本発明の化合物(フルオレン骨格含有エポキシ化合物、エポキシ化合物などということがある)は、下記式(1)で表される化合物である。
(式中、R1は置換基を示し、R2は分岐アルキレン基を示し、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4はアルキル基を示し、kは0〜4の整数、mは1以上の整数、nは2〜4の整数である。)
上記式(1)において、基R1で表される置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基R1は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基R1は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基R1の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(1)において、基R2で表される分岐アルキレン基としては、例えば、プロピレン基(又は1,2−プロパンジイル基)、1,2−ブタンジイル基などの分岐C3−6アルキレン基、好ましくは分岐C3−4アルキレン基、さらに好ましくはプロピレン基が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、分岐アルキレン基は異なる分岐アルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一の分岐アルキレン基で構成されていてもよい。また、2つのベンゼン環において、基R2は同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
オキシアルキレン基(OR2)の数(付加モル数)mは、1〜15(例えば、1〜12)程度の範囲から選択でき、例えば、1〜8、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4(例えば、1〜3)、特に1〜2であってもよい。なお、置換数mは、異なるベンゼン環において、同一であっても、異なっていてもよい。また、2つのベンゼン環において、オキシアルキレン基の合計(m×2)は、2〜30(例えば、2〜24)程度の範囲から選択でき、例えば、2〜16(例えば、2〜14)、好ましくは2〜12(例えば、2〜10)、さらに好ましくは2〜8(例えば、2〜6)、特に2〜4(例えば、2〜3)であってもよい。
なお、前記式(1)において、基R3は、水素原子又はメチル基であり、好ましい基R3は水素原子である。
また、前記式(1)において、基R4で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基(例えば、C1−10アルキル基)、好ましくはC1−8アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、さらに好ましくはC1−4アルキル基(例えば、C1−3アルキル基)、特にメチル基などが挙げられる。アルキル基R4は、同一のベンゼン環において、単独で又は2種以上組み合わせて置換していてもよい(すなわち、nが複数である場合、基R4は同一又は異なっていてもよい)。また、異なるベンゼン環に置換するアルキル基R4は互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であってもよい。
アルキル基R4の置換数nは、2〜4であればよく、好ましくは2〜3、特に2であってもよい。なお、置換数nは、2つのベンゼン環において、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、アルキル基R4の置換位置は、特に限定されず、フェニル基の2〜6位(例えば、3位、3,5−位など)の適当な位置に置換できる。例えば、nが2であるとき、アルキル基R4は、2,3−位、2,4−位、2,5−位、2,6−位、3,4−位、3,5−位、3,6−位などに置換していてもよい。特に、nが2であるとき、R4は、3,5−位に置換しているのが好ましい。
代表的な前記式(1)で表される化合物には、9,9−ビス(グリシジルオキシ−分岐アルコキシ−ジ乃至テトラアルキルフェニル)フルオレン類(前記式(1)においてmが1である化合物)、9,9−ビス(グリシジルオキシ−ポリ分岐アルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン類(前記式(1)においてmが2以上である化合物)などが含まれる。
9,9−ビス(グリシジルオキシ−分岐アルコキシ−ジ乃至テトラアルキルフェニル)フルオレン類には、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシ−分岐C3−4アルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−2,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−2,6−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−2,4−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−3,4−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシ−分岐C3−4アルコキシ−ジC1−4アルキルフェニル)フルオレン、好ましくは9,9−ビス(2−グリシジルオキシプロポキシ−ジC1−4アルキルフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(グリシジルオキシ−分岐アルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン類が含まれる。
9,9−ビス(グリシジルオキシ−ポリ分岐アルコキシ−ジ乃至テトラアルキルフェニル)フルオレン類には、前記9,9−ビス(グリシジルオキシ−分岐アルコキシ−ジ乃至テトラアルキルフェニル)フルオレン類に対応し、mが2以上である化合物、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシ−ジ分岐C3−4アルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−3,5−ジメチルフェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシ−ジ分岐C3−4アルコキシ−ジC1−4アルキルフェニル)フルオレン、好ましくは9,9−ビス[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ−ジC1−4アルキルフェニル]フルオレン}などの9,9−ビス(グリシジルオキシ−ジ分岐アルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン類などが含まれる。
これらのうち、好ましい式(1)で表される化合物には、式(1)において、nが2であり、R4の置換位置が3,5−位である化合物、例えば、下記式(1A)で表される化合物が含まれる。
(式中、R1、R2、R3、R4、k、およびmは前記と同じ。)
特に好ましい前記式(1)で表される化合物には、前記式(1A)で表される化合物のうち、R2がプロピレン基である化合物、例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−3,5−ジアルキルフェニル]フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−3,5−ジC1−4アルキルフェニル]フルオレンなど}、9,9−ビス{4−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−3,5−ジアルキルフェニル}フルオレン類{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ]−3,5−ジC1−4アルキルフェニル}フルオレン}などが含まれる。
(式(1)で表される化合物の製造方法)
前記式(1)で表される化合物は、特に限定されないが、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを反応させることにより製造できる。
(式中、R5は、ハロゲン原子を示し、R1、R2、R3、R4、k、m、nは前記と同じ。)
上記式(2)で表される化合物としては、前記式(1)で表される化合物に対応する化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシ−分岐アルコキシ−ジ乃至テトラアルキルフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−分岐C3−4アルコキシ−ジC1−4アルキルフェニル)フルオレン、好ましくは9,9−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ−ジC1−4アルキルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−分岐アルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン類}などの9,9−ビス(ヒドロキシ−分岐C3−4アルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(ヒドロキシ−ポリ分岐アルコキシ−ジ乃至テトラアルキルフェニル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ]−3,5−ジメチルフェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−ジ分岐C3−4アルコキシ−ジC1−4アルキルフェニル)フルオレン、好ましくは9,9−ビス[2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ−ジC1−4アルキルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−ジ分岐アルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン類}などの9,9−ビス(ヒドロキシ−ジ分岐C3−4アルコキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン類などが含まれる。
前記式(2)で表される化合物は、特に限定されないが、例えば、(1)下記式(2A)で表される化合物と、基R2に対応するアルキレンオキシド又は基R2に対応するアルキレンカーボネートとを反応させる方法、(2)下記式(2B)で表される化合物と、下記式(2C)で表される化合物とを反応させる方法などにより得ることができる。
(式中、R1、R2、R4、k、m、nは前記と同じ。)
(方法(1))
方法(1)において、前記式(2A)で表される化合物としては、前記式(2)で表される化合物に対応する化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシ−ジアルキルフェニル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−ジC1−4アルキルフェニル)フルオレン]などが含まれる。
なお、前記式(2A)で表される化合物は、市販品を用いてもよく、慣用の方法、例えば、酸(例えば、塩酸、硫酸などの無機酸、固体酸など)及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下で、前記式(2B)で表される化合物(フルオレノン類)と、対応するフェノール類(2,6−キシレノールなどのキシレノールなど)とを反応させる方法などにより製造したものを用いてもよい。
原料として使用する前記式(2A)で表される化合物の純度は特に限定されないが、通常、95重量%以上であり、好ましくは99重量%以上であってもよい。
また、方法(1)において、基R2に対応するアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド(1,2−エポキシブタン)などの分岐C3−6アルキレンオキシド、好ましくは分岐C3−4アルキレンオキシドなどが挙げられる。基R2に対応するアルキレンカーボネートとしては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの分岐C3−6アルキレンカーボネート、好ましくは分岐C3−4アルキレンカーボネートなどが挙げられる。なお、アルキレンオキシド又はアルキレンカーボネートを反応させると、前記式(2A)で表される化合物のヒドロキシル基を介して(ポリ)オキシアルキレン単位を導入できる。アルキレンカーボネートを使用する場合、アルキレンカーボネートが付加したのち、脱炭酸反応が生じることにより、オキシアルキレン単位(分岐アルコキシ単位)が導入される。
方法(1)において、基R2に対応するアルキレンオキシド又は基R2に対応するアルキレンカーボネートの使用量は、付加させるアルキレンオキシド単位の数に応じて調整でき、前記式(2A)で表される化合物1モルに対して、例えば、2〜50モル(例えば、2〜40モル)、好ましくは2〜30モル(例えば、2〜25モル)、さらに好ましくは2〜20モル(例えば、2〜15モル)程度であってもよい。
反応は、触媒の非存在下で行ってもよいが、通常、触媒の存在下で行うことができる。触媒としては、塩基触媒、酸触媒が例示でき、通常、塩基触媒を使用できる。塩基触媒としては、金属水酸化物(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物など)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩など)などの無機塩基;アミン類[例えば、第3級アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、1−メチルイミダゾールなどの複素環式第3級アミン)など]、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)などの有機塩基などが例示できる。触媒(塩基触媒)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
触媒の使用量は、触媒の種類に応じて調整でき、前記式(2A)で表される化合物1重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部(例えば、0.003〜0.5重量部)、好ましくは0.005〜0.3重量部、さらに好ましくは0.01〜0.1重量部程度であってもよい。
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、特に限定されず、使用する原料に応じて選択でき、例えば、アルキレンオキシドを使用する場合には、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類、アニソールなど)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類)、炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)などが挙げられる。また、アルキレンカーボネートを使用する場合には、前記例示の溶媒の他、アルコール類(メタノール、エタノールなどのC1−4アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの(ポリ)C2−3アルキレングリコールなど)などを使用してもよい。溶媒の使用量は、前記式(2A)で表される化合物1重量部に対して、例えば、1〜30重量部、好ましくは1.5〜20重量部、さらに好ましくは2〜10重量部程度であってもよい。
反応は、付加させる化合物(アルキレンオキシド、アルキレンカーボネート)などの種類に応じて、例えば、0〜170℃、好ましくは10〜150℃、さらに好ましくは20〜130℃程度で行う場合が多い。特に、アルキレンカーボネートを使用する場合、脱炭酸反応を効率よく行うため、例えば、70〜150℃、好ましくは80〜120℃程度で反応させる場合が多い。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜24時間、好ましくは2〜10時間程度である。
反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧又は加圧下で行ってもよい。また、必要に応じて、発生するガス(二酸化炭素など)を除去しながら反応を行ってもよい。
目的生成物(式(2)で表される化合物)は、反応終了後の反応混合物から、慣用の精製方法(抽出、晶析など)を利用して精製してもよい。
(方法(2))
方法(2)において、前記式(2B)で表される化合物としては、9−フルオレノンなどのフルオレンノン類が挙げられる。なお、反応に使用する式(2B)で表される化合物(フルオレノン類)の純度は、特に限定されないが、通常、95重量%以上、好ましくは99重量%以上であってもよい。
また、方法(2)において、前記式(2C)で表される化合物としては、例えば、分岐アルキレングリコールモノ(ジアルキルフェニル)エーテル類{例えば、分岐C3−4アルキレングリコールモノキシリルエーテル[2−(2,6−ジメチルフェノキシ)プロパノールなど]などの分岐C3−4アルキレングリコールモノ(ジC1−4アルキルフェニル)エーテルなど}などの前記式(2C)においてmが1であるアルコール類;ジ分岐アルキレングリコールモノ(ジアルキルフェニル)エーテル類{例えば、ジ分岐C3−4アルキレングリコールモノキシリルエーテル(ジプロピレングリコールモノキシリルエーテルなど)などのジ分岐C3−4アルキレングリコールモノ(ジC1−4アルキルフェニル)エーテルなど}などの前記式(2C)においてmが2以上であるアルコール類などが挙げられる。
なお、前記式(2C)で表される化合物(アルコール類)の純度は、特に限定されないが、通常、95重量%以上、好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上であってもよい。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、通常、酸触媒が使用できる。酸触媒としては、無機酸[硫酸、塩化水素、塩酸(5〜36重量%、好ましくは20〜36重量%程度の塩化水素の水溶液など)、リン酸など]、有機酸[スルホン酸(メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸など)など]などが挙げられる。前記硫酸には、希硫酸(例えば、30〜90重量%程度の硫酸)、濃硫酸(例えば、濃度90重量%以上の硫酸)、発煙硫酸などが含まれ、反応系において硫酸に転化可能であれば、硫酸前駆体として、三酸化硫黄を使用してもよい。また、固体酸(陽イオン交換樹脂など)を使用してもよい。酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
また、酸触媒に加えて、助触媒としてのチオール類を併用してもよい。チオール類としては、助触媒として機能する慣用のチオール類、例えば、メルカプトカルボン酸(メルカプト酢酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸など)、チオカルボン酸(チオ酢酸、チオシュウ酸など)、アルキルメルカプタン(メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのC1−16アルキルメルカプタン(特にC1−4アルキルメルカプタン)など)、アラルキルメルカプタン(ベンジルメルカプタンなど)又はこれらの塩などが挙げられる。塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩など)が例示できる。これらのチオール類のうち、メルカプトC2−6カルボン酸(例えば、β−メルカプトプロピオン酸)が好ましい。チオール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なお、反応(液相反応)は、反応溶媒、例えば、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アニソールなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類など)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類など)などの反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。
反応温度は、特に限定されないが、例えば、20〜200℃、好ましくは40〜180℃、さらに好ましくは50〜150℃程度であってもよい。また、反応時間は、原料の種類、反応温度や溶媒中の濃度などに応じて調整でき、例えば、30分〜48時間、通常、1〜24時間、好ましくは1〜10時間程度であってもよい。
また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧又は加圧下で行ってもよい。また、反応は、脱水しながら行ってもよい。
目的生成物(式(2)で表される化合物)は、反応終了後の反応混合物から、慣用の精製方法(抽出、晶析など)を利用して精製してもよい。
以上のようにして、前記式(2)で表される化合物が得られる。なお、反応により得られる前記式(2)で表される化合物(又は前記式(3)で表される化合物との反応に供する化合物)は、単一の化合物であってもよいが、前記式(2)で表される化合物を複数含む混合物であってもよい。例えば、前記式(2)で表される化合物は、前記式(2)においてmが1である化合物と、前記式(2)においてmが2以上(例えば、2)である化合物との混合物であってもよい。このような混合物において、前記式(1)で表される化合物のうち、単一化合物の割合は、例えば、70重量%以上(例えば、75〜99.9重量%)、好ましくは80重量%以上(例えば、85〜99.7重量%)、さらに好ましくは90重量%以上(例えば、95〜99.5重量%程度)であってもよい。
前記式(3)で表される化合物において、基R5で表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、塩素原子、臭素原子(特に塩素原子)が好ましい。具体的な式(3)で表される化合物には、エピハロヒドリン[又はハロメチルオキシラン、例えば、エピクロロヒドリン(クロロメチルオキシラン)、エピブロモヒドリン(ブロモメチルオキシラン)など]、1−ハロメチル−2−メチルオキシラン(1−クロロメチル−2−メチルオキシランなど)などが挙げられる。
前記式(2)で表される化合物との反応において、前記式(3)で表される化合物の割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、2〜30モル、好ましくは2.1〜25モル、さらに好ましくは2.5〜20モル、特に3〜15モル(例えば、3〜10モル)程度であってもよい。
反応(前記式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応)では、適宜、触媒を使用してもよい。触媒としては、塩基(塩基触媒)、例えば、金属炭酸塩(炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩など)、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物など)、アンモニアなどの無機塩基;アミン類[例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどのベンジルジアルキルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、ピリジンなどの複素環式第3級アミン)など]、塩基性イオン交換樹脂(例えば、第4級アンモニウム塩基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂など)などの有機塩基などが例示できる。塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
触媒(例えば、塩基触媒)の使用量は、触媒の種類にもよるが、例えば、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5モル、さらに好ましくは0.1〜3モル程度であってもよい。
また、反応は、相間移動触媒の存在下で行ってもよい。相間移動触媒としては、例えば、アンモニウム塩[例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド、メチルトリデシルアンモニウムクロライドなどのテトラC1−20アルキルアンモニウムハライドなど)、アラルキルトリアルキルアンモニウム塩(例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどのベンジルトリC1−4アルキルアンモニウムハライドなど)など]などが挙げられる。相間移動触媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
相間移動触媒の使用量は、例えば、前記式(2)で表される化合物および前記式(3)で表される化合物の総量100重量部に対して、例えば、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部(例えば、0.3〜8重量部)、さらに好ましくは0.5〜5重量部(例えば、1〜5重量部)程度であってもよい。
反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。溶媒(有機溶媒)としては、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類、アニソールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなどのジアルキルケトン類など)などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、前記触媒が液体である場合、前記触媒を溶媒として使用してもよい。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、30〜120℃、好ましくは35〜100℃、さらに好ましくは40〜70℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。
反応は、還流しながら行ってもよく、副生成分を除去しながら行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。特に、減圧下で反応させると、着色を低減したり、反応時間を短縮できる。
なお、生成した化合物(前記式(1)で表される化合物)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
なお、反応により得られる化合物は、前記式(1)で表される化合物の単一化合物であってもよく、前記式(1)で表される化合物を複数含む混合物であってもよい。例えば、前記式(1)で表される化合物は、前記式(1)においてmが1である化合物と、前記式(1)においてmが2以上(例えば、2)である化合物との混合物であってもよい。このような混合物において、単一化合物の割合は、例えば、60重量%以上(例えば、65〜99.9重量%)、好ましくは70重量%以上(例えば、72〜99.5重量%)、さらに好ましくは75重量%以上(例えば、77〜99重量%)であってもよい。
また、反応により生成した化合物には、生成物としての特性を害しない範囲であれば、前記式(1)で表される化合物の範疇に属さない化合物[例えば、前記式(1)において、2つのmが0である化合物;前記式(1)において、一方のmが0で、他方のmが1以上である化合物;前記式(2)で表される化合物1モルに対して1モルの前記式(3)で表される化合物が付加(反応)した化合物など]を含んでいてもよい。このような混合物において、混合物全体に対する前記式(1)で表される化合物の割合は、例えば、75重量%以上(例えば、80〜99.9重量%)、好ましくは85重量%以上(例えば、88〜99.7重量%)、さらに好ましくは90〜99.5重量%程度であってもよい。
[式(1)で表される化合物の特性およびその用途]
本発明の化合物(前記式(1)で表される化合物又は前記方法により得られる化合物)は、フルオレン骨格(詳細には9,9−ビス(ジ乃至テトラアルキルアリール)フルオレン骨格)を有しており、高耐熱性、高屈折率などのフルオレン骨格特有の特性を有している。しかも、このようなフルオレン骨格を有しているにもかかわらず、溶融粘度が小さい。そのため、本発明の化合物は、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)としてのハンドリング性に優れている。
例えば、本発明の化合物の150℃における溶融粘度(回転数900rpm)は、1〜300mPa・s(例えば、3〜250mPa・s)、好ましくは5〜200mPa・s(例えば、10〜150mPa・s)、さらに好ましくは20〜100mPa・s(例えば、30〜80mPa・s)程度であってもよい。
なお、上記溶融粘度は、コーン・プレート(コーン&プレート)型の溶融粘度計(コーン3など)により測定された値である。
なお、本発明の化合物のエポキシ当量は、例えば、300〜1500g/eq、好ましくは330〜1200g/eq、さらに好ましくは350〜1000g/eq程度であってもよい。
本発明の化合物は、前記のように、高耐熱性などの特性を有し、ハンドリング性にも優れており、熱硬化性樹脂原料、添加剤(硬化剤など)などとして利用できる。例えば、本発明の化合物は、そのままエポキシ樹脂として用いてもよく、エポキシ(メタ)アクリレートなどの熱硬化性樹脂原料として用いてもよい。なお、このような種々の用途において、前記化合物は、式(1)で表される化合物のみならず、式(1)で表される化合物の多量体(二量体、三量体など)であってもよい。また、前記式(1)で表される化合物と、前記多量体との混合物であってもよい。このような多量体の割合は、前記式(1)で表される化合物100重量部に対して、例えば、0〜20重量部、好ましくは0〜10重量部(例えば、0.1〜8重量部)、さらに好ましくは0〜5重量部(例えば、0.2〜3重量部)程度であってもよい。
前記エポキシ樹脂は、通常、硬化剤などを含むエポキシ樹脂組成物を構成してもよい。
エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂(エポキシ樹脂成分)は、前記化合物のみで構成してもよく、他のエポキシ樹脂と組み合わせてもよい。他のエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール(又はクレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂(トリフェノールメタン型エポキシ樹脂など)、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂(キサンテン単位を含むエポキシ樹脂を含む)、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂(1,6−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス(2,7−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン)アルカンなどのナフタレン環含有エポキシ樹脂など)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有する他のエポキシ樹脂[例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス[(2−グリシジルオキシ(ポリ)エトキシ)フェニル]フルオレン類など]などが挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
他のエポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂成分全体に対する前記化合物の割合は、例えば、50〜99重量%、好ましくは60〜98重量%、さらに好ましくは70〜95重量%程度であってもよい。
なお、エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、希釈剤、硬化剤、硬化促進剤などを含んでいてもよい。
希釈剤としては、反応性希釈剤、非反応性希釈剤(溶媒)などが含まれる。
反応性希釈剤としては、単官能性エポキシ基含有化合物(例えば、2−エチルへキシルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル類、アリルグリシジルエーテルなどのアルケニルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのアリールグリシジルエーテル類、フェノールのアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、これらの化合物に対応するアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル類などのグリシジルエーテル類;オクチレンオキサイド、スチレンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、などのアルケンオキシド類など)、多官能性エポキシ化合物[例えば、ジグリシジルエーテル、ポリオールポリグリシジルエーテル(ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアルカンジオールジグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンジ乃至トリグリシジルエーテル、グリセリンジ乃至トリグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど)、ジグリシジルアニリン、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、シクロアルケンオキシド類(例えば、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど)などの低粘度のエポキシ化合物など]などが挙げられる。これらの反応性希釈剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
エポキシ樹脂組成物において、反応性希釈剤の割合は、エポキシ樹脂(他のエポキシ樹脂を使用する場合には、前記化合物との総量、以下同じ)100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部程度であってもよい。
溶剤(又は溶媒)としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。これらの溶剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
溶媒の使用量(添加量)は、例えば、エポキシ樹脂100重量部に対して、0〜500重量部の範囲から選択でき、例えば、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤[特に、第1級アミン、例えば、鎖状脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン類)など、環状脂肪族アミン(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどの単環式脂肪族ポリアミン;ノルボルナンジアミンなどの架橋環式ポリアミンなど)、芳香脂肪族ポリアミン(例えば、キシリレンジアミンなど)、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)など]、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤(例えば、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族系酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの脂環族系酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などの芳香族系酸無水物)、フェノール樹脂系硬化剤(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック樹脂)などが挙げられる。これらの硬化剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
エポキシ樹脂組成物において、硬化剤の割合は、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜600重量部、好ましくは1〜500重量部、さらに好ましくは10〜400重量部程度であってもよい。また、特に、硬化剤の割合は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤の官能基が0.1〜4.0当量、好ましくは、0.3〜2.0当量、さらに好ましくは、0.5〜1.5当量となるように、両成分の割合を調整してもよい。
また、硬化促進剤としては、例えば、アミン類[例えば、第3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−1など)、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾールなど)およびその誘導体(例えば、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などの塩)など]、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、ホスフィン類、アミド化合物(ダイマー酸ポリアミドなど)、ルイス酸錯体化合物(3フッ化ホウ素・エチルアミン錯体など)、硫黄化合物[ポリサルファイド、メルカプタン化合物(チオール化合物)など]、ホウ素化合物(フェニルジクロロボランなど)、縮合性有機金属化合物(有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物など)などが挙げられる。硬化促進剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
硬化促進剤の割合(添加量)は、エポキシ樹脂100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部程度であってもよい。
また、エポキシ樹脂組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例において、各種測定は以下のようにして行った。
(HPLC)
東ソー(株)製、逆相カラム(ODS−80TM)を使用し、254nmにて、水/アセトニトリル(重量比)=30/70で30分、その後、水/アセトニトリル(重量比)=0/100で30分測定した。
(NMR)
1H−NMRスペクトルは、内標準としてテトラメチルシランを用い、溶媒としてCDCl3を用いて、JEOL GTX−400分光計によって記録した。
(溶融粘度)
ICI粘度計(コーン&プレート型、ブルックフィールド社製粘度計 CAP2000+H)を用い、コーン3にて900rpmで150℃まで加温して測定した。
(エポキシ当量)
自動滴定装置(三菱化学(株)製 GT−100)を用いて、過塩素酸溶液(酢酸性)にて滴定した。
(合成例1)
10Lのセパラブルフラスコに、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン(BXF、大阪ガスケミカル(株)製)406g(1.0mol)、プロピレンカーボネート1029g(10mol)、溶媒としてのジエチレングリコール1500g(17mol)を入れ、触媒として1−メチルイミダゾール(和光純薬工業(株)製)10gを添加した後に、100℃に加熱して5時間反応させた。反応終了後、イソプロピルアルコール5000mlを加えて10℃まで冷却することにより、白色粉末61gを得た。得られた白色粉末を分析した結果、HPLCによる純度98.3%で原料として用いたBXF1モルに対して2モルのオキシプロピレン基(プロポキシ基)が付加した目的化合物(下記式で表される化合物、BXF−POという)が得られた。
1H−NMR(CDCl3,δ)ppm:1.2ppm(d,6H),2.2ppm(s,12H),3.6−4.2ppm(t,11H),6.8ppm(d,4H),7.2−7.8ppm(m,8H)。
(合成例2)
合成例1において、プロピレンカーボネート1029gに代えて、エチレンカーボネート881gを用いた以外は合成例1と同様に合成した結果、白色粉末が得られた。得られた白色粉末を分析した結果、HPLCによる純度98.3%で原料として用いたBXF1モルに対して2モルのオキシエチレン基(エトキシ基)が付加した目的化合物(下記式で表される化合物、BXF−EOという)が得られた。
1H−NMR(CDCl3,δ):2.1ppm(s,12H),3.7ppm(t,8H),4.0ppm(s,2H),6.8−7.8ppm(m,12H)。
(実施例1)
ディーンスタークおよび還流管を取り付けた300mlのセパラブルフラスコに、合成例1で得られた化合物62.7g(0.11mol)、クロロメチルオキシラン(特級、キシダ化学(株)製)87.7g(0.9mol)、塩化テトラメチルアンモニウム(特級、関東化学(株)製)2.0gを添加し、60℃で1時間、加熱溶解させた。その後、フレーク状の水酸化ナトリウム(特級、双葉化学(株)製)5gを、温度が60℃以下(45〜55℃)を保つように少量ずつ100分以内に投入した。
反応中、生成した水はクロロメチルオキシランとともに、共沸により系外に排出し、クロロメチルオキシランは系内に戻した。水酸化ナトリウム投入後5時間、温度を60℃以下(45〜55℃)に保持しつつ加熱攪拌した結果、HPLCにて原料であるBXF−POの消失を確認した。その後、200mlの水を添加し、反応を終了させた。さらに反応時に生成した塩化ナトリウムとともに水層を廃棄し、有機層を1Lのナス型フラスコに移し、エバポレーターにて130℃加熱条件でクロロメチルオキシランを濃縮除去し、淡黄色の粘稠物を得た。
引き続き、メチルイソブチルケトン(関東化学(株)製)を投入し70℃に加熱して溶解させた後に1Lのセパラブルフラスコに移して85℃まで昇温し、30%水酸化ナトリウム水溶液を12g投入し、85℃以下(80〜85℃)を保ちながら1時間攪拌させた。その後、水を200ml添加して反応を終了させるとともに、生成した塩化ナトリウムを取り除くために水洗を行った。さらに、イオン交換水200gを投入し、水層を廃棄した。この操作をpHが中性(pH7)になるまで、5回繰り返した。得られたものをナス型フラスコに移し、エバポレーターにて80℃以下(60〜80℃)でメチルイソブチルケトンを除去した。その後、乾燥機内にて90℃で5時間乾燥し、黄色粘稠物を51.1g得た。この黄色粘稠物の収率は67.1%であった。
得られた粘稠物のHPLC純度は、BXF−POにクロロメチルオキシランが1つ付加した化合物が12.1%、2個付加した目的物(下記式)が79.6%であった。そして、得られた粘稠物の150℃における溶融粘度は59mPa・s、エポキシ当量は386g/eqであった。
1H−NMR(CDCl3,δ):1.2ppm(d,6H),2.1ppm(s,12H),3.6−4.2ppm(t,11H),6.8ppm(d,4H),7.2−7.5ppm(m,6H)、7.8(d、2H)。
(比較例1)
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、BXF)44.7g(0.1モル)をクロロメチルオキシラン(特級、キシダ化学(株)製)74g(0.8モル)に溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(特級、関東化学(株)製)2.0gを加え、60℃にて1時間攪拌した。次に、減圧下(650mmHg)、45℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液30gを1.5時間かけて滴下した。その間、生成する水をクロロメチルオキシランとの共沸により系外に除き、留出したクロロメチルオキシランは系内に戻した。滴下終了後、さらに3時間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、クロロメチルオキシランを固形分が50%になるまで留去し、メタノールを300g添加した。析出した結晶を濾別、乾燥し、白色粉末が得られた。
得られた白色粉末のHPLC純度は、BXFにクロロメチルオキシランが1つ付加した化合物が0%、2個付加した目的物(下記式)が92.4%、2量体(下記式で表される化合物の2量体)が3.1%であった。
得られた白色粉末の180℃における溶融粘度は670mPa・sと非常に粘度が高く、ハンドリング性に劣ることがわかった。なお、150℃では溶融しなかったため、粘度は測定できなかった。また、エポキシ当量は265g/eqであった。
(比較例2)
実施例1において、合成例1で得られた化合物62.7gに代えて、合成例2で得られた化合物56.9g(0.1モル)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして合成した結果、白色固体が得られた。この白色粉末の収率は53.1%であった。
得られた白色粉末のHPLC純度は、BXF−EOにクロロメチルオキシランが1つ付加した化合物が21.3%、2個付加した目的物(下記式)が72.8%であった。そして、得られた白色固体の150℃における溶融粘度は331mPa・sと高く、ハンドリング性に劣ることがわかった。また、エポキシ当量は383g/eqであった。