〜F9ドット、G−0〜G−1,G8〜G9ドット、H−0〜H−1,H8〜H9ドット、I−4〜I−3,I4〜I5ドット、J−4〜J−3,J4〜J5ドット、K−4〜K−3,K4〜K5ドット、L−4〜L−3,L4〜L5ドット、の出力タイミングが追加される形で、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。すなわち、ヘッド温度Tが0〜10℃の低温時にN=5とすることにより、ヘッド温度Tが50〜60℃の高温時のN=3のパターンに比べて、出力する副パルスsの数を増加している。これにより、被印字テープ150に対する印字ヘッド11の低温時の予熱不足を防止している。
なお、上記以外の出力パターンの図示を省略するが、本実施形態では、ヘッド温度Tに応じてNを可変に設定する(前述の図15に示す例ではN=3〜5)ことで、予熱可変処理後出力パターンが変化する。
<Mの可変制御の結果の一例>
上記図16(a)及び図16(b)の上記予熱可変処理後出力パターンに対し、本実施形態によるMを可変に設定した上記第1中止処理、上記第2中止処理、及び上記第3中止処理(以下これら3つを総称し、適宜「予熱可変抑制処理」という)を適用した場合の駆動パルスの出力パターン(以下適宜、「予熱可変抑制処理後出力パターン」という)を、概念的に図17(a)及び図17(b)に示す。
まず、図17(b)は、ヘッド温度Tが50〜60℃のときにおける、上記図16(b)のドットパターンPeに対し上記予熱可変抑制処理を適用した場合の出力パターンである。図15に示したように、OPPの被印字テープ150においてヘッド温度Tが50〜60℃の場合は、M=3に設定される。したがって、(前述のように図16(b)に示す予熱可変処理後出力パターンが図13(e)と同一パターンであったことから)図17(b)に示す予熱可変抑制処理後出力パターンは、上記図14(e)と同一パターンとなっている。
上述したように、本実施形態では、上記第1〜第3中止処理のうち、ヘッド温度Tに応じて上記第1中止処理のMが可変に制御される。ヘッド温度Tが50〜60℃でM=3であった上記図17(b)のパターンに対し、図17(a)は、ヘッド温度Tが0〜10℃のときの例を示している。この場合、前述の図15に示すように、Mの値が減少してM=1となる。これにより、上記第1中止処理においては、図16(a)のドットパターンPeにおける上記予熱対象ドット中、当該ドットに隣接して搬送方向に先行する1ドット以内のドットに主パルスmが生成されるドット(第1ドット)についてのみ、そのドットでの副パルスsの出力が中止される。
すなわち、図16(a)のドットパターンPeにおける上記予熱対象ドットのうち、A9ドットに関して上記第1ドットに該当するA4ドット(上記第3ドットにも該当)、A5ドット、B9ドットに関して上記第1ドットに該当するB4ドット(上記第3ドットにも該当)、B5ドット、C9ドットに関して上記第1ドットに該当するC4ドット(上記第3ドットにも該当)、C5ドット、D9ドットに関して上記第1ドットに該当するD4ドット(上記第3ドットにも該当)、D5ドット、及び、上記第2ドットに該当するD6ドット、D7ドット、D8ドット、E5ドットに関して上記第2ドットに該当するE1ドット、E2ドット、E3ドット、E4ドット、E13ドットに関して上記第1ドットに該当するE8ドット、E9ドット、及び、上記第2ドットに該当するE10ドット、E11ドット、E12ドット、F13ドットに関して上記第1ドットに該当するF8、F9ドット、G13ドットに関して上記第1ドットに該当するG8ドット、G9ドット、H5ドットに関して上記第2ドットに該当するH1ドット、H2ドット、H3ドット、H4ドット、H13ドットに関して上記第1ドットに該当するH8ドット、H9ドット、及び、上記第2ドットに該当するH10ドット、H11ドット、H12ドット、I9ドットに関して上記第1ドットに該当するI4ドット(上記第3ドットにも該当)、I5ドット、及び、上記第2ドットに該当するI6ドット、I7ドット、I8ドット、J9ドットに関して上記第1ドットに該当するJ4ドット(上記第3ドットにも該当)、J5ドット、K9ドットに関して上記第1ドットに該当するK4ドット(上記第3ドットにも該当)、K5ドット、L9ドットに関して上記第1ドットに該当するL4ドット(上記第3ドットにも該当)、L5ドット、のそれぞれにおいて、副パルスsの出力が省略される。
上記の結果、M=3であった図17(b)に比べ、A−4〜A−3,A6〜A7ドット、B−4〜B−3,B6〜B7ドット、C−4〜C−3,C6〜C7ドット、D−4〜D−3ドット、E0ドット、F0〜F1,F10〜F11ドット、G0〜G1,G10〜G11ドット、H0ドット、I−4〜I−3ドット、J−4〜J−3,J6〜J7ドット、K−4〜K−3,K6〜K7ドット、L−4〜L−3,L6〜L7ドット、の出力タイミングが追加される形で、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。すなわち、ヘッド温度Tが0〜10℃の低温時にM=1とすることにより、ヘッド温度Tが50〜60℃の高温時のM=5のパターンに比べて、出力する副パルスsの数を増加している。これにより、被印字テープ150に対する印字ヘッド11の低温時の予熱不足を防止している。
なお、上記以外の出力パターンの図示を省略するが、本実施形態では、ヘッド温度Tに応じてMを可変に設定する(前述の図15に示す例ではM=1〜3)ことで、予熱可変抑制処理後出力パターンが変化する。
<本実施形態による処理の第2の特徴>
一方、上記予熱処理において、上記Nの値をどれくらいに設定するのが適正であるかは、被印字テープ150の種類によっても異なる。例えば、被印字感度が低い種類の被印字テープ150の場合、Nの値が小さすぎると印字ヘッド11が十分に温まりきらずに予熱不足となり、カスレが生じる恐れがあることから、Nの値を比較的大きな値とする必要がある。逆に被印字感度が高い種類の被印字テープ150の場合、Nの値が大きすぎると予熱過剰となり、蓄熱、尾引き、ツブレ、誤転写等が生じる恐れがあるがあることから、Nの値を比較的小さくする必要がある。
また、上記同様、上記Mの値をどれくらいに設定するのが適正であるかについても被印字テープ150の種類によって異なる。例えば被印字感度が低い種類の被印字テープ150の場合、上述のように予熱不足となる恐れがあることから、Mの値を比較的小さな値とするのが好ましい。逆に被印字感度が高い種類の被印字テープ150の場合、上述のように予熱過剰となる恐れがあることから、Mの値を比較的大きくすることが好ましい。
そこで、本実施形態では、第2の特徴として、印字ヘッド11の予熱過剰や予熱不足を防止するために、被印字テープ150の種類にも応じて、上記Nの値を可変に制御する上記予熱可変処理を行い、かつ、上記Mの値を可変に制御する。
<N、Mの値の設定例>
図15には、上記N、Mの値を被印字テープ150の種類に応じて(言い替えれば被印字感度に応じて)設定する例も示している。図15では、被印字感度が異なる被印字テープ150の例として、被印字感度が高い上記OPPと、被印字感度が低い布の2種類が示されている。
図15に示すように、被印字テープ150が布の場合、Nの値を、印字ヘッド11のヘッド温度Tが高くなるほど減少させる挙動とするのは上記OPPと同様であるものの、各温度区分における値は、OPPの場合よりも大きな値となっている。具体的には、T=0〜10℃及び10〜20℃でN=7、T=20〜30℃、30〜40℃、40〜50℃でN=6、T=50〜60℃でN=5、T=60〜70℃、70〜80℃でN=4としている。
また、Mの値については、被印字テープ150が布の場合、印字ヘッド11のヘッド温度Tが高くなるほど増加させる挙動とするのは上記OPPと同様であるものの、各温度区分における値は、OPPの場合と同じかそれよりも小さい値となっている。具体的には、T=0〜10℃でM=0、T=10〜20℃及び20〜30℃でM=1、T=30〜40℃、40〜50℃、50〜60℃でM=2、T=60℃〜70℃、70〜80℃でM=3とする。
<Nの可変制御の結果の一例〜布の場合>
上記布の被印字テープ150を用いた場合のNの可変制御について、図16に対応する図18を用いて制御する。図18(a)及び図18(b)は、上記図16(a)及び図16(b)と同様、前述の上記図12の上記蓄熱処理後出力パターンに対し、本実施形態による上記予熱可変処理を適用した場合の駆動パルスの出力パターン(予熱可変処理後出力パターン)の一例を、被印字テープが布の場合について概念的に示した図である。これら図18(a)及び図18(b)は、前述と同様、上記図12(e)のドットパターンPeに対応する出力パターンを示している。
まず、図18(b)は、ヘッド温度Tが50〜60℃のときにおける、上記図12(e)のドットパターンPeに対応する出力パターンである。図15に示したように、布の被印字テープ150においてヘッド温度Tが50〜60℃の場合は、N=5に設定される。すなわち、図12(e)のドットパターンPeの各オンドットに隣接して搬送方向に先行する5ドット以内、すなわち、A1ドットに先行するA−4〜A0ドット、A9ドットに先行するA4〜A8ドット、B1ドットに先行するB−4〜B0ドット、B9ドットに先行するB4〜B8ドット、C1ドットに先行するC−4〜C0ドット、C9ドットに先行するC4〜C8ドット、D1ドットに先行するD−4〜D0ドット、D9ドットに先行するD4〜D8ドット、E5ドットに先行するE0〜E4ドット、E13ドットに先行するE8〜E12ドット、F5ドットに先行するF0〜F4ドット、F13ドットに先行するF8〜F12ドット、G5ドットに先行するG0〜G4ドット、G13ドットに先行するG8〜G12ドット、H5ドットに先行するH0〜H4ドット、H13ドットに先行するH8〜H12ドット、I1ドットに先行するI−4〜I0ドット、I9ドットに先行するI4〜I8ドット、J1ドットに先行するJ−4〜J0ドット、J9ドットに先行するJ4〜J8ドット、K1ドットに先行するK−4〜K0ドット、K9ドットに先行するK4〜K8ドット、L1ドットに先行するL−4〜L0ドット、L9ドットに先行するL4〜L8ドット、の出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。
そして、上記同様、本実施形態ではヘッド温度Tに応じてNが可変に制御されることから、ヘッド温度Tが50〜60℃でN=5であった上記図18(b)のパターンに対し、図18(a)は、ヘッド温度Tが0〜10℃のときの例を示している。この場合、図15に示したように、Nの値が増加してN=7となる。これにより、図12(e)のドットパターンPeの各オンドットに隣接して搬送方向に先行する7ドット以内の出力タイミングにおいて、対応する発熱素子から、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。
この結果、N=5であった図18(b)に比べ、A−6〜A−5ドット、B−6〜B−5ドット、C−6〜C−5ドット、D−6〜D−5ドット、E−2〜E−1ドット、F−2〜F−1ドット、G−2〜G−1ドット、H−2〜H−1ドット、I−6〜I−5ドット、J−6〜J−5ドット、K−6〜K−5ドット、L−6〜L−5ドット、
の出力タイミングが追加される形で、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。すなわち、ヘッド温度Tが0〜10℃の低温時にN=7とすることにより、ヘッド温度Tが50〜60℃の高温時のN=5のパターンに比べて、出力する副パルスsの数を増加している。これにより、被印字テープ150に対する印字ヘッド11の低温時の予熱不足を防止している。
なお、上記以外の出力パターンの図示を省略するが、上記OPPの場合と同様、布の被印字テープ150の場合においても、ヘッド温度Tに応じてNを可変に設定する(前述の図15に示す例ではN=4〜7)ことで、予熱可変処理後出力パターンが変化する。
<Mの可変制御の結果の一例〜布の場合>
上記図18(a)及び図18(b)の上記予熱可変処理後出力パターンに対し、本実施形態によるMを可変に設定した上記第1中止処理、上記第2中止処理、及び上記第3中止処理を適用した場合の予熱可変抑制処理後出力パターンを、概念的に図19(a)及び図19(b)に示す。
まず、図19(b)は、ヘッド温度Tが50〜60℃のときにおける、上記図18(b)のドットパターンPeに対し上記予熱可変抑制処理を適用した場合の出力パターンである。図15に示したように、布の被印字テープ150においてヘッド温度Tが50〜60℃の場合は、M=2に設定される。これにより、上記第1中止処理においては、図18(b)のドットパターンPeにおける上記予熱対象ドット中、当該ドットに隣接して搬送方向に先行する2ドット以内のドットに主パルスmが生成されるドット(第1ドット)について、そのドットでの副パルスsの出力が中止される。
すなわち、図18(b)のドットパターンPeにおける上記予熱対象ドットのうち、A9ドットに関して上記第1ドットに該当するA4ドット(上記第3ドットにも該当)、A5ドット、A6ドット、B9ドットに関して上記第1ドットに該当するB4ドット(上記第3ドットにも該当)、B5ドット、B6ドット、C9ドットに関して上記第1ドットに該当するC4ドット(上記第3ドットにも該当)、C5ドット、C6ドット、D9ドットに関して上記第1ドットに該当するD4ドット(上記第3ドットにも該当)、D5ドット、D6ドット、及び上記第2ドットに該当するD7〜D8ドット、E5ドットに関して上記第2ドットに該当するE1〜E4ドット、E13ドットに関して上記第1ドットに該当するE8〜E10ドット及び上記第2ドットに該当するE11〜E12ドット、F13ドットに関して上記第1ドットに該当するF8〜F10ドット、G13ドットに関して上記第1ドットに該当するG8〜G10ドット、H5ドットに関して上記第2ドットに該当するH1〜H4ドット、H13ドットに関して上記第1ドットに該当するH8〜H10ドット及び上記第2ドットに該当するH11〜H12ドット、I9ドットに関して上記第1ドットに該当するI4ドット(上記第3ドットにも該当)、I5ドット、I6ドット、及び上記第2ドットに該当するI7〜I8ドット、J9ドットに関して上記第1ドットに該当するJ4ドット(上記第3ドットにも該当)、J5ドット、J6ドット、K9ドットに関して上記第1ドットに該当するK4ドット(上記第3ドットにも該当)、K5ドット、K6ドット、L9ドットに関して上記第1ドットに該当するL4ドット(上記第3ドットにも該当)、L5ドット、L6ドット、のそれぞれにおいて、副パルスsの出力が省略される。
そして、前述したように、本実施形態では、上記第1〜第3中止処理のうち、ヘッド温度Tに応じて上記第1中止処理のMが可変に制御される。ヘッド温度Tが50〜60℃でM=2であった上記図19(b)のパターンに対し、図19(a)は、ヘッド温度Tが0〜10℃のときの例を示している。この場合、前述の図15に示したように、Mの値が減少してM=0となる。これにより、上記第1中止処理において副パルスsの出力が中止されるドットはない。
すなわち、図18(a)のドットパターンPeに対応する上記予熱対象ドットのうち、上記第3ドットに該当するA4ドット、上記第3ドットに該当するB4ドット、上記第3ドットに該当するC4ドット、上記第3ドットに該当するD4ドット、D9ドットに関して上記第2ドットに該当するD5〜D8ドット、E5ドットに関して上記第2ドットに該当するE1〜E4ドット、上記第3ドットに該当するE8ドット、上記E13ドットに関して上記第2ドットに該当するE9〜E12ドット、上記第3ドットに該当するF8ドット、上記第3ドットに該当するG8ドット、H5ドットに関して上記第2ドットに該当するH1〜H4ドット、上記第3ドットに該当するH8ドット、上記H13ドットに関して上記第2ドットに該当するH9〜H12ドット、上記第3ドットに該当するI4ドット、I9ドットに関して上記第2ドットに該当するI5〜I8ドット、上記第3ドットに該当するJ4ドット、上記第3ドットに該当するK4ドット、上記第3ドットに該当するL4ドット、のそれぞれにおいて、副パルスsの出力が省略される。
上記の結果、M=2であった図19(b)に比べ、A−6〜A−5,A5〜A6ドット、B−6〜B−5,B5〜B6ドット、C−6〜C−5,C5〜C6ドット、D−6〜D−5ドット、E−2〜E−1ドット、F−2〜F−1,F9〜F10ドット、G−2〜G−1,G9〜G10ドット、H−2〜H−1ドット、I−6〜I−5ドット、J−6〜J−5,J5〜J6ドット、K−6〜K−5,K5〜K6ドット、L−6〜L−5,L5〜L6ドット、の出力タイミングが追加される形で、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力される。すなわち、被印字テープ150が布の場合においても、ヘッド温度Tが0〜10℃の低温時にM=0とすることにより、ヘッド温度Tが50〜60℃の高温時のM=2のパターンに比べて、出力する副パルスsの数を増加している。これにより、被印字テープ150に対する印字ヘッド11の低温時の予熱不足を防止している。
なお、上記以外の出力パターンの図示を省略するが、被印字テープ150が布の場合においても、ヘッド温度Tに応じてMを可変に設定する(前述の図15に示す例ではM=0〜3)ことで、予熱可変抑制処理後出力パターンが変化する。
<印字処理の制御手順>
以上説明した手法を実現するためにCPU212により実行される印字処理の制御手順を、図20のフローにより説明する。図20において、例えばユーザによりテープ印刷装置1の電源がオンにされることによって、このフローが開始される(「START」位置)。
まず、ステップS10で、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの作成開始操作に対応した、上記印字済みテープ150″の作成開始指示信号が入力されたか否かを判定する。ユーザの作成開始の意図に対応した上記作成開始指示信号が入力されない場合はステップS10の判定が満たされず(S10:NO)ループ待機する。上記作成開始指示信号が入力されたらステップS10の判定が満たされ(S10:YES)、ステップS15に移る。
ステップS15では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に対応した、作成する上記印字済みテープ150″の搬送方向に沿った全長を表す全長データが入力されたか否かを判定する。ユーザの意図するテープ全長に対応した上記全長データが入力されない場合はステップS15の判定が満たされず(S15:NO)上記ステップS10に戻って同様の手順を繰り返す。上記全長データが入力されたらステップS15の判定が満たされ(S15:YES)、ステップS20に移る。
ステップS20では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に基づく、上記被印字テープ150に繰り返し印字形成する1つのイメージ(単位印字イメージ)に対応した印字データが入力されたか否かを判定する。印字データが入力されない場合はステップS20の判定が満たされず(S20:NO)上記ステップS10に戻って同様の手順を繰り返す。上記印字データが入力されたらステップS20の判定が満たされ(S20:YES)、ステップS22に移る。
ステップS22では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に基づき、媒体情報(被印字テープ150の種類)が入力された否かを判定する。なお、筐体本体2a内にカートリッジセンサ224が設けられている場合(前述の図7参照)は、このカートリッジセンサ224が、筐体本体2aにテープカートリッジTKが装着された際に、テープカートリッジTKの種類(言い換えれば被印字テープロールR1に巻回された被印字テープ150の種類)を検出し対応する上記媒体情報を出力する。この場合は、このステップS22では、CPU212は、カートリッジセンサ224からの上記媒体情報が入力されたか否かを判定する。媒体情報が入力されない場合はステップS22の判定が満たされず(S22:NO)上記ステップS10に戻って同様の手順を繰り返す。上記媒体情報が入力されたらステップS22の判定が満たされ(S22:YES)、ステップS24に移る。なお、ステップS22を実行するCPU212が、各請求項記載の媒体情報取得手段として機能する。
ステップS24では、CPU212は、ヘッド温度センサ223による印字ヘッド11の温度検出結果に基づき、印字ヘッド11のヘッド温度Tを取得する。ステップS24が終了すると、ステップS25に移る。
ステップS25では、CPU212は、上記図8を用いて前述したように、上記ステップS20で入力された上記印字データをイメージ変換処理してイメージデータ(ドットパターンデータ)を生成し、イメージバッファ213aに展開し、記憶する(上記図9も参照)。ステップS25が終了すると、ステップS30に移る。なお、このステップS25を実行するCPU212が各請求項記載のイメージデータ生成手段として機能する。
ステップS30では、CPU212は、上記イメージバッファ213aに展開されたイメージデータのドットパターンに対し、前述した蓄熱処理を実行する(上記図12参照)。これにより、既に述べたように、ドットパターンにおいてオンドットが搬送方向に2つ以上隣接して連続する場合において、その連続するときの2番目以降のオンドットに対して、副パルスsを省略した主パルスmのみからなる駆動パルスが出力されるようにデータ上の設定が行われる。なお、このステップS30における蓄熱処理は、必要に応じて行わないようにしてもよい。ステップS30が終了すると、ステップS35に移る。
ステップS35では、CPU212は、上記ステップS30でイメージバッファ213aにおいて上記蓄熱処理が実行されたイメージデータのドットパターンに前述した予熱処理を実行する(上記図16、図18参照)。このとき、ステップS22で入力された上記媒体情報及びステップS24で取得された上記ヘッド温度Tに応じて、上記図15に示した設定テーブルを参照してNの値を可変に設定しつつ上記予熱処理を行う(予熱可変処理。これにより、既に述べたように、ドットパターンにおいて、特定の1つのオンドットに隣接して搬送方向に先行するNドット以内に主パルスm及び副パルスsの両方が揃って生成されていないドットがある場合に、それらNドット以内の予熱対象ドットそれぞれに対し、副パルスsのみからなる駆動パルスが出力されるようにデータ上の設定が行われる。なお、このステップS35を実行するCPU212が各請求項記載の予熱処理手段、第1可変制御手段、及び第3可変制御手段として機能する。ステップS35が終了すると、ステップS40に移る。
ステップS40では、CPU212は、上記ステップS35でイメージバッファ213aにおいて上記予熱処理が実行されたイメージデータのドットパターンに対し、前述した第1中止処理を実行する(上記図17、図19参照)。このとき、ステップS22で入力された媒体情報及びステップS24で取得されたヘッド温度Tに応じて、上記図15に示した設定テーブルを参照してMの値を可変に設定しつつ上記第1中止処理を行う。これにより、既に述べたように、予熱対象ドットに含まれる第1ドット(当該ドットに隣接して搬送方向に先行するMドット以内のドットであってかつ主パルスmが生成されるドット)での上記副パルスsの生成を中止するようにデータ上の設定が行われる。なお、このステップS40を実行するCPU212が各請求項記載の第1中止処理手段、第2可変制御手段、及び第4可変制御手段として機能する。なお、必要に応じて、(上記Nの値だけを可変としつつ)Mの値を適宜の固定値としてもよい。ステップS40が終了すると、ステップS45に移る。
ステップS45では、CPU212は、上記ステップS40でイメージバッファ213aにおいて上記第1中止処理が実行されたイメージデータのドットパターンに、前述した第2中止処理を実行する。これにより、既に述べたように、上記ドットパターンに含まれる予熱対象ドットに上記第2ドット(直交方向に隣接するドットで主パルスmが生成されるドット)が含まれる場合は、当該第2ドットでの副パルスsの生成を中止するようにデータ上の設定が行われる。なお、このステップS45を実行するCPU212が各請求項記載の第2中止処理手段として機能する。なお、このステップS45は、必要に応じて省略しても良い。ステップS45が終了すると、ステップS50に移る。
ステップS50では、CPU212は、上記ステップS45でイメージバッファ213aにおいて上記第2中止処理が実行されたイメージデータのドットパターンに、前述した第3中止処理を実行する(上記図17、図19参照)。これにより、既に述べたように、上記ドットパターンに含まれる予熱対象ドットに上記第3ドット(当該ドットにおいて主パルスmが生成されるドット)が含まれる場合は、当該第3ドットでの上記副パルスsの生成を中止するようにデータ上の設定が行われる。なお、このステップS50を実行するCPU212が各請求項記載の第3中止処理手段として機能する。なおこのステップS50は、必要に応じて省略しても良い。ステップS50が終了すると、ステップS55に移る。
なお、この例では、上述したように、後述のステップS55以降での印刷動作開始の前に、上記蓄熱処理、予熱処理、第1中止処理、第2中止処理、及び第3中止処理を実行したが、これに限られない。すなわち、それらの処理のうちの一部又は全部を、実際に印刷動作が開始された後に逐次行うようにしてもよい。この場合も同様の効果を得る。
ステップS55では、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を開始して、上記被印字テープ150、印字済みテープ150′、及び印字済みテープ150″の搬送(以下適宜、単に「テープ搬送」と称する)、及び上記印字済みテープ150″の巻き取りを開始する。ステップS55が終了すると、ステップS60に移る。
ステップS60では、CPU212は、上記ステップS20で取得された印字データに基づき、公知の手法により、対応する印字開始位置に印字ヘッド11が対向する状態まで上記テープ搬送が到達したか否かを判定する。印字開始位置に到達していない場合、ステップS60の判定は満たされず(S60:NO)、この判定が満たされるまでループ待機する。印字開始位置に到達した場合、判定は満たされ(S60:YES)、ステップS65に移る。
ステップS65では、CPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力して印字ヘッド11の発熱素子に通電を行い、上記被印字テープ150への上記イメージデータ(上記ステップS25で生成され上記ステップS30〜ステップS50での各処理が施されたイメージデータ)の繰り返し印字形成を開始する。その際、上記各処理の結果を反映して、印字ヘッド制御回路221からは前述の駆動パルス(主パルスm及び副パルスsを含むもの、主パルスmのみを含むもの、副パルスsのみを含むもの)が印字ヘッド11の発熱素子へ出力される。ステップS65が終了すると、ステップS70に移る。
ステップS70では、CPU212は、上記ステップS20で取得された印字データに基づき、公知の手法により、印字終了位置に印字ヘッド11が対向する状態まで上記テープ搬送が到達したか否かを判定する。印字終了位置に到達していない場合、ステップS70の判定は満たされず(S70:NO)、上記ステップS65に戻り同様の手順を繰り返す。これにより、上述の印字形成が続行される。一方、印字終了位置に到達した場合、ステップS70の判定は満たされ(S70:YES)、ステップS75に移る。
ステップS75では、CPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、印字ヘッド11の発熱素子への通電を停止して、上記被印字テープ150に対する印字形成を停止する。ステップS75が終了すると、ステップS80に移る。
ステップS80では、CPU212は、上記ステップS15で取得された全長データに対応した上記カッター機構30による切断位置(巻き取り機構40によって印字済みテープロールRとして巻回される印字済みテープ150″の、搬送方向に沿った全長が操作者の意図する長さとなるような切断位置)まで、上記テープ搬送が達したか否かを判定する。切断位置に到達していない場合、ステップS80の判定は満たされず(S80:NO)、ループ待機する。切断位置に到達した場合、ステップS80の判定は満たされ(S80:YES)、ステップS85に移る。
ステップS85では、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を停止する。これにより、上記被印字テープ150、印字済みテープ150′、及び印字済みテープ150″の搬送が停止する。ステップS85が終了すると、ステップS90に移る。
ステップS90では、CPU212は、モータ駆動回路222に制御信号を出力して上記カッターモータMCを駆動し、上記カッター機構30の作動により印字済みテープ150″の切断を行う。ステップS90が終了すると、ステップS95に移る。
ステップS95では、CPU212は、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を開始して、印字済みテープ150″を巻き取り機構40の巻芯41の外周側に巻き取る。ステップS95が終了すると、ステップS100に移る。
ステップS100では、CPU212は、上記ステップS95でのカッター機構30の切断動作から所定時間だけ経過したか否かを判定する。所定時間だけ経過していない場合、ステップS100の判定は満たされず(S100:NO)、ループ待機する。この所定時間は、印字済みテープ150″を巻芯41へ十分に巻き取れるだけの時間でよい。所定時間が経過したらステップS100の判定は満たされ(S100:YES)、ステップS105に移る。
ステップS105では、CPU212は、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を停止する。これにより上記切断により生じた印字済みテープ150″を確実に印字済みテープロールR2へと巻き取ることができる。その後、このフローを終了する。
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のテープ印刷装置1においては、ドットパターンに含まれる特定の1つのドットに対し主パルスmが生成される場合で、当該特定のドットに隣接して搬送方向に先行するNドットに主パルスm及び副パルスsの両方が揃って生成されない場合に、当該Nドットの予熱対象ドットそれぞれに対し上記副パルスsを生成する予熱処理を行う。このとき、本実施形態においては、被印字テープ150の種類を表す媒体情報を取得し(上記ステップS22)、その取得された媒体情報に対応した被印字テープ150の種類に応じて、上記Nを可変に制御する(図15、図20のステップS35参照)。これにより、被印字テープ150の被印字感度に対応した適正なNの値を設定し、予熱不足や予熱過剰のない良好な予熱処理を行うことができ、印字品質を向上することができる。
また、前述の予熱過剰が生じる別の要因として、例えば、上記ドットパターンにおいて上記予熱対象ドットよりも搬送方向に先行するMドット以内に主パルスmが生成される場合がある。本実施形態では特に、上記に対応し、予熱対象ドットに、上記のように当該ドットに隣接して搬送方向に先行するMドット(Mは正の整数)以内のドットでかつ主パルスmが生成される第1ドットが含まれる場合は、当該第1ドットでの上記副パルスsの生成が中止される。これにより、この第1ドットにおける予熱過剰による不要な発色が生じるのを防止し、これによっても印字品質を向上することができる。そしてこのとき、前述のNの値と同様、上記媒体情報に対応した被印字テープ150の種類に応じて(言い替えれば被印字テープ150が高被印字感度であるか低被印字感度であるかに応じて)上記Mを可変に制御する(図15、図20のステップS40参照)。これにより、被印字テープ150の被印字感度に対応した適正なMの値を設定し、予熱不足や予熱過剰のない良好な予熱処理を行うことができる。この結果確実に印字品質を向上することができる。
また、本実施形態においては特に、被印字テープ150の被印字感度が低い場合(図15に示す「布」に相当)には、上記Nを増加させるとともに上記Mを減少させ、被印字テープ150の被印字感度が高い場合(図15に示す「OPP」に相当)には、上記Nを低下させるとともに上記Mを増加させる。これにより、上記のような予熱不足や予熱過剰のないより良好な予熱処理を行い、より確実に印字品質を向上することができる。
また、本実施形態においては特に、ヘッド温度センサ223が検出した印字ヘッド11の温度に応じ、上記Nを可変に制御する。これにより、印字ヘッド11の温度に対応した適正なNの値を設定することで、予熱不足や予熱過剰のない良好な予熱処理を行い、さらに確実に印字品質を向上することができる。
また、本実施形態においては特に、上記検出された印字ヘッド11の温度に応じて上記Mを可変に制御する。これにより、印字ヘッド11の温度に対応した適正なMの値を設定し、上記予熱不足や予熱過剰のない良好な予熱処理を行うことができる。この結果さらに確実に印字品質を向上することができる。
また、本実施形態では、図15に示したように、印字ヘッド11の温度が低い場合には、上記Nを増加させるとともに上記Mを減少させ、上記印字ヘッド11の温度が高い場合には、上記Nを低下させるとともに上記Mを増加させる。これにより、上記のような予熱不足や予熱過剰のないより良好な予熱処理を行い、より確実に印字品質を向上することができる。
前述の予熱過剰が生じるさらに別の要因として、例えば、予熱対象ドットに対し上記直交方向に隣接するドットにおいて主パルスmが生成されている場合がある。本実施形態では特に、上記に対応し、予熱対象ドットに、上記のような直交方向に隣接するドットにおいて主パルスmが生成される第2ドットが含まれる場合は、当該第2ドットでの上記副パルスsの生成が中止される。これにより、上記のような予熱過剰による不要な発色が生じるのを防止し、印字品質を向上することができる。
前述の予熱過剰が生じるさらにまた別の要因として、例えば、上記ドットパターンにおいて上記予熱対象ドット自体に対し主パルスmが生成される場合がある。本実施形態においては特に、上記に対応し、予熱対象ドットに、当該ドットにおいて主パルスが生成される第3ドットが含まれる場合は、当該第3ドットでの上記副パルスsの生成が中止される。これにより、この第3ドットにおける予熱過剰による不要な発色が生じるのを防止できるので、確実に印字品質を向上することができる。
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
但し、例えばしきい値や基準値等、所定の判定基準となる値あるいは区切りとなる値の記載がある場合は、それらに対しての「同一」「等しい」「異なる」等は、上記とは異なり、厳密な意味である。
なお、以上において、図7等の各図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
また、図20に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。