本発明のエポキシ樹脂は、少なくとも下記式(1)で表されるエポキシ化合物を含んでいる。
(式中、環Zは環集合アレーン環を示し、R1はアルキレン基を示し、R2は水素原子又はメチル基、R3はハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、R4はハロゲン原子、アルキル基、アリール基又はシアノ基を示し、m1及びm2はそれぞれ2〜15の整数、m1+m2の平均値は4〜30、nは1以上の整数、pは0又は1以上の整数、kは0〜4の整数を示す。)
前記式(1)において、環集合アレーン環Zは、同一又は複数のアレーン環で構成できる。アレーン環としては、例えば、単環式アレーン環(例えば、ベンゼン環など)、縮合多環式アレーン環[例えば、インデン環、ナフタレン環などのC8−16縮合二環式アレーン環、好ましくはC10−16縮合二環式アレーン環;アントラセン環、フェナントレン環などのC14−20縮合三環式アレーン環など]などが例示できる。これらのアレーン環のうち、ベンゼン環、ナフタレン環(特にベンゼン環)などが好ましい。なお、アレーン環の数は、例えば、2〜6、好ましくは2〜4、さらに好ましくは2又は3(特に、2)であってもよい。また、2つの環Zは、同一の又は異なる種類の環であってもよく、通常、2つの環Zは同一の環である場合が多い。
環Zの具体的な例としては、例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環(例えば、1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)、ナフチルベンゼン環[例えば、(1−ナフチル)ベンゼン環、(2−ナフチル)ベンゼン環など]、ビナフタレン環(例えば、1,2’−ビナフタレン環、1,1’−ビナフタレン環、2,2’−ビナフタレン環など)などの2環式環集合C12−32アレーン環、好ましくは2環式環集合C12−26アレーン環、さらに好ましくは2環式環集合C12−20アレーン環、特にビフェニル環;テルフェニル環(例えば、p−テルフェニル環、m−テルフェニル環など)、テルナフタレン環(例えば、2,1’:5’,2’’−テルナフタレン環など)などの3環式環集合C18−30アレーン環、好ましくは3環式環集合C18−26アレーン環、さらに好ましくは3環式環集合C18−22アレーン環、特にテルフェニル環などが例示できる。
また、前記式(1)において、オキシアルキレン基(OR1)のアルキレン基R1としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基、2−メチル−1,2−プロパンジイル基、2−メチル−1,3−プロパンジイル基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基(特にエチレン基、プロピレン基)などが例示できる。なお、環Zに隣接するオキシアルキレン基(OR1)のアルキレン基R1は、エチレン基、プロピレン基などである場合が多い。また、R1は同一又は異なる種類のアルキレン基であってもよく、通常、同一である場合が多い。
前記式(1)において、オキシアルキレン基(OR1)の数(付加モル数)m1及びm2は同一又は異なって、それぞれ2〜15の整数から選択でき、例えば、2〜12の整数、好ましくは3〜10の整数、さらに好ましくは4〜8の整数(例えば、5〜7の整数)であってもよい。また、m1+m2の平均値は4〜30程度の範囲から選択でき、例えば、4〜25(例えば、6〜20)、好ましくは8〜18(例えば、9〜16)、さらに好ましくは10〜14(例えば、11〜13)程度であってもよい。m1+m2の平均値が大きすぎると、屈折率や耐熱性が低下する虞があり、逆にm1+m2の平均値が小さすぎると、柔軟性などが低下する虞がある。
本発明のエポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)は、フルオレンの9−位に環集合アレーン環が結合した9,9−ビスアリールフルオレン骨格と、オキシアルキレン基の複数の繰り返し単位とを有しているためか、屈折率が高い。しかも、m1+m2の平均値を大きくして、柔軟性などの特性を向上させても、意外なことに屈折率を高い水準で維持できる。そのため、m1+m2の平均値を調整すると、高屈折率と柔軟性などの特性とをバランスよく付与できる。さらに、前記エポキシ樹脂は、エポキシ当量が大きくても(又は架橋密度が小さくても)、硬化物の耐熱性(例えば、ガラス転移温度、熱分解温度など)が比較的大きい場合が多い。
前記式(1)において、置換数nは同一又は異なって1以上の整数であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。
オキシアルキレン基(OR1)を有する置換基(置換基Yという場合がある)は、環Zの適当な位置に置換でき、フルオレンの9−位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよく、通常、フルオレンの9−位に結合したアレーン環に結合している場合が多い。例えば、環Zが、フルオレンの9−位に対して4−位が結合したビフェニル環であるとき、置換基Yの置換位置は、例えば、ビフェニル基の2−位、3−位、2’−〜4’−位のいずれであってもよく、好ましくは2−位、3−位、4’−位であってもよい。環Zが、フルオレンの9−位に対して3−位が結合したビフェニル環であるとき、置換基Yの置換位置は、例えば、ビフェニル基の2−位、4−位、5−位、6−位、2’−〜6’−位のいずれであってもよく、好ましくは2−位、4−位、6−位、4’−位(特に、6−位)であってもよい。環Zが、フルオレンの9−位に対して2−位が結合したビフェニル環であるとき、置換基Yの置換位置は、例えば、ビフェニル基の3−〜6−位、2’−〜6’−位のいずれであってもよく、好ましくは3−位、5−位、6−位、4’−位(特に、5−位)であってもよい。
基R2は水素原子又はメチル基であり、例えば、水素原子であってもよい。
前記式(1)において、基R3としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基などのC1−10アルコキシ基など、好ましくはC1−6アルコキシ基、さらに好ましくはC1−4アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1−6アシル基(アルキルカルボニル基)など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基[例えば、ジアルキルアミノ基など]などが挙げられる。
これらの基R3のうち、代表的には、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。なかでも、アルキル基(C1−4アルキル基など)、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが好ましく、特にアルキル基(メチル基など)が好ましい。
置換数pは、例えば、0〜8の整数、好ましくは0〜6の整数(例えば、1〜5の整数)、さらに好ましくは0〜4の整数、特に0〜2の整数(例えば、0又は1)、特に0であってもよい。なお、同一の環Zにおいて、pが複数(2以上)である場合、R3の種類は互いに同一又は異なっていてもよく、2つの環Zにおいて、置換数pは、互いに同一又は異なっていてもよい。なお、R3は、環Zの適当な位置に置換でき、フルオレンの9−位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。
前記式(1)において、基R4としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−10アルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基など)又はシアノ基などが挙げられる。これらの基R4のうち、メチル基などのC1−4アルキル基が好ましい。なお、kが複数(2以上)である場合、同一の環Zに置換する基R4は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン骨格を構成する2つのベンゼン環に置換する基R4は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基R4の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位であってもよい。置換数kは、例えば、0〜4の整数、好ましくは0又は1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
本発明のエポキシ樹脂において、式(1)で表されるエポキシ化合物(特に、n=1)の割合は、エポキシ樹脂全体に対して、例えば、50重量%以上(例えば、60〜100重量%)、好ましくは70重量%以上(例えば、80〜98重量%)、さらに好ましくは80重量%以上(例えば、85〜95重量%)程度であってもよい。
本発明のエポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)は、式(1)において、m1+m2の平均値が大きくても、高い屈折率を有している。すなわち、このエポキシ樹脂の温度25℃、波長589nmにおける屈折率は、例えば、1.56以上(例えば、1.56〜1.65)、好ましくは1.57以上(例えば、1.57〜1.64)程度であってもよく、例えば、1.58以上(例えば、1.59〜1.63)、好ましくは1.60以上(例えば、1.60〜1.62)程度にすることもできる。なお、屈折率は多波長アッベ屈折計を用いて測定できる。
また、本発明のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、300〜1500g/eq(例えば、350〜1200g/eq)、好ましくは370〜1000g/eq(例えば、380〜800g/eq)、さらに好ましくは395〜600g/eq(例えば、400〜500g/eq)程度であってもよい。エポキシ当量が大きすぎると、屈折率及び耐熱性が低下する虞があり、逆に小さすぎると柔軟性などが低下する虞がある。
なお、前記エポキシ樹脂は、式(1)で表されるエポキシ化合物の単量体を含んでいてもよく、多量体(二量体、三量体など)を含んでいてもよい。例えば、式(1)において、nが1であるエポキシ化合物の単量体又は多量体は、下記式(1A)で表すことができる。
(式中、Aは下記式
で表され、rは0又は1以上の整数を示し、環Z、R1、R2、R3、R4、m1、m2、k、pは前記に同じ。)
また、前記エポキシ樹脂は、式(1)で表される化合物の単量体と、前記多量体との混合物であってもよい。このような多量体の割合は、前記式(1)で表される化合物の単量体と多量体との総モル数に対して、例えば、0〜20モル%、好ましくは0〜10モル%(例えば、0.1〜8モル%)、さらに好ましくは0〜5モル%(例えば、0.2〜3モル%)程度であってもよい。
前記式(1)において、nが1、pが0、kが0、R2が水素原子である代表的な化合物としては、例えば、9,9−ビス[2−フェニル−4−(グリシジルオキシポリエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[2−フェニル−4−(グリシジルオキシポリプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−フェニル−4−(グリシジルオキシポリエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−フェニル−4−(グリシジルオキシポリプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−フェニル−3−(グリシジルオキシポリエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−フェニル−2−(グリシジルオキシポリエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C6−12アリール−(グリシジルオキシポリC2−4アルコキシ)−C6−12アリール]フルオレンなどが例示できる。
前記式(1)において、環Zがビフェニル環、R2が水素原子又はメチル基、k=0、p=0、n=1、m1、m2=2〜15の整数である具体的な化合物を表1に示す。なお、表1中、基Yの置換位置は、環Zに対する置換基Yの置換位置を示し、m1+m2は、それぞれ平均値を示す。また、表1中、4−ビフェニルとは、フルオレンの9−位に対して4−位が結合したビフェニル環、3−ビフェニルとは、フルオレンの9−位に対して3−位が結合したビフェニル環、2−ビフェニルとは、フルオレンの9−位に対して2−位が結合したビフェニル環を示す。
本発明のエポキシ樹脂[例えば、式(1)で表されるエポキシ化合物]は、下記式(3)で表される化合物と、下記式(4)で表される化合物とを反応させて製造できる。
(式中、Xはハロゲン原子を示し、環Z、R1、R2、R3、R4、k、m1、m2、n、pは前記に同じ。)
前記式(3)で表される化合物としては、前記式(1)に対応する化合物が例示できる。また、前記式(4)において、ハロゲン原子Xとしては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示できる。なお、前記式(4)で表される化合物としては、例えば、エピハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなど)、1−ハロメチル−2−メチルオキシラン(例えば、1−クロロメチル−2−メチルオキシランなど)などが例示できる。
前記式(3)で表される化合物と前記式(4)で表される化合物との割合は、例えば、前者のヒドロキシル基1モルに対して、後者が、0.8〜20モル、好ましくは1〜15モル、さらに好ましくは2〜10モル、特に3〜5モル程度であってもよい。
反応では、触媒を使用してもよい。触媒としては、例えば、第4級アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイドなどのテトラC1−20アルキルアンモニウムハライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどのベンジルトリC1−4アルキルアンモニウムハライド)、トリメチルアミンボランなどのトリC1−4アルキルアミンボラン、クラウンエーテル、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。触媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
触媒の割合は、特に限定されないが、前記式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.001〜1モル(例えば、0.005〜0.5モル)、好ましくは0.01〜0.2モル、さらに好ましくは0.05〜0.1モル程度であってもよい。
反応は、反応により生成するハロゲン化水素をトラップするため、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物など)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)などの無機塩基、アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジンなどの複素環式第3級アミンなど)などの有機塩基などが挙げられる。塩基は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
塩基の割合は、特に限定されないが、例えば、前記式(3)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、0.01〜20モル(例えば、0.05〜10モル)、好ましくは1〜5モル、さらに好ましくは2〜4モル程度であってもよい。
反応は、反応に不活性な溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、非プロトン性溶媒などを使用でき、例えば、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エステル類(酢酸エチルなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などが挙げられる。溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、30〜120℃、好ましくは35〜100℃、さらに好ましくは40〜80℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。
反応は、還流しながら行ってもよい。また、反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
なお、生成した化合物(前記式(1)で表される化合物)は、慣用の方法、例えば、濾過、抽出、貧溶媒での再沈殿、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
なお、反応により得られるエポキシ樹脂は、式(1)で表される化合物の単一化合物であってもよく、m1及びm2(m1+m2)が異なる複数の化合物を含む混合物であってもよく、それらの化合物の多量体を含んでいてもよい。
前記式(3)で表される化合物は、特許第5249578号公報に記載の方法、例えば、塩基(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物など)の存在下、下記式(5)で表される化合物と式(1)の基OR1に対応するアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのC2−6アルキレンオキシド、好ましくはC2−4アルキレンオキシドなど)及び/又は式(1)の基OR1に対応するアルキレンカーボネート(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのC2−6アルキレンカーボネート、好ましくはC2−4アルキレンカーボネートなど)とを反応させる方法(A)、酸触媒(硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸など)の存在下、下記式(6)で表される化合物と下記式(7)で表される化合物とを反応させる方法(B)などで得ることができる。
(式中、mはm1又はm2を示し、環Z、R1、R3、R4、k、n、pは前記に同じ。)
なお、前記式(1)におけるオキシアルキレン基の繰り返し数m1及びm2(又はm1+m2の平均値)は、方法(A)において、基OR1に対応するアルキレンオキシド及び/又は基OR1に対応するアルキレンカーボネートの使用量に応じて調整できる。例えば、アルキレンオキシド及び/又はアルキレンカーボネートの割合は、前記式(5)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、2〜25モル(例えば、4〜20モル)、好ましくは4〜15モル(例えば、6〜12モル)、さらに好ましくは6〜10モル程度であってもよい。なお、方法(B)において、式(7)で表される化合物は、環Zにヒドロキシル基が置換したヒドロキシル基含有アレーン環1モルに対して、例えば、前記と同様のアルキレンオキシド及び/又はアルキレンカーボネートを使用して調整してもよい。
[硬化性組成物及び硬化物]
本発明のエポキシ樹脂は、硬化剤などを含む硬化性組成物(熱硬化性又は光硬化性組成物など)を構成していてもよい。
前記硬化性組成物において、エポキシ樹脂成分は、前記エポキシ樹脂で構成されていてもよく、他のエポキシ樹脂と組み合わせて構成してもよい。他のエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂(キサンテン単位を含むエポキシ樹脂を含む)、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂(1,6−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレンなど)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有する他のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂として、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)などが好ましい。これらの他のエポキシ樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
他のエポキシ樹脂と併用する場合、エポキシ樹脂成分全体に対する前記エポキシ樹脂の割合は、例えば、50〜99重量%、好ましくは60〜98重量%、さらに好ましくは70〜95重量%程度であってもよい。
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤[特に、第1級アミン、例えば、鎖状脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン類)など、環状脂肪族アミン(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどの単環式脂肪族ポリアミン;ノルボルナンジアミンなどの架橋環式ポリアミンなど)、芳香脂肪族ポリアミン(例えば、キシリレンジアミンなど)、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)など]、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤(例えば、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族系酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの脂環族系酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などの芳香族系酸無水物)、フェノール樹脂系硬化剤(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック樹脂)などが挙げられる。
硬化剤の割合は、エポキシ樹脂成分(他のエポキシ樹脂を使用する場合には、前記エポキシ化合物との総量、以下同じ)100重量部に対して、0.1〜500重量部、好ましくは1〜300重量部、さらに好ましくは10〜150重量部程度であってもよい。また、硬化剤の官能基の割合は、エポキシ樹脂成分のエポキシ基1当量に対して、0.1〜4.0当量、好ましくは0.3〜2.0当量、さらに好ましくは0.5〜1.5当量程度であってもよい。
また、硬化性組成物は硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、例えば、アミン類[例えば、第3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−1など)、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾールなど)およびその誘導体(例えば、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などの塩)など]、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、ホスフィン類、アミド化合物(ダイマー酸ポリアミドなど)、ルイス酸錯体化合物(三フッ化ホウ素・エチルアミン錯体など)、硫黄化合物[ポリサルファイド、メルカプタン化合物(チオール化合物)など]、ホウ素化合物(フェニルジクロロボランなど)、縮合性有機金属化合物(有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物など)などが挙げられる。硬化促進剤は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
硬化促進剤の割合(添加量)は、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部(例えば、0.1〜5重量部)程度であってもよい。
硬化性組成物は、反応性希釈剤を含んでいてもよい。反応性希釈剤としては、単官能性エポキシ基含有化合物(例えば、2−エチルへキシルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル類、アリルグリシジルエーテルなどのアルケニルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのアリールグリシジルエーテル類、フェノールのアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、これらの化合物に対応するアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル類などのグリシジルエーテル類;オクチレンオキサイド、スチレンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、などのアルケンオキシド類など)、多官能性エポキシ化合物[例えば、ジグリシジルエーテル、ポリオールポリグリシジルエーテル(ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどのアルカンジオールジグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンジ乃至トリグリシジルエーテル、グリセリンジ乃至トリグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど)、ジグリシジルアニリン、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、シクロアルケンオキシド類(例えば、ビニルシクロヘキセンジオキシド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキシドなど)などの低粘度のエポキシ化合物など]などが挙げられる。これらの反応性希釈剤は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
反応性希釈剤の割合は、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部程度であってもよい。
硬化性組成物は、前記熱硬化性組成物に限らず、光硬化性組成物であってもよい。この光硬化性組成物は、光重合開始剤(カチオン重合開始剤、光酸発生剤)を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、例えば、ブレンステッド酸のオニウム塩(例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩など)などが挙げられる。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、ベンゼンジアゾニウム類[例えば、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェートなど]などが例示できる。芳香族スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム類[例えば、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネートなど]、4,4’−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド類[例えば、4,4’−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェートなど]などが例示できる。芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム類[例えば、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど]ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム類[例えば、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど]などが例示できる。これらの光重合開始剤の割合は、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部程度であってもよい。
さらに、硬化性組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物との反応において例示した溶媒(例えば、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類など)と同様の溶媒、アルコール類(例えば、メタノール、エタノールなど)、グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
溶媒の使用量(添加量)は、例えば、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、0〜500重量部の範囲から選択でき、例えば、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
硬化性組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明には、前記硬化性組成物が硬化した硬化物も含まれる。この硬化物は、前記エポキシ樹脂を有するため、高屈折率を有している。しかも、オキシアルキレン基の数m1及びm2(又はm1+m2の平均値)を大きくして、硬化物の柔軟性を向上させても、屈折率を高い水準で維持できる。
また、前記硬化物は、前記エポキシ樹脂の耐熱性(例えば、ガラス転移温度、熱分解温度など)が大きいため、オキシアルキレン基の数m1+m2の平均値が大きく、架橋密度が比較的小さくても、耐熱性を維持できる。
本発明の硬化物は、前記硬化性組成物を反応させる(硬化処理する)ことにより得ることができる。硬化処理は、硬化触媒の使用、加熱、光照射(活性エネルギー線照射)などにより行うことができ、これらを組み合わせて行ってもよい。
加熱により硬化処理を行う場合、加熱温度としては、例えば、50〜250℃、好ましくは70〜220℃、さらに好ましくは80〜200℃(例えば、90〜170℃)程度であってもよい。なお、硬化処理は段階的に行ってもよく、例えば、比較的低温(例えば、50〜130℃、好ましくは70〜120℃程度)で加熱処理したのち、比較的高温(例えば、140〜350℃、好ましくは150〜300℃程度)で加熱処理してもよい。このような硬化処理は、硬化物の形状に応じて、硬化性組成物を成形しつつ又は成形(又は予備成形)した後、行ってもよい。例えば、前記硬化性組成物を、必要に応じて、加熱溶融し、所定の型に注入して加熱することにより硬化し、所望の形状の成形体を得ることができる。成形方法および硬化条件は特に限定されないが、例えば、所定の金型を用いて成形する場合には、加熱加圧による成形法やコールドプレスと呼ばれる低温成形法などが用いられる。
また、硬化性組成物を接着部位に適用し、硬化させてもよく、硬化性組成物で基材をコーティングし、硬化させてもよい。さらに、硬化性組成物を所定部位に適用し、光又は放射線照射(紫外線照射など)することにより硬化させてもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例において、屈折率の測定は以下のようにして行った。
(屈折率)
多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製、「DR−M2/1410」)を用いて、温度25℃、波長589nmでの屈折率を測定した。
(実施例1)
(式中、m1+m2の平均値は12である。)
ディーンスターク付きの反応器に上記式で表される化合物(大阪ガスケミカル(株)製、「BOPPEF−10EO」という)72.1g(0.070mol)、エピクロロヒドリン64.4g(0.700mol)及びトリメチルアンモニウムブロミド(TMAB)0.7g(0.0045mol)を加えた。系内を窒素置換し、約50℃まで昇温させて前記成分を溶解させた後、フレーク状の水酸化ナトリウム8.4g(0.210mol)を1時間以上かけて添加した。さらに、再び系内を窒素置換し、60℃で9時間反応させ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて原料化合物の消失を確認した。反応終了後、60℃の条件下、反応器中でエピクロロヒドリン及びトルエンを濃縮し、60〜80℃に加温しつつ、メチルイソブチルケトン(MIBK)88gを添加した。さらに、得られた溶液を吸引濾過し、MIBKによりリンスした後、ろ液に30%水酸化ナトリウム水溶液47gを滴下し、窒素雰囲気下、70℃で1時間撹拌した。その後、得られた溶液にMIBK175gを加え、蒸留水を用いて60〜80℃の抽出温度で4回抽出洗浄し、脱水後、90℃で濃縮し、減圧乾燥して、エポキシ樹脂を得た。エポキシ樹脂のうち、下記式で表される化合物(「BOPPEF−10EOG」という)が86%、下記式で表される化合物の2量体が13%、残りは未反応分の原料等であった。
得られたエポキシ樹脂の屈折率は、1.578であった。
(式中、m1+m2の平均値は12である。)
なお、「BOPPEF−10EO」は特開2001−139651号公報の実施例1と同様の方法にて、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、「BOPPEF」という)1モルに対してエチレンオキシド(EO)10モルを使用して反応させることで得た。
(比較例1)
(式中、m1+m2の平均値は11である。)
実施例1で得られた化合物(BOPPEF−10EO)に代えて、上記式で表される化合物(大阪ガスケミカル(株)製、「BPEF−9EO」という)を使用し、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂を得た。エポキシ樹脂のうち、下記式で表される化合物(「BPEF−9EOG」という)が87.6%、下記式で表される化合物の2量体が5.7%、片末端体(BPEF−9EOにエピクロロヒドリンが1つ付加した化合物)が6.4%、残りは、未反応分の原料等であった。
(式中、m1+m2の平均値は11である。)
得られたエポキシ樹脂の屈折率は、1.553であった。
なお、「BPEF−9EO」は特開2001−139651号公報の実施例1と同様の方法にて、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、「BPEF」という)1モルに対してエチレンオキシド(EO)9モルを使用して反応させることで得た。
実施例1及び比較例1の結果から示されるように、実施例1で得られたエポキシ樹脂は、比較例1で得られたエポキシ樹脂と比較し、高い屈折率を有している。