[式(1)で表されるエポキシ化合物]
本発明のエポキシ化合物は、下記式(1)で表される。
(式中、Xは直接結合、酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基、スルホニル基又は炭化水素基を示し、環Zは芳香族炭化水素環を示し、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2はアルキレン基を示し、R3は置換基を示し、mは0以上の整数、nは0以上の整数、pは1以上の整数である。)
上記式(1)において、Xは直接結合、酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基(−SO−)、スルホニル(−SO2−)基、又は炭化水素基である。炭化水素基としては、例えば、鎖状脂肪族炭化水素基{例えば、アルキレン基(アルキリデン基を含む、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロパン−2,2−ジイル基、テトラメチレン基、ブタン−2,2−ジイル基、オクタン−2,2−ジイル基などのC1−20アルキレン基、好ましくはC1−10アルキレン基、さらに好ましくはC1−6アルキレン基など)などの飽和脂肪族炭化水素基}、脂環族炭化水素基{例えば、シクロアルキレン基[例えば、シクロヘキシレン基(1,4−シクロヘキシレン基などのC4−10シクロアルキレン基、好ましくはC5−8シクロアルキレン基)などの飽和脂環族炭化水素基]などの脂肪族炭化水素基;アリーレン基(フェニレン基、ナフタレンジイル基、フェナントレンジイル基、アントラセンジイル基などのC6−15アリーレン基、好ましくはC6−10アリーレン基)、アリーレンジアルキレン(アリーレンジアルキリデンを含む、例えば、m−フェニレンジイソプロピリデン基などのC6−10アリーレンジC1−4アルキレン基)、環集合芳香族炭化水素基(ビフェニル、フルオレン−9,9−ジイル基など)などの芳香族炭化水素基などが例示できる。
代表的なXには、アルキレン基(例えば、プロパン−2,2−ジイル基などのC1−4アルキリデン基)、9,9−フルオレンジイル基などが含まれる。特に、Xは9,9−フルオレンジイル基(9−フルオレニリデン基)であってもよい。
なお、炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述のR3やR4の項などで例示の基、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基(メチル基などのC1−4アルキル基など)などが挙げられる。置換基は単独で又は2種以上組み合わせて炭化水素基に置換していてもよい。
前記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環(詳細には、少なくともベンゼン環を含む縮合多環式炭化水素環)などが挙げられる。縮合多環式芳香族炭化水素環に対応する縮合多環式芳香族炭化水素としては、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素としては、ナフタレン、アントラセンなどが挙げられ、特にナフタレンが好ましい。なお、複数の環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
好ましい環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環(特にベンゼン環)が含まれる。
前記式(1)において、基R1は、水素原子又はメチル基であり、好ましいR1は水素原子である。
また、前記式(1)において、基R2で表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2−プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、複数の環Zにおいて、基R2は同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
オキシアルキレン基(OR2)の数(付加モル数)mは、0〜12(例えば、1〜12)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜8(例えば、1〜8)、好ましくは0〜6(例えば、1〜6)、さらに好ましくは0〜4(例えば、1〜4)、特に0〜2であってもよく、通常1以上(例えば、1〜4、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1)であってもよい。なお、置換数mは、複数の環Zに対して、同一であっても、異なっていてもよい。
環Zに置換する置換基R3としては、通常、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(又はトリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基など)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ナフチル基などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−20アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などのエーテル基(置換ヒドロキシル基);アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−20アルキルチオ基、好ましくはC1−8アルキルチオ基、さらに好ましくはC1−6アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)などのチオエーテル基(置換メルカプト基);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
これらのうち、代表的には、基R3は、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基であってもよい。
好ましいR3としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)などが挙げられる。特に、R3は、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであるのが好ましい。
なお、同一の環Zにおいて、nが複数(2以上)である場合、基R3は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、複数の環Zにおいて、基R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数nは、0〜8、好ましくは0〜6(例えば、1〜5)、さらに好ましくは0〜4、特に0〜2(例えば、0〜1)であってもよい。なお、複数の環Zにおいて、置換数nは、互いに同一又は異なっていてもよい。
また、前記式(1)において、pは1以上であればよく、例えば、1〜20(例えば、1〜15)、好ましくは1〜10(例えば、1〜8)、さらに好ましくは1〜6(例えば、1〜4)、特に1〜2(例えば、1)であってもよい。
なお、前記のように、前記式(1)において、好ましいXには9,9−フルオレンジイル基が含まれる。このようなXが9,9−フルオレンジイル基(フルオレン−9,9−ジイル基)である化合物は、例えば、下記式(1A)で表される化合物であってもよい。
(式中、R4は置換基を示し、qは0〜4の整数を示し、Z、R1、R2、R3、m、n、pは前記と同じ。)
上記式(1A)において、基R4としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、qが複数(2以上)である場合、基R4は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基R4は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基R4の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数qは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数qは、互いに同一又は異なっていてもよい。
なお、前記式(1A)において、Z、R1、R2、R3、m、n、pは前記と同じであり、好ましい態様なども前記と同様である。
後述するように前記式(1)で表される化合物は、前記式(1)で表される化合物に対応するビスフェノール類(後述の式(2)で表される化合物)と、後述の式(3)で表される化合物(エピクロロヒドリンなど)とを原料として得られる。
代表的な前記ビスフェノール類としては、例えば、ビフェノール類[4,4’−ジヒドロキシビフェニルなど]などの式(2)においてXが直接結合である化合物;ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テルなど)の式(2)においてXが酸素原子である化合物;ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類(4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドなど)などの式(2)においてXが硫黄原子である化合物;ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドなど)などの式(2)においてXがスルフィニル基である化合物;ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなど)などの式(2)においてXがスルホニル基である化合物;ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類{例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカン、好ましくはビス(ヒドロキシフェニル)C1−8アルカン}、ビス(ヒドロキシフェニルアリール)アルカン類{例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,3’−ビフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシビフェニリル)C1−10アルカン}などの式(2)においてXが脂肪族炭化水素基(アルキレン基など)である化合物;ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類{例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)C5−10シクロアルカン}などの式(2)においてXが脂環族炭化水素基である化合物;ビス(ヒドロキシフェニル−アルキル)アレーン類[例えば、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールなどのビス(ヒドロキシフェニル−C1−4アルキル)C6−10アレーン]、前記式(1A)で表される化合物に対応するビスフェノール類[例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類]などの式(2)においてXが芳香族炭化水素基である化合物などが挙げられる。
9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ヒドロキシ−アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ヒドロキシ−アリールフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−モノ又はジC6−10アリールフェニル)フルオレン]などの9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;これらの化合物に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)フルオレン類(式(2)又は(2A)においてmが1である化合物)、9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシアリール)フルオレン類(式(2)又は(2A)においてmが2以上である化合物)などが挙げられる。
9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシ−アルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−4アルキルフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシ−アリールフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−C6−10アリールフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類;これらの化合物に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類などが挙げられる。
9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシアリール)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)フルオレン類に対応し、mが2以上(例えば、2〜4)である化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシジ乃至テトラアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシジ乃至テトラアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{6−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]−2−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
[式(1)で表されるエポキシ化合物の製造方法]
前記式(1)で表される化合物は、特に制限されないが、通常、塩基触媒の存在下で、特定条件下、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを反応させることにより製造できる。
(式中、X、Z、R2、R3、m、nは前記と同じ。)
(式中、R5はハロゲン原子を示し、R1、R2は前記と同じ。)
前記式(2)で表される化合物としては、前記例示の化合物[例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類など]などが挙げられる。
これらのうち、特に、式(2)おいて、Xが9−フルオレニリデン基である化合物としては、例えば、下記式(2A)で表される化合物などが挙げられる。
(式中、Z、R2、R3、R4、m、n、qは前記と同じ。)
上記式(2A)で表される化合物としては、前記例示の化合物などが挙げられる。
また、前記式(3)で表される化合物において、基R5で表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、塩素原子、臭素原子(特に塩素原子)が好ましい。具体的な前記式(3)で表される化合物には、エピハロヒドリン[又はハロメチルオキシラン、例えば、エピクロロヒドリン(クロロメチルオキシラン)、エピブロモヒドリン(ブロモメチルオキシラン)など]、1−ハロメチル−2−メチルオキシラン(1−クロロメチル−2−メチルオキシランなど)などが挙げられる。
そして、前記式(2)で表される化合物と、前記式(3)で表される化合物とを反応させる。通常、まず、この反応において、これらの成分の使用割合を特定の割合に調整することにより、前記式(1)で表される二級ヒドロキシル基を有しないエポキシ化合物(又はこのエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂)を効率よく得ることができる。例えば、前記式(3)で表される化合物の使用割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、2〜8モル程度の範囲から選択でき、好ましくは2.1〜6モル(例えば、2.2〜5.5モル)、さらに好ましくは2.3〜5モル(例えば、2.4〜4.5モル)、特に2.5〜4.2モル(例えば、2.6〜4モル)程度である。
上記のように、このような比較的少ない割合で前記式(3)で表される化合物を使用する。なお、エポキシ樹脂の多量化の程度は、ビスフェノール類に対して用いるエピクロロヒドリンなどの前記式(3)で表される化合物の割合を調整することにより調整できることが知られている。すなわち、多量化度(重合度)nが1以下程度のエポキシ樹脂(単量体、二量体などを多く含むエポキシ樹脂)は、ビスフェノール類1モルに対して、理論量(2モル)よりもはるかに多い量(例えば、10モル以上)を用いることにより得られ、理論量に近づけると重合度nを大きくできることが一般的に知られている。そして、前記のように、多量化(重合)により、二級ヒドロキシル基を有するエポキシ樹脂が得られるが、本発明では、上記のような一般的に多量化する条件で前記式(3)で表される化合物を使用するにもかかわらず、さらに塩基触媒の使用量を調整するなどにより、従来にない二級ヒドロキシル基を有しないエポキシ樹脂(エポキシ化合物の多量体)を得ることができる。
塩基触媒としては、例えば、金属炭酸塩(炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩など)、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)、金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物など)、アンモニアなどの無機塩基;アミン類[例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどのベンジルジアルキルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、ピリジンなどの複素環式第3級アミン)など]、塩基性イオン交換樹脂(例えば、第4級アンモニウム塩基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂など)などの有機塩基などが例示できる。塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
好ましい塩基触媒は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物である。
本発明のエポキシ化合物を得る上で、塩基触媒の使用割合もまた重要である。塩基触媒の使用割合は、例えば、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、2.3〜7モル当量、好ましくは2.4〜6モル当量(例えば、2.45〜5.5モル当量)、さらに好ましくは2.5〜5モル当量(例えば、2.55〜4.5モル当量)、特に2.6〜4モル当量(例えば、2.65〜3.5モル当量)程度であり、通常2.5〜3.5モル当量程度であってもよい。通常、エポキシ樹脂の製造においては、塩基触媒(水酸化ナトリウムなど)の使用割合は、理論量(ビスフェノール類1モルに対して2モル当量)又はその付近(〜2.2モル程度)を使用して行う場合が多いが、本発明のエポキシ化合物の場合には、上記のような比較的多量の塩基触媒を使用する。
塩基触媒を反応系に存在させる方法としては、特に限定されず、式(2)で表される化合物および式(3)で表される化合物を含む反応系中に、その全量を混合してもよく、段階的に又は連続的に滴下などにより混合してもよい。塩基触媒の混合により、反応熱が生じるため、通常、塩基触媒は段階的に又は連続的に混合する場合が多い。このような場合、混合に要する時間は、例えば、20〜600分(例えば、30〜480分)、好ましくは40〜420分(例えば、50〜360分)、さらに好ましくは60〜330分(例えば、80〜300分)、特に90〜270分(例えば、120〜240分)程度であってもよく、通常120〜300分程度であってもよい。
なお、反応系における塩基触媒の濃度も前記式(1)で表されるエポキシ化合物を得るうえで重要であるようであり、理由は定かではないが反応系における塩基触媒濃度を大きくすることにより多量化に伴う二級ヒドロキシル基の生成を効率よく抑えることができるようである。なお、反応系中の塩基触媒濃度とは、多量化に伴って生成するハロゲン化水素との反応(中和)に消費される塩基触媒を含まず、実質的に触媒として作用する塩基触媒濃度を意味する。このような反応系中の塩基触媒濃度は、反応温度などの反応速度に寄与する反応条件によって異なるが、反応系中に混合する塩基触媒の割合や、反応系に存在する成分(前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物に加えて、後述の溶媒成分などを含む)の割合を調整することになどにより調整できる。
例えば、塩基触媒を反応系に段階的に又は連続的に混合する場合、一分間あたりに混合する塩基触媒の割合(混合速度)は、前記式(2)で表される化合物換算で、例えば、0.008〜0.05モル当量/分(例えば、0.009〜0.048モル当量/分)、好ましくは0.01〜0.04モル当量/分(例えば、0.012〜0.035モル当量/分)、さらに好ましくは0.0125〜0.04モル当量/分(例えば、0.0127〜0.035モル当量/分)、特に0.013〜0.03モル当量/分(例えば、0.0132〜0.025モル当量/分)程度であってもよく、通常0.013〜0.22モル当量/分程度であってもよい。
また、反応は、相間移動触媒の存在下で行ってもよい。相間移動触媒としては、例えば、アンモニウム塩[例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイドなどのテトラC1−20アルキルアンモニウムハライド、好ましくはテトラC1−10アルキルアンモニウムハライド、さらに好ましくはテトラC1−6アルキルアンモニウムハライドなど;メチルトリオクチルアンモニウムクロライド、メチルトリデシルアンモニウムクロライドなどのモノC1−4アルキル−トリC6−20アルキルアンモニウムハライド、好ましくはモノC1−2アルキル−トリC7−16アルキルアンモニウムハライドなど)、アラルキルトリアルキルアンモニウム塩(例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどのベンジルトリC1−4アルキルアンモニウムハライド、好ましくはベンジルトリC1−2アルキルアンモニウムハライドなど)など]などが挙げられる。相間移動触媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。好ましい相間移動触媒としては、テトラアルキルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
相間移動触媒の使用量は、例えば、前記式(2)で表される化合物および前記式(3)で表される化合物の総量100重量部に対して、例えば、0.08〜10重量部、好ましくは0.1〜6重量部(例えば、0.15〜5重量部)、さらに好ましくは0.2〜3重量部(例えば、0.25〜2.5重量部)程度であってもよい。
反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。溶媒(有機溶媒)としては、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類、アニソールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなどのジアルキルケトン類など)などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。本発明のエポキシ化合物を得る場合には、通常、液体である式(3)で表される化合物(エピクロロヒドリンなど)を前記のように比較的小割合で使用するため、溶媒を使用する場合が多い。
なお、溶媒の使用割合は、前記式(2)で表される化合物および前記式(3)で表される化合物の総量100重量部に対して、例えば、10〜300重量部(例えば、15〜250重量部)、好ましくは20〜200重量部(例えば、25〜180重量部)、さらに好ましくは30〜150重量部(例えば、35〜120重量部)、特に40〜100重量部(例えば、45〜90重量部)程度であってもよい。
反応系中の前記式(2)で表される化合物の濃度は、例えば、10〜60重量%(例えば、15〜55重量%)、好ましくは15〜50重量%(例えば、18〜47重量%)、さらに好ましくは20〜45重量%(例えば、22〜42重量%)、特に25〜40重量%程度であってもよい。
このような濃度は、前記塩基触媒の混合速度などと相まって、本発明のエポキシ化合物を得るうえで重要である。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、30〜120℃、好ましくは35〜100℃、さらに好ましくは40〜70℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間、さらに好ましくは3〜18時間程度であってもよい。なお、反応時間は、前記のように塩基触媒を段階的に又は連続的に混合する場合には、その混合に要する時間およびその後の放置時間を合わせた総時間であってもよい。
反応は、還流しながら行ってもよく、副生成分を除去しながら行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。特に、減圧下で反応させると、着色を低減したり、反応時間を短縮できる。
なお、反応生成物(前記式(1)で表されるエポキシ化合物又はこの化合物を含むエポキシ樹脂)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
反応生成物(エポキシ樹脂成分)は、前記式(1)で表されるエポキシ化合物のみで構成されていてもよいが、通常、前記式(1)で表されるエポキシ化合物と、前記式(1)で表される化合物の範疇に属さない副生成物としてのエポキシ化合物[例えば、前記式(1)において、pが0である化合物(単量体)、前記式(1)で表される化合物に対応し、二級ヒドロキシル基を有するエポキシ化合物(多量体)など]が含まれている。このような反応生成物(エポキシ樹脂)において、前記式(1)で表される化合物の割合は、例えば、反応生成物全体に対して1〜100重量%(例えば、2〜70重量%)、好ましくは3〜50重量%(例えば、4〜40重量%)、さらに好ましくは5〜35重量%(例えば、5.5〜30重量%)、特に8〜25重量%(例えば、10〜22重量%)程度であり、通常10重量%以上(例えば、10〜35重量%、好ましくは11〜25重量%、さらに好ましくは12〜20重量%)であってもよい。また、このような反応生成物において、前記式(1)で表される化合物に対応し、二級ヒドロキシル基を有するエポキシ化合物(多量体)の割合は、反応生成物全体(又は前記式(1)で表されるエポキシ化合物および前記式(1)で表されるエポキシ化合物の範疇に属さないエポキシ化合物の総量)に対して20モル%以下(例えば、0〜19モル%)、好ましくは18モル%以下(例えば、0〜16モル%)、さらに好ましくは15モル%以下(例えば、0.5〜14モル%)、特に13モル%以下(例えば、1〜12モル%)であってもよい。
また、反応生成物において、前記式(1)で表されるエポキシ化合物は、単一化合物であってもよく、複数種の前記式(1)で表されるエポキシ化合物を含む混合物であってもよい。例えば、前記式(1)で表されるエポキシ化合物は、前記式(1)においてpが1である化合物と、前記式(1)においてpが2以上(例えば、2)である化合物との混合物であってもよい。このような混合物において、前記式(1)で表されるエポキシ化合物のうち、単一化合物の割合は、例えば、60モル%以上(例えば、62〜99.9モル%)、好ましくは65モル%以上(例えば、67〜99.5モル%)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、72〜99モル%)であってもよい。
前記式(1)で表される化合物は、上記のような反応生成物(エポキシ樹脂)に含有される形態であってもよい。本発明には、このような前記式(1)で表されるエポキシ化合物を含む反応生成物(エポキシ樹脂)も含まれる。なお、このような反応生成物から、前記式(1)で表されるエポキシ化合物を分離してもよい。
なお、反応生成物のエポキシ当量は、例えば、200〜700g/eq、好ましくは250〜600g/eq、さらに好ましくは280〜500g/eq(例えば、300〜450g/eq)程度であってもよい。
前記式(1)で表されるエポキシ化合物(又は反応生成物)は、前記のように、ハンドリング性に優れており、熱硬化性樹脂原料、添加剤(硬化剤など)などとして利用できる。例えば、前記式(1)で表されるエポキシ化合物(又は反応生成物)は、そのままエポキシ樹脂として用いてもよく、エポキシ(メタ)アクリレートなどの熱硬化性樹脂原料として用いてもよい。
前記エポキシ樹脂は、通常、硬化剤などを含むエポキシ樹脂組成物を構成してもよい。
エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂(エポキシ樹脂成分)は、前記化合物のみで構成してもよく、他のエポキシ樹脂と組み合わせてもよい。他のエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール(又はクレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂(トリフェノールメタン型エポキシ樹脂など)、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂(キサンテン単位を含むエポキシ樹脂を含む)、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂(1,6−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス(2,7−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン)アルカンなどのナフタレン環含有エポキシ樹脂など)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
他のエポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂成分全体に対する前記式(1)で表される化合物(又は反応生成物)の割合は、例えば、50〜99重量%、好ましくは60〜98重量%、さらに好ましくは70〜95重量%程度であってもよい。
なお、エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、希釈剤、硬化剤、硬化促進剤などを含んでいてもよい。
希釈剤としては、反応性希釈剤、非反応性希釈剤(溶媒)などが含まれる。
反応性希釈剤としては、単官能性エポキシ基含有化合物(例えば、2−エチルへキシルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル類、アリルグリシジルエーテルなどのアルケニルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのアリールグリシジルエーテル類、フェノールのアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、これらの化合物に対応するアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル類などのグリシジルエーテル類;オクチレンオキサイド、スチレンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、などのアルケンオキシド類など)、多官能性エポキシ化合物[例えば、ジグリシジルエーテル、ポリオールポリグリシジルエーテル(ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアルカンジオールジグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンジ乃至トリグリシジルエーテル、グリセリンジ乃至トリグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど)、ジグリシジルアニリン、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、シクロアルケンオキシド類(例えば、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど)などの低粘度のエポキシ化合物など]などが挙げられる。これらの反応性希釈剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
エポキシ樹脂組成物において、反応性希釈剤の割合は、エポキシ樹脂(他のエポキシ樹脂を使用する場合には、前記化合物との総量、以下同じ)100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部程度であってもよい。
溶剤(又は溶媒)としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。これらの溶剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
溶媒の使用量(添加量)は、例えば、エポキシ樹脂100重量部に対して、0〜500重量部の範囲から選択でき、例えば、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤[特に、第1級アミン、例えば、鎖状脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン類)など、環状脂肪族アミン(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどの単環式脂肪族ポリアミン;ノルボルナンジアミンなどの架橋環式ポリアミンなど)、芳香脂肪族ポリアミン(例えば、キシリレンジアミンなど)、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)など]、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤(例えば、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族系酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの脂環族系酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などの芳香族系酸無水物)、フェノール樹脂系硬化剤(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック樹脂)などが挙げられる。これらの硬化剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
エポキシ樹脂組成物において、硬化剤の割合は、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜600重量部、好ましくは1〜500重量部、さらに好ましくは10〜400重量部程度であってもよい。また、特に、硬化剤の割合は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤の官能基が0.1〜4.0当量、好ましくは、0.3〜2.0当量、さらに好ましくは、0.5〜1.5当量となるように、両成分の割合を調整してもよい。
また、硬化促進剤としては、例えば、アミン類[例えば、第3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−1など)、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾールなど)およびその誘導体(例えば、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などの塩)など]、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、ホスフィン類、アミド化合物(ダイマー酸ポリアミドなど)、ルイス酸錯体化合物(3フッ化ホウ素・エチルアミン錯体など)、硫黄化合物[ポリサルファイド、メルカプタン化合物(チオール化合物)など]、ホウ素化合物(フェニルジクロロボランなど)、縮合性有機金属化合物(有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物など)などが挙げられる。硬化促進剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
硬化促進剤の割合(添加量)は、エポキシ樹脂100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部程度であってもよい。
また、エポキシ樹脂組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例において、各種測定は以下のようにして行った。
(HPLC)
日立製HPLC L−2000を用い、東ソー製カラムODS−80TMにて、40℃、アセトリニトリル/水(重量比80/20)の条件で測定した。
(エポキシ当量)
エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定した。
(実施例1)
300mlのセパラブルフラスコに、ディーンスタークおよび還流管を取り付け、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF、大阪ガスケミカル(株)製)80重量部(0.18モル)、クロロメチルオキシラン(特級、キシダ化学(株)製)49.7重量部(0.54モル)、メチルエチルケトン100重量部、塩化テトラメチルアンモニウム(特級、関東化学(株)製)0.4重量部を添加し、60℃で1時間、加熱溶解させた。その後、フレーク状の水酸化ナトリウム(特級、双葉化学(株)製)21.6g(0.54モル)を、温度を60℃に保ち、攪拌しながら200分かけて投入した。なお、反応中、生成した水はメチルエチルケトン及びエピクロロヒドリンと共沸により、系外に排出され、メチルエチルケトン及びエピクロロヒドリンは系内に戻した。
水酸化ナトリウム投入後、温度を60℃で保持しつつ攪拌し、6.5時間経過後にHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて、原料であるBPEFの消失を確認した。その後、メチルイソブチルケトン(特級、関東化学(株)製)100重量部を投入し、反応中に生成した塩化ナトリウムをろ過により除去した。ろ液をナス型フラスコに移し、エバポレーターで70℃、10torrにてメチルエチルケトン及びクロロメチルオキシランが除去されるまで濃縮除去し、淡黄色の液体を得た。得られた液体とメチルイソブチルケトン150重量部とを1Lの分液ロートに投入し、60℃に加熱した。その後、100重量部の上水にて2回水洗を行い、続いて100重量部のイオン交換水にて、水洗を行った。得られた有機層をナス型フラスコに移し、エバポレーターで75℃、5torrにてメチルイソブチルケトンを除去した。その後、減圧乾燥機を用いて105℃、30torrにて8時間乾燥させ、淡黄色粘稠物を89重量部(回収率89%)得た。
得られたサンプルのHPLCを測定した結果、原料BPEFにエピクロロヒドリンが1つ結合した片末端体(下記式(A)で表される化合物)が0%、2個結合した両末端体(下記式(B)で表される化合物)が66.7%、2量体(下記式(C)で表される化合物)が3.4%、目的とする2量体の3エポキシ体(下記式(D)で表される化合物)が16.9%、3量体(下記式(E)で表される化合物)が7.6%、その他が4.2%であった。得られたサンプルのエポキシ当量は314g/eq、軟化点は53.2℃であった。
なお、これらの化合物(A)〜(E)は、それぞれ、反応混合物から分離して分析することにより構造を確認した。例えば、LC−MS(島津製LC−MS 2010A)にて測定した分子量は、下記式(C)で表される化合物で1045、下記式(D)で表される化合物で1101であることが確認された。
(実施例2)
実施例1において、クロロメチルオキシラン(特級、キシダ化学(株)製)を49.7重量部(0.54モル)に代えて66.2重量部(0.72モル)、メチルエチルケトンを100重量部に代えて72重量部使用したこと以外は実施例1と同様に合成した結果、78重量部(回収率78%)の淡黄色粘稠物が得られた。
得られたサンプルのHPLCを測定した結果、原料BPEFにエピクロロヒドリンが1つ結合した片末端体(前記式(A)で表される化合物)が0%、2個結合した両末端体(前記式(B)で表される化合物)が76.6%、2量体(前記式(C)で表される化合物)が3.6%、目的とする2量体の3エポキシ体(前記式(D)で表される化合物)が13.2%、3量体(前記式(E)で表される化合物)が4.5%、その他が2.1%であった。得られたサンプルのエポキシ当量は299g/eq、軟化点は43.3℃であった。
(実施例3)
実施例1において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF、大阪ガスケミカル(株)製)を80重量部に代えて60重量部(0.14モル)、クロロメチルオキシラン(特級、キシダ化学(株)製)を49.7重量部に代えて38.6重量部(0.42モル)、メチルエチルケトンを100重量部に代えて110重量部、フレーク状の水酸化ナトリウム(特級、双葉化学(株)製)を21.6gに代えて18g(0.45モル)使用し、投入時間を200分から420分に変更した以外は実施例1と同様に合成した結果、54重量部(回収率70%)の淡黄色粘稠物が得られた。
得られたサンプルのHPLCを測定した結果、原料BPEFにエピクロロヒドリンが1つ結合した片末端体(前記式(A)で表される化合物)が4.0%、2個結合した両末端体(前記式(B)で表される化合物)が54.6%、2量体(前記式(C)で表される化合物)が13.2%、目的とする2量体の3エポキシ体(前記式(D)で表される化合物)が5.8%、3量体(前記式(E)で表される化合物)が12.1%、その他が10.3%であった。本サンプルのエポキシ当量は382g/eq、軟化点は54.1℃であった。
(実施例4)
実施例1において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF、大阪ガスケミカル(株)製)を80重量部に代えて40重量部(0.10モル)、塩化テトラメチルアンモニウム(特級、関東化学(株)製)を0.4重量部に代えて0.3重量部、フレーク状の水酸化ナトリウム(特級、双葉化学(株)製)を21.6gに代えて15.4g(0.39モル)使用し、投入時間を200分から300分に変更した以外は実施例1と同様に合成した結果、47重量部(回収率85%)の淡黄色粘稠物が得られた。
得られたサンプルのHPLCを測定した結果、原料BPEFにエピクロロヒドリンが1つ結合した片末端体(前記式(A)で表される化合物)が3.2%、2個結合した両末端体(前記式(B)で表される化合物)が80.0%、2量体(前記式(C)で表される化合物)が6.5%、目的とする2量体の3エポキシ体(前記式(D)で表される化合物)が5.1%、3量体(前記式(E)で表される化合物)が2.3%、その他が2.9%であった。得られたサンプルのエポキシ当量は292g/eq、軟化点は45.9℃であった。
(実施例5)
実施例1において、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF、大阪ガスケミカル(株)製)を80重量部に代えて33重量部(0.08モル)、クロロメチルオキシラン(特級、キシダ化学(株)製)を49.7重量部に代えて48.5重量部(0.53モル)、メチルエチルケトンを100重量部に代えて0重量部、塩化テトラメチルアンモニウム(特級、関東化学(株)製)を0.4重量部に代えて1重量部、フレーク状の水酸化ナトリウム(特級、双葉化学(株)製)を21.6gに代えて17g(0.43モル)、投入時間を200分から150分に変更した以外は実施例1と同様に合成した結果、39重量部(回収率88%)の淡黄色粘稠物が得られた。
得られたサンプルのHPLCを測定した結果、原料BPEFにエピクロロヒドリンが1つ結合した片末端体(前記式(A)で表される化合物)が0%、2個結合した両末端体(前記式(B)で表される化合物)が85.8%、2量体(前記式(C)で表される化合物)が0.2%、目的とする2量体の3エポキシ体(前記式(D)で表される化合物)が8.6%、3量体(前記式(E)で表される化合物)が1.5%、その他が2.9%であった。得られたサンプルのエポキシ当量は292g/eq、軟化点は45.9℃であった。
(比較例1)
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF、大阪ガスケミカル(株)製)を80重量部に代えて60重量部(0.14モル)、クロロメチルオキシラン(特級、キシダ化学(株)製)を49.7重量部に代えて25.4重量部(0.28モル)、メチルエチルケトンを100重量部に代えて64重量部、フレーク状の水酸化ナトリウム(特級、双葉化学(株)製)を21.6gに代えて9g(0.23モル)使用し、投入時間を200分から240分に変更した以外は実施例1と同様に合成した結果、樹脂が固化し取り出し不可となり、目的物を得ることが出来なかった。