JP6550843B2 - エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子回路用積層板 - Google Patents
エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子回路用積層板 Download PDFInfo
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Description
耐熱性に優れているものの、いずれもごく低分子量のエポキシ樹脂のみであり、フィルム成形・塗布等のプロセスに適用するのに十分な製膜性を持たず、薄膜として用いることが困難であるという問題がある。本発明は、上記課題を解決し、高耐熱性、低吸湿性、低線膨張性、難燃性、フィルム製膜性等に優れたエポキシ樹脂を提供することを課題とするものである。
なっていてもよく、水素原子又は上記式(3)で表される基であり、nは繰り返し数の平
均値であり1以上500以下であり、上記式(7)中、R 17 〜R 24 は互いに異なって
いてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素であり、また、R
17 〜R 24 のうちのベンゼン環上で隣接した任意の2つの置換基は互いに結合して炭素
数4〜20の環状構造を形成してもよい。)
〜99モル%含まれる、[1]に記載のエポキシ樹脂。
]に記載のエポキシ樹脂。
ェノール系化合物とを反応させて得られ、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200
,000であるエポキシ樹脂。
返し数の平均値であり0以上6以下であり、上記式(7)中、R 17 〜R 24 は互いに異
なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素であり、ま
た、R 17 〜R 24 のうちのベンゼン環上で隣接した任意の2つの置換基は互いに結合し
て炭素数4〜20の環状構造を形成してもよい。)
体のモル数に対して1〜99モル%である、[4]に記載のエポキシ樹脂。
み、該式(4)’で表される化学構造がA’全体のモル数に対して1〜99モル%含まれ
る、[4]又は[5]に記載のエポキシ樹脂。
1]乃至[6]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂。
ポキシ樹脂組成物。
、[8]に記載のエポキシ樹脂組成物。
ポキシ樹脂を1〜99重量%含む、[8]又は[9]に記載のエポキシ樹脂組成物。
〜100重量部含む、[8]乃至[10]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
る硬化物。
・電子回路用積層板。
本発明のエポキシ樹脂は、下記式(1)で表され、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200,000であるものである。
前記式(1)中、Aは前記式(2)で表される化学構造を必ず含む。前記式(2)中、R1〜R8は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン元素であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、R1〜R8のうちのベンゼン環上で隣接した任意の2つの置換基は互いに結合して炭素数4〜20の環状構造を形成してもよい。R1〜R8は、好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、臭素原子、フッ素原子であり、より好ましくは水素原子、メチル基、ターシャリーブチル基である。また、R1〜R8のうちのベンゼン環上で隣接した任意の2つの置換基が互いに結合して炭素数4〜20の環状構造を形成する場合、その環状構造としては、芳香環を含んでいてもよく、例えば、ベンゼン環(炭素数4)、ナフタレン環(炭素数8)、シクロヘキセン環(炭素数4)等が挙げられる。
しくは10以上であり、一方、エポキシ樹脂の取り扱い性を更に良好なものとする観点から好ましくは200以下であり、より好ましくは100以下である。n数はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により得られた数平均分子量(Mn)より算出することができる。数平均分子量を求めるGPC法については具体例を後掲の実施例において説明する。
ある。
本発明のエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜200,000である。重量平均分子量が1,000より低いものではフィルム製膜性が低くなり、200,000より高いと樹脂の取り扱いが困難となる。本発明のエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、フィルム製膜性を向上させる観点から、2,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、一方、取り扱い性を良好なものとする観点から、160,000以下が好ましく、120,000以下がより好ましく、80,000以下が更に好ましい。なお、エポキシ樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定することができる。より詳細な方法の例について後述の実施例において説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、フィルム製膜性を向上させる観点から、エポキシ当量が500g/当量以上であることが好ましく、700g/当量以上であることがより好ましく、1,000g/当量以上であることが更に好ましく、1,500g/当量以上であることが特に好ましく、2,000g/当量以上であることが最も好ましい。一方、取り扱い性を良好なものとする観点から、100,000g/当量以下であることが好ましく、50,000g/当量以下であることがより好ましく、40,000g/当量以下であることが更に好ましく、30,000g/当量以下であることが最も好ましい。なお、本発明において「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K7236に準じて測定することができる。
本発明のエポキシ樹脂は、耐熱性に優れるものであり、耐熱性はガラス転移温度(Tg)により評価することができる。本発明のエポキシ樹脂においては、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、上限については特に制限はないが、通常210℃以下である。ガラス転移温度(Tg)は、DSC法により測定することができる。
本発明のエポキシ樹脂は、例えば、下記式(5)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記式(6)で表されるビスフェノール系化合物とを反応させる、二段法によって得ることができる。また、下記式(6)で表されるビスフェノール系化合物をエピハロヒドリンと反応させる、一段法によっても得ることができる。ただし、二段法では高分子量のエポキシ樹脂を一段法よりも容易に得ることができるため、二段法を用いることが好ましい。
2は互いに異なっていてもよく、活性水素を有さず、少なくともヘテロ元素を有する二価の連結基であり、−X’1−X’2−構造に少なくとも2種以上のヘテロ元素を有する。)
本発明の他の態様にかかるエポキシ樹脂は、前記式(5)で表される2官能エポキシ樹脂と、前記式(6)で表されるビスフェノール系化合物を反応させて得られ、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200,000であることを特徴とする。
上、更に好ましくは10モル%以上、特に好ましくは20モル%以上、最も好ましくは30モル%以上である。また、A’に起因する耐熱性を十分に発現させる観点からは、前記式(4)’で表される化学構造が、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは70モル%以下である。
イド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。これらの中でもトリス(p−トリル)ホスフィン、テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイドが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂は、一段法によっても製造することができる。具体的には、前記式(6)で表されるビスフェノール系化合物を、エピハロヒドリンと直接反応させればよい。ただし、前述のように、一段法で製造した本発明のエポキシ樹脂のうち低分子のものについては、二段法における2官能エポキシ樹脂として用いることができる。
.0〜4.5モル当量に相当する量のエピハロヒドリンに溶解させて均一な溶液とする。エピハロヒドリンの量が上記下限以上であると必要以上に高分子量化せず、反応を制御しやすく、また、適切な溶融粘度とすることができるために好ましい。一方、エピハロヒドリンの量が上記上限以下であると得られるエポキシ樹脂の高分子量化の観点から好ましい。
トン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メトキシプロパノール等のグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等の不活性な有機溶媒を使用してもよい。
再処理して十分に可鹸化ハロゲン量が低下した精製エポキシ樹脂を得ることができる。つまり、その粗製エポキシ樹脂を、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジオキサン、メトキシプロパノール、ジメチルスルホキシド等の不活性な有機溶媒に再溶解しアルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液で加えて好ましくは30〜120℃、より好ましくは40〜110℃、更に好ましくは50〜100℃の温度で好ましくは0.1〜15時間、より好ましくは0.3〜12時間、更に好ましくは0.5〜10時間再閉環反応を行った後、水洗等の方法で過剰のアルカリ金属水酸化物や副生塩を除去し、更に有機溶媒を減圧留去及び/又は水蒸気蒸留を行うと、加水分解性ハロゲン量が低減されたエポキシ樹脂を得ることができる。反応温度が上記下限以上であり、また、反応時間が上記下限以上であると再閉環反応が進行しやすいために好ましい。また、反応温度が上記上限以下であり、また、反応時間が上記上限以下であると高分子量化反応を制御しやすいために好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくとも前述した本発明のエポキシ樹脂と硬化剤とを含む。また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、他のエポキシ樹脂、無機フィラー、カップリング剤等を適宜配合することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は耐熱性、低線膨張性、低吸湿性、難燃性等に優れ、各種用途に要求される諸物性を十分に満たす硬化物を与えるものである。
本発明において硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質を示す。なお、本発明においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
硬化剤としてフェノール系硬化剤を用いることが、得られるエポキシ樹脂組成物の取り扱い性と、硬化後の耐熱性を向上させる観点から好ましい。フェノール系硬化剤の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジ
ヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o−クレゾールノボラック、m−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、フルオログリシノール、ピロガロール、t−ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,4−ジヒドロキシナフタレン、2,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,8−ジヒドロキシナフタレン、上記ジヒドロキシナフタレンのアリル化物又はポリアリル化物、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック、アリル化ピロガロール等が例示される。
硬化剤としてアミド系硬化剤を用いることが、耐熱性等の向上の観点から好ましい。硬化剤としてアミド系硬化剤を用いることにより、得られるエポキシ樹脂組成物の耐熱性の向上の観点から好ましい。アミド系硬化剤としてはジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
硬化剤としてイミダゾール類を用いることが、硬化反応を十分に進行させ、耐熱性を向上させる観点から好ましい。イミダゾール類としては、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール類との付加体等が例示される。なお、イミダゾール類は触媒能を有するため、一般的には後述する硬化促進剤にも分類されうるが
、本発明においては硬化剤として分類するものとする。
硬化剤として活性エステル系硬化剤を用いることは、得られる硬化物の吸水性を低下させる観点から好ましい。活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく、中でも、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたフェノールエステル類がより好ましい。カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
以上に挙げた活性エステル系硬化剤は1種のみでも、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。また、活性エステル系硬化剤は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂中のエポキシ基に対する硬化剤中の活性エステル基の当量比で0.2〜2.0の範囲となるように用いることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いることのできる硬化剤として、フェノール系硬化剤、アミド系硬化剤及びイミダゾール類以外のものとしては、例えば、アミン系硬化剤(ただし、第3級アミンを除く。)、酸無水物系硬化剤、第3級アミン、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。以上で挙げたその他の硬化剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂に加え、他のエポキシ樹脂を含むことができる。他のエポキシ樹脂を用いることで、不足する物性を補ったり、種々の物性を向上させたりすることができる。
が、重量平均分子量(Mw)10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましい。他のエポキシ樹脂の重量平均分子量が上記下限値以上であると、エポキシ樹脂組成物のフィルム製膜性が向上する傾向にある。他のエポキシ樹脂の重量平均分子量の上限については特に制限はないが、通常、20,000以下であり、120,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることが更に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物には、塗膜形成時の取り扱い時に、エポキシ樹脂組成物の粘度を適度に調整するために溶剤を配合し、希釈してもよい。本発明のエポキシ樹脂組成物において、溶剤は、エポキシ樹脂組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。なお、本発明においては「溶剤」という語と前述の「溶媒」という語をその使用形態により区別して用いるが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、以上で挙げたもの以外の成分(本発明において「その他の成分」と称することがある。)を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、硬化促進剤(ただし、「硬化剤」に含まれるものを除く。)、紫外線防止剤、酸化防止剤、カップリング剤、可塑剤、フラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂を硬化剤により硬化してなる硬化物は、高耐熱性、低線膨張性、低吸湿性、難燃性等のバランスに優れ、良好な硬化物性を示すものである。ここでいう「
硬化」とは熱及び/又は光等によりエポキシ樹脂組成物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。進行の程度は完全硬化であっても、半硬化の状態であってもよく、特に制限されないが、エポキシ基と硬化剤の硬化反応の反応率として通常5〜95%である。
本発明のエポキシ樹脂及びそれを含むエポキシ樹脂組成物は、高耐熱性、低吸湿性、低線膨張性、難燃性、フィルム製膜性(塗膜性)等に優れるという効果を奏する。このため、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に、電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。本発明のエポキシ樹脂及びそれを含むエポキシ樹脂組成物の用途の一例としては、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
本発明のエポキシ樹脂組成物は前述したように電気・電子回路用積層板の用途に好適に用いることができる。本発明において「電気・電子回路用積層板」とは、本発明のエポキシ樹脂組成物を含む層と導電性金属層とを積層したものであり、本発明のエポキシ樹脂組成物を含む層と導電性金属層とを積層したものであれば、電気・電子回路ではなくとも、例えばキャパシタも含む概念として用いられる。なお、電気・電子回路用積層板中には2種以上のエポキシ樹脂組成物からなる層が形成されていてもよく、少なくとも1つの層において本発明のエポキシ樹脂組成物が用いられていればよい。また、2種以上の導電性金属層が形成されていてもよい。
電気・電子回路用積層板における導電性金属としては、銅、アルミニウム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。本発明において電気・電子回路用積層板の導電性金属層においては、これらの金属の金属箔、あるいはメッキやスパッタリングで形成された金属層を用いることができる。
本発明における電気・電子回路用積層板の製造方法としては、例えば次のような方法が挙げられる。
(1) ガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、セルロース、ナノファイバーセルロース等の無機及び/又は有機の繊維材料を用いた不織布やクロス等に、本発明のエポキシ樹脂組成物を含浸させてプリプレグとし、導電性金属箔及び/又はメッキにより導電性金属層を設けた後、フォトレジスト等を用いて回路を形成し、こうした層を必要数重ねて積層板とする。
(2) 上記(1)のプリプレグを心材とし、その上(片面又は両面)に、エポキシ樹脂組成物からなる層と導電性金属層を積層する(ビルドアップ法)。このエポキシ樹脂組成物からなる層は有機及び/又は無機のフィラーを含んでいてもよい。
(3) 心材を用いず、エポキシ樹脂組成物からなる層と導電性金属層のみを交互に積層して電気・電子回路用積層板とする。
以下の実施例及び比較例において、物性の評価は以下の1)〜5)に記載の方法で行った。
東ソー(株)製「HLC−8320GPC装置」を使用し、以下の測定条件で、標準ポリスチレンとして、TSK Standard Polystyrene:F−128(Mw:1,090,000、Mn:1,030,000)、F−10(Mw:106,000、Mn:103,000)、F−4(Mw:43,000、Mn:42,700)、F−2(Mw:17,200、Mn:16,900)、A−5000(Mw:6,400、Mn:6,100)、A−2500(Mw:2,800、Mn:2,700)、A−300(Mw:453、Mn:387)を使用した検量線を作成して、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をポリスチレン換算値として測定した。
カラム:東ソー(株)製「TSKGEL SuperHM−H+H5000+H4000+H3000+H2000」
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/min
検出:UV(波長254nm)
温度:40℃
試料濃度:0.1重量%
インジェクション量:10μl
前記式(1)におけるnの値は上記で求められた数平均分子量より算出した。
JIS K 7236に準じて測定し、固形分換算値として表記した。
溶剤を乾燥除去したエポキシ樹脂、又はエポキシ樹脂硬化物のフィルムについて、SI
Iナノテクノロジー(株)製「DSC7020」を使用し、30〜250℃まで10℃/minで昇温してガラス転移温度を測定した。なお、ここでいうガラス転移温度は、JIS K7121「プラスチックの転移温度測定法」に記載されているうち「中点ガラス転移温度:Tmg」に基づいて測定した。ガラス転移温度が高いものほど耐熱性に優れたものと評価される。
エポキシ樹脂のシクロヘキサノン溶液(30重量%)をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚み:100μm)にアプリケーターで塗布し、160℃で1.5時間、その後200℃で1.5時間乾燥させ、厚さ約50μmのエポキシ樹脂フィルムを得た。このエポキシ樹脂フィルムの塗膜性について以下の基準で評価した。
○:PETフィルム上の塗膜外観にはじきが観察されなかった。
△:PETフィルム上の塗膜外観にはじきが少数観察された。
×:PETフィルム上ではじいて製膜できなかった。
上記6)で得たエポキシ樹脂フィルム又はエポキシ樹脂硬化物のフィルムについて4cm×4cmに切り出した試験片を、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に168時間放置した後の吸水率を下記式で算出した。吸水率が低いものほど低吸湿性に優れたものと評価される。
(吸水率)=[{(85℃、85%RHに168時間放置後の試験片の質量)
−(処理前の試験片の質量)}/(処理前の試験片の質量)]×100
溶剤を乾燥除去したエポキシ樹脂、又はエポキシ樹脂硬化物のフィルムについて、SIIナノテクノロジー(株)製「TG/DTA」を使用し、窒素雰囲気下、30〜600℃まで10℃/minで昇温した後の残炭率(ここでいう「残炭率」には炭素のみならず、加熱後に残った残渣全体が含まれる。)を測定した。残炭率が高いものほど難燃性に優れたものと評価される。
エポキシ樹脂組成物の溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:100μm)にアプリケーターで塗布し、160℃で1.5時間、
その後200℃で1.5時間乾燥、硬化させ、厚さ約50μmのエポキシ樹脂硬化フィル
ムを得た。これを7mm×20mmに切り出して作成した試験片を用い、SIIナノテクノロジー(株)製「TMA/SS6100」を使用し、30〜250℃まで5℃/minで昇温し、ガラス転移温度及び平均線膨張係数を測定した。平均線膨張係数は30℃からガラス転移点までの間の直線部分をとり、評価した。ガラス転移温度が高いものほど耐熱性に優れたものと評価される。また、平均線膨張係数が低いものほど低線膨張性に優れたものと評価される。
以下の実施例・比較例において用いた原料、触媒、溶媒及び溶剤は以下の通りである。
(A−1):三菱化学(株)製 商品名「YX4000」(3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、エポキシ当量186g/当量)(A−2):三菱化学(株)製 商品名「828US」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量186g/当量)
(A−3):三菱化学(株)製 商品名「806H」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量169g/当量)
(A−4):Phenol, 4,4‘−cyclododecylidenebis−,polymer with 2−(chloromethyl)oxirane(エポキシ当量:242g/当量)(A−5):ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(エポキシ当量:236g/当量)
(B−1):フェノールフタレインアニリド(METROPOLITAN EXIMCH
EM社製 製品名:PPPBP(下式[化11]で表される化学構造を有する)、水酸基
当量:197g/当量)
(C−1):27重量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液
(C−2):40重量%テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイド水溶液
(C−3):4−(ジメチルアミノ)ピリジン
(S−1):シクロヘキサノン
<実施例1−1〜1−7、比較例1−2>
表−1に示した配合で2官能エポキシ樹脂、ビスフェノール系化合物、触媒および反応用の溶媒を撹拌機付き反応容器に入れ、窒素ガス雰囲気下150℃で、表−1に記載した反応時間で反応を行った。その後、希釈用の溶剤を加えて固形分濃度を調整した。反応生成物から定法により溶剤を除去した後、得られた樹脂について分析を行った。結果を表−2、表―3に示す。
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三口フラスコにビスフェノール化合物(B−1)100g、エピクロルヒドリン305.2g、イソプロピルアルコール119.0gを仕込み、40℃に昇温して均一に溶解させた後、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液48.6gを90分かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、滴下終了後には系内が65℃となるようにした。その後、65℃で30分保持し反応を完了させ、水洗に
より副生塩及び過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンとイソプロパノールを留去して、粗製エポキシ樹脂を得た。この粗製エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン192.8gに溶解させ、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液14.9gを加え、65℃の温度で1時間再び反応させた。その後反応液に第一リン酸ナトリウム水溶液を加えて、過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去した。その後、シクロヘキサノンを加えて固形分濃度を調整し、得られたエポキシ樹脂について分析を行った。その結果を表−2に示す。
「1256」:三菱化学(株)製 ビスフェノールA型高分子量エポキシ樹脂
<実施例2−1〜2−5,比較例2−1>
実施例1−1、1−3、1−5〜1−7で得られたエポキシ樹脂または比較例1−3のエポキシ樹脂と、ビスフェノールAノボラック型多官能エポキシ樹脂80重量%MEK溶液(三菱化学(株)製 商品名「157S65B80)」)と、硬化剤として2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(三菱化学(株)製 商品名「EMI24」)の20重量%MEK溶液を、固形分の質量比で95:5:0.5となるようにはかり取り、よく撹
拌してエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:100μm)にアプリケーターで塗布し、160℃で1.5時間、その後200℃で1.5時間乾燥、硬化させ、厚さ約50μmのエポキシ樹脂硬化物のフィルムを得た。これらについて、前述の方法を用いてガラス転移点、線膨張係数を測定した。結果を表−4に示す。なお、表−3の「その他のエポキシ樹脂」、「硬化剤」における略号の意味は下記の通りである。
(D−1):三菱化学(株)製 ビスフェノールAノボラック型多官能エポキシ樹脂80重量%MEK溶液
「EMI24」:三菱化学(株)製 2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール
プフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
Claims (13)
- 前記式(1)中、前記式(7)で表される化学構造がA全体のモル数に対して1〜99モル%含まれる、請求項1に記載のエポキシ樹脂。
- 前記式(5)及び/又は(6)中、前記式(7)で表される化学構造が、A’全体のモル数に対して1〜99モル%である、請求項4に記載のエポキシ樹脂。
- エポキシ当量が500g/当量以上100,000g/当量以下である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂。
- 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂100重量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100重量部含む、請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 更に他のエポキシ樹脂を含み、固形分としての全エポキシ樹脂成分中、他のエポキシ樹脂を1〜99重量%含む、請求項8又は9に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 固形分としての全エポキシ樹脂成分100重量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100重量部含む、請求項8乃至10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項8乃至10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
- 請求項8乃至10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる電気・電子回路用積層板。
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