JP6627303B2 - 熱伝導性樹脂組成物、回路基板用積層体、回路基板および半導体装置 - Google Patents
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Description
これらの電力制御装置は、その耐圧や電流容量に応じて各種機器に応用されている。特に、近年の環境問題、省エネルギー化推進の観点から、各種電気機械へのこれら電力制御装置の使用が年々拡大している。
特に車載用電力制御装置について、その小型化、省スペ−ス化と共に電力制御装置をエンジンル−ム内に設置することが要望されている。エンジンル−ム内は温度が高く、温度変化が大きい等過酷な環境であり、また、放熱面積の大きな基板が必要とされる。このような用途に対して、高温での放熱性および絶縁性により一層優れる回路基板が必要とされる。
また、特許文献2(国際公開第2012/070289号パンフレット)には窒化ホウ素の一次粒子から構成される二次粒子を含む熱伝導性シートが開示されている。
また、特許文献2に記載の熱伝導性シートは、通常、ワニス状の樹脂組成物を調製し、これを基材上に塗布・乾燥してBステージ状態の熱伝導性シートを作製し、さらにこれを加熱硬化することにより得られる。
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献2に記載されているようなBステージ状態の熱伝導性シートにおいて、無機充填材を高充填すると、割れやすい、粉落ちしやすい等ハンドリング性が悪化することが明らかになった。そのため、このような熱伝導性シートでは半導体装置を安定的に製造することが難しいことが明らかになった。
金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層上に設けられた金属層と、を備える回路基板用積層体を構成する前記絶縁樹脂層を形成するための熱伝導性樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、熱伝導性フィラーと、シリカナノ粒子と、を含み、
動的光散乱法により測定される、前記シリカナノ粒子の平均粒子径D50が1nm以上100nm以下であり、
前記シリカナノ粒子の含有量が、当該熱伝導性樹脂組成物の全固形分100質量%に対し、0.3質量%以上2.5質量%以下であり、
前記熱伝導性フィラーは、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成されている二次凝集粒子を含み、前記二次凝集粒子は、10μm以上100μm以下の平均粒径を有し、
前記熱伝導性フィラーの含有量は、当該熱伝導性組成物の固形分100質量%に対し、60質量%以上85質量%以下である、熱伝導性樹脂組成物が提供される。
金属基板と、上記金属基板上に設けられた絶縁樹脂層と、上記絶縁樹脂層上に設けられた金属層と、を備える回路基板用積層体であって、
上記絶縁樹脂層が、上記第一発明または上記第二発明の熱伝導性樹脂組成物により形成されたものである回路基板用積層体が提供される。
上記回路基板用積層体を回路加工してなる回路基板が提供される。
上記回路基板と、
上記回路基板上に設けられた電子部品と、
を備える半導体装置が提供される。
また、本発明の第二発明によれば、保存安定性に優れた熱伝導性樹脂組成物、それを用いた回路基板用積層体、回路基板および半導体装置を提供できる。
以下、第一発明に係る実施形態について説明する。
はじめに、本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回路基板用積層体100の断面図である。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、金属基板101と、金属基板101上に設けられた絶縁樹脂層102と、絶縁樹脂層102上に設けられた金属層103とを備える回路基板用積層体100を構成する絶縁樹脂層102を形成するために用いられる。 ここで、絶縁樹脂層102は、金属層103を金属基板101に接着するための層である。
そして、本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、下記熱伝導率試験により測定される25℃での熱伝導率が3W/(m・k)以上、好ましくは10W/(m・k)以上であり、かつ、下記耐屈曲性試験を行ったときに割れない。ここで、「割れ」とは熱伝導性シート表面に発生する亀裂のことであり、その亀裂の長辺が2mm以上であり、かつ、長辺に垂直な方向の亀裂幅の最大値が50μm以上であるものをさす。なお、亀裂は長辺方向に断続的となることがあるが、亀裂が途切れる距離が1mm未満で有れば、連続したひとつの亀裂として判断する。
<熱伝導率試験>
熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて上記熱伝導性シート硬化物の厚み方向の熱伝導率を測定する。
<耐屈曲性試験>
上記熱伝導性樹脂組成物を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、上記熱伝導性シートを100mm×10mmに切り出し、25℃の環境下、直径10mmの円柱の曲面に沿わせて曲げ角度180度で長手方向の中央部分にて折り曲げる。
なお、本実施形態において、シート状で、かつ、熱伝導性樹脂組成物(P)を半硬化してなる、Bステージ状態の熱伝導性樹脂組成物(P)を「熱伝導性シート」と呼ぶ。また、熱伝導性シートを硬化させたものを「熱伝導性シート硬化物」と呼ぶ。また、熱伝導性樹脂組成物(P)を回路基板用積層体100や半導体装置11に適用し、硬化させたものを「絶縁樹脂層」と呼ぶ。
一方で、本発明者の検討によれば、熱伝導性樹脂組成物がエポキシ樹脂と、シアネート樹脂と、熱伝導性フィラーとを含むだけでは、絶縁信頼性等の信頼性に優れた半導体装置を安定的に製造できることは難しいことが明らかになった。
そこで、本発明者は、上記事情に鑑みてさらに鋭意検討した結果、熱伝導性樹脂組成物(P)にエポキシ樹脂(A1)と、シアネート樹脂(A2)と、熱伝導性フィラー(B)と、を組み合わせて含ませつつ、上記熱伝導率試験により測定される25℃での熱伝導率を上記下限値以上とし、さらに上記耐屈曲性試験を行ったときに割れない特性を付与することにより、絶縁信頼性等の信頼性に優れた半導体装置を安定的に製造できることを見出した。
本実施形態においては、特にエポキシ樹脂(A1)や熱伝導性フィラー(B)の種類を適切に選択することや、後述する柔軟性付与剤(D)をさらに含ませること、エポキシ樹脂(A1)および熱伝導性フィラー(B)を添加した樹脂ワニスに対しエージングを行うこと、当該エージングにおける加熱条件等が、上記熱伝導率や上記耐屈曲性試験を行ったときに割れない特性を制御するための因子として挙げられる。
ここで、熱伝導性樹脂組成物(P)の硬化物のガラス転移温度は、例えば、次のように測定できる。まず、熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)を、DMA(動的粘弾性測定)により昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で測定する。
ガラス転移温度が上記下限値以上であると、導電性成分の運動開放をより一層抑制できるため、温度上昇に起因して硬化物の絶縁性の低下をより一層抑制できる。その結果、より一層絶縁信頼性に優れた半導体装置を実現できる。
ガラス転移温度は熱伝導性樹脂組成物(P)を構成する各成分の種類や配合割合、および熱伝導性樹脂組成物(P)の調製方法を適切に調節することにより制御することができる。
ここで、熱伝導性樹脂組成物(P)の硬化物の175℃での体積抵抗率は、例えば、次のように測定できる。まず、熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、JIS K6911に準拠し、得られた硬化物の体積抵抗率を印加電圧1000Vで電圧印加後、1分後に測定する。
ここで、175℃での体積抵抗率は、熱伝導性シート硬化物における高温での絶縁性の指標を表している。すなわち、175℃での体積抵抗率が高いほど、高温での絶縁性が優れることを意味する。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)の硬化物の175℃での体積抵抗率は、熱伝導性樹脂組成物(P)を構成する各成分の種類や配合割合、および熱伝導性樹脂組成物(P)の調製方法を適切に調節することにより制御することが可能である。
貯蔵弾性率E'が上記範囲内であると、得られる硬化物の剛性が適度となり、環境温度に変化が生じても、部材間で生じる線膨張係数差に起因して発生する応力を上記硬化物で安定的に緩和することができる。これにより、各部材間の接合信頼性をより一層高めることができる。
ここで、50℃での貯蔵弾性率E'は、例えば、次のように測定できる。まず、熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、得られた硬化物の50℃での貯蔵弾性率E'を、DMA(動的粘弾性測定)により測定する。ここで、貯蔵弾性率E'は、熱伝導性シート硬化物に引張り荷重をかけて、周波数1Hz、昇温速度5〜10℃/分で25℃から300℃で測定した際の、50℃での貯蔵弾性率の値である。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)の硬化物の50℃での貯蔵弾性率E'は、熱伝導性樹脂組成物(P)を構成する各成分の種類や配合割合、および熱伝導性樹脂組成物(P)の調製方法を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、エポキシ樹脂(A1)と、シアネート樹脂(A2)と、熱伝導性フィラー(B)と、を含む。
エポキシ樹脂(A1)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、本実施形態において、エポキシ樹脂(A1)から後述する25℃において液状のエポキシ樹脂は除かれる。
エポキシ樹脂(A1)として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
このようなエポキシ樹脂(A1)を使用することで、絶縁樹脂層102のガラス転移温度を高くするとともに、絶縁樹脂層102の放熱性および絶縁性を向上させることができる。
なお、本実施形態において、熱伝導性樹脂組成物(P)の全固形分とは当該熱伝導性樹脂組成物(P)を加熱硬化した際に固形分として残るものであり、例えば、溶剤等加熱により揮発する成分は除かれる。一方で、25℃において液状のエポキシ樹脂、カップリング剤等の液状成分は、加熱硬化した際に熱伝導性樹脂組成物(P)の固形分に取り込まれるため全固形分に含まれる。
シアネート樹脂(A2)としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネート樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;ビフェニルアルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂が好ましく、ノボラック型シアネート樹脂がより好ましい。ノボラック型シアネート樹脂を用いることにより、得られる絶縁樹脂層102の架橋密度がより一層増加し、絶縁樹脂層102の耐熱性をより一層向上させることができる。
ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示されるものを使用することができる。
熱伝導性フィラー(B)としては、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
熱伝導性フィラー(B)としては、本実施形態に係る絶縁樹脂層102の熱伝導性をより一層向上させる観点から、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子を凝集させることにより形成される二次凝集粒子であることが好ましい。
このように、鱗片状窒化ホウ素を焼結させて得られる二次凝集粒子を用いる場合には、エポキシ樹脂(A1)中における熱伝導性フィラー(B)の分散性を向上させる観点から、エポキシ樹脂(A1)としてジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。
なお、この平均長径は電子顕微鏡写真により測定することができる。例えば、以下の手順で測定する。まず、二次凝集粒子をミクロトーム等で切断しサンプルを作製する。次いで、走査型電子顕微鏡により、数千倍に拡大した二次凝集粒子の断面写真を数枚撮影する。次いで、任意の二次凝集粒子を選択し、写真から鱗片状窒化ホウ素の一次粒子の長径を測定する。このとき、10個以上の一次粒子について長径を測定し、それらの平均値を平均長径とする。
熱伝導性フィラー(B)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られる絶縁樹脂層102における熱伝導性や機械的強度の向上をより効果的に図ることができる。一方で、熱伝導性フィラー(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、熱伝導性樹脂組成物(P)の成膜性や作業性を向上させ、得られる絶縁樹脂層102の膜厚の均一性をより一層良好なものとすることができる。
これにより、熱伝導性と絶縁性のバランスにより一層優れた絶縁樹脂層102を実現することができる。
動的光散乱法により測定される、シリカナノ粒子(C)の平均粒子径D50は、1nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましく、10nm以上70nm以下が特に好ましい。シリカナノ粒子(C)の平均粒子径D50が上記範囲内であると、ワニス状の熱伝導性樹脂組成物(P)における熱伝導性フィラー(B)の沈降をより一層抑制することができる。
なお、シリカナノ粒子(C)の平均粒子径は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。粒子を水中で超音波により分散させ動的光散乱法式粒度分布測定装置(HORIBA製、LB−550)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とする。
シリカナノ粒子(C)の含有量が上記範囲内であると、ワニス状の熱伝導性樹脂組成物(P)において、熱伝導性フィラー(B)の沈降がより一層抑制され、熱伝導性樹脂組成物(P)のハンドリング性および保存安定性をより一層向上させることができる。
上記VMC法とは、酸素含有ガス中で形成させた化学炎中にシリコン粉末を投入し、燃焼させた後、冷却することで、シリカ粒子を形成させる方法である。上記VMC法では、投入するシリコン粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られるシリカ粒子の粒子径を調整できるため、粒子径の異なるシリカ粒子を製造することができる。
シリカナノ粒子(C)としては、RX−200(日本アエロジル社製)、RX−50(日本アエロジル社製)、Sicastar43−00−501(Micromod社製)、NSS−5N(トクヤマ社製)等の市販品を用いることもできる。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、フェノキシ樹脂および25℃において液状のエポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の柔軟性付与剤(D)をさらに含んでもよく、フェノキシ樹脂および25℃において液状のエポキシ樹脂の両方を含むことが好ましい。これにより、絶縁樹脂層102の柔軟性および耐屈曲性を向上できるため、熱伝導性フィラー(B)を高充填することに起因する絶縁樹脂層102のハンドリング性の低下を抑制することができる。
また、柔軟性付与剤(D)をさらに含むことにより、得られる絶縁樹脂層102の弾性率を低下させることが可能となり、その場合には絶縁樹脂層102の応力緩和力を向上させることができる。
なお、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、さらに硬化剤(E)を含むのが好ましい。
硬化剤(E)としては、硬化触媒(E−1)およびフェノール系硬化剤(E−2)から選択される1種以上を用いることができる。
硬化触媒(E−1)としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類;2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジエチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン等の有機リン化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸;等、またはこの混合物が挙げられる。硬化触媒(E−1)として、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)中に含まれる硬化触媒(E−1)の含有量は、特に限定されないが、熱伝導性樹脂組成物(P)の全固形分100質量%に対し、0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
これらの中でも、ガラス転移温度の向上及び線膨張係数の低減の観点から、フェノール系硬化剤(E−2)がノボラック型フェノール樹脂またはレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
フェノール系硬化剤(E−2)の含有量は、特に限定されないが、熱伝導性樹脂組成物(P)の全固形分100質量%に対し、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
さらに、本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、カップリング剤(F)を含んでもよい。
カップリング剤(F)は、エポキシ樹脂(A1)やシアネート樹脂(A2)と熱伝導性フィラー(B)との界面の濡れ性を向上させることができる。
カップリング剤(F)の添加量は熱伝導性フィラー(B)の比表面積に依存するので、特に限定されないが、熱伝導性フィラー(B)100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、特に0.5質量部以上7質量部以下が好ましい。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、レベリング剤等を含むことができる。
まず、上述の各成分を溶媒へ添加して、ワニス状の樹脂組成物を得る。本実施形態においては、例えば、溶媒中にエポキシ樹脂(A1)およびシアネート樹脂(A2)等を添加して樹脂ワニスを作製したのち、当該樹脂ワニスへ熱伝導性フィラー(B)を入れて三本ロール等を用いて混練することによりワニス状の樹脂組成物を得ることができる。これにより、熱伝導性フィラー(B)をより均一に、エポキシ樹脂(A1)およびシアネート樹脂(A2)中へ分散させることができる。
上記溶媒としては特に限定されないが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
次に、本実施形態に係る回路基板用積層体100について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回路基板用積層体100の断面図である。
回路基板用積層体100は、金属基板101と、金属基板101上に設けられた絶縁樹脂層102と、絶縁樹脂層102上に設けられた金属層103とを備える。そして、絶縁樹脂層102が本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)により形成されている。
絶縁樹脂層102は、高い熱伝導性を有する。具体的には、レーザーフラッシュ法により測定される、絶縁樹脂層102の厚み方向の25℃での熱伝導率が3W/(m・k)以上であることが好ましく、10W/(m・k)以上であることがより好ましい。
これにより、電子部品からの熱が、絶縁樹脂層102を介して、金属基板101に伝達させやすくすることができる。
絶縁樹脂層102の厚みを上記上限値以下とすることで、電子部品からの熱を金属基板101に伝達させやすくすることができる。
また、絶縁樹脂層102の厚みを上記下限値以上とすることで、金属基板101と絶縁樹脂層102との熱膨張率差による熱応力の発生を絶縁樹脂層102で緩和することが十分にできる。さらに、回路基板用積層体100の絶縁性が向上する。
金属基板101は回路基板用積層体100に蓄積された熱を放熱する役割を有する。金属基板101は、放熱性の金属基板であれば特に限定されないが、例えば、銅基板、銅合金基板、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板であり、銅基板またはアルミニウム基板が好ましく、銅基板がより好ましい。銅基板またはアルミニウム基板を用いることで、金属基板101の放熱性を良好なものとすることができる。
金属基板101の厚さの上限値は、例えば、20.0mm以下であり、好ましくは5.0mm以下である。この数値以下の厚さの金属基板101を用いることで、回路基板用積層体100全体としての薄型化を行うことができる。また、回路基板用積層体100の外形加工や切り出し加工等における加工性を向上させることができる。
また、金属基板101の厚さの下限値は、例えば、0.1mm以上であり、好ましくは1.0mm以上であり、さらに好ましくは2.0mm以上である。この数値以上の金属基板101を用いることで、回路基板用積層体100全体としての放熱性を向上させることができる。
金属層103は絶縁樹脂層102上に設けられ、回路加工されるものである。
この金属層103を構成する金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、鉄、錫等から選択される一種または二種以上が挙げられる。これらの中でも、金属層103を構成する金属としては、好ましくは銅またはアルミニウムであり、特に好ましくは銅である。銅またはアルミニウムを用いることで、金属層103の回路加工性を良好なものとすることができる。
また、金属層103の厚みの上限値は、例えば、2.0mm以下であり、好ましくは1.5mmm以下であり、さらに好ましくは1.0mm以下である。このような数値以下であれば、回路加工性を向上させることができ、また、基板全体としての薄型化を図ることができる。
以上のような回路基板用積層体100は、例えば、以下のようにして製造することができる。
キャリア材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;銅箔等の金属箔等である。キャリア材料の厚みは、例えば、10〜500μmである。
なお、キャリア材料として金属箔を用いる場合は、このキャリア材料をそのまま金属層103とすることができる。すなわち、この場合にあっては、樹脂層付き金属層103を得た後、樹脂層付き金属層103を金属基板101に積層することにより、目的とする積層体が得られる。
また、キャリア材料として金属箔を用い、当該金属箔をそのまま金属層103とする場合、金属層103はロールから押し出された金属箔、好ましくはロールから押し出された銅箔またはアルミニウム箔とすることができる。
このようにすることで、生産効率の向上を図ることができる。
得られた回路基板用積層体100について、例えば、金属層103を所定のパターンにエッチング等することによって回路加工し、回路基板を得ることができる。
また、最外層にソルダーレジスト10(図2参照)を形成し、露光・現像により電子部品が実装できるよう接続用電極部を露出してもよい。
次に、本実施形態に係る半導体装置11について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る半導体装置11の断面図である。
本実施形態の回路基板上に電子部品を設けることにより半導体装置11を得ることができる。
本実施形態において、半導体装置11は、例えば、パワー半導体装置、LED照明、インバーター装置等のパワーモジュールである。
ここで、インバーター装置とは、直流電力から交流電力を電気的に生成する(逆変換する機能を持つ)ものである。また、パワー半導体装置とは、通常の半導体装置に比べて高耐圧化、大電流化、高速・高周波化されている特徴を有し、一般的にはパワーデバイスと呼ばれ、整流ダイオード、パワートランジスタ、パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、トライアック等の電子部品が搭載されたものが挙げられる。
電子部品は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、ダイオード、ICチップ等の半導体素子、抵抗、コンデンサ等の各種発熱素子である。回路基板用積層体100はヒートスプレッターとして機能する。
本実施形態の半導体装置11において、回路基板用積層体100の金属層103a上に、接着層3を介してICチップ2が搭載されている。ICチップ2はボンディングワイヤー7を介して金属層103bに導通されている。
また、ICチップ2、ボンディングワイヤー7、金属層103a、103bは封止材6により封止されている。
以下、第二発明に係る実施形態について説明する。
はじめに、本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回路基板用積層体100の断面図である。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、金属基板101と、金属基板101上に設けられた絶縁樹脂層102と、絶縁樹脂層102上に設けられた金属層103とを備える回路基板用積層体100を構成する絶縁樹脂層102を形成するために用いられる。 ここで、絶縁樹脂層102は、金属層103を金属基板101に接着するための層である。
はじめに、本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)について説明する。
そして、動的光散乱法により測定される、シリカナノ粒子(C)の平均粒子径D50が1nm以上100nm以下であり、シリカナノ粒子(C)の含有量が、熱伝導性樹脂組成物(P)の全固形分100質量%に対し、0.3質量%以上2.5質量%以下であり、熱伝導性フィラー(B)は、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成されている二次凝集粒子を含む。
なお、本実施形態において、シート状で、かつ、熱伝導性樹脂組成物(P)を半硬化してなる、Bステージ状態の熱伝導性樹脂組成物(P)を「熱伝導性シート」と呼ぶ。また、熱伝導性シートを硬化させたものを「熱伝導性シート硬化物」と呼ぶ。また、熱伝導性樹脂組成物(P)を回路基板用積層体100や半導体装置11に適用し、硬化させたものを「絶縁樹脂層」と呼ぶ。
そこで、本発明者は、上記事情に鑑みて鋭意検討した結果、熱伝導性樹脂組成物(P)にエポキシ樹脂(A1)と、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成されている二次凝集粒子を含む熱伝導性フィラー(B)と、を組み合わせて含ませつつ、さらに平均粒子径D50が特定の範囲にあるシリカナノ粒子(C)を特定量含ませることにより、保存安定性に優れた熱伝導性樹脂組成物が得られることを見出した。
ここで、熱伝導性樹脂組成物(P)の硬化物のガラス転移温度は、例えば、次のように測定できる。まず、熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)を、DMA(動的粘弾性測定)により昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で測定する。
ガラス転移温度が上記下限値以上であると、導電性成分の運動開放をより一層抑制できるため、温度上昇に起因して硬化物の絶縁性の低下をより一層抑制できる。その結果、より一層絶縁信頼性に優れた半導体装置を実現できる。
ガラス転移温度は熱伝導性樹脂組成物(P)を構成する各成分の種類や配合割合、および熱伝導性樹脂組成物(P)の調製方法を適切に調節することにより制御することができる。
貯蔵弾性率E'が上記範囲内であると、得られる硬化物の剛性が適度となり、環境温度に変化が生じても、部材間で生じる線膨張係数差に起因して発生する応力を上記硬化物で安定的に緩和することができる。これにより、各部材間の接合信頼性をより一層高めることができる。
ここで、50℃での貯蔵弾性率E'は、例えば、次のように測定できる。まず、熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、得られた硬化物の50℃での貯蔵弾性率E'を、DMA(動的粘弾性測定)により測定する。ここで、貯蔵弾性率E'は、熱伝導性シート硬化物に引張り荷重をかけて、周波数1Hz、昇温速度5〜10℃/分で25℃から300℃で測定した際の、50℃での貯蔵弾性率の値である。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)の硬化物の50℃での貯蔵弾性率E'は、熱伝導性樹脂組成物(P)を構成する各成分の種類や配合割合、および熱伝導性樹脂組成物(P)の調製方法を適切に調節することにより制御することが可能である。
<熱伝導率試験>
熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて上記熱伝導性シート硬化物の厚み方向の熱伝導率を測定する。
ここで、熱伝導性樹脂組成物(P)の硬化物の175℃での体積抵抗率は、例えば、次のように測定できる。まず、熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、JIS K6911に準拠し、得られた硬化物の体積抵抗率を印加電圧1000Vで電圧印加後、1分後に測定する。
ここで、175℃での体積抵抗率は、熱伝導性シート硬化物における高温での絶縁性の指標を表している。すなわち、175℃での体積抵抗率が高いほど、高温での絶縁性が優れることを意味する。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)の硬化物の175℃での体積抵抗率は、熱伝導性樹脂組成物(P)を構成する各成分の種類や配合割合、および熱伝導性樹脂組成物(P)の調製方法を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、エポキシ樹脂(A1)と、熱伝導性フィラー(B)と、シリカナノ粒子(C)と、を含む。
エポキシ樹脂(A1)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、本実施形態において、エポキシ樹脂(A1)から後述する25℃において液状のエポキシ樹脂は除かれる。
エポキシ樹脂(A1)として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
このようなエポキシ樹脂(A1)を使用することで、絶縁樹脂層102のガラス転移温度を高くするとともに、絶縁樹脂層102の放熱性および絶縁性を向上させることができる。
なお、本実施形態において、熱伝導性樹脂組成物(P)の全固形分とは当該熱伝導性樹脂組成物(P)を加熱硬化した際に固形分として残るものであり、例えば、溶剤等加熱により揮発する成分は除かれる。一方で、25℃において液状のエポキシ樹脂、カップリング剤等の液状成分は、加熱硬化した際に熱伝導性樹脂組成物(P)の固形分に取り込まれるため全固形分に含まれる。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、得られる絶縁樹脂層102の絶縁性を向上させる観点から、さらにシアネート樹脂(A2)を含んでもよい。シアネート樹脂(A2)としては、第一発明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。ここでは説明を省略する。
熱伝導性フィラー(B)としては、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
熱伝導性フィラー(B)としては、本実施形態に係る絶縁樹脂層102の熱伝導性を向上させる観点から、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子を凝集させることにより形成される二次凝集粒子を含む。
このように、鱗片状窒化ホウ素を焼結させて得られる二次凝集粒子を用いる場合には、エポキシ樹脂(A1)中における熱伝導性フィラー(B)の分散性を向上させる観点から、エポキシ樹脂(A1)としてジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。
なお、この平均長径は電子顕微鏡写真により測定することができる。例えば、以下の手順で測定する。まず、二次凝集粒子をミクロトーム等で切断しサンプルを作製する。次いで、走査型電子顕微鏡により、数千倍に拡大した二次凝集粒子の断面写真を数枚撮影する。次いで、任意の二次凝集粒子を選択し、写真から鱗片状窒化ホウ素の一次粒子の長径を測定する。このとき、10個以上の一次粒子について長径を測定し、それらの平均値を平均長径とする。
熱伝導性フィラー(B)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られる絶縁樹脂層102における熱伝導性や機械的強度の向上をより効果的に図ることができる。一方で、熱伝導性フィラー(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、熱伝導性樹脂組成物(P)の成膜性や作業性を向上させ、得られる絶縁樹脂層102の膜厚の均一性をより一層良好なものとすることができる。
これにより、熱伝導性と絶縁性のバランスにより一層優れた絶縁樹脂層102を実現することができる。
動的光散乱法により測定される、シリカナノ粒子(C)の平均粒子径D50は、1nm以上100nm以下であり、10nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上70nm以下が特に好ましい。シリカナノ粒子(C)の平均粒子径D50が上記範囲内であると、ワニス状の熱伝導性樹脂組成物(P)における熱伝導性フィラー(B)の沈降をより一層抑制することができる。
なお、シリカナノ粒子(C)の平均粒子径は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。粒子を水中で超音波により分散させ動的光散乱法式粒度分布測定装置(HORIBA製、LB−550)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とする。
シリカナノ粒子(C)の含有量が上記範囲内であると、ワニス状の熱伝導性樹脂組成物(P)において、熱伝導性フィラー(B)の沈降が抑制され、熱伝導性樹脂組成物(P)のハンドリング性および保存安定性をより一層向上させることができる。
上記VMC法とは、酸素含有ガス中で形成させた化学炎中にシリコン粉末を投入し、燃焼させた後、冷却することで、シリカ粒子を形成させる方法である。上記VMC法では、投入するシリコン粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られるシリカ粒子の粒子径を調整できるため、粒子径の異なるシリカ粒子を製造することができる。
シリカナノ粒子(C)としては、RX−200(日本アエロジル社製)、RX−50(日本アエロジル社製)、NSS−5N(トクヤマ社製)、Sicastar43−00−501(Micromod社製)等の市販品を用いることもできる。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、フェノキシ樹脂および25℃において液状のエポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の柔軟性付与剤(D)をさらに含んでもよく、フェノキシ樹脂および25℃において液状のエポキシ樹脂の両方を含むことが好ましい。これにより、絶縁樹脂層102の柔軟性および耐屈曲性を向上できるため、熱伝導性フィラー(B)を高充填することに起因する絶縁樹脂層102のハンドリング性の低下を抑制することができる。
また、柔軟性付与剤(D)をさらに含むことにより、得られる絶縁樹脂層102の弾性率を低下させることが可能となり、その場合には絶縁樹脂層102の応力緩和力を向上させることができる。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、さらに硬化剤(E)を含むのが好ましい。
硬化剤(E)としては、硬化触媒(E−1)およびフェノール系硬化剤(E−2)から選択される1種以上を用いることができる。
硬化触媒(E−1)としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類;2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジエチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン等の有機リン化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸;等、またはこの混合物が挙げられる。硬化触媒(E−1)として、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)中に含まれる硬化触媒(E−1)の含有量は、特に限定されないが、熱伝導性樹脂組成物(P)の全固形分100質量%に対し、0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
これらの中でも、ガラス転移温度の向上及び線膨張係数の低減の観点から、フェノール系硬化剤(E−2)がノボラック型フェノール樹脂またはレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
フェノール系硬化剤(E−2)の含有量は、特に限定されないが、熱伝導性樹脂組成物(P)の全固形分100質量%に対し、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
さらに、本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)は、カップリング剤(F)を含んでもよい。
カップリング剤(F)は、エポキシ樹脂(A1)やシアネート樹脂(A2)と熱伝導性フィラー(B)との界面の濡れ性を向上させることができる。
カップリング剤(F)の添加量は熱伝導性フィラー(B)の比表面積に依存するので、特に限定されないが、熱伝導性フィラー(B)100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、特に0.5質量部以上7質量部以下が好ましい。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、レベリング剤等を含むことができる。
まず、上述の各成分を溶媒へ添加して、ワニス状の樹脂組成物を得る。本実施形態においては、例えば、溶媒中にエポキシ樹脂(A1)等を添加して樹脂ワニスを作製したのち、当該樹脂ワニスへ熱伝導性フィラー(B)およびシリカナノ粒子(C)を入れて三本ロール等を用いて混練することによりワニス状の樹脂組成物を得ることができる。これにより、熱伝導性フィラー(B)およびシリカナノ粒子(C)をより均一に、エポキシ樹脂(A1)中へ分散させることができる。
上記溶媒としては特に限定されないが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
本実施形態に係る回路基板用積層体100、回路基板および半導体装置11については絶縁樹脂層102が本実施形態に係る熱伝導性樹脂組成物(P)により形成されている以外は、前述した第一発明に係る回路基板用積層体100、回路基板および半導体装置11と同様であるので、説明は省略する。
以下、実施形態の例を付記する。
1. 金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層上に設けられた金属層と、を備える回路基板用積層体を構成する前記絶縁樹脂層を形成するための熱伝導性樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、シアネート樹脂と、熱伝導性フィラーと、を含み、
下記熱伝導率試験により測定される25℃での熱伝導率が3W/(m・k)以上であり、かつ、下記耐屈曲性試験を行ったときに割れない熱伝導性樹脂組成物。
<熱伝導率試験>
前記熱伝導性樹脂組成物を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、前記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて前記熱伝導性シート硬化物の厚み方向の熱伝導率を測定する。
<耐屈曲性試験>
前記熱伝導性樹脂組成物を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、前記熱伝導性シートを100mm×10mmに切り出し、25℃の環境下、直径10mmの円柱の曲面に沿わせて曲げ角度180度で長手方向の中央部分にて折り曲げる。
2. 1.に記載の熱伝導性樹脂組成物において、
昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、前記熱伝導性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が175℃以上である熱伝導性樹脂組成物。
3. 1.または2.に記載の熱伝導性樹脂組成物において、
前記熱伝導性樹脂組成物の硬化物の50℃での貯蔵弾性率E'が10GPa以上40GPa以下である熱伝導性樹脂組成物。
4. 1.乃至3.いずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物において、
フェノキシ樹脂および25℃において液状のエポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の柔軟性付与剤をさらに含む熱伝導性樹脂組成物。
5. 1.乃至4.いずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物において、
シリカナノ粒子をさらに含む熱伝導性樹脂組成物。
6. 1.乃至5.いずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物において、
前記エポキシ樹脂が、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂から選択される一種または二種以上を含む熱伝導性樹脂組成物。
7. 1.乃至6.いずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物において、
前記熱伝導性フィラーは、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成されている二次凝集粒子を含む熱伝導性樹脂組成物。
8. 1.乃至7.いずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物において、
前記シアネート樹脂の含有量が、当該熱伝導性樹脂組成物の全固形分100質量%に対し、2質量%以上25質量%以下である熱伝導性樹脂組成物。
9. 金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層上に設けられた金属層と、を備える回路基板用積層体を構成する前記絶縁樹脂層を形成するための熱伝導性樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、熱伝導性フィラーと、シリカナノ粒子と、を含み、
動的光散乱法により測定される、前記シリカナノ粒子の平均粒子径D 50 が1nm以上100nm以下であり、
前記シリカナノ粒子の含有量が、当該熱伝導性樹脂組成物の全固形分100質量%に対し、0.3質量%以上2.5質量%以下であり、
前記熱伝導性フィラーは、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成されている二次凝集粒子を含む熱伝導性樹脂組成物。
10. 9.に記載の熱伝導性樹脂組成物において、
昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、前記熱伝導性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が175℃以上である熱伝導性樹脂組成物。
11. 9.または10.に記載の熱伝導性樹脂組成物において、
前記熱伝導性樹脂組成物の硬化物の50℃での貯蔵弾性率E'が12GPa以上50GPa以下である熱伝導性樹脂組成物。
12. 9.乃至11.いずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物において、
下記熱伝導率試験により測定される25℃での熱伝導率が3W/(m・k)以上である熱伝導性樹脂組成物。
<熱伝導率試験>
前記熱伝導性樹脂組成物を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、前記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて前記熱伝導性シート硬化物の厚み方向の熱伝導率を測定する。
13. 9.乃至12.いずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物において、
フェノキシ樹脂および25℃において液状のエポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の柔軟性付与剤をさらに含む熱伝導性樹脂組成物。
14. 9.乃至13.いずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物において、
前記エポキシ樹脂が、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂から選択される一種または二種以上を含む熱伝導性樹脂組成物。
15. 金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層上に設けられた金属層と、を備える回路基板用積層体であって、
前記絶縁樹脂層が、1.乃至14.いずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物により形成されたものである回路基板用積層体。
16. 15.に記載の回路基板用積層体を回路加工してなる回路基板。
17. 16.に記載の回路基板と、前記回路基板上に設けられた電子部品と、を備える半導体装置。
18. パワーモジュールである、17.に記載の半導体装置。
以下、第一発明を実施例および比較例により説明するが、第一発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例・比較例では、部は特に特定しない限り質量部を表す。また、それぞれの厚みは平均膜厚で表わされている。
ホウ酸メラミンと鱗片状窒化ホウ素粉末(平均長径:15μm)を混合して得られた混合物を、ポリアクリル酸アンモニウム水溶液へ添加し、2時間混合して噴霧用スラリーを調製した。次いで、このスラリーを噴霧造粒機に供給し、アトマイザーの回転数15000rpm、温度200℃、スラリー供給量5ml/minの条件で噴霧することにより、複合粒子を作製した。次いで、得られた複合粒子を、窒素雰囲気下、2000℃の条件で焼成することにより、平均粒径が80μmの凝集窒化ホウ素を得た。
ここで、凝集窒化ホウ素の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA−500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)とした。
実施例1A〜4Aおよび比較例1A〜3Aについて、以下のように回路基板用積層体を作製した。
まず、表1に示す配合に従い、エポキシ樹脂と、シアネート樹脂と、硬化剤と、必要に応じて柔軟性付与剤とを溶媒であるメチルエチルケトンに添加し、これを撹拌して樹脂組成物の溶液を得た。次いで、この溶液に熱伝導性フィラーを入れて予備混合した後、三本ロールにて混練し、熱伝導性フィラーを均一に分散させた樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物に対し、60℃、0.6MPa、15時間の条件によりエージングを行った。これにより熱伝導性樹脂組成物(P)を得た。次いで、熱伝導性樹脂組成物(P)を、銅箔(厚さ0.07mm、古河電気工業株式会社製、GTS−MP箔)上にドクターブレード法を用いて塗布した後、これを100℃、30分間の熱処理により乾燥して樹脂層付き銅箔を作製した。
次いで、樹脂層付き銅箔を二本のロール間に通して圧縮することにより、樹脂層内の気泡を除去した。
次いで、得られた樹脂層付き銅箔と、3.0mm厚の銅板(タフピッチ銅)を張り合わせ、真空プレスで、プレス圧100kg/cm2で180℃40分の条件下でプレスし、回路基板用積層体(絶縁樹脂層102の厚さ:200μm)を得た。
エポキシ樹脂1:ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(XD−1000、日本化薬社製)
エポキシ樹脂2:ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(YX−4000、三菱化学社製)
シアネート樹脂1:ノボラック型シアネート樹脂(PT−30、ロンザジャパン社製)
充填材1:上記作製例により作製された凝集窒化ホウ素
充填材2:アルミナ(日本軽金属社製、LS−210)
エポキシ樹脂3:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(830S、大日本インキ社製)
エポキシ樹脂4:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(828、三菱化学社製)
フェノキシ樹脂1:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(YP−55U、新日鐵化学製、重量平均分子量4.2×104)
フェノキシ樹脂2:ビスフェノールアセトフェノン骨格を有するフェノキシ樹脂(YX6954、三菱化学株式会社製、重量平均分子量6.0×104)
硬化触媒1:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ−PW、四国化成社製)
硬化触媒2:2−フェニル−4−メチルイミダゾール(2P4MZ、四国化成社製)
硬化触媒3:トリフェニルホスフィン(北興化学社製)
フェノール系硬化剤1:トリスフェニルメタン型のフェノールノボラック樹脂(MEH−7500、明和化成社製)
フェノール系硬化剤2:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(MEH−7851−S、明和化成社製)
熱伝導性樹脂組成物(P)の硬化物のガラス転移温度を次のように測定した。まず、前述した回路基板用積層体の作製の際に得られた熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製した。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得た。次いで、得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)を、DMA(動的粘弾性測定)により昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で測定した。
熱伝導性樹脂組成物(P)の硬化物の貯蔵弾性率E'を次のように測定した。まず、前述した回路基板用積層体の作製の際に得られた熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製した。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得た。次いで、得られた硬化物の50℃での貯蔵弾性率E'を、DMA(動的粘弾性測定)により測定した。ここで、貯蔵弾性率E'は、熱伝導性シート硬化物に引張り荷重をかけて、周波数1Hz、昇温速度5〜10℃/分で25℃から300℃で測定した際の、50℃での貯蔵弾性率の値である。
前述した回路基板用積層体の作製の際に得られた熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製した。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得た。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて上記熱伝導性シート硬化物の厚み方向の熱伝導率を測定した。
具体的には、レーザーフラッシュ法(ハーフタイム法)にて測定した熱拡散係数(α)、DSC法により測定した比熱(Cp)、JIS−K−6911に準拠して測定した密度(ρ)より次式を用いて熱伝導率を算出した。熱伝導率の単位はW/(m・K)である。測定温度は25℃である。熱伝導率[W/(m・K)]=α[mm2/s]×Cp[J/kg・K]×ρ[g/cm3]。評価基準は以下の通りである。
◎ : 10W/(m・K)以上
○ : 3W/(m・K)以上、10W/(m・K)未満
× : 3W/(m・K)未満
前述した回路基板用積層体の作製の際に得られた熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製した。次いで、上記熱伝導性シートを100mm×10mmに切り出し、25℃の環境下、直径10mmの円柱および直径6mmの円柱の曲面に沿わせて曲げ角度180度で長手方向の中央部分にて折り曲げた。熱伝導性シート表面に亀裂が発生し、その亀裂の長辺が2mm以上であり、かつ、長辺に垂直な方向の亀裂幅の最大値が50μm以上となったものを割れと判断した。評価基準は以下の通りである。
◎ : 直径6mmの円柱および直径10mmの円柱で割れが生じない
○ : 直径10mmの円柱で割れが生じない
× : 直径10mmの円柱で割れが生じる
実施例1A〜4Aおよび比較例1A〜3Aのそれぞれについて、半導体装置の製造安定性を次のように評価した。
まず、得られた回路基板用積層体を用いて図2に示す半導体装置を10個作製した。ここで、半導体装置の製造途中で絶縁樹脂層102に割れや欠けが生じず、10個の半導体装置のすべてを安定的に製造できたものを「〇」と評価し、半導体装置の製造途中で絶縁樹脂層102に割れや欠けが1個でも生じたものを「×」と評価した。
上記製造安定性評価で「〇」の評価だった半導体装置について、温度85℃、湿度85%、交流印加電圧1.5kVの条件で連続湿中絶縁抵抗を評価した。なお、抵抗値106Ω以下を故障とした。評価基準は以下の通りである。
◎◎:300時間以上故障なし
◎ :200時間以上300時間未満で故障あり
○ :150時間以上200時間未満で故障あり
△ :100時間以上150時間未満で故障あり
× :100時間未満で故障あり
熱伝導性シート硬化物の体積抵抗率を次のように測定した。
前述した回路基板用積層体の作製の際に得られた熱伝導性樹脂組成物(P)を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製した。次いで、上記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得た。次いで、JIS K6911に準拠し、得られた硬化物の体積抵抗率を、ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(エーディーシー社製)を用いて、印加電圧1000Vで電圧印加後、1分後に測定した。
なお、主電極は導電性ペーストを用いて作成した。主電極はφ50mmの円形状に作成した。また、ガード電極は主電極の周りに内径φ70mm、外径φ80mmで作成した。さらに、対電極はφ83mmで作成した。評価基準は以下の通りである。
○ : 体積抵抗値 1×1010Ω・cm以上
△ : 体積抵抗値 1×109Ω・cm以上、1×1010Ω・cm未満
× : 体積抵抗値 1×109Ω・cm未満
一方、比較例1Aおよび2Aの回路基板用積層体は半導体装置に適用した際、絶縁樹脂層102の表面に割れや欠けが生じ、半導体装置を安定的に製造できなかった。また、比較例3Aの回路基板用積層体は熱伝導性および175℃における体積抵抗値が劣っていた。このような回路基板用積層体を用い半導体装置は、絶縁信頼性に劣っていた。
以下、第二発明を実施例および比較例により説明するが、第二発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例・比較例では、部は特に特定しない限り質量部を表す。また、それぞれの厚みは平均膜厚で表わされている。
ホウ酸メラミンと鱗片状窒化ホウ素粉末(平均長径:15μm)を混合して得られた混合物を、ポリアクリル酸アンモニウム水溶液へ添加し、2時間混合して噴霧用スラリーを調製した。次いで、このスラリーを噴霧造粒機に供給し、アトマイザーの回転数15000rpm、温度200℃、スラリー供給量5ml/minの条件で噴霧することにより、複合粒子を作製した。次いで、得られた複合粒子を、窒素雰囲気下、2000℃の条件で焼成することにより、平均粒径が80μmの凝集窒化ホウ素を得た。
ここで、凝集窒化ホウ素の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA−500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)とした。
実施例1B〜3Bおよび比較例1B〜2Bについて、以下のように回路基板用積層体を作製した。
まず、表2に示す配合に従い、エポキシ樹脂と、シアネート樹脂と、硬化剤と、柔軟性付与剤とを溶媒であるメチルエチルケトンに添加し、これを撹拌して樹脂組成物の溶液を得た。次いで、この溶液に熱伝導性フィラーおよびシリカナノ粒子を入れて予備混合した後、三本ロールにて混練し、熱伝導性フィラーおよびシリカナノ粒子を均一に分散させた樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物に対し、60℃、0.6MPa、15時間の条件によりエージングを行った。これにより熱伝導性樹脂組成物(P)を得た。次いで、熱伝導性樹脂組成物(P)を、銅箔(厚さ0.07mm、古河電気工業株式会社製、GTS−MP箔)上にドクターブレード法を用いて塗布した後、これを100℃、30分間の熱処理により乾燥して樹脂層付き銅箔を作製した。
次いで、樹脂層付き銅箔を二本のロール間に通して圧縮することにより、樹脂層内の気泡を除去した。
次いで、得られた樹脂層付き銅箔と、3.0mm厚の銅板(タフピッチ銅)を貼り合わせ、真空プレスで、プレス圧100kg/cm2で180℃40分の条件下でプレスし、回路基板用積層体(絶縁樹脂層102の厚さ:200μm)を得た。
なお、表2中における各成分の詳細は下記のとおりである。
エポキシ樹脂1:ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(XD−1000、日本化薬社製)
シアネート樹脂1:ノボラック型シアネート樹脂(PT−30、ロンザジャパン社製)
充填材1:上記作製例により作製された凝集窒化ホウ素
充填材2:アルミナ(日本軽金属社製、LS−210)
ナノシリカ1:RX200、日本アエロジル社製、平均粒子径D50:12nm
ナノシリカ2:RX50、日本アエロジル社製、平均粒子径D50:50nm
ナノシリカ3:SO−25R,アドマテックス社製、平均粒子径D50:500nm
エポキシ樹脂3:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(830S、大日本インキ社製)
フェノキシ樹脂1:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(YP−55U、新日鐵化学製、重量平均分子量4.2×104)
硬化触媒2:2−フェニル−4−メチルイミダゾール(2P4MZ、四国化成社製)
ガラス転移温度(Tg)の測定、貯蔵弾性率E'の測定および熱伝導率試験は第一発明の実施例および比較例と同様のため、ここでは説明を省略する。
実施例1B〜3Bおよび比較例1B〜2Bのそれぞれについて、前述した回路基板用積層体の作製の際に得られた、ワニス状の熱伝導性樹脂組成物(P)の保存安定性を次のように評価した。
熱伝導性フィラーおよびシリカナノ粒子を均一に分散させた熱伝導性樹脂組成物(P)を直径80mmの円筒状容器に高さ100mmとなるように投入した。次いで、この容器を25℃の環境下に5時間放置したのち、ワニス液面に現れる透明な上澄み液の液高さを測定し、熱伝導性樹脂組成物(P)の保存安定性を評価した。
◎ : 上澄み液 無し
○ : 上澄み液 高さ2mm未満
× : 上澄み液 高さ2mm以上
3 接着層
4 熱伝導グリス
5 放熱フィン
6 封止材
7 ボンディングワイヤー
8 チップコンデンサ
9 チップ抵抗
10 ソルダーレジスト
11 半導体装置
100 回路基板用積層体
101 金属基板
102 絶縁樹脂層
103 金属層
103a 金属層
103b 金属層
Claims (10)
- 金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層上に設けられた金属層と、を備える回路基板用積層体を構成する前記絶縁樹脂層を形成するための熱伝導性樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、熱伝導性フィラーと、シリカナノ粒子と、を含み、
動的光散乱法により測定される、前記シリカナノ粒子の平均粒子径D50が1nm以上100nm以下であり、
前記シリカナノ粒子の含有量が、当該熱伝導性樹脂組成物の全固形分100質量%に対し、0.3質量%以上2.5質量%以下であり、
前記熱伝導性フィラーは、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成されている二次凝集粒子を含み、前記二次凝集粒子は、10μm以上100μm以下の平均粒径を有し、
前記熱伝導性フィラーの含有量は、当該熱伝導性組成物の固形分100質量%に対し、60質量%以上85質量%以下である、熱伝導性樹脂組成物。 - 請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物において、
昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、前記熱伝導性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が175℃以上である熱伝導性樹脂組成物。 - 請求項1または2に記載の熱伝導性樹脂組成物において、
前記熱伝導性樹脂組成物の硬化物の50℃での貯蔵弾性率E'が12GPa以上50GPa以下である熱伝導性樹脂組成物。 - 請求項1乃至3いずれか一項に記載の熱伝導性樹脂組成物において、
下記熱伝導率試験により測定される25℃での熱伝導率が3W/(m・k)以上である熱伝導性樹脂組成物。
<熱伝導率試験>
前記熱伝導性樹脂組成物を100℃、30分間熱処理することにより膜厚が400μmのBステージ状の熱伝導性シートを作製する。次いで、前記熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理して熱伝導性シート硬化物を得る。次いで、レーザーフラッシュ法を用いて前記熱伝導性シート硬化物の厚み方向の熱伝導率を測定する。 - 請求項1乃至4いずれか一項に記載の熱伝導性樹脂組成物において、
フェノキシ樹脂および25℃において液状のエポキシ樹脂から選択される少なくとも一種の柔軟性付与剤をさらに含む熱伝導性樹脂組成物。 - 請求項1乃至5いずれか一項に記載の熱伝導性樹脂組成物において、
前記エポキシ樹脂が、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂から選択される一種または二種以上を含む熱伝導性樹脂組成物。 - 金属基板と、前記金属基板上に設けられた絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層上に設けられた金属層と、を備える回路基板用積層体であって、
前記絶縁樹脂層が、請求項1乃至6いずれか一項に記載の熱伝導性樹脂組成物により形成されたものである回路基板用積層体。 - 請求項7に記載の回路基板用積層体を回路加工してなる回路基板。
- 請求項8に記載の回路基板と、
前記回路基板上に設けられた電子部品と、
を備える半導体装置。 - パワーモジュールである、請求項9に記載の半導体装置。
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