JP6248526B2 - 新規エポキシ化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、新規エポキシ化合物、該エポキシ化合物の製造方法、新規エポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物に関する。
エポキシ樹脂組成物は、塗料、インキ、コーティング剤、接着剤、粘着剤、封止材、絶縁材料、電子材料、ホログラフィックメモリ、光学材料、積層板、レジスト等工業的に幅広い用途で使用されているが、その要求性能は近年ますます高度化している。例えば、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物の代表的な用途として、半導体封止材料があるが、近年半導体素子の集積度の向上に伴い、パッケージサイズが大面積化、薄型化に向かうとともに、実装方式も表面実装化への移行が進展しており、より耐熱性に優れた材料の開発が求められている。更には、熱伝導性のよい無機材料を混合した放熱性を有する複合材料向け、あるいは導電性充填剤を混合した導電性複合材料向けに、接着性も併せ持つエポキシ樹脂の要求も高まってきている。
また、LEDチップ等の発光素子を封止する際に使用される材料として、加工性および透明性の観点から、エポキシ樹脂が利用される場合が多い。代表的なエポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂をLED封止材として用いた場合、耐熱性を有するものの芳香族成分を含有するため、光を吸収し、黄色劣化するといった問題点があった。それを解決するために、芳香環を水素化したビスフェノールA型エポキシ樹脂が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この水素化したビスフェノールA型エポキシ樹脂は光に対する劣化は少ないものの、発光の際の発熱に対して耐熱性が十分ではない。
更に、炭素繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として、成形性、機械特性の観点からエポキシ樹脂が使用されている。特に近年では、自動車部品、鉄道車両、航空機等の用途において耐熱性に加えて、低粘度化の両立といった要求が高まってきている。これまでに低粘度化に優れた樹脂として、シクロヘキサン骨格にオキシメチレン基を有するエポキシ樹脂が提案されているが、芳香族環を有するエポキシ樹脂に比べて、透明性、耐候性に優れるものの耐熱性の点で十分ではなかった(特許文献2)。
また、透明性に優れ、低粘度を有する脂環式エポキシ化合物が提案されているが、その硬化物は耐熱性が十分でなく、また硬化時の反応性が低いという問題点があった(特許文献3)。
特開2003−082062号公報 特開平4−359009号公報 特開2005−075907号公報
本発明は、半導体封止材、LED封止材、炭素繊維強化複合材料のマトリックス樹脂、光学電子部材およびこれらの接着剤等として特に好適な、透明性、耐熱性を有し、低粘度性に優れ且つ反応性の高い硬化物を与えるエポキシ化合物とその製法を提供することにある。また、本発明のエポキシ化合物を含有する組成物並びにその硬化物を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ある種のブテンジオール誘導体を酸化すると新規なエポキシ化合物が得られることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、下記の(1)〜(12)に存する。
(1)下記一般式(1)で表わされるエポキシ化合物。
Figure 0006248526
(式(1)中、LおよびLは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜14の2価の有機基を示し、AおよびBは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の有機基を示すが、LおよびL上の置換基は、それぞれAおよびBと環を形成していてもよく、3つのエポキシ環のうちの1つがエポキシ環の代わりに炭素−炭素二重結合を形成していてもよい。)
(2)下記一般式(2)で表わされるエポキシ化合物。
Figure 0006248526
(式(2)中、LおよびLは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜14の2価の有機基を示し、AおよびBは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の有機基を示すが、LおよびL上の置換基は、それぞれ、AおよびBと環を形成していてもよく、3つのエポキシ環のうちの1つがエポキシ環の代わり炭素−炭素二重結合を形成していてもよい。)
(3)上記式(1)および式(2)中のAおよびBが水素原子である(1)又は(2)に記載のエポキシ化合物。
(4)上記式(1)および式(2)中のLおよびLが−(CH)n−(但し、nは1〜14の整数を示す。)で表わされるアルキレン基である(1)〜(3)のいずれかに記載のエポキシ化合物。
(5)上記−(CH)n−中のnが1である(4)に記載のエポキシ化合物。
(6)ブテンジオールの水酸基と炭素−炭素二重結合を有する有機基を連結して合成したトリオレフィン化合物を酸化することを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。
(7)酸化が、塩基の存在下、ニトリルと過酸化水素水溶液で行われることを特徴とする(6)に記載の製造方法。
(8)酸化が、タングステン酸類の存在下、4級アンモニウム塩と過酸化水素水溶液で行われることを特徴とする(6)に記載の製造方法。
(9)トリオレフィン化合物が下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
Figure 0006248526
(式(3)中、LおよびLは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜14の2価の有機基を示し、AおよびBは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の有機基を示すが、LおよびL上の置換基は、それぞれ、AおよびBと環を形成していてもよい。また、式(3)で示される化合物は、AおよびBが有機基である場合、両端の二重結合部位におけるシス−トランス両異性体を含む。)
Figure 0006248526
(式(4)中、LおよびLは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜14の2価の有機基を示し、AおよびBは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の有機基を示すが、LおよびL上の置換基は、それぞれ、AおよびBと環を形成していてもよい。また、式(4)で示される化合物は、中央の炭素−炭素二重結合部位、ならびにAおよびBが有機基である場合、各炭素−炭素二重結合部位におけるシス−トランス両異性体を含む。)
(10)(6)〜(9)のいずれかに記載の製造方法により得られるエポキシ化合物。
(11)(1)〜(5)、(10)のいずれかに記載のエポキシ化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(12)(11)に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
本発明によれば、新規なエポキシ化合物を提供することができる。本発明のエポキシ化化合物を含有するエポキシ樹脂組成物は、特に透明性、耐熱性が高く、かつ低粘度性があり硬化速度が速い等の操作性に優れた特性を有するものである。
合成例1で得られたトリオレフィン化合物、実施例1で得られたエポキシ化合物のH−NMR測定のチャートである。
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
〔1〕エポキシ化合物
本発明のエポキシ化合物は、後述するエポキシ化合物の製造方法により得られる下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される構造を有する。
Figure 0006248526
上記一般式(1)および(2)中、LおよびLは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜14の2価の有機基を示し、AおよびBは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の有機基を示すが、LおよびL上の置換基は、それぞれ、AおよびBと環を形成していてもよく、3つのエポキシ環のうちの1つが環の代わり炭素−炭素二重結合を形成していてもよい。
先ず、LおよびLにおける「炭素数1〜14の2価の有機基」としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基(−CO−)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、イミノ基(−NH−)、ホスフィンジイル基(−PH−)、シリレン基(−SiH−)等が挙げられる。これら2価の有機基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ、即ち、これらの2価の有機基が2以上連結したものであってもよい。このうち、原料の入手が容易な観点からアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、オキシ基が好ましく、炭素数1〜14の直鎖アルキレン基、フェニレン基、カルボニル基、オキシ基が更に好ましい。また、製造が容易であるという観点から2価の有機基の組み合わせとしては、カルボニルアルキレン基、カルボニルアリーレン基、アルキレンオキシアルキレン等が好ましい。
具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基;シクロプロレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等の環状アルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、トルイレン基等のアリーレン基等が挙げられる。
また、LおよびLとしては、−(CH−(但し、nは1〜14の整数を示す。)で表わされる直鎖アルキレン基が好ましい。これらの中で、透明性および低粘度性の観点からnが1〜6の基が好ましく、メチレン基が特に好ましい。
およびLにおける「炭素数1〜14の2価の有機基」が有していてもよい置換基としては、本発明のエポキシ化合物の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ特に制限はないが、例えば、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、エステル基、ハロゲン原子、チオール基、チオエーテル基、アルコキシフェニル基、有機珪素基が挙げられる。これらの中で、原料の入手が容易な観点からアルキル基、アリール基、水酸基が好ましい。また、これらの置換基は更に置換基を有していてもよく、この置換基としても炭素数1〜14の上記のような有機基が挙げられる。
なお、本発明において、有機基の炭素数とは、当該有機基が更に置換基を有する場合、その置換基も含めた炭素数を意味する。
AおよびBにおける「炭素数1〜8の1価の有機基」としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシフェニル基、複素環基、アルコキシ基、アラルキル基、エステル基等が挙げられる。これらの中で、透明性および低粘度性の観点からアルキル基が好ましい。
具体的には、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。アルコキシフェニル基としては、例えば、メトキシフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。エステル基としては、例えば、エチルエステル基、ブチルエステル基等が挙げられる。このうち、原料入手が容易であるという観点から炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、さらに炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
AおよびBにおける「炭素数1〜8の1価の有機基」が有していてもよい置換基としては、上記LおよびLにおける置換基が挙げられる。これらの中で、原料の入手が容易な観点からアルキル基、アリール基、水酸基が好ましい。
AおよびBとして好ましいものは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基であり、中でもエポキシ化合物の反応性の観点から、水素原子が特に好ましい。
また、LおよびL上の置換基は、それぞれ、AおよびBと環を形成していてもよい。具体的には、例えば、一般式(1)において、アルキル基どうしが連結した以下の構造式(5)、(6)等が挙げられる。
Figure 0006248526
構造式(5)、(6)として、一般式(1)において、LとA、LとBの両方が結合した炭素6員環を形成している例を示したが、置換基の炭素数内において員環数に制限はなく、LとA、LとBのどちら一方のみが環を形成しているものも具体例として挙
げられる。また、一般式(2)においても同様に、置換基の炭素数内において員環数に制限はなく、例えば、LとA、LとBの一方若しくは両方が結合して、炭素6員環を形成しているものが具体例として挙げられる。
さらに、一般式(1)および一般式(2)で表される化合物は、それぞれ、3つのエポキシ環を有するが、そのうちの1つがエポキシ環の代わりに炭素−炭素二重結合を形成したジエポキシ化合物であってもよい。例えば一般式(1)および(2)で表わされるジエポキシ体としては、下記のようなものが挙げられる。
Figure 0006248526
各構造式において、波線で表わされる炭素−炭素二重結合の置換基は、二重結合が有するシス・トランス異性体のいずれでもよいことを表わす。
上記一般式(1)および一般式(2)で表される化合物は、それぞれ、3つのエポキシ環を有するトリエポキシ化合物と2つのエポキシ環を有するジエポキシ化合物の混合物であってもよい。
また一般式(1)で表わされるトリエポキシ化合物と、一般式(2)で表わされるトリエポキシ体の混合物として用いてもよく、さらにはそれぞれの上記ジエポキシ化合物どうしが混合したものであってもよい。
また一般式(1)および(2)で表わされるトリエポキシ化合物およびジエポキシ化合物は、それぞれの光学異性体を含み、ジアステレオマー、エナンチオマーなどその立体異性体であっても良く、これら立体異性体の混合物であっても良い。
これらの中で、耐熱性、透明性、エポキシ硬化速度の観点からトリエポキシ化合物が好
ましい。また、低粘度性ならびにエポキシ以外の反応架橋点の観点からジエポキシ化合物が好ましい。なお、本発明のエポキシ化合物の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ混合比率に特に制限はないが、透明性の観点からはトリエポキシ化合物の比率が高い方が好ましく、トリエポキシ化合物とジエポキシ化合物の比率は、GC面積%で通常100:0〜60:40であり、製造コストと透明性の両立の面で99:1〜70:30が好ましく、95:5〜80:20がより好ましい。
低粘度性およびエポキシ以外の反応架橋点の観点からは、トリエポキシ化合物の比率は低い方が好ましく、トリエポキシ化合物とジエポキシ化合物の比率は、GC面積%で通常60:40〜0:100であり、製造の容易さの面から50:50〜1:99が好ましく、40:60〜5:95がより好ましい。
本発明のエポキシ化合物は、芳香族を有さず、光を吸収しにくいため、硬化物が耐光性を有する。また、一分子内に3つのエポキシ基を有する場合、エポキシ当量が小さいため、硬化により密なネットワークが形成され、高いTgと耐熱性を有する。また、エポキシ当量が小さいため、高い接着性が期待できる。一般式(1)および(2)におけるLおよびLが官能基を有さない炭素鎖である場合は、硬化物が塩基や水に対して安定で、耐薬品性を有し、吸水性が低い。また本発明のエポキシ化合物が一般式(1)で示され、AおよびBが水素原子である場合は、エポキシ基が末端であるため、硬化反応速度が速い。また本発明のエポキシ化合物は、液状であることから加工性に優れ、また水溶性も有することから加工処理条件が広いという特徴を有する。また、安価で入手容易な工業品を原料として合成することが可能である。
〔2〕エポキシ化合物の製造方法
本発明のエポキシ化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えばブテンジオールの水酸基と炭素−炭素二重結合を有する有機基を連結して合成したトリオレフィン化合物を酸化する方法、ブテンジオール、又はブテンジオールに水酸基を有する有機基を連結して得たアルコール化合物にエピクロロヒドリンを作用させ、得られたジエポキシ化合物をさらに酸化する方法等が挙げられる。
このうちブテンジオールの水酸基と炭素−炭素二重結合を有する有機基を連結して合成したトリオレフィン化合物を酸化することにより製造する方法が、炭素−炭素二重結合を有する有機基を連結する反応が選択性良く良好に進行するといった面で有利なことから好ましい。
先ず、上記のトリオレフィン化合物を酸化する方法(以下において、本発明の製造方法ということがある)を例として製造方法を説明するが、まずこの方法において原料となるトリオレフィン化合物の製造法について説明する。
トリオレフィン化合物は、次のとおり、ブテンジオールの水酸基と炭素−炭素二重結合を有する有機基を連結することにより製造することができる。
具体的には、本発明の製造方法は、ブテンジオールの2つの水酸基に、それぞれ独立に炭素−炭素二重結合を有し、かつ炭素数1〜14の2価の有機基(本発明のエポキシ化合物におけるL、Lをさす)を2つ連結し、トリオレフィン化合物を製造する。このとき前記の炭素−炭素二重結合は、置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の有機基(本発明のエポキシ化合物における置換基A,Bに相当する)を有していてもよい。
ブテンジオールとしては、末端に炭素−炭素二重結合を有する3−ブテン−1,2−ジオールや内部に炭素−炭素二重結合を有する2−ブテン−1,4−ジオールが挙げられる。これらブテンジオールはシス/トランス異性体、光学異性体等の混合物であっても構わない。また2種類以上のブテンジオールの混合物、例えば3-ブテン−1,2−ジオール
と2-ブテン−1,4−ジオールの混合物を用いてもよい。
ブテンジオールの水酸基と炭素−炭素二重結合を有する有機基を連結する方法としては、本発明のエポキシ化合物の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ特に制限はないが、原料入手が容易な観点から、エーテル連結、エステル連結、および炭酸エステル連結が挙げられる。このうちエーテル連結、エステル連結が反応の簡便さから好ましく、また、耐水性の観点からエーテル連結が特に好ましい。
まず、エーテル連結に関して説明する。下記反応式(9)のように、水酸基に対して、炭素−炭素二重結合を有する一般式(7)、(8)で表される化合物(エーテル化反応試薬)を反応させる方法である。
Figure 0006248526
上記一般式(7)〜(9)中、Xはハロゲン原子、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルキルカーボネート基、スルホニルオキシ基、アミノ基等の脱離性置換基を表わすが、原料入手の観点からハロゲン原子、アシルオキシ基が好ましく、ハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子がより好ましく、アシルオキシ基としてはアセトキシ基がより好ましい。
特開2011−213726記載のとおり、Xがハロゲン原子の場合、一般式(7)および(8)は他の含ハロゲン化合物の含有量の少ない純度の良いものを用いるのが、ハロゲン含有量が少なくなる点で好ましい。
Xがアシルオキシ基の場合、得られるエポキシ化合物中のハロゲン含有量が少なくなる点でさらに好ましい。
上記水酸基のエーテル化反応は、一般的に塩基性条件で行われる。その際に用いられる塩基としては、反応が進行すればどのような塩基を用いてもよいが、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド;ピリジン、2−メチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ジメチルピリジン等の含窒素複素環式芳香族化合物;トリエチアミン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、ピペラジン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のアミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等の4級アン
モニウムヒドロキシド;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基等の塩基性化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
塩基は、通常、ブテンジオールが有する水酸基に対して、1〜5当量用いられる。塩基の使用量が多過ぎると副反応が起こることがあり、少な過ぎると反応速度又は転化率が不十分になることがある。また、塩基に加えて4級アンモニウムハライド等の相間移動触媒等を添加してもよい。
また上記水酸基のエーテル化反応は、特にXが水酸基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基等の場合は、パラジウム、ルテニウム等の遷移金属触媒の存在下で行なってもよく、有機リン化合物や含窒素有機化合物等を配位子としてさらに加えてもよい。
エーテル化反応試薬(7)、(8)、反応式(9)中のL、L、A、Bは一般式(1)、(2)中のL、L、A、Bと同一である。このエーテル化反応試薬は、ブテンジオールが有する水酸基の量に対して、通常1当量以上、通常50当量以下、好ましくは10当量以下である。前記範囲内であれば十分な反応速度が得られ、また製造コスト面で有利である。また生成物の純度を上げられる点で用いる量は少ない方が好ましい。
反応溶媒は、上記の反応が十分な反応速度で進行するものであれば任意であるが、通常、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等;のエーテル系溶媒、トルエン、ベンゾニトリル、アニソール等;の芳香族溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等;のアミド系溶媒等が用いられる。特にTHFはブテンジオール並びに生成物を良好に溶解させることができるため好ましい。またこれらの溶媒は1種類で用いても、2種類以上を混合して使用してもよい。
反応溶媒の使用量は、目的とする反応が十分な反応速度で進行するものであれば任意だが、通常、反応に用いるブテンジオールの質量(g)に対する溶媒の体積(mL)の割合が、1〜100mL/gとなる溶媒量が好ましい。
反応は、通常、ブテンジオールとエーテル化反応試薬を溶媒に溶解させ、0〜100℃、好ましくは40℃〜80℃で、数分〜数十時間、好ましくは5分〜10時間反応させることにより行われる。
通常、反応終了後に、生成したトリオレフィン化合物を反応液から常法により単離する。例えば、イオン交換水を滴下して反応を停止させ、有機層をトルエン、ヘキサン等の有機溶媒で抽出し、溶媒を留去することにより、生成物を単離することができる。得られたトリオレフィン化合物は、必要に応じて、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の手法で精製してもよい。
次に、エステル連結に関して説明する。ブテンジオールに対してエステル化反応試薬を反応させる方法として例えば以下の手法が挙げられる。
(M1)反応式(12)のように、ブテンジオールが有する水酸基とカルボン酸誘導体等のカルボニル基を含む一般式(10)、(11)で表される化合物(エステル化反応試薬)を、塩基の存在下に反応させる方法(方法M1)
(M2)反応式(15)のように、ブテンジオールが有する水酸基とカルボン酸誘導体等のカルボニル基を含む一般式(13)、(14)で表される化合物(エステル化反応試薬)を縮合剤の存在下に反応させる方法(方法M2)
方法M1について説明する。
Figure 0006248526
上記一般式(10)〜(12)中、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基等の脱離性置換基を示し、LはLの末端がカルボニル基を示し、LはLの末端がカルボニル基を示す。L、L、A、Bは一般式(1)、(2)中のL、L、A、Bと同一である。
この方法で用いるエステル化反応試薬(カルボン酸誘導体)としては、酸ハロゲン化合物、酸無水物、アミド化合物、エステル化合物等が挙げられる。これらの中でも入手の容易さと反応性の観点から、酸ハロゲン化物が好ましい。
塩基としては、副生する酸を中和することができるものであれば特に限定されないが、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド;ピリジン、2−メチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ジメチルピリジン等の含窒素複素環式芳香族化合物;トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、ピペラジン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のアミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド;炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基等の塩基性化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
塩基は、通常、ブテンジオールが有する水酸基の数に対して、1〜5当量用いられる。塩基の使用量が多過ぎると副反応が起こることがあり、少な過ぎると反応速度又は転化率が不十分になることがある。
反応溶媒は、上記の反応が十分な反応速度で進行するものであれば任意であるが、通常、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系
溶媒又はベンゾニトリル、アニソールといった芳香族溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等が好ましい。溶媒の使用量は、目的とするエステル化反応が十分な反応速度で進行するものであれば任意だが、通常、原料ブテンジオールの質量(g)に対する溶媒の体積(mL)の割合が、1〜100mL/gとなる溶媒量が好ましい。
反応は、通常、ブテンジオール、エステル化反応試薬(カルボン酸誘導体)、塩基を溶媒に溶解させ、0〜150℃、好ましくは50℃〜130℃で、数分〜数十時間、好ましくは5分〜40時間反応させることにより行われる。通常、反応終了後に、生成したトリオレフィン化合物を反応液から常法により単離する。例えば、イオン交換水を滴下して反応を停止させ、有機層をトルエン、ヘキサン等の有機溶媒で抽出し、溶媒を留去することにより、生成物を単離することができる。得られたトリオレフィン化合物は、必要に応じて、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の手法で精製してもよい。
方法M2について説明する。
Figure 0006248526
上記一般式(13)〜(15)中、L、L、L、L、A、Bは前述のものと同様である。
縮合剤としては特に限定されないが、例えば、DCC(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド)、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、HATU(O−(ベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩)、DPPA(ジフェニルリン酸アジド)等の市販の一般的な試薬をそのまま使用することができる。また、活性化剤としてジメチルアミノピリジン等を添加してもよい。
方法M2における反応溶媒および反応条件(反応温度や反応時間)は、方法M1に記載
したものを同様に適用できる。
かくして得られるトリオレフィン化合物の中で、下記一般式(3)、一般式(4)で表される化合物が特に好ましい。
Figure 0006248526
上記一般式(3)および(4)で表される化合物は、それぞれ、一般式(1)および(2)で表される化合物の反応原料となる化合物である。また上記一般式(3)および(4)におるL、L、A、Bは、それぞれ上記一般式(1)および(2)におけるものと同義である。
上記一般式(3)で示されるトリエポキシ化合物は、AおよびBが有機基の場合、両端の二重結合部位におけるシス−トランス両異性体を含む。また上記一般式(4)で示されるトリエポキシ化合物およびジエポキシ化合物は、中央の炭素−炭素二重結合、ならびにAおよびBが有機基である場合、各炭素−炭素二重結合部位におけるシス−トランス両異性体を含む。
上記したトリオレフィン化合物を酸化することにより、本発明のエポキシ化合物を得ることができる。
酸化方法は、本発明のエポキシ化合物が取得可能な方法であれば特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、酸化反応で使用するエポキシ化剤としては、過酸類、ハイドロパーオキサイド類が挙げられる。具体的にはエポキシ基の開環反応を抑制するために、(M3)塩基の存在下、ニトリルと過酸化水素水溶液で行う方法(方法M3)、(M4)タングステン酸類の存在下、4級アンモニウム塩と過酸化水素水溶液で行う方法(方法M4)、過酢酸やm−クロロ安息香酸等の有機過酸を用いる方法(方法M5)等が挙げられ、化合物の性質に応じて方法を選択することができる。なかでも、前記方法M3や方法M4が好ましい。炭素−炭素二重結合を有する化合物がエステルなどの塩基で分解される部位を有する場合は、酸性条件下で行う(方法M4)(方法M5)が好ましい。
先ず、(M3)塩基の存在下、ニトリルと過酸化水素水溶液で行う方法(方法M3)について説明する。
反応に用いる塩基としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が使用されるが、これらの中でもアルカリ金属塩が好ましい。
アルカリ金属塩の具体例としては、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、二リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等のリン酸アルカリ金属塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸リチウム、
炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸アルカリ金属塩、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等の硫酸アルカリ金属塩、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ金属塩等が挙げられる。これらの中で、反応性の観点から炭酸アルカリ金属塩が好ましく、特に炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
塩基の使用量は特に限定されないが、トリオレフィン化合物の炭素−炭素二重結合1当量に対して、好ましくは0.05当量以上、より好ましくは0.1当量以上、更に好ましくは、0.2当量以上であり、また、好ましくは5当量以下、より好ましくは2当量以下、更に好ましくは1当量以下である。使用量が0.05当量より少ないと、反応が十分に進行せず、使用量が5当量よりも多いと、過酸化水素が分解し反応性が低下する傾向がある。
ニトリルは、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリルのいずれであってもよい。脂肪族ニトリルとしては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリル、マロノニトリル、アジポニトリルやモノクロロアセトニトリル、ジクロロアセトニトリル、トリクロロアセトニトリル等が挙げられる。芳香族ニトリルとしては、例えば、ベンゾニトリル、トルニトリル、クロロベンゾニトリル、フルオロベンゾニトリル等が挙げられる。これらの中で、反応性と、ニトリル由来の副生成物を容易に除去することができる点から、アセトニトリル、プロピオニトリル、および、ベンゾニトリルが好ましく、特にアセトニトリルが好ましい。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
ニトリルの使用量は特に限定されず、トリオレフィン化合物や塩基の種類、反応条件等によって異なるが、トリオレフィン化合物の炭素−炭素二重結合1当量に対して、好ましくは1当量以上、より好ましくは1.5当量以上であり、また、好ましくは10当量以下、より好ましくは5当量以下である。使用量が1当量より少ないと、反応が十分に進行せず、使用量が10当量よりも多いと、反応性が低下する傾向がある。なお、過酸化水素水を追加で導入する際は、過酸化水素に対して1当量〜2当量のニトリルを追加で加えることが好ましい。
反応液に導入する過酸化水素濃度は特に限定されないが、好ましくは10%以上、より好ましくは20%であり、また、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。濃度が10%より低いと、反応速度の低下およびバッチ効率の低下を招き、濃度が60%よりも高いと反応時の内温の制御が困難になったり、異常な過酸化水素の分解が起き易くなり危険性が増大したりする傾向がある。
過酸化水素の使用量は特に限定されず、トリオレフィン化合物や塩基の種類、反応条件等によって異なるが、トリオレフィン化合物の炭素−炭素二重結合1当量に対して、過酸化水素換算で、好ましくは1当量以上、より好ましく2当量以上であり、また、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以下である。使用量が1当量より少ないと、反応が十分に進行せず、使用量が20当量よりも多いと、反応の制御や安全性の確保に加え、生成したエポキシ化合物の回収が難しくなる傾向がある。
反応には溶媒を使用することもできる。用いる溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド;1,2−ジメトキエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。中でも、水との混和性と安価に入手できるという点で、アルコール溶媒
、特にメタノールが好ましい。
溶媒の使用量は特に限定されないが、トリオレフィン化合物1gに対して、好ましくは1g以上、より好ましくは2g以上であり、また、好ましくは100g以下、より好ましくは50g以下である。溶媒が1gより少ないと、基質が上手く系内で混和せず反応性が低下する傾向がある。また、100gより多いと、系内の反応基質の濃度が低下し、反応速度が低下する傾向がある。
反応温度は特に限定されないが、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、よりが好ましくは80℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。100℃を超えると、過酸化水素の分解や、生成したエポキシの加水分解が促進される傾向がある。0℃未満であると、十分な反応速度が得られず、反応が完全に進行しない傾向がある。
反応時間は、反応スケール等により異なるが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、また、通常72時間以下、好ましくは24時間以下の範囲から選択できる。
上記のとおり、方法M3では、塩基の存在下、ニトリルと過酸化水素水溶液でトリオレフィン化合物を酸化してエポキシ化合物を生成させる。これらの化合物の添加順序は特に限定されないが、通常の反応では、まずトリオレフィン化合物、塩基、ニトリルを反応溶媒中で混合し、混合物の温度に注意しながら過酸化水素水を滴下し、撹拌する。その後、必要に応じて、ニトリルと過酸化水素を導入してもよい。反応後、水洗、残存した過酸化水素をクエンチ、濃縮等の通常の操作を行ってエポキシ化合物を得る。
過酸化水素は速やかにエポキシ化反応に消費されるので、必要量の過酸化水素を一度に添加しても系中の過酸化水素濃度が上昇しすぎることはないが、安全性の観点から数回に分けて添加することや、連続的に添加する方が好ましい。
方法M3では、塩基性条件で酸化を行うことができるため、エポキシ基の開環反応を抑制することができ、高選択性を維持したままジエポキシ化合物、トリエポキシ化合物を合成することができる。
次に、(M4)タングステン酸類の存在下、4級アンモニウム塩と過酸化水素水溶液で酸化する方法(方法M4)について説明する。
反応に用いるタングステン酸類としては、例えば、タングステン酸;12−タングストリン酸、18−タングストリン酸等のリンタングステン酸、12−タングストホウ酸等のホウタングステン酸、12−タングストケイ酸等のケイタングステン酸およびその塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。また、これらの塩のカウンターカチオンとしては、4級アンモニウムイオン、アルカリ土類金属イオン、アルカリ金属イオンが挙げられる。
カウンターカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン、トリデカニルメチルアンモニウムイオン、ジラウリルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、トリヘキサデシルメチルアンモニウムイオン、トリメチルステアリルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリブチルアンモニウムイオン等の4級アンモニウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオン等が挙げられる。
これらの中で、入手し易さの観点から、タングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウムおよびその水和物が好ましい。
タングステン酸類の使用量は特に限定されないが、トリオレフィン化合物の炭素−炭素二重結合1当量に対して、触媒金属原子換算で、好ましくは0.001当量以上、より好ましくは0.005当量以上、更に好ましくは0.01当量以上であり、また、好ましくは5当量以下、より好ましくは3当量以下、より好ましくは1当量以下である。使用量が0.001当量より少ないと、反応が十分に進行せず、使用量が5当量よりも多いと、タングステン酸類の除去が困難となる傾向がある。
4級アンモニウム塩としては、総炭素数が10以上、好ましくは25〜100、より好ましくは25〜55の4級アンモニウム塩が好ましく使用でき、特にそのアルキル鎖が全て脂肪族鎖であるものが好ましい。
具体的には、トリデカニルメチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリヘキサデシルメチルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ジセチルジメチルアンモニウム塩、トリセチルメチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
また、これらアンモニウム塩の対アニオンとしては、例えば、硫酸水素イオン、モノメチル硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、リン酸水素イオン、スルホン酸イオン、カルボン酸イオン、水酸化物イオンが挙げられる。対アニオンがエポキシやオレフィンに付加しない、調製が容易という観点から、硫酸水素イオン、モノメチル硫酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、水酸化物イオンが好ましく、入手容易な観点からトリオクチルメチルアンモニウム塩の硫酸水素イオンの組み合わせが特に好ましい。
4級アンモニウム塩の使用量は特に限定されないが、タングステン酸類1当量に対して、好ましくは0.01当量以上、より好ましくは0.1当量以上であり、また、好ましくは10当量以下、より好ましくは5当量以下である。使用量が0.01当量より少ないと、反応が十分に進行せず、使用量が5当量よりも多いと、アンモニウム塩の除去が困難となる傾向がある。
反応液に導入する過酸化水素濃度は特に限定されないが、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、また、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。濃度が10%より低いと、反応速度の低下およびバッチ効率の低下を招き、濃度が60%よりも高いと反応時の内温の制御が困難になったり、異常な過酸化水素の分解が起き易くなり危険性が増大したりする傾向がある。
過酸化水素の使用量は特に限定されず、トリオレフィン化合物や触媒の種類、反応条件等によって異なるが、トリオレフィン化合物の炭素−炭素二重結合1当量に対して、過酸化水素換算で、好ましくは1当量以上、より好ましく2当量以上であり、また、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以下である。使用量が1当量より少ないと、反応が十分に進行せず、使用量が20当量よりも多いと、反応の制御や安全性の確保に加え、生成したエポキシ化合物の回収が難しくなる傾向がある。
また、方法M4において、タングステン酸類、4級アンモニウム塩と過酸化水素水溶液以外に、リン酸類を含んでいてもよい。リン酸類としては、例えば、リン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム等の無機リン酸、アミノメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸等が挙げられるが、入手容易なリン酸が好まし
い。
リン酸類の使用量は特に限定されず、用いるリン酸類の種類やタングステン類の種類によって適切な使用量が異なる。一般的に、該リン酸類に含まれるリンの当量としては、使用する触媒金属成分中の金属1原子に対して、通常0.1当量以上、好ましくは0.2当量以上、更に好ましくは0.2当量以上であり、また、通常5.0当量以下、好ましくは3.0当量以下、更に好ましくは2.0当量以下である。
反応には溶媒を使用することもできる。用いる溶媒は特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、アノン等のケトン類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、蟻酸メチル等のエステル化合物;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N’− ジメチルアセトアミド等のアミド類
;N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等のウレア類;水およびこれら溶媒の混合物が挙げられる。これらの中で、水、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、およびこれら溶媒の混合物が好ましく、反応および後処理工程で安定であり、反応温度より高い沸点を有する水およびトルエンがさらに好ましい。
なお、方法M4においては、通常、水相と有機相の分離した二層系での反応系で行う。二層分離していることにより、有機相に溶解しているエポキシ化合物が酸性水層の影響により、エポキシ環が開環、転移等で分解することを抑えることができる。
有機溶媒の使用態様としては、特に限定されるものではないが、反応に用いるトリオレフィン化合物が反応条件下で液状である場合には、溶媒を使用しなくてもよい。トリオレフィン化合物が固体である場合は、溶媒に溶解していても、懸濁状態でもよいが、通常、反応温度条件下で溶媒に溶解していることが好ましい。
有機溶媒の使用量は化合物の溶解度によるが、溶媒量の増大に従い反応速度が低下する場合が多いため、通常トリオレフィンの0倍量〜10倍量、好ましくは0倍量〜5倍量、更に好ましくは0倍量〜3倍量である。
方法M4において反応温度は、反応が阻害されない限り特に限定されないが、通常10℃〜90℃、好ましくは35℃〜80℃、更に好ましくは60℃〜75℃である。前記下限未満では反応速度が遅くなる場合があり、前記上限超過では安全上の観点で好ましくない場合がある。
反応時間は、反応スケール等により異なるが、通常1時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上であり、また、通常48時間以下、好ましくは36時間以下、より好ましくは24時間以下である。
上記のとおり、方法M4では、タングステン酸類の存在下、4級アンモニウム塩と過酸化水素水溶液でトリオレフィン化合物を酸化してエポキシ化合物を生成させる。これらの化合物の添加順序は特に限定されないが、通常の反応では、まずトリオレフィン化合物、タングステン酸類の存在下、4級アンモニウム塩、リン酸類等の添加物を反応溶媒中で混合し、混合物の温度に注意しながら過酸化水素水を滴下し、撹拌する。反応後、水洗、残存した過酸化水素をクエンチ、濃縮等の通常の操作を行ってエポキシ化合物を得る。
過酸化水素は速やかにエポキシ化反応に消費されるが、安全性の観点から数回に分けて添加することや、連続的に添加する方が好ましい。
方法M4では、水相と有機相の分離した二層系での反応系で行うことができるため、エ
ポキシ基の開環反応を抑制することができ、高選択性を維持したままジエポキシ化合物、トリエポキシ化合物を合成することができる。
次に、(M5)有機過酸を用いて酸化する方法(方法M5)について説明する。反応に用いる有機過酸類としては、過酢酸、過プロピオン酸、m-クロロ過安息香酸、過安息香
酸、過フタル酸等が挙げられるが、このうち過酢酸、m-クロロ過安息香酸が好ましく、
工業的に安価で液体で取扱いやすいことから過酢酸が更に好ましい。
なお、本反応において、トリオレフィン化合物は逐次的に酸化され、エポキシ化合物が生成される。方法M3、方法M4、方法M5のいずれの手法においても、過酸化水素の当量を制御することにより、トリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物ならびにその混合比を制御することができる。
本発明のトリエポキシ化合物は、上記ジエポキシ化合物を、別の方法で合成し、これを更に酸化する方法でも製造できる。即ち、ブテンジオール、又はブテンジオールに水酸基を有する有機基を連結して得たアルコール化合物を、グリシジルエーテル化することでジエポキシ体を得て、さらに分子内のオレフィンを酸化する方法でも製造できる。
具体的には、例えば上記L、Lがいずれもメチレン基である場合は、ブテンジオールにエピクロロヒドリンを作用させることで、ジエポキシ化合物が得ることができる。
エピクロロヒドリンを作用させ、アルコール化合物にエポキシ基を導入する方法としてはSynthesis(1985)、(6−7)、649−51等に記載の公知の方法、条件が使用できる。
酸化の条件は、上記のトリオレフィン化合物を酸化する際の条件と同じものが使用できる。
またブテンジオールに水酸基を有する有機基を連結して得たアルコール化合物を得る方法としては、Journal of Combinatorial Chemistry(2001),3,(2),154−156に記載のハロアルコールや特開平06−329571に記載のエチレンオキサイドを反応させる等の公知方法を使用することができる。
〔3〕エポキシ樹脂組成物、硬化物、硬化物の用途
エポキシ樹脂組成物とは、硬化物とした際に該硬化物中に含まれる有機物および無機物の原料となる、エポキシ樹脂を含む混合物の総体を意味する。エポキシ樹脂とは官能基としてエポキシ基を含む化合物の単体もしくは混合物を意味する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、上記した本発明のエポキシ化合物を含有することに特徴をもつものである。また、本発明の硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られるものである。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化剤および硬化促進剤の少なくとも一方による熱硬化(以下これを「樹脂組成物1」ということがある。)、酸を硬化触媒とするカチオン硬化(以下これを「樹脂組成物2」ということがある。)の二種の方法が適応できる。
本発明の樹脂組成物1と樹脂組成物2において、本発明のエポキシ化合物は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することができる。併用する場合、全エポキシ樹脂成分(本発明のエポキシ化合物と他のエポキシ樹脂の合計量)中に占める本発明のエポキシ化合物の割合は、任意に設定することができる。
本発明のエポキシ化合物と併用できる他のエポキシ樹脂としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロ
メチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物およびこれ
らの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類またはアルコール類から誘導される、それらのグリシジルエーテル化物;脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
特に、本発明のエポキシ樹脂組成物を光学用途に用いる場合、脂環式エポキシ樹脂やシルセスキオキサン構造のエポキシ樹脂との併用が好ましい。特に脂環式エポキシ樹脂の場合、骨格にエポキシシクロヘキサン構造を有する化合物が好ましく、シクロヘキセン構造を有する化合物の酸化反応により得られるエポキシ樹脂が好ましい。
これらエポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ERL−4221、UVR−6105、ERL−4299(全て商品名、いずれもダウ・ケミカル社製)、セロキサイド2021P、エポリードGT401、EHPE3150、EHPE3150CE(全て商品名、いずれもダイセル化学工業社製)およびジシクロペンタジエンジエポキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない(参考文献:総説エポキシ樹脂 基礎編I p76−85)。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物1は硬化剤を含有し、熱硬化に適用するものである。
本発明の樹脂組成物1が含有する硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物等が挙げられる。
用いうる硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等の含窒素化合物(アミン、アミド化合物);無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物等の酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂;フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナ
フトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物およびこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物等のポリフェノール類;イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体等の化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
本発明においては特に前述の酸無水物やカルボン酸樹脂に代表される、酸無水物構造、および/またはカルボン酸構造を有する化合物が好ましく、発光素子封止材用途では、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸を使用するのが好ましい。
本発明の樹脂組成物1において、硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ当量や硬化剤の種類によっても異なり、特に限定はされないが、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは500質量部以下、より好ましくは350質量部以下である。この範囲外であると、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られないことがある。
上記のエポキシ樹脂硬化剤のうち、特に脂環式酸無水物類、2価フェノール類が耐紫外線性および耐湿性を向上させる点で望ましい。
なお、ここで、本発明のエポキシ樹脂と共に、後述のその他のエポキシ樹脂を併用する場合は、エポキシ樹脂組成物中に含まれる本発明のエポキシ樹脂とその他のエポキシ樹脂との合計である。
本発明の樹脂組成物1においては、硬化剤とともに硬化促進剤を併用してもよい。また、硬化剤を用いずに、硬化促進剤のみで硬化物させることもできる。用い得る硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩;トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩、メチルトリブチルホスホニウム塩等の4級フォスフォニウム塩等が挙げられる。4級塩のカウンターイオンは、ハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオン等、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。
硬化促進剤を用いる場合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、通常0.01以上10質量部以下である。
本発明の樹脂組成物1には、リン含有化合物を難燃剤として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。具体的には、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリ
レニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキ
シ化合物、赤リン等が挙げられる。これらの中で、リン酸エステル類、ホスファン類、リン含有エポキシ化合物が好ましく、さらに具体的には、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特
に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
リン含有化合物の含有量は、全エポキシ樹脂に対して、質量比で、好ましくは0.1以上0.6以下である。含有量(質量比)が0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
さらに本発明の樹脂組成物1には、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
酸化防止剤の使用量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、通常0.008質量部以上、好ましくは0.01以上であり、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジンー2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類等が挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類等が例示される。
これらの酸化防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。また、本発明においては、特にリン系の酸化防止剤が好ましい。
さらに本発明の樹脂組成物1には、必要に応じて光安定剤をすることができる。
光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤(以下これを、「HALS」ということがある)が好適である。HALSとしては、例えば、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’―ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
さらに本発明の樹脂組成物1には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することができる。
バインダー樹脂としては、例えば、ブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100質量部に対して、通常0.05質量部以上であり、また、通常50質量部以下、好ましくは20質量部以下である。
本発明の樹脂組成物1には、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、例えば、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられる。また導電性を付与する目的として、カーボン、アルミニウム、銅、金、炭化ケイ素等を添加してもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。粒径や形状の異なるものを混合してもよい。
これら無機充填剤の含有量は、本発明の樹脂組成物1中において、0〜95質量%を占める量が用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、界面活性剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を光半導体封止材に使用する場合、必要に応じて、蛍光体を添加することができる。蛍光体は、例えば、青色LED素子から発せられた青色光の一部を吸収し、波長変換された黄色光を発することにより、白色光を形成する作用を有するものである。蛍光体を、エポキシ樹脂組成物に予め分散させておいてから、光半導体を封止する。蛍光体としては特に制限がなく、従来公知の蛍光体を使用することができる。
本発明の樹脂組成物1は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の樹脂組成物1は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。
例えば、本発明のエポキシ化合物と硬化剤並びに必要により硬化促進剤、リン含有化合
物、バインダー樹脂、無機充填材および配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して樹脂組成物を得、その樹脂組成物をポッティング、溶融後(液状の場合は溶融無しに)注型、あるいはトランスファー成型機等を用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
また本発明の樹脂組成物1を、必要に応じて、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させてワニスとし、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙等の基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の樹脂組成物1の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の樹脂組成物1と該溶剤の混合物中で通常10質量%以上、好ましくは15質量%以上であって、通常70質量%以下を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM(Resin Transfer Molding)成形により、カーボン繊維を含有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。
また本発明の樹脂組成物1は、フィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的には、Bステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物を得る場合は、このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物1を前記ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板等における層間絶縁層として使用することができる。
更に、本発明の樹脂組成物1は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途に用いることができ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物、レジスト用硬化剤としてアクリル酸エステル系樹脂等、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
接着剤としては、例えば、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
封止材としては、例えば、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSI等用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB(Chip On Board)、COF(Chip On Film)、TAB(Tape Automated Bonding)等用のポッティング封止、フリップチップ等用のアンダーフィル、QFP(Quad Flat Package)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等用のICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)等が挙げられる。
次に、樹脂組成物2(酸性硬化触媒によるカチオン硬化)について説明する。
本発明の樹脂組成物2は酸性硬化触媒を用いて硬化させるものであり、酸性硬化触媒として光重合開始剤あるいは熱重合開始剤を含有する。さらに、希釈剤、重合性モノマー、重合性オリゴマー、重合開始補助剤、光増感剤等の各種公知の化合物、材料等を含有していてもよい。また、所望に応じて無機充填材、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤等、各種公知の添加剤を含有してもよい。
酸性硬化触媒としては、カチオン重合開始剤が好ましく、光カチオン重合開始剤が特に好ましい。カチオン重合開始剤としてはヨードニウム塩もしくはスルホニウム塩、またはジアゾニウム塩等のオニウム塩を有するものが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい
光カチオン重合開始剤としては、例えば、金属フルオロホウ素錯塩および三フッ化ホウ素錯化合物(米国特許第3379653号明細書)、ビス(ペルフルアルキルスルホニル)メタン金属塩(米国特許第3586616号明細書)、アリールジアゾニウム化合物(米国特許第3708296号明細書)、VIa族元素の芳香族オニウム塩(米国特許第4058400号明細書)、Va族元素の芳香族オニウム塩(米国特許第4069055号明細書)、IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート(米国特許第4068091号明細書)、チオピリリウム塩(米国特許第4139655号明細書)、MF−陰イオンの形のVIb族元素(米国特許第4161478号明細書;Mはリン、アンチモンおよび砒素から選択される。)、アリールスルホニウム錯塩(米国特許第4231951号明細書)、芳香族ヨードニウム錯塩および芳香族スルホニウム錯塩(米国特許第4256828号明細書)、およびビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(Journal of Polymer Science, Polymer Chemistry、第2巻、
1789項(1984年))等が挙げられる。その他、鉄化合物の混合配位子金属塩およびシラノール−アルミニウム錯体も使用することができる。
また、具体例としては、「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP170」(いずれも旭電化工業社製)、「UVE−1014」(ゼネラルエレクトロニクス社製)、「CD−1012」(サートマー社製)、「RP−2074」(ローディア社製)等が挙げられる。
カチオン重合開始剤の使用量は、エポキシ樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
さらに、これらの光カチオン重合開始剤と公知の重合開始補助剤および光増感剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せで併用してもよい。
重合開始補助剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノールプロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アセトフェノンジメチルケタール、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤等の重合開始補助剤の使用量は、光ラジカル可能な成分100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
光増感剤としては、例えば、アントラセン、2−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アクリジン オレンジ、アクリジン イエロー、ホスフィンR、ベンゾフラビン、セトフラビンT、ペリレン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエタノールアミン、トリエチル
アミン等が挙げられる。
光増感剤の使用量は、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して、通常0.01以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
本発明の樹脂組成物2は、各成分を均一に混合することにより得られる。またポリエチレングリコールモノエチルエーテルやシクロヘキサノン、γブチロラクトン等の有機溶剤に溶解させ、均一とした後、乾燥により溶剤を除去して使用することも可能である。
この際の溶剤は、本発明の樹脂組成物2と該溶剤の混合物中で、通常10質量%以上、好ましくは15質量%以上であって、通常70質量%以下を占める量を用いる。
本発明の樹脂組成物2は紫外線照射することにより硬化できるが、その紫外線照射量については、樹脂組成物により変化するため、それぞれの硬化条件によって、決定される。光硬化型樹脂組成物が硬化する照射量であればよく、硬化物の接着強度が良好である硬化条件を満たしていればよい。この硬化の際、光が細部まで透過することが必要であることから、本発明のエポキシ化合物、および樹脂組成物2においては透明性の高いものが望まれる。また、これらエポキシ樹脂系の光硬化では光照射のみでは完全に硬化することが難しく、耐熱性が求められる用途においては光照射後に加熱により完全に硬化を終了させる必要がある。
光照射後の加熱は通常の樹脂組成物2の硬化温度域でよい。例えば常温〜150℃で30分〜7日間の範囲が好適である。樹脂組成物2の配合により変化するが、特に高い温度域であればあるほど光照射後の硬化促進に効果があり、短時間の熱処理で効果がある。このような熱アフターキュアすることで、エージング処理になるという効果もでる。
また、本発明の樹脂組成物2を硬化させて得られる硬化物の形状も用途に応じて種々とりうるので特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状、バルク状等の形状とすることもできる。
成形する方法は適応する部位、部材によって異なるが、例えば、キャスト法、注型法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレー法、転写法、ディスペンサー方式等の成形方法を適用することができる。成形型は研磨ガラス、硬質ステンレス研磨板、ポリカーボネート板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリメチルメタクリレート板等を適用することができる。また、成形型との離型性を向上させるためポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等を適用することができる。
例えば、カチオン硬化性のレジストに使用する際においては、まず、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、あるいはγブチロラクトン等の有機溶剤に溶解させた樹脂組成物2を、銅張積層板、セラミック基板またはガラス基板等の基板上に、スクリーン印刷、スピンコート法等の手法によって、5〜160μmの膜厚で本発明の樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する。そして、該塗膜を60〜110℃で予備乾燥させた後、所望のパターンの描かれたネガフィルムを通して紫外線を照射し、ついで、70〜120℃で露光後ベーク処理を行う。その後ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等の溶剤で未露光部分を溶解除去(現像)した後、さらに必要があれば紫外線の照射および/または加熱(例えば100〜200℃で0.5〜3時間)によって十分な硬化を行
い、硬化物を得る。このようにしてプリント配線板を得ることもできる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、光学部品材料をはじめ各種用途に使用できる。光学用材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザー等の光を
その材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。より具体的には、ランプタイプ、SMDタイプ等のLED用封止材の他、以下のようなものが挙げられる。
例えば、液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等の液晶用フィルム等の液晶表示装置周辺材料である。また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLEDのモールド材、LEDの封止材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤である。
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等である。
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部である。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーである。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等である。光センシング機器のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルム等である。光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止材、接着剤等である。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止材、接着剤等である。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LEDの封止材、CCDの封止材、接着剤等である。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤等である。光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイド等、工業用途のセンサー類、表示・標識類等、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーである。
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料、熱伝導性材料、放熱性材料である。自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品である。また、鉄道車輌用の複層ガラスである。
また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コート、炭素繊維強化複合材料である。建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料である。農業用では、ハウス被覆用フィルムである。次世代の光・電子機能有機材料としては、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤等である。
光学用材料の他の用途としては、樹脂組成物1が使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止材の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ
基板等の多層基板の層間接着剤、ワイヤーボンディング用導電性接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)、等の実装用接着剤等が挙げられる。
封止材としては、例えば、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSI等用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TAB等用のポッティング封止、フリップチップ等用のアンダーフィル、BGA、CSP等用のICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィル)等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、光半導体装置にも適用することが可能である。かかる光半導体装置は、本発明のエポキシ樹脂組成物で光半導体素子(光半導体チップ)を封止することによって製造することができる。その封止法としてはキャスティングやポッティングあるいは印刷等の方法で光半導体素子を封止する封止樹脂を成形(注型および硬化)する方法が採用できる。成形条件は従来から行われている硬化性樹脂組成物による半導体素子の封止成形における成形条件をそのまま採用することができ、光半導体封止用樹脂組成物の組成等により適宜設定すればよい。
以下、実験例(合成例、実施例)に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実験例により限定されるものではない。なお、以下の実験例における各種の合成(製造)条件等は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と実験例の値または実験例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
また実施例中の資材は断りのない限り通常入手可能な市販試薬を用いた。
以下の合成例、実施例において得られた化合物は、H−NMRおよびガスクロマトグラフ(GC)にて分析し、構造はH−NMRにより確認した。またGC−MSにて得られた生成物の分子量を求めた。また本発明のエポキシ化合物の耐熱性を評価するため、ガラス転移点(Tg)を求めた。
H−NMR分析条件)
装置 :BRUKER社製 AVANCE400、400MHz
溶媒 :0.03体積%テトラメチルシラン含有重クロロホルム
(GC分析条件)
カラム :ZB−5(30mx0.25mmφ、0.25μm)
検出器 :水素炎イオン検出器(FID)
Inj温度:250℃
Det温度:280℃
昇温条件 :100℃から10℃/minで270℃まで昇温、5分間保持
(GC/Mass分析条件)
GC装置 :アジレントテクノロジー社製 Agilent7890A Serie
s ガスクロマトグラフ
MS装置 :日本電子社製 JMS−T100GCV
カラム :DB−5 30M×0.25(0.25μ)
イオン化法:EI法およびCI法(反応ガス:アンモニア)
(ガラス転移点Tg測定)
樹脂硬化物を厚さ約2mm直径、約7mmの円柱状試験片として測定を行なった。
熱機械分析装置(TMA):セイコーインスツルメント社製 EXSTAR6000E
測定モード:圧縮モード
昇温速度 :5℃/分で2回、測定温度範囲: 0℃から250℃
2回目の測定における、ガラス転移温度を測定した。
(合成例1)3−ブテン−1,2−ジオールジアリルエーテルの合成
下記反応式(16)に示す反応により、以下の方法で合成を行った。
Figure 0006248526
還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた200mLの3口フラスコを窒素置換した後に、3−ブテン−1,2−ジオール5.0g(56.7mmol、三菱化学社製、GC純度95.5%(Area))、テトラヒドロフラン25mL、n−テトラブチルアンモニウムブロマイド0.5g(1.6mmol)、アリルブロマイド17.2g(142.1mmol)および水酸化ナトリウム6.8g(170mmol)を加え、内温60℃で4.5時間反応させた。反応終了後、イオン交換水20mLを加えた後、ヘキサン75mLで抽出を行った。その後有機層をイオン交換水20mLで5回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し透明液体として3−ブテン−1,2−ジオールジアリルエーテル体を6.1g(36.3mmol、収率64%)で得た。
得られた生成物を上記記載の条件にてH−NMRおよびGCにて測定した。なお、GC測定用サンプルは生成物の2質量%のヘキサン溶液を調製し測定した。
GC測定の結果、反応主生成物が、リテンションタイム6.1minに98.3(Area%)で観測された。
また、上記反応主生成物のH−NMRの測定結果は以下の通りであった。
[H−NMR(CDCl,400MHz)]
5.90ppm(Ha,2H)、5.75ppm(Ha,1H)、5.30ppm(Hb,4H)、5.20ppm(Hb,2H)、4.03ppm(Hc,5H)、3.50ppm(Hd,2H)
Figure 0006248526
以上の結果から、得られた生成物が3−ブテン−1,2−ジオールジアリルエーテルであることが確認された。
(実施例1)3,4−エポキシ−1,2−ブタンジオールジグリシジルエーテルの合成
下記反応式(17)に示す反応により、3,4−エポキシ−1,2−ブタンジオールジグリシジルエーテルの合成を以下の方法で行った。
Figure 0006248526
還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mLの3口フラスコを窒素置換した後に、合成例1で合成した3−ブテン−1,2−ジオールのジアリルエーテル1.0g(5.9mmol)、メタノール2.5g(78.0mmol)、アセトニトリル1.5g(36.5mmol)、炭酸カリウム0.62g(4.5mmol)を加え、内温40℃に調整しながら、45質量%過酸化水素水2.70g(過酸化水素として35.6mmol)を20分かけて滴下した。滴下終了後は、内温37〜43℃に保ちながら1.5時間反応させた。その後、アセトニトリル1.5g(36.5mmol)と45質量%過酸化水素水2.70g(過酸化水素として35.6mmol)を1.5時間おきに2回導入した。
反応終了後、イオン交換水10mLを加えた後、トルエン25mLで抽出を4回行った。イオン交換水10mL、5質量%のチオ硫酸ナトリウム水溶液15mL、イオン交換水10mLで有機層を洗浄し、溶媒を留去し透明粘性液体として3,4−エポキシ−1,2−ブタンジオールジグリシジルエーテルのジアステレオマー混合物(以下、トリエポキシ体という)、前記トリエポキシ体の3つの炭素−炭素二重結合のうちの2つがエポキシ化された化合物(以下、ジエポキシ体という)の混合物を0.11g得た。
得られた生成物を上記の条件でH−NMR、GCおよびGC−MSを測定した。なお、GCは2質量%トルエン溶液を調製し測定した。
GC測定の結果、リテンションタイム14.4minに81.5(Area%)、11.5minに18.5(Area%)で観測された。またGC−MS(CI)測定の結果、14.4minのピークがトリエポキシ体(分子量216)であり、11.5minのピークがジエポキシ体(分子量200)であった。
また、H−NMRの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl,400MHz)]
合成例1で記載した原料である3−ブテン−1,2−ジオールジアリルエーテルのアリル基ピーク(5.0〜6.0ppm)が大幅に減少し、エポキシ基の根元プロトン(2.5〜3.4ppm)が観測された。エポキシ基の根元プロトンを9Hとすると、Hc〜Hdに由来するプロトン(3.4〜4.2ppm)は7.6Hだった(図1参照)。
(実施例2)トリエポキシ体の合成
前記トリエポキシ体の合成を以下の方法で行った。
還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mLの3口フラスコを窒素置換した後に、合成例1で合成した3−ブテン−1,2−ジオールジアリルエーテル1.0g(5.9mmol)、メタノール2.5g(78.0mmol)、アセトニトリル1.5g(36.5mmol)、炭酸ナトリウム0.47g(4.5mmol)を加え、内温40℃に調整しながら、45質量%過酸化水素水2.70g(過酸化水素として35.6mmol)を20分かけて滴下した。滴下終了後は、内温37〜43℃に保ちながら1.5時間反応させた。その後、アセトニトリル1.5g(36.5mmol)と45質量%の過酸化水素水2.70g(過酸化水素として35.6mmol)を1.5時間おきに3回導入した。反応終了後、イオン交換水10mLを加えた後、トルエン25mLで抽出を4回行った。イオン交換水10mL、5質量%チオ硫酸ナトリウム水溶液15mL、イオン交換水
10mLで有機層を洗浄し、溶媒を留去し透明粘性液体としてトリエポキシ体、ジエポキシ体の混合物を0.15g得た。
GC測定の結果、リテンションタイム14.4minにトリエポキシ体として77.4(Area%)、11.5minにジエポキシ体として22.6(Area%)で観測された。
(実施例3)トリエポキシ体の合成
前記トリエポキシ体の合成を以下の方法で行った。
還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mLの3口フラスコを窒素置換した後に、合成例1で合成した3−ブテン−1,2−ジオールのジアリルエーテル1.0g(5.9mmol)、メタノール2.5g(78.0mmol)、アセトニトリル1.5g(36.5mmol)、無水ケイ酸ナトリウム0.54g(4.5mmol)を加え、内温40℃に調整しながら、45質量%過酸化水素水2.70g(過酸化水素として35.6mmol)を20分かけて滴下した。滴下終了後は、内温37〜43℃に保ちながら1.5時間反応させた。その後、アセトニトリル1.5g(36.5mmol)と45質量%過酸化水素水2.70g(過酸化水素として35.6mmol)を1.5時間後に1回導入した。反応終了後、イオン交換水10mLを加えた後、トルエン25mLで抽出を4回行った。イオン交換水10mL、5質量%チオ硫酸ナトリウム水溶液15mL、イオン交換水10mLで有機層を洗浄し、溶媒を留去し透明粘性液体としてトリエポキシ体、ジエポキシ体の混合物を0.21g得た。
GC測定の結果、リテンションタイム14.4minにトリエポキシ体として66.1(Area%)、11.5minにジエポキシ体として33.9(Area%)で観測された。
(実施例4)トリエポキシ体の合成
前記トリエポキシ体の合成を以下の方法で行った。
還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mLの反応容器を窒素置換した後に、合成例1で合成した3−ブテン−1,2−ジオールのジアリルエーテル2.0g(11.9mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物785mg(2.38mmol)、8.5%(重量/体積)りん酸水溶液0.25ml(2.14mmol)、メチルトリオクチルアンモニウム硫酸水素塩554mg(1.19mmol)、トルエン2.0mlの混合液を調製し、これに内標としてn−テトラデカン25.6mgを加えた。
窒素気流下、この混合液を50℃に加温し、42質量%過酸化水素水0.20ml(2.8mmol)を反応開始時、および反応開始30分後に添加し、更に反応開始から3時間後から8時間後まで、一時間ごとに0.40ml(5.6mmol)を加え、内温60〜63℃にて計9時間反応した。反応終了後、酢酸エチル20mlを加え、有機相をGC分析したところ、GC内標検量により、トリエポキシ体として10%、ジエポキシ体として2%の生成が確認された。
(実施例5)トリエポキシ体の合成
前記トリエポキシ体の合成を以下の方法で行った。
還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mLの反応容器を窒素置換した後に、合成例1で合成した3−ブテン−1,2−ジオールのジアリルエーテル5.0g(27.0mmol)、クロロホルム50mlを加え、内温40℃〜45℃に調整しながら、純度約65%のm−クロロ過安息香酸(東京化成社製)24.9g(約94mmol)を分割して加えた。内温40〜45℃に保ちながら8時間反応させた。トリエポキシ体として85.0(Area%)、ジエポキシ体として15.0(Area%)で観測された。
反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液6mLを反応系に内温45℃以下になるように少量ずつ加えた後、析出した不溶物をセライトで濾別した。得られたろ液を1N水酸
化ナトリウム水溶液20mlで3回洗浄し、更に水20mlで洗浄後、溶媒を留去し透明粘性液体としてトリエポキシ体、ジエポキシ体の混合物を得た。
これを、カラムクロマトグラフィー(関東化学社製 シリカゲルN60 200g、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1→1/2、上記トリエポキシ体、上記ジエポキシ体の混合物にトリエチルアミン4mlを添加して展開)にて精製し、トリエポキシ体をジアステレオマー混合物として3.50g得た。(以下、これを化合物αという)GC純度96.5%(Area%)、ジエポキシ体のピークは観察されなかった。収率61%であった。H−NMRの測定では、実施例1の生成物の主成分と同様のNMRスペクトル(図1参照)が観測され、実施例1の生成物に含まれていたジオレフィン由来のオレフィンのピークは観察されなかった。
(合成例2)cis−2−ブテン−1,4−ジオールジグリシジルエーテルの合成
還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mLの反応容器を窒素置換した後に、cis−2−ブテン−1,4−ジオール2.0g(23mmol)、テトラヒドロフラン20mL、N,N−ジメチルアセトアミド2.0ml、n−テトラブチルアンモニウムブロマイド0.73g(2.3mmol)、顆粒状水酸化ナトリウム2.7g(68mmol)を加え、内温40℃に加温した。これにエピクロルヒドリン5.9g(64mmol)を3回に分割して添加し、内温40〜45℃で5時間反応させた。反応終了後、水10mLで2回洗浄し、更に酢酸エチル10mlを加えた後、水10mlで1回洗浄し、溶媒を留去し、cis−2−ブテン−1,4−ジオールジグリシジルエーテルを含む黄色液体(以下、粗cis−2−ブテン−1,4−ジオールジグリシジルエーテルという)5.18gで得た。GC純度76.6%(Area%)、収率87%であった。
この黄色液体を精製することなく、実施例6記載の反応に供した。
また、この黄色液体4.0gをカラムクロマトグラフィー(関東化学社製 シリカゲルN60 100g、展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/2にて精製し、cis−2−ブテン−1,4−ジオールジグリシジルエーテルを1.77g得た。H−NMRの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(CDCl,400MHz)]
2.61ppm(2H,dd,J=2.5,4.8Hz)、2.80ppm(2H,dd,J=4.3,5.0Hz),3.13−3.18ppm(2H,m),3.38ppm(2H,dd,J=5.8,11.4Hz),3.75ppm(2H,dd,J=3.0,11.6Hz)、4.08−4.19ppm(4H,m)、5.70−5.79ppm(2H,m)
(実施例6)cis−2,3−エポキシ−1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルの合成
還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mLの反応容器を窒素置換した後に、合成例2で合成した粗cis−2−ブテン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル1.0g(3.8mmol)、クロロホルム10mlを加え、内温40℃〜45℃に調整しながら、純度約65%のm−クロロ過安息香酸1.6g(約6.0mmol)を2分割して加えた。内温40〜45℃で3時間反応させた。
反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液2mLを反応系に内温45℃以下になるように少量ずつ加えた後、析出した不溶物をセライトで濾別した。得られたろ液を1N水酸化ナトリウム水溶液3mlで3回洗浄し、更に水3mlで洗浄後、溶媒を留去し透明液体を得た。
これを、カラムクロマトグラフィー(関東化学社製 シリカゲルN60 100g、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1→1/2、上記液体にトリエチルアミン1mlを添加して展開)にて精製し、ジアステレオマー混合物としてcis−2,3−エポキ
シ−1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルを0.29g得た。GC純度98%(Area%)。収率34%であった。
H−NMR(CDCl,400MHz)]
2.57−2.69ppm(2H,m)、2.77−2.84ppm(2H,m)、3.13−3.28(4H,m)、3.34−3.41、3.46−3.53(2H,m)、3.52−3.64(2H,m)、3.72−3.92(4H,m)
(エポキシ化合物の評価)
(実施例7)
上記実施例5で得られたトリエポキシ化合物(化合物α)の物性評価を行なった。なお化合物αのエポキシ当量は73.5g/当量であった。化合物α100質量部、硬化剤MH−700(商品名、新日本理化社製 無水メチルヘキサヒドロフタル酸、酸無水物当量165g/当量)229質量部を、40℃で均一になるまで混合し、続いて硬化促進剤としてヒシコーリンPX−4MP(商品名、日本化学工業社製、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート)1.0質量部を添加し、攪拌、溶解してエポキシ樹脂組成物を得た。この組成物を減圧下で脱泡した後、各評価試験の試験片作製用の型の中に流し込み、オーブン中にて100℃で3時間、次いで140℃で3時間硬化させ透明な硬化体を得た。このエポキシ樹脂硬化体の評価結果を表1に示す。得られたエポキシ樹脂硬化体の評価結果を表1に示す。
ガラス転位点(Tg)は、上記のTMA法(5℃/分で昇温)により測定した。結果を表1に示した。
(比較例1)
エポキシ化合物として、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物YX−8000(商品名;三菱化学社製 エポキシ当量 205g/当量、以下化合物βという)を用い、
表1に記載の組成に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、エポキシ樹脂組成物を得、同様にエポキシ樹脂硬化体を得た。得られたエポキシ樹脂硬化体の評価結果を表1に示す。
Figure 0006248526
実施例7と比較例1との比較から、従来品に比べ、高いTgを有することがわかった。これは本発明のエポキシ化合物が、一分子内に3つのエポキシ基を有し、またエポキシ当量が小さいため、硬化により密なネットワークが形成され、高いTgを示すものと考えられる。また3つのエポキシ基が化合物の末端にあるため、硬化時の反応性が高いことも、高いTgを示す一因と考えられる。
また、エポキシ樹脂硬化体は芳香族を含まないため、耐熱着色性が高く、紫外線着色性を有する。
本発明は産業上の任意の分野に使用可能であるが、例えば、土木用、建築用、自動車用
、鉄道車両用、航空機用、電子材料用等の分野において好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で表わされるエポキシ化合物。
    Figure 0006248526
    (式(1)中、LおよびLは、それぞれ独立に、メチレン基を示し、AおよびBは、
    それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の有機基を
    示す。)
  2. 下記一般式(2)で表わされるエポキシ化合物。
    Figure 0006248526
    (式(2)中、LおよびLは、それぞれ独立に、メチレン基を示し、AおよびBは、
    それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の有機基を
    示す。)
  3. 上記式(1)および式(2)中のAおよびBが水素原子である請求項1又は2に記載の
    エポキシ化合物。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のエポキシ化合物を含有することを特徴とするエポ
    キシ樹脂組成物。
  5. 請求項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
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