JP2005353492A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】セルモジュールの中空内部における水分管理、特に排水性に優れると共に、必要に応じて水の有効利用が可能な燃料電池を提供する。
【解決手段】中空電解質膜1と、当該中空電解質膜1の内面及び外面に設けられた一対の電極2、3を有するセルモジュールを備えた燃料電池であって、前記セルモジュールは、前記一対の電極2、3のうち生成水を生成する電極を中空電解質膜1の内面側に有し、且つ、中空内の水を貯溜するためのリザーバ5を有する燃料電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、中空形状の電解質膜を有するセルモジュールを備える燃料電池に関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤を電気的に接続された2つの電極に供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、カルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。固体高分子電解質型燃料電池は、電解質として固体高分子電解質膜を用いる燃料電池であり、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、などの利点があることから、特に携帯用、移動体用電源として注目されている。
固体高分子電解質型燃料電池では、水素を燃料とした場合、アノードでは(1)式の反応が進行する。
Figure 2005353492
(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソードに到達する。そして、(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に、電気浸透により移動する。
また、酸素を酸化剤とした場合、カソードでは(2)式の反応が進行する。
Figure 2005353492
カソードで生成した水は、主としてガス拡散層を通り、外部へと排出される。
このように、燃料電池は水以外の排出物がなく、クリーンな発電装置である。
従来、固体高分子電解質型燃料電池としては主に、平面状の固体高分子電解質膜の一面にアノード及び他面にカソードとなる触媒層を設け、得られた平面状の膜・電極接合体の両側にさらにそれぞれガス拡散層を設け、最後に平面状のセパレータで挟みこむことによって作製される平型の単セルを、複数積層することで得られる燃料電池スタックを有するものが開発されてきた。
固体高分子電解質型燃料電池の出力密度向上のために、固体高分子電解質膜としては非常に膜厚の薄いプロトン伝導性高分子膜が用いられている。この膜厚は100μm以下のものが主流であり、さらなる出力密度向上のためにさらに薄い電解質膜を用いたとしても、単セルの厚みを現在のものより劇的に薄くすることはできない。同様に、触媒層、ガス拡散層及びセパレータ等についてもそれぞれ薄膜化が進んでいるが、それらすべての部材の薄膜化によっても、単位体積当たりの出力密度の向上には限界がある。
また、前記セパレータには、通常、腐食性に優れたシート状のカーボン材料を用いる。このカーボン材料自体も高価であるが、さらに、平面状の膜・電極接合体の面全体にほぼ均一に燃料ガス及び酸化剤ガスを行き渡らせるために、前記セパレータの面上には、通常、ガス流路となる溝を微細加工するので、その加工によって、セパレータは非常に高価になってしまい、燃料電池の製造原価を押し上げていた。
以上の問題の他にも、平型の単セルには、前記ガス流路から燃料ガス及び酸化剤ガスが漏れ出さないように積層された複数の単セルの周縁を確実にシールすることが技術的に難しいこと、平面状の膜・電極接合体のたわみや変形に起因して発電効率が低下してしまうことがあることなど、多くの問題がある。
近年、中空状電解質膜の内面側と外面側にそれぞれ電極を設けたセルモジュールを基本的な発電単位とする固体高分子電解質型燃料電池が開発されている。(例えば、特許文献1〜4参照)。
通常このような中空形状のセルモジュールを有する燃料電池では、平型で使用されるセパレータに相当する部材は使用する必要がない。そして、その内面と外面とにそれぞれ異なった種類のガスを供給して発電するので、特別にガス流路を形成する必要もない。従って、その製造においては、製造コストの低減が見込まれる。さらに、セルモジュールが3次元形状であるので、平型の単セルに比べて体積に対する比表面積が大きくとれ、体積当たりの発電出力密度の向上が見込める。
特開平9−223507号公報 特開2002−124273号公報 特開2002−158015号公報 特開2002−260685号公報
上記のような中空形状を有するセルモジュールを備えた燃料電池において、電気化学反応の結果生成水を生成する電極を、電解質膜の中空内面に設ける場合には、生成水や反応ガス中の水蒸気が過飽和となって凝縮した水分など、セルモジュールの中空内に液体状態の水分が溜まりやすい。この液体状態の水分により、電極の水浸し状態、いわゆるフラッディングが発生したり、中空内を通る反応ガス(燃料ガス又は酸化剤ガス)の流通性が低下し、その結果、反応ガスの供給量、電極の発電有効面積が減少して、燃料電池の発電性能が低下してしまう。従って、燃料電池の発電性能を向上させるためには、中空内に存在する余剰の水分を、中空内の反応ガスの流通や電極及び電解質膜の水分分布に悪影響を与えない場所へ排出することが重要となってくる。
一方で、電解質膜としてプロトン伝導膜の一つである高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池においては、アノードで生じたプロトンは水と水和した状態で高分子電解質膜内をアノード側からカソード側へと移動するため、高分子電解質膜の含水率が低い状態ではプロトン伝導性が低下する。従って、高分子電解質膜の含水率を高い状態に保持し、乾燥を防止することが重要となる。また、高分子電解質膜の両面に形成された電極が乾燥していると電解質膜を高い湿潤状態に保つことができないため、電極も適度な湿潤状態にする必要がある。すなわち、固体高分子型燃料電池の発電性能を高めるためには、過剰な水分を適度に排出すると共に水分が必要となる場合がある。
本発明は、上記問題を考慮してなされたものであり、セルモジュールの中空内部における水分管理、特に排水性に優れる共に、必要に応じて水の有効利用が可能な燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池は、中空電解質膜と、当該中空電解質膜の内面及び外面に設けられた一対の電極を有するセルモジュールを備えた燃料電池であって、前記セルモジュールは、前記一対の電極のうち生成水を生成する電極を中空電解質膜の内面側に有し、且つ、中空内の水を貯溜するためのリザーバを有することを特徴とする。
本発明によれば、セルモジュールの中空内に存在する水分、主に電気化学反応の際に生成した生成水は、中空内の反応ガスの流通や電極及び電解質膜の水分分布に悪影響を与えない場所に設けられたリザーバ内に貯溜されるため、フラッディングや反応ガスの流通性の低下といった過剰な水分により引き起こされる問題を抑制することができる。
本発明の燃料電池におけるセルモジュールの具体的な構成としては、前記リザーバへ水を誘導する開口部が中空電解質膜又はこれに接続する中空延長部の中空内に設けられた構成が挙げられ、さらに具体的には、前記セルモジュールの中空電解質膜又はこれに接続する中空延長部の中空内に、反応ガス誘導路が挿入されており、前記開口部が当該反応ガス誘導路の外周と、これを取り囲む中空電解質膜又は中空延長部の内面により形成されている構成が挙げられる。
また、前記開口部が、リザーバ内に回収した水を中空電解質膜の中空内へ再び揮散させることが可能である構造を有している場合には、中空電解質膜の中空内を加湿することが可能であり、電解質膜や電極を湿潤することができるため、固体高分子電解質膜のように良好な湿潤状態が求められる電解質膜を用いる燃料電池に好適である。
中空電解質膜の中空内の排水性を向上させる観点から、前記セルモジュールは燃料電池の使用状態において水平方向に対して斜め又は垂直となるように配置され、前記中空電解質膜の下端側にリザーバが設けられていることが好ましい。このようにセルモジュールを配置することによって、中空内の水分が重力によりリザーバ内に自然落下し、効率良く排出、回収される。
また、中空内の反応ガスの流通方向と、リザーバへの水の誘導方向を逆向きにする場合には、中空内を流通する反応ガスがリザーバ内に入り込むことを防止することができ、さらに、リザーバ内に回収された水の中空電解質膜の中空内への揮散を促進することも可能である。
前記リザーバは、リザーバ内に貯溜された水分の凍結時における膨張によって破損しないよう、伸縮性材料により形成されていることが好ましい。
さらに、前記リザーバ内の水を加熱する加熱手段を設けた場合には、リザーバ内の水分の蒸発を促し、また、凍結したリザーバ内の水分を速やかに解凍することも可能である。
本発明によれば、中空形状を有するセルモジュールの中空内の水分は、燃料電池の発電性能等の電池特性に悪影響を与えない場所に設けられたリザーバ内へ排出、貯溜されるため、フラッディングや中空内でのガス流通性低下など、過剰な水分により引き起こされる問題を防止することができる。従って、中空形状を有するセルモジュールを備えた燃料電池において、中空内面側に生成水を生成する電極を設けた場合であっても、優れた排水性を示し、燃料電池の有効発電面積を低下させず、また、反応ガスの流通もスムーズに行われるため、高い電池特性を発現することができる。
特に、燃料電池の使用状態において、セルモジュールを水平方向に対して垂直又は水平方向に対して斜めになるように配置することにより、開口部が1つしかない中空形状を有するセルモジュールを備えた燃料電池、或いは反応ガス流の圧力が小さい条件下で運転する燃料電池等、反応ガスの圧力で中空内部の水分を押し出すことが困難な場合や、セルモジュール内の中空形状が細く、目詰まりを起こしやすい場合においても、排水性に優れた燃料電池とすることができる。
また、本発明によれば、中空内部のガス流路が水分による目詰まり起こしにくいことから、セルモジュールの径を細くすることができるため、セルモジュールの密集度を高くすることができ、単位体積あたりの電極面積を大きくすることが可能である。
さらに、リザーバ内に回収された水分は廃棄されずに貯溜されるので、有効利用することが可能であり、特に、固体高分子電解質膜のように良好な湿潤状態が求められる電解質膜を用いる燃料電池において、電解質膜の中空内を加湿するための水分として利用した場合には、電解質膜の乾燥を抑制することができ、その結果、燃料電池の発電性能をより一層高めることが可能となる。しかも、リザーバ内の水分温度を上昇させる加熱手段を設けた場合には、リザーバ内に溜められた水分をより多く蒸発させることによって中空内をさらに加湿したり、低温下においてリザーバ内で凍結した水分を解凍することが可能であるため、電解質膜の乾燥をより抑制することができる。
本発明の燃料電池は、中空電解質膜と、当該中空電解質膜の内面及び外面に設けられた一対の電極を有するセルモジュールを備えた燃料電池であって、前記セルモジュールは、前記一対の電極のうち生成水を生成する電極を中空電解質膜の内面側に有し、且つ、中空内の水を貯溜するためのリザーバを有することを特徴とするものである。
以下、本発明の燃料電池を、電解質膜としてプロトン伝導膜の一種である固体高分子電解質膜の一つであるパーフルオロカーボンスルホン酸膜を用いた場合を例に説明する。
まず、図1及び図2を用いて、本発明の燃料電池の第一実施形態について説明する。図1は本発明のセルモジュールの一形態例を示す概略図であって、一部を切り取った内部断面も示している。図2は図1に示すセルモジュールにリザーバ内の水を加熱する加熱手段を設けた変形例を示す概略図である。
図1において、セルモジュール101は、チューブ状の電解質膜(パーフルオロカーボンスルホン酸膜)1を有し、生成水を生成する第1の電極(この場合はカソード)2が電解質膜1の中空内面側に、前記第1の電極と対をなす第2の電極(この場合はアノード)3が電解質膜1の中空外面側に形成されている。さらに、第1の電極(カソード)2の内側には、第1の電極に供給される反応ガスが流入する中空部(通常、空気等の酸化剤ガス流路)4が形成されている。
符号5は中空内の水を貯溜するリザーバであり、外部空間との外壁6によって形成された中空形状を有し、電解質膜1の重力方向下端側に設けられている。この外壁6によって形成されたリザーバの中空内を貫通するような状態で、反応ガス誘導路7が電解質膜の中空部と外壁6との境界部まで挿入されており、反応ガス誘導路7の開口端外周8とこれを取り囲む外壁6の内面より、リザーバ5へ水を誘導する開口部9が電解質膜1の中空内に形成され、開口部9においてリザーバ5の中空部と電解質膜の中空部は連通している。反応ガス誘導路7は、電解質膜の内面側に設けられた第1の電極に供給される反応ガス(この場合、空気等の酸化剤ガス)供給源(図示せず)に接続しており、この反応ガス誘導路7を通って反応ガスが電解質膜1の中空内に供給される。電解質膜とリザーバ、及び、反応ガス誘導路とリザーバ等の接続部分は、セルモジュール101の中空内(電解質膜中空内、反応ガス誘導路、リザーバ中空部等)の気密性を保つように接続されている。
符号10及び11は、それぞれ第1の電極2、第2の電極3に接続された集電体であり、その一端が出力端子として機能する。
セルモジュールは、通常、複数配列して支持板で支持したセル群を形成し、各セルモジュールのアノード端子及びカソード端子をそれぞれ束ねて並列又は直列接続し、さらにセル群を他のセル群と直列又は並列接続してセル集合体とする。セル群は外装部材により取り囲まれてケーシングされ、セルモジュールの中空部(電解質膜中空部、ガス誘導路内)は酸化剤ガス供給源に、外装部材の内部空間は燃料ガス供給源に接続し、各電極の内外両面にそれぞれ反応ガスが供給される。なお、セルモジュール、セル群の接続形態や配列形態等の燃料電池の構成は特に限られず、例えば、セル接合体全体をケーシングし、その内部空間を反応ガス供給源に連通してもよい。
本発明の燃料電池は、電解質膜の中空内に存在する過剰な水分、例えば、内面側電極で電気化学反応の結果生成した生成水や、反応ガス中の水蒸気等が過飽和となって凝縮した水分等を、反応ガスの流通や電極及び電解質膜の水分分布に悪影響を与えない場所に設けられたリザーバ内に排出し、貯溜することを特徴としている。そのため、生成水を生成する電極で発生しやすいフラッディングや、内面側電極に反応ガスを供給するための流路となる中空部内のガス流通性の低下等、過剰な水分の存在によって生じる問題を防止することができる。従って、本発明の燃料電池は、燃料電池の有効発電面積が低下せず、また、反応ガスの流通もスムーズに行われるため、高い発電性能など優れた電池特性を発現することになる。
電解質膜の中空内の過剰な水分を速やかに且つ確実にリザーバ内に排出するためには、図1に示すように燃料電池の使用状態において、セルモジュールを水平方向に対して垂直又は斜めになるように配置し、チューブ状の電解質膜の重力方向下端側にリザーバを設けることが好ましい。このようにセルモジュールを構成し、且つ配置することによって、電解質膜の中空内の過剰な水分は、反応ガスの流通性や電極の水分分布等に悪影響を及ぼす領域に長い間留まることなく、自重により自然落下し、リザーバ内へと効率良く排出されることになる。リザーバ内に排出、回収された水分は、そこに貯溜し、有効利用することが可能であるため、有効利用のための回収という観点からもセルモジュールを上記のような排水性に優れた構成とすることが好ましい。水分をより確実且つより速やかにリザーバ内へと移動させるためには、セルモジュールを水平方向に対する傾斜角が大きくなるように配置することが好ましく、特に水平方向に対して垂直とすることが好ましい。セルモジュールを燃料電池の使用状態において水平方向に斜め又は垂直となるように配置することは、燃料電池内にセルモジュールを一定の傾斜角をもたせた状態で固定設置する場合に限られず、何らかの制御機構によって燃料電池の変位に対応してセルモジュールの傾斜角を随時調節する場合も含む。
上記の如く、重力により水分が自然とリザーバ内に流下するように燃料電池を設計した場合には、中空部に存在する水分を強制的にリザーバ内に移動させためにガス圧をかける等の必要がないため、セルモジュールや燃料電池の設計、燃料電池の運転条件が制約されない。特に、ガスの流入出口が1箇所しかない中空形状を有するセルモジュールを備えた燃料電池、セルモジュールの中空内に流入するガス圧が小さい燃料電池等、ガス圧によって中空内の水分を押し出すことが困難な場合や、セルモジュールが細長い中空形状を有する燃料電池等、中空内の目詰まりが発生しやすい場合に優れた効果を発揮することが期待される。また、反応ガスの流路となるセルモジュールの中空内部が水分による目詰まり起こしにくいため、セルモジュールの径を細くすることができる。従って、セルモジュールの密集度を高くすることができ、単位体積あたりの電極面積を大きくすることができる。
本発明において、リザーバの構造、位置及び材料等の構成は、電解質膜の中空内の水分を貯溜することができれば特に限定されるものではなく、燃料電池使用時におけるセルモジュールの配置状態や、中空電解質膜の中空形状等の諸条件を考慮して、適宜設計すればよい。
例えば、リザーバへ水を誘導する開口部は、通常、チューブ状(中空形状)の電解質膜の中空内に設ける。リザーバの開口部は、電解質膜中空部の内壁面に限られず、電解質膜中空内のいずれの位置に設けられていてもよい。また、セルモジュールの設計上、電解質膜及び電極とは異なる材料で形成した中空延長部を電解質膜の中空部に接続してもよく、その場合には、当該中空延長部の中空内に開口部を設けることもできる。例えば、図1においては、電解質膜の中空部とリザーバの外壁との境界部において、反応ガス誘導路の開口端外周と、リザーバの外壁の内面によりリザーバの開口部が規定されているが、反応ガス誘導路の開口端を電解質膜の中空内部まで挿入し、反応ガス誘導路の外周と電解質膜中空部の内壁によって開口部が規定されていてもよい。また、電解質膜中空部の内壁面に直接穴を開けたような開口部でもよい。
開口部の形状は特に限定されるものではなく、例えば、図1のように反応ガス誘導路の外周を取り囲む環状でも、楕円や円、多角形でもよい。
開口部は、常時開口している必要はなく、リザーバ内に貯溜されている水分の逆流を防止する弁や、必要に応じて開閉可能なゲート等が備えられていてもよい。また、開口部は一つのみ、又は、複数設けることができる。
図1に示す実施形態においては、反応ガス誘導路の外周を取り囲む形状で、且つ、水分の誘導方向に対向してリザーバの開口部が設けられており、水分は電解質膜の中空部内壁を伝って流下し、自然と開口部へと誘導されるため、効率良くリザーバ内に回収される。
リザーバの開口部を、リザーバ内に回収された水分を電解質膜の中空内へ再び揮散させることができるような構造とした場合には、揮散した水分によって電解質膜及び電極が加湿されるため、電解質膜を高い湿潤状態に保持しやすくなる。従って、高分子電解質膜のような膜の乾燥が発電性能に大きな影響を及ぼす電解質膜を用いた場合には、上記のような構造を有する開口部を設けることによって、過剰な水分による電池特性の低下と共に、電解質膜の乾燥による発電性能の低下をも防止することが可能であり、水分の排出と供給のバランスのとれた水分管理ができる。リザーバ内の水分を電解質膜の中空内へ揮散させることが可能な開口部の構造としては特に限定されず、適宜設計すればよく、例えば図1においては、蒸発したリザーバ内の水分は自然と上昇してリザーバの開口部からリザーバ外へと移動し、電解質膜の中空内へと揮散することができる。
リザーバ内に回収された水分は、燃料電池の運転時における電池内温度によって蒸発可能であるが、リザーバ内の水分を加熱する加熱手段を設けた場合には、リザーバに回収された水分の蒸発が促進され、電解質膜の乾燥をさらに抑制することができるため、燃料電池の発電性能をより高めることが期待できる。また、低温条件下においては、水分の蒸発を促進するのみならず、起動時にリザーバ内の凍結した水分を迅速に解凍、蒸発させ、電解質膜を速やかに加湿することが可能となる。このような加熱手段としては、図2セルモジュール102のように電熱線13等の発熱体をリザーバの外周に設け、リザーバの外壁を加熱することによりリザーバ内の水分を加熱するもののほか、リザーバの中空内に発熱体を設け、リザーバ内の水分を直接加熱するものも挙げられる。
また、リザーバ内に回収した水は、上記のように中空内の電解質膜や電極の乾燥を防止するための加湿のほか、セルモジュールの冷却等その他の目的で有効利用してもよい。
リザーバを形成する材料としては、水透過性のないものであれば特に限定されず、伸縮性材料でも剛性材料でもよいが、リザーバ内に貯溜された水分の凍結膨張による破損を防止する観点から、伸縮性材料、特に弾性材料を用いることが好ましい。剛性材料を用いる場合には、上記のような理由により破損しないような強度を有しているものを選択することが好ましい。また、耐久性を有する材料であることが好ましい。強度及び耐久性の点から、伸縮性材料としてはゴム、剛性材料としてはプラスチック、ステンレス鋼、金等が挙げられる。さらに、カソードで生成される生成水そのものは純水であるが、アノード側からプロトンと同伴して移動してきた水分子等と混合する結果、電極から排出される水分は通常(強)酸性を示すことから、耐食性に優れる材料であることが好ましい。このような観点から、リザーバの外壁の材料としては、ゴム、ステンレス鋼、金が特に好ましく、弾性による復元力の高いゴムがさらに好ましい。ゴムは、安価な材料であることから、コスト面からも好ましい。具体的には、ゴムとしては、例えば、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エラストマー等が挙げられるがこれらに限られない。また、プラスチックとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ナイロン等が挙げられ、ステンレス鋼としては、SUS316等が挙げられる。リザーバの外壁は、このような材料からなる単層構造でも、多層構造でもよい。図1に示したセルモジュール101及び図2に示したセルモジュール102に設けたリザーバは袋状に形成したゴム、後述する第2実施形態を示す図3のセルモジュール103のリザーバは、管状のステンレス鋼を用いている。また、リザーバの製造方法は、用いる材料、形状等に適した方法を適宜選択すればよく、中空部を有する形状に成形された市販品を利用してもよい。反応ガス誘導路も、上記したリザーバの材料と同様のものを用いて形成することができる。
電解質膜の内外面に供給される各反応ガスの流通方向は特に限定されるものではないが、電解質膜の中空内における反応ガスの流通方向は、リザーバへの水の誘導方向と逆向きにすることが好ましい。このような方向で反応ガスを中空内に流通させることによって、反応ガスがリザーバ内に入り込むのを防止することができる。反応ガスがリザーバに入り込んだ場合には、ガス流が乱れたり、リザーバ内の水がガス圧で押し出されてしまうおそれがある。特に、燃料電池を使用するために設置した状態でセルモジュールが水平方向対して垂直又は斜めになるように配置し、リザーバをセルモジュールの重力方向下端側に設けた上で、中空内を流通する反応ガスを重力方向下方側から上方側へ流通させることが好ましい。このような構成を有する図1のセルモジュール101においては、反応ガスは電解質膜の下端に設けられた反応ガス誘導路から電解質膜の中空内に供給され、リザーバに入り込むことなく中空内を重力方向下方から上方(重量方向に逆らう方向)へ流通し、一方、電解質膜の中空内の水分は重力方向上方から下方(重量方向に従う方向)へ、重力により誘導されてリザーバ内に回収される。さらに、図1の場合には、リザーバの開口部が反応ガスの流通方向上流側、電解質膜の中空部が反応ガスの流通方向下流側に位置しているため、リザーバの開口部から放出される水蒸気が、反応ガスの流れに沿って電解質膜の中空内へと移動するし、電解質膜の乾燥をより抑制することもできる。
また、本発明の第2実施形態として、図3に示す燃料電池を説明する。図3に示すセルモジュール103は、燃料電池の使用状態において水平方向に対して垂直に配置され、中空電解質膜の重力方向下端側にリザーバが設けられている。図1のセルモジュール101同様、中空形状のパーフルオロカーボンスルホン酸膜1には、その内面側に生成水を生成する第1の電極2、外面側に第2の電極3が形成されており、さらに反応ガスの流路となる中空部4を有している。電解質膜中空の下端に設けられたリザーバ5は、2重管構造を有し、開口部9から底部を有する外側の中空部内に水が流下する。一方、2重管の内側の管状中空部は底部がなく、反応ガス誘導路7として機能する。リザーバ内に回収された水分は、中空内の湿度状況により気化して再び電解質膜の中空部に供給される。
図3は、上記のようなセルモジュール103を複数集めたセル群を示し、複数のセルモジュール103が仕切板12a、12b、12cにより固定され整列している。セルモジュール103は、仕切板12a、12b、12cを貫通し、仕切板12bにより中空電解質膜1及び電極2,3よりなる部分とリザーバ部分とに仕切られている。仕切板12aと12bで仕切られた空間は、気密性が保たれており、中空電解質膜1の外面側電極3に供給される燃料ガスが流通する。一方、内面側電極2に供給される酸化剤ガスは、外部空間との気密性が保たれているセルモジュール103内へ反応ガス誘導路の下端から流入し、下方から上方に向かってセルモジュールの中空内を流通する。なお、図3において集電体については表記を省略した。
図1においては、中空電解質膜としてチューブ状の中空形状を有する電解質膜を用いているが、本発明における中空電解質膜とは、チューブ状に限られず、中空部を有し、当該中空部内に反応ガスを流入させることで内面側電極に電気化学反応に必要な反応成分を供給することができるものであればよい。
また、本実施形態では電解質膜として、プロトン伝導膜の一種である固体高分子電解質膜の一つであるパーフルオロカーボンスルホン酸膜を用いて説明しているが、本発明の燃料電池は、中空形状を有するセルモジュールを有するため、平型のセルを有する燃料電池と比べて単位体積当たりの電極面積を大きくとることができることから、パーフルオロカーボンスルホン酸膜ほど高いプロトン伝導性を有していない電解質膜を用いても、単位体積当たりの出力密度の高い燃料電池を得ることができる。固体高分子電解質膜としては、パーフルオロカーボンスルホン酸の他、固体高分子型燃料電池の電解質膜に用いられているような材料を使用することができ、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸以外のフッ素系イオン交換樹脂、スルホン酸基を有するポリスチレン系陽イオン交換膜などのポリオレフィンのような炭化水素を骨格として少なくともスルホン酸基、ホスホン酸基、及び、リン酸基等のプロトン交換基のうちから一種を有するもの、特表平11−503262号公報などに開示されている、ポリベンズイミダゾール、ポリピリミジン、ポリベンゾオキサゾールなどの塩基性高分子に強酸をドープした塩基性高分子と強酸との複合体からなる固体ポリマー電解質等の高分子電解質が挙げられる。このような電解質を用いた固体高分子電解質膜は、フィブリル状、繊布状、不繊布状、多孔質シートのパーフルオロカーボン重合体で補強することや、膜表面に無機酸化物あるいは金属をコーティングすることにより補強することもできる。また、パーフルオロカーボンスルホン酸膜としては、例えば米国デュポン社製ナフィオンや旭硝子社製フレミオン等の市販品もある。
また、プロトン伝導性の電解質膜としては、上記したような固体高分子電解質膜に限られず、リン酸水溶液を多孔質の電解質板に含浸させたものや、多孔質性ガラスからなるプロトン伝導体、ハイドロゲル化したリン酸塩ガラス、ナノ細孔を有する多孔質硝子の表面及び細孔内にプロトン伝導性官能基を導入した有機−無機ハイブリットプロトン伝導膜、無機金属繊維強化電解質ポリマー等を用いることができる。
パーフルオロカーボンスルホン酸膜の内面及び外面に設けられる各電極は、固体高分子型燃料電池に用いられているような電極材料を用いて形成することができる。通常は、電解質膜側から順に触媒層とガス拡散層とを積層して構成された電極が用いられる。
触媒層は触媒粒を含み、触媒粒の利用効率を高めるためのプロトン伝導性物質を含んでいてもよく、プロトン伝導性物質としては上記電解質膜の材料として用いられるものを用いることができる。触媒粒としては、触媒成分を炭素質粒子、炭素質繊維のような炭素材料等の導電性材料に担持させた触媒粒が好適に用いられる。本発明の燃料電池は、中空形状を有するセルモジュールを有するため、平型のセルを有する燃料電池と比べて単位体積当たりの電極面積を大きくとることができることから、白金ほど触媒作用が大きくない触媒成分を用いても、単位体積当たりの出力密度が高い燃料電池を得ることができる。触媒成分としては、アノードにおける水素の酸化反応、カソードにおける酸素の還元反応に対して触媒作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、又はそれらの合金から選択することができる。好ましくは、Pt、及びPtと例えばRuなど他の金属とからなる合金である。
ガス拡散層としては、炭素質粒子及び/又は炭素質繊維等の炭素材料を主成分とする導電性材料を用いることができる。炭素質粒子及び炭素質繊維の大きさは、ガス拡散層を製造する際の溶液中における分散性や得られるガス拡散層の排水性等を考慮して適宜最適なものを選択すればよい。電解質膜の内面及び外面に設けられる各電極の構成、電極に用いられる材料等は、同じであってもよく、また、異なっていてもよい。ガス拡散層は、生成水など水分の排水性を高める点から、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロカーボンアルコキシアルカン、エチレン−テトラフルオロエチレンポリマー、又はこれらの混合物等を含浸させたり、或いはこれらの物質を用いて撥水層を形成するなどして撥水加工することが好ましい。
チューブ状の電解質膜の内面及び外面に一対の電極を設けたセルモジュールの製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、まず、チューブ状の電解質膜を準備し、当該電解質膜の内面及び外面に、電解質及び触媒粒を含む溶液を塗布・乾燥して触媒層を形成し、当該二つの触媒層上に炭素質粒子及び/又は炭素質繊維を含む溶液を塗布・乾燥してガス拡散層を形成する方法が挙げられる。このとき、電解質膜の内面側に形成したガス拡散層の内面に中空部が存在するように触媒層とガス拡散層を形成する。
或いは、まず、炭素質粒子及び/又は炭素質繊維等の炭素材料を含み、チューブ状に形成されたもの(チューブ状炭素質)を第1の電極(カソード)のガス拡散層として用い、当該ガス拡散層の外面に電解質及び触媒粒を含む溶液を塗布・乾燥して触媒層を形成して第1の電極を作製し、次に、当該触媒層の外面に電解質を含む溶液を塗布・乾燥して電解質膜層、さらに当該電解質膜層の外面に第2の触媒層を形成し、当該触媒層の外面に炭素材料を含む溶液を塗布・乾燥して第2のガス拡散層を形成する方法も挙げられる。
チューブ状の電解質膜を形成する方法としては特に限定されず、市販品のチューブ状に形成された電解質膜を用いてもよい。また、チューブ状炭素質としては、例えば、炭素質粒子等の炭素材料とエポキシ及び/又はフェノール系樹脂を溶媒に分散させてチューブ状に成形し、熱硬化後、焼成することにより得られる。
尚、電解質膜、触媒層、ガス拡散層を形成する際に使用する溶媒は、分散及び/又は溶解する材料に応じて適宜選択すればよく、また、各層を形成する際の塗布方法についても、スプレー法、刷毛塗り法等種々の方法から適宜選択することができる。
チューブ状のセルモジュールの内径及び外径、長さ等は、燃料電池に必要な出力、燃料電池を適用する機器等燃料電池の設計や運転条件に応じて適宜設計することができ、特に限定されるものではないが、チューブ状電解質膜の外径は0.01〜10mmであることが好ましく、0.1〜1mmであることがさらに好ましく、0.1〜0.5mmであることが特に好ましい。チューブ状電解質膜の外径が0.01mm未満のものは現時点では、技術的な問題で製造することが難しく、一方、その外径が10mmを超えるものでは、占有体積に対する表面積が小さくなることとなって、得られるセルモジュールの単位体積当たりの発電出力が小さくなってしまうので好ましくない。
パーフルオロカーボンスルホン酸膜は、プロトン伝導性の向上の点からは薄いほうが好ましいが、あまりに薄すぎるとガスを隔離する機能が低下し、非プロトン水素の透過量が増大してしまう。しかしながら、従来の平型の燃料電池用単セルを積層した燃料電池と比べると、中空形状を有するセルモジュールを多数集めることにより作製された燃料電池では電極面積が大きくとれるので、やや厚みのある膜を用いた場合でも、充分な出力を示す。かかる観点から、パーフルオロカーボンスルホン酸膜の厚みは、10〜100μmであり、より好ましくは50〜60μmであり、さらに好ましくは50〜55μmである。
また、上記の外径と膜厚との好ましい範囲から、内径の好ましい範囲は0.01〜10mmであり、より好ましくは0.1〜1mmであり、さらに好ましくは0.1〜0.5mmである。
また、電解質膜の内面及び外面に設ける触媒層の厚みは1〜100μm程度、ガス拡散層の厚みは3〜10μm程度とすることが好ましい。
本発明の燃料電池に用いられる中空形状を有するセルモジュールは、上記にて例示した構成に限られず、セルモジュールの機能を高めることを目的として触媒層及びガス拡散層以外の層を設けても良い。
また、集電体10,11の形態、材料は特に限定されない。集電体の材料としては、ステンレス等の金属の線材又は箔を例示することができ、例えば、カーボン系接着材やAgペースト等の導電性接着材により電極上に固定してもよい。
なお、図1に示した実施形態では、電解質膜として、プロトン伝導膜であるパーフルオロカーボンスルホン酸膜を用いた構成をとるが、本発明の燃料電池において用いられる電解質膜は特に限定されるものではなく、プロトン伝導性のものであっても、水酸化物イオンや酸化物イオン(O2-)等その他のイオン伝導性のものであってもよい。水酸化物イオンや酸化物イオン(O2-)等その他のイオン伝導性を有する電解質としてはセラミックスを含むもの等が挙げられる。酸化物イオン伝導性の電解質膜を用いる場合には、カソード側で生成した酸化物イオンが電解質膜内を通過してアノード側に達し、水素と反応して水を生成すると同時に電子を放出する。従って、この場合、アノード側で生成水が生成するのでチューブ状電解質膜の内面側にアノードを設け、中空内には水素ガスを流通させる構成とする。
本発明の燃料電池内に備えられるセルモジュールの一形態例を示す概略図である。 図1に示すセルモジュールにリザーバ内の水を加熱する加熱手段を設けた一形態例を示す概略図である。 セルモジュールを複数配列したセル群の一形態例を示す概略図である。
符号の説明
1…中空電解質膜(パーフルオロカーボンスルホン酸膜)
2…第1の電極(カソード)
3…第2の電極(アノード)
4…中空部
5…リザーバ
6…リザーバの外壁
7…反応ガス誘導路
8…反応ガス誘導路の開口端外周
9…開口部
10,11…端子
12a,12b,12c…仕切板
13…加熱手段(電熱線)
101,102,103…セルモジュール

Claims (8)

  1. 中空電解質膜と、当該中空電解質膜の内面及び外面に設けられた一対の電極を有するセルモジュールを備えた燃料電池であって、前記セルモジュールは、前記一対の電極のうち生成水を生成する電極を中空電解質膜の内面側に有し、且つ、中空内の水を貯溜するためのリザーバを有することを特徴とする燃料電池。
  2. 前記リザーバへ水を誘導する開口部が中空電解質膜又はこれに接続する中空延長部の中空内に設けられている請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記セルモジュールの中空電解質膜又はこれに接続する中空延長部の中空内に、反応ガス誘導路が挿入されており、前記開口部は当該反応ガス誘導路の外周と、これを取り囲む中空電解質膜又は中空延長部の内面により形成されている、請求項2に記載の燃料電池。
  4. 前記開口部は、リザーバ内に回収した水を中空電解質膜の中空内へ再び揮散させることが可能である請求項2又は3に記載の燃料電池。
  5. 前記セルモジュールは燃料電池の使用状態において水平方向に対して斜め又は垂直となるように配置され、前記中空電解質膜の下端側にリザーバが設けられている請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池。
  6. 中空内の反応ガスの流通方向と、リザーバへの水の誘導方向を逆向きにする請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料電池。
  7. 前記リザーバは、伸縮性材料により形成されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の燃料電池。
  8. 前記リザーバ内の水を加熱する加熱手段をさらに有する、請求項1乃至7のいずれかに記載の燃料電池。
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