JP7491422B2 - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関する。
電気・電子機器等を構成する絶縁材料に対して放熱性が要求されている。絶縁材料の放熱性について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、たとえば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂およびイミダゾール系硬化促進剤を含む熱硬化性樹脂組成物が記載されている。
特開2015-193504号公報
しかしながら、本発明者が検討した結果、特許文献1に記載の熱伝導性樹脂組成物は、難燃特性の点で改善の余地を有することが判明した。
本発明者はさらに検討したところ、残炭率および樹脂単身の熱伝導率を指針とすることにより、熱硬化性樹脂組成物が高い耐熱性を有し、難燃特性に優れることを見出した。このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、残炭率および樹脂単身の熱伝導率を所定値以上とすることにより、高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の難燃特性が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
反応性官能基を1分子中に3個以上有する多官能化合物、または前記多官能化合物の誘導体を含み、
フィラーを含まない当該熱硬化性樹脂組成物を組成物サンプルとして準備し、前記組成物サンプルを220℃、90分で硬化して、硬化サンプルを作製したとき、
前記組成物サンプルの800℃における残炭率が、35%以上80%以下であり、
前記硬化サンプルの25℃における樹脂熱伝導率が、0.20W/m・K以上1.0W/m・K以下である、熱硬化性樹脂組成物が提供される。
本発明によれば、難燃特性に優れた熱硬化性樹脂組成物が提供される。
本実施形態に係る金属ベース基板の構成を示す断面図である。 本実施形態に係るパワーモジュールの構成を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の概要を説明する。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂とともに、反応性官能基を1分子中に3個以上有する多官能化合物、または多官能化合物の誘導体を含むものである。この熱硬化性樹脂組成物は、フィラーを含まない当該熱硬化性樹脂組成物を組成物サンプルとして準備し、組成物サンプルを220℃、90分で硬化して、硬化サンプルを作製したとき、組成物サンプルの800℃における残炭率が、35%以上80%以下であり、硬化サンプルの25℃における樹脂熱伝導率が、0.20W/m・K以上1.0W/m・K以下という特性を有するものである。
本発明者の知見によれば、残炭率および樹脂単身の熱伝導率を指針とすることにより、熱硬化性樹脂組成物が高い耐熱性を有し、難燃特性に優れることを見出した。このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、まず、反応性官能基を1分子中に3個以上有する多官能化合物、または多官能化合物の誘導体を用いることにより、残炭率と樹脂単身の熱伝導率との両者の特性を適切に制御できることが見出され、両者の特性の数値範囲を上記下限値以上に制御することで、高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物の難燃特性が改善されることが見出された。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の各成分について詳述する。
(多官能化合物、または多官能化合物誘導体)
上記熱硬化性樹脂組成物は、多官能化合物、またはその誘導体である多官能化合物誘導体を含む。
多官能化合物または多官能化合物誘導体は、硬化剤または熱硬化性樹脂として用いることができる。
上記多官能化合物は、下記一般式(1)で表されるものであり、メソゲン構造を含有する化合物である。
-x-A ・・(1)
上記一般式(1)中、
およびAは、各々独立して、芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、または脂環式複素環基を表し、
xは、各々独立して、直接結合、または-O-、-S-、-C=C-、-C≡C-、-CO-、-CO-O-、-CO-NH-、-CH=N-、-CH=N-N=CH-、-N=N-および-N(O)=N-からなる群から選択される2価の結合基を示す。
ただし、互いに同一また異なる反応性官能基を、Aは1個以上、Aは2個以上備えるものである。
ここで、A、Aは各々独立して、ベンゼン環を有する炭素数6~12の炭化水素基、ナフタレン環を有する炭素数10~20の炭化水素基、ビフェニル構造を有する炭素数12~24の炭化水素基、ベンゼン環を3個以上有する炭素数12~36の炭化水素基、縮合芳香族基を有する炭素数12~36の炭化水素基、炭素数4~36の脂環式複素環基から選択されるものであることが好ましい。A、Aは、無置換であってもよく、または置換基を有する誘導体であってもよい。
、Aの具体例としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、シクロヘキシル、ピリジル、ピリミジル、チオフェニレン等が挙げられる。また、これらは無置換であっても良く、脂肪族炭化水素基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などの置換基を有する誘導体であってもよい。
xは、メソゲン構造中の結合基(連結基)に相当するものである。このxとしては、例えば、直接結合、または-C=C-、-C≡C-、-CO-、-CO-O-、-CO-NH-、-CH=N-、-CH=N-N=CH-、-N=N-または-N(O)=N-の群から選ばれる2価の置換基が好ましい。この中でも、-C=C-、-CO-O-、および-CO-NH-がさらに好ましい。
ここで、直接結合とは、単結合、またはメソゲン構造中のAおよびAが互いに連結して環構造を形成することを意味する。
上記多官能化合物の反応性官能基は、熱硬化性樹脂の熱硬化性官能基と反応するものを用いることができる。一般式(1)中、上記反応性官能基が、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、ビニル基およびアリル基からなる群から選択される一種以上を含むことができる。熱硬化性官能基がエポキシ基やマレイミド基の場合、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基を用いることができる。熱硬化性官能基がアクリル基の場合、ビニル基、アリル基を用いることができる。
上記一般式(1)の反応性官能基は、分子中、互いに異なるものでもよいが、反応安定性の観点から、全て同一であることが好ましい。
上記多官能フェノール化合物としては、反応性官能基としてヒドロキシ基を備える多官能化合物であり、例えば、ポリフェノールまたはポリフェノール誘導体を含むことができる。
上記ポリフェノールは、分子内に3個以上のフェノール性ヒドロキシ基を含有する化合物である。また、このポリフェノールは、分子内に上記メソゲン構造を備えるものが好ましい。例えば、メソゲン構造として、ビフェニル骨格、フェニルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格等を用いることができる。
なお、ポリフェノール誘導体とは、3個以上のフェノール性ヒドロキシ基およびメソゲン構造を有するポリフェノール化合物に対して、当該化合物の置換可能な位置で他の置換基に変更される化合物を含むものである。
上記多官能フェノール化合物としては、例えば、下記の一般式(A)で表されるメソゲン構造含有化合物を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 0007491422000001
上記一般式(A)中、RおよびRは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、Rは前記一般式(1)中の-x-を表し、aおよびcはそれぞれ1~3の整数であり、bおよびdはそれぞれ0~2の整数である。ただし、a+bおよびc+dは、それぞれ1~3のいずれかであり、かつ、a+cは3以上である。
また、上記一般式(A)のRは、それぞれ、-A-x-A-、-x-A-x-、または-x-を表すものである。これらのA、A、xは、上記一般式(1)中のものと同様である。なお、上記一般式(A)中の2つのベンゼン環は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
上記R、Rの具体例としては、それぞれ、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。
また、多官能化合物誘導体は、上記の多官能化合物に対して、反応性官能基の基数、メソゲン構造を維持しつつも、当該化合物の置換可能な位置で他の置換基に変更される化合物を含むものである。
多官能化合物誘導体中の反応性官能基は、多官能化合物中の反応性官能基と異なる種類で構成され得る。多官能化合物誘導体は、例えば、分子中に、エポキシ基、ベンゾオキサジン環、シアネート基などを含むことができる。この中でも、熱硬化性樹脂に用いる観点から、エポキシ基またはベンゾオキサジン環が好ましい。
上記エポキシ基を有する多官能化合物誘導体としては、上記多官能フェノール化合物のフェノール性水酸基をエポキシ基で置換した多官能エポキシ化合物を用いることができる。例えば、上記多官能フェノール化合物にエピクロロヒドリンを反応させることにより、上記多官能エポキシ化合物を得ることができる。多官能エポキシ化合物は熱硬化性樹脂として利用できる。
ベンゾオキサジン環を有する多官能化合物誘導体としては、上記多官能フェノール化合物のフェノール性水酸基をベンゾオキサジン環で置換した多官能ベンゾオキサジン化合物を用いることができる。例えば、上記多官能フェノール化合物、アミン類、アルデヒド類を反応させることにより、上記多官能ベンゾオキサジン化合物を得ることができる。多官能ベンゾオキサジン化合物は熱硬化性樹脂として利用できる。
(熱硬化性樹脂)
上記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有する。
当該熱硬化性樹脂として、分子内にメソゲン構造(メソゲン骨格)を含有する熱硬化性化合物や、分子内にメソゲン構造を含有しない熱硬化性化合物が挙げられる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ビスマレイミド樹脂、アクリル樹脂、またフェノール誘導体これらの誘導体等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1分子内に反応性官能基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。
これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記熱硬化性樹脂の含有量は、フィラーを含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば、0.1質量%以上80質量%以下が好ましく、0.5質量%以上70質量%以下がより好ましい。上記下限値以上であると、硬化性が向上し、樹脂層を形成するのが容易となる。上記上限値以下であると、樹脂層の保存安定性がより一層向上したり、樹脂層の熱伝導性がより一層向上したりする。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
(シアネート樹脂)
上記熱硬化性樹脂組成物は、シアネート樹脂を含有することができる。
熱硬化性樹脂組成物の硬化物について、低線膨張化や、弾性率および剛性の向上を図ることができる。また、得られる電子装置の耐熱性や耐湿性の向上に寄与することも可能である。
また、シアネート樹脂は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
上記シアネート樹脂は、例えばノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネート樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型シアネート樹脂から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の低線膨張化や、弾性率および剛性を向上させる観点からは、ノボラック型シアネート樹脂およびナフトールアラルキル型シアネート樹脂のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましく、ノボラック型シアネート樹脂を含むことが特に好ましい。
ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示されるものを使用することができる。
Figure 0007491422000002
一般式(I)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。平均繰り返し単位nが上記下限値以上であると、ノボラック型シアネート樹脂の耐熱性が向上し、加熱時に低量体が脱離、揮発することをより一層抑制できる。また、平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、10以下が好ましく、7以下がより好ましい。nが上記上限値以下であると、溶融粘度が高くなるのを抑制でき、絶縁樹脂層102の成形性を向上させることができる。
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(II)で表わされるナフトールアラルキル型シアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(II)で表わされるナフトールアラルキル型シアネート樹脂は、例えば、α-ナフトールあるいはβ-ナフトール等のナフトール類とp-キシリレングリコール、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを縮合させて得られるものである。一般式(II)の繰り返し単位nは10以下の整数であることが好ましい。繰り返し単位nが10以下であると、より均一な絶縁樹脂層102を得ることができる。また、合成時に分子内重合が起こりにくく、水洗時の分液性が向上し、収量の低下を防止できる傾向がある。
Figure 0007491422000003
(上記一般式(II)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、nは1以上10以下の整数を示す。)
上記シアネート樹脂の含有量の下限値は、フィラーを含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば、5重量%以上、好ましくは10重量%以上である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物のより効果的な低線膨張化、高弾性率化を図ることができる。一方、シアネート樹脂の含有量の上限値は、フィラーを含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば60重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45質量%以下である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の特性のバランスを図ることができる。
(硬化剤)
上記熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化剤を含むことができる。
上記硬化剤としては、熱硬化性樹脂の種類に応じて選択され、これと反応するものであれば特に限定されない。
硬化剤としては、フェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、メルカプタン系硬化剤等を挙げることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記フェノール樹脂系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ノボラック樹脂、トリスフェニルメタン型のフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;レゾール型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、ガラス転移温度の向上及び線膨張係数の低減の観点から、ノボラック型フェノール樹脂またはレゾール型フェノール樹脂を用いることができる。
(硬化促進剤)
上記熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤を含むことができる。
上記硬化促進剤の種類や配合量は特に限定されないが、反応速度や反応温度、保管性などの観点から、適切なものを選択することができる。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、有機リン化合物、3級アミン類、フェノール化合物、有機酸等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、耐熱性を高める観点から、イミダゾール類などの窒素原子含有化合物を用いることが好ましい。
上記イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられる。
上記3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等が挙げられる。
上記フェノール化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
上記有機酸としては、例えば、酢酸、安息香酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
上記硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂と硬化剤との合計100質量%に対して、0.01質量%~10質量%でもよく、0.02質量%~5質量%でもよく、0.05質量%~1.5質量%でもよい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上述した成分以外の他の成分を含むことができる。この他の成分としては、例えば、フィラー、分散安定剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、表面調整剤(レベリング剤や界面活性剤)が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記熱硬化性樹脂組成物は、フィラーを含むことができる。
上記フィラー(充填材)としては、無機フィラーまたは有機フィラーが用いられる。
無機フィラーとして、例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;アルミナ;チタンホワイト;水酸化アルミニウム;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維等が挙げられる。
また、有機フィラーとしては、例えば、オルガノシリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等が挙げられる。
これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(熱伝導性フィラー)
上記熱硬化性樹脂組成物は、フィラーとして、熱伝導性フィラーを含むことができる。
上記熱伝導性フィラーは、たとえば、20W/m・K以上の熱伝導率を有する高熱伝導性無機粒子を含むことができる。高熱伝導性無機粒子としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素は、鱗片状窒化ホウ素の、単分散粒子、凝集粒子またはこれらの混合物を含むことができる。鱗片状窒化ホウ素は顆粒状に造粒されていてもよい。鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子を用いることによって、さらに熱伝導性を高められる。凝集粒子は、焼結粒子であっても、非焼結粒子であってもよい。
鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子(鱗片状フィラーの凝集物)を使用することにより厚み方向の熱伝導率を高めることができる。詳細なメカニズムは定かでないが、鱗片状フィラーの一部がプレス成形時に押しつぶされて、鱗片状フィラーの凝集物が一方向に配向することなく等方的な熱伝導パスが形成されるため、と考えられる。また、遊星型ミキサーまたはホモミキサー等の使用によって、鱗片状フィラーの凝集物の崩壊を抑えつつ、分散を可能となる混合手法を採用することにより、上記のような等方的な熱伝導パスを実現できると考えられる。
上記熱伝導性フィラーの含有量は、フィラーを含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、100質量%~400質量%であり、好ましくは150質量%~350質量%であり、より好ましくは200質量%~300質量%である。上記下限値以上とすることにより、熱伝導性を向上させることができる。上記上限値以下とすることにより、プロセス性の低下を抑制することができる。
(分散安定剤)
上記熱硬化性樹脂組成物は、分散安定剤を含むことができる。
分散安定剤を使用することにより、熱伝導性フィラーの沈降を抑制することができる。例えば、ナノ成分を添加することで、熱硬化性樹脂組成物のワニス粘度が上昇するため、熱伝導性フィラーの沈降を抑制できる。これにより、フィラーが均一に分散し、成形不良なく複合成形体を得ることが可能とし、安定した熱伝導性を発現できると考えられる。
上記分散安定剤としては、例えば、ナノシリカ粒子などの無機ナノ粒子、アルキルスルホン酸系化合物、四級アンモニウム系化合物、高級アルコールアルキレンオキサイド系化合物、多価アルコールエステル系化合物、アルキルポリアミン系化合物、ポリリン酸系化合物、ポリカルボン酸系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、ポリエーテル系化合物、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
上記ナノシリカ粒子は、フュームドシリカやコロイダルシリカを用いることができる。コストや性能などの点はフュームドシリカが好ましい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ナノシリカ粒子の粒子径は、例えば1nm~100nm、好ましくは2nm~50nmである。この径とすることで、上述の熱伝導性粒子の分布の均一性を更に高められると考えられる。
なお、ここでの粒子径は、レーザー回折法による1次粒子平均径を意味する。
上記分散安定剤の含有量は、フィラーを含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.02質量%~5.0質量%、より好ましくは0.05質量%~3.0質量%である。上記下限値以上とすることにより、熱伝導率を高めることができる。一方、上記上限値以下とすることにより、成形性や熱伝導パスの形成性を高めることができる。
上記ナノシリカ粒子の量は、フィラーを含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば0.1質量%~5質量%、好ましくは0.2質量%~3質量%である。
上記熱硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含むことができる。
これにより、熱硬化性樹脂組成物中における熱伝導性フィラーの相溶性を向上させることができる。カップリング剤は、熱硬化性樹脂組成物に添加してもよいし、熱伝導性フィラー表面に処理して使用してもよい。
上記シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、カチオニック系シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤からなる群から選択される一種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この中でも、官能基として、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基またはヒドロキシ基の少なくとも一種以上を有するシランカップリング剤を用いることができる。また、樹脂成分との相溶性を向上させる観点から、非反応性のフェニル基を有するシランカップリング剤を用いることができる。
上記官能基を有するシランカップリング剤の具体例としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。上記フェニル基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチルアニリノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアニリノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルイミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルイミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトシキシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。
上記カップリング剤の添加量は、熱伝導性フィラー100質量%に対して、例えば、0.05質量%以上3質量%以下が好ましく、特に0.1質量%以上2質量%以下が好ましい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の製造方法として、例えば、次のような方法がある。
熱伝導性フィラー以外の上記の各成分を、溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより樹脂ワニス(ワニス状の熱硬化性樹脂組成物)を調整することができる。この混合は、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いることができる。
上記溶剤としては特に限定されないが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
また、当該樹脂ワニスに、熱伝導性フィラーを添加し、三本ロール等を用いて混練することにより、Bステージ状態の熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。混練時に添加することにより、熱硬化性樹脂中に熱伝導性フィラーをより均一に分散させることが可能であるが、これに限定されない。熱伝導性フィラーは、混練時に添加してもよいが、樹脂ワニスの混合時に添加してもよい。なお、分散性の観点から、ナノ粒子は、例えば、所定の溶剤に分散させもの(ナノ粒子分散液)を樹脂ワニス中に添加することが好ましい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の特性について説明する。
上記熱硬化性樹脂組成物の特性は、次の組成物サンプル、あるいは硬化サンプルを用いて測定されるものである。これにより、上記熱硬化性樹脂組成物の(フィラーを除いた)樹脂単身の特性を評価できる。
上記組成物サンプルは、上記熱硬化性樹脂組成物の組成成分うち、フィラー以外の成分の混合物で構成され、フィラーを含まない熱硬化性樹脂組成物として準備される。ここで言う「フィラー」には、上述の熱伝導性フィラー、無機フィラーまたは有機フィラー等の通常のフィラー、分散安定剤として用いられる無機ナノ粒子を含む。
上記硬化サンプルは、組成物サンプルを220℃、90分で硬化したものである。必要に応じて、所定寸法の試験片に加工してもよく、硬化後に所定条件で乾燥処理がなされてもよい。
上記組成物サンプルの800℃における残炭率の下限値は、例えば、35%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは43%以上である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の難燃特性を高めることができる。一方、上記残炭率の上限値は、特に限定されないが、例えば、80%以下でもよく、70%以下でもよい。
上記硬化サンプルの硬化物の厚み方向における樹脂熱伝導率の下限値は、例えば、0.20W/m・K以上、好ましくは0.22W/m・K以上、より好ましくは0.27W/m・K以上である。これにより、硬化物の熱伝導率を向上できる。一方、上記樹脂熱伝導率の上限値は、特に限定されないが、例えば、1.0W/m・K以下でもよく、0.8W/m・K以下でもよい。
上記硬化サンプルの硬化物のガラス転移温度の下限値は、例えば、150℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上である。これにより、耐熱性に優れた金属ベース基板やパワーモジュールを実現できる。上記ガラス転移温度の上限値は、例えば、350℃以下でもよく、300℃以下でもよい。
上記硬化サンプルの5%重量減少温度(Td5)は、例えば、250℃以上、好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上である。これにより、耐熱性に優れた金属ベース基板やパワーモジュールを実現できる。上記5%重量減少温度(Td5)の上限値は、例えば、450℃以下でもよく、400℃以下でもよい。
上記硬化サンプルの、40℃~80℃の範囲における平面方向(XY方向)の線膨張係数は、例えば、10ppm/℃~80ppm/℃、好ましくは20ppm/℃~70ppm/℃、より好ましくは30ppm/℃~60ppm/℃である。このような数値範囲内とすることにより、高温時の応力緩和能を高め、信頼性に優れた金属ベース基板やパワーモジュールを実現できる。
上記硬化サンプルの、180℃~200℃の範囲における平面方向(XY方向)の線膨張係数は、例えば、30ppm/℃~100ppm/℃、好ましくは35ppm/℃~80ppm/℃、より好ましくは40ppm/℃~70ppm/℃である。このような数値範囲内とすることにより、高温時の応力緩和能を高め、信頼性に優れた金属ベース基板やパワーモジュールを実現できる。
上記組成物サンプルを100℃、10分で加熱した後、コンプレート粘度計を用いて、測定温度180℃で当該熱硬化性樹脂組成物の硬化トルクを経時的に測定する。このとき、最大硬化トルク値の時間をTmaxとし、測定開始から最大トルク値の10%のトルク値に達したときの時間をT10とし、測定開始から最大トルク値の50%のトルク値に達したときの時間をT50とする。
50/Tmaxは、例えば、0.15~1.60、好ましくは0.20~0.90、より好ましくは0.25~0.80である。
10/T50は、例えば、0.10~0.90、好ましくは0.20~0.80、より好ましくは0.30~0.70である。
このような数値範囲内とすることにより、詳細は定かではないが、硬化プロファイルが適当になり、フィラーを含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物(複合成形体)の放熱特性を向上できる、と考えられる。
本実施形態では、たとえば熱硬化性樹脂組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、熱硬化性樹脂組成物の調製方法等を適切に選択することにより、上記残炭率、樹脂熱伝導率、ガラス転移温度、Td5、線膨張係数、およびトルクプロファイルを制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、反応性官能基を1分子中に3個以上有する多官能化合物、その多官能化合物誘導体を用いること、多官能化合物・多官能化合物誘導体の中でもメソゲン構造を有するものを使用すること、成分の混合方法を適切に選択すること等が、上記残炭率、樹脂熱伝導率、ガラス転移温度、Td5、線膨張係数およびトルクプロファイルを所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
(樹脂シート)
本実施形態の樹脂シートは、キャリア基材と、キャリア基材上に設けられた、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層と、を備えるものである。
上記樹脂シートは、たとえばワニス状の熱硬化性樹脂組成物をキャリア基材上に塗布して得られた塗布膜(樹脂層)に対して、溶剤除去処理を行うことにより得ることができる。上記樹脂シート中の溶剤含有率が、熱硬化性樹脂組成物全体に対して10重量%以下とすることができる。たとえば80℃~150℃、1分間~30分間の条件で溶剤除去処理を行うことができる。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化が進行することを抑制しつつ、十分に溶剤を除去することが可能となる。
上記樹脂シート(キャリア基材付き樹脂層)は、巻き取り可能なロール状でもよいし、矩形形状の枚葉状であってもよい。樹脂シートの樹脂膜の表面は、例えば、露出していてもよく、保護フィルム(カバーフィルム)で覆われていてもよい。保護フィルムとしては、公知の保護機能を有するフィルムを用いることができるが、例えば、PETフィルムを使用してもよい。
また、本実施形態において、上記キャリア基材としては、例えば、高分子フィルムや金属箔などを用いることができる。当該高分子フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、シリコーンシート等の離型紙、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。当該金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅および/または銅系合金、アルミおよび/またはアルミ系合金、鉄および/または鉄系合金、銀および/または銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートで構成されるシートが安価および剥離強度の調節が簡便なため最も好ましい。これにより、キャリア基材付き樹脂層から、キャリア基材を適度な強度で剥離することが容易となる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、電気・電子機器などの放熱絶縁材料として用いることが可能である。この放熱絶縁材料は、例えば、電子部品を搭載するための基板材料、接着材料に用いることができる。
電気・電子機器は、たとえば、通常の半導体装置(電子部品として半導体素子を備える電子装置)やパワーモジュール(電子部品としてパワー半導体素子を備える電子装置)等を用いることができる。パワー半導体素子は、SiC、GaN、Ga、またはダイヤモンドのようなワイドバンドギャップ材料を使用したものであり、高電圧・大電流で使用されるように設計されているため、通常のシリコンチップ(半導体素子)よりも発熱量が大きくなるので、さらに高温の環境下で動作することになる。パワー半導体素子には、たとえば、200℃以上や250℃以上等の高温の動作環境下で、長時間の使用が要求される。パワー半導体素子の具体例としては、たとえば、整流ダイオード、パワートランジスタ、パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、トライアック等が挙げられる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物によれば、パワーモジュールに用いることができる放熱絶縁材料を提供することができる。
(樹脂基板)
本実施形態の樹脂基板は、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備えるものである。この樹脂基板は、半導体素子やパワー半導体などの電子部品を搭載するための素子搭載基板の材料として用いることができる。
(金属ベース基板)
本実施形態の金属ベース基板100について図1に基づいて説明する。
図1は、金属ベース基板100の構成の一例を示す断面図である。
上記金属ベース基板100は、図1に示すように、金属基板101と、金属基板101上に設けられた絶縁層102と、絶縁層102上に設けられた金属層103と、を備えることができる。この絶縁層102は、上記の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層、熱硬化性樹脂組成物の硬化物および積層板からなる群から選択される一種で構成することが可能である。これらの樹脂層、積層板のそれぞれは、金属層103の回路加工の前では、Bステージ状態の熱硬化性樹脂組成物で構成されていてもよく、回路加工の後では、それを硬化処理されてなる硬化体であってもよい。
金属層103は絶縁層102上に設けられ、回路加工されるものである。この金属層103を構成する金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、鉄、錫等から選択される一種または二種以上が挙げられる。これらの中でも、金属層103は、好ましくは銅層またはアルミニウム層であり、特に好ましくは銅層である。銅またはアルミニウムを用いることで、金属層103の回路加工性を良好なものとすることができる。金属層103は、板状で入手できる金属箔を用いてもよいし、ロール状で入手できる金属箔を用いてもよい。
金属層103の厚みの下限値は、例えば、0.01mm以上であり、好ましくは0.10mm以上、さらに好ましくは0.25mm以上である。このような数値以上であれば、高電流を要する用途であっても、回路パターンの発熱を抑えることができる。
また、金属層103の厚みの上限値は、例えば、2.0mm以下であり、好ましくは1.5mm以下であり、さらに好ましくは1.0mm以下である。このような数値以下であれば、回路加工性を向上させることができ、また、基板全体としての薄型化を図ることができる。
金属基板101は、金属ベース基板100に蓄積された熱を放熱する役割を有する。金属基板101は、放熱性の金属基板であれば特に限定されないが、例えば、銅基板、銅合金基板、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板であり、銅基板またはアルミニウム基板が好ましく、銅基板がより好ましい。銅基板またはアルミニウム基板を用いることで、金属基板101の放熱性を良好なものとすることができる。
金属基板101の厚さは、本発明の目的が損なわれない限り、適宜設定できる。
金属基板101の厚さの上限値は、例えば、20.0mm以下であり、好ましくは5.0mm以下である。この数値以下の厚さの金属基板101を用いることで、金属ベース基板100全体としての薄型化を行うことができる。また、金属ベース基板100の外形加工や切り出し加工等における加工性を向上させることができる。
また、金属基板101の厚さの下限値は、例えば、0.1mm以上であり、好ましくは1.0mm以上であり、さらに好ましくは2.0mm以上である。この数値以上の金属基板101を用いることで、金属ベース基板100全体としての放熱性を向上させることができる。
本実施形態において、金属ベース基板100は、各種の基板用途に用いることが可能であるが、熱伝導性及び耐熱性に優れることから、パワーモジュールに用いるパワーモジュール用基板として用いることが可能である。
金属ベース基板100は、パターンにエッチング等することによって回路加工された金属層103を有することができる。この金属ベース基板100において、最外層に不図示のソルダーレジストを形成し、露光・現像により電子部品が実装できるよう接続用電極部が露出されていてもよい。
(パワーモジュール)
本実施形態のパワーモジュールについて図2に基づいて説明する。
図2は、パワーモジュール11の構成を示す断面図である。
本実施形態のパワーモジュール11は、上記の金属ベース基板100と、金属ベース基板100上に設けられた電子部品と、を備えることができる。電子部品としては、上記のパワー半導体素子等を用いることができる。パワー半導体素子以外にも、他の電子部品が金属ベース基板100上に搭載されていてもよい。動作により発熱する電子部品(各種の発熱素子)からの熱に対して、金属ベース基板100はヒートスプレッターとして機能することができる。
パワーモジュール11の一例は、図2に示すように、パワーモジュール用回路基板(金属ベース基板100)の金属層103a(金属層103がパターニングされたもの)上に、接着層3を介してパワー半導体素子2が搭載されている。パワー半導体素子2はボンディングワイヤー7を介して金属層103bに導通されている。また、パワー半導体素子2、ボンディングワイヤー7、金属層103a、103bは封止材6により封止されている。
また、パワーモジュール11は、金属ベース基板100の金属層103上に搭載されたチップコンデンサ8やチップ抵抗9等の他の電子部品を備えてもよい。また、パワーモジュール11は、金属基板101が、公知の熱伝導グリス4を介して、放熱フィン5に接続された構造を有していてもよい。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(フィラーを含有しない熱硬化性樹脂組成物の作製)
表1または表2に示す配合割合に従い、熱硬化性樹脂と、硬化促進剤と、必要に応じて硬化剤と、を熱板上にて溶融混合し、冷却後固体であれば粉砕し、液状であればそのまま熱硬化性樹脂組成物として使用した。
表1に記載の各成分は以下の通り。
(熱硬化性樹脂)
・ビスマレイミド化合物1:下記化学式で表されるビス(4-マレイミドフェニル)メタン(2官能ビスマレイミド化合物、メソゲン構造なし、大和化学工業社製、BMI-1000)
Figure 0007491422000004
・エポキシ樹脂1:下記化学式で表されるビフェニル型エポキシ樹脂(2官能エポキシ化合物、メソゲン構造あり、三菱ケミカル社製、YX4000)
Figure 0007491422000005
(硬化剤)
・フェノール樹脂1:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト社製、PR-51470)
・多官能化合物1:下記化学式で表される多官能フェノール化合物1(3官能フェノール化合物、メソゲン構造あり、Evolva社製、レスベラトロール)
Figure 0007491422000006
・多官能化合物2:下記の合成手順Aで得られた、下記化学式で表される多官能フェノール化合物2(3官能フェノール化合物、メソゲン構造あり)
Figure 0007491422000007
(合成手順A)
p-アミノフェノール(1.0mmol)、3,5-ジヒドロキシ安息香酸(1.0mmol)、およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.2mmol)をアセトン(5mL)に溶解させた。反応液を還流下で12時間撹拌した後、反応を止めて濃縮した。酢酸エチルを有機層として抽出を行った後、減圧乾燥し、上記多官能フェノール化合物2を得た。試薬は、東京化成工業社製のものを用いた。
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:2-メチルイミダゾール(2MZ、東京化成工業社製)
Figure 0007491422000008
表2に記載の各成分は以下の通り。
(熱硬化性樹脂)
・ベンゾオキサジン化合物1:下記の化学式で表されるベンゾオキサジン化合物(メソゲン構造なし、四国化成社製、P-d)
Figure 0007491422000009
・ベンゾオキサジン化合物2:下記の化学式で表されるベンゾオキサジン化合物の混合物(下記の合成手順Bで得られる多官能化合物誘導体B)
(合成手順B)
適切な反応容器にアニリン5.2重量部、パラホルムアルデヒド3.7重量部、レスベラトロール4.2重量部をそれぞれ量り取り、さらにトルエン86.9重量部加えて終夜で還流撹拌を行なった。得られた混合物を1N-水酸化ナトリウム水溶液および純水にてそれぞれ3回ずつ抽出し、濃縮後に減圧乾燥することで多官能化合物誘導体Bを収率82%で橙色固体として得た。
Figure 0007491422000010
・エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(2官能エポキシ化合物、メソゲン構造あり、三菱ケミカル社製、YX4000)
・エポキシ化合物2:下記の化学式で表される3官能エポキシ化合物(下記の合成手順Cで得られる多官能化合物誘導体C)
(合成手順C)
適切な反応容器にエピクロロヒドリン70.7重量部、レスベラトロール17.4重量部、テトラブチルアンモニウムクロライド1.1重量部、ジメチルスルホキシド8.7重量部を量り取り、40℃にて溶解・撹拌させた。50wt%-水酸化ナトリウム水溶液2.1重量部をゆっくりと滴下後、60℃に昇温して3時間撹拌して反応させた。得られた反応液を濃縮後、反応混合液に対して6倍量の1N-水酸化ナトリウム水溶液および純水を用いた再沈殿法により、多官能化合物誘導体Cを収率68%で淡黄色粘稠固体として得た。
Figure 0007491422000011
(シアネート樹脂)
・シアネート樹脂1:ノボラック型シアネート樹脂(メソゲン構造なし、ロンザジャパン社製、PT-30)
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:2-メチルイミダゾール(2MZ、東京化成工業社製)
Figure 0007491422000012
表1、2中、「樹脂特性」とは、フィラーを含有しない熱硬化性樹脂組成物のBステージ物性または硬化物性を意味する。
<樹脂特性>
得られたフィラーを含有しない熱硬化性樹脂組成物について、次のような評価項目に基づいて評価を実施した。評価結果は表1に示す。
(トルク値)
得られた熱伝導性フィラーを含有しない熱硬化性樹脂組成物を100℃、10分で加熱してBステージ状態とした後、コンプレート粘度計(アントンパール社製、レオメーター)を用いて、測定温度180℃で、Bステージ状態の熱硬化性樹脂組成物の硬化トルクを経時的に測定した。測定結果から、最大硬化トルク値の時間をTmaxとし、測定開始から最大トルク値の10%のトルク値に達したときの時間をT10とし、測定開始から最大トルク値の50%のトルク値に達したときの時間をT50としたとき、T50/Tmax、T10/T50を算出した。
(Tg:ガラス転移温度)
得られたフィラーを含有しない熱硬化性樹脂組成物を用いて220℃、90minの硬化を行い、約50mm×約10mm×約3mmの硬化物を得た。この硬化物を用いてガラス転移温度(Tg)を、DMA(動的粘弾性測定)により昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で測定した。
(CTE1,2:線膨張係数)
得られたフィラーを含有しない熱硬化性樹脂組成物を用いて、220℃、90minの硬化を行い、4mm□×20mmの試験片を作製した。得られた試験片について、線膨張係数を測定した。TMA(Thermal Mechanical Analyzer)試験装置(セイコーインスツメルツ社製TMA/SS6100)を用いて、昇温速度5℃/分、荷重0.05N、引張モード、測定温度範囲30~320℃の条件で、熱機械分析(TMA)を2サイクル測定した。得られた結果から、40℃~80℃の範囲、および180℃~200℃の範囲におけるZ軸方向の線膨張係数(CTE)の平均値を算出した。なお、それぞれの線膨脹係数(ppm/℃)は、2サイクル目の値を採用した。
(Td5:5%重量減少温度)
示差熱熱重量同時測定装置(セイコ-インスツルメンツ社製、TG/DTA6200型)を用いて、乾燥窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件により、サンプルを、30℃から800℃まで昇温させることにより、サンプルが5%重量減少する温度(Td5)を算出した。なお、サンプルとして、得られたフィラーを含有しない熱硬化性樹脂組成物を、220℃、90分で加熱して硬化物を得た後、測定前に100℃で1時間の乾燥処理を施したものを用いた。
(Char yield:残炭率)
得られたフィラーを含有しない熱硬化性樹脂組成物を用いて、220℃、90minの硬化後、粉砕して測定用サンプルを得た。室温25℃で、得られた測定用サンプル(硬化物粉)の初期重量を測定した。その後、10℃/分の昇温速度で室温25℃から800℃まで加熱し、800℃で1分間保持直後、800℃における残留した測定用サンプルの残留重量を測定した。
残留重量と初期重量との比((残留重量/初期重量)×100)を残炭率(%)とした。
(Thermal conductivity:樹脂熱伝導率)
・樹脂成形体の作製
得られたフィラーを含有しない熱硬化性樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、コンプレッション成形を220℃、15min行い、直径10mm×厚み1mmの樹脂成形物を得た。その後、オーブンにて220℃、90minの硬化を行い、樹脂成形体(熱伝導率測定用サンプル)を得た。
・樹脂成形体の比重
比重測定は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準拠して行った。試験片は、上記の樹脂成形体または複合成形体から、縦2cm×横2cm×厚み2mmに切り出したものを用いた。比重(SP)の単位をg/cmとする。
・樹脂成形体の比熱
得られた上記の樹脂成形体について、DSC法により比熱(Cp)を測定した。
・樹脂成形体の熱伝導率の測定
得られた樹脂成形体から、厚み方向測定用として、直径10mm×厚み0.2mmに切り出したものを試験片とした。次に、ULVAC社製のXeフラッシュアナライザーTD-1RTVを用いて、レーザーフラッシュ法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、室温25℃の条件下で行った。
樹脂成形体について、得られた熱拡散係数(α)、比熱(Cp)、比重(SP)の測定値から、下記式に基づいて熱伝導率を算出した。
熱伝導率[W/m・K]=α[m/s]×Cp[J/kg・K]×Sp[g/cm
表1中、樹脂成形体の熱伝導率を「樹脂熱伝導率」とした。
(LOI)
LOI(Limiting Oxygen Index:限界酸素指数、単位は%)は、ASTM E2863に従って測定され、酸素及び窒素の混合気体において、物質の燃焼を持続させるのに必要な最小酸素量の容積百分率で表される。LOI値が高いほど、燃え難いことを示す。
(HRC)
HRC(Heat Release Capacity:熱放出容量、単位はJ/g・K)は、Van Krevelen式に基づいて算出され、難燃特性の指標となる。HRC値が小さいほど、難燃特性が高いことを示す。
実施例1~3の熱硬化性樹脂組成物は、比較例1と比べて残炭率および熱伝導率が高く、実施例4~7の熱硬化性樹脂組成物は、比較例2~4と比べて残炭率および熱伝導率が高いことから、実施例1~7の熱硬化性樹脂組成物は、各比較例と比べて、難燃特性が良好であることが分かった。
また、実施例1~7の熱硬化性樹脂組成物に熱伝導性フィラーを加えることで、高熱伝導性熱硬化性樹脂組成物が得られることが期待される。
2 パワー半導体素子
3 接着層
4 熱伝導グリス
5 放熱フィン
6 封止材
7 ボンディングワイヤー
8 チップコンデンサ
9 チップ抵抗
10 ソルダーレジスト
11 パワーモジュール
100 金属ベース基板
101 金属基板
102 絶縁層
103 金属層
103a 金属層
103b 金属層

Claims (8)

  1. 熱硬化性樹脂と、硬化剤と、を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記硬化剤は、下記の一般式(A)で表される化合物を含み、
    フィラーを含まない当該熱硬化性樹脂組成物を組成物サンプルとして準備し、前記組成物サンプルを220℃、90分で硬化して、硬化サンプルを作製したとき、
    前記組成物サンプルの800℃における残炭率が、35%以上80%以下であり、
    前記硬化サンプルの25℃における樹脂熱伝導率が、0.20W/m・K以上1.0W/m・K以下であり、
    前記熱硬化性樹脂は、ビスマレイミド樹脂およびエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種を含む、熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0007491422000013
    (上記一般式(A)中、RおよびRはヒドロキシ基を表し、RおよびRは水素原子を表し、Rは-C=C-、-CO-NH-からなる群から選択される2価の結合基を表し、aおよびcはそれぞれ1~3の整数であり、bおよびdはそれぞれ0~2の整数である。ただし、a+bおよびc+dは、それぞれ1~3のいずれかであり、かつ、a+cは3以上である。
    、RおよびRが結合している一方のベンゼン環において、これらが結合していない炭素原子には水素原子が結合し、R、RおよびRが結合している他方のベンゼン環において、これらが結合していない炭素原子には水素原子が結合する。)
  2. 前記硬化剤は、以下の化学式で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0007491422000014
    Figure 0007491422000015
  3. 請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記硬化サンプルのガラス転移温度が、150℃以上350℃以下である、熱硬化性樹脂組成物。
  4. 請求項1からのいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記硬化サンプルの5%重量減少温度(Td5)が、250℃以上450℃以下である、熱硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項1からのいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記硬化サンプルの、40℃から80℃までの範囲における線膨張係数が、10ppm/℃以上80ppm/℃以下である、熱硬化性樹脂組成物。
  6. 請求項1からのいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記硬化サンプルの、180℃から200℃までの範囲における線膨張係数が、30ppm/℃以上100ppm/℃以下である、熱硬化性樹脂組成物。
  7. 請求項1からのいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
    フィラーを含有する、熱硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項に記載の熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記フィラーが、熱伝導性フィラーを含有する、熱硬化性樹脂組成物。
JP2023025840A 2018-11-28 2023-02-22 熱硬化性樹脂組成物 Active JP7491422B2 (ja)

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