JP2018190695A - 全固体電池 - Google Patents
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Abstract
Description
現在市販されているリチウムイオン二次電池の多くは、高いエネルギー密度を有するために有機溶媒などの液体の電解質(電解液)が一般的に使用されている。この電解液は、炭酸エステルや環状エステルなどの非プロトン性有機溶媒などにリチウム塩を溶解させて用いられている。
しかし、この方法では、全固体電池の負極の電位が高く、高いエネルギー密度を得られないことを発明者らにより確認されている。
すなわち、本発明によれば以下に示す全固体電池が提供される。
前記固体電解質層は、前記正極層及び前記負極層の間に介在され、前記正極層又は前記負極層の少なくとも一方と前記固体電解質層とが焼成により接合されており、
前記固体電解質層、前記正極層及び前記負極層はいずれもリチウムイオン伝導性の固体電解質を含み、
前記負極層は、以下、
(a)Li4Ti5O12、TiO2、又はLiTi2O4を含む負極活物質、
(b)ガラス電解質及び
(c)セラミックス電解質又はガラスセラミックス電解質、
を含む材料を焼結したものであることを特徴とする全固体電池。
前記固体電解質層は、前記正極層及び前記負極層の間に介在され、前記正極層又は前記負極層の少なくとも一方と前記固体電解質層とが焼成により接合されており、
前記固体電解質層、前記正極層及び前記負極層はいずれもリチウムイオン伝導性の固体電解質を含み、
前記負極層が、焼成後かつ完全放電状態において、
(a)TiO2、及び
(b)LixTi2O4(x=0超〜2)
を含むことを特徴とする全固体電池。
本発明の全固体電池における正極層は、正極活物質及び、リチウムイオン伝導性の固体電解質としてのガラス電解質、セラミックス電解質又はガラスセラミックス電解質の少なくとも1つ以上及び導電助剤を含む材料を焼結したものであることが好ましい。
本発明の全固体電池における固体電解質層は、リチウムイオン伝導性の固体電解質として、ガラス電解質、セラミックス電解質又はガラスセラミックス電解質の少なくとも1つ以上を含む材料を焼結したものであることが好ましい。
本発明で使用されるガラス電解質は、Li2O−Al2O3−P2O5を基本組成とする。
本発明のガラス電解質に含まれる各成分の含有量は、特に明記しない限りは酸化物基準の質量%で表す。ここで、「酸化物換算組成」は、ガラス電解質の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が溶融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス電解質中に含有される各成分を表記した組成である。
本発明のガラス電解質は、酸化物基準で、
10質量%〜30質量%のLi2O成分、
0質量%超〜12質量%のAl2O3成分、及び
40質量%〜90質量%のP2O5成分を
含み、かつY2O3成分、Sc2O3成分、ZrO2成分、CeO2成分及びSm2O3成分の中から選択される1種以上を含まない。
他方で、Li2O成分の含有量を30質量%以下にすることで、溶融したガラス原料を冷却した際のガラスの失透又は結晶化によるイオン伝導率の低下を抑制し、更に耐水性などの化学的耐久性を高められる。従って、Li2O成分の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは27質量%以下、更に好ましくは24質量%以下とする。
Li2O成分は、原料としてLiPO3、Li3PO4、Li2CO3、LiNO3、LiF等を用いることができる。
他方で、Al2O3成分の含有量を12質量%以下にすることで、ガラス成分の結晶化に起因したイオン伝導度の低下を抑えることができる。
従って、Al2O3成分の含有量は、好ましくは12質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下とする。
Al2O3成分は、原料としてAl(PO3)3、Al2O3、Al(NO3)3・9H2O、Al2(CO3)3等を用いることができる。
他方で、P2O5成分の含有量を90質量%以下にすることで、リチウムイオン伝導に必要なLi2Oの濃度を上げることができ、リチウムイオン伝導性を高めることができる。
従って、P2O5成分の含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下とする。
P2O5成分は、原料としてLi3PO4、LiPO3、Al(PO3)3、H3PO4等を用いることができる。
(負極層)
本発明の全固体電池における負極層は、負極活物質、リチウムイオン伝導性の固体電解質としてのガラス電解質及びセラミックス電解質又はガラスセラミックス電解質及び導電助剤を含む材料を焼結したものであることが好ましい。
上記負極活物質としては、金属酸化物、好ましくはTi酸化物、より好ましくは、Li4Ti5O12、TiO2又はLiTi2O4を用いてよい。TiO2は、特にアナターゼ型が好ましい。
負極層材料の全質量に対する上記負極活物質の含有量は、10質量%〜50質量%が好ましい。特にこの含有量を10質量%以上にすることで、全固体電池の電池容量を高めることができる。そのため、負極活物質の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは18質量%以上とする。一方で、この含有量を50質量%以下にすることで、電極層のイオン伝導性を確保し易くできる。そのため、負極活物質の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは28質量%以下とする。
他方で、上記負極層材料の全質量に対するガラス電解質の含有量を20質量%以下にすることで、セラミックス電解質に比べて低いリチウムイオン伝導度のガラス電解質が過剰に存在にすることに起因するリチウムイオン伝導度の低下を抑制できる。また、負極層中の電子伝導は導電助剤同士の接触又は接合によって生じる電子伝達によって成るので、電子伝導性を有しないガラス電解質により導電助剤同士の接触が阻害されると電子伝導の抵抗が高くなる。よって、電子伝導性を有しないガラス電解質が過剰に存在することに起因する電子伝導度の低下を抑制できる。従って、ガラス電解質の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下とする。
特に、上記含有量を30質量%以上にすることで、ガラス電解質によって形成されるリチウムイオンの移動経路が確保され易くなるため、電池の充放電特性や電池容量をより高め易くできる。従って、電極層におけるリチウム伝導性の固体電解質の合計含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは55質量%以上とする。
他方で、上記含有量を80質量%以下にすることで、負極層中に含まれる負極活物質の含有量が増加するため、全固体電池のエネルギー密度を高められる。よって、負極層における上記リチウム伝導性の固体電解質の含有量は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下とする。
本発明の全固体電池における正極層は、正極活物質及び、リチウムイオン伝導性の固体電解質としてのガラス電解質、セラミックス電解質又はガラスセラミックス電解質の少なくとも1つ以上及び導電助剤を含む材料を焼結したものであることが好ましい。
上記正極層の正極活物質の種類は限定されない。本発明の正極活物質としては、オリビン構造を有するLiMPO4であって、MはFe、Co、Mn、Niのうち1種以上で、Alなどにより一部を置換してもよい。また、Pの一部をSi又はBで置換してもよい。Oの一部をFで置換してもよい。また、スピネル構造を持つLiMn2O4、層状酸化物のLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi1/2Mn1/2O2、LiNiO2、LiCoO2などを用いてもよい。最も好適な正極活物質は、焼成時に固体電解質と反応し酸素が放出されると放電容量が低下するため、酸素がリンと強硬に結合しているオリビン構造である。次に好適な正極活物質は、順にスピネル構造を持つLiMn2O4、次いで上記層状酸化物である。
正極層材料の全質量に対する上記正極活物質の含有量は、10質量%〜50質量%が好ましい。特にこの含有量を10質量%以上にすることで、全固体電池の電池容量を高めることができる。そのため、正極活物質の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは18質量%以上とする。一方で、この含有量を50質量%以下にすることで、電極層のイオン伝導性を確保し易くできる。そのため、正極活物質の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下とする。
他方で、上記正極層材料の全質量に対するガラス電解質の含有量を20質量%以下にすることで、セラミックス電解質に比べて低いリチウムイオン伝導度のガラス電解質が過剰に存在にすることに起因するリチウムイオン伝導度の低下を抑制できる。また、負極層中の電子伝導は導電助剤同士の接触又は接合によって生じる電子伝達によって成るので、電子伝導性を有しないガラス電解質により導電助剤同士の接触が阻害されると電子伝導の抵抗が高くなる。よって、電子伝導性を有しないガラス電解質が過剰に存在することに起因する電子伝導度の低下を抑制できる。従って、ガラス電解質の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下とする。
特に、上記含有量を30質量%以上にすることで、ガラス電解質によって形成されるリチウムイオンの移動経路が確保され易くなるため、電池の充放電特性や電池容量をより高め易くできる。従って、電極層におけるリチウム伝導性の固体電解質の合計含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは55質量%以上とする。
他方で、上記含有量を80質量%以下にすることで、正極層中に含まれる正極活物質の含有量が増加するため、全固体電池のエネルギー密度を高められる。よって、正極層における上記リチウム伝導性の固体電解質の含有量は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下とする。
本発明の全固体電池における固体電解質層は、固体電解質としての、ガラス電解質、セラミックス電解質又はガラスセラミックス電解質の少なくとも1つ以上を含む材料を焼結したものであることが好ましい。
他方で、上記ガラス電解質の含有量が15質量%を超えると、セラミックス電解質同士をつないでいる上記ガラス電解質の膜厚が厚くなり、リチウムイオンがガラス電解質を通る距離が長くなる。セラミックス電解質よりも伝導度が低いガラス電解質の伝導度の影響が強くなり、結果としてイオン伝導度が低下する。そこで、上記ガラス電解質の含有量を15質量%以下にすることで上記のようなイオン伝導度の低下を防ぐことができる。従って、ガラス電解質の含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは9質量%以下とする。
他方で、上記リチウムイオン伝導性の固体電解質の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
上記負極層材料及び上記正極層材料には、導電助剤が含まれ得る。本発明に従う導電助剤としては、カーボンブラック、薄片状グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料を基本とし得るが、Ni、Co、Fe、Al、Pd、Cu、Agなどの金属又はその合金微粒子を混合させてもよい。
他方で、上記負極層材料又は上記正極層材料の全質量に対する導電助剤の含有量は、20質量%以下にすることで、上記負極層又は上記正極層中のイオン伝導抵抗の増加を抑制する。更に嵩高い炭素材料の使用の抑制により上記負極層及び上記正極層の密度を高め、体積エネルギー密度の低下を抑制できる。従って、導電助剤の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは13質量%以下とする。
正極層、負極層又は固体電解質層の少なくとも1つは、グリーンシートの形で調製し、積層して積層体を形成し、積層体を焼成することで接合されていることが好ましい。焼成することにより、安価に全固体電池を製作することが可能である。積層体を焼成する前に積層体を脱脂後に加圧焼成しても良い。この場合、界面形成がより良好になり、電池の内部抵抗を低下させるため、焼成だけの場合より好ましい。
以下、本発明の全固体電池を作製する方法について説明する。
表1に示される組成の正極スラリー、負極スラリー及び固体電解質スラリーを用いて実施例1〜3及び比較例1〜2の全固体電池を作製した。
本発明の全固体電池を以下のような手順で作製した。
ガラス電解質として、Li2O−Al2O3−P2O5系ガラスを作製した。酸化物基準組成で、20質量%のLi2O、4.5質量%のAl2O3及び75.5質量%のP2O5を含有するように原料を秤量して均一に混合した後、坩堝に投入して1250℃で溶解した。熔解したガラスを水中にキャストして、ガラス電解質を調製した。上記電解質を、スタンプミルを用いて106μmメッシュパスまで粉砕後、湿式の遊星ボールミルで平均粒径1μm以下まで粉砕することで、ガラス電解質を得た(以降このガラス電解質をLIGAl9と言及する)。
負極層及び固体電解質層に用いられるセラミックス電解質として、Li1.2Al0.15Zr1.85Si0.05P2.95O12を調製した。原料としてLiPO3、ZrO2、Al(PO3)3、及びSiO2の紛体と、H3PO4溶液とを量論比で混合した後、白金板上にて1400℃で1時間焼成した。焼成した原料の混合物をスタンプミルで106μm以下に粉砕し、湿式の遊星ボールミルで1μm以下まで粉砕することでセラミックス電解質を得た(以降このセラミックス電解質をLAZP12と言及する)。
負極スラリーは、表1に示す割合で、負極活物質としてのLi4Ti5O12(チタン工業株式会社製)に、ガラス電解質及びセラミックス電解質、並びに導電助剤として正極スラリーと同じアセチレンブラック、薄片状グラファイト及びカーボンナノチューブを添加し、更に正極スラリーと同じバインダー、可塑剤、分散剤、溶剤及び湿潤材を添加してボールミルで混合して調製した。
固体電解質スラリーは、表1に示す割合で、ガラス電解質及びセラミックス電解質に正極スラリーと同じバインダー、可塑剤、分散剤、溶剤及び湿潤材を添加してボールミルで混合して調製した。
表1に示す割合で調製された正極スラリー、負極スラリー及び固体電解質スラリーを、離型処理が施されたPETからなる基材に、それぞれ塗工機を用いてギャップ400μmで塗布するのと同時に乾燥温度110℃で乾燥させ、厚さ80μm、幅20cm、長さ5mのシートを作製し、そのシートを12cm角に裁断することにより、正極シート、負極シート及び電解質シートを作製した。
このうち、正極シート及び負極シートに、レーザ加工機(パナソニック電工SUNX社製、型番LPV−15U)を用いてレーザを照射し、直径1.2mmの円形の開口を有する開口部を形成した。図2(c)に示すように開口部を形成した正極シートをシートCとして7枚準備し、図2(a)に示すように開口部を形成した負極シートをシートAとして7枚準備した。このとき、正極シートと負極シートで、異なる位置に開口部を形成するようにした。また、図2(d)に示すように開口部を形成しない正極シートをシートDとして1枚準備し、図2(b)に示すように開口部を形成しない負極シートをシートBとして1枚準備した。
他方で、固体電解質シートにも、レーザ加工機を用いてレーザを照射し、正極シート及び負極シートのうち少なくとも一方の開口部の中心と重なる位置に、直径0.8mmの円形の開口を有する開口部を形成した。このとき、図2(g)に示すように正極シートの開口部の中心と重なる位置のみに開口部を形成した固体電解質シートをシートGとして1枚準備し、図2(f)に示すように負極シートの開口部の中心と重なる位置のみに開口部を形成した固体電解質シートをシートFとして1枚準備し、図2(e)に示すように両方の位置に開口部を形成した固体電解質シートをシートEとして13枚準備した。
シートA〜Gに形成する開口部の模式図を図2に示す。
このとき、離形処理後のシート外寸は15cm角になるようにし、各層を積層するごとに仮積層を行い、最後に本積層として2段階のプレスを行った。仮積層は40℃まで積層体を加熱し100kPaのプレス圧で行った。次いで、真空脱気を行い、シート中の気泡を取り除いた。その後に本積層を55℃まで加熱し、250kPaのプレス圧で行いシート積層体を得た。
実施例2では、実施例1で負極層の負極活物質として用いたLi4Ti5O12に代えて正方晶(アナターゼ型)であるTiO2を用いた。その他の作製条件は実施例1と同様にして、積層型全固体電池を作製した。
実施例3では、実施例1で負極層の負極活物質として用いたLi4Ti5O12に代えて立方晶(スピネル構造)であるLiTi2O4を用いた。その他の作製条件は実施例1と同様にして、積層型全固体電池を作製した。
比較例1では、実施例2で負極層の負極活物質として用いたLi4Ti5O12に代えて正方晶(アナターゼ型)であるTiO2を用いた。ガラス電解質の存在による効果を考察するために比較として負極層にガラス電解質を用いずに作製した。その他の作製条件は実施例1と同様にして、積層型全固体電池を作製した。
比較例2では、実施例1で負極層の負極活物質として用いたLi4Ti5O12に代えて正方晶(アナターゼ型)であるTiO2を用いた。ガラス電解質又はセラミックス電解質からLi含有成分が拡散しないように実施例1よりも100℃低い焼成温度(500℃)で焼成し、その他の作製条件は実施例1と同様にして、積層型全固体電池を作製した。
電池の特性を評価するため、充放電試験は実施例1〜3及び比較例1〜2で作製した積層型全固体電池の負極面に銅箔を正極面にアルミ箔を接合することで導通をとって行った。接合はカーボンペーパーにカーボンペーストを塗布して、銅箔及びアルミ箔とセルの間に挟み込み、露点−50℃のドライルーム内で焼成することで行った。焼成後にドライルーム内においてアルミラミネートフィルムでパッケージングすることで外気を遮断した。X線回折測定を実施する試料については、カーボンペーパー、カーボンペーストを用いずに真空パックでの圧着のみで正極とアルミ箔とを及び負極と銅箔とを電気的に接合した。
なお、エネルギー密度の計算は全固体電池の質量のみを用い、アルミ箔、銅箔、カーボンペーパー及びペースト、並びにアルミラミネートフィルムは含めなかった。
充電放電試験は室温にて50μAで3VまでCC充電後に50μAで放電することで行った。放電のカットオフは0.1Vとした。負極活物質にLi4Ti5O12を用いた実施例1で作製された全固体電池並びに負極活物質にアナターゼ型TiO2を用いた実施例2及び比較例1で作製された全固体電池についての放電特性測定結果を図3に示した。表2に示されるように、負極活物質にアナターゼ型のTiO2を用い、かつ負極層がガラス電解質を含まない比較例1で作製された全固体電池においては、平均動作電圧1194mV、放電容量85.7mAh/g、エネルギー密度16.6Wh/kgとなった。一方、実施例1で作製された全固体電池においては、平均動作電圧1480mV、放電容量140.3mAh/g、エネルギー密度33.7Wh/kgと最も高く、平均動作電圧、放電容量及びエネルギー密度の全ての点において比較例1で作製された全固体電池に比べて大きく改善した。特に、実施例1で作製された全固体電池の平均動作電圧が高いことは、実施例1で作製された全固体電池が、比較例1の全固体電池よりも高い電位で動作していることを示した。また、実施例2及び実施例3で作製された全固体電池は、共に比較例1及び比較例2で作製された全固体電池に比べて高い放電容量、平均動作電圧及びエネルギー密度を持つことが確認された。
表2 本発明の全固体電池の充放電試験結果及び焼成後の負極層におけるLiの存在
得られた実施例1〜実施例3及び比較例1〜2の積層型全固体電池について、X線回折測定により結晶相の存在を確認した。X線回折装置はX’PertPRO MPD(スペクトリス製)、ターゲットはCu、X線管電流は40mA、X線管電圧は45kVとした。走査範囲は2θ=10.0〜90.0°とした。検出機は半導体検出器を用い、走査時間は30分以上とした。
試料としては、直径9.5mm、厚さ0.5mmの試料を3枚作製してその負極側表面を測定した。充電するためにアルミラミネートパックを使用するが、ラミネートパックから解放後30分以内に評価した。短絡起因の放電による結晶構造変化を避けるために短絡挙動が見られない試料を充電後1時間以内に評価した。
充電深度0%(充電前)、充電深度20%及び充電深度50%それぞれのX線回折測定結果を図4〜図6に示した。2θ=25°付近のTiO2の最強線を●、LiTi2O4の最強線を図中に◆で示した。充電深度0%(充電前)、充電深度20%及び充電深度50%の三か所についてそれぞれ評価した。2θ=25°付近のTiO2(JCPDS 01−075−2547)及び2θ=18°付近立方晶のLiTi2O4(JCPDS 01−082−2318)の最強線の強度について整理した結果を図7に示した。図7から充電の進行に伴ってTiO2が減少し、LiTi2O4が増加しているのが確認できた。本発明の実施例1の全固体電池において、負極層材料の負極活物質として使用した立方晶のLi4Ti5O12が、焼成反応により、正方晶(アナターゼ型)のTiO2となり、上記TiO2が充電の進行に伴い立方晶のLiTi2O4になったことを確認した。
上記化学変化は、以下の化学反応式で表される。
Li4Ti5O12⇒3.5TiO2(Li微量含有)+0.5LiTi2O4+3.5Li(固体電解質に固溶)+O2
3.5TiO2(Li微量含有)+0.5LiTi2O4+0.5Li+⇒3TiO2+LiTi2O4
本発明の全固体電池の負極層中のLi濃度と結晶構造の関係についてより局所的に確認するため、実施例1〜3及び比較例1〜2の全固体電池を樹脂埋没し、クライオFIBにより薄片の試料調製を行い分析電子顕微鏡によるSTEM−ABF像とSTEM−HAADF像の解析、電子線解析と得られた部位における電子エネルギー損失分光法(EELS)によるLi濃度解析を行った。使用した分析電子顕微鏡はJEM−ARM200F(日本電子製)、EELS分光器はQuantumER(GATAN製)、測定条件は200kV、EELS点分析は取得時間0.02秒以上とした。
これにより得られた結果を表2に示す。実施例1で作製された全固体電池においては、アナターゼ型のTiO2中にLiの存在が確認された。実施例2及び実施例3で作製された全固体電池並びに比較例1及び実施例2で作製された全固体電池においても同様の解析を行った。本発明の実施例1〜3で作製された全固体電池においてはいずれもアナターゼ型のTiO2中にLiの存在が確認された。従って本発明の全固体電池の焼成後の負極層中には、TiO2及びLiTi2O4が存在することが確認された。
表2に示すように、実施例1〜3及び比較例1〜2の充放電試験による電気化学的評価、X線回折測定結果及び分析電子顕微鏡によるLi濃度解析の結果より、実施例1〜3で作製された全固体電池の負極層は、充電前、すなわち完全放電状態においてガラス電解質又はセラミックス電解質から由来するLiがプレドープしたアナターゼ型のTiO2及びLiTi2O4を含み、充電反応によりアナターゼ型のTiO2がLiTi2O4へ変化し、充電後には、上記アナターゼ型の立方晶のLiTi2O4となった。本発明の全固体電池は、立方晶のLiTi2O4の存在により、平均動作電圧、放電容量及びエネルギー密度が向上することが確認された。
Li金属を対極とした半電池を作製して全固体電池における負極活物質の充放電特性を評価した。上記半電池はLi金属、Liイオン伝導性ポリマー電解質層、固体電解質層及び負極層で構成される。Liイオン伝導性ポリマー電解質は、ZEOSPAN8100(商標)(日本ゼオン)及びLi−TFSI(化学式(CF3SO2)2NLi)を、ZEOSPAN:Li−TFSI=7.7:2.3になるように混合し、エタノールでスラリー状にした後、シート成形後乾燥して作製した。
固体電解質層及び負極層は粉末を圧粉して加圧成形後に焼結させることで作製した。
上記負極層及び上記固体電解質層を表3及び4に従って調製し、Φ5mmのYTZボール(ニッカトー製)100gを加え、泡とり錬太郎(シンキー製ARV−200)を用いて1000rpmで5分間混合及び3分間冷却を3回繰り返した後、YTZボールを分離し、溶媒を乾燥除去した。乾燥した粉末をラボミルサーで粉末状にしたものを以降の実験に使用した。
φ11mmの金型に混合した負極層の材料を30mg加えてスパチュラで整えて押し具で面を整えた後に、混合した固体電解質層の材料を60mg加えてスパチュラで面を整えた。次いで、2000kg/cm2の圧力でプレスした後、600℃で焼成し、焼結体を得た。負極層表面及び固体電解質層表面を800番の耐水研磨紙で軽く研磨した後、負極層面側に集電用の銅箔をカーボンペースト及びカーボンペーパーを用いて接着し、露点−50℃のドライルーム内において150℃で1時間焼成した。
銅箔に対してLi金属を圧着した後、Liイオン伝導性ポリマー電解質を保護層として、Liイオン伝導性ポリマー電解質と上記焼結体の固体電解質層とが接するように張り付けた。銅箔が外部端子に接続できるように外部に出した状態でアルミラミネートパッケージングで上記Li金属、上記焼結体及び上記リチウムイオン伝導性ポリマー電解質を真空パックすることにより外気と遮断した。
充放電試験はアスカ電子製充放電試験機(ACD−M01A)を用い、17μA、1.2VカットオフでCC充電後、3VカットオフでCC放電を行って評価した。
図8に半電池での評価結果を示す。焼成前の負極活物質としてLi4Ti5O12を用いた場合、TiO2を用いた場合に比べて、充電電位低下速度が速かった。また、放電においては、負極活物質としてLi4Ti5O12を用いた場合、TiO2を用いた場合に比べて、平均動作電圧において41mV低くなった。Li4Ti5O12を負極活物質として用いた場合、全固体電池の負極としてより良い動作をすることが確認できた。
Claims (6)
- 固体電解質層、正極層及び負極層、を含む全固体電池であって、
前記固体電解質層は、前記正極層及び前記負極層の間に介在され、前記正極層又は前記負極層の少なくとも一方と前記固体電解質層とが焼成により接合されており、
前記固体電解質層、前記正極層及び前記負極層はいずれもリチウムイオン伝導性の固体電解質を含み、
前記負極層は、以下、
(a)Li4Ti5O12、TiO2、又はLiTi2O4を含む負極活物質、
(b)ガラス電解質及び
(c)セラミックス電解質又はガラスセラミックス電解質、
を含む材料を焼結したものであることを特徴とする全固体電池。 - 前記ガラス電解質が、酸化物基準の質量%で10質量%〜30質量%のLi2O成分、0質量%超〜12質量%のAl2O3成分、及び40質量%〜90質量%のP2O5成分を含み、かつY2O3成分、Sc2O3成分、ZrO2成分、CeO2成分及びSm2O3成分の中から選択される1種以上を含まない請求項1記載の全固体電池。
- 前記負極層が、焼成後かつ完全放電状態において、TiO2及びLixTi2O4(x=0超〜2)を含む、請求項1又は2記載の全固体電池。
- 前記負極層が、充電後に、立方晶のLixTi2O4(x=0超〜2)を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の全固体電池。
- 固体電解質層、正極層及び負極層、を含む全固体電池であって、
前記固体電解質層は、前記正極層及び前記負極層の間に介在され、前記正極層又は前記負極層の少なくとも一方と前記固体電解質層とが焼成により接合されており、
前記固体電解質層、前記正極層及び前記負極層はいずれもリチウムイオン伝導性の固体電解質を含み、
前記負極層が、焼成後かつ完全放電状態において、
(a)TiO2、及び
(b)LixTi2O4(x=0超〜2)
を含むことを特徴とする全固体電池。 - 前記負極層が、充電後に、立方晶のLixTi2O4(x=0超〜2)を含む、請求項5記載の全固体電池。
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