JP2016155926A - 光学部材の黄変抑制方法及び光学部材並びに接着剤 - Google Patents

光学部材の黄変抑制方法及び光学部材並びに接着剤 Download PDF

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Abstract

【課題】光学部材を加熱処理しても黄変を抑制する方法の提供。
【解決手段】式(1)で表されるフルオレン化合物を含む接着剤又は粘着剤を用いる光学部材を製造する方法。
Figure 2016155926

[X及びXは式(2)又は式(3)で表される基
Figure 2016155926

(RはH又はメチル基)]
【選択図】なし

Description

本発明は、加熱処理しても光学部材の黄変を抑制する方法、この方法により黄変が抑制された光学部材、及びこの光学部材を得るのに有用な接着剤又は粘着剤に関する。
フルオレン骨格を有する材料は、高屈折率や低複屈折などの光学的特性が優れており、光学材料用途などで使用されることが知られている。使用される化合物の代表例として、フルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート(例えば、9,9−ビス(4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなど)などが提案されている。このような化合物は、光学部材、接着剤、インク材料又はコーティング剤などとして利用されるが、使用環境下又は製造工程中の熱などの影響で起こる黄変が問題となっている。特に光学材料用途などにおいては、製品としての致命的な欠点となることも多いため、耐熱黄変性の向上が要求されている。
国際公開WO2013/022065号公報(特許文献1)には、9,9−ビス(ポリアルコキシアリール)フルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレートが開示されている。この化合物の硬化物は、高屈折率と耐スクラッチ性とを両立し、さらに、硬化性組成物においては、ハンドリング性と硬化性とを両立できる。しかし、耐熱黄変性については何ら記載されていない。
また、特開2012−224845号公報(特許文献2)には、重合性不飽和結合を有するフルオレン化合物(A)と、ヒドロキシル基及びカルボキシル基から選択された少なくとも1種の官能基を有する非フルオレン系(メタ)アクリルモノマー(B)とを含む硬化性組成物が記載され、実施例では、9,9−ビス(4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEFA)と、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とを含む硬化性組成物の硬化物における耐熱黄変性について記載されている。しかし、このような硬化物では、耐熱黄変性の改善は見られるものの、所定の官能基を有する非フルオレン系(メタ)アクリルモノマー(B)を、全(メタ)アクリルモノマー成分に対して65〜80モル%と相対的に多く導入しているためか、フルオレン骨格由来の屈折率向上効果は高くなかった。また、比較例1では、BPEFA単独の硬化物における耐熱黄変性について記載されており、150℃という過酷な条件下で、耐熱黄変性が低いことが記載されている。なお、特許文献2には、フルオレン化合物(A)として、9,9−ビス(ポリアルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物は例示されているものの、実施例には記載されていない。また、接着剤としての利用については記載されていない。
また、特開2009−235147号公報(特許文献3)には、芳香環を含む硬化性樹脂又はその樹脂組成物に、流動状態で磁場及び/又は電場を印加しながら硬化させた成形体において、着色が抑制され、高い透明性を有することが開示されている。実施例では、9,9−ビス(フェノキシエタノール)フルオレンジグリシジルエーテル(BPEFG)と、ジエチレントリアミンとを磁場中で熱硬化させた硬化物について記載されている。この実施例では、透明なフィルムが得られるものの、磁場及び/又は電場を印加する必要があるため、成形体の形態が制約される。また、比較例1において、磁場を印加せずにBPEFGとジエチレントリアミンとの硬化物を調製し、黄変することが確認されている。なお、特許文献3には、芳香環を含む化合物として、9,9−ビス(ポリアルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物は例示されているものの、実施例には記載はなく、接着剤としての利用についても記載されていない。さらに、いずれの文献においても、接着して得られる光学部材の光の透過損失が低減されることについては記載されていない。
国際公開WO2013/022065号公報(段落[0009]−[0011]、実施例) 特開2012−224845号公報(請求項1、段落[0003]、実施例1〜4、比較例1) 特開2009−235147号公報(段落[0009]、実施例1、比較例1)
従って、本発明の目的は、加熱処理しても、光学部材の黄変を抑制できる方法、その光学部材、及びその方法に使用する接着剤又は粘着剤(光学透明接着剤又は粘着剤)を提供することにある。
本発明の他の目的は、光学部材の黄変を抑制しつつ、光学部材を透過する光の損失を低減する方法、その光学部材、及びその方法に使用する接着剤又は粘着剤(光学透明接着剤又は粘着剤)を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9−ビス(ポリアルコキシアリール)フルオレン骨格を有する重合性化合物で透明部材を接着すると、加熱処理しても耐熱黄変性に優れていることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の黄変抑制方法では、少なくとも一方が透明である基板と被着体とを接着剤又は粘着剤で接着する接着工程、及び接着工程に続く後加工工程のうち少なくとも一方の工程で加熱処理して、得られた光学部材の黄変を抑制する。このような方法において、前記接着剤又は粘着剤として、下記式(1)で表されるフルオレン化合物を含む熱若しくは光硬化性接着剤又は前記フルオレン化合物の重合体を含む粘着剤を用い、光学部材の黄変を抑制する。
Figure 2016155926
(式中、Z及びZはそれぞれ芳香族炭化水素環、R2a及びR2bはそれぞれアルキレン基、m1及びm2はそれぞれ2以上の整数、n1及びn2はそれぞれ1以上の整数、R3a及びR3bはそれぞれ反応に不活性な置換基、p1及びp2はそれぞれ0以上の整数、R4a及びR4bはそれぞれ反応に不活性な置換基、q1及びq2はそれぞれ0〜4の整数、X及びXはそれぞれ下記式(2)又は下記式(3)
Figure 2016155926
(式中、Rはそれぞれ水素原子又はメチル基を示す。)で表される基を示す。)
前記式(1)における化合物は、Z及びZがそれぞれC6−24芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環から選択された芳香族炭化水素環)、R2a及びR2bがそれぞれC2−4アルキレン基(例えば、C2−3アルキレン基)、m1及びm2がそれぞれ3以上(例えば、4以上)の整数、n1及びn2がそれぞれ1〜3(例えば、1〜2)の整数、R3a及びR3bがそれぞれアルキル基(例えば、メチル基)、p1及びp2がそれぞれ0〜2の整数(例えば、0又は1)、q1及びq2がそれぞれ0、X及びXがそれぞれ前記式(2)で表される基であってもよい。
また、前記接着剤は光硬化性接着剤であってもよく、前記加熱処理は、100〜200℃で行ってもよい。
前記基板及び被着体のうち少なくとも一方の透明な部材は、セラミック基板(例えば、サファイアガラス基板などの透明セラミック基板など)又は光学フィルムであってもよい。
接着工程後の接着層又は粘着層の屈折率(25℃、波長589nm)は1.46〜1.76であってもよい。
また、本発明には、前記黄変抑制方法により黄変が抑制された光学部材又は接合体(例えば、タッチパネルディスプレイの構成部材など)も含まれる。さらに、本発明には、前記黄変抑制方法で使用するための接着剤又は粘着剤であって、前記式(1)で表されるフルオレン化合物を含む熱若しくは光硬化性接着剤又は前記式(1)で表されるフルオレン化合物の重合体を含む粘着剤も含まれる。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの双方を意味する。
本発明では、接着剤又は粘着剤が特定のフルオレン化合物を含むため、基板と被着体とを接着する接着工程、及び接着工程に続く後加工工程のうち、少なくとも一方の工程が加熱処理を含んでいても、得られた光学部材の黄変を抑制可能である。そのため、前記方法により黄変が抑制された光学部材を得ることもできる。また、接着剤又は粘着剤が特定のフルオレン化合物を含むため、接着層又は粘着層の屈折率を透明部材と同程度の屈折率に調整しやすく、得られる光学部材を透過する光の損失低減と、耐熱黄変性とを両立できる。
[接着剤又は粘着剤]
接着剤又は粘着剤は、9,9−ビス(ポリアルコキシアリール)フルオレン骨格を有する多官能性フルオレン化合物(以下、フルオレン化合物ということがある)又はその重合体を含んでいる。このような接着剤又は粘着剤は、透明性が高く、光学透明接着剤又は粘着剤(Optical Clear Resin(OCR)又はOptical Clear Adhesive(OCA))を形成してもよい。
[フルオレン化合物]
代表的なフルオレン化合物は、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
Figure 2016155926
(式中、Z及びZはそれぞれ芳香族炭化水素環、R2a及びR2bはそれぞれアルキレン基、m1及びm2はそれぞれ2以上の整数、n1及びn2はそれぞれ1以上の整数、R3a及びR3bはそれぞれ反応に不活性な置換基、p1及びp2はそれぞれ0以上の整数、R4a及びR4bはそれぞれ反応に不活性な置換基、q1及びq2はそれぞれ0〜4の整数、X及びXはそれぞれ下記式(2)又は下記式(3)
Figure 2016155926
(式中、Rはそれぞれ水素原子又はメチル基を示す。)で表される基を示す。)
上記式(1)において、環Z及びZで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環などの単環式芳香族炭化水素環、多環式芳香族炭化水素環などが挙げられ、多環式芳香族炭化水素環には、縮合多環式芳香族炭化水素環、環集合芳香族炭化水素環などが含まれる。
縮合多環式芳香族炭化水素環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレンなどの縮合二環式C10−16アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合芳香族炭化水素環としては、ビアレーン環、例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC6−12アレーン環、テルアレーン環、例えば、テルフェニレン環などのテルC6−12アレーン環などが例示できる。好ましい環集合芳香族炭化水素環は、ビC6−10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
好ましい環Z及びZとしては、C6−24アレーン環(例えば、C6−14アレーン環、特に、ベンゼン環、ナフタレン環及びビフェニル環)が挙げられる。なお、2つの環Z及びZは同一の又は異なる環であってもよい。
上記式(1)において、基X及びXは、上記式(2)又は(3)で表される基であり、上記式(2)中の基Rが水素原子であるアクリロイル基、基Rがメチル基であるメタクリロイル基であってもよく、又は上記式(3)中の基Rが水素原子であるグリシジル基、基Rがメチル基である2−メチルグリシジル基であってもよい。好ましい基X及びXとしては、上記式(2)で表される基((メタ)アクリロイル基)が挙げられる。なお、基X及びXは、互いに同一の又は異なる基であってもよい。また、置換数n1及びn2が2以上である場合、ポリアルコキシ基を介して同一の環Z又はZに結合する基X又はX同士は、互いに同一の又は異なる基であってもよい。
上記式(1)において、基R2a及びR2bで表されるアルキレン基として、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。直鎖状アルキレン基として、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基、特にエチレン基が例示できる。分岐鎖状アルキレン基として、例えば、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基などのC3−6アルキレン基、好ましくはC3−4アルキレン基、特にプロピレン基が挙げられる。好ましい基R2a及びR2bは、C2−4アルキレン基、特にC2−3アルキレン基である。なお、繰り返し単位数m1及びm2が2以上であるときは、基R2a及びR2b同士は、同一又は異なる種類のアルキレン基で構成してもよい。また、基R2a及びR2bは同一又は異なる種類のアルキレン基で構成してもよい。
基OR2a及びOR2bの繰り返し単位数m1及びm2は、それぞれ、2以上の整数であればよく、例えば、2〜20(例えば、2〜15)程度であってもよく、好ましくは3以上の整数(例えば、3〜10の整数)、さらに好ましくは4以上の整数(例えば、4〜8の整数)、特に4〜7(例えば、4〜6)の整数であってもよい。また、m1及びm2が、それぞれ、5〜15の整数、好ましくは7〜13の整数、さらに好ましくは8〜12の整数程度であると粘着性が発現しやすく、粘着剤として好適に利用できる。なお、m1及びm2は同一又は異なっていてもよい。
また、m1及びm2の合計(m1+m2)は、フルオレン化合物全体(前記式(1)で表されるフルオレン化合物の分子集合体)に対する平均(相加平均又は算術平均)で、4〜40(例えば、4〜30)程度の範囲から選択でき、好ましくは4〜20(例えば、6〜18)、さらに好ましくは4〜18(例えば、8〜16)、特に6〜14(例えば、8〜12)程度であってもよい。粘着剤として使用する場合は、10〜30、好ましくは14〜28、さらに好ましくは15〜24程度であってもよい。上記m1又はm2(又はm1+m2)が大きすぎると、屈折率、耐熱黄変性などの特性が低下するおそれがある。また、小さすぎると、フルオレン化合物の粘度が高くなり、ハンドリング性が低下するおそれがある。なお、上記平均(相加平均又は算術平均)の繰り返し単位数は、慣用の方法により測定でき、測定方法は特に限定されないが、例えば、特許文献1に記載の方法などで容易に算出できる。
前記式(1)において、n1及びn2は、それぞれ1以上の整数であればよく、環Z及びZに応じて、例えば、1〜9程度の範囲から選択でき、例えば1〜7の整数、好ましくは1〜5の整数、さらに好ましくは1〜3の整数(例えば、1〜2の整数)、特に1であってもよい。なお、n1及びn2は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。
前記式(1)において、基[−O−(R2aO)m1−X]及び[−O−(R2bO)m2−X]は、n1又はn2が1の場合、環Z及びZの適当な位置に置換できる。例えば、環Z及びZがベンゼン環である場合には、フェニル基の2−,3−,4−位(特に、3−位又は4−位)に置換している場合が多く、環Z及びZがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8位である場合が多く、1,5−位、2,5−位、1,6−位、2,6−位などの任意の位置関係で置換していてもよく、例えば、1,5−位、2,6−位などの関係(特に、2,6−位の関係)である場合が多い。また、環Z及びZが環集合アレーン環である場合、置換位置は特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合したアレーン環又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、環Z及びZがビフェニル環である場合には、ビフェニル環Z及びZの3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合している場合が多く、例えば、3,5−位、3,6−位、3,3’−位、3,4’−位、4,2−位、4,3’−位、4,4’−位などの任意の置換位置に置換していてもよく、好ましくは3,5−位、3,6−位、3,4’−位、4,2−位、4,4’−位、さらに好ましくは3,6−位、4,2−位の置換位置で置換していてもよい。なお、n1又はn2が2以上である場合においても、環Z及びZの適当な位置に置換できる。置換位置は特に限定されないが、前記n1又はn2が1である場合に例示した位置に、少なくとも1つは置換していることが多い。
また、前記式(1)において、反応に不活性な置換基R3a及びR3bとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ビフェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1−6アシル基など)、ニトロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など)、ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)などが例示できる。
これらの基R3a及びR3bのうち、代表的には、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい基R3a及びR3bとしては、アルキル基(メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基など)、アリール基、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)など、特にアルキル基(例えば、メチル基)が好ましい。なお、基R3a及びR3bがアリール基であるとき、基R3a及びR3bは、それぞれ、環Z及びZとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。なお、基R3a及びR3bの種類は、同一又は異なっていてもよく、p1及びp2が2以上である場合、同一の環Z及びZ内において、基R3a及びR3bの種類は、同一又は異なっていてもよい。
置換数p1及びp2は、環Z及びZに応じて適宜選択でき、例えば、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜2)、さらに好ましくは0又は1(例えば、0)であってもよい。特に、pが1である場合、環Z及びZがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、R3a及びR3bがメチル基であってもよい。なお、基R3a及びR3bの置換位置は、特に限定されず、環Z及びZ上において、前記基[−(OR2am1−OH]及び[−(OR2bm2−OH]が置換する位置以外であればよい。
前記式(1)において、基R4a及びR4bとして、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基)などが挙げられる。これらの基R4a及びR4bのうち、C1−4アルキル基(特に、メチル基)が好ましい。なお、基R4a及びR4bは、同一又は異なっていてもよく、置換数q1及びq2が2以上である場合、基R4a及びR4bのそれぞれが、フルオレン構造内の対応するベンゼン環上において、同一又は異なっていてもよい。
置換数q1及びq2は0〜4の整数から選択でき、好ましくは0〜1、特に0である。なお、置換数q1及びq2は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R4a及びR4bの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、7−位、2−及び7−位など)であってもよい。
また、前記式(1)で表される化合物は、基X及びXが前記式(2)表される基((メタ)アクリロイル基)である化合物(以下、フルオレン(メタ)アクリレート化合物という)と、基X及びXが前記式(3)表される基(グリシジル基又は2−メチルグリシジル基)である化合物(以下、フルオレンエポキシ化合物という)とに大別できる。
(フルオレン(メタ)アクリレート化合物)
代表的なフルオレン(メタ)アクリレート化合物は、9,9―ビス((メタ)アクリロイルオキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類、9,9―ビス((メタ)アクリロイルオキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類としては、前記式(1)において、環Z及びZが置換又は未置換のベンゼン環、R2a及びR2bが直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、m1及びm2が2、q1及びq2がそれぞれ0である化合物、例えば、(A1)9,9−ビス[4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)プロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、(A2)9,9−ビス[4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−3−t−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−5−t−ブチル−2−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキルフェニル)フルオレン、(A3)9,9−ビス(4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−C5−10シクロアルキルフェニル)フルオレン、(A4)9,9−ビス[4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)プロポキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−C6−10アリールフェニル)フルオレンなど;環Z及びZが置換又は未置換のベンゼン環、R2a及びR2bが直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、m1及びm2が3〜10、q1及びq2がそれぞれ0である化合物、すなわち、上記化合物(A1)〜(A4)において、m1及びm2が3〜10である化合物、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−C5−10シクロアルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−C6−10アリールフェニル)フルオレンなどが含まれる。
9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、環Z及びZが置換又は未置換のナフタレン環、R2a及びR2bが直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、m1及びm2が2、q1及びq2がそれぞれ0である化合物、例えば、(A5)9,9−ビス[6−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−1−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)プロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど;環Z及びZが置換又は未置換のナフタレン環、R2a及びR2bが直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、m1及びm2が3〜10、q1及びq2がそれぞれ0である化合物、すなわち、上記化合物(A5)において、m1及びm2が3〜10である化合物、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなどが含まれる。
これらのフルオレン(メタ)アクリレート化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
なお、これらの(メタ)アクリロイル基を有するフルオレン化合物は、市販品を利用してもよく、慣用の方法(例えば、前記式(1)において、X及びXが水素原子である対応するフルオレンジオール化合物と、(メタ)アクリル酸又はそのエステル形成性誘導体(例えば、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリル酸無水物など)とを反応させる方法など)により製造して使用してもよい。
好ましいフルオレン(メタ)アクリレート化合物は、9,9−ビス(4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシポリC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−(メタ)アクリロイルオキシポリC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシポリC2−4アルコキシ−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス[(メタ)アクリロイルオキシポリC2−4アルコキシナフチル]フルオレンなどが挙げられる。
(フルオレンエポキシ化合物)
代表的なフルオレンエポキシ化合物は、9,9―ビス(グリシジルオキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類、9,9―ビス(グリシジルオキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
9,9−ビス(グリシジルオキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類としては、前記式(1)において、環Z及びZが置換又は未置換のベンゼン環、R2a及びR2bが直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、m1及びm2が2、q1及びq2がそれぞれ0である化合物、例えば、(B1)9,9−ビス[4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、(B2)9,9−ビス[4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−3−t−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−5−t−ブチル−2−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキルフェニル)フルオレン、(B3)9,9−ビス(4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−C5−10シクロアルキルフェニル)フルオレン、(B4)9,9−ビス[4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−C6−10アリールフェニル)フルオレンなど;環Z及びZが置換又は未置換のベンゼン環、R2a及びR2bが直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、m1及びm2が3〜10、q1及びq2が0である化合物、すなわち、上記化合物(B1)〜(B4)において、m1及びm2が3〜10である化合物、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−(モノ又はジ)C1−4アルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−C5−10シクロアルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ−C6−10アリールフェニル)フルオレンなどが含まれる。
9,9−ビス(グリシジルオキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、環Z及びZが置換又は未置換のナフタレン環、R2a及びR2bが直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、m1及びm2が2、q1及びq2がそれぞれ0である化合物、例えば、(B5)9,9−ビス[6−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−1−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−(2−グリシジルオキシプロポキシ)プロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど;環Z及びZが置換又は未置換のナフタレン環、R2a及びR2bが直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基、m1及びm2が3〜10、q1及びq2がそれぞれ0である化合物、すなわち、上記化合物(B5)において、m1及びm2が3〜10である化合物、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなどが含まれる。
これらのフルオレンエポキシ化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
なお、これらのフルオレンエポキシ化合物は、市販品を利用してもよく、慣用の方法(例えば、前記式(1)において、基X及びXが水素原子である対応するフルオレンジオール化合物と、ハロメチルオキシラン化合物[例えば、エピハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン(クロロメチルオキシラン)、エピブロモヒドリン(ブロモメチルオキシラン)など)、1−ハロメチル−2−メチルオキシラン(例えば、1−クロロメチル−2−メチルオキシランなど)など]とを反応させる方法など)により製造して使用してもよい。
好ましいフルオレンエポキシ化合物は、9,9−ビス(4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシポリC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−グリシジルオキシポリC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシポリC2−4アルコキシ−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−(2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ)−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス[グリシジルオキシポリC2−4アルコキシナフチル]フルオレン、特に9,9−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシ(テトラ乃至オクタ)エトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−((メタ)アクリロイルオキシ(テトラ乃至オクタ)エトキシ)−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(4−(グリシジルオキシ(テトラ乃至オクタ)エトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−(グリシジルオキシ(テトラ乃至オクタ)エトキシ)−2−ナフチル)フルオレンである。なお、前記例示において、グリシジル基を2-メチルグリシジル基に置き換えた化合物も同様に利用できる。
本発明で使用する接着剤(例えば、OCR)としては、フルオレン(メタ)アクリレート化合物を含むアクリル系接着剤組成物と、フルオレンエポキシ化合物を含むエポキシ系接着剤組成物とに大別される。
[アクリル系接着剤組成物]
アクリル系接着剤組成物は、フルオレン(メタ)アクリレート化合物単独で構成してもよく、耐熱黄変性を害しない範囲で、他の重合性(メタ)アクリレート(単官能性(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレート)などの他の重合性成分を含んでいてもよい。他の重合性(メタ)アクリレートとしては、多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。
多官能性(メタ)アクリレートとしては、二官能性(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(又はそのアルキレンオキサイド付加体)のジ(メタ)アクリレート]、三官能性以上の(メタ)アクリレート[例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのトリオール又はテトラオールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート]、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、前記式(1)の範疇に属さないフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート[例えば、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなど]などが挙げられる。これらの単官能性及び多官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
フルオレン(メタ)アクリレート化合物と、他の重合性(メタ)アクリレート(単官能性(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレート)との割合は、前者/後者(重量比)=30/70〜100/0程度の範囲から選択でき、例えば、50/50〜95/5、好ましくは60/40〜90/10(例えば、70/30〜85/15)程度であってもよい。フルオレン(メタ)アクリレート化合物の割合が少なすぎると、耐熱黄変性の改善効果が十分に得られないおそれがある。
アクリル系接着剤組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。この重合開始剤は熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。
熱重合開始剤としては、有機過酸化物[ジアルキルパーオキサイド類(例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類(例えば、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなど)、過酸(又は過酸エステル)類(例えば、t−ブチルヒドロペルオキサイド、クメンヒドロペルオキサイド、過酢酸t−ブチルなど)ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類]、アゾ化合物[例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物など]などが例示できる。これらの熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、アセトフェノン類(アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなど)、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1など}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノンなど)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなど)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノンなど)、キサントン類などが例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
重合開始剤(熱又は光重合開始剤)の使用量は、(メタ)アクリレート成分(フルオレン(メタ)アクリレート化合物及び他の(メタ)アクリレート)の総量100重量部に対して0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部(例えば、1〜8重量部)、さらに好ましくは2〜5重量部程度であってもよい。
光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、第3級アミン類{例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなど]、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなど]などのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンなど}などの慣用の光増感剤などが挙げられる。これらの光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
光増感剤の使用量は、前記重合開始剤100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは5〜150重量部、さらに好ましくは10〜100重量部程度であってもよい。
アクリル系接着剤組成物は、必要であれば、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、特に限定されず、例えば、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類又は脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル類(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、エステル類(例えば、酢酸エチルなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブなど)、カルビトール類(例えば、メチルカルビトールなど)などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
溶媒の使用量は、(メタ)アクリレート成分(フルオレン(メタ)アクリレート化合物及び他の(メタ)アクリレート)の総量100重量部に対して、0〜10000重量部程度の範囲から選択でき、例えば、100〜2000重量部、好ましくは500〜1000重量部程度であってもよい。
さらに、アクリル系接着剤組成物は、慣用の添加剤、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、界面活性剤、可塑剤、粘着付与剤、保護コロイド、増粘剤、老化防止剤、消泡剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
[エポキシ系接着剤組成物]
エポキシ系接着剤組成物は、フルオレンエポキシ化合物と、硬化剤とを組み合わせて構成してもよく、耐熱黄変性を害しない範囲で、他のエポキシ化合物(又はエポキシ樹脂)などの他の成分を含んでいてもよい。
他のエポキシ化合物(又はエポキシ樹脂)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂[例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂など);フェノール型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのフェノール型グリシジルエーテルなど);臭素化エポキシ樹脂;グリコール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)又はその水添物のアルキレンオキサイド付加体とエピクロロヒドリンとの反応物など);脂環族ジオールのジグリシジルエーテル(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなど)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂(例えば、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンオキサイド、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレートなど)などの脂環族骨格を有するエポキシ樹脂;ポリ(グリシジルオキシフェニル)アルカン(例えば、1,1,2,2−テトラキス(4−グリシジルオキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンなどのトリ又はテトラ(グリシジルオキシフェニル)C1−4アルカン);ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(例えば、2,6−ジ(グリシジルオキシ)ナフタレン、2,2’−ジグリシジルオキシビナフタレンなどのジ(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス(2−グリジルオキシナフチル)メタンなどのビス(グリシジルオキシナフチル)C1−6アルカンなどのジグリシジルオキシナフタレン類、ビス[2,7−ジ(グリシジルオキシ)ナフチル]メタンなど)、キサンテン骨格を有するエポキシ樹脂(例えば、9−フェニル−2,7−ジグリシジルオキシ−1,3,4,5,6,8−ヘキサメチルキサンテンなど)などの縮合環骨格を有するグリシジルエーテルなど]、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノールなど)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(例えば、芳香族ジカルボン酸(フタル酸など)又はその水添物(テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸など)とエピクロロヒドリンとの反応物、ダイマー酸グリシジルエステルなど)、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(フルオレン系エポキシ樹脂)[例えば、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルなどのフェノール性水酸基を有する前記式(1)の範疇に属さないフルオレン類のポリグリシジルエーテルなど]、含窒素型エポキシ化合物(例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントイン骨格を有するエポキシ樹脂、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリンなど)、過酢酸酸化型エポキシ化合物、含ケイ素型エポキシ化合物などが挙げられる。
フルオレンエポキシ化合物と、他のエポキシ化合物(又はエポキシ樹脂)との割合は、前者/後者(重量比)=30/70〜100/0程度の範囲から選択でき、例えば、50/50〜95/5、好ましくは60/40〜90/10(例えば、70/30〜85/15)程度であってもよい。フルオレンエポキシ化合物の割合が少なすぎると、耐熱黄変性の改善効果が十分に得られないおそれがある。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤[特に、第1級アミン、例えば、鎖状脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン類)など、環状脂肪族アミン(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどの単環式脂肪族ポリアミン;ノルボルナンジアミンなどの架橋環式ポリアミンなど)、芳香脂肪族ポリアミン(例えば、キシリレンジアミンなど)、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミンなど)など]、ポリアミノアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤(例えば、ドデセニル無水コハク酸などの脂肪族系酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族系酸無水物;無水フタル酸などの芳香族系酸無水物など)、フェノール樹脂系硬化剤(例えば、ノボラック樹脂など)などが挙げられる。これらの硬化剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
硬化剤の割合は、エポキシ樹脂成分全体(フルオレンエポキシ化合物及び他のエポキシ化合物)のエポキシ基1当量に対して、硬化剤の官能基が0.5〜3.0当量、好ましくは0.7〜1.5当量、さらに好ましくは0.8〜1.2当量となるように調整してもよい。
また、エポキシ系接着剤組成物は硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、例えば、アミン類[例えば、第3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザミシクロ[5.4.0]ウンデセン−1など)、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾールなど)及びその誘導体(例えば、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などの塩)など]、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、ホスフィン類、アミド化合物(例えば、ダイマー酸ポリアミドなど)、ルイス酸錯体化合物(例えば、三フッ化ホウ素・エチルアミン錯体など)、硫黄化合物[例えば、ポリサルファイド、メルカプタン化合物(チオール化合物)など]、ホウ素化合物(例えば、フェニルジクロロボランなど)、縮合性有機金属化合物(例えば、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物など)などが挙げられる。これらの硬化促進剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
硬化促進剤の割合(添加量)は、エポキシ化合物成分(フルオレンエポキシ化合物及び他のエポキシ化合物)の総量100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは5〜10重量部程度であってもよい。
なお、エポキシ系接着剤組成物は、光重合開始剤(カチオン重合開始剤、光酸発生剤)を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、例えば、ブレンステッド酸のオニウム塩[例えば、4−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどの芳香族ジアゾニウム塩;トリフェニルスルホニウムトリフレート(又はトリフルオロメタンスルホナート)などの芳香族スルホニウム塩;ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどの芳香族ヨードニウム塩など]、ブレンステッド酸の鉄芳香族化合物塩[例えば、(η−イソプロピルベンゼン)(η−シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートなど]などが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。使用する光重合開始剤の割合は、エポキシ樹脂成分全体(フルオレンエポキシ化合物及び他のエポキシ化合物)100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部程度であってもよい。
また、エポキシ系接着剤組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、特に限定されず、前記アクリル系接着剤組成物において例示した溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
溶媒の使用量は、エポキシ化合物成分(フルオレンエポキシ化合物及び他のエポキシ化合物)の総量100重量部に対して、0〜10000重量部程度の範囲から選択でき、例えば、100〜2000重量部、好ましくは200〜1000重量部程度であってもよい。
さらに、エポキシ系接着剤は、慣用の添加剤、例えば、前記アクリル系接着剤組成物において例示した添加剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
また、前記アクリル系接着剤組成物及びエポキシ系接着剤組成物は、組成物中に熱重合開始剤又は硬化剤を含む熱硬化性接着剤と、光重合開始剤を含む光硬化性接着剤とに分類できる。本発明では、前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、硬化物において粘着性を発現できるため、前記接着剤(例えば、OCR)に代えて、粘着剤としてOCAを用いて、基板と被着体とを接着してもよい。
[粘着剤の構成]
粘着剤(又は粘着層)は、少なくとも前記フルオレン化合物の重合体を含んでおり、フルオレン化合物は、前記フルオレンエポキシ化合物であってもよいが、粘着性の観点から、前記フルオレン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。前記フルオレン化合物の重合体は、前記フルオレン(メタ)アクリレート化合物の単独重合体であってもよいが、必要であれば、硬化により粘着性を発現する重合性単量体、例えば、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなど)などとの共重合体であってもよい。重合体中の全モノマーに対する前記フルオレン化合物の割合は、30〜100重量%程度の範囲から選択でき、例えば、50〜95重量%、好ましくは60〜90重量%(例えば、70〜85重量%)程度であってもよい。
また、必要に応じて、エラストマー成分(例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリイソブチレン、シリコーンゴムなど)を含んでいてもよく、前記フルオレン化合物を構成単位に含む重合体とエラストマー成分との割合は、前者/後者(重量比)=30/70〜100/0程度の範囲から選択でき、例えば、50/50〜95/5、好ましくは60/40〜90/10(例えば、70/30〜85/15)程度であってもよい。
さらに、本発明の効果を害しない範囲において、他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、粘着付与剤、軟化剤(可塑剤)、老化防止剤、充填剤などが挙げられる。添加剤の含有量は、前記フルオレン化合物を構成単位に含む重合体とエラストマー成分との総量100重量部に対して、例えば0〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは4〜10重量部程度であってもよい。
前記熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、及び粘着剤のうち、生産性などの観点から、光硬化性接着剤が好ましい。
[基板、被着体]
本発明において、基板及び被着体は、それぞれ剛直(又は硬質)であってもよくフレキシブルであってもよい。基板は、硬質な基板、例えば、セラミック基板(例えば、ガラス(例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどのケイ酸塩ガラスなどの)基板、アルミナ基板(例えば、サファイアガラス基板など)、シリコン基板など)、金属基板(例えば、銅基板、アルミニウム基板、銀基板など)、プラスチック基板(例えば、ポリメチルメタクリレート基板、ポリオレフィン基板、ポリカーボネート基板(例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート基板など)、ポリエステル基板(例えば、ポリエチレンテレフタレート基板など)など)であってもよい。また、基板は、フレキシブル基板、例えば、金属箔などの薄膜状金属基板、プラスチックフィルム基板(光学フィルム基板など)などであってもよい。好ましい基板としては、例えば、セラミック基板[例えば、透明導電膜積層ガラス基板、カバーガラス(例えば、ディスプレイデバイスなどの表面カバーガラスなど)など]、導光板、フレキシブルプリント配線板などが例示できる。
なお、基板及び被着体の少なくとも一方の部材には、ITO(インジウム錫酸化物)透明導電膜、ハードコート層、光散乱層、防眩層、反射防止層、低屈折率層、アンチニュートンリング層、電気絶縁層、半導体層などの機能層が形成されていてもよい。
被着体も、硬質な被着体であってもよく、フレキシブルな被着体であってもよい。硬質な被着体としては、前述のセラミック基板、金属基板、プラスチック基板などに、機能層が積層されたシートなどが例示できる。フレキシブルな被着体としては、例えば、光学フィルム(例えば、保護フィルム(例えば、ディスプレイデバイスなどの保護フィルム)、ハードコートフィルム、偏光フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、一部反射一部透過フィルム、干渉フィルターフィルム、カラーフィルターフィルム、ホログラムフィルム、回折格子フィルム、アンチニュートンリングフィルム、プリズムシートなど)などが例示できる。
本発明において、基板及び被着体のうち少なくとも一方の部材が透明部材であればよく、他方の部材は不透明又は半透明部材であってもよい。好ましい態様では、基板及び被着体の双方の部材が透明部材であってもよい。より具体的には、セラミック基板と光学フィルムとの組合せなどであってもよい。
本発明の方法では、前記基板と被着体とを接着剤で接着する工程と、この接着工程で得られた接合体又は光学部材(一次光学部材という)を後加工して光学部材(二次光学部材という)を得る工程とを含み、前記接着工程及び後加工工程のうち少なくとも一方の工程で加熱処理し、得られる一次及び二次光学部材の黄変を抑制できる。
[接着工程]
接着工程(又は接着方法)は、基板と被着体とを接着する過程で、前記接着剤又は粘着剤を加熱して接着させる加熱処理を含んでいてもよい。接着工程は、代表的には、3つの工程、すなわち、接着剤又は粘着剤を基板及び/又は被着体に塗布(又は貼付け)する塗布工程と、基板と被着体とを貼り合せる貼り合せ工程と、接着剤を硬化させて接着する硬化工程とを有している。なお、粘着剤で接着する場合は、硬化させなくてもよい。加熱処理の温度は、加熱の目的、接着剤又は粘着剤組成物などに応じて適宜選択でき、例えば、50〜250℃、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃程度であってもよい。
(塗布工程)
塗布工程では、基板及び被着体のうち少なくとも一方に前記接着剤又は粘着剤を塗布(又は貼合わせ)する。通常、基板側に塗布(又は貼合わせ)してもよい。接着剤又は粘着剤は、基板及び/又は被着体の接着面の全面又は部分的に塗布(又は貼合わせ)してもよい。塗布方法は、特に制限されず、慣用の方法、例えば、フローコータ、ロールコータ、ナイフコータ、グラビアコータ、スピンコータ、ホットメルトアプリケータなどの塗布機を使用する方法などであってもよい。
接着剤又は粘着剤で形成された接着層又は粘着層の厚みは0.1〜5000μm(例えば、1〜1000μm)程度の範囲から選択でき、例えば、10〜300μm、好ましくは50〜200μm程度であってもよい。
なお、塗布工程において、接着剤又は粘着剤を加熱処理してもよい。特に、光硬化性接着剤を使用している場合、例えば、無溶媒系接着剤では、加熱下で接着剤の粘度が低下し、塗布時のハンドリング性を向上させるため、ホットメルト方式などを利用して、接着剤を低粘度化して塗布してもよい。加熱処理の温度としては、例えば、50〜150℃、好ましくは70〜120℃、さらに好ましくは80〜100℃程度であってもよい。また、接着剤組成物が溶媒を含む場合、塗布後の加熱処理によって溶媒を除去してもよい。加熱処理の温度としては、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは70〜100℃程度であってもよい。
また、塗布工程は大気雰囲気(空気中)又は不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴンなどの希ガス雰囲気など)で行ってもよい。黄変を抑制するためには、加熱処理を非酸素雰囲気(例えば、前記不活性ガス雰囲気など)でするのが好ましいものの、本発明では、熱黄変を有効に防止できるため、空気中で行ってもよい。
塗布工程は、大気圧下で行ってもよい。なお、加熱処理も前記雰囲気中、及び前記圧力下で行ってもよい。
(貼り合せ工程)
塗布工程の後、基板と被着体とを所望の位置関係で貼り合せることができる。
貼り合せ工程は、ローラ/ロールなどを用いて接着面に対して圧力を作用させて貼り合せてもよく、基材又は被着体の自重で貼り合せてもよい。接着面に作用させる圧力は特に制限されず、例えば、0.01〜10MPa程度の範囲から選択でき、好ましくは0.05〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜1.0MPa程度であってもよい。
なお、貼り合せ工程は、接着剤又は粘着剤を加熱処理しながら行ってもよい。加熱処理により、気泡の混入/生成を抑制できるため、基板と被着体とを密着でき、仮に気泡が生じても除去しやすくなるため好ましい。加熱処理の温度としては、例えば、50〜150℃、好ましくは70〜120℃、さらに好ましくは80〜100℃程度であってもよい。また、接着剤又は粘着剤が溶媒や微量の水分などの揮発性成分を含んでいる場合、加熱処理により乾燥(又は除去)してもよい。加熱処理の温度としては、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは70〜100℃程度であってもよい。
貼り合せ工程も大気雰囲気又は不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴンなどの希ガス雰囲気など)で行ってもよい。
貼り合せ工程は、大気圧下で行ってもよく、減圧下(又は真空下、例えば、1〜3000Pa、好ましくは10〜1000Pa、さらに好ましくは100〜500Pa程度)又は加圧下(例えば、0.03〜3MPa、好ましくは0.05〜2MPa、さらに好ましくは0.1〜1MPa程度で行ってもよい。)で行ってもよい。特に、減圧下で行うと、接着剤又は粘着剤中の気泡を除去でき、気泡の混入を抑制できる。圧力(及び加熱温度)は適宜調整してもよく、例えば、減圧下(及び加熱下)で気泡の除去、及び気泡発生を防止しつつ、基板と被着体とを貼り合せ、その後、オートクレーブなどの加圧下(及び加熱下)で気泡を除去してもよい。なお、加熱処理も前記雰囲気中及び圧力下で行ってもよい。
(硬化工程)
硬化工程では、活性エネルギーを付与して接着剤を硬化させ、基板と被着体とを接着させる。前記活性エネルギーとしては、熱エネルギー及び/又は光エネルギー(紫外線、X線など)が利用でき、接着剤の種類に応じて、適宜選択できる。
熱エネルギーを利用する場合、接着剤を加熱処理によって硬化することができ、加熱処理の温度としては、例えば、50〜250℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度であってもよい。加熱時間は、例えば、5分〜12時間、好ましくは10分〜8時間、さらに好ましくは30分〜4時間程度であってもよい。
また、接着剤を光照射(例えば、紫外線照射)により硬化する場合、光照射エネルギー量は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、50〜10000mJ/cm、好ましくは70〜8000mJ/cm、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm(例えば、500〜3000mJ/cm)程度であってもよい。
なお、光照射により硬化する場合においても、密着性、反応性が向上するため、光照射の前及び/又は後に加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度としては、例えば、50〜250℃、好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは70〜100℃程度であってもよい。
硬化工程(又は加熱処理)は、大気雰囲気又は不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴンなどの希ガス雰囲気など)で行ってもよい。
硬化工程(又は加熱処理)は、大気圧下で行ってもよく、減圧下(又は真空下、例えば、1〜3000Pa、好ましくは10〜1000Pa、さらに好ましくは100〜500Pa程度)で行ってもよい。
また、前記活性エネルギーは複数回に分けて照射して、途中に仮硬化状態を形成してもよい。仮硬化状態により粘度を調整できるため、液だれなどを抑制できる。
このような方法により、基板と被着体とが接着した接合体又は光学部材を得ることができる。得られた接合体又は光学部材は、耐熱黄変性に優れ、高い光透過率を維持することができる。接合体又は光学部材として、代表的には、例えば、ディスプレイデバイス(例えば、タッチパネルディスプレイ、電子ペーパー、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイ)、VFD(真空蛍光ディスプレイ)、SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)、FED(電界放出ディスプレイ)、NED(ナノ・エミッシブ・ディスプレイ)、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなど)などの構成部材であってもよい。
[後加工工程]
本発明の方法では、一次光学部材は、必ずしも接着工程で加熱処理する必要はなく、通常、後加工工程で加熱処理を伴う場合が多い。後加工工程での加熱処理は、例えば、ベーキング処理、真空下、加熱して蒸着する蒸着処理(スパッタリングなどのPVD又はCVDによる薄膜形成処理を含む)、加熱下でのパターン形成処理、切削などにより発熱する処理(半導体加工処理など)、一次光学部材と他の部材(例えば、ディスプレイデバイスの筐体、ケースなど)とを加熱により接着する処理(例えば、本発明の熱硬化性接着剤;エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤などの熱硬化性接着剤で接着する処理など)などであってもよい。加熱処理の温度としては、後加工工程に応じて適宜選択でき、例えば、50〜250℃、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃程度であってもよい。また、加熱処理は大気雰囲気(空気中)又は不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴンなどの希ガス雰囲気など)で行ってもよい。黄変を抑制するためには、加熱処理を非酸素雰囲気(例えば、前記不活性ガス雰囲気など)で行うのが好ましいものの、本発明では、空気中で加熱処理を行っても、熱黄変を有効に防止できる。
[接着剤硬化物又は粘着剤(接着層又は粘着層)の特性]
本発明に使用する接着剤硬化物又は粘着剤(すなわち、接着層又は粘着層)は下記のような特性を有している。
接着剤硬化物又は粘着剤の180℃で5時間加熱前後における光透過率(温度25℃、波長400nm、厚み2.5mm)の差は、例えば、0.1〜20.0%(例えば、1.0〜20.0%)程度の範囲から選択でき、好ましくは3.0〜18.0%(例えば、5.0〜15.0%)、さらに好ましくは8.0〜12.0%(例えば、10.0〜12.0%)程度であってもよい。
接着剤硬化物又は粘着剤のショアC硬度(ASTMD2240に準拠した測定方法)は、例えば、30〜80(例えば、40〜80)程度の範囲から選択でき、好ましくは50〜78(例えば、60〜78)、さらに好ましくは65〜75(例えば、70〜75)程度であってもよい。ショアC硬度が高すぎると、弾力性が減少し、接着層又は粘着層の耐衝撃性が低下するおそれがある。
また、接着剤硬化物又は粘着剤の25℃、波長589nmにおける屈折率は、1.35〜1.90程度の範囲から選択でき、例えば1.40〜1.85、好ましくは1.43〜1.80、さらに好ましくは1.45〜1.80程度であってもよい。特に、1.46〜1.76の範囲であると、セラミック基板(例えば、ガラス基板:おおよそ1.46、サファイアガラス基板:おおよそ1.76など)の屈折率に近いため、一次又は二次光学部材を透過する光の損失を著しく低減できる。接着剤硬化物又は粘着剤は、前記フルオレン化合物を含むため、屈折率が高く、他の成分(例えば、共重合成分、添加剤など)との割合を調整することで、セラミック基板の屈折率に近づけやすい。そのため、得られる光学部材は、耐熱黄変性と光損失低減とを両立できる。
なお、光透過率及びショアC硬度は実施例に記載の方法により測定でき、屈折率は、JIS K7142に準拠してアッベ屈折計(例えば、(株)アタゴ製、多波長アッベ屈折計DR−M2循環式恒温水槽60−C3など)を用いて、温度25℃、589nmでの屈折率を測定できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に評価方法を示す。
(耐熱黄変性)
厚み2.5mmのサンプルを180℃で5時間加熱し、紫外可視吸光光度計((株)島津製作所製、UV−3600)を使用して温度25℃、波長400nmにて測定した光透過率の加熱前後における差を算出した。
(ショアC硬度)
厚み2.5mmのサンプルを使用し、ASTMD2240に準拠した方法にて測定を行った。
実施例1
9,9−ビス(ポリアルコキシアリール)フルオレン骨格を有する多官能性フルオレン化合物として、9,9−ビス(4−アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)フルオレン、すなわち、前記式(1)において、環Z及びZがベンゼン環、基X及びXがアクリロイル基、基Rがエチレン基、m1+m2=11、n1=n2=1、p1=p2=q1=q2=0である化合物(以下、BPEF−9EOAという)を、特許文献1に記載の方法により合成した。
BPEF−9EOA 100重量部と、光重合開始剤としてのイルガキュア184(BASF社製)3重量部とを混合して光硬化性接着剤とし、UV照射(500mJ/cm)を4回繰り返して硬化物を調製した。
耐熱黄変性は10.65%、ショアC硬度は73であった。
比較例1
BPEF−9EOAの代わりに、日立化成(株)製「ファンクリル321A」(ビスフェノールA 1モルに対して、エチレンオキサイドが10モル付加した付加体のジアクリレート)を用いる以外は、実施例1と同様にして硬化物を調製した。
耐熱黄変性は25.34%、ショアC硬度は63であった。
比較例2
BPEF−9EOAの代わりに、共栄社化学(株)製「ライトアクリレート9EGA」(ノナエチレングリコールジアクリレート)を用いる以外は、実施例1と同様にして硬化物を調製した。
耐熱黄変性は39.79%、ショアC硬度は74であった。
評価結果から明らかなように、9,9−ビス(ポリアルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物を含んでいるためか、比較例に比べ、実施例では加熱前後の光透過率の差が小さく、耐熱黄変性に優れていた。
本発明は、接着剤又は粘着剤(特に、OCR又はOCA)、すなわち、[基板、被着体]の項に例示した透明部材などの接着に好適に利用できる。また、一次(又は二次)光学部材は、特に、ディスプレイデバイスなどに好適に利用できる。

Claims (12)

  1. 少なくとも一方が透明である基板と被着体とを接着剤又は粘着剤で接着する接着工程、及び接着工程に続く後加工工程のうち少なくとも一方の工程で加熱処理して、得られた光学部材の黄変を抑制する方法であって、前記接着剤又は粘着剤として、下記式(1)で表されるフルオレン化合物を含む熱若しくは光硬化性接着剤又は前記フルオレン化合物の重合体を含む粘着剤を用い、光学部材の黄変を抑制する方法。
    Figure 2016155926
    (式中、Z及びZはそれぞれ芳香族炭化水素環、R2a及びR2bはそれぞれアルキレン基、m1及びm2はそれぞれ2以上の整数、n1及びn2はそれぞれ1以上の整数、R3a及びR3bはそれぞれ反応に不活性な置換基、p1及びp2はそれぞれ0以上の整数、R4a及びR4bはそれぞれ反応に不活性な置換基、q1及びq2はそれぞれ0〜4の整数、X及びXはそれぞれ下記式(2)又は下記式(3)
    Figure 2016155926
    (式中、Rはそれぞれ水素原子又はメチル基を示す。)で表される基を示す。)
  2. 請求項1記載の式(1)において、Z及びZがそれぞれC6−24芳香族炭化水素環、R2a及びR2bがそれぞれC2−4アルキレン基、m1及びm2がそれぞれ3以上の整数、n1及びn2がそれぞれ1〜3の整数、R3a及びR3bがそれぞれアルキル基、p1及びp2がそれぞれ0〜2の整数、q1及びq2がそれぞれ0である請求項1記載の黄変抑制方法。
  3. 請求項1記載の式(1)において、Z及びZがそれぞれベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環から選択された芳香族炭化水素環、R2a及びR2bがそれぞれC2−3アルキレン基、m1及びm2がそれぞれ4以上の整数、n1及びn2がそれぞれ1〜2の整数、R3a及びR3bがそれぞれメチル基、p1及びp2がそれぞれ0又は1、q1及びq2がそれぞれ0、X及びXがそれぞれ前記式(2)で表される基である請求項1記載の黄変抑制方法。
  4. 加熱処理が、100〜200℃で行われる請求項1〜3のいずれかに記載の黄変抑制方法。
  5. 接着剤が光硬化性接着剤である請求項1〜4のいずれかに記載の黄変抑制方法。
  6. 基板及び被着体のうち少なくとも一方の透明な部材が、セラミック基板又は光学フィルムである請求項1〜5のいずれかに記載の黄変抑制方法。
  7. 基板及び被着体のうち少なくとも一方の透明な部材が、サファイアガラス基板である請求項1〜6のいずれかに記載の黄変抑制方法。
  8. 接着工程後の接着層又は粘着層の屈折率(25℃、波長589nm)が1.46〜1.76である、請求項1〜7のいずれかに記載の黄変抑制方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法で黄変が抑制された光学部材。
  10. タッチパネルディスプレイの構成部材である請求項9記載の光学部材。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法で使用するための接着剤であって、前記式(1)で表されるフルオレン化合物を含む熱又は光硬化性接着剤。
  12. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法で使用するための粘着剤であって、前記式(1)で表されるフルオレン化合物の重合体を含む粘着剤。
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