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エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子回路用積層板

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JP6268753B2

Japan

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高橋 淳
淳 高橋
以帆 上村
以帆 上村
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Mitsubishi Chemical Corp

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2013 JP

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2018-01-31
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Description

本発明は、高耐熱性でありながら製膜性、良好な伸び性を有し、かつ低吸湿性であるエポキシ樹脂に関する。また、該エポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物及びその硬化物並びに該エポキシ樹脂組成物からなる電気・電子回路用積層板に関する。
エポキシ樹脂は、耐熱性、接着性、耐水性、機械的強度及び電気的特性に優れていることから、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野で使用されている。特に、電気・電子分野では、絶縁注型、積層材料、封止材料等において幅広く使用されている。近年、電気・電子機器に使用される多層回路基板は、機器の小型化、軽量化及び高機能化が進んでおり、更なる多層化、高密度化、薄型化、軽量化と信頼性及び成形加工性の向上等が要求されている。
電気・電子回路用積層板等の電気・電子部品の材料となるエポキシ樹脂に要求される性能としては、高耐熱性と低吸水率が挙げられる。耐熱性については、従来、電気的接続に用いられていた鉛含有はんだが、有害性が懸念される重金属の使用を控える方針のために鉛フリーはんだへ移行してきている。これに伴い、リフロー温度は以前よりも高い260℃前後に上昇し、これに耐えうるエポキシ樹脂が必要となっている。また、エポキシ樹脂をフィルム成形・塗布等のプロセスに適用する場合、十分な製膜性を確保し、膜が脆くならないようにするためには、伸びが大きいことが求められる。更に、吸水率が高いと加熱時に水分が蒸発・膨張してクラックや剥離の原因となるため、低吸湿性であることも必要である。
最近では、種々の骨格をエポキシ樹脂に導入することでこれらの特性を向上させる試みが行われている。その中でも、耐熱性を向上させることを目的として、分子に平面性の高い構造を導入した例がいくつか開示されている。
例えば、特許文献1には、ナフタレン骨格を導入したエポキシ樹脂が開示されている。また特許文献2には、ジヒドロアントラキノン骨格を有するエポキシ樹脂が開示されている。更に特許文献3には、アントラセン骨格を有するビスフェノール型化合物と、その誘導体としてジグリシジルエーテル化合物と、その酸無水物による硬化物が開示されている。
特開昭61−73719号公報 特開2005−97473号公報 特開2011−105699号公報
本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されているナフタレン骨格含有エポキシ樹脂は、耐熱性は高いものの、分子量が小さいために、硬化反応で生成する二級水酸基が相対的に多くなり、吸水率が高いという欠点が見出された。
一方、ナフタレンより平面性が高いと思われるアントラキノン骨格は非常に不安定であり、エポキシ樹脂へ直接適用することが難しいという問題点がある。特許文献2に記載さ
れているジヒドロアントラキノン骨格は、これを改善するために部分水素添加を行ったものであり、アントラキノン骨格に比較して安定性は改善されているが、本発明者の検討により、高分子量化が困難であるということが見出されており、フィルム成型を必要とする用途には適用しにくいという問題点がある。
これに対し、前記特許文献3のアントラセン骨格を有するビスフェノール化合物は安定であるが、結晶性の高いアントラセン含有のモノマーでは、該モノマーから得られるエポキシ樹脂をフィルムとして加工した際の伸び性や可撓性が発現しにくいという問題がある。
本発明は、上記課題を解決し、耐熱性が高く、良好な製膜性、伸び性を有し、かつ吸水性が低いエポキシ樹脂を提供することを課題とするものである。また、本発明においては高耐熱性、製膜性、伸び性と低吸水性に加え、低線膨張、難燃性、高熱伝導性、低誘電率、低誘電正接等をバランスよく備えたエポキシ樹脂を提供することも課題とするものである。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者は、特定のアントラセン骨格を有するエポキシ樹脂が、耐熱性、低吸水性、製膜性、伸び性、低線膨張、難燃性、高熱伝導性、低誘電率、低誘電正接等の種々の物性のバランスに優れることを見出した。即ち本発明の要旨は以下の[1]〜[15]に存する。
[1] 下記式(1)で表され、重量平均分子量が1,000〜200,000であることを特徴とするエポキシ樹脂。
Figure 0006268753
(上記式(1)中、Aは上記式(2)で表される化学構造を必ず含み、Rは水素原子又は上記式(3)で表される基であり、nは繰り返し数の平均値であり1以上500以下である。上記式(2)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換基として炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基を有していて
もよい芳香環であり、Xは直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び−CO−から選ばれる2価の連結基である。)
[2] 前記式(1)中、前記式(2)で表される化学構造が、A全体のモル数に対して1〜99モル%含まれる、[1]に記載のエポキシ樹脂。
[3] 前記式(1)中、Aとして下記式(4)で表される化学構造を含み、該式(4)で表される化学構造がA全体のモル数に対して1〜99モル%含まれる、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂。
Figure 0006268753
(上記式(4)中、Rは直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び−CO−から選ばれる基であり、Rは互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基である。)
[4] 下記式(5)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記式(6)で表されるビスフェノール系化合物とを反応させて得られることを特徴とするエポキシ樹脂。
Figure 0006268753
(上記式(5)又は式(6)中、A’は上記式(2)’で表される化学構造を必ず含み、mは繰り返し数の平均値であり0以上6以下である。上記式(2)’中、A’及びA’は、それぞれ独立に、置換基として炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基を有していてもよい芳香環であり、X’は直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び−CO−か
ら選ばれる2価の連結基である。)
[5] 前記式(5)及び(6)中、前記式(2)’で表される化学構造が、A’全体のモル数に対して1〜99モル%含まれる、[4]に記載のエポキシ樹脂。
[6] 前記式(5)及び(6)中、A’として下記式(4)’で表される化学構造を含み、該式(4)’で表される化学構造がA’全体のモル数に対して1〜99モル%含まれる、[4]又は[5]に記載のエポキシ樹脂。
Figure 0006268753
(上記式(4)’中、R’は直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び−CO−から選ばれる基であり、R’は互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基である。)
[7] エポキシ当量が500g/当量以上100,000g/当量以下である、[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂。
[8] [1]乃至[7]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物。
[9] 前記エポキシ樹脂100重量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100重量部含む
、[8]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[10] 更に他のエポキシ樹脂を含み、固形分としての全エポキシ樹脂成分中、他のエポキシ樹脂を1〜99重量%含む、[8]又は[9]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[11] 更に他のエポキシ樹脂を含み、固形分としての全エポキシ樹脂成分100重量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100重量部含む、[8]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[12] 固形分としての全エポキシ樹脂成分中、他のエポキシ樹脂を1〜99重量部含む、請求項11に記載のエポキシ樹脂組成物。
[13] 前記硬化剤がフェノール系硬化剤、アミド系硬化剤及びイミダゾール類からなる群から選ばれる少なくとも1種である[8]乃至[12]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
[14] [8]乃至[13]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を用いてなる電気・電子回路用積層板。
[15] [8]乃至[13]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
本発明によれば、耐熱性が高く、良好な伸び性を有し、かつ吸水率が低いエポキシ樹脂を提供することができる。このため、本発明のエポキシ樹脂は、接着剤、塗料、土木用建築材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。本発明のエポキシ樹脂及びそれを含むエポキシ樹脂組成物は、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等に好適に用いることができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
〔エポキシ樹脂〕
本発明のエポキシ樹脂は、下記式(1)で表され、重量平均分子量が1,000〜200,000であることを特徴とする。本発明のエポキシ樹脂は、耐熱性に優れ、良好な製膜性、伸び性を有し、かつ吸湿率が低いという特長を有する。これは、アントラセン骨格の剛直性によって分子間の相互作用が強化されるために耐熱性が良好となる一方、ある程度の分子鎖長を有することで、製膜性を発現し、更に、式(2)に含まれるアントラセン骨格を含む芳香環同士が重なり合った構造が「滑る」ことができるため、引っ張りの応力がかかった際にその応力を緩和することで伸び性を発現し、また、単位ユニット当たりの分子量が通常のエポキシ樹脂よりも大きいことで、吸湿性の原因となる二級水酸基の濃度が相対的に低くなるためであると推定される。
Figure 0006268753
(上記式(1)中、Aは上記式(2)で表される化学構造を必ず含み、Rは水素原子又は上記式(3)で表される基であり、nは繰り返し数の平均値であり1以上500以下であ
る。上記式(2)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換基として炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基を有していてもよい芳香環であり、Xは直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び−CO−から選ばれる2価の連結基である。)
<化学構造>
前記式(1)中、Aは前記式(2)で表される化学構造を必ず含む。前記式(2)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換基として炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基を有していてもよい芳香環である。
及びAとしての芳香環としては例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の炭素数6〜14の芳香環が挙げられる。これらの中でも、前記式(1)中のアントラセン骨格に基づく高耐熱性、低吸湿性の効果を良好なものとする観点からA及びAとしての芳香環として好ましいのはベンゼン環である。
ここで、前記式(2)のA及びAの芳香環の置換基における炭素数1〜12のアルキル基としては次のようなものが挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、n−デシル基、シクロデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基、2−フェニルイソプロピル基等である。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
また、前記式(2)のA及びAの芳香環の置換基における炭素数1〜12のアルコキシ基としては次のようなものが挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert−ペントキシ基、シクロペントキシ基、n−ヘキシロキシ基、イソヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、n−ヘプトキシ基、シクロヘプトキシ基、メチルシクロヘキシロキシ基、n−オクチロキシ基、シクロオクチロキシ基、n−ノニロキシ基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシロキシ基、n−デシロキシ基、シクロデシロキシ基、n−ウンデシロキシ基、n−ドデシロキシ基、シクロドデシロキシ基、ベンジロキシ基、メチルベンジロキシ基、ジメチルベンジロキシ基、トリメチルベンジロキシ基、ナフチルメトキシ基、フェネチロキシ基、2−フェニルイソプロポキシ基等である。これらの中でもメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
前記式(2)のA及びAの芳香環の置換基における炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、エチルフェニル基、スチリル基、キシリル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、エチニルフェニル基、ナフチル基、ビニルナフチル基等が挙である。
前記式(2)のA及びAの芳香環の置換基における炭素数2〜12のアルケニル基
としては次のようなものが挙げられる。例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルビニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シンナミル基、ナフチルビニル基等が挙である。これらの中でもビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルビニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基等の炭素数2〜4のアルケニル基が好ましい。
更に、前記式(2)のA及びAの芳香環の置換基における炭素数2〜12のアルキニル基としては次のようなものが挙げられる。例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1,3−ブタンジエニル基、フェニルエチニル基、ナフチルエチニル基等である。これらの中でもエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1,3−ブタンジエニル基等の炭素数2〜4のアルキニル基が好ましい。
前記式(2)におけるA及びAは、好ましくは無置換の芳香環又は炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有する芳香環であり、特に好ましくは無置換の芳香環である。置換基が立体的に大きすぎると、アントラセン骨格の高い平面性による分子間の重なりを阻害し、耐熱性が低下する可能性がある。一方で、溶剤溶解性の面では立体的に大きな置換基を有していた方が有利であるが、本発明のエポキシ樹脂は連結基Xの効果によって適度に結晶性が崩されているため、置換基を有する場合でも炭素数1〜4で十分に溶剤溶解性を確保できる。
また、前記式(2)におけるXは、直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び−CO−から選ばれる2価の連結基である。
ここで、前記式(2)におけるXの炭素数1〜13の2価の炭化水素基としては、例えば、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CHPh−(ただし、本発明においてPhはフェニル基である。)、-C(CH)Ph-、−CPh−、9,9−フルオレニレン基、1,1−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基、1,1−シクロヘキシレン基、3,3,5−トリメチル−1,1−シクロヘキシレン基、1,1−シクロドデシレン基、1,2−エチレン基、1,2−シクロプロピレン基、1,2−シクロブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−フェニレン基、1,3−プロピレン基、1,3−シクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,3−フェニレン基、1,4−ブチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基等が挙げられる。
これらの前記式(2)におけるXの連結基の中でも、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−等の炭素数1〜3の2価の炭化水素基や−O−、−S−等が好ましく、−CH−が特に好ましい。アントラセン骨格とAの連結に関与する原子数が多すぎると、エポキシ樹脂全体としての骨格の剛直性が低くなり、ガラス転移点が低下し、耐熱性が低下する可能性がある。また、置換基が立体的に大きすぎると、アントラセン骨格の高い平面性による分子間の重なりを阻害し、耐熱性が低下する可能性がある。
前記式(1)中、Rは水素原子又は前記式(3)で表される基(エポキシ基)である。即ち、式(1)において、Rは末端構造を示すものであり、両末端が水素原子又は式(3)のエポキシ基であってもよく、片末端のみが水素原子又は式(3)のエポキシ基であってもよい。ただし、前記式(1)は、エポキシ樹脂であることから、式(1)中のRとして少なくともエポキシ基を含むものである。本発明のエポキシ樹脂は、通常、これらの末端を有する分子や、次に説明する繰り返し数nの異なる分子等の混合物である。
前記式(1)中、nは繰り返し数であり、平均値である。その値の範囲はフィルム製膜性や伸び性の観点から1以上であり、また、樹脂の取り扱い性の観点から500以下である。フィルム製膜性や伸び性を更に良好なものとする観点から好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、一方、樹脂の取り扱い性を更に良好なものとする観点から好ましくは200以下であり、より好ましくは100以下である。n数はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により得られた数平均分子量Mnより算出することができる。数平均分子量を求めるGPC法については具体例を後掲実施例において説明する。
前記式(1)中、A全体のモル数に対し前記式(2)で表される化学構造が含まれる割合は、アントラセン骨格に起因する耐熱性を十分に発現させるという観点から、好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは5モル%以上であり、更に好ましくは20モル%以上であり、特に好ましくは35モル%以上である。更に、溶剤溶解性やコストの観点からは、前記式(2)で表される化学構造が好ましくは99モル%以下であり、より好ましくは95モル%以下であり、更に好ましくは80モル%以下であり、特に好ましくは65モル%以下である。
また、本発明のエポキシ樹脂には、前記式(1)中のAにおいて、更に他の化学構造が含まれていてもよく、特に下記式(4)で表される化学構造が含まれていることが好ましい。より具体的には、溶剤溶解性やコストの観点からは、より好ましくは前記式(4)で表される化学構造がA全体のモル数に対し、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることが更に好ましく、35モル%以上であることが特に好ましい。
Figure 0006268753
(上記式(4)中、Rは直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び−CO−から選ばれる基であり、Rは互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基である。)
前記式(4)において、Rは直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び−CO−から選ばれる基である。
ここで、前記式(4)のRにおける炭素数1〜13の2価の炭化水素基としては次のようなものが挙げられる。例えば、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CHPh−、−C(CH)Ph−、−CPh−、9,9−フルオレニレン基、1,1−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基、1,1−シクロヘキシレン基、3,3,5−トリメチル−1,1−シクロヘキシレン基、1,1−シクロドデシレン基、1,2−エチレン基、1,2−シクロプロピレン基、1,2−シクロブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−フェニレン基、1,3−プロピレン基、1,3−シクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,3−フェニレン基、1,4−ブチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基等で
ある。
これらの中でも、二つの芳香環の回転自由度が低い方が耐熱性に優れる傾向にあることから、Rは直接結合、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CHPh−、−C(CH)Ph−、−CPh−、9,9−フルオレニレン基、1,1−シクロヘキシレン基、3,3,5−トリメチル−1,1−シクロヘキシレン基、1,1−シクロドデシレン基、−O−、−S−、−SO−、−CO−等のように、二つの芳香環の連結に関与する原子数が0又は1のものが好ましい。これらの中でも直接結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−C(CH)Ph−、3,3,5−トリメチル−1,1−シクロヘキシレン基、9,9−フルオレニレン基が特に好ましい。
また、Rが直接結合である場合、そのビフェニル骨格は、2,2’−ビフェニル骨格、2,3’−ビフェニル骨格、2,4’−ビフェニル骨格、3,3’−ビフェニル骨格、3,4’−ビフェニル骨格、4,4’−ビフェニル骨格のいずれでもよいが、好ましくは4,4’−ビフェニル骨格である。一方、Rが−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−CHPh−、−C(CH)Ph−、−CPh−、9,9−フルオレニレン基、1,1−シクロヘキシレン基、3,3,5−トリメチル−1,1−シクロヘキシレン基、1,1−シクロドデシレン基、−O−、−S−、−SO−、−CO−等である場合、これらの芳香環における結合位置は、2,2’位、2,3’ 位、2,4’ 位、3,3’位、3,4’ 位、4,4’ 位のいずれでもよいが、好ましくは4,4’位である。
また、前記式(4)において、Rは互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基又はハロゲン元素から選ばれる基である。
ここで、前記式(4)のRの炭素数1〜12のアルキル基としては次のようなものが挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、n−デシル基、シクロデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基、2−フェニルイソプロピル基等である。
また、前記式(4)のRの炭素数1〜12のアルコキシ基としては次のようなものが挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert−ペントキシ基、シクロペントキシ基、n−ヘキシロキシ基、イソヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、n−ヘプトキシ基、シクロヘプトキシ基、メチルシクロヘキシロキシ基、n−オクチロキシ基、シクロオクチロキシ基、n−ノニロキシ基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシロキシ基、n−デシロキシ基、シクロデシロキシ基、n−ウンデシロキシ基、n−ドデシロキシ基、シクロドデシロキシ基、ベンジロキシ基、メチルベンジロキシ基、ジメチルベンジロキシ基、トリメチルベンジロキシ基、ナフチルメトキシ基、フェネチロキシ基、2−フェニルイソプロポキシ基等である。
前記式(4)のRの炭素数6〜12のアリール基としては次のようなものが挙げられる。例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、エチルフェニル基、スチリル基、キシリル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、エチニルフェニル基、ナフチル基、ビニルナフチル基等である。
前記式(4)のRの炭素数2〜12のアルケニル基としては次のようなものが挙げられる。例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルビニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シンナミル基、ナフチルビニル基等である。
前記式(4)のRの炭素数2〜12のアルキニル基としては次のようなものが挙げられる。例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1,3−ブタンジエニル基、フェニルエチニル基、ナフチルエチニル基等である。
前記式(4)のRのハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。これらの中でもフッ素が好ましい。
以上で挙げた中でも、前記式(4)のRとしては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、特に好ましくは水素原子、メチル基である。これは置換基が立体的に大きすぎると、分子間の凝集が妨げられ、耐熱性が低下する可能性があるためである。また、Rが炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素である場合、Rの置換数は2または4であることが好ましく、更に、Rの置換数が2である場合、該アルキル基は2位及び2’位にあることが好ましく、Rの置換数が4である場合、該アルキル基は2位、2’位、6位及び6’位にあることが好ましい。
なお、前記式(2)及び前記式(4)で表される化学構造の割合は、後述のエポキシ樹脂の製造方法の項目において説明する、原料の比率によって制御することができる。このため、本発明のエポキシ樹脂においては、原料として用いた2官能エポキシ樹脂とビスフェノール系化合物とのそれぞれに含まれる前記式(2)及び前記式(4)で表される化学構造の割合が、そのまま本発明のエポキシ樹脂に含まれる前記式(2)及び前記式(4)で表される化学構造の割合とみなすこととする。
<重量平均分子量>
本発明のエポキシ樹脂の重量平均分子量Mwは、1,000〜200,000である。重量平均分子量が1,000より低いものではフィルム製膜性や伸び性が低くなり、200,000より高いと樹脂の取り扱いが困難となる。本発明のエポキシ樹脂の重量平均分子量Mwは、フィルム製膜性や伸び性を向上させる観点から、2,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、一方、取り扱い性を良好なものとする観点から、120,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましい。なお、エポキシ樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定することができる。より詳細な方法の例について後述の実施例において説明する。
<エポキシ当量>
本発明のエポキシ樹脂は、フィルム製膜性や伸び性を向上させる観点から、エポキシ当量が500g/当量以上が好ましく、より好ましくは1,000g/当量以上、更に好ましくは2,500g/当量以上、特に好ましくは3,500g/当量以上であり、最も好ましくは5,000g/当量以上である。一方、取り扱い性を良好なものとする観点から、100,000g/当量以下が好ましく、より好ましくは50,000g/当量以下、
更に好ましくは30,000g/当量以下、特に好ましくは20,000g/当量以下である。なお、本発明において「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K7236に準じて測定することができる。
<ガラス転移温度:Tg>
本発明のエポキシ樹脂は、耐熱性に優れるものであり、耐熱性はガラス転移温度Tgにより評価することができる。本発明のエポキシ樹脂においては、Tgが好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、上限については特に制限はないが、通常210℃以下である。ガラス転移温度は、DSC法により測定することができる。
<エポキシ樹脂の製造方法>
本発明のエポキシ樹脂は、例えば、下記式(5)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記式(6)で表されるビスフェノール系化合物とを反応させる、二段法によって得ることができる。また、下記式(6)で表されるビスフェノール系化合物をエピハロヒドリンと反応させる、一段法によっても得ることができる。ただし、二段法では高分子量のエポキシ樹脂を一段法よりも容易に得ることができるため、二段法を用いることが好ましい。
Figure 0006268753
(上記式(5)又は(6)中、A’は上記式(2)’で表される化学構造を必ず含み、mは繰り返し数の平均値であり0以上6以下である。上記式(2)’中、A’及びA’は、それぞれ独立に、置換基として炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基を有していてもよい芳香環であり、X’は直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び−CO−から選ばれる2価の連結基である。)
[二段法による製造]
本発明の他の態様にかかるエポキシ樹脂は、前記式(5)で表される2官能エポキシ樹脂と、前記式(6)で表されるビスフェノール系化合物を反応させて得られることを特徴とする。
(2官能エポキシ樹脂)
本発明のエポキシ樹脂の製造に用いられる2官能エポキシ樹脂は、前記式(5)で表されるエポキシ樹脂であり、例えば、前記式(6)で表されるビスフェノール系化合物を、後述の一段法によってエピハロヒドリンと縮合させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
前記式(5)中、A’は前記式(2)’で表される化学構造を含んでいてもよいし、含まなくともよい。ただし、前記式(6)中のA’が式(2)’を含まない場合は、前記式(5)は前記式(2)’を必ず含むものである。
前記式(2)’におけるA’及びA’の定義と好ましいものは、それぞれ前記式(2)におけるA及びAと同様のものである。また、前記式(2)’におけるX’の定義と好ましいものは、前記式(2)におけるXと同様のものである。
前記式(5)’におけるmは繰り返し数の平均値であり、0以上6以下である。
(ビスフェノール系化合物)
本発明のエポキシ樹脂の製造に用いられるビスフェノール系化合物は、前記式(6)で表されるビスフェノール系化合物である。
前記式(6)中、A’は前記式(2)’で表される化学構造を含んでいてもよいし、含まなくともよい。ただし、前記式(5)中のA’が式(2)’を含まない場合は、前記式(6)は前記式(2)’を必ず含む。つまり、二段法により製造されるエポキシ樹脂には、前記式(2)’で表される化学構造が必ず含まれるものであり、これを満たす限り、前記式(2)’の化学構造が、2官能エポキシ樹脂及びビスフェノール系化合物のいずれかに含まれるものであってもよく、またその化学構造の割合も制限されるものではない。
また、前記式(5)又は式(6)におけるA’として前記式(2)’の化学構造を含まない場
合には、該A’には公知の任意の化学構造を導入することができる。
本発明のエポキシ樹脂の製造に用いる2官能エポキシ樹脂又はビスフェノール系化合物には、前記式(2)’で表される化学構造が、前記式(5)及び式(6)中のA’全体のモル数に対して1〜99モル%含まれていることが好ましい。アントラセン骨格に起因する耐熱性を十分に発現させるという観点からは、より好ましくは前記式(2)’で表される化学構造が5モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは35モル%以上である。また、溶剤溶解性やコストの観点からは、より好ましくは上記式(2)’で表される化学構造が95モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは65モル%以下である。
また本発明のエポキシ樹脂の製造に用いる2官能エポキシ樹脂又はビスフェノール系化合物には、下記式(4)’で表される化学構造が含まれていることが好ましい。溶剤溶解性やコストの観点からは、前記式(5)又は式(6)中のA’全体のモル数に対して前記式(4)’で表される化学構造が好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは35モル%以上である。また、アントラセン骨格に起因する耐熱性を十分に発現させるという観点からは、より好ましくは前記式(4)’で表される化学構造が95モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは65モル%以下である。
Figure 0006268753
(上記式(4)’中、R’は直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び−CO−から選ばれる基であり、R’は互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基である。)
前記式(4)’中におけるR’及びR’の定義と好ましいものは、それぞれ前記式(4)におけるR及びRと同様のものである。
本発明のエポキシ樹脂の製造に用いられる2官能エポキシ樹脂としては、その末端基不純物である加水分解塩素濃度が200ppm以下であることが好ましく、また、αグリコール基濃度が100meq/kg以下であることが好ましい。2官能エポキシ樹脂は加水分解塩素濃度が200ppm以下であったり、αグリコール基濃度が100meq/kg以下であると、高分子量化させやすくなるために好ましい。
本発明のエポキシ樹脂の製造において、上記の2官能エポキシ樹脂とビスフェノール系化合物の使用量は、その配合当量比で、(エポキシ基):(フェノール性水酸基)=1:0.90〜1.10となるようにするのが好ましい。この当量比が上記範囲であると高分子量化を進行させやすくなるために好ましい。
本発明のエポキシ樹脂の合成には触媒を用いてもよく、その触媒としては、エポキシ基とフェノール性水酸基、アルコール性水酸基やカルボキシル基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよい。例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属の水素化物;酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機リン化合物の具体例としては、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド等が
挙げられる。
第3級アミンの具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらの中でもテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドが好ましい。
環状アミン類の具体例としては、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5等が挙げられる。
イミダゾール類の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
以上に挙げた触媒の中でも第4級アンモニウム塩が好ましい。また、触媒は1種のみを使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
触媒の使用量は反応固形分中、通常0.001〜1重量%であるが、アルカリ金属化合物を使用すると得られるエポキシ樹脂中にアルカリ金属分が残留し、それを使用した電子・電気部品の絶縁特性を悪化させるおそれがあるため、エポキシ樹脂中のリチウム、ナトリウム及びカリウムの原子含有量の合計が通常、60ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
また、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等を触媒として使用した場合も、得られるエポキシ樹脂中にこれらが触媒残渣として残留し、アルカリ金属分の残留と同様にプリント配線板の絶縁特性を悪化させるおそれがあるので、エポキシ樹脂中の窒素の含有量が好ましくは300ppm以下であり、また、エポキシ樹脂中のリンの含有量が好ましくは300ppm以下である。更に好ましくは、エポキシ樹脂中の窒素の含有量が200ppm以下であり、エポキシ樹脂中のリンの含有量が200ppm以下である。
本発明のエポキシ樹脂は、その製造時の合成反応の工程において、反応用の溶媒を用いてもよく、その溶媒としては、エポキシ樹脂を溶解するものであればどのようなものでもよい。例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。溶媒は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
芳香族系溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。ケトン系溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチ
ルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジオキサン等が挙げられる。
アミド系溶媒の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
エポキシ樹脂の製造時の合成反応における固形分濃度は35〜95重量%が好ましい。また、反応途中で高粘性生成物が生じたときは溶媒を追加添加して反応を続けることもできる。反応終了後、溶媒は必要に応じて、除去することもできるし、更に追加することもできる。
エポキシ樹脂の製造において、2官能エポキシ樹脂とビスフェノール系化合物との重合反応は使用する触媒が分解しない程度の反応温度で実施される。反応温度が高すぎると生成するエポキシ樹脂が劣化するおそれがある。逆に温度が低すぎると十分に反応が進まないことがある。これらの理由から反応温度は、好ましくは50〜230℃、より好ましくは120〜200℃である。また、反応時間は通常1〜12時間、好ましくは3〜10時間である。アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。
[一段法による製造]
本発明のエポキシ樹脂は、一段法によっても製造することができる。具体的には、前記式(6)で表されるビスフェノール系化合物を、エピハロヒドリンと直接反応させればよい。ただし、前述のように、一段法で製造した本発明のエポキシ樹脂のうち低分子のものについては、二段法における2官能エポキシ樹脂として用いることができる。
一段法により本発明のエポキシ樹脂を製造する場合、原料として用いられる前記式(6)のビスフェノール系化合物中、A’は式(2)’で表される化学構造を必ず含む。二段法において説明したものと同様の理由により、A’全体に対する式(2)’の割合は、1モル%以上が好ましく、5モル%以上が更に好ましく、20モル%以上がより好ましく、35モル%以上が特に好ましい。また、99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、80モル%以下が更に好ましく、65モル%以下が特に好ましい。なお、一段法によって製造されたエポキシ樹脂を、二段法の原料である2官能エポキシ樹脂として用いる場合においては、二段法において説明したように、前記式(6)のビスフェノール系化合物中のA’に占める式(2)’で表される化学構造の割合は特に制限されず、0〜100%である。
原料として用いる全ビスフェノール系化合物はそのフェノール性水酸基1当量当たり、通常、0.8〜20モル当量、より好ましくは0.9〜15モル当量、更に好ましくは1.0〜10モル当量に相当する量のエピハロヒドリンに溶解させて均一な溶液とする。エピハロヒドリンの量が上記下限以上であると必要以上に高分子量化せず、反応を制御しや
すく、また、適切な溶融粘度とすることができるために好ましい。一方、エピハロヒドリンの量が上記上限以下であると生産効率が向上する傾向にあるために好ましい。
次いで、その溶液を撹拌しながら、これにフェノール性水酸基1当量当たり通常、0.5〜2.0モル当量、より好ましくは0.7〜1.8モル当量、更に好ましくは0.9〜1.6モル当量に相当する量のアルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液で加えて反応させる。アルカリ金属水酸化物の量が上記下限以上であると、未反応の水酸基と生成したエポキシ樹脂が反応しにくく、高分子量化反応を制御しやすいために好ましい。また、アルカリ金属水酸化物が上記上限以下あると、副反応による不純物が生成しにくいために好ましい。
この反応は、常圧下又は減圧下で行わせることができ、反応温度は通常、常圧下の反応の場合は好ましくは20〜150℃ 、より好ましくは30〜120℃、更に好ましくは
35〜100℃であり、減圧下の反応の場合は好ましくは20〜100℃、より好ましくは30〜90℃、更に好ましくは35〜80℃である。反応温度が上記下限以上であると反応を進行させやすいために好ましい。また、反応温度が上記上限以下であると副反応が進行しにくく、特に塩素不純物が低減しやすいために好ましい。
反応は必要に応じて所定の温度を保持しながら反応液を共沸させ、揮発する蒸気を冷却して得られた凝縮液を油/水分離し、水分を除いた油分を反応系へ戻す方法により脱水する。アルカリ金属水酸化物の添加は、急激な反応を抑えるために、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜7時間、更に好ましくは1〜6時間かけて少量ずつを断続的又は連続的に添加する。添加時間が上記下限以上であると急激に反応が進行するのを防ぐことができ、反応温度の制御がしやすくなるために好ましい。添加時間が上記上限以下であると塩素不純物が生成しにくくなるために好ましく、また、経済性の観点からも好ましい。全反応時間は通常、1〜15時間である。
反応終了後、不溶性の副生塩を濾別して除くか、水洗により除去した後、未反応のエピハロヒドリンを減圧留去して除くと、目的のエポキシ樹脂が得られる。この反応におけるエピハロヒドリンとしては、通常、エピクロルヒドリン又はエピブロモヒドリンが用いられる。アルカリ金属水酸化物としては通常、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが用いられる。
また、この反応においては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩; ベンジルジメチルアミン、2,4 ,6−トリス( ジメチルアミノメチル) フェノール等の第三級アミン;2−エチル−4− メチ
ルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド等のホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類等の触媒を用いてもよい。
更に、この反応においては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類; アセ
トン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メトキシプロパノール等のグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等の不活性な有機溶媒を使用してもよい。
更に、上記のようにして得られたエポキシ樹脂の可鹸化ハロゲン量が多すぎる場合は、再処理して十分に可鹸化ハロゲン量が低下した精製エポキシ樹脂を得ることができる。つまり、その粗製エポキシ樹脂を、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジオキサン、メトキシプロパノール、ジメチル
スルホキシド等の不活性な有機溶媒に再溶解しアルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液で加えて好ましくは30〜120℃、より好ましくは40〜110℃、更に好ましくは50〜100℃の温度で好ましくは0.1〜15時間、より好ましくは0.3〜12時間、更に好ましくは0.5〜10時間再閉環反応を行った後、水洗等の方法で過剰のアルカリ金属水酸化物や副性塩を除去し、更に有機溶媒を減圧留去及び/又は水蒸気蒸留を行うと、加水分解性ハロゲン量が低減されたエポキシ樹脂を得ることができる。反応温度が上記下限以上であり、また、反応時間が上記下限以上であると再閉環反応が進行しやすいために好ましい。また、反応温度が上記上限以下であり、また、反応時間が上記上限以下であると高分子量化反応を制御しやすいために好ましい。
〔エポキシ樹脂組成物〕
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくとも前述した本発明のエポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物である。また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、他のエポキシ樹脂、無機フィラー、カップリング剤等を適宜配合することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は耐熱性、伸び性、低吸湿性等に優れ、各種用途に要求される諸物性を十分に満たす硬化物を与えるものである。
<硬化剤>
本発明のエポキシ樹脂に硬化剤を配合してエポキシ樹脂組成物とすることができる。本発明において硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質を示す。なお、本発明においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
本発明のエポキシ樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、本発明のエポキシ樹脂100重量部に対して好ましくは0.1〜100重量部である。また、より好ましくは80重量部以下であり、更に好ましくは60重量部以下である。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、後述する他のエポキシ樹脂が含まれる場合には、固形分としての全エポキシ樹脂成分100重量部に対して好ましくは0.1〜100重量部である。また、より好ましくは80重量部以下であり、更に好ましくは60重量部以下である。本発明において、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味し、固体のエポキシ樹脂のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。また、「全エポキシ樹脂成分」とは、本発明のエポキシ樹脂と後述する他のエポキシ樹脂との合計を意味する。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる硬化剤としては、特に制限はなく一般的にエポキシ樹脂硬化剤として知られているものはすべて使用できる。耐熱性を高める観点から好ましいものとしてフェノール系硬化剤、アミド系硬化剤及びイミダゾール類が挙げられる。以下、フェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類及びその他の使用可能な硬化剤の例を挙げる。
[フェノール系硬化剤]
硬化剤としてフェノール系硬化剤を用いることが、得られるエポキシ樹脂組成物の取り扱い性と、硬化後の耐熱性を向上させる観点から好ましい。フェノール系硬化剤の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジ
ヒドロキシビフェニル、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o−クレゾールノボラック、m−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、フルオログリシノール、ピロガロール、t−ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,4−ジヒドロキシナフタレン、2,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,8−ジヒドロキシナフタレン、上記ジヒドロキシナフタレンのアリル化物又はポリアリル化物、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック、アリル化ピロガロール等が例示される。
以上で挙げたフェノール系硬化剤は1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。また、硬化剤がフェノール系硬化剤の場合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対する硬化剤中の官能基の当量比で0.8〜1.5の範囲となるように用いることが好ましい。この範囲内であると未反応のエポキシ基や硬化剤の官能基が残留しにくくなるために好ましい。
[アミド系硬化剤]
硬化剤としてアミド系硬化剤を用いることが、耐熱性等の向上の観点から好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としてアミド系エポキシ樹脂硬化剤を用いることにより、得られるエポキシ樹脂組成物の耐熱性の向上の観点から好ましい。アミド系硬化剤としてはジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
以上に挙げたフェノール系硬化剤は1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。また、アミド系硬化剤は、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分とアミド系硬化剤との合計に対して0.1〜20重量%の範囲で用いることが好ましい。
[イミダゾール類]
硬化剤としてイミダゾール類を用いることが、硬化反応を十分に進行させ、耐熱性を向上させる観点から好ましい。イミダゾール類としては、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール類との付加体等が例示される。なお、イミダゾール類は触媒能を有するため、一般的には後述する硬化促進剤にも分類されうるが、本発明においては硬化剤として分類するものとする。
以上に挙げたイミダゾール類は1種のみでも、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。また、イミダゾール類は、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分とイミダゾール類との合計に対して0.1〜20重量%の範囲で用いることが好ましい。
[その他の硬化剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いることのできる硬化剤として、フェノール系硬化剤、アミド系硬化剤及びイミダゾール類以外のものとしては、例えば、アミン系硬化剤(ただし、第3級アミンを除く。)、酸無水物系硬化剤、第3級アミン、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
アミン系硬化剤(ただし、第3級アミンを除く。)の例としては、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられる。脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等が例示される。ポリエーテルアミン類としては、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン類等が例示される。脂環式アミン類としては、イソホロンジアミン、メタセンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ノルボルネンジアミン等が例示される。芳香族アミン類としては、テトラクロロ−p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノアニソール、2,4−トルエンジアミン、2,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、2,4−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−アミノフェノール、m−アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2−ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチルベンジルアミン、α−(m−アミノフェニル)エチルアミン、α−(p−アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が例示される。
酸無水物系硬化剤の具体例としては、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、無水ヘット酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、1−メチル−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物等が例示される。
第3級アミンとしては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が例示される。
有機ホスフィン類としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が例示され、ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等が例示され、テトラフェニルボロン塩としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等が例示される。
以上で挙げた硬化剤の他にも、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。以上で挙げたその他の硬化剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
硬化剤がアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤の場合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対する硬化剤中の官能基の当量比で0.8〜1.5の範囲となるように用いることが好ましい。この範囲内であると未反応のエポキシ基や硬化剤の官能基が残留しにくくなるために好ましい。また、硬化剤が第3級アミン、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等の場合は、エポキシ樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ樹脂成分と硬化剤との合計に対して0.1〜20重量%の範囲で用いることが好ましい。
<他のエポキシ樹脂>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂に加え、他のエポキシ樹脂を含むことができる。他のエポキシ樹脂を用いることで、不足する物性を補ったり、種々の物性を向上させたりすることができる。
他のエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであることが好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の、各種エポキシ樹脂を使用することができる。これらは1種のみでも2種以上の混合体としても使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂とを用いる場合、固形分としての全エポキシ樹脂成分中の他のエポキシ樹脂の配合量は、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上であり、一方、好ましくは99重量%以下であり、より好ましくは95重量%以下である。他のエポキシ樹脂の割合が上記下限値以上であることにより、他のエポキシ樹脂を配合することによる物性向上効果を十分に得ることができ、特に本発明のエポキシ樹脂そのものよりも更に耐熱性に優れた材料を得ることができる。一方、他のエポキシ樹脂の割合が前記上限値以下であることにより、本発明のエポキシ樹脂の効果が十分に発揮され、低吸湿性を得ることができる。
<溶剤>
本発明のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物には、塗膜形成時の取り扱い時に、エポキシ樹脂組成物の粘度を適度に調整するために溶剤を配合し、希釈してもよい。本発明のエポキシ樹脂組成物において、溶剤は、エポキシ樹脂組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。なお、本発明においては「溶剤」という語と前述の「溶媒」という語をその使用形態により区別して用いるが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物が含み得る溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等が挙げられる。以上に挙げた溶剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
<無機フィラー>
本発明のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物には無機フィラーを含有していてもよい。無機フィラーを含むことにより、熱伝導性の向上や線膨張係数の低減等を図ることができる。本発明で用いる無機フィラーは高い熱伝導性を有するものが好ましく、当該無機フィラーの熱伝導率として1W/m・K以上、好ましくは2W/m・K以上の高熱伝導性の無機フィラーが好ましい。
無機フィラーとしては、アルミナ(Al:熱伝導率30W/m・K)、窒化アルミニウム(AlN:熱伝導率260W/m・K)、窒化ホウ素(BN:熱伝導率3W/m・K(厚み方向)、275W/m・K(面内方向))、窒化ケイ素(Si:熱伝導率23W/m・K)、シリカ(SiO:熱伝導率1.4W/m・K)等が挙げられる。これらのなかでも、Al、AlN、BN、SiOが好ましく、とりわけAl、BN、SiOが好ましい。これらの無機フィラーは、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
無機フィラーは、その粒径が大き過ぎると硬化物中にボイドが残留しやすくなり、小さ過ぎると凝集しやすくなり分散性が悪くなることから、粒状や扁平状の無機フィラーであれば、平均粒径0.05〜1000μm程度のものを用いることが好ましい。また、凝集状の無機フィラーであれば、平均結晶径が0.01〜5μmで、平均凝集径が1〜1000μmのものを用いることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物が無機フィラーを含む場合、無機フィラーの配合割合は、エポキシ樹脂組成物中の全固形分(通常、エポキシ樹脂組成物中の全固形分とはエポキシ樹脂組成物中の溶剤を除く成分の合計をさす。)に対して好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜95重量%であり、このエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物中の体積割合として好ましくは10〜90体積%、より好ましくは15〜85体積%である。無機フィラーの配合量が上記下限値以上であることにより、無機フィラーを配合することによる熱伝導性の向上効果が十分なものとなり、所望の高熱伝導性を得ることができる。一方、上記上限値以下であることにより、成膜性や接着性、硬化物の物性を損なうことなく、良好な特性が得られる傾向がある。
<カップリング剤>
本発明のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物には、カップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤を配合することにより、基材との接着性やマトリックス樹脂と無機フィラーとの接着性を向上させることができる。カップリング剤としてはシランカッ
プリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン、更に、エポキシ系、アミノ系、ビニル系の高分子タイプのシラン等が挙げられる。
チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチル
ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
これらのカップリング剤は、いずれも1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。なお、カップリング剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の全固形分に対して0.1〜2.0重量%程度とするのが好ましい。カップリング剤の配合量が少な過ぎると、カップリング剤を配合したことによるマトリックス樹脂と無機フィラーとの密着性の向上効果を十分に得ることができず、一方、カップリング剤の配合量が多過ぎると得られる硬化物からカップリング剤がブリードアウトするおそれがある。
<その他の成分>
本発明のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、以上で挙げたもの以外の成分(本発明において「その他の成分」と称することがある。)を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、硬化促進剤(ただし、「硬化剤」に含まれるものを除く。)、保存安定性向上のための紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤、はんだの酸化皮膜除去のためのフラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤等が挙げられる。
〔硬化物〕
本発明のエポキシ樹脂を硬化剤により硬化してなる硬化物は、耐熱性が高く、伸び性を有し、吸湿性が低く、また、熱伝導性等のバランスに優れ、良好な硬化物性を示すものである。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりエポキシ樹脂組成物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。進行の程度は完全硬化であっても、半硬化の状態であってもよく、特に制限されないが、エポキシ基と硬化剤の硬化反応の反応率として通常5〜95%である。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化又は半硬化させて硬化物又は半硬化物とする際のエポキシ樹脂組成物の硬化方法は、エポキシ樹脂組成物中の配合成分や配合量によっても異なるが、通常、100〜200℃で60〜180分の加熱条件が挙げられる。この加熱は
100〜130℃で10〜30分の一次加熱と、一次加熱温度よりも50〜80℃高い150〜200℃で60〜150分の二次加熱との二段処理で行うことが、硬化不良を少なくするという点で好ましい。
樹脂半硬化物を作製する際には、加熱等により形状が保てる程度にエポキシ樹脂組成物の硬化反応を進行させる。エポキシ樹脂組成物が溶剤を含んでいる場合には、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶剤を除去するが、樹脂半硬化物中に5質量%以下の溶剤が残留することもある。
〔用途〕
本発明のエポキシ樹脂及びそれを含むエポキシ樹脂組成物は、耐熱性が高く、良好な伸び性を有し、かつ吸水率が低いという特長を有する。このため、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に、電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。本発明のエポキシ樹脂及びそれを含むエポキシ樹脂組成物の用途の一例としては、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
<電気・電子回路用積層板>
本発明のエポキシ樹脂組成物は前述したように電気・電子回路用積層板の用途に好適に用いることができる。本発明において「電気・電子回路用積層板」とは、本発明のエポキシ樹脂組成物を含む層と導電性金属層とを積層したものであり、本発明のエポキシ樹脂組成物を含む層と導電性金属層とを積層したものであれば、電気・電子回路ではなくとも、例えばキャパシタも含む概念として用いられる。なお、電気・電子回路用積層板中には2種以上のエポキシ樹脂組成物からなる層が形成されていてもよく、少なくとも1つの層において本発明のエポキシ樹脂組成物が用いられていればよい。また、2種以上の導電性金属層が形成されていてもよい。
電気・電子回路用積層板におけるエポキシ樹脂組成物からなる層の厚みは通常10〜200μm程度である。また、導電性金属層の厚みは通常0.2〜70μm程度である。
[導電性金属]
電気・電子回路用積層板における導電性金属としては、銅、アルミニウム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。本発明において電気・電子回路用積層板の導電性金属層においては、これらの金属の金属箔、あるいはメッキやスパッタリングで形成された金属層を用いることができる。
[電気・電子回路用積層板の製造方法]
本発明における電気・電子回路用積層板の製造方法としては、例えば次のような方法が挙げられる。
(1) ガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、セルロース、ナノファイバーセルロース等の無機及び/又は有機の繊維材料を用いた不織布やクロス等に、本発明のエポキシ樹脂組成物を含浸させてプリプレグとし、導電性金属箔及び/又はメッキにより導電性金属層を設けた後、フォトレジスト等を用いて回路を形成し、こうした層を必要数重ねて積層板とする。
(2) 上記(1)のプリプレグを心材とし、その上(片面又は両面)に、エポキシ樹脂組成物からなる層と導電性金属層を積層する(ビルドアップ法)。このエポキシ樹脂組成物からなる層は有機及び/又は無機のフィラーを含んでいてもよい。
(3) 心材を用いず、エポキシ樹脂組成物からなる層と導電性金属層のみを交互に積層
して電気・電子回路用積層板とする。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
〔物性・特性の評価方法〕
以下の実施例及び比較例において、物性、特性の評価は以下の1)〜5)に記載の方法で行った。
1)重量平均分子量および数平均分子量
東ソー(株)製「HLC−8320GPC装置」を使用し、以下の測定条件で、標準ポリスチレンとして、TSK Standard Polystyrene:F−128(Mw1,090,000、Mn1,030,000)、F−10(Mw106,000、Mn103,000)、F−4(Mw43,000、Mn42,700)、F−2(Mw17,200、Mn16,900)、A−5000(Mw6,400、Mn6,100)、A−2500(Mw2,800、Mn2,700)、A−300(Mw453、Mn387)を使用した検量線を作成して、重量平均分子量および数平均分子量をポリスチレン換算値として測定した。
カラム:東ソー(株)製「TSKGEL SuperHM−H+H5000+H4000+H3000+H2000」
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/min
検出:UV(波長254nm)
温度:40℃
試料濃度:0.1重量%
インジェクション量:10μl
2)n数
前記式(1)におけるnの値は上記で求められた数平均分子量より算出した。
3)エポキシ当量
JIS K 7236に準じて測定し、固形分換算値として表記した。
4)ガラス転移温度:Tg
溶剤を乾燥除去したエポキシ樹脂、又はエポキシ樹脂硬化物のフィルムについて、SIIナノテクノロジー(株)製「DSC7020」を使用し、30〜250℃まで10℃/minで昇温してガラス転移温度を測定した。なお、ここでいうガラス転移温度は、JIS K7121「プラスチックの転移温度測定法」に記載されているうち「中点ガラス転移温度:Tmg」に基づいて測定した。ガラス転移温度は高いほど好ましく、110℃以上であることが好ましい。
5)吸水率
エポキシ樹脂の溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:100μm)にアプリケーターで塗布し、160℃で1.5時間、その後
200℃で1.5時間乾燥させ、厚さ約50μmのエポキシ樹脂フィルムを得た。このエ
ポキシ樹脂のフィルム、又はエポキシ樹脂硬化物のフィルムについて4cm×4cmに切
り出した試験片を、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に168時間放置した後の吸水率を下記式で算出した。吸水率は低いほど好ましく、1.00以下であることが好ましい。
(吸水率)=[{(85℃、85%RHに168時間放置後の試験片の質量)
−(処理前の試験片の質量)}/(処理前の試験片の質量)]×100
6)伸び
エポキシ樹脂の溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:100μm)の表面にアプリケーターで塗布し、60℃で1時間、その後150℃で1時間、更に200℃で1時間乾燥させ、厚さ約50μmのエポキシ樹脂フィルムを得た。これを幅1cmに切り出し、インストロン社製 精密万能試験機「INSTRON 5582型」を使用して5mm/minで破断伸度を3回測定した平均値を示した。伸びはその値が高いほど好ましい。
〔エポキシ樹脂の製造と評価〕
<実施例1−1〜1−13>
表−1又は表−2に示した配合で2官能エポキシ樹脂、ビスフェノール系化合物、触媒および反応用の溶剤を撹拌機付き反応容器に入れ、窒素ガス雰囲気下145℃で、表−1又は表−2に記載した反応時間で反応を行った。その後、希釈用の溶剤を加えて固形分濃度を調整した。反応生成物から定法により溶剤を除去した後、得られた樹脂について分析を行った。結果を表−1又は表−2に示す。なお、反応に用いた化合物、触媒および溶剤は以下の通りである。
[2官能エポキシ樹脂]
(A−1):三菱化学(株)製 商品名「YX4000」(3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、エポキシ当量186g/当量)(A−2):三菱化学(株)製 商品名「jER(登録商標) 828US」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量185g/当量)
(A−3):三菱化学(株)製 商品名「jER(登録商標) 806H」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量171g/当量)
(A−4):三菱化学(株)製 商品名「YL6121H」(4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂と3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂の重量比1:1混合物、エポキシ当量171g/当量)
[ビスフェノール系化合物]
(B−1):9−(4−ヒドロキシベンジル)−10−(4−ヒドロキシフェニル)アントラセン(製品名:AVライト BIP−ANT、水酸基当量188g/当量、旭有機材工業(株)製)
(D−1):4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール(製品名:BisP−AP 水酸基当量145g/当量、本州化学工業(株) 製)
(D−2):4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(製品名:BisP−TMC 水酸基当量155g/当量、本州化学工業(株) 製)
(D−3):9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(製品名:BisOC−FL 水酸基当量189g/当量、本州化学工業(株) 製)
[触媒]
(C−1):27重量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液
[溶媒・溶剤]
(S−1):シクロヘキサノン
(S−2):メチルエチルケトン
Figure 0006268753
Figure 0006268753
<比較例1−1>
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの四口フラスコにビスフェノール系化合物(B−1)115.6g、エピクロルヒドリン341.0g、イソプロピルアルコール132.7gを仕込み、40℃に昇温して均一に溶解させた後、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液58.9gを90分かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、滴下終了後には系内が65℃になるようにした。その後、65℃で30分保持し反応を完了させ、水洗により副生塩及び過剰の水酸化ナトリウムを除去した。ついで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンとイソプロピルアルコールを留去して、粗製エポキシ樹脂を得た。この粗製エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン183.3gに溶解させ、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液9.2gを加え、65℃の温度で1時間再び反応させた。その後、反応液にリン酸二水素ナトリウム水溶液を加えて、過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去して、目的のエポキシ樹脂125.0gを得た。得られたエポキシの分析値は、エポキシ当量253g/当量、融点62℃、式(1)におけるn数は0.05であった。この
エポキシ樹脂は結晶性であり製膜性が無く、フィルム製膜できなかったため、伸びの測定ができなかった。
〔エポキシ樹脂組成物の製造と評価〕
<実施例2−1〜2−13>
実施例1−1〜1−13のそれぞれで得られたエポキシ樹脂と、ビスフェノールAノボラック型多官能エポキシ樹脂80重量%MEK溶液(三菱化学(株)製 商品名「157S65B80)」)と、硬化剤として2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(三菱化学(株)製 商品名「EMI24」)の20重量%MEK溶液を、表−3又は表−4の配合となるようにはかり取り、よく撹拌してエポキシ樹脂組成物を得た。これらのエポキシ樹脂組成物をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:100μm)にアプリケーターで塗布し、160℃で1.5時間、その後200℃で1.5時間乾燥、硬化させ、厚さ約50μmのエポキシ樹脂硬化物のフィルムを得た。
これらについて、前述の方法を用いてガラス転移点、吸水率、伸びを測定した。結果を表−3、表−4に示す。なお、表−3、表−4の「その他のエポキシ樹脂」、「硬化剤」における略号の意味は下記の通りである。
[その他のエポキシ樹脂]
「157S65B80」:三菱化学(株)製 ビスフェノールAノボラック型多官能エポキシ樹脂80重量%MEK溶液
[硬化剤]
「EMI24」:三菱化学(株)製 2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール
Figure 0006268753
Figure 0006268753
表−1、表−2の結果より、実施例1−1〜1−13のエポキシ樹脂は、耐熱性及び低吸湿性に優れたものであることがわかる。また、比較例1−1のエポキシ樹脂は特開2011−105699号公報の実施例において製造されているエポキシ樹脂と類似するものであるが、これと比較してフィルム製膜性に優れていることがわかる。更に、表−1〜表−4の結果より、実施例2−1〜2−13のエポキシ樹脂組成物は、硬化前の実施例1−1〜1−13のエポキシ樹脂よりも更に耐熱性及び低吸湿性が向上することがわかる。
本発明のエポキシ樹脂及びそれを含むエポキシ樹脂組成物は、その硬化物特性として耐熱性が高く、良好な製膜性、伸び性を有し、かつ吸水率が低いという特長を有する。このため、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に、電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。本発明のエポキシ樹脂及びそれを含むエポキシ樹脂組成物の用途の一例としては、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。

Claims (15)
Hide Dependent

  1. 下記式(1)で表され、重量平均分子量が5,000〜80,000であることを特徴
    とするエポキシ樹脂。
    Figure 0006268753
    (上記式(1)中、Aは上記式(2)及び上記式(4)で表される化学構造を含み、Rは
    水素原子又は上記式(3)で表される基であり、nは繰り返し数の平均値であり1以上5
    00以下である。
    上記式(2)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換基として炭素数1〜12のア
    ルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜1
    2のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基を有していても
    よい芳香環であり、
    Xは直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−及び
    −CO−から選ばれる2価の連結基である。
    上記式(4)中、R は直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−,−S
    −、−SO −及び−CO−から選ばれる基であり、R は互いに異なっていてもよく、
    水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基である。)
  2. 前記式(1)中、前記式(2)で表される化学構造が、A全体のモル数に対して1〜9
    9モル%含まれる請求項1に記載のエポキシ樹脂。
  3. 前記式(1)中、前記式(4)で表される化学構造が、A全体のモル数に対して1〜9
    9モル%含まれる、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂。
  4. 下記式(5)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記式(6)で表されるビスフェノー
    ル系化合物とを反応させて得られることを特徴とするエポキシ樹脂。
    Figure 0006268753
    (上記式(5)または式(6)中、A’は上記式(2)’及び式(4)’で表される化学
    構造を含み、mは繰り返し数の平均値であり0以上6以下である。
    上記式(2)’中、A’及びA’は、それぞれ独立に、置換基として炭素数1〜1
    2のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数
    1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基を有して
    いてもよい芳香環であり、X’は直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−
    、−S−、−SO−及び−CO−から選ばれる2価の連結基である。
    上記式(4)’中、R’ は直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、
    −S−、−SO −及び−CO−から選ばれる基であり、R’ は互いに異なっていても
    よく、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基である。
  5. 前記式(5)及び(6)中、前記式(2)’で表される化学構造が、A’全体のモル数
    に対して1〜99モル%含まれる請求項4に記載のエポキシ樹脂。
  6. 前記式(5)及び(6)中、前記式(4)’で表される化学構造がA’全体のモル数に
    対して1〜99モル%含まれる、請求項4又は5に記載のエポキシ樹脂。
  7. エポキシ当量が500g/当量以上、100,000g/当量以下である、請求項1乃
    至6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とからなるエポキシ樹
    脂組成物。
  9. 前記エポキシ樹脂100重量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100重量部含む、請求
    項8に記載のエポキシ樹脂組成物
  10. 更に他のエポキシ樹脂を含み、固形分としての全エポキシ樹脂成分中、他のエポキシ樹
    脂を1〜99重量%含む、請求項8又は9に記載のエポキシ樹脂組成物。
  11. 更に他のエポキシ樹脂を含み、固形分としての全エポキシ樹脂成分100重量部に対し
    、前記硬化剤を0.1〜100重量部含む、請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物
  12. 固形分としての全エポキシ樹脂成分中、他のエポキシ樹脂を1〜99重量部含む、請求
    項11に記載のエポキシ樹脂組成物。
  13. 前記硬化剤がフェノール系硬化剤、アミド系硬化剤及びイミダゾール類からなる群から
    選ばれる少なくとも1種である、請求項8乃至12のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂
    組成物。
  14. 請求項8乃至13のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を用いてなる電気・電子
    回路用積層板。
  15. 請求項8乃至13のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。