JP4854296B2 - 新規熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、及び、それを配合した樹脂組成物 - Google Patents

新規熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、及び、それを配合した樹脂組成物 Download PDF

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本発明は、電気用層間絶縁積層板、磁気テープバインダー、絶縁ワニス、自己融着エナメル電線ワニス等の電気・電子分野及び接着剤、絶縁塗料やフィルム等として有用な、リンを含有することによりそれ自体難燃性を有する、耐熱性、低弾性、低応力である可撓性に優れ、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及び熱可塑性ポリヒドロキポリエーテル樹脂・エポキシ樹脂・硬化剤・添加剤・充填材からなる樹脂組成物並びこれらを用いた接着フィルム及びプルプレグ、さらにはこれらを用いた積層板、多層プリント配線板や絶縁性フィルムに関する。また、本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及びそれを配合した樹脂組成物は各種の成形材料、塗料、複合材料等に有用に用いることができる。
従来、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂はフェノキシ樹脂として知られており、可撓性、耐衝撃性、密着性、機械的性質等が優れることから、電気・電子分野では、磁気テープバインダー、モーター等の電気機械の絶縁ワニスや、回路基板用の接着剤やフィルム等、広範囲の用途で使用されており、なかでも電気・電子部品で火災の防止・遅延といった安全性を強く要求される分野ではハロゲン化されたフェノキシ樹脂が使用されており、主に臭素化されたものが使用されてきた。しかしながら、ハロゲン化物を使用した材料は、高温で長期に渡って使用した場合、ハロゲン化物の解離を起こし、また、これにより配線の腐食を引き起こす事が知られている。更に、使用済みの電子部品、電気機器の廃棄物を燃焼する際には、ハロゲン・ハロゲン化物等の有害物質を発生し、環境安全性の観点からハロゲンの直接的、間接的利用が問題視されるようになり、これに代わる材料が研究されるようになって来ている。
熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を使用した難燃性フィルムは、特許文献1、特許文献2等がある。これらに使用されている難燃剤は、何れもハロゲン化物であり、リンによる難燃化については記載されていない。また、リン化合物を使用した難燃性化合物としては、非特許文献3があるが、これはリン含有化合物とベンゾキノンを付加反応させて得られる化合物を、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂の反応性難燃剤として用いるものであり、非特許文献4では、リン含有化合物とベンゾキノン及びエピクロロヒドリンを用いた熱硬化性樹脂としての新規エポキシ樹脂を得ているが、いづれも熱可塑性樹脂及び絶縁性フィルムに関しては記載されていない。また、特許文献5では、リン原子含有の難燃性熱可塑性樹脂を得て、耐熱性が向上しているが、フィルムが硬く脆くなり、また溶解溶剤の選択性が有り、人体に有害な溶剤を使用しなければならない等の悪影響が懸念される。最近では、フレキシブル積層板など、より可撓性を重視する用途への適応性が要求されるようになってきている。また、接着剤の用途においてもより低温での可撓性が求められており、従来からあるフェノキシ樹脂では、十分な可撓性を発現させることは困難になっている。特許文献6や特許文献7では、高分子量エポキシ樹脂(本発明での「熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂」と同義)の原料とする2官能エポキシ樹脂の1つに、グリシジルエステル型エポキシ樹脂の記載があるが、カルボン酸含有熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂としての特徴についての記載は無く、難燃性についての記載もない。
特開平5−93041号公報 特開平5−93042号公報 WANG C−S、SHIEH J−Y著「Synthesis and properties of epoxy resins containing 2−(6−oxid−6H−dibenz <c,e> <1,2>oxaphosphorin−6−yl)1,4−benzenediol」Polymer(GBR)VOL.39,NO,23,PAGE.5819−5826 1998 CHO C−S、CHEN L−W、CHIU Y−S著「Novel flame reterdant epoxy resins.I.Synt−hesisi、characterization,and properties of aryl phosphinate epoxy ether cured with diamine.」Polymer Bulletin VOL.41,NO.1,PAGE.45−52 1998 特開2001−310939号公報 特開平5−295090号公報 特開2001−261789号公報
本発明は従来の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂とほぼ同等の粘度を有し、さらにハロゲン化物を使用しないで、それ自体で難燃性を有する、低弾性で、柔軟性に優れ、溶解溶剤選択性が無く、人体に無害な溶媒に可溶で、様々なゴム成分・熱可塑性樹脂成分との相溶性の良い熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及び該樹脂から成形される絶縁性フィルム、及び層間絶縁材用エポキシ樹脂組成物、及びこれらを用いた接着フィルム・プリプレグ等を提供することを目的とするものである。
本発明は、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中にリン原子を1重量%から6重量%含有させ、かつ、2価カルボン酸を導入することにより、難燃性を有する、耐熱性、柔軟性に優れた熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を得るものである。
すなわち、本発明は、一般式(1)で表され、リン含有量が1重量%から6重量%であり、それ自体で難燃性のある、重量平均分子量が10,000〜200,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂である。この重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)にて、溶離液として、20mM臭化リチウム含有したN,N−ジメチルホルムアミドを使用し、試料濃度0.5%で測定した標準ポリエチレンオキサイド換算による重量平均分子量である(以下、単に、分子量というのはこの測定法による重量平均分子量をいう)。
Figure 0004854296
式中、Xは、一般式(2)、(3)、(6)、(7)、(8)から選ばれるものであり、Xが一般式(8)である割合が全Xの2モル%から50モル%であり、かつ、一般式(2)及び/または(3)は必須成分である化合物の単独、または、それら複数を組み合わせたものであり、Zは、水素原子または式(10)のいずれかであり、nは10以上の値である。
Figure 0004854296
式中、Yは、一般式(4)、(5)から選ばれるものであり、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
Figure 0004854296
式中、Yは、一般式(4)、(5)から選ばれるものであり、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
Figure 0004854296
式中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
Figure 0004854296
式中、R〜R10は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜R10のうちの2個以上が同一であっても良い。
Figure 0004854296
式中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
Figure 0004854296
式中、Aは、直接結合、または、−CH−、−C(CH−、−CHCH−、−S−、−SO−、−O−、−CO−、一般式(9)のいずれの2価の基から選ばれるものであり、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
Figure 0004854296
式中、Bは、炭素数2〜64の2価カルボン酸残基を示し、環状脂肪族基、不飽和結合基、芳香族環、複素環、ヘテロ原子を含んでいても良い。
Figure 0004854296
式中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
Figure 0004854296
本発明による熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を用いると、弾性率が小さく、柔軟な密着性の優れた、かつガラス転移点が90℃を越えるハロゲンを使用しない難燃性フィルムが得られる。これは、通常の使用範囲において必要十分な耐熱性を有し、比較的高温環境においても物性が実質上低下しない絶縁フィルムが製造可能なことに相当するものである。また、ゴムや溶剤との相溶性も改善されていて、その技術上の意味に大きなものがある。
以下本発明について詳細に述べる。
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂に於いて、分子量が10,000未満では、熱可塑性が失われて、自己造膜性を示さなくなる。また分子量が200,000を超えると、溶剤で溶解しても、一般に工業的に利用されている溶媒濃度である70重量%から40重量%の濃度では、溶液粘度が高過ぎ、成膜使用可能な溶液粘度にするために溶剤を多量に加えなければならず、不経済であり、環境に対してもVOC(揮発性有機化合物)を可能なかぎり低減する方向にある現状では好ましいとはいい難い。こうしたことから、分子量は11,000〜100,000が好ましく、より好ましくは12,000〜65,000である。
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、一般に知られている2官能エポキシ樹脂と二価フェノール化合物の付加重合反応によって得られ、製造反応に使用する2官能エポキシ樹脂と2価フェノールの配合当量比は、フェノール性水酸基:エポキシ基=0.9:1〜1.1:1が好ましい。この配合当量比が0.9より小さくなっても、1.1より大きくなっても充分に高分子量化することができない。より好ましくは0.94:1〜1.06:1、最も好ましくは0.97:1〜1.03:1である。
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造に使用する二価フェノール化合物に、一般式(11)及び/または一般式(12)で表されるリン含有二価フェノール化合物を必須成分として、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中のリン含有量が1重量%〜6重量%になる様に導入する。リン含有量が1重量%未満では十分な難燃性を付与できない。1重量%以上ではどの濃度でも難燃性が付与可能となるが、6重量%以上の濃度にしても難燃性の向上は認められない。また、6重量%以上では溶剤溶解性が悪くなり、特定の溶剤でしか溶解しなくなることから、リン含有量は1重量%から6重量%の範囲に制御するのが実用的であり、より好ましくは1.5重量%から5.5重量%である。
Figure 0004854296
式中、Yは、一般式(13)、(14)から選ばれるものであり、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
Figure 0004854296
式中、Yは、一般式(13)、(14)から選ばれるものであり、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
Figure 0004854296
式中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
Figure 0004854296
式中、R〜R10は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜R10のうちの2個以上が同一であっても良い。
一般式(11)のうち、Yが一般式(13)の具体例としては、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドが挙げられ、Yが一般式(14)の具体例としては、ジフェニルフォスフィニルハイドロキノンが挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。また、一般式(12)のうち、Yが一般式(13)の具体例としては、1,4−ナフトキノンと9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドとの反応生成物が挙げられ、Yが一般式(14)の具体例としては、ジフェニルホスフィニルナフトヒドロキノンが挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造に使用するリン含有二価フェノール化合物以外の二価フェノール化合物は、2個の水酸基が芳香族環に結合したものであればどのようなものでもよく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールD、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン等のビスフェノール類、ビフェノール、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。これらの二価フェノール化合物を単独または2種類以上併用し使用することもできる。
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造に使用する2官能エポキシ樹脂は、分子内に2個のエポキシ基を持つ化合物であればどのようなものでもよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の単環2価フェノールのジグリシジルエーテル、フタル酸、イソフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、ダイマー酸等の2価カルボン酸のジグリシジルエステル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。これらの2官能エポキシ樹脂を単独または2種類以上併用し使用することもできる。また、特開2003−252951号公報や特開2003−342350号公報に示されているように、2官能エポキシ樹脂中の末端基不純物である加水分解性塩素が400ppm以下であり、αジオール含有量が10meq/100g以下である2官能エポキシ樹脂を原料として使用することが好ましい。加水分解性塩素が400ppmより大きかったり、αジオール含有量が10meq/100gより大きいと、製造される熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂が十分に高分子量化しなくなり、好ましくない。なお、グリシジルエステルの場合、一般に全塩素が高くなり、エポキシ基としての末端基純度が悪い場合が多いため、2価フェノール化合物との共重合反応が停止して所定の分子量にならなかったりするので、全塩素量が4000ppm以下であることが好ましく、3000ppmがより好ましく、更に2000ppm%以下が最も好もしい。
本発明においては熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を柔軟にし、低弾性、低応力を達成するために、炭素数2〜64の2価カルボン酸残基を全官能基の3モル%から50モル%導入している。3モル%以下では十分な柔軟性の付与ができない。また、50モル%以上使用すると、耐熱性の低下が激しいため、3モル%から50モル%の範囲に制御するのが実用的であり、好ましくは4モル%から40モル%であり、より好ましくは5モル%から30モル%である。2価カルボン酸残基の導入は、リン含有二価フェノール化合物以外の二価フェノール化合物の一部を炭素数4〜66の2価カルボン酸に置き換えて反応するか、または、2官能エポキシ樹脂の一部を、炭素数4〜66の2価カルボン酸のジグリシジルエステル化合物にして反応するか、またはその両方を行うことによって得られる。
また、カルボン酸残基の骨格は炭素数が2から64の範囲であればどんな構造でもよく、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸、等の飽和直鎖ジカルボン酸の他、骨格中に環状脂肪族基、不飽和結合基、芳香族環、複素環、ヘテロ原子を含んでいても良い。また、2価アルコールと酸無水物の付加反応や、2価アルコールと2価カルボン酸の脱水反応によって得られる2価カルボン酸でもよい。環状脂肪族基を含有する例としては、ヘキサヒドロフタル酸、水添ダイマー酸、等が挙げられる。不飽和結合基を含有する例としては、イタコン酸、フマル酸、等が挙げられる。芳香族環を含有する例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、等が挙げられる。複素環を含有する例としては、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタルサン、cis−ノルボネン−5,6−エンドジカルボン酸等が挙げられる。ヘテロ原子を含有する例としては、スルホニルジ安息香酸、オキシジ安息香酸、等が挙げられる。以上のように様々な2価カルボン酸が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではないし、これらの2価カルボン酸を単独または2種類以上併用し使用することもできる。
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造に使用する触媒は、エポキシ基とフェノール性水酸基やカルボキシル基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよく、例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等、酢酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩が挙げられる。有機リン化合物の具体例としては、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルホスフォニウムブロマイド、テトラメチルホスフォニウムアイオダイド、テトラメチルホスフォニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルブチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。第3級アミンの具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。イミダゾール類の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。環状アミン類の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5等が挙げられる。
これらの触媒は併用することができる。通常、触媒の使用量は反応固形分中、0.001重量%〜1重量%であるが、アルカリ金属化合物を使用すると熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中にアルカリ金属分が残留し、それを使用した電気電子部材の絶縁特性を極端に悪化させるため、特開2003−252951や特開2003−342350に示されているように、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中のアルカリ金属含有量の総量は10ppm以下、好ましくは、5ppm以下、より好ましくは3ppm以下である。また、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等を触媒として使用した場合も、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中に触媒残渣として残留し、アルカリ金属化合物の残留と同様に電気電子部材の絶縁特性を悪化させるため、特開2003−252951や特開2003−342350に示されているように、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中の窒素含有量を150ppm以下にすることが好ましい。
本発明における熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、その製造時の合成反応の工程において、溶媒を用いても良く、その溶媒としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を溶解するものであれば、どのようなものでも良い。例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。芳香族系溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセチルアセトン、ジオキサン等が挙げられる。アミド系溶媒の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。グリコールエーテル系溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの溶媒は併用することができる。合成反応においてこれらの溶媒を使用する場合の固形分濃度は35%〜95%が好ましい。また、反応途中で溶媒を添加して反応を続けることができる。反応終了後、溶媒は必要に応じて、除去することもできるし、更に追加することもできる。
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を製造する重合反応は、使用する触媒が分解しない程度の反応温度で行う。反応温度は、50〜230℃が好ましく、より好ましくは60〜210℃、特に好ましくは90℃〜190℃である。反応圧力は通常、常圧であり、反応熱の除去が必要な場合は、使用する溶剤のフラッシュ蒸発・凝縮還流法、間接冷却法、またはこれらの併用法により行われる。また、アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することもできる。
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は難燃性、耐熱性、可撓性のある物質であり、単独で用いることもできるが、本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を必須成分として、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、溶剤、無機充填剤、繊維基材等種々の材料を併用することもできる。本発明に使用されるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等の種々のエポキシ樹脂が挙げられる。また、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂等を使用することができる。また、本発明に使用される硬化剤としては、例えば、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、酸無水物、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類等各種フェノール系硬化剤を、単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。さらに、窒素原子を含有してなるフェノール系硬化剤を使用する事もできる。フェノール系硬化剤を使用すれば難燃性、接着性が向上する。窒素原子を有するフェノール系硬化剤としては、トリアジン構造含有ノボラック樹脂、大日本インキ化学工業株式会社製フェノライト7050シリーズ、油化シェル(株)製メラミン変性フェノールノボラック樹脂、群栄化学製、アミノトリアジンノボラック樹脂PS−6313などがある。上記のフェノール樹脂の配合量については、1エポキシ当量のエポキシ樹脂に対し0.5〜1.3フェノール性水酸基当量のフェノール樹脂を配合することが望ましい。この範囲を外れると得られるエポキシ樹脂組成物の耐熱性が損なわれるという問題が生じる。また、その硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、グアニジン類、各種のイミダゾールイミダゾール類や三級アミン類、またはこれらのマイクロカプセル化したもののほか、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物など、公知慣用のものを単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
さらに、必要に応じて溶剤を添加しても良く、その溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール等が挙げられ、これらの溶剤は単独または、2種類以上の混合溶剤として使用することも可能である。
その他、必須成分ではないが、物性を落とさない範囲であるならば、保存安定性のために紫外線防止剤、可塑剤等、また無機充填材として水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、シリカ等、カップリング剤としてシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等も使用可能である。また、さらに難燃性を向上させるために、ノンハロゲンタイプのP系、N系、シリコン系難燃剤等を添加しても良い。さらに柔軟性、接着性を向上させるために、ポリエステル系、ポリビニルブチラール系、アクリル系、ポリアミド系熱可塑性高分子物質等やNVRBCTBN、VTBN等のゴム成分等を添加しても良い。例えば日本ゼオン製品ニポール1072、日本合成ゴム製品PNR−1H、N−632S、宇部興産製品RLP、CTBN−1008等をそのまま用いることができる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化物の機械強度の向上や難燃性の向上の為、有機及び/又は無機のフィラーを添加することできる。有機フィラーとしては、コアシェル構造を有するアクリルゴム微粒子、シリコンパウダー、ナイロンパウダー等を挙げることができ、また無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、酸化アンチモン等を挙げることができ、繊維状無機物絶縁材料は繊維状チタン酸カリウムを挙げることができる。これらの無機フィラーは、特開2000−121629号公報に開示されているようなシラン系カップリング剤等で表面処理して使用することもできる。また、高誘電率無機充填剤としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ジルコニウム、チタン酸亜鉛、二酸化チタン等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を混合して用いることもできる。これらの高誘電率無機充填剤は、特開2000−121629号公報に開示されているようなシラン系カップリング剤等で表面処理して使用することもできる。
以下、合成例、実施例及び比較例に基づき本発明を具体的に説明するが本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。以下の合成例、実施例及び比較例に於いて、「部」は「重量部」を示す。さらに本発明では以下の試験方法を使用した。
(1)分子量:ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)にて、溶離液としてN,N−ジメチルホルムアミド(20mM臭化リチウム含有品)を使用した標準ポリエチレンオキサイド換算による重量平均分子量。
(2)エポキシ当量:JIS K−7236で測定し、樹脂固形分としての値に換算した。
(3)不揮発分:JIS K−7235で測定した。
(4)酸価、カルボン酸当量:KOH−アルコール溶液を使用し、フェノールフタレインを指示として中和滴定測定し、樹脂固形分としての値に換算した。
(5)加水分解性塩素:KOH−アルコール溶液を使用し、電位差滴定法により測定し、樹脂固形分としての値に換算した。
(6)αジオール含有量:過沃素酸とチオ硫酸ナトリウムを使用し、電位差滴定法により測定し、樹脂固形分としての値に換算した。
(7)リン含有量:蛍光X線装置で測定し、樹脂固形分としての値に換算した。
(8)ガラス転移温度:TMAにて、20℃から5℃/分の昇温速度による測定した。
(9)弾性率:DMSにて、20℃から2℃/分の昇温速度、周波数10Hzによる測定した。
(10)接着力:JIS K6854−1に準拠し、オートグラフにて、25℃雰囲気下、50mm/minによる測定した。
(11)燃焼性:UL−94規格に従い垂直法により評価した。
合成例1
ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル(坂本薬品工業製SR−HHPA)を、真空薄膜蒸留装置(短行程蒸留装置KD4型、UIC GmbH社製)を用い、系内温度:180℃、系内圧力:0.1Pa、供給速度10ml/minの条件で1時間かけて減圧蒸留して、エポキシ当量145g/eq、加水分解性塩素200ppm、αジオール含有量4meq/100gのエポキシ樹脂Aを300g得た。同エポキシ樹脂Aを163g、リン含有フェノール(三光化学製HCA−HQ、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、水酸基当量162g/eq、リン含有量9.5%)を182部、シクロヘキサノンを148部、触媒として2エチル4メチルイミダゾール(四国化成工業製、以後2E4MZと略す)0.06部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、150℃〜170℃の温度で15時間反応させた後、シクロヘキサノン159部、メチルセロソルブ307部を加えて、エポキシ当量35,000g/eq、リン含有率5.0%、固形分濃度36%(以後NV.と略す)、酸価0.3mgKOH/g、重量平均分子量69,000のヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルに起因するカルボン酸残基を有する熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルセロソルブ混合ワニスを950部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスIとした。合成樹脂ワニスIを離型フィルム(PET)に溶剤乾燥後の樹脂厚みが60μmになる様にローラーコーターにて塗布し、140℃〜160℃、30〜60分間溶剤乾燥を行った後、離型フィルムから樹脂フィルムを剥がし絶縁性フィルムを得た。また、標準試験板(PM−3118M、日本テストパネル工業製)に、得られた絶縁性フィルムと35μm銅箔(3EC−III、三井金属鉱業製)を重ねてドライラミネーターにより160℃でラミネートして、銅箔剥離強度測定用試験片を得た。また、CCL−HL830(三菱瓦斯化学製銅張積層板、UL−94V−0、0.8mm板)の銅箔を除去した物に絶縁性フィルムを離型紙付きで重ねてドライラミネーターにより160℃でラミネートした後、離型フィルムを剥がし、燃焼性測定用試験片を得た。さらに、合成樹脂ワニスIの固形分9部に対し、ゴムとしてPNR−1H(日本合成ゴム製、カルボキシル基含有低イオン多官能NBR、酸当量1,395g/eq、CN含有量27%、ムーニー粘度60)1部を混合してゴム相溶性試験サンプルとした。判定は、目視にて、相溶した物を○とし、分離や白濁した物を×とした。また、合成樹脂ワニスI90部にMEKを10部混合溶解しMEK相溶性試験サンプルとした。判定は、目視にて、透明な物を○、白濁した物を×とした。
合成例2
リン含有フェノールとしてHCA−HQ(前述)を162部、水添ダイマー酸(ユニケマ製プリポール1009、カルボン酸当量286g/eq)を26部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成製YD−8125、エポキシ当量172g/eq、加水分解性塩素160ppm、αジオール含有量3meq/100g)を194部、シクロヘキサノンを164部、触媒としてトリフェニルフォスフィン(北興化学製、以後、TPPと略す)0.2部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、150℃〜170℃の温度で18時間反応させた後、シクロヘキサノン123部、メチルセロソルブ287部を加えて、エポキシ当量9,300g/eq、リン含有率4.0%、NV.40%、酸価0.3mgKOH/g、重量平均分子量42,000の水添ダイマー酸に起因するカルボン酸残基を有する熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルセロソルブ混合ワニスを950部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスIIとした。合成樹脂ワニスIIを使用した以外は合成例1と全く同様に行い、絶縁性フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、燃焼性測定用試験片、ゴム相溶性試験サンプル、及び、MEK相溶性試験サンプルを得た。
合成例3
2価アルコール(新日本理化製シクロヘキサンジメタノール)21部、無水こはく酸(試薬)29部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、135℃〜165℃の温度で4時間反応させた後、リン含有フェノールとしてHCA−HQ(前述)を65部、ビスフェノールフルオレン(新日鐵化学製、水酸基当量175g/eq)58部、ビフェノール型エポキシ樹脂(東都化成製YDC−1500、エポキシ当量194g/eq、加水分解性塩素120ppm、αジオール含有量2meq/100g)を205部、シクロヘキサノンを162部、触媒として2E4MZ0.10部を追加し、さらに、常圧、155℃〜175℃の温度で10時間反応させた後、シクロヘキサノン122部、メチルセロソルブ284部を加えて、エポキシ当量5,900g/eq、リン含有率1.6%、NV.40%、酸価0.2mgKOH/g、重量平分子量28,000のシクロヘキサンジメタノールと無水こはく酸反応物に起因するカルボン酸残基を有する熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルセロソルブ混合ワニスを945部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスIIIとした。合成樹脂ワニスIIIを使用した以外は合成例1と全く同様に行い、絶縁性フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、燃焼性測定用試験片、ゴム相溶性試験サンプル、及び、MEK相溶性試験サンプルを得た。
合成例4
リン含有フェノールとしてジフェニルフォスフィニルハイドロキノン(水酸基当量155g/eq、リン含有量10.0%)を140部、アジピン酸(カルボン酸当量73g/eq)を18部、ヒドロキノン型エポキシ樹脂(東都化成製YDC−1312、エポキシ当量176g/eq、加水分解性塩素80ppm、αジオール含有量2meq/100g)を207部、シクロヘキサノンを156部、触媒としてTPP(前述)0.37部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、150℃〜170℃の温度で8時間反応させた後、シクロヘキサノンを141部、メチルセロソルブ298部を加えて、エポキシ当量11,000g/eq、リン含有率3.8%、NV.40%、酸価0.3mgKOH/g、重量平均分子量58,000のアジピン酸に起因するカルボン酸残基を有する熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルセロソルブ混合ワニスを955部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスIVとした。合成樹脂ワニスIVを使用した以外は合成例1と全く同様に行い、絶縁性フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、燃焼性測定用試験片、ゴム相溶性試験サンプル、及び、MEK相溶性試験サンプルを得た。
合成例5
リン含有フェノールとしてHCA−NQ(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドと1,4−ナフトキノンとの反応物、水酸基当量187g/eq、リン含有量8.2%)を97部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成製YD−128、エポキシ当量187g/eq、加水分解性塩素200ppm、αジオール含有量5meq/100g)を170部、ダイマー酸(ユニケマ製プリポール1098、カルボン酸当量326g/eq)を103部、シクロヘキサノンを159部、触媒として2E4MZ(前述)0.04部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、150℃〜170℃の温度で10時間反応させた後、シクロヘキサノン119部、メチルセロソルブ278部を加えて、エポキシ当量4,500g/eq、リン含有率2.1%、NV.40%、酸価0.1mgKOH/g、重量平均分子量19,000のダイマー酸に起因するカルボン酸残基を有する熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルセロソルブ混合ワニスを920部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスVとした。合成樹脂ワニスVを使用した以外は合成例1と全く同様に行い、絶縁性フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、燃焼性測定用試験片、ゴム相溶性試験サンプル、及び、MEK相溶性試験サンプルを得た。
比較合成例1
リン含有フェノールとしてHCA−HQ(前述)を162部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂YD−8125(前述)を175部、シクロヘキサノンを144部、触媒として2E4MZ(前述)0.13部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、150℃〜170℃の温度で15時間反応させた後、シクロヘキサノン156部、N,N−ジメチルホルムアミド300部を加えて、エポキシ当量17,200g/eq、リン含有率4.6%、NV.36%、重量平均分子量62,000のカルボン酸残基を待たない熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・N,N−ジメチルホルムアミド混合ワニスを930部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスVIとした。合成樹脂ワニスVIを使用した以外は合成例1と全く同様に行い、絶縁性フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、燃焼性測定用試験片、ゴム相溶性試験サンプル、及び、MEK相溶性試験サンプルを得た。
比較合成例2
リン含有フェノールとしてHCA−HQ(前述)を23部、アジピン酸(前述)を99部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂YD−128(前述)を264部、シクロヘキサノンを165部、触媒として2E4MZ0.08部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、150℃〜170℃の温度で15時間反応させた後、シクロヘキサノン124部、メチルセロソルブ290部を加えて、エポキシ当量10,100g/eq、リン含有率0.6%、NV.40%、酸価0.2mgKOH/g、重量平分子量34,000のアジピン酸に起因するカルボン酸残基を有する熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルセロソルブ混合ワニスを960部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスVIIとした。合成樹脂ワニスVIIを使用した以外は合成例1と全く同様に行い、絶縁性フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、燃焼性測定用試験片、ゴム相溶性試験サンプル、及び、MEK相溶性試験サンプルを得た。
比較合成例3
ビスフェノールA型熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、具体的にはYP−50SC(東都化成製、エポキシ当量18,000、分子量45,000)を400部、シクロヘキサノンを240部、メチルエチルケトン360部を、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、反応温度を40℃〜60℃に保ち3時間撹拌し、完全に溶解させて、NV.40%のシクロヘキサノン・メチルエチルケトン混合ワニスとした。この樹脂を合成樹脂ワニスVIIIとした。合成樹脂ワニスVIIIを使用した以外は合成例1と全く同様に行い、絶縁性フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、燃焼性測定用試験片、ゴム相溶性試験サンプル、及び、MEK相溶性試験サンプルを得た。
実施例1
合成例1で得られた合成樹脂ワニスI277.8部とエポキシ樹脂としてYD−128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た。この組成物ワニスを離型フィルム(前述)へ溶剤乾燥後の樹脂厚みが60μmになるようにローラーコーターにて塗布し、130℃〜150℃、60分間溶剤乾燥及び硬化を行った後、離型フィルムから樹脂フィルムを剥がし、さらに樹脂フィルムを180℃、60分間後硬化させて、硬化フィルムを得た。それとは別に、標準試験板(前述)に溶剤乾燥後の樹脂厚みが50μmになるようにローラーコーターにて組成物ワニスを塗布し、130℃〜150℃、5分〜15分間溶剤乾燥を行った後、35μm銅箔(前述)を重ねてドライラミネーターにより180℃でラミネートして、銅箔剥離強度測定用試験片を得た。また、CCL−HL830(前述)の銅箔を除去した物に溶剤乾燥後の樹脂厚みが60μmになる様にローラーコーターにて塗布し、140℃〜160℃、30〜60分間溶剤乾燥した後、180℃、60分間後硬化させて、燃焼性測定用試験片を得た。
実施例2
合成例2で得られた合成樹脂ワニスII250.0部とエポキシ樹脂としてYD−128(前述)25.0部、硬化剤としてジシアンジアミド(日本カーバイト製、以後DICYと略す)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、及び、燃焼性測定用試験片を得た。
実施例3
合成例3で得られた合成樹脂ワニスIII250.0部とエポキシ樹脂としてYD−128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、及び、燃焼性測定用試験片を得た。
実施例4
合成例4で得られた合成樹脂ワニスIV263.2部とエポキシ樹脂としてYD−128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、及び、燃焼性測定用試験片を得た。
実施例5
合成例5で得られた合成樹脂ワニスV250.0部とエポキシ樹脂としてYD−128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、及び、燃焼性測定用試験片を得た。
比較例1
比較合成例1で得られた合成樹脂ワニスVI277.8部とエポキシ樹脂としてYD−128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、及び、燃焼性測定用試験片を得た。
比較例2
比較合成例2で得られた合成樹脂ワニスVII250.0部とエポキシ樹脂としてYD−128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、及び、燃焼性測定用試験片を得た。
比較例3
比較合成例3で得られた合成樹脂ワニスVII250.0部とエポキシ樹脂としてYD−128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム、銅箔剥離強度測定用試験片、及び、燃焼性測定用試験片を得た。
分子量は合成例1〜5と比較合成例1〜3で得られた合成樹脂ワニスを、ガラス転移温度及び弾性率は合成例1〜5と比較合成例1〜3で得られた絶縁性フィルム及び実施例1〜5と比較例1〜3で得られた硬化フィルムを、接着力は合成例1〜5と比較合成例1〜3で得られた銅箔剥離強度測定用試験片及び実施例1〜5と比較例1〜3で得られた銅箔剥離強度測定用試験片を、難燃性は合成例1〜5と比較合成例1〜3で得られた燃焼性測定用試験片及び実施例1〜5と比較例1〜3で得られた燃焼性測定用試験片をそれぞれ使用して測定した。
これらの測定結果を表1および表2に示す。
Figure 0004854296
Figure 0004854296
比較合成例1及び比較例1においては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中のカルボン酸量が0モル%と3モル%より小さく、弾性率が1.2GPaと実施例に比較して高弾性率となっている。また、MEK相溶性、ゴム相溶性がともに×で、相溶性が悪いことを示している。比較合成例2及び比較例2においては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中のリン含有量が0.6重量%と1重量%よりも小さく、難燃性(UL−94)がV−1で、実施例に比較し難燃性が充分でないことを示している。比較合成例3及び比較例3においては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中のカルボン酸量が0モル%と3モル%より小さく、弾性率が25℃で1.2GPa、100℃で0.1GPaと実施例の安定した弾性率に比較して、常温付近では高弾性で、高温時に弾性率の急激に低下している。また、リン含有量が0重量%と1重量%よりも小さく、難燃性(UL−94)がNGとなっている。
本発明による熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を用いると、弾性率が小さく、柔軟な密着性の優れた、かつガラス転移点が90℃を越えるハロゲンを使用しない難燃性フィルムが得られる。これは、通常の使用範囲において必要十分な耐熱性を有し、比較的高温環境においても物性が実質上低下しない絶縁フィルムが製造可能なことに相当するものである。また、ゴムや溶剤との相溶性も改善されていて、その技術上の意味に大きなものがある。
合成例2で得られた熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のGPCチャートである。 合成例2で得られた熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のIRスペクトル図である。

Claims (8)

  1. 一般式(1)で表され、リン含有量が1重量%から6重量%であり、それ自体で難燃性のある、重量平均分子量が10,000から200,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂。
    Figure 0004854296
    式中、Xは、一般式(2)、(3)、(6)、(7)、(8)から選ばれるものであって、一般式(2)及び/または一般式(3)は必須成分である化合物の単独、または、それら複数を組み合わせたものであり、かつ、一般式(8)は全Xの2モル%から50モル%の割合で存在し、Zは、水素原子または式(10)のいずれかであり、nは10以上の値である。
    Figure 0004854296
    式中、Yは、一般式(4)、(5)から選ばれるものであり、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
    Figure 0004854296
    式中、Yは、一般式(4)、(5)から選ばれるものであり、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
    Figure 0004854296
    式中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
    Figure 0004854296
    式中、R〜R10は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜R10のうちの2個以上が同一であっても良い。
    Figure 0004854296
    式中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
    Figure 0004854296
    式中、Aは、直接結合、または、−CH−、−C(CH−、−CHCH−、−S−、−SO−、−O−、−CO−、一般式(9)のいずれの2価の基から選ばれるものであり、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
    Figure 0004854296
    式中、Bは、炭素数2〜64の2価カルボン酸残基を示し、環状脂肪族基、不飽和結合基、芳香族環、複素環、ヘテロ原子を含んでいても良い。
    Figure 0004854296
    式中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基のいずれかを表し、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
    Figure 0004854296
  2. 熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び、硬化剤を必須成分とする樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂の少なくとも1種は請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂である樹脂組成物。
  3. 請求項2に記載の樹脂組成物において、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である樹脂組成物。
  4. 請求項2に記載の樹脂組成物において、請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂以外の熱可塑性樹脂成分がゴム成分又は/及び可撓性成分である請求項2〜3のいずれかの項に記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、または、請求項2〜請求項4のいずれかの項に記載の樹脂組成物を支持ベースフィルム上でフィルム状に形成する事を特徴とする接着フィルム又は絶縁フィルム。
  6. 請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、または、請求項2〜請求項4の何れかの項に記載の樹脂組成物を銅箔に塗布してなることを特徴とするプリント配線板用樹脂付き銅箔又はフレキシブルプリント配線板用樹脂付き銅箔。
  7. 請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、または、請求項2〜請求項4のいずれかの項に記載の樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材に塗工及び/又は含浸する事を特徴とするプリプレグ。
  8. 請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、または、請求項2〜請求項4の何れかの項に記載の樹脂組成物からなる、請求項5に記載の絶縁フィルム、請求項6に記載のプリント配線板用樹脂付き銅箔、請求項7に記載のプリプレグのいずれかから得られた電気積層板又はフレキシブル電気積層板。
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