JP2014060084A - 全固体リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】正極層、及び負極層、並びに正極層と負極層の間に配置される固体電解質層を有する全固体リチウムイオン二次電池であって、前記正極層に含まれる電極活物質は、オリビン構造を有するリン酸塩であり、前記固体電解質層に含まれる固体電解質結晶は、ポリリン酸を含み、酸化物基準のモル%でLi2Oが16mol%を超え、25mol%以下であることを特徴とする全固体リチウムイオン二次電池。
【選択図】図2
Description
全固体リチウムイオン二次電池の製造において、製造コストを低減するため、正極層、固体電解質、及び負極層を一括で焼結してこれらの層を結合することが求められている。正極層、固体電解質、及び負極層を一括で焼結しようとする場合、上記の問題を解決することは、特に困難である。なぜなら、正極活物質−固体電解質の界面と、負極活物質−固体電解質の界面という、2種の界面の界面反応による不活性物質の生成を、1種の焼結条件で抑制しなければならないからである。例えば、負極活物質−固体電解質の界面では不活性物質の生成が抑制される焼結条件であったとしても、その焼結条件が、正極活物質−固体電解質の界面の焼結には適さない事が多い。
そのためには、一括焼結をした場合であっても、電極活物質と固体電解質との界面の界面反応による不活性物質の生成が少ないことが必要である。
本発明は、具体的には以下の構成である。
正極層、及び負極層、並びに正極層と負極層の間に配置される固体電解質層を有する全固体リチウムイオン二次電池であって、
前記正極層に含まれる電極活物質は、オリビン構造を有するリン酸塩であり、
前記固体電解質層に含まれる固体電解質結晶は、ポリリン酸を含み、酸化物基準のモル%でLi2Oが16mol%を超え、25mol%以下であることを特徴とする全固体リチウムイオン二次電池。
(構成2)
前記固体電解質結晶がナシコン型のLi1+xMyR2−ySizP3−zO12+aである構成1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
但し、MはAl、La、Sr、Mg、Y、Ba、Zn、Sc及びCaから選ばれる1種以上であり、RはGe、Ti、及びZrから選ばれる1種以上であり、xは0.1以上、1.2以下であり、yは0.1以上、1.1以下であり、zは0.1以上、1.0以下であり、aは―1.0以上、1.0以下である。
(構成3)
前記固体電解質結晶がナシコン型のLi1+xMyZr2−ySizP3−zO12+aである構成1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
但し、MはAl、La、Sr、Mg、Y、Ba、Zn、Sc及びCaから選ばれる1種以上であり、xは0.1以上、1.2以下であり、yは0.1以上、1.1以下であり、zは0.1以上、1.0以下であり、aは―1.0以上、1.0以下である。
(構成4)
前記固体電解質結晶がナシコン型のLi1+xMyR2−ySizP3−zO12+aである構成1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
但し、MはMg、Ca、及びSrから選ばれる1種以上であり、RはGe、Ti、及びZrから選ばれる1種以上であり、xは0.1以上、1.2以下であり、yは0.1以上、0.55以下であり、zは0.1以上、1.0以下であり、aは―1.0以上、1.0以下である。
(構成5)
前記固体電解質結晶がナシコン型のLi1+xMyZr2−ySizP3−zO12+aである構成1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
但し、MはMg、Ca、及びSrから選ばれる1種以上であり、xは0.1以上、1.2以下であり、yは0.1以上、0.55以下であり、zは0.1以上、1.0以下であり、aは―1.0以上、1.0以下である。
(構成6)
前記正極層に含まれる電極活物質、前記負極層に含まれる電極活物質、及び前記固体電解質層に含まれる固体電解質結晶が互いに異なる結晶構造である、構成1から5のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
(構成7)
前記正極層に含まれる電極活物質が、LinM’PO4である構成1から6いずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
但し、M’はFe、Co、Mn、Ni、Al、Mg、Ca、Ti、及びZrから選ばれる一種以上であり、nは0.7以上1.5以下である。
(構成8)
前記負極層に含まれる電極活物質がLi4Ti5O12、アナターゼ型のTiO2、又はナシコン型のLi1+xTi2−x(PO4)3である、構成1から7のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
(構成9)
前記正極層、前記負極層、及び前記固体電解質層の少なくともいずれかに、リチウムイオン伝導性のガラスを2〜15重量%含む、構成1から8のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
(構成10)
前記リチウムイオン伝導性のガラスが、Li2O−Al2O3−P2O5系のガラスである、構成1から9のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
(構成11)
前記正極層、及び前記負極層のどちらか一方、又は両方が、アセチレンブラックを含む、構成1から10のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
本発明は、固体電解質層に含まれる固体電解質結晶を、ポリリン酸を含むものとして、かつ、当該結晶について、酸化物基準のモル%でLi2Oが16mol%以上、25mol%以下とすることにより、正極活物質−固体電解質の界面での不活性物質の生成を抑制することが可能となる。より詳しくは、より広い焼結条件において、正極活物質−固体電解質の界面での不活性物質の生成が生じにくくなる。そのため、正極活物質−固体電解質の界面、及び負極活物質−固体電解質の界面での不活物質の生成が生じにくくなる焼結条件を容易に選択できる。このような焼結条件を用いて製造したリチウムイオン二次電池は、内部抵抗が小さく、理論容量に近い放電容量を有し、かつ高い電圧を有する。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、正極層及び負極層と、固体電解質層を有している。固体電解質層は、正極層と負極層の間に配置されている。
正極層、固体電解質層、及び負極層からなる積層体が、さらに直列または並列に接続され、複数積層されていても良い。この場合、積層体間には、必要に応じ絶縁層や固体電解質層が配置されていても良い。
正極層及び負極層は、その一方の面に集電体が配置されていても良い。
本発明の全固体リチウムイオン電池は、パッケージ等を除いた、本来の電池機能を構成する部分については、実質的に有機物を含まず、無機固体で構成される。
本発明の固体電解質層は、固体電解質結晶を含む。固体電解質層は、固体電解質結晶のみからなる場合もあるが、リチウムイオン伝導性のガラスを含んでも良い。また、固体電解質結晶以外に、少量の不純物が含まれる場合もある。
本発明の固体電解質結晶は、リチウムイオン伝導性の結晶の、単結晶又は多結晶をいい、その結晶構造にポリリン酸を含む。結晶構造にポリリン酸を含む固体電解質は、高い化学的安定性と、高いリチウムイオン伝導性を得ることができる。
上述の通り、固体電解質結晶のLi2Oの含有割合を、酸化物基準のモル%で、16mol%を超え、かつ25mol%以下とすることにより、焼結時の電極活物質との界面反応を抑制することができる。この効果を得るためには、Li2Oの含有割合の下限は、18mol%であることがより好ましく、20mol%であることが最も好ましい。同様に、Li2Oの含有割合の上限は、24mol%であることがより好ましく、23mol%であることが最も好ましい。
上記式において、x、y及びzの値は、正極活物質の分解抑制のため、すなわち不活性物質生成抑制のため、本発明において好ましく用いられる正極活物質のLi2O濃度と近似させるという観点からは、0.3≦x、x≦1.1、0.2≦y、y≦1.0、0.15≦z、又はz≦0.3であることがより好ましく、0.4≦x、x≦0.7、0.3≦y、y≦0.6、0.2≦z、又はz≦0.25であることが最も好ましい。
MがMg、Ca、及びSrから選ばれる1種以上であるときは、特にyの値の上限値は、上記の値の2分の1であることが好ましい。
aの値は、上記式においてx、y、zの値が定められた時に、結晶全体が電気的に0となる値をとる。但し、aの値が−1.0以上1.0以下の範囲から外れるものは、好ましくない。より好ましくは−0.3≦a≦0.3、最も好ましくは−0.1≦a≦0.1である。
さらに、上記式において、高いリチウムイオン伝導性を有する観点から、Rは、Ge、Ti、及びZrから選ばれる1種以上であることがより好ましく、Zrであることが最も好ましい。また、正極活物質の分解抑制のため、高いLi2O含有量とした場合でも、ナシコン構造を保持する観点から、Mは、Mg、Ca、及びSrから選ばれる1種以上であることが好ましく、Mgであることが最も好ましい。
本発明の正極層及び負極層は、電極活物質を含む。正極層及び負極層の一方または両方は、その他、導電助剤、リチウムイオン伝導性固体電解質結晶、リチウムイオン伝導性のガラス等を含むことができる。これらの物質のほか、少量の不純物が含まれる場合もある。正極層、負極層共に、硫黄を含まないことが好ましい。
本明細書では、正極層に含まれる電極活物質を正極活物質、負極層に含まれる電極活物質を負極活物質と呼ぶことがある。
本発明は、正極活物質を、オリビン構造を有するリン酸塩とすることにより、大きな電圧を得る事ができ、固体電解質結晶との界面反応による不活性物質の生成を抑制する。特に固体電解質結晶がポリリン酸を含むものである場合、その効果は大きい。
ここで、オリビン構造とは、結晶構造の一種であり、斜方晶、空間群はPnmaで表され、酸素が六方最密充填構造となっており、すべての酸素が共有結合によりリンと結合している構造をいう。構成元素にFe、P、O、及びLiを含む場合、JCPDSカード83−2092にて示されるものである。
オリビン構造を有するリン酸塩としては、Li2CoPO4F、Li1+xFeSixP1−xO4、等が例示されるが、LinM’PO4(M’はFe、Co、Mn、Ni、Al、Mg、Ca、Ti、及びZrから選ばれる一種以上。nは0.7≦n≦1.5)が好ましい。特に、上記式において、M’がFe、Ni、Co及びMnの中から選ばれる1種以上であると、固体電解質結晶との界面反応による不活性物質の生成を抑制する効果が大きく、高い放電容量が維持できるのでより好ましい。最も好ましい正極活物質は、上記式において、M’がFeのものである。
負極活物質は、NASICON型、オリビン型、スピネル型の結晶を含む酸化物、ルチル型酸化物、アナターゼ型酸化物、若しくは非晶質金属酸化物、又は金属合金等を使用することができる。特にLi4Ti5O12、アナターゼ型のTiO2、又はナシコン型のLi1+xAlxTi2−x(PO4)3(但し、0.1≦x≦1)は、固体電解質結晶との界面反応による不活性物質の生成が少なく、かつ、負極電位を低くできることで、電池の電圧を高くできる点で好ましい。
正極層又は負極層に含まれる導電助剤は、炭素、並びにNi、Fe、Mn、Co、Mo、Cr、Ag及びCuの少なくとも1種以上からなる金属及びこれらの合金を用いることができる。また、チタンやステンレス、アルミニウム等の金属や、白金、銀、金、ロジウム等の貴金属を用いてもよい。このような電子伝導性の高い材料を導電助剤として用いることで、電極層中に形成された狭い電子伝導経路を通じて伝導できる電流量が増大するため、全固体リチウムイオン二次電池の充放電特性を高めることができる。特に、導電助剤としてアセチレンブラックを用いることは、焼結時の広い温度域において、電極活物質、固体電解質結晶、及びリチウムイオン伝導性ガラスと反応して不活性物質を生成しないため、より好ましい。
本発明の正極層、負極層、及び固体電解質層の1種以上の層は、電極活物質や固体電解質結晶を緻密に結着するため、リチウムイオン伝導性のガラスを有することが好ましい。リチウムイオン伝導性のガラスが焼結時に軟化流動することにより、紛体の焼結と緻密化が促進する。この効果を得る為には、リチウムイオン伝導性ガラスの含有量は、各層の重量に対し、各々2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることが最も好ましい。他方、リチウムイオン伝導性のガラスの含有量が多すぎると、電極層においては放電容量が低下し、固体電解質層においてはリチウムイオン伝導性が低下することとなる。そのため、リチウムイオン伝導性ガラスの含有量は、各層の重量に対し、各々15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、8重量%以下であることが最も好ましい。リチウムイオン伝導性のガラスとは、リチウムイオン伝導率が1×10−9S/cm以上である非晶質をいう。
より好ましくは、リチウムイオン伝導性のガラスの組成は、酸化物基準のmol%で、
Li2O:35mol%〜60mol%
Al2O3:1mol%〜10mol%
P2O5:35mol%〜50mol%
SiO2:0mol%〜10mol%
WO3:0mol%〜10mol%
の各成分を含む。
また、リチウムイオン伝導性のガラスは、硫黄の含有は極力低減することが好ましい。特に、硫黄を含まないことで、全固体リチウムイオン二次電池からの硫化水素ガスの発生を防ぐことができる。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池に含まれるリチウムイオン伝導性の固体電解質結晶、リチウムイオン伝導性のガラス、電極活物質及び導電助剤の含有量、並びにこれらの組成及び結晶構造は、全固体リチウムイオン二次電池を構成する固体電解質層及び/又は電極層を削り出して、電界放出形透過電子顕微鏡(FE−TEM)に搭載されたエネルギー損出分析装置若しくはX線分析装置、又は電界放出形走査顕微鏡(FE−SEM)に搭載されたX線分析装置を用いて特定することが可能である。このような定量分析や点分析、電子線回折を用いることで、例えば固体電解質結晶や電極活物質の存在の有無や、これらの組成比、結晶構造がわかる。
ここで、X線分析装置を用いた場合、Li2Oは直接分析できないため、他の構成成分から電荷を算出することで、Li2O含有量を推定することが可能である。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法を述べる。
まず、固体電解質層、正極層、及び負極層を構成する物質を製造後、各層ごとに構成物質の粉末を混合する。
混合後の粉末から、固体電解質層、正極層、及び負極層の前駆体層を成形し、これを焼結することで、各層を焼結し、結合する。
前駆体層を形成する方法としては、必要に応じてバインダーを少量添加し、粉末を金型内で加圧する方法や、粉末を溶媒およびバインダーと共に混合してスラリー化し、スラリーを製膜後、乾燥する方法等を使用することができる。
各層の焼結は、正極層−固体電解質層、及び負極−固体電解質層を別々に焼結して積層体を作製し、最後に積層体を固体電解質層面どうしで焼結接合する方法、一方の電極層と固体電解質層を焼結接合し、その後他方の電極層を焼結接合する方法を用いても良いが、コストの面から各層を一括焼結することが好ましい。
固体電解質結晶粉末、リチウムイオン伝導性のガラス粉末、電極活物質粉末、導電助剤等、固体電解質層、正極層及び負極層を構成する物質の粉末は、平均粒子径(D50)で20μm以下に粉砕することが好ましい。これにより、各層が焼結後に緻密となりやすい。従って、これらの平均粒子径(D50)は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が最も好ましい。一方で、これらの平均粒子径(D50)の下限は、粉砕に要する時間を低減できる観点から、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上が最も好ましい。なお、本明細書における「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積基準の平均径をいう。
混合工程は、固体電解質層、正極層及び負極層を構成する物質の粉末を各層ごとに混合する工程である。混合は、ボールミル、ハイブリッドミキサー、ビーズミル等を使用してもよい。スラリー化する場合、溶剤、分散剤、及びバインダー等と共に混合しても良い。
前駆体層を成形する方法として粉末を金型内で加圧する場合、例えばステンレスで作製した胴型内に粉末を詰め、これを上方から加圧すれば良い。加圧の圧力は5MPa〜200MPaが好ましい。
前駆体層を成形する方法として粉末をスラリー化し、製膜する方法としては、ドクターブレード法、シルクスクリーン法等を使用することができる。
製膜は、離型剤を塗布したフィルム上に行っても良いし、積層する相手方の層上に直接製膜しても良い。
焼結工程は、加熱によって各層の前駆体を構成する粉末を緻密化させ、各層間を接続する工程である。焼結方法としては、積層体をセラミックス製のセッターで挟み、加熱炉で焼結する方法、積層体をホットプレスする方法等を使用することができる。焼結工程において、加熱をすると共に積層体を加圧することは、より積層体の緻密化がより促進し、電池の内部抵抗が低減するために好ましい。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法は、正極層及び/又は負極層に集電体を形成する工程を有してもよい。これにより、集電体を通じて電気を取り出し易くなるため、全固体二次電池への充電や、全固体リチウムイオン二次電池からの放電を行い易くできる。集電体を積層する具体的態様としては、形成された正極層及び/又は負極層に薄膜状の金属層を積層又は接合してもよく、原料組成物に金属層や導電体の前駆体を積層した後で焼結してもよい。なお、電極層自体の電子伝導性が高ければ、集電体は形成しなくてもよい。
ポリリン酸を含む固体電解質結晶として、表1から表4にある組成の材料を作製した。原料として、LiPO3若しくはLi2CO3、TiO2、ZrO2、MgO、Al2O3若しくはAlPO4、Y2O3、SiO2、及びH3PO4を構成元素に応じて選択し、これらの原料を量論比で混合した。混合後の原料のうち、ZrO2を原料として使用したものは1350℃で1時間、TiO2を原料として使用したものは1200℃で1時間、白金板上で焼成した。焼成後、得られた試料をスタンプミルで100μm以下に粉砕し、φ2mmのYTZボール、エタノールを加え、遊星ボールミルで粉砕した。得られた粉末を乾燥し、平均粒子径1.0μm(D50)の固体電解質結晶の粉末を得た。
表1に記載の固体電解質結晶は、Li、Zr、Si、P、及びOを構成元素とするものをベースにし、Alを添加したものであって、ナシコン型の結晶構造を有するものである。
表2に記載の固体電解質結晶は、Li、Zr、Si、P、及びOを構成元素とするものをベースにし、Mgを添加したものであって、ナシコン型の結晶構造を有するものである。
表3に記載の固体電解質結晶は、Li、Ti、Si、P、及びOを構成元素とするものをベースにし、Alを添加したものであって、ナシコン型の結晶構造を有するものである。
表4に記載の固体電解質結晶は、Li、Zr、Si、P、及びOを構成元素とするものをベースにし、Alを添加したものであって、Liを過剰としたものであり、ナシコン型の結晶構造を有するものである。
なお、表中のLi2O濃度は、酸化物基準のモル%によるLi2O成分の含有割合を示す。
作製した固体電解質結晶の粉末のリチウムイオン伝導度を相対比較するため、この粉末を内径がφ11の金型内に入れ、一軸プレス機で圧力200MPaでプレスした後、これを1100℃で焼結して、厚さ0.5mm、直径20mmの円形のペレットを作製し、金を蒸着して、インピーダンスアナライザー(solartron社製1260)によって、25℃におけるリチウムイオン伝導度を測定した。測定したリチウムイオン伝導度を表1から表4に記載する。
リチウムイオン伝導性ガラスとして、Li2O−Al2O3−P2O5系ガラスを作製した。酸化物換算組成で、50mol%のLi2Oと、6mol%のAl2O3と、44mol%のP2O5とを含有するように原料を秤量して均一に混合した後、1250℃で溶解した。溶解したガラスを鉄板上にキャストすることで、リチウムイオン伝導性ガラスを作製した。このガラスの25℃におけるリチウムイオン伝導度を測定したところ、1×10-7S/cmであった。このリチウムイオン伝導性ガラスを、スタンプミルと遊星ボールミルを用いて平均粒子径2μm(D50)まで粉砕することで、リチウムイオン伝導性ガラスの粉末を得た。
固体電解質結晶中のLi2Oの濃度の違いによる、固体電解質結晶と正極活物質との界面の反応の程度を評価するため、半電池を作製し、充放電試験を実施した。
固体電解質結晶は、表1から表4に記載の固体電解質結晶の粉末を使用した。正極活物質にはLiFePO4を使用した。LiFePO4はオリビン構造を有するリン酸塩の一種である。
それぞれの固体電解質結晶の粉末に、上記で作製したリチウムイオン伝導性ガラスの粉末を5重量%加え混合し、固体電解質層用の粉末とした。
また、それぞれの固体電解質結晶の粉末を70重量%、電極活物質としてLiFePO4を15重量%、アセチレンブラックを10重量%、リチウムイオン伝導性ガラスの粉末を5重量%を混合し、正極層用の粉末とした。内径φ11の金型に正極層用の粉末を0.1g入れ、外径が約φ11mmの押し型で押圧して面を整えた後、さらに固体電解質用の粉末0.03g入れて、同様に面を整え、600℃、2000kg/cm2でホットプレスによる焼結を行い、外径φ11mm、厚さ0.12mmの円板上の焼結体を43種作製した。(LZP(Al)−0とLZP(Mg)−0は同じものであるため。)固体電解質層用の粉末と正極層用の粉末中の固体電解質結晶は同じものである。
焼結後の固体電解質層の厚さは、100μmであった。正極層の厚さは、20μmであった。
焼結体の固体電解質層側に、LiTFSIと、エチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、及びアリルグリシジルエーテルの共重合物(日本ゼオン株式会社製ZEOSPAN8100)からなるポリマー電解質を貼り付け、さらにLi金属を貼り付け、焼結体の正極層側にアルミ箔からなる集電体を貼り付け、アルミラミネートにてパッケージングすることで外気を遮断して半電池とした。
作製した半電池を1/100Cで定電流充電し、4.5Vとなったところで充電を停止し、1/100Cで定電流放電をして、2.5Vとなるまでの放電容量を計測し、正極活物質の重量当たりの放電容量を算出した。得られた結果を表5から表8及び図1に記載する。
負極層、固体電解質層、正極層を一括で焼結することにより、全固体リチウムイオン二次電池作製し、これを評価した。
負極活物質としてLi4Ti5O12(チタン工業製)、正極活物質としてLiFePO4をそれぞれ使用した。固体電解質結晶は表9に記載のものを使用した。LiFePO4はオリビン構造を有するリン酸塩の一種である。
Li4Ti5O12の粉末(平均粒子径0.5μm(D50))を15重量%、固体電解質結晶の粉末(平均粒子径1μm(D50))を70重量%、アセチレンブラックの粉末(平均粒子径0.05μm(D50))を10重量%、上記で作製したリチウムイオン伝導性ガラスの粉末(平均粒子径2μm(D50))を5重量%を混合し、負極層用粉末とした。
固体電解質結晶の粉末(平均粒子径1μm(D50))にリチウムイオン伝導性ガラスの粉末(平均粒子径2μm(D50))を5重量%加え混合し、固体電解質層用粉末とした。
LiFePO4の粉末(平均粒子径0.5μm(D50))を15重量%、固体電解質結晶の粉末(平均粒子径1μm(D50))を70重量%、アセチレンブラックの粉末(平均粒子径0.035μm(D50))を10重量%、上記で作製したリチウムイオン伝導性ガラスの粉末(平均粒子径2μm(D50))を5重量%を混合し、正極層用粉末とした。
φ11mmの金型に負極層用粉末を0.03g入れ、外径が略φ11mmの押し型で押圧して面を整えた後、固体電解質電解質層用の粉末0.1g入れて同様に面を整え、さらに正極層用の粉末0.03gを入れて同様面を整えて、600℃、2000kg/cm2でホットプレスによる焼結を行って、8種の全固体リチウムイオン二次電池を得た。
固体電解質層の厚さは50μm〜100μm、正極層の厚さは10μm〜30μm、負極層の厚さは10μm〜30μmであった。
なお、固体電解質層、正極層、及び負極層に使用した固体電解質結晶は全て同じものである。
正極側にアルミ箔、負極側に銅箔の集電体を配置し、アルミラミネートパックで真空パックすることで集電体と電極を接触させた。
それぞれの電池の正極活物質の単位重量あたりの充電容量と放電容量を表9に示す。固体電解質結晶のLi2Oの濃度が本願発明の範囲である実施例の電池は、固体電解質結晶と電極活物質との界面における不活性物質の生成が抑制され、放電容量が著しく向上した。
また、比較例3と実施例3の電池の充放電曲線を図2に示す。Li2O濃度が高い実施例3の電池は、比較例3の電池に比べて充放電容量が高かった。
実施例1から4と同様に、全固体リチウムイオン二次電池を作製して評価した。固体電解質結晶と正極活物質の組成を変えた以外は、すべて、実施例1から4と同じ条件で作製した。
比較例5及び実施例5においては、固体電解質結晶として表10に記載のものを使用し、正極活物質としてLiFe0.1Mn0.9PO4を使用した。
比較例6及び実施例6においては、固体電解質結晶として表10に記載のものを使用し、正極活物質としてLiFe0.1Co0.8Ni0.1PO4を使用した。
放電容量は、LiFePO4を用いたものに比べて低く理論容量には満たないが、いずれの条件においてもLi2O濃度が低い固体電解質結晶を用いたものに比べて、Li2Oの濃度が本願発明の範囲である固体電解質結晶を用いたものは数倍の高い放電容量になった。高電位型のオリビン構造を持つ正極活物質においてもLi2O濃度の制御が有効であることが確認できた。
Claims (11)
- 正極層、及び負極層、並びに正極層と負極層の間に配置される固体電解質層を有する全固体リチウムイオン二次電池であって、
前記正極層に含まれる電極活物質は、オリビン構造を有するリン酸塩であり、
前記固体電解質層に含まれる固体電解質結晶は、ポリリン酸を含み、酸化物基準のモル%でLi2Oが16mol%を超え、25mol%以下であることを特徴とする全固体リチウムイオン二次電池。 - 前記固体電解質結晶がナシコン型のLi1+xMyR2−ySizP3−zO12+aである請求項1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
但し、MはAl、La、Sr、Mg、Y、Ba、Zn、Sc及びCaから選ばれる1種以上であり、RはGe、Ti、及びZrから選ばれる1種以上であり、xは0.1以上、1.2以下であり、yは0.1以上、1.1以下であり、zは0.1以上、1.0以下であり、aは―1.0以上、1.0以下である。 - 前記固体電解質結晶がナシコン型のLi1+xMyZr2−ySizP3−zO12+aである請求項1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
但し、MはAl、La、Sr、Mg、Y、Ba、Zn、Sc及びCaから選ばれる1種以上であり、xは0.1以上、1.2以下であり、yは0.1以上、1.1以下であり、zは0.1以上、1.0以下であり、aは―1.0以上、1.0以下である。 - 前記固体電解質結晶がナシコン型のLi1+xMyR2−ySizP3−zO12+aである請求項1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
但し、MはMg、Ca、及びSrから選ばれる1種以上であり、RはGe、Ti、及びZrから選ばれる1種以上であり、xは0.1以上、1.2以下であり、yは0.1以上、0.55以下であり、zは0.1以上、1.0以下であり、aは―1.0以上、1.0以下である。 - 前記固体電解質結晶がナシコン型のLi1+xMyZr2−ySizP3−zO12+aである請求項1に記載の全固体リチウムイオン二次電池。
但し、MはMg、Ca、及びSrから選ばれる1種以上であり、xは0.1以上、1.2以下であり、yは0.1以上、0.55以下であり、zは0.1以上、1.0以下であり、aは―1.0以上、1.0以下である。 - 前記正極層に含まれる電極活物質、前記負極層に含まれる電極活物質、及び前記固体電解質層に含まれる固体電解質結晶が互いに異なる結晶構造である、請求項1から5のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
- 前記正極層に含まれる電極活物質が、LinM’PO4である請求項1から6いずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
但し、M’はFe、Co、Mn、Ni、Al、Mg、Ca、Ti、及びZrから選ばれる一種以上であり、nは0.7以上1.5以下である。 - 前記負極層に含まれる電極活物質がLi4Ti5O12、アナターゼ型のTiO2、又はナシコン型のLi1+xTi2−x(PO4)3である、請求項1から7のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
- 前記正極層、前記負極層、及び前記固体電解質層の少なくともいずれかに、リチウムイオン伝導性のガラスを2〜15重量%含む、請求項1から8のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
- 前記リチウムイオン伝導性のガラスが、Li2O−Al2O3−P2O5系のガラスである、請求項1から9のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
- 前記正極層、及び前記負極層のどちらか一方、又は両方が、アセチレンブラックを含む、請求項1から10のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池。
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