JP6291978B2 - リン含有エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂組成物、硬化物及び電気・電子回路用積層板 - Google Patents
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Description
従来、樹脂材料に難燃性を付与する場合には、ハロゲンを含むモノマーや難燃剤が使用されており、特に臭素系材料が多く用いられる。しかし近年では、脱離したハロゲン成分が電気・電子部品の配線を腐食することや、焼却時の熱分解によってハロゲンガスやハロゲン化物が発生し、環境に負荷を与える懸念があることから、ノンハロゲンの難燃材料が強く望まれている。
耐熱性については、従来、鉛含有はんだが電気的接続に用いられていたが、重金属の有害性が懸念されることから、近年では鉛フリーはんだへ移行してきている。これに伴い、リフロー温度は鉛含有はんだよりも高い260℃前後に上昇し、これに耐えうる材料が必要となってきている。
また、吸水性が高いと加熱時に水分が蒸発・膨張してクラックや剥離の原因となるため、低吸水性であることも必要である。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[12]に存する。
このため、本発明のリン含有エポキシ樹脂は、接着剤、塗料、土木用建築材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂及びそれを含むリン含有エポキシ樹脂組成物は、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等に好適に用いることができる。
また、本発明において、R1、R2等で表される基が置換基を有する場合、当該基の炭素数は、その置換基の炭素数を含めた合計の炭素数を示す。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、下記式(1)で表され、重量平均分子量(Mw)1,000〜200,000であるものである。
前記式(1)中、Aは前記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造と、前記式(4)で表される化学構造とを少なくとも含む。前記式(2)及び(3)中、A1及びA2は前記式(6)で表される化学構造であり、R3〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のアルカジエニル基、及び炭素数2〜12のアルキニル基から任意に選ばれる基である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜200,000である。重量平均分子量が1,000より低いものではフィルム製膜性や伸び性が低くなり、200,000より高いと樹脂の取り扱いが困難となる。本発明のリン含有エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、フィルム製膜性や伸び性を向上させる観点から、2,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、一方、取り扱い性を良好なものとする観点から、120,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましい。なお、エポキシ樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定することができる。より詳細な測定方法の例について後述の実施例において説明する。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、フィルム製膜性や伸び性を向上させる観点から、エポキシ当量が500g/当量以上であることが好ましく、より好ましくは1,000g/当量以上、更に好ましくは2,500g/当量以上、特に好ましくは3,500g/当量以上であり、最も好ましくは5,000g/当量以上である。一方、取り扱い性を良好なものとする観点から、エポキシ当量は100,000g/当量以下であることが好ましく、より好ましくは50,000g/当量以下、更に好ましくは30,000g/当量以下、特に好ましくは20,000g/当量以下である。なお、本発明において「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K7236に準じて測定することができる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、前述の重量平均分子量(Mw)とエポキシ当量の比((重量平均分子量(Mw))/(エポキシ当量))が1.0〜10.0の範囲であることが好ましい。この比が小さ過ぎると、分子の末端にエポキシ基を有さない分子が多く存在することになり、硬化反応に関与できないため耐熱性が低下するおそれがある。また、この比が大き過ぎると、分子量分布が広いことを意味し、分子量が非常に高い分子が生成してゲル化を起こすおそれがある。これらの観点から、この比は2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることが更に好ましく、一方、9.0以下であることがより好ましく、8.0以下であることが更に好ましく、7.0以下であることが特に好ましい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、耐熱性に優れるものであり、耐熱性はガラス転移温度(Tg)により評価することができる。本発明のリン含有エポキシ樹脂のTgは好ましくは130℃以上であり、更に好ましくは150℃以上であり、上限については特に制限はないが、通常210℃以下である。
また後述の本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる本発明の硬化物(以下、「リン含有エポキシ樹脂硬化物」と称す場合がある。)においては、Tgは好ましくは135℃以上であり、より好ましくは155℃以上であり、上限については特に制限はないが、通常220℃以下である。
なお、エポキシ樹脂及びその硬化物のガラス転移温度は、示差走査熱量分析法(DSC法)により測定することができる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、難燃性に優れるものであり、難燃性を評価する指標の一つとして残炭率が挙げられる。残炭率は、後掲の実施例の条件での高温条件に暴露した後の残渣(炭素以外の元素からなるものも含む。)の重量から求められ、残炭率が高いことは、熱分解や燃焼で失われる成分が少ないことであるので、難燃性が高いことを意味する。本発明のリン含有エポキシ樹脂又はリン含有エポキシ樹脂硬化物においては、残炭率は好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上、特に好ましくは30%以上である。
なお、エポキシ樹脂及びその硬化物の残炭率は、示差熱・熱重量同時測定法(TG−DTA法)により測定することができる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、低吸水性に優れるものである。エポキシ樹脂の吸水率は、後掲の実施例の項に示すように、湿熱条件下に一定時間暴露する前後の重量変化により評価することができる。本発明のリン含有エポキシ樹脂の吸水率は、この吸水率の評価において、好ましくは1.2質量%未満であり、更に好ましくは1.0質量%未満であり、特に好ましくは0.9質量%未満である。また本発明のリン含有エポキシ樹脂硬化物の吸水率は、好ましくは1.5質量%未満であり、更に好ましくは1.2質量%未満であり、特に好ましくは1.0%未満である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、例えば、下記式(7)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記式(8)で表されるビスフェノール系化合物とを反応させる、二段法によって得ることができる。また、下記式(8)で表されるビスフェノール系化合物をエピハロヒドリンと反応させる、一段法によっても得ることができる。ただし、二段法では高分子量のエポキシ樹脂を一段法よりも容易に得ることができるため、二段法を用いることが好ましい。
本発明の他の態様にかかるリン含有エポキシ樹脂は、前記式(7)で表される2官能エポキシ樹脂と、前記式(8)で表されるビスフェノール系化合物を反応させて得られ、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200,000であるものである。
本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造に用いられる2官能エポキシ樹脂は、前記式(7)で表されるエポキシ樹脂であり、例えば、前記式(8)で表されるビスフェノール系化合物を、後述の一段法によってエピハロヒドリンと縮合させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂の製造に用いられるビスフェノール系化合物は、前記式(8)で表されるビスフェノール系化合物である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、一段法によっても製造することができる。具体的には、前記式(8)で表されるビスフェノール系化合物を、エピハロヒドリンと直接反応させればよい。ただし、前述のように、一段法で製造した本発明のリン含有エポキシ樹脂のうち低分子のものについては、二段法における2官能エポキシ樹脂として用いることができる。
また、二段法において説明したものと同様の理由により、A”全体に対する式(4)’で表される化学構造の割合は、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましく、20モル%以上が特に好ましく、35モル%以上がとりわけ好ましい。また、99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、90モル%以下が更に好ましく、80モル%以下が特に好ましく、65モル%以下がとりわけ好ましい。
なお、このような一段法によって製造されたエポキシ樹脂を、二段法の原料である2官能エポキシ樹脂として用いる場合においては、二段法において説明したように、前記式(8)で表されるビスフェノール系化合物中のA”に占める式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造の割合は特に制限されず、0〜100%である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、少なくとも前述した本発明のリン含有エポキシ樹脂と硬化剤とを含む。また、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、本発明のリン含有エポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂、無機フィラー、カップリング剤等を適宜配合することができる。本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は難燃性を発現するに十分な量のリン原子を含み、耐熱性、低吸水性等に優れ、各種用途に要求される諸物性を十分に満たす硬化物を与えるものである。
本発明において硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質を示す。なお、本発明においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
硬化剤としてフェノール系硬化剤を用いることが、得られるエポキシ樹脂組成物の取り扱い性と、硬化後の耐熱性を向上させる観点から好ましい。フェノール系硬化剤の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o−クレゾールノボラック、m−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、フルオログリシノール、ピロガロール、t−ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,4−ジヒドロキシナフタレン、2,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,8−ジヒドロキシナフタレン、上記ジヒドロキシナフタレンのアリル化物又はポリアリル化物、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック、アリル化ピロガロール等が例示される。
硬化剤としてアミド系硬化剤を用いることは、得られるエポキシ樹脂組成物の耐熱性の向上の観点から好ましい。アミド系硬化剤としてはジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
硬化剤としてイミダゾール類を用いることは、硬化反応を十分に進行させ、耐熱性を向上させる観点から好ましい。イミダゾール類としては、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール類との付加体等が例示される。なお、イミダゾール類は触媒能を有するため、一般的には後述する硬化促進剤にも分類されうるが、本発明においては硬化剤として分類するものとする。
硬化剤として活性エステル系硬化剤を用いることは、得られる硬化物の吸水性を低下させる観点から好ましい。活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく、中でも、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたフェノールエステル類がより好ましい。カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物に用いることのできる硬化剤として、フェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類及び活性エステル系硬化剤以外のものとしては、例えば、アミン系硬化剤(ただし、第3級アミンを除く。)、酸無水物系硬化剤、第3級アミン、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は、本発明のリン含有エポキシ樹脂に加え、他のエポキシ樹脂を含むことができる。他のエポキシ樹脂を用いることで、不足する物性を補ったり、種々の物性を向上させたりすることができる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂を含むリン含有エポキシ樹脂組成物には、塗膜形成時等の取り扱い時に、リン含有エポキシ樹脂組成物の粘度を適度に調整するために溶剤を配合し、希釈してもよい。本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物において、溶剤は、リン含有エポキシ樹脂組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。なお、本発明においては「溶剤」という語と前述の「溶媒」という語をその使用形態により区別して用いるが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂を含むリン含有エポキシ樹脂組成物には無機フィラーを含有していてもよい。無機フィラーを含むことにより、熱伝導性の向上や線膨張係数の低減等を図ることができる。本発明で用いる無機フィラーは高い熱伝導性を有するものが好ましく、当該無機フィラーの熱伝導率として1W/m・K以上、好ましくは2W/m・K以上の高熱伝導性の無機フィラーが好ましい。
本発明のリン含有エポキシ樹脂を含むリン含有エポキシ樹脂組成物には、カップリング剤を配合してもよい。カップリング剤を配合することにより、基材との接着性やマトリックス樹脂と無機フィラーとの接着性を向上させることができる。カップリング剤としてはシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂を含むリン含有エポキシ樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、以上で挙げたもの以外の成分(本発明において「その他の成分」と称することがある。)を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、硬化促進剤(ただし、「硬化剤」に含まれるものを除く。)、保存安定性向上のための紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤、はんだの酸化皮膜除去のためのフラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤等が挙げられる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂を硬化剤により硬化してなる硬化物は、難燃性に優れ、耐熱性が高く、吸水性が低く、また、熱伝導性、伸び性等のバランスに優れ、良好な硬化物性を示すものである。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりリン含有エポキシ樹脂組成物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。進行の程度は完全硬化であっても、半硬化の状態であってもよく、特に制限されないが、エポキシ基と硬化剤の硬化反応の反応率として通常5〜95%である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂及びそれを含むリン含有エポキシ樹脂組成物は、難燃性に優れ、耐熱性が高く、吸水性が低いという効果を奏する。このため、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に、電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。本発明のリン含有エポキシ樹脂及びそれを含むリン含有エポキシ樹脂組成物の用途の一例としては、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物は前述したように電気・電子回路用積層板の用途に好適に用いることができる。本発明において「電気・電子回路用積層板」とは、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物を含む層と導電性金属層とを積層したものであり、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物を含む層と導電性金属層とを積層したものであれば、電気・電子回路ではなくとも、例えばキャパシタも含む概念として用いられる。なお、電気・電子回路用積層板中には2種以上のエポキシ樹脂組成物からなる層が形成されていてもよく、少なくとも1つの層において本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物が用いられていればよい。また、2種以上の導電性金属層が形成されていてもよい。
電気・電子回路用積層板における導電性金属としては、銅、アルミニウム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。本発明において電気・電子回路用積層板の導電性金属層においては、これらの金属の金属箔、あるいはメッキやスパッタリングで形成された金属層を用いることができる。
本発明における電気・電子回路用積層板の製造方法としては、例えば次のような方法が挙げられる。
(1) ガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、セルロース、ナノファイバーセルロース等の無機及び/又は有機の繊維材料を用いた不織布やクロス等に、本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物を含浸させてプリプレグとし、導電性金属箔及び/又はメッキにより導電性金属層を設けた後、フォトレジスト等を用いて回路を形成し、こうした層を必要数重ねて積層板とする。
(2) 上記(1)のプリプレグを心材とし、その上(片面又は両面)に、リン含有エポキシ樹脂組成物からなる層と導電性金属層を積層する(ビルドアップ法)。このリン含有エポキシ樹脂組成物からなる層は有機及び/又は無機のフィラーを含んでいてもよい。
(3) 心材を用いず、リン含有エポキシ樹脂組成物からなる層と導電性金属層のみを交互に積層して電気・電子回路用積層板とする。
以下の実施例及び比較例において、物性の評価は以下の1)〜6)に記載の方法で行った。
東ソー(株)製「HLC−8120GPC装置」を使用し、以下の測定条件で、標準ポリスチレンとして、TSK Standard Polystyrene:F−850(Mw8,420,000)、F−450(Mw4,480,000)F−128(Mw1,090,000)、F−80(Mw706,000)、F−40(Mw427,000)、F−20(Mw190,000)、F−10(Mw96,400)、F−4(Mw37,900)、F−2(Mw18,100)、F−1(Mw10,200)A−5000(Mw5,970)、A−2500(Mw2,630)、A−1000(Mw1,050)、A−500(Mw590)を使用した検量線(較正曲線近似式:3次式)を作成して、重量平均分子量をポリスチレン換算値として測定した。なお、試料は溶離液で溶解後、0.45μmのPTFEフィルターで濾過したものを用いた。
カラム:東ソー(株)製「TSKGEL α−M(7.8mm I.D.×30cmL×2)」
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(10mM LiBr添加)
流速:1.0ml/min
検出:RI
温度:60℃
試料濃度:0.1質量%
インジェクション量:100μl
JIS K 7236に準じて測定し、固形分換算値として表記した。
リン含有エポキシ樹脂又はリン含有エポキシ樹脂組成物の溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:100μm)にアプリケーターで塗布し、160℃で1.5時間、その後200℃で1.5時間乾燥及び/又は硬化させ、厚さ約50μmのエポキシ樹脂フィルムを得た。このフィルムを切り出し、SIIナノテクノロジー(株)製「DSC7020」を使用し、30〜250℃まで10℃/minで昇温してガラス転移温度を測定した。なお、ここでいうガラス転移温度は、JIS K7121「プラスチックの転移温度測定法」に記載されているうち「中点ガラス転移温度:Tmg」に基づいて測定した。
エポキシ樹脂については、Tgが150℃以上を耐熱性良好「○」、150℃未満を耐熱性不良「×」とした。
またエポキシ樹脂硬化物については、Tgが155℃以上を耐熱性良好「○」、155℃未満を耐熱性不良「×」として評価した。
原料の仕込み比率から、固形分中に含まれるリン原子の質量%を算出した。
3)で作成したフィルム約10mg分を切り出し、SIIナノテクノロジー(株)製「TG/DTA7200」を使用し、30℃から600℃まで10℃/minで昇温した後の残炭率を下記式で算出した。残炭率が30%以上のものを難燃性良好「○」、30%未満のものを難燃性不良「×」として評価した。
(残炭率)=[(昇温後のサンプルの質量)/(昇温前のサンプルの質量)]×100
3)で作成したフィルムを4cm×4cmに切り出した試験片を、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に168時間放置した後の吸水率を下記式で算出した。吸水率が1.0%未満のものを低吸水性に優れる「○」、1.0%以上のものを低吸水性に劣る「×」として評価した。
(吸水率)=[{(85℃、85%RHに168時間放置後の試験片の質量)
−(処理前の試験片の質量)}/(処理前の試験片の質量)]×100
[実施例1−1、比較例1−1、1−2]
表−1に示した配合で2官能エポキシ樹脂、ビスフェノール系化合物、触媒および反応用の溶剤を撹拌機付き反応容器に入れ、窒素ガス雰囲気下、145℃で、表−1に記載した反応時間で反応を行った。その後、希釈用の溶剤を加えて固形分濃度を調整した。
得られたリン含有エポキシ樹脂について前述の分析、評価を行った。結果を表−1に示す。
なお、表−1中、反応に用いた化合物、触媒および溶剤は以下の通りである。
(A−1):3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル(三菱化学(株)製 商品名「YX4000」、エポキシ当量:186g/当量、m≒0.06)
(A−2):ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学(株)製 商品名「jER(登録商標)828US」、エポキシ当量:185g/当量、m≒0.10)
(B−1):下記式で表されるジフェニルホスフィニルヒドロキノン(北興化学工業(株)製 商品名「PPQ」、水酸基当量:155g/当量)
(C−1):27質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液
(C−2):2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(三菱化学(株)製 商品名「EMI24」)
(S−1):シクロヘキサノン
(S−2):N,N−ジメチルアセトアミド
実施例1−1、比較例1−1、1−2で得られたリン含有エポキシ樹脂と、ビスフェノールAノボラック型多官能エポキシ樹脂80質量%MEK溶液(三菱化学(株)製 商品名「157S65B80)」)と、硬化剤として2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(三菱化学(株)製 商品名「EMI24」)の20質量%MEK溶液を、固形分の質量比で95:5:0.5となるようにはかり取り、よく撹拌してリン含有エポキシ樹脂組成物を得た。
得られたリン含有エポキシ樹脂組成物について、前述の分析、評価を行った。結果を表−2に示す。
なお、表−2の「その他のエポキシ樹脂」、「硬化剤」における略号の意味は下記の通りである。
157S65B80:三菱化学(株)製 ビスフェノールAノボラック型多官能エポキシ樹脂80質量%MEK溶液
<硬化剤>
EMI24:三菱化学(株)製 2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール
Claims (12)
- 下記式(1)で表され、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200,000であり、
エポキシ当量が1,000g/当量以上100,000g/当量以下であるリン含有エポキシ樹脂。
- 前記式(1)中、前記式(2)及び/又は(3)で表される化学構造が、A全体のモル数に対して1〜99モル%含まれる、請求項1に記載のリン含有エポキシ樹脂。
- 下記式(7)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記式(8)で表されるビスフェノール系化合物とを反応させて得られ、重量平均分子量(Mw)が1,000〜200,000であり、
エポキシ当量が1,000g/当量以上100,000g/当量以下であるリン含有エポキシ樹脂。
- 前記式(7)及び(8)中、前記式(2)’及び/又は(3)’で表される化学構造が、A’とA”の合計のモル数に対して1〜99モル%含まれる、請求項3に記載のリン含有エポキシ樹脂。
- 重量平均分子量(Mw)とエポキシ当量との比(Mw/(エポキシ当量))が1.0〜10.0である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むリン含有エポキシ樹脂組成物。
- 前記リン含有エポキシ樹脂100質量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100質量部含む、請求項6に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
- 更に他のエポキシ樹脂を含み、固形分としてのリン含有エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の合計100質量部中、他のエポキシ樹脂を1〜99質量部含む、請求項6又は7に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
- 前記リン含有エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の合計100質量部に対し、前記硬化剤を0.1〜100質量部含む、請求項8に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
- 前記硬化剤がフェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類、及び活性エステル系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6乃至9のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物。
- 請求項6乃至10のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を用いてなる電気・電子回路用積層板。
- 請求項6乃至10のいずれか1項に記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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