JP5463859B2 - エポキシ樹脂組成物、その硬化物、新規エポキシ樹脂、新規フェノール樹脂、プリプレグ、及び回路基板 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、その硬化物、新規エポキシ樹脂、新規フェノール樹脂、プリプレグ、及び回路基板 Download PDF

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Description

本発明は、その硬化物において優れた難燃性、耐熱性、低誘電正接を発現し、かつ、溶剤溶解性に優れた性能を有するエポキシ樹脂組成物、その硬化物、及びこれに用いる新規エポキシ樹脂、新規フェノール樹脂、並びに、該エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、並びに積層板に関する。
エポキシ樹脂は、接着剤、成形材料、塗料、フォトレジスト材料、顕色材料等に用いられている他、得られる硬化物の優れた耐熱性や耐湿性などに優れる点から半導体封止材や回路基板用絶縁材料等の電気・電子分野で幅広く用いられている。
これらの各種用途のうち、積層板などの回路基板用絶縁材料の分野では、電子機器の小型化・高性能化の流れに伴い、半導体装置の配線ピッチの狭小化による高密度化の傾向が著しく、これに対応した半導体実装方法として、はんだボールにより半導体装置と基板とを接合させるフリップチップ接続方式が広く用いられている。このフリップチップ接続方式では、配線板と半導体との間にはんだボールを配置、全体を加熱して溶融接合させる所謂リフロー方式による半導体実装方式であるため、はんだリフロー時に配線版自体が高熱環境に晒され、配線板の高温時の弾性率低下により、配線の接続不良を起こす場合があった。その為、回路基板に用いられる絶縁材料には、高温時においても弾性率が低下しづらい高耐熱性の材料が求められている。
一方、難燃性を付与するために臭素等のハロゲン系難燃剤がアンチモン化合物とともに配合されている。しかし、近年、環境・安全への取り組みのなかで、ダイオキシン発生が懸念されるハロゲン系難燃剤や、発ガン性が疑われているアンチモン化合物を用いない環境・安全対応型の難燃化方法の開発が強く要求されている。
すなわち回路基板用の絶縁材料には、高度な耐熱性、難燃性が求められており、かかる要求に対応できるエポキシ樹脂材料が待望されている。
このような要求に対応すべく、難燃性に優れた絶縁材料として、例えば樹脂構造の主骨格にポリアリーレンオキシ構造を導入し、かつ、該ポリアリーレンオキシ構造に更にアラルキル構造を導入することで得られるフェノール樹脂およびこれをエポキシ化したエポキシ樹脂などが提案されている(下記特許文献1参照)。かかるフェノール樹脂又はエポキシ樹脂は、例えば半導体封止材料として使用した場合には優れた難燃性能を発現するものの、それら自体が有機溶剤への溶解性が低く、有機溶媒中で一部結晶化が発生するため、回路基板用の絶縁材料のようなワニス組成物として使用し難いものであることに加え、仮にこれらを用いて回路基板を製造した場合には、十分な難燃性が発現されない他、耐熱性にも劣るものであった。更に、該フェノール樹脂又はエポキシ樹脂を回路基板用絶縁材料として用いた場合、近年の回路積層板への要求の高い誘電正接が高くなってしまうものであった。
特開2006−307162号公報
従って、本発明が解決しようとする課題は、優れた難燃性、耐熱性、及び低誘電正接といった性能を硬化物に付与することができるエポキシ樹脂組成物、新規エポキシ樹脂及び新規フェノール樹脂、前記性能を兼備したエポキシ樹脂硬化物、並びに、前記組成物から得られるプリプレグ及びに回路基板を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、樹脂構造の主骨格にポリアリーレンオキシ構造を導入し、かつ、該ポリアリーレンオキシ構造に更にアラルキル構造を導入することにより誘電特性を低下させることなく、難燃性を飛躍的に向上させることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、グリシジルオキシ基又はメチルグリシジルオキシ基、及び下記構造式(1)
Figure 0005463859

[構造式(1)中、R及びRは各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、該分子構造中、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜0.5モルとなる範囲であり、かつ、その軟化点が80〜140℃であるエポキシ樹脂(A)、並びに硬化剤(B)を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する(以下、このエポキシ樹脂組成物を「エポキシ樹脂組成物(I)」と略記する)。
本発明は、また、前記エポキシ樹脂組成物(I)を硬化させて得られる硬化物に関する。
本発明は、更に、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、グリシジルオキシ基又はメチルグリシジルオキシ基、及び下記構造式(1)
Figure 0005463859

[構造式(1)中、R及びRは各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは繰り返し数の平均値で0.1〜4である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、該分子構造中、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜0.5モルとなる範囲であり、かつ、その軟化点が80〜140℃であることを特徴とする新規エポキシ樹脂に関する。
本発明は、また、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香環に、フェノール性水酸基及び下記構造式(1)
Figure 0005463859

[構造式(1)中、R及びRは各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、該分子構造中、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜0.5モルとなる範囲であり、かつ、その軟化点が90〜150℃であるフェノール樹脂(B’)、及びエポキシ樹脂(A’)を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物(以下、このエポキシ樹脂組成物を「エポキシ樹脂組成物(II)」と略記する)に関する。
本発明は、また、前記エポキシ樹脂組成物(II)を硬化させて得られる硬化物に関する。
本発明は、更に、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、かつ、該構造の芳香環に、フェノール性水酸基及び下記構造式(1)
Figure 0005463859

[構造式(1)中、R及びRは各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、該分子構造中、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜0.5モルとなる範囲であり、かつ、その軟化点が90〜150℃であることを特徴とする新規フェノール樹脂に関する。
本発明は、更に、前記エポキシ樹脂組成物(I)又はエポキシ樹脂組成物(II)を有機溶剤に希釈したものを補強基材に含浸し、得られる含浸機材を半硬化させて得られるプリプレグに関する。
本発明は、更に、前記エポキシ樹脂組成物(I)又はエポキシ樹脂組成物(II)を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものと銅箔とを加熱加圧成型することにより積層して得られる回路基板に関する。
本発明によれば、優れた難燃性と、誘電特性とを硬化物に付与することができるエポキシ樹脂組成物、新規エポキシ樹脂及び新規フェノール樹脂、前記性能を兼備したエポキシ樹脂硬化物、並びに、前記組成物から得られるプリプレグ及びに回路基板を提供できる。
実施例1で得られたフェノール樹脂(A−1)のFD−MSのスペクトルである。 実施例1で得られたフェノール樹脂(A−1)のトリメチルシリル化法によるFD−MSのスペクトルである。 実施例1で得られたフェノール樹脂(A−1)のGPCチャート図である。 実施例2で得られたエポキシ樹脂(B−1)のFD−MSのスペクトルである。 実施例2で得られたフェノール樹脂(B−1)のGPCチャート図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)で用いるエポキシ樹脂(A)は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、かつ、該構造の芳香核に、グリシジルオキシ基又はメチルグリシジルオキシ基、及び下記構造式(1)
Figure 0005463859

[構造式(1)中、R及びRは各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]
で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、該分子構造中、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜0.5モルとなる範囲であり、かつ、その軟化点が80〜140℃のものである。ここで、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合とは、後述するエポキシ樹脂(A)の製造方法におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)1モルに対する前記アラルキル化剤(a2)のモル数に相当する。本発明では、エポキシ樹脂(A)の製造方法におけるこれら原料成分のほぼ全量が生成物中に取り込まれる為、これら原料成分のモル比率が、実質的に前記分子構造(α)を構成する芳香核のモル基準の存在割合に相当することとなる。
このように前記エポキシ樹脂(A)は、軟化点が高く、また、その割に前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が低いことを特徴としている。即ち、ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長くなり、優れた溶剤溶解性が発現されると共に、回路基板用途における高度な難燃性能にも対応することが可能となる。更に、エポキシ樹脂(A)中の前記分子構造(α)の存在比が低くなることから、エポキシ基の反応性が向上し、硬化物に優れた耐熱性を付与することができる。とりわけ難燃性の発現メカニズムが、燃焼時に、ポリアリーレンオキシ構造中のアリーレン基と前記分子構造(α)とによってチャーが形成されるという公知の知見に鑑みれば、前記分子構造(α)の存在比が低くなっても優れた難燃性を発現することは特筆に値するものである。
前記エポキシ樹脂(A)の基本骨格を成すポリアリーレンオキサイド構造は、ポリナフチレンオキサイド構造、及び炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたポリナフチレンオキサイド構造などのナフチレンオキサイド系構造、並びに、ポリフェニレンオキサイド構造、及び炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたポリフェニレンオキサイド構造などのフェニレンオキサイド系構造が挙げられる。これらのなかでも特に本発明ではナフチレンオキサイド系構造を有するものが、難燃効果が一層顕著なものとなる他、誘電正接も低くなる点から好ましい。更に、難燃効果の点から中でもポリナフチレンオキサイド構造或いはメチル基含有ポリナフチレンオキシサイド構造が好ましく、特にポリナフチレンオキサイド構造であることが好ましい。
次に、前記エポキシ樹脂(A)の分子構造中に有する下記構造式(1)
Figure 0005463859

で表される構造部位(α)において、R及びRは各々独立してメチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、及び、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基からなる群から選択される二価の芳香族系炭化水素基である。また、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基とは、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、i−プロピルフェニレン基、又はt−ブチルフェニレン基等が挙げられ、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基とは、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基、i−プロピルナフチレン基、及びt−ブチルナフチレン基等が挙げられる。また、nは1又は2の整数である。
これらの中でも、工業的生産において原料の入手が容易であり、得られる硬化物の難燃性に優れ、かつ、誘電特性にも優れる点からR及びRが共に水素原子であることが好ましい。また、nの値は難燃効果及び誘電特性の点から特に1であることが好ましく、原料の入手が容易でかつエポキシ樹脂(A)の粘度が低くなる点からArがフェニレン基であることが好ましい。
更に、本発明では、前記一般式(1)中の「Ar」で表される芳香核の存在割合は、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたり0.1〜0.5モルとなる範囲である。ここで、前記一般式(1)中の「Ar」で表される芳香核の存在割合が0.5以下とすることにより、硬化物の耐熱性が飛躍的に向上する他、難燃性も高くなる。一方、0.1以上とすることにより硬化物の難燃性が良好なものとなる他、硬化物の誘電正接も低いものとなる。なお、ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記一般式(1)中の「Ar」で表される芳香核の存在割合は、前述した通り、エポキシ樹脂(A)の製造方法におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)1モルに対する前記アラルキル化剤(a2)のモル数に相当する。
また、前記エポキシ樹脂(A)の分子構造中に有するグリシジルオキシ基又はメチルグリシジルオキシ基は、具体的には、グリシジルオキシ基及びβ−メチルグリシジルオキシ基が挙げられるが、本発明では特に硬化物の難燃性の点、及び、エポキシ樹脂(A)を工業的生産する際の原料入手が容易であることなどから、グリシジルオキシ基であることが好ましい。
また、本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、その軟化点が80〜140℃であることから、有機溶剤への溶解性が高くなり、回路基板用ワニスに適した材料となる他、ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長いものとなり、従来になり難燃性能を発現させることができる。
更に、前記エポキシ樹脂(A)は、その前駆体であるフェノール樹脂の製造の際、ジヒドロキシ芳香族化合物を原料としてポリアリーレンオキサイド構造を形成させることが望ましく、この場合、フェノール性水酸基は直鎖状分子構造の両末端に出現する為、主に2官能性のエポキシ樹脂として得られる。然し乍ら、該樹脂成分中には、部分的にポリナフチレンオキサイド構造中のナフタレン環に、他のヒドロキシナフタレン環が直接結合によって結合した分子構造を持つ多官能フェノール樹脂をエポキシ化したものも含まれ得る。よって、この場合、前記エポキシ樹脂(A)は、多官能性のエポキシ樹脂として得られる。ここで、前記エポキシ樹脂(A)を回路基板用途へ適用する際にはエポキシ樹脂中の官能基濃度をより一層低くして硬化後の誘電特性や耐湿性の改善を図ることが好ましく、その一方で、前記エポキシ樹脂(A)中の分子量が小さい場合には、有機溶剤への溶解性に劣り回路基板用ワニスへの適用が困難なものとなる点から、前記エポキシ樹脂(A)は、そのエポキシ当量が、257〜320g/eq.の範囲であることが好ましい。
以上詳述したエポキシ樹脂(A)は、前記した通り、中でもポリナフチレンオキシ構造を前記ポリアリーレンオキサイド構造として有するものが好ましく、具体的には下記一般式(1)
Figure 0005463859

で表される構造単位(α)を繰り返し単位とし、その両末端にグリシジルオキシ基又はメチルグリシジルオキシ基を有する構造を有する軟化点80〜140℃のエポキシ樹脂であるものが有機溶剤への溶解性に優れ、かつ、難燃性及び耐熱性に優れた硬化物を与えることができる点から好ましい。
ここで上記一般式(1)中、Xは水素原子又は下記一般式(2)
Figure 0005463859

で表される構造部位(β)であり、かつ、前記一般式(2)中のR’は水素原子又はメチル基であり、前記一般式(1)及び一般式(2)中のRは下記一般式(3)
Figure 0005463859

で表される構造部位(γ)であり、一般式(3)中のnは1又は2であり、また、一般式(2)及び一般式(3)中のpの値は0〜3の整数である。但し、前記エポキシ樹脂(A)は、その分子構造中、前記構造部位(γ)中のベンゼン環をナフタレン環1個あたり0.1〜0.5個となる割合で有するものである。なお、上記一般式(1)においてナフタレン骨格への結合位置はナフタレン環を構成する2つの環の何れであってもよい。
以上詳述したエポキシ樹脂(A)は、例えば、下記の製造方法によって製造することができる。
即ち、ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)と、下記構造式(2)
Figure 0005463859

〔式中、R、Rは各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基を、Yはハロゲン原子、アルコキシ基、又は水酸基を表す。〕で表される化合物、又は下記構造式(3)
Figure 0005463859

〔式中、R、R、Rは各々独立してメチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基を表す。〕で表される化合物からなる群から選択されるアラルキル化剤(a2)とを、酸触媒の存在下に反応させてフェノール樹脂を得る工程(以下、この工程を「工程1」と略記する。)、次いで、得られたフェノール樹脂をとエピハロヒドリン類(a3)とを反応させる工程(以下、この工程を「工程2」と略記する。)とを経て目的とするエポキシ樹脂(A)を製造することができる。
即ち、先ず工程1において前記ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)と、前記アラルキル化剤(a2)とを酸触媒の存在に反応させることにより、ポリアリーレン構造を主骨格としてその両末端にフェノール性水酸基を有し、かつ、該ポリアリーレン構造の芳香核上にアラルキル基がペンダント状に結合した構造のフェノール樹脂を得ることができる。
ここで、前記ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)と、前記アラルキル化剤(a2)との反応割合は、モル基準で前記ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)とアラルキル化剤(a2)との反応比率(a1)/(a2)は1/0.1〜1/0.5となる範囲であることが好ましく、最終的に得られるエポキシ樹脂(A)の難燃性と耐熱性とのバランスが良好なものとなる点から好ましい。
ここで使用し得るジヒドロキシ芳香族化合物(a1)は、例えば、カテコール、レゾルシノール、及びハイドロキノン等の2価フェノール類、並びに、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレンが挙げられる。これらの中でも特に得られるフェノール樹脂或いはそのエポキシ化したエポキシ樹脂の硬化物の難燃性が一層良好なものとなり、また、該硬化物の誘電正接も低くなって誘電特性が良好になる点からジヒドロキシナフタレン、中でも1,6−ジヒドロキシナフタレン又は2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましく、特に2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
次に、前記アラルキル化剤(a2)のうち、下記構造式(2)
Figure 0005463859

[式中、R、Rは各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基を表す。]で表される化合物としては、例えば、Yがハロゲン原子の場合、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルアイオダイト、o−メチルベンジルクロライド、m−メチルベンジルクロライド、p−メチルベンジルクロライド、p−エチルベンジルクロライド、p−イソプロピルベンジルクロライド、p−tert−ブチルベンジルクロライド、p−フェニルベンジルクロライド、5−クロロメチルアセナフチレン、2−ナフチルメチルクロライド、1−クロロメチル−2−ナフタレン及びこれらの核置換異性体、α−メチルベンジルクロライド、並びにα,α−ジメチルベンジルクロライド等が挙げられる。
Yがアルコキシ基の場合、該アルコシキ基は炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、前記構造式(2)で表される化合物は、例えば、ベンジルメチルエーテル、o−メチルベンジルメチルエーテル、m−メチルベンジルメチルエーテル、p−メチルベンジルメチルエーテル、p−エチルベンジルメチルエーテル及びこれらの核置換異性体、ベンジルエチルエーテル、ベンジルプロピルエーテル、ベンジルイソブチルエーテル、ベンジルn−ブチルエーテル、p−メチルベンジルメチルエーテル及びその核置換異性体等が挙げられる。
Yが水酸基の場合、前記構造式(2)で表される化合物は、例えば、ベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、p−エチルベンジルアルコール、p−イソプロピルベンジルアルコール、p−tert−ブチルベンジルアルコール、p−フェニルベンジルアルコール、α−ナフチルカルビノール及びこれらの核置換異性体、α−メチルベンジルアルコール、及びα,α−ジメチルベンジルアルコール等が挙げられる。
前記アラルキル化剤(a2)のうち、下記構造式(3)
Figure 0005463859
で表される化合物としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン等が挙げられる。
これらの中でも、特に難燃効果の点から前記構造式(2)で表されるアラルキル化剤が好ましく、とりわけベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、及びベンジルアルコールが、最終的に得られるエポキシ樹脂又はフェノール樹脂の硬化物において難燃効果が一層顕著なものとなる点から好ましい。
前記工程1におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)とアラルキル化剤(a2)との反応において使用し得る酸触媒は、例えばリン酸、硫酸、塩酸などの無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第2錫、塩化第2鉄、ジエチル硫酸などのフリーデルクラフツ触媒が挙げられる。
また、上記した酸触媒の使用量は、目標とする変性率などにより適宜選択することができるが、例えば無機酸や有機酸の場合はジヒドロキシ芳香族化合物(a1)100質量部に対し、0.001〜5.0質量部、好ましくは0.01〜3.0質量部なる範囲であり、フリーデルクラフツ触媒の場合はジヒドロキシ芳香族化合物(a1)1モルに対し、0.2〜3.0モル、好ましくは0.5〜2.0モルとなる範囲であることが好ましい。
前記工程1におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)とアラルキル化剤(a2)との反応は、分子量が高くなり軟化点の調整が容易となる点から好ましい。ここで使用し得る有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールやジエチレングリコールのモノ又はジエーテル、ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、並びにベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系有機溶媒が挙げられる。これらのなかでも、特に原料に対する溶解性に優れる点から芳香族系有機溶媒が好ましく、特に得られる反応生成物の軟化点をより高めることができる点からキシレンが好ましい。
前記工程1の反応を行う具体的方法は、有機溶媒存在下にジヒドロキシ芳香族化合物(a1)、アラルキル化剤(a2)、及び前記酸触媒を溶解させ、まず、100〜140℃の温度条件で全反応時間の1/2〜2/3となる時間反応させた後、次いで、140〜180℃に昇温させて反応させる方法が得られるフェノール樹脂の軟化点が高くなる点から好ましい。また、反応時間は特に限定されるものではないが、1〜10時間であることが好ましい。よって、当該反応は、具体的には、前記温度を1〜10時間保持することによって行うことができる。また、反応中に生成するハロゲン化水素、水、或いはアルコール類などは系外に分留管などを用いて留去することが、反応が速やかに進行して生産性が向上する点から好ましい。
また、得られるジヒドロキシナフタレン化合物の着色が大きい場合は、それを抑制するために、反応系に酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。酸化防止剤としては、例えば2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物や2価のイオウ系化合物や3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物等が挙られる。還元剤としては例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれらの塩などが挙げられる。
反応終了後は、酸触媒を中和処理、水洗処理あるいは分解することにより除去し、抽出、蒸留などの一般的な操作により、目的とするフェノール樹脂を分離することができる。中和処理や水洗処理は常法に従って行えばよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、トリエチレンテトラミン、アニリン等の塩基性物質を中和剤として用いることができる。
次に、前記工程2として、工程1で得られたフェノール樹脂と、エピハロヒドリン類(a3)とを反応させることにより目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。工程2における反応は、前記フェノール樹脂中のフェノール性水酸基1モルに対し、エピハロヒドリン類(a3)2〜10モルを添加し、更に、前記フェノール樹脂中のフェノール性水酸基1モルに対し0.9〜2.0モルの塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。
ここで用いる塩基性触媒は固形として、或いはその水溶液として使用することができる。前記塩基性触媒を水溶液として使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下または常圧下に連続的に水及びエピハロヒドリン類(a3)を留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリン類(a3)は反応混合物中に連続的に戻す方法を採用してもよい。
前記エピハロヒドリン類(a3)は、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられ、なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでの反応終了後の次バッチ以降の反応では、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類(a3)と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類(a3)とを併用することが好ましい。
また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜二種以上を併用してもよい。
前述のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲が好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより高純度のエポキシ樹脂を得ることができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物(I)においては、エポキシ樹脂成分として前記エポキシ樹脂(A)を単独で用いてもよいし、本発明の効果を損なわない範囲で前記エポキシ樹脂(A)と他のエポキシ樹脂とを併用してもよい。他のエポキシ樹脂を併用する場合、これらの使用割合は、エポキシ樹脂成分の総質量に占める前記エポキシ樹脂(A)の割合が30質量%以上、特に40重量%以上となる範囲であることが好ましい。
ここで併用され得る他のエポキシ樹脂は、種々のエポキシ樹脂を使用することができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に難燃性に優れる硬化物が得られる点から、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)に用いる硬化剤(B)は、公知の各種エポキシ樹脂用硬化剤、例えばアミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの硬化剤を使用できる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
これらの中でも、特に芳香族骨格を分子構造内に多く含むものが難燃効果の点から好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が難燃性に優れることから好ましい。
しかし乍ら、本発明では、難燃性の向上が顕著なものとなり、また、優れた誘電特性を発現する点から、とりわけフェノールアラルキル樹脂、具体的には、下記構造式(i)
Figure 0005463859

で表される構造を結節基として複数のフェノール類が結節した構造を有するフェノール樹脂であることが好ましい。ここで、構造式(i)中、Yは、炭素原子数1〜4のアルキル基又は水素原子、mは0〜3の整数である。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)における前記エポキシ樹脂(A)及び前記硬化剤(B)の配合量は、得られる硬化物の機械的物性等が良好なものとなる点から、前記エポキシ樹脂(A)を含むエポキシ樹脂中のエポキシ基の合計1当量に対して、前記硬化剤(B)中の活性基が0.7〜1.5当量の範囲となる量であることが好ましい。
次に、本発明のもう一つのエポキシ樹脂組成物(II)は、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香環に、フェノール性水酸基及び下記構造式(1)
Figure 0005463859

[式(1)中、R及びRは各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは繰り返し数の平均値で0.1〜4である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、該分子構造中、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜0.5モルとなる範囲であり、かつ、その軟化点が90〜150℃であるフェノール樹脂(B’)、及びエポキシ樹脂(A’)を必須成分とするものである。
ここで、フェノール樹脂(B’)において、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.5以下とすることにより、硬化物の耐熱性が飛躍的に向上する他、難燃性も高くなる。一方、0.1以上とすることにより硬化物の難燃性が良好なものとなる他、硬化物の誘電正接も低いものとなる。なお、フェノール樹脂(B’)における、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合とは、前記した通り、フェノール樹脂(B’)の製造方法におけるジヒドロキシ芳香族化合物(a1)1モルに対する前記アラルキル化剤(a2)のモル数に相当する。
また、フェノール樹脂(B’)は、その軟化点が90〜150℃の範囲であることから有機溶剤への溶解性が高くなり、回路基板用ワニスに適した材料となる他、ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長いものとなり、従来にない難燃性能を発現させることができる。
このように前記フェノール樹脂(B’)は、軟化点が高く、また、その割に前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が低いことを特徴としている。ポリアリーレンオキシ構造の主鎖が比較的長くなり、優れた溶剤溶解性を発現すると共に、回路基板用途における高度な難燃性能にも対応することが可能となる。更に、フェノール樹脂(B’)中の前記分子構造(α)の存在比が低くなることから、フェノール性水酸基の反応性が向上し、硬化物に優れた耐熱性を付与することができる。
また、エポキシ樹脂組成物(II)中のフェノール樹脂(B’)は、前記したエポキシ樹脂組成物(I)におけるエポキシ樹脂(A)の前駆体であるフェノール樹脂と同一構造である。更に、前記フェノール樹脂(B’)は、そのフェノール性水酸基の官能数は、前記エポキシ樹脂(A)の場合と同様に、ジヒドロキシ芳香族化合物を原料としてポリアリーレンオキサイド構造を形成させることが望ましく、この場合、フェノール性水酸基は直鎖状分子構造の両末端に出現する為、主に2官能性のフェノール樹脂として得られるが、該樹脂成分中に、部分的にポリナフチレンオキサイド構造中のナフタレン環に、他のヒドロキシナフタレン環が直接結合によって結合した分子構造を持つ多官能フェノール樹脂であってもよい。
前記フェノール樹脂(B’)は、硬化後の誘電特性や耐湿性の改善効果に優れ、かつ、流動性に優れる点から、前記フェノール樹脂(B’)の水酸基当量が160〜220g/eq.の範囲、特に161〜220g/eq.の範囲にあるものが好ましい。
上記したフェノール樹脂(B’)は、中でもポリナフチレンオキシ構造を前記ポリアリーレンオキサイド構造として有するものが優れた難燃効果を発現し、また、誘電正接も低くなる点から好ましく、具体的には、下記一般式(1’)
Figure 0005463859

で表される構造単位(α’)を繰り返し単位とし、その両末端にフェノール性水酸基を有する軟化点90〜150℃のエポキシ樹脂であることが有機溶剤への溶解性に優れ、かつ、難燃性及び耐熱性に優れた硬化物を与えることができる点から好ましい。
ここで上記一般式(1’)中、Xは水素原子又は下記一般式(2)
Figure 0005463859

で表される構造部位(β’)であり、かつ、前記一般式(1’)及び一般式(2’)中のRは下記一般式(3)
Figure 0005463859

で表される構造部位(γ)であり、一般式(3)中のnは1又は2であり、また、一般式(2’)及び一般式(3)中のpの値は0〜3の整数である。但し、前記フェノール樹脂(B’)は、その分子構造中、前記構造部位(γ)をナフタレン環1個あたり0.1〜0.5個となる割合で有するものである。
なお、上記一般式(1’)においてナフタレン骨格への結合位置はナフタレン環を構成する2つの環の何れであってもよい。また、フェノール樹脂(B’)中、前記構造部位(γ)の存在割合がナフタレン骨格1個に対して0.5個以下とすることにより、硬化物の耐熱性が飛躍的に向上する他、難燃性も高くなる。一方、0.1以上とすることにより硬化物の難燃性が良好なものとなる他、硬化物の誘電正接も低いものとなる。ここで、ナフタレン骨格に対する構造部位(γ)の存在割合は、前述した通り、その製造方法におけるジヒドロキシナフタレン1モルに対するアラルキル化剤(a2)のモル数に相当する。
以上詳述したフェノール樹脂(B’)は、前記したエポキシ樹脂組成物(I)におけるエポキシ樹脂(A)の前駆体であるフェノール樹脂と同一構造である為、前記したエポキシ樹脂(A)の製造方法における工程1によって製造することが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物(II)において前記フェノール樹脂(B’)は単独でエポキシ樹脂(A’)の硬化剤として用いてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で他の硬化剤を併用してもよい。具体的には、硬化剤の全質量に対して前記フェノール樹脂が30質量%以上、好ましくは40質量%以上となる範囲で他の硬化剤を併用することができる。
本発明のフェノール樹脂(B’)と併用されうる他の硬化剤としては、特に制限されるものではなく、例えばアミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、前記したフェノール樹脂(B’)以外のフェノ−ル系化合物、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)の多価フェノール化合物挙げられる。
これらの中でも、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が難燃性に優れることから好ましく、特にフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂等の高芳香族性、高水酸基当量のフェノール樹脂や窒素原子を含有するアミノトリアジン変性フェノール樹脂等の化合物を用いることが、得られる硬化物の難燃性や誘電特性が優れる点から好ましい。
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物(II)で用いるエポキシ樹脂(B’)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。またこれらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
これらのなかでも特にビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂及びキサンテン型エポキシ樹脂が、難燃性や誘電特性に優れる点から特に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物(II)におけるエポキシ樹脂(B)と硬化剤の配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物特性が良好である点から、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基の合計1当量に対して、前記フェノール樹脂(A)を含む硬化剤中の活性基が0.7〜1.5当量になる量が好ましい。
また必要に応じて本発明のエポキシ樹脂組成物(II)に硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
以上詳述した本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、前記した通り、優れた溶剤溶解性を発現することを特徴としている。従って、該エポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、上記各成分の他に有機溶剤(C)を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤(C)としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤(C)として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
また、上記エポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、難燃性を発揮させるために、例えばプリント配線板の分野においては、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物(I)及び(II)の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び該アミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物(I)及び(II)の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物(I)及び(II)の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物(I)及び(II)の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物(I)及び(II)の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、エポキシ樹脂組成物(I)及び(II)の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)が用いられる用途としては、硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、半導体封止材料、導電ペースト、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤等が挙げられる。これら各種用途のうち、硬質プリント配線板材料、電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、低熱膨張性、及び溶剤溶解性といった特性から硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用材料、及び、半導体封止材料に用いることが好ましい。
ここで、本発明の回路基板は、エポキシ樹脂組成物(I)又は(II)を有機溶剤に希釈したワニスを得、これを板状に賦形したものを銅箔と積層し、加熱加圧成型して製造されるものである。具体的には、例えば硬質プリント配線基板を製造するには、前記有機溶剤(D)を含むワニス状のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)を、更に有機溶剤(D)を配合してワニス化し、これを補強基材に含浸し、半硬化させることによって製造される本発明のプリプレグを得、これに銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この際、用いるエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とする回路基板を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)からフレキシルブル配線基板を製造するには、前記フェノール類、前記エポキシ樹脂(B)、硬化促進剤(C)、及び有機溶剤(D)を配合して、リバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布する。次いで、加熱機を用いて60〜170℃で1〜15分間加熱し、溶媒を揮発させて、接着剤組成物をB−ステージ化する。次いで、加熱ロール等を用いて、接着剤に金属箔を熱圧着する。その際の圧着圧力は2〜200N/cm、圧着温度は40〜200℃が好ましい。それで十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全硬化が必要な場合は、さらに100〜200℃で1〜24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の接着剤組成物膜の厚みは、5〜100μmの範囲が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては、例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該エポキシ樹脂組成物(I)又は(II)を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)から半導体封止材料を製造するには、前記フェノール類(A)、前記エポキシ樹脂(B)、硬化促進剤(C)、及び無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常シリカが用いられるが、その充填率はエポキシ樹脂組成物100質量部当たり、充填剤を30〜95質量%の範囲が用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上が特に好ましく、それらの効果を格段に上げるためには、80質量部以上が一層その効果を高めることができる。半導体パッケージ成形としては、該組成物を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物である半導体装置を得る方法がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明のエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)を調製した後、支持フィルムの表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させてエポキシ樹脂組成物(I)又は(II)の層(α)を形成させることにより製造することができる。
形成される層(α)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、前記層(α)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
上記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(α)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(α)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物(I)及び(II)を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該エポキシ樹脂組成物(I)及び(II)中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物(I)は、更にレジストインキとして使用することも可能である。この場合、前記エポキシ樹脂(A)に、エチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤(B)としてカチオン重合触媒を配合し、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
本発明の硬化物を得る方法としては、一般的なエポキシ樹脂組成物の硬化方法に準拠すればよいが、例えば加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよいが、上記方法によって得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。成形方法などもエポキシ樹脂組成物の一般的な方法が用いられ、特に本発明のエポキシ樹脂組成物に特有の条件は不要である。
従って、前記エポキシ樹脂(A)又はフェノール樹脂(B’)を用いることによって、ハロゲン系難燃剤を使用しなくても高度な難燃性を発現する環境性に優れるエポキシ樹脂組成物を得ることができる。また、これらの硬化物における優れた誘電特性は、高周波デバイスの高速演算速度化を実現できる。また、該フェノール樹脂は、本発明の製造方法にて容易に効率よく製造する事が出来、目的とする前述の性能のレベルに応じた分子設計が可能となる。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、150℃における溶融粘度及び軟化点測定、GPC測定、13C−NMR、FD−MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
1)150℃における溶融粘度:ASTM D4287に準拠した。
2)軟化点測定法:JIS K7234に準拠した。
3)GPC:
・装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」により下記の条件下に測定した。
カラム:東ソー株式会社製 TSK−GEL G2000HXL+G2000HXL
+G3000HXL+G4000HXL
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
検出器:RI
4)13C−NMR:日本電子株式会社製「NMR GSX270」により測定した。
5)FD−MS :日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置「AX505H(FD505H)」により測定した。
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレンを160部(1.0モル)、ベンジルアルコール25部(0.25モル)、キシレン160部、パラトルエンスルホン酸・1水和物2部を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、140℃に昇温し、生成する水を系外に留去しながら4時間攪拌した(同時に留去するキシレンは系内に戻す)。その後、150℃に昇温し、生成する水とキシレンを系外に留去しながら3時間攪拌した。反応終了後、20%水酸化ナトリウム水溶液2部を添加して中和した後、水分およびキシレンを減圧下除去してフェノール樹脂類(A−1)を178部得た。得られたフェノール樹脂類(A−1)は褐色固体であり、水酸基当量は169グラム/当量、軟化点は130℃であった。
得られたフェノール樹脂類のGPCチャートを図1に示す。
フェノール樹脂類(A−1)のFD−MS及び13C−NMRによる構造解析を行うと共に、更に、トリメチルシリル化法によるFD−MSの測定に用いるため、フェノール樹脂類(A−1)をトリメチルシリル化し、次いで、FD−MSより以下のa.〜f.のピークを確認した。
a.2,7−ジヒドロキシナフタレン(Mw:160)にベンジル基(分子量Mw:90)が1個付加したピーク(M=250)、更にベンジル基(分子量Mw:90)が2個付加したピーク(M=340)。
従って2,7−ジヒドロキシナフタレン1モルにベンジル基が1モル結合した構造の化合物および2モル結合した構造の化合物であることを確認した。
b.2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体のピーク(M=302)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M=446)。
従って、b.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体エーテル化合物であることを確認した。
c.2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体のピーク(M=444)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M=588)及び3個付加したピーク(M=660)。
従って、c.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン2量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の3量体化合物であることを確認した。
d.2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体のピーク(M=586)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M=730)及び3個付加したピーク(M=802)。
従って、d.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の4量体化合物であることを確認した。
e .2,7−ジヒドロキシナフタレン5量体のピーク(M=729)、更に、これにトリメチルシリル基(分子量Mw:72)が2個付加したピーク(M=873)及び3個付加したピーク(M=944)及び4個付加したピーク(M=1016)。
従って、e.は、2,7−ジヒドロキシナフタレン5量体エーテル化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン4量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが1モル核脱水して生成した構造の5量体化合物および2,7−ジヒドロキシナフタレン3量体エーテルの1モルに2,7−ジヒドロキシナフタレンが2モル核脱水して生成した構造の5量体化合物であることを確認した。
f .b〜eのそれぞれにベンジル基(分子量Mw:90)が1個付加したピーク、更にベンジル基(分子量Mw:90)が2個付加したピーク。
従ってb〜eのそれぞれに1モルにベンジル基が1モル結合した構造の化合物および2モル結合した構造の化合物であることを確認した。
実施例2
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、実施例1で得られたフェノール樹脂類(A−1)169g、エピクロルヒドリン463g(5.0モル)、n−ブタノール139g、テトラエチルベンジルアンモニウムクロライド2gを仕込み溶解させた。65℃に昇温した後、共沸する圧力まで減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液90g(1.1モル)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸によって留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離し、水層を除去し、油層を反応系内に戻しながら、反応を行った。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン432gとn−ブタノール130gとを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水150gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、エポキシ樹脂230gを得た(以下、これを「エポキシ樹脂(B−1)」と略記する)。得られたエポキシ樹脂の軟化点は100℃、エポキシ当量は277g/eqであった。
実施例3
ベンジルアルコール54部(0.5モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、フェノール樹脂類(A−3)を207部得た。このフェノール樹脂類(A−2)は褐色固体であり、水酸基当量は166グラム/当量、軟化点は110℃であった。
実施例4
ベンジルアルコール16部(0.15モル)に変えた以外は実施例1と同様に反応し、フェノール樹脂類(A−3)を233部得た。このフェノール樹脂類(A−3)は褐色固体であり、水酸基当量は162グラム/当量、軟化点は141℃であった。
実施例5
フェノール樹脂類(A−1)169gをフェノール樹脂類(A−3)162gに変えた以外は実施例2と同様に反応し、エポキシ樹脂(B−3)を220部得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は110℃、エポキシ当量は268g/eqであった。
比較例1
反応温度を150℃、反応時間を3時間とし、ベンジルアルコール108部(1.0モル)に変え、キシレン160部を添加しなかった以外は実施例1と同様に反応し、フェノール樹脂類(A−4)を240部得た。このフェノール樹脂類(A−4)は褐色固体であり、水酸基当量は160グラム/当量、軟化点は77℃であった。
比較例2
フェノール樹脂類(A−1)169gをフェノール樹脂類(A−4)160gに変えた以外は実施例2と同様に反応し、エポキシ樹脂(B−4)を220部得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は47℃、エポキシ当量は231g/eqであった。
比較例3
反応温度を150℃、反応時間を3時間とし、ベンジルアルコール76部(0.7モル)に変え、キシレン160部を添加しなかった以外は実施例1と同様に反応し、フェノール樹脂類(A−4)を210部得た。このフェノール樹脂類(A−5)は褐色固体であり、水酸基当量は156グラム/当量、軟化点は83℃であった。
比較例4
フェノール樹脂類(A−1)169gをフェノール樹脂類(A−5)156gに変えた以外は実施例2と同様に反応し、エポキシ樹脂(B−5)を220部得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は66℃、エポキシ当量は255g/eqであった。
実施例6及び比較例3(エポキシ樹脂組成物の調整及び物性評価)
下記、表1記載の配合に従い、エポキシ樹脂として(B−1)、(B−3)、DIC(株)製N−770(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:183g/eq)を硬化剤として(A−1)、(A−3)、(A−4)およびDIC(株)製TD−2090(軟化点120℃、フェノールノボラック樹脂、水酸基当量:105g/eq)を配合し、更に、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)0.1phrを配合し、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合して調整した。
次いで、下記の如き条件で硬化させて積層板を試作し、下記の方法で耐熱性、誘電特性及び難燃性を評価した。結果を表1に示す。
<積層板作製条件>
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6
プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cmで1.5時間、成型後板厚:0.8mm
<耐熱性(ガラス転移温度)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
<誘電率及び誘電正接の測定>
JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
<難燃性>
UL−94試験法に準拠し、125×13×0.8mmの試験片5本用いて燃焼試験を行った。
<溶剤溶解性試験>
配合した不揮発分(N.V.)が58質量%のメチルエチルケトン溶液を0℃で60日間保管後の外観で判定。
Figure 0005463859
表1の脚注:
*1:1回の接炎における最大燃焼時間(秒)
*2:試験片5本の合計燃焼時間(秒)
なお、「自消」で示した評価結果は、V−1に要求される難燃性(ΣF≦250秒且つFmax≦30秒)は満たさないが、燃焼(炎のクランプ到達)には至らず消火したレベルである。

Claims (4)

  1. ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)と、下記構造式(2)
    Figure 0005463859
    〔式中、R、Rは各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基を、Yはハロゲン原子、アルコキシ基、又は水酸基を表す。〕
    で表される化合物、又は下記構造式(3)
    Figure 0005463859
    〔式中、R、R、Rは各々独立してメチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基を表す。〕
    で表される化合物からなる群から選択されるアラルキル化剤(a2)とを、酸触媒の存在下、キシレン中、前記ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)と前記アラルキル化剤(a2)との反応比率(a1)/(a2)が1/0.1〜1/0.5となる範囲で反応させてフェノール樹脂を得、次いで、得られたフェノール樹脂とエピハロヒドリン類(a3)とを反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
  2. 前記エポキシ樹脂が、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、該構造の芳香核に、グリシジルオキシ基又はメチルグリシジルオキシ基、及び下記構造式(1)
    Figure 0005463859
    [構造式(1)中、R 及びR は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、該分子構造中、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜0.5モルとなる範囲であり、かつ、その軟化点が80〜140℃である請求項1記載の製造方法。
  3. ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)と、下記構造式(2)
    Figure 0005463859
    〔式中、R、Rは各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基を、Yはハロゲン原子、アルコキシ基、又は水酸基を表す。〕
    で表される化合物、又は下記構造式(3)
    Figure 0005463859
    〔式中、R、R、Rは各々独立してメチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基を表す。〕
    で表される化合物からなる群から選択されるアラルキル化剤(a2)とを、酸触媒の存在下、キシレン中、前記ジヒドロキシ芳香族化合物(a1)と前記アラルキル化剤(a2)との反応比率(a1)/(a2)が1/0.1〜1/0.5となる範囲で反応させることを特徴とするフェノール樹脂の製造方法。
  4. 前記フェノール樹脂が、ポリアリーレンオキシ構造を主骨格としており、かつ、該構造の芳香核に、フェノール性水酸基及び下記構造式(1)
    Figure 0005463859
    [構造式(1)中、R 及びR は各々独立して、メチル基又は水素原子であり、Arは、フェニレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたフェニレン基、ナフチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基の1〜3つで核置換されたナフチレン基、nは1又は2の整数である。]で表される構造部位(α)が結合した分子構造を有しており、該分子構造中、前記ポリアリーレンオキシ構造を構成する芳香核1モルあたりの前記分子構造(α)を構成する芳香核の存在割合が0.1〜0.5モルとなる範囲であり、かつ、その軟化点が90〜150℃である請求項3記載の製造方法。
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