JP2015196720A - リン含有エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子回路用積層板 - Google Patents

リン含有エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子回路用積層板 Download PDF

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Abstract

【課題】電気・電子分野に適用可能な難燃性に優れ、耐熱性が高く、かつ溶剤溶解性に優れたリン含有エポキシ樹脂を提供する。
【解決手段】リンを含有する特定の化学構造と特定の環状炭化水素基を介したビスフェノール構造を有し、難燃性、耐熱性、溶剤溶解性、低吸水性、低線膨張、伸び性、高熱伝導性、低誘電率、低誘電正接等の種々の物性のバランスに優れた重量平均分子量が(Mw)1,000〜200,000であるリン含有エポキシ樹脂。
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性に優れ、高耐熱性を有し、かつ溶剤溶解性に優れたリン含有エポキシ樹脂に関する。また、該リン含有エポキシ樹脂と硬化剤とを含むリン含有エポキシ樹脂組成物及びその硬化物並びに該リン含有エポキシ樹脂組成物を用いてなる電気・電子回路用積層板に関する。
エポキシ樹脂は、耐熱性、接着性、耐水性、機械的強度及び電気的特性に優れていることから、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野で使用されている。特に、電気・電子分野では、絶縁注型、積層材料、封止材料等において幅広く使用されている。近年、電気・電子機器に使用される多層回路基板は、機器の小型化、軽量化及び高機能化が進んでおり、更なる多層化、高密度化、薄型化、軽量化と信頼性及び成形加工性の向上等が要求されている。
いくつかの用途においては、エポキシ樹脂は種々の方法で高分子量化することで製膜性を付与され、フェノキシ樹脂(高分子量エポキシ樹脂)として用いられている。特に、電気・電子回路用積層板等の電気・電子部品の材料となるフェノキシ樹脂に要求される性能としては、難燃性、高耐熱性と溶剤溶解性が挙げられる。
従来、樹脂材料に難燃性を付与する場合には、ハロゲンを含むモノマーや難燃剤が使用されており、特に臭素系材料が多く用いられる。しかし近年では、脱離したハロゲン成分が電気・電子部品の配線を腐食することや、焼却時の熱分解によってハロゲンガスやハロゲン化物が発生し、環境に負荷を与える懸念があることから、ノンハロゲンの難燃材料が強く望まれている。
耐熱性については、従来、鉛含有はんだが電気的接続に用いられていたが、重金属の有害性が懸念されることから、近年では鉛フリーはんだへ移行してきている。これに伴い、リフロー温度は鉛含有はんだよりも高い260℃前後に上昇し、これに耐えうる材料が必要となってきている。
また、積層板製造時にはエポキシ樹脂組成物をワニスとして用いるため、溶剤に対する溶解性に優れることも重要である。
最近では、リン原子を含有する骨格をエポキシ樹脂に導入することで難燃性を発現させる試みが行われている。その中でも、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド骨格やジフェニルホスフィニル骨格等を導入した例が多く開示されている。
例えば、特許文献1には、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(商品名「HCA−HQ」)や10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(商品名「HCA−NQ」)、又はジフェニルホスフィニルヒドロキノン(商品名「PPQ」)等を、2官能エポキシ樹脂と反応させて得られるリン含有フェノキシ樹脂が開示されている。また特許文献2には、前述のHCA−HQやHCA−NQ等を2官能エポキシ樹脂と反応させて得られる低分子のリン含有エポキシ樹脂が開示されている。
特開2001−310939号公報 特開2001−288247号公報
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されているリン含有フェノキシ樹脂は、難燃性は十分に発現するものの、ガラス転移点は最高で151℃までであり、吸水率は1.2〜1.8質量%と比較的高いという欠点が見出された。また、メチルエチルケトンやシクロヘキサノンのような、エポキシ樹脂に一般的に適用される溶剤への溶解性が低いため、N,N−ジメチルアセトアミドを添加しないと安定な溶液が調製できないという問題もあった。
一方、特許文献2に記載されている低分子のリン含有エポキシ樹脂は、十分な難燃性を有し、架橋密度が高くなることで硬化物のガラス転移点も高くなるが、製膜性を持たないためにフィルム成型を必要とする用途には適用しにくいという問題点がある。更に、メチルエチルケトンやテトラヒドロフランなどの溶剤に対する溶解性が低く、ワニスの製造時や希釈時に析出しやすいという問題もあった。
本発明は、上記課題を解決し、電気・電子分野に適用可能な難燃性に優れ、耐熱性が高く、かつ溶剤溶解性に優れたリン含有エポキシ樹脂を提供することを課題とするものである。また、本発明においては、難燃性、高耐熱性と溶剤溶解性に加え、低線膨張、伸び性、高熱伝導性、低吸水性、低誘電率、低誘電正接等をバランスよく備えたリン含有エポキシ樹脂を提供することも課題とするものである。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、リンを含有する特定の化学構造と特定の環状炭化水素基を介したビスフェノール構造を有するリン含有エポキシ樹脂が、難燃性、耐熱性、溶剤溶解性、低吸水性、低線膨張、伸び性、高熱伝導性、低誘電率、低誘電正接等の種々の物性のバランスに優れることを見出した。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[16]に存する。
[1] 下記式(1)で表され、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200,000であるリン含有エポキシ樹脂。
Figure 2015196720
(上記式(1)中、Aは上記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造と、上記式(4)で表される化学構造とを少なくとも含み、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は上記式(5)で表される基であり、nは繰り返し数の平均値であり10以上500以下である。上記式(2)及び式(3)中、A及びAは、それぞれ独立に、上記式(6)及び/又は(7)で表される化学構造であり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(4)中、Xは炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基であり、R10〜R17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(6)及び(7)中、R18〜R35は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。)
[2] 前記式(4)において、Xがトリメチルシクロヘキシレン基及び/又はシクロドデシレン基である、[1]に記載のリン含有エポキシ樹脂。
[3] 前記式(1)中、前記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造と前記式(4)で表される化学構造のモル比が、1/99〜99/1である、[1]又は[2]に記載のリン含有エポキシ樹脂。
[4] 前記式(1)中、Aとして下記式(8)で表される化学構造を含み、該式(8)で表される化学構造のモル数がA全体のモル数に対して1〜99モル%である、[1]乃至[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂。
Figure 2015196720
(上記式(8)中、R36〜R43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基であり、Xは、直接結合、−SO−、−O−、−CO−、−C(CF−、−S−、又は炭素数1〜20の非環状炭化水素基から選ばれる2価の連結基である。)
[5] 下記式(9)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記式(10)で表されるビスフェノール系化合物とを反応させて得られ、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200,000であるリン含有エポキシ樹脂。
Figure 2015196720
(上記式(9)中のA’と式(10)中のA”とで、上記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造と、上記式(4)’で表される化学構造とを少なくとも含み、mは繰り返し数の平均値であり0以上6以下である。上記式(2)’及び(3)’中、A’及びA’は、それぞれ独立に、上記式(6)’及び/又は(7)’で表される化学構造であり、R’〜R’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(4)’中、X’は炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基であり、R’10〜R’17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(6)’及び(7)’中、R’18〜R’35は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。)
[6] 前記式(4)’において、X’がトリメチルシクロヘキシレン基及び/又はシクロドデシレン基である、[5]に記載のリン含有エポキシ樹脂。
[7] 前記式(9)及び(10)中、前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造と前記式(4)’で表される化学構造のモル比が、1/99〜99/1である、[5]又は[6]に記載のリン含有エポキシ樹脂。
[8] 前記式(9)中のA’及び/又は式(10)中のA”として下記式(8)’で表される化学構造を含み、該式(8)’で表される化学構造が式(9)中のA’及び式(10)中のA”の合計のモル数に対して1〜99モル%である、[5]乃至[7]のいずれかに記載のリン含有エポキシ樹脂。
Figure 2015196720
(上記式(8)中、R’36〜R’43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基であり、X’は、直接結合、−SO−、−O−、−CO−、−C(CF−、−S−、又は炭素数1〜20の非環状炭化水素基から選ばれる2価の連結基である。)
[9] エポキシ当量が500g/当量以上100,000g/当量以下、又は水酸基当量が500g/当量以上100,000g/当量以下である、[1]乃至[8]のいずれかに記載のリン含有エポキシ樹脂。
[10] [1]乃至[9]のいずれかに記載のリン含有エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むリン含有エポキシ樹脂組成物。
[11] 前記リン含有エポキシ樹脂100質量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100質量部含む、[10]に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
[12] 更に他のエポキシ樹脂を含み、固形分としてのリン含有エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の合計100質量部中、他のエポキシ樹脂を1〜99質量部含む、[10]又は[11]に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
[13] 前記リン含有エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の合計100質量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100質量部含む、[12]に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
[14] 前記硬化剤がフェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類、及び活性エステル系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[10]乃至[13]のいずれかに記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
[15] [10]乃至[14]のいずれかに記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を用いてなる電気・電子回路用積層板。
[16] [10]乃至[14]のいずれかに記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
本発明によれば、難燃性に優れ、耐熱性が高く、低吸水性であり、かつ溶剤溶解性に優れたリン含有エポキシ樹脂であり、難燃性、高耐熱性と溶剤溶解性に加え、低線膨張、伸び性、高熱伝導性、低吸水性、低誘電率、低誘電正接等をバランスよく備えたリン含有エポキシ樹脂を提供することができる。
このため、本発明のリン含有エポキシ樹脂は、接着剤、塗料、土木用建築材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂及びそれを含むリン含有エポキシ樹脂組成物は、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等に好適に用いることができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
また、本発明において、R、R等で表される基が置換基を有する場合、当該基の炭素数は、その置換基の炭素数を含めた合計の炭素数を示す。
〔リン含有エポキシ樹脂〕
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、下記式(1)で表され、重量平均分子量(Mw)1,000〜200,000であるものである。
Figure 2015196720
(上記式(1)中、Aは上記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造と、上記式(4)で表される化学構造とを少なくとも含み、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は上記式(5)で表される基であり、nは繰り返し数の平均値であり10以上500以下である。上記式(2)及び式(3)中、A及びAは、それぞれ独立に、上記式(6)及び/又は(7)で表される化学構造であり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(4)中、Xは炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基であり、R10〜R17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(6)及び(7)中、R18〜R35は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。)
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、難燃性、耐熱性に優れ、低吸水性で、かつ溶剤溶解性に優れるという効果を奏する。これは、化学構造中に難燃性を発現するためのリン原子が存在し、リン原子を含有する化学構造の剛直性により分子運動が拘束されることで耐熱性が高められ、また、嵩高く、疎水性で剛直、かつ溶媒親和性の高い置換基を有する構造のため、耐熱性を高めつつ吸水性が低下し、結晶性が適度に弱められて溶媒分子が容易に分子間に侵入可能で、かつ安定に溶媒和可能な構造になっていることによると推定される。
[化学構造]
前記式(1)中、Aは前記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造及び前記式(4)で表される化学構造を必ず含む。前記式(2)及び(3)中、A及びAは、それぞれ独立に、上記式(6)及び/又は(7)で表される化学構造であり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。
ここで、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数1〜12のアルキル基としては、アリール基等の置換基を有していてもよく、更に、このアリール基はアルキル基等の置換基を有していてもよく、また、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、次のようなものが挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、n−デシル基、シクロデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基、2−フェニルイソプロピル基等である。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
また、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数1〜12のアルコキシ基としては、アリール基等の置換基を有していてもよく、更に、このアリール基はアルキル基等の置換基を有していてもよく、また、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、次のようなものが挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert−ペントキシ基、シクロペントキシ基、n−ヘキシロキシ基、イソヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、n−ヘプトキシ基、シクロヘプトキシ基、メチルシクロヘキシロキシ基、n−オクチロキシ基、シクロオクチロキシ基、n−ノニロキシ基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシロキシ基、n−デシロキシ基、シクロデシロキシ基、n−ウンデシロキシ基、n−ドデシロキシ基、シクロドデシロキシ基、ベンジロキシ基、メチルベンジロキシ基、ジメチルベンジロキシ基、トリメチルベンジロキシ基、ナフチルメトキシ基、フェネチロキシ基、2−フェニルイソプロポキシ基等である。これらの中でもメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数6〜12のアリール基としては、アルキル基、アルキニル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、エチルフェニル基、スチリル基、キシリル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、エチニルフェニル基、ナフチル基、ビニルナフチル基等が挙げられる。
前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数2〜12のアルケニル基としては、アリール基等の置換基を有していてもよく、更に、このアリール基はアルキル基等の置換基を有していてもよく、また、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、次のようなものが挙げられる。例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルビニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、シクロヘキセニル基、シンナミル基、ナフチルビニル基等である。これらの中でもビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルビニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜4のアルケニル基が好ましい。
前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数3〜12のアルカジエニル基としてはアリール基等の置換基を有していてもよく、更に、このアリール基はアルキル基等の置換基を有していてもよく、また、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、次のようなものが挙げられる。例えば、プロパジエニル基(アレニル基)、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基等である。これらの中でも1,3−ブタジエニル基等の炭素数3〜4のアルカジエニル基が好ましい。
更に、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数2〜12のアルキニル基としてはアリール基等の置換基を有していてもよく、更に、このアリール基はアルキル基等の置換基を有していてもよく、また、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、次のようなものが挙げられる。例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、フェニルエチニル基、ナフチルエチニル基等である。これらの中でもエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等の炭素数2〜4のアルキニル基が好ましい。
以上で挙げた中でも、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に好ましくは水素原子、メチル基である。これは、R〜Rが分子量の小さい基であると、相対的にリン含有エポキシ樹脂中のリン原子の占める割合が大きくなり、難燃性が十分に発現しやすくなるためである。
更に、前記式(3)で表される化学構造は平面性の高いナフタレン環構造を含むため、難燃性の発現には有利に働くと考えられるが、溶剤溶解性という観点、及びリン原子の占める割合を確保することを考慮すると、Aとしては前記式(2)で表される化学構造がより好ましい。
また、前記式(6)及び(7)中のR18〜R35は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。
前記式(6)及び(7)中のR18〜R35としての炭素数1〜12のアルキル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数1〜12のアルキル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
前記式(6)及び(7)中のR18〜R35としての炭素数1〜12のアルコキシ基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数1〜12のアルコキシ基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
前記式(6)及び(7)中のR18〜R35としての炭素数6〜12のアリール基としては、式(3)中のR〜Rとしての炭素数6〜12のアリール基として例示したものが挙げられる。
前記式(6)及び(7)中のR18〜R35としての炭素数2〜12のアルケニル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数2〜12のアルケニル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
前記式(6)及び(7)中のR18〜R35としての炭素数3〜12のアルカジエニル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数3〜12のアルカジエニル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
更に、前記式(6)及び(7)中のR18〜R35としての炭素数2〜12のアルキニル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数2〜12のアルキニル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
以上で挙げた中でも、前記式(6)及び(7)中のR18〜R35としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に好ましくは水素原子、メチル基である。これは、R18〜R35が分子量の小さい基であると、相対的にリン含有エポキシ樹脂中のリン原子の占める割合が高くなり、難燃性が十分に発現しやすくなるためである。
加えて、吸水性という観点からは、前記式(7)で表される化学構造中のリン酸エステル構造が加水分解によって水分を化学的に吸着してしまう可能性があるため、A及びAとしては、前記式(6)で表される化学構造がより好ましい。
また、前記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は前記式(5)で表される基(エポキシ基)である。即ち、式(1)において、R及びRは末端構造を示すものであり、両末端が水素原子又は式(5)のエポキシ基であってもよく、片末端のみが水素原子又は式(5)のエポキシ基であってもよい。ただし、前記式(1)で表される本発明のリン含有エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂であることから、式(1)中のR及びRとして少なくともエポキシ基を含むものである。本発明のリン含有エポキシ樹脂は、通常、これらの末端を有する分子や、次に説明する繰り返し数nの異なる分子等の混合物である。
前記式(1)中、nは繰り返し数であり、平均値である。その値の範囲はフィルム製膜性や伸び性の観点から10以上であり、また、樹脂の取り扱い性の観点から500以下である。フィルム製膜性や伸び性を更に良好なものとする観点から好ましくはnは15以上であり、より好ましくは20以上である。一方、樹脂の取り扱い性を更に良好なものとする観点からnは好ましくは200以下であり、より好ましくは100以下である。n数はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により得られた数平均分子量(Mn)より算出することができる。数平均分子量(Mn)を求めるGPC法については具体例を後掲の実施例の項において説明する。
また前記式(4)中、Xは炭素数5〜20の環状炭化水素基である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、Xが嵩高い構造であるために溶剤溶解性に優れるという効果を奏するものと考えられ、Xの炭素数が上記範囲において多いほど十分な嵩高さを有する置換基を形成することができるため、Xの炭素数は、好ましくは6以上であり、より好ましくは7以上であり、最も好ましくは9以上である。一方、式(2)及び/又は(3)で表される化学構造に含まれるリン原子によって難燃性を発現させる観点からは、Xの炭素数が上記範囲において少ない方が相対的にリン含有エポキシ樹脂中のリン原子濃度が増加するため好ましく、好ましくは15以下であり、最も好ましいのは13以下である。
前記式(4)中のXとしての炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基は、アルキル基等の置換基を有していてもよく、飽和の環状炭化水素基(即ち、シクロアルキレン基)であってもよく、1又は2以上の二重結合や三重結合を有する不飽和の炭化水素基であってもよく、また、単環構造であってもよく、2環以上の縮合環構造であってもよい。ここで、Xの「2価の環状炭化水素基」とは、ビスフェノール構造が直接結合している炭素原子が環状構造に含まれていることを意味する。Xとしての炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基としては、次のようなものが挙げられる。例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、ジメチルシクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロペンタデシレン基、メンタニレン基、ジシクロペンタジエニレン基、トリシクロペンタジエニレン基、アダマンチレン基等である。
これらの中でも、溶剤溶解性に加えて耐熱性も良好なものとする観点から、式(4)における2つのベンゼン環がXの環状炭化水素基の1つの炭素原子に結合する構造が好ましい。具体的には1,1−シクロペンチレン基、1,1−シクロヘキシレン基、4−メチル−1,1−シクロヘキシレン基、3,3,5−トリメチル−1,1−シクロへキシレン基、1,1−シクロオクチレン基、1,1−シクロヘプチレン基、1,1−シクロオクチレン基、1,1−シクロノニレン基、1,1−シクロデシレン基、1,1−シクロドデシレン基が好ましく、3,3,5−トリメチル−1,1−シクロへキシレン基、1,1−シクロドデシレン基がより好ましい。
また前記式(4)において、R10〜R17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。
ここで、前記式(4)のR10〜R17における炭素数1〜12のアルキル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数1〜12のアルキル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
また、前記式(4)のR10〜R17における炭素数1〜12のアルコキシ基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数1〜12のアルコキシ基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
前記式(4)のR10〜R17における炭素数6〜12のアリール基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数6〜12のアリール基として例示したものが挙げられる。
前記式(4)のR10〜R17における炭素数2〜12のアルケニル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数2〜12のアルケニル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
前記式(4)のR10〜R17における炭素数3〜12のアルカジエニル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数3〜12のアルカジエニル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
更に、前記式(4)のR10〜R17における炭素数2〜12のアルキニル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数2〜12のアルキニル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
以上で挙げた中でも、前記式(4)のR10〜R17としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に好ましくは水素原子、メチル基である。これは、R10〜R17が分子量の小さい基であると、相対的にリン含有エポキシ樹脂中のリン原子の占める割合が大きくなり、難燃性が十分に発現しやすくなるためである。また、前記式(4)が置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有する場合、前記式(4)の置換数は2または4であることが好ましい。更に、前記式(1)においてAに隣接する酸素原子と結合した炭素原子を1位及び1’位としたとき、前記式(4)の置換数が2である場合、該アルキル基は2位及び2’位にあることが好ましく、置換数が4である場合、該アルキル基は2位、2’位、6位及び6’位にあることが好ましい。
また、前記式(4)中のXの置換位置は、前記式(1)においてAに隣接する酸素原子と結合した炭素原子を1位及び1’位としたとき、2,2’−置換、2,3’−置換、2,4’−置換、3,3’−置換、3,4’−置換、4,4’−置換のいずれでもよいが、好ましくは4,4’−置換である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂には、リン原子に起因する難燃性を十分に発現させるという観点から前記式(1)中、前記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造が、A全体のモル数に対して好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、特に好ましくは20モル%以上、とりわけ好ましくは35モル%以上含まれる。また、溶剤溶解性やコストの観点からは、前記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造が、A全体のモル数に対して好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下、特に好ましくは80モル%以下、とりわけ好ましくは65モル%以下含まれる。
また、溶剤溶解性やコストの観点から、好ましくは前記式(4)で表される化学構造がA全体のモル数に対して1モル%以上含まれていることが好ましく、5モル%以上含まれていることがより好ましく、10モル%以上含まれていることが更に好ましく、20モル%以上含まれていることが特に好ましく、35モル%以上含まれていることがとりわけ好ましい。また、リン原子に起因する難燃性を十分に発現させるという観点から、前記式(4)で表される化学構造が、A全体のモル数に対して好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下、特に好ましくは80モル%以下、とりわけ好ましくは65モル%以下含まれる。
以上の観点から、本発明のリン含有エポキシ樹脂は、前記式(1)中、前記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造と前記式(4)で表される化学構造のモル比が、1/99〜99/1であることが好ましく、5/95〜95/5であることが好ましく、10/90〜90/10であることがより好ましく、20/80〜80/20であることが更に好ましく、35/65〜65/35であることが特に好ましい。
また、本発明のリン含有エポキシ樹脂には、前記式(1)中のAにおいて、更に式(2)及び/又は(3)で表される化学構造及び式(4)で表される化学構造以外の化学構造(以下、「その他の化学構造」と称することがある。)が含まれていてもよい。その他の化学構造としては下記式(8)で表される化学構造が含まれていることが好ましい。より具体的には、溶剤溶解性や製造の容易さの観点からは、より好ましくは下記式(8)で表される化学構造のモル数がA全体のモル数に対し、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることが更に好ましく、35モル%以上であることが特に好ましい。一方、式(2)及び/又は(3)で表される化学構造及び式(4)で表される化学構造による効果を得る観点から、下記式(8)で表される化学構造のモル数がA全体のモル数に対し、99モル%以下であることが好ましく、95モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることが更に好ましく、60モル%以下であることが特に好ましい。
Figure 2015196720
(上記式(8)中、R36〜R43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基であり、Xは、直接結合、−SO−、−O−、−CO−、−C(CF−、−S−、又は炭素数1〜20の非環状炭化水素基から選ばれる2価の連結基である。)
前記式(8)中、R36〜R43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び、炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。
ここで、前記式(8)のR36〜R43における炭素数1〜12のアルキル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数1〜12のアルキル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
また、前記式(8)のR36〜R43における炭素数1〜12のアルコキシ基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数1〜12のアルコキシ基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
前記式(8)のR36〜R43における炭素数6〜12のアリール基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数6〜12のアリール基として例示したものが挙げられる。
前記式(8)のR36〜R43における炭素数2〜12のアルケニル基としては前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数2〜12のアルケニル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
前記式(8)のR36〜R43における炭素数3〜12のアルカジエニル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数3〜12のアルカジエニル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
前記式(8)のR36〜R43における炭素数2〜12のアルキニル基としては、前記式(2)及び(3)中のR〜Rとしての炭素数2〜12のアルキニル基として例示したものが挙げられ、好ましいものについても同様である。
以上で挙げた中でも、前記式(8)のR36〜R43としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に好ましくは水素原子、メチル基である。これは、R36〜R43が分子量の小さい基であると、相対的にリン含有エポキシ樹脂中のリン原子の占める割合が高くなり、難燃性が十分に発現しやすくなるためである。また、前記式(8)が置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有する場合、前記式(8)の置換数は2または4であることが好ましい。更に、前記式(1)においてAに隣接する酸素原子と結合した炭素原子を1位及び1’位としたとき、前記式(8)の置換数が2である場合、該アルキル基は2位及び2’位にあることが好ましく、置換数が4である場合、該アルキル基は2位、2’位、6位及び6’位にあることが好ましい。
前記式(8)中、Xは、直接結合、−SO−、−O−、−CO−、−C(CF−、−S−、又は炭素数1〜20の非環状炭化水素基から選ばれる2価の連結基である。ここでXにおける「非環状炭化水素基」とは、ビスフェノール構造が直接結合している炭素原子が環状構造に含まれていないことを意味し、置換基の一つとして環状炭化水素基を有するものはXに含まれるものとする。これらの中でもXとしては、直接結合、−C(CF−、−CH−、−C(CH−が好ましい。
また、前記式(8)中のXの置換位置は、前記式(1)においてAに隣接する酸素原子と結合した炭素原子を1位及び1’位としたとき、2,2’−置換、2,3’−置換、2,4’−置換、3,3’−置換、3,4’−置換、4,4’−置換のいずれでもよいが、好ましくは4,4’−置換である。
その他の化学構造として、前記式(8)で表される化学構造以外のものとしては、特に制限されないが、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、ジヒドロアントラハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン等のベンゼンジオール類(ここで、「ベンゼンジオール類とは、1つのベンゼン環を有する化合物であって、当該ベンゼン環に2つの水酸基が直接結合した化合物である。);ジヒドロキシジフェニルエーテル等のジヒドロキシジフェニルエーテル類;チオジフェノール等のチオジフェノール類;ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;ジヒドロキシスチルベン等のジヒドロキシスチルベン類;エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、及びこれらをエポキシ化した化合物に由来する化学構造が挙げられる。なお、これらの化学構造は後述する製造方法において、原料である2官能エポキシ樹脂及び/又はビスフェノール化合物と共に上記原料を組み合わせて用いることにより導入することができる。
ただし、上記のその他の化学構造を含む場合、その他の化学構造の含有割合は、式(2)及び/又は(3)で表される化学構造と式(4)で表される化学構造、更には場合によって含まれていてもよい式(8)で表される化学構造による効果を十分に得る上で、式(1)中のA全体のモル数に対して、70モル%以下であることが好ましい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂において、前記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造、前記式(4)で表される化学構造、前記式(8)で表される化学構造及びその他の化学構造の割合は、後述のエポキシ樹脂の製造方法の項目において説明するように、原料の比率によって制御することができる。このため、本発明のリン含有エポキシ樹脂においては、原料として用いた2官能エポキシ樹脂とビスフェノール系化合物とのそれぞれに含まれる化学構造の割合が、そのまま本発明のリン含有エポキシ樹脂に含まれる化学構造の割合とみなすこととする。
[重量平均分子量]
本発明のリン含有エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜200,000である。重量平均分子量が1,000より低いものではフィルム製膜性や伸び性が低くなり、200,000より高いと樹脂の取り扱いが困難となる。本発明のリン含有エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、フィルム製膜性や伸び性を向上させる観点から、2,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、一方、取り扱い性を良好なものとする観点から、120,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましい。なお、エポキシ樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定することができる。より詳細な測定方法の例について後述の実施例において説明する。
[エポキシ当量]
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、フィルム製膜性や伸び性を向上させる観点から、エポキシ当量が500g/当量以上であることが好ましく、より好ましくは1,000g/当量以上、更に好ましくは2,500g/当量以上、特に好ましくは3,500g/当量以上であり、最も好ましくは5,000g/当量以上である。一方、取り扱い性を良好なものとする観点から、エポキシ当量は100,000g/当量以下であることが好ましく、より好ましくは50,000g/当量以下、更に好ましくは30,000g/当量以下、特に好ましくは20,000g/当量以下である。なお、本発明において「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K7236に準じて測定することができる。
[ガラス転移温度(Tg)]
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、耐熱性に優れるものであり、耐熱性はガラス転移温度(Tg)により評価することができる。本発明のリン含有エポキシ樹脂のTgは好ましくは130℃以上であり、更に好ましくは145℃以上であり、上限については特に制限はないが、通常210℃以下である。
また後述の本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる本発明の硬化物(以下、「リン含有エポキシ樹脂硬化物」と称す場合がある。)においては、Tgは好ましくは135℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、上限については特に制限はないが、通常220℃以下である。
なお、エポキシ樹脂及びその硬化物の、ガラス転移温度は、示差走査熱量分析法(DSC法)により測定することができる。
[溶剤溶解性]
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、各種溶剤に対する溶解性に優れるものであり、後述の実施例の項における溶剤溶解性の評価方法に従って、汎用の溶剤であるテトラヒドロフランで約100倍に希釈した際に、目視で観察して析出物(不溶解物)が存在しない程度に優れた溶剤溶解性を示すものである。
[難燃性]
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、難燃性に優れるものであり、難燃性を評価する指標の一つとして残炭率が挙げられる。残炭率は、高温条件に暴露した後の残渣(炭素以外の元素からなるものも含む。)の重量から求められ、残炭率が高いことは、熱分解や燃焼で失われる成分が少ないことであるので、難燃性が高いことを意味する。本発明のリン含有エポキシ樹脂又はリン含有エポキシ樹脂硬化物においては、後掲の実施例の条件での残炭率は好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上である。
なお、エポキシ樹脂及びその硬化物の残炭率は、示差熱・熱重量同時測定法(TG−DTA法)により測定することができる。
[吸水率]
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、低吸水性に優れるものである。エポキシ樹脂の吸水率は、後掲の実施例の項に示すように、湿熱条件下に一定時間暴露する前後の重量変化により評価することができる。本発明のリン含有エポキシ樹脂は、これを含有するリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化物とした際の吸水率が、好ましくは2.0質量%未満であり、更に好ましくは1.8質量%未満であり、特に好ましくは1.6%未満である。
〔エポキシ樹脂の製造方法〕
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、例えば、下記式(9)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記式(10)で表されるビスフェノール系化合物とを反応させる、二段法によって得ることができる。また、下記式(10)で表されるビスフェノール系化合物をエピハロヒドリンと反応させる、一段法によっても得ることができる。ただし、二段法では高分子量のエポキシ樹脂を一段法よりも容易に得ることができるため、二段法を用いることが好ましい。
Figure 2015196720
(上記式(9)中のA’と式(10)中のA”とで、上記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造と、上記式(4)’で表される化学構造とを少なくとも含み、mは繰り返し数の平均値であり0以上6以下である。上記式(2)’及び(3)’中、A’及びA’は、それぞれ独立に、上記式(6)’及び/又は(7)’で表される化学構造であり、R’〜R’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(4)’中、X’は炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基であり、R’10〜R’17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(6)’及び(7)’中、R’18〜R’35は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。)
[二段法による製造]
本発明の他の態様にかかるリン含有エポキシ樹脂は、前記式(9)で表される2官能エポキシ樹脂と、前記式(10)で表されるビスフェノール系化合物を反応させて得られ、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200,000であるものである。
<2官能エポキシ樹脂>
本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造に用いられる2官能エポキシ樹脂は、前記式(9)で表されるエポキシ樹脂であり、例えば、前記式(10)で表されるビスフェノール系化合物を、後述の一段法によってエピハロヒドリンと縮合させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
前記式(9)中、A’は前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造を含んでいてもよいし、含まなくともよい。ただし、前記式(10)中のA”が式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造を含まない場合は、前記式(9)のA’は前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造を必ず含むものである。前記式(4)で表される化学構造についても同様であり、前記式(9)中、A’は前記式(4)’で表される化学構造を含んでいてもよいし、含まなくともよい。ただし、前記式(10)中のA”が式(4)’で表される化学構造を含まない場合は、前記式(9)のA’は前記式(4)’で表される化学構造を必ず含むものである。
前記式(2)’及び(3)’におけるA’及びA’の定義と好ましいものは、それぞれ前記式(2)及び(3)におけるA及びAと同様のものである。従って、前記式(6)’及び式(7)’におけるR’18〜R’35の定義と好ましいものは、それぞれ前記式(6)及び式(7)におけるR’18〜R’35と同様のものである。また、前記式(2)’及び(3)’におけるR’〜R’の定義と好ましいものは、前記式(2)及び(3)におけるR〜Rと同様のものである。また、前記式(4)’におけるR’10〜R’17及びX’の定義と好ましいものについても、それぞれ前記式(4)におけるR10〜R17及びXと同様のものである。
前記式(9)におけるmは繰り返し数の平均値であり、0以上6以下である。
<ビスフェノール系化合物>
本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造に用いられるビスフェノール系化合物は、前記式(10)で表されるビスフェノール系化合物である。
前記式(10)中、A”は前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造を含んでいてもよいし、含まなくともよい。ただし、前記式(9)中のA’が式(2)’及び(3)’で表される化学構造を含まない場合は、前記式(10)のA”は前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造を必ず含む。つまり、二段法により製造されるリン含有エポキシ樹脂には、前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造が必ず含まれるものであり、これを満たす限り、前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造が、2官能エポキシ樹脂及びビスフェノール系化合物のいずれか一方にのみに含まれるものであってもよく、双方に含まれるものであってもよく、またその化学構造の割合も制限されるものではない。前記式(4)’で表される化学構造についても同様であり、前記式(10)中、A”は前記式(4)’で表される化学構造を含んでいてもよいし、含まなくともよい。ただし、前記式(9)中のA’が式(4)’で表される化学構造を含まない場合は、前記式(10)のA”は前記式(4)’で表される化学構造を必ず含む。つまり、二段法により製造されるリン含有エポキシ樹脂には、前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造と共に、前記式(4)で表される化学構造が必ず含まれるものであり、これを満たす限り、前記式(4)’で表される化学構造が、2官能エポキシ樹脂及びビスフェノール系化合物のいずれか一方にのみに含まれるものであってもよく、双方に含まれるものであってもよく、またその化学構造の割合も制限されるものではない。
また、前記式(9)、及び式(10)におけるA’,A”として前記式(2)’及び/又は(3)’の化学構造或いは式(4)’で表される化学構造を含まない場合には、該A’には公知の任意の化学構造を導入することができる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造に用いる2官能エポキシ樹脂又はビスフェノール系化合物には、前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造が、前記式(9)中のA’と前記式(10)中のA”の合計のモル数に対して1〜99モル%含まれていることが好ましい。リン原子に起因する難燃性を十分に発現させるという観点からは、より好ましくは前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造が前記式(9)中のA’と前記式(10)中のA”の合計のモル数に対して5モル%以上、中でも10モル%以上、特に20モル%以上、とりわけ35モル%以上含まれていることが好ましい。また、溶剤溶解性やコストの観点からは、より好ましくは前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造が前記式(9)中のA’と前記式(10)中のA”の合計のモル数に対して95モル%以下、中でも90モル%以下、特に80モル%以下、とりわけ65モル%以下含まれていることが好ましい。
更に、本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造に用いる2官能エポキシ樹脂及び/又はビスフェノール系化合物には、溶剤溶解性やコストの観点から、前記式(4)’で表される化学構造が、前記式(9)中のA’と前記式(10)中のA”の合計のモル数に対して、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、特に好ましくは20モル%以上、とりわけ好ましくは35モル%以上含まれる。また、リン原子に起因する難燃性を十分に発現させるという観点からは、前記式(4)’で表される化学構造が、前記式(9)中のA’と前記式(10)中のA”の合計のモル数に対して好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは65モル%以下含まれる。
また、本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造に用いる2官能エポキシ樹脂又はビスフェノール系化合物には、式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造及び式(4)’で表される化学構造以外の化学構造が含まれていてもよく、これら以外の化学構造として、下記式(8)’で表される化学構造が含まれていることが好ましい。溶剤溶解性や製造の容易さの観点からは、前記式(9)中のA’及び式(10)中のA”の合計のモル数に対して下記式(8)’で表される化学構造が、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは35モル%以上含まれる。一方、式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造及び式(4)で表される化学構造による効果を得る観点から、前記式(9)中のA’及び式(10)中のA”の合計のモル数に対して下記式(8)’で表される化学構造が好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは60モル%以下含まれる。
Figure 2015196720
(上記式(8)中、R’36〜R’43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基であり、X’は、直接結合、−SO−、−O−、−CO−、−C(CF−、−S−、又は炭素数1〜20の非環状炭化水素基から選ばれる2価の連結基である。)
前記式(8)’中におけるR’36〜R’43及びX’の定義と好ましいもの及びその置換位置は、それぞれ前記式(8)におけるR36〜R43及びXの定義と好ましいもの及びその置換位置と同様のものである。
前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造、前記式(4)’で表される化学構造及び前記式(8)’で表される化学構造以外のものとしては、〔リン含有エポキシ樹脂〕の説明の項で例示した前記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造、前記式(4)で表される化学構造及び前記式(8)で表される化学構造以外の化学構造が該当する。
本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造において、上記の2官能エポキシ樹脂とビスフェノール系化合物の使用量は、その配合当量比で、(エポキシ基)/(フェノール性水酸基)=1.0〜1.2となるようにするのが好ましい。この当量比が上記範囲であると高分子量化を進行させやすくなるために好ましい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂の合成には触媒を用いてもよく、その触媒としては、エポキシ基とフェノール性水酸基、アルコール性水酸基やカルボキシル基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよい。例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属の水素化物;酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機リン化合物の具体例としては、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
第3級アミンの具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらの中でもテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドが好ましい。
環状アミン類の具体例としては、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5、モルホリン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
イミダゾール類の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
以上に挙げた触媒の中でも第4級アンモニウム塩が好ましい。また、触媒は1種のみを使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
触媒の使用量は反応固形分中、通常0.001〜1質量%であるが、アルカリ金属化合物を使用すると得られるエポキシ樹脂中にアルカリ金属分が残留し、それを使用した電子・電気部品の絶縁特性を悪化させるおそれがあるため、得られるエポキシ樹脂中のリチウム、ナトリウム及びカリウムの原子含有量の合計が通常60ppm以下、好ましくは50ppm以下となるように用いる。
また、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等を触媒として使用した場合も、得られるエポキシ樹脂中にこれらが触媒残渣として残留し、アルカリ金属分の残留と同様にプリント配線板の絶縁特性を悪化させるおそれがあるので、エポキシ樹脂中の窒素原子の含有量が好ましくは300ppm以下となるように用いる。また、エポキシ樹脂中のリン原子の含有量が好ましくは300ppm以下となるように用いる。更に好ましくは、エポキシ樹脂中の窒素原子の含有量が200ppm以下であり、エポキシ樹脂中のリン原子の含有量が200ppm以下となるように用いることが好ましい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、その製造時の合成反応の工程において、反応用の溶媒を用いてもよく、その溶媒としては、エポキシ樹脂を溶解するものであればどのようなものでもよい。例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。溶媒は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
芳香族系溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。ケトン系溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等が挙げられる。
エステル系溶媒の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、バレロラクトン、ブチロラクトン等が挙げられる。
エーテル系溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
アミド系溶媒の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造時の合成反応における反応系の固形分濃度は35〜95質量%が好ましい。また、反応途中で高粘性生成物が生じたときは溶媒を追加添加して反応を続けることもできる。反応終了後、溶媒は必要に応じて、除去することもできるし、更に追加することもできる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造において、2官能エポキシ樹脂とビスフェノール系化合物との重合反応は使用する触媒が分解しない程度の反応温度で実施される。反応温度が高すぎると生成するエポキシ樹脂が劣化するおそれがある。逆に温度が低すぎると十分に反応が進まないことがある。これらの理由から反応温度は、好ましくは50〜230℃、より好ましくは120〜200℃である。また、反応時間は通常1〜12時間、好ましくは3〜10時間である。アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。
[一段法による製造]
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、一段法によっても製造することができる。具体的には、前記式(10)で表されるビスフェノール系化合物を、エピハロヒドリンと直接反応させればよい。ただし、前述のように、一段法で製造した本発明のリン含有エポキシ樹脂のうち低分子のものについては、二段法における2官能エポキシ樹脂として用いることができる。
一段法により本発明のリン含有エポキシ樹脂を製造する場合、原料として用いられる前記式(10)で表されるビスフェノール系化合物中、A”は式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造と式(4)’で表される化学構造とを必ず含む。二段法において説明したものと同様の理由により、A”全体に対する式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造の割合は、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましく、20モル%以上が特に好ましく、35モル%以上がとりわけ好ましい。また、99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、90モル%以下が更に好ましく、80モル%以下が特に好ましく、65モル%以下がとりわけ好ましい。
また、二段法において説明したものと同様の理由により、A”全体に対する式(4)’で表される化学構造の割合は、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましく、20モル%以上が特に好ましく、35モル%以上がとりわけ好ましい。また、99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、90モル%以下が更に好ましく、80モル%以下が特に好ましく、65モル%以下がとりわけ好ましい。
なお、このような一段法によって製造されたエポキシ樹脂を、二段法の原料である2官能エポキシ樹脂として用いる場合においては、二段法において説明したように、前記式(10)で表されるビスフェノール系化合物中のA”に占める式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造の割合は特に制限されず、0〜100%である。
原料として用いる全ビスフェノール系化合物はそのフェノール性水酸基1当量当たり、通常、0.8〜5.5モル当量、より好ましくは0.9〜5.0モル当量、更に好ましくは1.0〜4.5モル当量に相当する量のエピハロヒドリンに溶解させて均一な溶液とする。エピハロヒドリンの量が上記下限以上であると必要以上に高分子量化せず、反応を制御しやすく、また、適切な溶融粘度とすることができるために好ましい。一方、エピハロヒドリンの量が上記上限以下であると生産効率が向上する傾向にあるために好ましい。
次いで、その溶液を撹拌しながら、これにフェノール性水酸基1当量当たり通常0.5〜2.0モル当量、より好ましくは0.7〜1.8モル当量、更に好ましくは0.9〜1.6モル当量に相当する量のアルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液で加えて反応させる。アルカリ金属水酸化物の量が上記下限以上であると、未反応の水酸基と生成したエポキシ樹脂が反応しにくく、高分子量化反応を制御しやすいために好ましい。また、アルカリ金属水酸化物が上記上限以下であると、副反応による不純物が生成しにくいために好ましい。
この反応は、常圧下又は減圧下で行わせることができ、反応温度は通常、常圧下の反応の場合は好ましくは20〜150℃、より好ましくは30〜120℃、更に好ましくは35〜100℃であり、減圧下の反応の場合は好ましくは20〜100℃、より好ましくは30〜90℃、更に好ましくは35〜80℃である。反応温度が上記下限以上であると反応を進行させやすいために好ましい。また、反応温度が上記上限以下であると副反応が進行しにくく、特に塩素不純物が低減しやすいために好ましい。
反応は、必要に応じて所定の温度を保持しながら反応液を共沸させ、揮発する蒸気を冷却して得られた凝縮液を油/水分離し、水分を除いた油分を反応系へ戻す方法により脱水することにより行われる。アルカリ金属水酸化物は、急激な反応を抑えるために、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜7時間、更に好ましくは1〜6時間かけて少量ずつを断続的又は連続的に添加する。添加時間が上記下限以上であると急激に反応が進行するのを防ぐことができ、反応温度の制御がしやすくなるために好ましい。添加時間が上記上限以下であると塩素不純物が生成しにくくなるために好ましく、また、経済性の観点からも好ましい。全反応時間は通常1〜15時間である。
反応終了後、不溶性の副生塩を濾別して除くか、水洗により除去した後、未反応のエピハロヒドリンを減圧留去して除くと、目的のエポキシ樹脂が得られる。
この反応におけるエピハロヒドリンとしては、通常、エピクロルヒドリン又はエピブロモヒドリンが用いられる。アルカリ金属水酸化物としては通常、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが用いられる。
また、この反応においては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩;ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド等のホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類等の触媒を用いてもよい。
更に、この反応においては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メトキシプロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等の不活性な有機溶媒を使用してもよい。
更に、上記のようにして得られたエポキシ樹脂の可鹸化ハロゲン量が多すぎる場合は、再処理して十分に可鹸化ハロゲン量が低下した精製エポキシ樹脂を得ることができる。この場合は、その粗製エポキシ樹脂を、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジオキサン、メトキシプロパノール、ジメチルスルホキシド等の不活性な有機溶媒に再溶解し、アルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液で加えて、好ましくは30〜120℃、より好ましくは40〜110℃、更に好ましくは50〜100℃の温度で、好ましくは0.1〜15時間、より好ましくは0.3〜12時間、更に好ましくは0.5〜10時間、再閉環反応を行った後、水洗等の方法で過剰のアルカリ金属水酸化物や副性塩を除去し、更に有機溶媒を減圧留去及び/又は水蒸気蒸留を行うと、加水分解性ハロゲン量が低減されたエポキシ樹脂を得ることができる。反応温度が上記下限以上であり、また、反応時間が上記下限以上であると再閉環反応が進行しやすいために好ましい。また、反応温度が上記上限以下であり、また、反応時間が上記上限以下であると高分子量化反応を制御しやすいために好ましい。
〔リン含有エポキシ樹脂組成物〕
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、少なくとも前述した本発明のリン含有エポキシ樹脂と硬化剤とを含む。また、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、本発明のリン含有エポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂、無機フィラー、カップリング剤等を適宜配合することができる。本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は難燃性を発現するに十分な量のリン原子を含み、耐熱性、低吸水性等に優れ、各種用途に要求される諸物性を十分に満たす硬化物を与えるものである。
[硬化剤]
本発明において硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質を示す。なお、本発明においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、本発明のリン含有エポキシ樹脂100質量部に対して好ましくは0.1〜100質量部である。また、より好ましくは80質量部以下であり、更に好ましくは60質量部以下である。更には、固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対して好ましくは0.1〜100質量部であり、より好ましくは80質量部以下であり、更に好ましくは60質量部以下である。ここで、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味し、固体のエポキシ樹脂のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。また、「全エポキシ樹脂成分」とは、本発明のリン含有エポキシ樹脂と後述する他のエポキシ樹脂との合計を意味する。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物に用いる硬化剤としては、特に制限はなく一般的にエポキシ樹脂硬化剤として知られているものはすべて使用できる。耐熱性を高める観点から好ましいものとしてフェノール系硬化剤、アミド系硬化剤及びイミダゾール類が挙げられる。また吸水性を低下する観点からは、好ましいものとして活性エステル系硬化剤が挙げられる。以下、フェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類、活性エステル硬化剤及びその他の使用可能な硬化剤の例を挙げる。
<フェノール系硬化剤>
硬化剤としてフェノール系硬化剤を用いることが、得られるエポキシ樹脂組成物の取り扱い性と、硬化後の耐熱性を向上させる観点から好ましい。フェノール系硬化剤の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o−クレゾールノボラック、m−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、フルオログリシノール、ピロガロール、t−ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,4−ジヒドロキシナフタレン、2,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,8−ジヒドロキシナフタレン、上記ジヒドロキシナフタレンのアリル化物又はポリアリル化物、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック、アリル化ピロガロール等が例示される。
以上で挙げたフェノール系硬化剤は1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。また、硬化剤がフェノール系硬化剤の場合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対する硬化剤中の官能基の当量比で0.8〜1.5の範囲となるように用いることが好ましい。この範囲内であると未反応のエポキシ基や硬化剤の官能基が残留しにくくなるために好ましい。
<アミド系硬化剤>
硬化剤としてアミド系硬化剤を用いることは、得られるエポキシ樹脂組成物の耐熱性の向上の観点から好ましい。アミド系硬化剤としてはジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
以上に挙げたアミド系硬化剤は1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。また、アミド系硬化剤は、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分とアミド系硬化剤との合計に対して0.1〜20質量%の範囲で用いることが好ましい。
<イミダゾール類>
硬化剤としてイミダゾール類を用いることは、硬化反応を十分に進行させ、耐熱性を向上させる観点から好ましい。イミダゾール類としては、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール類との付加体等が例示される。なお、イミダゾール類は触媒能を有するため、一般的には後述する硬化促進剤にも分類されうるが、本発明においては硬化剤として分類するものとする。
以上に挙げたイミダゾール類は1種のみでも、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。また、イミダゾール類は、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分とイミダゾール類との合計に対して0.1〜20質量%の範囲で用いることが好ましい。
<活性エステル系硬化剤>
硬化剤として活性エステル系硬化剤を用いることは、得られる硬化物の吸水性を低下させる観点から好ましい。活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく、中でも、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたフェノールエステル類がより好ましい。カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
以上に挙げた活性エステル系硬化剤は1種のみでも、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。また、活性エステル系硬化剤は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂中のエポキシ基に対する硬化剤中の活性エステル基の当量比で0.2〜2.0の範囲となるように用いることが好ましい。
<その他の硬化剤>
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物に用いることのできる硬化剤として、フェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類及び活性エステル系硬化剤以外のものとしては、例えば、アミン系硬化剤(ただし、第3級アミンを除く。)、酸無水物系硬化剤、第3級アミン、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
[他のエポキシ樹脂]
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、本発明のリン含有エポキシ樹脂に加え、他のエポキシ樹脂を含むことができる。他のエポキシ樹脂を用いることで、不足する物性を補ったり、種々の物性を向上させたりすることができる。
他のエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであることが好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の、各種エポキシ樹脂を使用することができる。これらは1種のみでも2種以上の混合体としても使用することができる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物において、本発明のリン含有エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂とを用いる場合、他のエポキシ樹脂の配合量は、固形分としての全エポキシ樹脂100質量部中、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、一方、好ましくは99質量部以下であり、より好ましくは95質量部以下である。他のエポキシ樹脂の割合が上記下限値以上であることにより、他のエポキシ樹脂を配合することによる物性向上効果を十分に得ることができ、特に本発明のリン含有エポキシ樹脂そのものよりも更に耐熱性に優れた材料を得ることができる。一方、他のエポキシ樹脂の割合が前記上限値以下であることにより、本発明のリン含有エポキシ樹脂の効果が十分に発揮され、特に、低吸水性、難燃性の面で好ましい。
[溶剤]
本発明のリン含有エポキシ樹脂を含むリン含有エポキシ樹脂組成物には、塗膜形成時等の取り扱い時に、リン含有エポキシ樹脂組成物の粘度を適度に調整するために溶剤を配合し、希釈してもよい。本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物において、溶剤は、リン含有エポキシ樹脂組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。なお、本発明においては「溶剤」という語と前述の「溶媒」という語をその使用形態により区別して用いるが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂を含むリン含有エポキシ樹脂組成物が含み得る溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等が挙げられる。特に、本発明のリン含有エポキシ樹脂は溶剤溶解性に優れることから、上記の溶剤のうち、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、トルエン等の汎用の溶剤を好ましく用いることができる。以上に挙げた溶剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
[無機フィラー]
本発明のリン含有エポキシ樹脂を含むリン含有エポキシ樹脂組成物には無機フィラーを含有していてもよい。無機フィラーを含むことにより、熱伝導性の向上や線膨張係数の低減等を図ることができる。本発明で用いる無機フィラーは高い熱伝導性を有するものが好ましく、当該無機フィラーの熱伝導率として1W/m・K以上、好ましくは2W/m・K以上の高熱伝導性の無機フィラーが好ましい。
無機フィラーとしては、アルミナ(Al:熱伝導率30W/m・K)、窒化アルミニウム(AlN:熱伝導率260W/m・K)、窒化ホウ素(BN:熱伝導率3W/m・K(厚み方向)、275W/m・K(面内方向))、窒化ケイ素(Si:熱伝導率23W/m・K)、シリカ(SiO:熱伝導率1.4W/m・K)等が挙げられる。これらのなかでも、Al、AlN、BN、SiOが好ましく、とりわけAl、BN、SiOが好ましい。これらの無機フィラーは、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
無機フィラーは、その粒径が大き過ぎると硬化物中にボイドが残留しやすくなり、小さ過ぎると凝集しやすくなり分散性が悪くなることから、粒状や扁平状の無機フィラーであれば、平均粒径0.05〜1000μm程度のものを用いることが好ましい。また、凝集状の無機フィラーであれば、平均結晶径が0.01〜5μmで、平均凝集径が1〜1000μmのものを用いることが好ましい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物が無機フィラーを含む場合、無機フィラーの配合割合は、リン含有エポキシ樹脂組成物中の全固形分(通常、エポキシ樹脂組成物中の全固形分とはエポキシ樹脂組成物中の溶剤を除く成分の合計をさす。)に対して好ましくは5〜98質量%、より好ましくは10〜95質量%であり、このリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物中の体積割合として好ましくは10〜90体積%、より好ましくは15〜85体積%である。無機フィラーの配合量が上記下限値以上であることにより、無機フィラーを配合することによる熱伝導性等の向上効果が十分なものとなり、所望の高熱伝導性、線膨張係数を得ることができる。一方、上記上限値以下であることにより、成膜性や接着性、硬化物の物性等を損なうことなく、良好な特性が得られる傾向がある。
[カップリング剤]
本発明のリン含有エポキシ樹脂を含むリン含有エポキシ樹脂組成物には、カップリング剤を配合してもよい。カップリング剤を配合することにより、基材との接着性やマトリックス樹脂と無機フィラーとの接着性を向上させることができる。カップリング剤としてはシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン、更に、エポキシ系、アミノ系、ビニル系の高分子タイプのシラン等が挙げられる。
チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
これらのカップリング剤は、いずれも1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。なお、カップリング剤の配合量は、リン含有エポキシ樹脂組成物中の全固形分に対して0.1〜2.0質量%程度とするのが好ましい。カップリング剤の配合量が少な過ぎると、カップリング剤を配合したことによるマトリックス樹脂と無機フィラーとの密着性の向上効果を十分に得ることができず、一方、カップリング剤の配合量が多過ぎると得られる硬化物からカップリング剤がブリードアウトするおそれがある。
[その他の成分]
本発明のリン含有エポキシ樹脂を含むリン含有エポキシ樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、以上で挙げたもの以外の成分(本発明において「その他の成分」と称することがある。)を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、硬化促進剤(ただし、「硬化剤」に含まれるものを除く。)、保存安定性向上のための紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤、はんだの酸化皮膜除去のためのフラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤等が挙げられる。
〔硬化物〕
本発明のリン含有エポキシ樹脂を硬化剤により硬化してなる硬化物は、難燃性に優れ、耐熱性が高く、吸水性が低く、また、熱伝導性、伸び性等のバランスに優れ、良好な硬化物性を示すものである。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりリン含有エポキシ樹脂組成物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。進行の程度は完全硬化であっても、半硬化の状態であってもよく、特に制限されないが、エポキシ基と硬化剤の硬化反応の反応率として通常5〜95%である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化又は半硬化させて硬化物又は半硬化物とする際のリン含有エポキシ樹脂組成物の硬化方法は、リン含有エポキシ樹脂組成物中の配合成分や配合量によっても異なるが、通常、80〜280℃で60〜360分の加熱条件が挙げられる。この加熱は80〜160℃で10〜90分の一次加熱と、120〜200℃で60〜150分の二次加熱との二段処理で行うことが好ましく、また、ガラス転移温度(Tg)が二次加熱の温度を超える配合系においては更に150〜280℃で60〜120分の三次加熱を行うことが好ましい。このように二次加熱、三次加熱を行うことは硬化不良を低減する観点から好ましい。
樹脂半硬化物を作製する際には、通常、加熱等により形状が保てる程度にエポキシ樹脂組成物の硬化反応を進行させる。エポキシ樹脂組成物が溶剤を含んでいる場合には、通常、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶剤を除去するが、樹脂半硬化物中に5質量%以下の溶剤を残量させてもよい。
〔用途〕
本発明のリン含有エポキシ樹脂及びそれを含むリン含有エポキシ樹脂組成物は、難燃性に優れ、溶剤溶解性に優れ、耐熱性が高く、吸水性が低いという効果を奏する。このため、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に、電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。本発明のリン含有エポキシ樹脂及びそれを含むリン含有エポキシ樹脂組成物の用途の一例としては、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
〔電気・電子回路用積層板〕
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は前述したように電気・電子回路用積層板の用途に好適に用いることができる。本発明において「電気・電子回路用積層板」とは、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物を含む層と導電性金属層とを積層したものであり、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物を含む層と導電性金属層とを積層したものであれば、電気・電子回路ではなくとも、例えばキャパシタも含む概念として用いられる。なお、電気・電子回路用積層板中には2種以上のエポキシ樹脂組成物からなる層が形成されていてもよく、少なくとも1つの層において本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物が用いられていればよい。また、2種以上の導電性金属層が形成されていてもよい。
電気・電子回路用積層板におけるリン含有エポキシ樹脂組成物からなる層の厚みは通常10〜200μm程度である。また、導電性金属層の厚みは通常0.2〜70μm程度である。
[導電性金属]
電気・電子回路用積層板における導電性金属としては、銅、アルミニウム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。本発明において電気・電子回路用積層板の導電性金属層においては、これらの金属の金属箔、あるいはメッキやスパッタリングで形成された金属層を用いることができる。
[電気・電子回路用積層板の製造方法]
本発明における電気・電子回路用積層板の製造方法としては、例えば次のような方法が挙げられる。
(1) ガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、セルロース、ナノファイバーセルロース等の無機及び/又は有機の繊維材料を用いた不織布やクロス等に、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物を含浸させてプリプレグとし、導電性金属箔及び/又はメッキにより導電性金属層を設けた後、フォトレジスト等を用いて回路を形成し、こうした層を必要数重ねて積層板とする。
(2) 上記(1)のプリプレグを心材とし、その上(片面又は両面)に、リン含有エポキシ樹脂組成物からなる層と導電性金属層を積層する(ビルドアップ法)。このリン含有エポキシ樹脂組成物からなる層は有機及び/又は無機のフィラーを含んでいてもよい。
(3) 心材を用いず、リン含有エポキシ樹脂組成物からなる層と導電性金属層のみを交互に積層して電気・電子回路用積層板とする。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
〔物性の評価方法〕
以下の実施例及び比較例において、物性の評価は以下の1)〜8)に記載の方法で行った。
1)重量平均分子量および数平均分子量
東ソー(株)製「HLC−8120GPC装置」を使用し、以下の測定条件で、標準ポリスチレンとして、TSK Standard Polystyrene:F−128(Mw1,090,000、Mn1,030,000)、F−10(Mw106,000、Mn103,000)、F−4(Mw43,000、Mn42,700)、F−2(Mw17,200、Mn16,900)、A−5000(Mw6,400、Mn6,100)、A−2500(Mw2,800、Mn2,700)、A−300(Mw453、Mn387)を使用した検量線(較正曲線近似式:3次式)を作成して、重量平均分子量および数平均分子量をポリスチレン換算値として測定した。
カラム:東ソー(株)製「TSKGEL SuperHM−H+H5000+H4000+H3000+H2000」
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
検出:UV(波長254nm)
温度:40℃
試料濃度:0.1質量%
インジェクション量:10μl
但し、比較例1−1のエポキシ樹脂のみ、後述のようにテトラヒドロフランに対する溶解性が低いため、溶離液をN,N−ジメチルホルムアミドに変更し、以下の測定条件で、標準ポリスチレンとして、TSK Standard Polystyrene:F−850(Mw8,420,000)、F−450(Mw4,480,000)F−128(Mw1,090,000)、F−80(Mw706,000)、F−40(Mw427,000)、F−20(Mw190,000)、F−10(Mw96,400)、F−4(Mw37,900)、F−2(Mw18,100)、F−1(Mw10,200)A−5000(Mw5,970)、A−2500(Mw2,630)、A−1000(Mw1,050)、A−500(Mw590)を使用した検量線(較正曲線近似式:3次式)を作成して、重量平均分子量および数平均分子量をポリスチレン換算値として測定した。なお、試料は溶離液で溶解後、0.45μmのPTFEフィルターで濾過したものを用いた。
カラム:東ソー(株)製「TSKGEL α−M(7.8mm I.D.×30cmL×2)」
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(10mM LiBr添加)
流速:1.0ml/min
検出:RI
温度:60℃
試料濃度:0.1質量%
インジェクション量:100μl
2)n数
前記式(1)におけるnの値は上記で求められた数平均分子量より算出した。
3)エポキシ当量
JIS K 7236に準じて測定し、固形分換算値として表記した。
4)ガラス転移温度(Tg)
リン含有エポキシ樹脂又はリン含有エポキシ樹脂組成物の溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:100μm)にアプリケーターで塗布し、160℃で1.5時間、その後200℃で1.5時間乾燥及び/又は硬化させ、厚さ約50μmのエポキシ樹脂フィルムを得た。このフィルムを切り出し、SIIナノテクノロジー(株)製「DSC7020」を使用し、30〜250℃まで10℃/minで昇温してガラス転移温度を測定した。なお、ここでいうガラス転移温度は、JIS K7121「プラスチックの転移温度測定法」に記載されているうち「中点ガラス転移温度:Tmg」に基づいて測定した。
ガラス転移温度が145℃以上のものを耐熱性良好「○」、145℃未満のものを耐熱性不良「×」として評価した。
5)リン原子含量
原料の仕込み比率から、固形分中に含まれるリン原子の質量%を算出した。
6)残炭率
4)で作成したフィルム約10mg分を切り出し、SIIナノテクノロジー(株)製「TG/DTA7200」を使用し、30℃から600℃まで10℃/minで昇温した後の残炭率を下記式で算出した。残炭率が15%以上のものを難燃性良好「○」とし、15%未満のものは難燃性不良「×」とした。
(残炭率)=[(昇温後のサンプルの質量)/(昇温前のサンプルの質量)]×100
7)溶剤溶解性
リン含有エポキシ樹脂の溶液を、室温においてテトラヒドロフランで約100倍(重量)に希釈した際、目視で析出物がないものを溶剤溶解性良好「○」、析出物が確認されたものを溶剤溶解性不良「×」とした。
8)吸水率
4)で作成したエポキシ樹脂組成物のフィルムを4cm×4cmに切り出した試験片を、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に168時間放置した後の吸水率を下記式で算出した。吸水率が1.6%以下のものを低吸水性に優れる「○」、1.6%を超えるものを低吸水性に劣る「×」として評価した。
(吸水率)=[{(85℃、85%RHに168時間放置後の試験片の質量)
−(処理前の試験片の質量)}/(処理前の試験片の質量)]×100
〔リン含有エポキシ樹脂の製造と評価〕
[実施例1−1〜1−5、比較例1−1〜1−3]
表−1に示した配合で2官能エポキシ樹脂、ビスフェノール系化合物、触媒および反応用の溶剤を撹拌機付き反応容器に入れ、窒素ガス雰囲気下、145℃で、表−1に記載した反応時間で反応を行った。その後、希釈用の溶剤を加えて固形分濃度を調整し、得られた樹脂について分析、評価を行った。結果を表−1に示す。
なお、表−1中、反応に用いた化合物、触媒および溶剤は以下の通りである。
<2官能エポキシ樹脂>
(A−1):4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノールジグリシジルエーテル(エポキシ当量:224g/当量、m≒0.07)
(A−2):4,4’−シクロドデシレンビスフェノールジグリシジルエーテル(エポキシ当量:240g/当量、m≒0.04)
(A−3):4,4’−シクロドデシレンビス(2−メチルフェノール)ジグリシジルエーテル(エポキシ当量:257g/当量、m≒0.05)
(A−4):3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル(製品名:YX4000、エポキシ当量:186g/当量、三菱化学(株)製、m≒0.06)
<2官能フェノール系化合物>
(B−1):下記式で表されるジフェニルホスフィニルヒドロキノン(製品名:PPQ、水酸基当量:155g/当量、北興化学工業(株)製)
Figure 2015196720
(B−2):下記式で表される10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(製品名:HCA−HQ、水酸基当量:162g/当量、三光化学(株)製)
Figure 2015196720
(B−3):4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(本州化学工業(株)製 製品名:BisP−TMC、水酸基当量:155g/当量 )
(B−4):4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール(本州化学工業(株)製 製品名:BisP−AP、水酸基当量:145g/当量 )
<触媒>
(C−1):27質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液
(C−2):2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(製品名:EMI24、三菱化学(株)製 )
<溶剤>
(S−1):シクロヘキサノン
(S−2):N,N−ジメチルアセトアミド
(S−3):メチルエチルケトン
Figure 2015196720
〔エポキシ樹脂組成物の製造と評価〕
<実施例2−1〜2−5、比較例2−1〜2−3>
実施例1−1〜1−5、比較例1−1〜1−3で得られたエポキシ樹脂と、ビスフェノールAノボラック型多官能エポキシ樹脂80質量%MEK溶液(三菱化学(株)製 商品名「157S65B80)」)と、硬化剤として2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(三菱化学(株)製 商品名「EMI24」)の20質量%MEK溶液を、固形分の質量比で95:5:0.5となるようにはかり取り、よく撹拌してエポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物について、前述の分析、評価を行った。結果を表−2に示す。
なお、表−2中、「その他のエポキシ樹脂」、「硬化剤」における略号の意味は下記の通りである。
<その他のエポキシ樹脂>
157S65B80:三菱化学(株)製 ビスフェノールAノボラック型多官能エポキシ樹脂80質量%MEK溶液
<硬化剤>
EMI24:三菱化学(株)製 2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール
Figure 2015196720
表−1の結果より、実施例1−1〜1−5のリン含有エポキシ樹脂は、難燃性、耐熱性及び溶剤溶解性に優れたものであることがわかる。比較例1−1より、式(2)で表される化学構造を含むが、式(4)で表される構造を含まないものは、溶剤溶解性に劣ることがわかる。一方、比較例1−2より、式(2)で表される化学構造を含まず、式(4)で表される化学構造を含むものは、溶剤溶解性に優れるが残炭率が0であり、難燃性を発現しないことがわかる。比較例1−3のエポキシ樹脂は、式(2)で表される化学構造も式(4)で表される化学構造も含まず、耐熱性が低く、かつ難燃性を発現しない。
これらの結果から、式(2)で表される化学構造は難燃性の発現に必須であり、また式(4)で表される化学構造は溶剤溶解性向上に必須であり、更に式(2)で表される化学構造及び式(4)で表される化学構造は共に耐熱性を高める効果があることがわかる。
また、表−2の結果より、実施例2−1〜2−5のリン含有エポキシ樹脂硬化物は、難燃性、耐熱性に優れ、かつ吸水性が低いことがわかる。比較例2−1で用いたエポキシ樹脂は、式(4)で表される疎水性の化学構造を含まないため、吸水性が相対的に高い。比較例2−2、2−3で用いたエポキシ樹脂は、式(2)で表される化学構造を含まないので、残炭率が0であり、難燃性が発現せず、加えて比較例2−3で用いたエポキシ樹脂は、式(4)で表される剛直な脂環族構造を含まないため、耐熱性にも劣ることがわかる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂及びそれを含むリン含有エポキシ樹脂組成物、またリン含有エポキシ樹脂硬化物は、その特性として、難燃性に優れ、耐熱性が高く、吸水性が低く、かつ溶剤溶解性が高いという効果を奏する。このため、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に、電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。本発明のリン含有エポキシ樹脂及びそれを含むリン含有エポキシ樹脂組成物の用途の一例としては、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。

Claims (16)

  1. 下記式(1)で表され、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200,000であるリン含有エポキシ樹脂。
    Figure 2015196720
    (上記式(1)中、Aは上記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造と、上記式(4)で表される化学構造とを少なくとも含み、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は上記式(5)で表される基であり、nは繰り返し数の平均値であり10以上500以下である。上記式(2)及び式(3)中、A及びAは、それぞれ独立に、上記式(6)及び/又は(7)で表される化学構造であり、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(4)中、Xは炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基であり、R10〜R17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(6)及び(7)中、R18〜R35は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。)
  2. 前記式(4)において、Xがトリメチルシクロヘキシレン基及び/又はシクロドデシレン基である、請求項1に記載のリン含有エポキシ樹脂。
  3. 前記式(1)中、前記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造と前記式(4)で表される化学構造のモル比が、1/99〜99/1である、請求項1又は2に記載のリン含有エポキシ樹脂。
  4. 前記式(1)中、Aとして下記式(8)で表される化学構造を含み、該式(8)で表される化学構造のモル数がA全体のモル数に対して1〜99モル%である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂。
    Figure 2015196720
    (上記式(8)中、R36〜R43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基であり、Xは、直接結合、−SO−、−O−、−CO−、−C(CF−、−S−、又は炭素数1〜20の非環状炭化水素基から選ばれる2価の連結基である。)
  5. 下記式(9)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記式(10)で表されるビスフェノール系化合物とを反応させて得られ、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200,000であるリン含有エポキシ樹脂。
    Figure 2015196720
    (上記式(9)中のA’と式(10)中のA”とで、上記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造と、上記式(4)’で表される化学構造とを少なくとも含み、mは繰り返し数の平均値であり0以上6以下である。上記式(2)’及び(3)’中、A’及びA’は、それぞれ独立に、上記式(6)’及び/又は(7)’で表される化学構造であり、R’〜R’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(4)’中、X’は炭素数5〜20の2価の環状炭化水素基であり、R’10〜R’17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。上記式(6)’及び(7)’中、R’18〜R’35は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。)
  6. 前記式(4)’において、X’がトリメチルシクロヘキシレン基及び/又はシクロドデシレン基であることを特徴とする、請求項5に記載のリン含有エポキシ樹脂。
  7. 前記式(9)及び(10)中、前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造と前記式(4)’で表される化学構造のモル比が、1/99〜99/1である、請求項5又は6に記載のリン含有エポキシ樹脂。
  8. 前記式(9)中のA’及び/又は式(10)中のA”として下記式(8)’で表される化学構造を含み、該式(8)’で表される化学構造が式(9)中のA’及び式(10)中のA”の合計のモル数に対して1〜99モル%である、請求項5乃至7のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂。
    Figure 2015196720
    (上記式(8)中、R’36〜R’43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基であり、X’は、直接結合、−SO−、−O−、−CO−、−C(CF−、−S−、又は炭素数1〜20の非環状炭化水素基から選ばれる2価の連結基である。)
  9. エポキシ当量が500g/当量以上100,000g/当量以下、又は水酸基当量が500g/当量以上100,000g/当量以下である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むリン含有エポキシ樹脂組成物。
  11. 前記リン含有エポキシ樹脂100質量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100質量部含む、請求項10に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
  12. 更に他のエポキシ樹脂を含み、固形分としてのリン含有エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の合計100質量部中、他のエポキシ樹脂を1〜99質量部含む、請求項10又は11に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
  13. 前記リン含有エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の合計100質量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100質量部含む、請求項12に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
  14. 前記硬化剤がフェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類、及び活性エステル系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項10乃至13のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
  15. 請求項10乃至14のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を用いてなる電気・電子回路用積層板。
  16. 請求項10乃至14のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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