以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドの重縮合体をポリグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂であって、該エポキシ樹脂中に、
下記構造式(1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、Gはグリシジル基を表す。)
で表される3量体(x1)と、
下記構造式(2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、Gはグリシジル基を表す。)
で表される2量体(x2)とを含有しており、かつ、前記3量体(x1)の含有率がGPC測定における面積比率で15〜35質量%となる割合であり、前記2量体(x2)の含有率がGPC測定における面積比率で1〜25質量%となる割合であることを特徴としている。
即ち、本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドを原料とする重縮合体のポリグリシジルエーテルであって、種々の樹脂構造のものを含む混合物であって、そのなかに、前記3量体(x1)と前記2量体(x2)とを所定量含むことを特徴とするものである。本発明では、該エポキシ樹脂(A)中に前記3量体(x1)を含むことから、分子レベルでの配向性が高く、その硬化物において優れた低熱膨張性を発現すると共に、該3量体(x1)自体の反応性が高いために、硬化物が耐熱性に優れ、熱履歴後の耐熱性変化が少なく、プリント配線基板用途におけるリフロー後の物性変化が少ない材料となる。
ここで、前記3量体(x1)の含有率は、前記したとおり、GPC測定における面積比率で15〜35%の範囲であるが、35質量%を上回る場合はエポキシ樹脂(A)の溶剤溶解性が低下する。他方、15%未満の場合には、硬化物の線膨張係数が高くなる。
斯かる3量体(x1)は、具体的には、下記構造式(1−1)〜(1−6)
で表される化合物が挙げられる。これらのなかでも特に前記構造式1−1で表されるもの、即ち、前記構造式(1)におけるR1及びR2が、全て水素原子であるものが、硬化物における耐熱性により優れ、夏履歴後の耐熱性変化が小さくなることから好ましい。
また、本発明では、前記2量体(x2)を1%以上含むことから、硬化物の低線膨張性が優れる。該2量体(x2)の配合量が25%以下であることから、優れた溶剤溶解性を発現することができ、プリント配線基板用ワニスとしての利用が可能となる。
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、更に、前記3量体(x1)、前記2量体(x2)に加え、更に下記構造式(3)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、Gはグリシジル基を表し、nは繰り返し単位であって2〜10の整数である。)
で表されるカリックスアレーン化合物(x3)を、エポキシ樹脂(A)中GPC測定における面積比率で1〜40%となる割合で含有することが、硬化物における低線膨張性が一層良好なものとなる点から好ましい。
ここで、前記構造式(3)中のR1及びR2は、前記構造式(1)におけるものと同義である。繰り返し単位nは、2〜10の整数であるが、本発明の効果性組成物の硬化物における低線膨張性が一層優れたものとなる点から、nは4であることが好ましい。
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)における前記3量体(x1)、前記2量体(x2)、及び前記カリックスアレーン化合物(x3)の含有率とは、下記の条件によるGPC測定によって計算される、本発明のエポキシ樹脂(A)の全ピーク面積に対する、前記各構造体のピーク面積の存在割合である。
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアル
に準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィ
ルターでろ過したもの(50μl)。
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、上記した、前記3量体(x1)、前記2量体(x2)、及びカリックスアレーン化合物(x3)の他、高分子量成分(x4)を含んでいてもよい。
斯かる高分子量成分(x4)は、本発明のエポキシ樹脂中、前記(x1)〜(x3)を除く高分子量成分であり、具体的には、下記構造式(I)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、Gはグリシジル基を表す。)
で表される構造ユニット(I)と、
下記、構造式(II)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、Gはグリシジル基を表し、mは繰り返し単位であり、0以上の整数である。)
で表される構造ユニット(II)とが、メチレン結合により結節され、高分子量化した基本構造を有するエポキシ樹脂である。
GPC測定によって保持時間が長い順に、前記2量体(x2)、3量体(x1)、カリックスアレーン化合物(x3)の順に検出され、前記高分子量成分(x4)は、カリックスアレーン化合物(x3)より、保持時間の短い領域に検出される成分である。高分子量成分(x4)のエポキシ樹脂(A)中の存在割合は、GPC測定における面積比率で、40〜75質量%の範囲であることが該エポキシ樹脂(A)の溶剤溶解性に優れる点から好ましい。また、前記高分子量成分(x4)の具体的構造としては、前記構造ユニット(I)と構造ユニット(II)とがメチレン結合を介して交互に結合する樹脂構造(x4−1)、及び前記構造ユニット(I)の両末端に構造ユニット(II)がメチレン結合を介して結合する樹脂構造(x4−2)が挙げられるが、本発明では低熱膨張性の点から樹脂構造(x4−2)を有するものが好ましい。なお、樹脂構造(x4−2)において、構造ユニット(II)は前記した通り、該構造の両末端に位置するが、構造ユニット(II)の2本の結合手のうちメチレン結合と結合していない結合手には水素原子が結合するものである。
また、前記重縮合体の原料成分として、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドに加え、更に他のノボラック樹脂を併用する場合には、前記高分子量成分(x4)は、前記構造ユニット(I)、前記構造ユニット(II)、及び当該他のノボラック樹脂が、相互にメチレン結合を介して結節し高分子量化したものとなる。なお、前記重縮合体の原料成分として、当該他のノボラック樹脂を製造時に併用する場合、その使用量は、原料となるα−ナフトール化合物及びβ−ナフトール化合物の総質量100質量部あたり、5〜30質量部であることが、最終的に得られるエポキシ樹脂の反応性に優れる点から好ましい。
以上詳述したエポキシ樹脂(A)は、その軟化点95〜140℃の範囲であることが、エポキシ樹脂自体の溶剤溶解性に優れる点から好ましく、よって、前記高分子量成分(x4)の分子量もエポキシ樹脂の軟化点が前記範囲に入るように適宜調整すればよい。また、前記軟化点は、低熱膨張性及び溶剤溶解性を高度に兼備できる点から、特に100〜135℃の範囲であることが好ましい。
また、エポキシ樹脂(A)は、そのエポキシ当量が210〜300g/eqの範囲であることが、硬化物の低熱膨張性が良好となる点から好ましく、特に220〜260g/eqの範囲であることが好ましい。
以上詳述したエポキシ樹脂(A)は、例えば、下記方法1又は方法2によって製造することができる。
方法1:有機溶剤及びアルカリ触媒の存在下、β−ナフトール化合物とホルムアルデヒドとを反応させ、次いで、ホルムアルデヒドの存在下、α−ナフトール化合物を加え反応させて、ナフトール樹脂を得(工程1)、次いで、得られたナフトール樹脂にエピハロヒドリンを反応させて(工程2)、目的とするエポキシ樹脂を得る方法。
方法2:有機溶剤及びアルカリ触媒の存在下、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドを反応させてナフトール樹脂を得(工程1)、次いで、得られたナフトール樹脂脂にエピハロヒドリンを反応させて(工程2)、目的とするエポキシ樹脂を得る方法。
本発明では、上記方法1又は2の工程1において、反応触媒として、アルカリ触媒を用いること、及び、有機溶剤を原料成分に対して少なく使用することにより、前記3量体(x1)、前記2量体(x2)、及び前記カリックスアレーン化合物(x3)のエポキシ樹脂(A)中の存在割合を所定範囲に調整することができ、かつ、前記高分子量成分の存在比率も適性範囲となる。
ここで用いるアルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、金属ナトリウム、金属リチウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ類などが挙げられる。その使用量は、原料成分であるα−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及び必要により前記他のノボラック樹脂のフェノール性水酸基の総数に対して、モル基準で0.01〜2.0倍量となる範囲であることが好ましい。
また、有機溶剤としては、メチルセロソルブ、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのなかでもとりわけ比較的重縮合体が高分子量化する点からイソプロピルアルコールが好ましい。
本発明における有機溶剤の使用量は、原料成分であるα−ナフトール化合物及びβ−ナフトール化合物、更に、他のノボラック樹脂を併用する場合には、原料となるα−ナフトール化合物及びβ−ナフトール化合物の総質量100質量部あたり、5〜70質量部の範囲であることが、前記3量体(x1)、前記2量体(x2)、及び前記カリックスアレーン化合物(x3)のエポキシ樹脂中の存在割合を所定範囲に調整し易い点から好ましい。
原料成分であるα−ナフトール化合物は、具体的には、α−ナフトール及びこれらにメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が核置換した化合物等が挙げられ、また、β−ナフトール化合物は、β−ナフトール及びこれらにメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が核置換した化合物等が挙げられる。これらのなかでも、置換基を有しないα−ナフトール、及びβ−ナフトールが、最終的に得られる硬化物が耐熱性により優れ、熱履歴後の耐熱性変化が少なくなることから好ましい。
一方、ここで用いるホルムアルデヒドは、水溶液の状態であるホルマリン溶液でも、固形状態であるパラホルムアルデヒドでもよい。
前記方法1又は方法2の工程1におけるα−ナフトール化合物と、β−ナフトール化合物との使用割合は、モル比(α−ナフトール化合物/β−ナフトール化合物)が[1/0.4]〜[1/1.2]となる範囲であることが最終的に得られるエポキシ樹脂(A)中の各成分比率の調整が容易であることが好ましい。
ホルムアルデヒドの反応仕込み比率は、α−ナフトール化合物及びβ−ナフトール化合物の総モル数に対して、ホルムアルデヒドが、モル基準で0.6〜2.0倍量となる割合であること、特に、低熱膨張性に優れる点から、0.6〜1.5倍量となる割合であることが好ましい。
また、本発明では、前記した通り、原料成分としてα−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドに加え、更に、他のノボラック樹脂を一部併用することができる。ここで、用いる他のノボラック樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂が挙げられ、これらを一部併用することにより最終的に得られるエポキシ樹脂(A)の溶剤溶解性を飛躍的に向上させることができる。これらフェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂は、本発明における低線膨張性といった性能を低下させることなく、溶剤溶解性を高めることができる点から軟化点60〜120℃のものであることが好ましい。
当該他のノボラック樹脂を原料の一部として使用する場合、前記方法1又は方法2の工程1における各原料成分の反応仕込み比率は、モル比(α−ナフトール化合物とβ−ナフトール化合物/他のノボラック樹脂中の芳香核数)が[1/0.06]〜[1/0.36]となる範囲であることが、最終的に得られるエポキシ樹脂(A)中の各成分比率の調整が容易であることが好ましく、また、ホルムアルデヒドの使用量は、他のノボラック樹脂中の芳香核数、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物の総モル数に対して、当該ホルムアルデヒドが、モル基準で0.6〜2.0倍量となる割合であること、特に、耐熱性と溶剤溶解性とのバランスに優れる点から、0.6〜1.5倍量となる割合となる範囲であることが好ましい。
前記方法1の工程1では、反応容器に、所定量のβ−ナフトール化合物、ホルムアルデヒド、有機溶剤、及びアルカリ触媒と仕込み、40〜100℃にて反応させ、反応終了後、α−ナフトール化合物(必要に応じて、更にホルムアルデヒド)を加え、40〜100℃の温度条件下に反応させて目的とする重縮合体を得ることができる。この場合他のノボラック樹脂を併用する場合には、α−ナフトール化合物と共に反応容器に加えることが好ましい。
工程1の反応終了後は、反応終了後、反応混合物のpH値が4〜7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理は常法にしたがって行えばよく、例えば酢酸、燐酸、燐酸ナトリウム等の酸性物質を中和剤として用いることができる。中和あるいは水洗処理を行った後、減圧加熱下で有機溶剤を留去し目的とする重縮合体を得ることができる。
前記方法2の工程1では、反応容器に、所定量のβ−ナフトール化合物、α−ナフトール化合物、ホルムアルデヒド、有機溶剤、アルカリ触媒、及び、他のノボラック樹脂を併用する場合には該ノボラック樹脂を仕込み、40〜100℃にて反応させて目的とする重縮合体を得ることができる。この場合他のノボラック樹脂を併用する場合には、α−ナフトール化合物と共に反応容器に加えることが好ましい。
工程1の反応終了後は、反応終了後、反応混合物のpH値が4〜7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理は常法にしたがって行えばよく、例えば酢酸、燐酸、燐酸ナトリウム等の酸性物質を中和剤として用いることができる。中和あるいは水洗処理を行った後、減圧加熱下で有機溶剤を留去し目的とする重縮合体を得ることができる。
次いで、前記方法1又は方法2の工程2は、工程1で得られた重縮合体と、エピハロヒドリンとを反応させることによって目的とするエポキシ樹脂(A)を製造する工程である。斯かる工程2は、具体的には、重縮合体中のフェノール性水酸基のモル数に対し、エピハロヒドリンを2〜10倍量(モル基準)となる割合で添加し、更に、フェノール性水酸基のモル数に対し0.9〜2.0倍量(モル基準)の塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。この塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール化合物、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル化合物、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜2種以上を併用してもよい。
前述のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜3.0質量部となる割合であることが好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより目的とするエポキシ樹脂(A)を得ることができる。
次に、本発明で用いるナフトール樹脂(B)は、具体的には、下記構造式1
(式中、R1はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表し、nは繰り返し単位であり、2〜10の整数である。)
で表される樹脂構造を有するものである。
このように本発明で用いるナフトール化合物(B)は、所謂、カリックスアレーン型の環状構造を有しており、このような構造は硬化物における分子運動を抑制することから、耐熱性や、熱履歴後の耐熱性変化の抑制、及び低熱膨張性等の性能発現に対し有利となる。しかしながら、このようなカリックスアレーン型の環状構造は、剛直かつひずみが大きい構造であることから、従来型の高分子量型ノボラックフェノール型エポキシ樹脂と組み合わせて用いた場合には、エポキシ樹脂とナフトール化合物(B)との間で芳香環構造がスタッキングし難く、これらの効果が十分に発揮され難い。これに対し、本願発明で用いる前記エポキシ樹脂(A)は、前記3量体(x1)成分と前記2量体(x2)成分とを一定量含有することから、これら比較的低分子量の成分とナフトール化合物(B)との間で芳香環構造スタッキングが密なものとなり、その結果、硬化物における耐熱性、熱履歴後の耐熱性変化の抑制、及び低熱膨張性の効果が相乗的に高まり、より顕著なものとなる。
上記構造式1において、ナフタレン環上のメチレン基の結合位置が任意の部位は、同一環上に2つの結合部位を有するものであることが該ナフトール化合物(B)の製造が容易なものとなる点から好ましく、特に該ナフタレン環の2,4−位においてメチレン基が結合しているものであることが、規則的な分子構造が形成され硬化物の耐熱性や低熱膨張性に優れる点から好ましい。
また、前記構造式1中のnは2〜10の整数であるが、化学構造の対象性に優れ耐熱性の向上効果が顕著に現れる点から2,4,6,又は8であることが好ましく、特に4であることが最も好ましい。
かかるナフトール化合物(B)は、MSスペクトルにおいて理論構造の分子量を確認することにより構造を同定することができる。
前記構造式1中のR1は、前述の通り、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基である。ここで、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基が、前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基等の炭素原子数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。本発明では、R1が水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基であるものがより好ましく、中でも、耐熱性により優れる硬化物が得られることから水素原子であるものが特に好ましい。
また、構造式1中のナフトール骨格は、α−ナフトール骨格及びβ−ナフトール骨格の何れであっても良いが、最終的に得られるエポキシ化合物の硬化物における耐熱性に優れ、低熱膨張性にも優れることから、α−ナフトール骨格であることが好ましい。更に、本発明では前記ナフトール骨格として、α−ナフトール骨格と、β−ナフトール骨格とが共存していても良く、この場合、より耐熱性に優れる硬化物が得られることから、両者の存在比率は、α−ナフトール化合物1モルに対してβ−ナフトール化合物が1.2モル以下となる割合であることが好ましい。
上記したナフトール化合物(B)は、例えば、ナフトール化合物とホルムアルデヒドとを、両者のモル比(ナフトール/ホルムアルデヒド)が1.0/1.0〜1.0/2.0となる割合で、塩基性触媒の存在下に反応させる方法により製造することが出来る。
ここで、前記反応は、具体的には20〜100℃の温度条件で行うことができる。
該反応で用いられるナフトール化合物は、具体的には、α−ナフトール、1−ヒドロキシ−3−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−エチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−エチルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−プロピルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−プロピルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−ブチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−ブチルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−エトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−エトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−プロピルオキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−プロピルオキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−ブチルオキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−ブチルオキシナフタレン等のα−ナフトール化合物;β−ナフトール、2−ヒドロキシ−3−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−エチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−エチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−プロピルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−プロピルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−ブチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−ブチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−5−エトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−エトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−5−プロピルオキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−プロピルオキシナフタレン、2−ヒドロキシ−5−ブチルオキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−ブチルオキシナフタレン等のβ−ナフトール化合物が挙げられるが、中でも、最終的に得られるエポキシ化合物の硬化物における耐熱性に優れることから、α−ナフトール化合物であることが好ましく、α−ナフトールであることが特に好ましい。
また、本発明では、前記α−ナフトール化合物とβ−ナフトール化合物とを併用しても良く、その場合、α−ナフトール化合物1モルに対してβ−ナフトール化合物が1.2モル以下となる割合で用いることが耐熱性の観点から好ましい。
一方、該反応で用いられるホルムアルデヒド源としては、例えば、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。ここで、ホルマリンは水希釈性や製造時の作業性の点から30〜60質量%のホルマリンであることが好ましい。
該反応で用いられる塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特に触媒活性に優れる点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
このときの塩基性触媒の使用量は、前記ナフトール化合物1モルに対して0.02モル以上となる割合であることが、カリックスアレーン構造の形成が容易となることから好ましい。更に、最も好ましい分子構造であるナフトール型カリックス(4)アレーン化合物の選択制を高めることが出来ることから、前記モル比(ナフトール化合物/ホルムアルデヒド)は1.0以下であることが好ましい。ここで、ナフトール型カリックス(4)アレーン化合物とは、ナフトール化合物の4分子がメチレン結合を介して結合し、環状構造を形成している化合物である。
本発明の硬化性組成物における前記エポキシ樹脂(A)と前記ナフトール化合物(B)との配合割合は、特に制限されるものではないが、得られる硬化物が耐熱性により優れるものとなることから、前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基の合計1当量に対して、前記ナフトール化合物(B)が含有するフェノール性水酸基の合計が0.7〜1.5当量の範囲となる割合であることが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、前記エポキシ樹脂(A)及び前記ナフトール化合物(B)に加え、更に、前記ナフトール化合物(B)以外のナフトール化合物(B’)を用いることが、組成物の溶剤溶解性が向上し、プリント配線基板用組成物の調整が容易となる点から好ましい。
ここで用いるナフトール化合物(B’)は、具体的には、2,7−ジヒドロキシナフタレン、α−ナフトールノボラック樹脂、β−ナフトールノボラック樹脂、α−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、1,1−ビス(2,7−ヒドロキシ−1−ナフチル)アルカン等のナフトール系樹脂が挙げられる。
これらのなかでも特に前記ナフトール化合物(B)との相溶性に優れる点から、2,7−ジシアナトナフタレン、α−ナフトールノボラック型シアン酸エステル樹脂、β−ナフトールノボラック型シアン酸エステル樹脂、又は、α−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックが好ましい。
とりわけ、本発明においては前記ナフトール化合物(B)を製造する際、α−ナフトールと共にβ−ナフトールを併用し、該カリックスアレーン型ナフトール化合物とα−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックとの混合物を得る方法により、前記ナフトール化合物(B)と、α−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックとの混合物を製造したものが、溶剤溶解性に優れる点から好ましい。
前記ナフトール化合物(B)と前記ナフトール化合物(B’)との存在割合は、両者の混合物をGPCにより測定した場合における、前記ナフトール化合物(B’)の面積比率基準の含有率が3〜50%となる割合であることが、耐熱性および溶剤溶解性の点から好ましい。
ここで、GPCの測定条件は具体的には以下の条件が挙げられる。
(GPC測定条件)
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアル
に準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィ
ルターでろ過したもの(50μl)。
本発明の硬化性組成物では、前記ナフトール化合物(B)や前記ナフトール化合物(B’)に加え、樹脂成分の有機溶剤への溶解性を損なわない範囲でその他の硬化剤(B”)を使用してもよい。その他の硬化剤(B”)の使用量は、例えば、全硬化剤成分中、5〜50質量%となる範囲であることが好ましい。
前記その他の硬化剤(B”)としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
前記アミド系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
前記酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
前記フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。これらその他の硬化剤成分の中でも、硬化性に優れることから、前記フェノール系化合物が好ましい。
本発明の硬化性組成物が前記エポキシ樹脂(A)及び前記ナフトール化合物(B)に加えて、前記ナフトール化合物(B’)やその他の硬化剤(B’)を含有する場合、これらの配合割合は、前記エポキシ樹脂(A)が含有するエポキシ基の合計1当量に対し、全硬化剤成分が含有するフェノール性水酸基の合計が0.7〜1.5当量の範囲となる割合であることが、硬化性が良好となり硬化物の耐熱性に優れる点から好ましい。
また、本発明では、前記エポキシ樹脂(A)以外のエポキシ樹脂(A’)を併用しても良い。その他のエポキシ樹脂(A’)の使用量は、例えば、全エポキシ成分中、5〜50質量%となる範囲であることが好ましい。
ここで使用され得るエポキシ樹脂(A’)としては、種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのなかでもフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂や、ナフタレン骨格を含有するナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂や、結晶性のビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂や、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック型エポキシ樹脂(ホルムアルデヒドでグリシジル基含有芳香環及びアルコキシ基含有芳香環が連結された化合物)等が耐熱性に優れる硬化物が得られる点から特に好ましい。
本発明の硬化性組成物が前記エポキシ樹脂(A)に加えて、前記エポキシ樹脂(A’)を含有する場合、これらの配合割合は、硬化性組成物中の全エポキシ成分が含有するエポキシ基の合計1当量に対し、全硬化剤成分が含有するフェノール性水酸基の合計が0.7〜1.5当量の範囲となる割合であることが、硬化性が良好となり硬化物の耐熱性に優れる点から好ましい。
本発明では、必要に応じて硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2−エチル−4−メチルイミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
以上詳述した本発明の硬化性組成物をプリント配線基板用ワニス等に調整する場合、上記各成分の他に有機溶剤(C)を配合することが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物は、前記した通り、優れた溶剤溶解性を発現することを特徴としている。ここで使用し得る前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線基板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分が30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は、難燃性をさらに高めるために、例えばプリント配線基板用途においては、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール系化合物と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.5〜50質量部の範囲で配合することが好ましく、特に5〜30質量部の範囲で配合することが好ましい。
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物100質量部中、0.5〜100質量部の範囲で配合することが好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
本発明の硬化性組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。エポキシ成分、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の硬化性組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
本発明の硬化性組成物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、樹脂注型材料、接着剤、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等が挙げられる。また、これら各種用途のうち、プリント配線板や電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高耐熱性及び難燃性といった特性からプリント配線板材料やビルドアップ用接着フィルムに用いることが好ましい。
ここで、本発明の硬化性組成物からプリント回路基板を製造するには、前記有機溶剤(C)を配合してワニス化した樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時用いる硬化性組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
本発明の硬化性組成物をレジストインキとして使用する場合には、例えば該硬化性組成物の触媒としてカチオン重合触媒を用い、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該硬化性組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては、例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該硬化性組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該硬化性組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
本発明の硬化性組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の硬化性組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の硬化性組成物を調製した後、支持フィルム(y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物の層(x)を形成させることにより製造することができる。
形成される層(x)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、本発明における層(x)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、硬化性組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
上記した支持フィルム(y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(x)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(x)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
本発明の硬化物を得る方法としては、上記方法によって得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%
」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、軟化点、13C−NMR、GPC及びMSは以下の条件にて測定した。
1)軟化点測定法:JIS K7234
2)13C−NMR:測定条件は以下の通り。
装置:日本電子(株)製 AL−400
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:45℃パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
3)GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアル
に準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィ
ルターでろ過したもの(50μl)。
4)MS :日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置 AX505H(FD505
H)
製造例1 エポキシ樹脂(A−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、β−ナフトール144部(1.0モル)、イソプロピルアルコール150部、37%ホルマリン水溶液130部(1.6モル)、49%水酸化ナトリウム41部(0.5モル)を仕込み、室温から80℃まで攪拌しながら昇温し、80℃で1時間撹拌した。続いて、α−ナフトール144部(1.0モル)を仕込み、さらに80℃で1時間攪拌した。反応終了後、第1リン酸ソーダ60質量部を添加して中和した後、メチルイソブチルケトン600部加え、水150質量部で3回洗浄を繰り返した後に、加熱減圧下乾燥してナフトール樹脂(B−1)290質量部得た。得られたナフトール樹脂(a−1)の水酸基当量は153グラム/当量であった。
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたナフトール樹脂(a−1)153質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み攪拌しながら溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、攪拌を停止し、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン300質量部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水100質量部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のエポキシ樹脂(A−1)200質量部を得た。得られたエポキシ樹脂(A−1)のエポキシ当量は234グラム/当量、軟化点113℃であり、GPCチャートを図1、NMRチャートを図2、MASSチャートを図3に示す。GPCチャートから3量体(x1)の含有率は25.3%、2量体(x2)の含有率は5.3%、カリックスアレーン化合物(x3)の含有率は7.4%、高分子量体(x4)の含有率は62.0%であった。
製造例2 エポキシ樹脂(A−2)の製造
β−ナフトール72部(0.5モル)、イソプロピルアルコール130部、37%ホルマリン水溶液142部(1.75モル)、49%水酸化ナトリウム24部(0.3モル)に変更した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(A−2)200質量部を得た。得られたエポキシ樹脂(A−2)のエポキシ当量は242グラム/当量、軟化点134℃であり、GPCチャートを図4に示す。GPCチャートから3量体(x1)の含有率は15.8%、2量体(x2)の含有率は3.0%、カリックスアレーン化合物(x3)の含有率は33.0%、高分子量体(x4)の含有率は48.2%であった。
製造例3 エポキシ樹脂(A−3)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、β−ナフトール115部(0.80モル)、α−ナフトール173部(1.20モル)、軟化点75℃(B&R法)のクレゾールノボラック樹脂54質量部(クレゾール骨格のモル数:0.45モル)、イソプロピルアルコール150部、37%ホルマリン水溶液135部(1.66モル)、49%水酸化ナトリウム5部(0.06モル)を仕込み、室温から80℃まで攪拌しながら昇温し、80℃で2時間撹拌した。反応終了後、第1リン酸ソーダ10質量部を添加して中和した後、メチルイソブチルケトン727部加え、水182質量部で3回洗浄を繰り返した後に、加熱減圧下乾燥してナフトール樹脂(B−2)350質量部得た。得られたナフトール樹脂(B−2)の水酸基当量は148グラム/当量であった。
エポキシ化工程は実施例1と同様にして、目的のエポキシ樹脂(A−3)204質量部を得た。得られたエポキシ樹脂(A−3)のエポキシ当量は230グラム/当量、軟化点112℃であり、GPCチャートを図5に示す。GPCチャートから3量体(x1)の含有率は16.8%、2量体(x2)の含有率は3.7%、カリックスアレーン化合物(x3)の含有率は13.4%、高分子量体(x4)の含有率は66.1%であった。
製造例4 エポキシ樹脂(A−4)の製造
β−ナフトール144部(1.00モル)、α−ナフトール144部(1.00モル)に変更した以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂(A−4)197質量部を得た。得られたエポキシ樹脂(A−4)のエポキシ当量は228グラム/当量、軟化点103℃であり、GPCチャートを図6、NMRチャートを図7、MASSチャートを図8に示す。GPCチャートから3量体(x1)の含有率は23.9%、2量体(x2)の含有率は6.5%、カリックスアレーン化合物(x3)の含有率は5.5%、高分子量体(x4)の含有率は64.1%であった。
製造例5 ナフトール化合物(B−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、α−ナフトール216質量部(1.50モル)、37質量%ホルムアルデヒド水溶液146質量部(1.80モル)、イソプロピルアルコール121質量部、49%水酸化ナトリウム水溶液46質量部(0.56モル)を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、80℃に昇温し1時間攪拌した。反応終了後、第1リン酸ソーダ40質量部を添加して中和した後、冷却し結晶物をろ別した。その後、水200質量部で3回洗浄を繰り返した後に、加熱減圧下乾燥してナフトール化合物(B−1)224質量部得た。得られたナフトール化合物(B−1)の水酸基当量は156グラム/当量であった。得られたナフトール化合物のGPCチャートを図4に、MSスペクトルを図5に示す。MSスペクトルから前記構造式1においてn=4の場合の化合物に相当する624のピークが検出された。また、GPCチャートから算出される前記構造式1においてn=4の場合に相当する化合物の含有率は85.6%であった。
比較製造例1 レゾルシン型カリックスアレーン(b−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、レゾルシノール33.0質量部(0.3モル)をエタノール120質量部に溶かし、氷冷下、濃塩酸40質量部を加え、約5℃で30分間攪拌した。これにパラアルデヒド12.1質量部(0.1モル)を滴下した後、約30分間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、ろ過により生成した固体を得た。得られた固体を水で1回、メタノールで3回洗浄し、メタノールで2回再結晶した後、60℃で24時間真空乾燥することによりレゾルシン型カリックスアレーン(b−1)22質量部を得た。得られたレゾルシン型カリックスアレーン(b−1)は白色固体であり、水酸基当量は68グラム/当量であった。
実施例1,2及び比較例1
下記表1記載の配合に従い、主剤として前記エポキシ樹脂(A−1)を、硬化剤として(B−1)又は(b−1)を、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を配合し、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合して調整した。次いで、下記の如き条件で硬化させて積層板を試作し、下記の方法で耐熱性及び熱膨張率、物性変化を評価した。結果を表1に示す。
<積層板作製条件>
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6 プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cm2で1.5時間、成型後板厚:0.8mm
<耐熱性試験>
積層板のガラス転移温度をDMA法にて測定。粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。昇温スピード3℃/分
<熱膨張率>
積層板を5mm×5mm×0.8mmのサイズに切り出し、これを試験片として熱機械分析装置(TMA:セイコーインスツルメント社製SS−6100)を用いて、圧縮モードで熱機械分析を行った。
測定条件
測定架重:88.8mN
昇温速度:10℃/分で2回
測定温度範囲:−50℃から300℃
上記条件での測定を同一サンプルにつき2回実施し、2回目の測定における、40℃から60℃の温度範囲における平均線膨張率を熱膨張係数として評価した。
<熱履歴後の耐熱性変化>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、以下の温度条件で2回、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度(Tg)を測定した。
温度条件
1st run:35℃から275℃まで3℃/分で昇温
2nd run:35℃から330℃まで3℃/分で昇温
1st runと2nd runとのTg測定値の差をΔTgとして評価した。