以下、本発明を詳細に説明する。
即ち、本発明のベンゾオキサジン化合物は、下記一般式(I)で表される分子構造を有するフェノール化合物と、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと、を反応させて得られる化合物である。
[式(I)中、Xは下記構造式(x1)又は(x2)で表される構造部位である。]
[式(x1)又は(x2)中、R
1及びR
2はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、lは0〜1の整数、nは0〜3の整数である。nが2以上の整数の場合、複数のR
2は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。また、kは1〜3の整数、mは1〜2の整数であり、Arは下記構造式(Ar1)又は(Ar2)で表される構造部位である。k又はmが2以上の整数の場合、複数のArは同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。式(x2)における、R
2、Arは、2つの芳香環のうち何れの芳香環に結合していてもよい。]
[式(Ar1)又は(Ar2)中、R
3及びR
4はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、R
4は2つの芳香環のうち何れの芳香環に結合していてもよい。qは0〜3の整数、sは0〜5の整数である。q又はsが2以上の整数の場合、複数のR
3又はR
4は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。またp、rはそれぞれ1〜2の整数である。式(Ar2)における、R
4、OH基は、2つの芳香環のうち何れの芳香環に結合していてもよい。]
前記一般式(I)で表される分子構造を有するフェノール化合物と、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと、を反応させて得られるベンゾオキサジン化合物は、メチレン鎖を介さずに芳香環同士が結合した分子構造を有するため、剛直であり、かつ、化合物中における芳香環およびベンゾオキサジン環の濃度が高いという特徴を有する。すなわち、本発明のベンゾオキサジン化合物は、前記のように芳香環と比較して熱による分解が生じやすいメチレン鎖を持たない分子構造を有するため、得られる硬化物において耐熱分解性が高いという特徴を有する。さらに、本発明のベンゾオキサジン化合物は、前記のように芳香環同士が結合した剛直な分子構造を有するため、分子運動が抑制され、得られる硬化物において誘電率と誘電正接が低く、誘電特性に優れるという特徴を有する。さらに、本発明のベンゾオキサジン化合物は、前記のように剛直な分子構造に加え、化合物中の芳香環濃度が高いため、得られる硬化物において難燃性に優れるという特徴を有する。さらに、本発明のベンゾオキサジン化合物は、前記のように剛直な分子構造に加え、ベンゾオキサジン環の濃度が高いことから、得られる硬化物において架橋密度が高く、耐熱性に優れるという特徴を有する。すなわち、前記一般式(I)で表される分子構造を有するフェノール化合物と、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと、を反応させて得られるベンゾオキサジン化合物は、得られる硬化物において耐熱性、耐熱分解性、難燃性及び誘電特性等の何れにも優れるといった特徴を有するものである。
前記構造式(x1)又は(x2)においてkは1〜3の整数、mは1〜2の整数である。ここで、k又はmの値が1の場合に相当する化合物(以下「2核体化合物(α1)」と略記する。)は、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、難燃性及び誘電特性に優れるといった特徴を有する。一方、k又はmの値が2の場合に相当する化合物(以下「3核体化合物(α2)」と略記する。)や、kの値が3の場合に相当する化合物(以下「4核体化合物(α3)」と略記する。)は、分子骨格の剛直性がより高く、芳香環濃度も高いことから、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、難燃性及び誘電特性により一層優れるといった特徴を有する。
前記ベンゾオキサジン化合物を複数種類含むベンゾオキサジン樹脂は、例えば、分子構造中にキノン構造を有する化合物(Q)と、分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)とを、無触媒又は酸触媒条件下、40〜180℃の温度範囲で反応させてフェノール化合物を得たのち、前記フェノール化合物を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応させることにより製造することができる。前記方法によれば、反応条件により任意のベンゾオキサジン化合物を選択的に製造したり、複数種のベンゾオキサジン化合物の混合物であるベンゾオキサジン樹脂を製造したりすることが出来る。なお、任意のベンゾオキサジン化合物は、混合物であるベンゾオキサジン樹脂から単離することができる。
前記キノン構造を有する化合物(Q)は、例えば、下記構造式(Q1)又は(Q2)で表される化合物が挙げられ、具体的には、パラベンゾキノン、2−メチルベンゾキノン、2,3,5−トリメチル−ベンゾキノン、ナフトキノン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
式(Q1)又は(Q2)中、R1及びR2はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、lは0〜1の整数、nは0〜3の整数である。nが2以上の整数の場合、複数のR2は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
前記フェノール性水酸基を有する化合物(P)は、例えば、下記構造式(P1)又は(P2)で表される化合物が挙げられる。
式(P1)又は(P2)中、R3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、qは0〜3の整数、sは0〜5の整数である。q又はsが2以上の整数の場合、複数のR3又はR4は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。また、p及びrはそれぞれ1〜2の整数である。
そのようなフェノール性水酸基を有する化合物(P)として、具体的には、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,3,4−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2‐メトキシ−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、3,5−ジメトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ベンジルフェノール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1−ナフトール、2−ナフトール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
前記キノン構造を有する化合物(Q)と前記フェノール性水酸基を有する化合物(P)との反応は、反応性が高いことから無触媒条件下でも進行するが、適宜酸触媒を用いて行っても良い。ここで用いる酸触媒は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、などの無機酸や、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸等が挙げられる。これら酸触媒を用いる場合は、前記キノン構造を有する化合物(Q)と、前記フェノール性水酸基を有する化合物(P)との合計質量に対し、5.0質量%以下の量で用いることが好ましい。
前記反応は無溶剤条件下で行うことが好ましいが、必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。ここで用いる有機溶媒は、例えば、メチルセロソルブ、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これら有機溶剤を用いる場合は、反応効率が向上することから、キノン構造を有する化合物(Q)と分子構造中にフェノール性水酸基を有する化合物(P)との合計100質量部に対し、有機溶剤が50〜200質量部の範囲となる割合で用いることが好ましい
前記キノン構造を有する化合物(Q)と前記フェノール性水酸基を有する化合物(P)とを反応させることで、前記一般式(I)で表される分子構造を有するフェノール化合物や、前記フェノール化合物を複数種含むフェノール樹脂を得ることが出来る。
次いで、得られた前記フェノール化合物と、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと、を反応させる。前記モノアミン化合物としては、例えば、下記構造式(R)で表されるものが挙げられる。
式(R)中、R5は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらが有する1つ以上の水素原子が、水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子の何れかで置換された構造、の何れかである。
そのようなR5として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基等のアルキル基;アリル基等のアルケニル基;プロパルギル基等のアルキニル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等の水酸基含有アルキル基;メトキシエチル基、メトキシプロピル基、アリルオキシメチル基、アリルオキシプロピル基、プロパルギルオキシメチル基、プロパルギルオキシプロピル基などのアルコキシ基含有アルキル基;クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の水酸基含有アリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、プロパルギルオキシフェニル基などのアルコキシ基含有アリール基;ビニルフェニル基、アリルフェニル基、エチニルフェニル基、プロパルギルフェニル基などの不飽和炭化水素基含有アリール基;クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロナフチル基、ブロモナフチル基、フルオロナフチル基等のハロゲン化アリール基等が挙げられる。
前記の中でも、反応性に優れ、硬化物における耐熱性、耐熱分解性に優れることから、R5はアリール基であることが好ましく、その中でもフェニル基であることがより好ましい。
前記ホルムアルデヒドとしては、溶液の状態であるホルマリン、或いは固形の状態であるパラホルムアルデヒドを用いることができるが、いずれを用いても良い。
前記フェノール化合物と、前記モノアミン化合物との反応は、目的のベンゾオキサジン樹脂が効率的に生成することから、前記フェノール化合物中の水酸基1モルに対し、モノアミン化合物を1.0〜1.2モルの範囲で反応させることが好ましい。なお、さらに目的のベンゾオキサジン樹脂がより効率的に生成することから、前記フェノール化合物と、前記ホルムアルデヒドとは、前記フェノール化合物中の水酸基1モルに対し、ホルムアルデヒドを2.0〜2.2モルの範囲で反応させることが、より好ましい。
前記フェノール化合物と、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドとの反応は、必要に応じて触媒の存在下で行っても良い。ここで用いる触媒は、ジヒドロオキサジン化合物を製造する際に通常用いられる各種の触媒が挙げられ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド化合物;ピリジン、N,N−ジメチル―4−アミノピリジン等のピリジン化合物;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン化合物;テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩;酢酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸化合物;水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物又は炭酸塩;ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール性化合物;パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ヨウ化銅、四塩化錫、ニッケル、プラチナ等の金属触媒等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
前記フェノール化合物と、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドとの反応は、必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。ここで用いる有機溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール化合物;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物;酢酸、トリフルオロ酢酸等の酢酸化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル化合物;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール化合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素化合物;シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;アニリン等のアミン化合物;ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
前記フェノール化合物と、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドとの反応は、例えば50〜150℃の温度条件下で行うことができる。反応終了後は水層と有機層とを分離した後、有機層から有機溶媒を減圧乾燥させるなどして、複数種のベンゾオキサジン化合物が混合したベンゾオキサジン樹脂を得ることができる。なお、ベンゾオキサジン樹脂から目的とするベンゾオキサジン化合物を得るには、たとえば周知の結晶化または溶媒洗浄技術による混合物の精製やクロマトグラフィー法などにより単離すればよい。
このような方法で製造されるベンゾオキサジン化合物としては、例えば、下記構造式(II)〜(V)で表されるものなどが挙げられる。
式(II)〜(V)中、R1〜R4は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜4のアルキ
ル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかである。YとZは、芳香環上の隣接した炭素原子と結合し、それぞれ水酸基、水素原子で表される一組であるか、又は下記構造式(VI)で表される構造部位を構成する一組であるが、分子中におけるX,Yの少なくとも一組は、下記構造式(VI)で表される構造部位を構成する一組である。kは1〜3の整数、lは0〜1の整数、mは1〜2の整数、nは0〜3の整数、pは1〜2の整数、qは0〜3の整数、rは1〜2の整数、sは0〜5の整数である。l、n、q、又はsが2以上の整数の場合、R1、R2、R3、R4はそれぞれ同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。さらに、式(III)〜(V)において、R2、R4は、ナフタレン環を構成する2つの芳香環のうちいずれの芳香環に結合していてもよく、式(III)、(V)において、Y、Zは、括弧の中に記載されたナフタレン環を構成する2つの芳香環のうちいずれの芳香環に結合していてもよい。
式(VI)中、*Y、*Zは、前記構造式(II)〜(V)で表される化合物において、それぞれ、Yが結合した炭素原子との結合点、Zが結合した炭素原子との結合点であり、R5は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらが有する1つ以上の水素原子が水酸基、アルコキシ基若しくはハロゲン原子の何れかで置換された構造、何れかである。R5は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかである。具体的なR5については、前述の通りである。
前記構造式(II)〜(V)において、kは1〜3の整数、mは1〜2の整数である。ここで、前記構造式(II)〜(V)において、kは1〜3の整数、mは1〜2の整数である。ここで、k又はmの値が1である2核体化合物(β1)は、前記で説明した2核体化合物(α1)がモノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応した2核体のベンゾオキサジン化合物であり、k又はmの値が2である3核体化合物(β2)は、前記で説明した3核体化合物(α2)がモノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応した3核体のベンゾオキサジン化合物であり、kの値が3である4核体化合物(β3)は、前記で説明した4核体化合物(α3)がモノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応した4核体のベンゾオキサジン化合物である。
本発明のベンゾオキサジン化合物は、前記一般式(I)で表される分子構造を有するフェノール化合物と、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドとを反応させて得られる化合物であればいずれの場合も、得られる硬化物において耐熱性、耐熱分解性、難燃性および誘電特性の諸物性に優れるという効果を奏する。以下で、本発明のベンゾオキサジン化合物を得るために用いられるフェノール化合物について、さらに詳細に説明する。
<フェノール化合物>
フェノール化合物としては、前記一般式(I)で表されるフェノール化合物を用いることができるほか、前記フェノール化合物を複数種含むフェノール樹脂も用いることもできる。その意味においては、フェノール化合物に代えて、フェノール樹脂を用いることもできる。前記一般式(I)で表されるフェノール化合物としては、代表的なものとして、下記構造式(I−1)〜(I−3)の何れかで表されるフェノール化合物が挙げられる。
式(I−1)〜(I−3)中、kは1〜3の整数、mは1〜2の整数であり、Arは下記構造式(Ar1)又は(Ar2)で表される構造部位である。k又はmが2以上の整数の場合、複数のArは同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
式(Ar1)又は(Ar2)中、p及びrはそれぞれ1〜2の整数ある。R3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、qは0〜3の整数、sは0〜5の整数である。q又はsが2以上の整数の場合、複数のR3又はR4は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。式(Ar2)における、R4、OH基は、2つの芳香環のうち何れの芳香環に結合していてもよい。
前記構造式(I−1)で表されるフェノール化合物としては、更に具体的には、下記構造式(1)〜(7)の何れかで表されるフェノール化合物が挙げられる。以下、それぞれについて詳述する。
式(1)〜(7)中、kは1〜3の整数である。R6は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、uは1〜4の整数である。uが2以上の整数の場合、複数のR6は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
下記構造式(1)で表されるフェノール化合物は、前記一般式(I)で表されるフェノール化合物の中でも、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性のバランスに特に優れるベンゾオキサジン化合物を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られるという特徴を有する。
式(1)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(1)で表されるフェノール化合物を含むフェノール樹脂としては、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン化合物を含むベンゾオキサジン樹脂(以下、「ベンゾオキサジン樹脂」と略記する。)を、その後の反応で得られる点から、前記構造式(1)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と、kの値が2である3核体化合物(α2)とを含有するフェノール樹脂が好ましく、その中でも、前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜50%の範囲であり、かつ、前記3核体フェノール化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜50%の範囲にあるフェノール樹脂がより好ましい。
特に、硬化物において耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点においては、前記2核体化合物(α1)、前記3核体化合物(α2)に加え、kの値が3である4核体化合物(α3)や、下記構造式(1’)で表される4核体化合物(α3’)を含有するフェノール樹脂が好ましく、その中でも、前記4核体化合物(α3)と前記4核体化合物(α3’)との合計の含有率が、GPC測定における面積比率で2〜20%の範囲にあるフェノール樹脂がより好ましい。
なお、フェノール樹脂における前記2核体化合物(α1)等の含有率は、その後の反応で得られるベンゾオキサジン樹脂における2核体化合物(β1)等の含有率と、おおよそ同一である。そのため、得られる硬化物において優れた耐熱性、耐熱分解性、難燃性を発現させることができるベンゾオキサジン樹脂を得たい場合には、フェノール樹脂における前記2核体化合物(α1)等の含有割合が重要となる。これは、以下で説明するものについても同様である。
なお、本発明において、その中でも、前記2核体化合物(α1)、前記3核体化合物(α2)、前記4核体化合物(α3)及び前記4核体化合物(α3’)の含有率とは、下記の条件によるGPC測定データから算出される、フェノール樹脂の全ピーク面積に対する前記各成分のピーク面積の割合である。
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
前記構造式(1)で表されるフェノール化合物は、例えば、パラベンゾキノンとフェノールを反応させることにより製造することが出来る。パラベンゾキノンとフェノールとの反応割合は、前記2核体化合物(α1)と前記3核体化合物(α2)との含有率を前記に記載の好ましい範囲に容易に調整できるフェノール樹脂を製造できることから、パラベンゾキノン1molに対し、フェノールが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
前記構造式(1)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(1−1)〜(1−9)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
式(1−1)〜(1−9)中、kは1〜3の整数である。
下記構造式(2)で表されるフェノール化合物は、前記一般式(I)で表されるフェノール化合物の中でも、特に、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるベンゾオキサジン化合物を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られるという特徴を有する。
式(2)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(2)で表されるフェノール化合物を含むフェノール樹脂としては、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点から、前記構造式(2)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と、前記構造式(2)においてkの値が2である3核体化合物(α2)とを含有するフェノール樹脂が好ましく、その中でも、前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で2〜50%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜90%の範囲にあるフェノール樹脂がより好ましい。更に、その中でも、前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で2〜25%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で25〜90%の範囲にあるフェノール樹脂が特に好ましい。
特に、硬化物において耐熱性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点においては、前記2核体化合物(α1)、前記3核体化合物(α2)に加え、前記構造式(2)においてkの値が3である4核体化合物(α3)や、下記構造式(2’)で表される4核体化合物(α3’)を含有するフェノール樹脂が好ましく、その中でも、前記4核体化合物(α3)と前記4核体化合物(α3’)との合計の含有率が、GPC測定における面積比率で2〜20%の範囲にあるフェノール樹脂が好ましい。
式(2’)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(2)で表されるフェノール化合物は、例えば、パラベンゾキノンと、クレゾールとを反応させることにより製造することが出来る。パラベンゾキノンとクレゾールとの反応割合は、前記2核体化合物(α1)と前記3核体化合物(α2)との含有率を前述した好ましい範囲に容易に調整できるフェノール樹脂を製造できることから、パラベンゾキノン1molに対し、クレゾールが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
ここで用いるクレゾールは、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾールの何れでも良く、また、複数種を併用しても良い。その中でも、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、オルソクレゾールが好ましい。
前記構造式(2)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(2−1)〜(2−31)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
下記構造式(3)で表されるフェノール化合物は、前記一般式(I)で表されるフェノール化合物の中でも、特に硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるベンゾオキサジン化合物を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られるという特徴を有する。
式(3)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(3)で表されるフェノール化合物を含むフェノール樹脂としては、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点から、前記構造式(3)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と、前記構造式(3)においてkの値が2である3核体化合物(α2)とを含有するフェノール樹脂が好ましく、その中でも、前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で2〜50%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で10〜95%の範囲にあるフェノール樹脂がより好ましい。さらに、その中でも、前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で2〜25%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で50〜95%の範囲にあるフェノール樹脂がさらにより好ましい。
特に、硬化物において耐熱性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点においては、前記2核体化合物(α1)、前記3核体化合物(α2)に加え、前記構造式(3)においてkの値が3である4核体化合物(α3)や、下記構造式(3’)で表される4核体化合物(α3’)を含有するフェノール樹脂が好ましく、その中でも、前記4核体化合物(α3)と前記4核体化合物(α3’)との合計の含有率が、GPC測定における面積比率で0.5〜10%の範囲にあるフェノール樹脂が特に好ましい。
前記構造式(3)で表されるフェノール化合物は、例えば、パラベンゾキノンと、ジメチルフェノールとを反応させることにより製造することが出来る。パラベンゾキノンとジメチルフェノールとの反応割合は、前記2核体化合物(α1)と前記3核体化合物(α2)との含有率を前述した好ましい範囲に容易に調整できるフェノール樹脂を製造できることから、パラベンゾキノン1molに対し、ジメチルフェノールが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
ここで用いるジメチルフェノールは2,6−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール等何れの位置異性体のものでも良い。その中でも、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、2,6−ジメチルフェノールが好ましい。
前記構造式(3)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(3−1)〜(3−3)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
下記構造式(4)で表されるフェノール化合物は、例えば、パラベンゾキノンと、ジヒドロキシベンゼンとを反応させることにより製造することが出来る。パラベンゾキノンとジヒドロキシベンゼンとの反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、パラベンゾキノン1molに対し、ジヒドロキシベンゼンが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
ここで用いるジヒドロキシベンゼンは、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン等何れの位置異性体のものでも良い。その中でも、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、1,3−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。
式(4)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(4)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(4−1)〜(4−3)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
式(4−1)〜(4−3)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(4)で表されるフェノール化合物を含有するフェノール樹脂は、更にこれら以外のフェノール化合物を含有していても良い。その他のフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(4’−1)〜(4’−8)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
式(4’−1)〜(4’−8)中、u及びvはそれぞれ1〜2の整数である。
フェノール樹脂が前記構造式(4)で表される化合物に併せて、前記その他のフェノール化合物を含む場合、フェノール樹脂中の各成分の含有割合は、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるベンゾオキサジン樹脂を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点から、前記構造式(4)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と前記構造式(4’−1)で表される化合物との合計含有率がGPC測定における面積比率で5〜40%の範囲であり、かつ、前記構造式(4)においてkの値が2である3核体化合物(α2)と、前記構造式(4’−2)で表される化合物と、前記構造式(4’−4)又は(4’−5)で表される化合物との合計含有率が10〜60%の範囲にあるフェノール樹脂が好ましい。
下記構造式(5)で表されるフェノール化合物は、例えば、パラベンゾキノンと、ナフトールを反応させることにより製造することが出来る。パラベンゾキノンとナフトールとの反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、パラベンゾキノン1molに対し、ナフトールが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
式(5)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(5)で表されるフェノール化合物を含むフェノール樹脂としては、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に特に優れるベンゾオキサジン樹脂を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点から、前記構造式(5)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と、前記構造式(5)においてkの値が2である3核体化合物(α2)とを含有するフェノール樹脂が好ましく、その中でも、前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で5〜60%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で5〜50%の範囲にあるフェノール樹脂がより好ましい。
前記構造式(5)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(5−1)〜(5−10)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
下記構造式(6)で表されるフェノール化合物は、前記一般式(I)で表されるフェノール化合物の中でも、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に特に優れるベンゾオキサジン化合物を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られるという特徴を有する。
式(6)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(6)で表されるフェノール化合物を含むフェノール樹脂としては、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点から、前記構造式(6)においてkの値が1である2核体化合物(α1)と、前記構造式(6)においてkの値が2である3核体化合物(α2)とを含有するフェノール樹脂が好ましく、その中でも、前記2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で5〜60%の範囲であり、かつ、前記3核体化合物(α2)の含有率がGPC測定における面積比率で5〜50%の範囲にあるフェノール樹脂がより好ましい。
前記構造式(6)の何れかで表されるフェノール化合物は、パラベンゾキノンと、ジヒドロキシナフタレンとを反応させることにより製造することが出来る。パラベンゾキノンとジヒドロキシナフタレンとの反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、パラベンゾキノン1molに対し、ジヒドロキシナフタレンが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
ここで用いるジヒドロキシナフタレンは、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等何れの位置異性体のものでも良い。その中でも、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
前記構造式(6)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(6−1)〜(6−30)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
下記構造式(7)で表されるフェノール化合物は、例えば、前記分子構造中にパラベンゾキノンと、フェニルフェノールとを反応させることにより製造することが出来る。パラベンゾキノンとフェニルフェノールとの反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、パラベンゾキノン1molに対し、フェニルフェノールが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
式(7)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(7)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(7−1)〜(7−12)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
式(7−1)〜(7−12)中、kは1〜3の整数である。
前記構造式(I−2)で表されるフェノール化合物は、更に具体的には、下記構造式(8)〜(11)の何れかで表されるフェノール化合物が挙げられる。以下、それぞれについて詳述する。
式(8)〜(11)中、qは0〜3の整数、rは1〜2の整数である。R6は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、uは1〜4の整数である。uが2以上の整数の場合、複数のR6は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
下記構造式(8)で表されるフェノール化合物は、例えば、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンと、フェノール、クレゾール又はジメチルフェノール等を反応させることにより製造することが出来る。2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンと、フェノール、クレゾール又はジメチルフェノール等との反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノン1molに対し、フェノール、クレゾール又はジメチルフェノール等が0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
式(8)中、qは0〜3の整数である。
前記構造式(8)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(8−1)〜(8−9)の何れかで表されるフェノール化合物が挙げられる。
式(8−1)〜(8−9)中、qは0〜3の整数である。
下記構造式(9)で表されるフェノール化合物は、例えば、前記分子構造中に2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンと、ジヒドロキシベンゼンとを反応させることにより製造することが出来る。2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンとジヒドロキシベンゼンとの反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノン1molに対し、ジヒドロキシベンゼンが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
前記構造式(9)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(9−1)で表されるフェノール化合物等が挙げられる。
下記構造式(10)で表されるフェノール化合物は、例えば、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンと、ジヒドロキシナフタレン又はナフトールとを反応させることにより製造することが出来る。2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンと、ジヒドロキシナフタレン又はナフトールとの反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノン1molに対し、ジヒドロキシナフタレン又はナフトールが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
式(10)中、rは1〜2の整数である。
前記構造式(10)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(10−1)〜(10−12)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
下記構造式(11)で表されるフェノール化合物は、例えば、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンと、フェニルフェノール化合物とを反応させることにより製造することが出来る。2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノンとフェニルフェノール化合物との反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、2,4,6−トリメチル−パラベンゾキノン1molに対し、前記分子構造中にフェニルフェノール化合物0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
式(11)中、uは1〜4の整数である。
前記構造式(11)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(11−1)〜(11−3)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
前記構造式(I−3)で表されるフェノール化合物は、更に具体的には、下記構造式(12)〜(16)の何れかで表されるフェノール化合物が挙げられる。以下、それぞれについて詳述する。
式(12)〜(16)中、qは0〜3の整数、mは1〜2の整数である。R6は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、uは1〜4の整数である。uが2以上の整数の場合、複数のR6は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
下記構造式(12)で表されるフェノール化合物は、例えば、ナフトキノンと、フェノール、クレゾール又はジメチルフェノール等とを反応させることにより製造することが出来る。ナフトキノンと、フェノール、クレゾール又はジメチルフェノール等との反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、ナフトキノン1molに対し、フェノール、クレゾール又はジメチルフェノール等が0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
式(12)中、R3は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、mは1〜2の整数であり、qは0〜3の整数である。
前記構造式(12)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(12−1)〜(12−9)の何れかで表されるフェノール化合物が挙げられる。
下記構造式(13)で表されるフェノール化合物は、例えば、ナフトキノンと、ジヒドロキシベンゼンとを反応させることにより製造することが出来る。ナフトキノンとジヒドロキシベンゼンとの反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、ナフトキノン1molに対し、ジヒドロキシベンゼンが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
式(13)中、mは1〜2の整数である。
前記構造式(13)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(13−1)で表されるフェノール化合物が挙げられる。
下記構造式(14)で表されるフェノール化合物は、例えば、ナフトキノンと、ナフトールとを反応させることにより製造することが出来る。ナフトキノンとナフトールとの反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、ナフトキノン1molに対し、ナフトールが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
式(14)中、mは1〜2の整数である。
前記構造式(14)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(14−1)〜(14−4)の何れかで表されるフェノール化合物が挙げられる。
下記構造式(15)で表されるフェノール化合物は、前記一般式(I)で表されるフェノール化合物の中でも、特に硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に特に優れるベンゾオキサジン化合物を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られるという特徴を有する。
下記構造式(15)で表されるフェノール化合物は、例えば、ナフトキノンと、ジヒドロキシナフタレンとを反応させることにより製造することが出来る。ナフトキノンとジヒドロキシナフタレンとの反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、ナフトキノン1molに対し、ジヒドロキシナフタレンが0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
式(14)中、mは1〜2の整数である。
ここで用いるジヒドロキシナフタレンは、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等何れの位置異性体のものでも良い。その中でも、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることから、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
前記構造式(15)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(15−1)〜(15−8)の何れかで表される化合物が挙げられる。
前記構造式(15)で表されるフェノール化合物を含有するフェノール樹脂は、更にこれら以外のフェノール化合物を含有していても良い。その中でも、硬化物における難燃性に優れるベンゾオキサジン樹脂を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られることから、下記構造式(15’)で表されるジナフトフラン化合物を含有していることが好ましい。この場合、フェノール樹脂中の各成分の含有割合は、前記構造式(15)においてmの値が1である2核体化合物(α1)の含有率がGPC測定における面積比率で2〜60%の範囲であり、かつ、前記ジナフトフラン化合物の含有率が1〜60%の範囲にあるフェノール樹脂が好ましい。
下記構造式(16)で表されるフェノール化合物は、ナフトキノンと、フェニルフェノール化合物とを反応させることにより製造することが出来る。ナフトキノンとフェニルフェノール化合物との反応割合は、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応して、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に一層優れるベンゾオキサジン樹脂を与えるフェノール樹脂が得られることからナフトキノン1molに対し、フェニルフェノール化合物が0.1〜10.0molの範囲となる割合であることが好ましい。
式(16)中、R6は炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アリール基又はアラルキル基の何れかであり、mは1〜2の整数であり、uは1〜4の整数である。uが2以上の整数の場合、複数のR6は同一であっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
前記構造式(16)で表されるフェノール化合物としては、例えば、下記構造式(16−1)〜(16−7)の何れかで表されるフェノール化合物等が挙げられる。
これら例示したフェノール化合物のうち、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性とのバランスに優れるベンゾオキサジン化合物を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点においては、前記構造式(1)〜(3)の何れかで表されるフェノール化合物が好ましく、これらの中でも特に硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性とのバランスに優れることから前記構造式(1)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
一方、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、及び難燃性に特に優れるベンゾオキサジン化合物を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点では前記構造式(6)又は(15)で表されるフェノール化合物が好ましく、特に難燃性に優れる点では前記構造式(15−1)又は(15−2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
前記フェノール化合物を含むフェノール樹脂は、硬化性に優れるベンゾオキサジン樹脂を、モノアミン化合物及びホルムアルデヒドと反応することで得られる点からその水酸基当量が125〜300g/eqの範囲にあるフェノール樹脂が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、以上詳述した本発明のベンゾオキサジン化合物又はベンゾオキサジン樹脂を必須成分とするものである。前記ベンゾオキサジン化合物またはベンゾオキサジン樹脂は、それ自体でも硬化しうることから、本発明の硬化性樹脂組成物としては、樹脂成分が前記ベンゾオキサジン化合物またはベンゾオキサジン樹脂のみから構成されていても良いし、その他の樹脂が併用されていても良い。
その他の樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール性水酸基含有樹脂、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物、スチレンとマレイン酸無水物の共重合物などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールスルフィド型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
これらのエポキシ樹脂の中でも、特に難燃性に優れる硬化物が得られる点においては、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂が好ましい。
本発明のベンゾオキサジン樹脂にエポキシ樹脂を併用する場合、ベンゾオキサジン樹脂中のオキサジン構造とフェノール性水酸基との合計モル数(a)と、エポキシ樹脂中のエポキシ基のモル数(b)との比率[(a)/(b)]は1.0/0.1〜1.0/1.0となる割合、より好ましくは1.0/0.1〜1.0/0.5となる割合であることが、硬化物における耐熱性と耐熱分解性とに優れる硬化物が得られることから好ましい。
前記フェノール性水酸基含有化合物は、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ナフチレンエーテル樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
これらのフェノール性水酸基含有化合物の中でも、芳香族骨格を分子構造内に多く含むものが誘電特性及び耐吸湿性に優れることから好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ナフチレンエーテル樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が好ましい。
前記シアネートエステル樹脂は、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
これらのシアネートエステル樹脂の中でも、特に耐熱性に優れる硬化物が得られる点においては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂が好ましい。
前記マレイミド化合物は、例えば、下記構造式(i)〜(iii)の何れかで表される各種の化合物等が挙げられる。
式(i)中、Rは、1価の有機基であり、x及びyはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基の何れかであり、nは1以上の整数である。)
式(ii)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基の何れかであり、nは1〜3の整数、mは繰り返し単位の平均で0〜10である。
式(iii)中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基の何れかであり、nは1〜3の整数、mは繰り返し単位の平均で0〜10である。
上記活性エステル樹脂としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。前記活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物又はそのハライドとヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物又はそのハライドと、フェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等、又はそのハライドが挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールフタレイン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、α−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂等が挙げられる。
活性エステル樹脂として、具体的にはジシクロペンタジエン−フェノール付加構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂等が好ましく、なかでもピール強度の向上に優れるという点で、ジシクロペンタジエン−フェノール付加構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。ジシクロペンタジエン−フェノール付加構造を含む活性エステル樹脂として、より具体的には下記一般式(iv)で表される化合物が挙げられる。
式(iv)中、Rはフェニル基又はナフチル基であり、uは0又は1を表し、nは繰り返し単位の平均で0.05〜2.5である。なお、樹脂材料の硬化物の誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させるという観点から、Rはナフチル基が好ましく、uは0が好ましく、また、nは0.25〜1.5が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化は無触媒でも進行するが、触媒も併用できる。これら触媒としてはイミダゾール、ジメチルアミノピリジンなどの3級アミン化合物;トリフェニルホスフィンなどの燐系化合物;3フッ化ホウ素、3フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体などの3フッ化ホウ素アミン錯体;チオジプロピオン酸等の有機酸化合物;チオジフェノールベンズオキサジン、スルホニルベンズオキサジン等のベンズオキサジン化合物;スルホニル化合物;フェノール性水酸基含有化合物などが例示できる。前記フェノール性水酸基含有化合物は、例えば、フェノール、クレゾール、ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールE型、ビスフェノールS型、ビスフェノールスルフィド、ジヒドロキシフェニレンエーテル、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ナフチレンエーテル樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これら触媒の添加量は、硬化性樹脂組成物100質量部中0.001〜15質量部の範囲であることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物をプリント配線基板用途などの高い難燃性が求められる用途に用いる場合には、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
前記非ハロゲン系難燃剤は、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記リン系難燃剤は、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
前記有機リン系化合物は、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等の環状有機リン化合物及びそれをフェノール樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
これらリン系難燃剤の配合量は、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部中、赤リンを用いる場合には0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を用いる場合には0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、0.5〜6.0質量部の範囲で配合することがより好ましい。
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記窒素系難燃剤は、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
前記トリアジン化合物は、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び該アミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
前記シアヌル酸化合物は、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
前記窒素系難燃剤の配合量は、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、0.1〜5質量部の範囲で配合することがより好ましい。
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記シリコーン系難燃剤は、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
前記シリコーン系難燃剤の配合量は、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記無機系難燃剤は、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
前記金属水酸化物は、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
前記金属酸化物は、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
前記金属炭酸塩化合物は、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
前記金属粉は、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
前記ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
前記低融点ガラスのは、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
前記無機系難燃剤の配合量は、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、0.5〜15質量部の範囲で配合することがより好ましい。
前記有機金属塩系難燃剤は、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
前記有機金属塩系難燃剤の配合量は、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて無機充填材を配合することができる。前記無機充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性樹脂組成物の全質量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、その他、必要に応じて、短繊維、ステープルファイバー、より糸、布帛またはマットの通常の形態の、強化繊維、例えば、ガラス、石英、炭素、向き繊維及び合成繊維(Keflar、Nomex)、天然繊維、例えば亜麻、黄麻、サイザル麻、ヘンプ麻:シランカップリング剤:離型剤:顔料:染料:乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱することにより硬化し容易に硬化物とすることができる。具体的には、上記した各成分を均一に混合することにより得られ、かかる硬化性樹脂組成物を約100℃以上の温度、好ましくは140〜220℃の温度で加熱することにより容易に硬化物とすることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、フェノールホルムアルデヒド樹脂またはエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂に関して公知のプロセス、たとえばプリプレグの熱プレス、SMC(シート成形化合物):或いはモールド成形:注型:フィラメントワインディング、注入技術或いは真空含浸(RTM、VaRTM)法を用いて加工することが好適であり、硬化物における耐熱性、耐熱分解性、難燃性及び誘電特性に優れることから、硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、半導体封止材料、導電ペースト、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤、FRP材料等の各種材料として好適に用いることが出来る。
半導体封止材料へ応用する場合には、前記硬化性樹脂組成物に無機充填材等の配合剤を必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合することにより、半導体封止材料を製造することができる。その際、無機充填材としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ,アルミナ,窒化ケイ素などの高充填化、または溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。無機充填材の含有量は、硬化性樹脂組成物100質量部当たり、30〜95質量部の範囲であることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上や、線膨張係数の低下を図るためには、70〜95質量部であることがより好ましく、80〜95質量部であることがさらに好ましい。
回路基板用途へ応用する場合には、本発明の硬化性樹脂組成物に有機溶剤を加えてなるワニスを板状に賦形したものを銅箔と積層し、加熱加圧成型することによって回路基板を製造することが出来る。また、硬質プリント配線基板用途へ応用する場合には、硬化性樹脂組成物に有機溶剤を加えてなるワニスを補強基材に含浸し、半硬化させることによってプリプレグを得、これに銅箔を重ねて加熱圧着させる方法により製造することが出来る。
本発明の硬化性樹脂組成物をワニス化する際に用いる有機溶剤は、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶剤を好ましく用いることが出来、硬化性樹脂組成物の不揮発分が40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。また、プリント配線基板用途に用いる補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって硬化物であるプリプレグを得る。この際、用いる硬化性樹脂組成物と補強基材の質量割合は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とする回路基板を得ることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物からフレキシブル配線基板を製造するには、有機溶剤を配合した硬化性樹脂組成物をリバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて電気絶縁性フィルムに塗布する。次いで、加熱機を用いて60〜170℃で1〜15分間加熱し、溶媒を揮発させて硬化性樹脂組成物をB−ステージ化する。次いで、加熱ロール等を用いて、樹脂層に金属箔を熱圧着する。その際の圧着圧力は2〜200N/cm2、圧着温度は40〜200℃が好ましい。それで十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全硬化が必要な場合は、さらに100〜200℃で1〜24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の樹脂層の厚みは、5〜100μmの範囲が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップフィルムを製造するには、例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板等の基板上にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基板を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で硬化性樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物に有機溶剤を加えて希釈したものを支持フィルム上に塗布し、樹層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
この場合に用いる有機溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられ、硬化性樹脂組成物の不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物からなる接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の硬化性樹脂組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、このワニス状の硬化性樹脂組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物の層(γ)を形成させることにより製造することができる。
形成される層(γ)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、前記層(γ)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
上記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(γ)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(γ)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を硬化性樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、レジストインキとして使用することも可能である。この場合、硬化性樹脂組成物にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤としてカチオン重合触媒を配合し、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。前記ポリアリーレンエーテル樹脂はそれ単独でも硬化反応を生じ得ることから、本発明の硬化性樹脂組成物においては樹脂成分として前記ポリアリーレンエーエル樹脂を単独で用いても良いし、その他の樹脂と併用しても良い。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、GPC、13CNMR、MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
<13C−NMRの測定条件>
13C−NMRの測定条件は以下の通りに行った。
装置:日本電子株式会社製 AL−400
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)、
溶媒:ジメチルスルホキシド、
パルス角度:45°パルス、
試料濃度 :30wt%、
積算回数 :10000回
<MSの測定装置>
MSの測定装置は以下の装置を使用した。
装置: 日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置 AX505H(FD505H)
<IRの測定装置>
IRの測定装置は以下の装置を使用した。
装置: 日本分光(株)製「FT/IR−550」
実施例1 ベンゾオキサジン樹脂(A−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フェノール282g(3モル)、パラトルエンスルホン酸3gを仕込み、撹拌しながら室温から80℃まで昇温した。80℃に到達した後、パラベンゾキノン162g(1.5モル)を1時間要して添加し、その後更に130℃まで昇温し1時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下乾燥し、フェノール樹脂(A)250gを得た。得られたフェノール樹脂のGPCチャートを図1に、
13C−NMRスペクトルを図2に、MSスペクトルを図3に示す。フェノール樹脂(A)の水酸基当量は88g/eqであり、軟化点は95℃であった。MSスペクトルから2核体化合物(a−1)に相当する202のピーク、3核体化合物(b−1)に相当する294のピーク、及び4核体化合物(c−1)に相当する386のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール樹脂中の2核体化合物(a−1)相当成分の含有量は37.3%、3核体化合物(b−1)相当成分の含有量は30.7%、4核体化合物(c−1)相当成分の含有量は10.3%であった。
次いで、滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、アニリン93.1g(1.0モル)とフェノール樹脂(A)88.0g(水酸基1.0当量)を仕込み、トルエン 400gに溶解させた後、42%ホルムアルデヒド水溶液143g(2.0モル)を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応させた。反応後、分液ロートに移し、水層を除去した。その後有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、ベンゾオキサジン樹脂(A−1)148gを得た。IRスペクトルはオキサジン環に由来する948cm-1の吸収を示し、またマススペクトルが553、762などのピークを示したことから、目的のベンゾオキサジン樹脂(A−1)が得られていることを確認した。
実施例2 ベンゾオキサジン樹脂(B−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、オルソクレゾール649g(6.0モル)、パラベンゾキノン162g(1.5モル)、パラトルエンスルホン酸8gを仕込み、撹拌しながら室温から120℃まで昇温した。120℃に到達後、2時間攪拌した。反応終了後、析出した結晶物を渡別し、水200gで2回水洗した。その後加熱減圧条件下で乾燥してフェノール樹脂(B)117g得た。得られたフェノール樹脂(B)のGPCチャートを図4に、13CNMRスペクトルを図5、およびMSスペクトルを図6に示す。フェノール樹脂(B)の水酸基当量は81g/eqであり、MSスペクトルから2核体化合物(a−2)に相当する216のピーク、3核体化合物(b−2)に相当する322のピーク、4核体化合物(c−2)に相当する428のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール樹脂中の2核体化合物(a−2)相当成分の含有量は4.6%、3核体化合物(b−2)相当成分の含有量は88.0%、4核体化合物(c−2)相当成分の含有量は5.1%であった。
次いで、滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、アニリン93.1g(1.0モル)とフェノール樹脂(B)81.0g(水酸基1.0当量)を仕込み、トルエン 400gに溶解させた後、42%ホルムアルデヒド水溶液143g(2.0モル)を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応させた。反応後、分液ロートに移し、水層を除去した。その後有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、ベンゾオキサジン樹脂(B−1)を143gを得た。IRスペクトルはオキサジン環に由来する948cm-1の吸収を示し、またマススペクトルが567、790などのピークを示したことから、目的のベンゾオキサジン樹脂(B−1)が得られていることを確認した。
実施例3 ベンゾオキサジン樹脂(C−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、オルソクレゾール649g(6.0モル)、パラトルエンスルホン酸3gを仕込み、撹拌しながら室温から80℃まで昇温した。80℃に到達した後、パラベンゾキノン162g(1.5モル)を1時間要して添加し、その後更に130℃まで昇温し1時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下乾燥し、フェノール化合物(C)260g得た。得られたフェノール化合物(C)のGPCチャートを図7に示す。フェノール化合物(C)の水酸基当量は97g/eqであった。GPCチャートから算出されるフェノール樹脂中の2核体化合物(α1)相当成分の含有量は25.8%、3核体化合物(α2)相当成分の含有量は51.7%、4核体化合物(α3)相当成分の含有量は10.0%であった。
次いで、滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、アニリン93.1g(1.0モル)とフェノール樹脂(C)97.0g(水酸基1.0当量)を仕込み、トルエン 400gに溶解させた後、42%ホルムアルデヒド水溶液143g(2.0モル)を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応させた。反応後、分液ロートに移し、水層を除去した。その後有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、ベンゾオキサジン樹脂(C−1)165gを得た。IRスペクトルはオキサジン環に由来する948cm-1の吸収を示し、またマススペクトルが567、790などのピークを示したことから、目的のベンゾオキサジン樹脂(C−1)が得られていることを確認した。
実施例4 ベンゾオキサジン樹脂(D−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、レゾルシン165g(1.5モル)、パラベンゾキノン162g(1.5モル)を仕込み、撹拌しながら室温から120℃まで昇温した。120℃に到達後、2時間攪拌した。反応終了後、180℃迄加熱し減圧条件下で乾燥してフェノール樹脂(D)280g得た。得られたフェノール樹脂(D)のGPCチャートを図8に、13CNMRスペクトルを図9に、MSスペクトルを図10に示す。フェノール樹脂(D)の水酸基当量は60g/eqであり、軟化点は98℃であった。MSスペクトルから2核体化合物(α1)に相当する202、218のピーク、3核体化合物(α2)に相当する310、326のピーク、4核体化合物(α3)に相当する418、434のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール樹脂中の2核体化合物(α1)相当成分の含有量は20.0%、3核体化合物(α2)相当成分の含有量は20.8%、4核体化合物(α3)相当成分の含有量は13.0%であった。
次いで、滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、アニリン93.1g(1.0モル)とフェノール樹脂(D)60.0g(水酸基1.0当量)を仕込み、トルエン 400gに溶解させた後、42%ホルムアルデヒド水溶液143g(2.0モル)を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応させた。反応後、分液ロートに移し、水層を除去した。その後有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、ベンゾオキサジン樹脂(D−1)134gを得た。IRスペクトルはオキサジン環に由来する948cm-1の吸収を示し、またマススペクトルが686、1028などのピークを示したことから、目的のベンゾオキサジン樹脂(D−1)が得られていることを確認した。
実施例5 ベンゾオキサジン樹脂(E−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン240g(1.5モル)、パラベンゾキノン162g(1.5モル)、イソプロピルアルコール268g、シュウ酸8gを仕込み、撹拌しながら室温から120℃まで昇温した。120℃に到達した後、2時間攪拌して反応させた。反応終了後、180℃まで加熱して減圧下乾燥し、フェノール樹脂(E)359gを得た。得られたフェノール樹脂のGPCチャートを図10に、13CNMRスペクトルを図11、MSスペクトルを図12に示す。フェノール樹脂(E)の水酸基当量は68g/eqであり、軟化点は126℃であった。MSスペクトルから2核体化合物(a−4)に相当する268のピーク、3核体化合物(b−4)に相当する426のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール樹脂中の2核体化合物(a−4)相当成分の含有量は43.6%、3核体化合物(b−4)相当成分の含有量は30.7%であった。
次いで、滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、アニリン93.1g(1.0モル)とフェノール樹脂(E)68.0g(水酸基1.0当量)を仕込み、トルエン 400gに溶解させた後、42%ホルムアルデヒド水溶液143g(2.0モル)を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応させた。反応後、分液ロートに移し、水層を除去した。その後有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、ベンゾオキサジン樹脂(E−1)137gを得た。IRスペクトルはオキサジン環に由来する948cm-1の吸収を示し、またマススペクトルが736、1129などのピークを示したことから、目的のベンゾオキサジン樹脂(E−1)が得られていることを確認した。
実施例6 ベンゾオキサジン樹脂(F−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン160g(1.0モル)、ナフトキノン158g(1.0モル)、メチルイソブチルケトン318gを仕込み、撹拌しながら室温から150℃まで昇温した。150℃に到達した後、3時間攪拌して反応させた。反応終了後、180℃まで加熱して減圧下乾燥し、フェノール樹脂(F)300gを得た。得られたフェノール樹脂のGPCチャートを図14に、MSスペクトルを図15に示す。得られたフェノール樹脂(F)の水酸基当量は101g/eqであり、軟化点は130℃であった。MSスペクトルから下記構造式(a−5)で表される化合物に相当する318のピーク、下記構造式(d)で表される化合物に相当する300のピークが検出された。GPCチャートから算出されるフェノール樹脂中の2核体化合物(α1)相当成分の含有量は49.7%、下記構造式(d)で表されるジナフトフラン化合物の含有量は6.0%であった。
次いで、滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、アニリン93.1g(1.0モル)とフェノール樹脂(F)101.0g(水酸基1.0当量)を仕込み、トルエン 400gに溶解させた後、42%ホルムアルデヒド水溶液143g(2.0モル)を加えて、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応させた。反応後、分液ロートに移し、水層を除去した。その後有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、ベンゾオキサジン樹脂(F−1)129gを得た。IRスペクトルはオキサジン環に由来する948cm-1の吸収を示し、またマススペクトルが535、670などのピークを示したことから、目的のベンゾオキサジン樹脂(F−1)が得られていることを確認した。
実施例7〜12 組成物及び成形物の製造
実施例1〜6で得られたベンゾオキサジン樹脂(A−1)、(B−1)、(C−1)、(D−1)、(E−1)、(F−1)と、フェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製 「TD−2131」)と、溶融シリカ(電気化学株式会社製 「FB3SDC」)を表1に示したとおりに混合し、プレスで200℃の温度で10分間成型した後、200℃の温度で5時間後硬化して厚さ0.8mmの硬化物を得た。得られた硬化物の物性結果を表1に示し、その測定方法を下記に示す。
比較例1 組成物及び成形物の作成
ベンゾオキサジン化合物(ハンツマン製、ビスフェノールFとホルマリンとアニリンの反応生成物(表中「MT35700」と表記する))と、フェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製 「TD−2131」)と、溶融シリカ(電気化学株式会社製 「FB3SDC」)、を表1に示したとおりに混合して、プレスで200℃の温度で10分間成型した後、200℃の温度で5時間後硬化して厚さ0.8mmの硬化物を得た。得られた硬化物の物性評価結果を表1に示し、その測定方法を下記に示す。
<ガラス転移温度>
厚さ0.8mmの硬化物を幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、これを試験片1とした。この試験片1を粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」、レクタンギュラーテンション法:周波数1HZ、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として測定した。
<耐熱分解性の評価>
厚さ0.8mmの硬化物を幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、試験片を250℃で72時間保持した後、初期重量と比較した際の重量減少率を測定した。
<誘電率および正接の測定>
JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片1の1GHZでの誘電率および正接を測定した。
<難燃性>
厚さ0.8mmの硬化物を幅12.7mm、長さ127mmのサイズに切り出し、得られた試験片を用いてUL−94試験法に準拠し、試験片5本を用いて、燃焼試験を行い、その難燃性を測定した。