JP6795285B2 - 熱伝導性シート、熱伝導性シートの硬化物および半導体装置 - Google Patents
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Description
これらの電力制御装置は、その耐圧や電流容量に応じて各種機器に応用されている。特に、近年の環境問題、省エネルギー化推進の観点から、各種電気機械へのこれら電力制御装置の使用が年々拡大している。
特に車載用電力制御装置について、その小型化、省スペ−ス化と共に電力制御装置をエンジンルーム内に設置することが要望されている。エンジンルーム内は温度が高く、温度変化が大きい等過酷な環境であり、高温での放熱性および絶縁性により一層優れる部材が必要とされる。
本発明者は、高温環境下において半導体装置の安定性が低下する要因について鋭意検討した。その結果、高温環境下における半導体装置の安定性の低下が、高温の履歴がかかることによって熱伝導材の熱伝導率が低下し、これによって半導体装置内部から生じる熱に対する放熱効率が低下してしまうことに起因するものであることを新たに見出した。
エポキシ樹脂と、前記エポキシ樹脂中に分散された無機充填材と、を含む熱伝導性シートであって、
前記エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂から選択される一種または二種以上であり、
前記無機充填材は、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成されている二次凝集粒子であり、
前記無機充填材の含有量が、当該熱伝導性シート100質量%に対し、60質量%以上95質量%以下であり、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量をXg/eqとし、
昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、当該熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度をY℃としたとき、
X×Yが3.0×104g・℃/eq以上であり、
下記条件で得られた抽出水をイオンクロマトグラフにより分析することにより測定される、前記熱伝導性シートの前記硬化物中のイオンの総量が30,000ppm以下であり、
前記イオンがLi + 、Na + 、NH 4+ 、K + 、Ca 2+ 、Mg 2+ 、F − 、Cl − 、NO 2 2− 、Br − 、NO 3 − 、PO 4 3− 、SO 4 2− 、(COO) 2 2− 、CH 3 COO − 、およびHCOO − から選択される一種または二種以上である、熱伝導性シートが提供される。
(条件)
凍結粉砕させた当該熱伝導性シートの硬化物2gに対して40mLの純水を加え、125℃20時間熱水抽出し、抽出水を得る。
上記熱伝導性シートを硬化してなる熱伝導性シートの硬化物が提供される。
金属板と、
上記金属板の第1面側に設けられた半導体チップと、
上記金属板の上記第1面とは反対側の第2面に接合された熱伝導材と、
上記半導体チップおよび上記金属板を封止する封止樹脂とを備え、
上記熱伝導材が、上記熱伝導性シートにより形成された半導体装置が提供される。
そして、本実施形態に係る熱伝導性シートは、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量をXg/eqとし、昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、当該熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度をY℃としたとき、X×Yが3.0×104g・℃/eq以上であり、より好ましくは3.3×104g・℃/eq以上であり、さらに好ましくは3.8×104g・℃/eq以上であり、特に好ましくは4.5×104g・℃/eq以上である。
上記X×Yの上限値は特に限定されないが、例えば、10.0×104g・℃/eq以下である。
エポキシ当量は、電位差滴定法(JIS K7236)により測定することができる。
なお、本実施形態において、熱伝導性シートはBステージ状態のものをいう。また、熱伝導性シートを硬化させたものを「熱伝導性シートの硬化物」と呼ぶ。また、熱伝導性シートを半導体装置に適用し、硬化させたものを「熱伝導材」と呼ぶ。熱伝導性シートの硬化物は熱伝導材を含む。また、本実施形態において、熱伝導性シートの硬化物はCステージ状態のものをいい、Bステージ状態の熱伝導性シートを、例えば、180℃、10MPaで40分間熱処理することにより硬化して得られたものである。
本実施形態に係る熱伝導性シートを適用した半導体装置の一例としては、例えば、半導体チップがヒートシンク(金属板)上に設けられており、ヒートシンクの半導体チップが接合された面とは反対側の面に、熱伝導材が設けられた構造が挙げられる。
また、本実施形態に係る熱伝導性シートを適用した半導体装置の他の例としては、熱伝導材と、熱伝導材の一方の面に接合した半導体チップと、上記熱伝導材の上記一方の面とは反対側の面に接合した金属部材と、上記熱伝導材、上記半導体チップおよび上記金属部材を封止する封止樹脂と、を備えるものが挙げられる。
そこで、本発明者は、上記事情に鑑みて鋭意検討した結果、熱伝導性シートの上記X×Yが上記下限値以上であると、高温環境下における半導体装置の安定性が向上することを見出した。この理由としては、熱伝導性シートの上記X×Yが上記下限値以上であると、高温環境下において熱伝導性シートの硬化物の熱伝導性の低下が抑制されるからだと考えられる。
そのため、本実施形態に係る熱伝導性シートによれば、高温環境下における使用時の安定性に優れた半導体装置を実現できる。
ここで、上記イオンは、Li+、Na+、NH4+、K+、Ca2+、Mg2+、F−、Cl−、NO2 2−、Br−、NO3 −、PO4 3−、SO4 2−、(COO)2 2−、CH3COO−、およびHCOO−から選択される一種または二種以上である。
(条件)
凍結粉砕させた熱伝導性シートの硬化物2gに対して40mLの純水を加え、125℃20時間熱水抽出し、抽出水を得る。
ここで、熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度は次のように測定できる。まず、熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理することにより、熱伝導性シートの硬化物を得る。次いで、得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)を、DMA(動的粘弾性測定)により昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で測定する。
ガラス転移温度が上記下限値以上であると、導電性成分の運動開放をより一層抑制できるため、温度上昇による熱伝導性シートの絶縁性の低下をより一層抑制できる。その結果、より一層絶縁安定性に優れた半導体装置を実現できる。
ガラス転移温度は熱伝導性シートを構成する各成分の種類や配合割合、および熱伝導性シートの作製方法を適切に調節することにより制御することができる。
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有する2ないし4官能エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
このようなエポキシ樹脂(A)を使用することで、本実施形態に係る熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度を高くするとともに、熱伝導性シートおよびその硬化物の放熱性および絶縁性を向上させることができる。
また、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量の上限値は特に限定されないが、例えば、6.0×102g/eq以下であり、好ましくは5.0×102g/eq以下である。エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が上記上限値以下であると、エポキシ樹脂(A)のハンドリング性が優れる。
エポキシ樹脂(A)の含有量が上記上限値以下であると、熱伝導性シートおよびその硬化物の強度や難燃性がより一層向上したり、熱伝導性シートおよびその硬化物の熱伝導性がより一層向上したりする。
無機充填材(B)としては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
このように、無機充填材(B)として、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子を焼結させて得られる二次凝集粒子を用いる場合には、エポキシ樹脂(A)中における無機充填材(B)の分散性を向上させる観点から、エポキシ樹脂(A)としてジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂がとくに好ましい。
ここで、二次凝集粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により、粒子の粒度分布を体積基準で測定したときのメディアン径(D50)である。
なお、この平均長径は電子顕微鏡写真により測定することができる。例えば、以下の手順で測定する。まず、二次凝集粒子をミクロトームなどで切断しサンプルを作製する。次いで、走査型電子顕微鏡により、数千倍に拡大した二次凝集粒子の断面写真を数枚撮影する。次いで、任意の二次凝集粒子を選択し、写真から鱗片状窒化ホウ素の一次粒子の長径を測定する。このとき、10個以上の一次粒子について長径を測定し、それらの平均値を平均長径とする。
無機充填材(B)の含有量を上記下限値以上とすることにより、熱伝導性シートおよびその硬化物における熱伝導性や機械的強度の向上をより効果的に図ることができる。一方で、無機充填材(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の成膜性や作業性を向上させ、熱伝導性シートおよびその硬化物の膜厚の均一性をより一層良好なものとすることができる。
これにより、熱伝導性と絶縁性のバランスにより一層優れた熱伝導性シートおよびその硬化物を実現することができる。
本実施形態に係る熱伝導性シートは、さらに硬化剤(C)を含むのが好ましい。
硬化剤(C)としては、硬化触媒(C−1)およびフェノール系硬化剤(C−2)から選択される1種以上を用いることができる。
硬化触媒(C−1)としては、例えばナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類;2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジエチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン等の有機リン化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸;等、またはこれらの混合物が挙げられる。硬化触媒(C−1)として、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
本実施形態に係る熱伝導性シート中に含まれる硬化触媒(C−1)の含有量は、特に限定されないが、熱伝導性シート100質量%に対し、0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
これらの中でも、ガラス転移温度の向上及び線膨張係数の低減の観点から、フェノール系硬化剤(C−2)がノボラック型フェノール樹脂またはレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
フェノール系硬化剤(C−2)の含有量は、特に限定されないが、熱伝導性シート100質量%に対し、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
さらに、本実施形態に係る熱伝導性シートは、カップリング剤(D)を含んでもよい。
カップリング剤(D)は、エポキシ樹脂(A)と無機充填材(B)との界面の濡れ性を向上させることができる。
カップリング剤(D)の添加量は無機充填材(B)の比表面積に依存するので、特に限定されないが、無機充填材(B)100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、特に0.5質量部以上7質量部以下が好ましい。
さらに、本実施形態に係る熱伝導性シートは、さらにフェノキシ樹脂(E)を含んでもよい。フェノキシ樹脂(E)を含むことにより熱伝導性シートおよびその硬化物の耐屈曲性をより一層向上できる。
また、フェノキシ樹脂(E)を含むことにより、熱伝導性シートおよびその硬化物の弾性率を低下させることが可能となり、熱伝導性シートおよびその硬化物の応力緩和力を向上させることができる。
また、フェノキシ樹脂(E)を含むと、粘度上昇により流動性が低減し、ボイド等が発生することを抑制できる。また、熱伝導性シートと放熱部材との密着性を向上できる。これらの相乗効果により、半導体装置の高温環境下における使用時の安定性をより一層高めることができる。
本実施形態に係る熱伝導性シートには、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、レベリング剤等を含むことができる。
まず、上述の各成分を溶媒へ添加して、ワニス状の樹脂組成物を得る。本実施形態においては、例えば、溶媒中にエポキシ樹脂(A)等を添加して樹脂ワニスを作製したのち、当該樹脂ワニスへ無機充填材(B)を入れて三本ロール等を用いて混練することにより樹脂組成物を得ることができる。これにより、無機充填材(B)をより均一に、エポキシ樹脂(A)中へ分散させることができる。
上記溶媒としては特に限定されないが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
以下、詳細に説明する。
次に、各リード160をリードフレームの枠体(図示略)から切断する。こうして、図1に示すような構造の半導体装置100が得られる。
これに対し、本実施形態に係る半導体装置100は、例えば、その実装床面積が10×10mm以上100×100mm以下の大型のパッケージであったとしても、上記の構造の熱伝導材140を備えることにより、十分な耐久性を得ることが期待できる。
これに対し、平面視において、金属層150の上面151の外形線と、熱伝導材140の下面142の外形線と、が重なっている構造とすることにより、熱伝導材140におけるクラックの発生および金属層150の剥離を抑制することができる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
エポキシ樹脂と、前記エポキシ樹脂中に分散された無機充填材と、を含む熱伝導性シートであって、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量をXg/eqとし、
昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、当該熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度をY℃としたとき、
X×Yが3.0×10 4 g・℃/eq以上である、熱伝導性シート。
<2>
<1>に記載の熱伝導性シートにおいて、
前記エポキシ当量が1.5×10 2 g/eq以上である、熱伝導性シート。
<3>
<1>または<2>に記載の熱伝導性シートにおいて、
下記条件で得られた抽出水をイオンクロマトグラフにより分析することにより測定される、前記熱伝導性シートの前記硬化物中のイオンの総量が30,000ppm以下であり、
前記イオンがLi + 、Na + 、NH 4+ 、K + 、Ca 2+ 、Mg 2+ 、F − 、Cl − 、NO 2 2− 、Br − 、NO 3 − 、PO 4 3− 、SO 4 2− 、(COO) 2 2− 、CH 3 COO − 、およびHCOO − から選択される一種または二種以上である、熱伝導性シート。
(条件)
凍結粉砕させた当該熱伝導性シートの硬化物2gに対して40mLの純水を加え、125℃20時間熱水抽出し、抽出水を得る
<4>
<1>乃至<3>いずれか一つに記載の熱伝導性シートにおいて、
前記エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂から選択される一種または二種以上である、熱伝導性シート。
<5>
<1>乃至<4>いずれか一つに記載の熱伝導性シートにおいて、
前記硬化物のガラス転移温度が160℃以上である、熱伝導性シート。
<6>
<1>乃至<5>いずれか一つに記載の熱伝導性シートにおいて、
前記無機充填材は、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成されている二次凝集粒子である、熱伝導性シート。
<7>
<6>に記載の熱伝導性シートにおいて、
前記二次凝集粒子の平均粒径が5μm以上180μm以下である、熱伝導性シート。
<8>
<6>または<7>に記載の熱伝導性シートにおいて、
前記二次凝集粒子を構成する前記一次粒子の平均長径が0.01μm以上20μm以下である、熱伝導性シート。
<9>
<1>乃至<8>いずれか一つに記載の熱伝導性シートにおいて、
前記無機充填材の含有量が、当該熱伝導性シート100質量%に対し、50質量%以上95質量%以下である、熱伝導性シート。
<10>
<1>乃至<9>いずれか一つに記載の熱伝導性シートを硬化してなる熱伝導性シートの硬化物。
<11>
金属板と、
前記金属板の第1面側に設けられた半導体チップと、
前記金属板の前記第1面とは反対側の第2面に接合された熱伝導材と、
前記半導体チップおよび前記金属板を封止する封止樹脂とを備え、
前記熱伝導材が、<1>乃至<9>いずれか一つに記載の熱伝導性シートにより形成された半導体装置。
ホウ酸メラミン(ホウ酸:メラミン=2:1(モル比))と鱗片状窒化ホウ素粉末(平均長径:15μm)を混合して得られた混合物(ホウ酸メラミン:鱗片状窒化ホウ素粉末=10:1(質量比))を、0.2質量%のポリアクリル酸アンモニウム水溶液へ添加し、2時間混合して噴霧用スラリーを調製した(ポリアクリル酸アンモニウム水溶液:混合物=100:30(質量比))。次いで、このスラリーを噴霧造粒機に供給し、アトマイザーの回転数15000rpm、温度200℃、スラリー供給量5ml/minの条件で噴霧することにより、複合粒子を作製した。次いで、得られた複合粒子を、窒素雰囲気下、2000℃、10時間の条件で焼成することにより、平均粒径が80μmの凝集窒化ホウ素を得た。
ここで、凝集窒化ホウ素の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA−500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)とした。
実施例1〜5および比較例1〜3について、以下のように熱伝導性シートを作製した。
まず、表1に示す配合に従い、エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(C)とを溶媒であるメチルエチルケトンに添加し、これを撹拌して熱硬化性樹脂組成物の溶液を得た。次いで、この溶液に無機充填材(B)を入れて予備混合した後、三本ロールにて混練し、無機充填材を均一に分散させた熱伝導性シート用樹脂組成物を得た。次いで、得られた熱伝導性シート用樹脂組成物に対し、60℃、15時間の条件によりエージングを行った。次いで、熱伝導性シート用樹脂組成物を、銅箔上にドクターブレード法を用いて塗布した後、これを100℃、30分間の熱処理により乾燥して、膜厚が400μmであるBステージ状の熱伝導性シートを作製した。
なお、表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。
エポキシ樹脂1:ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(YX−4000、三菱化学社製)
エポキシ樹脂2:フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂(NC−2000−L、日本化薬社製)
エポキシ樹脂3:ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(XD−1000、日本化薬社製)
エポキシ樹脂4:ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂(NC−3000、日本化薬社製)
エポキシ樹脂5:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(830S、DIC社製)
エポキシ樹脂6:ナフタレン骨格を有する4官能エポキシ樹脂(HP−4710、DIC社製)
エポキシ樹脂7:ナフタレン骨格を有する2官能エポキシ樹脂(HP−4032D、DIC社製)
エポキシ樹脂8:アミノフェノール型エポキシ樹脂(630、三菱化学社製)
充填材1:上記鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成された二次凝集粒子の作製により作製された凝集窒化ホウ素
フェノール系硬化剤1:トリスフェノールメタン型フェノール樹脂(MEH−7500、明和化成社製)
硬化触媒1:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ−PW、四国化成社製)
熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度を次のように測定した。まず、得られた熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理することにより、熱伝導性シートの硬化物を得た。次いで、得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)を、DMA(動的粘弾性測定)により昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で測定した。
熱伝導性シートの硬化物中のイオンの総量を次のように測定した。まず、得られた熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理することにより、熱伝導性シートの硬化物を得た。次いで、得られた硬化物を凍結粉砕させた。凍結粉砕させた熱伝導性シート2gに対して40mLの純水を加え、125℃20時間熱水抽出し、抽出水を得た。
この抽出水について、ダイオネクスICS-3000型、ICS-2000型、DX-320型イオンクロマトグラフ装置を用いてLi+、Na+、NH4+、K+、Ca2+、Mg2+、F−、Cl−、NO2 2−、Br−、NO3 −、PO4 3−、SO4 2−、(COO)2 2−、CH3COO−、およびHCOO−から選択される一種または二種以上のイオンの総量を測定した。
ここで、イオンクロマトグラフ装置に検液及び標準溶液を導入し、検量線法により各イオン濃度を求め、試料からの溶出イオン量を算出した。
実施例1〜5および比較例1〜3のそれぞれについて、半導体パッケージの高温環境下における安定性を次のように評価した。まず、熱伝導性シートの硬化体を用いて得られた半導体パッケージを、サンプルとして300個用意した。次いで、各サンプルを200℃の環境下で24時間保管した。次いで、保管後におけるサンプルの故障率を算出した。ここでは、故障率が1%未満であるものを◎、1%以上3%未満であるものを○、3%以上であるものを×として、高温環境下における安定性の評価を行った。
X×Yが3.0×104g・℃/eq未満である熱伝導性シートを用いた比較例1〜3の半導体パッケージは、高温環境下における安定性に劣っていた。
したがって、本発明による熱伝導性シートを用いることにより、高温環境下における使用時の安定性に優れた半導体装置が得られることが分かった。
110 半導体チップ
111 上面
112 下面
120 導電層
130 ヒートシンク(金属板)
131 第1面
132 第2面
140 熱伝導性シート(熱伝導材)
141 上面
142 下面
150 金属層
151 上面
152 下面
160 リード
161 電極
170 ワイヤ
180 封止樹脂
182 下面
Claims (7)
- エポキシ樹脂と、前記エポキシ樹脂中に分散された無機充填材と、を含む熱伝導性シートであって、
前記エポキシ樹脂がジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂から選択される一種または二種以上であり、
前記無機充填材は、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成されている二次凝集粒子であり、
前記無機充填材の含有量が、当該熱伝導性シート100質量%に対し、60質量%以上95質量%以下であり、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量をXg/eqとし、
昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、当該熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度をY℃としたとき、
X×Yが3.0×104g・℃/eq以上であり、
下記条件で得られた抽出水をイオンクロマトグラフにより分析することにより測定される、前記熱伝導性シートの前記硬化物中のイオンの総量が30,000ppm以下であり、
前記イオンがLi + 、Na + 、NH 4+ 、K + 、Ca 2+ 、Mg 2+ 、F − 、Cl − 、NO 2 2− 、Br − 、NO 3 − 、PO 4 3− 、SO 4 2− 、(COO) 2 2− 、CH 3 COO − 、およびHCOO − から選択される一種または二種以上である、熱伝導性シート。
(条件)
凍結粉砕させた当該熱伝導性シートの硬化物2gに対して40mLの純水を加え、125℃20時間熱水抽出し、抽出水を得る。 - 請求項1に記載の熱伝導性シートにおいて、
前記エポキシ当量が1.5×102g/eq以上である、熱伝導性シート。 - 請求項1または2に記載の熱伝導性シートにおいて、
前記硬化物のガラス転移温度が160℃以上である、熱伝導性シート。 - 請求項1乃至3いずれか一項に記載の熱伝導性シートにおいて、
前記二次凝集粒子の平均粒径が5μm以上180μm以下である、熱伝導性シート。 - 請求項1乃至4いずれか一項に記載の熱伝導性シートにおいて、
前記二次凝集粒子を構成する前記一次粒子の平均長径が0.01μm以上20μm以下である、熱伝導性シート。 - 請求項1乃至5いずれか一項に記載の熱伝導性シートを硬化してなる熱伝導性シートの硬化物。
- 金属板と、
前記金属板の第1面側に設けられた半導体チップと、
前記金属板の前記第1面とは反対側の第2面に接合された熱伝導材と、
前記半導体チップおよび前記金属板を封止する封止樹脂とを備え、
前記熱伝導材が、請求項1乃至6いずれか一項に記載の熱伝導性シートにより形成された半導体装置。
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