以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂(A)は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、かつ、該構造の芳香核に、グリシジルオキシ基又はメチルグリシジルオキシ基、及び下記構造式(1)
[構造式(1)中、R1及びR2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]
で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有するものである。
該分子構造中、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜0.5モルとなる範囲であることが好ましく、その軟化点は好ましくは80〜140℃の範囲である。ここで、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合とは、後述するエポキシ樹脂(A)の製造方法におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)1モルに対する前記アラルキル化剤(a2)のモル数に相当する。本発明では、エポキシ樹脂(A)の製造方法におけるこれら原料成分のほぼ全量が生成物中に取り込まれる為、これら原料成分のモル比率が、実質的に前記分子構造(α)を構成する芳香核のモル基準の存在割合に相当することとなる。
前記エポキシ樹脂(A)の基本骨格を成すポリアリーレンオキサイド構造は、ポリナフチレンオキサイド構造、及び炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたポリナフチレンオキサイド構造などのナフチレンオキサイド系構造、並びに、ポリフェニレンオキサイド構造、及び炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたポリフェニレンオキサイド構造などのフェニレンオキサイド系構造が挙げられる。これらのなかでも特に本発明ではナフチレンオキサイド系構造を有するものが、硬化物の耐熱性が一層向上する他、熱膨張係数も低くなる点から好ましい。更に、耐熱性の点から中でもポリナフチレンオキサイド構造或いはメチル基含有ポリナフチレンオキシサイド構造が好ましく、特にポリナフチレンオキサイド構造であることが好ましい。
次に、前記エポキシ樹脂(A)の分子構造中に有する下記構造式(1)
で表される構造部位(α)において、R1及びR2は各々独立してメチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、及び、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基からなる群から選択される二価の芳香族系炭化水素基である。また、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基とは、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、i−プロピルフェニレン基、又はt−ブチルフェニレン基等が挙げられ、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基とは、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基、i−プロピルナフチレン基、及びt−ブチルナフチレン基等が挙げられる。また、nは繰り返し数の平均で0.1〜4である。
これらの中でも、工業的生産において原料の入手が容易であり、得られる硬化物の耐熱性に優れ、かつ、熱膨張係数も低くなる点からR1及びR2が共に水素原子であることが好ましい。nの値は耐熱性及び低熱膨張係数の点から1又は2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。また、原料の入手が容易でかつエポキシ樹脂(A)の粘度が低くなり、硬化性が高く熱履歴後の耐熱性変化が小さい点からArがフェニレン基であることが好ましい。
更に、本発明では、前記一般式(1)中の「Ar」で表される芳香核の存在割合は、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたり0.1〜0.5モルとなる範囲であることが好ましい。ここで、前記一般式(1)中の「Ar」で表される芳香核の存在割合が0.5以下とすることにより、硬化物の耐熱性が飛躍的に向上する他、熱履歴後の耐熱性変化が小さくなる。一方、0.1以上とすることにより硬化物の熱膨張係数が良好なものとなる他、硬化物の熱履歴後の耐熱性変化が小さいものとなる。なお、ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記一般式(1)中の「Ar」で表される芳香核の存在割合は、前述した通り、エポキシ樹脂(A)の製造方法におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)1モルに対する前記アラルキル化剤(a2)のモル数に相当する。
また、前記エポキシ樹脂(A)の分子構造中に有するグリシジルオキシ基又はメチルグリシジルオキシ基は、具体的には、グリシジルオキシ基及びβ−メチルグリシジルオキシ基が挙げられるが、本発明では特に硬化物の熱膨張係数の点、及び、エポキシ樹脂(A)を工業的生産する際の原料入手が容易であることなどから、グリシジルオキシ基であることが好ましい。
また、本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、その軟化点が80〜140℃であることから、有機溶剤への溶解性が高くなり、回路基板用ワニスに適した材料となる他、ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長いものとなり、従来にない低熱膨張係数を発現させることができる。
更に、前記エポキシ樹脂(A)は、その前駆体であるフェノール樹脂の製造の際、ジヒドロキシ芳香族化合物を原料としてポリアリーレンオキサイド構造を形成させることが望ましく、この場合、フェノール性水酸基は直鎖状分子構造の両末端に出現する為、主に2官能性のエポキシ樹脂として得られる。然し乍ら、該樹脂成分中には、部分的にポリナフチレンオキサイド構造中のナフタレン環に、他のヒドロキシナフタレン環が直接結合によって結合した分子構造を持つ多官能フェノール樹脂をエポキシ化したものも含まれ得る。よって、この場合、前記エポキシ樹脂(A)は、多官能性のエポキシ樹脂として得られる。ここで、前記エポキシ樹脂(A)を回路基板用途へ適用する際にはエポキシ樹脂中の官能基濃度をより一層低くして硬化後の耐湿性や熱履歴後の耐熱性変化の改善を図ることが好ましく、その一方で、前記エポキシ樹脂(A)中の分子量が小さい場合には、有機溶剤への溶解性に劣り回路基板用ワニスへの適用が困難なものとなる点から、前記エポキシ樹脂(A)は、そのエポキシ当量が、257〜320g/eq.の範囲であることが好ましい。
以上詳述したエポキシ樹脂(A)は、前記した通り、中でもポリナフチレンオキシ構造を前記ポリアリーレンオキサイド構造として有するものが好ましく、具体的には下記一般式(1)
で表される構造単位(α)を繰り返し単位とし、その両末端にグリシジルオキシ基又はメチルグリシジルオキシ基を有する構造を有する軟化点80〜140℃のエポキシ樹脂であるものが有機溶剤への溶解性に優れ、かつ、耐熱性に優れた硬化物を与えることができる点から好ましい。
ここで上記一般式(1)中、Xは水素原子又は下記一般式(2)
で表される構造部位(β)であり、かつ、前記一般式(2)中のR’は水素原子又はメチル基であり、前記一般式(1)及び一般式(2)中のRは下記一般式(3)
で表される構造部位(γ)であり、一般式(3)中のnは1又は2であり、また、一般式(2)及び一般式(3)中のpの値は0〜3の整数である。但し、前記エポキシ樹脂(A)は、その分子構造中、前記構造部位(γ)中のベンゼン環をナフタレン環1個あたり0.1〜0.5個となる割合で有するものである。なお、上記一般式(1)においてナフタレン骨格への結合位置はナフタレン環を構成する2つの環の何れであってもよい。
以上詳述したエポキシ樹脂(A)は、例えば、下記の製造方法によって製造することができる。
即ち、ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)と、下記構造式(2)
〔式中、R1、R2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基を、Yはハロゲン原子、アルコキシ基、又は水酸基を表す。〕で表される化合物、又は下記構造式(3)
〔式中、R1、R3、R4は各々独立してメチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基を表す。〕で表される化合物からなる群から選択されるアラルキル化剤(a2)とを、酸触媒の存在下に反応させてフェノール樹脂を得る工程(以下、この工程を「工程1」と略記する。)、次いで、得られたフェノール樹脂をとエピハロヒドリン類(a3)とを反応させる工程(以下、この工程を「工程2」と略記する。)とを経て目的とするエポキシ樹脂(A)を製造することができる。
即ち、先ず工程1において前記ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)と、前記アラルキル化剤(a2)とを酸触媒の存在に反応させることにより、ポリアリーレン構造を主骨格としてその両末端にフェノール性水酸基を有し、かつ、該ポリアリーレン構造の芳香核上にアラルキル基がペンダント状に結合した構造のフェノール樹脂を得ることができる。
ここで、前記ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)と、前記アラルキル化剤(a2)との反応割合は、モル基準で前記ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)とアラルキル化剤(a2)との反応比率(a1)/(a2)は1/0.1〜1/0.5となる範囲であることが好ましく、最終的に得られるエポキシ樹脂(A)の耐熱性と熱膨張係数とのバランスが良好なものとなる点から好ましい。
ここで使用し得るジヒドロキシ芳香族化合物(a1)は、例えば、カテコール、レゾルシノール、及びハイドロキノン等の2価フェノール類、並びに、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレンが挙げられる。これらの中でも特に得られるフェノール樹脂或いはそのエポキシ化したエポキシ樹脂の硬化物の耐熱性が一層良好なものとなり、また、該硬化物の熱膨張係数も低くなる点からジヒドロキシナフタレン、中でも1,6−ジヒドロキシナフタレン又は2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましく、特に2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
次に、前記アラルキル化剤(a2)のうち、下記構造式(2)
[式中、R1、R2は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基を表す。]で表される化合物としては、例えば、Yがハロゲン原子の場合、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルアイオダイト、o−メチルベンジルクロライド、m−メチルベンジルクロライド、p−メチルベンジルクロライド、p−エチルベンジルクロライド、p−イソプロピルベンジルクロライド、p−tert−ブチルベンジルクロライド、p−フェニルベンジルクロライド、5−クロロメチルアセナフチレン、2−ナフチルメチルクロライド、1−クロロメチル−2−ナフタレン及びこれらの核置換異性体、α−メチルベンジルクロライド、並びにα,α−ジメチルベンジルクロライド等が挙げられる。
Yがアルコキシ基の場合、該アルコキシ基は炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、前記構造式(2)で表される化合物は、例えば、ベンジルメチルエーテル、o−メチルベンジルメチルエーテル、m−メチルベンジルメチルエーテル、p−メチルベンジルメチルエーテル、p−エチルベンジルメチルエーテル及びこれらの核置換異性体、ベンジルエチルエーテル、ベンジルプロピルエーテル、ベンジルイソブチルエーテル、ベンジルn−ブチルエーテル、p−メチルベンジルメチルエーテル及びその核置換異性体等が挙げられる。
Yが水酸基の場合、前記構造式(2)で表される化合物は、例えば、ベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、p−エチルベンジルアルコール、p−イソプロピルベンジルアルコール、p−tert−ブチルベンジルアルコール、p−フェニルベンジルアルコール、α−ナフチルカルビノール及びこれらの核置換異性体、α−メチルベンジルアルコール、及びα,α−ジメチルベンジルアルコール等が挙げられる。
前記アラルキル化剤(a2)のうち、下記構造式(3)
で表される化合物としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン等が挙げられる。
これらの中でも、特に耐熱性の点から前記構造式(2)で表されるアラルキル化剤が好ましく、とりわけベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、及びベンジルアルコールが、最終的に得られるエポキシ樹脂又はフェノール樹脂の硬化物において熱履歴後の耐熱性変化が一層小さくなる点から好ましい。
前記工程1におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)とアラルキル化剤(a2)との反応において使用し得る酸触媒は、例えばリン酸、硫酸、塩酸などの無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第2錫、塩化第2鉄、ジエチル硫酸などのフリーデルクラフツ触媒が挙げられる。
また、上記した酸触媒の使用量は、目標とする変性率などにより適宜選択することができるが、例えば無機酸や有機酸の場合はジヒドロキシ芳香族化合物(a1)100質量部に対し、0.001〜5.0質量部、好ましくは0.01〜3.0質量部なる範囲であり、フリーデルクラフツ触媒の場合はジヒドロキシ芳香族化合物(a1)1モルに対し、0.2〜3.0モル、好ましくは0.5〜2.0モルとなる範囲であることが好ましい。
前記工程1におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)とアラルキル化剤(a2)との反応は、分子量が高くなり軟化点の調整が容易となる点から好ましい。ここで使用し得る有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールやジエチレングリコールのモノ又はジエーテル、ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、並びにベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系有機溶媒が挙げられる。これらのなかでも、特に原料に対する溶解性に優れる点から芳香族系有機溶媒が好ましく、特に得られる反応生成物の軟化点をより高めることができる点からキシレンが好ましい。
前記工程1の反応を行う具体的方法は、有機溶媒存在下にジヒドロキシ芳香族化合物(a1)、アラルキル化剤(a2)、及び前記酸触媒を溶解させ、まず、100〜140℃の温度条件で全反応時間の1/2〜2/3となる時間反応させた後、次いで、140〜180℃に昇温させて反応させる方法が得られるフェノール樹脂の軟化点が高くなる点から好ましい。また、反応時間は特に限定されるものではないが、1〜10時間であることが好ましい。よって、当該反応は、具体的には、前記温度を1〜10時間保持することによって行うことができる。また、反応中に生成するハロゲン化水素、水、或いはアルコール類などは系外に分留管などを用いて留去することが、反応が速やかに進行して生産性が向上する点から好ましい。
また、得られるジヒドロキシナフタレン化合物の着色が大きい場合は、それを抑制するために、反応系に酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。酸化防止剤としては、例えば2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物や2価のイオウ系化合物や3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物等が挙られる。還元剤としては例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれらの塩などが挙げられる。
反応終了後は、酸触媒を中和処理、水洗処理あるいは分解することにより除去し、抽出、蒸留などの一般的な操作により、目的とするフェノール樹脂を分離することができる。中和処理や水洗処理は常法に従って行えばよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、トリエチレンテトラミン、アニリン等の塩基性物質を中和剤として用いることができる。
次に、前記工程2として、工程1で得られたフェノール樹脂と、エピハロヒドリン類(a3)とを反応させることにより目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。工程2における反応は、前記フェノール樹脂中のフェノール性水酸基1モルに対し、エピハロヒドリン類(a3)2〜10モルを添加し、更に、前記フェノール樹脂中のフェノール性水酸基1モルに対し0.9〜2.0モルの塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。
ここで用いる塩基性触媒は固形として、或いはその水溶液として使用することができる。前記塩基性触媒を水溶液として使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下または常圧下に連続的に水及びエピハロヒドリン類(a3)を留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリン類(a3)は反応混合物中に連続的に戻す方法を採用してもよい。
前記エピハロヒドリン類(a3)は、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられ、なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでの反応終了後の次バッチ以降の反応では、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類(a3)と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類(a3)とを併用することが好ましい。
また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜二種以上を併用してもよい。
前述のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲が好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより高純度のエポキシ樹脂を得ることができる。
次に、本発明で用いるフェノール樹脂(B)は、下記一般式(i)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表し、nは繰り返し単位であって1以上の整数である。)
で表されるナフトールノボラック樹脂(b1)と、
下記一般式(ii)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。)
で表される化合物(b2)とを必須の成分として含有するものである。
前記フェノール樹脂(B)において、前記一般式(i)におけるn=1体及びn=2体のGPC測定におけるピーク面積の合計をフェノール樹脂(B)中の10〜35%の範囲とし、かつ、前記一般式(i)におけるnの平均を3.0〜7.0の範囲とすることにより、高分子量かつ分子量分布の広いナフトールノボラック樹脂となり、熱による分解が抑制され、ナフタレン骨格の剛直骨格の持つ耐熱性と相俟って優れた耐熱性が発現されることから好ましい。中でも、特に前記一般式(i)におけるn=1体及びn=2体のGPC測定におけるピーク面積の合計が、フェノール樹脂(B)中の20〜35%の範囲であり、かつ、nの平均3.0〜5.0の範囲であることが、硬化物の耐熱性が向上することから好ましい。
また、フェノール樹脂(B)中の化合物(b2)のGPC測定におけるピーク面積基準での含有率は、フェノール樹脂(B)の粘度を低減させ、その結果十分に硬化反応が進行し、耐熱性に優れる硬化物を得ることが出来ることから、1〜6%となる割合であることが好ましい。即ち、従来、耐熱性低下を回避するため除去していたモノナフトール化合物を特定の割合で残存、あるいは添加させることにより、フェノール樹脂(B)の粘度を低減させることができ、更に硬化性が向上することから、耐熱性により優れる硬化物を得ることが出来る。
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は前述の通り、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格とし、その芳香核上に前記構造式(1)で表される構造部位(α)を有するものである。このようなエポキシ樹脂(A)は、耐熱性の高さに比して粘度が低く溶剤溶解性に優れる特徴がある一方、該構造部位(α)が嵩高いことから、一般的な硬化剤であるノボラック型フェノール樹脂等と組み合わせて用いた場合には、前記構造部位(α)に起因する立体障害により疎密のある硬化物となり、熱膨張性や熱履歴後の耐熱性変化を十分に小さくすることが難しいものであった。これに対し、本願発明は、前記化合物(b2)のようなナフトールモノマーを含有するフェノール樹脂(B)と組み合わせることにより、前記エポキシ樹脂(A)が有する高耐熱かつ低粘度の特徴を活かしながら、更に、熱膨張性と熱履歴後の耐熱性変化を低減させることに成功したものである。
このような効果は、前記化合物(b2)のような比較的低分子量の成分が、エポキシ樹脂(A)が有する前記構造部位(α)による立体障害の影響を緩和することにより、密なπスタッキングの形成が可能となり、硬化物が高密化したこと、また、πスタッキングを高密化する効果と、前述の粘度低減効果が相乗的に発揮されることにより、硬化反応の反応率が向上したことに起因すると考えられる。一般に、前記化合物(b2)の様な比較的低分子量の成分を含有する組成物は硬化物の耐熱性に劣る傾向があるところ、エポキシ樹脂(A)が有する耐熱性に優れる特徴を活かしながら、更に、熱膨張性と熱履歴後の耐熱性を低減させた本発明の効果は、特筆すべきものである。
ここで、化合物(b2)、並びに前記一般式(i)におけるn=1体及びn=2体の合計のGPC測定における面積比とは、GPC測定によって計算される、本発明のフェノール樹脂(B)全体の面積と、化合物(b2)、並びに前記一般式(i)におけるn=1体及びn=2体の各ピーク面積の合計との面積比であり、具体的には下記の方法にて測定及び算出される値である。また、一般式(i)中のnの平均は、フェノール樹脂(B)をGPC測定において、化合物(b2)のピークを除外して数平均分子量を導出し、その結果を基に算出される値である。
<GPC測定条件>
3)GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
<フェノール樹脂(B)中の化合物(b2)の含有率の算出方法>
フェノール樹脂(B)を上記のGPC測定条件で測定し、検出されたフェノール樹脂の全てのピーク面積と、化合物(b2)のピーク面積との比で算出される値である。
<前記一般式(i)におけるn=1体及びn=2体の合計のフェノール樹脂(B)中の存在割合の算出方法>
フェノール樹脂(B)を上記のGPC測定条件で測定し、検出されたフェノール樹脂(B)の全てのピーク面積と、前記一般式(i)におけるn=1体及びn=2体の各ピーク面積の合計との比で算出される値である。
<前記一般式(i)中のnの平均の算出方法>
一般式(i)中のnの平均は、フェノール樹脂(B)を上記のGPC測定条件で測定、化合物(b2)のピークを除外した数平均分子量(Mn)から下記の計算式で算出したものである。なお、下記式中、「X」は一般式(i)におけるn=0体に相当する分子量[ナフトールノボラック樹脂(b1)を化合物(b2)と同一の化合物から製造した場合には、化合物(b2)の分子量]を表す。また、本発明では、後述するフェノールノボラック又はアルキルフェノールノボラック成分(b3)を含有する場合であっても、nの平均は下記計算式によって算出される値となる。
n= (Mn−X)/(X+12)
ここで、ナフトールノボラック樹脂(b1)における一般式(i)中のR1及びR2は、前記した通り、それぞれ独立的に水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基である。ここで、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基、前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、i−プロピルオキシ基、t−ブチルオキシ基等の炭素原子数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。本発明では、R1及びR2として、特に、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基であることが好ましく、なかでも、硬化物の耐熱性及び低熱膨張性に優れる点から水素原子であることが好ましい。
また、一般式(i)中のナフトール骨格は、α−ナフトール骨格、及びβ−ナフトール骨格の何れであってもよいが、本発明ではα−ナフトール骨格であることが耐熱性向上の効果が顕著なものとなる点から好ましい。更に、ナフトールノボラック樹脂(b1)は、本発明では前記化合物(b2)と同一化合物を原料として用いたナフトールノボラック樹脂であることが溶剤溶解性、硬化物の耐熱性及び低熱膨張性に優れる点から好ましい。
次に、前記化合物(b2)における一般式(ii)中のR1及びR2は、前記した通り、それぞれ独立的に水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基である。ここで、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基、前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、i−プロピルオキシ基、t−ブチルオキシ基等の炭素原子数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。本発明では、R1及びR2として、特に、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基であることが好ましく、なかでも、硬化性が良好であり硬化物の耐熱性及び低熱膨張性に優れ、耐熱性の変化率が小さくなる点から水素原子であることが好ましい。
前記したナフトールノボラック樹脂(b1)と化合物(b2)とは、後者のGPC測定における面積比が1〜6%となるように配合することによって本発明のフェノール樹脂(B)とすることができるが、前記したとおり、化合物(b2)と同一化合物を原料として用いたナフトールノボラック樹脂を前記ナフトールノボラック樹脂(b1)として用いることが好ましい。この場合、下記一般式(ii)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。)
で表される化合物(b2)と、ホルムアルデヒド(f)とを、酸触媒下に、生成物中の前記化合物(b2)の残存量がGPC測定におけるピーク面積基準で1〜6%、生成物の軟化点が115〜150℃となるように反応させることを特徴とする本発明のフェノール樹脂組成物の製造方法(以下、これを「方法1」と略記する。)によって前記フェノール樹脂組成物を製造することが、工業的な生産性に優れると共に、混合物の均一性に優れ、耐熱性及低熱膨張性の改善効果がより顕著なものとなる点から好ましい。
斯かる方法1において、化合物(b2)とホルムアルデヒド(f)との反応割合は、これらのモル比[ホルムアルデヒド(f)/化合物(b2)]が0.6〜0.8となる割合であることが耐熱性及び低熱膨張性に優れる硬化物が得られることから好ましい。
上記反応で用いられるホルムアルデヒド(f)のホルムアルデヒド源としては、例えば、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。ここで、ホルマリンは水希釈性や製造時の作業性の点から30〜60質量%のホルマリンであることが好ましい。
上記反応で用いられる酸触媒としては塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。その使用量は仕込み原料の総重量に対して、0.1〜5重量%の範囲が好ましい。
また、方法1における反応温度は80〜150℃の範囲であることが反応性に優れる点から好ましい。
このようにして得られる重縮合体(b1)と化合物(b2)とを含有するフェノール樹脂(B)は、その軟化点が110〜150℃の範囲であることが組成物における流動性と硬化物における耐熱性とのバランスに優れる点から好ましい。
本発明のフェノール樹脂組成物は、ナフトールノボラック樹脂(b1)と化合物(b2)に加え、フェノールノボラック又はアルキルフェノールノボラック成分(b3)を含有することが、硬化物の耐熱性及び低熱膨張性を一層改善できる点から好ましい。
ここで、フェノールノボラック又はアルキルフェノールノボラック成分(b3)(以下、「ノボラック成分(b3)」と略記する。)とは、フェノールノボラック又はアルキルフェノールノボラック(n)、及び、これとナフトール類とホルムアルデヒドとの重縮合体(b3’)が挙げられ、特に、前記ノボラック(n)と前記重縮合体(b3’)とを渾然一体に含む樹脂成分であることが耐熱性及び低熱膨張性の改善効果に優れる点から好ましい。
ここで、前記フェノール樹脂組成物中のノボラック成分(b3)の存在割合は、前記重縮合体(b1)及び化合物(b2)中の全ナフトール骨格に対する前記ノボラック成分(b3)中の全フェノール骨格の割合として、ナフトール骨格1モルあたり、フェノール骨格が0.2〜0.01モルとなる割合であることが、硬化物に耐熱性及び低熱膨張性の改善効果が顕著なものとなる点から好ましい。
ここで、上記のナフトール骨格1モルあたりのフェノール骨格のモル数の割合は13C−NMR測定によって計算され、具体的には下記の方法にて測定及び算出される値である。
<13C−NMR測定条件>
13C−NMR:測定条件は以下の通り。
装置:日本電子(株)製 AL−400
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:45℃パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
<ナフトール骨格1モルあたりのフェノール骨格のモル数の割合の算出方法>
フェノール樹脂組成物を上記の13C−NMR測定条件で測定した場合、145ppmから160ppmの間に検出される水酸基が結合する炭素原子のピークの積算値(α)と100ppmから140ppmの間に検出される水酸基が結合していない炭素原子のピークの積算値(β)の関係は、下記式(1)及び下記式(2)を充足する。ここで(X)はナフトール骨格のモル数、(Y)はフェノール骨格のモル数を示す。
よって、上記式(1)及び式(2)から、ナフトール骨格1モルあたりのフェノール骨格のモルの割合(Y/X)は、下記式(3)により算出することができる。
本発明のフェノール樹脂組成物中に、ノボラック成分(b3)を配合する方法としては、具体的には、該フェノール樹脂組成物を製造する際、下記一般式(2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。)
で表される化合物(b2)と、ホルムアルデヒド(f)と、フェノールノボラック又はアルキルフェノールノボラック成分(b3)とを、酸触媒下に、生成物中の前記化合物(b2)の残存量がGPC測定におけるピーク面積基準で1〜6%、生成物の軟化点が115〜150℃となるように反応させる方法(以下、これを「方法2」と略記する。)が挙げられる。本発明では、かかる方法2により、ノボラック成分(b3)を含有するフェノール樹脂組成物を製造する場合、該フェノール樹脂組成物の工業的な生産性が良好なものとなると共に、該フェノール樹脂組成物の均一性に優れ、耐熱性及び低熱膨張性の改善効果がより顕著なものとなる点から好ましい。
ここで、前記方法2で用いるフェノールノボラック又はアルキルフェノールノボラック(b3)は、具体的には、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラックなどが挙げられる。本発明では難燃性に優れる点からクレゾールノボラックであることが好ましい。また、かかるフェノールノボラック又はアルキルフェノールノボラック(b3)は、軟化点が60〜120℃の範囲にあるもの、更に、前記条件でのGPC測定による平均核体数が3〜10の範囲にあるものが最終的に得られるフェノール樹脂組成物の流動性を高く保持しつつ、難燃性及び密着性の改善効果が良好なものとなる点から好ましい。
前記方法2における、フェノールノボラック又はアルキルフェノールノボラック(n)使用量は、原料成分中、0.5〜10質量%となる割合であることが好ましい。ここで述べる原料成分とは、化合物(b2)、ホルムアルデヒド(f)及びフェノールノボラック又はアルキルフェノールノボラック(b3)の総量の事を示す。一方、化合物(b2)とホルムアルデヒド(f)との反応割合は、方法1の場合と同様に、モル比[ホルムアルデヒド(f)/化合物(b2)]が0.6〜0.8となる割合であることが難燃性及び密着性に優れる点から好ましい。
また、方法2で用いられる酸触媒は、方法1の場合と同様に、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。その使用量は仕込み原料の総重量に対して、0.1〜5重量%の範囲が好ましい。
方法2における反応温度は80〜150℃の範囲であることが反応性に優れる点から好ましい。
このようにして方法2により製造されたフェノール樹脂組成物は、その軟化点が110〜150の範囲であることが組成物における流動性と硬化物における耐熱性とのバランスに優れる点から好ましい。
本発明の硬化性組成物における前記エポキシ樹脂(A)と前記フェノール樹脂(B)との配合割合は、特に制限されるものではないが、得られる硬化物が耐熱性により優れるものとなることから、前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基の合計1当量に対して、前記gフェノール樹脂(B)が含有するフェノール性水酸基の合計が0.7〜1.5当量の範囲となる割合であることが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、前記したフェノール樹脂(B)をエポキシ樹脂用硬化剤として用いるものであるが、必要に応じて、適宜、その他のエポキシ樹脂用硬化剤(B’)を併用してもよい。ここで使用し得るその他のエポキシ樹脂用硬化剤としては、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの各種の公知の硬化剤が挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
前記したその他のエポキシ樹脂用硬化剤(B’)を用いる場合、その使用量は、エポキシ樹脂用硬化剤(B’)中の活性水素と、フェノール樹脂(B)中のフェノール性水酸基との当量比(活性水素/水酸基)が1/10〜5/1となる範囲であることが好ましい。
また、本発明では、前記エポキシ樹脂(A)以外のエポキシ化合物(A’)を併用しても良い。その他のエポキシ化合物(A’)の使用量は、例えば、全エポキシ成分中、5〜50質量%となる範囲であることが好ましい。
ここで使用され得るエポキシ化合物(A’)としては、種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール系化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
ここで、リン原子含有エポキシ樹脂としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)のエポキシ化物、HCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂のエポキシ化物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、クレゾールノボック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を及びHCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明では、必要に応じて硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2−エチル−4−メチルイミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
以上詳述した本発明の硬化性組成物をプリント配線基板用ワニス等に調整する場合、上記各成分の他に有機溶剤(C)を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線基板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分が30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、他の熱硬化性樹脂と併用することもできる。ここで使用し得る他の熱硬化性樹脂は、例えば、シアネートエステル化合物、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物などが挙げられる。上記した他の熱硬化性樹脂を併用する場合、その使用量は本発明の効果を阻害しなければ特に制限をうけないが、本発明の熱硬化性樹脂組成物に対して1〜80重量%の範囲であることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は、難燃性をさらに高めるために、例えばプリント配線基板用途においては、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール系化合物と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.5〜50質量部の範囲で配合することが好ましく、特に5〜30質量部の範囲で配合することが好ましい。
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物100質量部中、0.5〜100質量部の範囲で配合することが好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
本発明の硬化性組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。エポキシ成分、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の硬化性組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
本発明の硬化性組成物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、樹脂注型材料、接着剤、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等が挙げられる。また、これら各種用途のうち、プリント配線板や電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高耐熱性及び難燃性といった特性からプリント配線板材料やビルドアップ用接着フィルムに用いることが好ましい。
ここで、本発明の硬化性組成物からプリント回路基板を製造するには、前記有機溶剤(C)を配合してワニス化した樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時用いる硬化性組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
本発明の硬化性組成物をレジストインキとして使用する場合には、例えば該硬化性組成物の触媒としてカチオン重合触媒を用い、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該硬化性組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては、例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該硬化性組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該硬化性組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
本発明の硬化性組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の硬化性組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の硬化性組成物を調製した後、支持フィルム(y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物の層(x)を形成させることにより製造することができる。
形成される層(x)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、本発明における層(x)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、硬化性組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
上記した支持フィルム(y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(x)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(x)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
本発明の硬化物を得る方法としては、上記方法によって得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%
」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、軟化点、13C−NMR、GPC及びMSは以下の条件にて測定した。
1)軟化点測定法:JIS K7234
2)フェノール樹脂(B)の13C−NMR:
日本電子(株)製「AL−400」により下記条件で測定した。
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:45℃パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
3)GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアル
に準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィ
ルターでろ過したもの(50μl)。
4)FD−MS:日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置「AX505H(FD505H)」により測定した。
製造例1 フェノール樹脂(a−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレンを160部(1.0モル)、ベンジルアルコール25部(0.25モル)、キシレン160部、パラトルエンスルホン酸・1水和物2部を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、140℃に昇温し、生成する水を系外に留去しながら4時間攪拌した(同時に留去するキシレンは系内に戻す)。その後、150℃に昇温し、生成する水とキシレンを系外に留去しながら3時間攪拌した。反応終了後、20%水酸化ナトリウム水溶液2部を添加して中和した後、水分およびキシレンを減圧下除去してフェノール樹脂(a−1)を178部得た。得られたフェノール樹脂(a−1)は褐色固体であり、水酸基当量は169グラム/当量、軟化点は130℃であった。得られたフェノール樹脂(a−1)のFD−MSのスペクトルを図1に、GPCチャートを図3に示す。フェノール樹脂(a−1)のFD−MS及び13C−NMRによる構造解析を行うと共に、更に、フェノール樹脂(a−1)をトリメチルシリル化したものについて、FD−MSを測定し、以下のa.〜f.のピークを確認した。トリメチルシリル化法によるFD−MSのスペクトルを図2に示す。
a.2,7−ジヒドロキシナフタレン(Mw:160)にベンジル基(分子量Mw:90)が1個付加したピーク(M+=250)、更にベンジル基(分子量Mw:90)が2個付加したピーク(M+=340)。
従って2,7−ジヒドロキシナフタレン1モルにベンジル基が1モル結合した構造の化合物および2モル結合した構造の化合物であることを確認した。
b.2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体のピーク(M+=302)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=446)。
従って、b.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体エーテル化合物であることを確認した。
c.2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体のピーク(M+=444)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=588)及び3個付加したピーク(M+=660)。
従って、c.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の3量体化合物であることを確認した。
d.2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体のピーク(M+=586)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=730)及び3個付加したピーク(M+=802)。
従って、d.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の4量体化合物であることを確認した。
e .2,7−ジヒドロキシナフタレン5量体のピーク(M+=729)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M+=873)及び3個付加したピーク(M+=944)及び4個付加したピーク(M+=1016)。
従って、e.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン5量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の5量体化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが2モル核脱水して生成した構造の5量体化合物であることを確認した。
f .b〜eのそれぞれにベンジル基(分子量Mw:90)が1個付加したピーク、更にベンジル基(分子量Mw:90)が2個付加したピーク。
従ってb〜eのそれぞれに1モルにベンジル基が1モル結合した構造の化合物および2モル結合した構造の化合物であることを確認した。
製造例2 エポキシ樹脂(A−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、実施例1で得られたフェノール樹脂(a−1)169g、エピクロルヒドリン463g(5.0モル)、n−ブタノール139g、テトラエチルベンジルアンモニウムクロライド2gを仕込み溶解させた。65℃に昇温した後、共沸する圧力まで減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液90g(1.1モル)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸によって留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離し、水層を除去し、油層を反応系内に戻しながら、反応を行った。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン432gとn−ブタノール130gとを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水150gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、エポキシ樹脂230gを得た(以下、これを「エポキシ樹脂(A−1)」と略記する)。得られたエポキシ樹脂(A−1)の軟化点は100℃、エポキシ当量は277g/eqであった。エポキシ樹脂(A−1)のFD−MSのスペクトルを図4に、GPCチャートを図5に示す。
製造例3 フェノール樹脂(a−2)の製造
ベンジルアルコール16部(0.15モル)に変えた以外は製造例1と同様に反応し、フェノール樹脂(a−2)を233部得た。このフェノール樹脂(a−2)は褐色固体であり、水酸基当量は162グラム/当量、軟化点は141℃であった。
製造例4 エポキシ樹脂(A−2)の製造
フェノール樹脂(a−1)169gをフェノール樹脂(a−2)162gに変えた以外は実施例2と同様に反応し、エポキシ樹脂(A−2)を220部得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は110℃、エポキシ当量は268g/eqであった。
製造例5 フェノール樹脂(B−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、α−ナフトール505質量部(3.50モル)、水158質量部、蓚酸5質量部を仕込み、室温から100℃まで45分で昇温しながら撹拌した。続いて、42質量%ホルマリン水溶液177質量部(2.45モル)を1時間要して滴下した。滴下終了後、さらに100℃で1時間攪拌し、その後180℃まで3時間で昇温した。反応終了後、反応系内に残った水分を加熱減圧下に除去しフェノール樹脂(B−1)498質量部を得た。得られたフェノール樹脂(B−1)の軟化点は133℃(B&R法)、水酸基当量は154グラム/当量であった。得られたフェノール樹脂(B−1)のGPCチャートを図6に示す。フェノール樹脂組成物(B−1)におけるα−ナフトールモノマーのGPC測定における面積比は3.0%であり、前記一般式(i)(R1及びR2が水素原子である成分)におけるnの平均は、3.9であり、フェノール樹脂組成物(B−1)中の2核体と3核体のGPC測定における面積比の合計(前記一般式(i)においてR1及びR2が水素原子である場合のn=1体とn=2体の合計)は27.0%であった。
製造例6 フェノール樹脂(B−2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、α−ナフトール505質量部(3.50モル)、軟化点75℃(B&R法)のクレゾールノボラック樹脂21部(クレゾール骨格のモル数:0.18モル)、水158質量部、蓚酸5質量部を仕込み、室温から100℃まで45分で昇温しながら撹拌した。続いて、42質量%ホルマリン水溶液186質量部(2.57モル)を1時間要して滴下した。滴下終了後、さらに100℃で1時間攪拌し、その後180℃まで3時間で昇温した。反応終了後、加熱減圧下、水蒸気を吹き込むことによってフリーのα−ナフトールを一部除去してフェノール樹脂(B−2)505質量部を得た。得られたフェノール樹脂(B−2)の軟化点は137℃(B&R法)、水酸基当量は155グラム/当量であった。得られたフェノール樹脂(B−2)のGPCチャートを図7に示す。フェノール樹脂(B−2)におけるα−ナフトールモノマーのGPC測定における面積比は1.5%であり、前記一般式(i)(R1及びR2が水素原子である成分)におけるnの平均は4.0であり、フェノール樹脂組成物(B−2)中の2核体と3核体のGPC測定における面積比の合計(前記一般式(i)においてR1及びR2が水素原子である場合のn=1体とn=2体の合計)は27.5%であった。
製造例7 フェノール樹脂(B−3)の製造
原料成分として、α−ナフトール505質量部(3.50モル)、軟化点75℃(B&R法)のクレゾールノボラック樹脂21質量部(クレゾール骨格のモル数:0.18モル)、42質量%ホルマリン水溶液186質量部(2.57モル)に変更した以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂(B−3)521質量部を得た。得られたフェノール樹脂(B−3)の軟化点は129℃(B&R法)、水酸基当量は152グラム/当量であった。得られたフェノール樹脂(B−3)のGPCチャートを図8に、13C−NMRチャート図を図9に、FD−MSのスペクトルを図10示す。フェノール樹脂(B−3)におけるα−ナフトールモノマーのGPC測定における面積比は3.8%であり、前記一般式(i)(R1及びR2が水素原子である成分)におけるnの平均は4.0であり、フェノール樹脂組成物(B−3)中の2核体と3核体のGPC測定における面積比の合計(前記一般式(i)においてR1及びR2が水素原子である場合のn=1体とn=2体の合計)は26.4%であった。また、ナフトール骨格1モルあたりのフェノール骨格のモルの割合は0.05であった。
比較製造例1 フェノール樹脂(B’−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、α−ナフトール505質量部(3.50モル)、軟化点75℃(B&R法)のクレゾールノボラック樹脂21部(クレゾール骨格のモル数:0.18モル)、水158質量部、蓚酸5質量部を仕込み、室温から100℃まで45分で昇温しながら撹拌した。続いて、42質量%ホルマリン水溶液146質量部(2.02モル)を1時間要して滴下した。滴下終了後、さらに100℃で1時間攪拌し、その後180℃まで3時間で昇温した。反応終了後、反応系内に残った水分を加熱減圧下に除去しフェノール樹脂(B’−1)505質量部を得た。得られたフェノール樹脂(B’−1)の軟化点は95℃(B&R法)、水酸基当量は151グラム/当量であった。得られたフェノール樹脂(B’−1)のGPCチャートを図11に示す。フェノール樹脂(B’−1)におけるα−ナフトールモノマーのGPC測定における面積比は10.2%であり、前記一般式(i)(R1及びR2が水素原子である成分)におけるnの平均は2.3であり、フェノール樹脂組成物(B’−1)中の2核体と3核体のGPC測定における面積比の合計(前記一般式(i)においてR1及びR2が水素原子である場合のn=1体とn=2体の合計)は46.0%であった。また、ナフトール骨格1モルあたりのフェノール骨格のモル数の割合は0.05であった。
比較製造例2 フェノール樹脂(B’−2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、α−ナフトール505質量部(3.50モル)、水158質量部、蓚酸5質量部を仕込み、室温から100℃まで45分で昇温しながら撹拌した。続いて、42質量%ホルマリン水溶液186質量部(2.57モル)を1時間要して滴下した。滴下終了後、さらに100℃で1時間撹拌し、その後180℃まで3時間で昇温した。反応終了後、200℃に昇温し加熱減圧下、水蒸気を吹き込むことによってフリーのα−ナフトールを除去してフェノール樹脂(B’−2)475質量部を得た。得られたフェノール樹脂(B’−2)の軟化点は142℃(B&R法)、水酸基当量は157グラム/当量であった。得られたフェノール樹脂(B’−2)のGPCチャートを図12に示す。フェノール樹脂(B’−2)におけるα−ナフトールモノマーのGPC測定における面積比は0%であり、前記一般式(i)(R1及びR2が水素原子である成分)におけるnの平均は4.0であり、フェノール樹脂(B’−2)中の2核体と3核体のGPC測定における面積比の合計(前記一般式(i)においてR1及びR2が水素原子である場合のn=1体とn=2体の合計)は27.4%であった。
実施例1〜6、及び比較例1〜4
下記表1記載の配合に従い、エポキシ樹脂として前記(A−1)又は(A−2)を、硬化剤として前記フェノール樹脂(B−1)〜(B〜3)、(B’−1)又は(B’−2)を、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を配合し、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合して調整した。次いで、下記の如き条件で硬化させて試験片を試作し、下記の方法で各種性能を評価した。結果を表1に示す。
<試験片作製条件>
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6 プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cm2で1.5時間、成型後板厚:0.8mm
<耐熱性試験>
試験片のガラス転移温度をDMA法にて測定。粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。昇温スピード3℃/分
<熱履歴後の耐熱性変化(ΔTg):DMA(1st run、2nd runのTg差)>
試験片のガラス転移温度を、粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、以下の温度条件で2回、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度(Tg)を測定した。
温度条件
1st run:35℃から275℃まで3℃/minで昇温
2nd run:35℃から330℃まで3℃/minで昇温
それぞれ得られた温度差をΔTgとして評価した。
<熱膨張率>
試験片を5mm×5mm×0.8mmのサイズに切り出し、熱機械分析装置(TMA:セイコーインスツルメント社製SS−6100)を用いて、圧縮モードで熱機械分析を行った。
測定条件
測定架重:88.8mN
昇温速度:10℃/分で2回
測定温度範囲:−50℃から300℃
上記条件での測定を同一サンプルにつき2回実施し、2回目の測定における、40℃から60℃の温度範囲における平均線膨張率を熱膨張係数として評価した。