JP2013179078A - 燃料電池スタックおよび燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料または酸化剤の供給性能に優れ、補機を用いることなく、もしくは少ない補機の消費電力で燃料または酸化剤を供給することができ、高出力密度が実現された3次元的に高集積された燃料電池スタック、およびこれを用いた燃料電池システムを提供する。
【解決手段】1以上の単位電池から構成される燃料電池層を2以上積層してなる、気体燃料を用いる燃料電池スタックであって、互いに隣接するいずれか2つの燃料電池層は、それぞれ1以上の隙間領域を有し、該互いに隣接するいずれか2つの燃料電池層のうち、一方の燃料電池層が有する隙間領域の少なくとも一部は、他方の燃料電池層を構成する単位電池と接しており、かつ、一方の燃料電池層が有する隙間領域と、他方の燃料電池層が有する隙間領域とは連通している燃料電池スタックおよびこれを用いた燃料電池システム。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池スタックおよび燃料電池スタックを用いた燃料電池システムに関する。
近年、情報化社会を支える携帯用電子機器等の電源として、単独の発電装置として高い発電効率と高いエネルギー密度の観点から、燃料電池に対する期待が高まっている。燃料電池は、アノード極において還元剤(たとえば水素、メタノール、エタノール、ヒドラジン、ホルマリン、ギ酸など)を、カソード極において酸化剤(たとえば、空気中の酸素)を、それぞれ電気化学的に酸化・還元し、この反応を通じて発電するものである。
しかしながら、燃料電池は体積あたりの出力密度が低いという課題を有しており、燃料電池の小型化、軽量化のために高出力密度の燃料電池が望まれてきた。
一般的に、溶融炭酸塩電池のような高温燃料電池を除き、固体高分子型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、直接メタノール型燃料電池、アルカリ型燃料電池等の従来の燃料電池は、還元剤を供給するためのアノード流路が形成されたアノードセパレータ、アノード触媒層から電子の収集を行なうアノード集電体、アノードガス拡散層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層、カソードガス拡散層、カソード触媒層へ電子を供与するカソード集電体および、酸化剤を供給するためのカソード流路が形成されたカソードセパレータをこの順で積層した平面構造からなる単位電池を構成単位とする。各単位電池は、低電圧で高電流を生み出す。
また、アノードセパレータおよびカソードセパレータに、還元剤および酸化剤を別々に、それぞれアノード触媒層、カソード触媒層に供給する役割だけでなく、これらセパレータの材料として電気的に導電性を有する材料を用いることにより、それぞれアノード集電体、カソード集電体としての役割を付与することも一般的である。
通常、燃料電池は、個々の単位電池の電圧が低いことから、複数の単位電池が積層された、高電圧を出力可能な燃料電池スタックとして構成される。この際、複数の単位電池は、単位電池のアノード極とこれに隣接する単位電池のカソード極とが電気的に接触するように積層される。
このような層状の燃料電池スタックは、各層の密接な電気的接触が保たれなければならない。それらの接触抵抗が高くなると、燃料電池の内部抵抗が高くなり、全体的な発電効率が低減してしまう。また、通常、燃料電池スタックは、還元剤および酸化剤のそれぞれをシールするためのシール材を各セパレータに備えており、シール性と導電性とを確保するためには、かなりの力で各層を押さえつけなければならなかった。そのため、各層を押さえつけるための押さえ板、ボルト、ナット等の締結部材が必要となり、燃料電池スタックが大きく、重くなり、出力密度が低下するという問題があった。
また、各セパレータには、各単位電池に還元剤、酸化剤を触媒層平面に全面均一に供給するための流路が必要であるため、セパレータの厚みが厚くなり、出力密度を低下させる要因となっていた。仮に、セパレータの流路を狭くし、セパレータの厚みを薄くすると、圧力損失が大きくなるため、還元剤、酸化剤を供給するためのポンプやファン等の補機を大きくせざるを得なくなり、また当該補機の消費電力も大きくなってしまう。その結果、燃料電池システム全体の出力密度が低下することとなる。
かかる問題を解決すべく、発電面積の密度、すなわち、燃料電池の単位容積中に含まれる発電面積を増加させることにより燃料電池の出力密度を向上させる試みがなされている。たとえば国際公開第03/067693号パンフレット(特許文献1)には、ガス拡散層、触媒層および電解質層の機能が単一の基板に統合された燃料電池層が開示されており、従来の層状平面構造の燃料電池や燃料電池スタックよりも少ない部品からなる燃料電池が提案されている。
より具体的には、特許文献1に記載の燃料電池層は、燃料を有する燃料プレナムと、酸化剤を有する酸化剤プレナムと、該燃料プレナムおよび該酸化剤プレナムと連通する多孔質基板とを用いて外部負荷に接続されている。当該燃料電池層は、該多孔質基板と、該多孔質基板を用いて形成された数多くの燃料電池とを有している。各燃料電池は、個別チャネルと、該チャネルが有する第1のチャネル壁に配置された第1の触媒層と、該チャネルが有する第2のチャネル壁に配置された第2の触媒層と、第1の触媒層から形成されたアノードおよび第2の触媒層から形成されたカソードと、カソードへの燃料移動およびアノードへの酸化剤移動を防ぐために、個別チャネルに配置された電解質とを有している。各燃料電池はまた、多孔質基板の一部に燃料が入り込まないようにするために、多孔質基板の少なくとも一部に配置された第1のコーティングと、多孔質基板の一部に酸化剤が入り込まないようにするために、前記多孔質基板の少なくとも一部に配置された第2のコーティングと、第1の側面に配置された第1のシーラント・バリアと、第2の側面に配置された第2のシーラント・バリアとを有している。さらに、当該燃料電池層は、各燃料電池間に配置された第3のシーラント・バリアと、第1の側面に配置された陽極接続と、第2の側面に配置された陰極接続とを有している。
複数の極めて細かなサイズの燃料電池が単一の基板の内部に作られると、より高い総合電力密度を達成することが可能となる。さらに、上記単一基板内の複数の燃料電池は、並列に並べることが可能であるため、高容量の燃料電池を構築することができる。単一基板内で燃料電池を組み合わせることにより、外的なシールやクランプを施す必要性が最小限になっている。上記燃料電池層には様々なバリエーションが考えられ、たとえば、燃料と酸化剤プレナムとをデッドエンド式にするもの、燃料電池層が容積を封じ込めるもの、多孔質基板が非平面コンフィギュレーションあるいは平面コンフィギュレーションであるもの、燃料電池層が円筒形の中に容積を封じ込めるものなどが挙げられている。
しかしながら、特許文献1に記載の燃料電池層においては、燃料電池層の表面と裏面で酸化剤と還元剤とを分別する必要がある。また、特許文献1に記載されているいずれの燃料電池スタック構造においても、燃料および酸化剤を燃料電池層に対し、面内方向に供給する必要がある。燃料電池層を3層以上、層厚方向に積層した場合、燃料および酸化剤を供給するために、燃料プレナムまたは酸化剤プレナムを備えなければならないため、燃料電池層の間に所定の間隔(隙間)が必要となる。また、燃料電池層の間に設けられる燃料プレナムまたは酸化剤プレナムをシールしなければならないため、シール材のシール性を確保するために締結部材が必要となる。さらに、燃料電池層の面内方向への燃料、酸化剤の供給および排出が制限されるため、自然拡散での燃料、酸化剤の供給が困難であり、特に酸化剤である空気の供給が困難であるため、ファンやポンプなどの動力を必要とする補機が必要となる。
すなわち、特許文献1に記載の燃料電池構造では、機器側の高い出力電力の要求に対し、燃料電池層を層厚方向に積層したスタック構造で対応すると、出力密度が低下するという課題があった。また、機器側の高い出力電力の要求に対し、燃料電池層を、該燃料電池層の面内方向に積層したスタック構造で対応すると、燃料電池層が面内方向に多くの面積を必要とするため、機器側への燃料電池の配置、機構設計に多くの制限を受けるという課題があった。
また、特開平5−41239号公報(特許文献2)には、燃料極、固体電解質、空気極及びセラミックセパレータからなるセルを複数個積層してなる少なくとも2つのスタックでマニホールドの一部または全部を構成した高温型燃料電池モジュールが開示されている。そして、かかる構成により、電極面積を有効に利用でき、また、簡単な構造でマニホールドを形成できることから、コスト低減をなし得ることが記載されている。
しかしながら、特許文献2に記載の燃料電池スタックでは、上記特許文献1の場合と同様に、燃料電池スタック内部に3次元的に燃料、または酸化剤を供給することができない。そのため、かなりの流速で燃料、または酸化剤を供給するためのポンプやファン等の補機が必要となる結果、燃料電池システムの大型化や補機の消費電力の増大を招くため、出力密度が低下するという課題を有している。
国際公開第03/067693号パンフレット 特開平5−41239号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、燃料または酸化剤の供給性能に優れ、補機を用いることなく、もしくは少ない補機の消費電力で燃料または酸化剤を供給することができ、高出力密度が実現された3次元的に高集積された燃料電池スタック、およびこれを用いた燃料電池システムを提供することである。
本発明は、1以上の単位電池から構成される燃料電池層を2以上積層してなる燃料電池スタックであって、互いに隣接するいずれか2つの燃料電池層は、それぞれ1以上の隙間領域を有し、該互いに隣接するいずれか2つの燃料電池層のうち、一方の燃料電池層が有する隙間領域の少なくとも一部は、他方の燃料電池層を構成する単位電池と接しており、かつ、一方の燃料電池層が有する隙間領域と、他方の燃料電池層が有する隙間領域とは連通している燃料電池スタックを提供する。
一方の燃料電池層が有する隙間領域と、他方の燃料電池層が有する隙間領域とは、燃料電池層の積層方向からみて、異なる部分に形成されていることが好ましい。また、燃料電池スタック内におけるすべての隙間領域は連通していることが好ましい。
燃料電池層は、該燃料電池層内で、長手方向を有して延伸した形状を有する部位を備えることが好ましい。
上記互いに隣接するいずれか2つの燃料電池層は、一方の燃料電池層を構成する単位電池と、他方の燃料電池層を構成する単位電池とが交差するように積層されていることが好ましく、直交するように積層されていることがより好ましい。
本発明の燃料電池スタックにおいては、該燃料電池スタックが有する燃料電池層のうち、少なくとも1つの燃料電池層は複数の単位電池を有し、該複数の単位電池は、燃料電池層内で長手方向を有して延伸した形状であることが好ましい。
本発明の燃料電池スタックは、上記互いに隣接するいずれか2つの燃料電池層の間に、スペーサ層を有していてもよく、あるいは、少なくとも1つの燃料電池層が、スペーサ層で置換されていてもよい。
スペーサ層は、導電性を有することが好ましく、また、多孔質体からなることが好ましい。
また、本発明の燃料電池スタックは、その燃料電池層の積層方向の両端に、集電体を有していてもよい。
上記本発明の燃料電池スタックにおいて、単位電池は、直接メタノール型燃料電池であることが好ましい。
また、本発明により、上記いずれかに記載の燃料電池スタックを備える燃料電池システムであって、該燃料電池スタック内部への空気の流動を促す補機を有する燃料電池システム、および、上記いずれかに記載の燃料電池スタックを備え、該集電体と電気的に接続されるスイッチ回路と、該スイッチ回路を制御する制御回路を有する燃料電池システムが提供される。
さらに、本発明は、1以上の単位電池から構成される少なくとも1つの燃料電池層と、1以上のスペーサから構成される少なくとも1つのスペーサ層と、を積層してなり、少なくとも1つの該燃料電池層および/または少なくとも1つの該スペーサ層は、層内に隙間領域を有する燃料電池スタックを提供する。
燃料電池層とスペーサ層とは交互に積層されることが好ましい。
かかる本発明の燃料電池スタックは、2以上の単位電池を、隙間領域を有するように配置してなる少なくとも1つの燃料電池層、および/または、2以上のスペーサを、隙間領域を有するように配置してなる少なくとも1つのスペーサ層を備えることが好ましい。
また、かかる本発明の燃料電池スタックは、隙間領域を有するように2以上の単位電池を配置してなる燃料電池層と、該燃料電池層上に積層された、隙間領域を有するように2以上のスペーサを配置してなるスペーサ層と、を少なくとも備え、該燃料電池層が有する隙間領域と、該スペーサ層が有する隙間領域とは連通していることが好ましい。
上記スペーサ層を構成するスペーサは、燃料電池層を構成する単位電池と交差するように配置されることが好ましい。
かかる本発明の燃料電池スタックは、少なくとも、燃料電池層(A)と、スペーサ層と、燃料電池層(B)とをこの順で有し、燃料電池層(B)が有する2以上の単位電池(b)は、それぞれ燃料電池層(A)が有する単位電池(a)の直上または直下の領域内に配置されることが好ましい。あるいは、かかる本発明の燃料電池スタックは、少なくとも、燃料電池層(A)と、スペーサ層と、燃料電池層(B)とをこの順で有し、燃料電池層(B)が有する2以上の単位電池(b)は、それぞれ燃料電池層(A)が有する隙間領域の直上または直下に配置されることが好ましい。
また、本発明の燃料電池スタックは、少なくとも、燃料電池層(A)と、スペーサ層と、燃料電池層(B)とをこの順で有し、スペーサ層を構成する2以上のスペーサのうち、両端に配置されるスペーサは、燃料電池層(A)が有する単位電池(a)および燃料電池層(B)が有する単位電池(b)の長手方向における端部に接して配置されることが好ましい。
燃料電池層を構成する2以上の単位電池は、隙間領域を有するように略平行に配置され、スペーサ層を構成する2以上のスペーサは、隙間領域を有するように略平行に配置されることが好ましい。
燃料電池スタックを構成する単位電池およびスペーサの少なくともいずれかは短冊形状を有することが好ましい。
上記スペーサ層は、多孔質体からなるスペーサと非多孔質体からなるスペーサとを含む2以上のスペーサからなっていてもよい。この場合、当該2以上のスペーサのうち、少なくとも、スペーサ層の両端に配置されるスペーサは、非多孔質体からなることが好ましい。また、スペーサ層は、親水性を有する表面を備える少なくとも1つのスペーサを含むことが好ましい。
かかる本発明の燃料電池スタックにおいて、単位電池は、直接メタノール型燃料電池または固体高分子型燃料電池であることが好ましい。
すなわち本発明は、1以上の単位電池(a)から構成され、層内に第1の隙間領域を有する燃料電池層(A)と、該燃料電池層(A)上に積層される層であって、1以上のスペーサから構成され、層内に第2の隙間領域を有するスペーサ層と、該スペーサ層上に積層される層であって、1以上の単位電池(b)から構成される燃料電池層(B)と、をこの順で含む燃料電池スタックであって、該単位電池(a)および該単位電池(b)は、アノード触媒層と電解質膜とカソード触媒層とを含み、かつ、該アノード触媒層へ燃料を供給するための燃料供給手段を備えており、該アノード触媒層の端面は被覆層を備えており、該燃料は、気体燃料であり、該単位電池(a)または該単位電池(b)のいずれか一方は、そのアノード触媒層に電気的に接続されるアノード集電体を少なくとも有し、他方は、そのカソード触媒層に電気的に接続されるカソード集電体を少なくとも有し、該第1、第2の隙間領域はそれぞれ、該燃料電池層(A)、該スペーサ層を層厚方向に貫通する領域であり、該第1および第2の隙間領域のすべては連通しており、連通した該第1および第2の隙間領域からなる空間は、該単位電池(a)および該単位電池(b)に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路を構成する燃料電池スタックである。
本発明に従う、単位電池が3次元的に積層された構造を有する燃料電池スタックおよびこれを適用した燃料電池システムによれば、補機を用いることなく、もしくは少ない補機の消費電力で、燃料または酸化剤を供給することができ、高出力密度が実現される。さらに、本発明によれば、押さえ板やボルト、ナットなどの締結部材をなくし、小型化、低コスト化、高出力密度化が達成された燃料電池スタックおよび燃料電池システムを提供することができる。
本発明の燃料電池スタックの好ましい一例を示す模式図である。 本発明に用いられる単位電池の好ましい一例を示す概略断面図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。 図9における単位電池を拡大して示す断面図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図である。 内部にファンを備える燃料電池スタックの一例を示す斜視図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図である。 図13(a)の領域Aを拡大して示す詳細図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を一部拡大して示す断面模式図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す上面図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す上面図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す上面図である。 図19に示される燃料電池スタックにおける最上層の燃料電池層を構成する単位電池の断面図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す上面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる単位電池の別の好ましい一例を示す断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる単位電池の別の好ましい一例を示す断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる単位電池の別の好ましい一例を示す断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる単位電池の別の好ましい一例を示す断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる単位電池の別の好ましい一例を示す断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる単位電池の別の好ましい一例を示す断面図である。 本発明における燃料電池層間の好ましい接着、および一体化の例を模式的に示す断面図である。 本発明の燃料電池スタックへの燃料供給方法の一例を模式的に示す上面図である。 本発明の燃料電池スタックへの燃料供給方法の別の一例を模式的に示す上面図である。 本発明の燃料電池スタックへの燃料供給方法の別の一例を模式的に示す上面図である。 本発明の燃料電池システムの好ましい一例を示す模式図である。 本発明の燃料電池システムの制御方式を示す模式図である。 電流の取り出し方法を説明するための模式図である。 本発明の燃料電池システムの制御方式を示す模式図である。 実施例1における単位電池の構成の一部を示す模式図である。 実施例1における燃料電池スタックの燃料電池層の構成を示す模式図である。 実施例2における燃料電池スタックの燃料電池層の構成を示す模式図である。 実施例2における燃料電池スタックの第1層および第2層を示す図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。 スペーサ層を備える燃料電池スタックの基本構成の一例を示す模式図である。 スペーサ層を有する燃料電池スタックの好ましい一例を示す模式図である。 スペーサ層を有する燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図である。 スペーサ層を有する燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図である。 スペーサ層を有する燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図である。 本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。 スペーサ層を有する燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図であり、図47(a)はその上面図、図47(b)は側面図である。 実施例3で作製した流路基板の形状を示す上面図および断面図である。 実施例3で作製したアノード集電体の形状を示す上面図および拡大図である。 実施例3で作製したカソード集電体の形状を示す上面図および拡大図である。 実施例3における流路基板、アノード集電体、カソード集電体およびスペーサの拡散接合を模式的に示す斜視図である。 実施例3におけるMEAのアノード集電体への接合を模式的に示す斜視図である。 実施例3で得られたMEA端部へ接着剤が塗布された2次元スタックの斜視図および断面図である。 実施例3における2次元スタック間の接合を示す断面図である。 複数の2次元スタックが一体化された燃料電池スタックの構造を示す断面図である。 実施例3で得られたマニホールドを備える燃料電池スタックを示す概略斜視図である。 実施例4における流路基板、アノード集電体およびカソード集電体の拡散接合を模式的に示す斜視図である。 実施例4で得られたMEA端部へ接着剤が塗布された2次元スタックの断面図である。 実施例5における2次元スタック間の接合を示す断面図である。 実施例5で得られた燃料電池スタックを示す断面図である。 実施例6における流路基板、アノード集電体、カソード集電体およびスペーサの拡散接合を模式的に示す斜視図である。 実施例6で得られた燃料電池スタックを示す断面図である。 サンプルNo.1とNo.2、サンプルNo.1とNo.2を2層積層させた2層スタックの平均値の電流−電圧特性、電流−出力密度特性を示すグラフである。 サンプルNo.1とNo.2とNo.3、サンプルNo.1とNo.2とNo.3を3層積層させた3層スタックの電流−電圧特性、電流−出力密度特性を示すグラフである。 比較例1で作製した燃料電池スタックの構造を示す斜視図である。 比較例1の燃料電池スタックの電流−電圧特性、電流−出力密度特性を示すグラフである。 実施例7で作製した2層スタック、実施例9で作製した2層スタック、および、比較例1で作製した2層スタック(セル間隔dが2mmのものと3mmのもの)について連続発電試験を行なった結果を示すグラフである。 実施例10で作製したサンプルNo.4(1層スタック)、2層スタックおよび3層スタックの発電特性を示すグラフおよび表である。 実施例11で作製した燃料電池スタックの出力電流密度100mA/cm2、温度25℃および40℃における連続発電特性を示すグラフである。 本発明の燃料電池スタックにおける単位電池のアノード極およびカソード極の配向の一例を示す概略図である。 本発明の燃料電池スタックにおける単位電池のアノード極およびカソード極の配向の他の一例を示す概略図である。 スペーサ層を備える本発明の燃料電池スタックにおける単位電池のアノード極およびカソード極の配向の一例を示す概略図である。
<<燃料電池スタック>>
以下、本発明の燃料電池スタックを実施の形態を示して詳細に説明する。以下に示す実施形態はいずれも、メタノールから直接プロトンを取り出すことにより発電を行なう直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell、以下、DMFCともいう。)であり、燃料としてメタノール水溶液、酸化剤として空気(具体的には空気中の酸素)を用いるものである。DMFCは、(1)改質器を必要としない、(2)ガス燃料に比べ、体積エネルギー密度の高い液体メタノールを使用することから、水素に代表される高圧ガスボンベに比べ、燃料容器を小さくすることが可能である、等の利点を有する。したがって、小型機器用電源、特に、携帯機器用の二次電池代替用途として好適に適用することが可能である。また、DMFCは、燃料が液体であるため、従来の燃料電池システムではデッドスペースとなっていた狭い婉曲空間部を燃料スペースとして使用することが可能であり、デザインの制約を受けにくいという利点も有している。かかる点からも、DMFCは、携帯用小型電子機器等に好ましく適用され得る。
一般にDMFCでは、アノード極およびカソード極で以下のような反応が起きる。アノード極側で二酸化炭素が気体として生成し、カソード極側では水が生成する。
アノード極:CH3OH+H2O → CO2+6H++6e-
カソード極:O2+4H++4e- → 2H2
<第1の実施形態>
図1は、本発明の燃料電池スタックの好ましい一例を示す模式図であり、図1(a)はその斜視図、図1(b)は上面図、図1(c)は側面図である。図1の燃料電池スタック100は、第1の燃料電池層101と、第2の燃料電池層102とを積層してなり、各層は、5個の燃料電池の単位電池(以下、単に単位電池という)103から構成されている。両燃料電池層において、単位電池103はそれぞれ、隣の単位電池と離間して配置されており、第1の燃料電池層101は隙間領域104aを、第2の燃料電池層102は隙間領域104bを有する。本実施形態において、隙間領域104aおよび隙間領域104bの形状は、それぞれ直方体形状である。
ここで、本明細書中において「単位電池」とは、燃料電池スタックを構成する1ユニットであって、MEA(Membrane Electrode Assembly;膜電極複合体)と、発電機能の付与またはその他の目的のために、必要に応じてMEAに付加される他の構成部材とを備える構造体と定義される。他の構成部材としては、特に限定されず、たとえば、燃料を供給するための燃料流路、空気を供給するための空気流路、セパレータ、アノード集電体、カソード集電体などが挙げられる。また、「MEA」とは、電解質膜とこれを挟持するアノード触媒層およびカソード触媒層とを少なくとも含む複合体と定義され、本明細書中においては、アノード触媒層上にアノード導電性多孔質層およびカソード触媒層上にカソード導電性多孔質層を備える場合も含まれる。また、本明細書中において「セパレータ」とは、燃料と酸化剤(空気など)とを分離する役割を果たす単位電池の構成部材を意味する。
本実施形態において、各燃料電池層は、燃料電池層内で長手方向を有して延伸した形状を有しており、燃料電池層を構成する各単位電池103もまた、長手方向を有して延伸した形状(以下、かかる形状を有する単位電池を、「短冊形状」を有する単位電池と称することがある。)であり、より具体的には直方体形状である。同一層内における各単位電池103の延伸方向は同一である。すなわち、同一層内における各単位電池103は、一定の間隔をおいて平行に配置されている。第2の燃料電池層102は、第2の燃料電池層を構成する単位電池の長手方向(延伸方向)と、第1の燃料電池層101を構成する単位電池の長手方向(延伸方向)とが直交するように、第1の燃料電池層101上に積層されている。かかる構成により、第1の燃料電池層101が有する隙間領域104aの上面の一部は、第2の燃料電池層102を構成する単位電池と接することとなる。単位電池が長手方向を有していると、隙間領域上に安定して複数の単位電池を積層することができるため、燃料電池層の積層構造を構築しやすい。さらに、平面短冊形状の単位電池を用いることにより、凹部や凸部があるような短冊形状、筒型形状に比べて、積層したときの単位電池間の接触面積が大きくなるため、得られる燃料電池スタックの物理的強度が向上する。また、単位電池間の接触面積が大きくなると、電気的に直列に接続して積層する際に電気的接触抵抗を低くすることができる。さらに、平面形状の単位電池を用いることにより、柱状の単位電池と比較して、体積あたりの表面積を大きくすることができる。電気的接触抵抗を低く抑えつつ、積層方向に向かって電気的に直列配線接続を行なうことが可能となることにより、燃料電池層の面内方向に流れる電流値を減少させることができるため、集電体の厚みを減少、または集電体を不要とすることができ、燃料電池スタックを高集積化することが可能となる。その結果、燃料電池スタックの小型化、軽量化および低コスト化が可能となる。
また、本実施形態においては、第2の燃料電池層102を構成する単位電池の長手方向(延伸方向)と、第1の燃料電池層101を構成する単位電池の長手方向(延伸方向)とが直交するように積層されているため、燃料電池層の積層方向からみたとき、直方体形状を有する隙間領域104aおよび隙間領域104bは、同様に直交して配列されており、交差領域(隙間領域104aと隙間領域104bとが交差する領域)を除いては、異なる部分に形成されている(図1(b)参照)。
単位電池を直交して配列させることにより、単位電池同士の交差領域の面積が小さくなり、該交差領域の内部までの空気の拡散距離が短くなるため、該交差領域における空気の供給が良好となる。また、単位電池の短手方向の長さをより短くすることによっても、該交差領域の面積をより小さくすることができる。短手方向の長さを短くすることにより、単位電池のカソード側の面内方向における酸素の拡散距離が短くなり、空気を自然供給する場合においても酸素の拡散供給律速を起こりにくくすることができる。その結果、空気を供給するための補機を用いなくても燃料電池層を3次元的に積層した燃料電池スタック内部の単位電池のカソード側へ、より効率的に空気を供給することが可能となる。
図1の燃料電池スタック100において、酸化剤としての空気は、燃料電池スタック表面の少なくとも一部が大気に開放されることにより供給されるか、あるいはエアポンプ、ファン等の補機を用いて供給され得る。この際、供給された空気は、単位電池の間に設けられた隙間領域104aおよび104bを通って燃料電池スタック100の内部まで行き渡たり、各単位電池のカソード触媒層に供給される。ここで、第1の燃料電池層101が有する隙間領域104aの上面の一部に、第2の燃料電池層102を構成する単位電池が配置された構成とすることにより、隙間領域に存在する空気と各単位電池とが接触する面積が増加する。これにより、単位電池のカソード触媒層への空気供給が大きく改善される。
燃料電池スタック100において、隙間領域は3次元的に形成されており、しかも、すべての隙間領域(4本の隙間領域104aおよび4本の隙間領域104b)は、連通している。かかる構成は、燃料電池スタックの空隙率を高くし、これにより通気性が良くなるため、空気の拡散性を向上させる。すなわち、かかる構成により、燃料電池スタック内に入った空気を、連通した隙間領域を通して燃料電池スタック100の内部まで、自然対流または拡散によって供給させることができる。また、燃料電池スタック内での空気の自然拡散性も良好である。発電に起因する熱によって温められた燃料電池スタック内の空気は、対流により、連通した隙間領域を通って外部へ放出されるとともに、燃料電池スタックの側面や下面から空気が効率的に吸入される。したがって、空気の拡散速度が向上し、空気供給のためのエアポンプ、ファン等の補機を必ずしも必要としない。このことは、燃料電池スタックを用いた燃料電池システムの小型化を可能とする。さらには、空気の拡散抵抗が減少するので、燃料電池の発電特性を向上させることができる。また、エアポンプ、ファン等の補機を用いる場合においても、燃料電池スタック内部まで空気を供給するために必要な風力を低減させることができる。このことは、補機の低消費電力化や小型化を可能とする。
さらに、かかる構成によれば、燃料電池スタックの使用態様の自由度を大きく改善することができる。たとえば、燃料電池スタックをどのような方向に傾けて使用しても、温められた空気を上部から排出し、側方および下方から空気を取り込むことができるため、空気の拡散性を良好に保つことができる。また、燃料電池スタックを機器に搭載し、たとえば燃料電池スタック上面および下面が塞がれた場合であっても、側面から空気の排出および吸入を行なうことが可能である。特に、固体高分子型燃料電池(PEFC)や直接メタノール型燃料電池(DMFC)は、室温付近の低温動作が可能であるため、たとえば固体酸化物燃料電池(SOFC)などの高温動作型の燃料電池に必要な断熱構造などのパッケージが不要である。したがって、特に、固体高分子型燃料電池(PEFC)や直接メタノール型燃料電池(DMFC)の場合には、大気中の空気を三次元的にあらゆる方向から燃料電池スタック内部に取り入れることが可能であるため、空気を供給するための補機を不要とすることが可能となる。よって、本発明の燃料電池スタックは、固体高分子型燃料電池(PEFC)や直接メタノール型燃料電池(DMFC)などの室温付近の低温動作が可能な燃料電池であることが特に好ましい。さらに、燃料電池スタックの通気性が良くなること、および、燃料電池スタックの表面積が高くなることは、燃料電池スタックの放熱性をも向上させ、燃料電池スタックを高度に集積しても、温度の上昇を抑えることが可能となる。したがって、本発明の燃料電池スタックによれば、熱による燃料電池スタックの発電特性の劣化を抑えることができ、機器等に燃料電池スタックを搭載した際にも、発電による熱が機器に与える影響を小さくすることができる。
燃料電池スタック100において、各単位電池103の高さ、すなわち、燃料電池層の厚みは等しい。これにより、燃料電池層内の単位電池の高さが揃うため、単位電池を複数の単位電池にまたがって積層した場合でも、上下の単位電池同士の接触が良好となり、接触不良を低減させることができる。
また、燃料電池スタック100において、一の燃料電池層内に配置される単位電池の間隔(すなわち、隙間領域の幅)は等間隔である。ここで、等間隔とは、すべての隙間間隔の誤差が±0.25mm以内であることをいう。そして、複数の隙間領域の、燃料電池層の積層方向に対して垂直な面における断面積はそれぞれ等しい。上記のように、同一層内における各単位電池103は、平行に配置されているので、複数の隙間領域104aは同じ面積を有しており、さらに、各単位電池103の高さも等しいので、複数の隙間領域104aは同じ空間体積を有している。隙間領域104bについても同様である。燃料電池スタック100において電流は、単位電池が交差して接触している部分を積層方向に、電気的に直列に流れるが、交差していない部分の電流は、一度、最寄りの、交差して接触している部分まで燃料電池層の面内方向に流れて、その後、交差して接触している部分に到達すると、積層方向に流れる。隙間領域の間隔を等間隔とすることにより、燃料電池層を面内方向に流れる距離が均一になるため、抵抗損失による局所的な発熱が生じることがない。また、局部的な過電圧が生じにくい。これにより、局所的な熱による燃料電池の出力特性の劣化や、過電圧により触媒金属が溶解する程度の電位がかかって触媒金属が劣化することによる出力特性の劣化が起こらないため、燃料電池スタックの寿命を延ばすことができる。
各燃料電池層内に配置される単位電池の間隔は、空気が拡散または自然対流により通過できる間隔を有していれば特に限定されないが、0.001cm〜1cmであることが好ましく、0.05cm〜0.2cmであることがより好ましい。
燃料電池スタック100において、各単位電池103は、すべて同じ形状を有している。したがって、本実施形態の燃料電池スタックは、第2の燃料電池層102として、第1の燃料電池層101と同じ形状のものを用い、第1の燃料電池層101に対して、90°回転させて積層したものということができる。ここで、燃料電池層の形状が同一であるとは、すべての単位電池の外形の誤差が±0.25mm以内であり、反転または回転により単位電池の配置および形状が一致することを意味する。単位電池をすべて同じ形状とすることにより、単位電池の形状の違いによる特性のばらつきを抑えることができる。また、1つの製造プロセスで単位電池を製造できるため、製造コストを縮小することができる。本実施形態のように、2つの燃料電池層を角度を変えて積層させ、一方の燃料電池層を構成する単位電池と他方の燃料電池層を構成する単位電池とを交差させることにより、3次元的に連通した隙間領域を容易に形成することができる。
なお、本明細書中においては、図1に示されるような、短冊状の単位電池を複数有し、これらの単位電池を井型に複数層積層した構造の燃料電池スタックを「井形燃料電池スタック」ということがある。
ここで、本実施形態の燃料電池スタックは、たとえば次のような変形を施すことができる。まず、第1の燃料電池層101を構成する複数の単位電池103の形状(長手方向の長さ、幅あるいは高さ)は、必ずしもすべて同一とする必要はない。第2の燃料電池層102についても同様である。少なくとも2つの単位電池が同一形状であれば、その領域において、上記した効果と同様の効果を得ることができる。また、1つの燃料電池層内の単位電池の数は特に限定されず、少なくとも一方の燃料電池層が2以上の単位電池を有し、これにより少なくとも1つの隙間領域を有していればよい。複数の隙間領域を有する場合、その幅(単位電池間の距離)は、それぞれ異なっていてもよい。第1の燃料電池層101内の単位電池間の距離は、第2の燃料電池層102内の単位電池間の距離と異なっていてもよい。さらに、1つの燃料電池層内に配置される複数の単位電池は、平行に配置されなくてもよい。
第1の燃料電池層101の形状と第2の燃料電池層102の形状は、必ずしも同一である必要はない。また、第2の燃料電池層を構成する単位電池の長手方向(延伸方向)と、第1の燃料電池層101を構成する単位電池の長手方向(延伸方向)とがなす角度は90°である必要はなく、いずれの角度であってもよい。同一形状の2枚の燃料電池層を積層させて本実施形態と同様の燃料電池スタックを得る場合においても、下側の燃料電池層に対する上側の燃料電池層の角度は特に限定されない。
また、本発明の燃料電池スタックに使用される燃料としては、メタノール水溶液に限定されるものではなく、分子構造の中に水素原子を含むその他の燃料を用いることができる。燃料とは、アノード触媒層に供給される還元剤である。具体的には、水素、DME(ジメチルエーテル)、メタン、ブタン、アンモニアなどの気体燃料;メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジメトキシメタンなどのアセタール類、ギ酸などのカルボン酸類;ギ酸メチルなどのエステル類、ヒドラジン、もしくは亜硫酸、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、亜ジチオン酸塩、次亜リン酸、亜リン酸などの液体燃料;アスコルビン酸などの固体燃料を水に溶解させたものが例示できる。燃料は1種に限定されず、2種以上の混合物であってもよい。燃料のコストの低さや体積あたりのエネルギー密度の高さ、発電効率の高さ(過電圧の低さ)などの点から、メタノール水溶液が好ましく用いられる。本発明の燃料電池スタックに使用される酸化剤としては、酸素、過酸化水素、硝酸が例示できるが、酸化剤のコストなどの点から、空気中の酸素を用いることがより好ましい。
次に、第1の燃料電池層101および第2の燃料電池層102を構成する単位電池103の内部構造について説明する。図2は、本発明に用いられる単位電池の好ましい一例を示す概略断面図である。なお、単位電池の別の好ましい例については後述する。図2に示される単位電池は、電解質膜201と、電解質膜201の一方の表面に配置されたアノード触媒層202と、電解質膜201の他方の表面に配置されたカソード触媒層203と、アノード触媒層202の電解質膜201に対向する面とは反対の面に接して配置された親水層208と、親水層208のアノード触媒層202に対向する面とは反対の面に接して配置されたアノード導電性多孔質層204と、カソード触媒層203の電解質膜201に対向する面とは反対の面に接して配置されたカソード導電性多孔質層205と、アノード導電性多孔質層204内に形成された燃料輸送用の空間である燃料流路206と、燃料流路206の一面を覆っている燃料透過制御層209と、アノード導電性多孔質層204の親水層208と接している面と反対の面に接している気液分離層210とから構成されている。燃料透過制御層209は、親水層208と接して配置されている。また、アノード導電性多孔質層204は、アノード導電板に、その層厚方向に貫通する貫通孔207を多数形成してなる。
燃料であるメタノール水溶液は、燃料流路206を通って単位電池の発電部全面に供給され、燃料透過制御層209を通って、親水層208に供給された後、親水層208にてメタノール水溶液が保持され、均一にアノード触媒層202に供給される。親水層208は導電性を有し、かつ、表面が親水性の多孔質体からなる層であることが好ましい。これにより、生成した二酸化炭素は、親水層208内の孔を通り、アノード導電性多孔質層204の貫通孔207、気液分離層210の順で通って、外部に排出される。二酸化炭素は、アノード触媒層202近傍の貫通孔207から速やかに排出されるため、単位電池内部で二酸化炭素の圧力が高まり、電解質膜や触媒層を剥離したり、形状を変化させたりすることがなく、燃料の供給を阻害することもない。
本発明の燃料電池スタック構造を適用した場合、アノード導電性多孔質層204の貫通孔207から排出された二酸化炭素は、隣接する単位電池のカソード導電性多孔質層205の内部へ排出されるか、または、隙間領域に排出される。カソード導電性多孔質層205内部に排出された二酸化炭素は、面内方向に拡散し、隙間領域に到達し、隙間領域から空気の拡散とともに燃料電池スタック外部に排出される。こうして、速やかに単位電池外に排出された二酸化炭素を、燃料電池スタック内の隙間領域から空気の拡散とともに速やかに燃料電池スタック外部に排出させることができる。
図2に示される単位電池においては、アノード導電性多孔質層204に設けられた厚み方向に貫通した貫通孔207から二酸化炭素を排出することができるため、アノード導電板に二酸化炭素の排出経路を形成する必要がない。二酸化炭素を確実かつ速やかに排出するためには、排出流路の断面積を確保する必要があるが、本実施形態ではその必要がないために、アノード導電板を薄型化することができる。したがって、単位電池を薄型化することができ、それらを積層させた燃料電池スタックを高出力密度化することができる。
また、燃料透過制御層209を介してメタノール水溶液を供給しているため、二酸化炭素が燃料流路206内に入り、メタノール水溶液の供給を妨げることがない。このため、燃料流路206にポンプなどの補機を用いて、一定以上の流速でメタノール水溶液を流し、二酸化炭素を排出する必要がないため、ポンプを不要とすることができる。さらには、従来、ポンプで供給する際の圧損を低減させるために燃料流路の断面積を大きくしなければならなかったが、燃料透過制御層209を設けることにより、ポンプを不要とすることができるため、かかる従来の課題を解決できる。また、燃料流路206の断面積を小さくできるため、メタノール水溶液を毛細管力により、発電部の隅々に供給することができる。こうして、単位電池の薄型化が可能となり、かつ補機を不要とすることができることから、燃料電池の高出力密度化が可能となる。
気液分離層210は、所定の圧力までは、気体は透過するが、液体を透過しない細孔径を有する多数の細孔を備える多孔質体であることが好ましい。これにより、二酸化炭素を排出可能であり、メタノール水溶液は外部に漏液しない構造とすることができる。なお、気液分離層は貫通孔207の内部に充填されていてもよい。
親水層208は燃料を保持し、均一に該燃料をアノード触媒層202に供給するだけでなく、それが有する細孔が液体(メタノール水溶液)で満たされることにより、貫通孔207から進入してきた酸素がアノード触媒層202に到達し、燃料電池の出力を低下させることを防ぐ役割も果たす。
空気は、大気中からカソード導電性多孔質層205を通じてカソード触媒層203に供給される。より具体的には、燃料電池スタックへ供給された空気は、単位電池間に設けられた隙間領域を通って燃料電池スタックの内部にまで供給され、カソード導電性多孔質層205が有する孔を通って、カソード触媒層203へと供給される。
上述したような単位電池の構造とすることにより、厚み1mm程度以下の薄型の単位電池を作製することが可能となる。本実施形態の燃料電池スタックにおいては、補機を極力用いない構成として、単位電池の短辺長さを1〜3mm、厚みを0.5〜1mm、長辺長さを30〜100mm、隙間間隔(隙間領域の幅)を0.2〜2mm、燃料電池層の積層数を4〜8層とすることが好ましい。これにより、上述したような高出力密度で微細な燃料電池スタックを提供することができる。
アノード触媒層202は、燃料の酸化を促進する触媒を備え、触媒上で燃料が酸化反応を起こすことにより、プロトンと電子を生成する。また、カソード触媒層203は、酸化剤の還元を促進する触媒を備え、触媒上で酸化剤がプロトンと電子を取り込み還元反応が起きる。
上記アノード触媒層202およびカソード触媒層203としては、たとえば、触媒を担持した担持体と電解質とを含むものを用いることができる。この場合、アノード触媒層202におけるアノード触媒は、たとえばメタノールと水から、プロトンと電子とを生成する反応速度を促進させる機能を有し、電解質は、生成したプロトンを電解質膜201へ伝導する機能を有し、アノード担持体は、生成した電子をアノード導電性多孔質層204へ導電する機能を有する。一方、カソード触媒層203におけるカソード触媒は、酸素とプロトンと電子とから、水を生成する反応速度を促進する機能を有し、電解質は、電解質膜201からカソード触媒近傍にプロトンを伝導する機能を有し、カソード担持体は、カソード導電性多孔質層205からカソード触媒に電子を導電する機能を有する。なお、アノード担持体およびカソード担持体は、電子伝導の機能を有するが、触媒も電子伝導性を有するため、必ずしも担持体を設ける必要はなく、この場合、アノード導電性多孔質層204もしくはカソード導電性多孔質層205への電子授受は、それぞれアノード触媒、カソード触媒が行なう。
アノード触媒およびカソード触媒としては、たとえば、Pt、Ru、Au、Ag、Rh、Pd、Os、Irなどの貴金属や、Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Zn、Sn、W、Zrなどの卑金属、これら貴金属、卑金属の酸化物、炭化物、炭窒化物、およびカーボンが例示できる。これら材料の、単独もしくは2種類以上の組み合わせを触媒として用いることができる。アノード触媒およびカソード触媒は必ずしも同種類のものに限定されず、異なる物質を用いることができる。
アノード触媒層202およびカソード触媒層203に用いられる電解質は、プロトン伝導性を有し、かつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されないが、メタノールによって溶解しない固体もしくはゲルであることが好ましい。具体的には、スルホン酸基、リン酸基などの強酸基やカルボキシル基などの弱酸基を有する有機高分子が好ましい。かかる有機高分子として、スルホン酸基含有パーフルオロカーボン(ナフィオン(NAFION(登録商標):デュポン社製))、カルボキシル基含有パーフルオロカーボン(フレミオン(登録商標:旭化成社製))、ポリスチレンスルホン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸共重合体、イオン性液体(常温溶融塩)、スルホン化イミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)などが例示される。また、後述するプロトン伝導性を付与した担持体を用いる場合には、該担持体がプロトン伝導を行なうため、必ずしも電解質は必要としない。
アノード触媒層202およびカソード触媒層203に用いられる担持体は、電気伝導性の高い炭素系材料であることが好ましく、たとえば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどが例示される。また炭素系材料の他に、Pt、Ru、Au、Ag、Rh、Pd、Os、Irなどの貴金属、Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Zn、Sn、W、Zrなどの卑金属、および、これら貴金属、卑金属の酸化物、炭化物、窒化物、炭窒化物が例示できる。これら材料の、単独もしくは2種類以上の組み合わせを担持体として用いることができる。また、担持体にプロトン伝導性を付与した材料、具体的には硫酸化ジルコニア、リン酸ジルコニウムなどを用いてもよい。
アノード触媒層202およびカソード触媒層203の厚みは、プロトン伝導の抵抗および電子伝導の抵抗を小さくし、燃料(たとえばメタノール)または酸化剤(たとえば酸素)の拡散抵抗を低減するために、それぞれ0.5mm以下とすることが好ましい。また、電池としての出力を向上させるために十分な触媒を担持させる必要があるため、それぞれ少なくとも0.1μm以上であることが好ましい。
電解質膜201は、プロトン伝導性を有し、かつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されないが、好ましくは従来公知の適宜の高分子膜、無機膜またはコンポジット膜にて形成される。高分子膜としては、たとえばパーフルオロスルホン酸系電解質膜(ナフィオン(デュポン社製)、ダウ膜(ダウ・ケミカル社製)、アシプレックス(ACIPLEX(登録商標):旭化成社製)、フレミオン(旭硝子社製))などのほか、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンなどの炭化水素系電解質膜などが挙げられる。無機膜としては、たとえばリン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。また、コンポジット膜としては、たとえばゴアセレクト膜(ゴアセレクト(登録商標):ゴア社製)が挙げられる。
燃料電池スタックが100℃付近もしくはそれ以上の温度になる場合には、電解質膜の材料として、低含水時でも高いイオン伝導性を有する、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム、イオン性液体(常温溶融塩)等を用い、これらを膜化して用いることが好ましい。電解質膜は、プロトン伝導率が10-5S/cm以上であることが好ましく、パーフルオロスルホン酸ポリマーや炭化水素系ポリマーなどのプロトン伝導率が10-3S/cm以上の高分子電解質膜を用いることがより好ましい。
アノード導電性多孔質層204は、アノード触媒層202と電子の授受を行なう機能を有する。アノード導電性多孔質層204を構成するアノード導電板に用いられる材質としては、カーボン材料、導電性高分子、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su等の金属やSiおよびこれらの窒化物、炭化物、炭窒化物等、さらにステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金等を用いることが好ましく、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことがより好ましい。また、Cu、Ag、Zn等の、酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属材質や、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性炭窒化物、導電性酸化物等を表面コーティングとして用いることができる。これにより、燃料電池の寿命を延ばすことができる。上記の元素を含むことにより、アノード導電性多孔質層204の比抵抗が小さくなるため、アノード導電性多孔質層204の抵抗による電圧低下を軽減し、より高い発電特性を得ることが可能となる。
図2に示されるアノード導電性多孔質層204は、上記したように、アノード導電板に層厚方向に貫通する貫通孔207を形成してなる。これにより、アノード触媒層202で生成した二酸化炭素の排出効率を向上させることができる。ここで、「貫通している」とは一方の面から反対側の面へ抜けていることである。複数の貫通孔207は、互いに連通していることがより好ましい。層厚方向に貫通する孔を有するアノード導電板(アノード導電性多孔質層)としては、たとえば、板や箔に複数の穴を開けた多孔質金属層、メッシュ状またはエキスパンドメタル状の多孔質金属層などを挙げることができる。また、互いに連通した複数の貫通孔を有する材料としては、たとえば、発泡金属、金属織物、金属焼結体、カーボンペーパー、カーボンクロスを挙げることができる。
カソード導電性多孔質層205は、カソード触媒層203と電子の授受を行なう機能を有し、単位電池の外部とカソード触媒層203とを連通する孔を有する。一般的に、単位電池の発電時においては、アノード導電性多孔質層204よりもカソード導電性多孔質層205は高い電位に保たれるため、カソード導電性多孔質層205の材質は、アノード導電性多孔質層204と同等か、それ以上に耐腐食性に優れていることが好ましい。
カソード導電性多孔質層205の材質は、アノード導電性多孔質層204と同様の材質とされても良いが、特に、たとえば、カーボン材料、導電性高分子、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Cr等の金属およびこれらの金属の窒化物、炭化物等、ならびにステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Ptの合金等を用いることが好ましい。また、Cu、Ag、Zn、Ni等の酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、耐腐食性を有する貴金属および金属材質や、導電性高分子、導電性酸化物、導電性窒化物、導電性炭化物等、導電性炭窒化物を表面コーティングとして用いることができる。
カソード導電性多孔質層205の構造は、燃料電池スタック周囲の空気中の酸素をカソード触媒層203まで供給することが可能な連通孔を有していれば特に限定はないが、積層される燃料電池層同士の接触部位に位置するカソード触媒層まで酸素を供給させるために、カソード導電性多孔質層205内部に、積層方向および積層方向に対して垂直方向に連通している孔を有していることが好ましい。このようなものとしては、たとえば発泡金属、金属織物、金属焼結体、カーボンペーパー、カーボンクロスなどを挙げることができる。本発明に係る直接メタノール型燃料電池スタックにおいては、隣接する燃料電池層同士が積層し、重なりあっている領域では、カソード導電性多孔質層205の層厚方向に切断した断面方向からも空気が入り込み、カソード触媒層203まで空気が到達する構造が好ましい。
カソード導電性多孔質層205の空隙率は、酸素の拡散抵抗を低減させるために30%以上が好ましく、電気抵抗を低減させるために95%以下が好ましく、50%〜85%であることがより好ましい。カソード導電性多孔質層205の厚みは、カソード導電性多孔質層205の積層方向に対して垂直方向への酸素の拡散抵抗を低減させるために10μm以上であることが好ましく、カソード導電性多孔質層205の積層方向への酸素の拡散抵抗を低減させるために1mm以下であることが好ましく、100μm〜500μmであることがより好ましい。
本発明で用いられる単位電池には、図2に示されるように、カソード導電性多孔質層、カソード触媒層、電解質膜、アノード触媒層、アノード導電性多孔質層に加えて、燃料漏洩を防ぎ、アノードで生成する反応物を排出するために設けられる気液分離層210と、メタノールの触媒層への透過流束を制限するために設けられる燃料透過制御層209とが好ましく用いられる。この気液分離層および燃料透過制御層について詳細に説明する。
気液分離層は、アノード導電性多孔質層の貫通孔から単位電池の外部にメタノールが漏洩することを抑止するために設けられ、主に、水やメタノール水溶液からなる液体に対する不透過性および気体透過性の性質を有する層である。さらに本発明においては、気液分離層に導電性も付与されていることが好ましい。具体的には、気液分離の性質を有する材料と、導電性を有する材料との混合物を用いることができる。このような材料として、PTFE(polytetrafluoroethylene)やPVDF(Polyvinylidenfluolide)を代表とするフッ素系の高分子とアセチレンブラック、ケッチェンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどとの混合物からなる多孔質層が例示できる(以降、導電性を付与した気液分離層を単に気液分離層と称する)。この気液分離層を、メタノールの漏洩を防ぐためにアノード導電性多孔質層の表面に備えることが好ましい。
燃料流路に好適に設けられる燃料透過制御層は、その厚さ方向に燃料の拡散抵抗を有し、燃料の透過流束を抑制する機能を有することが好ましく、さらに、気体を透過しない材料からなることがより好ましい。燃料透過制御層は、前記の機能を有していれば形状面において特に限定されず、その厚さ方向に貫通した微細孔を設けることにより燃料の透過機能を有してもよい。燃料がメタノール水溶液の場合、燃料透過制御層は、高分子膜、無機膜またはコンポジット膜にて形成されることが好ましい。高分子膜としては、たとえばシリコンゴム、パーフルオロスルホン酸系電解質膜(ナフィオン(デュポン社製)、ダウ膜(ダウ・ケミカル社製)、アシプレックス(旭化成社製)、フレミオン(旭硝子社製))やスルホン化ポリイミド、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンなどの炭化水素系電解質膜などが例示できる。無機膜としては、たとえば多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナなどが例示できる。コンポジット膜としては、たとえばゴアセレクト膜(ゴア社製)が例示できる。また、貫通した微細孔を有する燃料透過制御層として、感光性樹脂によって作製された燃料透過制御層が例示できる。紫外線もしくはX線によって重合、硬化する感光性樹脂を用いる場合、紫外線もしくはX線不透過性のマスクを利用して、層厚方向に円柱形の貫通孔、もしくはスリット状の貫通孔を設けることができる。
上記した特許文献1に記載の燃料電池の構造では、多孔質基板、または燃料プレナムに二酸化炭素が溜まり、メタノール水溶液の触媒層への供給が阻害され、メタノール水溶液の拡散抵抗により、燃料電池の出力が低下する恐れがある。そのため、かなりの流速でメタノール水溶液を燃料プレナム内で流通させる必要があり、多くの電力を消費するポンプなどの補機が必要となる。燃料透過制御層を介して燃料が供給されることにより、二酸化炭素が燃料流路(または燃料プレナム)にたまることが無く、燃料を安定して供給することができる。これにより、多くの電力を消費するポンプなどの補機の使用が不要となるか、または必要最小限での使用が可能となり、燃料電池システムの出力密度を高めることができる。また、燃料の透過流束を制御し供給することで、シールするためのシール材と、シール性を確保するための締結部材、また、燃料がカソード触媒層へ到達することを防ぐためのセパレータを不要とすることができ、燃料電池スタックの小型化、低コスト化、高出力化が可能となる。
なお、図2においては具体的に示されていないが、電解質膜201をアノード触媒層202およびカソード触媒層203よりも面内方向において広めに形成し、単位電池断面における端部にて、電解質膜201とアノード導電性多孔質層204、および、電解質膜201とカソード導電性多孔質層205とがそれぞれ接していることが好ましく、またそれぞれ接着されていることがより好ましい。これは、燃料がアノード触媒層202からカソード触媒層203へ電解質膜201の端部を回りこんで到達しないようにするためである。このような構造は、たとえば、電解質膜の溶液を、アノード導電性多孔質層204およびカソード導電性多孔質層205の端部に所定の幅で、それぞれアノード触媒層202、カソード触媒層203の厚み以上であって、かつほぼ同じ厚みで塗布して電解質膜を形成しておき、両導電性多孔質層を熱溶着などで貼り合わせることにより実現される。電解質膜の溶液から電解質膜を形成する代わりに、電解質膜をあらかじめアノード導電性多孔質層およびカソード導電性多孔質層側に張付け形成しておいても良い。また、導電性多孔質層に電解質膜を形成する代わりに、広めに形成された電解質膜201における触媒層が積層されていない両端部に、触媒層端面を被覆するように、かつ、触媒層と同じ程度の厚みとなるように電解質膜を形成しておいてもよい。これによっても、導電性多孔質層が、触媒層および電解質膜の双方に接した構造を実現することができる。また、触媒層端面を被覆するように、電解質膜201とアノード導電性多孔質層204および/またはカソード導電性多孔質層205との間に形成される層は、必ずしも電解質膜である必要はなく、接着剤を用いて形成しても良い。このような接着剤として、ポリオレフィン系接着剤や、エポキシ系接着剤などが挙げられる。また、アノード導電性多孔質層204、カソード導電性多孔質層205が端部の断面において、多孔質形状である場合、燃料がアノード導電性多孔質層204の端部の断面から漏れ出て、カソード導電性多孔質層205を通ってカソード触媒層203に到達しないように、アノード導電性多孔質層204と親水層208とアノード触媒層202と電解質膜201の端部の断面および、隣接する層と層との境界が接着剤などからなるシール剤にて封止されていることが好ましく、更に上記に加えて、カソード触媒層203およびカソード導電性多孔質層205の端部の断面もシール剤にて封止されていることがより好ましい。
以上のような構造を有する単位電池において、アノード側では、図2を参照して、燃料が燃料流路206を通じてアノード触媒層202に到達し、アノード触媒層202で燃料の酸化反応が起き、プロトンおよび電子を生成する。生成した電子は、アノード導電性多孔質層204へ流れ、プロトンは電解質膜201を介して、カソード触媒層203へと移動する。一方、カソード側では、燃料電池層または単位電池の隙間領域を通って燃料電池スタック内部へ供給された空気が、単位電池のカソード導電性多孔質層205を介してカソード触媒層203に供給される。カソード触媒層203にて、酸素とプロトンとカソード導電性多孔質層205より供給される電子とにより還元反応が起き、水が生成される。
<第2の実施形態>
図3は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図であり、図3(a)はその斜視図、図3(b)は上面図、図3(c)は側面図である。図3の燃料電池スタック300は、第1の燃料電池層301と、第2の燃料電池層302とを交互に積層してなり、トータルの積層数は8である。各層は、5個の単位電池303から構成されており、燃料電池スタック300全体として40個の単位電池を有する。上記第1の実施形態との相違は、燃料電池層の積層数である。積層数を増やすことにより、より高電圧を出力することができる。
燃料電池スタック300において、各単位電池303の高さ、すなわち、燃料電池層の厚みは等しい。これにより、燃料電池層内の単位電池の高さが揃うため、単位電池を複数の単位電池にまたがって積層した場合でも、上下の単位電池同士の接触が良好となり、接触不良を低減させることができる。また、合計8つの燃料電池層は、燃料電池層の面方向に対して垂直な方向に積層されている。これにより、直列に電気配線する場合、導電経路が短く、抵抗損失を少なくすることができる、また、燃料電池層を、燃料電池層の面方向に対して垂直な方向に積層することにより、配線等によるデッドスペースを減らし、燃料電池スタックが占める空間体積を小さくすることができるため、小型化、高出力密度化の燃料電池スタックとすることができる。
ここで、燃料電池スタック300においては、すべての燃料電池層が同じ形状を有しているが、必ずしもすべてが同じ形状を有している必要はない。また、燃料電池スタック300を構成する単位電池303の形状はすべて同じであってもよいし、その一部が異なる形状を有していてもよい。燃料電池スタック300を構成する燃料電池層のうち、少なくとも2層が同じ形状を有している限り、それらの燃料電池層において、上記した製造コストの低減や積層構造構築の容易化を図ることができる。また、一の燃料電池層内の少なくとも2つの単位電池が同じ形状を有している限り、それらの単位電池において、上記した単位電池の形状の違いによる特性のばらつきを抑制することができる。
その他の燃料電池スタックの構造、それに起因する効果、および可能な変形については上記第1の実施形態と同様である。なお、本実施形態では積層方向から見て、隙間領域の重複部分の形状が四角形となるように燃料電池層を積層しているが、3角形、5角形、6角形などの多角形となる様に積層することも勿論可能である。各単位電池の内部構造は、上記第1の実施形態と同様とすることができる。
ここで、たとえば図3に示されるような、同一形状の直方体状単位電池が等間隔を空けて複数配置されてなる複数の燃料電池層を、燃料電池層を構成する単位電池と、当該燃料電池層に隣接する燃料電池層を構成する単位電池とが直交するように積層してなる燃料電池スタックにおいて、図3を参照して、単位電池の幅X1は、単位電池の作りやすさの点から、1mm以上が好ましい。また、単位電池が交差する面積が小さい方が酸素の拡散速度が大きくなること、また、生成した水が水蒸気として速やかに排出されることを考慮すると、単位電池の幅X1は、できるだけ狭いことが好ましく、具体的には、5mm以下であることが好ましい。単位電池の幅X1に対する、単位電池間の隙間領域の幅(単位電池間の間隔)X2(X2/X1)は、燃料電池層に占めるMEAの割合が大きい方が燃料電池スタックの出力密度が高くなるという点で、1以下であることが好ましく、また、燃料電池スタック内部への空気の取り込みやすさの点からは、0.2以上であることが好ましい。また、X1およびX2が上記範囲を満たす場合において、単位電池に含まれるカソード導電性多孔質層の厚みX3(燃料電池スタックにおいて、カソード導電性多孔質層がスペーサに隣接する場合(後述の図61および図62参照)には、これらの合計厚み)は、燃料電池スタック内部への空気の取り込みやすさ、拡散のしやすさの点から、0.2mm以上であることが好ましく、燃料電池スタックの出力密度の向上の点からは、2mm以下であることが好ましい。
<第3の実施形態>
図4は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。本実施形態の燃料電池スタックは、各燃料電池層の形状および各単位電池の形状については、上記第2の実施形態と類似するが、単位電池の内部構造に特徴を有している。すなわち、単位電池401は、アノード触媒層402、電解質膜403およびカソード触媒層404をこの順に積層してなる。かかる構成によれば、導電性多孔質層およびセパレータが不要となるため、部材の点数が少なくなり、低コスト化、高出力密度化を図ることができる。
また、本実施形態の燃料電池スタックの各燃料電池層は、上記実施形態と同様、間隔をおいて配置した複数の単位電池401からなり、1つの燃料電池層の単位電池はそれぞれ、隣接する燃料電池層の単位電池と直交するように配列されている。これにより、隙間領域に面するアノード触媒層およびカソード触媒層の面積の割合が増加するため、燃料および酸化剤の供給を効率的に行なうことができる。各燃料電池層内に配置される単位電池の間隔は、上記第1の実施形態の場合と同様である。
カソード触媒層404には、メタノールの酸化反応の活性が乏しく、酸素とプロトンとの還元反応の活性が高い、選択性の高い触媒を用いることが好ましい。これにより、メタノールがカソード触媒に到達した際にも、カソード電位を高くすることができ、高い発電効率を達成することができる。上記選択性の高い触媒としては、白金粒子上にヘテロポリ酸(H3PW1240)を担持させた複合触媒、コバルトポルフィリン錯体の触媒、クロロ置換型コバルトビスジカルボライド錯体を吸着させた白金触媒、Ru(ルテニウム)とSe(セレン)との合金触媒、PtとCoなどとの合金触媒、およびタングステン炭化物などの金属炭化物などが挙げられる。
アノード触媒層402には、メタノールが主に酸化され、酸素の還元反応が乏しくなる触媒または触媒層構造を用いることが好ましく、アノードのメタノール酸化反応を促進する材料で構成されていることが好ましい。アノード触媒層402の選択性の高い触媒層構造としては、たとえば、触媒粒子であるPtまたはPtとRuとの合金の金属微粒子を担持した電気伝導性の高い炭素系材料(たとえば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン)の担持体とナフィオンなどのプロトン伝導性の高分子バインダーとからなり、該炭素系材料の表面がカルボン酸基やヒドロキシル基などの親水性官能基で修飾されているものを挙げることができる。親水性官能基により、アノード触媒層402にはメタノール水溶液が浸透し、メタノール水溶液の被膜が形成される。これにより、アノード触媒粒子まで到着する酸素量は、アノード触媒層402に存在するメタノール水溶液の量よりはるかに少なくなる。その結果、アノード触媒層402における反応に対する酸素の影響を抑制することができ、酸素の影響による燃料電池の出力特性の低下をほとんど回避することができる。
本実施形態においては、メタノール水溶液および酸素の供給は、両者を混合して、吹き付ける、またはポンプで供給することにより、実施されることが好ましい。燃料電池スタックに3次元的に連通して形成された隙間領域により圧力損失が低減されるため、ポンプ等の補機の消費電力を低減しつつ、混合燃料を燃料電池スタックの隅々まで供給することができる。
<第4の実施形態>
図5は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。本実施形態の燃料電池スタックは、第1の燃料電池層501と第2の燃料電池層502とを交互に積層してなる。第1の燃料電池層501は、離間して配置された、5個の第1の単位電池503を含み、これらの第1の単位電池503の間に隙間領域を有している。各第1の単位電池503は、図2に示される構造と同様の内部構造を有している。すなわち、各第1の単位電池503は、アノード導電性多孔質層509、アノード触媒層508、電解質膜507、カソード触媒層506、カソード導電性多孔質層505をこの順で有する。第2の燃料電池層502は、1個の第2の単位電池からなり、隙間領域を有しない。第2の単位電池の内部構造は、第1の単位電池503と同じである。第1の燃料電池層501内に配置される単位電池の間隔は、上記第1の実施形態の場合と同様である。
このような構造においても、第1の燃料電池層501の隙間領域から燃料電池スタック内部に燃料または酸化剤を補機を用いずに取り込むことができる。また、補機を用いる場合においても、内部に燃料または酸化剤を供給する際の圧損を低減することができ、少ない消費電力で供給することができる。隙間領域を有する第1の燃料電池層501が、隙間領域を有しない第2の燃料電池層502と、これと隣り合う他の隙間領域を有しない第2の燃料電池層502との間のスペーサの役割を果たし、スペーサ部分での発電を可能とし、また、電気的に直列な配線を容易にしている。
<第5の実施形態>
図6は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。本実施形態の燃料電池スタックは、5個の単位電池601から構成される、同一形状の燃料電池層を5つ積層してなる構造を有する。各単位電池601は、図2に示される構造と同様の内部構造を有し、すべて同一形状を有している。すなわち、各単位電池601は、アノード導電性多孔質層602、アノード触媒層603、電解質膜604、カソード触媒層605、カソード導電性多孔質層606をこの順で有する。本実施形態においては、5個の単位電池601と隙間領域を有する燃料電池層の上に、同一形状を有する燃料電池層を、単位電池と隙間領域の位置が一致するように積層しているため、個々の隙間領域が連結された、大きな隙間領域を合計4個有する構造となっている。各燃料電池層内に配置される単位電池の間隔は、上記第1の実施形態の場合と同様である。
このような構造においても、燃料電池層の隙間領域から燃料電池スタック内部に燃料または酸化剤を補機を用いずに取り込むことができる。また、補機を用いる場合においても、内部に燃料または酸化剤を供給する際の圧損を低減することができ、少ない消費電力で供給することができる。
<第6の実施形態>
図7は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。本実施形態の燃料電池スタックは、離間して配置された8個の単位電池703からなる第1の燃料電池層701と、離間して配置された7個の単位電池703からなる第2の燃料電池層702とを交互に積層してなる。単位電池703の構造は図2と同様である。すなわち、各単位電池703は、アノード導電性多孔質層704、アノード触媒層705、電解質膜706、カソード触媒層707、カソード導電性多孔質層708をこの順で有する。第1の燃料電池層701および第2の燃料電池層702は、各単位電池間に隙間領域を有し、隣接する二つの燃料電池層により、隙間領域が塞がれている構造である。各燃料電池層は直列に積層されており、隣接する燃料電池層同士は、アノード導電性多孔質層とカソード導電性多孔質層とが電気的に接触し、電子の導電経路を形成している。各燃料電池層内に配置される単位電池の間隔は、上記第1の実施形態の場合と同様である。
このような構造においても、燃料電池層の隙間領域から燃料電池スタック内部に燃料または酸化剤を補機を用いずに取り込むことができる。また、補機を用いる場合においても、内部に燃料または酸化剤を供給する際の圧損を低減することができ、少ない消費電力で供給することができる。
<第7の実施形態>
図8は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。本実施形態の燃料電池スタックは、離間して配置された5個の単位電池803からなる第1の燃料電池層801と、離間して配置された2個の単位電池803からなる第2の燃料電池層802とを交互に積層してなり、各単位電池間に隙間領域を有している。単位電池803の内部構造は図2と類似する。すなわち、各単位電池803は、アノード導電性多孔質層804、アノード触媒層805、電解質膜806、カソード触媒層807、カソード導電性多孔質層808をこの順で有する。各燃料電池層内に配置される単位電池の間隔は、上記第1の実施形態の場合と同様である。
ここで、各単位電池803を構成する上記部材の積層方向は、燃料電池層の積層方向対して垂直である。また、各単位電池803は、燃料電池層の積層方向の上下面に絶縁層809を有しており、これにより、各燃料電池層は電気的に絶縁されているため、各単位電池の電流は、アノード導電性多孔質層804およびカソード導電性多孔質層808を伝って端部まで引き出され、そこで集結されて外部に取り出される。かかる構成によれば、アノード導電性多孔質層804の表面およびカソード導電性多孔質層808の表面が、単位電池の隙間領域に面する単位電池表面をより多く占有できるため、燃料または酸化剤の供給が良くなり、拡散抵抗を低減させることができる。これにより、発電効率を向上させることができる。
また、燃料電池層の隙間領域から燃料電池スタック内部に燃料または酸化剤を、補機を用いずに取り込むことができる。また、補機を用いる場合においても、内部に燃料または酸化剤を供給する際の圧損を低減することができ、少ない消費電力で供給することができる。
<第8の実施形態>
図9は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。本実施形態の燃料電池スタックは、離間して配置された3個の単位電池903からなる第1の燃料電池層901と、離間して配置された5個の単位電池903からなる第2の燃料電池層902とを交互に積層してなる。各単位電池903は、セパレータ904、アノード導電性多孔質層905、アノード触媒層906、電解質膜907、カソード触媒層908、カソード導電性多孔質層909をこの順で有する。各単位電池903を構成する上記部材の積層方向は、燃料電池層の積層方向と平行である。各燃料電池層は、各単位電池間に隙間領域を有し、隣接する二つの燃料電池層により、隙間領域の一部が塞がれている構造である。各燃料電池層は直列に積層されており、隣接する燃料電池層は、カソード導電性多孔質層909とセパレータ904とが電気的に接触し、電子の導電経路を形成している。各燃料電池層内に配置される単位電池の間隔は、上記第1の実施形態の場合と同様である。
図10は、図9における単位電池903を拡大して示す断面図である。図10に示されるように、単位電池903は、アノード導電性多孔質層905の、アノード触媒層906に接する面とは反対側の面に、燃料流路910が形成されたセパレータ904を有している。
ここで、セパレータ904は、導電性材料で構成されていることが好ましい。また、燃料がセパレータ904を通って単位電池903外に排出されないようにするため、セパレータ904は、開孔を有しないことが好ましい。また、燃料が単位電池903外部に排出されないようにするため、図10における左右の端部において、セパレータ904と電解質膜907とが、アノード触媒層906およびアノード導電性多孔質層905を介してシール剤または接着剤で接着されていることが好ましい。
燃料は、ポンプなどの補機により燃料流路910を通ってアノード導電性多孔質層905に到達し、アノード導電性多孔質層905を通ってアノード触媒層906に供給される。そのため、生成する二酸化炭素は、燃料流路910を通って未反応の燃料とともにポンプなどの補機により、外部に排出される。
本発明においては、燃料の供給流路が酸化剤の供給流路と完全に分離されている構造の場合、燃料電池層の隙間領域を通って供給される物質は、必ずしも酸化剤の空気である必要はなく、燃料が隙間領域を通って供給されてもよい。この場合、アノードとカソードとを逆にした構成とし、カソード導電性多孔質層に設けた流路を介して酸化剤を供給することができる。たとえば、図10に示される実施形態の場合、酸化剤をセパレータ904でセパレートし、セパレータ904内に形成された燃料流路910を通して供給するとともに、還元剤を燃料電池層の隙間領域から供給するようにしてもよい。
本実施形態の燃料電池スタックの構造によれば、燃料電池層の隙間領域から燃料電池スタック内部に空気を、補機を用いずに取り込むことができる。また、補機を用いる場合においても、内部に燃料または酸化剤を供給する際の圧損を低減することができ、少ない消費電力で供給することができる。
<第9の実施形態>
図11は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図であり、図11(a)はその上面図、図11(b)は側面図である。本実施形態では、各燃料電池層において、単位電池1101間に設けられた隙間領域が燃料電池スタックの中心部で広くなるように単位電池1101が配置されている。すなわち、各燃料電池層において、各単位電池1101は、燃料電池層の中央近くに位置する隙間領域の幅が、外周部近くに位置する隙間領域の幅よりも大きくなるように配置されている。結果、燃料電池スタックの中心部に位置する隙間領域の空間体積は、燃料電池スタック端部に位置する隙間領域の空間体積より大きい。このように、隙間領域が燃料電池層の面内の少なくとも1方向において、燃料電池層の中央部分に進むに従って大きくすることにより、燃料電池スタックの側面から見て、中央の縦ラインおよび、燃料電池スタックの上面から見て、中央の隙間から奥行き方向に向かうラインの隙間領域が広くなる。自然空気供給では燃料電池スタックの中心部付近はスタック外周付近に比べて酸素濃度が低くなるが、本実施形態の燃料電池スタック構造によれば、燃料電池スタック内部へ、たとえばファンやブロアーを用いて、図11(b)に示すように、燃料電池スタック下面から上面方向(図11(a)の平面の奥から手前方向)に、空気を燃料電池スタック中心部へ送る際の圧力損失が小さくなるため、燃料電池スタック中心部まで空気が供給されやすくなり、燃料電池スタックの中心部付近の酸素濃度を高めることができる。その結果、燃料電池スタックの発電特性を向上させることができる。なお、各単位電池1101の内部構造は、図2と同様の構造とすることができる。
本実施形態において、単位電池1101は、電解質膜を基準にカソード側の面が空気の流れに対し対向する向き、すなわち、電解質膜を基準にカソード触媒層側が空気の流れの上流側に、アノード触媒層側が下流側となるような向きに配置されることが好ましい。これにより、空気がカソード導電性多孔質層を通って、カソード触媒層まで到達しやすくなり、酸素の拡散抵抗の低減を図ることができる。このことは、発電効率の向上および燃料電池スタックの高出力密度化をもたらす。また、かかる向きに単位電池を配置することにより、燃料電池スタック内部と外部との酸素分圧の差を少なくすることができ、発電面積あたりの発電量の差(発電ムラ)を低減させることができる。これにより、局所的に発電量が増加する部分を低減することができるため、局所的な熱による負荷や、触媒の過電圧による負荷を抑制することができ、出力特性の低下を抑えることができる。さらに、燃料電池スタックの発電により、内部の空気が温められ、温められた空気は上方へ対流するため、中央部の縦ラインの空間が大きいことにより、対流の効果を大きくすることができる。また、燃料電池スタック内部の熱を効率よく排出することができるため、過度の温度上昇を防ぐことができる。
本実施形態では、燃料電池スタックのいずれの面が上を向いても、中央の縦ラインの隙間領域が大きいため、空気の熱対流により、空気の燃料電池スタック内部への供給を促進することができる。したがって、ポンプやファン等の補機を用いなくても良好に空気を燃料電池スタック内部に取り込むことができる。
ファンやブロアーを用いる場合には、図11(a)に示される面が上方向となるように固定配置し、熱対流の流れと同じ方向にファンやブロアーにより、空気の流れを起こさせることが好ましい。これにより、ファンやブロアーから供給される空気の量をより少なくすることができるため、より少ない消費電力で燃料電池を発電させることができる。また、ファンを用いて空気供給を行なう場合には、図12に示されるように、燃料電池スタック内部にファン1201を備えることが好ましい。また、燃料電池システムが2以上の燃料電池スタックを有する場合には、これら燃料電池スタックの間にファンを備えることが好ましい。これにより、内部の酸素分圧の低下した空気を強制的に外部に排出することができるとともに、新たな空気が取り込まれるため、効率的に燃料電池スタック内部の空気を入れ替えることができる。
本実施形態の燃料電池スタックの場合、全体の発電面積自体は、前述した図3の燃料電池スタックと同等であるが、燃料電池層の中央部の発電面積密度(燃料電池密度)を低減させ、燃料電池スタック内部への空気供給の圧力損失を低減させながら、空気供給が行なわれやすい燃料電池スタック外周部の燃料電池の発電面積密度(燃料電池密度)を大きくすることで、燃料電池スタックの発電特性および出力密度を向上させることができる。本実施形態によれば、かかる燃料電池スタックの発電特性および出力密度の向上を、燃料電池スタック内部の隙間領域を適宜に設計するという簡便な方法にて実現できる。本実施形態において、隙間領域の幅(単位電池間の距離)は、好ましくは、隙間が小さいところで0.1mm〜2mm、大きなところで2mm〜5mm程度である。
ここで、上記してきた第1〜第9の実施形態にかかる燃料電池スタックはいずれも、燃料電池スタック内の空気が、発電時に発生する熱により、暖められ、熱対流を起こした際に、地表面に対し、上面に空気が抜けやすくなるように、配置されることが好ましい。また、熱対流の空気の流れに対し、電解質膜を基準にカソード触媒層側が空気の流れの上流側に、アノード触媒層側が下流側に位置していることが好ましい。これにより、空気がカソード導電性多孔質層を通って、カソード触媒層まで到達しやすくなるため、酸素の拡散抵抗を図ることができる。このことは、発電効率の向上および燃料電池スタックの高出力密度化をもたらす。
また、上記してきた第1〜第9の実施形態にかかる燃料電池スタックのいずれにおいても、ファンやブロアー、エアポンプなどの補機により、空気の流れを生じさせて、空気を燃料電池スタックに供給する場合、熱による対流の方向と同じ方向に補機による空気の流れを生じさせることが好ましい。これにより、熱による対流の流れを妨げず、燃料電池スタック内部の空気の流れを良くすることができる。前述したように、これらの空気の流れに対し、電解質膜を基準にカソード触媒層側が空気の流れの上流側に、アノード触媒層側が下流側に位置していることが好ましい。
<第10の実施形態>
図13は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図であり、図13(a)はその側面図、図13(b)は上面図である。本実施形態の燃料電池スタックでは、図13(a)に示すように、中央の燃料電池層1301が最も厚くなっており、燃料電池スタックの端の方向(図13(a)における上下方向)に進むに従って、燃料電池層の厚みが薄くなる構成としている。図13(a)において、燃料電池スタックの隙間領域は中央のラインが広く、燃料電池スタックの上下端により近いラインほど隙間領域が狭くなっている。隙間領域の、燃料電池層の積層方向に対して垂直な面における断面積はそれぞれ等しい(図13(b)参照)が、燃料電池層の厚み(単位電池の厚み)を中央に進むほど厚くしているため、隙間領域の空間体積は、中心に進むに従い大きくなっている。各燃料電池層内に配置される単位電池の間隔は、上記第1の実施形態の場合と同様である。本実施形態の構成によっても、図11の燃料電池スタックと同様の効果を得ることができる。
本実施形態の燃料電池スタックは、たとえば、ファンやブロアーにより空気の流れが、図13に示される矢印の方向から流れて、燃料電池スタック内部に供給されるように設置することができる。これにより、燃料電池スタック内部の圧力損失が低減し、少ないファンやブロアーの消費電力で空気を燃料電池スタック内部に供給することができ、燃料電池システム全体の出力密度を向上させることができる。
図14は、図13(a)に示される領域Aを拡大して示す詳細図である。各単位電池の内部構造は、図2に示した構造と同じである。本実施形態では、図14に示されるように、燃料電池層の厚みを、カソード導電性多孔質層1405の厚みを調整することにより変化させている。ただし、燃料電池層の厚みの調整は、カソード導電性多孔質層1405に限らず、各部材の厚みを変化させて実施することもできる。
また、燃料電池層が交差して接触している部分では、カソード導電性多孔質層1405の断面から空気が供給されカソード触媒層1404に到達するため、カソード導電性多孔質層1405の厚みが厚いほうが酸素の供給量が増加し、高電流領域まで出力を取れるので好ましい。これにより、発電特性を向上させることができる。すなわち、燃料電池スタック中央部のカソード導電性多孔質層1405の厚みを大きくすることにより、燃料電池スタック内部に空気を取り込みやすくなるだけでなく、交差して接触している部分の発電特性を向上させることができる。また、燃料電池スタックの外表面近くでは、中心部付近に比べ、空気が良好に供給されるため、空気中の酸素分圧も高いことから、比較的良好な発電特性が得られる。したがって、燃料電池スタック中央部における燃料電池層のカソード導電性多孔質層の厚みを厚くし、空気の通りを良好にする一方、燃料電池スタックの外表面近くにおける燃料電池層のカソード導電性多孔質層の厚みを薄くしても、燃料電池スタック全体としての出力密度は向上する。
<第11の実施形態>
図15は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を一部拡大して示す断面模式図である。本実施形態の燃料電池スタックにおける全体の構成は、たとえば図3に示すような構成とすることができる。各燃料電池層内に配置される単位電池の間隔は、上記第1の実施形態の場合と同様である。本実施形態においては、積層され隣接する燃料電池層間の接触部位に位置するカソード導電性多孔質層1506aの厚みが、該接触部位以外のカソード導電性多孔質層1506bの厚みより厚くなっている。カソード導電性多孔質層としては、該接触部位のみ厚い、一枚のカソード導電性多孔質層を用いることもできるし、カソード導電性多孔質層を該接触部位のみに二枚以上重ねることにより厚みを確保してもよい。該接触部では、カソード導電性多孔質層の層厚方向に対し垂直平面方向にカソード導電性多孔質層内を空気が拡散して、カソード触媒層1504に酸素が供給されるため、該接触部のカソード導電性多孔質層の厚みが厚いほど、カソード導電性多孔質層に入り込める酸素の量が多くなり、カソード触媒層1504に多くの空気を供給できる。したがって、取り出せる限界の電流量が増え、また、カソード触媒層1504近傍の酸素の量が増えることで、酸素の拡散抵抗が減少し、発電効率を向上させることができる。
また、該接触部位以外に位置するカソード導電性多孔質層の厚みを薄くすることにより、燃料電池スタック内部の隙間領域が大きくなり、空気の通り道が広くなるため、燃料電池スタック内部へ空気が入りやすく、また、燃料電池スタック内部の空気の拡散が良好となる。さらに、カソード導電性多孔質層内を酸素が移動してカソード触媒層まで到達する距離が短くなるため、酸素の拡散抵抗を低減させることができ、発電特性を向上させることができる。該接触部以外の燃料電池層の厚みが低減される限り、燃料電池スタック内部の空気の拡散は良好となるため、薄くする層はカソード導電性多孔質層に限定されるものではない。ただし、酸素の拡散抵抗の低減により発電効率を向上させるという点においては、該接触部のカソード導電性多孔質層の厚みを厚くし、該接触部以外の部分のカソード導電性多孔質層の厚みを薄くすることが好ましい。これにより、燃料電池スタックの出力密度を向上させることができる。
<第12の実施形態>
図16は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図であり、図16(a)は上面図、図16(b)は側面図である。本実施形態では、図16(a)に示されるように、各燃料電池層を構成する複数の単位電池のうち、燃料電池スタックの中央部に位置する単位電池1601として、燃料電池層の中央に進むに従って幅が小さくなっている単位電池を使用している。ここでいう「幅」とは、単位電池の長手方向に対して垂直な方向の幅である。これにより、燃料電池層の中央部における隙間領域の断面積(積層方向と垂直な方向における断面積)および空間体積がその周辺部と比較して大きくなっている。なお、各単位電池は図2と同様に構成されている。各燃料電池層は、同じ形状を有しており、隣接する燃料電池層において、一方の燃料電池層を構成する単位電池と、他方の燃料電池層を構成する単位電池とが直交するように、各層が積層されている。各燃料電池層内に配置される単位電池の間隔は、上記第1の実施形態の場合と同様である。
かかる構成によれば、たとえば図16(b)に示すように、燃料電池スタックの下面から上面(図16(a)に示される面)方向に空気が流れるように燃料電池スタックが設置された場合、空気の流れる方向に対し、垂直平面内の中央部に近づくほど隙間領域が大きくなるため、燃料電池スタックの中央部を通る空気の圧力損失が低減し、燃料電池スタック中心部まで空気が供給されやすくなり、燃料電池スタックの発電特性を向上させることができる。また、空気が燃料電池スタックの中心部まで流れやすくなることで、ファンやブロアーなどの補機により供給する空気の圧力を低減させることができる。したがって、補機の消費電力を低減させることができ、燃料電池スタックと補機とを含めた燃料電池システム全体の出力密度を増加させることができる。また、図11に示した実施形態と同様の効果が得られる。なお、図16では、中心部に近づくほど連続的に単位電池の幅が細くなる例を示したが、ステップ状(階段状)に単位電池の幅を細くしてもよい。
<第13の実施形態>
図17は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す上面図である。本実施形態では、各燃料電池層は、5つの櫛歯を有する1つの櫛型の単位電池1701から構成されている。すなわち、各燃料電池層1701は、燃料電池層内に長手方向を有して延伸した形状を有した分岐部1702を備える一つの単位電池から構成されている。各分岐部1702の延伸方向は同一であり、各分岐部1702は平行に配置されている。ここで、櫛型とは、延伸する櫛歯部がすべて一端にて接合されて一つになっている形状を指す。本実施形態において、隙間領域は、櫛歯と櫛歯の間である。各燃料電池層は、同一の形状を有しており、90℃交互に回転して積層されている。各単位電池の内部構造は図2と同様の構造とすることができる。各櫛歯の間隔は、上記第1の実施形態の場合と同様である。
かかる構造によれば、少なくとも燃料電池スタックの側面の内の2面、ならびに上面および下面に空気を取り込む隙間を有しているので、熱による空気の対流が起こりやすく、ポンプやファンなどの補機を用いなくても燃料電池スタック内部に良好に空気を取り込むことができる。また、ポンプやファンなどの補機を用いた場合でも、少ない消費電力で空気を供給することができる。
ここで、図17に示すように、燃料電池層の積層方向からみたときに、櫛型の燃料電池層の付け根の部分においても隙間領域が形成されるように、燃料電池層を積層することが好ましい。これにより、櫛型の付け根の部分がある面からも燃料電池スタック内部に空気を取り込むことができる。また、本実施形態の燃料電池スタックを機器に搭載する際、該燃料電池スタックの二面が機器の壁面によって塞がれる場合には、櫛型単位電池の付け根部分(櫛歯の連結部分)が機器の壁面側にくるように配置することが好ましい。
本実施形態の燃料電池スタックにおいては、上記のように、燃料電池層は一つの単位電池から構成される。このような構成は、複数の単位電池を配列させる手間を省くことができ、隙間領域の位置決めが容易で、落下等の作業上のミスによる歩留まりの低下を抑えることもできるため、製造コストを低減することができるという点で好ましい。また、外周部でつながっている部分(櫛型単位電池の付け根部分)にて発電面積を増やすことができる。
また、図示しないが、上面(図17に示される面)から見た分岐部(櫛歯部分)の幅(分岐部の長手方向に対して垂直な方向の幅)が、燃料電池層の面内において、燃料電池層の中央に進むに従って、細くなることが好ましい。これにより、図16の燃料電池スタックと同様の効果をさらに得ることができる。
長手方向に延伸している部分と、該延伸部分が一つに繋がっている部分とを有するその他の構造として、図18(a)〜(c)に示す構造を例示することができる。図18(a)はアンテナ形(王形)、図18(b)は歯車形、図18(c)はサーペンタイン形である。サーペンタイン形はたとえば、アノード極の燃料をポンプなどの補機を用いて、隅々まで流し、循環させやすく、燃料電池以外の部分での流路の体積を小型化できるという点で好ましい。
<第14の実施形態>
本実施形態の燃料電池スタックについて、図19および図20を用いて説明する。図19は、本実施形態の燃料電池スタックの上面図であり、図20は、本実施形態の燃料電池スタックにおける最上層の燃料電池層を構成する単位電池の断面図である。図19に示されるように、各燃料電池層を形成する単位電池1901が、燃料電池層内で扇状に配置されており、各単位電池1901の長さ方向の一端が一点に集まるように隙間領域を有して配置されることを特徴とする。図19に示されるような単位電池の配置により、燃料電池層を積層した場合、積層方向から見て、中央部の隙間領域を大きくすることができる。
本実施形態において、最上層の燃料電池層を構成する単位電池は、図20に示すように、カソード導電性多孔質層2005上に電子供給電極に相当するカソード集電体2008を、アノード導電性多孔質層2004上に電子取り出し電極に相当するアノード集電体2009を配置した内部構造を有することが好ましい。カソード集電体2008は、カソード導電性多孔質層2005と電気的に接しており、燃料電池スタックの隙間領域にかぶさって、空気の拡散が悪くなることがないように、上面から見て、単位電池と同じ形状であることが好ましい。
なお、本発明のような単位電池を井型に積層し、燃料電池層間を電気的に直列に配置した燃料電池スタックにおいては、燃料電池スタックの両端以外は、面内方向に電流が流れる部分がわずかとなるため、燃料電池スタックの内部を構成する燃料電池層の単位電池は、必ずしもアノード集電体およびカソード集電体を要しない。たとえば、燃料電池スタックの最上層の燃料電池層を構成する単位電池のカソード極(すなわち、電解質膜を基準にカソード触媒層側)が該燃料電池層の最上部に位置し、燃料電池スタックの最下層の燃料電池層を構成する単位電池のアノード極(すなわち電解質膜を基準にアノード触媒層側)が該燃料電池層の最下部に位置する場合においては、燃料電池スタックの最上層にカソード集電体のみをカソード触媒層と電気的に接続した状態で設け、燃料電池スタックの最下層にアノード集電体のみをアノード触媒層と電気的に接続した状態で設け、燃料電池スタックの内部を構成する燃料電池層の単位電池にアノード集電体およびカソード集電体を設けない構成としてもよい。このような構成にすると、燃料電池スタックの部品点数の削減、厚みの低減、コストの削減等を図ることができる。以下、アノード集電体とカソード集電体について説明する。
アノード集電体は基本的に、上述したように燃料電池スタックの電子取り出し電極に相当し、アノード導電性多孔質層と電子の授受を行なう機能を有する。アノード集電体は、その長さ方向(面内方向)に電流を流すため、電子伝導の距離がアノード導電性多孔質層と比較して長くなる。したがって、導電性の良い材料を用いることが好ましい。アノード集電体の必要性は、アノード導電性多孔質層の導電性によって左右され、アノード導電性多孔質層が、たとえばカーボン材料、導電性高分子等であり導電性が比較的低い場合には、燃料電池スタックにアノード集電体を設けることで導電性を向上させることができる。逆に、アノード導電性多孔質層が、たとえば金属等であり、導電性が比較的高い場合には、特にアノード集電体を設ける必要性はない。また、アノード導電性多孔質層の導電性が比較的低い場合には、アノード導電性多孔質層の電子伝導を補助し、電子伝導抵抗を下げる目的で単位電池毎にアノード集電体を設けてもよく、この場合、単位電池の構成にアノード集電体が加えられる。
アノード集電体の材質は、電圧降下を抑制するため電子伝導抵抗の低いAu、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su等の金属やSiおよびこれらの窒化物、炭化物等、さらにステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金等を用いることが好ましく、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことがより好ましい。また、Cu、Ag、Zn等の、酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属材質や、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等を表面コーティングとして用いることができる。
アノード集電体の形状は、特に限定はないが、アノード触媒層で生成した排ガスの排出効率が良好である点で、アノード導電性多孔質層の貫通もしくは連通する穴とアノード集電体に設ける穴が連通していることが好ましい。アノード集電体は、層厚方向に貫通する複数の穴を有する多孔質金属層であることが好ましく、このような形状としては、板や箔に複数の穴を開けた形状またはメッシュ状またはエキスパンドメタル状が好ましく例示できる。アノード導電性多孔質層とアノード集電体との穴を連通させることで、二酸化炭素を効率よく排出することができ、アノード触媒層およびアノード導電性多孔質層内の二酸化炭素の分圧を低減させることができる。これにより、アノード触媒層とアノード導電性多孔質層との界面やアノード集電体とアノード導電性多孔質層との界面の剥離を抑制することができる。
カソード集電体は、上述したように、燃料電池スタックの電子供給電極に相当し、カソード導電性多孔質層と電子の授受を行なう機能を有する。カソード集電体は、その長さ方向(面内方向)に電流を流し、電子伝導の距離がカソード導電性多孔質層と比較して長くなるため、導電性の良い材料を用いることが好ましい。カソード集電体の必要性は、カソード導電性多孔質層の導電性によって左右され、カソード導電性多孔質層が、たとえばカーボン材料、導電性高分子等であり導電性が比較的低い場合には、燃料電池スタックにカソード集電体を設けることで導電性を向上させることができる。逆に、カソード導電性多孔質層が、たとえば金属等であり、導電性が比較的高い場合には、特にカソード集電体を設ける必要性はない。また、カソード導電性多孔質層の導電性が比較的低い場合には、カソード導電性多孔質層の電子伝導を補助し、電子伝導抵抗を下げる目的で単位電池毎にカソード集電体を設けてもよく、この場合、単位電池の構成にカソード集電体が加えられる。
カソード集電体の材質は、アノード集電体と同様の材質とされてもよいが、たとえば、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Cr等の金属およびこれらの金属の窒化物、炭化物等、ステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Ptの合金等を用いることが好ましい。また、Cu、Ag、Zn、Ni等の酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、耐腐食性を有する貴金属および金属材質や、導電性高分子、導電性酸化物、導電性窒化物、導電性炭化物等を表面コーティングとして用いることができる。
カソード集電体の形状は、カソード集電体外部の空気中の酸素をカソード導電性多孔質層やカソード触媒層まで供給することが可能な連通孔を有していれば特に限定はないが、たとえば、発泡金属、金属織物、金属焼結体、板や箔に複数の穴を開けた形状または金属メッシュまたはエキスパンドメタルを用いることができる。カソード集電体の空隙率は、酸素の拡散抵抗を低減させるために30%以上が好ましく、電気抵抗を低減させるために95%以下が好ましく、50%〜85%であることがより好ましい。
本実施形態において、アノード集電体およびカソード集電体は、最上層の燃料電池層における積層方向の両端(下端および上端)に、電気的に接触されて配置されるため、単位電池毎に集電体を備える必要がなく、部材点数を減らすことができる。また、最上層の燃料電池層における積層方向の両端では、電流を単位電池の長さ方向に流して集電するため、導電性の高い集電体を設けることで電気伝導の抵抗を低減することができる。また、本実施形態においては、単位電池の長さ方向の一端が一点に集まるよう配置されており、カソード集電体およびアノード集電体は、それぞれプラス端子またはマイナス端子を形成している。図19に示される矢印は、カソード集電体の電流流れ方向を示している。集電体の端が一点に集まっているため、配線の引き回しが容易であり、燃料電池スタックの小型化や配線の引き回しによる空気の取り入れの阻害にならない。なお、後述するスイッチ回路を設ける場合、集電体は、他の単位電池に設けられる集電体とは絶縁されていることが好ましい。
ただし、上記に限らず、最上層の燃料電池層を構成する単位電池以外の単位電池、たとえば燃料電池スタックを構成するすべての単位電池がアノード集電体およびカソード集電体を備えていてもよい。このような構成とすると、燃料電池層を面内方向に電流が流れる部分における抵抗値を低減することができ、結果、発電効率を向上させ得る。
本実施形態の燃料電池スタックは、空気供給を阻害しない範囲で単位電池の形状を変形し、図21に示されるような構造とすることができる。図21の燃料電池スタックは、台形(扇形)形状の単位電池からなり、図19の燃料電池スタックと比較して発電面積が増加している。かかる構成により、高出力密度の燃料電池スタックが提供される。
<第15の実施形態>
図40は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。本実施形態の燃料電池スタックは、図3に示されるものと同様の「井型燃料電池スタック」が、隙間領域を有しない平板状の比較的大きな1つの単位電池からなる燃料電池層に積層された構造を有している。換言すれば、本実施形態の燃料電池スタックは、図3に示されるような井型燃料電池スタックの最下層(あるいは、図40に示される本実施形態の燃料電池スタックを上下反転させれば、最上層ともいうことができる。)の燃料電池層を、隙間領域を有しない平板状の比較的大きな1つの単位電池からなる燃料電池層とした構造ともいえる。すなわち、図5に示される燃料電池スタックとの相違点は、当該1つの単位電池からなる燃料電池層を、燃料電池スタックの下端または上端に配していることである。単位電池の内部構造は、特に制限されず、たとえば、アノード導電性多孔質層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層およびカソード導電性多孔質層をこの順で積層した構造とすることができ、より具体的には、図2に示される構造のほか、後述する単位電池構造などとすることができる。最下層(または最上層)の単位電池の長さおよび幅は、たとえば、井型燃料電池スタックを構成する単位電池の長手方向の長さと同等とすることができるが、これに限定されるものではなく、これより長くてもよいし、短くてもよい。また、隙間領域を有しない1つの単位電池からなる燃料電池層に積層される燃料電池スタックは、図3に示される構造のものに限定されるものではなく、上記したいずれの実施形態の燃料電池スタックであってよい。
燃料電池スタックを機器などに搭載する際には、多くの場合、燃料電池スタックは、機器内の基板4002の上に配置されるが、本実施形態の燃料電池スタックにおいては、好ましくは、図40に示されるように、基板4002上に配置する際、大きな1つの単位電池からなる燃料電池層側が当該基板4002側となるように配置する。もともと、基板4002側からは、空気を燃料電池スタック内に取り込むことができないため、このような配置構成における空気取り込み効率は、大きな1つの単位電池からなる燃料電池層を有しない燃料電池スタックのいずれかの面を基板側に配置した場合と同等である一方、大きな1つの単位電池からなる燃料電池層を用いたことにより、発電面積を増加させることができる。体積あたりの発電面積の増加により、体積出力密度を向上させることができる。
また、上記大きな1つの単位電池からなる燃料電池層上に井型燃料電池スタックを積層する構造とすることにより、当該大きな単位電池の発電により燃料電池スタック内部の温度が上昇し、燃料電池スタック内部の空気が暖められることで上昇気流を生じさせ、井型燃料電池スタック部分に設けられた3次元的な空気の通り道(隙間領域)にて、空気の流れを良くすることができるとともに、燃料電池スタックの温度上昇に伴い、発電効率を上昇させることもできる。特に、機器の設置面積が限られている場合には、本発明の燃料電池スタックのような、空気の供給に優れ、体積出力密度が向上した燃料電池スタックを用いることにより、燃料電池の厚みを抑えることができるとともに、所定の出力を供給できるため、極めて有効である。さらに、本発明によれば、燃料電池スタックを3次元的に積層し、コンパクト化することができるため、燃料電池スタックを搭載する機器側の設計、デザイン等の自由度が向上するという利点を得ることができる。たとえば、ワンセグチューナー内蔵の電子辞書のように小型の携帯機器であって、大きな消費電力を必要とする機器や、液晶画面の背後に燃料電池を搭載する場合があるが、本実施形態の燃料電池スタックを用い、上記したような配置構成で基板に配置することにより、小型機器や液晶画面背後の面積からはみ出すことなく搭載可能となるため、かかる搭載機器の大きさなどの設計、デザインの自由度を向上させることができる。
上記1つの単位電池からなる燃料電池層は、そのアノード側(電解質膜4001を基準にアノード触媒層側。図40においてアノード側は、「AN」として表記されている。同様に、電解質膜4001を基準にカソード触媒層側をカソード側という。図40においてカソード側は、「CA」として表記されている。以下同様。)が基板側となるように配置されることが好ましい。これにより、基板と燃料電池スタック間に空気の通り道を設ける必要が無くなるため、燃料電池層のアノード側を基板に接触させることができ、体積出力密度をより向上させることができる。
ここで、上述してきた本発明の実施形態はいずれも、隣接する燃料電池層同士を密着して接する構造を有するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。たとえば、隣接する燃料電池層の間にスペーサ層を配置する構成としたり、あるいは、1つ以上の燃料電池層をスペーサ層で置換した構成とすることもできる。ここで、スペーサ層とは、燃料電池スタック内に空間を作り出す役割を果たす、1または2以上の構成部材からなる層を指す。また、本明細書中においては、当該スペーサ層を構成する部材を「スペーサ」と称する。以下、スペーサ層を配した本発明の燃料電池スタックについて、実施の形態を示して詳細に説明する。
<第16の実施形態>
図41は、スペーサ層を備える燃料電池スタックの基本構成の一例を示す模式図であり、図41(a)はその斜視図、図41(b)はその側面図である。図41に示される燃料電池スタックは、離間して略平行に配置された5つの単位電池4101からなる燃料電池層4102と、その上に積層されたスペーサ層4104を備える。スペーサ層4104は、離間して略平行に配置された5つのスペーサ4103からなり、それぞれのスペーサ4103は、単位電池4101と交差するように配置されている。図41においては、それぞれのスペーサ4103は、単位電池4101と直交するように積層されている。このような配置構成により、燃料電池層4102が有する隙間領域とスペーサ層4104が有する隙間領域とが3次元的に連通した燃料電池スタックが実現されている。したがって、このようなスペーサ層を備える燃料電池においても、上記実施形態の燃料電池スタックの場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、各スペーサ4103は、導電性を有する材料から構成されており、これにより、各単位電池4101は、スペーサ4103を介して電気的に接続されている。
ここで、図41に示される燃料電池スタックにおいては、各単位電池4101は、直方体形状を有しており、スペーサ4103もまた同様に直方体形状を有しているが、単位電池およびスペーサの形状はかかる形状に限定されるものではない。たとえば、単位電池は、上記実施形態で示したように、直方体形状以外の短冊形状などの種々の形状を採ることが可能である。スペーサの形状は、単位電池の形状と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、燃料電池層を構成する単位電池数、スペーサ層を構成するスペーサ数は、特に限定されるものではなく、1以上であればよい。ただし、燃料電池層またはスペーサ層の少なくとも一方が隙間領域を有していることが好ましい。また、燃料電池層およびスペーサ層が有する隙間領域の幅(単位電池間またはスペーサ間の距離)は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、単位電池およびスペーサは、平行または略平行に配置されなくてもよい。さらに、スペーサと単位電池とが交差する角度は90°に限定されるものではなく、種々の角度を採り得る。本実施形態の他の可能な変形については、上記第1の実施形態などと同様である。なお、図41においては、燃料電池層の上にスペーサ層が積層されているが、スペーサ層の上に燃料電池層が積層されてもよい。
さらに、スペーサ層は、離間して配置されていない、あるいは一部においてのみ離間した少なくとも2つのスペーサを含んでいてもよい。たとえば、スペーサ層は、スペーサ側面の少なくとも一部が互いに接するように配置された少なくとも2つのスペーサを含むことができる。また、スペーサ層は、隙間領域を有していなくてもよい。たとえば、スペーサ層は、図5に示される第2の燃料電池層502のように、1つのスペーサからなる隙間領域を有しないものであってよい。
また、燃料電池スタック内部の空隙率を向上させ、良好な通気性を持たせるためには、スペーサは多孔質体からなることが好ましい。スペーサ層が隙間領域を有しない場合は特に、燃料電池スタック内での気体の移動をよりしやすくする観点から、スペーサ層を構成するスペーサは、多孔質体からなることが好ましい。なお、以上説明した種々の変形例は、下記の実施形態においても好ましく適用される。
<第17の実施形態>
図42は、スペーサ層を有する燃料電池スタックの好ましい一例を示す模式図であり、図42(a)は、その斜視図、図42(b)は上面図、図42(c)は側面図である。図示されるように、本実施形態においては、離間して略平行に配置された5つの単位電池4201からなる燃料電池層4202と、離間して略平行に配置された5つのスペーサ4203からなるスペーサ層4204とが交互に積層された構造を有している。かかる構造は、図41に示される基本構造を複数層積層した構造(図42の燃料電池スタックは、図41の基本構造を3層積層した構造である。)であり、図3の燃料電池スタックの一部の燃料電池層をスペーサ層で置換した構造ともいうことができる。本実施形態において、スペーサ層は、燃料電池層と同一の形状を有している。これにより、燃料電池スタック内部に燃料または空気を取り込みやすくなり、安定して積層させることができる。また、スペーサ層は電子導電性であることが好ましい。これにより、積層方向への直列配線が容易となり、また、導電経路が最短となるため、電気抵抗を抑えることができる。本実施形態の可能な変形については、上記第16の実施形態などと同様である。なお、本実施形態の燃料電池スタックにおいて、最下層および最上層は、それぞれ燃料電池層であってもよく、あるいはスペーサ層であってもよい。また、図42に示されるように、単位電池およびスペーサは、平面短冊形状であることが好ましい。これにより、凹部や凸部があるような短冊形状、筒型形状に比べて、積層したときの接触面積が大きくなるため、得られる燃料電池スタックの物理的強度が向上する。また、単位電池とスペーサとの接触面積が大きくなると、電気的に直列に接続して積層する際に電気的接触抵抗を低くすることができる。たとえば、カソード面を外周面とする円筒状の単位電池を用いた場合には、積層方向に直列配線接続できないという問題が生じる。電気的接触抵抗を低く抑えつつ積層方向に向かって電気的に直列配線接続を行なうことが可能となることにより、燃料電池層の面内方向に流れる電流値を減少させることができるため、集電体の厚みを減少、または集電体を不要とすることができ、燃料電池スタックを高集積化することが可能となる。その結果、燃料電池スタックの小型化、軽量化および低コスト化が可能となる。
また、図42に示される燃料電池スタックにおいては、燃料電池層を構成する単位電池の長手方向(延伸方向)と、スペーサの長手方向(延伸方向)とが直交するように積層されているため、単位電池とスペーサとの交差領域の面積が小さくなっている。これにより、交差領域の内部までの空気の拡散距離が短くなるため、交差領域における空気の供給が良好となる。また、単位電池の短手方向の長さをより短くすることによっても、交差領域の面積をより小さくすることができる。短手方向の長さを短くすることにより、単位電池のカソード側の面内方向における酸素の拡散距離が短くなり、空気を自然供給する場合においても酸素の拡散供給律速を起こりにくくすることができる。その結果、空気を供給するための補機を用いなくても燃料電池層を3次元的に積層した燃料電池スタック内部の単位電池のカソード側へ、より効率的に空気を供給することが可能となる。
ここで、たとえば図42に示されるような、同一形状の直方体状単位電池が等間隔を空けて平行に複数配置されてなる燃料電池層と、同様に同一形状の直方体状スペーサが等間隔を空けて平行に複数配置されてなるスペーサ層とを、燃料電池層を構成する単位電池と、当該燃料電池層に隣接するスペーサ層を構成するスペーサとが直交するように交互に積層してなり、かつ、燃料電池層を構成する各単位電池が、当該燃料電池層と隣り合う燃料電池層を構成する各単位電池の直下(または直上)に配置されている燃料電池スタックにおいて、図42を参照して、単位電池の幅W1は、単位電池の作りやすさの点から、1mm以上が好ましい。また、酸素の自然拡散速度から生じる供給律速の懸念を考慮すると、酸素の拡散距離はより短いことが好ましい点、スペーサと単位電池との交差領域の面積を小さくすることが好ましい点、および、生成した水が水蒸気として速やかに排出されることが好ましいことを考慮すると、水蒸気の拡散距離はより短いことが好ましい点に鑑みると、単位電池の幅W1は、できるだけ狭いことが好ましく、具体的には、5mm以下であることが好ましい。単位電池の幅W1に対する、単位電池間の隙間領域の幅(単位電池間の間隔)W2(W2/W1)は、燃料電池層に占めるMEAの割合が大きい方が燃料電池スタックの出力密度が高くなるという点で、1以下であることが好ましく、また、燃料電池スタック内部への空気の取り込みやすさの点からは、0.2以上であることが好ましい。また、W1およびW2が上記範囲を満たす場合において、スペーサの厚みW3は、燃料電池スタック内部への空気の取り込みやすさ、拡散のしやすさの点から、0.2mm以上であることが好ましく、燃料電池スタックの出力密度の向上の点からは、2mm以下であることが好ましい。
<第18の実施形態>
図43は、スペーサ層を有する燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図であり、図43(a)は、その斜視図、図43(b)は側面図である。図43に示される燃料電池スタックは、離間して略平行に配置された5つの単位電池4301からなる燃料電池層4302と、離間して略平行に配置された5つのスペーサ4303からなるスペーサ層4304とが交互に積層された構造を有している。図42の燃料電池スタックとの相違は、図42の燃料電池スタックにおいては、スペーサ層を介して隣り合う2つの燃料電池層に注目したとき、一方の燃料電池層を構成する各単位電池は、他方の燃料電池層を構成する単位電池の直下(または直上)に配置されている一方、図43の燃料電池スタックにおいては、一方の燃料電池層を構成する各単位電池は、他方の燃料電池層を構成する単位電池が存在しない領域、すなわち、燃料電池層が有する隙間領域の直下(または直上)に配置されている点である。このような構成の図43の燃料電池スタックの単位電池は、図43(b)に示されるように、単位電池4301の電解質膜4305を基準にカソード側の面が重力方向に面するように配置されることが好ましい。
燃料電池スタックの単位電池を、図43に示されるような向きに配置すると、燃料電池スタック内部の空気が発電による熱で暖められた際、暖められた空気は、重力の向きに対し反対の方向(図43(b)における上方向)に移動し、燃料電池スタックの下から周囲の空気が燃料電池スタック内部に入り込んで上昇気流が発生する。図43の燃料電池スタックを、その単位電池のカソード側がこの上昇気流の向きに対して向かい合うように配置すると、単位電池のカソード面は、燃料電池層の隙間領域の垂直延長線上に位置することになるため、隙間領域を通ってきた空気は、単位電池のカソード面に一度ぶつかってから左右に拡散し、上方へ移動する(図43(b)の矢印参照)。これにより、ファンやブロアーなどの補機を用いないパッシブ条件下においても、空気を単位電池のカソード面に効果的に供給することができ、カソード触媒内部の隅々まで空気が拡散しやすくなる。これにより、空気の拡散抵抗を下げ、カソード触媒部での酸素濃度を高くすることができるため、単位電池の発電効率を高めることができる。こうして、高出力密度の燃料電池スタックが実現される。なお、本実施形態の可能な変形については、上記第16の実施形態などと同様である。また、本実施形態の燃料電池スタックにおいて、最下層および最上層は、それぞれ燃料電池層であってもよく、あるいはスペーサ層であってもよい。
<第19の実施形態>
図44は、スペーサ層を有する燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図であり、図44(a)は、その斜視図、図44(b)は上面図、図44(c)は側面図である。図44に示される燃料電池スタックは、離間して略平行に配置された5つのスペーサ4403からなるスペーサ層4404と、離間して略平行に配置された5つの単位電池4401からなる燃料電池層4402と、が交互に積層された構造を有している。ここで、本実施形態の燃料電池スタックにおいては、スペーサ層4404を構成するスペーサ4403のうち、両端に位置する2つのスペーサが、当該スペーサ層に隣接する燃料電池層4402の両端部の直下および直上に配置されている。すなわち、両端に位置する2つのスペーサは、当該スペーサ層に隣接する燃料電池層4402を構成する単位電池4401の長手方向における端部に接するように配置されている。図44に示される例においては、当該両端に位置する2つのスペーサの外側側壁面の位置と、単位電池の外側側壁面の位置とが一致している。かかる構成によれば、燃料電池スタックの物理的強度を向上させることができるため、燃料電池スタックの構造をより安定化させることができる。
本実施形態の燃料電池スタックは、次のような変形を施すことが可能である。たとえば、燃料電池層の端面(単位電池の外側側壁面)は、スペーサ層の端面(両端に位置するスペーサの外側側壁面)と必ずしも一致している必要はなく、スペーサ層の端面(両端に位置するスペーサの外側側壁面)よりも外側に幾分突き出していてもよく、あるいは、幾分内側に位置していてもよい。この場合、燃料電池スタック構造をより安定化させるためには、これら端面の位置の差は1mm以下であることが好ましい。また、本実施形態の燃料電池スタックにおいて、最下層および最上層は、それぞれ燃料電池層であってもよく、あるいはスペーサ層であってもよい。
上記第16〜19の実施形態のように、スペーサ層は、1以上のスペーサより構成することができる。スペーサ層を2以上のスペーサより構成し、各スペーサを離間して配置することにより、各スペーサ間に隙間領域を形成することができる。ここで、スペーサ層は、本発明の燃料電池スタックにおけるいずれかの燃料電池層に含まれる単位電池と同一の外形を有するスペーサより構成されることが好ましい。また、スペーサ層は、該いずれかの燃料電池層と同一の形状を有し、本発明の燃料電池スタックにおけるいずれかの燃料電池層とスペーサ層とが同様の形状の隙間領域を有していることが好ましい。ここで同一の形状とは、すべての単位電池の外形とスペーサの誤差が±0.25mm以内であり、反転、回転により燃料電池層における単位電池の配置および形状が、スペーサ層におけるスペーサの配置および形状と一致することを意味する。これにより、燃料電池スタック内部に燃料または空気を取り込みやすい構造を得ることができ、その結果、補機を不要とすることができ、または必要である場合も補機の消費電力を低下させることができる。
<第20の実施形態>
図45は、スペーサ層を有する燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す模式図であり、図45(a)は上面図、図45(b)は側面図である。図45に示される燃料電池スタックは、これまでの実施形態と同様、複数のスペーサからなるスペーサ層4504と、離間して略平行に配置された5つの単位電池4501からなる燃料電池層4502とが交互に積層された構造を有している。ただし、本実施形態の燃料電池スタックにおいて、スペーサ層4504を構成するスペーサは、隣接する2つの燃料電池層4502に挟まれる部分のみに配置され、当該燃料電池層が有する隙間領域部分には配置されていない。すなわち、図45(a)を参照して、燃料電池スタックを上から見たときに、燃料電池スタックの中央部に位置するスペーサ4503a(図45(a)における点線領域)は、単位電池4501の下に隠れており(単位電池4501の直下の領域内のみに形成されている)、単位電池間の隙間領域には、スペーサは存在しない。このような構成によれば、燃料電池スタック内部への空気または燃料の拡散が良好となり、燃料電池スタック内部で酸素または燃料を不足させにくくすることができる。
本実施形態においては、図45(a)に示されるように、スペーサ層4504を構成するスペーサのうち、スペーサ層の両端に位置するスペーサを、たとえば直方体形状などの短冊形状(ただし、この形状に限定されるものではない。)のスペーサ4503bとし、これらを隣接する燃料電池層4502を構成する複数の単位電池と交差するように、かつ、隣接する燃料電池層4402を構成する単位電池4501の両端部またはその近傍の直下および直上に位置するように配置してもよい。これにより、燃料電池スタックの物理的強度を強くすることができる。好ましくは、図45(a)に示すように、燃料電池スタックの中央部分のスペーサは隣接する燃料電池層の隙間領域には配置せず、スペーサ層の両端に、複数の単位電池と隙間領域をまたがってスペーサを配置することが好ましい。燃料電池スタック中央部付近の方が酸素、または燃料の濃度が低くなるために、燃料電池スタックの内部の空気、または燃料の経路は燃料電池スタック中央部で広い方が好ましく、燃料電池スタックの強度を効果的に向上させるためには、燃料電池スタックの外側に複数の単位電池と隙間領域をまたがってスペーサを配置することが好ましい。ただし、スペーサ層の両端に位置するスペーサも含めてすべてのスペーサを、隣接する2つの燃料電池層と接する部分にのみに配置するようにしても勿論よい。
<第21の実施形態>
図46は、本発明の燃料電池スタックの別の好ましい一例を示す斜視図である。本実施形態の燃料電池スタックは、図44に示されるものと同様の燃料電池スタック(スペーサ4603からなるスペーサ層を有する燃料電池スタック)が、隙間領域を有しない平板状の比較的大きな1つの単位電池からなる燃料電池層に積層された構造を有している。このような比較的大きな1つの単位電池からなる燃料電池層上に燃料電池スタックを構築する構成は、上記第15の実施形態と同様であり、同様の効果を得ることができる。本実施形態の詳細および可能な変形についても、上記第15の実施形態と同様である。たとえば、隙間領域を有しない1つの単位電池からなる燃料電池層に積層される燃料電池スタックは、図44に示される構造と同様のものに限定されるものではなく、上記第16〜20の実施形態の燃料電池スタックであってよい。また、本実施形態の燃料電池スタックは、図46に示されるように、基板4602上に配置する際、大きな1つの単位電池からなる燃料電池層側が当該基板4602側となるように配置することが好ましい。さらに、上記1つの単位電池からなる燃料電池層は、そのアノード側(電解質膜4601を基準にアノード触媒層側。)が基板側となるように配置されることが好ましい。これにより、基板と燃料電池スタック間に空気の通り道を設ける必要が無くなるため、燃料電池層のアノード側を基板に接触させることができ、体積出力密度をより向上させることができる。
ここで、上記第16〜21の実施形態において用いられるスペーサは、多孔質体からなっていてもよい。多孔質体とすることにより、多孔質体内部を燃料または、空気が透過し、スペーサ層と燃料電池層とが積層されている領域においても、スペーサ層を通って燃料または空気を触媒層へ供給することができるため、燃料または酸素の拡散抵抗が低減し、より多くの出力電流をとることができる。スペーサ層の材料としては、ポリイミド、PVDF、PTFE、PEEK(登録商標)などの耐酸性、耐薬品性に優れた高分子が好ましく、また、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子等も挙げられる。さらに、耐酸性、耐薬品性の点で、酸化チタン、シリカ、酸化ジルコニアなどの金属酸化物が好ましく、さらに耐酸性、耐薬品性と電子伝導性の点でAu、Ptなどの貴金属や、耐腐食性のステンレス、チタンなどの表面に不動態を形成する金属、炭素等が好ましく挙げられる。上記の材料の内、一つ以上から形成されることが好ましい。スペーサの形状としては、メッシュ状や、不織布状、発泡体、焼結体、それらの二つ以上からなる混合体などが挙げられる。
また、スペーサとして、その表面が親水性である多孔質体からなるものを用いると、燃料電池スタック内部で生成し、結露した水を吸い込み、燃料電池スタック外部に排出すること可能となるため、長時間燃料電池スタックの特性を良好に維持することができる。表面が親水性の多孔質体として、コットン、ポリエステルなどの高分子の不織布や、酸化チタン、シリカなどの金属酸化物、表面のみが金属酸化物で被覆された金属多孔質体、金属多孔質体の表面のみに親水性の高分子を塗布、修飾させた金属−高分子複合体等が挙げられる。電気的な経路の短縮の点から、多孔質体は、電気伝導性であることがより好ましい。表面が親水性の多孔質体と、表面が撥水性の多孔質体、非多孔質体などと組み合わせて用いても勿論よい。
また、スペーサは非多孔質体からなっていてもよい。非多孔質体とすることにより、多孔質体に比べ、物理的な強度が向上する利点がある。また、スペーサが導電性であり、電気的な配線の役割も果たす場合、物理的な強度だけでなく、電気抵抗を下げることができる。
また、非多孔質体からなるスペーサと多孔質体からなるスペーサとを組み合わせて用いることも好ましい。この場合、たとえば図47に示されるように、スペーサ層4704を構成するスペーサとして、燃料電池スタックの中央部に多孔質体からなるスペーサ4703aを多くの割合で配置し、燃料電池スタックの外側(スペーサ層の両端近傍)に非多孔質体からなるスペーサ4703bを多くの割合で配置することがより好ましい。燃料電池スタック中央部付近は外周部付近に比べて酸素、または燃料が発電による消費により、その濃度が低くなるが、多孔質体からなるスペーサの使用により、酸素、または燃料の拡散を良好とすることができる。一方、燃料電池スタック外側では、酸素、または燃料の濃度が中央部に比べて高いため、非多孔質からなるスペーサを用い、物理的強度の強化と電気的抵抗の低減を図る。非多孔質体からなるスペーサと多孔質体からなるスペーサの配置は、図47に示される態様に限定されるものではなく、たとえば交互に配置するなど、電気的抵抗、反応物質の供給、物理的強度等の観点から、適宜に設計することができる。
なお、上述した各実施の形態(第1〜21の実施形態)における燃料電池層内の単位電池の本数は例であって、必ずしもこれに限定されるものではなく、燃料電池スタックの出力電圧、あるいは大きさ等の要求に応じて、適宜燃料電池層内の単位電池の本数を設定することが可能である。また、上述した各実施形態においては、第1の燃料電池層と第2の燃料電池層とが交互に積層される構造を例として説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、たとえば、第1の燃料電池層の上に第1の燃料電池層が積層した部分、あるいは第2の燃料電池層の上に第2の燃料電池層が積層された部分が燃料電池スタック内にあってもよい。燃料電池スタック内の少なくとも一部分に第1の燃料電池層と第2の燃料電池層とが隣接して積層された領域があれば、少なくともその領域においては隙間領域が形成され、本発明の効果を奏することができる。
なお、本発明の燃料電池スタックにおいては、燃料電池スタックにおける電気配線を直列接続にする場合には、図70に示されるように、隣接する燃料電池層は、一方の燃料電池層を構成する単位電池のアノード側(アノード極)と他方の燃料電池層を構成する単位電池のカソード側(カソード極)とが対向するように積層されることが好ましい。ただし、これに限らず、例えば、図71に示されるように、燃料電池スタックの積層方向におけるほぼ中央で、アノード極とカソード極の積層のパターンが逆となる構造であっても勿論よい。この場合、燃料電池スタックの両外表面(下側表面および上側表面)にカソード極が位置しており、したがって、大気に面するカソード極の面積を増加させることができる。また、図71に示される構成で、アノード極およびカソード極を配置すると、酸素濃度が低下しやすい燃料電池スタック中央部付近がアノード極となるため、燃料電池スタックを構成する全てのカソード極について、カソード極表面の酸素濃度の平均値が高くなる点で好ましい。カソード極の酸素濃度が高いことにより発電効率が向上し、燃料電池スタックの体積あたりの出力密度を向上させることができる。さらに、生成水の排出に関してもカソード側が外表面に近い方が、水蒸気を外部(例えば大気中)に排出しやすくなるため、燃料電池スタック内部に生成水が溜まりにくく、生成水が空気供給経路を塞ぎにくくすることが可能となり、単位電池をより高集積した燃料電池スタックを作製することができる。これにより、燃料電池スタックの出力密度を向上させることができる。図71に示される例において、電池の取り出しとしては、中央部の互いに向き合っているアノード極がマイナス端子となり、外表面の燃料電池層のカソード極の2面を一つにまとめて、プラス端子とした4直列、2並列の配線接続となる。また、図72に示されるように、燃料電池層間にスペーサ層を有する燃料電池スタックにおいても、同様の構造にすることが可能であり、同様の効果を得ることができる。
以上のような本発明の燃料電池スタックは、その内部に空気の通り道となる隙間領域を有しており、燃料電池スタック内部への気体の出入りがしやすくなっている。直方体形状などの短冊形状の単位電池を井形に積層した燃料電池スタックや燃料電池層とスペーサ層とを交互に井形に積層する燃料電池スタックなどは、すべての空気の通り道が3次元的に連通しており、さらに燃料電池スタック内部への気体の出入りがしやすくなっている。各単位電池は発電反応により、カソード極側から水を生成する。単位電池を高集積し、体積出力密度を向上させた燃料電池スタックを作製した場合、この生成水が燃料電池スタック内部で結露し、空気の通り道を閉塞することで連続的に出力を維持できなくなる課題があったが、本発明により、生成した水は燃料電池スタックの発電に伴う損失の熱により、蒸発し、燃料電池スタック外部に良好に排出される。これにより、燃料電池スタック内部で水蒸気圧が高まり、結露することを防ぎ、連続的に安定して出力電力を供給することができる。単位電池を高集積スタック化することで、燃料電池スタックの温度も上がりやすくなり、水の蒸発は促進される。すなわち、本発明の燃料電池スタックによれば、単位電池を高集積化することで、相乗的に生成水を水蒸気として燃料電池スタック外部に良好に排出し、水の結露により空気の通り道を閉塞させることなく、安定して酸素を燃料電池スタック内部に取り込み、出力電力を安定して連続的に供給することができる。燃料電池スタックが有する連通された空間(隙間領域)は、燃料電池スタック外部に向けて3次元的に開口を有している。したがって、携帯機器などに搭載したときのように移動中に燃料電池の向きがどのように変化しても、いずれかの開口が上を向くことになるため、燃料電池スタックの発熱に伴う上昇気流に乗って、水蒸気は、燃料電池スタック外部に良好に排出することができる。
<単位電池の構造>
次に、本発明の燃料電池スタックに用いられる単位電池について詳細に説明する。いくつかの好ましい例についてはすでに述べた。本発明に用いられる単位電池は、電解質膜と、電解質膜を挟持するアノード触媒層およびカソード触媒層を少なくとも有する構成である。これは単位電池の最小の構成に相当し、この最小の構成で燃料電池スタックを作製すれば、部材を削減することができるため、部材コストを下げることができる。また、単位電池の厚みを減らすことができるため、燃料電池スタックの体積当たりの出力を向上させることができる。さらに、導電性多孔質層と熱圧着する作業工程などを削減できるため、作業工程を簡略化できるなどの効果がある。この構造においては、アノード触媒層もしくはカソード触媒層に供給されるメタノールもしくは空気の分離が困難であるため、アノード触媒層、カソード触媒層の少なくとも一方は、酸素もしくはメタノールに対して選択性の高い触媒を用いることがより好ましい。
メタノールと空気の分離を行ない、さらに集電を効率的に行なうためには、上述した最小の構成を有する単位電池に、電子導電性を有するセパレータを設けることが好ましい。アノード導電性多孔質層およびカソード導電性多孔質層を設ける場合、アノード導電性多孔質層に親水層を付与すると、メタノール水溶液で満たされた親水層中は空気の拡散抵抗が高いため、アノード触媒層に混入する空気を抑制することができ、セパレータを不要とすることができる。また、導電性の高いアノード導電性多孔質層、カソード導電性多孔質層を設ければ、単位電池間もしくは燃料電池層間の電気的抵抗を抑えることができ、燃料電池スタックの高出力化を図ることができる。既述した図2に示される単位電池もこのような構成を有しており、図2に示される単位電池においては、燃料であるメタノール水溶液は、アノード導電性多孔質層内に形成された燃料流路から燃料透過制御層を通って親水層を拡散し、アノード触媒層へ供給される。
本発明で用いられる単位電池は、上述のカソード導電性多孔質層、カソード触媒層、電解質膜、アノード触媒層、アノード導電性多孔質層が一体化されて積層されていることが好ましい。一体化することにより、外部からの押さえ圧がなくても、単位電池を構成する隣接する部材同士の密接な接触が確保され、隣接する部材間での良好な電子または物質の輸送を行なうことが可能となることから、単位電池の構成部材を締結するための部材が必要でなくなる。このことは、単位電池の小型化を可能とする。ここで、本発明における一体化とは、単位電池の各部材が外部から圧力を加えなくとも分離しない状態のことをいい、具体的には、化学結合、アンカー効果、粘着力等により接合された状態のことをいう。
本発明で用いられる単位電池には、燃料であるメタノール水溶液を供給するための燃料流路が設けられ、該燃料流路を形成するために燃料流路形成部材が好ましく用いられる。燃料流路は、燃料を保持したカートリッジから連通した燃料輸送用の空間であり、単位電池あたりカートリッジから輸送される流路をひとつ以上有することが好ましい。燃料流路は、連通して燃料輸送の機能を有すればよいため、この空間が発泡金属、金属織物、金属焼結体、カーボンペーパー、カーボンクロスなどの多孔質材料で構成されていてもよい。燃料流路形成部材は、燃料電池スタックに必要十分な燃料を供給するため、燃料の流れ方向の下流に向かって燃料拡散のための抵抗が小さくなるような形状、および材料で構成されることが好ましい。たとえば、形状面では、毛細管現象により燃料を吸い上げることが可能な極細管、材料面では、流路内側表面をOH基、COOH基など極性官能基(親水性)で化学修飾することが好ましい。表面を親水化する手法として、プラズマ照射表面改質装置(春日電機株式会社製 PS−601S/PS−1200A)などを用いた改質処理や、半導体工程で用いられるアッシング処理が好適に用いられる。また、燃料流路が、その少なくとも一部に燃料透過制御層を有するか、燃料流路形成部材それ自体が燃料透過制御層の材料で構成されることも好ましい。また、単位電池構成部材の一体化において、一般的に熱圧着が用いられることから、燃料流路形成部材は、130〜180℃程度で熱分解しない耐熱性の高い材料であることがより好ましい。また、アノード導電性多孔質層の面方向に、燃料流路形成部材、もしくは形成される燃料流路が配置される方向や長さに限定はないが、単位電池の層厚方向に垂直な方向に延伸していることが好ましく、アノード導電性多孔質層の長さ方向に平行に延伸させる配置や、またはサーペンタイン型の配置を例示できる。
燃料の供給を外部動力のポンプを使用せずに行なう場合、形成した燃料流路の燃料の流れ方向に対し下流となる燃料流路片端部(以降、燃料流路末端部と称する)は開口状態となっている。毛細管力で燃料を供給する際、燃料流路内部の空気を外部に排出するためである。燃料流路末端部からの燃料の流出を抑制するため、該開口部の径を1μm〜500μmの範囲にすることが好ましい。この際、燃料カートリッジ内に空気が混入してしまう可能性や、メタノール水溶液の供給を停止した時、燃料流路内が減圧され、たとえば空気が混入してしまう可能性があるため、燃料の流出を抑えつつ燃料流路内の空気を排出することが可能な多孔質材料を用いて開口部の径の低減を行なうことが好ましい。かかる多孔質材料としては、気液分離層と同様の材質であることが好ましく、具体的にはPTFE(polytetrafluoroethylene)やPVDF(Polyvinylidenfluolide)を代表とするフッ素系の高分子と炭素材料との混合物からなる多孔質層が挙げられる。
なお、他の単位電池構成部材が、燃料流路形成部材の機能である燃料輸送の機能を兼ねる場合がある。これにより、燃料流路形成部材を不要とすることができ、コストを削減するとともに、作製工程を減らすことができる。具体的には、アノード導電性多孔質層に、燃料輸送の機能を付与させることができ、これはアノード導電性多孔質層内に燃料流路が形成されることを意味する。この場合、アノード導電性多孔質層は、その内部、または面において燃料をアノード導電性多孔質層の層厚方向に対して垂直な方向へ輸送させる機能を有していることが好ましい。かかる輸送機能を付与する手段としては、アノード導電性多孔質層内部に層厚方向に対して垂直な方向に連通する空間を設ける手段が例示でき、より具体的には、その内部に流路を形成した金属板、発泡金属、金属織物、金属焼結体、カーボンペーパー、カーボンクロスなどが挙げられる。
次に、図面を参照して、本発明で好ましく用いられる単位電池の構造を説明するとともに、燃料電池スタックへの燃料供給について説明する。本発明において、燃料供給は、好ましくは燃料流路形成部材によって燃料流路を作るか、アノード導電性多孔質層に燃料流路形成部材としての機能を付与することにより達成される。この際、燃料流路の少なくとも一部分が、アノード触媒層もしくはアノード導電性多孔質層内に形成されていることが単位電池の薄型化の点で好ましい。
本発明における燃料電池スタックへの燃料供給は、図22および図23に示すように、アノード導電性多孔質層に燃料流路としての機能を付与した単位電池を用いることによりなさ得る。
図22の単位電池においては、アノード導電性多孔質層2204が燃料流路を兼ねており、その内部において燃料をアノード導電性多孔質層2204の層厚方向に対して垂直な方向へ輸送し、輸送された燃料をアノード触媒層2202との接触面に向かって透過させ供給する。アノード導電性多孔質層2204中の燃料の輸送は、層厚方向と垂直をなす方向へ速やかに拡散することでアノード触媒層2202に対して均一に燃料を供給することができるようになるため、層厚方向と垂直をなす方向への拡散係数が、層厚方向への拡散係数より大きいことが好ましい。本構造は、アノード導電性多孔質層2204が燃料流路を兼ねているため燃料流路を別途設ける必要がなく、単位電池構成のための必要部材を減らし、作製が容易になるといった利点がある。また、本構造で必要とされるアノード導電性多孔質層2204は、単位電池一体化における熱圧着工程のため、所定の強度を持つことが好ましく、圧力0.1t/cm2でプレスしても、寸法や構造が30%以上変化しない材料で構成されることが好ましい。また、燃料流路としての機能を有するため、燃料、水、使用温度により、溶解、収縮および膨張しない材料であることが好ましく、これを満たす材料として、発泡金属、金属織物、金属焼結体が例示できる。
アノード導電性多孔質層2204の燃料保持機能を向上させるため、アノード導電性多孔質層2204とアノード触媒層2202の間に親水層2206が設けられている。親水層2206は、燃料水溶液を保持するだけでなく、空気中の酸素が、アノード触媒層2202に到達することを防ぐ。メタノール水溶液は、親水層2206を介してアノード触媒層2202に供給されるが、アノード導電性多孔質層2204を介して透過してくる空気は、親水層2206がメタノール水溶液で満たされているため、空気が拡散するのに十分な空孔がなく透過できない。このため、空気がアノード触媒層2202に供給されることはなく、アノード触媒2202におけるメタノールの酸化反応は阻害されない。これにより、空気がアノード触媒層2202へ到達することを防ぐためのセパレータを不要とすることができ、低コスト化、薄型化および高出力密度化された燃料電池スタックを実現することができる。発電反応により生成した副生成物の気体、たとえば二酸化炭素は、常温で気体であり、反応物のメタノール、水と比較してその体積は非常に大きいため、アノード触媒層2202内は昇圧される。この昇圧により、二酸化炭素は、単位電池部材の層厚方向に垂直な面方向(図の横方向)に排出されるか、親水層2206を透過しアノード導電性多孔質層2204に設けられた貫通孔2208を経て大気に排出される。親水層2206を介して、アノード導電性多孔質層2204から二酸化炭素の排出が良好に行なわれることから、従来のように流路内に発生した二酸化炭素を燃料とともに排出する必要がなくなり、ポンプなどの補機を使用しなくても安定して燃料を供給することができる。
親水層2206は、アノード触媒層2202とアノード導電性多孔質層2204とを低い電気抵抗にて接続することが好ましく、アノード触媒層2202の触媒担持カーボンもしくはアノード導電性多孔質層2204の表面をOHもしくはCOOHなどの極性官能基(親水性基)で化学修飾することによって親水性向上を施すことが、両者間の濡れ性がよくなり、密着性が向上する点で好ましい。好ましい一例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素粒子の表面がOH基やCOOH基等の極性官能基(親水性基)で化学修飾されている導電性粒子とバインダーとして機能する親水性の官能基を有する高分子、たとえば、Nafion117、Nafion112、フレミオン、スルホン化ポリイミド等とから構成する。ここで、図22に示したように、アノード導電性多孔質層2204の表面のみを親水処理して、親水層を形成するのではなく、該多孔質層内を親水処理することで親水層の代わりとしてもよい。
さらに、図22に示されるように、メタノール水溶液が大気に漏洩するのを防ぐために、アノード導電性多孔質層2204の親水層2206とは対向する面に気液分離層2207を形成することが好ましい。本発明の燃料電池スタックにおいては、単位電池のアノード導電性多孔質層は、隣接する単位電池のカソード導電性多孔質層、もしくは集電体と電気的に接触している必要がある。このため、気液分離層2207に導電性材料をさらに加えるなどして導電性を向上させることが好ましい。
図23に示される単位電池においては、アノード導電性多孔質層2304のアノード触媒層2302側表面に燃料流路2306が形成されており、燃料流路2306を通って燃料を輸送し、該燃料は、燃料流路2306に蓋をするように設けられた燃料透過制御層2308を介してアノード触媒層2302に供給される。燃料流路2306を形成する手法としては、アノード導電性多孔質層2304が導電性高分子等であれば溶融押出し成形、トランスファー成形、圧縮成形等が例示できる。アノード導電性多孔質層2304が金属やその窒化物、炭化物、炭窒化物等の含金属材料等であれば、プレス成形、エッチング加工、カーボンであれば、圧縮成形、射出成形等が例示できる。
燃料流路2306を備えたアノード導電性多孔質層2304は、単位電池一体化における熱圧着工程のため、所定の強度を持つことが好ましく、圧力0.1t/cm2でプレスしても、寸法や構造が10%以上変化せず、また面の歪みが少ない材料で構成されることが好ましい。導電性や成形の容易さなどを考慮すると、アノード導電性多孔質層2304には、燃料流路およびCO2排出のための貫通孔を有した金属やその窒化物、炭化物、炭窒化物など板状の導電基板を用いることがより好ましい。ここで、燃料流路は、上述したように連通した空間であれば限定されないため、アノード導電性多孔質層の表面上に形成された流路空間が、たとえば発泡金属、金属織物、金属焼結体など多孔質体材料で埋められており、多孔質材料のもつ連通した空間を燃料流路とする構成であってもよい。燃料流路が多孔質材料によって構成されることにより、熱圧着工程で必要となる部材の強度を向上させることができ、燃料流路の空間が圧壊してしまうのを防ぐことができる。また、上述の多孔質体材料が、アノード導電性多孔質層の一部であってもよく、この場合も同様に燃料流路が圧壊するのを防ぐことができる。
図23に示される単位電池において、メタノールの透過を抑制するために、燃料流路2306の一部に燃料透過制御層2308が設けられ、親水層(図示せず)を介してアノード導電性多孔質層2304とアノード触媒層2302の電気的接触が保たれるよう配置されることが好ましい。親水層の役割や材質に関しては上記したとおりである。また、上記した親水層に加え、さらに燃料流路内壁となるアノード導電性多孔質層の燃料流路形成部の表面と、燃料透過制御層の燃料流路内表面を構成する側の表面は、メタノールやメタノール水溶液の拡散抵抗を少なくするため親水処理を施すことが好ましい。かかる親水処理としては、たとえば、これら表面をOH基やCOOH基などの極性官能基(親水性基)で化学修飾する手法を挙げることができる。この親水処理された表面によって形成された燃料流路の適用により、メタノール水溶液の拡散抵抗が低く、メタノール水溶液を速やかに流路方向に輸送することができる。また、メタノール水溶液は燃料透過制御層2308を介してアノード触媒層2302へ供給されるが、燃料透過制御層2308は、二酸化炭素を通さないため、燃料流路2306内に二酸化炭素は溜まることがなく、メタノール水溶液の拡散を阻害しない。このため、送液ポンプなどで、一定の流速を保って、供給する必要がなく、補機を用いずにメタノール水溶液を供給することができる。この際、燃料流路2306を介する燃料の供給は毛細管力によって行なわれる。
図23に示される単位電池において、メタノール水溶液が大気に漏洩するのを防ぐために、図22に示される単位電池のように気液分離層を別途設ける必要はないが、燃料保持が困難であればアノード導電性多孔質層2304と親水層の間に、さらに気液分離層を設けることが好ましい。気液分離層の形成については図22に示される単位電池に準じる。
また、本発明における燃料電池スタックへの燃料供給は、図24〜図27に示すように、アノード触媒層に隣接する部位に燃料流路が別途配置された単位電池を用いることによりなされてもよい。
図24に示される単位電池においては、アノード導電性多孔質層2404の表面に形成された親水層2407上にコの字形流路2410を形成し、コの字形流路2410に蓋をするように燃料透過制御層2409を設け、この層を介して燃料が供給される。もちろん、コの字形流路2410は、アノード導電性多孔質層2404の表面上に形成されても良い。図24に例示した構成では、コの字形流路2410と燃料透過制御層2409とが流路構成部材となって燃料流路を形成している。単位電池は、アノード触媒の反応によりプロトンが生成し、そのプロトンをアノードからカソードへ伝導させるために酸性雰囲気であるため、コの字形流路2410は、耐酸性が強い材料であることが好ましい。また、単位電池一体化における熱圧着工程のため所定の強度を持つことが好ましく、圧力0.1t/cm2でプレスしても、寸法や構造が10%以上変化しない材料で構成されることが好ましい。また、コの字形流路2410は、燃料、水、使用温度によって、溶解、収縮および膨張しない材料であることが好ましい。これらを満たす材料として、たとえば、ポリイミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル樹脂、ポリオレフィン系ポリマー、エポキシ系のレジスト樹脂やAu、Pt、Pd等の貴金属、C、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su等の金属やSi、さらにステンレス、Ti−Pt、およびこれらの金属の窒化物、炭化物等の合金等を用いることが好ましい。また、Cu、Ag、Zn等の、酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、Au、Ag、Ptなどの耐腐食性を有する貴金属でコーティングすることが好ましい。また、コの字形流路2410の内壁は、メタノール水溶液の拡散抵抗を少なくするため親水処理を施すことが好ましい。たとえば、内壁の表面をOH基やCOOH基などの極性官能基(親水性基)で化学修飾することにより形成する手法、プラズマ照射表面改質装置(春日電機株式会社製 PS−601S/PS−1200A)などを用いた改質処理や、半導体工程で用いられるアッシング処理などがある。
コの字形流路2410の形成には、フッ素系樹脂等であれば溶融押出し成形、トランスファー成形、圧縮成形等、金属等であればプレス成形、エッチング加工、カーボンであれば圧縮成形、射出成形等による方法が例示できる。
コの字形流路2410は、アノード導電性多孔質層2404の表面に形成された親水層2407、またはアノード導電性多孔質層2404に必ずしも接触している必要はなく、アノード触媒層2402に埋め込まれるよう配置してもよい。また、コの字形流路2410は、必ずしも1本1本が独立している必要はなく、互いに接続されていてもよい。接続する場合は、アノード触媒層2402とアノード導電性多孔質層2404との間の電気的接触を妨げたり、アノード触媒層2402内のプロトン伝導経路が妨げられたりするような配置は好ましくないため、接続部に穴を開けるなどする必要がある。
メタノール水溶液は、燃料透過制御層2409を透過してアノード触媒層2402に供給され、アノード導電性多孔質層2404を介して透過してくる空気は、図22の単位電池と同様にして、設けられた親水層2407により空気が拡散するのに十分な空孔がないため透過できない。この親水層2407を介してアノード触媒層2402は、アノード導電性多孔質層2404と低い接触抵抗にて電気的に接触している。また、燃料透過制御層2409によりアノード触媒層2402で生成した二酸化炭素が燃料内部に混入することはない。このように、燃料流路の少なくとも一部が燃料透過制御層2409によって形成されることで、燃料の透過方向を決めることができると共に、二酸化炭素の燃料流路への混入を防ぐことができる。二酸化炭素がメタノール水溶液の供給を阻害しないことに加え、燃料流路の内壁の親水化や毛細管力により速やかにメタノール水溶液は流路方向に輸送され、安定して触媒層にメタノール水溶液を供給することができるため、送液ポンプなどで、一定の流速を保って供給する必要がなく、補機を用いずにメタノール水溶液を供給することができる。また、メタノール水溶液が大気に漏洩するのを防ぐために、図22に示される単位電池のように気液分離層を別途設ける必要はないが、燃料保持が困難であればアノード導電性多孔質層2404と親水層2407の間に、さらに気液分離層を設けることが好ましい。気液分離層の形成については図22に示される単位電池に準じる。
図25に示される単位電池においては、管状の燃料流路2506が中空状の燃料透過制御層2509によって形成され、この層を介して管の内壁側から外壁側へ燃料を透過させ、アノード触媒層2502に燃料が供給される。管状の燃料流路2506が燃料透過制御層2509で構成されることにより、メタノールを全方位に均一に供給することができ、さらに燃料流路2506が燃料透過制御層2509を兼ねることから必要部材点数を減らすことができ、これによりコストを削減することができる。ここで、「管状」とは、必ずしも燃料流路2506の断面が図のように円である必要はなく、楕円形など様々な形状をとることができる。
また、単位電池一体化における熱圧着工程のため、燃料流路を構成する燃料透過制御層は所定の強度を持つことが好ましく、圧力0.1t/cm2でプレスしても、寸法や構造が10%以上変化しない材料で構成されることが好ましい。ただし、寸法や構造が10%以上変化する材料であっても、変形した状態で管内壁を流路方向にメタノールが輸送されればよく、この場合、燃料流路形成部材もしくは燃料流路形成部材が形成する空間が、メタノールによって膨張する空間を予め設けるなどして、体積変化分を考慮した上で一体化することが好ましい。また、燃料流路2506を形成する燃料透過制御層2509は、燃料、水、使用温度によって、溶解、収縮および膨張しない材料であることが好ましい。燃料流路2506を形成する燃料透過制御層2509の材料として、シリコン製のマイクロチューブ(以下、シリコンチューブと称する)、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレン製の中空糸膜、再生セルロース(セロハン)、アセチルセルロース、ポリアクリロニトリル、テフロン(登録商標)あるいはポリスルホンの多孔質膜による半透膜チューブが例示できる。
メタノールやメタノール水溶液の拡散抵抗を少なくするため、燃料流路内壁に親水処理を施すことが好ましい。たとえば、燃料透過制御層2509の内壁の表面をOH基やCOOH基などの極性官能基(親水性基)で化学修飾する手法、プラズマ照射表面改質装置(春日電機株式会社製 PS−601S/PS−1200A)などを用いた改質処理や、半導体工程で用いられるアッシング処理などがある。この親水処理された燃料流路によれば、メタノール水溶液の拡散抵抗が低く、メタノールを速やかに流路方向に輸送することができる。また、メタノール水溶液は燃料透過制御層2509を介してアノード触媒層2502へ供給されるが、燃料透過制御層2509は二酸化炭素を通さないため、燃料流路2506内に二酸化炭素は溜まることがなく、メタノールの拡散を阻害しない。このため、送液ポンプなどで、一定の流速を保って、供給する必要がなく、毛細管力で供給することができるので、補機を用いずにメタノール水溶液を供給することができる。また、アノード触媒層2502とアノード導電性多孔質層2504との間には親水層2507が設けられてもよい。必要であればアノード導電性多孔質2504と親水層2507との間に気液分離層を設けてもよい。
図26に示される単位電池においては、アノード導電性多孔質層2604の表面上に形成された親水層2607上に燃料流路2606を形成し、燃料流路2606の内壁側から外壁側へ燃料を透過させ、アノード触媒層2602に燃料が供給される。もちろん、燃料流路2606は、アノード導電性多孔質層2604の表面上に形成されても良い。燃料流路2606は、熱圧着工程のため、該流路は所定の強度を持つことが好ましく、圧力0.1t/cm2でプレスしても、寸法や構造が10%以上変化しない材料で構成されることが好ましい。さらに、耐酸性が強い材料で構成されることが好ましく、たとえば、ポリイミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル樹脂、ポリオレフィン系ポリマー、ポリエポキシ系樹脂等のフォトレジストに用いられる耐酸性の感光性樹脂、ポリ金属酸化物などが挙げられる。微細な燃料流路を形成するためには、フォトレジストに用いられる耐酸性の感光性樹脂を用いるのがより好ましい。燃料流路形成の手順としては、アノード導電性多孔質層面に感光性樹脂のドライフィルムをホットラミネートした後、その上にスリット状の貫通孔を複数有した紫外線もしくはX線不透過性のマスクを配置し、該マスクに対し紫外線またはX線を照射することにより、スリット部の樹脂を重合、硬化させて流路横壁を形成する手法が例示できる。マスクにより、照射を受けなかった部位は樹脂が重合、硬化しないため現像液で容易に取り除くことができる。その後、キュアーにより完全に硬化させる。形成した流路横壁は、アノード導電性多孔質層の面に、垂直に延伸しており、流路の深さを均一にするため、硬化した感光性樹脂の厚みの公差は5%以内であることが好ましい。さらに、形成した流路横壁の上にアノード導電性多孔質層と平行となるよう、感光性樹脂のドライフィルムをホットラミネートにより配置し、同様にスリットの入ったマスクを使って流路上壁を形成させ、燃料流路とする。燃料の供給量の調整を容易にするため、燃料流路上壁にはメタノール水溶液透過用の孔もしくはスリットが設けられることが好ましい。この孔もしくはスリットからアノード触媒層で生成した二酸化炭素が流路内側に混入しないよう、十分に小さい孔もしくはスリットであることが好ましい。また、感光性樹脂で作製した上述の流路内壁(横壁と上壁で構成されている)は、その表面をOHもしくはCOOHなどの極性官能基(親水性基)で化学修飾するか、プラズマ照射表面改質装置(春日電機株式会社製 PS−601S/PS−1200A)などを用いた改質処理や、半導体工程で用いられるアッシング処理などを行なうことで、親水性向上を施すことが好ましい。これにより、燃料流路2606内に二酸化炭素は溜まることがなく、メタノールの拡散を阻害しない。このため、送液ポンプなどで、一定の流速を保って、供給する必要がなく、補機を用いずにメタノール水溶液を供給することができる。また、アノード触媒層2602とアノード導電性多孔質層2604との間には親水層2607が設けられてもよい。必要であればアノード導電性多孔質2604と親水層2607との間に気液分離層を設けてもよい。
図27に示される単位電池においては、図25の単位電池と同様に管状の燃料流路2706が燃料透過制御層2707によって形成され、この層を介して管の内側から外表面側へ燃料が供給されるのに加え、補強部材2709をアノード触媒層2702に埋め込むように設けることを特徴とする。補強部材2709は、単位電池部材の一体化に一般的に用いられる熱圧着時において、アノード触媒層2702と燃料流路2706の厚みや形状の変化を抑制するため、また管状流路の配置を容易にし、熱圧着時などに燃料流路がずれることを抑止する効果を期待して配置される。補強部材2709の材質は、燃料、水、使用温度によって、溶解、収縮および膨張しない耐酸性の材料であることが好ましい。さらに熱圧着を用いるため所定の強度を持つ材質であることが好ましく、圧力0.1t/cm2でプレスしても、寸法や構造が10%以上変化しないことが好ましい。これらを満たす材料として、たとえば、ポリイミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル樹脂、ポリオレフィン系ポリマー、ポリエポキシ系樹脂等によるフォトレジストに用いられる耐酸性の感光性樹脂、ポリ金属酸化物などが挙げられ、微細な間隔幅で補強部材を延伸させるためには耐酸性の感光性樹脂を用いることがより好ましい。また、燃料供給の速度の制御を容易にするため、または触媒層の厚みを均一にするため、補強部材の厚みの公差は5%以内であることが好ましい。また、アノード触媒層2702とアノード導電性多孔質層2704との間には親水層が設けられてもよい。必要であればアノード導電性多孔質2704と親水層との間に気液分離層を設けてもよい。
また、所望の燃料供給流束を得るため、もしくは単位電池部材の形状維持のため、図22〜27に示される燃料流路を組み合わせて構築することも可能である。たとえば、図24に示される燃料流路と図25に示される燃料流路とを組み合わせて配置してもよい。
本発明においては、カソード導電性多孔質層、カソード集電体、カソード触媒層、電解質層、アノード触媒層、アノード集電体およびアノード導電性多孔質層がこの順で積層された構造を有する、集電体一体型のMEA(膜電極複合体)や集電体一体型の単位電池が用いられてもよい。集電体を一体化することにより、ボルトやナットなどの締結部材を用いて押さえつけなくても集電体と触媒層との間の良好な低い接触抵抗を維持することができるとともに、触媒層の面内方向の電気抵抗を低減させることができる。かかる集電体一体型の単位電池においては、集電体として、たとえば、Au等の貴金属や耐腐食性金属のメッシュ形状、パンチングメタル形状などのような、厚み方向に貫通する開口部を複数備える平板構造のものを用いることが好ましく、当該開口部内に導電性多孔質層または触媒層の少なくとも一方が入り込んでいることが好ましい。また、カソード導電性多孔質層およびアノード導電性多孔質層は、導電性を有していることが好ましい。集電体一体型のMEAおよび集電体一体型単位電池は、導電性多孔質層上に集電体を固定し、その上から触媒を塗布して触媒層を形成して得られる積層体を2個(アノード側およびカソード側)作製した後、これらの間に電解質膜を挟んでホットプレスを行なうことにより作製することができる。
本発明の燃料電池スタックは、好ましくは、上述した単位電池を少なくとも1つ以上有して構成される燃料電池層が積層されて構成される。図28は、本発明における燃料電池層間の好ましい接着、および一体化の例を模式的に示す断面図である。図示されるように、単位電池を構成するカソード導電性多孔質層2805、カソード触媒層2803、電解質膜2801、アノード触媒層2802、アノード導電性多孔質層2804の積層方向が、燃料電池層の積層方向と同一方向であることが好ましい。たとえば、単位電池を構成する層の積層方向が燃料電池層の積層方向と垂直である場合、隣接する燃料電池層のアノード導電性多孔質層同士、カソード導電性多孔質層同士が接触してしまうため、それぞれを絶縁する絶縁層を設ける必要性が生じ、部材の必要数が増えることとなる。さらに、垂直に配する場合、燃料電池層間の接触部の面積が減少してしまうため、集電の際の電気的な抵抗が増大する可能性がある。このため、単位電池の層厚方向と燃料電池の層の層厚方向を同一にすることが好ましい。図28は、各々の燃料電池層において、カソード触媒層2803がアノード触媒層2802の上方になるよう配置されているがこれに限定されることなく、アノード触媒層2802がカソード触媒層2803の上方となるよう、単位電池を構成する層の積層方向と燃料電池層の積層方向を同一にして積層してもよい。
また燃料電池層は、図28に示されるように、後述する接着層2811を挟んで積層方向に直列に積層されていることが好ましい。直列に積層されている構造とは、燃料電池層のカソード導電性多孔質層と、該燃料電池層に積層される燃料電池層のアノード導電性多孔質層とが電気的に接続するように積層されている構造である。直列接続の構造にすることで別途配線を必要としないため、製造工程の簡略化が行なえる。
図28を参照して、燃料電池層間の接着について説明する。燃料電池層間の接着は、導電性の接着剤を用い、当該導電性の接着剤からなる導電性の接着層2811を介してなされることが好ましい。また、導電性の接着剤は、熱硬化性の高分子の接着剤と、導電性良好な粉末との混合物であることがより好ましい。熱硬化性の高分子の接着剤としては、株式会社スリーボンドの1152Bのポリオレフィン系の高分子が挙げられ、その他にもエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子の接着剤は熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより各燃料電池層を良好に接合する。したがって、熱硬化性の高分子の接着剤を用いることにより、締め付け部材をなくすことができる。コニシ株式会社製のクイック5などの2液性のエポキシ樹脂を用いる場合には、室温〜100℃程度の低温で硬化するため、室温で軽く加圧した状態で接着することがより好ましい。
導電性良好な粉末としては、たとえばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどカーボン系材料、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su等の金属やSiおよびこれらの窒化物、炭化物、炭窒化物等、さらにステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金の耐腐食性のある材料の粉末を用いることが好ましい。導電性良好な粉末は、燃料電池層間を低い電子伝導抵抗で接続するのに加え、アノード触媒層2802から生成する二酸化炭素を粉末と粉末の間に形成される空隙からカソード導電性多孔質層2805方向へ逃がし、カソード導電性多孔質層2805を通じて燃料電池スタックの隙間領域に排出することができる。粉末と粉末の間の隙間が不十分な導電性の接着剤の場合、導電性の接着層2811は燃料電池層間が対向する全面に塗布するよりも、燃料電池層間に所定の隙間が生じるように塗布する方が良い。すなわち、第2層の燃料電池のアノード導電性多孔質層2804に備えられている貫通孔2810を塞がない様に、たとえば、導電性接着剤を第1層の燃料電池層と第2層の燃料電池層とが対向する部分の外側付近のみに塗布して接着する。これにより、燃料電池層間に隙間領域ができるので、二酸化炭素を貫通孔2810からカソード導電性多孔質層2805を通って確実に排出させることが可能になる。
また、隣接する一方の燃料電池層のアノード導電性多孔質層2804が有する孔と、他方の燃料電池層のカソード導電性多孔質層2805が有する孔とが連通していることが好ましい。カソード触媒層2803で生成した水や水蒸気の一部が該空隙を通り、さらにアノード導電性多孔質層2804を通ってアノード触媒層2802または親水層2809に到達し、アノードの反応物として再利用することができる。これにより、カソード側の生成水をアノード側で再利用することができる。
本発明の燃料電池スタックは、図28に示すように、燃料電池層のカソード導電性多孔質層2805と、それに積層され、隣接する燃料電池層のアノード導電性多孔質層2804が一体化されていることが好ましい。カソード導電性多孔質層2805とアノード導電性多孔質層2804は、接着層2811により接着され、一体化される。接着層2811は、導電性かつ多孔質性を有しており、これにより、外部からの押さえ圧がなくても、積層される燃料電池の層同士において良好な電気的な接触を確保することが可能となることから、積層される燃料電池層同士を締結する部材である押さえ板、ボルト、ナット等が必要でなくなるため、燃料電池スタックを小型化、低コスト化することができる。詳しくは製造方法のところで記述する。また、上記したように、カソード触媒層2803で生成した水は、蒸発し、カソード導電性多孔質層2805、接着層2811、アノード導電性多孔質層2804を通り、温度差により、親水層2809にて冷却されて、一部トラップされる。この水をアノード触媒層2802での反応に利用することができる。これにより、カソード側の生成水を再利用することができるため、燃料カートリッジのメタノール水溶液中のメタノール濃度を高めることができ、小さい燃料カートリッジで長時間発電させることができる。
<燃料供給>
本発明の燃料電池スタックにおいては、図29に示すように、メタノール水溶液等の燃料は、燃料を保持した円筒から、燃料流路を介して各単位電池に供給することができる。燃料を保持した円筒は単位電池が積層された燃料電池スタックの4隅の隙間の内、少なくともどれか一つに配置されることが好ましい。
図19および図21に示される燃料電池スタックへの燃料供給について説明する。図30および図31に示されるように、一つの燃料電池層を構成する放射状に配置された各単位電池は、第1の燃料カートリッジ3001に接続され、これに隣接する燃料電池層を構成する放射状に配置された各単位電池は、第2の燃料カートリッジ3002に接続される。第1の燃料カートリッジ3001および第2の燃料カートリッジ3002は、それぞれ単位電池の一端が集中する領域に設置されている。このように、燃料カートリッジを燃料電池が集合している配置にすることにより、燃料流路の引き回しが容易になり、製造コストが低減される。また、燃料カートリッジから各単位電池への燃料供給が直接行なわれるため、各単位電池へ均等に燃料供給が行なわれる。したがって、各単位電池において均等な発電特性が得られやすく、燃料電池スタックの発電特性を向上させることができる。
<燃料電池スタックの製造方法>
本発明の燃料電池スタックは、上述したような構造を備えるものであれば、その製造方法は特に制限されるものではないが、好ましくは、(1)集電体に開口を形成する、または導電性多孔質層を形成する第1工程、(2)触媒層を形成する第2工程、(3)単位電池の構成部材を一体化する第3工程、(4)燃料電池層を形成する第4工程、(5)集電体および燃料電池層を積層し、一体化する第5工程、の少なくとも1つを備え、より好ましくはすべてを備える。
(1)第1工程
集電体に開口を形成する方法、または導電性多孔質層を形成する方法として、金属板または金属箔を集電体等として用いる場合には、パンチング法、エッチング法、レーザー法、ドリルを用いた孔加工などを用いて、平面に複数の開口を形成する方法を採用することができる。
パンチング法では、所定の開口パターンを形成するための金型を作製し、これを集電体等に押し当て打ち抜くことにより、開口を形成する。このような製造方法では、特別な装置を用いずとも、複数の開口を一度に形成することができ、安価に加工することが可能となる。また、熱がかからない機械加工であるため、選択する集電体等の材料、材質にとらわれることがない開口の形成が可能となる。
エッチング法では、プリント配線技術などに用いられるフォトエッチング工程を用いて開口を形成する。金属板または金属箔のどちらか一方の面に、感光性のレジストを塗布またはラミネートして感光層を形成し、露光により残すべき金属板または金属箔のレジストパターンを形成し、現像、エッチングすることで、開口を形成することができる。このような製造方法では、複数の開口を一度に形成することができるとともに、微細な開口パターンを加工することが可能となる。
レーザー法では、エキシマ、炭酸ガス、キセノンなどのレーザーを用い、開口を形成する。このとき、集光レーザーを用い、単開口ごとに集電体等をX−Yステージ上で移動させ、所定の開口パターンを形成することができる。
(2)第2工程
触媒層を形成する方法としては、たとえば、触媒粒子と導電性粒子と電解質を有機溶媒に分散させたペーストを、バーコート法、スクリーン印刷法またはスプレーコーティング法などを用いて均一に塗布し、ペースト中の有機溶媒を除去して形成する工法を採用することができる。このような製造方法では、多数の細孔を有した触媒層を形成することができ、有効な触媒粒子の表面積を増加させることが可能となる。触媒層とは、アノード触媒層およびカソード触媒層を意味する。
また、触媒層は導電性多孔質層に直接形成することができる。これにより、あらかじめ導電性多孔質層に触媒層が一体形成されるため、密着性の良い界面を得ることが可能となる。
さらには、プラスチックフィルム等の基材に触媒層を形成した後に、導電性多孔質層に転写することによって形成することもできる。このような製造方法では、あらかじめ触媒層を別に形成しておくことができ、触媒粒子と導電性粒子の分散性を向上させるために、導電性多孔質層の表面に絶縁層を形成させてしまう有機溶媒であっても、前記ペーストの溶媒として用いることが可能となる。
また、アノード導電性多孔質層にアノード触媒層を形成する工程において、アノード導電性多孔質層のアノード触媒層を形成する面上に燃料流路形成部材を配置させ、燃料流路形成部材の上から燃料流路形成部材がアノード触媒層に埋め込まれるようにアノード触媒層を形成する方法を採用することができる。これにより、燃料流路形成部材がアノード触媒層内に埋め込まれるため、燃料流路形成部材とアノード触媒層との密着性の良い界面を得ることが可能となる。さらには、アノード導電性多孔質層にアノード触媒層を形成する工程において、あらかじめアノード導電性多孔質層にアノード触媒層を形成させ、次にあらかじめ形成したアノード触媒層上に燃料流路形成部材を配置させ、燃料流路形成部材の上から燃料流路形成部材がアノード触媒層に埋め込まれるようにアノード触媒層を形成する方法も採用することができる。これにより、アノード触媒層とアノード導電性多孔質層との界面および燃料流路形成部材とアノード触媒層との界面において良好な密着性を得ることが可能となる。
(3)第3工程
単位電池の構成部材を一体化する方法として、たとえば、熱圧着することにより単位電池を一体形成する方法を採用することができる。たとえば、上記第2工程において、触媒層の形成されたアノード導電性多孔質層とカソード導電性多孔質層を、アノード触媒層とカソード触媒層が電解質膜を介して対向するように配置し、ホットプレス機を用いて、電解質膜や触媒層中の電解質の軟化温度やガラス転移温度を超える温度で熱圧着する工程を採用することができる。これにより各部材が化学結合やアンカー効果や粘着力等により接合された状態となり、部材間の界面の電子伝導抵抗やイオン伝導抵抗を低減することができる。この工程により、たとえば、カソード導電性多孔質層、カソード触媒層、電解質膜、燃料流路形成部材が埋め込まれたアノード触媒層、アノード導電性多孔質層がこの順に単位電池の層厚方向に積層されて一体化される。
(4)第4工程
燃料電池層を形成する方法として、上記第3工程で作製された単位電池を複数個用意し、アノード導電性多孔質層とカソード導電性多孔質層がそれぞれ同一方向に向くように平面上に所定の間隔を設けて配置する方法を挙げることができる。これにより平面状に並べられた複数個の単位電池群である燃料電池層を形成することができる。また、あらかじめ第1の燃料流路形成部材を所定の間隔を設けて配置して、流路空間が連通するように第2の燃料流路形成部材に接続することによって固定された第1の燃料流路を作製し、当該第1の燃料流路を用いて、上記第3工程により、アノード導電性多孔質層とカソード導電性多孔質層がそれぞれ同一方向に向くように平面上に単位電池を作製することにより、燃料電池層を形成することもできる。
(5)第5工程
集電体および燃料電池層を積層し、一体化する方法としては、たとえば、次のような方法を挙げることができる。まず、上記第4工程で得られた燃料電池層を用いて、アノード導電性多孔質層とカソード導電性多孔質層が対向して接触するように所定の角度を設けて交差させて燃料電池層を積層する。この際、アノード導電性多孔質層またはカソード導電性多孔質層における接触部位に導電性の接着剤が塗布される。次に、積層体の両端に位置するアノード多孔質導電層とカソード導電性多孔質層とに集電体を積層することで得られる積層体を熱圧着することにより、燃料電池層が一体化された燃料電池スタックを作製することができる。導電性の接着剤を塗布することで、燃料電池層間は、低い電子伝導抵抗で接続されるため、燃料電池スタックの高出力化が図れ、また一体化によって締め付け部材をなくすことができる。好ましくは、導電性の接着剤が熱硬化性の高分子の接着剤と、導電性良好な粉末の混合物であるとよい。上述の熱硬化性の高分子の接着剤は熱圧着時の熱で硬化し、燃料電池層間を良好に接着するため燃料電池スタックの締め付け部材が不要である。導電性良好な粉末は、燃料電池層間を低い電子伝導抵抗で接続するのに加え、粉末と粉末の間に形成される空隙からアノード触媒層で生成する二酸化炭素の一部を効率的に排出することができる。熱圧着による積層体の一体化において、燃料電池スタックを構成する全ての燃料電池層および集電体を積層し、一度の熱圧着によって一体化された燃料電池スタックを製造することもできるが、燃料電池スタックを構成する全ての燃料電池層を複数組に分けて、それぞれの組を熱圧着によって一体化し、一体化した組および集電体を積層して再び熱圧着することによって一体化した燃料電池スタックを製造してもよい。
<<燃料電池システム>>
本発明の燃料電池システムについて説明する。図32は、本発明の燃料電池システムの好ましい一例を示す模式図であり、図32(a)はその斜視図、図32(b)上面図、図32(c)は側面図である。図32(b)および図32(c)は、搭載された燃料電池スタックのみを示している。図32(a)に示される燃料電池システムは、図3と同様の燃料電池スタックと、スイッチA、B、C、D、E、a、b、c、d、eと制御回路を備えている。制御回路はスイッチに信号を送り、開閉を制御する。スイッチはバイポーラトランジスタ、MOSトランジスタなどの半導体素子や、電磁リレー等のメカスイッチが挙げられる。
また、図32(b)および図32(c)に示されるように、燃料電池スタックは、燃料電池スタックの両端のみ集電体を備えており、集電体は両端の燃料電池層にある複数の単位電池にそれぞれ備えられ、複数の単位電池に備えられた集電体は電気的に夫々絶縁されている。各単位電池が有するアノード導電性多孔質層およびカソード導電性多孔質層の電気抵抗は高いことが好ましく、抵抗率は0.01〜1Ω・cmであることが好ましい。これにより、集電体を有しない燃料電池層では、導電性多孔質層の抵抗値が高いため、燃料電池層を横方向に流れる電流が少なくなる。スイッチの制御方法は後述するが、該スイッチにより、垂直方向に電流が流れる面積または部分を制御することができる。該スイッチは該集電体に一つずつ導線を介して接合されていることが好ましい。導線としてはFPC(Flexible Printed Circuit)を用いることが配線の薄型化、軽量化、設置のしやすさの点で好ましい。
図33は、本発明の燃料電池システムの制御方式を示す模式図である。図33(a)においては、すべてのスイッチA、B、C、D、E、a、b、c、d、eは、ON状態である。領域Sでは、垂直方向に電流が流れている。すなわち、縦に延伸している単位電池と横に延伸している単位電池が交わっている部分は隙間無く積層方向に積層されており、電流が積層方向に流れることができる。
図33(b)においては、スイッチa、b、c、d、e、およびAはON状態にあり、スイッチB、C、D、EはOFF状態にある。そのため、スイッチAの列から電流を取り出すことができるが、その他の単位電池の発電部からは抵抗が高いために電流を流すことができず、ほとんど出力を取ることができない。このように、スイッチを制御することにより、この例においては、25個の電流を取り出す領域をスイッチ10個という少ないスイッチの数で制御することができる。スイッチ部材の数量を減らすことによる低コスト化、配線の単純化、燃料電池システムの小型化を図ることができる。
本発明の燃料電池システムにおいては、燃料が供給された燃料電池の発電領域から順に電流を取り出すよう制御することが好ましい。図34(a)〜(d)に示すように、メタノールカートリッジからメタノール流路が形成されている場合を例にとって説明する。メタノールカートリッジからメタノールが供給されると、すべてのスイッチがOFFの状態から、まず、スイッチa、EをONにする。図34(b)に示されるように、メタノールカートリッジに最も近い交差した単位電池の発電領域から電流が主に取り出される。出力電流が取り出されることにより、温度が上昇し、メタノールが温められ、メタノール流路内の拡散速度が上昇する。次に、図34(c)では、スイッチa、b、D、EをON、その他のスイッチをOFFにし、さらに、図34(d)のように、スイッチa、b、c、C、E、DをONする等、カートリッジに近い燃料電池の発電領域から遠い方に向かって順々に電流を取り出すことにより、メタノールがカートリッジから最も遠い燃料電池の発電領域まで速やかに供給され、燃料電池の全体へ行き渡らせる事ができる。これにより、燃料電池の始動を早くすることができる。また、発電が可能になった部分からその部分の電力をポンプやファン等の補機やアプリケーションの負荷の小さい部分に供給し、燃料電池の起動を早めるだけでなく、アプリケーションの立ち上げを早めることができ、また、例えばファンを動かすことで、起動時の発電特性を向上させながら立ち上げることもでき、起動時の発電電力を有効利用することができる。
また、本発明の燃料電池システムは、傾斜センサーを備え、上昇気流が生じるように下方に位置する燃料電池の発電量を増加させるようにスイッチを制御することが好ましい。傾斜センサーにより、地平面に対し、最も近い位置の発電領域が最も出力するようにスイッチを制御する。図35に示す燃料電池スタックにおいて、具体的にスイッチの動作を説明すると、定常状態において、スイッチe、A、B、C、D、EをON状態とし、スイッチa、b、c、dは間欠的にスイッチON、OFFを繰り返す。これにより、もっとも下に位置する単位電池の発電領域からもっとも多く出力電力を取り出し、内部抵抗による発熱により、もっとも高温となる。これにより、空気が上方へ対流するため、燃料電池スタック内部に温められた空気が拡散し、燃料電池スタック内部に良好に空気を取り込むことができる。このようにして、傾斜センサーにより、もっとも地面に近い単位電池の発電領域を検出し、スイッチング制御により、もっとも高温となるよう発電させることで、空気の拡散を良くし、ファンやポンプを不要または、消費電力を低減させることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
電解質膜として6mm×48mm、厚み約175μmのナフィオン117膜(デュポン社製)を用いた。触媒ペーストは下記の手順により作製した。Pt担持量32.5wt%、Ru担持量16.9wt%のPt−Ru粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(TEC66E50、田中貴金属社製)と、20wt%のナフィオンのアルコール溶液(アルドリッチ社製)と、イオン交換水と、イソプロパノールと、ジルコニアビーズとを所定の割合で、PTFE製の容器に入れ、攪拌脱泡機を用いて50rpmで50分間の混合を行ない、ジルコニアビーズを除去し、アノード触媒ペーストを作製した。また、Pt担持量46.8wt%のPt粒子とカーボン粒子からなる触媒担持カーボン粒子(TEC10E50E、田中貴金属社製)を用いて、アノード触媒ペーストと同様に、カソード触媒ペーストを作製した。
燃料流路を構成する燃料流路形成部材として外径0.3mmφ(内径0.2mmφ)、長さ48.5mmのシリコンチューブ(KN3344391、テックジャム製)と、マニホールド用の外径2mmφ(内径1mmφ)、長さ42.5mmのPTFEチューブ(KN3344350、テックジャム製)の2種の管を用い、図36のようにPTFEチューブから計15本のシリコンチューブが枝分かれ状に延伸するように、各管を連結した。連結は、PTFEチューブに径0.5mmの穴を設け、これにシリコンチューブを刺しこみ耐薬品性が良好なエポキシ樹脂系の接着剤で封止することで達成した。シリコンチューブの長さ方向は、PTFEチューブの長さ方向に対し垂直に接続されており、シリコンチューブ間は狭い間隔幅2mmと、シリコンチューブ3本毎に広い間隔幅5mmで構成される。それぞれのシリコンチューブには線形0.15mmφのTi製の針金を挿入した。
次に、親水層を形成するために、東海カーボン株式会社製のアクアブラック001および20wt%のナフィオンのアルコール溶液(アルドリッチ社製)と、イオン交換水と、イソプロパノールと、ジルコニアビーズとを所定の割合でPTFE製の容器に入れ、攪拌脱泡機を用いて50rpmで50分間の混合を行なった後、ジルコニアビーズを除去して、親水性カーボンとナフィオンとからなるペーストを作製した。
片面にフッ素系の樹脂と炭素粒子からなる層で撥水処理されたカーボンペーパーであるGDL31BC(SGLカーボンジャパン株式会社製)を6mm×48mmの大きさにし、アノードの導電性多孔質層として用いた。導電性多孔質層の撥水処理された面上に上記親水性カーボンとナフィオンとからなるペーストをバーコーターで塗布した後に、乾燥させることにより40μm厚の親水層を形成した。この親水層上にシリコンチューブを載せ、導電性多孔質層の長辺方向に対しシリコンチューブが平行となり、かつシリコンチューブの先端と導電性多孔質層長辺方向の片端が重なるよう配した。このとき図36のようにシリコンチューブの長さ方向の中心線が、導電性多孔質層の短辺方向に対し1mm、3mm、5mmの位置となるよう、1つの導電性多孔質層あたりシリコンチューブを3本並べて配し、計5つの導電性多孔質層に対し同様の手順でシリコンチューブを並べた。
次に、上記シリコンチューブを導電性多孔質層上に固定するため、シリコンチューブ長さ方向の端部をセロハンテープで導電性多孔質層に仮止めした。シリコンチューブが導電性多孔質層の上に位置する状態で、導電性多孔質層とスクリーン印刷板の6×48mmの開口部とが面方向に平行となるようスクリーン印刷板に設置し、上述したアノード触媒ペーストを塗布した。アノード触媒ペーストは塗布毎に60度の恒温室に保持しアノード触媒ペーストに含有される溶媒を乾燥除去し、これを数回繰り返すことで導電性多孔質層の表面から約0.4mmの厚みのアノード触媒層を形成させた。以上の処理により、導電性多孔質層に仮止めしていたシリコンチューブは、図25に示すように触媒層の中に埋め込まれた状態で固定される。以上の手順により形成された導電性多孔質層、3本単位のメタノール供給路、アノード触媒層の積層体を「アノード部」と称する。計15本のシリコンチューブに対し、5個のアノード部を作製した。
なお、上記シリコンチューブに代わりに、中空糸、もしくは透析チューブを用いることが可能である。中空糸の場合、外径0.22mm(素材:poly−4−Methyl−1−pentene、大日本インキ化学工業(株)製)の中空糸で代用することができ、長さはシリコンチューブに準じ、アノード部の生成手順も同様である。透析チューブの場合、シリコンチューブに代わり平面幅が約4mm(素材:再生セルロース)、長さ48.5mmの透析チューブを用い、PTFEチューブに設けた接続口に連結する。透析チューブを用いた場合でもアノード部生成手順はシリコンチューブと同様である。透析チューブの平面幅は、導電性多孔質層の短辺長さと比較して短いため、アノード触媒層と導電性多孔質層間には十分な接触面があるが、平面幅を更に短くすることで接触面を増やすことも可能である。また、透析チューブと導電性多孔質層の接触部位からは生成物の二酸化炭素を排出できないため、前記接触面を増やすことで生成物の排出が容易になる。
片面にフッ素系の樹脂と炭素粒子からなる層で撥水処理されたカーボンペーパーであるGDL31BC(SGLカーボンジャパン株式会社製)を6mm×48mmの大きさにし、カソードの導電性多孔質層として用いた。スクリーン印刷板を用いて前記導電性多孔質層の撥水処理された面にカソード触媒ペーストを塗布し、60度の恒温室で10min間保持することで、カソード触媒ペーストに含有される溶媒を乾燥除去し、カソード触媒層を形成させた(以降、導電性多孔質層とカソード触媒層の積層体を「カソード部」と称する)。同様の手順により5個のカソード部を作製した。
集電体は、厚み0.1mm、短辺6mm×長辺52mmのチタン板を用いた。ドリルを用いて直径0.45mm、ピッチ0.550mmの開口パターンを6mm×48mmの領域に形成した。
接着層形成に用いる導電性の接着剤には、熱硬化性の高分子の接着剤である株式会社スリーボンドの1152Bのオレフィン系樹脂を、導電性良好な粉末にはXC72(Vulcan社製)を用いた。1152Bはペースト状になっており、1152BとXC72とを1.7:1の比で、乳鉢に入れ十分混合した。1152Bの硬化条件は100℃、30minであり、硬化することにより接着層を形成する。
下からアノード部(導電性多孔質層が下に位置する)、電解質膜、カソード部(カソード触媒層が下に位置する)の順に、電解質膜を挟んでアノード触媒層とカソード触媒層が重なるよう上積みした。上述したメタノール供給路に対して5個のアノード部が形成されているため、同様の手順で上積みすることで5個の積層体を作製した。25mm×50mm、厚さ1.0mmのテフロンスペーサを用いた。100mm×100mm、厚み3mmのステンレス板上の中央に前記積層体を設置した。前記テフロンスペーサをステンレス板の外周の各辺に平行に1cm離してステンレス板上に各辺に1つずつ配置した。これらを100mm×100mm、厚み3mmのステンレス板で挟んだ。ステンレス板の厚み方向に130℃、10kgf/cm2で2分間熱圧着し、該積層体を一体化し単位電池とした。具体的には、積層した各部材の界面はアンカー効果、または触媒層に含まれるナフィオンの粘着力などで接合されている。その後、上記針金をシリコンチューブからゆっくりと引き抜いた。シリコンチューブの先端は開口状態にあり、このままでは毛細管現象で吸い上げたメタノールが流出してしまうため、単位電池のシリコンチューブの先端が出ている側面にPTFE粒子を含有したPVDFのNMP(2−メチルピロリドン)溶液からなるペーストを塗布した。該ペーストに含有される有機溶媒は乾燥することで除去し、シリコンチューブの先端が多孔質体で塞がれるまでこの処理を繰り返した。この多孔質体でシリコンチューブの先端を塞ぐ処理によりメタノールは排出されず、管内に混入する空気が前記多孔質体を介して排出される。上述の手順で作製した5個の単位電池群からなる燃料電池層を「第1層」とした。
第1層と同様の手順で、第2層から第5層とする燃料電池層を作製した。図37に示したように第1層を形成する単位電池の長辺方向に対し、第2層を形成する単位電池の長辺方向が垂直となるよう上積みし、接触部となる第1層のカソード導電性多孔質層の面に上述した導電性の接着剤を塗布した。第3層以降は、同様に一つ下の層に対して単位電池の長辺方向が垂直となるよう上積みしていき、各接触部には同様に導電性の接着剤を塗布した。計5層、25個の単位電池群を形成した。
第1層を形成する単位電池の最下表面と、第5層を形成する単位電池の最上表面に、前記集電体の片端と単位電池の片端が重なるように、集電体を配置した。このとき、接触面に導電性の接着剤を塗布した。25mm×50mm、厚さ4.5mmのテフロンスペーサを用いた。100mm×100mm、厚み3mmのステンレス板上に前記単位電池群および集電体を配し、ステンレス板の外周の各辺に平行に1cm離して前記スペーサを1つずつ配置した。これらを100mm×100mm、厚み3mmのステンレス板で挟んだ。ステンレス板の厚み方向に130℃、0.1kgf/cm2で10分間熱圧着し、燃料電池層および集電体を一体化し、燃料電池スタックを作製した。各層の界面は、アンカー効果、またはナフィオンの粘着力、熱硬化性樹脂などで接合されており、各層は低い接触抵抗にて接触している。
上記一体化燃料電池スタックの面方向の4隅は空きスペースとなっており、図29のように好適に該スペースに樹脂製の円筒を設けた。該円筒は、メタノールカートリッジと接続されており、該円筒には十分なメタノールが保持されている。一体化された単位電池から伸びる計5本のPTFEチューブと、該円筒に設けられたPTFE継手(アビタック製、外径2mmφ×内径1mmφ用)とを結び、各単位電池へメタノールが供給されるようにした。円筒にはメタノールカートリッジから十分な供給圧がかかり、燃料流路であるシリコンチューブ内に液が供給されるようにした。
<実施例2>
電解質膜として上底6mm、下底12mm、高さ48mmの台形型、厚み約175μmのナフィオン117膜(デュポン社製)を用いた。触媒ペーストの作製は実施例1と同様である。
燃料流路形成部材として外径0.3mmφ(内径0.2mmφ)、長さ48.5mmのシリコンチューブ(KN3344391、テックジャム製)を用いた。
片面にフッ素系の樹脂と炭素粒子からなる層で撥水処理されたカーボンペーパーであるGDL31BC(SGLカーボンジャパン株式会社製)を上底6mm、下底12mm、高さ48mmの大きさにし、アノードの導電性多孔質層として用いた。導電性多孔質層の撥水処理された面上に上記シリコンチューブを載せ、シリコンチューブの先端と台形型の導電性多孔質層の下底が重なるよう配した。このときシリコンチューブの長さ方向の中心線が、導電性多孔質層の上底に対し1mm、3mm、5mm、下底に対し2mm、6mm、10mmの位置となるよう、1つの導電性多孔質層あたりシリコンチューブを3本並べて配した。
上記シリコンチューブを導電性多孔質層上に固定するため、シリコンチューブの先端部をそれぞれセロハンテープで導電性多孔質層に仮止めした。シリコンチューブが導電性多孔質層の上に位置する状態で、導電性多孔質層とスクリーン印刷板の上底6mm、下底12mm、高さ48mmの台形型の開口部とが面方向に平行となるようスクリーン印刷板に設置し、上述したアノード触媒ペーストを塗布した。アノード触媒層の形成手順は、実施例1と同様である。以上の処理により、導電性多孔質層に仮止めしていたシリコンチューブは、図25に示すように触媒層の中に埋め込まれた状態で固定される。
シリコンチューブの先端に多孔質体を充填する処理は、実施例1に準じる。以上の手順により形成された導電性多孔質層、3本単位のメタノール供給路、アノード触媒層を積層しアノード部とし、これを同様の手順により6個作製した。
78mm×78mm、厚さ1.0mmのテフロンスペーサを図38に示すような形状に加工した。具体的には、電解質膜、カソード部がはまる形状で、かつ台形型の各部材の高さ方向の中心線が18度間隔となるよう扇状に計6個のくり貫きが設けられており、このくり貫きはテフロンスペーサの対角線を中心に左右対称である。また、台形型くり貫きの上底部もくり貫かれているため、前記の台形型くり貫きにアノード部をはめ込んでも燃料流路であるシリコンチューブはテフロンスペーサと接触することなく、はめ込むことができる。このテフロンスペーサを4個用意した。
集電体は、厚み0.1mm、上底5.5mm、下底12mm、高さ52mmの台形型のチタン板を用いた。ドリルを用いて直径0.45mm、ピッチ0.550mmの開口パターンを、上底6mm、下底12mm、高さ48mmの台形型領域に形成した。ただし、集電体の下底と開口パターン形成の領域の下底は重なるようにしている。
下からアノード部(導電性多孔質層が下に位置する)、電解質膜、カソード部(カソード触媒層が下に位置する)の順に、電解質膜を挟んでアノード触媒層とカソード触媒層が重なるよう上積みした。この積層体を上記テフロンスペーサにはめ込み、台形型の積層体の上底を揃えた。図38に示すように6個の積層体を並べ、実施例1と同様の手順でステンレス板に挟み、その厚み方向に130℃、10kgf/cm2で2分間熱圧着し、該積層体を一体化した。この手順で作製した6個の単位電池群を第1の燃料電池層とする(以降、第1層と称する)。この第1層とスペーサは分離せず、はめ込んだ状態で保持した。
第1層と同様の手順で、第2層から第4層とする燃料電池層を作製し、第1層と同様、テフロンスペーサと分離せず保持した。
図39に示すように、第1層と、第2層がそれぞれスペーサの対角線上に逆となり、テフロンスペーサの辺が重なりあうよう配置し、接触部(第一層のカソード導電性多孔質層の面)に導電性の接着剤を塗布した。第1層と第2層を重ねた集積体を厚み3mmのステンレス板で挟み、ステンレス板の厚み方向に130℃、10kgf/cm2で10分間熱圧着し一体化した。一体化後、十分冷やした後、第2層のテフロンスペーサを燃料電池の層厚方向から外した。また、第3層と第4層に関しても、上述の手順で一体化し、第3層のテフロンスペーサを外した。ここで、第1層および第4層のスペーサは外さない。
第2層を上にした第1層と、第3層を下にした第4層の、それぞれのテフロンスペーサが対角線上に逆となるよう重ね合わせ、第2層と第3層を挟んだ。また、接触部(第2層のカソード導電性多孔質層の面)に導電性の接着剤を塗布した。下から、第1層、第2層、第3層、第4層の順となり、第1層は第3層と、第2層は第4層と面方向に平行となる。78mm×78mmの貫通穴を有する100mm×100mm、厚さ4mmのテフロンスペーサの該貫通穴に上記の燃料電池層および集電体を配し、これらを100mm×100mm、厚み3mmのステンレス板で挟んだ。ステンレス板の厚み方向に130℃、10kgf/cm2で10分間熱圧着し、燃料電池層を一体化した。第2層と第3層の接触面は低い接触抵抗にて電気的に接触している。ここで、第1層と第4層のテフロンスペーサを燃料電池層厚方向から外した。
第1層を形成する単位電池の最下表面と、第4層を形成する単位電池の最上表面に、台形型単位電池の上底と集電体の上底が重なるよう、集電体を配置した。このとき、接触部を導電性の接着剤で塗布した。78mm×78mmの貫通穴を有する100mm×100mm、厚さ4mmのテフロンスペーサの該貫通穴に上述の集積体を配し、これらを100mm×100mm、厚み3mmのステンレス板で挟んだ。ステンレス板の厚み方向に130℃、10kgf/cm2で10分間熱圧着し、上記単位電池群および集電体を一体化し、燃料電池スタックを作製した。単位電池群と集電体は低い接触抵抗にて電気的に接触している。
上述の燃料電池スタックの面方向の2隅は空きスペースとなっており、図31に示したように、好適に該スペースそれぞれに樹脂製の円筒を設けることができた。円筒は、メタノールカートリッジと接続されており、円筒には十分なメタノールが保持されている。1つの円筒に対し、燃料電池スタックから計36本(例えば第1層から18本、第3層から18本)のシリコンチューブが伸びるように、シリコンチューブを該円筒に設けられた接続口に接続し、各単位電池へメタノールが供給されるようにした。同様に、もう1つの円筒に関しても計36本(例えば第2層から18本、第4層から18本)のシリコンチューブを接続した。
<実施例3>
次の方法により燃料電池スタックを作製した。
(1)MEA(膜電極複合体)の作製
まず、触媒ペーストを下記の手順により作製した。Pt担持量32.5wt%、Ru担持量16.9wt%のPt−Ru粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(TEC66E50、田中貴金属社製)と、20wt%のナフィオンのアルコール溶液(アルドリッチ社製)と、イオン交換水と、イソプロパノールと、ジルコニアビーズとを所定の割合で、PTFE製の容器に入れ、攪拌脱泡機を用いて50rpmで50分間の混合を行ない、ジルコニアビーズを除去し、アノード触媒ペーストを作製した。また、Pt担持量46.8wt%のPt粒子とカーボン粒子からなる触媒担持カーボン粒子(TEC10E50E、田中貴金属社製)を用いて、アノード触媒ペーストと同様に、カソード触媒ペーストを作製した。
次に、片面にフッ素系の樹脂と炭素粒子からなる層で撥水処理されたカーボンペーパーであるGDL25BC(SGLカーボンジャパン株式会社製)を1.8mm×23mmの大きさにし、アノード導電性多孔質層として用いた。スクリーン印刷により、上述したアノード触媒ペーストをアノード導電性多孔質層の撥水処理された面に塗布した。アノード触媒ペーストは1回の塗布毎に60度の恒温室に保持し、アノード触媒ペーストに含有される溶媒を乾燥除去し、これを数回繰り返すことで約0.4mmの厚みのアノード触媒層をアノード導電性多孔質層上に形成した。以下、このアノード導電性多孔質層とアノード触媒層との積層体を「アノード部」という。同様にして、1.8mm×23mmのGDL25BCをカソード導電性他孔質層として用い、この撥水処理された面にカソード触媒層を0.1mmの厚みで形成した。以下、このカソード導電性多孔質層とカソード触媒層との積層体を「カソード部」という。
ついで、電解質膜として100mm×100mm、厚み約175μmのナフィオン117膜(デュポン社製)を用い、電解質膜を挟んでアノード触媒層とカソード触媒層が重なり、アノード触媒層とカソード触媒層が電解質膜と接するようにして、下からアノード部、電解質膜、カソード部の順に積層した。この際、カソード部およびアノード部は、100×100mmの電解質膜の中に3行、10列、等間隔となるように配置した。その後、この積層体から1cm離れた距離に、0.45mm厚みで縦10mm、横100mmのサイズのチタン板を、積層体の4辺に配置した。このチタン板は、積層体をプレスする際にその厚みが0.45mm以下にならないようにするためのものである。ついで、1mm厚みのステンレス板上に、この積層体とチタン板を載せ、その上から更に1mm厚みのステンレス板を置くことにより、積層体およびチタン板をステンレス板ではさみ、その厚み方向に130℃、10kgf/cm2の条件で2分間熱圧着し、積層体を一体化させ、導電性多孔質層のサイズ(1.8mm×23mm)に沿って切り出すことにより、幅1.8mm、長さ23mmの短冊状のMEAを得た。
(2)流路基板、ならびにアノード集電体およびカソード集電体の作製
図48に示されるように、幅11mm、最長部における長さ36mm、厚さ0.2mmのSUS基板上に、エッチング加工により、サーペンタイン形状の流路を形成した。図48(a)は、得られた流路基板の上面図であり、図48(b)は、図48(a)に示されるA−A’線における断面図である。図48に示される数値の単位は、mmである。図48(b)に示されるように、流路の幅は1mm、深さは0.1mmとした。この流路基板は、図48(a)に示されるように、その下端に2つの突起部(幅2mm×長さ3mm)を有している。この突起部は、マニホールドの差込口である。また、この流路基板は、幅1mm×長さ25mmの3つのスリット状の貫通穴を有している(図48(a)参照)。この貫通穴、および、後述するアノード集電体に形成された3つのスリット状の貫通穴が燃料電池層およびこれを用いて得られる燃料電池スタックの空気経路となる。図48に示される流路基板において、スリット状の貫通穴とこれに隣接する流路との間に形成されている壁の幅は0.5mmである。
また、図49に示されるような形状のアノード集電体、および図50に示されるような形状のカソード集電体をエッチング加工により作製した。図49のアノード集電体は、幅11mm、長さ36mm、厚さ0.1mmのステンレス(SUS316L)からなる平板状の基板からなる。図49(a)に示されるように、このアノード集電体には、3つのスリット状の貫通穴が形成されている。図49(b)は、図49(a)に示されるアノード集電体の領域Aの拡大図である。図49(b)に示されるように、アノード集電体の領域Aには、その領域Aの縦方向の中心線から両端に向けて0.5mmの間の領域に、一辺が0.25mmの六角形状の開口が0.1mmの線幅を残して複数設けられている。燃料電池スタックの最下層の燃料電池層に設けられるアノード集電体には、出力取り出し端子が設けられる。なお、図49に示される数値の単位は、mmである。
一方、図50に示されるカソード集電体は、幅2mm、長さ25mm、厚さ0.1mmのステンレス(SUS316L)からなる平板状の基板からなる。本製造例においては、これを4つ用いた。図50(b)は、図50(a)に示されるカソード集電体の拡大図である。図50(b)に示されるように、カソード集電体には、六角形状の貫通穴が複数設けられている(穴径0.6mm、開孔率70%)。燃料電池スタックの最上層の燃料電池層に設けられる4つのカソード集電体には、図50(c)に示されるように、出力取り出し端子が設けられる。図50(c)に示される複合カソード集電体は、出力取り出し端子によって4つのカソード集電体が一体化されている。
ここで、上記流路基板およびアノード集電体は、4つの短冊状のMEAが、1つの基板上に平行して所定の隙間領域を形成しつつ配置できるように加工されている。後で述べるように、この流路基板上にアノード集電体および短冊状のMEAを配置するが、この際、各MEAは、2次元的にバラバラになることが防止されている。また、1枚の流路基板またはアノード集電体に所定の隙間を設けて、その上に単位電池を形成することで、複数の単位電池を所定の隙間を設け、2次元的に配置した燃料電池層を備える機械的強度に優れた燃料電池スタックを作製することができる。もちろん、流路基板の上に形成されるMEAが流路基板から剥離しないようにする必要があるが、その方法については後述する。
(3)流路基板、アノード集電体、カソード集電体およびスペーサの拡散接合
次に、上記した流路基板、アノード集電体およびカソード集電体と、非多孔質体であるステンレス(SUS316L)製のスペーサ(幅0.5mm、長さ20mm、厚さ0.5mmの直方体形状)を6本用意し、図51に示すように、これらを下からカソード集電体、スペーサ、流路基板、アノード集電体の積層順で、互いに接合し、接合体(合計厚み0.8mm)を得た。接合は、ホットプレス型の拡散接合により行なった。なお、6本のスペーサは、各スペーサ間の間隔が2mmとなるように配置した。また、拡散接合にあたっては、アノード集電体の流路基板側のSUS316Lからなる表面に、金を1μmの厚みでメッキした。この金メッキにより、ステンレスが腐食するのを防止できるとともに、拡散接合の接合性も向上させることができる。得られた接合体において、流路基板上にはアノード集電体が積層されており、このアノード集電体の領域Aが有する複数の貫通穴は、流路基板の流路に連通している。この領域A上に短冊状のMEAが配置される。以上のような流路基板、アノード集電体、カソード集電体およびスペーサ等の金属の接合には拡散接合が好ましく用いられるが、このほかにレーザ溶接による接合方法を用いてもよい。
(4)MEAの接合
次に、図52に示されるように、上記で得られた4つの短冊状MEA(厚み0.3mm)を、上記接合体のアノード集電体の領域Aに接合した。接合は次のようにして行なった。まず、PVDFのNMP(2−メチルピロリドン)溶液(5wt%)とカーボン粒子であるXC72(Vulcan社製)とを、PVDFに対し、該カーボン粒子が7wt%となるように混練して導電性インクを調製した。ついで、この導電性インクを10μmの厚みでバーコーターを用いて、MEAのアノード導電性多孔質層表面(GDL25BC)に塗布し、乾燥させた。次に、MEAをアノード集電体の領域A上に配置した。その後、この積層体から1cm離れた距離に、0.7mm厚みで縦10mm、横100mmのサイズのチタン板を、積層体の4辺に配置した。このチタン板は、積層体をプレスする際にその厚みが0.7mm以下にならないようにするためのものである。ついで、1mm厚みのステンレス板上に、この積層体とチタン板を載せ、その上から更に1mm厚みのステンレス板を置くことにより、積層体およびチタン板をステンレス板ではさみ、その厚み方向に130℃、5kgf/cm2の条件で2分間熱圧着することにより、MEAを平らにするとともに、MEAをアノード集電体に固定化した。このように、MEAに、PVDFとカーボン粒子との導電性インクを塗布することにより、熱圧着時にPVDFが軟化してアノード集電体の貫通穴内に入り込み、アンカー効果でMEAを固定化することができる。また、アンカー効果による密着性向上により、アノード集電体とMEAとの電気的接触抵抗を低減させることができる。なお、MEAの導電性多孔質層であるGDL25BC(SGLカーボンジャパン株式会社製)は、その片面が、フッ素系の樹脂と炭素粒子からなる層で撥水処理がされていないものであるが、両面に撥水処理をされた導電性多孔質層を用いてもよい。以下、このようにして得られた、アノード集電体にMEAが複数(本実施例では4つ)接合された積層体を、MEAが平面上に複数配置されていることから、2次元スタックという。
(5)MEA端部への接着剤の塗布
次に、図53に示されるように、MEAの端部を接着剤で塗布した。図53は、MEAの端部に接着剤が塗布された2次元スタックを示しており、図53(b)は、図53(a)のB−B’線における断面図である。接着剤としては、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂を混合した1液、100℃、30分硬化の熱硬化性のエポキシ樹脂を用いた。このようにMEA端部へ接着剤を塗布し、端部を封止することにより、燃料の液漏れを封止し、かつアノード集電体との接着性を向上させることができる。
ここで、接着剤は、上記のものに限定されるものではないが、耐流酸性、耐メタノール性(耐薬品性)などの点から接着剤はエポキシ樹脂が好ましく用いられる。また、100℃程度以下の比較的低温で熱硬化性を示すことが、MEAの溶解、分解、触媒の凝集による劣化を防ぐ点で好ましい。また、用いる接着剤は、室温保管中に硬化しないよう、その反応開始温度は60℃以上であることが好ましい。
(6)2次元スタック間の接合(燃料電池スタックの構築)
次に、図54に示すように、複数(本実施例では4つ)のMEA端部へ接着剤が塗布された2次元スタックを、ホットプレスによって100℃、0.1kgf/cm2の条件で30分間熱圧着し、各2次元スタック間を接合することにより燃料電池スタックを得た。接合は、必要数の2次元スタックを積層させた後、該積層体に対してホットプレスを行なうことにより行なった。熱圧着により、MEAの端部に塗布された接着剤が硬化し、これにより、2次元スタック間の強固な接合が可能となる。図55は、複数の2次元スタックが一体化された燃料電池スタックの構造を示す断面図である。このような接合方法によれば、1度のホットプレスで必要数の2次元スタックが接合された燃料電池スタックを作製することができ、製造時間の短縮が図ることができ、また、製造コストを下げることができる。また、以上のような方法により作製された燃料電池スタックは、接着剤により、アノード集電体、カソード集電体、MEAが強固に固定され、強度に対する信頼性が向上している。本発明のようにMEAの端部を多く有する燃料電池スタックは、上記接着を行なうことで接着部分が多くなり、大きな1枚の燃料電池を積層した燃料電池スタックに比べ、特に中心部での燃料電池スタックの強度を非常に高めることができる。大きな1枚の燃料電池を積層した燃料電池スタッにおいては、その燃料電池層の外周部しか接着、またはボルトやナットなどで締結できず、中心部は押さえが効いていないため、MEAの剥離や、MEAと集電体との電気的接触不良を起こしやすい。
(7)マニホールドの設置
次に、図56に示されるように、上記で得られた燃料電池スタックの各層に燃料を供給するためのマニホールドを差し込んだ。マニホールドを差し込んだ後、シール剤でマニホールドと流路基板の入口、出口の隙間を封止した。マニホールドとしては、アクリル樹脂製のものを用いた。また、シール剤として、室温硬化性の2液タイプのエポキシ樹脂を用いて封止した。本実施例の燃料電池スタックにおいては、燃料流路をサーペンタイン形状にしているため、マニホールドの接続部分を一箇所に集約することができ、マニホールドを小型化することができる。これにより、マニホールドの差し込みやすさ、封止しやすさが向上し、歩留まり、生産時間短縮による低コスト化が可能となる。また、マニホールドが小型化されることによって、燃料電池スタックに空気を取り込むために障害となるマニホールドの体積を減らすことができるため、燃料電池スタック内部に良好に空気を取り込むことができる。
(8)流路基板の絶縁コーティング
なお、以上のようにして得られた、図56に示されるようなマニホールドを備える燃料電池スタックにおいては、流路基板と隣接する燃料電池層のアノード集電体の距離が近く、外部からの応力によっては電気的短絡を起こし、燃料電池スタックの出力不良を起こす懸念がある。したがって、これを防止するため、図56に示されるように、流路基板の流路が形成されていない方の表面、あるいはアノード集電体のMEAが配置されていない部分の表面、またはこれら双方の表面に、絶縁性のコーティングを施すか、または絶縁性のスペーサを設けることが好ましい。絶縁性のスペーサを設ける方が燃料電池スタックの強度を向上させる点でより好ましい。また、絶縁性のスペーサは、燃料電池スタックの外周端部に配置されることが、強度向上の点でさらに好ましい。
<実施例4>
実施例3で用いたカソード集電体、流路基板およびアノード集電体を用い、図57に示すように、これらを下からカソード集電体、流路基板、アノード集電体の積層順で、互いに接合し、スペーサを有しない接合体を得た。接合は、実施例3と同様であり、ホットプレス型の拡散接合により行なった。ここで、本実施例では、4つのカソード集電体を流路基板と直交するように配置して接合を行なった。ついで、実施例3と同様にして、MEAの端部に接着剤が塗布された2次元スタックを得た。得られた2次元スタックの断面構造を図58に示す。これ以降は、隣接する2次元スタックを90°交差させて積層し接合すること以外は実施例3と同様にして、マニホールドを備える燃料電池スタックを作製した。
<実施例5>
本実施例においては、まず、MEAにおけるアノード導電性多孔質層、アノード触媒層、電解質膜およびカソード触媒層の端部全体、ならびにカソード導電性多孔質層の端部の一部(カソード触媒層寄りの端部)に接着剤を塗布したこと以外は、実施例4と同様にして、接着剤が塗布された2次元スタックを得た。ついで、図59に示されるように、実施例3と同様の熱硬化性樹脂を含む導電性接着剤を一方の2次元スタックのカソード導電性多孔質層上に塗布し、実施例3と同様の条件で、ホットプレスを行ない、当該接着剤を熱硬化させることにより、2次元スタックが有するカソード導電性多孔質層とこれに隣接する2次元スタックが有するカソード集電体間で、2次元スタック同士を、これらが90°交差するように接合させ、燃料電池スタックを作製した。このようにホットプレスを用いて容易に2次元スタック同士の接合を行なえることから、熱硬化性の接着剤を用いることが好ましい。得られた燃料電池スタックの断面構造を図60に示す。このようにカソード導電性多孔質層の端部の少なくとも一部を接着剤で被覆しないことにより、MEAの積層方向に対し、垂直な方向(面内方向)からの、カソード導電性多孔質層への空気の流入を効果的に行なえるようになる。
<実施例6>
本実施例においては、まず、実施例3で用いた流路基板、アノード集電体およびカソード集電体と、多孔質体であるステンレス(SUS316L)製のスペーサ(幅2mm、長さ25mm、厚さ0.5mmの直方体形状)を4本用意し、図61に示すように、これらを下からスペーサ、カソード集電体、流路基板、アノード集電体の積層順で、互いに接合し、接合体を得た。接合は、実施例3と同様であり、ホットプレス型の拡散接合により行なった。ついで、実施例3と同様にして、MEAを接合した後、MEAの端部に接着剤を塗布し、MEA端部へ接着剤が塗布された2次元スタックを得た。次に、実施例3と同様の条件で、ホットプレスを行ない、接着剤を熱硬化させることにより、2次元スタックが有するスペーサとこれに隣接する2次元スタックが有するアノード集電体間で、2次元スタック同士を、これらが90°交差するように接合することにより、燃料電池スタックを作製した。このようにホットプレスを用いて容易に2次元スタック同士の接合を行なえることから、熱硬化性の接着剤を用いることが好ましい。得られた燃料電池スタックの断面構造を図62に示す。本実施例で用いたスペーサは、カソード集電体およびカソード導電性多孔質層と同じ外形(厚みを除く)を有しており、カソード集電体にほぼ重なるように積層されている。このような構成は、スペーサとMEAの導電性多孔質層との接合面積増大による強度向上と電気的抵抗の低減、および燃料電池スタック内部の空気の通りやすさの点で好ましい。
以上のような拡散接合による構成部材の接合は、たとえば次のような点から好ましい。(a)金属部材が原子間で接合するので、バルクの金属と同程度に界面抵抗値が低く、接着強度が高い。
(b)構成部材として、酸性溶液、アルコール溶液に強い耐酸性SUS部材を使用でき、接合における長期信頼性も高い。
(c)集電体の加工は微細であるため、エッチングによる加工が好ましいが、集電体の加工から、燃料電池スタックの構造加工、接合処理までを一貫して行なえるため、設計、微細な部分(100μm幅の板材の積層も可能)での接合の位置合わせが可能となる。
(d)微細な部分の位置あわせが可能であるため、流路基板と集電体との接着ののりしろ部の幅を短くしても、接合強度を高く、界面抵抗を低くできる。これにより、のりしろ部の割合を少なく、流路の幅の割合を多く取ることができる。それにより、燃料が供給されて有効に働くMEAの発電面積が多くなり、発電特性が向上する。たとえば、のりしろの幅を0.5mmから0.3mm以下程度まで軽減することも可能であり、この場合、2mmの幅のMEAを用いたとすると、50%から、70%以上に流路の割合を増やすことができる。
(e)導電性接着剤を用いて接合する場合に比べ、流路基板と集電体の間の隙間から、燃料が漏れる可能性が低くなる(導電性接着剤は、剥離や溶解により隙間が生じたとき、漏れが生じやすい)。
(f)端部における流路基板と集電体の間からの液漏れの心配が無くなれば、燃料透過制御層を流路と触媒層の間に設けることにより、MEAの端部の封止(すなわち、MEAの端部断面とアノード導電性多孔質層の端部断面の封止)を隙間無く完全に行なわなくても、燃料電池の端部断面(未封止の部分の隙間)から燃料が染み出てくることも無く、良好に発電させ、MEAの端部から二酸化炭素を排出することが可能となり得る。
(g)燃料電池スタック1層分の部材をすべて接合した部品を作製することができるため、燃料電池スタックの積層工程がホットプレスによるMEAと燃料電池スタック1層分の部材をすべて接合した部品の接合だけになり、燃料電池スタックの製造が簡略化される。
<実施例7>
実施例3と同様の方法にて短冊状(厚み0.45mm、幅1.8mm、長さ23mm)のMEAを8本作製した。図48の流路基板における縦方向の4本流路が8本に拡張された流路基板と、図49のアノード集電体における4本の領域Aが8本に拡張されたアノード集電体とを拡散接合で張り合わせた後、アノード集電体の上にMEAを8本配置した。用いたアノード集電体は、図49と同様に、領域Aの幅が2mmであり、スリット状の貫通穴の幅は1mmである。この8箇所の領域A上に短冊状のMEAのピッチ(MEAの左端から隣のMEAの左端までの距離)が3mmとなるように、8本のMEAを配置した。次に、図50(c)における4本のカソード集電体が8本に拡張されたカソード集電体をカソード側のGDL25BC(カソード導電性多孔質層)表面に合わせて、ホットプレスによって100℃、0.1kgf/cm2の条件で2分間熱圧着し、アノード集電体とMEAとカソード集電体を仮接着した。ついで、MEAの端部と集電体の端部にエポキシ系の接着剤を塗布し、MEAと集電体との接着およびMEA端部のシールを行なった。こうして燃料電池の層を1層作製した。かかる燃料電池層を2個作製した。これらをそれぞれサンプルNo.1、No.2とする。次に、スペーサとして、チタン多孔質体であるベキニット株式会社のチタン不織布(空隙率60%、厚み0.5mm、幅1.5mm、長さ30mm、線形20μm)とSUS316Lの非多孔質体(長さ30mm、厚み0.5mm、幅0.5mmの直方体)とを用いて、ピッチ(スペーサの左端から隣のスペーサの左端までの距離)4mmで交互に配置し、スペーサ層とした。次に、このスペーサ層を、上記サンプルNo.1およびNo.2の2つの燃料電池層で挟み、図63(b)に示されるようにマニホールドを差し込み、さらに電気抵抗を低減させるためにアノード集電体の取り出し端子とカソード集電体の取り出し端子を直列配線となるように接合して、燃料電池スタック(以下、2層スタックとも称する。)とした。なお、各スペーサと燃料電池層は、2液系の導電性接着剤(藤倉化成株式会社製、ドータイトSH−3A)を用いて接着した。図63(b)に、この2層スタックの概略斜視図を示す。
図63(a)は、上記サンプルNo.1、サンプルNo.2および2層スタックの電流−電圧特性、MEAの平均の電流−出力密度特性を示す。測定は、燃料として3mol/Lのメタノール水溶液をポンプで供給し、空気は補機を用いないパッシブにて供給し、発電させることにより行なった。図63(a)に示されるように、サンプルNo.1、No.2および2層スタックの最大平均出力密度は、それぞれ38.5mW/cm2、37.4mW/cm2、42.1mW/cm2であった。2層スタックにおいて、平均出力密度の最大値が向上しているのは、燃料電池層を2層積層させたことにより、温度が上昇しやすくなり、これによって触媒活性の向上などにより発電効率が向上したためである。
ここで、2層スタックの最大体積出力密度(燃料電池スタック体積あたりの出力、単位:W/L)を次のようにして算出した。まず、図63(b)に示される太枠領域を燃料電池スタックの実質的な体積(以下、スタック体積ともいう。マニホールドを設置した領域は除いている。)とみなすと、このスタック体積は、燃料電池層の厚みが約0.7mm、スペーサの厚みが0.5mmであり、それらを積層した2層スタックの厚みは1.9mmと測定されたことから、23mm×23mm×1.9mm=1cm3と算出される。一方、上記太枠内におけるMEAの総面積は、2.3cm×0.18cm×8本×2層=6.624cm2と算出されることから、2層スタックの出力は、42.1mW/cm2×6.624cm2=279mWとなる。したがって、2層スタックの最大体積出力密度は、279mW/1cm3=279W/Lと算出できる。
<実施例8>
実施例7と同じ燃料電池層をさらにもう1個作製し、サンプルNo.3とした。次に、実施例7と同様にして、これらサンプルNo.1〜No.3の3つの燃料電池層を用いて、3層の燃料電池層と、各燃料電池層の間に配置された2つのスペーサ層とからなる燃料電池スタック(以下、3層スタックとも称する。)を作製した。図64(b)に、この3層スタックの概略斜視図を示す。図64(a)は、サンプルNo.1、サンプルNo.2、サンプルNo.3および3層スタックの電流−電圧特性、MEAの平均の電流−出力密度特性を示す。測定条件は実施例7と同様とした。図64(a)に示されるように、サンプルNo.1、No.2、No.3および3層スタックの最大平均出力密度は、それぞれ38.5mW/cm2、37.4mW/cm2、39.3mW/cm2、41.1mW/cm2であった。3層スタックにおいて、平均出力密度の最大値が向上しているのは、燃料電池層を3層積層させたことにより、温度が上昇しやすくなり、これによって触媒活性の向上などにより発電効率が向上したためである。
ここで、3層スタックの最大体積出力密度を次のようにして算出した。まず、図64(b)に示される太枠領域を、実施例7の2層スタックと同様に、燃料電池スタックの実質的な体積(スタック体積)とみなすと、このスタック体積は、燃料電池層の厚みが約0.7mm、スペーサの厚みが0.5mmであり、それらを積層した3層スタックの厚みは3.0mmと測定されたことから、23mm×23mm×3.0mm=1.587cm3と算出される。一方、上記太枠内におけるMEAの総面積は、2.3cm×0.18cm×8本×3層=9.936cm2と算出されることから、3層スタックの出力は、41.1mW/cm2×9.936cm2=408mWとなる。したがって、3層スタックの最大体積出力密度は、408mW/1.587cm3=257W/Lと算出できる。
<比較例1>
図65は、本比較例で作製した従来の燃料電池スタックの構造を示す斜視図である。作製手順は次のとおりである。まず、実施例3と同様にして、23mm×23mmのGDL25BC(導電性多孔質層)上に、アノード触媒層とカソード触媒層をそれぞれ形成した。実施例3と同様のホットプレス条件でGDL25BC、アノード触媒層、3cm×3cmの電解質膜(ナフィオン117)、カソード触媒層、GDL25BCの順で積層されたMEAを作製した。導電性多孔質層からはみ出た電解質膜は切断し、23mm×23mmの外形のMEAとした。
なお、アノード集電体としては、25×40mmの長方形に図49のような出力取り出し端子が設けられた外形であって、0.1mm厚みの平板に穴形0.6mmの穴が六法細密充填のパターン、ピッチ0.7mmで23mm×23mmの面積の部分に開口が開いているSUS316LにAuを1μmメッキしたものを用いた。
また、カソード集電体としては、23mm×23mmの長方形に、図50(c)のような出力取り出し端子が設けられた外形で0.1mm厚みの平板に穴形0.6mmの穴が六法細密充填のパターン、ピッチ0.7mmで23mm×23mmの面積の部分に開口が開いているSUS316LにAuを1μmメッキしたものを用いた。
次に、作製したMEAをアノード集電体とカソード集電体の開口の部分にあわせて挟み、図48と同様の外形(厚み0.2mm、幅25mm×最長部における長さ40mmであり、図48の流路基板と同様に端部に2つのマニホールドの差込口を有するSUS基板)を有しており、23×23mmのMEAの配置位置の直下に燃料が流れるように流路が形成された流路基板をアノード集電体と合わせて、外周を接着剤で封止した。接着剤にはエポキシ接着剤であるクイック5を用いた。
最後に、図65に示されるようにマニホールドを差し込み、さらにアノード集電体およびカソード集電体の出力取り出し端子を直列配線となるように接続した。
図66(a)に、このようにして作製された燃料電池を2層積層(すなわち、図65に示される構造の燃料電池スタック)した場合の電流−電圧特性、MEAの平均の電流−出力密度特性を示す。測定は、燃料として3mol/Lのメタノール水溶液をポンプで供給し、空気は補機を用いないパッシブにて供給し、発電させることにより行なった。この燃料電池スタックは、外形2.23×2.23cm、表面積5cm2の燃料電池(セル)を二つ直列に積層したものである。セルとセルとの間の間隔dを狭めると、空気が供給されにくくなり、空気不足によって最大平均出力密度の値が低下している。その結果、図66の表に示すように、このセルを3次元に2層積層すると、最大体積出力密度は、セルとセルとの間隔dを1mmにした場合に、167W/L、2mmにした場合に159W/L、3mmにした場合に153W/L、4mmにした場合に140W/Lであった。なお、最大体積出力密度は、実施例7および8と同様に、図65に示される太枠領域をスタック体積とみなして算出した。
このように、本発明により、燃料電池スタックの最大体積出力密度を従来の燃料電池スタックに比較して、約1.5倍以上に高めることができた。さらに、空気を供給するファン等の補機を用いなくても体積出力密度を向上させることができた。本発明に係る実施例7の2層スタックの総出力電力は279mW、実施例8の3層スタックの総出力電力は408mWであり、燃料電池スタックの平面の外形が23mm×23mmである場合において、燃料電池層1層の従来の燃料電池では、サンプルNo.3の平均出力密度の最大値である41.1mW/cm2で出力しても約217mWしか出力できない。一方、本発明による3次元的に高集積した燃料電池スタックによれば、2層スタックで厚みが1.2mm、3層スタックで厚みが2.3mm増加するだけで、従来の燃料電池と比較して、2層スタックの場合で約1.29倍、3層スタックの場合で約1.88倍に出力を高めることができた。これにより、機器における燃料電池の設置面積が限られている場合において、3次元的にわずかに厚みが増えるだけで、多くの出力を取り出すことができる燃料電池スタックを作製することができる。
燃料電池スタックの負荷である機器の出力が多い場合、MEAの必要面積は大きくなるが、平面に配置すると機器の搭載可能面積以上には配置できないので、MEA上に積層することが必要な場合が多々起こる。この場合、従来の燃料電池の場合のように、MEAの面積が大きいと、すなわち燃料電池層の面積が大きいと、その上に積層する燃料電池層までの距離が酸素の吸入の関係で大きくなる。従来例では、5cm2の正方形のMEAの燃料電池層の場合、MEAの出力密度を1層の場合と同等の出力を引き出しつつ3次元的に積層するためには、燃料電池層の間隔を3〜4mm程度とする必要があり、さらにそれ以上に燃料電池層の面積が大きくなると、燃料電池層の間隔を4mm以上とするか、またはファンなどの補機が必要となる。本発明によれば、短冊状の単位電池の数を8本からそれ以上に増やすこと、または短冊状の単位電池の長さを長くすることにより、燃料電池の層と層の間隔(スペーサの厚み)を一定のまま積層することができる。つまり、負荷の出力が多くなっても、体積出力密度を減少させることなく、燃料電池スタックを作製することができる。また、本発明により、燃料電池層を近づけ、高集積化することができるため、隣接する燃料電池層の発電に伴う温度の影響を大きく受け、発電効率の向上、最大平均出力密度を向上させることができる。また、温度上昇により、飽和水蒸気圧が上がり、燃料電池スタック内で生成水が結露する量が減少する。さらに、本発明の燃料電池スタックによれば、燃料電池スタック内部に3次元的に空気の通り道が形成されているため、水蒸気となった生成水は、当該通り道より燃料電池スタック外部に良好に排出され、これにより、安定して電力を供給することができる。
<実施例9>
実施例7の燃料電池スタックのスペーサをチタン不織布の代わりに、コットンの不織布とSUS316Lのスペーサとを交互に配置して、燃料電池スタックを作製した。コットンの不織布は幅1.5mm、厚み0.5mmで燃料電池スタックの外形よりも2cm長く、はみ出た部分は、燃料電池スタックの裏側に回した。その他は実施例7の燃料電池スタックと同様の構成である。
図67に、実施例7で作製した2層スタック、本実施例で作製した2層スタック、および、比較例1で作製した2層スタック(セル間隔dが2mmのものと3mmのもの)について連続発電試験(出力電流100mA/cm2での電圧−時間特性評価試験)を行なった結果を示す。連続発電試験は、40℃、出力電流100mA/cm2、大気開放下の条件で行なった。比較例1の2層スタックでは、セル間隔dが2mmでも生成水による空気供給阻害のため、20分間の連続出力も不可能であった。比較例1の2層スタックにおいて、セル間隔dが3mmになると、ほぼ実施例7と同等の連続発電特性を示した。一方、本実施例の2層スタックは、スペーサとして親水性の多孔質体であるコットンの不織布を用いると、結露した生成水を吸い込み、燃料電池スタックの裏側へ排出して、蒸発させるため、良好な連続発電特性を示した。このように、親水性の多孔質体からなるスペーサの使用により、単位電池からの生成水を外部に蒸発させ、良好な連続発電特性を持続することができることがわかる。生成水の量は、アノード極から電解質膜を通ってカソード側へ向かうメタノールの移動に伴いメタノールがカソードで酸素と燃焼されて生成する水の量や燃料に含まれる水の移動の量も含まれる。この連続発電特性はメタノールや水のクロスオーバー量の低減された電解質膜を用いることでさらに改善することが可能であり、これにより、さらに高出力の燃料電池スタックとすることができる。
本発明の燃料電池スタックは、従来の構造に比べ、高出力でかつ、生成水を水蒸気として排出しやすい構造を有しており、かかる構造は、高集積化に有利な構造であるといえる。特に空気を供給する補機を用いなくても高集積化を可能にすることができる点で極めて有利である。
<実施例10>
実施例3と同様の方法にて、短冊状(厚み0.45mm、幅2.35mm、長さ23mm)のMEAを5本作製した。次に、流路基板とアノード集電体とを拡散接合で張り合わせた後、アノード集電体の上に、MEAを5本配置した。具体的には、5箇所の領域A上に短冊状のMEAのピッチが3.5mmとなるように、5本のMEAを配置した。ここで用いた流路基板は、図48の流路基板と同様の構造であって、スリット状の貫通穴の幅が1mm、スリット状の貫通穴とこれに隣接する流路との間に形成されている壁の幅が0.5mm、流路幅が1.5mm、流路深さが0.1mm、流路基板厚み0.2mm、縦方向の4本の流路が5本に拡張された(したがって、4つのスリット状の貫通穴を有し、マニホールドの差し込み口である2.5×3mmの突起部が対角線上に位置する。)流路基板である。
また、ここで用いたアノード集電体は、本実施例で用いる流路基板と同じ外形を有しており、より具体的には、図49のアノード集電体と同様の構造であって、4本の領域Aが5本に拡張され(したがって、4つのスリット状の貫通穴を有する。)、スリット状の貫通穴の幅が1mm、スリット状の貫通穴の長さが25mm、領域Aの幅が2.5mm、領域Aの縦方向の中心線から両端に向けて0.75mmの間の領域に、一辺が0.25mmの六角形状の開口が0.1mmの線幅を残して設けられたアノード集電体である。
次に、図50(c)の複合カソード集電体における4本のカソード集電体が5本に拡張され、1本のカソード集電体の幅が2.5mm、各カソード集電体間の距離が1mmである複合カソード集電体を、カソード側のGDL25BC(カソード導電性多孔質層)表面に合わせて、ホットプレスによって100℃、0.1kgf/cm2の条件で2分間熱圧着し、アノード集電体とMEAとカソード集電体を仮接着した。MEAの端部と集電体の端部に2液系のエポキシの接着剤を塗布し、MEAと集電体との接着および端部のシールを行なった。こうして燃料電池の層を1層作製した。かかる燃料電池層を3個作製した。これらをそれぞれサンプルNo.4、No.5、No.6とする。次に、実施例7と同じスペーサ層を作製し、これを用いて2層スタックおよび3層スタックを作製した。当該2層スタックは、サンプルNo.4の燃料電池層、スペーサ層およびサンプルNo.5の燃料電池層をこの順で積層させた構造の燃料電池スタックである。また、当該3層スタックは、サンプルNo.4の燃料電池層、スペーサ層、サンプルNo.5の燃料電池層、スペーサ層およびサンプルNo.6の燃料電池層をこの順で積層させた構造の燃料電池スタックである。
図68は、サンプルNo.4(1層スタック)、2層スタックおよび3層スタックの発電特性を示す。図68(a)は、サンプルNo.4(1層スタック)、2層スタックおよび3層スタックの電流−電圧特性、MEAの平均の電流−出力密度特性を示すグラフであり、図68(b)は、これらスタックの発電特性および形状をまとめた表である。測定は、実施例7と同様に、燃料として3mol/Lのメタノール水溶液をポンプで供給し、空気は補機を用いないパッシブにて供給し、発電させることにより行なった。図68に示されるように、サンプルNo.4、2層スタックおよび3層スタックの最大平均出力密度は、それぞれ39.5mW/cm2、43.7mW/cm2、42.2mW/cm2であった。なお、サンプルNo.5、No.6の最大平均出力密度は、それぞれ41.2mW/cm2、41.5mW/cm2であった。MEAの幅を2.35mmに増やしても、MEAの平均出力密度の低下は、本実施例の出力電流密度範囲においてはみられなかった。2層または3層に積層することにより、燃料電池および燃料電池スタック内部の空気の温度が上昇し、これにより、触媒活性の向上などにより発電効率が向上し、MEAの平均出力密度が向上した。
実施例7および8においては、MEAの幅を1.8mm、空気経路の幅となる流路基板およびアノード集電体のスリット状貫通穴ならびにカソード集電体間の距離を1mmとし、一方、本実施例ではMEAの幅を2.35mmに増やし、空気経路の幅を1mmとした。平面上での隙間に対するMEAの割合が多くなることにより、平面上での高集積化が可能となる。本実施例では、図68(b)に示すように、2層スタックで、厚み0.19cm、328W/Lの体積出力密度の最大値を示し、3層スタックで、厚み0.3cm、300W/Lの体積出力密度の最大値を示した。本実施例は、実施例7および8から大きく体積出力密度の最大値が向上されている。このように、本発明によれば、MEAの形状(幅等)や空気経路(隙間領域)の形状(幅等)などを最適化することにより出力密度を大きく向上させることができる。かかる最適化は、燃料電池スタック内における燃料電池(単位電池)の配置構成の最適化により行なうことができる。
燃料電池スタックを機器に搭載する場合、三次元的な高さのある空間に配置するのが好ましい場合には、空気の供給を重視し、燃料電池スタック内の隙間領域の割合を大きくすることが好ましく、二次元的な薄い厚みの空間に配置するのが好ましい場合にはMEAの割合を大きくし、平面上での集積度を向上させることが好ましい。本実施例の燃料電池スタックにおいても、実施例7および8の燃料電池スタックと同様の効果を得ることができる。本実施例の燃料電池スタックにより、体積出力密度の最大値を比較例1の従来の燃料電池スタックに比較して、約2倍に高めることができた。
<実施例11>
実施例10で作製した燃料電池層(サンプルNo.4、No.5およびNo.6)と同じ構造の燃料電池層3つと、スペーサとして親水性多孔質体であるコットンの不織布とチタン多孔質体とを用いて、3層の燃料電池層を有する燃料電池スタックを作製した。具体的には、厚み0.4mm、幅1.5mmのコットンの不織布からなるスペーサを2mmの間隔を空けて6個配置し、また、各MEAの長手方向における両端部に、燃料電池スタック全体が電気的に直列に配線されるよう、チタン多孔質体であるベキニット株式会社のチタン不織布(空隙率60%、厚み0.4mm、幅1.5mm、長さ20mm、線形20μm)を配置し、2液系の導電性接着剤(藤倉化成株式会社製、ドータイトSH−3A)を用いて接着してスペーサ層とし、燃料電池層、スペーサ層、燃料電池層、スペーサ層、燃料電池層の順で積層して燃料電池スタックを作製した。ここで、用いたコットンのスペーサの長さは、燃料電池スタックの外形よりも端部からそれぞれ2cm長く、したがって実施例9と同様に、はみ出た部分は、燃料電池スタックの裏側に回した。また、さらに電気抵抗を低減させるためにアノード集電体の取り出し端子とカソード集電体の取り出し端子を直列配線となるように接合した。
得られた燃料電池スタックの出力電流密度100mA/cm2、温度25℃および40℃における連続発電特性を図69に示す。左の軸に燃料電池スタックの出力電圧(V)を、右の軸に燃料電池スタックの体積出力密度(W/L)を示している。図69に示されるように、60分間の連続発電試験を行なったところ、いずれの温度条件下においても、出力電圧低下は約10%程度と低く、また、25℃においても220W/L以上の高い体積出力密度を維持しつつ、1時間の連続発電が可能であった。一般に、高集積スタックを機器に入れた場合、筐体に囲われることで周囲温度が向上することが考えられるが、本実施例の燃料電池スタックにおいては、周囲温度が40℃となる場合、周囲温度が25℃の場合よりも、発電効率が向上し、250W/L以上の高い体積出力密度を示す(図69参照)。このように、本実施例の燃料電池スタックは、高い体積出力密度を維持しながら、連続発電が可能である。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100,300 燃料電池スタック、101,301,501,701,801,901 第1の燃料電池層、102,302,502,702,802,902 第2の燃料電池層、103,303,401,601,703,803,903,1101,1601,1701,1901,4101,4201,4301,4401,4501,4701 単位電池、104a、104b 隙間領域、201,403,507,604,706,806,907,1403,1503,2001,2201,2301,2401,2501,2601,2701,2801,4001,4305,4601 電解質膜、202,402,508,603,705,805,906,1402,1502,2002,2202,2302,2402,2502,2602,2702,2802 アノード触媒層、203,404,506,605,707,807,908,1404,1504,2003,2203,2303,2403,2503,2603,2703,2803 カソード触媒層、204,509,602,704,804,905,1401,1501,2004,2204,2304,2404,2504,2604,2704,2804 アノード導電性多孔質層、205,505,606,708,808,909,1405,1505,1506a,1506b,2005,2205,2305,2405,2505,2605,2705,2805 カソード導電性多孔質層、206,910,1406,2006,2306,2406,2506,2606,2706,2806 燃料流路、503 第1の単位電池、904 セパレータ、1702 分岐部、2008 カソード集電体、2009 アノード集電体、208,2206,2407,2507,2607,2809 親水層、210,2207 気液分離層、207,1407,2007,2208,2307,2408,2508,2608,2708,2810 貫通孔、209,2308,2409,2509,2707,2807,2808 燃料透過制御層、2410 コの字形流路、2709 補強部材、2811 接着層、809 絶縁層、4002,4602 基板、4102,4202,4302,4402,4502,4702 燃料電池層、4103,4203,4303,4403,4503a,4503b,4603 スペーサ、4104,4204,4304,4404,4504,4704 スペーサ層、4703a 多孔質体からなるスペーサ、4703b 非多孔質体からなるスペーサ。

Claims (14)

  1. 1以上の単位電池(a)から構成され、層内に第1の隙間領域を有する燃料電池層(A)と、
    前記燃料電池層(A)上に積層される層であって、1以上のスペーサから構成され、層内に第2の隙間領域を有するスペーサ層と、
    前記スペーサ層上に積層される層であって、1以上の単位電池(b)から構成される燃料電池層(B)と、
    をこの順で含む燃料電池スタックであって、
    前記単位電池(a)および前記単位電池(b)は、アノード触媒層と電解質膜とカソード触媒層とを含み、かつ、前記アノード触媒層へ燃料を供給するための燃料供給手段を備えており、
    前記アノード触媒層の端面は被覆層を備えており、
    前記燃料は、気体燃料であり、
    前記単位電池(a)または前記単位電池(b)のいずれか一方は、そのアノード触媒層に電気的に接続されるアノード集電体を少なくとも有し、他方は、そのカソード触媒層に電気的に接続されるカソード集電体を少なくとも有し、
    前記第1、第2の隙間領域はそれぞれ、前記燃料電池層(A)、前記スペーサ層を層厚方向に貫通する領域であり、
    前記第1および第2の隙間領域のすべては連通しており、
    連通した前記第1および第2の隙間領域からなる空間は、前記単位電池(a)および前記単位電池(b)に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路を構成する燃料電池スタック。
  2. 前記燃料電池層(B)は、層内に第3の隙間領域を有し、
    前記第3の隙間領域は、前記燃料電池層(B)を層厚方向に貫通する領域であり、
    前記第1〜第3の隙間領域のすべては連通しており、
    連通した前記第1〜第3の隙間領域からなる空間は、前記酸化剤ガス流路を構成する請求項1に記載の燃料電池スタック。
  3. 前記燃料電池層(A)は、2以上の単位電池(a)を、隣り合う単位電池(a)間に前記第1の隙間領域を有するように配置してなり、
    前記スペーサ層は、2以上のスペーサを、隣り合うスペーサ間に前記第2の隙間領域を有するように配置してなり、
    前記燃料電池層(B)は、2以上の単位電池(b)を、隣り合う単位電池(b)間に前記第3の隙間領域を有するように配置してなる請求項2に記載の燃料電池スタック。
  4. 前記単位電池(a)、前記単位電池(b)および前記スペーサは短冊形状を有し、
    前記スペーサ層を構成するスペーサは、前記燃料電池層(A)および前記燃料電池層(B)をそれぞれ構成する単位電池(a)および単位電池(b)と交わるように配置される請求項2または3に記載の燃料電池スタック。
  5. 前記燃料電池層(B)が有する2以上の単位電池(b)は、それぞれ前記燃料電池層(A)が有する単位電池(a)の直上または直下の領域内に配置される請求項3に記載の燃料電池スタック。
  6. 前記燃料電池層(B)が有する2以上の単位電池(b)は、それぞれ前記燃料電池層(A)が有する隙間領域の直上または直下に配置される請求項3に記載の燃料電池スタック。
  7. 前記スペーサ層を構成する2以上のスペーサのうち、両端に配置されるスペーサは、前記燃料電池層(A)が有する単位電池(a)および前記燃料電池層(B)が有する単位電池(b)の長手方向における端部に接して配置される請求項4〜6のいずれかに記載の燃料電池スタック。
  8. 前記燃料電池層(A)が有する単位電池(a)および前記燃料電池層(B)が有する単位電池(b)は、アノード集電体とカソード集電体とを含む請求項7に記載の燃料電池スタック。
  9. 前記燃料電池層(A)を構成する2以上の単位電池(a)は、隣り合う単位電池(a)間に前記第1の隙間領域を有するように略平行に配置され、
    前記スペーサ層を構成する2以上のスペーサは、隣り合うスペーサ間に前記第2の隙間領域を有するように略平行に配置され、
    前記燃料電池層(B)を構成する2以上の単位電池(b)は、隣り合う単位電池(b)間に前記第3の隙間領域を有するように略平行に配置される請求項3〜8のいずれかに記載の燃料電池スタック。
  10. 前記スペーサ層は、多孔質体からなるスペーサを含む請求項1〜9のいずれかに記載の燃料電池スタック。
  11. 前記スペーサ層は、多孔質体からなるスペーサと非多孔質体からなるスペーサとを含む2以上のスペーサからなる請求項10に記載の燃料電池スタック。
  12. 前記スペーサ層は3以上のスペーサを含み、
    少なくとも、前記スペーサ層の両端に配置されるスペーサは、非多孔質体からなるスペーサである請求項11に記載の燃料電池スタック。
  13. 前記スペーサ層は、親水性を有する表面を備える少なくとも1つのスペーサを含む請求項1〜12のいずれかに記載の燃料電池スタック。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の燃料電池スタックと、
    前記燃料電池スタック内部への酸化剤ガスの流動を促す補機と、
    を備える燃料電池システム。
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