JP5290402B2 - 燃料電池スタックおよびこれを備える電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池スタックおよびこれを備える電子機器に関し、特に携帯用の小型電子機器に用いられる燃料電池スタックおよびこれを備える電子機器に関する。
近年、情報化社会を支える携帯電子機器等に用いられる小型電子機器の電源として、燃料電池に対する期待が高まっている。燃料電池は、アノード極で燃料(たとえば水素、メタノール、エタノール、ヒドラジン、ホルマリン、ギ酸等)を酸化するとともに、カソード極で空気中の酸素を還元するという電気化学反応を利用することにより、携帯電子機器等に電子を供給する化学電池であり、単独の発電装置で高い発電効率を得ることができる。
このような燃料電池は、その構造やそれに供給される燃料の違いにより、多種多様のものがあるが、その中でも直接メタノール型燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)は、アノード極にメタノール水溶液を供給し、メタノール水溶液から直接プロトンと電子とを取り出すことにより発電を行なうことができるため、改質器を備える必要がないという利点を有している。
しかも、DMFCは、大気圧下において液体であって高い体積エネルギー密度を有するメタノール水溶液を燃料として用いることから、高圧ガスボンベを用いて水素を供給する燃料電池と比べると、小型の燃料容器で燃料を取り扱うことができるとともに安全性の面でも優れている。このためDMFCは、小型電源への応用、特に携帯用の小型電子機器の2次電池の代替用途として注目が集まっている。
さらに、DMFCは、大気圧下において液体の燃料を用いるため他の燃料電池ではデッドスペースとなるような狭い婉曲空間部を燃料容器を配置するためのスペースに使用することができる。このためDMFCを備える電子機器はデザインの制約を受けることなく、その電子機器の内部に燃料容器を設置することができる。
しかも、DMFCの燃料は、メタノールの他にたとえばエタノール、プロパノール等のように、より高い体積エネルギー密度およびより高い引火点を有し安全性に優れる液体燃料を将来的に利用できるようになる可能性もある。
DMFCを例にとり、燃料電池内のカソード極およびアノード極で生じる電気化学反応を説明する。DMFCでは下記の反応式のように、燃料流路を通じて供給されるメタノールがアノード極で酸化されることにより、二酸化炭素、プロトンおよび電子に分離される。
アノード極:CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-
そして、アノード極で発生した電子が外部負荷を通ってカソード極に移動するときの電子の流れを電力として取り出す。一方、アノード極で発生したプロトンは、電解質膜を経てカソード極側に伝達される。カソード極では、電解質膜から透過したプロトンと酸化剤とが下記の反応式のように反応することにより水を生成する。DMFCに用いられる酸化剤としては、外部雰囲気に潤沢に存在する空気を用いることが多い。
カソード極:O2+4H++4e-→2H2
ところで、溶融炭酸塩電池のような高温燃料電池を除く、固体高分子型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、直接メタノール型燃料電池、アルカリ型燃料電池等のような燃料電池は、還元剤を供給するためのアノード流路が形成されたアノードセパレータ、アノード触媒層から電子の収集を行なうアノード集電体、アノードガス拡散層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層、カソードガス拡散層、カソード触媒層へ電子を供与するカソード集電体、および酸化剤を供給するためのカソード流路が形成されたカソードセパレータをこの順で積層した平面積層構造のものである。
上記のような燃料電池の構成の中でも特に、アノード触媒層、電解質膜およびカソード触媒層の3層を熱圧着等の手段により複合化したものを膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)といい、燃料電池を構成する上での最小構成単位である。
また、アノードセパレータおよびカソードセパレータは、電気的に導電性を有する材料を用いる。これは、アノードセパレータがアノード集電体の役割を果たし、カソードセパレータがカソード集電体の役割を果たす場合があるためである。また、アノードセパレータは還元剤をアノード触媒層に供給する役割、およびカソードセパレータは酸化剤をカソード触媒層に供給する役割を果たす場合もある。
上記で挙げた各種の燃料電池は、いずれも高電流を生み出すことができる。しかしながら、これらの燃料電池は体積あたりの出力密度が低いため、小型電源として利用する上では、出力密度を向上させる必要がある。
そこで、複数の燃料電池のアノード極とカソード極とを交互に接触するように積層(このような積層構造のことを以下においては「燃料電池スタック」とも称する)し、複数の燃料電池を直列接続することにより、出力電圧を高めた上で電子機器に搭載するのが一般的である。
ところが、上記の燃料電池スタックは、各燃料電池間の接触抵抗が高くなると、内部抵抗が高くなり、全体的な発電効率が低減してしまう。従来の燃料電池スタックは、還元剤をシールするためのシール材、酸化剤をシールするためのシール材をセパレータ毎に備えることによりシール性を向上させ、さらにアノード集電体としての役割を果たすアノードセパレータとアノードガス拡散層、カソード集電体としての役割を果たすカソードセパレータとカソードガス拡散層の電気的接触を密接に保つことを以って、燃料電池スタックの燃料電池間の接触抵抗を抑制し、導電性を向上させている。そして、シール性と導電性とを十分に確保するために、分厚く硬質の押さえ板、ボルト、ナット等の締結部材を用いて、燃料電池スタックの両端を押さえつけている。しかしながら、これらの締結部材を備えることにより燃料電池スタックが大型化するとともに重量が重いものとなり、結果として燃料電池スタックの出力密度が低下するという問題があった。
また別の問題として、従来の燃料電池スタックは、アノードセパレータおよびカソードセパレータの厚みが厚すぎるため、出力密度が低下する要因となっていた。アノードセパレータには、アノード触媒層の全面に還元剤を均一に供給するためのアノード流路を形成する必要があり、カソードセパレータにも、酸化剤をカソード触媒層の全面に均一に供給するためのカソード流路を形成する必要がある。
そこで、アノード流路およびカソード流路の厚みを狭くすることにより、アノードセパレータおよびカソードセパレータの厚みを薄くすると、還元剤および酸化剤を供給するときのその圧力損失が大きくなる。このため還元剤および酸化剤を供給するためのポンプやファン等の補機を大きくせざるを得なくなり、結果として燃料電池スタックの出力密度が低下することとなる。しかも、燃料電池スタックに備える補機の消費電力も大きくなってしまい、発電効率が低下することとなる。
特開2004−179140号公報
第15回燃料電池シンポジウム講演予稿集109ページ
上述のような問題を解決すべく、第15回燃料電池シンポジウム講演予稿集109ページ(以下、「非特許文献1」と記す)には、燃料電池スタックの単位容積中に含まれる発電面積の密度を増加させることにより、燃料電池スタックの出力密度を向上させる試みがなされている。すなわち、非特許文献1には、燃料電池(以下においては、「単位電池」とも称する)を高集積することにより、補機が不要もしくは少ない補機の消費電力で各単位電池のカソード極に酸化剤を供給することができる燃料電池スタックの構造が提案されている。
このような構造の燃料電池スタックは、同一の燃料電池層に含まれる各単位電池の間に設けられた一定の隙間が連通するように設けられている。このように配置することにより、外部雰囲気から酸化剤である酸素(空気中の酸素)を取り込むことができることを以って、各単位電池のカソード極に対し、発電に必要な空気を供給することができる。
しかしながら、近年の情報電子機器、特に携帯型の情報電子機器に必要とされる消費電力は高い。このため、非特許文献1の燃料電池スタックでは出力密度の点で、情報電子機器に対応することができず、さらに燃料電池スタックの出力密度を向上させることが求められていた。
そこで、特開2004−179140号公報(以下、「特許文献1」と記す)には、燃料電池スタックの出力密度を向上させるために、1つの燃料流路の上下に対しそれぞれ各1つずつの単位電池を、その単位電池のアノード極が燃料流路に対向するように配置する構造(以下においては「複合単位電池」とも称する)が提案されている。
かかる構造の複合単位電池は、発電面積を増加させる上では適しているものの、複合単位電池の外側を向く両面がカソード極となる。このため、複合単位電池の両面のカソード極が空気に触れる状態で使用しなければ、これらカソード極に空気を供給することができない。よって、このような複合単位電池を電子機器に組み込む場合、電子機器と複合単位電池との間に空気を供給するための空間を設けることが必須である。
しかし、電子機器と複合単位電池との間に空間を設けることにより、電子機器自体の厚みが厚いものとなり、手で持ちにくく取り扱いにくい電子機器となってしまう。しかも、電子機器と複合単位電池との間の空間を維持するために、複合単位電池と電子機器との間に支持材(支柱)等を設けることにより、燃料電池スタックの厚み方向への強度が弱いものとなり、電子機器自体の衝撃に対する強度が低下する虞もある。
これらの事情により、電子機器と複合単位電池との間に空間を設けることは適切とはいえない。上記のような理由により、複合単位電池のカソード極のうちの電子機器と接する側の面に、十分な量の空気を供給することができなかった。
また、特許文献1の図1に示されるような大面積の層状の単位電池(以下においては「大面積単位電池」とも称する)を用いる場合は、特にその大面積単位電池の中心部分での空気供給不足が顕著となる。
この空気供給不足には2つの要因が考えられ、1つ目の要因としては、空気が潤沢に存在する外部雰囲気と、大面積単位電池のカソード極の中心部との距離が長くなることにより、大面積単位電池のカソード極の中心部に近づくにつれて空気の拡散距離が長くなり、空気の供給不足となりやすいというものである。
もう1つの要因としては、大面積単位電池の発電によりカソード極で水が生成し、その水が蒸発して外部雰囲気に拡散するまでの距離も長くなることにより、大面積単位電池のカソード極の中心部分付近の水蒸気分圧が高くなるとともに酸素分圧が低くなるということである。
これらの理由により、特許文献1に示される構造の大面積単位電池は、発電に必要となる空気を大面積単位電池内に十分に供給することができない。このため、当該大面積単位電池を層厚方向に積層する場合、ファン等の補器を備えることが不可欠であり、たとえ発電部となる大面積単位電池の出力密度が高いものであっても、空気供給のための補器等を含めた燃料電池システムとしてみたときには大型化しているとともにその重量も重いものとなり、燃料電池システムの体積あたりの出力密度は低くなるという課題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは燃料電池スタックの構成部材を共通化または削減することにより、薄型化するとともに軽量化し、かつ従来よりも出力密度が高い燃料電池スタックを提供することである。
本発明者の研究によれば、非特許文献1に示される構造の燃料電池スタックに含まれる燃料電池層を構成する単位電池を、複合単位電池に代え、燃料電池スタックの構成部材を共通化または削減することにより、薄型化することができるとともに軽量化することができ、かつ高出力密度の燃料電池スタックを得ることができることが明らかとなった。
そして、本発明者らは複合単位電池の構造についてさらに研究を重ね、複合単位電池に燃料透過抑制層を適用すること、および各燃料電池層の電気的接続を簡便な構造にすることにより、本発明の効果がより顕著に得られることが明らかとなった。
すなわち、本発明の燃料電池スタックは、2層以上の燃料電池層を積層してなる燃料電池スタックであって、燃料電池層のうちの少なくとも1層は、2つ以上の複合単位電池を同一平面内に隙間を設けて配置されてなるものであり、複合単位電池は、複数の単位電池と、該単位電池のアノード極に燃料を供給するための燃料供給部とを含み、複数の単位電池のアノード極は、燃料供給部に対向するように配置されることを特徴とする。
燃料電池スタックは、上記の燃料電池層と、1以上のスペーサからなるスペーサ層とを積層してなることが好ましく、上記の燃料電池層とスペーサ層とを交互に積層してなることがより好ましい。
燃料電池層の表裏のいずれか一面もしくは両面の両端部上にそれぞれスペーサを設けることが好ましい。スペーサ層は、それが隣接する燃料電池層を構成する複合単位電池の全てと接する1の大面積のスペーサであってもよい。
燃料供給部は、燃料が流通するための燃料流路を含むものであってもよいし、燃料に対して毛細管作用を示す材料からなる燃料輸送部材を含むものであってもよい。
単位電池は、アノード極と、電解質膜と、カソード極とをこの順で備えることが好ましい。
単位電池は、アノード極の電解質膜と接する面とは反対側の面にアノード集電体を有し、カソード極の電解質膜と接する面とは反対側の面にカソード集電体を有することが好ましい。
燃料流路と、上記のアノード極との間にさらに燃料透過抑制層を備えることが好ましい。
燃料透過抑制層は、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、フッ化炭素樹脂、またはエポキシ樹脂あるいはポリオレフィン系樹脂とカーボンとの混合物を有する導電性組成物からなることが好ましい。
燃料を保持するための燃料貯蔵室をさらに備え、上記の燃料輸送部材の一端は、燃料貯蔵室に保持される燃料に接触されることが好ましい。燃料輸送部材とアノード極との間に、燃料の蒸気をアノード極に供給するための気化層を備えることが好ましい。
カソード集電体のカソード極と接する側とは反対側に、発電で生じた水を単位電池内に保持するための保湿層を備えることが好ましい。アノード集電体のアノード極と接する側とは反対側に断熱層を備えることが好ましい。複合単位電池を構成する各層を厚み方向に貫通する空間を有し、該空間はアノード極で発生する生成ガスを排出するための生成ガス排出路であることが好ましい。
燃料流路の燃料の流れる方向の面において、単位電池の積層方向を深さ方向とし、深さ方向に垂直な方向を幅方向とすると、燃料流路の幅の長さL1と単位電池の幅の長さL2との関係L1/L2は、0.6以上である、および/または、燃料流路の深さは、0.1mm以上であることが好ましい。
スペーサは、少なくともその表面が絶縁性であることが好ましい。スペーサは、少なくともその厚み方向に絶縁性であってもよい。
スペーサは、多孔質体からなることが好ましい。
スペーサは、酸化物により絶縁した、酸化チタン、酸化アルミニウム、もしくは酸化ジルコニウムの金属酸化物多孔質体、金属多孔質体の表面に親水性の高分子を塗布または修飾するもしくは親水性高分子フィルムを付属させることにより絶縁した金属−高分子複合体、または多孔質セラミックのいずれかからなることが好ましい。
上記の燃料電池スタックを覆う筐体を備え、該筐体は、1以上のスペーサと接することが好ましい。かかる筐体は、Cu、Al、Fe、Ti、およびステンレスからなる群より選択される一種以上の材料からなることが好ましい。
燃料電池層に含まれる2つのアノード集電体同士を電気的に接続するとともに、燃料電池層に含まれる2つのカソード集電体同士を電気的に接続することにより、複合単位電池に含まれる2つの単位電池は並列接続されることが好ましい。
隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のカソード集電体と、他方の燃料電池層のアノード集電体とを電気的に接続することにより、燃料電池層を直列接続することが好ましい。
アノード集電体は、その厚み方向に貫通するアノード集電体貫通孔を備え、カソード集電体は、その厚み方向に貫通するカソード集電体貫通孔を備え、アノード集電体貫通孔と、カソード集電体貫通孔とは、同一の燃料電池層において燃料電池層の積層方向に異なる位置に設けられ、隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔と、他方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔とは、燃料電池層の積層方向に実質的に同一の位置に設け、一方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔と、他方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔とは、燃料電池層の積層方向に実質的に同一の位置に設けることが好ましい。
隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔と、他方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔とは、導線により接続され、上記の一方の燃料電池層に含まれる2のカソード集電体貫通孔同士は、導線により接続されることが好ましい。
隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔と、他方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔とは、導線により接続され、上記の一方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔と、上記の他方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔とは、不導体部を有する導線により接続され、当該不導体部は、一方の燃料電池層のカソード集電体と、他方の燃料電池層のアノード集電体とを電気的に絶縁するように導線に設けられることが好ましい。
隣接する2層の前記燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のアノード集電体の側面から外方に向けて突出させたアノード電流取出部と、他方の燃料電池層の前記カソード集電体の側面から外方に向けて突出させたカソード電流取出部とは、半田を介して導線により接続されることが好ましい。
一方の燃料電池層のカソード集電体の側面から外方に向けて突出させたカソード電流取出部と、他方の燃料電池層のアノード集電体の側面から外方に向けて突出させたアノード電流取出部とは、不導体部を有する導線により半田を介して接続され、不導体部は、一方の燃料電池層のカソード集電体と、他方の燃料電池層のアノード集電体とを電気的に絶縁するように導線に設けることが好ましい。
また、複合単位電池および/またはスペーサは、短冊形状であることが好ましい。
本発明は、上記の燃料電池スタックを備える電子機器でもある。
本発明によれば、燃料電池スタックの構成部材を共通化または削減し、薄型化および軽量化するとともに、出力密度を高めた燃料電池スタックを提供することができる。
本発明の燃料電池スタックの好ましい一例を示す斜視図、上面図および側面図であり、(A)がその斜視図であり、(B)がその上面図であり、(C)がその側面図である。 本発明の燃料電池スタックと、従来の燃料電池スタックとの構造の相違を示す断面図であり、(A)従来の燃料電池スタックに用いられる燃料電池層を示す断面図であり、(B)本発明の燃料電池スタックに用いられる燃料電池層を示す断面図である。 (A)従来の燃料電池スタックの片面単位電池構造の空気供給の経路と、(B)本発明の燃料電池スタックの複合単位電池構造の空気供給の経路とを対比して示した断面図である。 本発明の燃料電池スタックの複合単位電池構造の熱対流により生じる空気拡散の経路を示した図である。 (A)補器を用いて各燃料電池層に燃料を供給する場合の燃料電池スタックを上面から見た図であり、(B)は(A)に示される燃料電池スタックを側面から見た図である。 (A)補器を用いないで各燃料電池層に燃料を供給する場合の燃料電池スタックを上面から見た図であり、(B)は(A)に示される燃料電池スタックを側面から見た図である。 (A)燃料輸送部材を用いて各燃料電池層に燃料を供給する場合の燃料電池スタックを上面から見た図であり、(B)は(A)の燃料電池スタックを側面から見た図である。 (A)2層の燃料電池層と1層のスペーサ層とを備える燃料電池スタックの模式的な断面図であり、(B)は(A)の燃料電池スタックのより好ましい形態を示す模式的な断面図である。 本発明の燃料電池スタックの好ましい一例を示す斜視図、上面図および側面図であり、(A)がその斜視図であり、(B)がその上面図であり、(C)がその側面図である。 本発明の燃料電池スタックの好ましい一例を示す斜視図、上面図および側面図であり、(A)がその斜視図であり、(B)がその上面図であり、(C)がその側面図である。 本発明の燃料電池スタックの好ましい一例を示す斜視図、上面図および側面図であり、(A)がその斜視図であり、(B)がその上面図であり、(C)がその側面図である。 本発明の燃料電池スタックの好ましい一例を示す斜視図、上面図および側面図であり、(A)がその斜視図であり、(B)がその上面図であり、(C)がその側面図である。 (A)本発明の燃料電池スタックとそれを覆う筐体とを示した斜視図であり、(B)は、(A)に示される燃料電池スタックを筐体で覆ったものを燃料電池層の積層方向に切断した断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の一例の積層方向の面の断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の一例の積層方向の面の断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の一例の積層方向の面の断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の一例の積層方向の面の断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の一例の積層方向の面の断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の一例の積層方向の面の断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の一例の積層方向の面の断面図である。 本発明の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の一例の積層方向の面の断面図である。 図21に示した燃料電池スタックに対し、さらに燃料電池層とスペーサ層とをさらに積層させたものである。 (A)本発明の燃料電池スタックを構成する燃料電池層1層を真上から見た上面図であり、(B)は、(A)に示される燃料電池層のうちのカソード集電体貫通孔とアノード集電体貫通孔とを含む面で切断した断面図である。 (A)本発明の燃料電池スタックを真上から見た上面図であり、(B)は、(A)に示される燃料電池スタックにおいて、カソード集電体貫通孔とアノード集電体貫通孔とを含む面で切断した断面図である。 (A)本発明の燃料電池スタックを備える電子機器の一面を示す概略断面図であり、(B)は、(A)で表される電子機器のうち燃料電池スタックを拡大した概略断面図であり、(C)は、(B)で表される燃料電池スタックのうちの燃料電池層の構成を拡大して示す概略断面図である。 (A)本発明の燃料電池スタックを備える電子機器の一面を示す概略断面図であり、(B)は、(A)で表される電子機器のうち燃料電池スタックを拡大した概略断面図であり、(C)は、(B)で表される燃料電池スタックのうちの燃料電池層の構成を拡大して示す概略断面図である。 (A)本発明の燃料電池スタックを備える電子機器の一面を示す概略断面図であり、(B)は、(A)で表される電子機器のうち燃料電池スタックを拡大した概略断面図であり、(C)は、(B)で表される燃料電池スタックのうちの燃料電池層の構成を拡大して示す概略断面図である。 (A)実施例で作製された燃料電池スタックの上面図であり、(B)は、その断面図である。 (A)実施例の燃料電池スタックに用いられる燃料流路形成材の形状を示す上方図であり、(B)実施例の燃料電池スタックに用いられるアノード集電体の形状を示す上方図であり、(C)実施例の燃料電池スタックに用いられるカソード集電体の形状を示す上方図である。 (A)実施例で作製された燃料電池スタックの電流―電位曲線を測定して得られた結果を示すグラフであり、(B)実施例で作製された燃料電池スタックの体積出力密度を測定して得られた結果を示すグラフである。 (A)本発明の燃料電池スタックを備える電子機器の一面を示す概略断面図であり、(B)は、(A)で表される電子機器のうち燃料電池スタックを拡大した概略断面図であり、(C)は、(B)で表される燃料電池スタックのうちの燃料電池層の構成を拡大して示す概略断面図である。 (A)実施例の燃料電池スタックに用いられる燃料流路形成材の形状を示す上方図であり、(B)実施例の燃料電池スタックに用いられるアノード集電体の形状を示す上方図であり、(C)実施例の燃料電池スタックに用いられるカソード集電体の形状を示す上方図である。 (A)実施例で作製された燃料電池スタックの電流―電位曲線を測定して得られた結果を示すグラフであり、(B)実施例で作製された燃料電池スタックの体積出力密度を測定して得られた結果を示すグラフである。 (A)本発明の燃料電池スタックを備える電子機器の一面を示す概略断面図であり、(B)は、(A)で表される電子機器のうち燃料電池スタックを拡大した概略断面図であり、(C)は、(B)で表される燃料電池スタックのうちの燃料電池層の構成を拡大して示す概略断面図である。 (A)比較例の燃料電池スタックに用いられる燃料流路形成材の形状を示す上方図であり、(B)比較例の燃料電池スタックに用いられるアノード集電体の形状を示す上方図であり、(C)比較例の燃料電池スタックに用いられるカソード集電体の形状を示す上方図である。 (A)比較例で作製された燃料電池スタックの電流―電位曲線を測定して得られた結果を示すグラフであり、(B)比較例で作製された燃料電池スタックの体積出力密度を測定して得られた結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<(1)燃料電池スタック>
(実施の形態1)
以下においては説明の便宜上、燃料としてメタノール水溶液を用い、酸化剤として空気を用いた場合を説明することもあるが、これらの燃料および酸化剤に限定されるものではない。
すなわち、燃料としては、気体燃料および液体燃料のいずれをも用いることができるが、液体燃料を気化して気相供給して用いてもよい。このような気体燃料としては、水素、DME、メタン、ブタン、アンモニア等を挙げることができる。また、液体燃料としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジメトキシメタン等のアセタール類、ギ酸等のカルボン酸類、ギ酸メチル等のエステル類、ヒドラジン等およびこれらの水溶液を挙げることができる。燃料はこれら1種の気体燃料および液体燃料に限定されるものではなく、2種以上の混合物を用いてもよい。
これらの燃料の中でも、体積あたりのエネルギー密度が優れているという点から液体燃料のメタノール水溶液を用いることが好ましい。
また、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる酸化剤としては、酸素、過酸化水素、硝酸等を挙げることができる。ただし、酸化剤のコストの点から、空気中の酸素を用いることが好ましい。
図1は、本実施の形態の燃料電池スタックの好ましい一例を示す斜視図、上面図および側面図であり、図1(A)がその斜視図であり、図1(B)がその上面図であり、図1(C)がその側面図である。
本実施の形態の燃料電池スタック1は、図1に示されるように、4層の燃料電池層100と3層のスペーサ層200とが交互に積層してなるものであって、当該燃料電池層100はいずれも5つの複合単位電池10を同一平面内に隙間11を設けて平行に配置されてなるものである。ここで、複合単位電池10とは、2つの単位電池(図示せず)と、当該単位電池のアノード極(図示せず)に燃料を供給するための1つの燃料供給部とを含むものであって、2つの単位電池のアノード極が、1つの燃料供給部に対向するように配置されたものである。ここで、燃料供給部とは、たとえば燃料タンクに保持された燃料をアノード極に供給するための部位である。
一方、スペーサ層200はいずれも5つのスペーサ20を同一平面内に隙間21を設けて平行に配置されるものであり、各スペーサ20は、複合単位電池10と直交するように配置されている。燃料電池層100に形成される複合単位電池間の隙間11とスペーサ層200に形成されるスペーサ間の隙間21とはいずれも直方体形状である。
このように各複合単位電池と各スペーサとを配置することにより、各複合単位電池の隙間11とスペーサ20とが接する面積は同一面積となる。また、各複合単位電池10の高さも等しいので、複数の隙間11は同じ空間体積を有している。さらに、燃料電池層の積層方向に対する任意の垂直方向の断面において、複合単位電池間の隙間11の断面積は等しい。
なお、本発明の燃料電池スタックは、図1に示される構造のもののみに限られるものではなく、2層以上の燃料電池層を含むものであって、当該燃料電池層のうちの少なくとも1層が、2つ以上の複合単位電池を同一平面内に隙間を設けて配置されてなるものであればいかなる構造のものも本発明の範囲に含まれ、スペーサ層200を含んでいなくてもよい。
なおまた、本実施の形態においては、2つの単位電池のアノード極が燃料供給部に対向するように配置する場合を説明するが、3つ以上の単位電池のアノード極が燃料供給部に対向するように配置してもよいことは言うまでもない。すなわち、複数の単位電池のアノード極が燃料供給部に対向するように設けられる複合単位電池である限り、本発明の範囲を逸脱しない。
ただし、燃料電池層100を構成する単位電池のカソード極に安定して酸素を供給するという観点から、本発明の燃料電池スタックは、燃料電池層100とスペーサ層200とを交互に積層することが好ましく、当該スペーサ層200は2以上のスペーサ20により構成されたものであることがより好ましく、さらに好ましくはスペーサ層200を構成する2以上のスペーサ20が互いに同一方向に隙間21を設けて平行に配置されてなるものである。このようにスペーサ層200を含む場合、必ずしも図1に示されるような順序で積層される必要はなく、たとえば燃料電池スタックを構成する各層のうちの最下層および最上層のいずれか一方もしくは両方にスペーサ層200を形成してもよい。なお、燃料電池層100とスペーサ層200とは必ずしも交互に積層する必要はなく、燃料電池層100またはスペーサ層200が連続して積層してもよいことは言うまでもない。
なお、以下においては、燃料供給部として燃料流路を用いて燃料を供給する場合を説明するが、燃料を供給する手段は、燃料流路を用いることのみに限定されるものではなく、たとえば燃料に対し毛細管現象を示す材料からなる燃料輸送部材によって燃料を供給してもよい。燃料輸送部材は、親水性の多孔質体からなるものであり、これによる燃料供給は後述する。
従来の燃料電池スタックでは、燃料流路に対して片方の面のみに単位電池を配置する構造(以下、「片面単位電池構造」とも称する)のものにより燃料電池層100を構成していた。しかし、本実施の形態の燃料電池スタックでは、燃料電池層100のうちの少なくとも1層に、2つ以上の複合単位電池を同一平面内に隙間を設けて配置されてなるものを採用することを特徴とする。このような複合単位電池10を適用することにより、従来1つの単位電池に対し1つの燃料流路を形成していたものを、2つの単位電池に対し1つの燃料流路にすることができる(すなわち2つの燃料流路を1つに共通化することができる)ことから薄型化され、燃料電池スタックの出力密度をより高めることができる。
図2は、本実施の形態の燃料電池スタックと、従来の燃料電池スタックとの構造の相違を説明する断面図であり、図2(A)は、従来の燃料電池スタックに用いられる燃料電池層を示す断面図であり、図2(B)は、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる燃料電池層を示す断面図である。なお、図2は、従来の燃料電池スタックと本実施の形態の燃料電池スタックとの構造の相違を的確に把握するため、いずれも4つの単位電池50を含む燃料電池スタックを示している。
本実施の形態の燃料電池スタックのように複合単位電池10を用いて燃料電池層100を形成することにより(図2(B))、従来の燃料電池スタックの4層分の燃料電池層100aの電極面積を、2層の燃料電池層で達成することができる。
このような構造とすることにより、2つの単位電池50が1つの燃料流路41を共通して利用することができるようになり、燃料流路41の個数を半分(すなわち図2では4個から2個)に削減することができる。しかも、スペーサ層も共通して利用することができるようになることから、図2においてはスペーサ層を3層から1層へと削減することができる。このように燃料流路41とスペーサ層とを削減することにより、従来と同等の電極面積を有しながら、大幅に燃料電池スタックを薄型化(図2においては幅Dで示した分)することができる。
しかも、図2には示されていないが、上述のように燃料流路41の数が減った分だけ燃料流路入口の数と、燃料流路出口の数とを減らすことができる。これにより、燃料カートリッジ等の燃料保持部から燃料流路入口までのチューブ、および燃料流路出口から燃料保持部までのチューブ等の燃料供給時の関連部品を削減することができる。そして、これらの部材を削減することにより、さらに燃料電池スタックを小型化および軽量化するとともに、燃料電池スタックの製造コストを削減することもできる。
(燃料電池スタックの燃料供給)
本実施の形態の燃料電池スタックは、従来の燃料電池スタックよりも燃料電池層の数が減ることから、燃料流路41の数自体も減らすことができる。これにより燃料流路41に燃料を供給するときの圧力のムラ(背圧のムラ)を低減することができ、以って燃料流路41に燃料をより均一に供給することができる。
さらに、1つの燃料流路に対して、その表裏の両面に配置される単位電池50のアノード極に同量の燃料を供給することができる。よって、本実施の形態の燃料電池スタックは、従来の燃料電池スタックのように各燃料流路に1つずつの単位電池が設けられている構造と対比しても、各単位電池のアノード極に均一に燃料を供給することができる。このように各燃料電池層の燃料流路41に対して燃料を均一に供給することにより、各複合単位電池における燃料のクロスオーバー量、単位電池の出力および発熱量のばらつきを小さくすることもできる。これらのばらつきを抑制することにより燃料電池スタックの出力の安定性を向上させることができる。
燃料電池スタック内の燃料供給の不均一性についてさらに具体的に説明すると、たとえ全く同じ工程により燃料電池層を作製したとしても、各燃料電池層は燃料流路41の溝深さおよび溝幅にばらつきがある他、燃料電池スタックを使用したときの各燃料電池層の温度上昇にもばらつきがあるため、複数の燃料電池層の燃料流路41に均一に燃料を供給することは困難である。
すなわち、他の燃料電池層と対比して燃料流路の溝深さが浅い燃料電池層がある場合、他の燃料電池層と対比して燃料流路41の溝幅が短かい燃料電池層がある場合、各燃料電池層ごとに温度が異なることによりクロスオーバー量が異なる場合等、燃料流路41に燃料を供給するときに必要な圧力はそれぞれの燃料電池層の燃料流路41により異なったものとなる。これは、燃料電池層が多く燃料流路41が長いほど、燃料電池層の間での燃料供給に必要とされる圧力のばらつきの大きさは顕著となる。
しかしながら、本実施の形態のように燃料電池スタックを構成することにより、燃料流路41の数を減らすことができるため、これらの燃料供給に必要な圧力のばらつきを抑制することができ、結果として特定の燃料電池層にかかる負荷(たとえば熱、過電圧等による負荷)を抑えることができ、局所的な燃料電池スタックの劣化を防止することができる。
(燃料電池スタックの空気供給)
各燃料電池層に含まれる複合単位電池の表裏のカソード極への空気供給は、燃料電池スタックの表面の少なくとも一部を開放し、当該開放した部分から大気中の空気を流入することにより行なわれるか、またはエアポンプ、ファン等の補機を用いて空気を流入することにより行なわれる。いずれの方法により空気を供給する場合であっても、複合単位電池10の間に設けられた隙間11、およびスペーサ20の間に設けられた隙間21を通じて、燃料電池スタックに含まれる各複合単位電池のカソード触媒層に空気を供給することができる。
図3は、従来の燃料電池スタックの片面単位電池構造の空気供給の経路(図3(A))と、本実施の形態の燃料電池スタックの複合単位電池構造の空気供給の経路(図3(B))とを対比して示した断面図である。図3は、燃料電池スタックの断面を示しており、燃料電池スタックの上面および下面から供給される空気の供給経路45を矢印により概略的に示している。なお、本実施の形態の燃料電池スタックは、空気が三次元的に供給される構造であるため、必ずしも表記した経路のみにより空気が供給されるわけではない。
本実施の形態の燃料電池スタックは、図3に示されるように、従来の燃料電池スタックよりも構成部材が共通化および取り除けることから薄型化され、酸素が潤沢な外部雰囲気と単位電池50のカソード極との距離が短くなっており、より効率的に単位電池50のカソード極に酸素を供給することができる。
一方、従来の燃料電池スタックは、燃料電池層における単位電池のカソード極が片面であるため、燃料電池スタックを設置する向きにより、すなわちカソード極の向きを上方に配置するか、もしくは下方に配置するかによりカソード極への空気の供給し易さが異なっていた。
しかしながら、本実施の形態の燃料電池スタックのように燃料流路41の両面に単位電池50のアノード極が対向する構造にすることにより、燃料電池スタックを設置する向きが上方および下方のいずれであってもその配置する向きに関係なく温められた空気を燃料電池スタックの上部から排出するとともに、燃料電池スタックの側方および下方から空気を取り込むことができることから、燃料電池スタックの配置の自由度を大きく改善することができる。
(燃料電池スタックの空気拡散)
図4は、本実施の形態の燃料電池スタックの複合単位電池構造の熱対流により生じる空気拡散の経路を示した図であり、実線で示す矢印は熱拡散による空気の拡散経路46を示しており、点線で示す矢印は空気の供給経路45を示している。本実施の形態の燃料電池スタックのような構造にすることにより、熱対流により生じる空気拡散を効率的に行なうことができる。
より具体的に説明すると、燃料電池スタック内で生じる熱は、アノード極で発電することにより生じる他、クロスオーバーした燃料がカソード極で反応することにより生じる。これらの熱により燃料電池スタック内に上昇気流が生じ、燃料電池スタック内の空気が下方から上方に押し出されることにより燃料電池スタック内で熱拡散が起こり、燃料電池スタックの側面となる4つの面や底面から外部雰囲気の空気を取り込むことができる。このため、複合単位電池10を構成する2つの単位電池50のうち下方に位置する単位電池50の方が空気を供給しやすい。
また、燃料電池層に含まれる複合単位電池のカソード極と外部雰囲気との距離が短くなることにより、カソード極の反応で生じる生成水を蒸散するための水蒸気の拡散距離も短くなる。これにより従来よりも燃料電池スタック内の水蒸気の分圧を低く保持することができるとともに、酸素分圧を高く保持することができ、ファン等の補器を用いて酸素を供給しなくてもよい。
<燃料電池層>
以下に、図1を用いて本実施の形態の燃料電池スタックを構成する各構成部材を説明する。
本実施の形態の燃料電池スタック1は、2層以上の燃料電池層100が積層されてなるものであり、燃料電池層100において発電反応が行なわれる。各燃料電池層100は、1つの大面積単位電池からなるものであってもよいし、2以上の単位電池(図示せず)を含むものであってもよいし、1または2以上の複合単位電池10を含むものであってもよい。ただし、燃料電池スタックを構成する燃料電池層100のうちの少なくとも1層は、2以上の複合単位電池10が同一平面内に隙間11を設けて配置されてなるものであることを特徴とする。
このように燃料電池層100のうちの少なくとも1層に2以上の複合単位電池10が隙間を設けて配置されることにより、従来1つの単位電池に対し1つの燃料流路を形成していたものを、2つの単位電池に対し1つの燃料流路を形成することができる(すなわち2つの燃料流路を1つに共通化することができる)ことから、薄型化することができ、燃料電池スタック1の出力密度をより高めることができる。
なお、燃料電池スタックの出力密度を高めるという観点からすれば、燃料電池スタックを構成する燃料電池層のうち、可能な限り多くの燃料電池層において2以上の複合単位電池10が隙間を設けて配置されてなるものであることが好ましいことは言うまでもない。
<複合単位電池>
本実施の形態において、複合単位電池10とは、2つの単位電池と、当該単位電池のアノード極に燃料を供給するための燃料流路とを含むものであって、2つの単位電池のアノード極は燃料流路に対向するように配置された構造のものである。
本実施の形態の燃料電池層100に含まれる複合単位電池10は、燃料電池層100内で長手方向を有する形状(以下においては「短冊形状」とも称する)であることが好ましく、より好ましくは直方体形状である。複合単位電池10に短冊形状のものを用いることにより、複数のスペーサ20を隙間11上に安定して積層することができるため、燃料電池スタックの積層構造をより簡易に構築することができる。
また、燃料電池層100内において、2つ以上の複合単位電池10は、その複合単位電池10の長手方向に一定の隙間を設けて配置されることが好ましく、さらに一定の隙間11を設けて平行に配置されることがより好ましい。
<スペーサ層>
本実施の形態の燃料電池スタック1は、各燃料電池層100の間にスペーサ層200を有することが好ましい。このようにスペーサ層200を含むことにより、燃料電池層100に含まれる単位電池のカソード極に空気中の酸素を効率的に供給することができることを以って、燃料電池スタック1の発電効率を向上させることができる。
当該スペーサ層は1または2以上のスペーサ20により構成されることが好ましい。スペーサ層が2以上のスペーサ20により構成される場合、各スペーサ20は、スペーサ層200内で同一平面内に隙間を設けて配置されてなるものであることが好ましい。
<スペーサ>
本実施の形態において、スペーサ20とは、各燃料電池層100間に備えられるものであって、各燃料電池層100の複合単位電池10のカソード極に空気を供給しやすくするためのものである。
スペーサ層200を構成するスペーサ20は、いずれも短冊形状であることが好ましく、より好ましくは直方体形状である。スペーサ20を短冊形状にすることにより、スペーサ20の隙間21上に安定して複数の複合単位電池10を積層することができるため、本実施の形態の燃料電池スタック1の積層構造を構築しやすい。
また、同一のスペーサ層200におけるスペーサ20の長手方向に配置されることが好ましく、しかも各スペーサ20は一定の隙間21をおいて平行に配置されることがより好ましく、さらに好ましくはスペーサ層200を構成するスペーサ20が複合単位電池10と直交するように配置することである。
本実施の形態の燃料電池スタックにおいて、隣接する2層の燃料電池層100が複合単位電池構造のものであり、かつその2層の燃料電池層100の間にスペーサ層200を含む場合、スペーサ層200を構成するスペーサ20は、その表層が不導体のものを用いることが好ましい。これは、スペーサ20の表面が導電性を有しているものを用いると、隣接する燃料電池層100に含まれる複合単位電池10のカソード極同士が導通してしまうこととなり、燃料電池スタックが発電装置として成り立たなくなるからである。
また、上記スペーサ20は、少なくともその厚み方向に絶縁性を有していてもよい。このようなスペーサ20も、隣接する燃料電池層100に含まれる複合単位電池10のカソード極同士の導通を回避することができる。
また、上述のスペーサ20は、多孔質体を用いることが好ましい。従来の燃料電池スタックに用いられるスペーサ20は、発電効率を高めるという観点から電気抵抗の小さいものを用いる必要があり、多孔質体に導電性を付与した上で押し付け圧等を強くしてスペーサの空孔率が低いものを用いていた。
しかしながら、本実施の形態の燃料電池スタックは、スペーサに導電性を付与する必要がないことから、空孔率の高い多孔質体を用いることができる。これによりスペーサ内部の空気(空気中に含まれる酸素)の拡散抵抗を低くすることができ、以ってカソード極に含まれるカソード触媒層に十分量の空気を供給することができる。
このようなスペーサ20の材質としては、メッシュ状、織布状、不織布状、発泡体および焼結体からなる群より選択される1種以上を含むものを挙げることができる。
ところで、複合単位電池を構成する電解質膜としてフッ素系の材料を用いる場合、燃料のクロスオーバーが起こりやすくなる。これにより燃料がカソード極で酸化されてカソード極周辺で水を生成する反応が起こる。そして、当該水がカソード極を被覆することにより、カソード極への酸化剤の供給を妨げる現象(以下においては「フラッディング現象」とも称する)が生じ、カソード極での酸化剤の還元反応が妨げられることとなり、以って燃料電池スタックの発電効率が低下するという問題が一般に知られている。
そこで、上記のフラッディング現象を防止するという観点から、スペーサ20に用いられる材質は、親水性の多孔質体を用いることが好ましい。スペーサ20に多孔質体を用いることにより、スペーサ20がカソード極で生成した水を吸い出し、フラッディング現象が生じることを抑制することを以って、燃料電池スタックの発電効率の低下を抑制することができる。
このようなスペーサ20を構成する材料としては、ポリイミド、PVDF(PolyVinyliDenFluolide)、PTFE(PolyTetraFluoroEthylene)、PEEK(登録商標)等のように耐酸性および耐薬品性に優れた樹脂、またはコットン、ポリエステル等のように表面が親水性の多孔質体である高分子の不織布、または酸化チタン、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物表面だけに親水性の高分子を塗布もしくは修飾するあるいは親水性高分子フィルムを付属させた金属−高分子複合体、または多孔質セラミックを挙げることができる。
また、燃料電池スタック内の放熱性を高めるという観点から、スペーサ20の材料には、酸化物により絶縁した、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物多孔質体、金属多孔質体の表面に親水性の高分子を塗布または修飾するまたは親水性高分子フィルムを付属させることにより絶縁した金属−高分子複合体、もしくは多孔質セラミックを挙げることができる。これらの材質を用いたスペーサ20による、燃料電池スタック内の放熱性向上の手法については後述することとする。
また、スペーサ20の厚みは、特に限定されないが、空気供給のための隙間を確保し、かつ強度を保つという観点から0.2mm以上であることが好ましく、燃料電池スタックの薄膜化および小型化の観点から2mm以下であることが好ましい。0.2mm未満であると、空気供給のための隙間を十分に確保することができず、また強度を保つことができない場合がある。一方、2mmを超えると、燃料電池スタックが大型化してしまい、所期の目的を逸脱することになりかねない。
<複合単位電池およびスペーサ>
本実施の形態の燃料電池スタック1において、燃料電池層100の複合単位電池10のカソード極で生じる水をスペーサに効率的に吸水させるという観点から、燃料電池層とスペーサ層との接触が十分な箇所と、不十分な箇所とが生じてしまうことは好ましくない。このため1層の燃料電池層内における各複合単位電池10の高さ(すなわち燃料電池層100の厚み)は等しいことが好ましく、同様に同一のスペーサ層における各スペーサ20の高さ(すなわちスペーサ層200の厚み)も等しいことが好ましい。
さらに、1層の燃料電池層100に含まれる各複合単位電池10の形状は、それぞれ同一であることが好ましく、1層のスペーサ層200に含まれる各スペーサ20の形状も同様にそれぞれ同一であることが好ましい。ここで、「形状が同一」とは、1層の燃料電池層に含まれる各複合単位電池の形状が厳密に同一である場合のみに限られるものではなく、1層の燃料電池層に含まれる各複合単位電池のうちの最大のものの外形(ここでの「外形」とは、幅、高さおよび長さのことを意味する)と最小のものの外形との差が±0.25mm以内である場合にも、各複合単位電池の形状はすべて同一であるものとみなす。
1層のスペーサ層に含まれる各スペーサの外形も上述した複合単位電池の外形の規定と同様に、1層のスペーサ層に含まれる各スペーサの形状がそれぞれ、厳密に同一である場合のみに限られるものではなく、1層のスペーサ層に含まれる各スペーサのうちの最大のものの外形と最小のものの外形との差が±0.25mm以内である場合にも、スペーサ層に含まれる各スペーサの形状はすべて同一であるものとみなす。
このように各複合単位電池および各スペーサのすべての形状を同一にすることにより、それぞれの複合単位電池の形状の違いによる燃料電池層の特性のばらつきを抑えることができる。また、このような同一の形状の複合単位電池および同一の形状のスペーサはそれぞれ1つの製造プロセスで製造することができることから、これらの製造コストを低減することができる。
<燃料電池スタックの積層構造>
本実施の形態の燃料電池スタックの積層構造は、図1に示されるように燃料電池層100を構成する複合単位電池10の長手方向と、スペーサ層200を構成するスペーサ20の長手方向とが直交するように、燃料電池層上に積層されていることが好ましい。このような構成にすることにより、燃料電池層100の複合単位電池10の間の隙間11の上面の一部は、スペーサ層200を構成するスペーサ20と接することとなる。
このように燃料電池層100とスペーサ層200とを積層することにより、燃料電池層100の積層方向からみたとき、各複合単位電池10間の隙間11および各スペーサ20間の隙間21は、直方体形状となりそれぞれ直交して配列される。図1(B)に示されるように複合単位電池10とスペーサ20との交差領域を除いては、複合単位電池10およびスペーサ20はそれぞれ接することなく形成されている。複合単位電池10およびスペーサ20を直交して配列することにより、交差領域の内部までの空気の拡散距離が短くなることから、交差領域のカソード極にも空気を供給することができる。
図1に示される燃料電池スタックを構成する燃料電池層100の隙間11とスペーサ層200の隙間21とは、3次元的に連通して形成されており、しかも、すべての隙間(図1の燃料電池スタックにおいては、4本の隙間11および4本の隙間21)は連通している。このような構成にすることにより、燃料電池スタック内に入った空気を、連通した隙間を通して燃料電池スタックの内部まで、自然対流または拡散により供給することができる。
すなわち、発電に起因する熱により燃料電池スタック内の空気が温められ、対流により連通した隙間を通って外部へ放出され、燃料電池スタックの側面や下面から空気が効率的に吸入される。これにより燃料電池スタック内での空気を自然拡散しやすくなる。したがって、空気供給のためのエアポンプ、ファン等の補機を用いなくてもよくなり、燃料電池スタックを小型化することができる。
また、エアポンプ、ファン等の補機を備える場合においても、燃料電池スタック内部まで空気を供給するために必要な風力を低減させることができる。これにより補機の消費電力を低減するとともに、補機を小型化することもできる。また、燃料電池スタックを電子機器に搭載し、たとえば燃料電池スタックの上面および下面が塞がれた場合であっても、側面から空気の排出および吸入を行なうことができる。
<隙間>
図1に示される燃料電池スタックにおいて、燃料電池層100内に配置される複合単位電池10同士の隙間11と、スペーサ層200内に配置されるスペーサ20同士の隙間21とは、いずれも空気が拡散または自然対流により通過できる間隔を有していれば特に限定されることなくいかなる間隔の長さとすることもできるが、複合単位電池同士の隙間11およびスペーサ同士の隙間21は、0.001cm以上1cm以下であることが好ましく、0.05cm以上0.2cm以下であることがより好ましい。複合単位電池同士の隙間11およびスペーサ同士の隙間21が0.001cm未満であると単位電池のカソード極に空気を十分に供給できない虞があり、1cmを超えると燃料電池スタックが大きくなるため、その出力密度が低下する虞がある。
また、複合単位電池同士の隙間11およびスペーサ同士の隙間21は、等間隔であることが好ましい。ただし、ここでの「等間隔」とは、複合単位電池10同士の隙間11およびスペーサ20同士の隙間21が厳密に等間隔である場合はもちろん、すべての隙間11,21の平均値に対する誤差が±0.25mm以内にある場合も等間隔であるものとみなす。
このように複合単位電池同士の隙間11およびスペーサ同士の隙間21を等間隔にすることにより、燃料電池スタック1内で局所的に空気不足になる箇所が発生することを抑制することができる。これにより複合単位電池10の発電において局所的な過電圧が生じることを防止することができるとともに、局所的に廃熱しにくくなり高温になる箇所が生じないようにすることができる。
このように局所的に高熱となる箇所が生じることを防止することにより、燃料電池の出力特性の劣化を抑制することができる。また、アノード触媒層およびカソード触媒層に含まれる触媒金属が溶解する程度の過電圧がかかって触媒金属が劣化することにより、燃料電池スタックの出力特性が劣化することを抑制することもできる。これらの相乗効果により燃料電池スタックを長寿命なものにすることができる。
<燃料電池スタックの燃料供給>
本実施の形態の燃料電池スタックにおいて、各燃料電池層の燃料流路への燃料の供給は、燃料ポンプ等の補器を用いて燃料を供給してもよいし、燃料ポンプ等の補器を用いずに燃料を供給してもよい。燃料ポンプ等の補器を用いて燃料を供給する場合は、燃料流路の入口および出口と、燃料ポンプまたは燃料カートリッジとは、シリコンチューブ等の細管により繋がれる。
図5(A)は、補器を用いて各燃料電池層に燃料を供給する場合の燃料電池スタックを上面から見た図であり、図5(B)は、当該燃料電池スタックを側面から見た図である。図5を参照しつつ、燃料ポンプ等の補器を用いた場合の燃料電池スタックの燃料流路の形状を説明する。
燃料ポンプ等の補器を用いて各燃料電池層に燃料を供給する場合、燃料流路と燃料カートリッジとの接続を簡易にするという観点から、燃料流路形成材40に各複合単位電池の燃料流路41が連通し、燃料流路入口42から燃料流路出口43までが連続した蛇型(以下においては「サーペンタイン状」と称することもある)の燃料流路41を形成することが好ましい。
このようにサーペンタイン状の燃料流路41を形成することにより、1つの燃料電池層内の燃料流路入口42および燃料流路出口43の数をそれぞれ1つずつにすることとなり、燃料流路入口42および燃料流路出口43の数を少なくすることができる。これによりシリコンチューブ等の細管の数を減らすことができ、これに加えて燃料流路入口42および燃料流路出口43と細管との接続回数を減らすこともできる。
なお、図5においては各燃料電池層に対し、1本の燃料流路41が形成された構造のものを図示しているが、燃料流路41の数は必ずしも1本である必要はなく複数本設けていてもよい。
一方、図6(A)は、補器を用いないで各燃料電池層に燃料を供給する場合の燃料電池スタックを上面から見た図であり、図6(B)は、その燃料電池スタックを側面から見た図である。
燃料ポンプ等の補器を用いないで各燃料電池層の燃料流路に燃料を供給する方法として、毛管現象等を用いて燃料流路内に燃料を輸送する手段を挙げることができる。毛管現象は燃料の輸送距離(拡散距離)が長いほど燃料の拡散速度が遅くなるため、輸送距離の長いサーペンタイン状の燃料流路は適していない。したがって、図6に示される燃料流路41のように、各複合単位電池ごとに長手方向を有する燃料流路41を形成することが好ましい。
このように燃料流路41を形成することにより、各燃料電池層あたりの燃料流路入口42の数が増えてしまうこととなる。しかし、各燃料流路入口42に対し燃料カートリッジ等の燃料保持部を直接接触させるだけで、毛管現象により燃料保持部から燃料流路41に燃料供給を行なうことができることから、燃料カートリッジと燃料流路入口42との間に燃料ポンプ等を挟まなくてもよいという利点がある。
また、図6においては各々の複合単位電池に対し、1本の燃料流路を形成した構造の例を図示しているが、1つの複合単位電池に対する燃料流路の数は必ずしも1本である必要はなく複数本設けてもよいことは言うまでもない。
以下においては、燃料輸送部材85を用いたときの燃料供給を述べる。図7(A)は、燃料輸送部材を用いて各燃料電池層に燃料を供給する場合の燃料電池スタックを上面から見た図であり、図7(B)は、その燃料電池スタックを側面から見た図である。図7(A)および(B)に示される形態では、燃料を保持するための燃料貯蔵室87をさらに備え、燃料輸送部材85の一端は、燃料貯蔵室87に保持される燃料に接触される。
燃料貯蔵室87に燃料が供給されると、燃料は、燃料輸送部材85の燃料貯蔵室87の一端から、燃料輸送部材85が有する細孔に毛細管現象により移動する。移動した燃料は、毛細管現象により燃料輸送部材85内を浸透し、燃料輸送部材85の他端(燃料貯蔵室87側とは反対側の端部)に行き渡る。
燃料輸送部材85内を浸透して供給された燃料は、アノード集電体からアノード極に供給され、単位電池の消費電流量に応じて消費される。ここで消費された燃料を補なうように、燃料貯蔵室87から燃料輸送部材85に燃料が随時供給され続ける。このため、燃料輸送部材85に含まれる燃料の濃度は略一定に保持され、高い電力を安定して供給することができる。
このように燃料貯蔵室87中の燃料に対し燃料輸送部材85を接触させるだけで、毛管現象により燃料輸送部材85を通じてアノード極に燃料供給を行ない得る。このため、燃料カートリッジと燃料流路入口との間に燃料ポンプ等を挟まなくてもよいという利点があり、燃料電池スタックの小型化および軽量化に寄与し得る。なお、燃料輸送部材85としては、親水性の多孔質体を用いるが、具体的には後述の実施の形態Hに示す。
<燃料流路>
従来の燃料電池スタックのように、1つの燃料流路から1つの単位電池に燃料が供給される場合、燃料電池スタックの温度が多少上昇しても、燃料カートリッジ内に含まれる室温程度の燃料を燃料流路に流すことにより燃料電池スタックの温度を低下させることができていた。
しかしながら、本実施の形態の燃料電池スタックでは、燃料電池層に複合単位電池を採用することにより1つの燃料流路が2つの単位電池に共通して用いられるようになった。このため、本実施の形態の燃料電池スタックは、1つの燃料流路の両方の面に備えた単位電池の発電により生じる発熱のために、従来の燃料電池スタックと比べて約2倍程度温度上昇しやすくなっている。
そして、燃料電池スタック内の温度が上昇するにつれて、電解質膜の燃料透過速度が大きくなり、燃料のクロスオーバー量が増大してしまう。そして、この燃料のクロスオーバーによりカソード触媒層に到達した燃料が直接空気と反応し、さらに燃料電池スタックの温度が上昇することとなり、これらの繰り返しにより燃料電池スタックが熱暴走する虞がある。また、燃料電池スタックが温度上昇することにより燃料電池スタックを搭載した電子機器を構成する部品等の劣化を早めることもある。
本実施の形態の燃料電池スタックにおいて、燃料カートリッジから燃料流路に燃料を供給する場合、燃料流路に供給する燃料の温度は、積極的に熱を加えて燃料を気化させるシステムを用いない限り室温程度である。燃料電池スタック内に室温程度の燃料を供給し、当該燃料の保持量を増やすことにより燃料電池スタックを冷やすことができる。
この方法は、燃料ポンプにより燃料流路内を流れる燃料を循環させる燃料電池システムにおいて特に有効であり、燃料が燃料流路を通過する際に燃料電池スタック内の熱を吸熱してから、燃料電池スタック外に排出されることにより、燃料が吸熱した熱を外部に放出することができる。
図8(A)は、2層の燃料電池層とスペーサ層とを備える燃料電池スタックを示す模式的な断面図である。図8(B)に示される燃料電池スタックは、図8(A)に示される燃料電池スタックのより好ましい形態を示す模式的な断面図である。なお、以下においては、燃料流路の燃料の流れる方向の面における、単位電池の積層方向を「深さ方向」とし、深さ方向に垂直な方向を「幅方向」と呼ぶものとする。
燃料流路41内の燃料保持量を増やす方法としては、図8(B)に示されるように燃料流路形成材40の厚みを厚くすることにより、燃料流路41の深さを深くすることを以って燃料流路41内の燃料保持量を増やすことができる。
また、燃料流路41の幅を長くすることにより燃料流路41内の燃料保持量を増やしてもよい。なお、燃料流路41の幅を長くするときは、燃料流路形成材40の幅を広げることなく燃料流路41の幅を広げることが好ましい。これは、燃料流路形成材40の幅を広くすると、燃料電池スタック内の複合単位電池10間の隙間を小さくしてしまうこととなり、燃料電池スタック内の空気拡散に悪影響を及ぼす虞があるためである。
燃料流路41の幅の長さL1と単位電池50の幅の長さL2との関係L1/L2は、0.6以上であることが好ましい。L1/L2が0.6未満であると、単位電池50の幅に対する燃料流路41の幅が狭いことにより、燃料による燃料電池層の冷却効果を十分に得ることができないため好ましくない。
また、燃料流路41の深さは、0.1mm以上であることが好ましい。燃料流路41の深さが0.1mm未満の場合、燃料流路41の深さが浅いため、燃料による燃料電池層の冷却効果を十分に得ることができなくなる。
また、燃料電池スタック内部の過昇温を解消する別の方法として、燃料流路41の短辺方向の幅を短くし燃料電池間の隙間を広くすることにより電極面積を減らすことを以って、過昇温を抑制するという解決手段も考えられる。しかし、電極面積を減らすことは出力密度を向上させるという所期の目的に反するため好ましくない。
(実施の形態2)
図9は、本実施の形態の燃料電池スタックの好ましい一例を示す模式図であり、図9(A)はその斜視図であり、図9(B)はその上面図であり、図9(C)はその側面図である。
本実施の形態の燃料電池スタックの構造は、たとえば図9に示されるような構造であってもよい。図9に示される燃料電池スタックは、その最下層の燃料電池層100aが複合単位電池10ではなく単位電池10aにより構成されるものである。このように本実施の形態の燃料電池スタックは、その燃料電池層のうちの1層以上において単位電池10aが隙間を設けて配置される燃料電池層100aであってもよい。このような構造の燃料電池スタックは、燃料電池スタックの下面が電子機器と接する場合に好ましく用いられる。
図9の燃料電池スタックの最下層の燃料電池層100aを構成する片面単位電池構造の単位電池10aは、単位電池10aのカソード極がスペーサ20と接し、アノード極がスペーサ20と接する側とは反対側になるように配置されることが好ましい。このような構成にすることにより、燃料電池スタック1の下面(電子機器と接する面側)からの空気供給がなくとも良好にカソード極に空気を供給することができ、発電特性を良好なものにすることができる。
(実施の形態3)
図10は、本実施の形態の燃料電池スタックの好ましい一例を示す模式図であり、図10(A)はその斜視図であり、図10(B)はその上面図であり、図10(C)はその側面図である。
本実施の形態の燃料電池スタックの構造は、たとえば図10に示されるような構造であってもよい。図10に示される燃料電池スタックは、その最下層の燃料電池層が、大面積単位電池からなる燃料電池層100bを有する構造のものである。このように本実施の形態の燃料電池スタックは、燃料電池層のうちの1層以上が大面積単位電池により構成されていてもよい。当該燃料電池スタックは、実施の形態2の燃料電池スタックと同様に、その下面が電子機器と接する場合に好ましく用いられる形態である。
図10に示される燃料電池スタックの最下層の燃料電池層100bを構成する大面積単位電池は、そのカソード極がスペーサ20と接し、アノード極がスペーサ20と接する側とは反対側になるように配置されることが好ましい。このような構成にすることにより、燃料電池スタック1の下面(電子機器と接する面側)からの空気供給がなくとも大面積単位電池のカソード極に空気を供給することができ、発電特性を良好なものにすることができる。
本実施の形態の燃料電池スタックの場合、最下層の燃料電池層100bは電極の面積が大きいため高い出力を得ることができる。しかしながら、当該燃料電池層100bの発電により消費する空気中の酸素の量が多いため、当該燃料電池層100bと接するスペーサ20の厚みを厚くすることにより燃料電池層100b間の隙間を広くし、空気の供給しやすくすることが好ましい。
(実施の形態4)
図11は、本実施の形態の燃料電池スタックの好ましい一例を示す模式図であり、図11(A)はその斜視図であり、図11(B)はその上面図であり、図11(C)はその側面図である。
本実施の形態の燃料電池スタックの構造は、たとえば図11に示されるような構造であってもよい。図11に示される燃料電池スタックは、スペーサ層が隙間を設けない大面積のスペーサ20aにより構成されるものである。すなわち、スペーサ層200は、それが隣接する燃料電池層100の全ての複合単位電池10に接する1の大面積のスペーサ20aである。このように本実施の形態の燃料電池スタックは、隙間を設けない大面積のスペーサ20aからなるスペーサ層を用いて形成してもよい。
このように燃料電池スタック内に大面積のスペーサ20aを用いることにより、たとえば炭化水素系の電解質膜のように、燃料のクロスオーバー量が少なく、かつ生成水の保持性能が少ないものであっても、スペーサ層に十分量の水分を保持することができることから、電解質膜のドライアップを生じにくくすることができる。
スペーサに親水性の多孔質体を用いる場合、スペーサ層は図1のように隙間を設けて各スペーサを配置するよりも、大面積のスペーサ20aを用いる方がスペーサ層の生成水の保持性能を向上させることができる。このようにスペーサ層の生成水の保持性能を高めることにより、単位電池の電解質膜内にも水分を保持しやすくなり、電解質膜のプロトン伝導性を高めることができることを以って、各単位電池の発電抵抗を抑制することができる。
このような大面積のスペーサ20aは、その表面積が大きいことにより放熱性を高めることができる。このため、燃料電池スタックが高温になりにくく、燃料のクロスオーバーが発生するのを抑制することができる。また、大面積のスペーサ20aは、直方体形状のスペーサに比して熱容量が大きいことにより、複合単位電池10の酸化還元反応で発生した熱を吸熱しやすくなる。
また、燃料電池スタックを連続的に使用すると、燃料電池スタックの中心部分ほど熱がこもり放熱しにくくなるが、大面積のスペーサ20aを用いることにより、中心部で熱くなった部分の熱を大面積のスペーサ20aの外側に導電させて、燃料電池スタック内の温度ムラを緩和することができる。
さらに、このような大面積のスペーサ20aは、複合単位電池10を上下方向に強固に、かつ均一な圧力で固定することができる。このため、アノード極で発生する生成ガスにより複合単位電池の内圧が上昇し、それ自体が膨れたり、破壊されることを抑止することができる。
加えて、単位電池を構成するMEAは、外部からの衝撃や刺激に弱いが、大面積のスペーサ20aを用いることにより、MEAに直接的に危害が及ばないように、MEAを保護する機能もある。
(実施の形態5)
図12は、本実施の形態の燃料電池スタックの好ましい一例を示す模式図であり、図12(A)はその斜視図であり、図12(B)はその上面図であり、図12(C)はその側面図である。
本実施の形態の燃料電池スタックの構造は、たとえば図12に示されるような構造であってもよい。図12に示される燃料電池スタックは、複合単位電池10間の隙間を保持するための隙間保持材30を設ける構造のものである。本実施の形態において隙間保持材30の材質は、導電性を有しない材料であれば特に限定はされることなくいかなるものを用いることもできる。なお、図12に示される燃料電池スタックの場合、複合単位電池10を同一平面内に含む層を燃料電池層100dとみなすものとする。したがって、本実施の形態の燃料電池スタックは、4層の燃料電池層からなるものである。
本実施の形態の燃料電池スタックは、スペーサ層を設けることなく、隙間保持材30により複合単位電池10に含まれる2つの単位電池のカソード極に空気を供給することを以って、各複合単位電池10の出力密度を向上させることができる。本実施の形態の燃料電池スタックは、空気の拡散を妨げるものがないために空気供給を良好に行なうことができる。ただし、複合単位電池の出力密度を向上させるために燃料電池層間の隙間を狭くしすぎると、各単位電池のカソード極に空気を十分供給することができなくなる虞があるため好ましくない。
(実施の形態6)
図13(A)は、燃料電池スタックとそれを覆う筐体とを示した斜視図であり、図13(B)は、燃料電池スタックを筐体で覆ったものを燃料電池層の積層方向に切断した断面図であり、矢印49は熱の流れ方向を記載している。
本実施の形態の燃料電池スタックは、筐体90により覆われた構造を有するものである。本実施の形態の燃料電池スタックは、スペーサ層に含まれるスペーサに、伝熱性が高い多孔質体を用いることにより、複合単位電池で発生した熱をスペーサを介して外部(もしくは筐体)に熱を逃がすことができ、以って燃料電池スタックの温度上昇を抑制することができる。
このようなスペーサ20の材質としては、酸化物により絶縁した、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物多孔質体、金属多孔質体の表面に親水性の高分子を塗布または修飾するまたは親水性高分子フィルムを付属させることにより絶縁した金属−高分子複合体、もしくは多孔質セラミックを挙げることができる。
複合単位電池で発生した熱をスペーサを介して外部(もしくは筐体)に熱を逃がす方法としては、スペーサ20の材質を熱伝導性の高いものにするのみに限られるものではなく、多孔質体であるスペーサ20の空孔率を低減することにより、多孔質体内の熱伝導材料の密度を高くし、複合単位電池との接触面積を増大させることを以って、熱伝導性を向上させる方法もある。このようなスペーサに用いられる多孔質体の空孔率は40%以上90%以下であることが好ましく、60%以上80%以下であることがより好ましい。40%未満であると、カソード極への空気供給の観点から好ましくなく、90%を超えると、熱伝導性が低いことから好ましくない。
図13に示されるように、スペーサ20を通して筐体90に熱を伝導し、筐体90を通じて矢印49で示される方向に向かって効率的に外部に熱を放出され、燃料電池スタック内の温度上昇を抑制することができる。燃料電池スタックに効率よく空気供給を行なうために、スペーサ20は、複合単位電池を構成する各部材よりも厚く設計することが多い。このため、上記の熱伝導性に優れる上記の材料のスペーサ20を接触させることにより、外部に熱を逃がす効果が顕著となる。
ただし、必ずしも全てのスペーサに伝熱性の高い材料を用いる必要はなく、スペーサ20の位置により伝熱性の異なる材料のものを選択して用いてもよい。たとえば筐体90に接する面積の大きいスペーサ20には特に伝熱性の高いものを用いたり、温度の上がり易い複合単位電池に隣接するスペーサに伝熱性の高いものを用いたりすることにより、燃料電池スタックの温度上昇を抑制する効果を得ることができる。
<筐体>
燃料電池スタックを覆う筐体90とは、図13(A)に示されるように、燃料電池スタックを覆うカバーの役割を果たすものであり、単位電池が電子機器に直接接触することを防ぐものである。
燃料電池スタックを覆う筐体90としては、プラスチック材料または金属性の材料を用い、適宜の形状に成形することによって作製することができる。ここで用いるプラスチック材料としては、たとえばポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを挙げることができる。これらの中でも、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリエチレン(PE)は、3次元架橋による分子量増加により強度が高く安価に加工ができ、また軽量であることから好ましく用いられる。
一方、燃料電池スタック内の反応により発生する熱を効率よく外部に放出するという観点から、電熱性の高い金属性の材料を用いることが好ましい。このような筐体90に用いられる材料としては、Cu、Al、Fe、Ti、ステンレス等を挙げることができる。
また、本実施の形態の燃料電池スタックを覆う筐体90の形状は、燃料電池スタックに空気を供給することができるような形状であればどのような形状でもよいが、板や箔に複数の穴を開けた形状、メッシュ状またはエキスパンドメタル状の多孔質体のものを用いることが好ましい。
なお、上述の筐体90とスペーサ20の接触する面積が大きいほど、スペーサ20から筐体90への熱伝導が良好なものとなるため、スペーサ20と筐体90との間に熱伝導シートを設けることにより、スペーサ20から筐体90への熱の伝導を高めてもよい。
また、同一平面に設けられる複合単位電池10やスペーサ20の厚みが均一でないと、複合単位電池10とスペーサ20との間、およびスペーサ20と筐体90との間に隙間が生じる。この隙間が断熱層となり、熱伝導を妨げる虞がある。そこで、複合単位電池10とスペーサ20との間、およびスペーサ20と筐体90との間に柔軟性のある熱伝導シートを設けることにより、スペーサ20から筐体90への熱の伝導を高めることが好ましい。
<(2)複合単位電池の構造>
以下に、本発明の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池を説明する。
(実施の形態A)
図14は、本実施の形態の燃料電池スタックに含まれる複合単位電池の積層方向の面の断面図である。図14の複合単位電池10において、アノード集電体37は、厚み方向に貫通した燃料流路41を有しており、燃料流路41の表裏の両面に対向するように配置された各単位電池50のアノード触媒層35に燃料を供給することができる。なお、燃料流路41から燃料が流れる経路を矢印44により示している。
なお、図14の複合単位電池10は、アノード集電体37が燃料流路形成材(図示せず)を兼ねた構造のものを示しているが、このような構造に限られるものではなく、たとえば燃料流路形成材により燃料流路41を形成してもよい。以下に、図14に図示した複合単位電池の各構成部材を説明する。
<単位電池>
本実施の形態において、複合単位電池10に含まれる2つの単位電池50は、図14に示されるように、アノード触媒層35と電解質膜60とカソード触媒層25とをこの順に含む膜電極複合体2(MEA:Membrane Electrode Assembly)を最小単位として含むものであり、当該膜電極複合体2を構成するアノード触媒層35が燃料流路41側(アノード集電体37側)に対向するように燃料流路41の表裏の両面に各1つずつ配置されることを特徴とする。なお、単位電池50は、膜電極複合体2以外にカソード導電性多孔質層26、およびアノード導電性多孔質層36を備えることが好ましい。
図14の単位電池50において、燃料としてメタノール水溶液を用いる場合、メタノール水溶液は燃料流路41からアノード導電性多孔質層36を通ってアノード触媒層35に供給され、アノード触媒層35でCH3OH+H2O→CO2+6H++6e-と反応して水素イオンと電子とを発生する。ここで生成した水素イオンは、電解質膜60を通じてカソード触媒層25へ移動する。
一方、大気中から空気が酸化剤としてカソード触媒層25に供給されて、カソード触媒層25でO2+4H++4e-→2H2Oと反応して水を発生する。上記のアノード触媒層35で発生した電子がカソード触媒層25に流れる電子の流れを、外部回路を介して電流として取り出すことにより、単位電池50から電気エネルギーを得ることができる。
上記の単位電池50は、アノード触媒層35に対し燃料を均一に供給するために、アノード導電性多孔質層36を含むことが好ましく、カソード触媒層25に対し空気を均一に供給するためのカソード導電性多孔質層26を含むことが好ましい。
さらに、上記の単位電池50は、単位電池内での電気抵抗を低減するという観点から、カソード導電性多孔質層26のカソード触媒層25と対向する面とは反対側の面にカソード集電体27を配置することが好ましく、アノード導電性多孔質層36のアノード触媒層35と対向する面とは反対側の面にアノード集電体37を配置することが好ましい。
<アノード極およびカソード極>
本実施の形態の燃料電池スタックに含まれる単位電池50のアノード極は、燃料の酸化を促進するアノード触媒を含むアノード触媒層35を少なくとも備える。そして、当該アノード触媒上で燃料が酸化反応を起こすことにより、プロトンと電子を生成する。なお、アノード極はアノード集電体37側(電解質膜60とは反対側)に、さらにアノード導電性多孔質層36を積層した構造であることが好ましい。
一方、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる単位電池50のカソード極は、酸化剤の還元を促進するカソード触媒を含むカソード触媒層25を少なくとも備える。そして、当該カソード触媒上で酸化剤がプロトンと電子を取り込み、還元反応を起こすことにより水を生成する。なお、カソード極はカソード集電体27側(電解質膜60と反対側)にさらにカソード導電性多孔質層26を積層した構造であることが好ましい。
<アノード触媒層およびカソード触媒層>
アノード触媒層35は、燃料の酸化を促進するアノード触媒を少なくとも含み、さらにアノード担持体とアノード電解質とを含むことが好ましい。一方、カソード触媒層25は、水を生成する反応速度を促進するカソード触媒を少なくとも含み、さらにカソード担持体とカソード電解質とを含むことが好ましい。
アノード触媒層35およびカソード触媒層25の厚みは、それぞれ0.1μm以上0.5mm以下とすることが好ましい。アノード触媒層35およびカソード触媒層25の厚みが0.1μm未満であると、燃料電池スタック(または単位電池50)の出力を向上させるだけの触媒量をアノード触媒層35およびカソード触媒層25に担持できない虞があり、0.5mmを超えるとプロトン伝導の抵抗および電子伝導の抵抗が大きくなり、燃料(たとえばメタノール水溶液)または酸化剤(たとえば酸素)の拡散抵抗が増加する虞がある。
以下の(1)〜(3)には、アノード触媒層35およびカソード触媒層25に含まれる触媒、担持体、電解質をそれぞれ説明する。
(1)アノード触媒およびカソード触媒
アノード触媒層35に含まれるアノード触媒は、燃料としてメタノール水溶液を用いる場合、メタノールと水からプロトンと電子を生成する反応の速度を促進する機能を有するものである。一方、カソード触媒層25に含まれるカソード触媒は、酸素とプロトンと電子から水を生成する反応の反応速度を促進する機能を有するものである。
アノード触媒およびカソード触媒は必ずしも同種類のものに限定されず、異なる種類の材料を用いてもよい。このようなアノード触媒およびカソード触媒としては、たとえばPt、Ru、Au、Ag、Rh、Pd、Os、Ir等の貴金属、Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Zn、Sn、W、Zr等の卑金属、これらの貴金属または卑金属の酸化物、炭化物および炭窒化物、もしくはカーボンからなる群より選択された材料の1種または2種類以上の組み合わせたものを触媒として用いることができる。
(2)アノード担持体およびカソード担持体
アノード触媒層35に含まれるアノード担持体は、アノード極で生成した電子をアノード集電体37またはアノード導電性多孔質層36へ導電する機能を有するものである。一方、カソード触媒層25に含まれるカソード担持体はカソード集電体27またはカソード導電性多孔質層26からカソード触媒層25に電子を導電する機能を有するものである。
アノード担持体およびカソード担持体は、電気伝導性を有する材料であればどのような材料を用いてもよいが、電気伝導性の高い炭素系材料を用いることが好ましく、電気伝導性の高い炭素系材料としては、たとえばアセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等を挙げることができる。アノード担持体およびカソード担持体としては、アセチレンブラック(商品名:Vulcan XC72(Cabot株式会社製)が特に好適に用いられる。
また、これらの炭素系材料の他に、Pt、Ru、Au、Ag、Rh、Pd、Os、Ir等の貴金属、Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Zn、Sn、W、Zr等の卑金属、これら貴金属または卑金属の酸化物、炭化物、窒化物および炭窒化物からなる群より選択された材料の1種または2種類以上を組み合わせたものを用いることができる。
また、アノード担持体およびカソード担持体は、プロトン伝導性を付与した材料であってもよく、このようにプロトン伝導性を付与した材料としては、たとえば硫酸化ジルコニア、リン酸ジルコニウム等を挙げることができる。
なお、アノード触媒およびカソード触媒のいずれもが電子伝導性を有するため、アノード触媒がアノード極で生成した電子をアノード集電体37またはアノード導電性多孔質層36へ導電し、カソード触媒がカソード集電体27またはカソード導電性多孔質層26からカソード触媒層25に電子を導電することから、アノード担持体およびカソード担持体を設けなくてもよい。
また、アノード極での酸化反応によりアノード極で生成ガスが生じる場合、アノード担持体および/またはアノード触媒、もしくはカソード担持体および/またはカソード触媒は、親水化処理したものを用いることが好ましい。これらの親水化処理の方法としては、これらが親水化できる方法であればどのような方法でもよいが、気相酸化処理、液層酸化処理、カップリング処理、およびプラズマ処理のいずれかの手法により親水化することが好ましい。
ここでの気相酸化処理としては、空気、オゾン、二酸化窒素雰囲気下における酸化を挙げることができる。また、液相酸化処理としては、硝酸、過マンガン酸カリウム、亜塩素酸、過塩素酸、酸素飽和水、オゾン水溶液、臭素水溶液、次亜塩素酸ソーダ、クロム酸カリウムと燐酸との混合液による酸化を挙げることができる。また、カップリング処理としては、シラン系、チタネート系、アルミニウム系のカップリング処理剤による処理を挙げることができる。
ただし、アノード担持体および/またはアノード触媒、もしくはカソード担持体および/またはカソード触媒として、金属酸化物またはプロトン伝導性を有する担持体を用いる場合は、その表面がすでに親水性を示すため、さらにこれらの表面を親水化処理する必要はない。
(3)アノード電解質およびカソード電解質
アノード触媒層35に含まれるアノード電解質は、アノード極で生成したプロトンを電解質膜60へ伝導する機能を有する。一方、カソード触媒層25に含まれるカソード電解質は、電解質膜60から透過したプロトンをカソード触媒層25近傍に伝導する機能を有する。
アノード電解質およびカソード電解質は、プロトン伝導性を有し、かつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されずいかなるものをも用いることができるが、メタノール等の燃料により溶解しない固体もしくはゲルであることが好ましい。このようなアノード電解質およびカソード電解質は、スルホン酸、リン酸基などの強酸基やカルボキシル基などの弱酸基を有する有機高分子であることが好ましく、たとえば含有パーフルオロカーボン(ナフィオン(デュポン株式会社製))、カルボキシル基含有パーフルオロカーボン(フレミオン(旭化成株式会社製))、ポリスチレンスルホン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸共重合体、イオン性液体(常温溶融塩)、スルホン化イミド、AMPS等を挙げることができる。
なお、アノード担持体およびカソード担持体として、プロトン伝導性を有するものを用いる場合には、これらによりプロトンを伝導することができるため、別個にアノード電解質およびカソード電解質を設けなくてもよい。
<電解質膜>
本実施の形態において、単位電池50を構成する電解質膜60は、アノード触媒層35で発生したプロトンを伝導してカソード触媒層25に透過させるものであって、電気的絶縁性を有する材質のものであれば従来公知のいかなる材質をも用いることもでき、たとえば高分子膜、無機膜、またはコンポジット膜等を挙げることができる。
電解質膜60に用いられる高分子膜としては、たとえばパーフルオロスルホン酸系電解質膜(ナフィオン(NAFION(登録商標):デュポン株式会社製)、ダウ膜(ダウ・ケミカル株式会社製)、アシプレックス(ACIPLEX(登録商標):旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標):旭硝子株式会社製)の他、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等を挙げることができる。
また、電解質膜60に用いられる無機膜としては、たとえばリン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等を挙げることができる。
また、電解質膜60に用いられるコンポジット膜としては、たとえばゴアセレクト膜(ゴアセレクト(登録商標):ゴア社製)を挙げることができる。
また、燃料電池スタック(または単位電池50)が100℃付近もしくはそれ以上の温度にも対応することができるという観点から、低含水時でも高いイオン伝導性を有する電解質膜60の材料を用いることが好ましく、このような電解質膜60の材料としては、たとえばスルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:2-Acrylamido-2-MethylPropaneSulfonic acid)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム、イオン性液体(常温溶融塩)等を膜化して用いることが好ましい。
このような電解質膜60は、プロトン伝導率が10-5S/cm以上であることが好ましく、パーフルオロスルホン酸ポリマや炭化水素系ポリマ等の高分子の電解質膜のようにプロトン伝導率が10-3S/cm以上のものを用いることがより好ましい。
<アノード導電性多孔質層>
アノード導電性多孔質層36は、メタノールと水とをアノード触媒層35へ供給するための空隙を形成するとともに、アノード触媒層35からアノード集電体37へ電子を導電する機能を有するものである。アノード導電性多孔質層36に用いられる材質としては、カーボン材料、導電性高分子、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su等の金属、Siおよびこれらの窒化物、炭化物、炭窒化物等、ステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金等を用いることが好ましく、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる1つ以上の元素を含むことがより好ましい。
また、アノード導電性多孔質層36に用いられる材質として、Cu、Ag、Zn等のように酸性雰囲気下で腐食しやすい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属、金属材質、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性炭窒化物、導電性酸化物等を表面コーティングすることにより、アノード導電性多孔質層36の表面の腐食を防止することができ、以って単位電池50およびこれを用いた燃料電池スタックの寿命を延ばすことができる。
上記で示される元素をアノード導電性多孔質層36に含むことにより、アノード導電性多孔質層36の比抵抗が小さくなるため、アノード導電性多孔質層36による電圧低下を軽減することができ、出力電圧をより高めることができる。
アノード導電性多孔質層36の形状は、アノード触媒層35に燃料を均一に供給するという観点、およびアノード触媒層35で生成した生成ガスの排出効率を高めるという観点から、アノード導電性多孔質層36の層厚方向に貫通または連通した複数の孔を有することが好ましい。特に、生成ガスをアノード導電性多孔質層36の両端面から排出する場合、アノード導電性多孔質層36の側面方向に貫通または連通した複数の孔を設けることが好ましい。
ここで、貫通とは一方の面から反対側の面へ貫き抜けることを意味し、連通とは連続した空間が形成されていることを意味する。貫通する孔を有するものとしては、たとえば板や箔に複数の穴を開けた形状またはメッシュ状またはエキスパンドメタル状の多孔質金属層を好ましく挙げることができる。また、連通する孔を有するものとしては、たとえば金属板、発泡金属、金属織物、金属焼結体、カーボンペーパー、カーボンクロスを好ましく挙げることができる。
アノード導電性多孔質層36の空隙率は、10%以上95%以下であることが好ましく、30%以上85%以下であることがより好ましい。アノード導電性多孔質層36の空隙率が10%未満であるとメタノールの拡散抵抗を十分に低減させることができない虞があり、95%を超えると電気抵抗を低減させることができない虞がある。
また、アノード導電性多孔質層36の厚みは、10μm以上1mm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。アノード導電性多孔質層36の厚みが10μm未満であるとアノード導電性多孔質層36の積層方向にメタノールを均一に供給できない虞があり、1mmを超えるとアノード導電性多孔質層36の積層方向へのメタノールの拡散抵抗を十分に低減させることができない虞がある。
<カソード導電性多孔質層>
カソード導電性多孔質層26は、カソード触媒層25と電子の授受を行なう機能を有するものであって、単位電池50の外部とカソード触媒層25とを連通する孔を有するものである。一般的に単位電池50の発電時において、カソード導電性多孔質層26はアノード導電性多孔質層36よりも高い電位に保たれるため、カソード導電性多孔質層26の材質は、アノード導電性多孔質層36と同等かそれ以上に耐腐食性に優れていることが好ましい。
カソード導電性多孔質層26の材質は、アノード導電性多孔質層36と同様の材質のものを用いてもよいが、特にカーボン材料、導電性高分子、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Cr等の金属およびこれらの金属の窒化物、炭化物等、ステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Ptの合金等を用いることが好ましい。
また、カソード導電性多孔質層26に用いられる材質として、Cu、Ag、Zn等のように酸性雰囲気下で腐食しやすい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属材質、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性炭窒化物、導電性酸化物等を表面コーティングすることにより、カソード導電性多孔質層26の表面の腐食を防止することができ、単位電池50およびこれを用いた燃料電池スタックの寿命を延ばすことができる。
カソード導電性多孔質層26の形状は、燃料電池スタック周囲の空気中の酸素をカソード触媒層25まで供給することが可能な連通孔を有していれば特に限定することなくいかなる形状のものをも用いることができる。燃料電池スタックを構成する燃料電池層のスペーサとの接触部位に位置するカソード触媒層25まで酸素を供給させるという観点から、カソード導電性多孔質層26内部に、積層方向および積層方向に対して垂直方向に連通している孔を有していることが好ましく、このようなカソード導電性多孔質層26の材料としては発泡金属、金属織物、金属焼結体、カーボンペーパー、カーボンクロス等を挙げることができる。
カソード導電性多孔質層26の空隙率は、10%以上95%以下であることが好ましく、30%以上85%以下であることがより好ましい。カソード導電性多孔質層26の空隙率が10%未満であると酸素の拡散抵抗を十分に低減させることができない虞があり、95%を超えると電気抵抗を低減させることができない虞がある。
また、カソード導電性多孔質層26の厚みは、10μm以上1mm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。カソード導電性多孔質層26の厚みが10μm未満であるとカソード導電性多孔質層26の積層方向に酸素を均一に供給できない虞があり、1mmを超えるとカソード導電性多孔質層26の積層方向への酸素の拡散抵抗を十分に低減させることができない虞がある。
<アノード集電体>
アノード集電体37は、アノード触媒層35またはアノード導電性多孔質層36と電子の授受を行なう機能を有するものである。アノード集電体37の形状は、燃料流路41を備えるものを用いてもよいし、板や箔に複数の穴を開けた形状のものを用いてもよいが、メッシュ状またはエキスパンドメタル状の多孔質のものを用いることが好ましい。
また、アノード集電体37の表裏の両面(すなわちアノード導電性多孔質層36と接する面)には、複数の燃料供給用の孔52が設けられており、燃料が燃料流路41から当該燃料供給用の孔52を通じて各アノード導電性多孔質層36、アノード触媒層35へと供給されることが好ましい。
アノード集電体37は、導電性を示すものであればどのようなものを用いてもよいが、電気抵抗低減のために導電性の高い材料を用いることが好ましく、アノード集電体37の材質は、電圧降下を抑制するため電子伝導抵抗の低いAu、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su等の金属、Si、およびこれらの窒化物、炭化物、炭窒化物等、さらにステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金等を用いることが好ましく、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる1以上の元素を含むことがより好ましい。
アノード集電体37に用いられる材質として、Cu、Ag、Zn等のように酸性雰囲気下で腐食しやすい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属材質、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性炭窒化物、導電性酸化物等を表面コーティングすることにより、アノード集電体37の表面の腐食を防止したものを用い、単位電池50およびこれを用いた燃料電池スタックの寿命を延ばすことができる。
<カソード集電体>
カソード集電体27は、カソード触媒層25またはカソード導電性多孔質層26と電子の授受を行なう機能を有するものであり、電気抵抗を低減するために導電性の高い材料を用いることが好ましい。カソード集電体27の形状は、板や箔に複数の穴を開けた形状、メッシュ状またはエキスパンドメタル状の多孔質とするものを好ましく用いることができる。
カソード集電体27は、導電性を有するものであればどのようなものでもよいが、電圧降下を抑制するため電子伝導抵抗の低い材料を用いることが好ましく、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su等の金属、Si、およびこれらの窒化物、炭化物、炭窒化物等、さらにステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金等を用いることがより好ましく、さらに好ましくはPt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる1以上の元素を含むことである。カソード集電体27の材質として、Cu、Ag、Zn等のように酸性雰囲気下で腐食しやすい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属材質、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性炭窒化物、導電性酸化物等を表面コーティングすることにより、カソード集電体27の表面の腐食を防止することができる。
<封止材>
封止材56は、少なくともアノード極の端面を封止するために設けられるものであり、単位電池の端面を封止することが好ましい。このようにアノード極の端面に封止材56を設けることにより、アノード極の端面から空気が混入することを防ぐことができるとともに、アノード極での反応により生じる生成ガスをアノード極の端面から排出することなく、燃料流路41側に戻すことができる。また、単位電池の取り扱いを簡便なものにするという観点から、アノード極の封止と同時に、電解質膜の端面、およびカソード極の端面が封止されていてもよく、さらにアノード集電体の端面およびカソード集電体の端面が封止されていてもよい。
封止材56を形成する材料としては、各層の端面を強固に接着するという観点から、熱硬化性の接着剤、または紫外線硬化性の接着剤を用いることが好ましい。当該接着剤は硬化前はゲル状であり、塗布した後に硬化させることにより封止材56を形成することができる。
封止材56を構成する熱硬化性の接着剤としては、オレフィン系の高分子、フッ素系エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、およびアルキド樹脂からなる群より選択される1種以上を混合したものを用いることができ、たとえばスリーボンド社製の1152Bポリオレフィン系の高分子やフッ素系エラストマー(商品名:SIFEL(登録商標)(信越化学工業株式会社製))、エポキシ樹脂を挙げることができ、これらを単独もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
ただし、耐薬品性の点から、ポリオレフィン系の高分子(商品名:1152B(株式会社スリーボンド製)およびエポキシ樹脂を用いることがより好ましい。紫外線硬化性の接着剤としては、たとえばアロニクス(東亞合成株式会社製)、カヤマー(日本化薬株式会社製)、エベクリル(ユーシービージャパン株式会社製)、アクティレン(アクロスケミカルズ社製)等の商標で市販される紫外線硬化性モノマーと光重合剤の混合物を挙げることができる。
<複合単位電池の製造方法>
従来の燃料電池スタックに用いられる単位電池は、1本の燃料流路に対し片方の面に配置した1つの単位電池を一体化することにより形成されていた。しかしながら、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池は、燃料流路の表裏の両面に配置した単位電池を一度に一体化することにより形成されることから、従来よりも単位電池と燃料流路とを一体化する回数を減らすことができる。このように一体化する回数を減らすことにより従来よりも製造工程を簡略化することができる。
図14に示される複合単位電池10の作製方法は、複合単位電池を作製するときに取り扱いやすくするという観点から、アノード導電性多孔質層36、アノード触媒層35、電解質膜60、カソード触媒層25、カソード導電性多孔質層26およびカソード集電体27を層厚方向にこの順に並べてプレスすることにより単位電池を得ることが好ましい。なお、各構成部材の積層順序はこれに限られるものではなく、たとえばカソード導電性多孔質層26とカソード集電体27との積層の順序が逆になっていてもよい。
上記で得られた単位電池を2つ準備し、2つの単位電池でアノード集電体37(燃料流路形成材を含む場合もある)を挟むように配置し、この積層体をプレスにより一体化して複合単位電池10を作製することができる。
上記のように各構成部材を一体化する方法としては、熱圧着(以下においては「ホットプレス」とも称する)する手法が好ましく用いられる。このようにホットプレスすることにより各構成部材が、いわゆるアンカー効果と呼ばれる物理吸着により接着され、一体化されることとなる。当該ホットプレスは、ステンレス板で上記の順で並べて各構成部材を挟んだ上で、室温雰囲気において厚み方向に130℃、10kgf/cm2で10分間圧力を加えることにより行なわれる。
なお、このホットプレスの条件は、電解質膜の種類により異なるため、上記の値に限定されるものではない。また、各層を一体化する方法もプレスによる一体化に限定されるものではなく、他のいかなる方法により一体化してもよい。
上記のようにホットプレスにより一体化した後、複合単位電池10の端面を封止材56により封止することが好ましい。このように複合単位電池10の端面を封止することにより、アノード極端面からの空気混入を防ぐことができるとともに、アノード極での反応により生じる生成ガスをアノード極の端面から排出することなく、燃料流路41側に戻すことができる。
本実施の形態の燃料電池スタックのように複合単位電池を用いて燃料電池層を構成にすることにより、従来よりも燃料電池スタックの構成部材を共通化することができるとともに、その構成部材を削減することもでき、加えて燃料電池スタックへの燃料供給および空気供給をより効率的に行なうこともできるため、燃料電池スタックの高出力密度化を図ることができる。しかも、燃料電池スタックの製造工程を簡略化することもできる。
(実施の形態B)
図15は、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池に、燃料透過抑制層を設けた構成の例を模式的に示す断面図である。本実施の形態に用いられる複合単位電池は、図15に示されるように、アノード集電体37、アノード導電性多孔質層36、アノード触媒層35、電解質膜60、カソード触媒層25、カソード導電性多孔質層26、カソード集電体27からなる単位電池50を、燃料流路41の表裏の両面に、アノード触媒層35側が燃料流路41に対向するように配置し、燃料電池スタックの温度上昇を抑制するために燃料流路41とアノード集電体37との間に燃料透過抑制層47を設けたことを特徴とする。
本実施の形態の燃料電池スタックにおいては、燃料電池層厚方向への締め付け部材を用いないため、接着層55を介して燃料流路形成材40と燃料透過抑制層47とが互いに接着されている。このような構造の複合単位電池において、燃料は燃料流路形成材40により形成される燃料流路41を通り、燃料透過抑制層47を透過した上でアノード触媒層35に供給される。
ここで、アノード導電性多孔質層36、およびアノード触媒層35に親水化処理したものを用いることにより、液体燃料のアノード導電性多孔質層36、およびアノード触媒層35に対する接触角は小さくなるため、発電時においてアノード導電性多孔質層36およびアノード触媒層35に液体燃料を保持することができる。これにより外部雰囲気から空気が混入することを防止することができ、電池としての発電特性を向上させることができる。また、液体燃料のアノード導電性多孔質層36、およびアノード触媒層35に対する接触角が小さくなることから、アノード導電性多孔質層36、およびアノード触媒層35に生成ガスによる気泡が保持されにくく、生成ガスを端面から排出することができる。また、一般的にアノード導電性多孔質層36の方が、アノード触媒層35よりも分厚いため、生成ガスは特にアノード導電性多孔質層36の端面から排出しやすい。
これらの親水化処理の方法としては、これらが親水化できる方法であればどのような方法でもよいが、気相酸化処理、液層酸化処理、カップリング処理、およびプラズマ処理のいずれかの手法により親水化することが好ましい。ここでの気相酸化処理としては、空気、オゾン、二酸化窒素雰囲気下における酸化を挙げることができる。また、液相酸化処理としては、硝酸、過マンガン酸カリウム、亜塩素酸、過塩素酸、酸素飽和水、オゾン水溶液、臭素水溶液、次亜塩素酸ソーダ、クロム酸カリウムと燐酸との混合液による酸化を挙げることができる。また、カップリング処理としては、シラン系、チタネート系、アルミニウム系のカップリング処理剤による処理を挙げることができる。
このような表面張力の差を利用することにより、メタノール水溶液等の液体燃料と、二酸化炭素等の生成ガスとを分離することができ、液体燃料をアノード触媒層35近傍に保持しつつ、生成ガスを長手方向を有した直方体形状の複合単位電池の長辺(端面)から排出することができる。なお、外部雰囲気から拡散してきた空気は、カソード集電体27、カソード導電性多孔質層26を通じてカソード触媒層25に供給される。
<燃料流路形成材>
本実施の形態において、単位電池50に用いられる燃料流路形成材40は、燃料を供給するための燃料流路を保持するために設けられる部材である。燃料流路形成材40の形状としては、1つの燃料流路41の両方の面に配置される単位電池50のアノード極に燃料を供給するという観点から、厚み方向に貫通した空間を設けることが好ましい。このような厚み方向に貫通した空間部分が、複合単位電池を構成したときには燃料流路41となる。
このような燃料流路形成材40の形状は、必ずしも厚み方向に貫通している必要はなく、燃料流路形成材40の表裏の両面に備えられる単位電池のアノード極に燃料を供給することができるような形状であればいかなる形状であってもよく、たとえば燃料流路形成材40の表裏の両面から厚み方向に溝が形成されることにより、燃料流路形成材40の燃料流路となる部分のみが顕著に薄くなっているような構造(すなわち、燃料が流れる方向における燃料流路形成材40の断面がH型となるような構造)のものであってもよい。
また、燃料流路41を形成する燃料流路形成材40として電熱性の高い金属等を用いることにより、燃料と燃料電池スタックとの熱授受が加速されることを以って、燃料電池スタックを効率的に冷却することができる。
燃料流路形成材40の材質は、ポリイミド、PVDF(PolyVinyliDenFluolide)、PTFE(PolyTetraFluoroEthylene)、PEEK(登録商標)等のように耐酸性および耐薬品性に優れた高分子を用いてもよいが、加工性の良さの観点から金属を用いることが好ましい。また、アノード集電体37と同一の材料を用いることが好ましく、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su等の金属、Si、およびこれらの窒化物、炭化物、炭窒化物等、さらにステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金等を用いることが好ましい。
燃料流路形成材40に用いられる材質として、Cu、Ag、Zn等のように酸性雰囲気下で腐食しやすい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属材質、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性炭窒化物、導電性酸化物等を表面コーティングすることにより、燃料流路形成材40の表面の腐食を防止することができる。
<燃料透過抑制層>
従来の燃料電池スタックのように、1つの燃料流路から1つの単位電池に燃料が供給される場合、燃料電池スタックの温度が多少上昇しても、燃料カートリッジ内に含まれる室温程度の燃料を燃料流路に流すことにより燃料電池スタックの温度を低下させることができていた。
しかしながら、本実施の形態の燃料電池スタックでは、燃料電池層に複合単位電池を採用することにより1つの燃料流路が2つの単位電池に共通して用いられるようになった。このため、本実施の形態の燃料電池スタックは、1つの燃料流路の両方の面に備えた単位電池の発電により生じる発熱のために、従来の燃料電池スタックと比べて約2倍程度温度上昇しやすくなっている。
そして、燃料電池スタック内の温度が上昇するにつれて、電解質膜の燃料透過速度が大きくなり、燃料のクロスオーバー量が増大してしまう。そして、この燃料のクロスオーバーによりカソード触媒層に到達した燃料が直接空気と反応し、さらに燃料電池スタックの温度が上昇することとなり、これらの繰り返しにより燃料電池スタックが熱暴走する虞がある。また、燃料電池スタックが温度上昇することにより燃料電池スタックを搭載した電子機器を構成する部品等の劣化を早めることもある。
本実施の形態に用いられる複合単位電池10において、燃料流路41とアノード触媒層35との間に燃料透過抑制層47を備えることが好ましい。このように燃料透過抑制層47を設けることにより、たとえポンプの流速が低いものを用いても、燃料流路41からアノード触媒層35への燃料の供給を燃料透過抑制層47により調整することができるため、必要十分量の燃料を供給することができ、ポンプの消費電力を低く抑えることができる。
しかも、このように燃料透過抑制層47を設けることにより、高濃度の燃料を燃料流路41に供給しても、アノード触媒層35に到達する燃料の供給量を調整することができる。これによりクロスオーバー量を抑制することができ、燃料電池スタックの温度上昇を抑制することができる。
また、カソード触媒層25側で生じる生成水が電解質膜60を透過してアノード触媒層35側に到達し、アノード触媒層35での燃料の濃度が薄められることにより、アノード触媒層35内における燃料濃度を低濃度なものとなり、これによってもクロスオーバーを抑制することができる。
燃料透過抑制層47としては、厚み方向に燃料の拡散抵抗を有しており、燃料流路41からアノード触媒層35への燃料の透過量が低いものを用いることが好ましい。
なお、クロスオーバーを抑制する方法として、単位電池に燃料透過抑制層47を設ける方法以外にも、供給する燃料の濃度を下げることにより、燃料のクロスオーバー量を減らす方法も考えられる。しかし、燃料の濃度を下げることにより、燃料供給不足を抑制するため燃料電池スタックに大量の燃料を供給しなくてはならず、ポンプ等補器の消費電力を大きくしてしまう虞がある。これは所期の目的に反することとなるため好ましくない。
燃料透過抑制層47に用いられる材料は、燃料の透過性が比較的低い液体浸透膜であればどのようなものでもよいが、炭化水素系固体高分子電解質膜からなる固体高分子電解質膜であることが好ましく、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、フッ化炭素樹脂、またはエポキシ樹脂あるいはポリオレフィン系樹脂とカーボンとの混合物等を挙げることができる。
また、燃料透過抑制層47が燃料に対して十分に耐溶解性を持たない場合、燃料透過抑制層47に用いられる材料を電子線照射、放射線照射等をすることにより燃料透過抑制層47を構成する高分子材料中の立体的な網目構造を増やすことを以って、燃料透過抑制層47の燃料に対する耐溶解性を高めることができる。
<接着層>
本実施の形態に用いられる複合単位電池10において、接着層55は、各構成部材を接着するために設けられるものであり、アノード集電体37と燃料透過抑制層47との接着性、およびアノード集電体37と燃料流路形成材40との接着性が良好なものであればどのようなものを用いてもよい。このような接着剤としては、熱硬化性の接着剤、紫外線硬化性の接着剤、または両面粘着テープを用いることができる。
当該接着剤は、硬化前はゲル状であり、スクリーン塗布やスプレー塗布等の塗布法で塗布した後に硬化させることにより接着層55を形成することができる。接着層55の厚みは特に制限されることなくいかなる厚みであってもよいが、接着性の観点から1〜200μmであることが好ましい。
本実施の形態において、接着層55を構成する熱硬化性の接着剤としては、オレフィン系の高分子、フッ素系エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、およびアルキド樹脂からなる群より選択される1種以上を混合したものを用いることができ、たとえばスリーボンド社製の1152Bポリオレフィン系の高分子やフッ素系エラストマー(商品名:SIFEL(登録商標)(信越化学工業株式会社製))、エポキシ樹脂を挙げることができ、これらを単独もしくは2種以上を混合して用いてもよい。ただし、耐薬品性の点から、ポリオレフィン系の高分子(商品名:1152B(株式会社スリーボンド製)およびエポキシ樹脂を用いることがより好ましい。紫外線硬化性の接着剤としては、たとえばアロニクス(東亞合成株式会社製)、カヤマー(日本化薬株式会社製)、エベクリル(ユーシービージャパン株式会社製)、アクティレン(アクロスケミカルズ社製)等の商標で市販される紫外線硬化性モノマーと光重合剤の混合物を挙げることができる。
両面粘着テープとしては、薄型であって、耐薬品性および耐熱性に優れたものであればどのようなものでもよく、たとえば耐熱両面接着テープ(商品名:No.5915(日東電工株式会社製))等を挙げることができる。
<複合単位電池の作製方法>
図15に示される構成の複合単位電池の作製方法を説明する。接着層55に接着剤を用いる場合、スクリーン塗布法およびスプレー塗布法を用いることにより燃料流路形成材40の燃料透過抑制層47を接合させる面に接着層55を形成することが好ましい。
また、接着層55に両面粘着テープを用いる場合、燃料流路形成材40の幅に合わせて両面粘着テープを切り出したものを燃料流路形成材40の燃料透過抑制層47を接合させる面に貼り合わせることにより接着層55を形成することが好ましい。
上記で形成した接着層55を挟み込むようにして燃料流路形成材40と燃料透過抑制層47とを接合する。同様に燃料流路41に対するもう片方の面に燃料透過抑制層47を接合する。一方、これとは別にアノード集電体37、アノード導電性多孔質層36、アノード触媒層35、電解質膜60、カソード触媒層25、カソード導電性多孔質層26、カソード集電体27の順に積層し、ホットプレス等を用いて一体化することにより単位電池50を含む積層体を作製する。この積層体を燃料透過抑制層47の燃料流路形成材40と対向する面とは反対の面に接着層55を介して接合し、図15に示される複合単位電池10を作製する。
図15に示される複合単位電池10は、燃料流路41を覆うように燃料透過抑制層47を配置するため燃料透過抑制層47の配置や位置が決めやすいという点で優れている。しかしながら、片面の単位電池50を作製するごとに燃料流路形成材40と燃料透過抑制層47とを接合する工程と、燃料透過抑制層とアノード集電体とを接合する工程との最低2回の接合工程が必要となるため、製造工程が複雑化するという問題がある。図15に示される複合単位電池10のように、アノード集電体37とアノード導電性多孔質層36との接触面積を大きくすることにより、複合単位電池10内の電気抵抗を低くすることができる。
(実施の形態C)
図16は、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の好ましい構成の一例を模式的に示す断面図である。本実施の形態においては、図15の複合単位電池の構造のように、燃料流路形成材40の全面を燃料透過抑制層47が覆うのではなく、燃料流路41のみを燃料透過抑制層47が覆うように設けることを特徴とする。すなわち、図16に示されるように、燃料流路形成材40の表裏の両面に接着層55は形成されるが、1つの接着層55で燃料流路形成材40と燃料透過抑制層47とが接合される箇所と、燃料流路形成材40とアノード集電体37とが接合される箇所とがそれぞれ存在する。
このように1つの接着層55を用いて、燃料流路形成材40と、燃料透過抑制層47と、アノード集電体37とを一度に接合することにより、製造工程をより簡易化することができる。
燃料は、燃料流路41から燃料透過抑制層47を透過し、アノード触媒層35に供給される。また、このように燃料透過抑制層47を設けることにより、たとえポンプの流速が低いものを用いても、燃料流路41からアノード触媒層35への燃料の供給を燃料透過抑制層47により調整することができるため、必要十分量の燃料を供給することができ、ポンプの消費電力を低く抑えることができる。また、燃料の酸化反応により生成ガスが生じる場合、当該生成ガスは、実施の形態Bに示される複合単位電池と同様に長手方向を有した直方体形状の複合単位電池の長辺(端面)から排出されることが好ましい。
しかも、高濃度の燃料を燃料流路41に供給しても、アノード触媒層35に到達する燃料の供給量を燃料透過抑制層47が調整することができることを以って、クロスオーバー量を抑制し、燃料電池スタックの温度上昇を抑制することができる。
また、カソード触媒層25側で生じる生成水が電解質膜60を透過してアノード触媒層35側に到達し、アノード触媒層35での燃料の濃度が薄められることにより、アノード触媒層35内における燃料濃度を低濃度なものとなり、これによってもクロスオーバーを抑制することができる。
図16に示される構成の複合単位電池の作製方法を説明する。接着層55に接着剤を用いる場合、スクリーン塗布法やスプレー塗布法を用いることにより燃料流路形成材40の表裏の両面に接着層55を形成する。一方、接着層55に両面粘着テープを用いる場合、燃料流路形成材40の幅に合わせて両面粘着テープを切り出したものを燃料流路形成材40の表裏の両面に貼り合わせることにより接着層55を形成する。
上記で形成した接着層55を挟み込むようにして燃料流路形成材40と燃料透過抑制層47とを接合して固定する。ここで、接着層55全面を燃料透過抑制層47が覆うのではなく、燃料流路41を覆うように燃料透過抑制層47を固定する。一方、これとは別に下からアノード集電体37、アノード導電性多孔質層36、アノード触媒層35、電解質膜60、カソード触媒層25、カソード導電性多孔質層26の順に積層し、ホットプレス等を用いて一体化することにより単位電池50を含む積層体を作製し、このような積層体を2組用意する。
そして、上記で得られた2組の単位電池のそれぞれのアノード集電体37のアノード導電性多孔質層36と対向する面とは反対側の面を、燃料流路形成材40に形成した接着層55に対向して固定する。そして、接着層55に用いられる接着剤を硬化させることにより、図16に示される構造の複合単位電池10を作製する。図16に示される複合単位電池10は、燃料流路形成材40と、燃料透過抑制層47と、アノード集電体37とを一度に接合できることにより製造時間を短縮することができるという点で優れている。
しかしながら、燃料流路41の形状に合わせた形状の燃料透過抑制層47が必要となるため、燃料透過抑制層47の配置や位置決めは図15に示される複合単位電池を作製するときよりも複雑になる。また、図16に示される複合単位電池は、図15に示される複合単位電池と同様に、アノード集電体37とアノード導電性多孔質層36との接触面積を大きくすることができるため、複合単位電池10内の電気抵抗を低くすることができる。
(実施の形態D)
図17は、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の好ましい構成の例を模式的に示す断面図である。図17に示される複合単位電池10は、図15および図16に示される複合単位電池とは異なり、アノード集電体37が燃料流路41とガス排出路31とを有することを特徴とする。ここで、ガス排出路31は、生成ガスを排出するために設けられるものであって、燃料流路41に長手方向を有する形状のものである。
本実施の形態の複合単位電池は、図16に示される複合単位電池10と同様に、燃料透過抑制層47は燃料流路41を覆うように、アノード集電体37の一部と接着剤を介して接合される。ここで、複合単位電池内の電気抵抗を小さくするためにアノード集電体37の燃料流路41部分に段差を設け、この段差に燃料透過抑制層47を配置することによりアノード導電性多孔質層36と、アノード集電体37との接触面積を増やしている。
このように燃料透過抑制層47を設けることにより、たとえポンプの流速が低いものを用いても、燃料流路41からアノード触媒層35への燃料の供給を燃料透過抑制層47により調整することができるため、必要十分量の燃料を供給することができ、ポンプの消費電力を低く抑えることができる。
しかも、このように燃料透過抑制層47を設けることにより、高濃度の燃料を燃料流路41に供給しても、アノード触媒層35に到達する燃料の供給量を調整することができることを以って、クロスオーバー量を抑制し、燃料電池スタックの温度上昇を抑制することができる。
また、アノード導電性多孔質層36とアノード集電体37とは、複合単位電池10の端面を封止材56により接着している。このようにアノード導電性多孔質層36とアノード集電体37とを接着することにより、アノード極への空気の混入を抑えるだけでなく、アノード導電性多孔質層36とアノード集電体37とが十分な接触面積を有するため、これらの界面での電気抵抗を小さくすることができる。
また、ガス排出路31を通じて燃料が排出されるのを防止するという観点から、アノード導電性多孔質層36には親水化処理を施すことが好ましい。親水化処理することにより、アノード導電性多孔質層36内に燃料が保持されやすくなり、ガス排出路31から燃料が排出されるのを防止することができる。
なお、図17に示される複合単位電池のように、燃料流路形成材40にガス排出路31が形成される場合、燃料流路41の幅の長さL1と単位電池50の幅の長さL2との関係L1/L2が0.4以上であることが好ましい。
図17に示される構成の複合単位電池の作製方法を説明する。接着層55に接着剤を用いる場合、スクリーン塗布法またはスプレー塗布法を用いることにより、アノード集電体37の燃料透過抑制層47を配置するために設けられた段差部に接着層55を形成する。一方、接着層55に両面粘着テープを用いる場合、アノード集電体37の段差部に合わせて両面粘着テープを切り出したものを燃料流路形成材40の燃料透過抑制層47を接合させる面に貼り合わせることにより接着層55を形成する。
上記で形成した接着層55を挟み込むようにしてアノード集電体37と燃料透過抑制層47とを対向して固定し接着層55を硬化させる。一方、これとは別に下からアノード導電性多孔質層36、アノード触媒層35、電解質膜60、カソード触媒層25、カソード導電性多孔質層26の順に積層し、ホットプレス等を用いて一体化することにより単位電池を作製し、このような単位電池を2組用意する。
そして、2組の単位電池のそれぞれアノード導電性多孔質層36のアノード触媒層35と対向する面とは反対側の面を、アノード集電体37に対向して固定した上で、複合単位電池10の端面を封止材56を用いて強固に固定し硬化させる。このように複合単位電池10の端面を固定することにより、アノード集電体37とアノード導電性多孔質層36との電子伝導パスができるようになり、以ってアノード集電体37とアノード導電性多孔質層36との間の電気抵抗を低減することができる。
図17に示される構造の複合単位電池10は、アノード集電体37とアノード導電性多孔質層36とがホットプレス等で一体化されているわけではないので、図15および図16に示される複合単位電池と対比するとアノード集電体37とアノード導電性多孔質層36との接触面積が小さいため、電気抵抗がやや高いものとなる。
しかしながら、本実施の形態の複合単位電池10は、アノード極で発生したガスを排出するためのガス排出路31を設けることから、図15および図16に示される複合単位電池と対比して生成ガスを効率的に排出することができる。これにより、生成ガスによる複合単位電池10内の圧力上昇を抑制することができ、以って複合単位電池10を形成する各層の界面の剥離を抑制する効果を得ることができる。
(実施の形態E)
図18は、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の好ましい構成の例を模式的に示す断面図である。本実施の形態の複合単位電池10は、図17に示される複合単位電池の燃料流路41の内部に、親水性の多孔質体が配置されることを特徴とする。このように燃料流路41の内部に親水性の多孔質体を設けることにより、燃料流路41の内部に燃料を保持する性能を高めることを以って、より効率的にアノード触媒層に燃料を供給することができる。
ここで、燃料流路41の内部に設けられる親水性の多孔質体としては、コットン、ポリエステル等の高分子の不織布、酸化チタン、シリカ等の金属酸化物の表面に親水性の高分子を塗布または修飾する、もしくは親水性高分子フィルムを付属する金属−高分子複合体等を挙げることができる。このような親水性の多孔質体の中でも耐薬品性および耐熱性がある材料を用いることが好ましい。
燃料流路41に備えられる多孔質体の形状としては、燃料流路41内に配置することができるように、燃料流路41と平行して伸ばされたものであることが好ましく、燃料が保持される燃料保持部、たとえば燃料カートリッジまで長手方向を有するものであることがより好ましい。また、親水性の多孔質体の厚みは、燃料流路41の溝よりも薄いことが好ましい。
燃料は、燃料保持部(図示せず)から親水性の多孔質体を介して燃料流路41まで毛管現象により輸送され、燃料透過抑制層47を透過しアノード触媒層35に供給される。また、燃料の酸化反応により生成ガスが生じる場合、当該生成ガスは、図17に示される複合単位電池と同様、燃料流路41と同一方向の長さをするガス排出路31から排出されることが好ましい。また、外部雰囲気から拡散した空気は、カソード集電体27、カソード導電性多孔質層26を通じてカソード触媒層25に供給される。
図18に示される複合単位電池は、図17に示される複合単位電池を作製する工程と類似しており、燃料流路41が形成されたアノード集電体37に、燃料透過抑制層47を配置する前に、燃料流路41内に親水性の多孔質体を設けることを特徴とし、この点が異なる他は、実施の形態Dと同様の工程により本実施の形態の複合単位電池を作製することができる。
ただし、本実施の形態の複合単位電池は、親水性の多孔質体に生じる毛細現象を利用することにより単位電池のアノード触媒層35に燃料の供給を行なうため、親水性の多孔質体を燃料保持部内の燃料に接触するように、親水性の多孔質体を燃料保持部まで伸びている必要がある。本実施の形態の複合単位電池10は、燃料供給用のポンプ等が不要な燃料パッシブ供給に適している。
このような構成の複合単位電池10を用いることにより、燃料ポンプを駆動させるのに必要な電力、ドライバ回路等を削減することができるとともに、燃料ポンプを駆動させるときに発生する音や振動をも抑制することができる。このため本実施の形態の複合単位電池10は、携帯型の情報電子機器に好ましく用いられる。
なお、本実施の形態では、図17の複合単位電池10に含まれる燃料流路41に親水性の多孔質体を組み込む形態を例示したが、このように燃料流路41に親水性の多孔質体を組み込む形態の複合単位電池10は、本実施の形態の場合のみに限られるものではなく、図14〜15に示される複合単位電池10の燃料流路41にも適用することができる。
(実施の形態F)
図19は、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の好ましい構成の例を模式的に示す断面図である。本実施の形態の複合単位電池10を構成するアノード集電体37には、燃料を単位電池のアノード極に供給するためのアノード孔が複数設けられたものを用いており、当該アノード孔の内部に燃料透過抑制層47が形成されることを特徴とする。
このように燃料透過抑制層47を設けることにより、たとえポンプの流速が低いものを用いても、燃料流路41からアノード触媒層35への燃料の供給を燃料透過抑制層47により保持されるため、必要十分量の燃料を供給することができ、ポンプの消費電力を低く抑えることができる。
しかも、このように燃料透過抑制層47を設けることにより、高濃度の燃料を燃料流路41に供給しても、アノード触媒層35に到達する燃料の供給量を調整することができることを以って、クロスオーバー量を抑制し、燃料電池スタックの温度上昇を抑制することができる。
このような複合単位電池10の構成にすることにより、アノード導電性多孔質層36と、アノード集電体37との接触面積を増やすことができることを以って、複合単位電池内での電気抵抗を低減することができる。
また、本実施の形態の複合単位電池10は、図18に示される複合単位電池と同様に、燃料流路41内に親水性の多孔質体が配置されていることを特徴とする。
上記のように構成することにより、アノード集電体37と燃料透過抑制層47との接着力が比較的弱いものとなる。このため、生成ガスの発生による内圧、および燃料供給時にポンプ等から燃料流路にかかる圧力によりアノード集電体37と燃料透過抑制層47とが剥がれるという問題がある。
そこで、このような問題を防止するという観点から、燃料流路41内に親水性の多孔質体を設けることが好ましく、燃料透過抑制層47がアノード導電性多孔質層36および親水性の多孔質体により固定されていることが好ましい。
このように燃料流路内に親水性の多孔質体を設けることにより、燃料は、燃料保持部(図示せず)から親水性の多孔質体を介して燃料流路41まで毛管現象により輸送され、燃料流路41から燃料透過抑制層47を透過しアノード触媒層35に供給される。
ここで、アノード導電性多孔質層36、およびアノード触媒層35に親水化処理したものを用いることにより、液体燃料のアノード導電性多孔質層36、およびアノード触媒層35に対する接触角は小さくなるため、発電時においてアノード導電性多孔質層36およびアノード触媒層35に液体燃料を保持することができる。これにより外部雰囲気から空気が混入することを防止することができ、電池としての発電特性を向上させることができる。また、液体燃料のアノード導電性多孔質層36、およびアノード触媒層35に対する接触角が小さくなることから、アノード導電性多孔質層36、およびアノード触媒層35に生成ガスによる気泡が保持されにくく、生成ガスを端面から排出することができる。
また、外部雰囲気から拡散した空気は、カソード集電体27、カソード導電性多孔質層26を通じてカソード触媒層25に供給される。
図19の複合単位電池に用いられるアノード集電体37のアノード孔内に燃料透過抑制層47を形成する方法としては、まず、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMAc:DiMethylAcetamide)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP:N-MethylPyrrolidone)等の有機溶媒に、燃料透過抑制層47を形成する材料を溶解させて溶液状にする。そして、当該溶液状のものを、アノード集電体37に形成されているアノード孔33内に、スクリーン印刷法またはスプレー塗布法を用いて塗布することにより燃料透過抑制層47を形成する。このようにして燃料透過抑制層47を形成する場合、アノード集電体37のアノード孔33内以外の箇所にマスクを形成して、アノード集電体37のアノード孔33内以外の箇所には燃料透過抑制層47を形成しないように保護することが好ましい。また、アノード集電体37とアノード導電性多孔質層36とは、接着層55により接合されていることが好ましい。
(実施の形態G)
図20は、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の構成の例を模式的に示す断面図である。本実施の形態の複合単位電池は、燃料のクロスオーバーを抑制する燃料透過抑制層の代わりとして、アノード導電性多孔質層36とアノード集電体37との間に導電性透過抑制層57を設けることを特徴とする。
このようにアノード導電性多孔質層36に接するように導電性透過抑制層57を設けることにより、燃料のクロスオーバーを抑制しつつ、アノード集電体37とアノード導電性多孔質層36との導電性を保持することができる。これにより複合単位電池の内部の電気抵抗を抑制することができる。さらに、後述する材料により導電性透過抑制層57を形成することにより、アノード集電体37と、アノード導電性多孔質層36との接着性を向上させることができる。
図20においては、アノード導電性多孔質層36とアノード集電体37との間に導電性透過抑制層57を設けられた複合単位電池を示しているが、このような位置に導電性透過抑制層57を設ける形態のみに限られるものではなく、たとえばアノード触媒層35とアノード導電性多孔質層36との間に導電性透過抑制層57を設けていてもよい。しかし、一般的にアノード触媒層35とアノード導電性多孔質層36との界面よりも、アノード導電性多孔質層36とアノード集電体37との界面の方が互いの接触点が少ないために、接着性が弱く電気抵抗が大きくなり易い。このため接着性向上、および複合単位電池10内の電気抵抗低減の観点から、アノード導電性多孔質層36とアノード集電体37との間に導電性透過抑制層57が形成されることが好ましい。
<導電性透過抑制層>
本実施の形態の複合単位電池10に用いられる導電性透過抑制層57は、接着剤と導電フィラーとを含む多孔質層であることが好ましい。導電性透過抑制層57が導電フィラーを含むことにより、導電性透過抑制層57の厚み方向の導電性が良好なものとなり、単位電池の層厚方向の電気抵抗を小さくすることができる。また、導電性透過抑制層57が接着剤を含むことにより、アノード導電性多孔質層36とアノード集電体37とを強固に接着することができる。
本実施の形態において、複合単位電池10に用いられる導電性透過抑制層57は、導電フィラー同士が接触することにより空隙が生じ、当該空隙の体積を変えることにより燃料の透過量を制御するものである。また、このような空隙を通じてアノード極での反応により生じる生成ガスを燃料流路41側に戻すことができる。
本実施の形態において、導電性透過抑制層57は、導電性接着剤を硬化することにより形成されるものである。アノード導電性多孔質層36上に導電性接着剤を塗布した後に、アノード導電性多孔質層36とアノード集電体37とを導電性接着剤を介して固定する。そして、これらを固定したまま熱、圧力または紫外線照射により導電性接着剤を硬化させた後に、導電性接着剤を室温まで冷却することにより、アノード導電性多孔質層36とアノード集電体37との間に導電性透過抑制層57を形成する。なお、導電性接着剤に有機溶媒等を含む場合、熱または紫外線照射により有機溶剤等を蒸散させることが好ましい。
導電性接着剤の塗布は、均一に塗布することができる塗布方法であればいかなる方法であってもよいが、簡易であってしかも薄く均一に塗布することができるという観点から、スクリーン印刷法もしくはスプレー塗布法を用いることが好ましい。
本実施の形態のように、導電性接着剤を用いて導電性透過抑制層57を形成することにより、各構成部材の界面をホットプレス等により接着する必要はなく、必要最低限の圧力により固定し、各構成部材を積層することができる。このため、燃料流路形成材40に形成される燃料流路41がアノード集電体37およびアノード導電性多孔質層36に埋まることなく、アノード導電性多孔質層36とアノード集電体37とを導電性透過抑制層57を介して接着することができる。
このように燃料流路41が埋まることがないことにより、燃料流路41の深さをより広く維持することができ、燃料を送るポンプの必要圧力を小さくすることができることを以って、ポンプの消費電力を低減することができる。
本実施の形態において、複合単位電池10に用いられる導電性透過抑制層57は、導電性接着剤における導電フィラーの体積含有率、形状、および粒径、または導電フィラーおよび接着剤の表面張力という比較的変更しやすいパラメーターを変更することにより、導電性透過抑制層57の燃料の透過量を制御することができる。すなわちたとえば、導電フィラーの体積含有率を大きくする、または導電フィラーとしてフットボール状、または棒状のカーボン材料を選択することにより燃料透過量を増やすことができる。
導電性透過抑制層57の厚みは1μm以上80μm以下であることが好ましい。導電性透過抑制層57の厚みが1μm未満であると、燃料透過を抑制する効果を十分に得ることができない虞があり、80μmを超えると、導電性透過抑制層57の電気抵抗が大きくなり、燃料電池の発電効率が低下する虞がある。
<導電性接着剤>
本実施の形態において、複合単位電池10に備えられる導電性透過抑制層57は、導電性接着剤を硬化することにより形成される層であり、当該導電性接着剤は接着剤と導電フィラーとを含むことが好ましい。なお、導電性接着剤には、上記で挙げたもの以外にさらに他の成分を含んでいても本発明を逸脱するものではない。このような他の成分としては、たとえば導電性接着剤の粘度を調整するための有機溶剤を挙げることができる。
ここで、導電フィラーとしては、導電性が良好なものであればどのようなものを用いてもよい。また、接着剤としては、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤または熱可塑性接着剤のいずれかであることが好ましい。
<導電フィラー>
本実施の形態において、導電性接着剤に含まれる導電フィラーとしては、導電性を有するものであればどのようなものでもよいが、導電性透過抑制層57内での電圧降下を抑制するという観点から、電気抵抗の低い材料を用いることが好ましい。このような材料としては、カーボン材料、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Cr等の金属およびこれらの金属の窒化物、炭化物等、さらにステンレス、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Ptの合金等を挙げることができる。導電フィラーに用いられる材料として、Cu、Ag、Zn等のように酸性雰囲気下で腐食しやすい金属を用いる場合、耐腐食性を有する貴金属および金属材質により表面をコーティングすれば、導電フィラー表面の腐食を防止することができる。
導電フィラーの材料の中でも、コストを低減するという観点、および耐食性が優れているという観点から、カーボン材料を用いることがより好ましく、好適なカーボン材料としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等を挙げることができ、導電性および燃料透過抑制の性能の面から、アセチレンブラック(商品名:Vulcan XC72(Cabot株式会社製)、およびケッチェンブラック(登録商標)を用いることがより好ましい。
ここで、本実施の形態の導電性接着剤に含まれる導電フィラーの形状としては、いかなる形状のものを用いることもでき、たとえば粒状のもの、フットボール形状のもの、棒状のもの等を挙げることができる。導電性透過抑制層57の電気抵抗を下げることができるという観点から、互いのカーボン同士の接触面積を大きくすることができるような粒状のものを用いることが好ましい。
また、導電フィラーを用いることにより、導電フィラー同士が接触して導電性透過抑制層57に空隙が形成され、当該空隙により導電性透過抑制層57の燃料透過抑制の性能を発現させることができる。すなわち、燃料は、導電性透過抑制層57に設けられる空隙を透過することができるが、導電性透過抑制層57における燃料の拡散抵抗が高いために、燃料の透過量が抑制される。このように燃料の透過量が抑制されることにより、高濃度の燃料を供給しても燃料のクロスオーバーが生じることを抑えることができ、これを以って複合単位電池10の出力密度の低下を抑制することができる。
導電性透過抑制層57における導電フィラーの含有量を増やすにつれて、導電フィラー同士の接触が多くなり、当該接触が増えることにより空隙の体積が増え、導電性透過抑制層57における燃料透過量を増大させることができる。この空隙の体積は、導電フィラーの含有率、形状、粒径等によっても異なるし、導電フィラーおよび接着剤の表面張力の違い(たとえば親水性または疎水性)によっても異なる。
本実施の形態において、導電性透過抑制層57の燃料透過性能と電気抵抗性能とを高度に両立するためには、導電性接着剤に含まれる導電フィラーの含有率を適切に調整することが肝要である。すなわちたとえば、燃料にメタノール水溶液を用いる場合、導電性接着剤の総重量に対し30wt%以上80wt%以下の導電フィラーを含有することが好ましく、50wt%以上70wt%以下の導電フィラーを含有することがより好ましい。
なお、上記の導電フィラーの含有量の範囲内で導電フィラーの含有量を少なくすることにより、導電性透過抑制層57に形成される空隙の体積が少なくなることを以って、導電性透過抑制層57の燃料透過量を抑制することができる。一方、上記の導電フィラーの含有量の範囲内で導電フィラーの含有量を多くすることにより、導電フィラーの接触面積が増えることを以って導電性透過抑制層57の電気抵抗を低くすることができる。
導電性接着剤の総重量に対する導電フィラーの含有量が30wt%未満であると、導電性透過抑制層57に含まれる導電フィラーの粒子同士の接触が少なくなり、導電性透過抑制層57の電気抵抗が高くなる虞がある。一方、導電性接着剤の総重量に対する導電フィラーの含有量が80wt%を超えると、導電性透過抑制層57に含まれる接着剤の含有率が少なくなるため、導電性接着剤の接着性能が低下する虞がある。
また、導電性透過抑制層57は、その厚み方向の電気抵抗が100mΩcm2以下であることが好ましい。導電性透過抑制層57の厚み方向の電気抵抗が100mΩcm2を超えると、導電性透過抑制層57内での電圧降下が生じることとなり、結果として燃料電池の内部抵抗が高くなる。
<接着剤>
導電性接着剤に含まれる接着剤の紫外線硬化性接着剤としては、たとえばアロニクス(東亞合成株式会社製)、カヤマー(日本化薬株式会社製)、エベクリル(ユーシービージャパン株式会社製)、アクティレン(アクロスケミカルズ社製)等の商標で市販される紫外線硬化性モノマーを挙げることができ、これと光重合開始剤とを混合して用いるものである。
また、導電性接着剤に含まれる接着剤の熱硬化性接着剤としては、オレフィン系の高分子、フッ素系エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、およびアルキド樹脂からなる群より選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。このような熱硬化性接着剤としては、たとえばポリオレフィン系の高分子、フッ素系エラストマー(商品名:SIFEL(登録商標)(信越化学株式会社製))、エポキシ樹脂等を挙げることができ、これらを単独もしくは2種以上を混合して用いることが好ましい。ただし耐薬品性の点から、ポリオレフィン系の高分子(商品名:1152B(株式会社スリーボンド製)およびエポキシ樹脂を用いることがより好ましい。また、導電性接着剤に含まれる接着剤の熱可塑性接着剤としては、ポリアミドやポリオレフィン系樹脂等のエンプラ、ポリイミド、ポリアミドイミド等を挙げることができる。
<有機溶剤>
本実施の形態において、導電性接着剤を塗布するときに、塗布に適した粘度になるようにさらに有機溶剤を含んでいてもよい。このような粘度調整に用いられる有機溶剤としては、たとえばアセトン、ジメチルアセトアミド(DMAc:DiMethylAcetamide)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP:N-MethylPyrrolidone)を挙げることができる。
(実施の形態H)
図21は、本実施の形態の燃料電池スタックに用いられる複合単位電池の構成の例を模式的に示す断面図である。本実施の形態の燃料電池スタックは、図21に示されるように、2つのスペーサ20の間に複合単位電池が設けられている。当該複合単位電池は、図21に示されるように、実施の形態Aの複合単位電池の構成に対し、燃料流路に代えて燃料輸送部材85を用いて、単位電池のアノード極に燃料を供給することを特徴とする。そして、このように燃料輸送部材85を用いてアノード極に燃料を供給することに伴い、燃料電池スタックの側面に接するように燃料貯蔵室87を設ける。なお、ここでの燃料輸送部材85は、上記の実施の形態Eで述べた「親水性の多孔質体」に相当する。
このように燃料流路の代わりに燃料輸送部材85を用いることにより、ポンプやファン等の外部動力を使用する補機を用いることなく液体燃料を燃料極全体にわたって十分な速度で供給することが可能であり、十分な電力を供給することができる。
<燃料輸送部材>
上記の燃料輸送部材85は、燃料貯蔵室87からの燃料を毛細管現象を利用してアノード極に輸送するための部材である。このため、燃料に対して毛細管作用を示す材料からなることが好ましい。このような毛細管作用を示す材料としては、アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、セルロース、ポリオレフィン系樹脂、ナイロンなどの高分子材料(プラスチック材料)、およびステンレス、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、スチールなどの金属材料からなる不規則な細孔を有する多孔質体を挙げることができる。多孔質体としては、上記材料からなる不織布、発泡体、焼結体などを挙げることができる。また、上記高分子材料または金属材料からなり、毛細管として表面に規則的なまたは不規則なスリットパターン(溝パターン)を有する基板を燃料輸送部材85として用いることもできる。
また、上述の多孔質体は、空隙率を高めるため、燃料輸送部材85が保持可能な液体燃料量を向上させることができる。このことは、吸い上げ高が同じ場合、吸い上げ速度がより大きくなることを意味しており、したがって、燃料貯蔵室87から離れたアノード極の部位に対しても、液体燃料を効果的に供給することができる。
ここで、「吸い上げ高」とは、燃料輸送部材の一端を燃料に浸漬したときの、毛細管現象による燃料の当該部材における到達可能位置を意味し、これが小さいと、アノード極全体にわたって燃料を供給させることができず、燃料電池スタックの出力が低下する。また、「吸い上げ速度」とは、燃料輸送部材の一端を燃料に浸漬したときの、単位時間当たりに吸い上げられる燃料の体積を意味する。吸い上げ高および吸い上げ速度が優れるという観点から、アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、またはナイロンからなる多孔質体を燃料輸送部材として用いることがより好ましい。
燃料輸送部材85が有する細孔の細孔径は、0.1〜500μmとすることが好ましく、1〜300μmとすることがより好ましい。これにより重力に対して十分な毛細管現象が生じ、良好な吸い上げ高および吸い上げ速度を得ることができる。なお、燃料輸送部材85が有する細孔の細孔径は、水銀圧入法により測定される径である。
繊維不織布および繊維不織布焼結体を構成する繊維の繊維径Rは、特に制限されることなく、たとえば10〜200μmとすることができる。繊維不織布および繊維不織布焼結体の空隙率は、たとえば30〜90%であり、吸い上げ高および吸い上げ速度向上の観点から、好ましくは50〜80%である。
また、燃料輸送部材85を構成する材料として、ステンレス、チタン、タングステン、アルミニウムなどからなる金属繊維不織布焼結体の繊維表面に、酸化皮膜からなる不動態層を形成した金属多孔質体も好ましく用いられる。繊維表面が酸化皮膜で被覆されると、燃料輸送部材85から燃料への金属イオンの溶出が防止されるため、MEAに含まれる固体電解質成分(イオン交換樹脂)中に金属イオンがトラップされ、出力が低下する恐れがなくなる。
また、特にアルコール濃度が50重量%以下のアルコール水溶液を燃料として使用する場合には、酸化皮膜からなる不動態層を形成することにより、繊維表面に対する液体燃料の濡れ性が向上する。このため、燃料の吸い上げ速度および引き上げ高がより向上し、燃料貯蔵室87から離れたアノード極に対しても、より効果的に燃料を供給することができる。
このような燃料輸送部材85は、上記の図7(A)に示されるように、流路板88として櫛型形状のものを用いるとともに、該流路板88の櫛型形状に噛み合うような櫛型形状であることが好ましい。このような櫛型形状の燃料輸送部材85を用いる場合、櫛型形状の柄から先端部にかけて燃料が供給されるように、櫛型形状の柄に相当する部分を燃料に浸漬させることが好ましい。
より好ましくは流路板88と燃料輸送部材85とは接することなく隙間を設けて噛み合うことである。このように隙間を設けて流路板88と燃料輸送部材85とを噛み合わせることにより、アノード極で発生する生成ガスを外部に排出する余地を残し、もって生成ガスの排出効率を高めることができる。このような流路板88を構成する材料としては、上記で述べた燃料流路形成材と同一の材料を用いることができる。
ここで、燃料輸送部材85の長さ(燃料貯蔵室87側の一端からこれに対向する他端までの距離)は、特に制限されず、燃料電池全体の形状やMEAの形状等に応じた適宜の長さとすることができる。燃料輸送部材85の一端を燃料貯蔵室87に保持された燃料に接触可能な位置に配置したときに、その他端がアノード極の端部(燃料貯蔵室87側とは反対側の端部)の略直下の位置に配置されるような長さまたはそれ以上の長さを有することが好ましい。これによりアノード極の燃料貯蔵室87側とは反対側の端部までを含めたアノード極全体にわたって、燃料をより効果的に供給することができる。
なお、「燃料に接触可能な位置」とは、たとえば図21に示されるように、燃料輸送部材85の一端が燃料貯蔵室87を仕切る壁の内部に位置する場合をいう。燃料輸送部材85の一端が燃料貯蔵室87内部に位置するように燃料輸送部材85の長さを調整することにより、使用時における複合単位電池の向きがどのような向きであっても、燃料と燃料輸送部材85とを接触させることができる。
燃料輸送部材85の厚みについては特に制限されることはなく、複合単位電池10の厚みや流路板88の高さなどに応じて適宜されるが、たとえば0.05〜5mm程度とすることができ、複合単位電池10の小型化、ならびに、吸い上げ高および吸い上げ速度向上の観点からは0.1〜1mmとすることが好ましい。
<燃料貯蔵室>
本実施の形態における燃料貯蔵室87は、好ましくは燃料電池スタックの側方に配置される、燃料を保持するための空間である。燃料貯蔵室87の大きさや形状は特に制限されないが、燃料輸送部材85の一端と燃料貯蔵室87内に保持された燃料とが接触可能となるよう、その側壁面に開口を有する必要がある。その開口は、燃料電池スタックと燃料貯蔵室87とを仕切る箱筺体の一部分を構成する壁を貫通する穴から形成されるものであってもよく、この場合、燃料輸送部材85は、その一端が当該穴の内部に位置するかまたは燃料貯蔵室87の内部に位置するように、当該穴に挿入される。
図21における燃料貯蔵室87は、複数の開口を有する筺体90と燃料電池スタックとによって形成される。ただし、燃料貯蔵室87は、これら筺体90を用いて構成する必要性は必ずしもなく、たとえば、燃料貯蔵室87の上壁(天井壁)、側壁および底壁を形成する部位を一体として含む1つの部材から構成することもできる。
図21において筺体90は、燃料貯蔵室87の上壁(天井壁)を形成するとともに、複合単位電池が露出することを防止している。筺体90のカソード極の直上には、空気を流通させるための複数の開口(ただし、開口の数は1以上あればよい)が形成されている。
<気化層>
上記のように燃料輸送部材85を設けた場合、燃料輸送部材85とアノード極との間に、燃料の蒸気をアノード極に供給するための気化層81を備えることが好ましい。気化層81は、液体不透過性およびガス透過性を有するため、アノード極へ供給されるガス状態の燃料の量または濃度(分圧)を絞る機能を有する。
気化層81の細孔径を小さくするなどして、アノード極へ供給されるガス状の燃料の量または濃度(分圧)を絞ることができ、燃料が電解質膜を介してカソード極へ透過するクロスオーバーを抑制することができる。
このような気化層81は、メタノール、エタノール等のアルコール燃料を用いる場合、撥水性と撥油性とが付与されることが好ましい。撥水性を有することにより、燃料流路41側への水(たとえば、カソード極で生成され、電解質膜を介してアノード極側へ移動してきた水)の侵入を防止することができる。これによりアノード極における水分濃度を良好に保ち、出力低下を抑制することができる。この効果は、高濃度燃料(たとえば純メタノールなど)を用いる場合に特に有利である。さらに燃料輸送部材85内の液体燃料に水が溶け、液体燃料の濃度が低下することを防止することができる。これにより液体燃料の濃度が一定に保たれ、アノード極への燃料供給量が安定化される。
また、気化層81が撥油性を有することにより、気化層81の表面が燃料によって濡れることを防ぐことができる。これにより発電によって生じる生成ガスが気化層81を経由して燃料流路41側に排出されやすくなる。
このような気化層81に用いる材料としては、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーンシートなどを挙げることができる。上記に述べた理由で、これらの材料に撥水処理や撥油処理が施されることが好ましい。
気化層81の厚みは、特に制限されないが、アノード極内の内圧上昇によって穴が開いたり、歪曲しないように形状を維持し得るという観点から、十分な強度を有する必要があり、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、燃料電池の薄型化の観点からは、気化層81の厚みは、400μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
このように燃料輸送部材85内に供給される燃料は液体燃料であるが、気化層81を通過して、アノード極に供給される燃料はガス状態である。また、燃料輸送部材85自身の毛管力とともに、燃料輸送部材85と気化層81との界面に形成される毛細管による毛管力が付加されることにより、非常に大きな毛管力が得られ、液体燃料の吸い上げ高と吸い上げ速度とを高度に両立させることができる。したがって、燃料貯蔵室87からアノード極への液体燃料の輸送を、外部動力を用いることなく、そして重力の影響をほとんど受けることなく行なうことができる。
このように図21に示される複合単位電池では、燃料貯蔵室87から気化層81への液体燃料の輸送において非常に大きな毛管力が得られるため、使用時の複合単位電池の向きが特に制限されず、たとえば燃料貯蔵室87を下にし、燃料輸送部材85を鉛直方向上向きに立てた状態で使用した場合であっても、十分に高い電力を供給することができる。また、吸い上げ速度が高いため、液体燃料が燃料輸送部材85に染み渡る(飽和する)時間が短縮されることから、燃料電池の起動から電力が取り出されるまでの時間を短縮することができる。
<保湿層>
本実施の形態において、図21に示されるように、カソード集電体のカソード極と接する側とは反対側に保湿層83を備えることが好ましい。保湿層83は、発電によりカソード極で生じた水を保持し、単位電池内に水分濃度を保持することができる。これにより発電で複合単位電池の温度が高くなっても、水が蒸散しにくいため電解質膜が乾燥しにくくなり、またアノード極における水分濃度が良好に保たれるため、安定して高出力を発電することができる。
このような保湿層83に用いられる材料としては、水に溶解するものでなければ特に限定されることなくいかなるものを用いることもできるが、高分子材料等の有機物質からなる多孔質体を用いることが好ましい。このような多孔質体としては、たとえば綿、発泡体、繊維束、織繊維、不織繊維、多孔質焼結体、あるいはこれらの材料の組み合わせからなるものを挙げることができる。適切な細孔を有する多孔質体を選択することにより、カソード極への空気供給を十分量確保しつつ、発電により生じた水が熱によって生じる上昇気流とともに排出されるのを防止する(すなわち水が蒸散するのを防ぐ)ことができる。
上記の高分子材料等の有機物質としては、たとえば、天然繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリフェニレン等から選択される1種または2種以上の組み合わせを用いることがより好ましい。
このような保湿層83を構成する材料の中でも、外部からの衝撃に対する強度を高めるという観点からは、セピオライト、ゼオライト等を用いることが好ましい。なお、保湿層83上にさらに保護層(図示せず)を設け、外部からの衝撃に対する強度を高めてもよい。
保護層83を構成する材料としては、たとえばポリエチレン、ポリエステル、ポリビニル、およびポリカーボネートからなる群より選択される1種以上の高分子多孔質膜を挙げることができる。このような保護層を構成する高分子多孔質膜は、その空隙率が高いことが好ましい。これにより外部からの衝撃に対する単位電池の強度を高めることができる。
なお、図21においては、カソード集電体27の全面に接するように保湿層83が設けられているが、このような形態のみに限られるものではなく、膜電極複合体2の上面のみに保湿層83を設けてもよい。
<断熱層>
本実施の形態において、図21に示されるように、アノード集電体のアノード極と接する側とは反対側に断熱層82を備えることが好ましい。このような断熱層82は、アノード極の反応により生じた熱を燃料輸送部材85に伝導するのを抑制するために設けられるものである。このように断熱層82を設けることにより、燃料輸送部材85に含まれる燃料が加熱されるのを抑制することができる。これにより燃料の蒸散速度が過剰に大きくなることを防止し、燃料のクロスオーバーが生じにくくなる。なお、図21に示されるように、断熱層82は、気化層81とアノード集電体37とを接着材86により貼り合わせたときの内部の空間に設けることが好ましい。
このような断熱層82を構成する材料としては、ポリイミド、PVDF(PolyVinyliDenFluolide)、PTFE(PolyTetraFluoroEthylene)、PEEK(登録商標)等のように耐酸性および耐薬品性に優れた樹脂、またはコットン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリフェニレン等の高分子の不織布、またはカーボンペーパー、カーボン不織布、カーボンクロス、酸化チタン、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属多孔体、または多孔質セラミックを好ましく用いることができ、非多孔質の金属やカーボンで、板または箔に複数の穴を開けた形状のもの、メッシュ状またはエキスパンドメタル状の多孔質を好ましく用いることができる。なお、材料の熱伝導は低いほうがより好ましいが、空気を保持することで断熱性が得られるため、材料の性質よりもその空孔率や厚みによって断熱性の効果を得ることが好ましい。
断熱層82の空孔率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは90%以上である。また、断熱層82の厚みは、十分な断熱性を得るという観点から100μm以上であることが好ましく、250μm以上であることがより好ましい。このような空孔率および厚みの多孔質体を用いることにより、断熱層82の断熱性を高めることができる。上述の気化層81および断熱層82により、複合単位電池の過昇温を抑えることができ、保湿層83により温度が上がった場合にも、安定して出力を得ることができる。
<生成ガス排出路>
本実施の形態において、複合単位電池を構成する各層を厚み方向に貫通する空間を有し、該空間は、アノード極で発生する生成ガスを排出するための生成ガス排出路84であることが好ましい。このような生成ガス排出路84を設けることにより、アノード極で発生する生成ガスを外部に効率よく排出することができる。
かかる生成ガス排出路84がスペーサ20と接する場合には、図21にも示されるように、スペーサ20にも同様の生成ガス排出路84を設けることにより、燃料電池スタックを構成する各層の積層方向に生成ガス排出路84を貫通させることが好ましい。
このような生成ガス排出路84は、予め各層に貫通穴を有するものを積層させることにより形成してもよいし、燃料電池スタックを形成した後に、燃料電池スタックの各層の積層方向に全てを貫通させることにより形成してもよい。後者は、積層時に生成ガス排出路の位置あわせを行なう必要がないというメリットがあり、前者は、貫通時に各層の不要部材が混入されにくく、かつ貫通時に各層の位置ズレも生じにくいというメリットがある。
図22は、図21に示した燃料電池スタックに対し、燃料電池層とスペーサ層とをさらに積層させたものである。図22に示されるように、2層以上の燃料電池層をスペーサ20を介して積層させる場合、燃料電池層の表裏のいずれか一面もしくは両面の両端部上にスペーサ20を設けることが好ましい。このように燃料電池層の両端部上にそれぞれ1つずつ合計2のスペーサ20を形成する場合、2のスペーサ20からなるスペーサ層となる。このようなスペーサ層を設けることにより、膜電極複合体2で発生した熱が上昇気流によって燃料電池スタックの外部に放熱する効果を高めることができる。
ここで、2のスペーサ20を設ける場合、膜電極複合体2とスペーサ20とが空間的にねじれの位置に配置されることが好ましい。「ねじれの位置」とは、膜電極複合体2およびスペーサ20を長手方向に延長したときにも互いに交わらない位置関係を意味する。このような配置とすることにより、アノード極で生じる反応熱を外部に放出する効果を高めることができる。なお、放熱性を高めるという観点から、図22に示される2のスペーサ20の間に、さらに大面積のスペーサ20aを設けてもよいことは言うまでもない。
<(3)燃料電池層間の集電方法>
本発明の燃料電池スタックを用いて電子機器等を駆動するためには、一般的に電流出力時に1〜4V程度の電圧が必要である。しかしながら、1つの単位電池から取り出せる電圧は開回路電圧で0.6V程度であり、電流出力時で0.2〜0.4V程度である。このため1つの単位電池により燃料電池スタックを構成しても、それから取り出すことのできる電圧では電子機器等を駆動するためには不十分であり、電子機器に用いるためには各単位電池を直列接続することが不可欠である。
従来の燃料電池スタックは、片面単位電池構造の単位電池により燃料電池層を構成していることから、たとえば隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層に含まれる単位電池のカソード極と、他方の燃料電池層に含まれる単位電池のアノード極とを対向するように配置した上で、2層の燃料電池層の間に設けられるスペーサ層に層厚方向への導電性を付与することにより、または導電性の高い金属で隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層に含まれる単位電池のアノード極と他方の燃料電池層に含まれる単位電池のカソード極とを接続することにより、複数の燃料電池層を直列接続することができていた。
しかしながら、本発明の燃料電池スタックを構成する燃料電池層は、複合単位電池を採用していることから、隣接する2層の燃料電池層のカソード極同士が互いに対向している。このため隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層に含まれる単位電池のカソード極と他方の燃料電池層に含まれる単位電池のアノード極とを従来のように積層するだけでは直列接続することができなかった。
そこで、本発明の燃料電池スタックは、(i)1つの燃料電池層において、燃料電池層に含まれる2つのアノード集電体同士を電気的に接続するとともに、燃料電池層に含まれる2つのカソード集電体同士を電気的に接続することにより、複合単位電池に含まれる2つの単位電池を並列接続する。そして、(ii)隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層に含まれる複合単位電池のカソード集電体と、他方の燃料電池層に含まれる複合単位電池のアノード集電体とを電気的に接続することにより、燃料電池層を直列接続する。このように燃料電池スタック内の各燃料電池層を電気的に接続することにより、燃料電池スタック内の配線が複雑化することなく高出力を得ることができる。
以下に、図23を用いて上記の(i)の1層の燃料電池層内の並列接続の配線方法を説明し、図24を用いて上記の(ii)の隣接する3層の燃料電池層内の直列接続の配線方法を説明する。
(i)同一の燃料電池層に設けられる2つの単位電池同士を並列接続する方法
図23は、本発明の燃料電池スタックを構成する燃料電池層の1層を示した図である。図23(A)は、本発明の燃料電池スタックを構成する燃料電池層1層を真上から見た上面図であり、図23(B)は、図23(A)に示される燃料電池層のうちのカソード集電体貫通孔29とアノード集電体貫通孔39とを含む面で切断した断面図である。
図23(A)に示される燃料電池層100は、5つの複合単位電池10が間隔を設けて設置されるものであり(図23(A)において複合単位電池10は点線で囲んだ部分)、膜電極複合体2をカソード集電体27とアノード集電体37とで挟むことにより形成される。
ここで、カソード集電体27には、一部を長くしたカソード電流取出部28が設けられており、当該カソード電流取出部28には同一の燃料電池層のカソード集電体27同士を電気的に並列接続するためのカソード集電体貫通孔29を備えている。アノード集電体37も同様に一部を長くしたアノード電流取出部38が設けられており、当該アノード電流取出部38には、隣接する燃料電池層のカソード集電体27と直列接続するためのアノード集電体貫通孔39を備えている。
同一の燃料電池層内のカソード電流取出部28およびアノード電流取出部38は、図23(A)の上面図として見るときに、それぞれ重ならないように別の場所に設けることが好ましく、隣接する2層の燃料電池層を効率的に導通させるという観点から、カソード電流取出部28とアノード電流取出部38とは、カソード集電体27およびアノード集電体(図示せず)の中心点に対して点対称となる位置に備えることがより好ましい。
複合単位電池に含まれる2つの単位電池を並列接続しやすいという観点から、図23(B)に示されるように、同一の燃料電池層100内において、燃料流路41の表裏の両面にアノード集電体37が1層ずつ設けられており、燃料電池層100の表裏の両面にカソード集電体27が1層ずつ設けられることが好ましい。これにより燃料電池層100の表裏の両面に設けられたカソード集電体27を電気的に接続することができるとともに、燃料流路41の表裏の両面に設けられたアノード集電体37を電気的に接続することができる。
燃料流路41の表裏に形成されるアノード集電体37同士を電気的に接続する方法としては、燃料流路形成材に導電性の材料を用いることにより行なってもよいし、アノード集電体37自体が燃料流路41を備えるものであって、燃料流路形成材を兼ねるものを用いることにより行なってもよい。このようにアノード集電体37を電気的に接続することにより、図23(B)に示されるように、同一の燃料電池層に対しアノード集電体37から1つのアノード電流取出部38が形成され、カソード集電体27から2つのカソード電流取出部28が設けられたものを用いることが好ましい。
(ii)隣接する3層の燃料電池層を直列接続する方法
図24は、本発明の燃料電池スタックの燃料電池層間を直列接続する方法を示す図である。図24(A)は、本発明に用いられる燃料電池スタックを真上から見た上面図であり、図24(B)は、図24(A)の燃料電池層のうちのカソード集電体貫通孔29とアノード集電体貫通孔39とを含む面で切断した断面図である。
図24に示される燃料電池スタックは、3層の燃料電池層と2層のスペーサ層を交互に積層させたものである。以下においては、説明の便宜上3層の燃料電池層のことを最下層から順に第1燃料電池層、第2燃料電池層、第3燃料電池層とそれぞれ称することとするが、これらの燃料電池層の性能を区別するものではない。
図24(B)に示されるように、第1燃料電池層のアノード電流取出部と、第2燃料電池層のカソードの電流取出部と、第3燃料電池層のアノード電流取出部とが一つの導線を通せるように積層し、第1燃料電池層のカノード電流取出部と、第2燃料電池層のアノード電流取出部と、第3燃料電池層のカソード電流取出部とにも同様に一つの導線が通せるように積層する。
そして、第1燃料電池層のアノード集電体貫通孔と、第2燃料電池層のカソード集電体貫通孔と、第3燃料電池層のアノード集電体貫通孔とに導線34を通した上で、導線34と、アノード集電体貫通孔およびカソード集電体貫通孔とを半田付けにより電気的に接続する。また、第1燃料電池層のカノード集電体貫通孔と、第2燃料電池層のアノード集電体貫通孔と、第3燃料電池層のカソード集電体貫通孔とにも導線24を通した上で、導線24と、アノード集電体貫通孔およびカソード集電体貫通孔とを半田付けにより電気的に接続する。このように2本の導線24,34を通すことにより3層の燃料電池層を直列接続することができる。なお、半田付けは、電気抵抗を低減するとともに、電気接合の接点が大きくならないという利点があり特に好ましく用いられる。
このような各燃料電池層の接続は、2層以上の燃料電池層を直列接続する場合に有効であり、2つの導線を通すだけで全ての燃料電池層を接続することができる。このため、たとえ燃料電池層が多い場合であっても複雑な配線になることなく、各燃料電池層を直列接続することができる。
なお、各燃料電池層の直列接続は、上記のような半田付けによる接続のみに限られるものではなく、たとえば導線にネジ山を設けた上で、当該ネジ山の部分をナット等で挟み込むようにアノード集電体貫通孔およびカソード集電体貫通孔に固定することにより接続してもよい。このように接続することにより、半田付けによる接続と対比して、アノード電流取出部およびカソード電流取出部の強度を向上させることができる。
(iii)同一の燃料電池層内の接続し、隣接する2層の燃料電池層の接続する方法
上記を踏まえ、同一の燃料電池層内の電気的な接続と、隣接する2層の燃料電池層の間の接続とをさらに説明する。
アノード集電体37は、その厚み方向に貫通するアノード集電体貫通孔39を備え、カソード集電体27は、その厚み方向に貫通するカソード集電体貫通孔29を備え、アノード集電体貫通孔と、カソード集電体貫通孔とは、同一の燃料電池層において燃料電池層の積層方向に異なる位置に設けることが好ましい。
また、アノード集電体37は、その側面から外方に向けて突出させたアノード電流取出部38を含み、アノード電流取出部38は、アノード集電体37を厚み方向に貫通するアノード集電体貫通孔39を備え、カソード集電体27は、その側面から外方に向けて突出させたカソード電流取出部28を含み、カソード電流取出部28は、カソード集電体27を厚み方向に貫通するカソード集電体貫通孔29を備え、アノード集電体貫通孔39と、カソード集電体貫通孔29とは、同一の燃料電池層において燃料電池層の積層方向に異なる位置に設けることが好ましい。
そして、隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔29と、他方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔39とは、燃料電池層の積層方向に実質的に同一の位置に設け、上記の一方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔39と、上記の他方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔29とは、燃料電池層の積層方向に実質的に同一の位置に設けられることがより好ましい。
なお、上記において、カソード集電体貫通孔29およびアノード集電体貫通孔39を「燃料電池層の積層方向に実質的に同一の位置に設ける」とは、必ずしもカソード集電体貫通孔29およびアノード集電体貫通孔39を燃料電池層の積層方向の上下に完全に一致する位置に設ける場合のみに限られるものではなく、多少その位置が異なる(ずれた)ものであっても、導線を通すことができる程度に異なる(ずれた)位置の範囲内にある限り、本発明の範囲を逸脱するものではないことを意味するものである。
このような位置関係にアノード集電体37およびカソード集電体27を配置することにより、各燃料電池層のアノード集電体37およびカソード集電体27の電気的な接続を容易にすることができる。
図24に示される燃料電池スタックのように、3層の燃料電池層からなる燃料電池スタックの場合、開回路電圧が1.8V程度であり、発電時の取り出し電圧が0.6〜1.2V程度となる。
なお、上記においては、カソード集電体27にカソード集電体貫通孔29を設け、かつアノード集電体37にアノード集電体貫通孔39を設ける場合を説明したが、必ずしもこれらの貫通孔を設ける必要はなく、隣接する燃料電池層のアノード電流取出部とカソード電流取出部が積層方向に実質的に同一の位置に設けられることにより、本発明の複合単位電池を用いた燃料電池スタックにおいて集電を簡略化することができる。すなわちたとえば、隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のアノード集電体のアノード電流取出部の端部に半田を用いて導線を接合するとともに、該導電の他端を、他方の燃料電池層のカソード電流取出部の端部に半田で接合してもよい。このように接続しても、貫通孔を設ける場合と同様に燃料電池スタックの発電時の取り出し電圧を高めることができることは言うまでもない。
要するに、隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のアノード集電体と、他方の燃料電池層のカソード集電体とは、半田を介して導線により接続される限り、各単位電池で発電する電力を集電することを妨げるものではない。ただし、半田による接合前の上記の導線の仮固定や、燃料電池層の位置ズレを防止するという観点、電気接続の接点における強度を向上させるという観点からは、アノード集電体貫通孔およびカソード集電体貫通孔を設けることが好ましい。
<不導体部>
本発明において、導線24,34に設けられる不導体部51は、各燃料電池層の間でショートが発生することを避けるために設けられるものである。すなわち、導線が不導体部51を有さない場合、隣接する燃料電池層のカソード集電体同士およびアノード集電体同士の両方が電気的に接続されることとなり、燃料電池層の間でショートが発生することとなる。
隣接する2層の燃料電池層の電気的な接続をもとに、不導体部をどの位置に設けるのが好ましいかを説明すると、隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔と、他方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔とが、導線により接続され、上記の一方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔と、上記の他方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔とが、不導体部を有する導線により接続され、当該不導体部は、一方の燃料電池層のカソード集電体と、他方の燃料電池層のアノード集電体とを電気的に絶縁する位置に導線に設けることが好ましい。
このような不導体部51は、たとえば導線と導線とを樹脂で接着することにより、当該樹脂の部分を不導体部として設けてもよい。なお、導線内に不導体部51を設ける場合のみに限られるものではなく、たとえば隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のアノード集電体と他方の燃料電池層のカソード集電体との間の導線を物理的に切断することにより、一方の燃料電池層のアノード集電体と他方の燃料電池層のカソード集電体との間を絶縁してもよい。
このように、一方の燃料電池層のアノード集電体と他方の燃料電池層のカソード集電体との間の導線を物理的に切断することにより、上述のように不導体部を設けることなく、隣接する2層の燃料電池層のうちの一方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔と、他方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔とは、導線により接続され、上記の一方の燃料電池層に含まれる2のカソード集電体貫通孔同士は、導線により接続された状態にすることができる。
図24(B)に示される燃料電池スタックを用いて、不導体部51をどの位置に設けることが適切かを具体的に説明する。まず、第1燃料電池層のカソード集電体と、第2燃料電池層のアノード集電体とが電気的に接続されることにより直列接続されるため、第1燃料電池層のアノード集電体と、第2燃料電池層のカソード集電体とが電気的に繋がっていてはショートを引き起こしてしまう。このため、第1燃料電池層のアノード集電体と、第2燃料電池層のカソード集電体との間には不導体部51を設ける必要がある。
これと同様に、第2燃料電池層のカソード集電体と第3燃料電池層のアノード集電体とが電気的に接続されることにより直列接続されるため、第2燃料電池層のアノード集電体と第3燃料電池層のカソード集電体とが電気的に繋がっていてはショートを引き起こしてしまう。このため、第2燃料電池層のアノード集電体と、第3燃料電池層のカソード集電体との間には不導体部を設ける必要がある。
以上を踏まえて不導体部を設ける位置を一般化すると、第n燃料電池層のアノード集電体と、第(n+1)燃料電池層のカソード集電体との間に不導体部51を設ける必要がある(ただし、nは1以上の整数とする)。
また、本発明の燃料電池スタックに用いられる集電方法は、配線が複雑化しやすい複合単位電池を有する燃料電池層を備える場合に特に有効であるが、この集電方法は片面単位電池構造の燃料電池層を備える燃料電池スタックにも適用することができる。片面単位電池構造の燃料電池層により構成される燃料電池スタックに、この集電方法を採用する場合、アノード電流取出部とカソード電流取出部とをそれぞれ別の場所に設ける必要はなく、1本の導線で接続することができる。
たとえば、片面単位電池構造の燃料電池層を2層積層する場合、最下層から順に第1燃料電池層のアノード集電体、第1燃料電池層のカソード集電体、第2燃料電池層のアノード集電体、第2燃料電池層のカソード集電体となるため、アノード電流取出部とカソード取出部を別の場所に設けなくとも、これらの積層順に何かの手段で電気的に接続することにより直列接続することができる。
<(4)電子機器>
本発明の燃料電池スタックは、電子機器であればどのようなものにも適用することができるが、電子機器の中でも特にモバイル機器等に適用することが好ましい。このような電子機器としては、たとえば携帯電子機器、電子手帳、ポータブルゲーム機器、モバイルテレビ機器、ハンディーターミナル、携帯情報端末(PDA:Personal Digital assistant)、モバイルDVDプレーヤ、ノートパソコン、ビデオ機器、カメラ機器、ユビキタス機器またはモバイル発電機等を挙げることができる。
以下に、図25〜24を参照しつつ、本発明の燃料電池スタックを搭載した電子機器を実施の形態I〜IIIにより説明する。
(実施の形態I)
図25は、本実施の形態における燃料電池スタックを備えた電子機器の好ましい一例を示す図である。図25(A)は、本実施の形態の燃料電池スタックを備える電子機器の一面を示す概略断面図であり、図25(B)は、図25(A)で表される電子機器のうち燃料電池スタックを拡大した断面図であり、図25(C)は、図25(B)で表される燃料電池スタックのうちの燃料電池層の構成を拡大して示す概略断面図である。
本実施の形態の電子機器70に用いられる燃料電池スタック1は、取り出し電圧が1〜4V程度になるように、燃料電池層とスペーサ層とが交互に各3層ずつ積層され、電気的に直列接続したものを用いている。
図25(A)に示される電子機器70において、電子機器70の情報表示部71と接する面とは反対側の面に接して燃料電池スタック1が搭載される。本実施の形態の電子機器70に用いられる燃料電池スタック1は、それを構成する層のうちのスペーサ層が、電子機器70と接するように配置されており、当該スペーサ層上に燃料電池層とスペーサ層とが交互に各3層ずつ積層された構造となる。
このようにスペーサ層が電子機器70と接するように、電子機器内に燃料電池スタック1を配置することにより、電子機器70と燃料電池スタック1との間に空間を設けることなく単位電池のカソード極に、効率的に空気を供給することができる。
図25には示されていないが、本実施の形態の燃料電池スタック1の他に携帯電話機器の始動時の出力不足および最大出力時の出力不足をカバーするための補助電源として、Liイオン電池等のような二次電池を設けてもよい。当該二次電池と燃料電池スタックとの電圧特性が異なる場合は、電子機器70に適した電圧に変換するDC/DCコンバータ等のようなコンバータを設けることが好ましい。
また、補助電源としてキャパシタを設けることにより燃料電池スタック1とキャパシタとのハイブリッド化をすることもできる。補助電源としてキャパシタを用いる場合、燃料電池スタック1の電圧変化に対応してキャパシタの充放電がされるため、電圧調整のためのコンバータを設けなくてもよい。
また、電子機器70には、燃料電池スタック1の燃料流路41に燃料を供給するためのポンプまたはファン等の補器を備えてもよく、当該補器を駆動するためのドライバー回路を備えてもよい。また、電子機器70には、ある一定量の燃料を保有することができる燃料カートリッジを備えていてもよい。
(実施の形態II)
図26は、本実施の形態における燃料電池スタックを備えた電子機器の好ましい一例を示す図である。図26(A)は、本実施の形態の燃料電池スタックを備える電子機器の一面を示す概略断面図であり、図26(B)は、図26(A)で表される電子機器のうち燃料電池スタックを拡大して示す断面図であり、図26(C)は、図26(B)で表される燃料電池スタックのうちの燃料電池層の構成を拡大して示す概略断面図である。
本実施の形態の電子機器に用いられる燃料電池スタック1は、3層の燃料電池層と2層のスペーサ層とを交互に積層したものであり、3層の燃料電池層のうちの電子機器70と接する燃料電池層のみが片面単位電池構造の単位電池10aにより構成され、それ以外の2層の燃料電池層100は、複合単位電池10により構成されたものである。
このように電子機器と接する燃料電池層のみを片面単位電池の単位電池10aにより構成することにより、燃料電池スタック1のうち、電子機器70と接する面にスペーサ20を設ける必要がなくなり薄型化することができる。
(実施の形態III)
図27は、本実施の形態における燃料電池スタックを備えた電子機器の好ましい一例を示す図である。図27(A)は、本実施の形態の燃料電池スタックを備える電子機器の一面を示す概略断面図であり、図27(B)は、図27(A)で表される電子機器のうち燃料電池スタックを拡大して示す断面図であり、図27(C)は、図27(B)で表される燃料電池スタックのうちの燃料電池層の構成を拡大して示す概略断面図である。
本実施の形態の電子機器70は、燃料電池スタック1を内部に組み込んでいることを特徴とする。このように燃料電池スタックが電子機器70の内部に組み込まれていることにより、燃料電池スタックの上面および下面は電子機器70と接しており、燃料電池スタックの側面のみが外部空気と接触することとなる。このため本実施の形態の電子機器は、実施の形態IおよびIIの電子機器と対比して、燃料電池スタックに空気を供給しにくい構造となっている。
しかしながら、本実施の形態の電子機器に用いられる燃料電池スタック1のように、3層の燃料電池層と2層のスペーサ層とを交互に積層し、当該燃料電池層のうちの電子機器70と接しない燃料電池層のみが複合単位電池10により構成され、それ以外の電子機器70と接する燃料電池層は2層とも、単位電池10aにより構成されるものを適用することにより、燃料電池スタック1を電子機器70の内部に完全に組み込んでも各単位電池50のカソード極に空気を供給することができる。
また、このような構造の燃料電池スタックは、3次元的に連通した構造のものを採用していることから、各単位電池のカソード極にも安定して酸素を供給することができる。
このような構造の燃料電池スタックを採用することにより、ユーザーが電子機器70を使用する向きにより、燃料電池スタック1への空気供給が変わるということがない。このことから、Liイオン電池のような2次電池等と同様に、電子機器を用いる方向を意識することなく電子機器を用いることができる。
図25〜24に示される燃料電池スタックはいずれも、従来のように大面積を有する複合単位電池とは異なり、電子機器と直接接するように配置しても複合単位電池を構成する各単位電池のカソード極に酸素を供給することができる。このため、本実施の形態の燃料電池スタックは、電子機器の中でのいかなる場所にも配置することができ、電子機器に配置する上での自由度が高い。しかも、電子機器と燃料電池スタックとの間に空間を設ける必要がないことから、支持体を備える必要がなく、燃料電池スタックの外部からの圧力に対する強度を高めることもできるとともに、電子機器そのものを小型化することができる。これらの効果により電子機器を用いるユーザーの利便性を高めることもできる。
以下においては、実施例を挙げて本発明の燃料電池スタックの好ましい作製工程を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図28は、実施例1で作製された燃料電池スタックを示しており、図28(A)は、その上面図であり、図28(B)は、その断面図である。実施例1では、図28(B)に示されるように、燃料電池層100を2層配置し、その2層の燃料電池層間に、1層のスペーサ層200を有する構造のものを作製した。なお、当該燃料電池層100は、5つの複合単位電池が隙間を設けて配置してなるものであり、スペーサ層200は5つのスペーサ20が隙間を設けて配置してなるものである。
本実施例は、次のような手順で燃料電池スタックを作製した。
(1)まず、アノード導電性多孔質層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層、カソード導電性多孔質層の順に積層したものをホットプレスすることにより一体化した(一体化して得られたものを以下においては「単位電池」とも称する)。
(2)次に、燃料流路形成材の表裏の両面に接着剤を塗布し、当該接着剤を介して燃料透過抑制層を各1層ずつ貼り合わせることにより、流路含有積層物を得た。
(3)次に、アノード集電体に接着剤を塗布し、(2)で得られた流路含有積層物の表裏の燃料透過抑制層のそれぞれに、当該接着剤を介してアノード集電体を貼り合わせることにより、アノード集電体積層体を得た。
(4)燃料電池層を構成する各層を(カソード集電体、単位電池、アノード集電体積層体、単位電池、およびカソード集電体をこの順に)配置し、これらを一体化して燃料電池層を作製した。
(5)上記のようにして得られた燃料電池層を2層準備し、これらの2層の燃料電池層の間にスペーサ層を形成することにより、燃料電池スタックを作製した。
(6)上記の燃料電池スタックを構成する2層の燃料電池層を直列接続した。
以下にこれらの各工程を具体的に説明する。
<(1)単位電池の作製>
まず、燃料電池スタック1を構成する単位電池に用いられる電解質膜として、幅24mm×長さ24mm、厚さが約125μmの電解質膜(商品名:Nafion(登録商標)115(デュポン株式会社製))を用意した。
次に、アノード触媒ペーストとしては、Pt担持量が32.5質量%でありRu担持量が16.9質量%であるPtおよびRuからなる粒子とカーボン粒子とからなる触媒担持カーボン粒子(商品名:TEC66E50(田中貴金属工業株式会社製))と、20質量%のNafion(登録商標)を含むアルコール溶液(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)と、イオン交換水と、イソプロパノールと、ジルコニアビーズとを所定の割合でPTFE製の容器に入れ、攪拌脱泡機を用いて50rpmで50分間の混合を行なった後に、ジルコニアビーズを除去したものを用いた。
また、カソード触媒ペーストとしては、Pt担持量が46.8質量%のPt粒子およびカーボン粒子からなる触媒担持カーボン粒子(商品名:TEC10E50E(田中貴金属工業株式会社製))を用いたこと以外はアノード触媒ペーストと同様の方法により作製したものを用いた。
そして、アノード導電性多孔質層として、外形が幅23mm×長さ24mmで、片面にフッ素系の樹脂と炭素粒子からなる層で撥水処理されたカーボンペーパー(商品名:GDL25AC(SGLカーボンジャパン株式会社製))を用いた。このカーボンペーパーを親水化するために、カーボンペーパーを69%の硝酸に入れた上で煮沸処理を行なった。
このように親水化処理を行なうことにより、メタノールのアノード導電性多孔質層に対する接触角は小さくなるため、発電時においてアノード導電性多孔質層にメタノールを保持することができる。これにより外部雰囲気から空気が混入することを防止することができ、電池としての発電特性を向上させることができる。
一方、メタノールのアノード導電性多孔質層に対する接触角が小さくなることから、アノード導電性多孔質層に二酸化炭素等の生成ガスによる気泡が保持されにくく、生成ガスを端面から排出することができる。このような表面張力の差を利用することにより、メタノールと生成ガスとを分離することができる。
上記のように親水化処理した後に、当該アノード導電性多孔質層の撥水処理が施されている面上に、上記で作製したアノード触媒ペーストをバーコータで塗布した後に、乾燥させることにより約40μm厚のアノード触媒層を形成した。なお、ここで形成したアノード触媒層は特別な親水化処理は行っていないが親水性が高く、アノード導電性多孔質層と同様にメタノールを触媒層に保持することができる。
また、カソード導電性多孔質層も上記と同様のカーボンペーパーを用い、当該カソード導電性多孔質層の撥水処理が施されている面上に、上記で作製したカソード触媒ペーストをバーコータで塗布した後に、乾燥させることにより約40μm厚のカソード触媒層を形成した。
次に、アノード導電性多孔質層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層、およびカソード導電性多孔質層をこの順で重ね合わせたものをステンレス板で挟んだ。そして、当該ステンレス板を130℃に昇温して、ステンレス板の厚み方向に10kgf/cm2で2分間熱圧着し、上述の各層を一体化することにより単位電池を得た。そして、当該単位電池を23mm×2.35mmの大きさに切断することにより、10本の単位電池を得た。
<(2)燃料流路形成材と燃料透過抑制層との接着>
図29は、燃料電池層を作製するために用いた各部材の上方図であり、図29(A)は燃料流路形成材の形状を示す上方図であり、図29(B)はアノード集電体の形状を示す上方図であり、図29(C)はカソード集電体の形状を示す上方図である。
本実施例で用いられる燃料流路形成材40は、図29(A)に示されるように、全体の幅の長さL3が16.5mmであり、縦の長さL4が37mm(燃料流路入口42を含む)であり、その厚さは200μmであった。当該燃料流路形成材40は、その厚み方向への隙間孔48(幅の長さL91.0mm×縦の長さL525mm)が4つ形成されているものを用いた。
この燃料流路形成材40は、この隙間孔48以外の部分には燃料流路形成材40の細く伸びた部位(図29(A)の点線で囲まれた部分のことを意味する。以下においてはこの部分のことを単に「延伸部」とも称する)が5本残り、当該延伸部の幅(すなわち後の工程により「単位電池の幅」ともなる)の長さL2はいずれも2.5mmであった。
また、燃料流路形成材40には燃料流路41が蛇型に形成されており、当該燃料流路41は燃料流路41の幅の長さL1が1.5mmであった。このことから、燃料流路形成材40の延伸部の幅(すなわち単位電池の幅)の長さL2に対する燃料流路41の幅の長さL1の関係L1/L2は、0.6である。
また、延伸部の燃料流路41は厚み方向に貫通しているが、延伸部以外の部位(燃料流路入口42と、蛇型流路のコーナー部)の燃料流路41は、燃料流路形成材40の表裏から深さが80μmの溝が形成されており、断面がH型で厚み方向に貫通していない。このように燃料流路形成材40が厚み方向に貫通していない部分を有することにより、燃料流路形成材40が2つの部材に分離してしまうことを防ぐことができるとともに、その形状を維持することができる。
上記のような燃料流路形成材40の表裏の両面に燃料透過抑制層を接着した。すなわち、上記の燃料流路形成材40のうち、燃料流路41が形成されていない部分に、バーコータを用いて熱硬化性の変性ポリオレフィン系樹脂からなる接着剤(商品名:アロンメルトPPET−1600(東亞合成株式会社製))を塗布し、当該接着剤上に、燃料流路41を覆うようにフッ化炭素樹脂製の燃料透過抑制層(商品名:ポリビニリデンフロライド製メンブレンフィルター(日本ミリポア製))を接着した。当該燃料透過抑制層は、燃料流路形成材40と同じ大きさであり、燃料流路形成材に形成された隙間孔48と同じ位置に幅の長さが1.0mmであって、縦の長さが25mmであり、厚み方向に貫通した隙間孔が4つ形成されたものである。同様の方法により、燃料流路41の反対側の面にも燃料透過抑制層を接着し、燃料流路形成材の表裏をそれぞれ各1層ずつ合計2層の燃料透過抑制層で挟んだ構造のもの(以下においては、「流路含有積層物」とも称する)を作製した。
<(3)流路含有積層物とアノード集電体との接着>
本実施例で用いられるアノード集電体37は、燃料流路形成材と同様にステンレス製であり、耐腐食性を向上させるため、および電気抵抗を低減するために金メッキしたものを用いた。図29(B)に示されるように、大きさは燃料流路形成材と同様であり、幅の長さ16.5mm、縦の長さ31mmであり、厚さは100μmである。このようなアノード集電体37は、燃料流路形成材と同様に幅の長さが1.0mmであって、縦の長さが25mmであり、厚み方向に貫通した隙間孔が4つ形成されたものである。
このアノード集電体37は、その延伸部(縦方向長さL5は23mm)には、燃料を単位電池に供給するために口径0.5mmφのアノード孔33が複数形成されているとともに、0.5mm幅のアノード孔33が形成されていない部分(以下においては単に「土手部分72」とも称する)を有している。また、アノード集電体37は、アノード電流取出部38を伸ばして設けられており、当該アノード電流取出部38には、1mmΦのアノード集電体貫通孔39を有している。
上記のようなアノード集電体37の上述の土手部分72と、アノード集電体37の延伸部とアノード電流取出部38とを除く部位73に、バーコータを用いて熱硬化性の変性ポリオレフィン系樹脂からなる接着剤(商品名:アロンメルトPPET−1600(東亞合成株式会社製))を塗布し、燃料流路形成材40に形成された隙間孔48と、アノード集電体37に形成された隙間孔とが一致するように配置した。そして、上記の接着剤を介して、(2)で得られた流路含有積層物の、燃料透過抑制層の燃料流路形成材40に対向する面とは反対側の面に各1つずつ、合計2つのアノード集電体37を接着した(ここで得られた積層物のことを以下においては、単に「アノード集電体積層物」とも称する)。
<(4)燃料電池層を構成する各層の積層>
本実施例で用いられるカソード集電体27は、燃料流路形成材と同様にステンレス製であり、耐腐食性を向上させるため、および電気抵抗を低減するために金メッキしたものを用いた。図29(C)に示されるように、燃料流路形成材と同様の大きさで幅の長さが16.5mmであり、縦の長さが31mmであり、厚さが100μmのものを用いた。当該カソード集電体27は、燃料流路形成材と同様に幅の長さが1.0mm、縦の長さが25mmの厚み方向への隙間孔が形成されたものを用いた。
このカソード集電体27は、空気を単位電池に供給するための口径0.5mmφの複数のカソード孔23がカソード集電体27の延伸部(延伸部の縦の長さは23mm)に形成されている。また、カソード集電体27には、アノード集電体37のアノード電流取出部38とは異なる部位にカソード電流取出部28が伸びて設けられており、当該カソード電流取出部28にはアノード集電体37と同様に、1mmΦのカソード集電体貫通孔29を有する。
上記のようなカソード集電体27を用いて、カソード集電体27、単位電池、アノード集電体積層物、単位電池、およびカソード集電体27の順に配置した。すなわち、カソード集電体の5本の延伸部上に、(1)で得られた単位電池を各1本ずつ合計5本配置し、当該5本の単位電池上に(3)で得られたアノード集電体積層物を、カソード集電体の隙間孔とアノード集電体の隙間孔とが重なるように配置した。そして、アノード集電体積層物上のアノード集電体の5本の延伸部上に(1)で得られた単位電池を各1本ずつ合計5本配置し、その後当該単位電池上にさらにカソード集電体27を配置した。
このように燃料流路に対して両方の面に単位電池を配置する複合単位電池を形成するときは、燃料流路41に対して片方の面に5本ずつ、燃料流路41の両面に合計10本の単位電池を配置する必要がある。
次に、上記のように配置したものをステンレス板で挟み、ステンレス板の厚み方向に130℃の温度で、10kgf/cm2で2分間熱圧着し、上記で得られた積層体を一体化することにより燃料電池層を形成した。アノード集電体とアノード導電性多孔質層との界面の接着、およびカソード集電体とカソード導電性多孔質層との界面の接着はいずれもアンカー効果により接合された。このようにして作製された燃料電池層100の厚さは1.3mm程度であった。
<(5)燃料電池スタックの作製>
図28に示されるように、燃料電池層100、スペーサ層200、燃料電池層100の順になるよう各層を配置した。ここで、スペーサ層200に用いられるスペーサ20としては、幅の長さ3.0mm、縦の長さ17.0mmの親水性の多孔質体(商品名:オイコスAP1200(日清紡株式会社製))を用い、それぞれ2.0mmの隙間を設けて5個のスペーサ20を配置することによりスペーサ層200を形成した。
また、隣接する2層の燃料電池層100において、一方の燃料電池層100のアノード集電体37のアノード電流取出部38と、他方の燃料電池層100のカソード集電体27のカソード電流取出部28とが積層方向に重なるように互いに配置して、燃料電池スタックを作製した。当該燃料電池スタックの全体の厚みは約3.5mmであった。また、燃料電池スタック内の発電部の面積の総和は(以下においては「発電部面積」とも称する)は10.8cm2となった。
<(6)燃料電池層の直列接続>
次に、上記で得られた燃料電池スタックを構成する2層の燃料電池層100の直列接続について説明する。燃料電池層100を構成するアノード集電体37のアノード電流取出部38に設けられたアノード集電体貫通孔39と、カソード集電体27のカソード電流取出部28に設けられたカソード集電体貫通孔29とに、不導体部51を設けた口径1.0mmΦの金線からなる導線34を挿入した。
この不導体部51を設けた導線34は、図28(B)に示されるように、2本の金線をエポキシ系樹脂の接着剤で接着することにより2本の金線が絶縁されている。導線34とカソード集電体27およびアノード集電体37とは半田付けを行なうことにより電気的に接続した。
一方、燃料電池層を構成するカソード集電体27のカソード電流取出部28に設けられたカソード集電体貫通孔29および燃料電池層を構成するアノード集電体37のアノード電流取出部38に設けられたアノード集電体貫通孔39にも導線24を挿入した。この導線は上記のような不導体部51を設ける必要がないため、1本の導線24を用いて接続した。導線24とカソード集電体27およびアノード集電体37とは半田付けを行なうことにより電気的に接続した。以上の工程により、本発明の燃料電池スタックを構成する燃料電池層を電気的に接続した。
実施例1の燃料電池スタックの出力特性と、体積出力密度とを測定した。ここで、これらの特性を測定するための条件としては、燃料電池スタックに対し、燃料流路の燃料供給口と燃料ポンプとの間、燃料ポンプと燃料カートリッジとの間をシリコンチューブにより接続した。そして、当該燃料ポンプを用いて燃料電池層1層の燃料流路に対し、0.1ml/minの流速で、濃度が5mol/dm3のメタノール水溶液の燃料を供給した。この燃料電池スタックに空気ファンは備えておらず、燃料電池スタックを用いる測定雰囲気の温度は室温であった。
このような条件の下で、燃料電池スタックの出力特性は、充放電電源ユニット(製品名:PFX2011(菊水電子工業株式会社製))を用いて測定した。
図30(A)は、実施例1で作製された燃料電池スタックに対し、電流―電位曲線を測定した結果を示すグラフであり、図30(A)の縦軸は、燃料電池スタックからの出力電圧(単位は[V])の値を表しており、横軸は、燃料電池スタックから流れる電流(単位は[A])を表している。
図30(A)に示されるように、この燃料電池スタックの開回路電圧(電流0Aのときの電圧)は約1.2Vであり、1.5Aの電流を流した際の出力電圧は0.4Vであった。このことから燃料電池スタックとしては約0.60Wの出力を得ることができることが明らかとなった。
図30(B)は、実施例1で作製された燃料電池スタックに対し、体積出力密度を測定して得られた結果を示すグラフである。図30(B)の縦軸は、燃料電池スタックの出力を燃料電池スタックの体積(以下においては「発電部体積」とも称する)で割って得られた値(単位は[W/cm3])を表しており、横軸は、燃料電池スタックから流れる電流(単位は[A])を表している。
本実施例の燃料電池スタックの発電部体積は、1.3cm3(幅16.5mm×縦方向長さ23mm×厚み3.5mm)であったことから、最大の出力密度は約0.45W/cm3(約0.44V時に最大の出力密度)となった。この最大の出力密度は、従来の燃料電池スタックの出力密度の最大値である約0.30W/cm3の約1.5倍の出力密度にあたり、極めて優れたものである。
このように燃料電池スタックの出力密度を向上することができたのは、燃料電池スタックを構成する燃料電池層として、複合単位電池を隙間を設けて配置したものを用いたことによるものと考えられる。これにより、単位体積あたりの発電部面積の増大を可能とし、また空気供給も良好であったことから、出力密度向上を達成できたものと考えられる。
図31は、本実施例の燃料電池スタックを備えた電子機器の好ましい一例を示す図である。図31(A)は、本発明の燃料電池スタックを備える電子機器を示す概略断面図であり、図31(B)は、図31(A)で表される電子機器のうち燃料電池スタックを拡大して示す断面図であり、図31(C)は、図31(B)で表される燃料電池スタックのうちの燃料電池層の構成を拡大して示す概略断面図である。
実施例1で作製した燃料電池スタックを電子機器の電源として搭載するために、図31に示されるように燃料電池スタックの最下層にさらにスペーサ層を加えることにより、スペーサ層、燃料電池層、スペーサ層、燃料電池層の順に、燃料電池層とスペーサ層とを各2層ずつ合計4層積層した燃料電池スタックにした。
そして、電子機器の始動時の出力、および電子機器の駆動時の最大出力をカバーするための補助電源としてLiイオン電池と、電子機器に適した電圧に変換するDC/DCコンバータと、メタノール水溶液を保有した燃料カートリッジと、燃料ポンプと、上記の燃料電池スタックとを有した燃料電池システム80を、図31に示されるように、電子機器の情報表示部71の面とは反対の面に搭載した。
上記で作製した燃料電池スタックを搭載する電子機器としては、電子辞書(型番:PW−TC930(シャープ株式会社製))を用いた。この電子辞書は待機時に0.4W程度消費するが、補助電源を用いることなく本発明の燃料電池スタックの電力のみで少なくとも1時間動作した。
実施例2では、実施例1の燃料電池スタックを構成する2層の燃料電池層のうち、1層の燃料電池層を大面積単位電池からなるものにした燃料電池スタックを作製した。すなわち、各複合単位電池の間に隙間を設けた燃料電池層1層と、大面積単位電池による燃料電池層1層とを配置し、その2層の燃料電池層間に隙間を設けてスペーサを配置してなるスペーサ層を有する構造の燃料電池スタックを作製した。
複合単位電池の間に隙間を設けた燃料電池層は実施例1と同様の方法により作製した。もう一方の燃料電池層を構成する大面積単位電池は、複合単位電池と同様の工程により作製することができるが、必要となる部材の形状等の点で一部異なる。
<(1)単位電池の作製>
以下においては、実施例1の燃料電池スタックの製造方法を説明した順序を踏襲して、実施例2の燃料電池スタックに用いられる大面積単位電池の作製方法を説明する。実施例1と同様にアノード導電性多孔質層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層、およびカソード導電性多孔質層をこの順で重ね合わせたものをステンレス板で挟んで、これらの各構成部材の単位電池を得た。実施例2では大面積単位電池を得るために、上記の単位電池を23mm×16.3mmの大きさに切断することにより、大面積単位電池を1つ取り出した。
<(2)燃料流路形成材と燃料透過抑制層との接着>
図32は、本実施例の燃料電池スタックを構成する燃料電池層を作製するために用いた各部材の上方図であり、図32(A)は燃料流路形成材の形状を示す上面図であり、図32(B)はアノード集電体の形状を示す上面図であり、図32(C)はカソード集電体の形状を示す上面図である。
本実施例で用いられる燃料流路形成材40は、図32(A)に示されるように、全体の幅の長さL3が16.5mmであり、縦の長さL4が37mm(燃料流路入口42を含む)であり、その厚さは200μmであった。当該燃料流路形成材40には、溝深さが100μmの燃料流路41を形成した。図32(A)に示される燃料流路形成材に形成される燃料流路1本の幅L1は1.0mmであり、燃料流路形成材40の幅長さとの比は0.85であった。
上記のような燃料流路形成材40の表裏の両面のうち、燃料流路41が形成されている面側に燃料透過抑制層を接着した。すなわち、上記の燃料流路形成材40の燃料流路が形成されている面側の燃料流路が形成されていない部分に、バーコータを用いて熱硬化性の変性ポリオレフィン系樹脂からなる接着剤(商品名:アロンメルトPPET−1600(東亞合成株式会社製))を塗布し、当該接着剤上に、燃料流路41を覆うようにフッ化炭素樹脂製の燃料透過抑制層(商品名:ポリビニリデンフロライド製メンブレンフィルター(日本ミリポア製))を接着した。この燃料透過抑制層は、燃料流路形成材40と同じ大きさである。燃料流路形成材40と、燃料透過抑制層との積層物(以下においては、「流路含有積層物」とも称する)を作製した。
<(3)流路含有積層物とアノード集電体との接着>
本実施例で用いられるアノード集電体37は、燃料流路形成材と同様にステンレス製であり、耐腐食性を向上させるためおよび電気抵抗を低減するために金メッキしたものを用いた。図32(B)に示されるように、大きさは燃料流路形成材と同様であり、幅の長さ16.5mm、縦の長さ31mmであり、厚さは100μmである。
このアノード集電体37には、燃料を単位電池に供給するための口径0.5mmφのアノード孔33が複数形成されているとともに、0.5mm幅のアノード孔33が形成されていない部分(以下においては単に「土手部分72」とも称する)を有している。なお、当該土手部分72の縦の長さL5は23mmである。また、アノード集電体37は、アノード電流取出部38が伸ばされて設けられており、当該アノード電流取出部38には、1mmΦのアノード集電体貫通孔39を有している。
図32(B)に示されるアノード集電体37の上述の土手部分72と、アノード集電体37のアノード孔33が形成されていない部分でアノード電流取出部38を除く部位73に、バーコータを用いて熱硬化性の変性ポリオレフィン系樹脂からなる接着剤(商品名:アロンメルトPPET−1600(東亞合成株式会社製))を塗布した。上記の接着剤を介して、(2)で得られた流路含有積層物の、燃料透過抑制層の燃料流路形成材40に対向する面とは反対側の面に、アノード集電体37を接着した(ここで得られた積層物のことを以下においては、単に「アノード集電体積層物」とも称する)。
<(4)燃料電池層を構成する各層の積層>
本実施例で用いられるカソード集電体27は、燃料流路形成材と同様にステンレス製であり、耐腐食性を向上させるためおよび電気抵抗を低減するために金メッキしたものを用いた。図32(C)に示されるように、燃料流路形成材と同様の大きさで幅の長さが16.5mmであり、縦の長さが31mmであり、厚さが100μmのものを用いた。
このカソード集電体27は、空気を単位電池に供給するための口径0.5mmφの複数のカソード孔23が形成されている。なお、カソード孔23が形成されている部位の縦の長さは23mmである。また、カソード集電体27には、アノード集電体37のアノード電流取出部38とは異なる部位にカソード電流取出部28が設けられており、当該カソード電流取出部28にはアノード集電体37と同様に、1mmΦのカソード集電体貫通孔29を有する。
上記のようなカソード集電体27を用いて、カソード集電体27、大面積単位電池、アノード集電体積層物の順に配置した。すなわち、カソード集電体上に、(1)で得られた大面積単位電池を配置し、当該大面積単位電池上にアノード集電体積層物を配置した。
次に、上記のように配置したものをステンレス板で挟み、ステンレス板の厚み方向に130℃の温度で、10kgf/cm2で2分間熱圧着し、上記で得られた積層体を一体化することにより燃料電池層を形成した。アノード集電体とアノード導電性多孔質層との界面の接着、およびカソード集電体とカソード導電性多孔質層との界面の接着はいずれもアンカー効果により接合した。このようにして作製した燃料電池層100の厚さは0.7mm程度であった。
<(5)燃料電池スタックの作製>
次に、燃料電池スタックを構成する各層の最下層から順に、第1燃料電池層、スペーサ層、第2燃料電池層の順になるよう各層を配置した。ここで、第1燃料電池層には大面積単位電池による燃料電池層を、第2燃料電池層には5つの複合単位電池を隙間を設けて配置された燃料電池層を用いた。スペーサ層に用いられるスペーサは、実施例1と同様のものを用い、スペーサ層は、実施例1と同様の構成にした。
また、燃料電池スタックを構成する2層の燃料電池層において、第1燃料電池層のアノード集電体37のアノード電流取出部38と、第2燃料電池層のカソード集電体27のカソード電流取出部28とが積層方向に重なるように互いに配置するとともに、第1燃料電池層のカソード集電体27のカソード電流取出部28と、第2燃料電池層のアノード集電体37のアノード電流取出部38とが積層方向に重なるように互いに配置し、燃料電池スタックを作製した。当該燃料電池スタックの全体の厚みは約2.8mmであった。また、燃料電池スタックの発電部面積は、9.2cm2となった。
<(6)燃料電池層の直列接続>
本実施例により作製される燃料電池スタックにおいて、燃料電池層間の直列接続は実施例1と同様の方法により、2本の導線によって燃料電池層間を直列接続した。以上により本実施例の燃料電池スタックを構成する各燃料電池層を電気的に接続した。
実施例2の燃料電池スタックの出力特性と、体積出力密度とを測定した。ここで、これらの特性を測定するための条件としては、燃料電池スタックに対し、燃料流路の燃料供給口と燃料ポンプとの間、燃料ポンプと燃料カートリッジとの間をシリコンチューブにより接続した。そして、当該燃料ポンプを用いて燃料電池層1層の燃料流路に対し、0.1ml/minの流速で、濃度が5mol/dm3のメタノール水溶液の燃料を供給した。この燃料電池スタックに空気ファンは備えておらず、燃料電池スタックを用いる測定雰囲気の温度は室温であった。
なお、燃料電池スタックの出力特性は、実施例1と同様の測定機器を用いて測定した。
図33(A)は、実施例1で作製された燃料電池スタックに対し、電流―電位曲線を測定した結果を示すグラフであり、図33(A)の縦軸は、燃料電池スタックからの出力電圧(単位は[V])の値を表しており、横軸は、燃料電池スタックから流れる電流(単位は[A])を表している。
図33(A)に示されるように、この燃料電池スタックの開回路電圧は約1.5Vであり、0.95Aの電流を流した際の出力電圧は0.46Vであった。このことから燃料電池スタックとしては約0.43Wの出力を得ることができることが明らかとなった。
図33(B)は、実施例2で作製された燃料電池スタックに対し、体積出力密度を測定して得られた結果を示すグラフである。図33(B)の縦軸は、燃料電池スタックの出力を発電部体積で割って得られた値(単位は[W/cm3])を表しており、横軸は、燃料電池スタックから流れる電流(単位は[A])を表している。
本実施例の燃料電池スタックの発電部体積は、1.1cm3(幅16.5mm×縦方向長さ23mm×厚み2.8mm)であったことから、最大の出力密度は約0.40W/cm3(約0.46V時に最大の出力密度)となった。この最大の出力密度は、従来の燃料電池スタックの出力密度の最大値である約0.30W/cm3の約1.3倍の出力密度にあたり、極めて優れたものである。
このように燃料電池スタックの出力密度を向上することができたのは、燃料電池スタックを構成する燃料電池層のうちの少なくとも1層に、複合単位電池を隙間を設けて配置したものを用いたことによるものと考えられる。これにより単位体積あたりの発電部面積の増大を可能とし、また空気供給も良好であってことから、出力密度向上を達成できたものと考えられる。
図34は、本実施例の燃料電池スタックを備えた電子機器の好ましい一例を示す図である。図34(A)は、本発明の燃料電池スタックを備える電子機器を示す概略断面図であり、図34(B)は、図34(A)で表される電子機器のうち燃料電池スタックを拡大して示す断面図であり、図34(C)は、図34(B)で表される燃料電池スタックのうちの燃料電池層の構成を拡大して示す概略断面図である。
電子機器の始動時の出力、および電子機器の駆動時の最大出力をカバーするための補助電源としてLiイオン電池と、電子機器に適した電圧に変換するDC/DCコンバータと、メタノール水溶液を保有した燃料カートリッジと、燃料ポンプと、上記の燃料電池スタックとを有した燃料電池システム80を、図34に示されるように、電子機器の情報表示部71の面とは反対の面に搭載した。
上記で作製した燃料電池スタックを搭載する電子機器としては、電子辞書(型番:PW−TC930(シャープ株式会社製))を用いた。この電子辞書は待機時に0.4W程度消費するため、本発明の燃料電池スタックの電力により、少なくとも1時間動作することを確認した。
(比較例1)
比較例1では、燃料電池スタックを構成する3層の燃料電池層のうちの全ての燃料電池層において、燃料流路の片面にのみ単位電池を設けた構造のものを採用して作製した。すなわち、各単位電池の間に隙間を設けてなる燃料電池層3層と、各燃料電池層の間に隙間を設けてスペーサを配置してなるスペーサ層を有する構造の燃料電池スタックを作製した。なお、比較例1の燃料電池スタックに用いられる単位電池は、実施例のように燃料流路形成材とアノード集電体との間に燃料透過抑制層を設けることなく、燃料流路形成材とアノード集電体とを接着剤により直接接着した。
<(1)単位電池の作製>
以下においては、実施例1の燃料電池スタックの製造方法を説明した順序を踏襲して、比較例1の燃料電池スタックの作製方法を説明する。実施例1と同様にアノード導電性多孔質層、アノード触媒層、電解質膜、カソード触媒層、およびカソード導電性多孔質層をこの順で重ね合わせたものをステンレス板で挟んで、これらの各構成部材の単位電池を得た。
ただし、アノード導電性多孔質層には、片面にフッ素系の樹脂と炭素粒子からなる層で撥水処理されたカーボンペーパー(商品名:GDL25BC(SGLカーボンジャパン株式会社製))を用い、親水化処理は行なわなかった。これは、電池反応で生成する二酸化炭素をアノード導電性多孔質層の端面から排出するのではなく、燃料流路41を経由して排出するためである。比較例1では上記の単位電池を23mm×2.3mmの大きさに切断することにより、5本の単位電池を取り出した。
<(2)燃料流路形成材と燃料透過抑制層との接着>
図35は、本実施例の燃料電池スタックを構成する燃料電池層を作製するために用いた各部材の上方図であり、図35(A)は燃料流路形成材の形状を示す上方図であり、図35(B)はアノード集電体の形状を示す上方図であり、図35(C)はカソード集電体の形状を示す上方図である。
本実施例で用いられる燃料流路形成材40は、図35(A)に示されるように、全体の幅の長さL3が16.5mmであり、縦の長さL4が37mm(燃料流路入口42を含む)であり、その厚さは200μmであった。当該燃料流路形成材40には、溝深さが100μmであって幅の長さL1が1.5mmの燃料流路41を形成し、その厚み方向への隙間孔48(幅の長さL91.0mm×縦の長さL525mm)が4つ形成されているものを用いた。
この燃料流路形成材40は、この隙間孔48以外の部分には燃料流路形成材40の延伸部が5本残り、当該延伸部の幅(すなわち後の工程により「単位電池の幅」ともなる)の長さL2はいずれも2.5mmであった。このことから、燃料流路形成材40の延伸部の幅(すなわち単位電池の幅)の長さL2に対する燃料流路41の幅の長さL1の関係L1/L2は、0.6である。
<(3)燃料流路形成材とアノード集電体との接着>
本実施例で用いられるアノード集電体37は、燃料流路形成材と同様にステンレス製であり、耐腐食性を向上させるため、および電気抵抗を低減するために金メッキしたものを用いた。図35(B)に示されるように、大きさは燃料流路形成材と同様であり、幅の長さ16.5mm、縦の長さ31mmであり、厚さは100μmである。
このアノード集電体37は、図35(B)に示されるように、燃料を単位電池に供給するための口径0.5mmφのアノード孔33が複数形成されているとともに、0.5mm幅のアノード孔33が形成されていない部分(以下においては単に「土手部分」とも称する)を有している。なお、当該土手部分の縦の長さL5は23mmである。また、アノード集電体37は、アノード電流取出部38が伸ばされて設けられており、当該アノード電流取出部38には、1mmΦのアノード集電体貫通孔39を有している。
図35(A)に示される燃料流路形成材40の燃料流路41の形成されていない部分に、バーコータを用いてエポキシ系樹脂の接着剤を塗布し、燃料流路形成材40に形成された隙間孔48と、アノード集電体37に形成された隙間孔とが一致するように配置した。このようにして上記の接着剤を介して、燃料流路形成材40の表裏の両面のうちの燃料流路41が形成されている面側に、アノード集電体37を接着した(ここで得られた積層物のことを以下においては、単に「アノード集電体積層物」とも称する)。
<(4)燃料電池層を構成する各層の積層>
本実施例で用いられるカソード集電体27は、燃料流路形成材と同様にステンレス製であり、耐腐食性を向上させるためおよび電気抵抗を低減するために金メッキしたものを用いた。図35(C)に示されるように、燃料流路形成材と同様の大きさで幅の長さが16.5mmであり、縦の長さが31mmであり、厚さが100μmのものを用いた。当該カソード集電体27は、燃料流路形成材と同様に幅の長さが1.0mm、縦の長さが25mmの厚み方向への隙間孔が形成されたものを用いた。
このカソード集電体27は、空気を単位電池に供給するための口径0.5mmφの複数のカソード孔23がカソード集電体27の延伸部(延伸部の縦の長さは23mm)に形成されている。また、カソード集電体27には、アノード集電体37のアノード電流取出部38と重なるようにカソード電流取出部28が伸ばされて設けられている。
上記のようなカソード集電体27を用いて、カソード集電体27、単位電池、およびアノード集電体積層物の順に配置した。すなわち、カソード集電体の5本の延伸部上に、(1)で得られた単位電池を各1本ずつ合計5本配置し、当該5本の単位電池上に(3)で得られたアノード集電体積層物を、カソード集電体の隙間孔とアノード集電体の隙間孔とが重なるように配置した。
このように燃料流路の表裏の両面のうちの一方の面に単位電池を配置する燃料電池層を形成するときは、燃料流路41に対して片方の面に5本ずつの単位電池を配置する必要がある。
次に、上記のように配置したものをステンレス板で挟み、ステンレス板の厚み方向に130℃の温度で、10kgf/cm2で2分間熱圧着し、上記で得られた積層体を一体化することにより燃料電池層を形成した。アノード集電体とアノード導電性多孔質層との界面の接着、およびカソード集電体とカソード導電性多孔質層との界面の接着はいずれもアンカー効果により接合された。
次に、燃料電池層の延伸部に設けられた5本の単位電池の端面を熱硬化性のエポキシ樹脂(商品名:クイック5(コニシ株式会社製))で封止した。単位電池の端面を封止することにより、空気がアノード触媒層やアノード導電性多孔質層の端面より混入することを防止することができる。また反応で生成した二酸化炭素等の排ガスは、アノード導電性多孔質層の端面からではなく、燃料流路41から排出させる。このようにして作製された燃料電池層100の厚さは0.7mm程度であった。以上の工程により作製された燃料電池層を3層準備した。
<(5)燃料電池スタックの作製>
次に、燃料電池スタックを構成する各層の最下層から順に、第1燃料電池層、スペーサ層、第2燃料電池層、スペーサ層、および第3燃料電池層の順になるよう各層を配置した。ここで、第1燃料電池層、第2燃料電池層、および第3燃料電池層にはいずれも、5つの単位電池が隙間を設けて配置された燃料電池層を用いた。また、スペーサ層に用いられるスペーサは、実施例1と同様のものを用い、スペーサ層は、実施例1と同様の構成にした。
また、燃料電池スタックを構成する2層の燃料電池層において、第1燃料電池層のアノード集電体37のアノード電流取出部38と、第2燃料電池層のカソード集電体27のカソード電流取出部28、第3燃料電池層のアノード電流取出部38とが積層方向に重なるように互いに配置するとともに、第1燃料電池層のカソード集電体27のカソード電流取出部28と、第2燃料電池層のアノード集電体37のアノード電流取出部38、第3燃料電池層のカソード電流取出部28とが積層方向に重なるように互いに配置し、燃料電池スタックを作製した。当該燃料電池スタックの全体の厚みは約3.0mmであった。また、燃料電池スタック内の発電部面積は、8.1cm2となった。
<(6)燃料電池層の直列接続>
本実施例により作製される燃料電池スタックにおいて、燃料電池層間の電気的な接続は次のようにして行なった。すなわち、第1燃料電池層のカソード集電体と第2燃料電池層のアノード集電体とを長さ1cmの金線で電気的に接続した。ここで、金線とカソード集電体およびアノード集電体とは銀ペーストにより固定と接着を行なった。同様に、第2燃料電池層のカソード集電体と第3燃料電池層のアノード集電体とを長さ1cmの金線で電気的に接続し、燃料電池スタックを構成する各燃料電池層間を直列接続した。
比較例1の燃料電池スタックの出力特性と、体積出力密度とを測定した。ここで、これらの特性を測定するための条件としては、燃料電池スタックに対し、燃料流路の燃料供給口と燃料ポンプとの間、燃料ポンプと燃料カートリッジとの間をシリコンチューブにより接続した。そして、当該燃料ポンプを用いて燃料電池層1層の燃料流路に対し、0.1ml/minの流速で、濃度が3mol/dm3のメタノール水溶液の燃料を供給した。この燃料電池スタックに空気ファンは備えておらず、燃料電池スタックを用いる測定雰囲気の温度は室温であった。なお、燃料電池スタックの出力特性は、実施例1と同様の測定機器を用いて測定した。
図36(A)は、比較例1で作製された燃料電池スタックに対し、電流―電位曲線を測定した結果を示すグラフであり、図36(A)の縦軸は、燃料電池スタックからの出力電圧(単位は[V])の値を表しており、横軸は、燃料電池スタックから流れる電流(単位は[A])を表している。
図36(A)に示されるように、この燃料電池スタックの開回路電圧は約2.0Vであり、0.42Aの電流を流した際の出力電圧は0.80Vであった。このことから燃料電池スタックとしては約0.34Wの出力を得ることができることが明らかとなった。
図36(B)は、比較例1で作製された燃料電池スタックに対し、体積出力密度を測定して得られた結果を示すグラフである。図36(B)の縦軸は、燃料電池スタックの出力を発電部体積で割って得られた値(単位は[W/cm3])を表しており、横軸は、燃料電池スタックから流れる電流(単位は[A])を表している。
比較例1の燃料電池スタックの発電部体積は、1.14cm3(幅の長さ16.5mm×縦の長さ23mm×厚み3.0mm)であったことから、最大の出力密度は約0.30W/cm3(約0.8V時に最大の出力密度)となった。
以上のように本発明の実施例について説明を行なったが、上述の実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、薄型化および軽量化するとともに、出力密度を高めた燃料電池スタックを提供することができる。
1 燃料電池スタック、2 膜電極複合体、10 複合単位電池、11,21 隙間、10a 単位電池、10b 大面積単位電池、20 スペーサ、20a 大面積のスペーサ、23 カソード孔、24,34 導線、25 カソード触媒層、26 カソード導電性多孔質層、27 カソード集電体、28 カソード電流取出部、29 カソード集電体貫通孔、30 隙間保持材、31 ガス排出路、33 アノード孔、35 アノード触媒層、36 アノード導電性多孔質層、37 アノード集電体、38 アノード電流取出部、39 アノード集電体貫通孔、40 燃料流路形成材、41 燃料流路、42 燃料流路入口、43 燃料流路出口、45 供給経路、46 拡散経路、47 燃料透過抑制層、48 隙間孔、44,49 矢印、50 単位電池、51 不導体部、52 燃料供給用の孔、55 接着層、56 封止材、57 導電性透過抑制層、60 電解質膜、70 電子機器、71 情報表示部、72 土手部分、73 アノード集電体の延伸部と電流取出部とを除く部位、80 燃料電池システム、81 気化層、82 断熱層、83 保湿層、84 生成ガス排出路、85 燃料輸送部材、86 接着材、87 燃料貯蔵室、88 流路板、90 筐体、100,100d 燃料電池層、100a 片面単位電池層、100b 大面積単位電池層、200 スペーサ層、L1 燃料流路の幅、L2 単位電池の幅。

Claims (22)

  1. 2層以上の燃料電池層を積層してなる燃料電池スタックであって、
    前記燃料電池スタックは、前記燃料電池層と、1つ以上のスペーサからなるスペーサ層とを交互に積層してなり、
    前記燃料電池層のうちの少なくとも1層は、2つ以上の複合単位電池を同一平面内に隙間を設けて配置されてなるものであり、
    前記スペーサ層のうちの少なくとも1層は、2つ以上のスペーサを同一平面内に隙間を設けて配置されてなるものであり、
    前記2つ以上の複合単位電池によって形成される隙間と、前記2つ以上のスペーサによって形成される隙間とが連通しており、
    前記複合単位電池は、複数の単位電池と、前記単位電池のアノード極に燃料を供給するための燃料供給部とを含み、
    前記複数の単位電池のアノード極は、前記燃料供給部に対向するように配置される、燃料電池スタック。
  2. 前記燃料電池層の表裏のいずれか一面もしくは両面の両端部上にそれぞれ前記スペーサを設ける、請求項に記載の燃料電池スタック。
  3. 前記スペーサ層は、それが隣接する燃料電池層を構成する複合単位電池の全てと接する1の大面積のスペーサである、請求項に記載の燃料電池スタック。
  4. 前記燃料供給部は、燃料が流通するための燃料流路を含む、請求項1に記載の燃料電池スタック。
  5. 前記単位電池は、アノード極と、電解質膜と、カソード極とをこの順で備える、請求項1に記載の燃料電池スタック。
  6. 前記単位電池は、前記アノード極の前記電解質膜と接する面とは反対側の面にアノード集電体を有し、前記カソード極の前記電解質膜と接する面とは反対側の面にカソード集電体を有する、請求項に記載の燃料電池スタック。
  7. 前記燃料流路と、前記アノード極との間にさらに燃料透過抑制層を備える、請求項に記載の燃料電池スタック。
  8. 前記燃料供給部と前記アノード極との間に、前記燃料の蒸気を前記アノード極に供給するための気化層を備える、請求項1に記載の燃料電池スタック。
  9. 前記カソード集電体の前記カソード極と接する側とは反対側に、発電で生じた水を前記単位電池内に保持するための保湿層を備える、請求項に記載の燃料電池スタック。
  10. 前記アノード集電体の前記アノード極と接する側とは反対側に断熱層を備える、請求項に記載の燃料電池スタック。
  11. 前記複合単位電池を構成する各層の厚み方向に貫通する空間を有し、
    前記空間は、アノード極で発生する生成ガスを排出するための生成ガス排出路である、請求項1に記載の燃料電池スタック。
  12. 前記スペーサは、少なくともその厚み方向に絶縁性である、請求項1に記載の燃料電池スタック。
  13. 前記スペーサは、少なくともその表面が絶縁性である、請求項1に記載の燃料電池スタック。
  14. 前記スペーサは、多孔質体からなる、請求項1に記載の燃料電池スタック。
  15. 前記スペーサは、酸化物により絶縁した、酸化チタン、酸化アルミニウム、もしくは酸化ジルコニウムの金属酸化物多孔質体、金属多孔質体の表面に親水性の高分子を塗布または修飾するもしくは親水性高分子フィルムを付属させることにより絶縁した金属−高分子複合体、または多孔質セラミックのいずれかからなる、請求項1に記載の燃料電池スタック。
  16. 請求項1に記載の燃料電池スタックの外表面を覆う筐体をさらに備え、
    前記筐体は、1以上の前記スペーサと接する、燃料電池スタック。
  17. 前記筐体は、Cu、Al、Fe、Ti、およびステンレスからなる群より選択される一種以上の材料からなる、請求項16に記載の燃料電池スタック。
  18. 前記燃料電池層に含まれる2つの前記アノード集電体同士を電気的に接続するとともに、前記燃料電池層に含まれる2つの前記カソード集電体同士を電気的に接続することにより、
    前記複合単位電池に含まれる2つの単位電池が並列接続される、請求項に記載の燃料電池スタック。
  19. 隣接する2層の前記燃料電池層のうちの一方の燃料電池層の前記カソード集電体と、他方の燃料電池層の前記アノード集電体とを電気的に接続することにより、隣接する2層の燃料電池層を直列接続する、請求項に記載の燃料電池スタック。
  20. 前記アノード集電体は、その厚み方向に貫通するアノード集電体貫通孔を備え、
    前記カソード集電体は、その厚み方向に貫通するカソード集電体貫通孔を備え、
    前記アノード集電体貫通孔と、前記カソード集電体貫通孔とは、同一の燃料電池層において燃料電池層の積層方向に異なる位置に設けられ、
    隣接する2層の前記燃料電池層のうちの一方の燃料電池層の前記カソード集電体貫通孔と、他方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔とは、燃料電池層の積層方向に実質的に同一の位置に設け、
    前記一方の燃料電池層のアノード集電体貫通孔と、前記他方の燃料電池層のカソード集電体貫通孔とは、燃料電池層の積層方向に実質的に同一の位置に設ける、請求項に記載の燃料電池スタック。
  21. 前記複合単位電池および/または前記スペーサは、短冊形状である、請求項に記載の燃料電池スタック。
  22. 請求項に記載された燃料電池スタックを備える電子機器。
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