本発明のフルオレン骨格含有エポキシ化合物は、下記式(1)で表される。
(式中、環Zはアレーン環、R1は直鎖状アルキレン基を示し、R2は分岐鎖状アルキレン基を示し、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4及びR5は置換基を示し、kは0〜4の整数、m1及びm2はそれぞれ1〜5の整数、m1+m2の平均値は2〜10、n1及びn2はそれぞれ1〜10の整数、n1+n2の平均値は2〜20、pは0又は1以上の整数、qは1以上の整数である。)
上記式(1)において、環Zで表されるアレーン環としては、ベンゼン環などの単環式炭化水素環及び縮合多環式芳香族炭化水素環[縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環、インデン環などのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環など]、環集合アレーン環[ビアレーン環(例えば、ビフェニル環、ビナフチル環などのビC6−12アレーン環、好ましくはビC6−10アレーン環、特にビフェニル環など)、テルアレーン環(例えば、テルフェニル環などのテルC6−12アレーン環など)など]が例示できる。特に、C6−10アレーン環(ベンゼン環、ナフタレン環など)、ビC6−10アレーン環(ビフェニル環など)が好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環が好ましい。
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されず、環Zがナフタレン環である場合、例えば、フルオレンの9位に対して、1−ナフチル基、2−ナフチル基などの関係で置換していてもよい。また、環Zが環集合アレーン環、例えば、ビフェニル環である場合、ビフェニル環の3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよい。
また、前記式(1)において、オキシ直鎖状アルキレン基(OR1)を構成する直鎖状アルキレン基R1としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基などの直鎖状C2−6アルキレン基などが例示でき、好ましくは直鎖状C2−4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2−3アルキレン基、特にエチレン基が挙げられる。なお、m1及びm2が2以上であるときは、R1は同一又は異なる種類のアルキレン基で構成してもよく、通常、同一である場合が多い。
前記式(1)において、オキシ直鎖状アルキレン基(OR1)の数(付加モル数)m1及びm2は同一又は異なって、それぞれ1〜5の整数から選択でき、例えば、1〜4の整数、好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1又は2の整数(特に1)であってもよい。また、m1+m2の平均値は2〜10程度の範囲から選択でき、例えば、2〜8、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4(例えば、2〜3)、特に2であってもよい。
前記式(1)において、オキシ分岐鎖状アルキレン基(OR2)を構成する分岐鎖状アルキレン基R2としては、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基、2−メチル−1,2−プロパンジイル基、2−メチル−1,3−プロパンジイル基などの分岐鎖状C3−6アルキレン基、好ましくは分岐鎖状C3−4アルキレン基、特にプロピレン基が挙げられる。なお、n1及びn2が2以上であるときは、R2は同一又は異なる種類のアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一である場合が多い。また、R2は、R1よりも炭素数の多い分岐鎖状アルキレン基であってもよい。
前記式(1)において、オキシ分岐鎖状アルキレン基(OR2)の数(付加モル数)n1及びn2は同一又は異なって、それぞれ1〜10の整数から選択でき、例えば、1〜9の整数、好ましくは2〜8の整数、さらに好ましくは3〜7の整数、特に4〜6の整数であってもよい。また、n1+n2の平均値は2〜20程度の範囲から選択でき、例えば、4〜18(例えば、6〜18)、好ましくは7〜16(例えば、7.5〜16)、さらに好ましくは8〜15(例えば、8.5〜14)、特に9〜12(例えば、10〜12)程度であってもよい。
n1+n2の平均値とm1+m2の平均値との比は、前者/後者=1/1〜20/1、好ましくは2/1〜15/1(例えば、3/1〜10/1)、さらに好ましくは3.5/1〜8/1(例えば、4/1〜7/1)、特に4.5/1〜6/1(例えば、5/1〜6/1)程度であってもよい。
本発明のフルオレン骨格含有エポキシ化合物は、m1+m2の平均値に対して、n1+n2の平均値が高くなるほど、ブロック構造に類似した構成となるためか、意外にも、柔軟性が向上する。また、n1+n2の平均値が高くなるほど、オキシ分岐鎖状アルキレン基に由来して疎水性が高くなるためか、耐水性も向上する。例えば、分岐鎖状アルキレン基により、水分子の侵入スペースが小さくなるためか、耐水性が向上する。しかも、エポキシ当量が大きく、硬化物での架橋点が少なくても、耐水性を向上できる。すなわち、オキシ直鎖状アルキレン基に対してオキシ分岐鎖状アルキレン基の構成比が高くなるほど、柔軟性及び耐水性の両特性を向上でき、両特性に優れたエポキシ化合物(又はエポキシ樹脂)が得られる。特に、m1+m2の平均値に対して、n1+n2の平均値が所定の値以上になると、柔軟性を顕著に(又は著しく)向上できるとともに、n1+n2の平均値が大きくなっても、分岐鎖状アルキレン基により疎水性(又は耐水性)を高くできる。すなわち、オキシ直鎖状アルキレン基の数に対して、オキシ分岐鎖状アルキレン基の数を所定数(所定の値)以上に調整すると、耐水性及び柔軟性をさらに高い水準で両立できる。さらに、分子量が大きくても、低粘度であり、ハンドリング性も向上できる。このようなエポキシ化合物は、前記式(1)において、例えば、m1+m2の平均値が2〜4(特に2)、n1+n2の平均値が7(例えば、7.5)以上、例えば、7〜20(例えば、7.5〜20)、好ましくは8〜18(例えば、8.5〜16)、さらに好ましくは9〜15(例えば、9.5〜14)、特に9〜12(例えば、9〜11)である場合が多い。なお、m1及びm2は、同一又は異なって、それぞれ1又は2(特に1)、n1及びn2は、同一又は異なって、それぞれ、例えば、3〜10の整数(例えば、3〜9の整数)、好ましくは4〜8の整数(例えば、4〜7の整数)、さらに好ましくは4〜6の整数(例えば、5又は6)の整数であってもよい。
前記式(1)において、置換数qは同一又は異なって1以上の整数であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数qは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、オキシアルキレン基を有する置換基は、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2−,3−,4−位(特に、3−位及び/又は4−位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8位(例えば、5位、6位など)に置換していてもよい。例えば、環Zに対応する基が2−ナフチル基(β−ナフチル基)であるとき、前記オキシアルキレン基を有する置換基の位置はナフチル基の6位である場合が多く、1−ナフチル基(α−ナフチル基)であるとき、前記オキシアルキレン基を有する置換基の位置はナフチル基の5位又は8位(特に5位)である場合が多い。さらに、環Zがビフェニル環である場合、ビフェニル環Zの4−位がフルオレンの9−位に結合しているとき、オキシアルキレン基を有する置換基の置換位置は、2−位、2’−位、3’−位、4’−位(特に、2−位)に置換している場合が多い。
前記式(1)において、基R4としては、ハロゲン原子、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基などが挙げられる。
基R4で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示できる。
炭化水素基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ナフチル基、ビフェニル基などのC6−12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)が例示できる。炭化水素基は、アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)である場合が多い。なお、基R4がアリール基であるとき、基R4は、それぞれ、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。
基R4で表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基などが例示でき、シクロアルキルオキシ基としては、シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基などが例示でき、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)としては、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などが例示できる。
基R4で表されるアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基などが例示でき、シクロアルキルチオ基としては、シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基などが例示でき、アリールチオ基としては、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基が例示でき、アラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオなどが例示できる。
基R4で表されるアシル基としては、アセチル基などのC1−6アシル基(アルキルカルボニル基)などが例示でき、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基などが例示できる。
置換アミノ基としては、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など)、ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)などが例示できる。
これらの基R4のうち、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基が好ましい。特に、ハロゲン原子、アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)など、特にアルキル基(特に、メチル基)が好ましい。
置換数pは、0又は1以上の整数である。好ましい置換数pは、0〜8、好ましくは0〜6(例えば、0〜5)、さらに好ましくは0〜4、特に0〜2(例えば、0〜1)、特に0であってもよい。なお、同一の環Zにおいて、pが複数(2以上)である場合、基R4の種類は互いに同一又は異なっていてもよく、2つの環Zにおいて、置換数pは、互いに同一又は異なっていてもよい。また、例えば、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、R4がメチル基であってもよい。
前記式(1)において、基R5としては、炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。基R5で表される炭化水素基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−10アルキル基など)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基など)などが例示できる。
基R5で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示できる。
これらの基R5のうち、メチル基などのC1−4アルキル基が好ましい。なお、kが複数(2以上)である場合、基R5は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン骨格を構成する2つのベンゼン環に置換する基R5は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基R5の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位であってもよい。置換数kは0〜4、好ましくは0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
本発明のエポキシ化合物(又はエポキシ樹脂)は、オキシ直鎖状アルキレン基(例えば、オキシエチレン基など)とオキシ分岐鎖状アルキレン基(例えば、オキシプロピレン基など)とを組み合わせているため、柔軟性及び耐水性の両特性に優れている。前記エポキシ化合物のエポキシ当量は、例えば、300〜1500g/eq、好ましくは350〜1200g/eq、さらに好ましくは400〜1000g/eq(例えば、400〜800g/eq)程度であってもよい。
また、前記エポキシ化合物の粘度(25℃)は、例えば、1000〜35000mPa・s、好ましくは1500〜20000mPa・s、さらに好ましくは2000〜10000Pa・s程度であってもよい。特に、n1+n2の平均値が大きなエポキシ化合物などは、エポキシ当量が大きくても低粘度である場合が多く、前記エポキシ化合物の粘度(25℃)は、例えば、500〜5000mPa・s、好ましくは800〜4000mPa・s、さらに好ましくは1200〜3000mPa・s程度にすることもできる。なお、粘度はJIS K7117−2に準じて、TV−22形粘度計により測定できる。
なお、前記エポキシ化合物は、式(1)で表される化合物の単量体であってもよく、多量体(二量体、三量体など)であってもよい。例えば、式(1)において、qが1であるエポキシ化合物は、下記式(1A)で表すことができる。
(式中、Aは下記式
で表され、rは0又は1以上の整数を示し、環Z、R1、R2、R3、R4、R5、m1、m2、n1、n2、k、pは前記に同じ。)
また、前記エポキシ化合物は、式(1)で表される化合物の単量体と、前記多量体との混合物であってもよい。このような多量体の割合は、前記式(1)で表される化合物の単量体及び多量体の総量100重量部に対して、例えば、0〜20重量部、好ましくは0〜10重量部(例えば、0.1〜8重量部)、さらに好ましくは0〜5重量部(例えば、0.2〜3重量部)程度であってもよい。
前記式(1)において代表的な化合物は、9,9−ビス(グリシジル−(モノ又はポリ)オキシ分岐鎖状アルコキシ−(モノ又はポリ)直鎖状オキシアルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(グリシジル−(モノ又はポリ)オキシ分岐鎖状C3−6アルコキシ−(モノ又はポリ)直鎖状C2−6オキシアルコキシC6−12アリール)フルオレン、さらに好ましくは9,9−ビス(グリシジル−(モノ又はポリ)オキシ分岐鎖状C3−4アルコキシ−(モノ又はポリ)直鎖状C2−4オキシアルコキシC6−12アリール)フルオレンなどが挙げられる。
オキシアルキレン基を有する置換基は、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の3−位及び/又は4−位に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、5−位及び/又は6−位に置換している場合が多い。具体的な化合物としては、例えば、下記表1及び表2に示す化合物が例示できる。表1に示す化合物は、R3が水素原子又はメチル基、k=0、p=0、q=1、m1、m2=1又は2、n1、n2=4〜10の整数である化合物であり、表2に示す化合物は、R3が水素原子又はメチル基、R4がメチル基、k=0、p=1、q=1、m1、m2=1又は2、n1、n2=4〜8の整数である化合物である。なお、表1及び表2中、基Xの置換位置は、環Zに対するオキシアルキレン基(基Xとする)を有する置換基の置換位置を示し、m1+m2、n1+n2は、それぞれ平均値を示す。また、表2中、R4の置換位置は、R4の環Zに対する置換位置を示す。
本発明のフルオレン骨格含有化合物は、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物(エピクロロヒドリンなど)とを反応させることにより製造できる。また、前記式(2)で表される化合物は、下記式(4)で表される化合物と、下記式(5)で表される化合物(R2aが置換したアルキレンオキシドなど)及び/又は下記式(6)で表される化合物(ハロ分岐鎖状アルカノール)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
(式中、R2aは環Eの炭素原子に置換したアルキル基を示し、環E及びR2aは、式(1)のR2で表される分岐鎖状アルキレン基を形成する。環Z、R1、R2、R3、R4、R5、m1、m2、n1、n2、k、p、qは前記に同じ。)
式(2)で表される化合物としては、式(1)に対応する化合物が例示できる。式(3)で表される化合物としては、エピハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなど)、特にエピクロロヒドリンが例示できる。
式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応において、前者のヒドロキル基1モルに対して、後者の割合は、1.5〜30モル、好ましくは2〜25モル、さらに好ましくは2.5〜20モル、特に3〜15モル(例えば、3.5〜10モル)程度であってもよい。
式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応では、触媒を使用してもよい。触媒としては、第4級アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイドなどのテトラC1−20アルキルアンモニウムハライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどのベンジルトリC1−4アルキルアンモニウムハライド)、トリメチルアミンボランなどのトリC1−4アルキルアミンボラン、クラウンエーテル、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。触媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
触媒の割合は、特に限定されないが、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.001〜1モル(例えば、0.005〜0.5モル)、好ましくは0.01〜0.2モル、さらに好ましくは0.05〜0.1モル程度であってもよい。
反応は、反応により生成するハロゲン化水素をトラップするため、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物など)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)などの無機塩基、アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジンなどの複素環式第3級アミンなど)などの有機塩基などが挙げられる。塩基は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
塩基の割合は、特に限定されないが、例えば、前記式(2)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、0.01〜20モル(例えば、0.05〜10モル)、好ましくは1〜5モル、さらに好ましくは1.5〜3モル程度であってもよい。
反応は、反応に不活性な溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、非プロトン性溶媒などを使用でき、例えば、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エステル類(酢酸エチルなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などが挙げられる。溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、30〜120℃、好ましくは35〜100℃、さらに好ましくは40〜70℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。
反応は、還流しながら行ってもよい。また、反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
なお、生成した化合物(前記式(1)で表される化合物)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
なお、反応により得られる化合物は、式(1)で表される化合物の単一化合物であってもよく、m1とm2及び/又はn1とn2とが異なる複数の化合物を含む化合物であってもよい。
式(4)で表される化合物としては、式(1)及び(2)に対応する化合物が例示できる。
式(5)で表される化合物において、R2aは、環Eの炭素原子に置換したアルキル基を示し、環E及びR2aは、式(1)のR2で表される分岐鎖状アルキレン基を形成する。環Eとしては、エチレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド(テトラヒドロフラン)、ペンタメチレンオキシド(テトラヒドロピラン)などの炭素数2〜5のアルキレンオキシドが例示でき、エチレンオキシド及びトリメチレンオキシドなどの炭素数2〜3のアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドが好ましい。また、R2aとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基などのC1−6アルキル基などが例示でき、好ましくはC1−4アルキル基、さらに好ましくはC1−2アルキル基、特にメチル基が好ましい。式(5)で表される化合物としては、具体的には、1,2−エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2−メチル−1,3−トリメチレンオキシドなどのC3−8アルキレンオキシドが例示できる。好ましい化合物(5)は、C3−6アルキレンオキシド、好ましくはC3−4アルキレンオキシド、特に1,2−エポキシプロパンである。
式(6)で表される化合物において、ハロゲン原子Xとしては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示でき、塩素原子及び臭素原子である場合が多い。また、式(6)で表される化合物としては、前記例示のR2に対応するハロ分岐鎖状アルカノールが例示でき、具体的には、1−ハロ−2−プロパノール、2−ハロプロパノール、1−ハロ−2−ブタノール、2−ハロブタノール、3−ハロ−2−メチルプロパノール、3−ハロプロパノール、4−ハロ−2−プロパノール、3−ハロ−2−メチル−2−プロパノール、2−ハロ−2−メチルプロパノール、3−ハロ−2,2−ジメチルプロパノールなどのハロ分岐鎖状C3−8アルカノールが挙げられる。好ましいハロアルカノールは、ハロ分岐鎖状C3−6アルカノール、好ましくはハロ分岐鎖状C3−4アルカノール、特に炭素数が3である化合物(3−ハロ−2−プロパノール、2−ハロプロパノール)である。
式(4)で表される化合物と式(5)で表される化合物との反応では、前者のヒドロキシル基1モルに対して、後者の使用割合は、例えば、1〜25モル(例えば、1.2〜20モル)、好ましくは1.5〜10モル、さらに好ましくは2〜5モル程度であってもよい。
式(4)で表される化合物と式(5)で表される化合物との反応は、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応において例示した塩基(例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物など)が使用できる。
塩基の割合は、特に限定されないが、式(4)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.001〜1モル(例えば、0.005〜0.5モル)、好ましくは0.01〜0.2モル、さらに好ましくは0.05〜0.1モル程度であってもよい。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、0〜170℃、好ましくは10〜150℃、さらに好ましくは20〜130℃(例えば、30〜120℃)程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。
式(4)で表される化合物と式(6)で表される化合物との反応では、前者のヒドロキシル基1モルに対して、後者の割合は、例えば、0.8〜25モル、好ましくは1〜15モル、さらに好ましくは1.2〜10モル(例えば、1.5〜5モル)程度であってもよい。
反応は触媒を用いてもよく、また、反応により生じるハロゲン化水素をトラップするため、塩基の存在下で行ってもよい。この触媒及び塩基としては、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応で例示したものを使用できる。
触媒の割合は、特に制限されないが、例えば、式(4)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.001〜1モル(例えば、0.005〜0.5モル)、好ましくは0.01〜0.2モル、さらに好ましくは0.05〜0.1モル程度であってもよい。
塩基の割合は、特に限定されないが、例えば、前記式(4)で表される化合物のヒドロキシル基1モルに対して、例えば、0.01〜30モル(例えば、0.05〜20モル)、好ましくは1〜10モル、さらに好ましくは1.5〜5モル程度であってもよい。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、0〜120℃、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは50〜80℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。
化合物(4)と化合物(5)及び/又は化合物(6)との反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中、攪拌しながら行ってもよく、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。反応は、還流しながら行ってもよい。さらに、反応に不活性な溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、化合物(2)と化合物(3)との反応で例示したものが使用できる。また、生成した化合物(前記式(2)で表される化合物)は、濾過、抽出、晶析などの慣用の方法により精製してもよい。
なお、前記式(4)で表される化合物は、公知の方法、例えば、環Zのヒドロキシル基に対してアルキレンオキサイド(エチレンオキシドなど)を付加させて生成してもよく、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネートなど)を付加させて生成させてもよい。また、フルオレンと、環Zを有するヒドロキシ含有アレーン又は環Zに基[−O−(R1O)m2−H]qが置換したヒドロキシ含有アレーンとの反応により生成できる。
[硬化性組成物]
前記エポキシ化合物(又はエポキシ樹脂)は、硬化剤などを含む硬化性組成物(熱硬化性又は光硬化性組成物など)を構成していてもよい。
前記硬化性組成物において、エポキシ樹脂成分は、前記エポキシ化合物で構成されていてもよく、他のエポキシ樹脂と組み合わせて構成してもよい。他のエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂(キサンテン単位を含むエポキシ樹脂を含む)、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂(1,6−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレンなど)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有する他のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂として、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)などが好ましい。これらの他のエポキシ樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
他のエポキシ樹脂と併用する場合、エポキシ樹脂成分全体に対する前記エポキシ化合物の割合は、例えば、50〜99重量%、好ましくは60〜98重量%、さらに好ましくは70〜95重量%程度であってもよい。
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤[特に、第1級アミン、例えば、鎖状脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン類)など、環状脂肪族アミン(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどの単環式脂肪族ポリアミン;ノルボルナンジアミンなどの架橋環式ポリアミンなど)、芳香脂肪族ポリアミン(例えば、キシリレンジアミンなど)、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)など]、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤(例えば、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族系酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの脂環族系酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などの芳香族系酸無水物)、フェノール樹脂系硬化剤(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック樹脂)などが挙げられる。これらの硬化剤として、酸無水物系硬化剤(ヘキサヒドロ無水フタル酸など)、フェノール樹脂系硬化剤(フェノールノボラック樹脂など)が好ましい。特に、柔軟性を付与する上では、酸無水物系硬化剤が好ましい。これらの硬化剤は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
硬化剤の割合は、エポキシ樹脂成分(他のエポキシ樹脂を使用する場合には、前記エポキシ化合物との総量、以下同じ)100重量部に対して、0.1〜500重量部、好ましくは1〜300重量部、さらに好ましくは10〜150重量部程度であってもよい。また、硬化剤の官能基の割合は、エポキシ樹脂成分のエポキシ基1当量に対して、0.1〜4.0当量、好ましくは0.3〜2.0当量、さらに好ましくは0.5〜1.5当量程度であってもよい。
また、硬化性組成物は硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、例えば、アミン類[例えば、第3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−1など)、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾールなど)およびその誘導体(例えば、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などの塩)など]、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、ホスフィン類、アミド化合物(ダイマー酸ポリアミドなど)、ルイス酸錯体化合物(3フッ化ホウ素・エチルアミン錯体など)、硫黄化合物[ポリサルファイド、メルカプタン化合物(チオール化合物)など]、ホウ素化合物(フェニルジクロロボランなど)、縮合性有機金属化合物(有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物など)などが挙げられる。硬化促進剤は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
硬化促進剤の割合(添加量)は、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部(例えば、0.1〜5重量部)程度であってもよい。
硬化性組成物は、反応性希釈剤を含んでいてもよい。反応性希釈剤としては、単官能性エポキシ基含有化合物(例えば、2−エチルへキシルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル類、アリルグリシジルエーテルなどのアルケニルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのアリールグリシジルエーテル類、フェノールのアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、これらの化合物に対応するアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル類などのグリシジルエーテル類;オクチレンオキサイド、スチレンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、などのアルケンオキシド類など)、多官能性エポキシ化合物[例えば、ジグリシジルエーテル、ポリオールポリグリシジルエーテル(ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどのアルカンジオールジグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンジ乃至トリグリシジルエーテル、グリセリンジ乃至トリグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど)、ジグリシジルアニリン、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、シクロアルケンオキシド類(例えば、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど)などの低粘度のエポキシ化合物など]などが挙げられる。これらの反応性希釈剤は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
反応性希釈剤の割合は、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部程度であってもよい。
硬化性組成物は、前記熱硬化性組成物に限らず、光硬化性組成物であってもよい。この光硬化性組成物は、光重合開始剤(カチオン重合開始剤、光酸発生剤)を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、例えば、ブレンステッド酸のオニウム塩(芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩など)などが挙げられる。これらの光重合開始剤の割合は、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部程度であってもよい。
さらに、硬化性組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
溶媒の使用量(添加量)は、例えば、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、0〜500重量部の範囲から選択でき、例えば、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
硬化性組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
[硬化性組成物が硬化した硬化物]
本発明には、前記硬化性組成物が硬化した硬化物も含まれる。この硬化物は、式(1)で表されるエポキシ化合物を含むため、柔軟性及び耐水性の両特性に優れている。
本発明のエポキシ硬化物は、オキシ分岐鎖状アルキレン基を有しているためか、耐水性に優れている。すなわち、JIS−K7209に準じた吸水性試験(硬化物を温度25℃で24時間イオン交換水に浸漬したとき)において、吸水率が、例えば、0.1〜1重量%、好ましくは0.2〜0.9重量%、さらに好ましくは0.3〜0.8重量%程度であってもよい。
本発明のエポキシ硬化物において、押込硬度(温度25℃)は、硬化剤の種類にもよるが、ASTM D2240に準じて測定したとき、例えば、20〜99、好ましくは30〜95(例えば、40〜90)程度であってもよい。特に、前記式(1)において、n1+n2の平均値が大きなエポキシ化合物で形成された硬化物は、柔軟性を顕著に向上できるため、前記押込強度を、例えば、5〜70、好ましくは10〜65、さらに好ましくは15〜60(例えば、20〜55)程度にすることもできる。また、このようなエポキシ硬化物は、Tgは50℃以下であってもよいが、ガラス転移温度(Tg)を室温以下にすることができる。すなわち、このエポキシ硬化物のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して測定したとき、例えば、25℃以下(例えば、−45℃〜25℃)、好ましくは20℃以下(例えば、−20℃〜20℃)、さらに好ましくは10℃以下(例えば、−15℃〜10℃)、特に0℃以下(例えば、−10℃〜0℃)であってもよい。ガラス転移温度が大きすぎると、柔軟性が低下する。なお、押込強度は、タイプCデュロメータ硬度計を用いて測定でき、ガラス転移温度は、示差走査熱量計により測定できる。
本発明の硬化物は、前記硬化性組成物を反応させる(硬化処理する)ことにより得ることができる。硬化処理は、硬化触媒の使用、加熱、光照射(活性エネルギー線照射)などにより行うことができ、これらを組み合わせて行ってもよい。
加熱により硬化処理を行う場合、加熱温度としては、例えば、50〜250℃、好ましくは70〜220℃、さらに好ましくは80〜200℃(例えば、90〜170℃)程度であってもよい。なお、硬化処理は段階的に行ってもよく、例えば、比較的低温(例えば、50〜130℃、好ましくは70〜120℃程度)で加熱処理したのち、比較的高温(例えば、140〜350℃、好ましくは150〜300℃程度)で加熱処理してもよい。このような硬化処理は、硬化物の形状に応じて、硬化性組成物を成形しつつ又は成形(又は予備成形)した後、行ってもよい。例えば、前記硬化性組成物を、必要に応じて、加熱溶融し、所定の型に注入して加熱することにより硬化し、所望の形状の成形体を得ることができる。成形方法および硬化条件は特に限定されないが、例えば、所定の金型を用いて成形する場合には、加熱加圧による成形法やコールドプレスと呼ばれる低温成形法などが用いられる。
また、硬化性組成物を接着部位に適用し、硬化させてもよく、硬化性組成物で基材をコーティングし、硬化させてもよい。さらに、硬化性組成物を所定部位に適用し、光又は放射線照射(紫外線照射など)することにより硬化させてもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例において、各種測定は以下のようにして行った。
(吸水性試験)
試験はJIS K7209に準じて行った。すなわち、試料(30mm×30mm×3mm)を50℃で24時間乾燥し、絶乾状態にした。その試料を温度25℃で24時間イオン交換水に浸漬し、浸漬前後での重量変化を測定した。この測定を3回行い、その平均値を吸水率とした。
(柔軟性試験)
試験はASTM D2240に準じて行った。すなわち、タイプCデュロメータ硬度計(テクロック社製)を用い押込硬度を測定した。
(エポキシ当量)
エポキシ当量の測定はJIS K7236に準じて行った。過塩素酸酢酸溶液滴定法により電位差滴定装置を用いて終点を確認した。
(粘度)
粘度の測定はJIS K7117−2に準じて行った。25℃における粘度を、TV−22形粘度計(コーンプレートタイプ、東機産業(株)製「TVE−22L」)を用い、測定粘度に応じたオプションロータ(01:1゜34×R24、07:3゜×R7.7)にて、1〜20rpm(粘度によって選択)で測定した。
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製、「DSC6220」)を用いて、JIS K7121に準拠して−30〜150℃の温度範囲で測定した。
(合成例1)
(式中、m1+m2の平均値は2、n1+n2の平均値は10である。)
ディーンスタークを付けた三口フラスコに上記式(7)で表される化合物(「BPEF−10PO」という)582.0g(0.57mol)、エピクロロヒドリン576.8g(6.27mol)及びトリメチルアンモニウムブロミド(TMAB)4.0g(0.026mol)を加えた。系内をアルゴン置換し、50℃まで昇温させ、前記成分を溶解させた後、水酸化ナトリウム320.0g(8.0mol)を1時間かけて添加した。その後、再びアルゴン置換し、80℃で9時間反応させた。反応後、反応溶液を吸引濾過し、ろ液を濃縮した後、70℃に加温し、メチルイソブチルケトン500g、硫酸マグネシウム200gを添加し、溶解させた。
得られた溶液を再びろ過し、トルエンでリンスした後、ろ液に30%水酸化ナトリウム水溶液268.0gを滴下し、アルゴン雰囲気下、70℃で1時間撹拌した。その後、得られた溶液にメチルイソブチルケトンを加え、蒸留水を用いて4回抽出洗浄し、脱水ろ過後、濃縮乾燥し、下記式(8)で表される化合物(「BPEF−10POG」という)を得た。
(式中、m1+m2の平均値は2、n1+n2の平均値は10である。)
また、得られたエポキシ化合物の固形分濃度は94.4重量%、25℃における粘度は、2300mPa・s、エポキシ当量は638であった。
(合成例2)
BPEF−10POに代えて、式(7)において、m1+m2の平均値が2、n1+n2の平均値が8である化合物「BPEF−8PO」を用いたこと以外は、合成例1と同一の方法により、式(8)において、m1+m2の平均値が2、n1+n2の平均値が8である化合物「BPEF−8POG」を得た。得られたエポキシ化合物の固形分濃度は99.3重量%、25℃における粘度は12230mPa・s、エポキシ当量は598であった。
(合成例3)
BPEF−10POに代えて、式(7)において、m1+m2の平均値が2、n1+n2の平均値が5である化合物「BPEF−5PO」を用いたこと以外は、合成例1と同一の方法により、式(8)において、m1+m2の平均値が2、n1+n2の平均値が5である化合物「BPEF−5POG」を得た。得られたエポキシ化合物の固形分濃度は98.8重量%、25℃における粘度は29610mPa・s、エポキシ当量は552であった。
なお、「BPEF−10PO」、「BPEF−8PO」、「BPEF−5PO」は特開2001−139651号公報の実施例1と同様の方法にて、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)1モルに対してプロピレンオキシド(PO)をそれぞれ10モル、8モル、5モルを使用して反応させることで得た。
(比較合成例1)
(式中、m1+m2の平均値は2、n1+n2の平均値は10である。)
合成例1で得られた化合物(BPEF−10PO)に代えて、上記式で表される化合物(「BPEF−10EO」という)を使用し、合成例1と同一の方法で合成を行い、下記式で表される化合物(「BPEF−10EOG」という)を得た。
(式中、m1+m2の平均値は2、n1+n2の平均値は10である。)
また、得られたエポキシ化合物の固形分濃度は99.5重量%、25℃における粘度は、6040mPa・s、エポキシ当量は467であった。
なお、「BPEF−10EO」は特開2001−139651号公報の実施例1と同様の方法にて、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)1モルに対してエチレンオキシド(EO)10モルを使用して反応させることで得た。
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂[(株)三菱化学製、JER828]を6重量部、合成例1で得られたBPEF−10POGを24重量部、フェノール樹脂系硬化剤としてフェノールノボラック樹脂[(株)群栄化学工業製、PSM−4261]を7.3重量部加え、100℃で1時間撹拌し、混合した。その後、トリフェニルホスフィンを0.16重量部加え、150℃で5時間加熱し、エポキシ硬化物1を得た。
(実施例2)
合成例1で得られたBPEF−10POGを30重量部、酸無水物系硬化剤[(株)新日本理化製、リカシッドMH−700]を7.7重量部加え、100℃で1時間撹拌し、混合した。その後、トリフェニルホスフィンを0.19重量部加え115℃で5時間加熱し、エポキシ硬化物2を得た。
(参考例3)
BPEF−10POGに代えて、BPEF−8POGを用い、酸無水物系硬化剤を8.2重量部加えたこと以外は、実施例2と同様の方法により、エポキシ硬化物3を得た。
(参考例4)
BPEF−10POGに代えて、BPEF−5POGを用い、酸無水物系硬化剤を8.9重量部加えたこと以外は、実施例2と同様の方法により、エポキシ硬化物4を得た。
(比較例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂[(株)三菱化学製、JER828]を6重量部、比較合成例1で得られたBPEF−10EOGを24重量部、フェノール樹脂系硬化剤として、フェノールノボラック樹脂[(株)群栄化学工業製、PSM−4261]を8.7重量部加え、100℃で1時間撹拌し、混合した。その後、トリフェニルホスフィンを0.16重量部加え、150℃で5時間加熱し、エポキシ硬化物3を得た。
(比較例2)
比較合成例1で得られたBPEF−10EOGを30重量部、酸無水物系硬化剤[(株)新日本理化製、リカシッドMH−700]を10.5重量部加え、100℃で1時間撹拌し、混合した。その後、トリフェニルホスフィンを0.20重量部加え115℃で5時間加熱し、エポキシ硬化物4を得た。
実施例1、2、参考例3、4及び比較例1、2で得られたエポキシ硬化物の吸水率、押込硬度及びガラス転移温度の結果を表3に示す。
表3に示されるように、実施例1、2及び参考例3、4のエポキシ硬化物は、吸水率及び押込強度が低く、耐水性及び柔軟性を両立できる。特に、実施例1,2では、比較例1,2と比べ、吸水率及び押込強度が非常に低く、耐水性及び柔軟性の両特性に優れている。なお、実施例2及び参考例3、4に示されるように、n1+n2の平均値が大きくなるほど、ガラス転移温度が低下し、実施例2では0℃以下のガラス転移温度を有し、押込硬度が顕著に低い。