JP5130951B2 - エポキシ樹脂組成物、その硬化物、ビルドアップフィルム絶縁層用樹脂組成物、新規フェノール樹脂、及び新規エポキシ樹脂 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、その硬化物、ビルドアップフィルム絶縁層用樹脂組成物、新規フェノール樹脂、及び新規エポキシ樹脂 Download PDF

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Description

本発明は、硬化物のガラス領域、及び硬化物が暴される温度領域(サーマルサイクル条件下)における線膨張係数が極めて低いために寸法安定性に優れ、且つ熱的衝撃・物理的衝撃にも優れるエポキシ樹脂組成物に関する。
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において優れた耐熱性と絶縁性を発現することから、半導体やプリント配線基板などの電子部品用途において広く用いられている。
この電子部品用途のなかでも半導体パッケージ基板材料におけるビルドアップ基板の技術分野では、絶縁材料に用いられる樹脂材料としてこれまでの液状材料に代わり、エポキシ樹脂及び硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物からフィルム状に成形した所謂ビルドアップフィルムを基板上にラミネート、硬化させる技術が注目されている。然し乍ら、通常、該フィルムを構成する絶縁層であるエポキシ樹脂硬化物は、銅配線、半田等といった異種材料との線膨張係数が相違(CTEミスマッチ)するために、寸法安定性に劣ることに加え、熱衝撃による応力によってクラックが生じやすいという問題を有していた。従って、硬化物の線膨張率が低く、且つ熱衝撃や物理的衝撃に対して強い、靭性の高いエポキシ樹脂硬化物、及びこれら特性を発現するエポキシ樹脂組成物が求められていた。
そこで、例えば、接着フィルムを構成する絶縁材料として、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤、及び無機充填材を必須成分としたエポキシ樹脂組成物を用い、かつ、該無機充填材を多量に使用して材料自体の線膨張係数を低く抑制した技術が知られている(下記、特許文献1参照)。
然し乍ら、近年、電子部品の高性能化に伴い半導体パッケージ基板には多段ビア構造が採用されるなど、接着フィルムにはより低い線膨張係数を有するものが求められているところ、前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化物自体の線膨張係数の低減という点では十分ではなく、近年の著しい半導体装置の高速化に対応可能な水準に達していないのが現状であった。更に、前記エポキシ樹脂組成物は、ビルドアップ工法用に不可欠なビアホール形成時のレーザーによる加工性や、めっき層との密着性が十分なものではなかった。
他方、ビスフェノールS型フェノール樹脂としては、ビスフェノールスルホンとホルムアルデヒドとを反応させてレゾール型フェノール樹脂を製造する技術が知られている(下記特許文献2参照)。然しながら、かかるレゾール型の樹脂は硬化反応時に水の生成を伴うことから、これを電子部品に適用した場合には、電気特性の低下、ボイドの発生、耐熱性の低下を招くことになり、そもそも該電子部品の絶縁材料として適さないものであった。
特開2005−154727号公報 特開昭50−100311号公報
従って、本発明が解決しようとする課題は、エポキシ樹脂硬化物自体の線膨張係数が著しく低く、電子部品の絶縁材料として硬化物の寸法安定性に優れ、かつ、硬化物の耐熱性及び靱性が高く耐久性に優れ、とりわけビルドアップフィルム絶縁層に適したエポキシ樹脂組成物、及びこれらの特性を発現する新規フェノール樹脂、新規エポキシ樹脂を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン化合物を特定条件下にノボラック化した新規フェノール樹脂を硬化剤として用いたエポキシ樹脂組成物、或いは、該新規フェノール樹脂をエポキシ化した新規エポキシ樹脂を主剤として用いたエポキシ樹脂組成物は、その硬化物が極めて低い線膨張係数を達成でき、また高い耐熱性と強靭性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化剤(B)が、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)がアルキリデン基(X)を介して他の2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)と結節された分子構造を有するフェノール樹脂(以下、これを「フェノール樹脂(b)」と略記する。)であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物(以下、該組成物を「エポキシ樹脂組成物(I)」と略記する。)に関する。
本発明は、エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)がアルキリデン基(X)を介して他の2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)と結節された分子構造を有するフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル(以下、これを「エポキシ樹脂(a)」と略記する。)であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物(以下、該組成物を「エポキシ樹脂組成物(II)」と略記する。)に関する。
上記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とするエポキシ樹脂硬化物に関する。
上記エポキシ樹脂組成物からなることを特徴とするビルドアップフィルム絶縁層用樹脂組成物に関する。
下記一般式(1)
Figure 0005130951
(式中、nは繰り返し単位の平均で0.01〜5.0である。)
で表される分子構造を有し、かつ、該一般式(1)中、「S’」で表される構造部位が、
下記構造式S’1で表される構造部位、
Figure 0005130951

下記構造式S’2で表される構造部位、
Figure 0005130951

及び、下記構造式S’3で表される構造部位、
Figure 0005130951

(上記各構造式S’1〜S’3中、R、R、R3、R4、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表す。)
からなる群から選択されるものであり、かつ、
該一般式(1)中、「X」で表される構造部位が、下記構造式X1
Figure 0005130951

(R9、R10はそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
で表されるものであることを特徴とする新規フェノール樹脂に関する。
本発明は、更に、下記一般式(2)
Figure 0005130951

(式中、nは繰り返し単位の平均で0.01〜5.0である。)
で表される分子構造を有し、かつ、該一般式(2)中、「S”」で表される構造部位が、
下記構造式S”1で表される構造部位、
Figure 0005130951

下記構造式S”2で表される構造部位、
Figure 0005130951

及び、下記構造式S”3で表される構造部位、
Figure 0005130951
(上記各構造式S”1〜S”3中、R、R、R3、R4、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表し、Gはグリシジル基を表す。)
からなる群から選択されるものであり、かつ、
該一般式(1)中、「X」で表される構造部位が、下記構造式X1
Figure 0005130951

(R9、R10はそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
で表されるものであることを特徴とする新規エポキシ樹脂に関する。
本発明によれば、エポキシ樹脂硬化物自体の線膨張係数が著しく低く、電子部品の絶縁材料として硬化物の寸法安定性に優れ、かつ、硬化物の耐熱性が高く、且つ靱性が高いため耐久性に優れ、とりわけビルドアップフィルム絶縁層に適したエポキシ樹脂組成物、及び新規フェノール樹脂、新規エポキシ樹脂が提供できる。また、これらフェノール樹脂、エポキシ樹脂の工業的に簡便な方法で高収率に製造できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)は、前記した通り、エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化剤(B)が、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)がアルキリデン基(X)を介して他の2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)と結節された分子構造を有するフェノール樹脂(b)であることを特徴とするものである。本発明では、このように分子構造内にスルホニル構造を有することから、樹脂自体に優れた凝集力を付与でき、更に、該フェノール樹脂(b)は、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)の芳香核がアルキリデンで結節したノボラック構造を有することから、熱エネルギーに対して運動しにくくなる結果、硬化物の線膨張係数は極めて低いものとなり、物理的衝撃に強い靭性の高い硬化物を得ることができる。
ここでビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造は、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造以外にも、4,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造が知られているが、本発明では特に2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造であることが好ましい。即ち、一般にビスフェノールスルホンは、結晶性の高いモノマーとして知られているところ、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)がアルキリデン基(X)を介して他の2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)と結節された分子構造を有するフェノール樹脂は、ベンゼン環上の置換位置においてスルホニル基に対してヒドロキシル基が2,4’−位にあること、また、該スルホン構造(S’)がアルキリデン基(X)で他のスルホン構造(S’)と結節されていることから、フェノール樹脂(b)の結晶性が低くなってアモルファス性状となり、有機溶剤への溶解性が飛躍的に向上するものである。その結果、かかるスルホニル基に対してヒドロキシル基が2,4’−位にあるフェノール樹脂(b)、または、これをエポキシ化したエポキシ樹脂(a)を含む樹脂組成物は、フィルム成形が容易となる他、線膨張係数が低く、寸法安定性、耐熱性に優れ、靱性も高い硬化物を与えるため、とりわけビルドアップフィルム絶縁層に適したものとなる。
よって、前記フェノール樹脂(b)は、更に具体的には、前記2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)を「S’」、前記アルキリデン基(X)を「X」、水素原子を「H」とした場合に、下記一般式(1)
Figure 0005130951

で表されるものがビルドアップフィルム絶縁層への適用が容易である点から好ましい。上記一般式(1)中、nは繰り返し単位の平均で0.01〜5.0であるが、特に溶剤溶解性が良好となる点から0.05〜2.0、とりわけ0.05〜1.0の範囲であることが好ましい。
ここで、前記2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)としては、具体的には、例えば下記構造式S’1
Figure 0005130951

(上記構造式S’1中、R、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表す。)で表される構造部位、
下記構造式S’2
Figure 0005130951
(上記構造式S’2中、R、R、R3、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表す。)で表される構造部位、及び、
下記構造式S’3
Figure 0005130951
(上記構造式S’3中、R、R、R3、R4、R5、R6はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表す。)で表される構造部位が挙げられる。
上記各構造式中のR、R、R、R、R5、R6、R7、及びRを構成する炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、及びt−ブチル基等が挙げられ、前記ハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子が挙げられる。
このような上記構造式S’1〜S’3に代表される2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)は、更に具体的には、例えば前記構造式S’1で表される構造部位S’1は、下記構造式S’1−1〜S’1−8のものが挙げられる。
Figure 0005130951
また、前記構造式S’2で表される構造部位は、下記構造式S’2−1〜S’2−9のものが挙げられる。
Figure 0005130951

また、前記構造式S’3で表される構造部位は、下記構造式S’3−1〜S’3−8のものが挙げられる。
Figure 0005130951
これらの中でも、上記構造式S’1〜S’3におけるR、R、R3、R、R5、R6、R7、R8が水素原子、メチル基、エチル基であるものがフェノール樹脂の有機溶剤への溶解性の点から好ましく、また、ヒドロキシル基に対してオルソ又はパラの位置に炭素原子数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を有するものが工業的生産が容易である点から好ましい。更に、本発明ではとりわけ上記構造式S’1〜S’3中のR〜Rの全てが水素原子であることが、硬化物の線膨張係数が低く、かつ、硬化物がより高耐熱性、高靱性になる点から好ましい。
一方、2つの2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)を結節する結節基であるアルキリデン基(X)は、下記構造式X1
Figure 0005130951

で表されるものが挙げられる。
上記構造式X1中のR、R10は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基又はアラルキル基が挙げられる。
該炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、及びt−ブチル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、及びこれらの芳香核にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、及びt−ブチル基等が導入されたものが挙げられる。
また、アラルキル基としてはベンジル基等が挙げられる。
よって、前記アルキリデン基(X)は、具体的には、下記X1〜X15で表される構造が挙げられる。
Figure 0005130951

こらのなかでも工業的製造法が簡便であり、その入手が容易である点からは、上記X1に代表されるようなR、R10が共に水素原子であるものが好ましい。更に、得られる硬化物の耐熱性を高める点で、R9又はR10がフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、またこれらにメチル基が置換した基であることが好ましい。
また、前記フェノール樹脂の軟化点は、50〜180℃の範囲が好ましく、溶剤溶解性と耐熱性を兼備できる点で、60〜150℃の範囲であることが特に好ましい。ここで、軟化点は、「JIS K7234(2001)」に準拠して測定される値である。
以上、詳述したフェノール樹脂(b)を工業的に生産するには、例えば、下記構造式y
Figure 0005130951

(式中、R、R、R3、R4、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表すが、それぞれのベンゼン環の2箇所以上が水素原子である。)
で表される2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)と、
下記構造式z
Figure 0005130951

(式中、R9、R10はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。)
で表される化合物(z)とを、触媒の存在下に反応させる方法が挙げられる。
上記製造方法は、具体的には
工程1: 触媒の存在下に、前記2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)と、前記化合物(z)とを反応させる工程
工程2: 工程2で得られたフェノール樹脂溶液を水洗する工程、
工程3: 次いで、フェノール樹脂溶液から有機溶媒を除去して目的物たるフェノール樹脂を得る工程
を必須の製造工程とするものであることが生産性の点から好ましい。
本発明に用いる2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)の具体例としては、2,4’−ビスフェノールスルホン、3,3'−ジメチル−2,4’−ビスフェノールスルホン、3,3'−ジエチル−2,4’−ビスフェノールスルホン等が挙げられる。これらの中でも、2,4’−ビスフェノールスルホンが、得られるフェノール樹脂(b)、更にはそれをエポキシ化してなるエポキシ樹脂(a)の溶剤溶解性が良好となり、エポキシ樹脂組成物(I)又は(II)のフィルム成形が容易となる他、それらの硬化物自体において線膨張係数がより低くなり、更に、高耐熱性、高靱性が一層改善される点から好ましい。
次に、前記化合物(z)は、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、ビフェニルベンズアルデヒド、ナフチルベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物、アセトン、ベンゾフェノン、フルオレノン、インダノン等のケトン化合物が挙げられる。これらの中でも工業的製造方法が簡便で、その入手が容易である点から、ホルムアルデヒドが好ましい。なお、該化合物(z)としてホルムアルデヒドを用いる場合には、パラホルムアルデヒドとして用いてもよい。
前記工程1は、触媒の存在下に、前記2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)と、前記化合物(z)とを反応させる工程である。ここで用いる触媒(c)は、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水酸化物、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン等のリン化合物、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン等の第3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物から選ばれる塩基化合物が挙げられる。
これらの中でも、工業的製造法が簡便で、且つ反応進行が容易である点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水酸化物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン等の第3級アミン化合物が好ましい。また、得られるフェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させてエポキシ樹脂を得る場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水酸化物を用いることが、該エポキシ化反応に用いられる触媒と同じものとなることから、工業的に優位であり好ましい。ここで、上記した触媒の使用量としては、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)の1モルに対して0.01〜0.1モルとなる割合であること、特に2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)の1モルに対して0.01〜0.05モルとなる割合であることが、フェノール樹脂(b)を完全なノボラック化物に近づけることができて電子部品材料として良好な耐熱性が得られる点から好ましい。
ここで、前記2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)と、化合物(z)との仕込み割合は、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)の1モルに対して化合物(z)が0.1モル〜2モルとなる割合であることが反応して得られるフェノール樹脂の軟化点が50〜180℃の範囲となる点から好ましく、とりわけノボラック化をより進めることができ、電子部品材料として耐熱性が良好となる点から2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)の1モルに対して化合物(z)が0.30モル〜1.05モルとなる割合であることが特に好ましい。なお、前記化合物(z)としてホルムアルデヒドを用いる場合であって、これをパラホルムアルデヒドとして使用する場合にはこれらの仕込み割合はホルムアルデヒド単位のモル比率となる。
また、工程1の反応は、水や有機溶剤の存在下に行うことが好ましい。有機溶媒としては特に限定されないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類が挙げられる。
ここで有機溶剤の使用量は、具体的には、前記化合物(z)に対して質量基準で0.05〜1.5倍量の範囲が挙げられる。
また、工程1の反応は有機溶剤と水とを併用することが、反応性に優れる点から好ましい。この場合の反応方法は、具体的には、先ず、攪拌機を内部に具備する反応容器内に、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)、前記化合物(z)、有機溶媒、及び水を仕込み、不活性ガス雰囲気下で攪拌を開始する。この際、反応容器に加える有機溶剤及び水の量は、具体的には、使用した化合物(z)の質量に対して、有機溶媒が0.05〜1.5倍量、水が0.05〜1.0倍量であることが好ましい。反応系内が分散された状態となった後、触媒を加えて昇温し、反応させる方法等が挙げられる。
ここで、反応温度は80〜120℃の範囲から選択することができるが、85〜100℃の範囲であることが、ノボラック化がより進み易い点から好ましく、なかでも90〜100℃の範囲であることが特に好ましい。
この工程1では、上述した反応方法の中でも、特に、前記有機溶剤として脂肪族ケトン類を、使用した化合物(z)の質量に対して0.3〜1.0倍量となる割合で用い、水を使用した化合物(z)の質量に対して0.1〜0.3倍量と割合で用い、かつ、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン化合物(y)と、化合物(z)との仕込み割合をモル基準で前者/後者=1.2/1〜0.8/1となる割合で使用することが、前記フェノール樹脂(b)がより高軟化点化する点から好ましい。
また、この工程1の反応において得られるフェノール樹脂(b)の着色を抑制する点から、この反応系に酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダートフェノール系化合物や2価のイオウ系化合物や3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。還元剤としては、次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれらの塩などが挙げられる。
また、工程1の反応において、水を有機溶剤に対して過剰に用いた場合には、上記工程1による反応が終了した後、前記化合物(z)の使用量の4.5〜8倍量(質量基準)の有機溶媒を系内に加え、反応生成物から目的物たるフェノール樹脂(b)を抽出してフェノール樹脂溶液とすることが好ましい。ここで用いる有機溶媒の中でも、目的物であるフェノール樹脂(b)の抽出効率が良好となる点から、脂肪族アルコール類、脂肪族エーテル類、及び脂肪族ケトン類が好ましい。ここで、脂肪族アルコールとしては、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、及びジエチレングリコールが挙げられる。脂肪族エーテル類としては、ジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。脂肪族ケトン類としては、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。これらの中でも、特に沸点が100〜130℃の範囲であることが、この抽出作業の効率が良好となる点から好ましく、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコール、メチルイソブチルケトンが好ましい。
次に工程2は、工程1で得られたフェノール樹脂溶液を水洗する工程である。水洗は常法に従って行うことができるが、フェノール樹脂溶液のpHが5〜9、好ましくは6〜8になるまで行うことが好ましい。また、工程2では、水洗の前、及び水洗時において、反応に用いた触媒を中和剤によって予め中和処理を行っても良い。ここで用いられる中和剤は、シュウ酸、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム等が挙げられる。
次に工程3は、フェノール樹脂溶液から有機溶媒を除去して目的物たるフェノール樹脂(b)を得る工程である。フェノール樹脂溶液から有機溶媒を除去する方法は、具体的には、加熱減圧蒸留によって有機溶媒を除去すれば良い。この際の条件は、150〜200℃、3kPa以下の範囲であることがフェノール樹脂(b)を完全にノボラック化できる点から好ましい。
以上の工程1〜工程3を経て、目的とするフェノール樹脂(b)が得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)は、硬化剤として以上詳述したフェノール樹脂の他に、本発明の効果を損なわない範囲で他の硬化剤と併用することができる。エポキシ樹脂組成物(I)中の全硬化剤に占める本発明のフェノール樹脂の割合が30重量%以上となる範囲、特に40重量%以上となる範囲であることが好ましい。
前記フェノール樹脂(b)と併用されうる他の硬化剤としては、特に制限されるものではなく、例えばアミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、前記したフェノール樹脂以外のフェノ−ル系化合物、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)の多価フェノール化合物等が挙げられる。
これらの中でも、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が難燃性に優れることから好ましく、特にフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂等の高芳香族性、高水酸基当量のフェノール樹脂や窒素原子を含有するアミノトリアジン変性フェノール樹脂等の化合物を用いることが、得られる硬化物の難燃性や誘電特性が優れる点から好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)で用いられるエポキシ樹脂(A)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらのなかでも、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂及び「2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)がアルキリデン基(X)で結節されてなるフェノール樹脂」を中間体としたエポキシ樹脂が、低線膨張係数、強靭性、耐熱性に優れる特性を発現させる点から特に好ましい。
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物(II)は、エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が、
2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)がアルキリデン基(X)を介して他の2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)と結節された分子構造を有するフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル(a)であることを特徴とするものである。
即ち、前記エポキシ樹脂(a)は前記フェノール樹脂(b)のポリグリシジルエーテルであり、前記フェノール樹脂(b)の場合と同様に、2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)がアルキリデン基(X)で結節されてなるフェノール樹脂(b)のポリグリシジルエーテルであることが、ビルトアップフィルムへの適用が容易な点から好ましい。
よって、前記エポキシ樹脂(a)は、具体的には、前記2,4’−ビス(グリシジルオキシフェニレン)スルホン構造(S”)を「S”」、前記アルキリデン基(X)を「X」
水素原子を「H」とした場合に、下記一般式(2)
Figure 0005130951

で表されるものである構造を有するものが好ましい。上記一般式(2)中、nは繰り返し単位の平均で0.01〜5.0の範囲であるが、なかでも溶剤溶解性が良好となる点から0.05〜2.0の範囲であること、特に0.05〜1.0の範囲であることが好ましい。
ここで、前記2,4’−ビス(グリシジルオキシフェニレン)スルホン構造(S”)としては、具体的には、例えば下記構造式S”1
Figure 0005130951

(上記構造式S”1中、R、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表し、Gはグリシジル基を表す。)で表される構造部位、
下記構造式S”2
Figure 0005130951

(上記構造式S”2中、R、R、R3、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表し、Gはグリシジル基を表す。)で表される構造部位、及び、
下記構造式S”3
Figure 0005130951
(上記構造式S”3中、R、R、R3、R4、R5、R6はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表し、Gはグリシジル基を表す。)で表される構造部位が挙げられる。
上記各構造式中のR、R、R、R、R5、R6、R7、及びRを構成する炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、及びt−ブチル基等が挙げられ、前記ハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子が挙げられる。
このような上記構造式S”1〜S”3に代表される2,4’−ビス(グリシジルオキシフェニレン)スルホン構造(S”)は、更に具体的には、例えば前記構造式S”1で表される構造部位S”1は、下記構造式S”1−1〜S”1−8のものが挙げられる。なお、各構造式中、「G」はグリシジルオキシ基を表す。
Figure 0005130951

また、前記構造式S”2で表される構造部位S”2は、下記構造式S”2−1〜S”2−9のものが挙げられる。なお、各構造式中、「G」はグリシジルオキシ基を表す。
Figure 0005130951
また、前記構造式S”3で表される構造部位S”3は、下記構造式S”3−1〜S”3−8のものが挙げられる。なお、各構造式中、「G」はグリシジルオキシ基を表す。
Figure 0005130951
これらの中でも、前記フェノール樹脂(b)の場合と同様に、上記構造式S”1〜S”3におけるR、R、R3、R、R5、R6、R7、R8は有機溶剤への溶解性の点から、水素原子、メチル基、エチル基であるものが好ましく、また、ヒドロキシル基に対してオルソ又はパラの位置に炭素原子数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を有するものが工業的生産に優れる点から好ましい。更に、本発明ではとりわけ上記構造式S”1〜S”3中のR〜Rの全てが水素原子であることが、硬化物の線膨張係数が低く、かつ、硬化物がより高耐熱性、高靱性になる点から好ましい。
一方、上記2,4’−ビス(グリシジルオキシフェニレン)スルホン構造(S”)を結節する結節基であるアルキリデン基(X)は、前記一般式(1)におけるものと同義である。
また、フェノール樹脂(b)に関して詳述した通り、工業的製造法が簡便であって生産性に優れる点から前記構造式S”1〜S”3中のR〜R及びR9〜R10の全てが水素原子であることが好ましい。
以上、詳述したエポキシ樹脂(a)は、以下に詳述する方法によって製造することができる。
即ち、前記した製造方法によって得られたフェノール樹脂(b)を、(メチル)エピハロヒドリンと反応させてエポキシ樹脂を製造することができる。当該フェノール樹脂とエピハロヒドリンとの反応は、具体的には、当該フェノール樹脂のフェノール性水酸基1モルに対し、エピハロヒドリン2〜10モルを添加し、この混合物に、当該フェノール樹脂のフェノール性水酸基1モルに対し0.9〜2.0モルの塩基性触媒を一括添加または連続的若しくは断続的に添加しながら反応させる方法が挙げられる。この際、反応温度は、20〜120℃の範囲であることが好ましく、また、反応時間は0.5〜10時間であることが好ましい。
ここで用いる塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよい。この塩基性触媒を水溶液として使用する場合、該水溶液を連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出せしめ、更に分液して水は除去し、回収したエピハロヒドリン類を反応混合物中に連続的に戻しながら反応を行うことがエポキシ樹脂の純度が向上する点から好ましい。
なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込み(メチル)エピハロヒドリンの全てを新しいものを使用するが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリンと、反応で消費される分及で消失する分に相当する新しい(メチル)エピハロヒドリンとを併用することが好ましい。
ここで使用する(メチル)エピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
また、塩基性触媒も特に限定されないが、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。使用に際しては、これらのアルカリ金属水酸化物を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂(a)の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜二種以上を併用してもよい。
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂に対して0.1〜3.0重量%の範囲が好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより高純度のエポキシ樹脂を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(II)は、以上詳述したエポキシ樹脂(a)を主剤であるエポキシ樹脂(A)として用いるものであるが、本発明の特性を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を併用してもよい。この場合、エポキシ樹脂組成物(II)中、前記エポキシ樹脂(a)が全エポキシ樹脂成分中に占める割合が30質量%以上、特に40質量%以上となる範囲であることが好ましい。
かかる併用可能な他のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。またこれらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に低粘度である点では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂が好ましく、難燃性に優れる点では、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
また、エポキシ樹脂組成物(II)で用いる硬化剤(B)は、前記エポキシ樹脂組成物(I)において用いるフェノール樹脂(b)の他、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3 −アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン系化合物、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド系化合物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系化合物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(通称、ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物、及びこれらの変性物等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)におけるエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物の機械的物性等が良好である点から、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤(B)中の活性基が0.5〜1.5当量になる量が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、用途に応じて、上記した各成分に加え、更に有機溶剤(C)を使用することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物を積層板用ワニスとして用いる場合には基材への含浸性が改善される他、ビルドアップ用接着フィルムとして用いる場合には、基材シートへの塗工性が良好になる。ここで使用し得る有機溶剤(C)は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
また、有機溶剤(C)の添加量は、目標とする粘度によって適宜調整することができるが、固形分濃度([エポキシ樹脂(A)及びその他エポキシ樹脂成分+硬化剤(B)]/[エポキシ樹脂(A)及びその他エポキシ樹脂成分+硬化剤(B)+有機溶剤(C)]で示される質量基準の濃度)が、50〜80質量%となる範囲であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、上記した各成分に加え、更に、硬化促進剤(D)を併用してもよい。
ここで使用し得る硬化促進剤(D)は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。この中でも、硬化物の低線膨張係数化の効果が顕著なものとなる点からリン系化合物、第3級アミン、イミダゾールが好ましい。
また、硬化促進剤(D)の添加量は、目標とする硬化時間等によって適宜調整することができるが、前記したエポキシ樹脂成分、硬化剤成分及び前記硬化促進剤(D)の総質量に対して0.01〜7質量%となる範囲であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、上記した各成分に加え、更に、更に無機質充填材を使用することができる。この無機質充填材は、具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。無機質充填材の配合量を特に大きくする場合は、溶融シリカを用いることが好ましい。溶融シリカは、破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布がより広くなるように調製することが好ましい。
ここで無機質充填材の使用量は、エポキシ樹脂組成物の用途に応じ適宜選択することができるが、例えばビルドアップフィルム絶縁層用途では、該無機質充填材の使用量を増加させた場合には、硬化物の線膨張係数はより低くなるものの、めっき層との接着性が低下する傾向にある。本発明のエポキシ樹脂組成物はその硬化物が顕著に低い線膨張係数を示すことから、ビルドアップフィルム絶縁層用途では無機質充填材の使用量を低く抑えることができ、例えば、エポキシ樹脂組成物中無機充填剤を80質量%以下となる範囲で用いることができ、特に20〜50質量%の範囲、更に20〜30質量%の範囲で用いることができる。また、ビルドアップフィルム絶縁層用途では、その硬化物の線膨張係数が低くいことから無機充填剤を何等使用することなく、ビルドアップフィルムに供することができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、必要に応じて、難燃剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。
ここで、難燃剤としては、ハロゲン化合物、燐原子含有化合物や窒素原子含有化合物や無機系難燃化合物などが挙げられる。具体的には、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂などのハロゲン化合物、赤燐、燐酸エステル化合物などの燐原子含有化合物、メラミンなどの窒素原子含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウムなどの無機系難燃化合物が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、上記した各成分を均一に混合することにより得られ、接着剤、塗料、半導体封止材、回路基板材、複合材料、及びビルドアップフィルム等の各種の用途に適用できる。
例えば、無溶剤型の接着剤や塗料や封止材用エポキシ樹脂組成物を調整するには、当該エポキシ樹脂を含む、硬化剤及び、必要に応じて無機充填材などの成分を、予備混合した後に、撹拌混合機や押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合して製造することができる。これらの用途において無機充填材の使用量は通常、充填率30〜95質量%となる範囲である。
また、溶剤型の接着剤、塗料、銅張り積層板、ビルドアップ基板、繊維強化複合材料用のエポキシ樹脂組成物を調整するには、本発明のエポキシ樹脂成分、硬化剤成分、硬化促進剤、及び、必要により難燃剤等をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤に溶解させることにより製造することができる。この際の溶剤の使用量は、前記組成物ワニス中、10〜70質量%となる範囲であることが好ましい。
この様にして得られた本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)を硬化させるには、例えば、塗料用途の場合、上記の様にして調整された塗料を基材に塗布して、それを15〜200℃の環境で5分間〜1週間放置することによって、目的の塗膜硬化物を得ることができる。
また、接着剤の場合は、それを用いて基材を接着後、塗料と同様にして硬化させればよい。封止材硬化物は、該組成物を注型、或いはトランスファ−成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに80〜200℃で2〜10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。
また、回路基板材や複合材料用のワニス組成物の硬化物は積層物であり、この硬化物を得る方法としては、回路基板用ワニスをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥してプリプレグを得て、それを熱プレス成形して得ることができる。
以上の各種用途のなかでも、本発明では、特に、ビルドアップフィルム絶縁層、及び、積層板用プリプレグがとりわけ有用である。
本発明のビルドアップフィルム絶縁層用樹脂組成物からビルドアップフィルム絶縁層を製造する方法は、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布、乾燥させてフィルム状の絶縁層を形成する方法が挙げられる。このようにして形成させたフィルム状の絶縁層は、多層プリント配線板用のビルドアップフィルムとして使用できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物から製造されたビルドアップフィルム絶縁層は、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、多層プリント配線板のスルホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填可能となるようエポキシ樹脂組成物中の各配合成分を調節することが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記ビルドアップフィルムの製造方法について、更に詳述すれば、具体的にはワニス状の本発明のエポキシ樹脂組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等の乾燥工程により有機溶剤を除去させることにより、絶縁層であるビルドアップフィルム樹脂組成物の層(X)を形成させることにより製造することができる。
前記乾燥工程の条件は、エポキシ樹脂組成物の層(X)中の有機溶剤(C)の含有率が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させることが好ましい。乾燥条件はワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることができる。
形成される層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、本発明における層(X)は、保護フィルムで保護されることが、エポキシ樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる点から好ましい。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
次に、上記のようして得られたビルドアップフィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(X)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
ここで、回路基板とは、ガラスエポキシ、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものが挙げられる。
このように接着フィルムを回路基板にラミネートした後、必要により支持フィルム(Y)を剥離し、熱硬化することにより回路基板に絶縁層が形成される。加熱硬化の条件は150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分である。
この熱硬化反応前に支持フィルム(Y)を剥離しなかった場合は、絶縁層を形成した後に剥離する。次に回路基板上に形成された絶縁層に、ドリル、レーザー、プラズマ等の方法により、穴開けを行いビアホール、スルーホールを形成する。
次いで、絶縁層表面を酸化剤より粗化処理を行う。酸化剤としては、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、及び硝酸等が挙げられる。
次に、粗化処理により凸凹のアンカーが形成された樹脂組成物層表面に、無電解めっきと電解めっきを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解めっきのみで導体層を形成してもよい。なお導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。本発明では、前記したとおり、無機充填材の使用量を低く抑えることができる点から、優れたピール強度を発現させることができる。
また、導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えばサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。
次に、繊維からなるシート状補強基材に本発明のエポキシ該樹脂組成物を含浸させて多層プリント配線板の層間絶縁層用のプリプレグを製造する方法は、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱により半硬化させることにより製造する方法が挙げられる。ここで使用し得る繊維からなるシート状補強基材としては、例えばガラスクロスやアラミド繊維等が挙げられる。
次に上記プリプレグを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧・加熱条件下でプレス積層する方法が挙げられる。圧力条件は具体的には5〜40kgf/cm、温度は120〜200℃で20〜100分の範囲であることが好ましい。また接着フィルムと同様に真空ラミネート法により回路基板にラミネートした後、加熱硬化することによっても製造可能である。その後、前に記載した方法と同様、酸化剤により硬化したプリプレグ表面を粗化した後、導体層をめっきにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。
以下、実施例及び比較例において本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例及び比較例中のエポキシ樹脂の性状値の測定方法は下記の通りである。
[エポキシ当量]
「JIS K7236(2001)」に準拠して測定した。
[軟化点]
「JIS K7234」に準拠して測定した。
[ICI粘度]
「ASTM D4287」に準拠して測定し、150℃における溶融粘度を測定した。
[GPC]
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
[NMR]
日本電子株式会社「NMR GSX270」にて測定。
実施例1(2,4’−ビスフェノールスルホンノボラック型フェノール樹脂の合成−1)
温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,4’−ビスフェノールスルホン(日華化学株式会社製「BPS−24C」)250.0g(1.0モル)、水244.3g、イソプロピルアルコール24.4gを仕込み、系内を減圧窒素置換して攪拌、分散させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、42%ホルムアルデヒド35.7g(0.5モル)、20%NaOH5.3gを添加してリフラックス温度(92〜96℃)迄、昇温した。次いでこの条件下で10時間、攪拌を続けた。この間、留出してきた留出分は反応系内に戻しながら反応させた。一旦、系内を80℃に降温させて、第一リン酸ナトリウム4.8gを添加して、水分のpHが中性であることを確認した。その後、120℃に昇温して脱水した後、粗フェノール樹脂にメチルイソブチルケトン530gを加えて溶解した。更にこのフェノール樹脂溶液に、水133gを用いて水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、2,4’−ビスフェノールスルホンノボラック型フェノール樹脂(P−1)254.0gを得た。このフェノール樹脂(P−1)の軟化点95℃、ICI粘度9.8dPa・s(150℃)、前記一般式(1)における繰り返し単位の平均nの値は0.1であった。フェノール樹脂(P−1)のGPCチャート図を図1に、IRチャート図を図2に、13C−NMRチャート図を図3に示す。
実施例2(2,4’−ビスフェノールスルホンノボラック型フェノール樹脂の合成−2)
実施例1における、42%ホルムアルデヒド35.7g(0.5モル)を、57.1g(0.8モル)に変更する以外は、実施例1と同様にして2,4’−ビスフェノールスルホンノボラック型フェノール樹脂(P−2)257.1gを得た。このフェノール樹脂(P−2)の軟化点103℃、ICI粘度60dPa・s(150℃)、前記一般式(1)における繰り返し単位の平均nの値は0.5であった。
実施例3(2,4’−ビスフェノールスルホンノボラック型フェノール樹脂の合成−3)
温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,4’−ビスフェノールスルホン(日華化学株式会社製「BPS−24C」)250.0g(1.0モル)、メチルイソブチルケトン140.0g、水36.0gを仕込み、系内を減圧窒素置換して攪拌、分散させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、42%ホルムアルデヒド71.4g(1.0モル)、20%NaOH5.0gを添加してリフラックス温度(93〜95℃)迄、昇温した。次いでこの条件下で10時間、攪拌を続けた。この間、留出してきた留出分は反応系内に戻しながら反応させた。その後、メチルイソブチルケトン375.0gを加えて溶解し、系内温度80℃にて、第一リン酸ナトリウム4.8gを添加して中和した。更にこのフェノール樹脂溶液に、水130gを用いて水洗を2回繰り返した。次いで、溶媒を150℃減圧下で留去して、2,4’−ビスフェノールスルホンノボラック型フェノール樹脂(P−3)260.0gを得た。このフェノール樹脂(P−3)の軟化点134℃、ICI粘度100dPa・s以上(150℃)、前記一般式(1)における繰り返し単位の平均nの値は0.7であった。
実施例4(2,4’−ビスフェノールスルホンノボラック型エポキシ樹脂の合成)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、実施例1で得られた2,4’−ビスフェノールスルホンノボラック型フェノール樹脂(P−1)125g(1.0当量)、エピハロヒドリン370g(4.0モル)、n−ブタノール111gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、65℃に昇温した後に、共沸する圧力までに減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液180g(2.20モル)を5時間かけて滴下した、次いでこの条件下で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して、水層を除去し、有機層を反応系内に戻しながら反応した。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水300gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、エポキシ樹脂(E−1)gを得た。この樹脂(E−1)のエポキシ当量は237g/eq.、軟化点78℃、ICI粘度3.9dPa・s(150℃)であった。
比較例1(4,4’−ビスフェノールスルホンノボラック型フェノール樹脂の合成)
実施例1における2,4’−ビスフェノールスルホン250gを4,4’−ビスフェノールスルホン(小西化学工業製「BS−PN」)250gに変更する以外は、実施例1と同様にしてノボラック化反応を実施したが、得られるフェノール樹脂の結晶性が強く溶解性が悪いためか、樹脂を得ることができなかった。
実施例5〜9及び比較例2〜6
表1及び表2に示す各成分を配合比率に従って、エポキシ樹脂組成物(ワニス)を調整した。次に、この樹脂ワニスを銅箔(厚さ18μm)上に、乾燥後の樹脂厚みが70μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80℃〜120℃(平均100℃)で10分乾燥させ、180℃で1.5時間の硬化させた。その後、エッチング液(第二塩化鉄液)にて全面エッチングを行い、乾燥させることでフィルム状硬化物試験片を得、評価に供した。
<耐熱性(ガラス転移温度)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
<熱膨張係数の評価>
硬化物フィルムを幅約3mm長さ約15mmの試験片とし、熱機械分析装置(TMA:セイコーインスツルメント社製SS−6100)を用いて、引張モードで熱機械分析を行った。(測定架重:30mN、昇温速度:3℃/分で2回、測定温度範囲:−50℃から250℃)
2回目の測定における、1)ガラス領域(50℃)における線膨張係数、2)硬化物が暴される温度領域における線膨張係数(30℃から150℃の温度範囲における平均膨張係数)を評価した。
<硬化物の強靭性(機械強度)の評価>
硬化物フィルムを用いて、日本工業規格(JIS K7127)に準拠し、引張破断強度測定を行った。
Figure 0005130951

Figure 0005130951
表1及び表2中の各成分は、以下の通りである。
エポキシ樹脂(R−1):大日本インキ化学工業株式会社製ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(1,6−ジグリシジルオキシナフタレン)「エピクロン HP−4032」(エポキシ当量:150g/当量 褐色半固形 ICI粘度 <0.1dPa.s
エポキシ樹脂(R−2):大日本インキ化学工業株式会社製ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(ビス(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン)「エピクロン HP−4700」(エポキシ当量:167g/当量 軟化点:91℃ ICI粘度 4.5dPa.s)
エポキシ樹脂(R−3):大日本インキ化学工業株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂「エピクロン 850S」(エポキシ当量:188g/当量 液状 ICI粘度 <0.1dPa.s)
硬化剤(H−1):大日本インキ化学工業株式会社製フェノールノボラック樹脂「フェノライトTD−2090−60M」(水酸基当量105g/当量、固形分軟化点120℃、不揮発分60質量%(溶剤:MEK))
硬化剤(H−2):大日本インキ化学工業株式会社製メラミン変性フェノールノボラック樹脂「フェノライトLA−1356」(水酸基当量146g/当量、固形分軟化点135℃、不揮発分60質量%、窒素含有量19質量%)
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール
MEK:メチルエチルケトン
※1):MEKは、前記硬化剤(H−1)及び硬化剤(H−2)中に含まれているMEKの量を考慮して、組成物全体に占めるMEKの全量が表1又は表2中の量となるように配合した。
図1は実施例1で得られたフェノール樹脂(P−1)のGPCチャート図である。 図2は実施例1で得られたフェノール樹脂(P−1)のIRチャート図である。 図3は実施例1で得られたフェノール樹脂(P−1)の、13C−NMRチャート図である。

Claims (10)

  1. エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化剤(B)が、
    2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)がアルキリデン基(X)を介して他の2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)と結節された分子構造を有するフェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  2. 前記フェノール樹脂が、
    前記2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)を「S’」、
    前記アルキリデン基(X)を「X」
    水素原子を「H」
    とした場合に、下記一般式(1)
    Figure 0005130951
    (式中、nは繰り返し単位の平均で0.01〜5.0である。)
    で表されるものである請求項記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が、
    2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)がアルキリデン基(X)を介して他の2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)と結節された分子構造を有するフェノール樹脂のポリグリシジルエーテルであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記エポキシ樹脂が、
    前記2,4’−ビス(ヒドロキシフェニレン)スルホン構造(S’)を「S’」、
    前記アルキリデン基(X)を「X」
    水素原子を「H」
    とした場合に、下記一般式(1)
    Figure 0005130951
    (式中、nは繰り返し単位の平均で0.01〜5.0である。)
    で表されるものであるフェノール樹脂のポリグリシジルエーテルである請求項記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)に加え、更に、硬化促進剤(C)を含有する請求項1〜の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)に加え、更に、有機溶剤(D)を、固形分濃度(A+Bの割合)が50〜80質量%となる割合で含有する請求項1〜の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 請求項1〜の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とするエポキシ樹脂硬化物。
  8. 請求項1〜の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物からなることを特徴とするビルドアップフィルム絶縁層用樹脂組成物。
  9. 下記一般式(1)
    Figure 0005130951
    (式中、nは繰り返し単位の平均で0.01〜5.0である。)
    で表される分子構造を有し、かつ、該一般式(1)中、「S’」で表される構造部位が、
    下記構造式S’1で表される構造部位、
    Figure 0005130951
    下記構造式S’2で表される構造部位、
    Figure 0005130951
    及び、下記構造式S’3で表される構造部位、
    Figure 0005130951
    (上記各構造式S’1〜S’3中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表す。)
    からなる群から選択されるものであり、かつ、
    該一般式(1)中、「X」で表される構造部位が、下記構造式X1
    Figure 0005130951
    (R9、R10はそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
    で表されるものであることを特徴とする新規フェノール樹脂。
  10. 下記一般式(2)
    Figure 0005130951
    (式中、nは繰り返し単位の平均で0.01〜5.0である。)
    で表される分子構造を有し、かつ、該一般式(2)中、「S”」で表される構造部位が、
    下記構造式S”1で表される構造部位、
    Figure 0005130951
    下記構造式S”2で表される構造部位、
    Figure 0005130951
    及び、下記構造式S”3で表される構造部位、
    Figure 0005130951
    (上記各構造式S”1〜S”3中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子を表し、Gはグリシジル基を表す。)
    からなる群から選択されるものであり、かつ、
    該一般式(2)中、「X」で表される構造部位が、下記構造式X1
    Figure 0005130951
    (R9、R10はそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
    で表されるものであることを特徴とする新規エポキシ樹脂。
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