JP5552357B2 - アントラセン誘導体、硬化性組成物及びこの硬化物 - Google Patents

アントラセン誘導体、硬化性組成物及びこの硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、グリシジルエーテル基を有する新規なアントラセン誘導体、これを含む硬化性組成物、及びこの硬化物に関する。
アントラセンは、従来、木材の殺虫剤や保存安定剤、塗料等のほか、エポキシ樹脂やカーボンブラックの製造原料、アントラキノン染料の合成原料等の種々の用途に利用されている。また、アントラセンは、ベンゼン環が3個縮環した構造を有するため、構造的な硬さ、炭素密度の高さ、高融点、高屈折率等の特徴に加え、紫外線照射によってπ電子が作用して蛍光を発する等の有用な特性を有している。かかる特性の更なる活用を図るべく、アントラセンの様々な応用展開が試みられている。これまでも種々のアントラセン誘導体が、多岐にわたる技術分野で付加価値の高い材料として開発されている。
このようなアントラセン誘導体に係る技術としては、例えば、アントラセンの9,10位に(メタ)アクリレート基を導入し重合性モノマーとすることで、光ラジカル重合の増感剤として作用する光硬化ポリマー(特開2007−99637号公報等参照)や、紫外線吸収能や難燃性を有するポリマー(特開2008−1637号公報等参照)を得る技術が提案されている。また、フォトレジストの分野においても、アントラセン誘導体は、高感度、高解像性、高エッチング耐性、低昇華性などの利点を有する感放射線性樹脂組成物(特開2005−346024号公報等参照)や、レジスト樹脂とのインターミキシングを防止する反射防止膜(特開平7−82221号公報等参照)等としての活用が検討されている。さらには、電子輸送材料又は発光材料として、アントラセンを有機感光体(OPC)、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機太陽電池、有機発光ダイオード等の用途へ応用することも検討されている(特開2009−40765号公報等参照)。また、アントラセンが高屈折率を有するという特徴を生かして、光学材料としての利用の他、高屈折率材料、低屈折率材料及び増感色素等を混合し、露光によって干渉縞を記録するホログラム記録材料としての利用も提案されている(特開平6−295151号公報等参照)。
一方、エポキシ樹脂に注目すると、この樹脂は、接着剤、塗料、積層板、成型材料、注型材料、電気・電子部品などの用途に広く使用されている。特に近年のIT分野の急速な発展等に伴い、耐熱性、難燃性、低吸水性、寸法安定性等に優れた、より高付加価値を有するエポキシ樹脂が渇望されている。
高付加価値化されたエポキシ樹脂としては、例えば(1)テトラキスフェノールエタンやフルオレン骨格などの骨格を導入することで耐熱性や貯蔵安定性を向上させた結晶性エポキシ樹脂(特開2007−16114号公報等参照)、(2)ビフェニレン基やキシリレン基などの骨格を導入することで溶融粘度、耐熱性、難燃性を改良したエポキシ樹脂(特開2008−189708号公報等参照)、(3)ジヒドロアントラセン骨格を一部水素化することで、難燃性、耐湿性を改良したエポキシ樹脂(特開2006−249145号公報等参照)などが提案されている。
このように、骨格内に剛直な構造を導入することで耐熱性や難燃性、耐湿性などを改善したエポキシ樹脂が種々検討されている。しかしながらこれらのエポキシ樹脂であってもIT分野を始めとした多様の用途へ応用するにあたっての各種機能性においては未だ改善の余地がある。
特開2007−99637号公報 特開2008−1637号公報 特開2005−346024号公報 特開平7−82221号公報 特開2009−40765号公報 特開平6−295151号公報 特開2007−16114号公報 特開2008−189708号公報 特開2006−249145号公報
本発明は、かかる事情を背景になされたものであり、一般的なエポキシ樹脂としての優れた特性(高耐熱性、高難燃性、高寸法安定性、高耐湿性)を有する硬化物を得ることができ、さらにアントラセン特有の特性(高炭素密度、高融点、高光屈折性及び紫外線に対する蛍光性能等)を備えたアントラセン誘導体、このアントラセン誘導体を含む硬化性組成物、及び上述のような性質を備える硬化物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
下記式(1)で表されるアントラセン誘導体である。
(式(1)中、Xは、(n+1)価の芳香族基であり、この芳香族基が置換基を有していてもよい。Yは、(n+1)価の芳香族基であり、この芳香族基が置換基を有していてもよい。n及びnは、それぞれ独立して、1〜3の整数である。)
当該アントラセン誘導体は、アントラセン骨格を有するため、アントラセン特有の諸特性、例えば高炭素密度、高融点、高光屈折性及び紫外線に対する蛍光性能等を備える。また、当該アントラセン誘導体は、2つ以上のグリシジルエーテル基を有するため、通常、エポキシ樹脂組成物に用いられる硬化剤との高い反応性を有し、耐熱性、難燃性、寸法安定性、耐湿性等に優れた硬化物を得ることができる。
当該アントラセン誘導体は、上記X及びYがフェニレン基であり、n及びnが1であるとよい。当該アントラセン誘導体は、上記諸特性をより高めることができ、また、この誘導体を含む組成物から得られる硬化物に優れた靭性を付与することができる。また、このような構造のアントラセン誘導体は、この化合物自体及びこの化合物からの硬化物を効率よく製造することができる。
本発明の硬化性組成物は、上記アントラセン誘導体及び/又はこのアントラセン誘導体から得られる重合体を含むものである。当該硬化性組成物からは、耐熱性、難燃性、寸法安定性、耐湿性等に優れ、かつ蛍光特性などのアントラセン骨格を有する化合物に特有な性質をも兼ね備えた硬化物を得ることができる。
また、当該硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、上記諸特性に優れており、多くの分野へ活用可能である。
以上説明したように、本発明のアントラセン誘導体は、アントラセン特有の諸特性、例えば高炭素密度、高融点、高光屈折性及び紫外線に対する蛍光性能等を備える。さらに、当該アントラセン誘導体は、アントラセン特有の上記諸特性を備えた上で、グリシジルエーテル基に起因する高い反応性を示すため、優れた特性(高耐熱性、高難燃性、高寸法安定性、高耐湿性)を有する硬化物を得ることができる。
従って、本発明のアントラセン誘導体、これを含む硬化性組成物及びこの硬化物は、汎用性に優れ、さらに材料の高機能化や新たな特性の付与に極めて効果的である。当該アントラセン誘導体を含む硬化性組成物及びこの硬化物は、例えば接着剤、塗料、積層板、成型材料、注型材料、半導体封止材料、プリント基板絶縁材料、コーティング材料、光学材料、構造材料、フォトレジスト原料等の多岐の技術分野での応用展開をはかることができる。
実施例1のアントラセン誘導体のH−NMRチャートを示す図である。 実施例1のアントラセン誘導体の13C−NMRチャートを示す図である。 実施例1のアントラセン誘導体の吸収スペクトルを示す図である。 実施例1のアントラセン誘導体の蛍光スペクトルを示す図である。
以下、本発明の実施形態をアントラセン誘導体、これを含む硬化性組成物及びこの硬化物の順に詳説する。
<アントラセン誘導体>
本発明のアントラセン誘導体は、上記式(1)で表される化合物である。
上記式(1)中、X及びYで表される芳香族基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン等の芳香族炭化水素から、水素原子を(n+1)個又は(n+1)個除いた基等が挙げられる。
上記X及びYで表される芳香族基は、どちらも置換基を有していてもよいが、これらの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシル基等が挙げられる。これらの置換基は、X及びY毎に、1又は複数であってもよい。なお、X及びYの価数としては、これらの置換基の有無及び置換基の数に依存せず、(n+1)価又は(n+1)価である。
上記アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、単環状若しくは縮合多環状アルキル基、又は1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状若しくは縮合多環状アルキル基等が挙げられる。
直鎖状、分岐鎖状、単環状又は縮合多環状アルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基等が挙げられる。
また、1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状アルキル基の具体例としては、−CH−O−CH、−CH−CH−O−CH−CH、−CH−CH−CH−O−CH−CH、−(CH−CH−O)m1−CH(ここでm1は1〜8の整数である)、−(CH−CH−CH−O)p1−CH(ここでp1は1〜5の整数である)、−CH−CH(CH)−O−CH−CH、−CH−CH−(OCH等が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、直鎖状、分岐鎖状、単環状若しくは縮合多環状アルコキシ基、又は1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状若しくは縮合多環状アルコキシ基等が挙げられる。
直鎖状、分岐鎖状、単環状若しくは縮合多環状アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
また、1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状アルコキシ基の具体例としては、−O−CH−O−CH、−O−CH−CH−O−CH−CH、−O−CH−CH−CH−O−CH−CH、−O−(CH−CH−O)m2−CH(ここでm2は1〜8の整数である)、−O−(CH−CH−CH−O)p2−CH(ここでp2は1〜5の整数である)、−O−CH−CH(CH)−O−CH−CH、−O−CH−CH−(OCH等を挙げることができる。
上記アリール基としては、置換基を有していてもよい芳香環から1つの水素を除いた基が挙げられ、具体例としてはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、9−アンスリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、1−アセナフチル基、2−フルオレニル基、9−フルオレニル基、3−ペリレニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,5−キシリル基、メシチル基、p−クメニル基、p−ドデシルフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、p−シクロヘキシルフェニル基、4−ビフェニル基、o−フルオロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−カルボキシフェニル基、o−メルカプトフェニル基、p−シアノフェニル基、m−ニトロフェニル基、m−アジドフェニル基等を挙げることができる。
上記アルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状、単環状又は縮合多環状アルケニル基等が挙げられ、それらは構造中に複数の炭素−炭素二重結合を有していてもよく、具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基等を挙げることができる。
上記X又はYとして、置換基を有する芳香族基を備えるアントラセン誘導体は、当該アントラセン誘導体の特徴を維持したまま、さらに機能を付加又は調整することができる。例えば、X又はYにおいて、置換基としてアルキル基を有する芳香族基を備える当該アントラセン誘導体によれば、当該アントラセン誘導体の反応性を低下させることなく屈折率や融点等を調整することができる。なお、この置換アルキル基としては、当該アントラセン誘導体の立体配置安定性の点から、低分子量であることが好ましく、具体的には炭素数が5以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
また、X又はYにおいて、置換基としてヒドロキシル基を有する芳香族基を備えるアントラセン誘導体によれば、ヒドロキシル基の存在によって溶解特性が優れ、また、多様な反応が可能となるため様々な用途に用いることができる。例えば、このX又はYにおいて置換基としてヒドロキシル基を有する芳香族基を備えるアントラセン誘導体からは、(メタ)アクリル酸等と反応させて、グリシジル(メタ)アクリレートを得ることができる。このグリシジル(メタ)アクリレートは、構造内に残存した水酸基を有する場合、溶解特性や硬化特性の優れた(メタ)アクリレート誘導体として使用することができる。
上記X又はYで表される芳香族基の中でも、高屈折性、高炭素密度、高融点の点から、置換基を有さないベンゼン及びナフタレンから水素原子を(n+1)個、又は(n+1個)除いてなる基が好ましく、置換基を有さないベンゼンから水素原子を(n+1)個、又は(n+1)個除いてなる基がさらに好ましい。またXとYとは、異なっていてもよいが高光屈折性、製造の容易さ等の点から、同一であることが好ましい。
上記式(1)中の、n及びnは、1〜3の整数であるが、合成の容易性、硬化の制御性及び得られる硬化物の靭性等の点から、n及びnともに、1又は2が好ましく、1がさらに好ましい。
当該アントラセン誘導体において、n及びnがともに1であり、X及びYが置換基を有さないベンゼンから水素原子を2個除いた基(フェニレン基)であるものが、高炭素密度、高融点、高光屈折性、得られる硬化物の靭性等の点、並びに合成の容易性及びこの化合物からの硬化物の製造性において好ましい。また、この場合は、高融点、製造の容易さ等の点から、フェニレン基におけるグリシジルエーテル基が、アントラセン骨格に対してそれぞれパラ位に位置することが好ましい。
当該アントラセン誘導体としては、具体的には、以下の式(1−1)〜(1−4)を例示することができる。
当該アントラセン誘導体は、このようにアントラセン骨格を有することによりアントラセン特有の諸特性である高炭素密度、高光屈折性、高融点及び紫外線に対する蛍光性能等を備えている。
上記の各特性の中でも、例えば光屈折率においては、当該アントラセン誘導体は、グリシジルエーテル基を有するビスフェノールフルオレン等のフルオレン化合物と比しても、アントラセン骨格を備えていることで同等以上の高屈折率を有している。具体的には、当該アントラセン誘導体の屈折率は1.6以上2.0以下である。なお、当該アントラセン誘導体の屈折率、その他炭素密度、融点等は、X及びYで示される置換基を選択すること等で調整することができる。
当該アントラセン誘導体は、複数のグリシジルエーテル基を有することから、アントラセン特有の諸特性を備えた上で、熱硬化性等の多官能エポキシ化合物が備える多様な反応性を有する。
従って、当該アントラセン誘導体によれば、硬化性組成物であるいわゆるエポキシ樹脂組成物に主剤、または添加剤として用いることで、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物に高い性能を付与することができる。特に、当該アントラセン誘導体は、芳香環がアントラセン環の9位及び10位に配置されていることで、対称性が高く、また、2つ以上のグリシジルエーテル基を架橋させる事でポリマーの主鎖内にアントラセン骨格を導入することが可能である。従って、当該アントラセン誘導体によれば、アントラセン骨格に由来する剛直さを生かした機械的特性に優れたポリマーを得ることができ、かつアントラセン骨格の短軸となる9位及び10位に芳香環が配置されているため、ポリマー骨格へ導入された際、当該ポリマーが極めて高い炭素密度を有する等の特有な機能が発揮される。
<アントラセン誘導体の製造方法>
本発明のアントラセン誘導体は、非反応性含酸素有機溶媒及び酸触媒の存在下で、フェノール類とアントラセン−9−カルボアルデヒドとを反応させ、ビスフェノールアントラセン化合物を得る第一工程、及び、得られたビスフェノールアントラセン化合物を塩基性触媒の存在下でエピクロロヒドリンと反応させる第二工程により製造される。
<第一工程>
この製造方法の第一工程におけるフェノール類とは芳香環上にヒドロキシル基を有する化合物をいい、フェノール系化合物、ナフトール系化合物等が挙げられる。上記フェノール系化合物とは、フェノール及び芳香環上の水素が他の置換基に置換されたフェノールをいう。上記置換基としては、アルキル基やヒドロキシル基等が挙げられる。この置換基の数としては、アントラセン−9−カルボアルデヒドとの反応性から、4以下が好ましく、2以下が更に好ましく、0が特に好ましい。また、アントラセン−9−カルボアルデヒドとの反応性から、ヒドロキシル基のパラ位に置換基が配置されていないことが好ましい。
上記フェノール系化合物としては例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、2−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、チモール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール、レゾルシン、2−メチルレゾルシン、カテコール、4−メチルカテコール、ハイドロキノン、ピロガロール等が挙げられる。
上記ナフトール系化合物とは、ナフトール及び芳香環上の水素が他の置換基に置換されたナフトールをいう。上記置換基としてはアルキル基やヒドロキシル基等が挙げられる。この置換基の数としては、アントラセン−9−カルボアルデヒドとの反応性の点から、6以下が好ましく、2以下が更に好ましく、0が特に好ましい。
上記ナフトール系化合物としては、1−ナフトール、2−ナフトール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
なお、上記フェノール類は、特にこれらに限定されるものではなく、所望する本発明のアントラセン誘導体の構造に応じて適宜選択される。例えば、上記フェノール類としてフェノールを選択することで、上記式(1)におけるX及びYがフェニレン基であるアントラセン誘導体を製造することができる。なお、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、このフェノール類の配合量の下限としては、アントラセン−9−カルボアルデヒド1モルに対し2モルが好ましく、4モルがさらに好ましい。このフェノール類の配合量の上限としては、アントラセン−9−カルボアルデヒド1モルに対し100モルが好ましく、50モルがさらに好ましく、20モルが特に好ましい。フェノール類の配合量が上記下限未満では、原料の高次縮合物が生成する等の所望でない副反応が生じることがあり、精製に多大なエネルギーを要し、逆に上記上限を超えると未反応のフェノール類を除去するのに多大なエネルギーを要する為、共に非経済的である。
本製造方法の第一工程においては、反応溶媒として、分子中に1以上の酸素原子を備える非反応性含酸素有機溶媒を用いるとよい。なお「非反応性」とは、この反応系におけるフェノール類、アントラセン−9−カルボアルデヒド及び合成されるアントラセン誘導体とは反応しないことをいう。この非反応含酸素有機溶媒としては、例えばアルコール類、多価アルコール系エーテル、環状エーテル類、多価アルコール系エステル、ケトン類、エステル類、スルホキシド類、カルボン酸類等を用いることができる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の一価アルコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の二価アルコール、グリセリン等の三価アルコールが挙げられる。
多価アルコール系エーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。
環状エーテル類としては、例えば、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。多価アルコール系エステルとしては、例えば、エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル類が挙げられる。ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。アルキルエステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。スルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等が挙げられる。カルボン酸類としては、例えば、酢酸等が挙げられる。
これらの中でもアルコール類及び多価アルコール系エーテルが好ましく、メタノール、エチレングリコール及びエチレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
非反応性含酸素有機溶媒は、上記の例示に限定されず、また、それぞれを単独又は2種以上を混合して用いても良い。非反応性含酸素有機溶媒の配合量の下限としては、フェノール類100質量部に対して、1質量部が好ましく、5質量部が更に好ましく、10質量部が特に好ましい。また、非反応性含酸素有機溶媒の配合量の上限としては、フェノール類100質量部に対して、1000質量部が好ましく、500質量部が更に好ましく、10質量部が特に好ましい。非反応性含酸素有機溶媒の配合量が上記下限未満であると、反応副生物の生成が顕著となり、生産性が低下するおそれがある。逆に、非反応性含酸素有機溶媒の配合量が上記上限を超えると、反応速度が低下し、生産性が低下するおそれや、その結果精製エネルギーが増大するおそれがある。
本製造方法の第一工程における酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、過塩素酸などの無機酸、蓚酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸などの有機酸、強酸性イオン交換樹脂等を挙げることが出来る。これらの触媒は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、メルカプト酢酸等の反応助触媒を併用しても良い。酸触媒の使用量としては、反応が適当に進む範囲で適宜設定すればよいが、一般的には、フェノール類100質量部に対して、0.1〜20質量部である。
この製造方法第一工程の反応工程は、上記のフェノール類、アントラセン−9−カルボアルデヒド、非反応性含酸素有機溶媒及び酸触媒を反応容器に投入して、所定時間撹拌して行われる。なお、上記反応容器への投入物の投入順序は問わない。
この製造方法第一工程の反応工程における反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは25〜60℃の範囲で行われる。反応温度が低すぎると、反応時間が長くなる可能性があり、一方、反応温度が高すぎると、高次縮合物及び異性体等の反応副生物の生成が助長され、当該アントラセン誘導体の純度が低下する可能性がある。
この製造方法第一工程の反応工程における反応容器内の圧力は、通常は常圧であるが、加圧又は減圧で行っても良く、具体的には内部圧力(ゲージ圧)が−0.02〜0.2MPaの範囲であることが好ましい。
この製造方法第一工程の反応工程における反応時間は、用いるフェノール類、非反応性含酸素有機溶媒の種類と量、原料モル比、反応温度、圧力等に左右され、一概に定めることは出来ないが一般的には、1〜48時間の範囲であることが好ましい。
この製造方法第一工程の反応終了後、生成物を抽出し、酸触媒の除去を行う。この触媒除去の方法としては、一般的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の非水溶性有機溶媒に生成物を溶解し、水洗により除去を行うが、その他中和処理を行った後析出した中和塩を濾別する方法や、アニオン性充填剤の詰まったカラムに反応液を通過させる方法等、特に制限はない。
この製造方法第一工程においては触媒除去後、精製によりビスフェノールアントラセン化合物を取り出す。一般的には、目的物に対して貧溶媒として作用し、その他の副生成物や未反応原料には良溶媒として作用する溶媒(キシレン等)を添加し、析出させた後、濾別、乾燥する方法や、カラムクロマトグラフィーによる方法等によって第一工程の目的物であるビスフェノールアントラセン化合物を精製することができる。
<第二工程>
本製造方法の第二工程においては、第一工程で得られたビスフェノールアントラセン化合物を塩基性触媒の存在下でエピハロヒドリンと反応させることにより製造される。
本製造方法の第二工程における塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。これらの塩基性触媒の中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。この水酸化ナトリウムは、通常、水溶液として使用するが、48%水溶液のような高濃度水溶液で使用することが好ましい。この塩基性触媒の使用量としては、ビスフェノールアントラセン化合物1モルに対して0.1〜10モルであり、好ましくは、1〜6モルである。なお、反応の進行による発熱を制御するため、触媒の分割添加を行うことが好ましい。
本製造方法の第二工程におけるエピハロヒドリンの配合量は、ビスフェノールアントラセン化合物1モルに対して、2.0〜30.0モルであり、好ましくは、10.0〜20.0モルである。上記エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられるが、エピクロロヒドリンが好ましい。
本製造方法の第二工程における反応温度は、−10〜100℃が好ましく、さらに好ましくは、25〜70℃である。反応時間は、触媒量、反応モル比、反応温度、圧力等に依存するため一概に定めることは出来ないが、通常12時間以内であることが好ましい。
本製造方法の第二工程における反応圧力は、通常は常圧であるが、加圧又は減圧下で反応を行っても良く、具体的には内部圧力(ゲージ圧)が−0.02〜0.2MPaが好ましい。
本製造方法第二工程においては、反応物であるビスフェノールアントラセン化合物の溶解性を高めるため、反応溶媒を用いても良い。この反応溶媒としては、副反応を起こさない限りにおいて特に制限はないが、一般的にはアルコール類が好ましく、その中でも特にメタノールが好ましい。この反応溶媒の使用量としては、ビスフェノールアントラセン化合物100質量部に対して、0〜200質量部が好ましい。
本製造方法第二工程の反応終了後、塩基性触媒の除去を行う。この触媒除去の方法としては、一般的には純水を投入して撹拌し、静置後水層の除去を行う方法が挙げられる。この操作をpHが6〜7になるまで複数回行うことが好ましい。
この製造方法第二工程においては、塩基性触媒除去後、減圧蒸留によりエピハロヒドリンの除去を行うことで、樹脂状の目的物(アントラセン誘導体)を得ることが出来る。また、得られた樹脂状体を粗砕し、アルコール類とともに撹拌し、濾過、乾燥して精製することで、より高純度な結晶体の目的物を得ることができる。この際に用いられるアルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられるが、一般的にはメタノールが好ましく、その使用量は、理論収量に対し、1〜30倍が好ましく、より好ましくは、10〜20倍である。
<硬化性組成物>
当該硬化性組成物は、当該アントラセン誘導体及び/又はこのアントラセン誘導体から得られる重合体を含む多官能エポキシ化合物並びに必要に応じて硬化剤等を配合してなるものであり、目的に応じて調整することができる。このアントラセン誘導体から得られる重合体は、上記アントラセン誘導体が熱により架橋した重合体や、上記アントラセン誘導体と他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。
上記硬化剤としては、一般のエポキシ樹脂用の硬化剤が用いられ、例えば、多価フェノール類、酸無水物類、アミン類、イミダゾール類等を挙げることができる。
上記多価フェノール類としては、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノール−F、ビスフェノール−A、ビフェノール、フェノールノボラック類、クレゾールノボラック類、キシレノールノボラック類、ビスフェノール−Aノボラック類、トリスフェノールメタン類、テトラキスフェノールエタン類、アラルキルポリフェノール類、ジシクロペンタジエンポリフェノール類、環化ポリブタジエンポリフェノール類などが挙げられる。
上記酸無水物類としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の環状脂肪族酸無水物類などが挙げられる。
上記アミン類としては、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン等の脂肪族及び脂環族アミン類、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン類、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−アザビシクロ[4.3.0]−ノネン−7等の3級アミン類及びその塩類などが挙げられ、またこれらのBF錯体化合物も挙げることができる。
上記イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
また、その他の硬化剤として、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。
当該硬化性組成物に含有される多官能エポキシ化合物としては、当該アントラセン誘導体以外に、他の多官能エポキシ化合物を併用してもよい。他の多官能エポキシ化合物としては、例えばノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノール型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。なお、これらの化合物は、単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
当該硬化性組成物は、必要に応じて、硬化促進剤を含有してもよい。この硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、オクチル酸スズ等が挙げられる。この硬化促進剤の含有量としては、多官能エポキシ化合物100質量部に対して5質量部以下が好ましい。
当該硬化性組成物は、必要に応じて、無機充填剤を含有してもよい。この無機充填剤としては、球状又は破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、ガラス粉末、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ等が挙げられる。この無機充填剤の含有量としては、当該硬化性組成物中に、90質量%以下が好ましい。
当該硬化性組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えばシランカップリング剤、イオン吸着体、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ステアリン酸、パルチミン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、有機系又は無機系の体質顔料、鱗片状顔料などを挙げることができる。
当該硬化性組成物は、得られる硬化物が高耐熱性、高難燃性、高寸法安定性、高耐湿性等に優れ、さらには、アントラセン特有の高光屈折性及び蛍光特性等を備えているため、例えば、接着剤、塗料、成型材料、注型材料、半導体封止材料、プリント基板絶縁材料、コーティング材料、光学材料、構造材料、フォトレジスト原料等の多岐の技術分野で利用することができる。
<硬化物>
当該硬化物は、上記硬化性組成物を加熱することによって得ることができる。この硬化物の具体的な形成方法としては、例えば、当該硬化性組成物をニーダー、ロール、押出し機等で均一に混合し、トランスファー成型器や金型を用いて成型した後、80〜250℃で1〜24時間程度加熱する方法を挙げることができる。
また、当該硬化性組成物を有機溶剤に溶解し、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙等の基材に含浸させ、加熱して得られたプリプレグをプレス成型して得てもよい。
当該硬化物は、一般的なエポキシ樹脂としての優れた特性(高耐熱性、高難燃性、高寸法安定性、高耐湿性)を有する硬化物を得ることができ、さらにアントラセン特有の特性(高炭素密度、高光屈折性及び紫外線に対する蛍光性能等)を備えている。従って当該硬化物は、積層板、構造材、半導体封止材、プリント基板絶縁材、各種光学材料等、様々な分野において利用することができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、本実施例によってなんら限定されるものではない。なお、得られたアントラセン誘導体及び硬化物の測定は下記測定機器及び測定方法により行った。
<GPC純度>
GPC純度は、東ソー製HLC−8220型GPC、RI検出器、TSK−Gel SuperHZ2000+HZ1000+HZ1000(4.6mmφ×150mm)カラムを用い、展開溶媒としてテトラヒドロフランを0.35mL/分で送液し、目的物ピークの面積比によって求めた。
<HPLC純度>
HPLC純度及び反応の終点確認は、島津製作所製HPLC Prominenceシリーズ、UV検出器SPD−20A(246nm)、GLサイエンス製ODS−3(4.6mmφ×250mm)カラムを用い、展開溶媒として水/アセトニトリル=25/75を1.0mL/分で送液し、目的物ピークの面積比によって求めた。
<融点及びガラス転移温度(Tg)>
融点は、リガク製DSC8230型示差走査熱量計にて、窒素雰囲気下5℃/分の昇温速度によるピークトップ法にて求めた。また、ガラス転移温度は同様の条件で測定し、中点ガラス転移温度を求めた。
<残炭率>
残炭率と酸素指数とは比例関係があり、一般的に難燃性の高い樹脂は残炭率が高いと言われている(下記文献1参照)。この文献を参照し、難燃性の指標として残炭率を測定した。測定方法は、リガク製TG8230型示差熱天秤にて、窒素雰囲気下10℃/分の昇温速度で830℃までの測定を行い、質量減少率(%)を100%から減じた数値で求めた。
(文献1)『Krevelen酸素指数と高分子の炭化の程度(Char Residue)に直線関係がある事を確認した。D.W.van Krevelen,polymer,16,p615(1975)D.W.van Krevelen,Chimia,28,p504(1974)』
H−NMR及び13C−NMR>
H−NMR及び13C−NMRは、バリアン社製UNITY−INOVA 400MHzを用い、TMSを基準物質としてDMSO−d6溶媒で測定した。
<屈折率>
屈折率は、京都電子工業製RA−520N型屈折率計を用い、25℃にて1質量%、5質量%及び10質量%の各濃度でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解して測定し検量線を作成して100質量%時の換算屈折率を求めた。
<吸収スペクトル及び蛍光スペクトル>
吸収スペクトルは、日本分光製分光光度計V−570を用いて1×10−5mol/L濃度でDMSOに溶解して測定を行い、蛍光スペクトルは、日立ハイテクノロジーズ社製蛍光分光光度計F−4010を用い、1×10−5mol/L濃度でDMSOに溶解して極大波長で励起させて測定を行った。また、アズワン製ハンディーUVランプSLUV−4を用いて、365nmの紫外線を照射し、発光の有無を観察した。
<吸水率>
吸水率は、硬化物を10mm×10mm×2.5mmの試験片に切り出し、8時間熱水中で煮沸した後の質量増加量(質量%)を測定して求めた。
<線膨張率係数>
線膨張係数は、寸法安定性を確認するための測定であり、硬化物を2.5mm×3.0mm×15.0mmの試験片に切り出し、リガク製TMA8141BS型熱機械測定装置にて、Air雰囲気下5℃/分の昇温速度で300℃までの試験片の長さの測定を行い、30℃〜280℃の範囲の平均熱膨張率(ppm/℃)を求めた。
[合成例1]
300mLの還流管付き反応容器にフェノール(112.8g,1.20mol)、アントラセン−9−カルボアルデヒド(49.4g,0.24mol)及びメタノール(11.3g)を入れ、40℃にて溶解した。濃硫酸(5.6g)を投入し、40℃で24時間反応を行った。次いで、反応液をメチルイソブチルケトン(169.2g)に溶解し、蒸留水(56.4g)にて水洗を数回行って触媒を除去した。減圧下にて、メチルイソブチルケトン及びフェノールを留去した後、キシレン(169.2g)及び蒸留水(11.3g)投入して10℃で攪拌した。析出した結晶を濾別後、減圧乾燥を行って、淡黄色の9−(4−ヒドロキシベンジル)−10−(4−ヒドロキシフェニル)アントラセン48.3g(収率53.3%)を得た。
[実施例1(アントラセン誘導体の合成)]
1Lの還流管付き反応容器に上記合成例1で得られた結晶(56.4g,0.15mol)、メタノール56.4g、エピクロロヒドリン(222.0g,2.4mol)を入れ、60℃で溶解した後、48%苛性ソーダ(25.0g,0.30mol)を滴下ロートより30分かけて滴下し、60℃で9時間反応を行った。次いで、114gの純水にて4回水洗した後、有機層を減圧下にて濃縮し、樹脂状の目的物を得た。放置冷却した樹脂状物を、乳鉢にて粗砕し、540gメタノールとともに撹拌して結晶を析出させ、濾過、乾燥して淡黄色の結晶67.7gを得た。
得られた結晶は、GPC純度94.3%、HPLC純度99.0%、融点155℃、換算屈折率1.653(25℃)、エポキシ当量248であり、H−NMR(400MHz,DMSO−d6,δ,ppm/2.6,2.76,2.78,2.9,3.2,3.4,6H,Oxirane−/3.7,4.0,4.2,4.4,4H,−O−C −Oxirane/5.0,2H,−C −/6.8,7.1,7.2,7.3,8H,Phenyl−/7.4,7.5,7.6,8.3,8H,Anthryl−)及び13C−NMR(400MHz,DMSO−d6,δ,ppm/32.0,−−/44.0,44.1,49.9,50.0,Oxirane−/69.1,69.3,−O−−Oxirane/114.7,114.8,129.2,129.7,132.4,132.8,156.7,157.9,−Phenyl/125.3,125.4,126.0,127.3,130.1,130.8,133.6,136.1,−Anthryl)にて9−(4−ヒドロキシベンジル)−10−(4−ヒドロキシフェニル)アントラセンジグリシジルエーテルであることを確認した。図1にH−NMRチャート、図2に13C−NMRチャートを示す。また、UVランプ(365nm)照射時の青色の発光を目視にて確認した。図3に吸収スペクトル、図4に蛍光スペクトル(励起波長:381nm)を示す。
[実施例2(硬化性組成物の調製及び硬化物の形成)]
実施例1で得られた結晶20.0g、硬化剤として無水メチルヘキサヒドロフタル酸(12.2g)を量り取り、180℃の熱板上で溶融混合した。さらに硬化促進剤として1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール(0.1g)を加え、充分に撹拌、脱泡して硬化性組成物を得た。
上記にて調製した硬化性組成物を金型に流し込み、100℃で45分間減圧脱気した後に、常圧から0.01kgf/cmの圧力をかけ、100℃(3時間)、次いで150℃(5時間)かけて硬化させた後、220℃で3時間アフターキュアを行って硬化物を得た。
得られた硬化物を各種測定方法のサイズに切り取り、特性の評価を行ったところ、ガラス転移温度211℃、線膨張係数93ppm/℃、吸水率0.55%、残炭率12.74%であった。
[比較例1]
ビスフェノール−A型エポキシ樹脂の市販品であるアデカレジンEP−4100[商品名:株式会社ADEKA製/エポキシ当量190]を入手し、換算屈折率を測定したところ、1.572(25℃)であった。また、UVランプ(365nm)照射を行ったが、目視では発光は確認できなかった。
[比較例2]
実施例2において、実施例1で得られた結晶(20.0g)を比較例1で測定したEP−4100(20.0g)、無水メチルヘキサヒドロフタル酸(12.2g)を(15.9g)とした以外は実施例2と同様の操作を行い、エポキシ樹脂硬化物を得た。
得られた硬化物を前述した各種測定方法のサイズに切り取り、特性の評価を行った所、ガラス転移温度150℃、線膨張係数118ppm/℃、吸水率0.68%、残炭率2.57%であった。
[比較例3]
ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品であるYX4000[商品名:ジャパンエポキシレジン株式会社製/エポキシ当量186]を入手し、換算屈折率を測定したところ、1.565(25℃)であった。また、UVランプ(365nm)照射を行ったが、目視では発光は確認できなかった。
[比較例4]
実施例2において、実施例1で得られた結晶(20.0g)を比較例3で測定したYX4000(20.0g)、無水メチルヘキサヒドロフタル酸(12.2g)を(16.3g)とした以外は実施例2と同様の操作を行い、エポキシ樹脂硬化物を得た。
得られた硬化物を前述した各種測定方法のサイズに切り取り、特性の評価を行った所、ガラス転移温度190℃、線膨張係数105ppm/℃、吸水率0.69%、残炭率2.77%であった。
[比較例5]
実施例1において、合成例1で得られた結晶(56.4g,0.15mol)をビスフェノールフルオレンの市販品であるBPAF[商品名:JFEケミカル株式会社製/9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン](52.6g,0.15mol)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、66.9g(収率96.4%)の9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルを得た。
得られた結晶は、GPC純度96.1%、HPLC純度98.3%、融点152℃、換算屈折率1.624(25℃)、エポキシ当量231であり、UVランプ(365nm)照射を行ったが、目視では発光は確認できなかった。
[比較例6]
実施例2において、実施例1で得られた結晶(20.0g)を比較例5で得られた結晶(20.0g)、無水メチルヘキサヒドロフタル酸(12.2g)を(13.1g)とした以外は実施例2と同様の操作を行い、エポキシ樹脂硬化物を得た。
得られた硬化物を前述した各種測定方法のサイズに切り取り、特性の評価を行ったところ、ガラス転移温度195℃、線膨張係数98ppm/℃、吸水率0.65%、残炭率10.65%であった。
上記の評価結果をあらためて、以下の表1及び表2に記載する。
上記評価結果(表1)で示されるように、実施例1で合成された本発明に係るアントラセン誘導体は、他の公知の2官能エポキシ樹脂(比較例1、3及び5)より高い屈折率及び紫外線に対する蛍光特性を有することが示された。
また、上記評価結果(表2)で示されるように、実施例1のアントラセン誘導体を含む硬化性組成物から得られた実施例2の硬化物は、他の公知の2官能エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂硬化物(比較例2、4及び6)よりも高いガラス転移温度(高い耐熱性)、低い線膨張係数(高い寸法安定性)、低い吸水率(高い耐湿性)、高い残炭率(高い難燃性)を有することが示された。
本発明のアントラセン誘導体は、高炭素密度、高屈折率、及び蛍光性能といった様々な特性を有する架橋性組成物を提供することができる。さらに、このアントラセン誘導体を含む硬化性組成物からは、高い光屈折性、蛍光特性を有する上に、高いガラス転移温度、高難燃性、高耐湿性、高寸法安定性を有する硬化物を得ることができるため、例えば、接着剤、塗料、積層板、成型材料、注型材料、半導体封止材料、プリント基板絶縁材料、コーティング材料、光学材料、構造材料、フォトレジスト原料などに用いることができる。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表されるアントラセン誘導体。
    (式(1)中、Xは、(n+1)価の芳香族基であり、この芳香族基が置換基を有していてもよい。Yは、(n+1)価の芳香族基であり、この芳香族基が置換基を有していてもよい。n及びnは、それぞれ独立して、1〜3の整数である。)
  2. 上記X及びYがフェニレン基であり、n及びnが1である請求項1に記載のアントラセン誘導体。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のアントラセン誘導体及び/又はこのアントラセン誘導体から得られる重合体を含む硬化性組成物。
  4. 請求項3に記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物。
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