[エポキシ化合物]
本発明のエポキシ化合物(エポキシ樹脂)は、下記(A)および(B)から選択される。
(A)特定のポリヒドロキシ化合物とトリグリシジルイソシアヌレートとの反応物
(B)イソシアヌル酸と特定のポリエポキシ化合物との反応物
以下、各反応物について詳述する。
(反応物(A))
反応物(又はエポキシ化合物)(A)において、ポリヒドロキシ化合物は、下記式(a)で表される。
(式中、Zは芳香族炭化水素環、R1およびR2はエポキシ基に対して非反応性の置換基、R3はアルキレン基、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数、pは1以上の整数を示す。)
式(a)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素[例えば、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素など]環が挙げられる。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。好ましい環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれ、特に、ベンゼン環であってもよい。
前記式(a)において、基R1としては、エポキシ基に対する非反応性の置換基であれば特に限定されないが、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などが挙げられ、特に、アルキル基などである場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−12アルキル基(例えば、C1−8アルキル基、特にメチル基などのC1−4アルキル基)などが例示できる。なお、kが複数(2〜4)である場合、複数の基R1は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、異なるベンゼン環に置換した基R1は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、基R1の結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2および7位などが挙げられる。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、2つの置換数kは、同一又は異なっていてもよい。
環Zに置換する置換基R2としては、エポキシ基に対する非反応性基であればよく、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−8アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基など)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基などが挙げられる。
好ましい基R2としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。さらに好ましい基R2は、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであり、特に、アルキル基であってもよい。このような式(a)において、基R2を有するポリヒドロキシ化合物に対応するエポキシ化合物(ポリグリシジルエーテル)は、特に、無置換の化合物に比べて、耐熱性などにおいて優れる場合がある一方で、溶剤溶解性などに乏しい場合があるが、本発明のエポキシ化合物ではこのような置換基R2を有していても、ハンドリング性を向上又は改善できる。
同一の環Zにおいて、mが複数(2以上)である場合、基R2は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基R2は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数mは、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。特に、環Zがベンゼン環およびnが0であるとき、置換数mは1〜4(例えば、1〜3、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1)であってもよい。中でも、式(a)環Zがベンゼン環、nが0、置換数が1である化合物(例えば、R2がアルキル基、アリール基などである化合物)に対応するエポキシ化合物は、極めて、溶剤溶解性に乏しいなど、ハンドリング性において十分でない場合が多いが、本発明では、このような場合であっても、著しくハンドリング性を改善又は向上できる。なお、異なる環Zにおいて、置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
置換基R2の置換位置は、特に限定されず、基−O−(R3O)n−H(ヒドロキシル基含有基という)の置換位置に応じて、適当な置換位置に置換していてもよく、例えば、ヒドロキシル基含有基に対して少なくともオルト位に位置する炭素原子に置換されていてもよい。
アルキレン基R3としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基、特にエチレン基が挙げられる。なお、nが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、アルキレン基R3は同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
オキシアルキレン基(OR3)の数nは、0以上の整数であればよく、例えば、0〜20(例えば、0〜15)、好ましくは0〜10(例えば、0〜8)、さらに好ましくは0〜6(例えば、0〜4)、特に0〜3(例えば、0〜2)程度であってもよい。特に、nは0であってもよい。nが0であるとき(さらには、環Zがベンゼン環かつmが1以上(特に1)であるとき)、式(a)においてnが0であるポリヒドロキシ化合物を単純にエポキシ化した化合物(ポリグリシジルエーテル)に比べて、著しくハンドリング性を改善又は向上できる場合が多く、耐熱性などの特性を損なうこともなく、むしろこのような特性を向上できる場合もある。
一方、nが1以上(例えば、1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2)であってもよい。式(a)においてnが1以上のポリヒドロキシ化合物を単純にエポキシ化した化合物では、nが0の場合に比べてハンドリング性の向上又は改善しやすいものの、耐熱性などの特性を低下させやすいが、本発明では、トリアジン骨格と組み合わせることで、このような特性とハンドリング性とをバランスよく両立できるエポキシ化合物を得ることができる。なお、2p個のnは、それぞれ同一又は異なっていてもよい。
なお、前記式(a)において、環Zがベンゼン環、nが0およびpが1であるとき、通常、mは1〜4の整数(好ましくは1〜2、特に1)であってもよい。前記のように、このようなポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したエポキシ化合物は、ハンドリング性に極めて乏しい場合が多いが、本発明では、このようなポリヒドロキシ化合物由来の骨格とトリアジン骨格とを組み合わせることで、効率よくハンドリング性を改善又は向上できる。
環Zに置換するヒドロキシル基含有基の置換数pは、1以上である限り特に限定されないが、例えば、1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3、特に1〜2であってもよい。特に、環Zがベンゼン環である場合、pは、それぞれ、1〜2、特に1であってもよい。なお、ヒドロキシル基含有基の置換数pは、異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。
なお、ヒドロキシル基含有基の置換位置は、特に限定されず、環Zの種類に応じて適当な置換位置に置換していればよい。特に、環Zがベンゼン環である場合、ヒドロキシル基含有基は、ベンゼン環がフルオレンに結合した位置に対して3位(又はメタ位)又は4位(又はパラ位)、特に4位(パラ位)に少なくとも置換している場合が多い。また、ヒドロキシル基含有基は、縮合多環式炭化水素環Zにおいて、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
具体的な式(a)で表されるポリヒドロキシ化合物としては、nが0である化合物と、nが1以上である化合物とに大別できる。式(a)においてnが0である化合物としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン];9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン]などの9,9−ビス(ヒドロキシ−置換フェニル)フルオレン類}、9,9−ビス(ポリヒドロキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]など}、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類{又は9−フルオレニリデン−ジナフトール類、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなど]など}などが挙げられる。
式(a)において、nが1以上である化合物としては、前記nが0である化合物に対応する化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−ナフチル]フルオレンなど}などの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類などが挙げられる。
これらの中でも、特に、式(a)においてnが0であり、pが1であり、mが1である化合物{例えば、9,9−ビス(モノアルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(モノアリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノC6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン]など}であってもよい。このような化合物に対応するエポキシ化合物は、ハンドリング性に乏しい場合が多いが、同様にハンドリング性に極めて乏しいトリグリシジルイソシアヌレートと反応させることで、著しくハンドリング性を改善又は向上できる。
反応物(A)は、上記のようなポリヒドロキシ化合物とトリグリシジルイソシアヌレートとを反応させて得られるエポキシ化合物である。すなわち、ポリヒドロキシル化合物のヒドロキシル基とトリグリシジルイソシアヌレートのエポキシ基(グリシジル基)との反応(付加反応、開環付加反応)により、これらの化合物間にエポキシ基の開環を伴って結合(−O−CH2−CH(OH)−CH2−)が形成されるとともに、トリグリシジルイソシアヌレート由来のエポキシ基の一部が残存することでエポキシ化合物となる。
このような反応により得られる反応物は、やや多量体化(高分子量化)していてもよいが、通常、後述するように、ポリヒドロキシ化合物に対して大過剰のトリグリシジルイソシアヌレートを反応させることにより、主にモノマー単位(又は重合度1)の化合物(低分子量化合物)を得る場合が多い。
すなわち、反応物(A)は、代表的には、下記式(A1)で表されるエポキシ化合物(重合度1のエポキシ化合物)で構成されていてもよい。
[式中、Xは下記式
(式中、R3、nは前記と同じ。)で表される基を示し、Z、R1、R2、k、m、pは前記と同じ。]
なお、前記のように、反応物(A)は、オリゴマー(オリゴマー反応物)又は重合物や、ポリヒドロキシ化合物の一部がトリグリシジルイソシアヌレートと反応していない化合物(式(A1)においてXの一部が基−O−(R3O)n−Hのまま残存している化合物)などを含んでいてもよい。このような反応物(A)において、モノマー(又は重合度1の化合物、例えば、式(A1)で表されるエポキシ化合物)の割合は、例えば、60%以上(例えば、65〜100%)、好ましくは70%以上(例えば、75〜99%)、さらに好ましくは80%以上(例えば、85〜98%)、特に90%以上(例えば、90〜97%)であってもよい。なお、上記割合は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による面積比(面積%)を測定することにより求めることができる。
反応物(A)の分子量は、式(a)又は(A1)におけるpの値などに応じて適宜選択できるが、例えば、式(a)において環Zがベンゼン環かつnが0であるとき、反応物(A)の平均分子量は600〜1600、好ましくは700〜1400、好ましくは800〜1200程度であってもよい。また、反応物(A)の重合度[又は数平均重合度、すなわち、1分子中の9,9−ビスアリールフルオレン骨格(又は式(a)で表されるポリヒドロキシ化合物由来の骨格)の数(平均数)]は、例えば、1〜2、好ましくは1.1〜1.8、さらに好ましくは1.2〜1.6程度であってもよい。なお、分子量および重合度は、GPC、NMRなどにより測定できる。
反応物(A)のエポキシ当量は、式(a)又は(A1)におけるpの値などに応じて選択できるが、例えば、式(a)において環Zがベンゼン環かつnが0であるとき、反応物(A)のエポキシ当量は、例えば、120〜400g/eq(例えば、125〜350g/eq)、好ましくは130〜330g/eq(例えば、135〜320g/eq)、さらに好ましくは140〜300g/eq(例えば、145〜270g/eq)程度であってもよい。
反応物(A)は、前記のように、前記式(a)で表されるポリヒドロキシ化合物と、トリグリシジルイソシアヌレートとを反応させることで得ることができる。
反応において、ポリヒドロキシ化合物とトリグリシジルイソシアヌレートとの割合(使用割合)は、ポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル基(基−O−(R3O)n−H)1モルに対して、トリグリシジルイソシアヌレートのグリシジル基(エポキシ基)が1モル以上(例えば、1.5モル以上)となる割合であればよいが、通常、2モル以上(例えば、2.5〜30モル)、好ましくは3モル以上(例えば、3.5〜25モル)、さらに好ましくは4モル以上(例えば、5〜20モル)、特に6モル以上(例えば、6.5〜18モル)、特に好ましくは7モル以上(例えば、8〜15モル)、通常8モル以上(例えば、9〜20モル)程度となる割合であってもよい。このような割合で反応させると、オリゴマー(又はポリマー)化を効率よく抑えつつ、所望のエポキシ化合物を得やすい。なお、特許文献3および4では、両者の比率を大きくしすぎると、反応がうまく進行しなくなったり、副反応が生じやすくなることが示唆されているが、式(a)で表されるポリヒドロキシ化合物とトリグリシジルイソシアヌレートとを組み合わせる系では、多量体化を抑えつつ、効率よく反応させるため、上記のような割合で反応させるのが好ましい。
反応では、適宜、触媒を使用してもよい。触媒としては、塩基(塩基触媒)、例えば、金属炭酸塩(炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩など)、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物など)、アンモニアなどの無機塩基;アミン類、塩基性イオン交換樹脂(例えば、第4級アンモニウム塩基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂など)などの有機塩基などが例示できる。塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
触媒(例えば、塩基触媒)の使用量は、触媒の種類にもよるが、例えば、前記式(a)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、0.5〜30モル当量、好ましくは1〜20モル当量、さらに好ましくは1.2〜10モル当量程度であってもよい。
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、ケトン類(アセトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのアルキルケトンなど)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類(メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミドなど)、ニトリル類、セロソルブ類、、スルホキシド類、芳香族炭化水素(トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、30〜120℃、好ましくは35〜100℃、さらに好ましくは40〜70℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは3〜24時間程度であってもよい。
反応は、還流しながら行ってもよく、副生成分を除去しながら行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
なお、生成した化合物(反応物(A))は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
なお、このような分離精製により、反応物(A)を得ることができるが、反応物(A)には、実害のない範囲であれば、未反応成分(下記式(a)で表される化合物、トリグリシジルイソシアヌレート)を含んでいてもよい。
(反応物(B))
反応物(又はエポキシ化合物)(B)において、ポリエポキシ化合物は、下記式(b)で表される。
(式中、Z、R1、R2、R3、k、m、n、pは前記と同じ。)
すなわち、式(b)で表されるポリエポキシ化合物は、前記式(a)で表されるポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル含有基(−O−(R3O)n−H)を構成するヒドロキシル基のすべてがグリシジルエーテル化された(グリシジル基に置換した)化合物に対応する。そして、このような式(b)において、Z、R1、R2、R3、k、m、n、pは、好ましい態様も含めて前記と同じである。
具体的な式(b)で表されるポリエポキシ化合物としては、nが0である化合物と、nが1以上である化合物とに大別できる。式(b)においてnが0である化合物としては、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン];9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリール−グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−グリシジルオキシフェニル)フルオレン]などの9,9−ビス(グリシジルオキシ−置換フェニル)フルオレン類}、9,9−ビス(ポリグリシジルオキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(ジ又はトリグリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジグリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]など}、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレンなど]など}などが挙げられる。
式(a)において、nが1以上である化合物としては、前記nが0である化合物に対応する化合物、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アリール−グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−グリシジルオキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−グリシジルオキシエトキシ)−1−ナフチル]フルオレンなど}などの9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類などが挙げられる。
反応物(B)は、上記のようなイソシアヌル酸とポリエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ化合物である。すなわち、イソシアヌル酸のイミノ基(−NH−)とポリエポキシ化合物のエポキシ基(グリシジル基)との反応(付加反応、開環付加反応)により、これらの化合物間にエポキシ基の開環を伴って結合(−O−CH2−CH(OH)−CH2−)が形成されるとともに、ポリエポキシ化合物由来のエポキシ基の一部が残存することでエポキシ化合物となる。
このような反応により得られる反応物は、反応物(A)の場合と同様に、やや多量体化(高分子量化)していてもよいが、通常、後述するように、イソシアヌル酸に対して大過剰のポリエポキシ化合物を反応させることにより、主にモノマー単位(又は重合度1)の化合物(低分子量化合物)を得る場合が多い。
反応物(B)は、代表的には、下記式(B1)で表されるエポキシ化合物(重合度1のエポキシ化合物)で構成されていてもよい。
[式中、Yは下記式
(式中、Z、R1、R2、R3、k、m、n、pは前記と同じ。)で表される基を示す。]
なお、前記のように、反応物(B)は、オリゴマー(オリゴマー反応物)又は重合物やイソシアヌル酸のイミノ基の一部が反応していない化合物(式(B1)においてYの一部が水素原子のまま残存している化合物)を含んでいてもよい。このような反応物(B)において、モノマー(又は重合度1の化合物、例えば、式(B1)で表されるエポキシ化合物)の割合は、例えば、60%以上(例えば、65〜100%)、好ましくは70%以上(例えば、75〜99%)、さらに好ましくは80%以上(例えば、85〜98%)、特に90%以上(例えば、90〜97%)であってもよい。なお、上記割合は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による面積比(面積%)を測定することにより求めることができる。なお、上記割合は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による面積比(面積%)を測定することにより求めることができる。
反応物(B)は、前記のように、イソシアヌル酸と前記式(b)で表されるポリエポキシ化合物とを反応させることで得ることができる。
なお、式(b)で表されるポリエポキシ化合物は、市販品を利用してもよく、慣用の方法(例えば、前記式(a)で表される化合物とエピクロロヒドリンとの反応)により合成したものを使用してもよい。
反応において、イソシアヌル酸とポリエポキシ化合物の割合(使用割合)は、イソシアヌル酸の窒素原子(又はイミノ基、−NH−)1モルに対して、ポリエポキシ化合物のグリシジル基(又はエポキシ基)が1モル以上(例えば、1.5モル以上)となる割合であればよいが、通常、2モル以上(例えば、2.5〜30モル)、好ましくは3モル以上(例えば、3.5〜25モル)、さらに好ましくは4モル以上(例えば、5〜20モル)、特に6モル以上(例えば、6.5〜18モル)、特に好ましくは7モル以上(例えば、8〜15モル)程度となる割合であってもよい。このような割合で反応させると、オリゴマー(又はポリマー)化を効率よく抑えつつ、所望のエポキシ化合物を得やすい。
反応では、適宜、触媒を使用してもよい。触媒としては、反応物(A)の項で例示した同様の触媒(塩基触媒)が利用できる。
触媒(例えば、塩基触媒)の使用量は、触媒の種類にもよるが、例えば、イソシアヌル酸の窒素原子(又はイミノ基)1モルに対して、例えば、0.5〜30モル当量、好ましくは1〜20モル当量、さらに好ましくは1.2〜10モル当量程度であってもよい。
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、前記と同様の溶媒が挙げられる。また、反応温度や反応時間も、反応物(A)を得る場合と同様の範囲から選択できる。
反応は、還流しながら行ってもよく、副生成分を除去しながら行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
なお、生成した化合物(反応物(B))は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
なお、このような分離精製により、反応物(B)を得ることができるが、反応物(B)には、実害のない範囲であれば、未反応成分(イソシアヌル酸、下記式(b)で表される化合物)を含んでいてもよい。
これらのエポキシ化合物のうち、好ましいエポキシ化合物は、製法上の観点などから、反応物(A)である。特に、反応物(A)の中でも、式(a)又は(A1)においてnが0であるエポキシ化合物と、nが1以上であるエポキシ化合物とを用途や所望の特性に応じて適宜選択して使用可能である。例えば、式(a)又は(A1)においてnが0であるエポキシ化合物は、非常に高い耐熱性などの特性を有しているにもかかわらず、ハンドリング性にも優れており、また、少なくとも4個のエポキシ基を有する多官能性のエポキシ化合物であり、好適に使用可能である。また、式(a)又は(A1)においてnが1以上(例えば、1〜2)であるエポキシ化合物は、ハンドリング性における改善又は向上効果が高く、高耐熱性、可撓性(柔軟性)などの特性もバランスよく備えた多官能性のエポキシ化合物であるという点で好適である。
(エポキシ化合物の特性)
本発明のエポキシ化合物(反応物(A)および反応物(B))は、高耐熱性などの優れた特性を有し、しかも、ハンドリング性においても優れている。
例えば、本発明のエポキシ化合物の5重量%減少温度は、例えば、180℃以上(例えば、180〜230℃)、好ましくは190〜220℃、さらに好ましくは200〜210℃程度であってもよい。
また、本発明のエポキシ化合物は、ハンドリング性においても優れている。例えば、本発明のエポキシ化合物は、汎用の溶媒に溶解可能である場合が多い。
[エポキシ化合物の用途]
本発明のエポキシ化合物は、前記のように、少なくとも3つ個エポキシ基を有する多官能性であるとともに、多くの芳香族骨格やイソシアヌル酸骨格を有しているにもかかわらず、ハンドリン性に優れるという特徴がある。そのため、本発明のエポキシ化合物は、優れた特性(高耐熱性、高屈折率、高強度など)を有していながら、成形性にも優れるバランスの良いエポキシ化合物である。
このような本発明のエポキシ化合物は、硬化性組成物を構成してもよい。このような硬化性組成物(エポキシ樹脂組成物)を含む。なお、硬化性組成物を構成するエポキシ成分(エポキシ樹脂成分)は、前記エポキシ化合物(反応物(A)及び/又は反応物(B))のみで構成してもよく、所望の特性を損なわない範囲であれば、他のエポキシ化合物(エポキシ樹脂)を含んでいてもよい。他のエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール(又はクレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂(トリフェノールメタン型エポキシ樹脂など)、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂(キサンテン単位を含むエポキシ樹脂を含む)、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂(1,6−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス(2,7−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン)アルカンなどのナフタレン環含有エポキシ樹脂など)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有する他のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
他のエポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ成分全体に対する前記エポキシ化合物の割合は、例えば、50〜99.5重量%、好ましくは70〜99重量%(例えば、80〜98.5重量%)、さらに好ましくは90〜98重量%程度であってもよい。
硬化性組成物は、通常、さらに、硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤(エポキシ樹脂用硬化剤)としては、例えば、アミン系硬化剤[特に、第1級アミン、例えば、鎖状脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン類)など、環状脂肪族アミン(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどの単環式脂肪族ポリアミン;ノルボルナンジアミンなどの架橋環式ポリアミンなど)、芳香脂肪族ポリアミン(例えば、キシリレンジアミンなど)、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)など]、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤(例えば、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族系酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの脂環族系酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などの芳香族系酸無水物)、フェノール系硬化剤{例えば、フェノール樹脂(フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、アラルキルノボラック樹脂などのノボラック樹脂など);フルオレン骨格を有するフェノール類[例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど)、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン)、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン)などの9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類など]などのフェノール化合物}などが挙げられる。これらの硬化剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
硬化性組成物において、硬化剤の割合は、エポキシ樹脂成分のエポキシ基1モルに対して、硬化剤の官能基が0.1〜5.0モル、好ましくは0.3〜2.0モル(例えば、0.5〜1.5モル)、さらに好ましくは0.7〜1.2モル(例えば、0.9〜1.1モル)となるように、両成分の割合を調整してもよい。
硬化性組成物は、さらに、硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、硬化剤の種類などに応じて選択でき、例えば、アミン類[例えば、第3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−1など)、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾールなど)およびその誘導体(例えば、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などの塩)など]、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、ホスフィン類(トリフェニルホスフィンなど)、アミド化合物(ダイマー酸ポリアミドなど)、ルイス酸錯体化合物(3フッ化ホウ素・エチルアミン錯体など)、硫黄化合物[ポリサルファイド、メルカプタン化合物(チオール化合物)など]、ホウ素化合物(フェニルジクロロボランなど)、縮合性有機金属化合物(有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物など)などが挙げられる。硬化促進剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
硬化促進剤の割合(添加量)は、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部程度であってもよい。
硬化性組成物は、必要に応じて、希釈剤(単官能性エポキシ化合物などの反応性希釈剤、溶媒など)の他、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤などを含んでいてもよい。希釈剤や添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明には、前記硬化性組成物が硬化(又は架橋)した硬化物(又は成形体)も含まれる。このような硬化物は、前記硬化性組成物を反応させる(硬化処理する)ことにより得ることができる。このような硬化処理は、硬化物の形状に応じて、硬化性組成物を成形しつつ又は成形(又は予備成形)した後、行ってもよい。なお、硬化物の形状としては、三次元的硬化物、硬化膜や硬化パターンなどの一次元又は二次元的硬化物、点又はドット状硬化物などが挙げられる。具体的には、前記成形体は、前記硬化性組成物の硬化物で形成された所望の形状の製品、基材上に形成された前記硬化性組成物の硬化物で形成された硬化膜(塗膜)などであってもよい。例えば、前記硬化性組成物を、加熱溶融し、所定の型に流し込んで加熱することにより硬化し、所望の形状の成形体を得ることができる。また、硬化膜は、液状の前記硬化性組成物を、基材上に塗布し、乾燥し、次いで加熱することにより、基材上に形成することができる。成形方法および硬化条件は特に限定されないが、例えば、所定の金型を用いて成形する場合には、加熱加圧による成形法やコールドプレスと呼ばれる低温成形法が用いられる。
なお、硬化性組成物を加熱溶融させる場合、加熱温度は、例えば、80℃以上(例えば、90〜400℃)、好ましくは100℃以上(例えば、110〜350℃)、さらに好ましくは120℃以上(例えば、130〜300℃)、特に140〜250℃(例えば、145〜220℃)程度であってもよく、通常100〜200℃(例えば、120〜180℃)程度であってもよい。
硬化処理は、加熱などにより行うことができ、これらを組み合わせて行ってもよい。通常、少なくとも加熱により硬化処理を行う場合が多い。
硬化処理において、加熱温度としては、例えば、50〜250℃、好ましくは70〜220℃、さらに好ましくは80〜200℃(例えば、100〜190℃)程度であってもよい。また、加熱時間は、例えば、10分〜24時間、好ましくは30分〜18時間、さらに好ましくは1〜12時間(例えば、2〜8時間)程度であってもよい。なお、硬化処理は段階的に行ってもよく、例えば、比較的低温で加熱処理したのち、比較的高温(例えば、150〜350℃、好ましくは160〜300℃程度)で加熱処理してもよい。
また、硬化物を膜状(フィルム状、薄膜状)に形成する場合には、前記硬化性組成物を、基板(又は基体)に塗布することにより形成してもよい。基板は、例えば、樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁性基板、結晶シリコンやアモルファスシリコンなどの半導体基板、金属などの導体基板、これらの基板上に導体層を形成したもの、さらにはこれらを複合したものなどが挙げられる。
基板に塗膜(薄膜)を形成する塗布法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法、スリットコーティング法、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
塗膜の厚みは、硬化物の用途に応じて、例えば、0.01μm〜10mm、好ましくは0.05μm〜1mm、さらに好ましくは0.1〜100μm程度であってもよい。
基板に塗布した前記樹脂組成物は、必要に応じて、乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、公知の方法を用いて行うことができる。乾燥処理は、例えば、常圧下、加圧下または減圧下において行ってもよく、加熱手段(ホットプレート、オーブンなど)により加温して行ってもよい。加温時の温度は、使用する溶媒や乾燥方法によっても異なるが、通常、40〜200℃、好ましくは50〜170℃、さらに好ましくは60〜150℃程度であってもよい。
基板に塗布された塗膜は、上記のように、必要に応じて乾燥処理されたのち、通常、硬化処理される。硬化処理において、加熱温度や加熱時間は、前記と同様の範囲から選択できる。
このようにして得られる硬化物は、高耐熱性、高い機械的特性、高屈折率などの特性を有している。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、各種特性の測定は以下の方法によって行った。
(ガラス転移温度(Tg))
熱分析装置(DMA、SII製、「EXSTAR DMS6100」)により、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
(分子量)
高速GPC装置(東ソー製、「HLC−8320GPC」)により、分子量を測定した。
(エポキシ当量)
自動滴定装置(三菱化学アナリテック製、「GT100」)により、エポキシ当量を測定した。
(溶融粘度)
ICI粘度計(コーン&プレート型、ブルックフィールド社製粘度計 CAP2000+H)を用い、コーン3にて900rpmで150℃まで加温して測定した。
(実施例1)
撹拌機、冷却管およびビュレットを備えた内容積2Lの容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、BCF)73.0g(0.193mol)とトリグリシジルイソシアヌレート400g(1.35mol、ヒドロキシル基1モルに対してグリシジル基10.5モルとなる割合)、ジメチルホルムアミド720gを仕込み、60℃で撹拌して原料を溶解させた。その後、15分おきに6回に分けて水酸化ナトリウム23.2g(0.579mol、ヒドロキシ基1モルに対して1.5モルとなる割合)を加えて、60℃で9時間撹拌した。反応終了後、セライトろ過し、得られた反応液をエバポレーターで減圧留去した。溶媒留去後、メチルイソブチルケトン200ml、蒸留水200mlを加えて、80℃で水洗した。得られた有機層をエバポレーターにて減圧蒸留した後、さらに、乾燥機にて乾燥させて淡黄色固体を得た。得られた化合物にメチルエチルケトンを加えて50℃で加熱した後、上澄み液を回収し、フィルターろ過した。ろ液をエバポレーターで濃縮および乾燥させ、生成物を得た。
生成物を分析(FD−MSおよびGPCにより分析)したところ、下記構造を有する化合物を主成分として含んでいることを確認した。
得られた生成物1重量部に対してメチルエチルケトン4重量部を50℃で1時間攪拌混合(すなわち、生成物20重量%の割合で混合)したところ、生成物はメチルエチルケトンに完全に溶解していた。
また、得られた生成物の150℃における溶融粘度は779mPa・sであった。また、生成物を含む硬化物のガラス転移温度は199℃であった。なお、硬化物は、生成物100重量部、フェノールノボラック硬化剤(群栄化学工業(株)製、「PSM−4261」)69重量部、硬化触媒としてトリフェニルホスフィン1.7重量部を含む硬化性組成物を175℃で5時間硬化処理したものを用いた。
(比較例1)
9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)とエピクロロヒドリンとを反応させて合成したもの。以下、BCFGという]を実施例1と同様に20重量%の割合でメチルエチルケトンに50℃で1時間攪拌混合したが、全く溶解しなかった。このように溶解しなかったため、さらに、低濃度である10重量%に変えて50℃で1時間、攪拌混合したが、同様に全く溶解しなかった。
(比較例2)
トリグリシジルイソシアヌレートを実施例1と同様に20重量%の割合でメチルエチルケトンに50℃で1時間混合したが、全く溶解しなかった。