JP2012102228A - フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂組成物およびその硬化物 - Google Patents

フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂組成物およびその硬化物 Download PDF

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Abstract

【課題】高耐熱性などの優れた特性を有し、常温付近では高い曲げ弾性率を有しているにもかかわらず、高温では著しく小さい曲げ弾性率を有するフルオレン骨格含有エポキシ樹脂組成物およびその硬化物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物を、下記式(1)で表される化合物[9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレンなど]および硬化剤(フェノール系硬化剤など)で構成する。
Figure 2012102228

(式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Rは水素原子又はメチル基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、フルオレン骨格(詳細には、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格)を有するエポキシ化合物を含む硬化性組成物(エポキシ樹脂組成物)およびその硬化物に関する。
エポキシ樹脂は、種々の硬化剤で硬化させることにより、機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物を形成する。そのため、エポキシ樹脂は、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来、工業的に最も使用されているエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが知られているが、このようなエポキシ樹脂には、用途によっては、耐熱性が不十分な場合もあった。
一方、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などの9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する化合物は、耐熱性において優れた機能を有することが知られており、このような化合物をエポキシ樹脂原料として用いることも知られている。
例えば、特開2005−162785号公報(特許文献1)には、フルオレン骨格を有する化合物と、熱可塑性樹脂とで構成された樹脂組成物が開示されており、前記フルオレン骨格を有する化合物として、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどのグリシジルエーテルを使用できることが記載されている。
このようなエポキシ樹脂では、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有しているため、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの従来のエポキシ樹脂に比べて、ある程度耐熱性などの特性を向上できる。しかし、近年の急速な技術革新に伴い、高耐熱化などの様々な高機能な特性の向上がより一層急速に求められつつある。
そこで、耐熱性などの点で、このようなフルオレン骨格を有する化合物をさらに改良した化合物も検討されている。特開2007−99741号公報(特許文献2)には、9,9−ビス(ヒドロキシ)ナフチルフルオレン類をエポキシ樹脂原料として用いることができると記載されており、このようなエポキシ樹脂は、一部又は全部が9,9−ビス(ヒドロキシ)ナフチルフルオレン類で構成されているジオール類と、エピクロルヒドリンとの反応生成物などが挙げられると記載されている。しかし、この文献には、エポキシ樹脂の詳細については記載されておらず、エポキシ樹脂についての具体的な検討もなされていない。
また、特開2009−155256号公報(特許文献3)には、9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなどのオキシアルキレン基を有するエポキシ化合物は、9,9−ビス(ヒドロキシ)ナフチルフルオレン類とエピクロルヒドリンとの反応生成物のようなエポキシ化合物に比べて、著しく溶融粘度を低減できると記載されている。そして、この文献の比較例には、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレンが、非常に高粘度でハンドリング性に劣るエポキシ化合物であったと記載されており、この文献では、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレンを否定的に取り扱っている。
しかし、この文献のエポキシ化合物では、オキシアルキレン基の導入により、溶融粘度を低減できても、硬化物における耐熱性や屈折率などの特性を低下させる虞がある。
特開2005−162785号公報(請求項1、段落番号[0043]、[0044]) 特開2007−99741号公報(請求項1、段落番号[0064]〜[0065]) 特開2009−155256号公報(特許請求の範囲、段落番号[0016]、[0138]〜[0141])
従って、本発明の目的は、高耐熱性、低線膨張性、高屈折率などの優れた特性を有するフルオレン骨格含有エポキシ樹脂組成物およびこの組成物が硬化した硬化物を提供することにある。
本発明の他の目的は、常温付近では高い曲げ弾性率を有しているにもかかわらず、高温では著しく小さい曲げ弾性率を有するフルオレン骨格含有エポキシ樹脂組成物およびこの組成物が硬化した硬化物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物の中でも、特に、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレンなどのオキシアルキレン基を有しないエポキシ化合物を含む硬化性組成物を硬化させると、高耐熱性、低線膨張性などの特性を有し、しかも、高温では著しく小さい曲げ弾性率を有する特異な挙動を示す硬化物が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の硬化性組成物は、下記式(1)で表される化合物および硬化剤を含む。
Figure 2012102228
(式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Rは水素原子又はメチル基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である。)
前記式(1)で表される化合物は、代表的には、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレンであってもよい。
また、硬化剤は、不揮発性であるか又は高沸点(例えば、150℃以上の沸点)を有していてもよい。代表的には、前記硬化剤は、フェノール系硬化剤(フェノール樹脂系硬化剤、フルオレン骨格を有するフェノール類など)を含んでいてもよい。本発明の硬化性組成物は、さらに、硬化促進剤(例えば、ホスフィン類など)を含んでいてもよい。
本発明には、前記硬化性組成物が硬化した硬化物も含まれる。このような硬化物は、高温における曲げ弾性率が著しく小さいという特性を有し、例えば、本発明の硬化物の200℃における曲げ弾性率は、12MPa以下(例えば、10MPa以下)であってもよく、23℃における曲げ弾性率は3200MPa以上であってもよい。
代表的には、本発明の硬化物は、TMA法によるガラス転移温度が180℃以上、23℃における曲げ弾性率が3400MPa以上、200℃における曲げ弾性率が8MPa以下であってもよい。
なお、本明細書において、化合物名などの「類」とは、「置換基を有さない」場合と「置換基を有する」場合とを含み、「置換基を有していてもよい」ことを意味する場合がある。
本発明の組成物(又はその硬化物)は、高耐熱性、低線膨張性、高屈折率などの優れた特性を有している。特に、本発明の組成物(又はその硬化物)は、常温付近では高い曲げ弾性率を有しているにもかかわらず、高温では著しく小さい曲げ弾性率を有するという特性を有している。そのため、本発明の組成物(又はその硬化物)は、上記のような優れた特性を有していながら、高温での用途に十分に耐えうる材料であり、例えば、多層プリント配線板材料などにおいては、リフロー時に作用する基板への応力を緩和できる。
(硬化性組成物)
本発明の硬化性組成物(エポキシ樹脂組成物)は、エポキシ化合物(エポキシ樹脂、エポキシ樹脂成分)として、前記式(1)で表される化合物(エポキシ化合物)を含む。
前記式(1)において、環Zで表される縮合多環式芳香族炭化水素環としては、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特にナフタレン環が好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に置換するナフチル基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよく、特に2−ナフチル基であるのが好ましい。
また、前記式(1)において、基Rで表される置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
環Zに置換する置換基Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基、好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などのC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはC6−8アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基などのC1−8アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(C5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(C6−10アリールオキシ基など)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基、好ましくはC1−6アルキルチオ基など)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ヒドロキシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
これらのうち、基Rは、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などであるのが好ましく、特に、好ましい基Rは、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)などである。
なお、同一の環Zにおいて、mが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数mは、0〜8、好ましくは0〜6(例えば、1〜5)、さらに好ましくは0〜4、特に0〜2(例えば、0〜1)であってもよい。なお、2つの環Zにおいて、置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよい。
なお、前記式(1)において、基Rは、水素原子又はメチル基であり、好ましいRは水素原子である。
前記式(1)において、置換数nは、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、エポキシ基含有基の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。特に、エポキシ基含有基は、縮合多環式炭化水素環において、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
前記式(1)で表される具体的な化合物としては、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレンなど]などの前記式(1)においてnが1である化合物などが挙げられる。
なお、前記式(1)で表される化合物は、特に限定されないが、例えば、下記式(2)で表される化合物[例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン]と、下記式(3)で表される化合物とを反応させることにより製造できる。
Figure 2012102228
(式中、Xは、ハロゲン原子(臭素原子、塩素原子など)を示し、Z、R、R、k、m、nは前記と同じ。)
なお、前記式(3)で表される化合物において、基Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、塩素原子、臭素原子(特に塩素原子)が好ましい。具体的な式(3)で表される化合物には、エピハロヒドリン[又はハロメチルオキシラン、例えば、エピクロロヒドリン(クロロメチルオキシラン)、エピブロモヒドリン(ブロモメチルオキシラン)など]、1−ハロメチル−2−メチルオキシラン(1−クロロメチル−2−メチルオキシランなど)などが挙げられる。
前記式(2)で表される化合物との反応において、前記式(3)で表される化合物の割合は、前記式(2)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、2〜30モル(例えば、2.1〜25モル)、好ましくは2.5〜20モル、さらに好ましくは3〜15モル(例えば、3〜10モル)程度であってもよい。
反応(前記式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応)では、適宜、触媒を使用してもよい。触媒としては、塩基(塩基触媒)、例えば、金属炭酸塩(炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩など)、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物など)、アンモニアなどの無機塩基;アミン類、塩基性イオン交換樹脂(例えば、第4級アンモニウム塩基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂など)などの有機塩基などが例示できる。塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
触媒(例えば、塩基触媒)の使用量は、触媒の種類にもよるが、例えば、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.1〜20モル、好ましくは0.2〜10モル、さらに好ましくは1〜5モル程度であってもよい。
なお、反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、30〜120℃、好ましくは35〜100℃、さらに好ましくは40〜70℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。
反応は、還流しながら行ってもよく、副生成分を除去しながら行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
なお、生成した化合物(前記式(1)で表される化合物)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
反応により生成した化合物には、生成物としての特性を害しない範囲であれば、前記式(1)で表される化合物の範疇に属さない化合物[例えば、未反応の前記式(2)で表される化合物など]を含んでいてもよい。このような混合物において、混合物全体に対する前記式(1)で表される化合物の割合は、例えば、65重量%以上(例えば、68〜99.9重量%)、好ましくは70重量%以上(例えば、75〜99.7重量%)、さらに好ましくは80〜99.5重量%程度であってもよい。
前記式(1)で表される化合物(又は反応により生成した化合物、以下同じ。)のエポキシ当量は、例えば、250〜1500g/eq、好ましくは280〜1000g/eq、さらに好ましくは300〜700g/eq程度であってもよく、通常300〜500g/eq程度であってもよい。
なお、前記式(1)で表される化合物の180℃における溶融粘度(回転数900rpm)は、例えば、1000〜7000mPa・s、好ましくは1500〜6000mPa・s(例えば、2000〜5000mPa・s)、さらに好ましくは3000〜4000mPa・s程度であってもよい。
また、前記式(1)で表される化合物の5重量%減少温度は、例えば、350℃以上(例えば、350〜500℃)、好ましくは360〜450℃、さらに好ましくは370〜400℃程度であってもよい。
さらに、前記式(1)で表される化合物の25℃、589nmにおける屈折率は、1.66以上(例えば、1.67〜1.75)、好ましくは1.68〜1.73、さらに好ましくは1.69〜1.72程度であってもよい。
なお、本発明の組成物は、エポキシ化合物(エポキシ樹脂成分)を前記式(1)で表される化合物のみで構成してもよく、本発明の効果を害しない範囲であれば、他のエポキシ化合物を含んでいてもよい。他のエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール(又はクレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂(トリフェノールメタン型エポキシ樹脂など)、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂(キサンテン単位を含むエポキシ樹脂を含む)、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂(1,6−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス(2,7−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン)アルカンなどのナフタレン環含有エポキシ樹脂など)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有する他のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
他のエポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂成分全体に対する前記式(1)で表される化合物の割合は、例えば、50〜99.5重量%、好ましくは70〜97重量%、さらに好ましくは90〜98重量%程度であってもよい。
本発明の組成物は、さらに、硬化剤を含む。硬化剤(エポキシ樹脂用硬化剤)としては、例えば、アミン系硬化剤[特に、第1級アミン、例えば、鎖状脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン類)など、環状脂肪族アミン(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどの単環式脂肪族ポリアミン;ノルボルナンジアミンなどの架橋環式ポリアミンなど)、芳香脂肪族ポリアミン(例えば、キシリレンジアミンなど)、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)など]、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤(例えば、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族系酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの脂環族系酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などの芳香族系酸無水物)、フェノール系硬化剤{例えば、フェノール樹脂(フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック樹脂など);フルオレン骨格を有するフェノール類[例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど)、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン)、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン)などの9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;前記式(2)で表される化合物(9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類)など]などのフェノール化合物}などが挙げられる。これらの硬化剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、前記エポキシ樹脂は比較的高粘度であるため、不揮発性又は比較的高沸点の硬化剤を好適に使用してもよい。硬化剤が沸点を有する場合、硬化剤の沸点は、例えば、120℃以上(例えば、130〜400℃)、好ましくは150℃以上(例えば、160〜350℃)、さらに好ましくは180℃以上(例えば、190〜330℃)、特に200℃以上(例えば、220〜300℃)程度であってもよい。
このような硬化剤のうち、代表的な硬化剤には、フェノール樹脂系硬化剤(フェノール樹脂など)などのフェノール系硬化剤が含まれる。
フェノール樹脂系硬化剤の水酸基当量は、例えば、80〜300、好ましくは90〜270、さらに好ましくは100〜250程度であってもよい。
硬化性組成物において、硬化剤の割合は、前記式(1)で表される化合物(又はエポキシ樹脂成分)のエポキシ基1モルに対して、硬化剤の官能基が0.1〜5.0モル、好ましくは0.3〜2.0モル(例えば、0.5〜1.5モル)、さらに好ましくは0.7〜1.2モル(例えば、0.9〜1.1モル)となるように、両成分の割合を調整してもよい。
硬化性組成物は、さらに、硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、硬化剤の種類などに応じて選択でき、例えば、アミン類[例えば、第3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−1など)、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾールなど)およびその誘導体(例えば、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などの塩)など]、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、ホスフィン類(トリフェニルホスフィンなど)、アミド化合物(ダイマー酸ポリアミドなど)、ルイス酸錯体化合物(3フッ化ホウ素・エチルアミン錯体など)、硫黄化合物[ポリサルファイド、メルカプタン化合物(チオール化合物)など]、ホウ素化合物(フェニルジクロロボランなど)、縮合性有機金属化合物(有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物など)などが挙げられる。硬化促進剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
硬化促進剤の割合(添加量)は、前記式(1)で表される化合物(又はエポキシ樹脂成分)100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部程度であってもよい。
硬化性組成物は、必要に応じて、希釈剤(単官能性エポキシ化合物などの反応性希釈剤、溶媒など)の他、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤などを含んでいてもよい。希釈剤や添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
なお、本発明の硬化性組成物は、高耐熱性、高温時における低曲げ弾性という優れた特性を有し、高温においても比較的高粘度であるため、充填剤などを実質的に含まない組成物であってもよい。また、本発明の硬化性組成物は、比較的高粘度であるため成形に高温を要する場合が多く、溶媒を実質的に含まない組成物であってもよい。
(硬化物)
本発明には、前記硬化性組成物が硬化(又は架橋)した硬化物(又は成形体)も含まれる。このような硬化物は、前記硬化性組成物を反応させる(硬化処理する)ことにより得ることができる。このような硬化処理は、硬化物の形状に応じて、硬化性組成物を成形しつつ又は成形(又は予備成形)した後、行ってもよい。なお、硬化物の形状としては、三次元的硬化物、硬化膜や硬化パターンなどの一次元又は二次元的硬化物、点又はドット状硬化物などが挙げられる。具体的には、前記成形体は、前記硬化性組成物の硬化物で形成された所望の形状の製品、基材上に形成された前記硬化性組成物の硬化物で形成された硬化膜(塗膜)などであってもよい。例えば、前記硬化性組成物を、加熱溶融し、所定の型に流し込んで加熱することにより硬化し、所望の形状の成形体を得ることができる。また、硬化膜は、液状の前記硬化性組成物を、基材上に塗布し、乾燥し、次いで加熱することにより、基材上に形成することができる。成形方法および硬化条件は特に限定されないが、例えば、所定の金型を用いて成形する場合には、加熱加圧による成形法やコールドプレスと呼ばれる低温成形法が用いられる。
なお、硬化性組成物を加熱溶融させる場合、加熱温度は、例えば、80℃以上(例えば、90〜400℃)、好ましくは100℃以上(例えば、110〜350℃)、さらに好ましくは120℃以上(例えば、130〜300℃)、特に140〜250℃(例えば、145〜220℃)程度であってもよく、通常100〜200℃(例えば、120〜180℃)程度であってもよい。
硬化処理は、加熱などにより行うことができ、これらを組み合わせて行ってもよい。通常、少なくとも加熱により硬化処理を行う場合が多い。
硬化処理において、加熱温度としては、例えば、50〜250℃、好ましくは70〜220℃、さらに好ましくは80〜200℃(例えば、100〜190℃)程度であってもよい。また、加熱時間は、例えば、10分〜24時間、好ましくは30分〜18時間、さらに好ましくは1〜12時間(例えば、2〜8時間)程度であってもよい。なお、硬化処理は段階的に行ってもよく、例えば、比較的低温で加熱処理したのち、比較的高温(例えば、150〜350℃、好ましくは160〜300℃程度)で加熱処理してもよい。
また、硬化物を膜状(フィルム状、薄膜状)に形成する場合には、前記硬化性組成物を、基板(又は基体)に塗布することにより形成してもよい。基板は、例えば、樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁性基板、結晶シリコンやアモルファスシリコンなどの半導体基板、金属などの導体基板、これらの基板上に導体層を形成したもの、さらにはこれらを複合したものなどが挙げられる。
基板に塗膜(薄膜)を形成する塗布法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法、スリットコーティング、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
塗膜の厚みは、硬化物の用途に応じて、例えば、0.01μm〜10mm、好ましくは0.05μm〜1mm、さらに好ましくは0.1〜100μm程度であってもよい。
基板に塗布した前記樹脂組成物は、必要に応じて、乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、公知の方法を用いて行うことができる。乾燥処理は、例えば、常圧下、加圧下または減圧下において行ってもよく、加熱手段(ホットプレート、オーブンなど)により加温して行ってもよい。加温時の温度は、使用する溶媒や乾燥方法によっても異なるが、通常、40〜200℃、好ましくは50〜170℃、さらに好ましくは60〜150℃程度であってもよい。
基板に塗布された塗膜は、上記のように、必要に応じて乾燥処理されたのち、通常、硬化処理される。硬化処理において、加熱温度や加熱時間は、前記と同様の範囲から選択できる。
このようにして得られる硬化物は、高耐熱性、低線膨張性などの特性を有している。例えば、本発明の硬化物のTMA法によるガラス転移温度は、175℃以上(例えば、177〜300℃)、好ましくは180℃以上(例えば、182〜250℃)、さらに好ましくは185℃以上(例えば、187〜230℃)、特に190℃以上(例えば、190〜210℃)程度であってもよい。
また、本発明の硬化物は、常温付近では高い曲げ弾性率を有していながら、高温では著しく小さい曲げ弾性率を有するという特性を有している。例えば、本発明の硬化物の200℃における曲げ弾性率は、12MPa以下(例えば、0.5〜11MPa)、好ましくは10MPa以下(例えば、1〜9MPa)、さらに好ましくは8MPa以下(例えば、2〜7MPa)であってもよい。また、本発明の硬化物の23℃における曲げ弾性率は、3000MPa以上(例えば、3100〜6000MPa)、好ましくは3200MPa以上(例えば、3300〜5000MPa)、さらに好ましくは3400MPa以上(例えば、3500〜4000MPa)程度であってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、各種特性の測定や評価は以下の方法によって行った。
(GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ))
東ソー(株)製、HLC−8320GPCを用い、試料をテトラヒドロフランに溶解させ、流量1.0mL/分、注入量100μL、温度40℃で測定した。
(HPLC)
日立製 L−2000を用い、試料の希釈倍率2000倍(アセトニトリル)、温度30℃、波長254nm、流量0.5mL/分の条件下、水/アセトニトリル(重量比)=30/70で30分、その後、水/アセトニトリル(重量比)=0/100で30分測定した。
(エポキシ当量)
JIS K7236(滴定法)により測定した。
(全塩素量)
TOX100燃焼法により測定した。
(粘度)
E型粘度計(コーンプレート型)を用い、900rpmの条件下で測定した。
(5重量%重量減少温度)
Tg/DTAを用い、30〜500℃、10℃/minの条件下で測定した。
(屈折率)
多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」(株式会社アタゴ製)を用い、光源波長589nm、測定温度25℃で測定した。
(曲げ試験(強さ・弾性率・曲げひずみ))
温度23℃および200℃における曲げ試験を以下の条件下で行った。
試験方法:JIS K 7171
試験温度:23℃、200℃
試験速度:5℃/min
支点間距離:64mm(支持台半径5mm)
試験装置:インストロン社製5582型万能材料試験機
試験片:丸のこ−ダイアモンド電着刃+♯400研磨紙仕上げ 80×10×4(mm)。
(Tgおよび線膨張係数)
TMA法によるガラス転移温度(Tg)および所定の温度範囲における線膨張係数を以下の条件下で測定した。
試験方法:JIS K 7197
昇温速度:5℃/分
測定モード:圧縮(荷重 20mN)
雰囲気:N(50ml/分)
試験装置:TMA8310(リガク製)
試験片:水切り切断砥石+♯400研磨紙仕上げ 10×5×3(mm)。
(Tg(動的粘弾性))
以下の条件で、動的粘弾性率の測定を行い、DMA法によるTgを得た。
試験装置:Rheogel−E4000
測定モード:温度依存性
チャック:引っ張り
条件:30Hz 測定温度範囲25〜280℃、ステップ温度=1℃、昇温速度=3℃/分
試験片:厚さ約500μm。
(合成例1)
三方コックを装着した内容積300mlのセパラブルフラスコに9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(特開2007−99741号公報の実施例1に準じて合成したもの)45.1重量部(0.1mol)とエピクロルヒドリン(関東化学製)92.0重量部(1.0mol)を仕込み、50℃まで昇温し溶解させ、反応器内を窒素置換した。
そして、反応器内に、フレークの水酸化ナトリウム10.0重量部(0.25mol)を、20分毎に4回に分けて、60℃前後を保持しながら添加し、約7時間攪拌して反応させた。
HPLCにて原料の消失を確認し、反応終了後、系内に残留しているエピクロルヒドリンを60℃、100Torrにて濃縮除去した後、メチルイソブチルケトン110gを投入し60℃で保持した。
その後、減圧ろ過を行い、反応時に生成した塩を除去した。続いて、30%水酸化ナトリウム水溶液66.0重量部(0.495mol)を80℃に保持しながら滴下し、全量滴下後、約1時間攪拌し、純水55重量部を加えた。さらに純水55重量部により洗浄を5回繰り返した後に、無水硫酸マグネシウム(関東化学製)15重量部を敷き詰めたろ紙を通して乾燥させた後、90℃、10torrにて15時間乾燥させた結果、33.58重量部の白色粉末(収率62.8%)を得た。得られた白色粉末をHPLC及びGPCにて分析した結果、純度85%以上で目的物(下記式で表される化合物、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン)を含む白色粉末であることを確認した。
Figure 2012102228
また、得られた白色粉末のエポキシ当量は311g/eq、全塩素量は2700ppm、180℃での溶融粘度は3200mPa・s、5重量%重量減少温度は382℃、屈折率(25℃、589nm(D線))は1.70であった。
(実施例1)
合成例1で得た白色粉末と、硬化剤としてのフェノールノボラック樹脂(群栄化学工業(株)製、PSM−4261、水酸基当量105、軟化温度約80℃)とを、前者/後者(当量比)=1/1で量りとり、二本ロール((株)井上製作所製、ロール回転数:フロント23.0rpm バック20.7rpm)を用いて160℃で5分間溶融混合した。溶融混合物に、硬化促進剤としてのトリフェニルホスフィンを1重量%の割合で添加し、再度、二本ロールを用いて110℃で3分間混合した。その後、得られた混合物を乳鉢で粉砕した。
粉砕した混合物を、金型にいれ、冷圧(約100kgf/cm)で押し固め、タブレットにした。そのタブレットを150℃に加熱した金型(150mm×150mm×0.5mm)に入れ、この金型をプレス機(26トン手動圧縮成形機、東邦プレス製)にセットし、100kgf/cmまでプレスした。その圧力のまま、15分間(初期温度で5分、150℃で10分)保持した後、冷却プレス(水冷)にて100kgf/cmで冷却した。得られた硬化物は、175℃の乾燥機で5時間ポストキュアさせた。
(合成例2)
合成例1において、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンに代えて、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、BPF)を使用したこと以外は、合成例1と同様にして白色粉末(収率90%以上)を得た。得られた白色粉末をHPLC及びGPCにて分析した結果、純度90%以上で下記式で表される化合物を含む白色粉末であることを確認した。
Figure 2012102228
(比較例1)
実施例1において、合成例1で得られた白色粉末に代えて合成例2で得られた白色粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、硬化物を得た。
(合成例3)
合成例1において、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンに代えて、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、BPEF)を使用したこと以外は、合成例1と同様にして粘稠物(収率90%以上)を得た。得られた粘稠物をHPLC及びGPCにて分析した結果、純度80%以上で下記式で表される化合物を含む粘稠物であることを確認した。
Figure 2012102228
(比較例2)
実施例1において、合成例1で得られた白色粉末に代えて合成例3で得られた白色粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、硬化物を得た。
(合成例4)
合成例1において、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンに代えて、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン(特開2001−206863号公報の実施例1に準じて合成したもの)を使用したこと以外は、合成例1と同様にして白色粉末(収率85%以上)を得た。得られた白色粉末をHPLC及びGPCにて分析した結果、純度85%以上で下記式で表される化合物を含む白色粉末であることを確認した。
Figure 2012102228
(比較例3)
実施例1において、合成例1で得られた白色粉末に代えて合成例4で得られた白色粉末を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、硬化物を得た。
(比較例4)
実施例1において、合成例1で得られた白色粉末に代えてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名828)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、硬化物を得た。
実施例1、比較例1〜4で得られた硬化物の各種物性データを表に示す。
Figure 2012102228
表の結果から明らかなように、実施例1で得られた硬化物は、汎用のビスフェノールA型エポキシ樹脂の硬化物と比べた場合はもちろんのこと、同様のフルオレン骨格を有するエポキシ化合物の硬化物に比べても、高い耐熱性および常温での高い曲げ弾性率を有しているにもかかわらず、高温では著しく曲げ弾性率が小さい。特に、BNFと同様に剛直な骨格を有するBOPPFのエポキシ化合物を用いた硬化物の場合(比較例3)と比較しても、Tgは高くかつ高温での曲げ弾性率は非常に小さいという結果が得られ、実施例1では、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物の硬化物の中でも、特異な硬化物が得られたことがわかる。
本発明の硬化性組成物(又はその硬化物)は、高耐熱性、低線膨張率などの優れた特性を有しつつ、高温における曲げ弾性率が著しく低いという特性を有している。また、フルオレン骨格を有しているため、顔料などの添加剤の分散性にも優れている。
このような本発明の硬化性組成物(又はその硬化物)は、電子部品の層間の絶縁材、プリント基板用のソルダーレジスト、カバーレイなどのレジスト材料などとして有用である他、カラーフィルター、インキ(印刷インキなど)、封止剤(半導体封止剤など)、塗料、コーティング剤、接着剤、粘着剤、アンダーフィル、帯電防止剤、充填材、導電部材又は導電材料、積層材料、感熱材料(感熱紙用材料など)、カーボン材料、絶縁材料、発泡体、感圧材料、光学材料(透明材料)[例えば、レンズ(リフローレンズ、ピックアップレンズ、マイクロレンズなど)、偏光膜、反射防止フィルム、タッチパネル用フィルム、フレキシブル基板用フィルム、ディスプレイ用フィルム、燃料電池用膜、光ファイバー、光導波路、ホログラム]などのあらゆる材料(電気・電子材料、光学材料など)として有用である。
特に、本発明の硬化性組成物は、高温での曲げ弾性率が低く、リフロー工程時の高温時の低弾性率による応力緩和によりクラックを有効に防止できるため、プリント配線板用途などに好適である。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表される化合物および硬化剤を含む硬化性組成物。
    Figure 2012102228
    (式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Rは水素原子又はメチル基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である。)
  2. 硬化剤が、不揮発性であるか又は150℃以上の沸点を有する請求項1記載の硬化性組成物。
  3. 硬化剤が、フェノール系硬化剤を含む請求項1又は2記載の硬化性組成物。
  4. さらに、硬化促進剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物が硬化した硬化物。
  6. 200℃における曲げ弾性率が12MPa以下である請求項5記載の硬化物。
  7. 23℃における曲げ弾性率が3200MPa以上、200℃における曲げ弾性率が10MPa以下である請求項5又は6記載の硬化物。
  8. TMA法によるガラス転移温度が180℃以上、23℃における曲げ弾性率が3400MPa以上、200℃における曲げ弾性率が8MPa以下である請求項5〜7のいずれかに記載の硬化物。
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